(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053455
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】バーチャル資源プラントとその運転方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20240101AFI20240408BHJP
C02F 1/00 20230101ALI20240408BHJP
【FI】
G06Q50/06
C02F1/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159756
(22)【出願日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】余田 充
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 航平
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC06
5L050CC06
(57)【要約】
【課題】資源のより効率的な利用を可能とするバーチャル資源プラントを提供する。
【解決手段】バーチャル資源プラント1は、バーチャル資源を供給可能な複数のバーチャル資源供給施設A~Cと、複数のバーチャル資源供給施設A~Cの運転計画を作成する運転計画作成手段24と、を有している。運転計画作成手段24は、要求供給時間と要求資源量とが特定された特定バーチャル資源の要求を受け付け、複数のバーチャル資源供給施設A~Cのうちの2以上のバーチャル資源供給施設が特定バーチャル資源を分担するように、運転計画を作成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーチャル資源を供給可能な複数のバーチャル資源供給施設と、
前記複数のバーチャル資源供給施設の運転計画を作成する運転計画作成手段と、
を有し、
前記運転計画作成手段は、要求供給時間と要求資源量とが特定された特定バーチャル資源の要求を受け付け、前記複数のバーチャル資源供給施設のうちの2以上のバーチャル資源供給施設が前記特定バーチャル資源を分担するように、前記運転計画を作成する、バーチャル資源プラント。
【請求項2】
前記複数のバーチャル資源供給施設の各々は、前記要求供給時間を分割した区分要求供給時間ごとに供給可能な区分供給可能量を前記運転計画作成手段に送信し、
前記運転計画作成手段は、各バーチャル資源供給施設から送信された前記区分要求供給時間と前記区分供給可能量との組を複数個組み合わせて前記特定バーチャル資源要求を満たすように、前記運転計画を作成する、請求項1に記載のバーチャル資源プラント。
【請求項3】
前記運転計画作成手段は、複数の前記組を組み合わせることで前記特定バーチャル資源要求を満たすか否かを判定し、前記要求が満たされると判定したときに、前記複数の組を組み合わせて前記運転計画を作成する、請求項2に記載のバーチャル資源プラント。
【請求項4】
前記複数のバーチャル資源供給施設の各々は、前記要求供給時間内における供給可能時間と、前記供給可能時間において供給可能な供給可能量と、を前記運転計画作成手段に送信し、
前記運転計画作成手段は、各バーチャル資源供給施設から送信された前記供給可能時間と前記供給可能量とに基づき、前記特定バーチャル資源要求を満たすように、前記運転計画を作成する、請求項1に記載のバーチャル資源プラント。
【請求項5】
前記複数のバーチャル資源供給施設の各々は複数のバーチャル資源供給設備を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載のバーチャル資源プラント。
【請求項6】
前記複数のバーチャル資源供給施設の各々は一つのバーチャル資源供給設備からなる、請求項1から4のいずれか1項に記載のバーチャル資源プラント。
【請求項7】
前記バーチャル資源は電気エネルギーである、請求項1から4のいずれか1項に記載のバーチャル資源プラント。
【請求項8】
前記バーチャル資源は水である、請求項1から4のいずれか1項に記載のバーチャル資源プラント。
【請求項9】
バーチャル資源を供給可能な複数のバーチャル資源供給施設を有するバーチャル資源プラントの運転方法であって、
前記複数のバーチャル資源供給施設の運転計画を作成する運転計画作成手段が、要求供給時間と要求資源量とが特定された特定バーチャル資源要求を受け付けることと、
前記運転計画作成手段が、前記複数のバーチャル資源供給施設のうちの2以上のバーチャル資源供給施設が前記特定バーチャル資源を分担するように、前記運転計画を作成することと、を有する、バーチャル資源プラントの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーチャル資源プラントとその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、分散型のエネルギー設備を効率的に運用することを目的として、エネルギーマネジメントシステム(EMS)について様々な取り組みがなされている。特許文献1には、効率的なエネルギー融通を可能とする運転計画を作成することができる分散型エネルギーシステムの運転計画作成装置が開示されている。特許文献2には、バーチャルパワープラント(VPP)を構成する車両群全体の充放電動作を、車両の状態に応じて適切に制御するVPPの制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6520462号明細書
【特許文献2】特開2021-191133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2に開示された装置は電気エネルギーの効率的な利用に着目している。一方、近年電気エネルギーに関し、節電した電力をバーチャル電力として市場(容量市場)で取引する試み(ネガワット取引ともいわれる)がなされている。しかし、容量市場での取引対象となるためには、一定以上の時間に渡り一定以上の電力を供給可能であることが求められ、電気エネルギーの効率的な利用の妨げとなる可能性がある。電気エネルギーに限らず、水資源などの資源一般においても同様の課題が生じる可能性がある。
【0005】
本発明は、資源のより効率的な利用を可能とするバーチャル資源プラントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のバーチャル資源プラントは、バーチャル資源を供給可能な複数のバーチャル資源供給施設と、複数のバーチャル資源供給施設の運転計画を作成する運転計画作成手段と、を有している。運転計画作成手段は、要求供給時間と要求資源量とが特定された特定バーチャル資源の要求を受け付け、複数のバーチャル資源供給施設のうちの2以上のバーチャル資源供給施設が特定バーチャル資源を分担するように、運転計画を作成する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、資源のより効率的な利用を可能とするバーチャル資源プラントを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係るバーチャル資源プラントの概要図である。
【
図2】本発明の水関連施設の運用例を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1には、本発明の一実施形態に係るバーチャル資源プラント1の概要を示している。所定のエリアに水処理設備、浄水製造設備等の複数の水関連設備が設置されている。複数の水関連設備は配管ネットワーク8~11によって相互に接続されている。所定のエリアは特に限定されないが、配管ネットワーク8~11の構築のための過大な投資を避けるため、比較的限定されたエリアであることが望ましい。所定のエリアは複数のエリアA~Cに分割され、各エリアA~Cはそれぞれ複数の水関連設備を有している。水関連設備の詳細については後述する。
【0010】
本実施形態において、バーチャル資源は電気エネルギーである。電気エネルギーに関しては従来より、デマンドレスポンス(DR)という概念が用いられることがある。DRは電力消費のピーク時に電気料金単価が割高になったり、節電努力に応じて何らかの報酬が得られたりすることで、電力消費の総量を抑制する仕組み(デジタル大辞泉)を意味する。本明細書ではDRによって電力需給を調整、制御するための電力(例えば節電によって得られた電力)のことをバーチャル電力と称し、これを資源全般に一般化したものをバーチャル資源と呼ぶ。
【0011】
各エリアA~Cの水関連設備はポンプなどの電動機器を備えている。従って、各エリアA~Cは電気エネルギーの利用エリアであるが、電力会社(送配電を専門に行う会社を含む)との契約に基づき、電力会社の要請に応じ、所定の条件で節電義務を負う。節電によって得られた電気エネルギーは電力会社が自由に運用できるため、電力会社にとっては自ら発電によって得た電気エネルギーと等価である。節電義務によって得られた余剰電力はバーチャル電力(バーチャル資源)とみなすことができる。これより、各エリアA~Cはバーチャル電力(バーチャル資源)を送配電ネットワーク21に供給可能なバーチャル資源供給施設であるといえる。また、各エリアA~Cの水関連設備は、それぞれが節電によってバーチャル電力を供給できるので、個別のバーチャル資源供給設備であるといえる。
【0012】
送配電ネットワーク21は電力会社によって運営される。各水関連設備は送配電ネットワーク21に接続されている。送配電ネットワーク21には電力会社が運営する発電所7A~7Cも接続されている。各エリアA~Cは、当該エリアを管理するエリア管理部12A~12Cを有している。エリア管理部12A~12Cは当該エリアに属する水関連設備の運転を管理するとともに、後述する通信ネットワーク22によって、後述するデータベース23、運転計画作成サーバ24及び管理サーバ26と接続されている。エリア管理部12A~12Cはサーバなどのコンピュータで構成され、当該エリアA~Cに属する各水処理設備と通信回線(図示せず)で接続されている。
【0013】
水関連設備は電気エネルギーを貯蔵する蓄電設備を有していてもよい。例えば、電力会社に電気エネルギーをバーチャル電力として供給する際(節電時)に、蓄電設備に蓄えられた電気エネルギーを水関連設備の運転のために利用してもよい。あるいは、蓄電設備に蓄えられた電気エネルギーをバーチャル電力と等価な実際の電力として、送配電ネットワーク21に供給してもよい。
【0014】
水関連設備は、水処理設備2A~2I、浄水製造設備3A~3C、下排水処理設備4A~4C、浄水貯蔵設備5A,5B、下排水貯蔵設備6を含んでいる。水処理設備2A~2Iは、水資源の処理を行う設備であり、処理は、供給水を製品の一部や洗浄水、生活用水、工業用水等として利用すること、特定の用途のために供給水をさらに浄化すること(前処理水の製造)、供給水を利用した後に発生した排水を排出前に後処理すること(後処理水の製造)などを含む。水処理設備の代表例は住宅、工場(機械、化学、食品、薬品等)、農場、発電所、純水製造プラント、オフィスビル、公共施設等である。
【0015】
浄水製造設備3A~3Cは原水から浄水を製造する設備であり、排水を処理して浄化水(工業用水や回収水)を作る設備(例えば排水処理設備を有する工場)も含む。製造浄水製造設備3A~3Cで製造された浄水は給水系統8によって水処理設備2A~2Iに供給されるとともに、一部は給水連絡系統10によって浄水貯蔵設備5A,5Bに貯蔵される。例えば、浄水製造設備3A~3Cがバーチャル電力を供給する際(節電時)、浄水貯蔵設備5A,5Bに貯蔵された浄水を放出して水処理設備2A~2Iで利用することができる。給水連絡系統10は異なるエリアの水関連設備間にも設けられ、エリア間での給水の融通を行う。
【0016】
下排水処理設備4A~4Cは下排水系統9によって収集された下水または排水の処理を行う。下排水貯蔵設備6は下排水連絡系統11によって収集された下水または排水を貯蔵する。下排水連絡系統11は異なるエリア間での下水または排水の移動にも用いられる。
【0017】
バーチャル資源プラント1は、データベース23と、運転計画作成サーバ24と、インターネット閲覧端末25と、管理サーバ26と、を有している。また、バーチャル資源プラント1は、複数の水関連設備とデータベース23と運転計画作成サーバ24とインターネット閲覧端末25と管理サーバ26とを相互に接続する通信ネットワーク22を有している。通信ネットワーク22はインターネット回線、イントラネット回線等であるが、送配電ネットワーク21を利用してもよい。データベース23と運転計画作成サーバ24とインターネット閲覧端末25と管理サーバ26は、一部または全部が一体化されてもよい。
【0018】
データベース23は記憶手段の一例であり、ワークステーション等の情報処理装置により構成される。データベース23は通信ネットワーク22を介した電子情報の書き込み及び読み出しが可能である。データベース23には、所定の周期または任意のタイミングで、通信ネットワーク22を介して、バーチャル資源プラント1を構成する水関連設備や送配電/通信/配管ネットワークの情報が格納される。データベース23は一例として、複数の水関連設備の運転データを含む以下の運転関連データを記憶する。
・浄水製造設備の浄水製造能力
・浄水貯蔵設備の浄水貯蔵可能量(浄水貯蔵設備の貯蔵容量-浄水貯蔵設備の現在の貯蔵量)
・浄水送水設備の浄水送水可能量
・水処理設備での浄水需要の時間変動
・各水処理設備から排出される下排水量
・下排水処理設備の下排水処理能力
・下排水貯蔵設備の下排水貯蔵可能量(下排水貯蔵設備の貯蔵容量-下排水貯蔵設備の現在の貯蔵量)
・各水処理設備の要求水質
・各水処理設備から排出される下排水の水質
・取水池・配水池等の水位、水量
・電気コスト、電気料金の時間変動
・電力需給の時間変動、電力需給の状況
・電気エネルギーの種類
・調整電力容量
・各水処理設備の運転状態(運転時間帯、定検・補修の情報等を含む)
・蓄電設備の充放電状況(SOC)
・各水処理設備の運転に影響を及ぼす一般情報(天候、政治、経済、社会に関する情報等であって、現在の状況と将来の予測を含む)
・バーチャル電力供給(節電)に関する契約の内容(節電の期間、節電量、節電要請の回数(回/年)等)
【0019】
運転計画作成サーバ24は運転計画作成手段の一例であり、ワークステーション等の情報処理装置、XAI等の人工知能により構成される。運転計画作成サーバ24は、電力会社からの指令に基づき、各エリアA~C(バーチャル資源供給施設)の運転計画を作成する。
【0020】
ここで、運転計画作成サーバ24(運転計画作成手段)が作成する運転計画についてさらに詳細に説明する。まず、電力会社は、管理サーバ26(特定バーチャル資源要求手段)から運転計画作成サーバ24に特定バーチャル資源を要求する指令を送信する。特定バーチャル資源とは、要求供給時間と当該要求供給時間における要求資源量とが特定されたバーチャル資源であり、より具体的には、節電要求時間帯と当該節電要求時間帯における要求節電量である。要求節電量は節電要求時間内で一定であってもよく変動していてもよい。節電要求時間と要求節電量のいずれか一方または両者は固定されていてもよい。例えば、節電要求時間は平日の14:00~16:00であってもよいし、要求節電量は常に150kWであってもよい。
【0021】
管理サーバ26は以下の手段を備え、これらの手段はコンピュータのアプリケーションや通信機能で実現される。
・データベース23に記憶された電力需給の状況、気温予測などに基づき、どの時間帯にどれだけの資源量(電力)が不足するかを予測する予測手段
・予測手段の予測結果に基づき、どの時間帯にどれだけの資源量を特定バーチャル資源として要求するか(この要求を特定バーチャル資源要求という)を決定する特定バーチャル資源要求決定手段
・特定バーチャル資源要求を運転計画作成サーバ24に送信する手段
【0022】
特定バーチャル資源要求は予測手段の予測結果に基づき、特定バーチャル資源要求決定手段がAI等を用いて自動作成することができる。特定バーチャル資源要求はオペレータが決定することもできる。この場合、特定バーチャル資源要求決定手段は、オペレータの決定を支援するためのデータの表示機能、オペレータからの入力の受付機能などを備えることが好ましい。
【0023】
運転計画作成サーバ24は、複数のバーチャル資源供給施設(エリアA~C)のうちの2以上のバーチャル資源供給施設が特定バーチャル資源を分担して供給するように、運転計画を作成する。具体的な運転計画の例は運用例で説明する。
【0024】
運転計画作成サーバ24は特定バーチャル資源要求を受け付けると、特定バーチャル資源の要求供給時間を複数の要求供給時間(以下、区分要求供給時間という)に分割する。次に、運転計画作成サーバ24は各エリア管理部12A~12Cに対し、通信ネットワーク22(送信手段)を介して、区分要求供給時間ごとに供給可能な資源量(以下、区分供給可能量という)を問い合わせる。区分供給可能量は、対応する区分要求供給時間において連続的に供給可能なバーチャル資源の量(節電量)である。運転計画作成サーバ24は、データベース23に登録された契約情報を参照し、節電要請ができないバーチャル資源供給施設を除外する。
【0025】
各エリア管理部12A~12Cは、データベース23に登録された水需要、取水池・配水池等の水位(水関連設備を停止もしくは出量を抑制しても問題なく運用できる水量、水位の把握)、水関連設備の稼働状況等を監視しており、実際にどのぐらい節電できるかを把握可能な状態にある。各エリア管理部12A~12Cは、運転計画作成サーバ24からの問い合わせに応じて、節電可能な水関連設備を抽出し、区分要求供給時間ごとに各水関連設備が節電可能な電力を積み上げ、区分要求供給時間ごとの区分供給可能量を算出する。各エリア管理部12A~12Cは、区分要求供給時間ごとの区分供給可能量を通信ネットワーク22(送信手段)によって運転計画作成サーバ24に送信する。区分供給可能量は各区分要求供給時間における要求資源量を下回っていてもよいし、上回っていてもよいし、ゼロでもよい。運転計画作成サーバ24は、各エリア管理部12A~12Cから送信された区分要求供給時間ごとの区分供給可能量を組み合わせて、特定バーチャル資源要求を満たすように、運転計画を作成する。運転計画はAIを用いて作成することもできる。
【0026】
また、各エリア管理部12A~12Cは、電気エネルギーの種類ごとに区分供給可能量を算出してもよい。電気エネルギーはグリーンエネルギー(温室効果ガスを排出しないエネルギー)、グレーエネルギー(温室効果ガスを排出しているエネルギー)、ブルーエネルギー(グレーエネルギーの製造過程で排出される温室効果ガスを回収・利用することで、温室効果ガスの排出を低減しているエネルギー)に分類することができ、データベース23は各水関連設備が使用する電気エネルギーの種類を記憶している。各エリア管理部12A~12Cから送信された区分要求供給時間ごとの区分供給可能量に余裕がある場合、運転計画作成サーバ24は、グリーンエネルギー、ブルーエネルギー、グレーエネルギーの優先度で区分要求供給時間ごとの区分供給可能量を組み合わせて、運転計画を作成することができる。
【0027】
運転計画作成サーバ24によって作成された運転計画は、運転計画に組み込まれたエリアのエリア管理部12A~12Cに送信される。各エリア管理部12A~12Cは運転計画に基づき、割り当てられた区分要求供給時間において割り当てられたバーチャル資源を供給する(節電する)ように、管理下にある水関連設備を制御する。実際の制御は各エリア管理部12A~12Cが自動で行ってもよいし、オペレータが手動で行ってもよい。代替案では、運転計画作成サーバ24が運転計画を管理サーバ26に送信し、管理サーバ26がエリア管理部12A~12Cを制御してもよい。
【0028】
(運用例)
次に運用例を示す。特定バーチャル資源要求が某月某日の10:00に出されたとする。特定バーチャル資源要求は、同日13:00~16:00の時間帯において連続して150kWであるとする。前述のように、特定バーチャル資源要求はある程度まとまった時間にある程度まとまった量のバーチャル資源を要求する場合がある。運転計画作成サーバ24は区分要求供給時間を13:00~14:00、14:00~15:00、15:00~16:00に設定する。各区分要求供給時間における要求資源量は150kWである。
【0029】
表1に各エリアA~Cにおける区分要求供給時間ごとの区分供給可能量を示す。エリアAは13:00~14:00に150kWの供給が可能であり、エリアBは14:00~15:00に150kWの供給が可能であり、エリアCは15:00~16:00に150kWの供給が可能である。次に、運転計画作成サーバ24は、各エリアA~Cから送信された区分要求供給時間と区分供給可能量の組を複数個組み合わせることで特定バーチャル資源要求を満たすか否かを判定する。運転計画作成サーバ24は、要求が満たされると判定し、区分要求供給時間と区分供給可能量の組を組み合わせて運転計画を作成する。すなわち、運転計画作成サーバ24は、エリアAが13:00~14:00に150kWを供給し、エリアBが14:00~15:00に150kWを供給し、エリアCが15:00~16:00に150kWを供給する運転計画を作成する。
【0030】
【0031】
表2、3には、各エリアA~Cにおける区分要求供給時間ごとの区分供給可能量の他のパターンを示す。表2の例では、運転計画作成サーバ24は、13:00~14:00にエリアA,B,Cがそれぞれ50kWを供給し、14:00~15:00にエリアA,B,Cがそれぞれ50kWを供給し、15:00~16:00にエリアA,B,Cがそれぞれ50kWを供給する運転計画を作成する。表3の例では、運転計画作成サーバ24は、13:00~14:00にエリアA,B,Cがそれぞれ50kWを供給し、14:00~15:00にエリアCが150kWを供給し、15:00~16:00にエリアAが100kWを供給し、エリアBが50kWを供給する運転計画を作成する。
【0032】
【0033】
【0034】
いずれの運用例でも各エリア単独では、特定バーチャル資源要求を満足することができないが、エリアA~Cの連動運用(組み合せ、切り替え等)を実施することで、特定バーチャル資源要求を満足し、各エリアの節電で得られた電気エネルギーを有効に活用することができる。従って、本実施形態によれば、電力負荷の平準化、電力不足時の電力需要の調整、再生可能エネルギーの供給不足の補填などの電力調整機能と、水関連施設の負荷低減、水の有効利用や融通などの水資源調整機能と、が実現され、両機能の相乗効果による効果的な節電及び節水が可能である。また、本実施形態は非常用の水インフラの提供、効率的な分散型上下排水システムの構築、低炭素化にも資する。
【0035】
上述の運用例では、特定バーチャル資源要求が10:00に出されているため、要求供給時間までの準備時間(3時間)が与えられている。この準備時間の間に水関連設備をフル稼働することで特定バーチャル資源要求を満足できる場合は、準備時間中に水関連設備をフル稼働して、特定バーチャル資源要求に対応することもできる。このように、特定バーチャル資源要求が出された後に、節電のための準備を積極的に実施してもよい。すなわち、運転計画は要求供給時間までの準備時間における、特定バーチャル資源要求に対応するための運転計画を含んでもよい。
【0036】
運用例では特定バーチャル資源の要求供給時間を複数の区分要求供給時間に分割しているが、各エリア管理部12A~12Cが、要求供給時間内で供給可能な資源量と、その供給可能時間とを、運転計画作成サーバ24に送信してもよい。例えば、要求供給時間(13:00~16:00)内において、エリアAが13:00~14:30の間に100kWを供給可能であり、エリアBが13:00~16:00の間に50kWを供給可能であり、エリアCが14:00~16:00の間に125kWを供給可能であるとする。この場合、例えば、エリアAが13:00~14:30の間に100kWを供給し、エリアBが13:00~16:00の間に50kWを供給し、エリアCが14:30~16:00の間に100kWを供給する運転計画を作成することができる。
【0037】
上述の実施形態では、各バーチャル資源供給施設は複数のバーチャル資源供給設備(水関連設備)を有するエリアであったが、各バーチャル資源供給施設は一つのバーチャル資源供給設備(水関連設備)から構成されていてもよい。すなわち、上述の実施形態では、特定バーチャル資源要求に対しエリア単位で対処していたが、バーチャル資源供給設備単位(水関連設備単位)で対処することもできる。また、バーチャル資源は水、ガス、熱(熱水、冷水等)、水素、アンモニア、CO2等の流体資源であってもよい。バーチャル資源が水以外の流体資源の場合、「送水」は「移送」、「浄水」は「浄化流体」、「排水」は「排出」等に置き換えることができる。また、例えばアンモニアを対象とした場合、「浄水製造施設」は「アンモニア製造施設」、「水処理施設」は「アンモニア使用施設」、「浄水貯蔵施設」は「アンモニア貯蔵施設」、「下排水処理施設」は「アンモニア処理施設」、「下排水貯蔵施設」は「使用済みアンモニア貯蔵施設」などと置き換えることができる。流体資源を複数併用可能な場合であって、管理サーバ26からの指令やデータベース23にどの資源を優先的に使用するかの情報が含まれている場合、運転計画作成サーバ24はその情報を考慮して運転計画を立てることができる。これは、電気エネルギーにおいて、グリーンエネルギー、ブルーエネルギー、グレーエネルギーに優先度をつけるのと同様の考え方である。
【0038】
(適用例)
上述の実施形態を具体例に適用した例を述べる。
図2に概要を示す。
[サブエリアA]
[処理量]
各設備の個別運用の場合、水処理設備2A、2B、2Cは、個々に最適な運転(処理)を行うため、それぞれが100%の運転を行う。すなわち、それぞれの処理量は、100m
3/h、200m
3/h、300m
3/hである。また、浄水製造設備3Aと下排水処理設備4Aの処理量は、いずれも2,000m
3/hであるから、このときのエリアAにおける総処理量は100+200+300+2,000+2,000=4,600m
3/hである。一方、本適用例の運転計画の場合、それぞれの設備の運用状況が連携されており、各設備の稼働状況、必要水量、水質、水処理能力等から本適用例の運転計画で運用可能な負荷量を算出する。すなわち、浄水製造設備3A、水処理設備2A、2B、2C、下排水処理設備4Aは、それぞれ、M:中(75%運転)、H:高(100%運転)、M:中(75%運転)、L:低(50%運転)、M:中(75%運転)の状況であることを互いに把握し、連携している。水処理設備2Aは、個別運用時の100m
3/hに対して100%運転であるため、本適用例の運転計画でも100m
3/hの処理量となるが、浄水貯蔵設備5Aから100m
3/hの水の融通を受けているため、処理量としては0m
3/hとなる。同様の考え方により、水処理設備2B、2Cの処理量は、それぞれ150m
3/h、150m
3/hである。よって、水処理設備2A、2B、2Cは、個別運用時に比べて、それぞれ100-0=100m
3/h、200-150=50m
3/h、300-150=150m
3/hの分だけ処理負荷を下げることができる。また、浄水製造設備3Aは、個別運用時(2,000m
3/h)の75%運転でよいので、処理量は1,500m
3/hとなるが、水処理設備2A、2B、2Cにおいて、それぞれ100m
3/h、50m
3/h、150m
3/hの分だけ節水できているので、1,500-100-50-150=1,200m
3/hの処理(浄水製造)でよいことになる。よって、水処理設備2A、2B、2Cは、個別運用時に比べて、それぞれ100-0=100m
3/h、200-150=50m
3/h、300-150=150m
3/hの分だけ処理負荷を下げることができる。また、水処理設備2Aは、浄水貯蔵設備5Aから100m
3/hの水の融通を受けているが、本適用例の運転計画でも100m
3/hの排水量が発生する。同様の考え方により、水処理設備2Bの排水量は150m
3/hである。水処理設備2Cは、個別運用時の300m
3/hに対して50%運転であるため、本適用例の運転計画では150m
3/hの排水量となるが、エリアBの水処理設備2Dに送水しているため下排水処理設備4Aには供給されない。よって、水処理設備2A、2B、2Cは、個別運用時に比べて、それぞれ100-100=0m
3/h、200-150=50m
3/h、300-0=300m
3/hの分だけ排水処理設備4Aの排水処理負荷を下げることができる。また、下排水処理設備4Aは、個別運用時(2,000m
3/h)の75%運転でよいので、処理量は1,500m
3/hとなるが、水処理設備2A、2B、2Cにおいて、それぞれ0m
3/h、50m
3/h、300m
3/hの分だけ下排水処理負荷を低減できるので、1,500-0-50-300=1,150m
3/hの下排水処理量でよいことになる。
【0039】
よって、本適用例の運転計画の場合のエリアAの設備全体(浄水製造設備3A、水処理設備2A、2B、2C、下排水処理設備4A、浄水貯蔵設備5A)の処理量は、1,200+0+150+150+1,150+100=2,750m3/hであるから、エリアAにおける本適用例の運転計画での処理量は、個別運用時に比べて4,600-2,750=1,850m3/hだけ削減できる。
【0040】
[消費電力]
消費電力を処理量の50%と仮定したとき、個別運用の場合の浄水製造設備3A、水処理設備2A、2B、2C、下排水処理設備4Aにおける消費電力は、それぞれ1,000、50、100、150、1,000kWhである。一方、本適用例の運転計画の場合の浄水製造設備3A、水処理設備2A、2B、2C、下排水処理設備4Aにおける消費電力は、それぞれ600(1,200÷2)、0(処理量=0m3/hであるため)、75(150÷2)、75(150÷2)、575(1,150÷2)、25(浄水貯蔵設備5Aからの水の融通を受けるための消費電力)kWhである。したがって、個別運用の場合の消費電力の総計1,000+50+100+150+1,000=2,300kWhに対し、本適用例の運転計画の場合の消費電力の総計600+0+75+75+575+25=1,350kWhとなり、2,300-1350=950kWhだけ節約されたことになる。
【0041】
[エリアB,C]
同様に、エリアBの設備全体(浄水製造設備3B、水処理設備2D、2E、2F、下排水処理設備4B、浄水貯蔵設備5B)の本適用例の運転計画の処理量は、350+0+0+50+450+200=1,050m3/hであるから、個別運用時(2,700m3/h)に比べて1,650m3/hだけ削減でき、消費電力は825kWhだけ節約されたことになる。エリアCの設備全体(浄水製造設備3C、水処理設備2G、2H、2I、下排水処理設備4C、下排水貯蔵設備6)の本適用例の運転計画での処理量は、1,250+350+100+300+950+200=3,150m3/hであるから、個別運用時(7,000m3/h)に比べて3,850m3/hだけ削減でき、消費電力は2,025kWhだけ節約されたことになる。以上より、エリアA~Cの総処理量は、個別運用時(14,300m3/h)に比べて約51%削減され、エリアA~Cの総消費電力は、個別運用時(7,150kWh)に比べて約53%削減された。
そして、単独の設備/エリアでは、容量市場(発動指令電源)の要件(たとえば、調整電力容量:100kW以上、連続応答時間:3時間)を満足できない場合には、本発明による複数の設備/エリアの組み合わせや切り替えによる連動を行うことで、このような場合での処理が可能となる。
【符号の説明】
【0042】
1 バーチャル資源プラント
2A~2I 水処理設備(水関連設備の例)
3A~3C 浄水製造設備(水関連設備の例)
4A~4C 下排水処理設備(水関連設備の例)
5A,5B 浄水貯蔵設備(水関連設備の例)
6 下排水貯蔵設備(水関連設備の例)
12A~12C エリア管理部
21 送配電ネットワーク
22 通信ネットワーク
23 データベース
24 運転計画作成サーバ
26 管理サーバ
A~C エリア