(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053473
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】優先度決定方法及び優先度決定プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20240408BHJP
G16H 30/20 20180101ALI20240408BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
A61B5/055 380
G16H30/20
A61B6/03 360T
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159785
(22)【出願日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 達也
(72)【発明者】
【氏名】石原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】馬場 孝之
【テーマコード(参考)】
4C093
4C096
5L099
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093AA24
4C093AA26
4C093FA35
4C093FD03
4C093FF17
4C093FF18
4C093FF24
4C096AA03
4C096AA12
4C096AB36
4C096AC05
4C096AD14
4C096DC20
4C096DC21
4C096DC25
4C096DC40
5L099AA26
(57)【要約】
【課題】ダイナミック検査で撮影される複数の画像の優先度を適切に決定することを課題とする。
【解決手段】優先度決定方法では、ダイナミック検査で撮影される第1の画像セットに含まれる画像の集合のうち一または複数の画像の組合せに対応する複数の第2の画像セットを生成し、画像を良性または悪性のクラスに分類する機械学習モデルに第1の画像セットが入力された際の出力と、機械学習モデルに第2の画像セットが入力された際の出力との差に基づくスコアを第2の画像セットごとに算出し、複数の第2の画像セットのうちスコアが特定の条件を満たす第2の画像セットを出力する、処理をコンピュータが実行する。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイナミック検査で撮影される第1の画像セットに含まれる画像の集合のうち一または複数の画像の組合せに対応する複数の第2の画像セットを生成し、
画像を良性または悪性のクラスに分類する機械学習モデルに前記第1の画像セットが入力された際の出力と、前記機械学習モデルに前記第2の画像セットが入力された際の出力との差に基づくスコアを前記第2の画像セットごとに算出し、
前記複数の第2の画像セットのうち前記スコアが特定の条件を満たす第2の画像セットを出力する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする優先度決定方法。
【請求項2】
前記算出する処理は、前記第1の画像セットに含まれる画像のそれぞれから病変部位がクロップされた画像のそれぞれを前記機械学習モデルに入力すると共に、前記第2の画像セットに含まれる画像のそれぞれから病変部位がクロップされた画像のそれぞれを前記機械学習モデルに入力する処理を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の優先度決定方法。
【請求項3】
前記算出する処理は、前記機械学習モデルに前記第1の画像セットが入力された際の最終層または中間層の出力と、前記機械学習モデルに前記第2の画像セットが入力された際の前記最終層または前記中間層の出力との差に基づくスコアを算出する処理を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の優先度決定方法。
【請求項4】
前記生成する処理は、前記複数の第2の画像セットのうち前記スコアが最高である第2の画像セットに含まれる画像の集合のうち一または複数の画像の組合せに対応する複数の第3の画像セットを生成する処理を含み、
前記算出する処理は、前記機械学習モデルに前記第1の画像セットが入力された際の出力と、前記機械学習モデルに前記第3の画像セットが入力された際の出力との差に基づくスコアを前記第3の画像セットごとに算出する処理を含み、
前記出力する処理は、前記複数の第3の画像セットのうち前記スコアが最高である第3の画像セットを出力する処理を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の優先度決定方法。
【請求項5】
前記ダイナミック検査は、造影剤を用いるMRI検査またはCT検査に対応する、
ことを特徴とする請求項1に記載の優先度決定方法。
【請求項6】
ダイナミック検査で撮影される第1の画像セットに含まれる画像の集合のうち一または複数の画像の組合せに対応する複数の第2の画像セットを生成し、
画像を良性または悪性のクラスに分類する機械学習モデルに前記第1の画像セットが入力された際の出力と、前記機械学習モデルに前記第2の画像セットが入力された際の出力との差に基づくスコアを前記第2の画像セットごとに算出し、
前記複数の第2の画像セットのうち前記スコアが特定の条件を満たす第2の画像セットを出力する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする優先度決定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優先度決定方法及び優先度決定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、検査画像を用いた診断の効率化を支援する技術として、未読の医療検査資料に含まれる画像に対する自動画像解析によって得られる所見に基づいて、未読の医療検査資料の優先度情報を決定する従来技術1が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来技術1に代表される従来技術では、ダイナミック検査で撮影される複数の画像の優先度を適切に決定することが困難である側面がある。
【0005】
すなわち、上記の自動画像解析では、画像に異常がある可能性を示す異常性スコアが高い画像の優先度が一律に高く決定される。つまり、上記の従来技術1では、AI(Artificial Intelligence)などにより異常に対応する特徴が検出される画像の優先度が一律に高く決定される。
【0006】
ところが、診断においては、上記の自動画像解析で特徴が検出される画像の優先度が必ずしも高いとは限らない。ダイナミック検査では、造影剤が組織内を移動する様子が複数のタイミングで撮影されるが、複数の時相のうち特定の時相における画像に特徴が検出されないことが診断を左右する所見となる場合がある。
【0007】
あくまで1つの事例として、Gd-EOB-DTPA造影剤(以下、EOB造影剤)を用いるMRI(Magnetic Resonance Imaging)検査で肝腫瘤の良性または悪性を鑑別する場合を例に挙げる。この場合、悪性のがんでは、動脈相で病変が造影剤に早期に濃染して速やかにウオッシュアウトする一方で、良性の血管腫では、時間経過に連れて病変および周囲のコントラスト差が徐々に減少する。このため、悪性のがんでは、後期相で病変および周囲のコントラストが大きくなる一方で、良性の血管腫では、後期相で病変および周囲のコントラストが小さくなる。このことから、肝腫瘤から良性の血管腫を識別する場合、ダイナミック相、例えば後期相で病変および周囲のコントラストが小さい、言い換えれば画像に特徴がないという所見が重要となる場合がある。
【0008】
ところが、上記の従来技術1では、異常に対応する特徴が検出されない画像の優先度が一律に低く決定される。このため、後期相の画像の優先度が高く決定されるどころか低く決定されてしまう。このように、上記の従来技術1では、EOB造影剤MRI検査で撮影される複数の画像の優先度を適切に決定するのが困難である側面がある。
【0009】
1つの側面では、本発明は、ダイナミック検査で撮影される複数の画像の優先度を適切に決定できる優先度決定方法及び優先度決定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1つの側面にかかる優先度決定方法では、ダイナミック検査で撮影される第1の画像セットに含まれる画像の集合のうち一または複数の画像の組合せに対応する複数の第2の画像セットを生成し、画像を良性または悪性のクラスに分類する機械学習モデルに前記第1の画像セットが入力された際の出力と、前記機械学習モデルに前記第2の画像セットが入力された際の出力との差に基づくスコアを前記第2の画像セットごとに算出し、前記複数の第2の画像セットのうち前記スコアが特定の条件を満たす第2の画像セットを出力する、処理をコンピュータが実行する。
【発明の効果】
【0011】
一実施形態によれば、ダイナミック検査で撮影される複数の画像の優先度を適切に決定できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、サーバ装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、ダイナミック検査の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、検査画像セットの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、検査画像セットの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、診断モデルの一例を示す模式図である。
【
図6】
図6は、寄与度計測画像セットの生成例を示す模式図である。
【
図7】
図7は、寄与度の算出例を示す模式図である。
【
図8】
図8は、寄与度算出結果の一例を示す模式図である。
【
図9】
図9は、優先度決定結果の比較例を示す図である。
【
図11】
図11は、クライアント端末への表示例を示す図である。
【
図12】
図12は、クライアント端末への表示例を示す図である。
【
図13】
図13は、クライアント端末への表示例を示す図である。
【
図14】
図14は、クライアント端末への表示例を示す図である。
【
図15】
図15は、優先度決定処理の手順を示すフローチャートである。
【
図16】
図16は、寄与度算出処理の手順を示すフローチャートである。
【
図19】
図19は、表示制御処理の手順を示すフローチャートである。
【
図20】
図20は、病変検出モデルの一例を示す模式図である。
【
図21】
図21は、病変診断モデルの一例を示す模式図である。
【
図23】
図23は、最高寄与度の検査画像の絞込結果の一例を示す図である。
【
図24】
図24は、クライアント端末への表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本願に係る画像の優先度決定方法及び優先度決定プログラムの実施例について説明する。各実施例には、あくまで1つの例や側面を示すに過ぎず、このような例示により数値や機能の範囲、利用シーンなどは限定されない。そして、各実施例は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【実施例0014】
<全体構成>
図1は、サーバ装置10の機能構成例を示すブロック図である。
図1に示すサーバ装置10は、医療用画像管理システム、あるいは画像保存通信システムなどと呼ばれるPACS(Picture Archiving and Communication System)に関する機能を提供するものである。
【0015】
ここで言う「PACS」には、医療用の撮影装置20、いわゆるモダリティにより撮影される検査画像を保存する画像保存機能や検査画像をクライアント端末30へ伝送する伝送機能などが含まれてよい。
【0016】
図1に示すように、サーバ装置10は、ネットワークNWを介して、撮影装置20およびクライアント端末30に接続され得る。例えば、ネットワークNWは、有線または無線を問わず、インターネットやLAN(Local Area Network)などの任意の種類の通信網であってよい。
【0017】
撮影装置20は、CT(Computed Tomography)やMRIを始め、デジタルX線診断装置、血管造影X線診断装置や超音波診断装置などの各種の医療機器により実現されてよい。このような撮影装置20により撮影される検査画像は、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)などの通信規格にしたがってサーバ装置10へ伝送されてよい。
【0018】
クライアント端末30は、上記のPACS機能の提供を受けるコンピュータの一例に対応する。例えば、クライアント端末30は、上記のPACS機能の提供を受けるアカウントが発行された医療関係者、例えば放射線科の医師、いわゆる読影医により利用され得る。このようなクライアント端末30は、あくまで一例として、デスクトップ型またはラップトップ型のコンピュータや携帯端末装置、ウェアラブル端末などの任意のコンピュータにより実現されてよい。
【0019】
サーバ装置10は、上記のPACS機能を提供する情報処理装置の一例に対応する。一実施形態として、サーバ装置10は、上記のPACS機能をオンプレミスに提供するDICOMサーバとして実現され得る。他の実施形態として、サーバ装置10は、PaaS(Platform as a Service)型、あるいはSaaS(Software as a Service)型のアプリケーションとして実現することで、上記のPACS機能をクラウドサービスとして提供できる。
【0020】
なお、
図1には、サーバ装置10が上記のPACS機能をクライアント端末30に提供する利用シーンを例に挙げるが、これはあくまで一例に過ぎない。例えば、クライアント端末30上で動作するアプリケーションが上記のPACS機能に対応する処理をクライアント端末30に実行させることにより、上記のPACS機能がスタンドアロンで提供されてもよい。
【0021】
<課題の一側面>
上記の背景技術の欄で説明した通り、上記の従来技術1に代表される従来技術では、ダイナミック検査で撮影される複数の画像の優先度を適切に決定することが困難である側面がある。
【0022】
すなわち、上記の従来技術1で実行される自動画像解析では、画像に異常がある可能性を示す異常性スコアが高い画像の優先度が一律に高く決定される。つまり、上記の従来技術1では、AIなどにより異常に対応する特徴が検出される画像の優先度が一律に高く決定される。
【0023】
ところが、診断においては、上記の自動画像解析で特徴が検出される画像の優先度が必ずしも高いとは限らない。ダイナミック検査では、造影剤が組織内を移動する様子が複数のタイミングで撮影されるが、複数の時相のうち特定の時相における画像に特徴が検出されないことが診断を左右する所見となる場合がある。
【0024】
このような所見が要求されるダイナミック検査の例として、EOB造影剤を用いるMRI検査で肝腫瘤の良性または悪性を鑑別する場合を例に挙げる。
【0025】
図2は、ダイナミック検査の一例を示す図である。
図2には、EOB造影剤を用いるMRI検査でEOB造影剤が肝臓の組織内を移動する様子を撮影する複数のタイミングが示されている。
図2に示すように、造影前には、磁気共鳴現象の縦緩和、いわゆるT1が強調されたMRI画像、いわゆるT1WI(Weighted Image)がMRIにより撮影される。その後、EOB・プリモビスト(0.1mL/kg)が静脈内に投与される。
【0026】
このEOB造影剤は、約20分かけて肝細胞に取り込まれる。このようなEOB造影剤による経時変化がダイナミック相としてMRIにより撮影される。例えば、EOB造影剤の投与から30秒後に動脈相のMRI画像が撮影され、60秒後または90秒後に門脈相のMRI画像が撮影され、120秒後または180秒後に後期相のMRI画像が撮影される。
【0027】
その上で、EOB造影剤投与の10分、15分または20分経過後、肝細胞造影相のMRI画像が撮影される。さらに、EOB造影剤が投与されてから肝細胞相までの時間を利用して、磁気共鳴現象の横緩和、いわゆるT2が強調されたT2WIや分子のブラウン運動の程度が画像化されるDWI(Diffusion Weighted Image)などのMRI画像が撮影される。
【0028】
このように、EOB造影剤を用いるダイナミック検査では、撮影のタイミングや磁気共鳴現象の条件などの撮影条件を変化させて、造影前、動脈相、門脈相、後期相、肝細胞造影相、T2WIおよびDWIの7枚のMRI画像が撮影され得る。なお、上記7枚のMRI画像は、あくまで一例に過ぎず、一部が欠けてもよいし、その他の種類のMRI画像が追加されてもよい。
【0029】
以下、ダイナミック検査で撮影される複数の検査画像、例えば上記7枚のMRI画像の集合を指して「検査画像セット」と記載する場合がある。
【0030】
肝腫瘤の良性腫瘤として知られる血管腫は、EOB造影剤を用いるMRI検査で得られた検査画像セットから識別が可能である。EOB造影MRIでは、複数の時相で撮影された検査画像セットに含まれる検査画像同士を比較することにより、診断が実施される。
【0031】
図3および
図4は、検査画像セットの一例を示す図である。
図3および
図4には、検査画像の例として、検査画像のうち病変に対応する肝腫瘤およびその周辺の領域がクロップされたクロップ画像が示されている。さらに、
図3には、病変が悪性のがんに対応する検査画像セットが例示される一方で、
図4には、病変が血管腫に対応する検査画像セットが例示されている。
【0032】
図3に示すように、悪性のがんの検査画像セットでは、動脈相で病変が造影剤に早期に濃染してから速やかにウオッシュアウトする。このため、後期相で病変および周囲のコントラストが大きくなる。例えば、動脈相で濃染が高信号(白色)で描画された後、門脈相および後期相で造影剤がウオッシュアウトした病変が低信号(黒色)で描画される。
【0033】
一方、
図4に示すように、血管腫の検査画像セットでは、時間経過にしたがって病変および周囲のコントラストが徐々に減少する。例えば、動脈相では病変がその周辺よりも黒い低信号で描画された後、門脈相、後期相の順に病変の描画が等信号(灰色)に近づいてゆく。
【0034】
このように、肝腫瘤から良性の血管腫を識別する場合、ダイナミック相に血管腫および悪性のがんの違いが現れ易いので、ダイナミック相の優先度を高めるのが臨床において正しい。
【0035】
しかしながら、上記の従来技術1では、異常に対応する特徴が検出される画像の優先度が一律に高く決定される。例えば、
図4に示す検査画像セットを例に挙げれば、造影前、肝細胞造影相、T2WIおよびDWIなどの優先度が高く決定される。言い換えれば、上記の従来技術1では、異常に対応する特徴が検出されない画像の優先度が一律に低く決定される。例えば、
図4に示す検査画像セットを例に挙げれば、病変およびその周囲のコントラストが小さいダイナミック相の優先度が低く決定される。特に、後期相では、病変の描画が等信号に近づいているので、高い優先度を割り当てることは困難である。
【0036】
したがって、上記の従来技術1では、EOB造影MRIで撮影される複数の検査画像の優先度を適切に決定するのが困難である側面がある。
【0037】
このような課題の一側面を解決する側面から、本実施例に係るPACS機能には、ダイナミック検査で撮影される複数の画像の優先度を適切に決定する優先度決定機能がパッケージ化される。
【0038】
<サーバ装置の構成>
上記の優先度決定機能を有するサーバ装置10の機能構成例について説明する。
図1には、サーバ装置10が有する優先度決定機能に関連するブロックが模式化されている。
図1に示すように、サーバ装置10は、通信制御部11と、記憶部13と、制御部15とを有する。なお、
図1には、上記の優先度決定機能に関連する機能部が抜粋して示されているに過ぎず、図示以外の機能部がサーバ装置10に備わることとしてもよい。
【0039】
通信制御部11は、撮影装置20やクライアント端末30などの他の装置との間の通信を制御する機能部である。あくまで一例として、通信制御部11は、LANカードなどのネットワークインタフェイスカードにより実現され得る。1つの側面として、通信制御部11は、撮影装置20により撮影された検査画像セットを受け付けたり、クライアント端末30から検査画像セットの閲覧を要求する閲覧リクエストを受け付けたりする。他の側面として、通信制御部11は、上記の閲覧リクエストに対応する検査画像セットのうち優先度が高い検査画像の組合せをクライアント端末30へ出力したりする。
【0040】
記憶部13は、各種のデータを記憶する機能部である。あくまで一例として、記憶部13は、サーバ装置10の内部、外部または補助のストレージにより実現され得る。例えば、記憶部13は、検査画像データ13Aと、診断モデルデータ13Bと、寄与度データ13Cとを記憶する。なお、検査画像データ13A、診断モデルデータ13Bおよび寄与度データ13Cの説明は、参照、生成または登録が実行される場面で併せて説明することとする。
【0041】
制御部15は、サーバ装置10の全体制御を行う機能部である。例えば、制御部15は、ハードウェアプロセッサにより実現され得る。この他、制御部15は、ハードワイヤードロジックにより実現されてもよい。
図1に示すように、制御部15は、取得部15Aと、判定部15Bと、画像セット生成部15Cと、寄与度算出部15Dと、表示制御部15Eとを有する。
【0042】
取得部15Aは、クライアント端末30から各種の情報を取得する処理部である。あくまで一例として、取得部15Aは、撮影装置20によりダイナミック検査で撮影された検査画像セットを取得する。このように取得された検査画像セットは、検査画像セットの識別情報、例えば図示しない電子カルテシステムまたは検査システムなどにより発行された検査オーダの識別情報などが関連付けられた上で記憶部13に記憶された検査画像データ13Aに追加される。
【0043】
判定部15Bは、検査画像セットを診断モデルに適用することにより、病変が陽性であるか否かを判定する処理部である。あくまで一例として、判定部15Bは、記憶部13に記憶された検査画像データ13Aに新規の検査画像セットが追加された場合、処理を起動する。すなわち、判定部15Bは、記憶部13に記憶された診断モデルデータ13Bを図示しないワークエリアに読み込む。その上で、判定部15Bは、新規の検査画像セットを診断モデルへ入力することにより、病変が陽性であるか否か、すなわち良性または悪性の病変が存在するか否かを判定する。
【0044】
このような「診断モデル」は、あくまで一例として、1または複数の画像を正常、病変良性または病変悪性に分類するクラス分類タスクを実行する機械学習モデルにより実現され得る。例えば、診断モデルは、画像認識タスクに用いられる畳み込みニューラルネットワーク、いわゆるCNN(Convolutional Neural Network)系のVGGやResNet、DenseNetなどのライブラリにより実現されてよい。
【0045】
図5は、診断モデルの一例を示す模式図である。
図5に示すように、診断モデルm11の訓練には、検査画像セットおよび正解ラベルが対応付けられた訓練データを含むデータセットTR11を用いることができる。例えば、
図5には、データセットTR11のあくまで一例として、3つのクラス「正常」、「病変良性(血管腫)」および「病変悪性(肝臓がん)」の正解ラベルごとに検査画像セットが対応付けられた3つの訓練データが抜粋して例示されている。
【0046】
訓練フェイズでは、検査画像セットを診断モデルm11の説明変数とし、ラベルを診断モデルm11の目的変数とし、任意の機械学習のアルゴリズム、例えば深層学習にしたがって診断モデルm11を訓練できる。例えば、検査画像セットが入力された診断モデルm11の出力と、正解ラベルとの損失を診断モデルm11に逆伝播させることにより、診断モデルm11のパラメータを更新する。このようにして得られた訓練済みの診断モデルM11に関するデータが診断モデルデータ13Bとして記憶部13に保存される。例えば、診断モデルデータ13Bには、診断モデルM11を形成する入力層、隠れ層及び出力層のニューロンやシナプスなどの層構造に関連するハイパーパラメータ、各層の重みやバイアスなどの目的関数に関するパラメータが含まれてよい。
【0047】
推論フェイズでは、検査画像データ13Aに追加された新規の検査画像セットを診断モデルM11へ入力する。このように検査画像セットが入力された診断モデルM11は、最終層から出力されるクラス別の確信度のうち確信度が最高であるクラス「正常」、「病変良性」または「病変悪性」のラベルを出力する。
【0048】
なお、
図5では、検査画像セットを診断モデルM11へ入力する例を挙げたが、必ずしもダイナミック検査で撮影された全ての検査画像が入力されずともよい。例えば、診断モデルM11には、1枚の検査画像を入力することもできれば、8以上の検査画像を入力することもできる。この他、診断モデルM11には、MRIにより撮影されたMRI画像そのものでなく、例えば、詳細は
図20および
図21を用いて後述するが、MRI画像から病変およびその周囲がクロップされたクロップ画像が入力されることとしてもよい。
【0049】
また、
図5では、診断モデルM11の機械学習タスクが画像を正常、病変良性および病変悪性の3つのクラスへ分類するクラス分類である例を挙げたが、診断モデルM11の機械学習タスクはこれに限定されない。例えば、診断モデルM11の機械学習タスクは、画像を正常、肝臓がん、血管腫、嚢胞などの診断名に対応するクラスへ分類する多クラス分類であってもよい。
【0050】
画像セット生成部15Cは、検査画像セットに含まれる検査画像の集合のうち一または複数の検査画像の組合せに対応する複数の寄与度計測画像セットを生成する処理部である。
【0051】
ここで、上記の「寄与度計測画像セット」は、検査画像セットに含まれる検査画像の集合に含まれる検査画像の組合せごとに当該検査画像の組合せが診断に寄与する度合い(以下、「寄与度」)を計測する側面から生成される。
【0052】
図6は、寄与度計測画像セットの生成例を示す模式図である。
図6には、説明を簡便にする側面からあくまで一例として7枚の検査画像のうち左から順に、造影前、動脈相、門脈相、後期相、肝細胞造影相、T2WIの6枚の検査画像が抜粋されている。
【0053】
図6に示すように、画像セット生成部15Cは、検査画像セット21に含まれる検査画像の集合のうち検査画像セット21の検査画像数「6」未満となる組合せを列挙することにより、寄与度計測画像セットC1、C2、C3、C4・・・の集合CSを生成できる。
【0054】
例えば、寄与度計測画像セットC1の例で言えば、検査画像セット21に含まれる6枚の検査画像の集合のうち造影前の検査画像が選択される。このとき、選択されなかった残り5枚の検査画像数の分、ブランク画像が生成される。このようにブランク画像を生成するのは、診断モデルM11の入力層のサイズ、すなわち6枚分の検査画像のサイズに合わせるためである。なお、他の寄与度計測画像セットC2、C3、C4・・・についても、検査画像セット21に含まれる6枚の検査画像の集合から選択される組合せが異なれども同様の動作により生成できる。
【0055】
あくまで一例として、画像セット生成部15Cは、検査画像セットに含まれる検査画像の集合から生成できる全ての組合せを寄与度計測画像セットとして列挙することができる。例えば、検査画像セットが造影前、動脈相、門脈相、後期相、肝細胞造影相、T2WIおよびDWIの7枚の検査画像の集合であるとしたとき、126個=(7C1+7C2+7C3+7C4+7C5+7C6)の組合せの寄与度計測画像セットが生成される。
【0056】
図1の説明に戻り、寄与度算出部15Dは、診断モデルに検査画像セットが入力された際の出力と、診断モデルに寄与度計測画像セットが入力された際の出力との差に基づく寄与度を寄与度計測画像セットごとに算出する処理部である。
【0057】
あくまで一例として、寄与度算出部15Dは、新規の検査画像セットを
図5に示す診断モデルM11を入力する。これにより、診断モデルM11の出力y
0が得られる。このような動作と前後、同時または並行に、寄与度算出部15Dは、画像セット生成部15Cにより生成される寄与度計測画像セットiごとに当該寄与度計測画像セットiを
図5に示す診断モデルM11を入力する。これにより、寄与度計測画像セットiごとに診断モデルM11の出力y
iが得られる。これら診断モデルM11の出力y
0および診断モデルM11の出力y
iの距離に基づいて、寄与度算出部15Dは、寄与度計測画像セットiごとに寄与度を算出する。
【0058】
図7は、寄与度の算出例を示す模式図である。
図7には、層構造の他、重みやバイアスなどのパラメータが共通する2つの診断モデルM11-1およびM11-2が示されている。
図7に示すように、診断モデルM11-1には、検査画像セット21が入力される一方で、診断モデルM11-2には、寄与度計測画像セットC1が入力される。
【0059】
ここで、寄与度算出部15Dは、m層の診断モデルM11-1のうちm-1層目の隠れ層(中間層)の出力y0を取得すると共に、m層の診断モデルM11-2のうちm-1層目の隠れ層(中間層)の出力yC1を取得する。なお、ここでは、最終層1つ前の中間層の出力を取得する例を挙げたが、最終層の出力であってもよし、他の中間層の出力であってもよい。
【0060】
そして、寄与度算出部15Dは、診断モデルM11-1の出力y0および診断モデルM11-2の出力yC1の距離を算出する。ここで言う「距離」には、ユークリッド距離やマンハッタン距離、マハラノビス距離などの任意の距離計測方法を用いることができる。
【0061】
その上で、寄与度算出部15Dは、出力y
0および出力y
C1の診断モデルM11-1の出力y
0および診断モデルM11-2の出力y
C1の距離に基づいて寄与度計測画像セットC1の寄与度を算出する。例えば、寄与度は、
図7に示す式(1)にしたがって算出できる。ここで、式(1)にしたがって算出される寄与度では、ブランク画像の枚数が増えるほど寄与度が低くなる傾向がある。このことから、
図7に示す式(2)のように、ブランク画像の枚数を乗じることで、寄与度計測画像セット間のブランク画像の枚数の差による影響も含めた寄与度を算出できる。なお、式(1)および式(2)に示す「c」は、任意の定数であってよい。
【0062】
このような寄与度の算出が寄与度計測画像セットごとに実行される。これにより、
図8に示す寄与度算出結果を得ることができる。
図8は、寄与度算出結果の一例を示す模式図である。
図8に示すように、寄与度計測画像セットの集合CSに含まれる寄与度計測画像セットC1、C2、C3、C4・・・ごとに寄与度「0.34」、「0.51」、「0.41」、「0.92」、・・・が得られる。このように寄与度計測画像セットごとに寄与度が対応付けられたリストは、検査オーダの識別情報に対応付けられた状態で記憶部13に記憶された寄与度データ13Cに追加して保存される。
【0063】
ここで、本実施例および従来技術1の間で同一の検査画像セットに対する優先度決定結果について比較する。
【0064】
図9は、優先度決定結果の比較例を示す図である。
図9には、肝腫瘤の良性腫瘤として知られる血管腫がEOB造影剤を用いるMRI検査で撮影された検査画像セット23に対する優先度決定結果が本実施例および従来技術1ごとに示されている。さらに、
図9には、検査画像セットの例として、各検査画像のうち病変に対応する肝腫瘤およびその周辺の領域がクロップされたクロップ画像が示されている。
【0065】
例えば、従来技術1では、異常に対応する特徴が検出される画像の優先度が一律に高く決定される。すなわち、
図9に示す検査画像セット23の例で言えば、造影前、肝細胞造影相、T2WIおよびDWIの検査画像の優先度がダイナミック相よりも高く決定される。このように高優先度が設定された造影前、肝細胞造影相、T2WIおよびDWIの検査画像には、良性の血管腫または悪性のがんの間で差が現れない。このため、検査画像セット23のうち造影前、肝細胞造影相、T2WIおよびDWIの検査画像を優先して表示したとしても、良性の血管腫を識別する手掛かりにならないので、診断効率を向上させることは困難である。
【0066】
その一方で、本実施例では、検査画像セット23が入力された診断モデルM11の出力に対する距離の差が最小である診断モデルM11の出力が得られる寄与度計測画像セットに対応する検査画像の組合せの優先度が高く決定される。これにより、本実施例では、診断モデルM11で診断の根拠となる検査画像の優先度が高く設定される。すなわち、
図9に示す検査画像セット23の例で言えば、造影前およびDWIの検査画像に加え、悪性のがんに対する識別根拠となり得るダイナミック相、すなわち動脈相および後期相の検査画像の優先度が高く決定される。例えば、動脈相の検査画像に早期濃染が見られないことから悪性のがんの疑いを除外すると共に、後期相の検査画像における病変が等信号であることから良性の血管腫である可能性が高いことを識別できる。
【0067】
以上のことから、本実施例に係る優先度決定機能によれば、EOB造影MRIで撮影される複数の検査画像の優先度を適切に決定できることが明白である。
【0068】
図10は、検査画像セットの一例を示す図である。
図10には、検査画像の例として、検査画像のうち病変に対応する肝腫瘤およびその周辺の領域がクロップされたクロップ画像が示されている。さらに、
図10には、病変が良性の嚢胞に対応する検査画像セットが例示されている。
図10に示すように、嚢胞の検査画像セットのうちDWIでは、病変および周囲が等信号となり、輝度差がほとんど見られない。このことから、嚢胞の識別根拠としてDWIの検査画像が有用であることがわかる。
【0069】
このことから、本実施例に係る優先度決定機能によれば、DWIの検査画像の優先度も高く設定できるので、嚢胞の識別根拠も高優先度の検査画像に含まれていることがわかる。このため、DWIの検査画像が等信号でないことから嚢胞の疑いも除外できる。このように、本実施例に係る優先度決定機能によれば、悪性のがんに加えて良性の嚢胞の除外診断、並びに、良性の血管腫の確定診断に寄与する情報提供を実現できる。
【0070】
図1の説明に戻り、表示制御部15Eは、クライアント端末30に対する各種の表示制御を実行する処理部である。あくまで一例として、表示制御部15Eは、画像セット生成部15Cにより生成された寄与度計測画像セットの集合CSのうち、寄与度算出部15Dにより算出された寄与度が最高である寄与度計測画像セットをクライアント端末30に表示させる。このとき、表示制御部15Eは、検査画像セットに含まれる検査画像のうち、寄与度が最高である寄与度計測画像セットに対応する検査画像と、寄与度が最高である寄与度計測画像セットに対応しない検査画像との表示形態を変更することができる。
【0071】
図11は、クライアント端末30への表示例を示す図である。
図11には、PACSのクライアント機能を有するクライアント端末30のビューワにより表示されるビューワ画面300が示されている。
図11に示すように、ビューワ画面300には、検査画像セットのサムネイルの一覧が表示される表示エリア301と、表示エリア301で選択された検査画像を表示する表示エリア302とが含まれ得る。
【0072】
表示エリア301では、検査画像セットのうち寄与度が最高である寄与度計測画像セットに対応するサムネイルが強調表示される。例えば、
図11に示すように、寄与度計測画像セットに対応する検査画像は、太線の枠で強調表示させる一方で、それ以外の検査画像は、強調表示されずに通常表示される。さらに、表示エリア302では、表示エリア301で選択された検査画像が表示される。このように検査画像を表示する場合、検査画像を拡大表示したり、病変部位およびその周囲を囲むバウンディングBB1を表示したりすることもできる。
【0073】
図12は、クライアント端末30への表示例を示す図である。
図12にも、PACSのクライアント機能を有するクライアント端末30のビューワにより表示されるビューワ画面310が示されている。
図12に示すように、ビューワ画面310には、電子カルテシステムなどによりオーダが発行された検査の検査番号の一覧表示される表示エリア311と、表示エリア301で選択された検査番号に対応する検査画像を表示する表示エリア312とが含まれ得る。
【0074】
表示エリア311には、電子カルテシステムなどによりオーダが発行された検査のうち、未読の検査番号の一覧を表示させることができる。例えば、
図12には、表示エリア311で検査番号「2」が選択された例が白黒の反転表示で示されている。この場合、表示エリア312には、検査番号「2」に対応する検査画像セットのうち、寄与度が最高である寄与度計測画像セットに対応する検査画像の一覧が表示される。
【0075】
図13は、クライアント端末30への表示例を示す図である。
図13にも、PACSのクライアント機能を有するクライアント端末30のビューワにより表示されるビューワ画面320が示されている。
図13に示すように、ビューワ画面320には、検査画像セットに含まれる検査画像ごとに検査画像のサムネイルおよびその検査画像の名称が対応付けられた一覧が表示される。
【0076】
このように一覧が表示される際、検査画像セットのうち寄与度が最高である寄与度計測画像セットに対応するアイテムが強調表示される。例えば、
図13に示すように、寄与度計測画像セットに対応する検査画像は、感嘆符、あるいはエクスクラメーションマークと呼ばれる「!」の表示やアイテムの背景の強調表示などが実行される一方で、それ以外の検査画像は、通常表示される。
【0077】
図14は、クライアント端末30への表示例を示す図である。
図14にも、PACSのクライアント機能を有するクライアント端末30のビューワにより表示されるビューワ画面330が示されている。
図14に示すように、ビューワ画面330には、MRIにより検査画像が撮影されるスライスの範囲に対応するスライダバー331と、スライス位置を示すスライダ332とが含まれる。このスライダ332のスライド方向は、MRIにより検査画像が撮影されるスライスの方向、すなわちY方向に対応する。ここで、スライダバー331には、判定部15Bにより良性または悪性の病変ありと判定されたスライスの位置または範囲を対応付けて表示できる。
図14に示す例で言えば、良性または悪性の病変ありと判定されたスライスに対応する位置標示333Aおよび333Bが表示される。例えば、スライダ332の位置が位置標示333Aに合わせられた場合、
図14に示すスライスの検査画像が表示されると共に、当該検査画像のうち病変部位をクロップするバウンディングボックスBB2が表示される。
【0078】
<処理の流れ>
次に、本実施例に係るサーバ装置10の処理の流れについて説明する。以下、サーバ装置10により実行される(1)優先度決定処理、(2)寄与度算出処理、(3)表示制御処理を説明する。
【0079】
(1)優先度決定処理
図15は、優先度決定処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、あくまで一例として、検査画像データ13Aに新規の検査画像セットが追加された場合、起動することができる。
【0080】
図15に示すように、判定部15Bは、新規の検査画像セットを診断モデルM11へ入力することにより、病変が陽性であるか否か、すなわち良性または悪性の病変が存在するか否かを判定する(ステップS101)。
【0081】
このとき、病変が陽性である場合、すなわち良性または悪性の病変が存在する場合(ステップS102Yes)、画像セット生成部15Cおよび寄与度算出部15Dにより後述の「寄与度算出処理」が実行される(ステップS103)。
【0082】
一方、病変が陽性でない場合、すなわち良性または悪性の病変が存在しない場合(ステップS102No)、画像セット生成部15Cおよび寄与度算出部15Dによる「寄与度算出処理」は実行されず、そのまま処理を終了する。
【0083】
(2)寄与度算出処理
図16は、寄与度算出処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、
図15に示すステップS103の処理に対応する。
図16に示すように、記憶部13に記憶された検査画像データ13Aのうち新規の検査画像セットが図示しないワークアリアなどに読み込まれる(ステップS301)。以下、検査画像セットに含まれる検査画像の各々が検査画像No[0、1、2、・・・、x]により識別されることとする。
【0084】
図17は、検査画像データ13Aの一例を示す図である。
図17に示すように、検査画像データ13Aは、検査番号および検査画像セットが対応付けられたデータである。ここで言う「検査番号」は、図示しない電子カルテシステムまたは検査システムなどにより発行される検査オーダの識別情報の一例であってよい。このような検査番号ごとに検査画像セット、例えば検査画像セットのバイナリデータが対応付けられたエントリの集合が検査画像データ13Aとして記憶部13に保存される。上記のステップS301では、検査画像データ13Aのうち新規の検査画像セットが寄与度算出処理の対象としてワークアリアなどに読み込まれる。
【0085】
上記のステップS301の実行後、寄与度算出部15Dは、ステップS301で読み込まれた検査画像セットを
図5に示す診断モデルM11を入力する(ステップS302)。これにより、診断モデルM11の出力y
0が得られる。続いて、画像セット生成部15Cは、ステップS301で読み込まれた検査画像セットに含まれる検査画像の枚数をパラメータcountに設定する(ステップS303)。
【0086】
そして、画像セット生成部15Cは、4つのパラメータn、i、d_arrayおよびp_arrayを初期化する(ステップS304)。ここで言う「n」は、検査画像セットのうち寄与度計測画像セットとして選択する検査画像の枚数をカウントするループカウンタである。また、「i」は、検査画像セットからn個の検査画像が選択された寄与度計測画像セットの組合せを識別するインデックスである。これらパラメータnおよびiの初期値として「1」が設定される。また、「d_array」は、寄与度の配列を格納するポインタである。さらに、「p_array」は、寄与度計測画像セットの組合せに対応する検査画像の配列を格納するポインタである。これらパラメータd_arrayおよびp_arrayの初期値としてブランク、あるいはNULLが設定される。
【0087】
その後、ループカウンタnがcountに達するまで下記のステップS305から下記のステップS310までの処理を反復するループ処理1が実行される。なお、
図16には、ステップS305~ステップS310の処理が反復される例を挙げたが、ステップS305~ステップS310の処理は並列して実行されることとしてもよい。
【0088】
すなわち、画像セット生成部15Cは、ステップS301で読み込まれた検査画像セットからループカウンタnに設定された個数の検査画像Noを選択する組合せを列挙してlistへ保存する(ステップS305)。ここで、検査画像セットの枚数を「7」としたとき、7Cn個の組合せが列挙される。例えば、n=1であれば7C1個(=7個)の組合せ、n=2であれば7C2個(=21個)の組合せ、n=3であれば7C3個(=35個)の組合せ、n=4であれば7C4個(=35個)の組合せ、n=5であれば7C5個(=21個)の組合せ、n=6であれば7C6個(=7個)の組合せが列挙される。
【0089】
その後、listに保存された全ての検査画像Noの組合せが選択されるまで下記のステップS306から下記のステップS309までの処理を反復するループ処理2が実行される。なお、
図16には、ステップS306~ステップS309の処理が反復される例を挙げたが、ステップS306~ステップS309の処理は並列して実行されることとしてもよい。
【0090】
さらに、ステップS301で読み込まれた検査画像セットのうちlistから選択された検査画像Noの組合せp以外の残りの検査画像の全てが選択されるまで下記のステップS306の処理を反復するループ処理3が実行される。なお、
図16には、ステップS306の処理が反復される例を挙げたが、ステップS306の処理は並列して実行されることとしてもよい。
【0091】
すなわち、画像セット生成部15Cは、listから選択された検査画像Noの組合せp以外の残りの検査画像eに当該残りの検査画像eの画素値をゼロに置き換える(ステップS306)。
【0092】
このようにステップS306のループ処理3が反復されることにより、listから選択された検査画像Noの組合せp、すなわち寄与度計測画像セット以外の残りの検査画像eがブランク画像に置き換えられる。
【0093】
そして、寄与度算出部15Dは、ループ処理3で寄与度計測画像セット以外の残りの検査画像eがブランク画像に置き換えられた検査画像セットを診断モデルM11へ入力する(ステップS307)。これにより、診断モデルM11の出力yiが得られる。
【0094】
その上で、寄与度算出部15Dは、ステップS302で得られた診断モデルM11の出力y0及びステップS307で得られた診断モデルM11の出力yiの距離を上記の式(1)又は上記の式(2)に代入することにより寄与度を算出する(ステップS308)。このように算出された寄与度の数値の配列がd_arrayに格納されると共に、寄与度が算出された検査画像Noの組合せpがp_arrayに格納される。その後、インデックスiがインクリメントされる(ステップS309)。
【0095】
このようにステップS306~ステップS309のループ処理2が反復されることにより、listに保存された検査画像Noの組合せごとに寄与度および検査画像Noの組合せがd_arrayおよびp_arrayとしてリスト化される。その後、インデックスnがインクリメントされる(ステップS310)。
【0096】
さらに、ステップS305~ステップS310のループ処理1が反復される。これにより、検査画像セットから1枚から検査画像セットの検査画像の総数-1までの全てのパターンの個数を選択する組合せごとに寄与度および検査画像Noの組合せがd_arrayおよびp_arrayとしてリスト化される。
【0097】
その後、寄与度算出部15Dは、全てのパターンの個数を選択する組合せごとに寄与度および検査画像Noの組合せがリスト化されたd_arrayおよびp_arrayを記憶部13に記憶された寄与度データ13Cへ追加して保存する(ステップS311)。
【0098】
図18は、寄与度データの一例を示す図である。
図18に示すように、寄与度データ13Cは、検査オーダの識別情報の一例に対応する診断Noごとにd_arrayおよびp_arrayが対応付けられたデータである。これらd_arrayおよびp_arrayには、検査画像セットから1枚から検査画像セットの検査画像の総数-1までの全てのパターンの個数を選択する組合せおよびその寄与度のリストが含まれる。
【0099】
(3)表示制御処理
図19は、表示制御処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、クライアント端末30で動作するビューワから検査オーダの識別情報の指定を含む検査画像セットの閲覧リクエストを受け付けた場合、起動することができる。
【0100】
図19に示すように、表示制御部15Eは、記憶部13に記憶された寄与度データ13Cのうち、指定の検査オーダの識別情報に対応するd_arrayおよびp_arrayを図示しないワークエリア等に読み込む(ステップS501)。
【0101】
そして、表示制御部15Eは、ステップS501で読み込まれたd_arrayに格納された寄与度のリストを寄与度が高い順にソートされたindexのリストであるsort_listを生成する(ステップS502)。
【0102】
続いて、表示制御部15Eは、ステップS501で読み込まれたd_arrayに格納された検査画像Noの組合せのリストをステップS502で生成されたsort_listのリスト順にソートされたrecommend_listを生成する(ステップS503)。
【0103】
その後、recommend_listに格納されたリストの先頭、すなわちrecommend_list[0]の検査画像Noの組合せに対応する全ての検査画像がビューワ画面に表示されるまでステップS504の処理を反復するループ処理4を実行する。
【0104】
すなわち、表示制御部15Eは、recommend_listに格納されたリストの先頭の検査画像Noの組合せに含まれる検査画像ごとに検査画像の表示、あるいは検査画像に対応するサムネイルやアイコンの強調表示をビューワに実行させる(ステップS504)。
【0105】
このようなループ処理4により、
図11~
図13に示すビューワ画面の表示が実現されることになる。
【0106】
<効果の一側面>
上述してきたように、本実施例に係るサーバ装置10は、検査画像セット23が入力された診断モデルM11の出力に対する距離が最小である診断モデルM11の出力が得られる寄与度計測画像セットに対応する検査画像の組合せの優先度を高く決定する。これにより、診断モデルM11で診断の根拠となる検査画像の優先度が高く設定される。したがって、本実施例に係るサーバ装置10によれば、ダイナミック検査で撮影される複数の画像の優先度を適切に決定できる。
さて、これまで開示の装置に関する実施例について説明したが、本発明は上述した実施例以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。そこで、以下では、本発明に含まれる他の実施例を説明する。
例えば、病変検出モデルは、1または複数の画像を病変ありまたは病変なしのクラスに分類するクラス分類タスクを実行する機械学習モデルにより実現され得る。例えば、病変検出モデルは、画像認識タスクに用いられる畳み込みニューラルネットワーク、いわゆるCNN系のVGGやResNet、DenseNetなどのライブラリにより実現されてよい。
訓練フェイズでは、検査画像を診断モデルm21の説明変数とし、正解ラベルを病変検出モデルm21の目的変数とし、任意の機械学習のアルゴリズム、例えば深層学習にしたがって病変検出モデルm21を訓練できる。例えば、検査画像が入力された病変検出モデルm21の出力と、正解ラベルとの損失を病変検出モデルm21に逆伝播させることにより、病変検出モデルm21のパラメータを更新する。このようにして得られた訓練済みの病変検出モデルM21に関するデータが診断モデルデータ13Bとして記憶部13に保存される。例えば、診断モデルデータ13Bには、病変検出モデルM21を形成する入力層、隠れ層及び出力層のニューロンやシナプスなどの層構造に関連するハイパーパラメータ、各層の重みやバイアスなどの目的関数に関するパラメータが含まれてよい。
推論フェイズでは、検査画像データ13Aに追加された新規の検査画像セットのうち肝細胞造影相に対応する検査画像を病変検出モデルM21へ入力する。このように検査画像が入力された病変検出モデルM11は、最終層から出力されるクラス別の確信度のうち確信度が最高であるクラス「病変あり」または「病変なし」のクラスラベルを出力し、クラスラベルが「病変あり」である場合、病変部位を含むバウンディングボックスをさらに出力する。
次に、病変診断モデルは、1または複数の画像を病変の診断名に対応するクラスに分類するクラス分類タスクを実行する機械学習モデルにより実現され得る。例えば、病変診断モデルは、画像認識タスクに用いられる畳み込みニューラルネットワーク、いわゆるCNN系のVGGやResNet、DenseNetなどのライブラリにより実現されてよい。
訓練フェイズでは、検査画像セットを診断モデルm12の説明変数とし、ラベルを病変診断モデルm12の目的変数とし、任意の機械学習のアルゴリズム、例えば深層学習にしたがって病変診断モデルm12を訓練できる。例えば、検査画像セットが入力された診断モデルm12の出力と、正解ラベルとの損失を診断モデルm12に逆伝播させることにより、病変診断モデルm12のパラメータを更新する。このようにして得られた訓練済みの病変診断モデルM12に関するデータが診断モデルデータ13Bとして記憶部13に保存される。例えば、診断モデルデータ13Bには、病変診断モデルM12を形成する入力層、隠れ層及び出力層のニューロンやシナプスなどの層構造に関連するハイパーパラメータ、各層の重みやバイアスなどの目的関数に関するパラメータが含まれてよい。
推論フェイズでは、検査画像データ13Aに追加された新規の検査画像セットに含まれる検査画像の各々から病変部位がクロップされた検査画像を生成し、生成された検査画像を検査画像セットとして病変診断モデルM12へ入力する。このように検査画像セットが入力された病変診断モデルM12は、最終層から出力されるクラス別の確信度のうち確信度が最高であるクラス「肝臓がん」、「血管腫」、「嚢胞」あるいはその他の診断名のラベルを出力する。
このように、MRIなどの検査画像そのものではなく、検査画像から病変部位がクロップされたクロップ画像を検査画像として入力とする病変診断モデルM12を用いることにより、診断精度を向上させることが可能になる。
この結果、検査画像セット23から最高優先度の検査画像として後期相の検査画像を絞り込むことができる。この場合、検査画像セット23に含まれる検査画像の優先度を高い順から挙げると、後期相の優先度が最高であり、次に、造影前およびDWIの優先度が2番目に高く、動脈相の優先度が3番目に高く、それ以外の検査画像が4番目となる。このように決定された優先度が最高である検査画像に絞り込んで表示を実行することもできれば、優先度に対応する順位に対応付けて当該順位の検査画像を表示することもできる。
なお、上記の優先度決定プログラム170aは、必ずしも最初からHDD170やROM160に記憶されておらずともかまわない。例えば、コンピュータ100に挿入されるフレキシブルディスク、いわゆるFD、CD-ROM、DVDディスク、光磁気ディスク、ICカードなどの「可搬用の物理媒体」に優先度決定プログラム170aを記憶させる。そして、コンピュータ100がこれらの可搬用の物理媒体から優先度決定プログラム170aを取得して実行するようにしてもよい。また、公衆回線、インターネット、LAN、WANなどを介してコンピュータ100に接続される他のコンピュータまたはサーバ装置などに優先度決定プログラム170aを記憶させておく。このように記憶された優先度決定プログラム170aをコンピュータ100にダウンロードさせた上で実行させるようにしてもよい。
(付記2)前記算出する処理は、前記第1の画像セットに含まれる画像のそれぞれから病変部位がクロップされた画像のそれぞれを前記機械学習モデルに入力すると共に、前記第2の画像セットに含まれる画像のそれぞれから病変部位がクロップされた画像のそれぞれを前記機械学習モデルに入力する処理を含む、
ことを特徴とする付記1に記載の優先度決定方法。
(付記3)前記算出する処理は、前記機械学習モデルに前記第1の画像セットが入力された際の最終層または中間層の出力と、前記機械学習モデルに前記第2の画像セットが入力された際の前記最終層または前記中間層の出力との差に基づくスコアを算出する処理を含む、
ことを特徴とする付記1に記載の優先度決定方法。
(付記4)前記生成する処理は、前記複数の第2の画像セットのうち前記スコアが最高である第2の画像セットに含まれる画像の集合のうち一または複数の画像の組合せに対応する複数の第3の画像セットを生成する処理を含み、
前記算出する処理は、前記機械学習モデルに前記第1の画像セットが入力された際の出力と、前記機械学習モデルに前記第3の画像セットが入力された際の出力との差に基づくスコアを前記第3の画像セットごとに算出する処理を含み、
前記出力する処理は、前記複数の第3の画像セットのうち前記スコアが最高である第3の画像セットを出力する処理を含む、
ことを特徴とする付記1に記載の優先度決定方法。
(付記8)前記算出する処理は、前記第1の画像セットに含まれる画像のそれぞれから病変部位がクロップされた画像のそれぞれを前記機械学習モデルに入力すると共に、前記第2の画像セットに含まれる画像のそれぞれから病変部位がクロップされた画像のそれぞれを前記機械学習モデルに入力する処理を含む、
ことを特徴とする付記7に記載の優先度決定プログラム。
(付記9)前記算出する処理は、前記機械学習モデルに前記第1の画像セットが入力された際の最終層または中間層の出力と、前記機械学習モデルに前記第2の画像セットが入力された際の前記最終層または前記中間層の出力との差に基づくスコアを算出する処理を含む、
ことを特徴とする付記7に記載の優先度決定プログラム。
(付記10)前記生成する処理は、前記複数の第2の画像セットのうち前記スコアが最高である第2の画像セットに含まれる画像の集合のうち一または複数の画像の組合せに対応する複数の第3の画像セットを生成する処理を含み、
前記算出する処理は、前記機械学習モデルに前記第1の画像セットが入力された際の出力と、前記機械学習モデルに前記第3の画像セットが入力された際の出力との差に基づくスコアを前記第3の画像セットごとに算出する処理を含み、
前記出力する処理は、前記複数の第3の画像セットのうち前記スコアが最高である第3の画像セットを出力する処理を含む、
ことを特徴とする付記7に記載の優先度決定プログラム。
(付記14)前記算出する処理は、前記第1の画像セットに含まれる画像のそれぞれから病変部位がクロップされた画像のそれぞれを前記機械学習モデルに入力すると共に、前記第2の画像セットに含まれる画像のそれぞれから病変部位がクロップされた画像のそれぞれを前記機械学習モデルに入力する処理を含む、
ことを特徴とする付記13に記載の情報処理装置。
(付記15)前記算出する処理は、前記機械学習モデルに前記第1の画像セットが入力された際の最終層または中間層の出力と、前記機械学習モデルに前記第2の画像セットが入力された際の前記最終層または前記中間層の出力との差に基づくスコアを算出する処理を含む、
ことを特徴とする付記13に記載の情報処理装置。
(付記16)前記生成する処理は、前記複数の第2の画像セットのうち前記スコアが最高である第2の画像セットに含まれる画像の集合のうち一または複数の画像の組合せに対応する複数の第3の画像セットを生成する処理を含み、
前記算出する処理は、前記機械学習モデルに前記第1の画像セットが入力された際の出力と、前記機械学習モデルに前記第3の画像セットが入力された際の出力との差に基づくスコアを前記第3の画像セットごとに算出する処理を含み、
前記出力する処理は、前記複数の第3の画像セットのうち前記スコアが最高である第3の画像セットを出力する処理を含む、
ことを特徴とする付記13に記載の情報処理装置。