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特開2024-53470被覆プリント配線板の製造方法及び被覆プリント配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053470
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】被覆プリント配線板の製造方法及び被覆プリント配線板
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/38 20060101AFI20240408BHJP
【FI】
H05K3/38 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159781
(22)【出願日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520206988
【氏名又は名称】豊光社テクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 昌子
(72)【発明者】
【氏名】志保 浩司
(72)【発明者】
【氏名】内山 克博
(72)【発明者】
【氏名】安 克彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 茜
【テーマコード(参考)】
5E343
【Fターム(参考)】
5E343AA02
5E343AA13
5E343AA16
5E343AA17
5E343AA18
5E343BB24
5E343BB25
5E343BB28
5E343BB44
5E343BB52
5E343BB67
5E343CC21
5E343CC33
5E343CC34
5E343CC38
5E343CC43
5E343CC44
5E343CC45
5E343CC46
5E343DD76
5E343EE02
5E343EE36
5E343EE52
5E343ER12
5E343ER32
5E343GG03
(57)【要約】
【課題】配線パターンの表面を粗面化処理しなくても、配線パターンとソルダーレジスト層との間の密着性が高く、耐候性にも優れる被覆プリント配線板を得ることができる、被覆プリント配線板の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の一形態は、樹脂層と、上記樹脂層の表面に形成された、金属を含む配線パターンとを有し、上記配線パターンが表面に位置するプリント配線板を用意する工程、上記配線パターンの表面に化合物αを配置する工程、上記化合物αに対する加熱及び紫外線の照射の少なくとも一方の活性化処理を行う工程、並びに上記プリント配線板の表面を部分的に被覆するように、樹脂を含むソルダーレジスト層を形成する工程をこの順に備え、上記化合物αが、樹脂と反応して結合することが可能な第1官能基と、金属と反応して結合することが可能な第2官能基とを有し、上記第1官能基が、アジド基、アジドスルホニル基又はジアジゾメチル基である、被覆プリント配線板の製造方法である。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂層と、上記樹脂層の表面に形成された、金属を含む配線パターンとを有し、上記配線パターンが表面に位置するプリント配線板を用意する工程、
上記配線パターンの表面に化合物αを配置する工程、
上記化合物αに対する加熱及び紫外線の照射の少なくとも一方の活性化処理を行う工程、並びに
上記プリント配線板の表面を部分的に被覆するように、樹脂を含むソルダーレジスト層を形成する工程
をこの順に備え、
上記化合物αが、樹脂と反応して結合することが可能な第1官能基と、金属と反応して結合することが可能な第2官能基とを有し、
上記第1官能基が、アジド基、アジドスルホニル基又はジアジゾメチル基である、被覆プリント配線板の製造方法。
【請求項2】
上記化合物αが芳香環を有し、
上記第1官能基が、上記芳香環に直接結合している、請求項1に記載の被覆プリント配線板の製造方法。
【請求項3】
上記芳香環がベンゼン環である、請求項2に記載の被覆プリント配線板の製造方法。
【請求項4】
上記第2官能基が、シラノール基又はアルコキシシリル基である、請求項1、請求項2又は請求項3に記載の被覆プリント配線板の製造方法。
【請求項5】
上記化合物αが、
下記式(1)又は(2)で表される化合物α1、及び
上記化合物α1を含む加水分解性シラン化合物を加水分解縮合して得られる化合物α2
の少なくとも一方である、請求項4に記載の被覆プリント配線板の製造方法。
【化1】
上記式(1)中、Rは、水素原子、炭素数1から12のアルキル基、フェニル基、炭素数1から12のアルコキシ基、又はヒドロキシ基である。複数のRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基である。Xは、アジド基、アジドスルホニル基、又はジアゾメチル基である。Yは、単結合、エステル基、エーテル基、チオエーテル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基、-NHR-で表される基、又は下記式(3a)若しくは(3b)で表される基である。Rは、炭素数1から6のアルキル基である。Zは、単結合、メチレン基、炭素数2から12のアルキレン基、又は炭素数2から12のアルキレン基の末端若しくは炭素-炭素結合間に-NH-、-O-、-S-及び-S(O)-のうちの1つ以上の基を含む基である。mは、1から3の整数である。R、X、Y及びZが、それぞれ複数の場合、これらはそれぞれ独立して上記定義を満たす。但し、1又は複数のRの少なくとも1つは、炭素数1から12のアルコキシ基又はヒドロキシ基である。
上記式(2)中、複数のR、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1から12のアルキル基、フェニル基、炭素数1から12のアルコキシ基、又はヒドロキシ基であり、複数のR、R及びRのうちの少なくとも1つは、炭素数1から12のアルコキシ基又はヒドロキシ基である。複数のRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基である。Xは、アジド基、アジドスルホニル基、又はジアゾメチル基である。複数のZは、それぞれ独立して、単結合、メチレン基、炭素数2から12のアルキレン基、又は炭素数2から12のアルキレン基の末端若しくは炭素-炭素結合間に-NH-、-O-、-S-及び-S(O)-のうちの1つ以上の基を含む基である。
【化2】
上記式(3a)中、Rは、水素原子又はメチル基である。
【請求項6】
上記プリント配線板を用意する工程が、
上記樹脂層の表面に化合物βを配置する工程、
上記化合物βに対する加熱及び紫外線の照射の少なくとも一方の活性化処理を行う工程、並びに
上記樹脂層の表面に上記配線パターンを形成する工程
をこの順に備え、
上記化合物βが、樹脂と反応して結合することが可能な第3官能基と、金属と反応して結合することが可能な第4官能基とを有する、請求項1に記載の被覆プリント配線板の製造方法。
【請求項7】
上記樹脂層を構成する物質が、樹脂、又は樹脂と、セラミック、ガラス繊維及び紙からなる群より選ばれる少なくとも1種とからなる複合材料である、請求項1に記載の被覆プリント配線板の製造方法。
【請求項8】
上記配線パターンの表面の算術平均粗さ(Ra)が、1.0μm以下である請求項1に記載の被覆プリント配線板の製造方法。
【請求項9】
樹脂層と、上記樹脂層の表面に形成された、金属を含む配線パターンとを有するプリント配線板、及び
上記プリント配線板の表面を部分的に被覆するように形成された、樹脂を含むソルダーレジスト層
を備え、
上記配線パターンと上記ソルダーレジスト層との間には化合物αが介在し、
上記化合物αが、樹脂と反応して結合することが可能な第1官能基と、金属と反応して結合することが可能な第2官能基とを有し、
上記第1官能基が、アジド基、アジドスルホニル基又はジアジゾメチル基であり、
上記配線パターンと上記化合物α、及び上記ソルダーレジスト層と上記化合物αは、それぞれ化学反応により結合している、被覆プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆プリント配線板の製造方法及び被覆プリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
配線パターンが形成されたプリント配線板の表面には、通常、ソルダーレジストによる樹脂層(ソルダーレジスト層)が積層される。ソルダーレジストには、はんだ耐熱性、電気絶縁性、耐候性、機械的強度、配線パターンとの密着性等が求められる。特に、年々高周波化する伝送信号の伝送損失低減の必要性から、表面粗さが小さい平坦な配線パターン表面に対する高い密着性が求められている。
【0003】
上記の密着性を確保する方法として、従来、
(1)配線パターンを形成する銅の表面に銅酸化物の層を形成する方法、
(2)処理液により配線パターンの表面をエッチングして微細な凹凸を設ける方法、
(3)配線パターンとソルダーレジストとの間にシランカップリング剤等を介在させる方法(特許文献1、2参照)、
等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-206115号公報
【特許文献2】特開2022-020415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記(1)の方法の場合、機械的強度が不十分であり、また、銅酸化物は酸に溶解するため、大気雰囲気に露出する部分の耐候性が低いことが懸念される。上記(2)の方法の場合、密着性を確保するために配線パターンの表面を粗面化処理し、表面の凹凸を大きくすると、高周波信号の伝送損失が増加する。また、エッチングにより配線パターンの一部が溶解除去されるため、線細りが顕著であり、配線の微細化への対応が難しい。上記(3)の方法の場合、従来のシランカップリング剤では、配線パターンとソルダーレジストとの間の密着性が十分ではない。
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、配線パターンの表面を粗面化処理しなくても、配線パターンとソルダーレジスト層との間の密着性が高く、耐候性にも優れる被覆プリント配線板を得ることができる、被覆プリント配線板の製造方法、及び配線パターンとソルダーレジスト層との間の密着性が高く、耐候性にも優れる被覆プリント配線板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態は、樹脂層と、上記樹脂層の表面に形成された、金属を含む配線パターンとを有し、上記配線パターンが表面に位置するプリント配線板を用意する工程、上記配線パターンの表面に化合物αを配置する工程、上記化合物αに対する加熱及び紫外線の照射の少なくとも一方の活性化処理を行う工程、並びに上記プリント配線板の表面を部分的に被覆するように、樹脂を含むソルダーレジスト層を形成する工程をこの順に備え、上記化合物αが、樹脂と反応して結合することが可能な第1官能基と、金属と反応して結合することが可能な第2官能基とを有し、上記第1官能基が、アジド基、アジドスルホニル基又はジアジゾメチル基である、被覆プリント配線板の製造方法である。
【0008】
本発明の他の形態は、樹脂層と、上記樹脂層の表面に形成された、金属を含む配線パターンとを有するプリント配線板、及び上記プリント配線板の表面を部分的に被覆するように形成された、樹脂を含むソルダーレジスト層を備え、上記配線パターンと上記ソルダーレジスト層との間には化合物αが介在し、上記化合物αが、樹脂と反応して結合することが可能な第1官能基と、金属と反応して結合することが可能な第2官能基とを有し、上記第1官能基が、アジド基、アジドスルホニル基又はジアジゾメチル基であり、上記配線パターンと上記化合物α、及び上記ソルダーレジスト層と上記化合物αは、それぞれ化学反応により結合している、被覆プリント配線板である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のいずれかの形態によれば、配線パターンの表面を粗面化処理しなくても、配線パターンとソルダーレジスト層との間の密着性が高く、耐候性にも優れる被覆プリント配線板を得ることができる、被覆プリント配線板の製造方法、及び配線パターンとソルダーレジスト層との間の密着性が高く、耐候性にも優れる被覆プリント配線板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る被覆プリント配線板の製造方法の第一の説明図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る被覆プリント配線板の製造方法の第二の説明図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係る被覆プリント配線板の製造方法の第三の説明図である。
図4図4は、本発明の一実施形態に係る被覆プリント配線板の製造方法の第四の説明図である。
図5図5は、本発明の一実施形態に係る被覆プリント配線板の製造方法の第五の説明図である。
図6図6は、本発明の一実施形態に係る被覆プリント配線板の製造方法の第六の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<被覆プリント配線板の製造方法>
本発明の一実施形態に係る被覆プリント配線板の製造方法は、
樹脂層と、上記樹脂層の表面に形成された、金属を含む配線パターンとを有し、上記配線パターンが表面に位置するプリント配線板を用意する工程(プリント配線板用意工程(1))、
上記配線パターンの表面に化合物αを配置する工程(化合物α配置工程(2))、
上記化合物αに対する加熱及び紫外線の照射の少なくとも一方の活性化処理を行う工程(活性化処理工程(3))、並びに
上記プリント配線板の表面を部分的に被覆するように、樹脂を含むソルダーレジスト層を形成する工程(ソルダーレジスト層形成工程(4))
をこの順に備え、
上記化合物αが、樹脂と反応して結合することが可能な第1官能基と、金属と反応して結合することが可能な第2官能基とを有する。
【0012】
当該被覆プリント配線板の製造方法により得られる被覆プリント配線板においては、金属を含む配線パターンと樹脂を含むソルダーレジスト層との間に、所定の官能基を有する化合物αが介在している。このため、当該被覆プリント配線板の製造方法によれば、配線パターンの表面を粗面化処理しなくても、配線パターンとソルダーレジスト層との間の密着性が高く、耐候性にも優れる被覆プリント配線板を得ることができる。耐候性に優れる被覆プリント配線板においては、例えば高温多湿環境下に長時間放置した場合も、高い密着性が維持される。
【0013】
当該製造方法により得られた被覆プリント配線板においては、化合物αが反応しており、配線パターン又はソルダーレジスト層を構成する分子又は原子と結合した状態で配線パターンとソルダーレジスト層との間に存在していてよい。「化合物αが介在している」とは、化合物αが反応しており、他の分子又は原子と結合して存在している場合も含む。後述する化合物βについても同様である。
【0014】
なお、当該製造方法においては、配線パターンの表面を粗面化処理してもよい。但し、配線パターンの表面を粗面化処理しないことで、得られる被覆プリント配線板において高周波信号の伝送損失を低減でき、また、生産性も高まる。
【0015】
当該製造方法において、プリント配線板用意工程(1)は、
上記樹脂層の表面に化合物βを配置する工程(化合物β配置工程(1-1))、
上記化合物βに対する加熱及び紫外線の照射の少なくとも一方の活性化処理を行う工程(活性化処理工程(1-2))、並びに
上記樹脂層の表面に上記配線パターンを形成する工程(配線パターン形成工程(1-3))
をこの順に備え、
上記化合物βが、樹脂と反応して結合することが可能な第3官能基と、金属と反応して結合することが可能な第4官能基とを有することが好ましい。
【0016】
プリント配線板用意工程(1)において、樹脂層上に、所定の官能基を有する化合物βを介在させて配線パターンを形成することで、樹脂層と配線パターンとの間の密着性も高まり、耐候性も向上する。
【0017】
化合物βと化合物αとは、同一の化合物であってもよく、異なる化合物であってもよい。生産性等の観点からは、化合物αと化合物βとで同一の化合物を用いることが好ましい。
【0018】
化合物αが有する「樹脂と反応して結合することが可能な第1官能基」は、ソルダーレジスト層に含まれる樹脂と反応して結合することが可能な基であることが好ましい。化合物βが有する「樹脂と反応して結合することが可能な第3官能基」は、樹脂層に含まれる樹脂と反応して結合することが可能な基であることが好ましい。また、化合物αが有する「金属と反応して結合することが可能な第2官能基」及び化合物βが有する「金属と反応して結合することが可能な第4官能基」は、配線パターンに含まれる金属と反応して結合することが可能な基であることが好ましい。
【0019】
(化合物α)
以下、まず、化合物αの具体的形態及び好適形態について説明する。なお、化合物βの具体的形態及び好適形態は、以下の化合物αの具体的形態及び好適形態と同様である。化合物βの第3官能基は、化合物αの第1官能基と同様であり、化合物βの第4官能基は、化合物αの第2官能基と同様である。
【0020】
化合物αは、樹脂と反応して結合することが可能な第1官能基と、金属と反応して結合することが可能な第2官能基とを有する。化合物αは、2つの物質の接合体(結合体)を界面分子結合により形成させるための材料であると考えられる。界面分子結合は、2つの物質の界面に、ある化合物を介在させ、化学反応により各物質と上記化合物とをそれぞれ化学結合させて上記2つの物質を結合させること、又はその結果生じる結合を意味する。
【0021】
第1官能基は、樹脂と反応して結合することが可能な基である。第1官能基は、樹脂と反応して結合する基であってよい。第1官能基は、アジド基、アジドスルホニル基又はジアゾメチル基(以下、「アジド基、アジドスルホニル基又はジアゾメチル基」をアジド基等とも称する。)である。アジド基等は、化学反応により、主に、樹脂等の有機物と「-N-C-タイプ」等の化学結合を形成することができる。第1官能基がアジド基等であることにより、ソルダーレジスト層(化合物βの場合は樹脂層)と強固な結合が可能となり、優れた耐候性(例えば、高温環境下、多湿環境下、水と接触し得る環境下等に放置後の密着性)等を有する被覆プリント配線板を得ることができる。
【0022】
化合物αは、芳香環を有することが好ましい。さらには、化合物αは芳香環を有し、第1官能基(アジド基、アジドスルホニル基又はジアゾメチル基)が、この芳香環に直接結合していることがより好ましい。芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香族炭素環、及びチオフェン環、フラン環、トリアジン環等の芳香族複素環等が挙げられる。芳香環としては、これらの中でも、芳香族炭素環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。アジド基等がベンゼン環に直接結合している場合、そうでない場合と比べて、紫外線照射又は加熱により、アジド基等から窒素分子(N)が脱離する反応の反応速度が大きくなる。従って、ベンゼン環にアジド基等が直接結合した化合物αを用いることで、比較的低温度及び短時間の加熱処理あるいは比較的低エネルギーの紫外線照射でも、良好な密着性が発現される。このためこのような化合物αを用いることで、効率的な処理が可能となる。また、ベンゼン環にアジド基等が直接結合した化合物αを用いることで、樹脂層等の劣化が生じ難い長波長の紫外線を照射した場合でも、良好な密着性が発現される。
【0023】
第2官能基は、金属と反応して結合することが可能な基である。第2官能基は、金属と反応して結合する基であってよい。第2官能基としては、アミノ基、チオール基、カテコール基、カルボキシ基、ホスホン酸基、シラノール基、アルコキシシリル基等が挙げられ、シラノール基又はアルコキシシリル基が好ましい。シラノール基及びアルコキシシリル基は、化学反応により、主に、金属等の無機物Mと「-Si-O-M-タイプ」の化学結合を形成することができる。第2官能基がこれらの基である場合、配線パターンとより強固な結合が可能となる。
【0024】
アルコキシシリル基とは、ケイ素原子にアルコキシ基(オキシ炭化水素基)が結合した基をいう。アルコキシ基とは、酸素原子に炭化水素基が結合した基をいい、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ビニルオキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基等を挙げることができる。ケイ素原子に結合しているアルコキシ基の数は、1、2又は3であってよく、3が好ましい。アルコキシシリル基においては、ケイ素原子にアルコキシ基以外の基が結合していてもよく、このような基としては、アルキル基、フェニル基、ヒドロキシ基、水素原子等が挙げられる。アルコキシ基としては、炭素数1から12のアルコキシ基が好ましく、炭素数1から3のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基及びプロポキシ基がより好ましい。アルコキシシリル基の例としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリベンジルオキシシリル基などが挙げられる。また、通常、アルコキシシリル基が加水分解することで、シラノール基が生じる。
【0025】
化合物αの好適な一形態としては、
下記式(1)又は(2)で表される化合物α1、及び
化合物α1を含む加水分解性シラン化合物を加水分解縮合して得られる化合物α2
が挙げられる。化合物αが、化合物α1及び化合物α2のうちの少なくとも一方である場合、比較的低温度及び短時間の加熱処理あるいは比較的低エネルギーの紫外線照射でも、良好な密着性が発現される。このためこれらの化合物を用いることで、効率的な処理が可能となる。
【0026】
(化合物α1)
化合物α1は、下記式(1)又は(2)で表される化合物である。すなわち、化合物α1は、第1官能基としてベンゼン環に直接結合したアジド基等を有し、第2官能基としてシラノール基又はアルコキシシリル基を有する化合物αの一例である。
【0027】
【化1】
【0028】
上記式(1)中、Rは、水素原子、炭素数1から12のアルキル基、フェニル基、炭素数1から12のアルコキシ基、又はヒドロキシ基である。複数のRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基である。Xは、アジド基、アジドスルホニル基、又はジアゾメチル基である。Yは、単結合、エステル基、エーテル基、チオエーテル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基、-NHR-で表される基、又は下記式(3a)若しくは(3b)で表される基である。Rは、炭素数1から6のアルキル基である。Zは、単結合、メチレン基、炭素数2から12のアルキレン基、又は炭素数2から12のアルキレン基の末端若しくは炭素-炭素結合間に-NH-、-O-、-S-及び-S(O)-のうちの1つ以上の基を含む基である。mは、1から3の整数である。R、X、Y及びZが、それぞれ複数の場合、これらはそれぞれ独立して上記定義を満たす。但し、1又は複数のRの少なくとも1つは、炭素数1から12のアルコキシ基又はヒドロキシ基である。
【0029】
上記式(2)中、複数のR、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1から12のアルキル基、フェニル基、炭素数1から12のアルコキシ基、又はヒドロキシ基であり、複数のR、R及びRのうちの少なくとも1つは、炭素数1から12のアルコキシ基又はヒドロキシ基である。複数のRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基である。Xは、アジド基、アジドスルホニル基、又はジアゾメチル基である。複数のZは、それぞれ独立して、単結合、メチレン基、炭素数2から12のアルキレン基、又は炭素数2から12のアルキレン基の末端若しくは炭素-炭素結合間に-NH-、-O-、-S-及び-S(O)-のうちの1つ以上の基を含む基である。
【0030】
【化2】
【0031】
上記式(3a)中、Rは、水素原子又はメチル基である。
【0032】
本明細書において、メチレン基とは、メタンから2つの水素原子を取り除いた構造を有する2価の基(-CH-:メタンジイル基)をいう。アルキレン基とは、アルカンから同一又は異なる炭素原子に結合する2つの水素原子を取り除いた構造を有する2価の基(アルカンジイル基)をいう。
【0033】
、R、R及びRで表される炭素数1から12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基等が挙げられる。
、R、R及びRで表される炭素数1から12のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。
及びRで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
及びRで表される1価の有機基としては、1価の炭化水素基、アルコキシ基、-Y-Z-Si-R (Y、Z及びRは、式(1)中のY、Z及びRとそれぞれ同義である。)で表される基、-COO-N-(-Z-SiR(Z、R、R及びRは、式(2)中のZ、R、R及びRとそれぞれ同義である。)、後述する式(14)で表される基等が挙げられる。
で表される炭素数1から6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
【0034】
式(1)で表される化合物の好適な形態は以下の通りである。
としては、炭素数1から12のアルコキシ基が好ましく、炭素数1から6のアルコキシ基がより好ましく、炭素数1から3のアルコキシ基がさらに好ましい。
としては、水素原子が好ましい。
としては、アジド基及びアジドスルホニル基が好ましい。Xは、Y等を含む基に対してパラ位又はメタ位に結合していることが好ましい。
としては、アミド基が好ましく、*-CONH-(*は、ベンゼン環との結合部位を示す。)で表されるアミド基がより好ましい。
としては、炭素数2から12のアルキレン基が好ましく、炭素数2から6のアルキレン基がより好ましい。
mは、3が好ましい。
【0035】
式(2)で表される化合物の好適な形態は以下の通りである。
、R及びRとしては、炭素数1から12のアルコキシ基が好ましく、炭素数1から6のアルコキシ基がより好ましく、炭素数1から3のアルコキシ基がさらに好ましい。
としては、水素原子が好ましい。
としては、アジド基及びアジドスルホニル基が好ましい。Xは、-COO-N-(-Z-SiRで表される基に対してパラ位又はメタ位に結合していることが好ましい。
としては、炭素数2から12のアルキレン基が好ましく、炭素数2から6のアルキレン基がより好ましい。
【0036】
化合物α1は、下記式(11)、(12)又は(13)で表される化合物であってもよい。
【0037】
【化3】
【0038】
上記式(11)~(14)中、X10、X11及びX12は、それぞれ独立して、アジド基、アジドスルホニル基又はジアゾメチル基である。E11及びE12は、それぞれ独立して、カルボニル基、メチレン基又は炭素数2から12のアルキレン基である。Y11、Y12、Y13及びY14は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1から12のアルキル基、又は-J13-Si(OA103-k(R10で表される基である。J11、J12及びJ13は、それぞれ独立して、メチレン基、炭素数2から12のアルキレン基、又は炭素数2から12のアルキレン基の炭素-炭素結合間に酸素原子(-O-)を含む基である。Y15は、-R15又は-OA15で表される基である。Y16は、-R16又は-OA16で表される基である。A10、A15及びA16は、それぞれ独立して、炭素数1から4のアルキル基、ベンジル基又は水素原子である。R10、R15及びR16は、それぞれ独立して、炭素数1から4のアルキル基又はベンジル基である。kは、0から2の整数である。Q10は、水素原子又は式(4)で表される有機基である。式(11)及び(12)において、Y11とY12との少なくとも一方は、酸素原子を含む。式(13)において、Y15とY16との少なくとも一方は酸素原子を含む。式(13)において、ベンゼン環に結合している基X11及びX12は、それぞれ独立して、パラ位又はメタ位に結合している。
【0039】
(化合物α1の合成方法)
化合物α1の合成方法は特に限定されないが、例えば、アルコキシシリル基と、アルコキシシリル基以外の反応性基aとを有するシランカップリング剤Aと、上記反応性基aと結合反応可能な反応性基bと、ベンゼン環と、アジド基、アジドスルホニル基及びジアゾメチル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基とを有する化合物Bとを公知の方法により反応させることにより得ることができる。反応性基aと反応性基bとの組み合わせとしては、イソシアネート基、エポキシ基、アミノ基等と、カルボキシ基との組み合わせなどが挙げられる。
【0040】
シランカップリング剤Aとしては、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス(3-アミノプロピル)ジエトキシシラン、ビス(3-アミノプロピル)ジメトキシシラン等が挙げられる。
【0041】
化合物Bとしては、アジド安息香酸、アジドスルホニル安息香酸、ジアゾメチル安息香酸、3-(4-アジドフェニル)プロピオン酸、これらのカルボン酸の塩化物、アジドアニリン、アジドフェノール等が挙げられる。
【0042】
(化合物α2)
化合物α2においては、通常、未反応のアルコキシシリル基が残存している。すなわち、化合物α2も、第1官能基としてベンゼン環に直接結合したアジド基等を有し、第2官能基としてシラノール基又はアルコキシシリル基を有する化合物αの一例である。
【0043】
化合物α1を含む加水分解性シラン化合物を加水分解縮合して得られる化合物α2は、化合物α1に由来する構造単位Aを有する。化合物α2は、構造が化合物α1を含む加水分解性シラン化合物を加水分解縮合して得られる化合物と同一であれば、他の合成方法により得られたものであってもよい。化合物α2は、シルセスキオキサン化合物であることが好ましい。化合物α2は、アルコキシシリル基及びヒドロキシシリル基の少なくとも一方を有することが好ましく、ヒドロキシシリル基を有することがより好ましい。
【0044】
構造単位Aとしては、下記式(4)で表される構造単位が挙げられる。下記式(4)で表される構造単位は、mが3である式(1)で表される化合物α1に由来する構造単位である。
【0045】
【化4】
【0046】
上記式(4)中、R、R、X、Y及びZは、式(1)中のR、R、X、Y及びZとそれぞれ同義である。aは、0から2の整数である。
【0047】
式(4)中のR、R、X、Y及びZの具体例は、式(1)中のR、R、X、Y及びZの具体例と同様である。式(4)中のRは、反応性等の観点からはヒドロキシ基又はアルコキシ基であることが好ましく、ヒドロキシ基であることがより好ましい。aは、1が好ましい。
【0048】
化合物α2における全構造単位に対する構造単位Aの含有量の下限は、10モル%が好ましく、20モル%がより好ましく、30モル%がさらに好ましい。一方、この含有量の上限は、90モル%が好ましく、80モル%がより好ましく、70モル%がさらに好ましい。
【0049】
化合物α2は、アミノ基(-NH)を含む構造単位Bを有することが好ましい。化合物α2が構造単位Bを有する場合、化合物α2の水溶性が向上するなどの利点がある。構造単位Bを与える加水分解性シラン化合物としては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0050】
化合物α2における全構造単位に対する構造単位Bの含有量の下限は、10モル%が好ましく、20モル%がより好ましく、30モル%がさらに好ましい。一方、この含有量の上限は、90モル%が好ましく、80モル%がより好ましく、70モル%がさらに好ましい。
【0051】
化合物α2は、構造単位A及び構造単位B以外の構造単位Cを有していてもよい。構造単位Cを与える加水分解性シラン化合物としては、下記式(C)で表される化合物が挙げられる。
【0052】
【化5】
【0053】
上記式(C)中、Rは、水素原子、炭素数1から10のアルキル基、炭素数2から10のアルケニル基、炭素数6から15のアリール基、又は反応性基を有する有機基であり、複数のRはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。Rは、水素原子、炭素数1から10のアルキル基、炭素数2から6のアシル基、又は炭素数6から15のアリール基であり、複数のRはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。xは0から3の整数を表す。また、これらのアルキル基、アルケニル基、アリール基はいずれも無置換体及び置換体のどちらでもよく、特性に応じて選択できる。
【0054】
及びRで表されるアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、n-デシル基、トリフルオロメチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、3-グリシドキシプロピル基、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、〔(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ〕プロピル基、3-メルカプトプロピル基、3-イソシアネートプロピル基等が挙げられる。Rで表されるアルケニル基の具体例としては、ビニル基、3-アクリロキシプロピル基、3-メタクリロキシプロピル基等が挙げられる。R及びRで表されるアリール基の具体例としては、フェニル基、トリル基、p-ヒドロキシフェニル基、p-メトキシフェニル基、1-(p-ヒドロキシフェニル)エチル基、2-(p-ヒドロキシフェニル)エチル基、4-ヒドロキシ-5-(p-ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)ペンチル基、ナフチル基等が挙げられる。Rで表される反応性基を有する有機基としては、イソシアネート基、イソシアヌレート構造とアルコキシシリル基とを有する基等が挙げられる。Rで表される反応性基を有する有機基の炭素数としては、1以上40以下が好ましい。Rで表されるアシル基の具体例としては、アセチル基が挙げられる。
【0055】
式(C)において、x=0の場合は4官能性シラン、x=1の場合は3官能性シラン、x=2の場合は2官能性シラン、x=3の場合は1官能性シランである。
【0056】
式(C)で表される加水分解性シラン化合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラフェノキシシランなどの4官能性シラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリn-ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリn-ブトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p-ヒドロキシフェニルトリメトキシシラン、p-メトキシフェニルトリメトキシシラン、1-(p-ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2-(p-ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、4-ヒドロキシ-5-(p-ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)ペンチルトリメトキシシラン、1-ナフチルトリメトキシシラン、2-ナフチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、〔(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ〕プロピルトリメトキシシラン、〔(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ〕プロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸などの3官能性シラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジn-ブチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシランなどの2官能性シラン、トリメチルメトキシシラン、トリn-ブチルエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)ジメチルエトキシシランなどの1官能性シランが挙げられる。
【0057】
また、式(C)で表される加水分解性シラン化合物には、1,3,5-トリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]イソシアヌレート等、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を5個以上有する化合物も含まれる。
【0058】
加水分解性シラン化合物は、1種を単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0059】
化合物α2の重量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、好ましくはGPC(ゲルパーミネーションクロマトグラフィ)で測定されるポリスチレン換算で1,000以上100,000以下、さらに好ましくは2,000以上50,000以下である。
【0060】
(化合物α2の合成方法)
化合物α2は、(i)化合物α1を含む加水分解性シラン化合物を加水分解縮合して得る方法、(ii)加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物であって、構造単位Bを有する化合物に対して、「アミノ基と結合反応可能な反応性基と、ベンゼン環と、アジド基、アジドスルホニル基及びジアゾメチル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基とを有する化合物X」(アジド安息香酸、アジドスルホニル安息香酸、ジアゾメチル安息香酸等)を反応させて得る方法などが挙げられる。上記(ii)においては、構造単位B中のアミノ基が化合物Xと反応することにより、構造単位Aが形成される。
【0061】
化合物α2を得るための加水分解縮合には、一般的な方法を用いることができる。例えば、加水分解性シラン化合物に溶媒、水、必要に応じて触媒を添加し、30から150℃で0.5から100時間程度加熱撹拌する。なお、撹拌中、必要に応じて、蒸留によって加水分解副生物(メタノールなどのアルコール)及び縮合副生物(水)等の留去を行ってもよい。
【0062】
必要に応じて添加される触媒に特に制限はないが、酸触媒及び塩基触媒が好ましく用いられる。酸触媒の具体例としては塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、多価カルボン酸又はその無水物、イオン交換樹脂等が挙げられる。塩基触媒の具体例としては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アミノ基を有するアルコキシシラン、イオン交換樹脂等が挙げられる。触媒の添加量は、加水分解性シラン化合物100質量部に対して0.01から10質量部が好ましい。
【0063】
化合物α2を含む溶液の貯蔵安定性の観点から、加水分解縮合後の溶液には触媒が含まれないことが好ましく、必要に応じて触媒の除去を行うことができる。除去方法としては特に制限は無いが、好ましくは水洗浄又はイオン交換樹脂の処理が挙げられる。水洗浄とは、溶液を適当な疎水性溶剤で希釈した後、水で数回洗浄して得られた有機層をエバポレーターで濃縮する方法である。イオン交換樹脂での処理とは、溶液を適当なイオン交換樹脂に接触させる方法である。
【0064】
加水分解縮合の反応に用いる溶媒は特に制限はないが、好ましくはアルコール性水酸基を有する化合物が用いられる。アルコール性水酸基を有する化合物は特に制限されないが、好ましくは大気圧下の沸点が110から250℃である化合物である。
【0065】
アルコール性水酸基を有する化合物の具体例としては、アセトール、3-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブタノン、4-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブタノン、5-ヒドロキシ-2-ペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン(ジアセトンアルコール)、乳酸エチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノt-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールなどが挙げられる。なお、これらのアルコール性水酸基を有する化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0066】
また、溶媒としては、アルコール性水酸基を有する化合物と共にその他の溶媒を用いてもよい。その他の溶媒としては、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシ-1-ブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシ-1-ブチルアセテート、アセト酢酸エチルなどのエステル類、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセチルアセトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジn-ブチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、などのエーテル類、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、炭酸プロピレン、N-メチルピロリドン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノンなどが挙げられる。
【0067】
化合物α1及び化合物α2としては、より具体的には下記式(15)、(16)、(17)、(18a)、(18b)、(18c)又は(19)で表される化合物を挙げることができる。式(15)、(16)、(17)、(18a)、(18b)又は(18c)で表される化合物は、化合物α1の具体例である。式(19)で表される化合物は、化合物α2の具体例である。式(15)、(16)及び(17)中、Etはエチル基を表す。
【0068】
【化6】
【0069】
【化7】
【0070】
式(19)で表される化合物は、式(19)中に示された3種類の構造単位が、それぞれl個、m個、n個結合して構成されるシルセスキオキサン化合物であり、Xはアジド基であり、lは0以上の任意の整数、mは1以上の任意の整数、nは0以上の任意の整数である。R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基又は-O-である。Rは、水素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数2以上10以下のアルケニル基、炭素数6以上15以下のアリール基、又は反応性基を有する有機基であり、複数のRはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。これらのアルキル基、アルケニル基、アリール基はいずれも無置換体及び置換体のどちらでもよく、特性に応じて選択できる。式(19)で表される化合物(「IMB-4KP」)は、例えば、l:m:n=1:1:0の場合には水溶性である。一般に、この化合物は、比l/(m+n)の値が0に近い場合(例えば、0.2未満又は0.1未満)を除いて水溶性である。すなわち、比l/(m+n)の値の下限は、水溶性の観点から、0.2が好ましく、0.5がより好ましく、1がさらに好ましい。比l/(m+n)の値の上限は、5が好ましく、2がより好ましい。
【0071】
化合物αの他の形態としては、
下記式(5)で表される化合物α3、及び
化合物α3を含む加水分解性シラン化合物を加水分解縮合して得られる化合物α4
が挙げられる。
【0072】
(化合物α3)
化合物α3は、下記式(5)で表される化合物である。
【0073】
【化8】
【0074】
上記式(5)中、X21は、第1官能基である。X22は、第1官能基又は-N(R21で表される基である。複数のR21は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1以上24以下の炭化水素基、又は-R22-Si(OR233-p(R24で表される基である。R22は、メチレン基又は炭素数2以上12以下のアルキレン基である。R23は、水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基である。R24は、炭素数1以上4以下のアルキル基である。pは、0以上2以下の整数である。但し、式(5)で表される化合物が有する複数のR21のうちの少なくとも一つは、-R22-Si(OR233-p(R24で表される基である。
【0075】
21又はX22で表される第1官能基は、アジド基、アジドスルホニル基又はジアゾメチル基であり、アジド基が好ましい。
【0076】
22は、第1官能基であることが好ましい。
【0077】
化合物α3としては、例えば(株)いおう化学研究所製のn-TES、P-TES、A-TES等を用いることができる。
【0078】
化合物α3の具体例としては、2,4-ジアジド-6-(3-トリエトキシシリルプロピル)アミノ-1,3,5-トリアジン(以下、「IMB-P」と呼ぶ)、2,4-ジアジド-6-(4-トリエトキシシリルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン、6-(3-トリエトキシシリルプロピル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、2,4-ジアミノ-6-(3-トリエトキシシリルプロピル)アミノ-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
【0079】
(化合物α4)
化合物α4は、化合物α3を含む加水分解性シラン化合物を加水分解縮合して得られる化合物である。化合物α4は、化合物α1に替えて化合物α3が用いられていること以外は化合物α2と同様の加水分解縮合物である。
【0080】
以下、本発明の一実施形態に係る被覆プリント配線板の製造方法の各工程について順に具体的に説明する。
【0081】
(プリント配線板用意工程(1))
プリント配線板用意工程(1)は、上述のように、例えば、化合物β配置工程(1-1)、活性化処理工程(1-2)及び配線パターン形成工程(1-3)をこの順に備える。
【0082】
(化合物β配置工程(1-1))
化合物β配置工程(1-1)は、樹脂層12の表面に化合物βを配置する工程である(図1参照)。樹脂層12は、基板11の最表層である。基板11は、樹脂層12以外の他の層を有していてよい。他の層としては、他の樹脂層、金属層等が挙げられる。金属層は、金属配線パターンであってもよい。他の樹脂層、金属層等は、それぞれ複数存在していてもよい。基板11は、樹脂層12のみからなるものであってもよい。
【0083】
基板11は、フレキシブル基板であってもよい。基板11がフレキシブル基板である場合、当該製造方法によって、繰り返し折り曲げても、配線パターンとソルダーレジスト層との間の高い密着性及び耐候性が維持された、フレキシブルな被覆プリント配線板を得ることができる。
【0084】
樹脂層12は、樹脂を含む層である。樹脂層12は、通常、絶縁性の層である。樹脂層12における樹脂の含有量の下限としては、30質量%が好ましく、50質量%がより好ましく、70質量%、80質量%又は90質量%であってもよい。樹脂層12における樹脂の含有量の上限としては、100質量%であってもよく、99.9質量%又は99質量%であってもよい。樹脂層12は、プリプレグであってよい。
【0085】
樹脂層12を構成する物質としては、樹脂、又は樹脂と、セラミック、ガラス繊維及び紙からなる群より選ばれる少なくとも1種とからなる複合材料であることが好ましい。
【0086】
樹脂としては、ポリイミド(PI)、ポリアミド、フッ素系樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンエーテル、シクロオレフィンポリマー(COP)、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT)、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等)、ナイロン(ナイロン6,10、ナイロン4,6等)、アクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド等)、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリスチレン、ポリウレタン等が挙げられる。これらの中でも、PI、PTFE又はエポキシ樹脂が好ましい。PIは、熱可塑性ポリイミド(TPI)又は変性ポリイミド(TPI)であってもよい。
【0087】
セラミックとしては、アルミナセラミック等が挙げられる。
【0088】
ガラス繊維は、織布又は不織布であってもよい。
【0089】
複合材料としては、織布又は不織布状のガラス繊維、紙等に樹脂が含浸されたもの、樹脂中にガラス繊維等が分散したもの、複数の樹脂が混合されたもの等が挙げられる。
【0090】
複合材料の具体例としては、ガラス織布と紙との複合基材にエポキシ樹脂が含浸した複合材料(SEM1)、ガラス織布とガラス不織布との複合基材にエポキシ樹脂が含浸した複合材料(SEM3)、紙基材にフェノール樹脂が含浸した複合材料(FR1、FR2)、紙基材にエポキシ樹脂が含浸した複合材料(FR3)、ガラス織布にエポキシ樹脂が含浸した複合材料(FR4、FR5)、ビスマレイミドトリアジン及びエポキシ樹脂の複合、ポリイミド樹脂が含浸した多層のガラス織布の複合材料、ガラス繊維で補強されたポリフェニレンオキシド/エポキシ樹脂、無機フィラーを含むエポキシ樹脂の複合材料等が挙げられる。
【0091】
樹脂層12の平均厚さとしては特に限定されず、例えば1μm以上1mm以下であってもよく、10μm以上500μm以下であってもよい。なお、本明細書において「平均厚さ」とは、任意の10ヶ所で測定した厚さの平均値を意味する。
【0092】
なお、化合物β配置工程(1-1)の前に、樹脂層12に対する脱脂洗浄工程及び表面改質前処理工程の少なくとも一方を設けてもよい。ここでの脱脂洗浄工程は、溶剤等を用いて樹脂層12の表面を洗浄する工程である。例えば、樹脂層12を有する基板11をアセトン、エタノール等の溶剤に浸漬して超音波洗浄し、乾燥させることにより行うことができる。
【0093】
ここでの表面改質前処理工程は、樹脂層12に対して表面改質のための前処理を行う工程である。前処理としては、樹脂層12に対して酸素プラズマ、大気プラズマ等のプラズマで処理するプラズマ処理、樹脂層12の表面にコロナ放電照射を行うコロナ放電処理、酸処理、アルカリ処理、紫外線照射処理、例えば樹脂層12がフッ素樹脂を含む場合の樹脂層12をアルカリ金属溶液に浸漬して脱フッ素化を行う脱フッ素化処理等が挙げられる。各前処理を施した樹脂層12に対して、シリコンクリーナ、酸クリーナ等の洗浄溶剤に浸漬して超音波洗浄することが好ましい。
【0094】
化合物β配置工程(1-1)は、例えば、樹脂層12の表面に、化合物βを含む第1表面処理剤を塗布することにより行うことができる。化合物βは、1種又は2種以上を用いることができる。
【0095】
なお、本明細書において「塗布する」とは、液体を対象の物体に「付着させる」又は「接触状態で存在させる」ことをいい、刷毛等により塗ることの他、滴下、スプレー、スピンコート、ロール、インクジェット等の印刷、浸漬等の方法により「付着させる」又は「接触状態で存在させる」ことを含む。
【0096】
化合物βを含む第1表面処理剤は、通常、化合物βと溶媒とを含む溶液である。溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、セルソルブ、カルビトール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、オクタデカン等の脂肪族炭化水素、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、フタル酸メチル等のエステル、テトラヒドロフラン(THF)、エチルブチルエーテル、アニソール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等のエーテル、水等を用いることができる。また、加水分解縮合に用いられる溶媒として例示した溶媒も用いることができる。これらの中でも、アルコール、エーテル及び水が好ましく、アルコールがより好ましい。溶媒中のアルコールの含有量の下限は、50体積%が好ましく、70体積%がより好ましく、90体積%、99体積%又は100体積%がさらに好ましい。溶媒は、1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0097】
第1表面処理剤(化合物βを含む溶液)における化合物βの濃度としては、0.05質量%以上5質量%以下が好ましく、0.1質量%以上1.5質量%以下がより好ましく、0.2質量%以上0.8質量%以下がさらに好ましい。化合物βの濃度を上記範囲とすることで、適度な量の化合物βを効果的に樹脂層12の表面に配置することなどができるため、樹脂層12と配線パターン13との密着性等を高めることができる。
【0098】
第1表面処理剤は、化合物β及び溶媒以外の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、化合物βを合成したときの未反応物、副反応生成物、界面活性剤等を挙げることができる。但し、第1表面処理剤における全固形分(溶媒以外の全成分)に対する化合物βの含有量としては、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。第1表面処理剤における全固形分に対する化合物βの含有量は100質量%であってもよい。
【0099】
第1表面処理剤を樹脂層12の表面に塗布する方法としては、従来公知のコーティング方法、例えば、インクジェット方式、グラビアコート方式、キスコート方式、ダイコート方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレードコート方式、ロールコート方式、ナイフコート方式、スプレーコート方式、バーコート方式、スピンコート方式、ディップコート方式等が挙げられる。第1表面処理剤を塗布したときの塗膜の厚さ(ウェット厚さ)の下限としては、例えば100nmが好ましく、1μmがより好ましい。一方、この塗膜の厚さ(ウェット厚さ)の上限としては、例えば、20μmが好ましく、10μmがより好ましい。ディップコート方式を用いた場合の浸漬時間としては、例えば3秒以上60秒以下が好ましい。
【0100】
(活性化処理工程(1-2))
活性化処理工程(1-2)は、樹脂層12の表面に配置された化合物β(化合物βを含む第1表面処理剤)に対して、加熱及び紫外線照射の少なくとも一方の活性化処理を行う工程である。ここでの活性化処理とは、化合物βが有する第3官能基及び第4官能基のうちの少なくとも一方の反応性を高める処理をいう。この処理における加熱温度の下限としては、例えば80℃が好ましく、90℃がより好ましい。加熱温度の上限としては、150℃が好ましく、120℃がより好ましい。加熱時間の下限としては、1分が好ましく、3分がより好ましく、5分がさらに好ましく、7分がよりさらに好ましい。一方、この加熱時間の上限としては、60分が好ましく、20分がより好ましい。また、紫外線照射は、例えば230nm以上300nm以下、好ましくは240nm以上280nm以下の波長領域を含む紫外線を照射することが好ましい。なお、活性化処理工程(1-2)の前に、塗布された化合物βを含む第1表面処理剤を乾燥させる工程を別途設けてもよいし、活性化処理工程(1-2)において、塗布された化合物βを含む第1表面処理剤を乾燥させてもよい。加熱と紫外線照射とを併用してもよい。加熱と紫外線照射とを併用する場合、いずれか一方を先に行ってもよく、同時に行ってもよい。
【0101】
(配線パターン形成工程(1-3))
配線パターン形成工程(1-3)は、化合物βが配置された樹脂層12の表面に、配線パターン13を形成する工程である(図2参照)。
【0102】
配線パターン13は、金属を含む。配線パターン13は、導電性を有する。配線パターン13における金属の含有量の下限としては、90質量%が好ましく、99質量%がより好ましく、99.9質量%がさらに好ましい。配線パターン13における金属の含有量が上記下限以上であることにより、配線パターン13は良好な導電性を発揮することができる。配線パターン13における金属の含有量の上限は、100質量%であってよい。配線パターン13は、金属配線パターンであってよい。
【0103】
配線パターン13に含まれる金属としては、銀、銅、アルミニウム、ニッケル等を挙げることができるが、銅又は銅合金が好ましい。配線パターン13は、1種又は2種以上の金属を含んでいてよい。配線パターン13は、銅配線パターン又は銅合金配線パターンであってよい。
【0104】
形成される配線パターン13の平均厚さとしては、10μm以上1mm以下が好ましく、30μm以上400μm以下がより好ましい。
【0105】
配線パターン13は、金属箔の接合、めっき、エッチング、これらの組み合わせ等を用いた、従来公知の方法により形成することができる。以下、配線パターン13を形成するいくつかの方法について説明する。但し、配線パターン13を形成する方法は、これらの方法に限定されるものではない。
【0106】
(方法1)
樹脂層12の表面に、金属箔を熱プレスして接合する。金属箔としては、銅箔を好適に用いることができる。
【0107】
次いで、金属箔の表面に感光性樹脂層を設ける。感光性樹脂層は、ドライフィルムレジストの貼り付けにより設けてもよく、液状の感光性樹脂組成物の塗布及び乾燥により設けてもよい。ドライフィルムレジスト及び液状の感光性樹脂組成物は、従来公知のものを用いることができる。感光性樹脂層は、例えば、光重合開始剤、架橋性成分及び現像性成分を含有することが好ましい。感光性樹脂層が光重合開始剤及び架橋性成分を含有することにより、露光によって架橋構造が形成され、露光部が硬化することができる。また、感光性樹脂層が、アルカリ水溶液等の現像液に対する溶解性を有する現像性成分を含有することにより、アルカリ水溶液等を用いた現像によってパターンを形成することができる。この現像性成分は、例えば、カルボキシ基等の酸性基を有する成分であってよく、アルカリ可溶性の樹脂であってもよい。架橋性成分と現像性成分とは同一の成分であってもよい。その他、感光性樹脂層には、可塑剤、消泡剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤等の添加剤が含有されていてもよい。
【0108】
次いで、感光性樹脂層に対して、マスクパターンを有するフォトマスクを介して露光を行い、その後、現像を行う。これにより、金属箔の表面に感光性樹脂層のパターンが形成される。次いで、感光性樹脂層のパターンをレジストパターンとして、エッチングにより金属箔をパターニングすることにより、配線パターン13が得られる。残存する感光性樹脂層のパターンを溶解除去等により除去することで、プリント配線板14が得られる。
【0109】
(方法2)
樹脂層12の表面に、無電解めっきを行い、無電解めっき層を設ける。無電解めっきとしては、無電解銅めっきが好ましい。無電解めっきは、従来公知の方法により行うことができる。次いで、無電解めっき層の表面に感光性樹脂層を設ける。この感光性樹脂層は、方法1に記載の方法と同様の方法で設けることができる。次いで、感光性樹脂層に対して、マスクパターンを有するフォトマスクを介して露光を行い、その後、現像を行う。これにより、無電解めっき層の表面に感光性樹脂層のパターンが形成される。その後、電解めっきを行い、感光性樹脂層のパターンが無い部分に電解めっき層を積層させることで、無電解めっき層に対して部分的に厚付けする。電解めっきとしては、電解銅めっきが好ましい。電解めっきは、従来公知の方法により行うことができる。次いで、感光性樹脂層のパターンを溶解除去等により除去する。次いで、無電解めっき層に部分的に電解めっき層が厚付けされてなる金属層に対してフラッシュエッチングを行うことで、電解めっき層が設けられていない無電解めっき層のみの部分が除去され、厚付けされた部分(無電解めっき層上に電解めっき層が厚付けされた部分)が残り、配線パターン13が形成される。以上の手順でプリント配線板14が得られる。
【0110】
(方法3)
樹脂層12の表面に、極薄金属箔(例えば、平均厚さ3μm以上5μm以下の銅箔)を熱プレスして接合する。次いで、極薄金属箔の表面に感光性樹脂層を設ける。この感光性樹脂層は、方法1に記載の方法と同様の方法で設けることができる。感光性樹脂層に対して、マスクパターンを有するフォトマスクを介して露光を行い、その後、現像を行う。これにより、極薄金属箔の表面に感光性樹脂層のパターンが形成される。その後、電解めっきを行い、感光性樹脂層のパターンが無い部分に電解めっき層を積層させることで、極薄金属箔に対して部分的に厚付けする。電解めっきとしては、電解銅めっきが好ましい。次いで、感光性樹脂層のパターンを溶解除去等により除去する。次いで、極薄金属箔に部分的に電解めっき層が厚付けされてなる金属層に対してフラッシュエッチングを行うことで、電解めっき層が設けられていない極薄金属箔のみの部分が除去され、厚付けされた部分(極薄金属箔上に電解めっき層が厚付けされた部分)が残り、配線パターン13が形成される。以上の手順でプリント配線板14が得られる。
【0111】
以上の工程により、樹脂層12と、樹脂層12の表面に形成された、金属を含む配線パターン13とを有し、配線パターン13が表面に位置するプリント配線板14が用意される。なお、図2においては、樹脂層12の表面が露出した部分には、化合物βが残存していないように示しているが、樹脂層12の表面が露出した部分に化合物βが残存していてもよい。また、当該製造方法で用意されるプリント配線板は、他の方法により用意されたものであってもよい。例えば、購入したプリント配線板を用いてもよい。
【0112】
(化合物α配置工程(2))
化合物α配置工程(2)は、樹脂層12に積層された配線パターン13の表面に化合物αを配置する工程である(図3参照)。本工程において、化合物αは、樹脂層12の表面(樹脂層12が露出した部分)にまでも配置されていてもよい。
【0113】
化合物α配置工程(2)の前に、配線パターン13に対する脱脂洗浄工程及び表面改質前処理工程の少なくとも一方を設けてもよい。ここでの脱脂洗浄工程は、溶剤等を用いて配線パターン13の表面を洗浄する工程である。例えば、配線パターン13が設けられたプリント配線板14をアセトン、エタノール等の溶剤に浸漬して超音波洗浄し、乾燥させることにより行うことができる。
【0114】
また、ここでの表面改質前処理工程は、配線パターン13に対して表面改質のための前処理を行う工程である。前処理としては、配線パターン13の表面にコロナ放電照射を行うコロナ放電処理、酸処理、アルカリ処理、紫外線照射処理、配線パターン13の表面をシランカップリング剤等のカップリング剤を混入した燃焼ガスの燃焼炎にさらすイトロ処理等が挙げられる。これらの中でも、イトロ処理が好ましい。イトロ処理は、化合物αの効果を妨げず、寧ろ相乗効果により特に優れた密着性を発揮することができる。各前処理を施した配線パターン13に対して、シリコンクリーナ、酸クリーナ等の洗浄溶剤に浸漬して超音波洗浄することが好ましい。
【0115】
化合物α配置工程(2)に供されるプリント配線板14における配線パターン13は、プラズマ処理等の粗面化処理が施されていないことが好ましい。配線パターン13が粗面化処理されていない場合、得られる被覆プリント配線板において、高周波信号の伝送損失を低減することができる。このような理由から、化合物α配置工程(2)に供されるプリント配線板14における配線パターン13の表面の算術平均粗さ(Ra)の上限は、1.0μmが好ましく、0.85μmがより好ましく、0.7μmがさらに好ましく、0.6μmがよりさらに好ましく、0.5μmが特に好ましい。また、当該製造方法においては、配線パターン13の表面の算術平均粗さ(Ra)が上記上限以下である場合であっても、配線パターン13とソルダーレジスト層17との間の密着性が高い。配線パターン13の表面の算術平均粗さ(Ra)の下限は、0.01μmであってもよく、0.1μmであってもよく、0.2μmであってもよい。
【0116】
なお、本明細書において「算術平均粗さ(Ra)」とは、JIS-B0601:2001に準じ、カットオフ(λc)2.5mm、評価長さ(l)12.5mmで測定される値を意味する。
【0117】
化合物α配置工程(2)は、例えば、配線パターン13表面に、化合物αを含む第2表面処理剤を塗布することにより行うことができる。化合物αは、1種又は2種以上を用いることができる。第2表面処理剤は、第1表面処理剤と同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0118】
化合物αを含む第2表面処理剤は、通常、化合物αと溶媒とを含む溶液である。この溶媒としては、上記した第1表面処理剤に用いられる溶媒と同様のものが挙げられ、アルコール、エーテル及び水が好ましく、アルコールがより好ましい。溶媒中のアルコールの含有量の下限は、50体積%が好ましく、70体積%がより好ましく、90体積%、99体積%又は100体積%がさらに好ましい。溶媒は、1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0119】
第2表面処理剤(化合物αを含む溶液)における化合物αの濃度としては、0.05質量%以上5質量%以下が好ましく、0.1質量%以上1.5質量%以下がより好ましく、0.2質量%以上0.8質量%以下がさらに好ましい。化合物αの濃度を上記範囲とすることで、適度な量の化合物αを効果的に配線パターン13の表面に配置することなどができるため、配線パターン13とソルダーレジスト層17との密着性等を高めることができる。
【0120】
第2表面処理剤は、化合物α及び溶媒以外の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、化合物αを合成したときの未反応物、副反応生成物、界面活性剤等を挙げることができる。但し、第2表面処理剤における全固形分(溶媒以外の全成分)に対する化合物αの含有量としては、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。第2表面処理剤における全固形分に対する化合物αの含有量は100質量%であってもよい。
【0121】
第2表面処理剤を配線パターン13の表面に塗布する方法としては、上記した第1表面処理剤を樹脂層12の表面に塗布する方法として例示したものと同様の方法が挙げられる。第2表面処理剤を塗布したときの塗膜の厚さ(ウェット厚さ)の下限としては、例えば100nmが好ましく、1μmがより好ましい。一方、この塗膜の厚さ(ウェット厚さ)の上限としては、例えば、20μmが好ましく、10μmがより好ましい。ディップコート方式を用いた場合の浸漬時間としては、例えば3秒以上60秒以下が好ましい。
【0122】
(活性化処理工程(3))
活性化処理工程(3)は、配線パターン13の表面に配置された化合物α(化合物αを含む第2表面処理剤)に対して、加熱及び紫外線照射の少なくとも一方の活性化処理を行う工程である。ここでの活性化処理とは、化合物αが有する第1官能基及び第2官能基のうちの少なくとも一方の反応性を高める処理をいう。この処理における加熱温度の下限としては、例えば80℃が好ましく、90℃がより好ましい。加熱温度の上限としては、150℃が好ましく、120℃がより好ましい。加熱時間の下限としては、1分が好ましく、3分がより好ましく、5分がさらに好ましく、7分がよりさらに好ましい。一方、この加熱時間の上限としては、60分が好ましく、20分がより好ましい。また、紫外線照射は、例えば230nm以上300nm以下、好ましくは240nm以上280nm以下の波長領域を含む紫外線を照射することが好ましい。なお、活性化処理工程(3)の前に、塗布された化合物αを含む第2表面処理剤を乾燥させる工程を別途設けてもよいし、活性化処理工程(3)において、塗布された化合物αを含む第2表面処理剤を乾燥させてもよい。加熱と紫外線照射とを併用してもよい。加熱と紫外線照射とを併用する場合、いずれか一方を先に行ってもよく、同時に行ってもよい。
【0123】
(ソルダーレジスト層形成工程(4))
ソルダーレジスト層形成工程(4)は、プリント配線板14の表面を部分的に被覆するように、樹脂を含むソルダーレジスト層17を形成する工程である(図4~6参照)。
【0124】
ソルダーレジスト層形成工程(4)は、例えば、プリント配線板14の表面にソルダーレジストを積層する工程(ソルダーレジスト積層工程(4-1))、ソルダーレジストを露光する工程(ソルダーレジスト露光工程(4-2))、及びソルダーレジストを現像する工程(ソルダーレジスト現像工程(4-3))をこの順に備えることが好ましい。
【0125】
(ソルダーレジスト積層工程(4-1))
ソルダーレジスト積層工程(4-1)は、プリント配線板14の表面にソルダーレジスト15を積層する工程である(図4参照)。一般的に、ソルダーレジストは、プリント配線板の表面に積層され、はんだ付け時に不要な部分へのはんだの付着を防ぐための耐熱性材料である。また、ソルダーレジストは、熱、湿気、埃等からプリント配線板を保護する役割も有する。ソルダーレジストとしては、液状ソルダーレジスト、ドライフィルム型ソルダーレジスト等を用いることができる。
【0126】
液状ソルダーレジストは、例えば、アルカリ可溶性樹脂等を含む従来公知のものを用いることができる。アルカリ可溶性樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合等の光架橋性基と、カルボキシ基等の酸性基とを有する樹脂が挙げられる。アルカリ可溶性樹脂は、光架橋性基を有する構造単位と、酸性基を有する構造単位とを備える共重合体であってもよい。アルカリ可溶性樹脂は、アクリレート系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂等の公知の樹脂を用いることができる。
【0127】
液状ソルダーレジストは、アルカリ可溶性樹脂の他、光重合開始剤、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂、無機粉体等をさらに含有することができる。液状ソルダーレジストが熱硬化性樹脂、無機粉体等をさらに含有する場合、得られるソルダーレジスト層17の耐熱性を高めること等ができる。
【0128】
液状ソルダーレジストとしては、特開2020-164749号公報、再表2017-183608号公報、特開2017-090494号公報、特開2016-110003号公報等に記載のものを用いることもできる。液状ソルダーレジストは、市販品を用いることもできる。
【0129】
液状ソルダーレジストは、通常、上記各成分に加え、溶剤をさらに含有する。この溶剤としては、第1表面処理剤等における溶媒として例示したもの等を挙げることができる。ナフサ等の混合物を用いてもよい。液状ソルダーレジストをプリント配線板14の表面に塗工し、乾燥させることにより、ソルダーレジスト15をプリント配線板14の表面に積層することができる。乾燥の際の温度としては、例えば50℃以上200℃以下が好ましく、80℃以上130℃以下がより好ましい。
【0130】
ドライフィルム型ソルダーレジストは、支持フィルムと、この支持フィルムの表面に形成された上記液状ソルダーレジストの乾燥塗膜である感光性樹脂層(ソルダーレジスト)とからなるものを用いることができる。このようなドライフィルム型ソルダーレジストは、適切な粘度に調整された液状ソルダーレジストを、支持フィルム上に均一な厚さに塗布し、乾燥させることで得ることができる。この際の乾燥温度としては、例えば50℃以上130℃以下とすることができる。支持フィルムとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエステルフィルム等の熱可塑性樹脂フィルムを用いることができる。ドライフィルム型ソルダーレジストにおいては、通常、感光性樹脂層(ソルダーレジスト)の表面に、剥離可能な保護フィルムが設けられた状態で、流通、保管等がなされる。ドライフィルム型ソルダーレジストは、市販品を用いることもできる。
【0131】
ドライフィルム型ソルダーレジストを用いて、プリント配線板14の表面にソルダーレジストを積層する際、保護フィルムを剥がし、感光性樹脂層(ソルダーレジスト)をプリント配線板14の表面に重ねて圧力をかける。次いで、支持フィルムを感光性樹脂層(ソルダーレジスト)から剥離することで、感光性樹脂層(ソルダーレジスト)を支持フィルムからプリント配線板14へと転写する。これにより、感光性樹脂層であるソルダーレジスト15をプリント配線板14の表面に積層することができる。
【0132】
(ソルダーレジスト露光工程(4-2))
ソルダーレジスト露光工程(4-2)は、プリント配線板14の表面に積層されたソルダーレジスト15を露光する工程である(図5参照)。本工程においては、プリント配線板14上のソルダーレジスト15の表面に、マスクパターンを有するフォトマスク16を介して放射線(hν)を照射する。すなわち、ソルダーレジスト露光工程(4-2)では、ソルダーレジスト15の表面の一部にのみ放射線が照射され、ソルダーレジスト15においては、露光部と非露光部とが生じる。照射する放射線としては、通常、紫外線が用いられるが、ソルダーレジスト15の成分等に応じて、他の放射線を用いることもできる。ここで、放射線とは、紫外線、可視光線、遠紫外線、X線、電子線などを意味する。このような放射線を発生する放射線源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、アルゴンガスレーザーなどが挙げられる。
【0133】
通常、ソルダーレジスト15の露光部は、光架橋性基の反応により硬化する。一方、非露光部分は、酸性基によるアルカリ可溶性が維持される。
【0134】
(ソルダーレジスト現像工程(4-3))
ソルダーレジスト現像工程(4-3)は、露光後のソルダーレジスト15を現像する工程である。現像は、例えばアルカリ現像液を用いた従来公知の方法により行うことができる。ソルダーレジスト15の成分、感光特性等に応じて、他の現像液等により現像することもできる。
【0135】
現像により、ソルダーレジスト15における非露光部が溶解除去される。すなわち、図6に示すように、プリント配線板14の表面を部分的に被覆するように、ソルダーレジスト層17が形成される。換言すれば、ソルダーレジスト層17は、部分的に開口した層である。このように、得られる被覆プリント配線板20においては、プリント配線板14の表面の少なくとも一部(配線パターン13の一部等)が露出している。
【0136】
ソルダーレジスト現像工程(4-3)後、ソルダーレジスト層17を加熱する加熱工程を設けてもよい。例えば、ソルダーレジスト15が、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含む場合、加熱工程により熱硬化性樹脂が硬化し、架橋密度が高く耐熱性に優れたソルダーレジスト層17を得ることができる。
【0137】
このように形成されるソルダーレジスト層17は、樹脂を含む。ソルダーレジスト層17に含まれる樹脂は、例えば、アルカリ可溶性樹脂の硬化物、熱硬化性樹脂の硬化物等である。ソルダーレジスト層17における樹脂の含有量としては、例えば70質量%以上100質量%以下であり、80質量%以上、90質量%以上又は95質量%以上であってもよい。
【0138】
形成されるソルダーレジスト層17の平均厚さとしては、1μm以上200μm以下が好ましく、10μm以上100μm以下がより好ましい。
【0139】
なお、ソルダーレジスト層形成工程(4)は、露光及び現像を行う方法以外の方法により行ってもよい。例えば、印刷等によりプリント配線板14の表面にソルダーレジスト層17を形成してもよい。
【0140】
<被覆プリント配線板>
本発明の一実施形態に係る被覆プリント配線板は、図6に示されるように、プリント配線板14、及びプリント配線板14の表面を部分的に被覆するように形成された、樹脂を含むソルダーレジスト層17を備える。プリント配線板14は、樹脂層12と、樹脂層12の表面に形成され、金属を含む配線パターン13とを有する。配線パターン13は、プリント配線板14における表面に位置する。
【0141】
配線パターン13とソルダーレジスト層17との間には化合物αが介在する。配線パターン13と化合物α、及びソルダーレジスト層17と化合物αは、それぞれ化学反応により結合している。
【0142】
また、好適な形態として、樹脂層12と配線パターン13との間には化合物βが介在する。樹脂層12と化合物β、及び配線パターン13と化合物βは、それぞれ化学反応により結合している。化合物α及び化合物βは、共に、樹脂と反応して結合することが可能な官能基(第1又は第3官能基)と、金属と反応して結合することが可能な官能基(第2又は第4官能基)とを有する化合物である。
【0143】
本発明の一実施形態に係る被覆プリント配線板に備わる各構成部材、化合物α、化合物βの具体的形態及び好適形態は、上記した本発明の一実施形態に係る被覆プリント配線板の製造方法で示した各構成部材、化合物α、化合物βの具体的形態及び好適形態と同様である。また、本発明の一実施形態に係る被覆プリント配線板は、本発明の一実施形態に係る被覆プリント配線板の製造方法により好適に得ることができる。
【0144】
本発明の一実施形態に係る被覆プリント配線板20、及び本発明の一実施形態に係る被覆プリント配線板の製造方法により得られる被覆プリント配線板20においては、配線パターン13とソルダーレジスト層17との間に化合物αが介在しているため、配線パターン13とソルダーレジスト層17との間の密着性が高く、耐候性及び耐マイグレーション性にも優れる。また、樹脂層12と配線パターン13との間に化合物βが介在している場合、樹脂層12と配線パターン13との間の密着性も高く、耐候性及び耐マイグレーション性にも優れる。
【0145】
本発明の一実施形態に係る被覆プリント配線板、及び本発明の一実施形態に係る被覆プリント配線板の製造方法により得られる被覆プリント配線板にフレキシブル基板が用いられている場合、繰り返し折り曲げても断線及び短絡が生じ難く、密着性、耐候性及び耐マイグレーションに優れた被覆プリント配線板となる。当該被覆プリント配線板は、密着性及び耐候性等が優れており、具体的には高温環境下、多湿環境下、水と接触し得る環境下等に放置後の密着性も高いことから、様々な用途や環境下での使用が可能となる。
【0146】
本発明の一実施形態に係る被覆プリント配線板、及び本発明の一実施形態に係る被覆プリント配線板の製造方法により得られる被覆プリント配線板は、従来公知の被覆プリント配線板と同様の用途に用いることができる。本発明の一実施形態に係る被覆プリント配線板、及び本発明の一実施形態に係る被覆プリント配線板の製造方法により得られる被覆プリント配線板は、例えば、半導体素子、弾性表面波素子、固体撮像素子等の電子部品及びその実装に用いることができる。当該被覆プリント配線板においては、配線パターン表面の表面粗さが小さい場合、高周波信号であっても伝送損失が小さいため、高周波信号(例えば、1GHz以上300GHz以下の周波数の信号)の伝送用の被覆プリント配線板として特に好適である。
【0147】
<その他の実施形態>
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含むものとして理解されるべきである。
【0148】
例えば、本発明の被覆プリント配線板は、配線パターンが多層に設けられた多層配線板であってもよく、ビアホール等が設けられているものであってもよい。
【実施例0149】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
【0150】
以下の合成物の同定には、(株)島津製作所製のフーリエ変換赤外分光光度計IRTracer-100、日本電子(株)製の核磁気共鳴スペクトル装置 NMR spectrometer Z、及び(株)島津製作所製のガスクロマトグラフ質量分析計 GCMS-QP2020 NXを用いた。
【0151】
[合成例]各種化合物αの合成
(1)上記式(19)で表される化合物(IMB-4KP)の合成
3-アジド安息香酸クロリド(NCOCl)をTHF(テトラヒドロフラン)に溶かした。窒素ガスの雰囲気下、3-アミノプロピルトリエトキシシランの加水分解縮合物である原料オリゴマー(米国Gelest)とTEA(トリエチルアミン)とをTHFに溶かし、撹拌しながら室温で滴下した。反応を完結させるためさらに撹拌を続けた。反応終了後、THFを含む溶液を留去し、得られた粗生成物を精製して目的物を得た。この目的物が、式(19)で表されるシルセスキオキサン化合物(IMB-4KP)であった。スペクトルから、生成物においては、式(19)におけるlとmとnとの比が、l:m:n=1:1:0であることを確認した。
【0152】
(2)4-アジド安息香酸クロリドの合成(原料物質の製造)
【化9】
【0153】
塩化メチレン(CHCl)30mLとDMF(N,N-ジメチルホルムアミドCNO)0.3mLとの混合溶媒に、4-アジド安息香酸(NCOOH)2.6gを溶解させた。窒素ガスの雰囲気下、撹拌しながら、塩化メチレン20mLに溶かした塩化チオニル(SOCl)7.3gを、室温で滴下した。反応を完結させるためさらに2時間撹拌を続けた。反応終了後、塩化メチレンを含む低沸点物を留去し、4-アジド安息香酸クロリド(NCOCl)を含む黄色油状物を得た。この油状物は、更に精製することなく、直接に次の反応に供した。
【0154】
(3)N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4-アジドベンズアミドの合成(IMB-4K)の合成
【化10】
【0155】
4-アジド安息香酸クロリド(NCOCl)1.8gをTHF(テトラヒドロフラン)15mLに溶かした。窒素ガスの雰囲気下、3-トリエトキシシリルプロピルアミン3.6g、及びTEA(トリエチルアミン)2.1gをTHF20mLに溶かし、撹拌しながら室温で滴下した。反応を完結させるためさらに2時間撹拌を続けた。反応終了後、THFを含む溶液を留去し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ(溶離液:アセトン/ヘキサン=85/15)により精製し収率66%(2.4g)で淡黄色オイルを得た。
IR、NMR及びQCMSの各分析から、生成物が、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4-アジドベンズアミドであることを確認した。
【0156】
(4)N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-3-アジドベンズアミド(IMB-3K)の合成
【化11】
【0157】
3-アジド安息香酸クロリド(NCOCl)1.8gをTHF15mLに溶かした。窒素ガスの雰囲気下、3-トリエトキシシリルプロピルアミン(HN(CHSi(OC)3.6g、及びTEA2.1gをTHF20mLに溶かし、撹拌しながら室温で滴下した。反応を完結させるためさらに2時間撹拌を続けた。反応終了後、THFを含む溶液を留去し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ(溶離液:アセトン/ヘキサン=85/15)により精製し収率62%(2.2g)で淡黄色オイルを得た。スペクトル等から、生成物はN-(3-トリエトキシシリルプロピル)-3-アジドベンズアミドであることを確認した。
【0158】
(5)N,N-ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)-4-アジドベンズアミド(IMB-4KB)の合成
【化12】
【0159】
4-アジド安息香酸クロリド(NCOCl)1.8gをTHF15mLに溶かした。窒素ガスの雰囲気下、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン(HN((CHSi(OC)6g、及びTEA2.1gをTHF20mLに溶かし、撹拌しながら室温で滴下した。反応を完結させるためさらに2時間撹拌を続けた。反応終了後、THFを含む溶液を留去し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ(溶離液:アセトン/ヘキサン=85/15)により精製し収率61%で淡黄色オイルを得た。スペクトル等から、生成物は、N,N-ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)-4-アジドベンズアミドであることを確認した。
【0160】
(6)N,N-ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)-3-アジドベンズアミド(IMB-3KB)の合成
【化13】
【0161】
3-アジド安息香酸クロリド(NCOCl)1.8gをTHF15mLに溶かした。窒素ガスの雰囲気下、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン(HN((CHSi(OC)6g、及びTEA2.1gをTHF20mLに溶かし、撹拌しながら室温で滴下した。反応を完結させるためさらに2時間撹拌を続けた。反応終了後、THFを含む溶液を留去し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ(溶離液:アセトン/ヘキサン=85/15)により精製し収率62%で淡黄色オイルを得た。スペクトル等から、生成物は、N,N-ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)-3-アジドベンズアミドであることを確認した。
【0162】
(7)N,N’-((ジエトキシシランジイル)ビス(3-プロピル-3,1-ジイル)ビス(4-アジドベンズアミド)の合成
【化14】
【0163】
4-アジド安息香酸クロリド(NCOCl)2.8gをTHF30mLに溶かした。窒素ガスの雰囲気下、ビス(3-アミノプロピル)ジエトキシシラン(2.3mL)と、TEA2.1gをTHF20mLに溶かし、撹拌しながら室温で滴下した。室温で一晩撹拌した。反応を完結させるためさらに2時間撹拌を続けた。反応終了後、THFを含む溶液を留去し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ(溶離液:アセトン/ヘキサン=85/15)により精製し収率50%で淡黄色オイルを得た。スペクトルから、生成物は、N,N’-((ジエトキシシランジイル)ビス(3-プロピル-3,1-ジイル)ビス(4-アジドベンズアミド)であることを確認した。
【0164】
[実施例1]
(無粗化試験片の準備)
平均厚さ18μm、表面の算術平均粗さ(Ra)が0.4μmの無粗化銅箔を、ガラス織布にエポキシ樹脂が含浸したプリプレグ(FR-4グレード)に積層プレスして、プリント配線板を模した試験片(以下、「無粗化試験片」と称する。)を作成した。
【0165】
(表面処理剤への浸漬及び活性化処理)
無粗化試験片の表面をアセトンで洗浄し、乾燥させた。その後、化合物αを含む表面処理剤に10秒浸漬させた。この表面処理剤は、合成例で得られた化合物(IMB-4KP)を、濃度が0.2質量%となるように3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールに溶解したものを用いた。その後、無粗化試験片を乾燥させ、さらに活性化処理として100℃で10分間の加熱処理を行った。
【0166】
(ソルダーレジスト層の積層)
次いで、スクリーン印刷装置(ニューロング精密工業製「DP-320」)を用いて、無粗化試験片の無粗化銅箔上に液状の熱硬化性ソルダーレジストを一辺5cmの正方形形状に約3μmの厚さ(wet厚さ)で塗布した。熱硬化性ソルダーレジストには、太陽インキ製造株式会社製「S-222 X16K*/HD-1」を用い、希釈溶剤(太陽インキ製造株式会社製「レジューサーJ」プロパノール、ナフサ等を含有)で粘度370Pa・s(25℃)に希釈したものを用いた。塗布後、熱風循環式乾燥炉により140℃で20分間の加熱処理を行い、ソルダーレジスト層を形成した。加熱処理後、自然冷却して、被覆プリント配線板を模した実施例1の積層体を得た。
【0167】
[実施例2]
「表面処理剤への浸漬及び活性化処理」において、無粗化試験片の表面をアセトンで洗浄し、乾燥させた後、表面処理剤に浸漬させる前に、無粗化銅箔表面に携帯型表面改質処理装置(株式会社イトロ製)を用いてケイ酸炎化処理(イトロ処理)を行った以外は、実施例1と同様にして、実施例2の積層体を得た。
【0168】
[実施例3]
「表面処理剤への浸漬及び活性化処理」において、表面処理剤として、合成例で得られた化合物(IMB-4K)を、濃度が0.5質量%となるようにエタノールに溶解したものを用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例3の積層体を得た。
【0169】
[実施例4]
「表面処理剤への浸漬及び活性化処理」において、活性化処理として、100℃で10分間の加熱処理に代えて、無粗化試験片に対してUV-LED照射器により被照射エネルギー200mJ/cmで紫外線照射を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4の積層体を得た。
【0170】
[比較例1]
「表面処理剤への浸漬及び活性化処理」を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の積層体を得た。
【0171】
[比較例2]
「表面処理剤への浸漬及び活性化処理」に替えて、無粗化試験片の無粗化銅箔における厚さ1μmの表層部分を表面処理剤(株式会社メック製「CZ-8100」)で溶解除去することにより粗面化処理を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2の積層体を得た。
【0172】
[比較例3]
「表面処理剤への浸漬及び活性化処理」において、表面処理剤として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM-403」)を、濃度が0.5質量%となるようにエタノールに溶解したものを用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例3の積層体を得た。
【0173】
[評価]クロスカットテープ剥離試験
各積層体について、ソルダーレジスト層の表面に1mm間隔で縦横それぞれ11本のカットを格子状に入れ、市販の接着テープを貼り付けて剥離するテープ剥離試験を行い以下の基準で評価した。また、上記クロスカットテープ剥離試験における格子線上の剥離の有無を調べた。
A:格子点剥離なし、面的剥離もなし。
B:5%以下の格子点に格子点剥離があり、かつ、面的剥離なし。
C:5%超20%以下の格子点に格子点剥離があるか、20%以下の面積比率で面的剥離がある。
D:大規模剥離あり(A~C以外)。
【0174】
実施例1、2及び比較例1~3の各積層体について、(1)作製直後、及び(2)作製した積層体を150℃の高温環境下に168時間保持した後の各積層体について、上記クロスカットテープ剥離試験を行った。
さらに、実施例1~4及び比較例1~3の各積層体について、(3)作製した積層体を150℃の高温環境下に168時間保持し、さらに100℃の温水に1時間没水し、その後100℃で30分乾燥させた後の各積層体について、上記クロスカットテープ試験を行った。
実施例1~4及び比較例1~3の各積層体については、それぞれのクロスカットテープ剥離試験を行うためそれぞれ複数の積層体を作製した。
評価結果を下記表1に示す。
【0175】
【表1】
【0176】
(1)作製直後の積層体にクロスカットテープ剥離試験を行った場合には、比較例1、2の各積層体においては、クロスカットの格子線上の剥離が見られたが、実施例1、2及び比較例3の各積層体においては、格子線上の剥離は見られなかった。また、格子点上の剥離はいずれも見られなかった。(2)高温放置後の積層体にクロスカットテープ剥離試験を行った場合でも、比較例1、2及び実施例1、2については、結果は同様であった。比較例3については、クロスカットの格子点上及び格子線上の双方に剥離が見られた。(3)高温下に放置しさらに温水に没水させてから乾燥させた積層体にクロスカットテープ剥離試験を行った場合には、表面処理剤及び粗面化のいずれの処理も行わなかった比較例1の積層体においては、大規模剥離が生じた。表面処理剤に従来のシランカップリング剤である3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを用いた比較例3の積層体においても、剥離が目立った。所定の表面処理剤により処理した実施例1~4の積層体と、粗面化処理を行った比較例2の積層体とでは、ほぼ同等の密着性であった。イトロ処理と表面処理剤による処理を行った実施例2の積層体は、密着性が高かった。また、異なる種類の化合物αを用いた場合(実施例3)、及び化合物αに対する加熱処理に代えて紫外線照射を行った場合(実施例4)も、良好な密着性が確認できた。
【0177】
化合物αを用いた処理を行うことで、銅箔に対する粗面化処理を行わなくても、ソルダーレジスト層が良好に密着し、高温多湿環境下に長時間保持した場合においても、良好な密着性が維持できることが確認できた。また、熱硬化性ソルダーレジストの溶剤(プロパノール及びナフサ)は、化合物αの効果を妨げないことも確認できた。
【0178】
[参考例1-1~1-5]シクロオレフィンポリマー(COP)基板に対する金属めっき膜の形成
【0179】
[参考例1-1]
COP基板(平均厚さ0.1mm)について、平均厚さ20μmの金属めっき膜(銅めっき膜)を形成し、密着性を試験した。まず、脱脂洗浄として、アセトンによる処理を行った。次いで、表面改質前処理として、酸素プラズマ処理(100mL/分、2分、200W)を施した。次いで、表面処理剤の塗布として、IMB-4Kのエタノール溶液に30秒間浸漬した。次いで、活性化処理として、試料にUV-LED照射器から被照射エネルギー200mJ/cmで紫外線を照射し、次いで、125℃で15分の加熱を行った。表面処理剤の塗布と活性化処理とは、2回反復して行った。その後、無電解めっき及び電解めっきを行い、平均厚さ20μmの銅めっき膜を形成した。めっき後においては、110℃で60分のアニール処理を行い、COP基板と金属めっき膜との積層体を得た。
【0180】
[参考例1-2~1-5]
表面処理剤の塗布で用いる化合物αの種類、及び活性化処理で加熱のみを行うのか(「H」と表す)、又は加熱と紫外線照射との両方を行うのか(「H+UV」と表す)、という点を表2に記載の通りとしたこと以外は参考例1-1と同様にして、参考例1-2~1-5を実施し、各積層体を得た。
【0181】
(評価)ピール強度
参考例1-1~1-5で得られた積層体について、金属めっき膜のピール強度(剥離強度)を測定した。縦型電動計測スタンドMX2-500N((株)イマダ)にフォースゲージZTA-50Nを取り付け、90°剥離のピール強度試験機を構成した。剥離速度は50mm/分とした。各積層体について3つのサンプルを作製してそれぞれについて計測を行い、ピール強度の平均値を求めた。測定結果を表2に示す。
【0182】
【表2】
【0183】
[参考例2-1、2-2]脱フッ素化PTFE基板に対する金属めっき膜の形成
脱フッ素化されたPTFE基板(平均厚さ180μm:日東電工「900UL」)をエタノールに浸漬して、3分間の超音波洗浄をすることで、脱脂洗浄を行い、その後エアブロー乾燥を行った。
次いで、化合物αのエタノール溶液にPTFE基板を30秒間浸漬させた。参考例2-1においては、化合物αとして、IMB-4Kを用いた。参考例2-2においては、化合物αとして、2,4-ジアジド-6-(3-トリエトキシシリルプロピル)アミノ-1,3,5-トリアジン(IMB-P)を用いた。その後、表面処理剤が塗布されたPTFE基板に対して、100℃で10分間の加熱処理を行った。
次いで、以下の手順で金属めっき膜(銅めっき膜)を形成した。PTFE基板をプレディップ液に浸漬させ、次いで、キャタリスト液(ローム&ハース電子材料株式会社「キャタポジット44」)に浸漬させた。次いで、脱フッ素化PTFEフィルムを1v/v%濃度の塩酸に浸漬させた後、無電解めっきを施し、平均厚さ0.1μmの無電解銅めっき膜を設けた。その後、110℃1時間のアニール処理を施した。その後、電解めっきを施し、無電解銅めっき膜とあわせて平均厚さ20μmの銅めっき膜を形成した。以上により、参考例2-1及び2-2の各積層体を得た。
【0184】
[参考比較例2-1]
化合物αのエタノール溶液への浸漬及びその後の加熱処理を行わなかったこと以外は参考例2-1と同様にして、参考比較例2-1の積層体を得た。
【0185】
(評価)外観
参考例2-1、2-2の各積層体においては、金属めっき膜の剥離も膨れも無く良好であった。参考比較例2-1の積層体においては、部分的に金属めっき膜が剥離する部分があり、不良であった。
【0186】
(評価)ピール強度
参考例2-1~2-2の各積層体について、金属めっき膜のピール強度(剥離強度)を参考例1-1等と同様の方法で測定した。各積層体について3つのサンプルを作製して各々計測を行い、ピール強度の最大値及び平均値を求めた。評価結果を表3に示す。
【0187】
【表3】
【0188】
表2、3に示されるように、各種の化合物αを用いることで樹脂基板(樹脂層)と金属めっき膜(金属を含む配線パターン)との密着性を高めることができることが確認できた。
【符号の説明】
【0189】
11 基板
12 樹脂層
13 配線パターン
14 プリント配線板
15 ソルダーレジスト
16 フォトマスク
17 ソルダーレジスト層
20 被覆プリント配線板
α 化合物α
β 化合物β
図1
図2
図3
図4
図5
図6