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特開2024-53447書道教育プログラム、記録媒体、書道学習支援システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053447
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】書道教育プログラム、記録媒体、書道学習支援システム
(51)【国際特許分類】
   G09B 11/00 20060101AFI20240408BHJP
   G09B 5/02 20060101ALI20240408BHJP
   G06Q 50/20 20120101ALI20240408BHJP
【FI】
G09B11/00
G09B5/02
G06Q50/20
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159743
(22)【出願日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】513032851
【氏名又は名称】劉 洪友
(74)【代理人】
【識別番号】100087664
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 宏行
(72)【発明者】
【氏名】劉 洪友
【テーマコード(参考)】
2C028
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
2C028AA05
2C028BB01
2C028BC02
2C028BC04
5L049CC34
5L050CC34
(57)【要約】      (修正有)
【課題】初心者でも短期間に毛筆文字の描画のコツが独習できる書道教育プログラムと、このプログラムを記録した記録媒体、書道学習支援システム、書道作品の制作支援システム、書道教本を提案する。
【解決手段】書道教育プログラムは、コンピュータによって実行される、第一の模写式練習過程を表示するステップ、第二の臨書式練習過程を表示するステップ、第三の背臨書式練習過程を表示するステップを含んでおり、書道の学習者のために、指導者が解説付きで実演する動画が収録されている。第一の模写式練習過程では、模写とマーキング・チェック手順の動画、第二の臨書式練習過程では、臨書とマーキング・チェック手順の動画が再生され、更に第三の背臨書式練習過程では、背臨書とマーキング・チェック手順の動画が再生される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
学習者に毛筆文字の描き方のコツを教授するために、コンピュータに実行させる教育プログラムであって、
第一の模写式練習過程を表示するステップと、第二の臨書式練習過程を表示するステップと、第三の背臨書式練習過程を表示するステップとを備え、
第一の模写式練習過程を表示するステップでは、
書道手本の上に練習紙を重ね、書道手本の文字を練習紙上に透かした状態で、筆を用いて練習紙になぞって書く手順と、
ついで、練習紙に筆で書いた文字と手本の文字とを照合し、一致していない箇所をマーキングする手順を動画として表示する、
第二の臨書式練習過程を表示するステップでは、
書道手本を傍らに置き、書道手本の文字を見ながら、筆を用いて練習紙に書道手本の文字を書く手順と、ついで、練習紙に書いた文字と手本の文字とを照合し、一致していない箇所をマーキングする手順を動画として表示する、
第三の背臨書式練習過程を表示するステップでは、
書道手本を見ずに、筆を用いて練習紙に書道手本の文字を書く手順と、ついで、練習紙に書いた文字と手本の文字とを照合し、一致していない箇所をマーキングする手順を動画として表示することを特徴としている、書道教育プログラム。
【請求項2】
請求項1において、
前記書道教育プログラムが、三三式書道練習法の手順に従って実行されるものである、書道教育プログラム。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記書道教育プログラムを、コンピュータで読み取り可能な言語で記録している記録媒体。
【請求項4】
学習者の通信端末と、学習サイトをインターネットなどの通信回線を通じて接続して構成される、書道学習支援システムであって、
前記学習サイトには、サーバ装置が設置されており、
このサーバ装置は、
予め登録された学習者の通信端末からのログインを許容させるログイン許容手段と、
書道教育プログラムを内蔵し、ログインの許容された学習者の通信端末には、そのプログラムをダウンロードさせて、プログラムの実行を許容させる書道教育プログラム実行手段とを備え、
この書道教育プログラムは、予め準備された書道手本に対応させて保存している第一の模写式練習過程、第二の臨書式練習過程、第三の背臨書式練習過程を時系列に動画として再生表示する構成としている、書道学習支援システム。
【請求項5】
請求項4において、
前記書道教育プログラムが、三三式書道練習法の手順に従って実行されるものである、書道学習支援システム。
【請求項6】
学習者の通信端末と学習サイトとをインターネットなどの通信回線を通じて接続して構成される、書道作品の制作支援システムであって、
模範となる毛筆文字が記され、学習者用に配布される書道手本と、
前記学習者サイトに設置されたサーバ装置とを備え、
前記サーバ装置は、
予め登録された学習者のみのログインを許容させるログイン許容手段と、
ログインを許容した学習者の通信端末に対して、学習者による書道手本の選択を受付けて、学習者が選択した書道手本に応じて、予め保存している書道教育プログラムを学習者の通信端末にダウンロードさせて、そのプログラムを実行する書道教育プログラム実行手段と、
学習者の書道作品記録ファイルを備え、学習者による前記書道教育プログラムの視聴完了を判別して、前記書道作品記録ファイルに書道作品の制作事実を記録更新する学習者書道教育記録手段とを備えたことを特徴とする、書道作品の制作支援システム。
【請求項7】
請求項6において、
書道作品のチェックシートを更に備え、
このチェックシートは、書道手本に記された模範となる毛筆文字に対応して、起筆、送筆、収筆などの評価ポイントを予め記した構成になっている、書道作品の制作支援システム。
【請求項8】
請求項6又は7において、
前記書道教育プログラムは、請求項1又は2に記載のものを実行している、書道作品の制作支援システム。
【請求項9】
請求項8において、
前記書道教育プログラムは、三三式書道練習法の手順に従って、実行している、書道作品の制作支援システム。
【請求項10】
毛筆文字の描き方のコツを解説するコンテンツを含んで編集された書道教本であって、
模写を中心とした第一の模写式練習過程の説明欄、
臨書を中心した第二の臨書式練習過程の説明欄
背臨書を中心とした第三の背臨書式練習過程の説明欄を、コンテンツに備え、
前記第一の模写式練習過程の説明欄では、書道手本の上に練習紙を重ね、書道手本の文字を練習紙上に透かした状態で、筆を用いて練習紙になぞって書く手順と、練習紙に筆で書いた文字と手本の文字とを照合し、一致していない箇所をマーキング・チェックする手順とが解説図及び/又は説明文を用いて掲載されており、
前記第二の臨書式練習過程の説明欄では、書道手本を傍らに置き、書道手本の文字を見ながら、筆を用いて練習紙に書道手本の文字を書く手順と、練習紙に書いた文字と手本の文字とを照合し、一致していない箇所をマーキング・チェックする手順とが解説図及び/又は説明文を用いて掲載されており、
前記第三の背臨書式練習過程の説明欄では、書道手本を見ずに、筆を用いて練習紙に書道手本の文字を書く手順と、ついで、練習紙に書いた文字と手本の文字とを照合し、一致していない箇所をマーキングする手順とが解説図及び/又は説明文を用いて掲載されていることを特徴とする、書道教本。
【請求項11】
請求項10において、
前記第一の模写式練習過程、前記第二の臨書式練習過程、前記第三の背臨書式練習過程は、三三式書道練習法の手順に従って掲載されている、書道教本。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、初心者でも独学で短期間に毛筆文字の描画のコツが習得できる新規な書道教育プログラム、これを活用した書道支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
書道は文字の特徴と漢字に含まれる意味、その書体の用筆、結体と章法を活かし、そこに美が含まれた芸術の形である。
漢字書道は毛筆で漢字を書き、審美の歴史が長い芸術形式であり、中国の長きにわたった伝統文化芸術の中でも一番のシンボルリックなものと言える。
また、書道には「無言の詩、無行の踊り、無図の絵、無声の楽」の美称がある。
伝統的な書道練習の教育法は、生徒が書いた作品に対して指導者が添削や講義を行い、生徒が再び、指導者の講義を聞いて何度も作品を制作して練習する形で行われているのが通例である。
しかしながら、こういう教育法は書道の学習者の個人能力に対する要求が高いのみならず、毎回の練習も指導者にコツの指導や添削してもらう必要があり、指導者の負担も高く、練習のハードルが高いものになっている。
このような事情から、従来から種々の練習方法が提案されており、以下の特許文献には、それらの方法を教示している。
すなわち、特許文献1には、手本の文字自体に透明紙を重ねて手本の文字を直接なぞる、模写に関する方法が提案されている。
また、特許文献2には、草書体文字を複数の構成片に分解し、各構成片に近似した数字やアルファベットや片仮名や平仮名や記号等を選択し、これらの近似構成片を模写しながら草書体文字を練習する手法が提案されている。
更に、特許文献3には、書道練習具として、一文字の練習文字を複数の文字構成要素に分解して、それぞれをインクで印刷表示する手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-102143号公報
【特許文献2】特開2011-221379号公報
【特許文献3】特開2021-018388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献において提案された練習法は、取り扱いの簡単なものは、毛筆文字の特徴が殆ど掴めず、取り扱いの複雑なものでは、その扱いを覚えること自体が難しいなどの問題があった。
このため、書道の学習は、初心者にとっては取っ付きにくく、充分な効果が出ていないのが現状である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、従来の毛筆を用いた書道練習法が、このような事情にあるのに鑑みて、日々書道を指導している本発明者が鋭意検討し、長年の指導を通じて知得したもので、初心者にも覚えやすい上に、簡単に実施できるために、短期間で正確かつ身美な毛筆を書くことのできる新規な書道教育プログラム、それをIT技術を用いて、独習用に構成した書道学習プログラム、プログラム記録媒体、書道学習支援システム、書道作品制作支援システム及び書道教本を提供することを目的としている。
【0006】
以下、本発明者が提案する新規な発明を説明する。
第一の本発明は、新規な書道教育プログラムに関する。
このプログラムは、学習者に、模写、臨書、背臨書の練習過程の動画を視聴させ、毛筆文字の描き方のコツを教授するものである。
このプログラムは、第一の模写式練習過程を表示するステップ、第二の臨書式練習過程を表示するステップ、第三の背臨書式練習過程を表示するステップを含んでいる。
ここに、第一の模写式練習過程では、書道手本の上に練習紙を重ね、書道手本の文字を練習紙上に透かした状態で筆を用いて練習紙になぞって書く手順(模写手順)と、ついで、練習紙に筆で書いた文字と手本の文字とを照合し、一致していない箇所をマーキングする手順(マーキング・チェック手順)が動画として表示される。
また、第二の臨書式練習過程では、書道手本を傍らに置き、書道手本の文字を見ながら、筆を用いて練習紙に書道手本の文字を書く手順(臨書手順)と、ついで、練習紙に書いた文字と手本の文字とを照合し、一致していない箇所をマーキングする手順(マーキング・チェック手順)が動画として表示される。
更に、第三の背臨書式練習過程では、書道手本を見ずに、筆を用いて練習紙に書道手本の文字を書く手順(背臨書手順)と、ついで、練習紙に書いた文字と手本の文字とを照合し、一致していない箇所をマーキングする手順(マーキング・チェック手順)が動画として表示される構成になっている(請求項1)
また、この発明のベストモードとして、三三式書道練習法の手順に従って作成された書道教育プログラムが請求項2において提案されている。
【0007】
第二の本発明は、第一の本発明である書道教育プログラムを、コンピュータで読み取り可能な言語で記録している記録媒体を提案している。ここに、記録媒体としては、CD-ROM、各種のメモリカード、メモリスティック、ビデオ画像の記録媒体の他、公知の記録媒体が使用される(請求項3)。
【0008】
第三の本発明は、第一の本発明の書道教育プログラムを用いた書道学習支援システムを提案している。
このシステムでは、学習者側には表示部、入力部を備えた通信端末が設置され、学習サイトにはサーバ装置が設置され、両者はインターネットなどの通信回線を通じて接続されている。
学習者は、インターネット回線を通じて学習サイトに設置されたサーバ装置にログインすることで、書道手本において準備された、書道教育プログラムをダウンロードして視聴することで、毛筆文字の描き方のコツが自習できる。
このため、学習サイトに設置されたサーバ装置は、予め登録された学習者の通信端末からのログインを許容させるログイン許容手段と、指導者が解説を付けて実演して教授する、前述した書道教育プログラムを内蔵し、ログインの許容された学習者に対して、通信端末には、そのプログラムをダウンロードさせて、プログラムを実行させる書道教育プログラム実行手段とを備えている(請求項4)
この発明のベストモードとして、書道教育プログラムとして、三三式書道練習法を利用した書道学習支援システムが請求項5において提案されている。
【0009】
第四の本発明は、学習者の通信端末と学習サイトのサーバ装置とがインターネットなどの通信回線を通じて接続され、学習者には通信端末の表示部に教育プログラムを視聴させて、毛筆文字の描き方のコツを習得させた後、その後に書道作品を実際に制作させ、実際に制作した事実を自習実績として記録することで、より確実に学習者の書道指導が行えるようになっている。
ここに、学習者サイトには、サーバ装置が設置されており、予め登録された学習者のみのログインを許容させるログイン許容手段と、ログインを許容した学習者の通信端末に対して、学習者による書道手本の選択を受付けて、学習者が選択した書道手本に掲載された模範文字に応じて、予め準備している書道教育プログラムを学習者の通信端末にダウンロードさせて、そのプログラムを実行する書道教育プログラム実行手段と、学習者の書道作品記録ファイルを備え、学習者による前記書道教育プログラムの視聴完了を判別して、前記書道作品記録ファイルに書道作品の制作事実を記録更新する学習者書道教育記録手段とを備えている(請求項6,7,8,9)。
【0010】
第五の本発明は、毛筆文字の描き方のコツを解説するコンテンツを含んで編集された書道教本である。
この教本は、模写を中心とした第一の模写式練習過程の説明欄、臨書を中心とした第二の臨書式練習過程の説明欄、背臨書を中心とした第三の背臨書式練習過程の説明欄を、コンテンツに備えており、第一の模写式練習過程の説明欄では、書道手本の上に練習紙を重ね、書道手本の文字を練習紙上に透かした状態で、筆を用いて練習紙になぞって書く手順と、練習紙に筆で書いた文字と手本の文字とを照合し、一致していない箇所をマーキング・チェックする手順とが解説図及び/又は説明文を用いて掲載されており、第二の臨書式練習過程の説明欄では、書道手本を傍らに置き、書道手本の文字を見ながら、筆を用いて練習紙に書道手本の文字を書く手順と、練習紙に書いた文字と手本の文字とを照合し、一致していない箇所をマーキング・チェックする手順とが解説図及び/又は説明文を用いて掲載されており、第三の背臨書式練習過程の説明欄では、書道手本を見ずに、筆を用いて練習紙に書道手本の文字を書く手順と、ついで、練習紙に書いた文字と手本の文字とを照合し、一致していない箇所をマーキングする手順とが解説図及び/又は説明文を用いて掲載されている(請求項10)。
また、このベストモードとして、第一の模写式練習過程の説明欄、臨書を中心した第二の臨書式練習過程の説明欄、背臨書を中心とした第三の背臨書式練習過程を、いずれも三三式書道練習法の手順に従って掲載した書道教本を請求項11において提案している。
【発明の効果】
【0011】
本発明の書道教育プログラムによれば、先生などから指導や添削を受けなくても、学習者が独学で練習ができるので、書道教育のハードルを著しく下げて、初心者でも効率良く書道のコツが習得できる。
この教育プログラムでは、学習者の視覚だけでなく、手や指などの動作を加えることで、脳に無理なくコツを覚えさせて、学習者の潜在意識に無理なく働きかけることが出来る。
また、本発明の書道学習支援システムによれば、学習者は、学習サイトにログインして書道学習プログラムを視聴して、書道のコツが習得できる。
更に本発明の書道作品の制作支援システムによれば、書道学習プログラムを視聴した後、実際に書道作品を制作する練習工程を繰り返し行うことで、書道作品を実際に制作する事実を記録しながら技能を高めることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第一の本発明の書道教育プログラムの流れを説明するフローチャート。
図2】第三の本発明の基本構成を示すシステム構成図。
図3】第四の本発明の基本構成を示すシステム構成図。
図4】第四の本発明の基本動作を示すフローチャート。
図5】チェックシートの一例を示す説明図。
図6】学習者が独習する際に必要な学習用ツールを説明する図。
図7】書道手本解説を説明する図であり、(a)は「永」の構成を示す図、(b)は永字八法の解説図。
図8】(a)、(b)、(c)は模写式練習過程、臨書式練習過程、背臨書式練習過程の要領をイメージ的に示す説明図である。
図9】三三式書道練習方法をイメージ的に説明する図。
図10】三三式書道練習方法を文字で説明する図。
図11】書道手本に記された「お年玉」の模範文字と、練習時に模範文字を「お」、「年」、「玉」の1文字に分解して使用される手本文字を示す図。
図12】模写の手順を示す説明図。
図13】模写練習過程時におけるマーキング・チェック手順の説明図。
図14】臨書練習過程の手順を示す説明面。
図15】背臨書練習過程の手順を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例について詳述する。

第一の本発明
この新規な書道教育プログラムは、学習者に、模写、臨書、背臨書の練習過程の動画を視聴させ、毛筆文字の描き方のコツを教授するものである。
模写、臨書、背臨書の練習方法については、後述する。
このプログラムは、第一の模写式練習過程を表示するステップ、第二の臨書式練習過程を表示するステップ、第三の背臨書式練習過程を表示するステップを含んでいる。
図1は、この教育プログラムの基本動作の流れを示すフロー図である。
ここに、第一の模写式練習過程S1では、書道手本の上に練習紙を重ね、書道手本の文字を練習紙上に透かした状態で筆を用いて練習紙になぞって書く手順(模写手順)と、ついで、練習紙に筆で書いた文字と手本の文字とを照合し、一致していない箇所をマーキングする手順(マーキング・チェック手順)が指導者の解説付き動画として表示される。
図8(a)は、第一の模写式練習過程をイメージ的に示している。
また、第二の臨書式練習過程S2では、書道手本を傍らに置き、書道手本の文字を見ながら、筆を用いて練習紙に書道手本の文字を書く手順(臨書手順)と、ついで、練習紙に書いた文字と手本の文字とを照合し、一致していない箇所をマーキングする手順(マーキング・チェック手順)が、指導者の解説付き動画として表示される。
図8(b)は、第二の臨書式練習過程をイメージ的に示している。
最後の第三の背臨書式練習過程S3では、書道手本を見ずに、筆を用いて練習紙に書道手本の文字を書く手順(背臨書手順)と、ついで、練習紙に書いた文字と手本の文字とを照合し、一致していない箇所をマーキングする手順(マーキング・チェック手順)が指導者の解説付き動画として表示される。
図8(c)は、第三の背臨書式練習過程をイメージ的に示している。
以上のような特徴を備えた本発明の書道教育プログラムを繰り返し実行することで、毛筆文字の描画に必要な起筆、送筆、収筆などの用筆に加えて、章法、結体、気脈なども自然にかつ迅速に習得できる。
【0014】
第二の本発明
第一の本発明である書道教育プログラムを、コンピュータで読み取り可能な言語で記録している記録媒体を提案している。
記録媒体としては、CD-ROM、各種のメモリカード、メモリスティック、ビデオ画像の記録媒体の他、公知の種々の記録媒体が使用される。
【0015】
第三の本発明
図2は、本発明の書道学習支援システムの基本構成を示している。
このシステムでは、学習者側には表示部10、入力部11を備えた通信端末Aが設置され、学習サイトにはサーバ装置SAが設置され、両者はインターネットなどの通信回線INを通じて接続されている。
学習者には、学習サイトの運営会社などから書道手本、チェックシートが予め配布されていてもよい。
学習者は、インターネット回線INを通じて学習サイトに設置されたサーバ装置SAにログインすることで、書道手本1の模範毛筆文字に対応して準備された、書道教育プログラムをダウンロードして視聴することで、毛筆文字の描き方のコツが自習できる。
このため、学習サイトに設置されたサーバ装置SAは、予め登録された学習者の通信端末からのログインを許容させるログイン許容手段20と、指導者が解説を付けて実演して教授する、前述した書道教育プログラムを内蔵し、ログインの許容された学習者に対して、通信端末Aには、そのプログラムをダウンロードさせて、プログラムを実行させる書道教育プログラム実行手段21とを備えている。
なお、学習サイトに書道手本選択手段を設けて、学習者が模範毛筆文字を選択することで、その模範毛筆文字に対応した書道教育プログラムを選択的に実行できるようにしてもよい。
【0016】
基本動作及び機能
学習者は、学習サイトにアカウントを開設する。
このアカウントの開設は、学習サイトにアクセスし、必要事項を入力すると仮登録となり、これを運営者が確認し、審査を行うことで本登録となる。
また、アカウント開設は、必要な情報や書類などを郵便や電子メールを使って運営者に送って行ってもよい。
アカウントを開設した学習者には、運営者からログインIDと初期パスワードが発行されるので、それらを用いて学習サイトのサーバ装置SAにログインする(初期ログイン)。
学習者には学習サイトのサーバ装置SAにログインした後、初期パスワードを書き換え変更できるようにして、セキュリティを高めている。
学習者は、通信端末Aを使用して、学習者に割当てられたIDとPWを用いて、学習サイトのサーバ装置SAにログインし、学習サイト上に予め準備されているオンライン書道教室(バーチャル)に入ることで、書道教育サービスを受けることができる。
すなわち、学習者は、学習サイトのオンライン書道教室に入って、前述した書道教育プログラムを、自分の通信端末Aにダウンロードし、その表示部10に表示して視聴できる。
かくして、書道教育プログラムが実行されると、最初に第一の模写式練習過程、ついで第二の臨書式練習過程、最後に第三の背臨書式練習過程が、指導者の解説付き動画として通信端末の表示部10に表示される。
学習者は、この動画を視聴することで、従前では教えられなかった毛筆文字の描き方のコツを体得できる。
この模写式練習過程、臨書式練習過程、背臨書式練習過程については、更に後述する。
【0017】
このような書道学習支援システムの発展型として、学習サイトに、多種類の毛筆文字を記した書道手本と、それらの書道手本の毛筆文字に対応した書道教育プログラムを準備しておけば、学習者は学びたい毛筆文字を選んで、その毛筆文字の起筆、送筆、収筆などのコツを簡単に学び取ることができる。
また、学習者に配布される書道手本は、予め模範となる単独あるいは複数の毛筆文字を特定してあってもよい。
例えば、「永」(永字八法の練習)、三などの漢数字(縦画、横画の練習)大、文(右払いと左払い)、上下(文字の形を意識)、左右(正しい筆順)などを模範文字として書道手本に保存しておけば、毛筆文字の基本的なコツは習得される。
また、学習者が書道手本1、練習紙2、筆3を準備し、書道手本1から所望の毛筆文字を選択して、選択した毛筆文字に対応した書道教育プログラムを視聴しながら、実際に毛筆文字を練習紙2に描き、描いた文字と手本の文字とを対比照合して、違っている箇所をマーキングし、チェックすれば、書道教育プログラムを視聴しながら実技練習を効率よく実施できる。
【0018】
本発明の書道学習支援システムによれば、このようにして、従前では教えられなかった書道のコツが、本発明の書道教育プログラムを視聴することで習得できるので、学習者は単独で短期間に上達することが期待できる。
また、このような書道学習支援システムは、学習サイトの機能を追加、拡張することによって更に発展的に応用できる。例えば、学習サイトでは、書道手本(画像データ)と、書道学習プログラムを組み合わせた特別なカリキュラムを準備して、学習者が初級、中級、上級コースを選択できるようにすれば、段階的に書道のコツが習得できるバーチャルな書道教室が実現できる。
【0019】
第四の本発明
このシステムの基本構成を図3に示す。
学習者の通信端末Aと学習サイトのサーバ装置SBとがインターネットなどの通信回線INを通じて接続され、学習者には通信端末Aの表示部10に教育プログラムを視聴させて、毛筆文字の描き方のコツを習得させた後、その後に書道作品を実際に制作させ、実際に制作した事実を自習実績として記録することで、学習者には、より確実な書道指導が行えるようになっている。
学習者は、通信端末Aで学習サイトのサーバ装置SBにログインし、書道手本の毛筆文字に対応して準備された書道教育プログラムを視聴した後、自分で書道作品を制作し、それを積み重ね記録更新していくことで、書道のコツをより確実に習得できるようになっている。バーチャルな独学者向きの書道教室が実現する。
図3の例では、学習者には、模範となる毛筆文字が記された書道手本1、筆3、チェックシート4を設けているが、チェックシート4については後述するが、このシステムでは、必ずしも必須なものではない。
一方の学習者サイトには、サーバ装置SBを設置している。
ここに、サーバ装置SBは、予め登録された学習者のみのログインを許容させるログイン許容手段20と、ログインを許容した学習者の通信端末Aに対して、学習者による書道手本の選択を受付けて、学習者が選択した書道手本に掲載された模範文字に応じて、予め準備している書道教育プログラムを学習者の通信端末Aにダウンロードさせて、そのプログラムを実行する書道教育プログラム実行手段21と、学習者の書道作品記録ファイルを備え、学習者による前記書道教育プログラムの視聴完了を判別して、前記書道作品記録ファイルに書道作品の制作事実を記録更新する学習者書道教育記録手段22とを備えている。
【0020】
図4は、第四の本発明の基本的な動作を示すフローチャートであり、このフローチャートを参照しながら、基本機能を説明する。
ステップ100では、学習者がサーバ装置SBにログインする。ステップ101で、学習者が書道手本から手本となる毛筆文字を選択すると、学習者の通信端末Aには、学習者が選んだ毛筆文字に対応して予め準備されている書道教育プログラムがダウンロードされ、学習者の通信端末Aの表示部10に動画が表示される。
この結果、学習者は、選択した手本の毛筆文字に対応して、予め準備された書道教育プログラム、つまり模写式練習過程、臨書式練習過程、背臨書式練習過程について、指導者による解説付き、実演動画が視聴できるので、毛筆文字の描き方のコツを掴むことができる。
かくして、学習者が書道教育プログラムの模写式練習過程、臨書式練習過程、背臨書式練習過程を一通り視聴すると、サーバ装置SBは視聴完了を判別して、学習者に書道作品を制作するように指示を与える。学習者は、この指示に従って、視聴した書道教育プログラムに従って、実際に筆を用いて練習紙に毛筆文字を描いて作成を仕上げ、それが終了すると、書道作品の制作を完了したことをサーバ装置SBに通知する。
サーバ装置SBによる学習者への書道作品の制作指示は、学習者の通信端末Aの表示部10に文字でメッセージを表示したり、音声で指示するなどの方法で行えばよい。
サーバ装置SBが学習者から書道作品の制作完了の通知を受けると、学習者書道教育記録手段22は、この事実を書道作品記録ファイルに記録する。
書道作品記録ファイルには、書道作品を制作した年月日、時刻などの書誌的情報が、学習者がアップロードした制作した書道作品の画像とともに記録される。
【0021】
第四の本発明によれば、このような方法で書道教育プログラムを視聴して毛筆文字の描画のコツを掴みながら、自分で書道作品を制作し、その記録を蓄積できる。
ついで、チェックシートについて説明する。
図5には、チェックシートの一例として、「お」の文字に対応したものが示されている。この例では、「お」の文字について、起筆、送筆、収筆などの評価ポイントとなるべき箇所、つまり、文字の大きさ、上下の上げ下げ、左右の払いや、バランスを保つべき箇所には破線を記している。このようなチェックシートがあれば、初心の学習者でも毛筆文字を描く際に重要なポイントが模範文字毎に示され、チェックすべき重要な箇所が視覚で把握でき、利便である。
また、このシステムでは、学習者が書道教育プログラムが実行され、模写、臨書、背臨書の過程を動画で視聴しているときに、並行して毛筆文字を描き、描いた毛筆文字のマーキング・チェックを行えば、学習者が毛筆文字の書き方のコツが視覚(脳)だけでなく、手や指を使って覚えることで、一層迅速に把握できる。
【0022】
ついで、学習者が準備する書道練習具について説明する。
図6は練習具の組合わせ構成を示している。
1は書道手本、2は練習紙、3は筆、4は書道手本解説である。
ここに、書道手本1は、練習の対象となる毛筆文字の模範文字を掲載している。
毛筆文字は、楷書、行書、草書、隷書、篆書など文字の形態は問わないが、成語や四字熟語などであれば、その意味や歴史的知識も同時に学べるので望ましい。
また、練習紙2は、書道手本1の上に重ね合わせたときに、書道手本1に記された毛筆文字が透視できるものであれば、色や厚み、素材は問わない。
3は毛筆であり、通常に市販されているものが使用できる。
更に書道手本解説4は、毛筆文字の特徴、毛筆文字を描画する際に注目すべき箇所が説明されているので、マーキング・チェック作業時などに参照される。
【0023】
ここに書道手本解説4について説明する。
図7(a)、(b)は、書道手本解説の一ページを示している。
このページには、「永字八法」と呼ばれる、一文字で毛筆の8つの技法が習得できる「永」の文字が解説されている。この「永」は、「側」、「勒」、「努」、「▲テキ▼」、「策」、「掠」、「啄」、「磔」の8部位に区分されているとの説明がなされている。
また、「永字八法解説」が記載されたページには、「永」を毛筆で書く場合に8つの部位において注意すべき点、「側」、「勒」、「努」、「▲テキ▼」、「策」、「掠」、「啄」、「磔」のそれぞれにおいて、各部位の名称、意義、筆の使い方が明示されている。
したがって、このような書道手本解説を参照すれば、「側」、「勒」、「努」、「▲テキ▼」、「策」、「掠」、「啄」、「磔」の8部位を筆で書く際の注意点が一目瞭然と理解できる。
このような書道手本解説は、ビデオ動画として、インターネットの所定サイトにログインしたときに視聴できるもので代替してもよい。
そのようなものでは、書物を読み込む場合に比べて、視覚と聴覚の双方で確認できるので一層理解が容易になる。
また、このような動画を用いる場合は、学習サイト側も書道手本解説を準備する必要がないので、すこぶる便利である。
このような書道手本解説があれば、初心者でも書道の正しい書き方をより早く習得することができる。
【0024】
ついで、図8を参照して、第一の模写式練習過程、第二の臨書式練習過程、第三の背臨書式練習過程を説明する。
これらの練習過程は、書道教育プログラムでは、コンピュータが図8(a)~(c)に示したようなイメージの動画が時系列的に表示されるが、書道教本では、第一の模写式練習過程の説明欄、第二の臨書式練習過程の説明欄、第三の背臨書式練習過程の説明欄をコンテンツとして含んで編集される。
その編集形態は解説図、文章を含んでいたり、種々のパターンがある。
【0025】
図8(a)~(c)を参照して、それぞれの練習過程をより具体的に説明すると、第一の模写式練習過程では、図8(a)に示すように、書道手本1のうちで練習対象となる毛筆文字を記載しているページを開き、その上に練習紙2を重ねる。図例では、手本となる毛筆文字は四字熟語の「永久不変」が記されている。
練習紙2は透視性があるので、書道手本1に書かれた模範文字11、「永久不変」を練習紙2上に透かした状態にして、筆3を用いて慎重になぞって文字23を書く(模写手順)。
模写が終わったら、書道手本1に練習紙2を重ね合わせ、模写した文字23と手本の模範文字11とを照合して、ずれている箇所や一致していない箇所があれば、それらをマーキングする(マーキング・チェック手順)。
マーキング照合作業では、筆3を用いて描いた文字23と、書道手本1に記されている模範文字11とを比較し、ずれている箇所を見つけ出して、そこにマーキングして連続番号を記入する。
マーキング・チェック手順では、「永」を模写した場合に、ズレしている箇所に朱でマーキングし、それらの箇所に(1)、(2)、(3)・・・などの連続番号を付している。
次の第二の臨書式練習過程では、8(b)に示すように、書道手本1を傍らに置いた状態にして、書道手本1に記載されている模範文字11「永久不変」を見ながら、筆3を用いて練習紙2に「永久不変」の文字23を書く(臨書)、ついで、第一の模写式練習過程と同じようにマーキング・チェックを行う。すなわち、練習紙2に書いた文字23と手本の模範文字11とを照合し、一致していない箇所にマーキングして、連続番号(1)、(2)、(3)・・・を記す。
そして、最後の第三の背臨書式練習過程では、図8(c)に示すように、書道手本1を閉じるか、裏返しにして見えない状態にしてから、書道手本1に記されていた模範文字11「永久不変」を思い出しながら、筆3を用いて練習紙2に文字23を書く(以上を「背臨書」という)。
ついで、マーキング照合(チェック)を行う。すなわち、練習紙2を書道手本1に重ねて、両者の文字23、11を対比照合し、一致していない箇所にマーキングして連続番号(1)、(2)、(3)・・・を記す。
【0026】
本発明の書道教育プログラムでは、以上のような3つの練習過程において模写、臨書、背臨書を行う際に、必ずマーキング・チェック作業を行っているので、その都度、視覚だけでなく、手、指を使って自分の書いた文字23と、手本の模範文字11との違いを把握して、脳に覚えさせることが出来る。したがって、初心者であっても短期間のうちに自然と正確な筆使いが出来、美しい毛筆文字が書けるようになる。
本発明では、以上に説明したように、第一の模写式練習過程、第二の臨書式練習過程、第三の背臨書式練習過程の3段階の練習過程を組み合わせたことを特徴としているが、それぞれの練習過程における模写、臨書、背臨書、マーキング照合作業は、数回繰り返して行ってもよい。
【0027】
三三式書道練習法の実施例
本発明者は、第一の模写式練習過程において、模写3回、マーキング・チェック作業3回、第二の臨書式練習過程において、臨書3回、マーキング・チェック作業3回、第三の背臨書式練習過程において、背臨書3回、マーキング・チェック作業3回行えば、初心者でも最も無理なく、かつ習得効果が高いことが、実際の学習者に習得させて実証され、この事実をもって本発明者は、これを、三三式書道練習法と命名した。
したがって、本発明者が提案するベストモードの書道教育プログラムや書道教本には、この三三式書道練習法が取り込まれている。そこで、以下では、この「三三式」書道練習法を説明する。
【0028】
図9図10は、「三三式」書道練習法を示している。
この練習法では、模写練習過程を3回、臨書練習過程を3回、背臨書練習過程を3回繰り返すことで実行され、図9はそれぞれの過程におけるイメージを示している。
すなわち、この練習方法では、書道手本の上に練習用紙(例えば、半紙)を重ねて引き写す「模写」(認知)。次に書道手本を練習用紙の傍らに置いて書き写す「臨書」(認識)。最後に書道手本を閉じ、記憶をたどりながら自力で書く「背臨」(審美)の三段階を、それぞれ三回、繰り返す。
教室で学ぶ伝統的な練習法は、生徒の提出する課題に朱を入れ、アドバイスを加えるマンツ-マン形式が主流であるが、生徒一人一人の能力には個人差がある。
そのため指導者に求められる指導法も、生徒のレベルに応じた内容が求められるが、興味と能力のある生徒にとっては、画一化された指導法は退屈さを感じさせる一方で、普通の生徒や関心のない生徒にとっては、指導者が求めるハードルはあまりにも高く、ついて行けない生徒が増える。
したがって、教育現場では、両者の要求をバランス良く配分することが必要であるが、このような問題に対して、授業を楽しく進める指導者は残念ながら殆どいない。
しかしながら、こうした書写書道教育の現状を、そのまま放置していては、日中両国が共有する伝統文化の精華である書道は、初等教育の段階から、その耀きを失い、次第に薄れて行く恐れは否定できず、これは由々しき問題であり、大きな文化的損失となる。
【0029】
こうした課題を解決するために、本発明者は、長年の経験上で知得した書道の教育手法を、IT技術と組み合わせて完成させて本発明を提案しているが、この根底には、ここに開示する「三三式」書道練習法が存在している。
この「三三式」書道練習方法は、基本的には先に紹介した三段階を反復練習するものであるが、最大の特色は、指導者が各段階における練習結果を毎回チェックし、朱を入れて添削するのではなく、学習者が自身で描いた毛筆文字を、書道手本の毛筆文字と対比照合し、異なる部分を自分の目で確認した上でマーキングする。
このマーキングは、各段階を経るごとに、順番に番号を付して行う必要があるが、これを行うことで、同じ誤りを繰り返すことなく、自分の弱点や、勉強の進み具合が一目瞭然となる。また、この作業を三回ずつ繰り返すことで、毛筆技能は短時間に、効率よく向上することが出来る。これは、本発明者が主宰する書道教室において実証済であり、指導者にとっても、説明や添削が省ける分、指導の負担が軽減される利点がある。
「三三式」書道練習法は、このようなアプローチで書道教育の手法を刷新するものであり、その骨子は、学習者の視覚だけでなく、指、手と用いて、脳にコツを覚えさせることで、学習者に無理なく働きかけを行うものである。
このような「三三式」書道練習法は、様々な実践を経て作られた新式の書道教育法であり、学習者の潜在意識に無理なく働きかけを行うことから、教育心理学によっても裏付けされるものでもある。
【0030】
日本も中国も、古くからの書道勉強法は長い年月に渡る稽古、訓練や練習を受けないと、ある書体の学びが成熟されることはなく、勉強の周期も長く、効果が出るまでが遅い。つまり書道には、「書道とはどういうものか」という認知から、「書を書く」という審美眼が養われるまでには相当な時間がかかるという印象がずっと残されている。
三三式の原理は、このような古典的な書道を打ち破り、短時間で大量の標記訓練法を使って、模写式で認知を構築する、臨書式で認識を深める、背臨書式で審美眼を養うという流れで、練習者を効率的に書道の道に進めること、つまり速攻入門法を提案するものである。
ここで、認知とは心理学の概念で、人間などが外界にある対象を知覚した上で、それが何であるかを判断したり解釈したりする過程のことを意味する。また、認識とは主観が対象を明確に把握することを意味し、審美とは美の本質・現象を研究する能力を意味する。
ある芸術を身に付けるには、基本的に認知する→認識を深める→審美眼を養う、という過程がなければならない。
中国の古典書道はなぜ難しいと思われているかというと、勉強の周期が長い、かつ神秘的な気質があることから、勉強に取り組む以前から学習者を退縮させていたことに起因しているが、三三式書道練習法の模写式、臨書式、背臨書式過程はこの三つの課題を解決し得た科学的な練習方法であり、書道練習の素人を一か月で創作ができる程度にまで上達させる可能性がある。
図10は、三三式書道練習方法を文章で説明している。この図を参照して、更に具体的に説明する。
【0031】
ステップ1 模写式練習過程
書道手本は、国の言葉、文化も同時に学ぶことができる。四字熟語か成語の毛筆が記されたものが望ましい。書道手本を墨で汚さないよう、開いた頁を透明なフィルムなどで覆うことが望ましい。
まず、書道手本の練習しようとする頁を開き、その上に練習用紙を重ね、慎重に写し取る。
写し終えたら、模写した毛筆文字を書道手本の毛筆文字に重ね合わせ、ずれているところがあればそこにマークを入れる。
マークは40ヵ所程度を目標にして、細心の注意を払って記入する。40ヵ所は多過ぎると思われるかもしれませんが、長年にわたる研究、実験の結果、このレベルの検証が最高の結果を残している。
なおマークキングは、鉛筆など簡単に修正できる筆記具を準備することが望ましい。そして、この練習方法では、各過程を必ず三回繰り返し、マーキングには訂正した順番も必ず付記することが肝要である。そうすることで、同じミスを繰り返す頻度が減り、各書体についてどこが間違えやすいかなど自分の癖を知る事ができる。
同じ作業を三回繰り返す理由は、一回だけではとても覚えきれないからである。しかし三回以上繰り返すとなれば、集中力、持続力が共に失せ、練習の効果も低下する。
【0032】
ステップ2 臨書式練習過程
次に上記の手本を練習用紙のかたわらに置いて、普段の練習と同じように臨書する。ここで注意したいのは、模写式過程でマークしたところが、臨書式過程の段階において誤りなく訂正されているかを確認することが肝要である。このポイントを把握して臨書することが、これから先の創作へと向かう道筋を大きく左右する。そして模写式過程の場合と同様に、手本の毛筆と臨書した毛筆とを対比照合して、ずれている部分にマークを入れる。
模写式練習と同様、40ヵ所以上を目標にして、ズレを見つけ、これも三回繰り返す。
【0033】
ステップ3 背臨書式練習過程
手本を閉じ、自分の記憶をくまなく辿りながら背臨に挑戦する。模写式、臨書式とは比較にならないほど難しい作業になるが、これまでの練習の不備な点を、身をもって再確認する大切なプロセスでもある。さらにこれから向かおうとする創作への道筋も、この「背臨書式過程」を通して実現できる。そのため、各ステップを追って明記したマークが、この段階においてその真価を発揮することになり、背臨書を通して自分では気づかない癖や、我流に堕した筆さばきなどを、文字通り身をもって把握できる。
「継続は力なり」、どこがずれているかをマークする地道な努力によって、学習者の創作への道が大きく切り開かれるので、これまでの勉強の成果を試す意気込みで挑戦すべきである。
以上に詳述した「三三式書道練習法」によれば、特に、書道学習において、以下のような特段の効果が期待できる。
1)特製の習字手本を準備すれば、学習者は、書体の点、横、払い等の用筆、長短、左右、気脈等の結体を一つずつ訂正練習をして、速く上達できる。
2)単独の部門に対して、訂正練習を繰り返しているうちに、学習者は被動的な姿勢から主動的な姿勢になって、書体の特色を考え、記憶を深めることができる。
3) 科学的な練習方法を通して、学生に古典書道への恐怖を崩壊させるので、中国伝統文化に馴染みを持たせることができ、現代社会の早いペースにおいても、迅速に書道の興味を発起させ、古典文化に一層認識をもつことができる。
4)三三式は教育法というより、勉強の方法論である。
本発明者によれば、三千人以上の学生に実験した結果により、三回繰り返しと一字にマークのつけ数を五十回程度にする手法が最も効果があることを実証できた。したがって、古典書道の勉強方法論の改善は千年以来、歴代の書道家も求めてきた課題が、この三三式練習法で解決できたものと信じている。
【0034】
最後に、「お」を模範毛筆文字として、図11図15を参照しながら、模写、臨書、背臨書練習過程を更に具体的に説明する。
例として、書道手本には「お年玉」を使用している。
1は書道手本、13は文鎮、14は硯である。
お年玉と記された書道手本1に記された「お年玉」の文字から、「お」、「年」、「玉」の文字を部分コピーして、模写、臨書、背臨書の対象となる模範文字1a~1cを準備する。
図12は書道手本1の部分コピー、「お」を記した手本1aの上に練習紙2を被せ、その状態で筆3を用いて「お」を模写する手順を示しており、図13は、マーキング・チェックの手順、模写した文字23に対して模範文字1aとの差異、はみ出し、ズレなどを見つけ出して、マーキングし、記号を付ける手順を示している。
図例では、(1)~(40)の箇所が記されているが、本発明者によれば、この程度の数字が、この練習方法では効果があり、望ましいとの実証を得ている。
【0035】
図14は、模写で用いた「お」の模範文字を、傍らにおいて、練習紙2に書き移す臨書の手順を示しており、図15は、同じ「お」の模範文字を見ない状態で、練習紙2に書き移す背臨書の手順を示している。
臨書、背臨書において、筆を使用して、練習紙に描いた文字23は、模写時と同じようにマーキング・チェックされる。
「お」の文字について、このような手順で、模写、臨書、背臨書による一連の練習過程
が終了すれば、「年」、「玉」についても、同じように模写、臨書、背臨書による一連の練習過程を行うことで、学習者は、書道のコツが掴める。
【符号の説明】
【0036】
1・・・書道手本
11・・・模範文字
2・・・練習紙
23・・・毛筆文字
3・・・筆
4・・・チェックシート
5・・・書道手本解説
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【手続補正書】
【提出日】2023-02-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
学習者に毛筆文字の描き方のコツを教授するために、コンピュータに実行させる教育プログラムであって、
第一の模写式練習過程を表示するステップと、第二の臨書式練習過程を表示するステップと、第三の背臨書式練習過程を表示するステップとを備え、
第一の模写式練習過程を表示するステップでは、
書道手本の上に練習紙を重ね、書道手本の文字を練習紙上に透かした状態で、筆を用いて練習紙になぞって書く手順と、
ついで、練習紙に筆で書いた文字と手本の文字とを照合し、一致していない箇所をマーキングする手順とを指導者が解説を付けて実演して教授する動画として表示する、
第二の臨書式練習過程を表示するステップでは、
書道手本を傍らに置き、書道手本の文字を見ながら、筆を用いて練習紙に書道手本の文字を書く手順と、ついで、練習紙に書いた文字と手本の文字とを照合し、一致していない箇所をマーキングする手順とを指導者が解説を付けて実演して教授する動画として表示する、
第三の背臨書式練習過程を表示するステップでは、
書道手本を見ずに、筆を用いて練習紙に書道手本の文字を書く手順と、ついで、練習紙に書いた文字と手本の文字とを照合し、一致していない箇所をマーキングする手順とを指導者が解説を付けて実演して教授する動画として表示することを特徴としている、書道教育プログラム。
【請求項2】
請求項1において、
前記書道教育プログラムが、前記第一の模写式練習過程を3回、ついで前記第二の臨書式練習過程を3回、最後に前記背臨書式練習過程を3回繰り返すことで定義される、三三式書道練習法の手順に従って実行されるものである、書道教育プログラム。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記書道教育プログラムを、コンピュータで読み取り可能な言語で記録している記録媒体。
【請求項4】
学習者の通信端末と、学習サイトを双方向通信回線を通じて接続して構成される、書道学習支援システムであって、
前記学習サイトには、サーバ装置が設置されており、
このサーバ装置は、
予め登録された学習者の通信端末からのログインを許容させるログイン許容手段と、
書道教育プログラムを内蔵し、ログインの許容された学習者の通信端末には、そのプログラムをダウンロードさせて、プログラムの実行を許容させる書道教育プログラム実行手段とを備え、
この書道教育プログラムは、予め準備された書道手本に対応させて保存している、請求項1に記載の第一の転写式練習過程、請求項1に記載の第二の臨書式練習過程、請求項1に記載の第三の背臨書式練習過程を時系列に動画として再生表示する構成としている、書道学習支援システム。
【請求項5】
請求項4において、
前記書道教育プログラムが、請求項2において定義されている三三式書道練習法の手順に従って実行されるものである、書道学習支援システム。
【請求項6】
毛筆文字の描き方のコツを解説するコンテンツを含んで編集された書道教本であって、
転写を中心とした第一の模写式練習過程の説明欄、
臨書を中心とした第二の臨書式練習過程の説明欄、
背臨書を中心とした第三の背臨書式練習過程の説明欄を、コンテンツに備え、
前記第一の模写式練習過程の説明欄では、書道手本の上に練習紙を重ね、書道手本の文字を練習紙上に透かした状態で、筆を用いて練習紙になぞって書く手順と、練習紙に筆で書いた文字と手本の文字とを照合し、一致していない箇所をマーキング・チェックする手順とが解説図及び/又は説明文を用いて掲載されており、
前記第二の臨書式練習過程の説明欄では、書道手本を傍らに置き、書道手本の文字を見ながら、筆を用いて練習紙に書道手本の文字を書く手順と、練習紙に書いた文字と手本の文字とを照合し、一致していない箇所をマーキング・チェックする手順とが解説図及び/又は説明文を用いて掲載されており、
前記第三の背臨書式練習過程の説明欄では、書道手本を見ずに、筆を用いて練習紙に書道手本の文字を書く手順と、ついで、練習紙に書いた文字と手本の文字とを照合し、一致していない箇所をマーキングする手順とが解説図及び/又は説明文を用いて掲載されていることを特徴とする、書道教本。
【請求項7】
請求項6において、
前記第一の模写式練習過程、前記第二の臨書式練習過程、前記第三の背臨書式練習過程は、前記請求項2において定義された、三三式書道練習法の手順に従って掲載されている、書道教本。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
以下、本発明者が提案する新規な発明を説明する。
第一の本発明は、新規な書道教育プログラムに関する。
このプログラムは、学習者に、模写、臨書、背臨書の練習過程の動画を視聴させ、毛筆文字の描き方のコツを教授するものである。
このプログラムは、第一の模写式練習過程を表示するステップ、第二の臨書式練習過程を表示するステップ、第三の背臨書式練習過程を表示するステップを含んでいる。
ここに、第一の模写式練習過程では、書道手本の上に練習紙を重ね、書道手本の文字を練習紙上に透かした状態で筆を用いて練習紙になぞって書く手順(模写手順)と、ついで、練習紙に筆で書いた文字と手本の文字とを照合し、一致していない箇所をマーキングする手順(マーキング・チェック手順)とが指導者が解説を付けて実演して教授する動画として表示される。
また、第二の臨書式練習過程では、書道手本を傍らに置き、書道手本の文字を見ながら、筆を用いて練習紙に書道手本の文字を書く手順(臨書手順)と、ついで、練習紙に書いた文字と手本の文字とを照合し、一致していない箇所をマーキングする手順(マーキング・チェック手順)とが指導者が解説を付けて実演して教授する動画として表示される。
更に、第三の背臨書式練習過程では、書道手本を見ずに、筆を用いて練習紙に書道手本の文字を書く手順(背臨書手順)と、ついで、練習紙に書いた文字と手本の文字とを照合し、一致していない箇所をマーキングする手順(マーキング・チェック手順)とが指導者が解説を付けて実演して教授する動画として表示される構成になっている(請求項1)。
また、この発明のベストモードとして、三三式書道練習法の手順に従って作成された書道教育プログラムが請求項2において提案されている。
ここに、三三式書道練習法は、前記第一の模写式練習過程を3回、ついで前記第二の臨書式練習過程を3回、最後に前記背臨書式練習過程を3回繰り返すことで定義される。

【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
第四の本発明は、毛筆文字の描き方のコツを解説するコンテンツを含んで編集された書道教本である。
この教本は、模写を中心とした第一の模写式練習過程の説明欄、臨書を中心とした第二の臨書式練習過程の説明欄、背臨書を中心とした第三の背臨書式練習過程の説明欄を、コンテンツに備えており、第一の模写式練習過程の説明欄では、書道手本の上に練習紙を重ね、書道手本の文字を練習紙上に透かした状態で、筆を用いて練習紙になぞって書く手順と、練習紙に筆で書いた文字と手本の文字とを照合し、一致していない箇所をマーキング・チェックする手順とが解説図及び/又は説明文を用いて掲載されており、第二の臨書式練習過程の説明欄では、書道手本を傍らに置き、書道手本の文字を見ながら、筆を用いて練習紙に書道手本の文字を書く手順と、練習紙に書いた文字と手本の文字とを照合し、一致していない箇所をマーキング・チェックする手順とが解説図及び/又は説明文を用いて掲載されており、第三の背臨書式練習過程の説明欄では、書道手本を見ずに、筆を用いて練習紙に書道手本の文字を書く手順と、ついで、練習紙に書いた文字と手本の文字とを照合し、一致していない箇所をマーキングする手順とが解説図及び/又は説明文を用いて掲載されている(請求項6)
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
また、このベストモードとして、第一の模写式練習過程の説明欄、臨書を中心とした第二の臨書式練習過程の説明欄、背臨書を中心とした第三の背臨書式練習過程を、いずれも前述した三三式書道練習法の手順に従って掲載した、書道教本を請求項7において提案している。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
第一の本発明の書道教育プログラムによれば、第一の模写式練習過程、ついで第二の臨書式練習過程、最後に第三の背臨書式練習過程のいずれもが、指導者が解説を付けて実演する動画となっているので、先生などから指導や添削を受けなくても、学習者が独学で練習ができるので、書道教育のハードルを著しく下げて、初心者でも効率良く書道のコツが習得できる。
この教育プログラムでは、学習者の視覚だけでなく、手や指などの動作を加えて手本との違いを知ることを指導者が解説を加えて動画で教授するので、脳に無理なくコツを覚えさせて、学習者の潜在意識に無理なく働きかけることが出来る。
第二の本発明は、第一の本発明である書道教育プログラムを、コンピュータで読み取り可能な言語で記録した記録媒体であり、CD-ROM、各種のメモリカード、メモリスティック、ビデオ画像の記録媒体の他、公知の記録媒体の形態で使用できる。
第三の本発明は、第一の本発明の本発明書道教育プログラムをインターネットなどの双方向通信回線を用いて構築でき、学習者は、学習サイトにログインして書道学習プログラムを視聴することで、書道のコツが習得させることができる
第四の本発明は、第一の模写式練習過程、第二の臨書式練習過程、最第三の背臨書式練習過程をまとめた書道教本として広く、学習者に教えることができる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
図1】第一の本発明の書道教育プログラムの流れを説明するフローチャート。
図2】第三の本発明の基本構成を示すシステム構成図。
図3書道作品の制作支援システム構成図。
図4書道作品の制作支援システムの基本動作を示すフローチャート。
図5】チェックシートの一例を示す説明図。
図6】学習者が独習する際に必要な学習用ツールを説明する図。
図7】書道手本解説を説明する図であり、(a)は「永」の構成を示す図、(b)は永字八法の解説図。
図8】(a)、(b)、(c)は模写式練習過程、臨書式練習過程、背臨書式練習過程の要領をイメージ的に示す説明図である。
図9】三三式書道練習方法をイメージ的に説明する図。
図10】三三式書道練習方法を文字で説明する図。
図11】書道手本に記された「お年玉」の模範文字と、練習時に模範文字を「お」、「年」、「玉」の1文字に分解して使用される手本文字を示す図。
図12】模写の手順を示す説明図。
図13】模写練習過程時におけるマーキング・チェック手順の説明図。
図14】臨書練習過程の手順を示す説明面。
図15】背臨書練習過程の手順を示す説明図。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
第三の本発明の書道学習支援システムによれば、このようにして、従前では教えられなった書道のコツが、インターネット回線などの双方向通信回線を通じて本発明の書道教育プログラムを視聴することで習得できるので、学習者は単独で短期間に上達することが期待できる。
また、このような書道学習支援システムは、学習サイトの機能を追加、拡張することによって更に発展的に応用できる。例えば、学習サイトでは、書道手本(画像データ)と、書道学習プログラムを組み合わせた特別なカリキュラムを準備して、学習者が初級、中級、上級コースを選択できるようにすれば、段階的に書道のコツが習得できるバーチャルな書道教室が実現できる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
図3は、書道教育プログラムを用いた書道作品の制作支援システムの基本構成を示す
このシステムでは、学習者の通信端末Aと学習サイトのサーバ装置SBとがインターネットなどの通信回線INを通じて接続され、学習者には通信端末Aの表示部10に教育プログラムを視聴させて、毛筆文字の描き方のコツを習得させた後、その後に書道作品を実際に制作させ、実際に制作した事実を自習実績として記録することで、学習者には、より確実な書道指導が行えるようになっている。
図3に示すシステムでは、学習者は、通信端末Aで学習サイトのサーバ装置SBにログインし、書道手本の毛筆文字に対応して準備された書道教育プログラムを視聴した後、自分で書道作品を制作し、それを積み重ね記録更新していくことで、書道のコツをより確実に習得できるようになっている。バーチャルな独学者向きの書道教室が実現する。
また、図3の例では、学習者には、模範となる毛筆文字が記された書道手本1、筆3、チェックシート4を設けているが、チェックシート4については後述するが、このシステムでは、必ずしも必須なものではない。
一方の学習者サイトには、サーバ装置SBを設置している。
ここに、サーバ装置SBは、予め登録された学習者のみのログインを許容させるログイン許容手段20と、ログインを許容した学習者の通信端末Aに対して、学習者による書道手本の選択を受付けて、学習者が選択した書道手本に掲載された模範文字に応じて、予め準備している書道教育プログラムを学習者の通信端末Aにダウンロードさせて、そのプログラムを実行する書道教育プログラム実行手段21と、学習者の書道作品記録ファイルを備え、学習者による前記書道教育プログラムの視聴完了を判別して、前記書道作品記録ファイルに書道作品の制作事実を記録更新する学習者書道教育記録手段22とを備えている。
このシステムは、学習者の通信端末と学習サイトとをインターネットなどの通信回線を通じて接続して構成されており、模範となる毛筆文字が記され、学習者用に配布される書道手本と、学習者サイトに設置されたサーバ装置とを備えている。
ここに、サーバ装置は、予め登録された学習者のみのログインを許容させるログイン許容手段と、ログインを許容した学習者の通信端末に対して、学習者による書道手本の選択を受付けて、学習者が選択した書道手本に応じて、予め保存している書道教育プログラムを学習者の通信端末にダウンロードさせて、そのプログラムを実行する書道教育プログラム実行手段と、学習者の書道作品記録ファイルを備え、学習者による前記書道教育プログラムの視聴完了を判別して、前記書道作品記録ファイルに書道作品の制作事実を記録更新する学習者書道教育記録手段とを備えた点を特徴としている。
このシステムに書道作品のチェックシートを更に備えた構成にしてもよく、このチェックシートは、書道手本に記された模範となる毛筆文字に対応して、起筆、送筆、収筆などの評価ポイントを予め記した構成にしてもよい。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
図4は、書道作品の制作支援システムの基本的な動作を示すフローチャートであり、このフローチャートを参照しながら、基本機能を説明する。
ステップ100では、学習者がサーバ装置SBにログインする。ステップ101で、学習者が書道手本から手本となる毛筆文字を選択すると、学習者の通信端末Aには、学習者が選んだ毛筆文字に対応して予め準備されている書道教育プログラムがダウンロードされ、学習者の通信端末Aの表示部10に動画が表示される。
この結果、学習者は、選択した手本の毛筆文字に対応して、予め準備された書道教育プログラム、つまり転写式練習過程、臨書式練習過程、背臨書式練習過程について、指導者による解説付き、実演動画が視聴できるので、毛筆文字の描き方のコツを掴むことができる。
かくして、学習者が書道教育プログラムの転写式練習過程、臨書式練習過程、背臨書式練習過程を一通り視聴すると、サーバ装置SBは視聴完了を判別して、学習者に書道作品を制作するように指示を与える。学習者は、この指示に従って、視聴した書道教育プログラムに従って、実際に筆を用いて練習紙に毛筆文字を描いて作成を仕上げ、それが終了すると、書道作品の制作を完了したことをサーバ装置SBに通知する。
サーバ装置SBによる学習者への書道作品の制作指示は、学習者の通信端末Aの表示部10に文字でメッセージを表示したり、音声で指示するなどの方法で行えばよい。
サーバ装置SBが学習者から書道作品の制作完了の通知を受けると、学習者書道教育記録手段22は、この事実を書道作品記録ファイルに記録する。
書道作品記録ファイルには、書道作品を制作した年月日、時刻などの書誌的情報が、学習者がアップロードした制作した書道作品の画像とともに記録される。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
学習者に毛筆文字の描き方のコツを教授するために、コンピュータに実行させる教育プログラムであって、
第一の模写式練習過程を表示するステップと、第二の臨書式練習過程を表示するステップと、第三の背臨書式練習過程を表示するステップとを備え、
第一の模写式練習過程を表示するステップでは、
書道手本の上に練習紙を重ね、書道手本の文字を練習紙上に透かした状態で、筆を用いて練習紙になぞって書く手順と、
ついで、練習紙に筆で書いた文字と手本の文字とを照合し、一致していない箇所にマーキングし、連続番号を記す手順とを指導者が解説を付けて実演して教授する動画として表示する、
第二の臨書式練習過程を表示するステップでは、
書道手本を傍らに置き、書道手本の文字を見ながら、筆を用いて練習紙に書道手本の文字を書く手順と、ついで、練習紙に書いた文字と手本の文字とを照合し、一致していない箇所にマーキングし、連続番号を記す手順とを指導者が解説を付けて実演して教授する動画として表示する、
第三の背臨書式練習過程を表示するステップでは、
書道手本を見ずに、筆を用いて練習紙に書道手本の文字を書く手順と、ついで、練習紙に書いた文字と手本の文字とを照合し、一致していない箇所をマーキングし、連続番号を記す手順とを指導者が解説を付けて実演して教授する動画として表示することを特徴としている、書道教育プログラム。
【請求項2】
請求項1において、
前記書道教育プログラムは、前記第一の模写式練習過程を3回、ついで前記第二の臨書式練習過程を3回、最後に前記背臨書式練習過程を3回繰り返すことを特徴とする、書道教育プログラム。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記書道教育プログラムを、コンピュータで読み取り可能な言語で記録している記録媒体。
【請求項4】
学習者の通信端末と、学習サイトを双方向通信回線を通じて接続して構成される、書道学習支援システムであって、
前記学習サイトには、サーバ装置が設置されており、
このサーバ装置は、
予め登録された学習者の通信端末からのログインを許容させるログイン許容手段と、
書道教育プログラムを内蔵し、ログインの許容された学習者の通信端末には、そのプログラムをダウンロードさせて、プログラムの実行を許容させる書道教育プログラム実行手段とを備え、
この書道教育プログラムは、予め準備された書道手本に対応させて保存されており、
次の第一の転写式練習過程、第二の臨書式練習過程、第三の背臨書式練習過程
つまり、
a)第一の模写式練習過程
書道手本の上に練習紙を重ね、書道手本の文字を練習紙上に透かした状態で、筆を用いて練習紙になぞって書く手順と、
ついで、練習紙に筆で書いた文字と手本の文字とを照合し、一致していない箇所にマーキングし、連続番号を記す手順とを指導者が解説を付けて実演して教授する動画として表示するステップを実行する、
b)第二の臨書式練習過程
書道手本を傍らに置き、書道手本の文字を見ながら、筆を用いて練習紙に書道手本の文字を書く手順と、
ついで、練習紙に書いた文字と手本の文字とを照合し、一致していない箇所にマーキングし、連続番号を記す手順とを指導者が解説を付けて実演して教授する動画として表示するステップを実行する、
c)第三の背臨書式練習過程
書道手本を見ずに、筆を用いて練習紙に書道手本の文字を書く手順と、ついで、練習紙に書いた文字と手本の文字とを照合し、一致していない箇所をマーキングし、連続番号を記す手順とを指導者が解説を付けて実演して教授する動画として表示するステップを実行する、
を時系列に動画として再生表示することを特徴とする書道学習支援システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、初心者でも独学で短期間に毛筆文字の描画のコツが習得できる新規な書道教育プログラム、これを活用した書道支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
書道は文字の特徴と漢字に含まれる意味、その書体の用筆、結体と章法を活かし、そこに美が含まれた芸術の形である。
漢字書道は毛筆で漢字を書き、審美の歴史が長い芸術形式であり、中国の長きにわたった伝統文化芸術の中でも一番のシンボルリックなものと言える。
また、書道には「無言の詩、無行の踊り、無図の絵、無声の楽」の美称がある。
伝統的な書道練習の教育法は、生徒が書いた作品に対して指導者が添削や講義を行い、生徒が再び、指導者の講義を聞いて何度も作品を制作して練習する形で行われているのが通例である。
しかしながら、こういう教育法は書道の学習者の個人能力に対する要求が高いのみならず、毎回の練習も指導者にコツの指導や添削してもらう必要があり、指導者の負担も高く、練習のハードルが高いものになっている。
このような事情から、従来から種々の練習方法が提案されており、以下の特許文献には、それらの方法を教示している。
すなわち、特許文献1には、手本の文字自体に透明紙を重ねて手本の文字を直接なぞる、模写に関する方法が提案されている。
また、特許文献2には、草書体文字を複数の構成片に分解し、各構成片に近似した数字やアルファベットや片仮名や平仮名や記号等を選択し、これらの近似構成片を模写しながら草書体文字を練習する手法が提案されている。
更に、特許文献3には、書道練習具として、一文字の練習文字を複数の文字構成要素に分解して、それぞれをインクで印刷表示する手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-102143号公報
【特許文献2】特開2011-221379号公報
【特許文献3】特開2021-018388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献において提案された練習法は、取り扱いの簡単なものは、毛筆文字の特徴が殆ど掴めず、取り扱いの複雑なものでは、その扱いを覚えること自体が難しいなどの問題があった。
このため、書道の学習は、初心者にとっては取っ付きにくく、充分な効果が出ていないのが現状である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、従来の毛筆を用いた書道練習法が、このような事情にあるのに鑑みて、日々書道を指導している本発明者が鋭意検討し、長年の指導を通じて知得したもので、初心者にも覚えやすい上に、簡単に実施できるために、短期間で正確かつ身美な毛筆を書くための新規な書道教育プログラム、プログラム記録媒体、及びIT技術を用いて、独習用に初心者でも簡易に利用できる書道学習支援システムを提供することを目的としている。
【0006】
以下、本発明者が提案する新規な発明を説明する。
第一の本発明は、新規な書道教育プログラムに関する。
このプログラムは、学習者に、模写、臨書、背臨書の練習過程の動画を視聴させ、毛筆文字の描き方のコツを教授するものである。
このプログラムは、第一の模写式練習過程を表示するステップ、第二の臨書式練習過程を表示するステップ、第三の背臨書式練習過程を表示するステップを含んでいる。
ここに、第一の模写式練習過程では、書道手本の上に練習紙を重ね、書道手本の文字を練習紙上に透かした状態で筆を用いて練習紙になぞって書く手順(模写手順)と、ついで、練習紙に筆で書いた文字と手本の文字とを照合し、一致していない箇所をマーキングし、連続番号を記す手順(マーキング・チェック手順)が動画として表示される。
また、第二の臨書式練習過程では、書道手本を傍らに置き、書道手本の文字を見ながら、筆を用いて練習紙に書道手本の文字を書く手順(臨書手順)と、ついで、練習紙に書いた文字と手本の文字とを照合し、一致していない箇所をマーキングし、連続番号を記す手順(マーキング・チェック手順)が動画として表示される。
更に、第三の背臨書式練習過程では、書道手本を見ずに、筆を用いて練習紙に書道手本の文字を書く手順(背臨書手順)と、ついで、練習紙に書いた文字と手本の文字とを照合し、一致していない箇所をマーキングし、連続番号を記す手順(マーキング・チェック手順)が動画として表示される構成になっている(請求項1)
また、この発明のベストモードとして、三三式書道練習法の手順に従って作成された書道教育プログラムが請求項2において提案されている。ここに、三三式書道練習法は、前記第一の模写式練習過程を3回、ついで前記第二の臨書式練習過程を3回、最後に前記背臨書式練習過程を3回繰り返すことで定義される。
【0007】
第二の本発明は、第一の本発明である書道教育プログラムを、コンピュータで読み取り可能な言語で記録している記録媒体を提案している。ここに、記録媒体としては、CD-ROM、各種のメモリカード、メモリスティック、ビデオ画像の記録媒体の他、公知の記録媒体が使用される(請求項3)。
【0008】
更に、第三の本発明は、第一の本発明の書道教育プログラムを用いた書道学習支援システムを提案している。
このシステムでは、学習者側には表示部、入力部を備えた通信端末が設置され、学習サイトにはサーバ装置が設置され、両者はインターネットなどの通信回線を通じて接続されている。
学習者は、インターネット回線を通じて学習サイトに設置されたサーバ装置にログイン、書道手本において準備された、書道教育プログラムをダウンロードして視聴することで、毛筆文字の描き方のコツが自習できる。
このため、学習サイトに設置されたサーバ装置は、予め登録された学習者の通信端末からのログインを許容させるログイン許容手段と、指導者が解説を付けて実演して教授する、前述した書道教育プログラムを内蔵し、ログインの許容された学習者に対して、通信端末には、
そのプログラムをダウンロードさせて、実行させる書道教育プログラム実行手段とを備えている。
ここに、書道教育プログラムは、請求項1において提案されている第一の模写式練習過程、第二の臨書式練習過程、最後に背臨書式練習過程を時系列的に繰り返すものである。
【発明の効果】
【0009】
第一の本発明の書道教育プログラムによれば、第一の模写式練習過程、ついで第二の臨書式練習過程、最後に第三の背臨書式練習過程のいずれもが、指導者が解説を付けて実演する動画となっているので、先生などから指導や添削を受けなくても、学習者が独学で練習ができるので、書道教育のハードルを著しく下げて、初心者でも効率良く書道のコツが習得できる。
この教育プログラムでは、第一の模写式練習過程、第二の臨書式練習過程、第三の背臨書式練習過程における、マーキングチェックは、練習者が筆で書いた文字と手本の文字と照合し、一致していない箇所にマーキングするだけでなく、連続番号を記すことを教え、学習者の視覚だけでなく、手や指などの動作を加えて手本との違いを知ることを指導者が解説を加えて動画で教授するので、脳に無理なくコツを覚えさせて、学習者の潜在意識に無理なく働きかけることが出来る。
第二の本発明は、第一の本発明である書道教育プログラムを、コンピュータで読み取り可能な言語で記録した記録媒体であり、CD-ROM、各種のメモリカード、メモリスティック、ビデオ画像の記録媒体の他、公知の記録媒体の形態で使用できる。
第三の本発明は、第一の本発明の本発明書道教育プログラムをインターネットなどの双方向通信回線を用いて構築しており、学習者は、学習サイトにログインして書道学習プログラムを視聴することで、書道のコツを習得することができる
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第一の本発明の書道教育プログラムの流れを説明するフローチャート。
図2】第三の本発明の基本構成を示すシステム構成図。
図3書道作品の制作支援システム構成図。
図4書道作品の制作支援システムの基本動作を示すフローチャート。
図5】チェックシートの一例を示す説明図。
図6】学習者が独習する際に必要な学習用ツールを説明する図。
図7】書道手本解説を説明する図であり、(a)は「永」の構成を示す図、(b)は永字八法の解説図。
図8】(a)、(b)、(c)は模写式練習過程、臨書式練習過程、背臨書式練習過程の要領をイメージ的に示す説明図である。
図9】三三式書道練習方法をイメージ的に説明する図。
図10】三三式書道練習方法を文字で説明する図。
図11】書道手本に記された「お年玉」の模範文字と、練習時に模範文字を「お」、「年」、「玉」の1文字に分解して使用される手本文字を示す図。
図12】模写練習過程の手順を示す説明図。
図13】模写練習過程時におけるマーキング・チェック手順の説明図。
図14】臨書練習過程の手順を示す説明面。
図15】背臨書練習過程の手順を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について詳述する。
第一の本発明
この書道教育プログラムは、学習者に、本発明者が独自に開発した模写、臨書、背臨書の練習過程の動画を視聴させ、毛筆文字の描き方のコツを教授するものである。
このプログラムは、第一の模写式練習過程を表示するステップ、第二の臨書式練習過程を表示するステップ、第三の背臨書式練習過程を表示するステップを含んでいる。
図1は、この教育プログラムの基本動作の流れを示すフロー図である。
ここに、第一の模写式練習過程S1では、書道手本の上に練習紙を重ね、書道手本の文字を練習紙上に透かした状態で筆を用いて練習紙になぞって書く手順(模写手順)と、ついで、練習紙に筆で書いた文字と手本の文字とを照合し、一致していない箇所をマーキングし、連続番号を記す手順(マーキング・チェック手順)が指導者の解説付き動画として表示される。
図8(a)は、第一の模写式練習過程をイメージ的に示している。
また、第二の臨書式練習過程S2では、書道手本を傍らに置き、書道手本の文字を見ながら、筆を用いて練習紙に書道手本の文字を書く手順(臨書手順)と、ついで、練習紙に書いた文字と手本の文字とを照合し、一致していない箇所をマーキングし、連続番号を記す手順(マーキング・チェック手順)が、指導者の解説付き動画として表示される。
図8(b)は、第二の臨書式練習過程をイメージ的に示している。
最後の第三の背臨書式練習過程S3では、書道手本を見ずに、筆を用いて練習紙に書道手本の文字を書く手順(背臨書手順)と、ついで、練習紙に書いた文字と手本の文字とを照合し、一致していない箇所をマーキングし、連続番号を記す手順(マーキング・チェック手順)が指導者の解説付き動画として表示される。
図8(c)は、第三の背臨書式練習過程をイメージ的に示している。
以上のような特徴を備えた本発明の書道教育プログラムを繰り返し実行することで、毛筆文字の描画に必要な起筆、送筆、収筆などの用筆に加えて、章法、結体、気脈なども自然にかつ迅速に習得できる。
【0012】
第二の本発明
第一の本発明である書道教育プログラムを、コンピュータで読み取り可能な言語で記録している記録媒体を提案している。
記録媒体としては、CD-ROM、各種のメモリカード、メモリスティック、ビデオ画像の記録媒体の他、公知の種々の記録媒体が使用される。
【0013】
第三の本発明
図2は、本発明の書道学習支援システムの基本構成を示している。
このシステムでは、学習者側には表示部10、入力部11を備えた通信端末Aが設置され、学習サイトにはサーバ装置SAが設置され、両者はインターネットなどの通信回線INを通じて接続されている。
学習者には、学習サイトの運営会社などから書道手本、チェックシートが予め配布されていてもよい。
学習者は、インターネット回線INを通じて学習サイトに設置されたサーバ装置SAにログイン、書道手本1の模範毛筆文字に対応して準備された、前述した書道教育プログラムをダウンロードして視聴することで、毛筆文字の描き方のコツが自習できる。
このため、学習サイトに設置されたサーバ装置SAは、予め登録された学習者の通信端末からのログインを許容させるログイン許容手段20と、指導者が解説を付けて実演して教授する、前述した書道教育プログラムを内蔵し、ログインの許容された学習者に対して、通信端末Aには、そのプログラムをダウンロードさせて、プログラムを実行させる書道教育プログラム実行手段21とを備えている。
なお、学習サイトに書道手本選択手段を設けて、学習者が模範毛筆文字を選択することで、その模範毛筆文字に対応した書道教育プログラムを選択的に実行できるようにしてもよい。
【0014】
基本動作及び機能
学習者は、学習サイトにアカウントを開設する。
このアカウントの開設は、学習サイトにアクセスし、必要事項を入力すると仮登録となり、これを運営者が確認し、審査を行うことで本登録となる。
また、アカウント開設は、必要な情報や書類などを郵便や電子メールを使って運営者に送って行ってもよい。
アカウントを開設した学習者には、運営者からログインIDと初期パスワードが発行されるので、それらを用いて学習サイトのサーバ装置SAにログインする(初期ログイン)。
学習者には学習サイトのサーバ装置SAにログインした後、初期パスワードを書き換え変更できるようにして、セキュリティを高めている。
学習者は、通信端末Aを使用して、学習者に割当てられたIDとPWを用いて、学習サイトのサーバ装置SAにログインし、学習サイト上に予め準備されているオンライン書道教室(バーチャル)に入ることで、書道教育サービスを受けることができる。
すなわち、学習者は、学習サイトのオンライン書道教室に入って、前述した書道教育プログラムを、自分の通信端末Aにダウンロードし、その表示部10に表示して視聴できる。
かくして、書道教育プログラムが実行されると、最初に第一の模写式練習過程、ついで第二の臨書式練習過程、最後に第三の背臨書式練習過程が、指導者の解説付き動画として通信端末の表示部10に表示される。
学習者は、この動画を視聴することで、従前では教えられなかった毛筆文字の描き方のコツを体得できる。
【0015】
このような書道学習支援システムの発展型として、学習サイトに、多種類の毛筆文字を記した書道手本と、それらの書道手本の毛筆文字に対応した書道教育プログラムを準備しておけば、学習者は学びたい毛筆文字を選んで、その毛筆文字の起筆、送筆、収筆などのコツを簡単に学び取ることができる。
また、学習者に配布される書道手本は、予め模範となる単独あるいは複数の毛筆文字を特定してあってもよい。
例えば、「永」(永字八法の練習)、三などの漢数字(縦画、横画の練習)大、文(右払いと左払い)、上下(文字の形を意識)、左右(正しい筆順)などを模範文字として書道手本に保存しておけば、毛筆文字の基本的なコツは習得される。
また、学習者が書道手本1、練習紙2、筆3を準備し、書道手本1から所望の毛筆文字を選択して、選択した毛筆文字に対応した書道教育プログラムを視聴しながら、実際に毛筆文字を練習紙2に描き、描いた文字と手本の文字とを対比照合して、違っている箇所をマーキングし、チェックすれば、書道教育プログラムを視聴しながら実技練習を効率よく実施できる。
【0016】
第三の本発明の書道学習支援システムによれば、このようにして、従前では教えられなかった書道のコツが、インターネット回線などの双方向通信回線を通じて学習サイトにログインし、本発明の書道教育プログラムを視聴することで習得できるので、学習者は単独で短期間に上達することが期待できる。
また、このような書道学習支援システムは、学習サイトの機能を追加、拡張することによって更に発展的に応用できる。例えば、学習サイトでは、書道手本(画像データ)と、書道学習プログラムを組み合わせた特別なカリキュラムを準備して、学習者が初級、中級、上級コースを選択できるようにすれば、段階的に書道のコツが習得できるバーチャルな書道教室が実現できる。
【0017】
図3は、書道教育プログラムを用いた書道作品の制作支援システムの基本構成を示す
このシステムでは、学習者の通信端末Aと学習サイトのサーバ装置SBとがインターネットなどの通信回線INを通じて接続され、学習者には通信端末Aの表示部10に教育プログラムを視聴させて、毛筆文字の描き方のコツを習得させた後、その後に書道作品を実際に制作させ、実際に制作した事実を自習実績として記録することで、学習者には、より確実な書道指導が行えるようになっている。
図3に示すシステムでは、学習者は、通信端末Aで学習サイトのサーバ装置SBにログインし、書道手本の毛筆文字に対応して準備された書道教育プログラムを視聴した後、自分で書道作品を制作し、それを積み重ね記録更新していくことで、書道のコツをより確実に習得できるようになっている。バーチャルな独学者向きの書道教室が実現する。
また、図3の例では、学習者には、模範となる毛筆文字が記された書道手本1、筆3、チェックシート4を設けているが、チェックシート4については後述するが、このシステムでは、必ずしも必須なものではない。
一方の学習者サイトには、サーバ装置SBを設置している。
ここに、サーバ装置SBは、予め登録された学習者のみのログインを許容させるログイン許容手段20と、ログインを許容した学習者の通信端末Aに対して、学習者による書道手本の選択を受付けて、学習者が選択した書道手本に掲載された模範文字に応じて、予め準備している書道教育プログラムを学習者の通信端末Aにダウンロードさせて、そのプログラムを実行する書道教育プログラム実行手段21と、学習者の書道作品記録ファイルを備え、学習者による前記書道教育プログラムの視聴完了を判別して、前記書道作品記録ファイルに書道作品の制作事実を記録更新する学習者書道教育記録手段22とを備えている。
このシステムは、学習者の通信端末と学習サイトとをインターネットなどの通信回線を通じて接続して構成されており、模範となる毛筆文字が記され、学習者用に配布される書道手本と、学習者サイトに設置されたサーバ装置とを備えている。
ここに、サーバ装置は、予め登録された学習者のみのログインを許容させるログイン許容手段と、ログインを許容した学習者の通信端末に対して、学習者による書道手本の選択を受付けて、学習者が選択した書道手本に応じて、予め保存している書道教育プログラムを学習者の通信端末にダウンロードさせて、そのプログラムを実行する書道教育プログラム実行手段と、学習者の書道作品記録ファイルを備え、学習者による前記書道教育プログラムの視聴完了を判別して、前記書道作品記録ファイルに書道作品の制作事実を記録更新する学習者書道教育記録手段とを備えた点を特徴としている。
このシステムに書道作品のチェックシートを更に備えた構成にしてもよく、このチェックシートは、書道手本に記された模範となる毛筆文字に対応して、起筆、送筆、収筆などの評価ポイントを予め記した構成にしてもよい。
【0018】
図4は、書道作品の制作支援システムの基本的な動作を示すフローチャートであり、このフローチャートを参照しながら、基本機能を説明する。
ステップ100では、学習者がサーバ装置SBにログインする。ステップ101で、学習者が書道手本から手本となる毛筆文字を選択すると、学習者の通信端末Aには、学習者が選んだ毛筆文字に対応して予め準備されている書道教育プログラムがダウンロードされ、学習者の通信端末Aの表示部10に動画が表示される。
この結果、学習者は、選択した手本の毛筆文字に対応して、予め準備された書道教育プログラム、つまり模写式練習過程、臨書式練習過程、背臨書式練習過程について、指導者による解説付き、実演動画が視聴できるので、毛筆文字の描き方のコツを掴むことができる。
かくして、学習者が書道教育プログラムの模写式練習過程、臨書式練習過程、背臨書式練習過程を一通り視聴すると、サーバ装置SBは視聴完了を判別して、学習者に書道作品を制作するように指示を与える。学習者は、この指示に従って、視聴した書道教育プログラムに従って、実際に筆を用いて練習紙に毛筆文字を描いて作成を仕上げ、それが終了すると、書道作品の制作を完了したことをサーバ装置SBに通知する。
サーバ装置SBによる学習者への書道作品の制作指示は、学習者の通信端末Aの表示部10に文字でメッセージを表示したり、音声で指示するなどの方法で行えばよい。
サーバ装置SBが学習者から書道作品の制作完了の通知を受けると、学習者書道教育記録手段22は、この事実を書道作品記録ファイルに記録する。
書道作品記録ファイルには、書道作品を制作した年月日、時刻などの書誌的情報が、学習者がアップロードした制作した書道作品の画像とともに記録される。
【0019】
このような書道作品の制作支援システムによれば、書道教育プログラムを視聴して毛筆文字の描画のコツを掴みながら、自分で書道作品を制作し、その記録を蓄積できる。
ついで、チェックシートについて説明する。
図5には、チェックシートの一例として、「お」の文字に対応したものが示されている。この例では、「お」の文字について、起筆、送筆、収筆などの評価ポイントとなるべき箇所、つまり、文字の大きさ、上下の上げ下げ、左右の払いや、バランスを保つべき箇所には破線を記している。このようなチェックシートがあれば、初心の学習者でも毛筆文字を描く際に重要なポイントが模範文字毎に示され、チェックすべき重要な箇所が視覚で把握でき、利便である。
また、このシステムでは、学習者が書道教育プログラムが実行され、模写、臨書、背臨書の過程を動画で視聴しているときに、並行して毛筆文字を描き、描いた毛筆文字のマーキング・チェックを行えば、学習者が毛筆文字の書き方のコツが視覚(脳)だけでなく、手や指を使って覚えることで、一層迅速に把握できる。
【0020】
ついで、学習者が準備する書道練習具について説明する。
図6は練習具の組合わせ構成を示している。
1は書道手本、2は練習紙、3は筆、4は書道手本解説である。
ここに、書道手本1は、練習の対象となる毛筆文字の模範文字を掲載している。
毛筆文字は、楷書、行書、草書、隷書、篆書など文字の形態は問わないが、成語や四字熟語などであれば、その意味や歴史的知識も同時に学べるので望ましい。
また、練習紙2は、書道手本1の上に重ね合わせたときに、書道手本1に記された毛筆文字が透視できるものであれば、色や厚み、素材は問わない。
3は毛筆であり、通常に市販されているものが使用できる。
更に書道手本解説4は、毛筆文字の特徴、毛筆文字を描画する際に注目すべき箇所が説明されているので、マーキング・チェック作業時などに参照される。
【0021】
ここに書道手本解説4について説明する。
図7(a)、(b)は、書道手本解説の一ページを示している。
このページには、「永字八法」と呼ばれる、一文字で毛筆の8つの技法が習得できる「永」の文字が解説されている。この「永」は、「側」、「勒」、「努」、「▲テキ▼」、「策」、「掠」、「啄」、「磔」の8部位に区分されているとの説明がなされている。
また、「永字八法解説」が記載されたページには、「永」を毛筆で書く場合に8つの部位において注意すべき点、「側」、「勒」、「努」、「▲テキ▼」、「策」、「掠」、「啄」、「磔」のそれぞれにおいて、各部位の名称、意義、筆の使い方が明示されている。
したがって、このような書道手本解説を参照すれば、「側」、「勒」、「努」、「▲テキ▼」、「策」、「掠」、「啄」、「磔」の8部位を筆で書く際の注意点が一目瞭然と理解できる。
このような書道手本解説は、ビデオ動画として、インターネットの所定サイトにログインしたときに視聴できるもので代替してもよい。
そのようなものでは、書物を読み込む場合に比べて、視覚と聴覚の双方で確認できるので一層理解が容易になる。
また、このような動画を用いる場合は、学習サイト側も書道手本解説を準備する必要がないので、すこぶる便利である。
このような書道手本解説があれば、初心者でも書道の正しい書き方をより早く習得することができる。
【0022】
ついで、図8を参照して、第一の模写式練習過程、第二の臨書式練習過程、第三の背臨書式練習過程を説明する。
これらの練習過程は、書道教育プログラムでは、コンピュータが図8(a)~(c)に示したようなイメージの動画が時系列的に表示されるが、書道教本では、第一の模写式練習過程の説明欄、第二の臨書式練習過程の説明欄、第三の背臨書式練習過程の説明欄をコンテンツとして含んで編集される。
その編集形態は解説図、文章を含んでいたり、種々のパターンがある。
【0023】
図8(a)~(c)を参照して、それぞれの練習過程をより具体的に説明すると、第一の模写式練習過程では、図8(a)に示すように、書道手本1のうちで練習対象となる毛筆文字を記載しているページを開き、その上に練習紙2を重ねる。図例では、手本となる毛筆文字は四字熟語の「永久不変」が記されている。
練習紙2は透視性があるので、書道手本1に書かれた模範文字11、「永久不変」を練習紙2上に透かした状態にして、筆3を用いて慎重になぞって文字23を書く(模写手順)。
模写が終わったら、書道手本1に練習紙2を重ね合わせ、模写した文字23と手本の模範文字11とを照合して、ずれている箇所や一致していない箇所があれば、それらをマーキングする(マーキング・チェック手順)。
マーキング照合作業では、筆3を用いて描いた文字23と、書道手本1に記されている模範文字11とを比較し、ずれている箇所を見つけ出して、そこにマーキングして連続番号(1)、(2)、(3)・・・を記す。
マーキング・チェック手順では、「永」を模写した場合に、ズレしている箇所に朱でマーキングし、それらの箇所に(1)、(2)、(3)・・・などの連続番号を付している。
次の第二の臨書式練習過程では、8(b)に示すように、書道手本1を傍らに置いた状態にして、書道手本1に記載されている模範文字11「永久不変」を見ながら、筆3を用いて練習紙2に「永久不変」の文字23を書く(臨書)、ついで、第一の模写式練習過程と同じようにマーキング・チェックを行う。すなわち、練習紙2に書いた文字23と手本の模範文字11とを照合し、一致していない箇所にマーキングして、連続番号(1)、(2)、(3)・・・を記す。
そして、最後の第三の背臨書式練習過程では、図8(c)に示すように、書道手本1を閉じるか、裏返しにして見えない状態にしてから、書道手本1に記されていた模範文字11「永久不変」を思い出しながら、筆3を用いて練習紙2に文字23を書く(以上を「背臨書」という)。
ついで、マーキング照合(チェック)を行う。すなわち、練習紙2を書道手本1に重ねて、両者の文字23、11を対比照合し、一致していない箇所にマーキングして連続番号(1)、(2)、(3)・・・を記す。
【0024】
本発明の書道教育プログラムでは、以上のような3つの練習過程において模写、臨書、背臨書を行う際に、必ずマーキング・チェック作業を行っている。そして、このマーキング作業では、一致していない箇所にマーキングするだけでなく、連続番号を記しているので、視覚だけでなく、手、指を使って自分の書いた文字23と、手本の模範文字11との違いを把握して、脳に覚えさせることが出来る。したがって、初心者であっても短期間のうちに自然と正確な筆使いが出来、美しい毛筆文字が書けるようになる。
本発明では、以上に説明したように、第一の模写式練習過程、第二の臨書式練習過程、第三の背臨書式練習過程の3段階の練習過程を時系列的に組み合わせたことを特徴としているが、それぞれの練習過程における模写、臨書、背臨書、マーキング照合作業は、数回繰り返して行ってもよい。
【0025】
三三式書道練習法の実施例
本発明者は、第一の模写式練習過程において、模写3回、マーキング・チェック作業3回、第二の臨書式練習過程において、臨書3回、マーキング・チェック作業3回、第三の背臨書式練習過程において、背臨書3回、マーキング・チェック作業3回行えば、初心者でも最も無理なく、かつ習得効果が高いことが、実際の学習者に習得させて実証されており、これを、三三式書道練習法と命名した。
したがって、本発明者が提案するベストモードの書道教育プログラムや書道教本には、この三三式書道練習法が取り込まれている。そこで、以下では、この「三三式」書道練習法を説明する。
【0026】
図9図10は、「三三式」書道練習法を示している。
この練習法では、模写練習過程を3回、臨書練習過程を3回、背臨書練習過程を3回繰り返すことで実行され、図9はそれぞれの過程におけるイメージを示している。
すなわち、この練習方法では、書道手本の上に練習用紙(例えば、半紙)を重ねて引き写す「模写」(認知)。次に書道手本を練習用紙の傍らに置いて書き写す「臨書」(認識)。最後に書道手本を閉じ、記憶をたどりながら自力で書く「背臨」(審美)の三段階を、それぞれ三回(繰り返す。
教室で学ぶ伝統的な練習法は、生徒の提出する課題に朱を入れ、アドバイスを加えるマンツ-マン形式が主流であるが、生徒一人一人の能力には個人差がある。
そのため指導者に求められる指導法も、生徒のレベルに応じた内容が求められるが、興味と能力のある生徒にとっては、画一化された指導法は退屈さを感じさせる一方で、普通の生徒や関心のない生徒にとっては、指導者が求めるハードルはあまりにも高く、ついて行けない生徒が増える。
したがって、教育現場では、両者の要求をバランス良く配分することが必要であるが、このような問題に対して、授業を楽しく進める指導者は残念ながら殆どいない。
しかしながら、こうした書写書道教育の現状を、そのまま放置していては、日中両国が共有する伝統文化の精華である書道は、初等教育の段階から、その耀きを失い、次第に薄れて行く恐れは否定できず、これは由々しき問題であり、大きな文化的損失となる。
【0027】
こうした課題を解決するために、本発明者は、長年の経験上で知得した書道の教育手法を、IT技術と組み合わせて完成させて本発明を提案しているが、この根底には、ここに開示する「三三式」書道練習法が存在している。
この「三三式」書道練習方法は、基本的には先に紹介した三段階を反復練習するものであるが、最大の特色は、指導者が各段階における練習結果を毎回チェックし、朱を入れて添削するのではなく、学習者が自身で描いた毛筆文字を、書道手本の毛筆文字と対比照合し、異なる部分を自分の目で確認した上でマーキングする。
このマーキングは、各段階を経るごとに、順番に番号を付して行う必要があるが、これを行うことで、同じ誤りを繰り返すことなく、自分の弱点や、勉強の進み具合が一目瞭然となる。また、この作業を三回ずつ繰り返すことで、毛筆技能は短時間に、効率よく向上することが出来る。これは、本発明者が主宰する書道教室において実証済であり、指導者にとっても、説明や添削が省ける分、指導の負担が軽減される利点がある。
「三三式」書道練習法は、このようなアプローチで書道教育の手法を刷新するものであり、その骨子は、学習者の視覚だけでなく、指、手と用いて、脳にコツを覚えさせることで、学習者の潜在意識に無理なく働きかけを行うものである。
このような「三三式」書道練習法は、様々な実践を経て作られた新式の書道教育法であり、学習者の潜在意識に無理なく働きかけを行うことから、教育心理学によっても裏付けされるものでもある。
【0028】
日本も中国も、古くからの書道勉強法は長い年月に渡る稽古、訓練や練習を受けないと、ある書体の学びが成熟されることはなく、勉強の周期も長く、効果が出るまでが遅い。つまり書道には、「書道とはどういうものか」という認知から、「書を書く」という審美眼が養われるまでには相当な時間がかかるという印象がずっと残されている。
三三式の原理は、このような古典的な書道を打ち破り、短時間で大量の標記訓練法を使って、模写式で認知を構築する、臨書式で認識を深める、背臨書式で審美眼を養うという流れで、練習者を効率的に書道の道に進めること、つまり速攻入門法を提案するものである。
ここで、認知とは心理学の概念で、人間などが外界にある対象を知覚した上で、それが何であるかを判断したり解釈したりする過程のことを意味する。また、認識とは主観が対象を明確に把握することを意味し、審美とは美の本質・現象を研究する能力を意味する。
ある芸術を身に付けるには、基本的に認知する→認識を深める→審美眼を養う、という過程がなければならない。
中国の古典書道はなぜ難しいと思われているかというと、勉強の周期が長い、かつ神秘的な気質があることから、勉強に取り組む以前から学習者を退縮させていたことに起因しているが、三三式書道練習法の模写式、臨書式、背臨書式過程はこの三つの課題を解決し得た科学的な練習方法であり、書道練習の素人を一か月で創作ができる程度にまで上達させる可能性がある。
図10は、三三式書道練習方法を文章で説明している。この図を参照して、更に具体的に説明する。
【0029】
ステップ1 模写式練習過程
書道手本は、国の言葉、文化も同時に学ぶことができる。四字熟語か成語の毛筆が記されたものが望ましい。書道手本を墨で汚さないよう、開いた頁を透明なフィルムなどで覆うことが望ましい。
まず、書道手本の練習しようとする頁を開き、その上に練習用紙を重ね、慎重に写し取る。
写し終えたら、模写した毛筆文字を書道手本の毛筆文字に重ね合わせ、ずれているところがあればそこにマークを入れる。
マークは40ヵ所程度を目標にして、細心の注意を払って記入する。
なおマークキングは、鉛筆など簡単に修正できる筆記具を準備することが望ましい。そして、この練習方法では、各過程を必ず三回繰り返し、照合し、マーキングした箇所には連続番号を付記することが肝要である。そうすることで、同じミスを繰り返す頻度が減り、各書体についてどこが間違えやすいかなど自分の癖を知る事ができる。
同じ作業を三回繰り返す理由は、一回だけではとても覚えきれないからである。しかし三回以上繰り返すとなれば、集中力、持続力が共に失せ、練習の効果も低下する。
【0030】
ステップ2 臨書式練習過程
次に上記の手本を練習用紙のかたわらに置いて、普段の練習と同じように臨書する。ここで注意したいのは、模写式過程でマークしたところが、臨書式過程の段階において誤りなく訂正されているかを確認することが肝要である。このポイントを把握して臨書することが、これから先の創作へと向かう道筋を大きく左右する。そして模写式過程の場合と同様に、手本の毛筆と臨書した毛筆とを対比照合して、ずれている部分にマークを入れ、連続番号を記す
【0031】
ステップ3 背臨書式練習過程
手本を閉じ、自分の記憶をくまなく辿りながら背臨に挑戦する。模写式、臨書式とは比較にならないほど難しい作業になるが、これまでの練習の不備な点を、身をもって再確認する大切なプロセスでもある。さらにこれから向かおうとする創作への道筋も、この「背臨書式過程」を通して実現できる。そのため、各ステップを追って手本との不一致箇所に施したマーキングと連続番号とが、この段階においてその真価を発揮することになり、背臨書を通して自分では気づかない癖や、我流に堕した筆さばきなどを、文字通り身をもって把握できる。
「継続は力なり」、どこがずれているかをマークする地道な努力によって、学習者の創作への道が大きく切り開かれるので、これまでの勉強の成果を試す意気込みで挑戦すべきである。
以上に詳述した「三三式書道練習法」によれば、特に、書道学習において、以下のような特段の効果が期待できる。
1)特製の習字手本を準備すれば、学習者は、書体の点、横、払い等の用筆、長短、左右、気脈等の結体を一つずつ訂正練習をして、速く上達できる。
2)単独の部門に対して、訂正練習を繰り返しているうちに、学習者は被動的な姿勢から主動的な姿勢になって、書体の特色を考え、記憶を深めることができる。
3)科学的な練習方法を通して、学生に古典書道への恐怖を崩壊させるので、中国伝統文化に馴染みを持たせることができ、現代社会の早いペースにおいても、迅速に書道の興味を発起させ、古典文化に一層認識をもつことができる。
4)三三式は教育法というより、勉強の方法論である。
本発明者によれば、三千人以上の学生に実験した結果により、三回繰り返しと一字にマークのつけ数を五十回程度にする手法が最も効果があることを実証できた。したがって、古典書道の勉強方法論の改善は千年以来、歴代の書道家も求めてきた課題が、この三三式練習法で解決できたものと信じている。
【0032】
最後に、「お」を模範毛筆文字として、図11図15を参照しながら、模写、臨書、背臨書練習過程を更に具体的に説明する。
例として、書道手本には「お年玉」を使用している。
1は書道手本、13は文鎮、14は硯である。
お年玉と記された書道手本1に記された「お年玉」の文字から、「お」、「年」、「玉」の文字を部分コピーして、模写、臨書、背臨書の対象となる模範文字1a~1cを準備する。
図12は書道手本1の部分コピー、「お」を記した手本1aの上に練習紙2を被せ、その状態で筆3を用いて「お」を模写する手順を示しており、図13は、マーキング・チェックの手順、模写した文字23に対して模範文字1aとの差異、はみ出し、ズレなどを見つけ出して、マーキングし、連続番号を付ける手順を示している。
図例では、(1)~(40)の箇所に連続番号を記している。
【0033】
図14は、模写で用いた「お」の模範文字を、傍らにおいて、練習紙2に書き移す臨書の手順を示しており、図15は、同じ「お」の模範文字を見ない状態で、練習紙2に書き移す背臨書の手順を示している。
臨書、背臨書において、筆を使用して、練習紙に描いた文字23は、模写時と同じようにマーキング・チェックされる。
「お」の文字について、このような手順で、模写、臨書、背臨書による一連の練習過程
が終了すれば、「年」、「玉」についても、同じように模写、臨書、背臨書による一連の練習過程を行うことで、学習者は、書道のコツが掴める。
【符号の説明】
【0034】
1・・・書道手本
11・・・模範文字
2・・・練習紙
23・・・毛筆文字
3・・・筆
4・・・チェックシート
5・・・書道手本解説