(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053478
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】位置検出システム及び倉庫内安全管理システム
(51)【国際特許分類】
B65G 1/137 20060101AFI20240408BHJP
G06K 7/10 20060101ALI20240408BHJP
G01S 5/08 20060101ALI20240408BHJP
G01S 7/02 20060101ALI20240408BHJP
G01S 13/74 20060101ALI20240408BHJP
G01S 5/02 20100101ALI20240408BHJP
【FI】
B65G1/137 A
G06K7/10 136
G06K7/10 244
G01S5/08
G01S7/02 216
G01S13/74
G01S5/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159792
(22)【出願日】2022-10-03
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-06
(71)【出願人】
【識別番号】515237061
【氏名又は名称】株式会社LIFE
(71)【出願人】
【識別番号】521460985
【氏名又は名称】株式会社ロンコ・ジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100121371
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 和人
(72)【発明者】
【氏名】前田 剛之
【テーマコード(参考)】
3F522
5J062
5J070
【Fターム(参考)】
3F522AA02
3F522BB01
3F522BB28
3F522BB37
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3F522EE15
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5J062AA01
5J062BB01
5J062CC14
5J062CC15
5J062FF04
5J062GG02
5J062HH09
5J070AD03
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5J070AK10
5J070AK22
5J070BC04
5J070BC05
5J070BC06
(57)【要約】
【課題】設置や維持管理コストが低く、精度の高い荷役車両の位置検出が可能な位置検出システムの提供。
【解決手段】方位検出手段により車載アンテナの方向を検出し、RFID読取手段により倉庫内各所の定点タグのIDと到来方向を検出し、到来方向変換手段で到来方向の方向ベクトルを、慣性座標系に於ける到来方向の方向ベクトルである参照到来方向ベクトルに換算し、位置推定手段で、各定点タグAiに対して、前記定点タグ情報記憶手段に記憶された該定点タグAiの位置から、該定点タグAiを起点とし、該定点タグAiに対する前記参照到来方向ベクトルの逆向きに延びる直線をLiとしたとき、各直線Liからの距離の二乗和が最小となる位置を、前記荷役車両の推定位置として算出する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の収納ラックが配置された倉庫内において、前記収納ラックの間の通路を移動する荷役車両の位置を検出する位置検出システムであって、
前記各収納ラックの通路側に露出する側部又は倉庫内の固定された部位に、分布して固定状態で設置されたRFタグである定点タグについて、前記各定点タグに記録された該定点タグの識別情報及び該定点タグが設置された位置を関連付けて記憶する定点タグ情報記憶手段と、
前記荷役車両に、該荷役車両の前方向に向け搭載されたフェーズドアレイ型の車載アンテナと、
前記荷役車両に搭載され、前記車載アンテナの向きであるアンテナ方向を検出する向き検出手段と、
前記車載アンテナによりRFタグの情報の読み取りを行うとともに、前記車載アンテナに対してRFタグから送信される電波の到来方向の方向ベクトルを検出するRFID読取手段と、
前記方位検出手段により検出されるアンテナ方向に基づき、前記RFID読取手段が検出する、前記車載アンテナに対する前記各定点タグからの電波の到来方向の方向ベクトルを、慣性座標系に於ける到来方向の方向ベクトルである参照到来方向ベクトルに換算する到来方向変換手段と、
前記RFID読取手段によりN個(N≧2)の前記定点タグAi(i=1,…,N)が検出された場合、前記各定点タグAiに対して、前記定点タグ情報記憶手段に記憶された該定点タグAiの位置から、該定点タグAiを起点とし、該定点タグAiに対する前記参照到来方向ベクトルの逆向きに延びる直線をLiとしたとき、各直線Liからの距離の二乗和が最小となる位置を、前記荷役車両の推定位置として算出する位置推定手段と、
を備えたことを特徴とする位置検出システム。
【請求項2】
前記位置推定手段は、
前記RFID読取手段によりN個の前記定点タグAi(i=1,2,…,N)が検出された場合、前記各定点タグAiに対して、前記定点タグ情報記憶手段に記憶された該定点タグAiの位置から、該定点タグAiを起点とし、該定点タグAiに対する前記参照到来方向ベクトルの逆向きに延びる直線をLiとしたとき、
検出されたそれぞれの前記定点タグAk(k=1,2,…,N)について、該定点タグAkに対する前記直線Lkと、該定点タグAk以外のすべての前記定点タグAj(j≠k)に対する前記直線Ljとの距離に基づき、該定点タグAkから前記車載アンテナに到来した後方散乱波が直接波か反射波又は回折波かを判別し、反射波又は回折波と判別された場合には、該定点タグAkは推定位置の算出に用いる前記定点タグから除外して、前記荷役車両の推定位置の算出を行うこと
を特徴とする請求項1記載の位置検出システム。
【請求項3】
前記荷役車両に搭載され、前記車載アンテナの加速度ベクトルを検出する加速度検出手段と、
前記荷役車両に搭載され、前記車載アンテナの角速度ベクトルを検出する角速度検出手段と、
前記加速度検出手段により検出される加速度、及び前記角速度検出手段により検出される角速度に基づき、各時刻に於ける前記車載アンテナの位置である慣性航法推定位置を算出する慣性航法手段と、を備え、
前記位置推定手段は、
前記RFID読取手段によりN個(N≧2)の前記定点タグAi(i=1,…,N)が検出された場合、前記各定点タグAiに対して、前記定点タグ情報記憶手段に記憶された該定点タグAiの位置から、該定点タグAiを起点とし、該定点タグAiに対する前記参照到来方向ベクトルの逆向きに延びる直線をLiとしたとき、各直線Liから推定位置Tまでの距離の二乗和S1と、前記慣性航法手段が算出する前記慣性航法推定位置A0から推定位置Tまでの距離の二乗S0とに、それぞれ所定の重み係数を掛けて加えた加重和が最小となるような推定位置Tを、前記荷役車両の推定位置として算出するものであることを特徴とする請求項1記載の位置検出システム。
【請求項4】
前記各収納ラックの各棚区画に収納されるパレットに付されたRFタグであるパレットタグに記録された、該パレットタグの識別情報と、該パレットタグが付されたパレットが前記棚区劃に収納された際の該パレットタグの位置座標とを記憶する荷物情報記憶手段、を備え、
前記位置推定手段は、
前記RFID読取手段により、前記荷物情報記憶手段に記憶された前記パレットタグの識別情報が検出された場合には、該パレットタグを、該パレットタグの識別情報に対応して前記荷物情報記憶手段に記憶された該パレットタグの位置座標に設置された前記定点タグとして、前記RFID読取手段により検出された前記定点タグの一つとみなし、前記荷役車両の推定位置を算出するものであることを特徴とする請求項1記載の位置検出システム。
【請求項5】
前記各収納ラックのそれぞれの棚区画の棚板の上面に付されたRFタグである棚面タグについて、前記各棚面タグに記録された該棚面タグの識別情報及び該棚面タグが設置された位置座標を関連付けて記憶する棚面タグ情報記憶手段、を備え、
前記位置推定手段は、
前記RFID読取手段により、前記棚面タグ情報記憶手段に記憶された前記棚面タグの識別情報が検出された場合には、該棚面タグを、該棚面タグの識別情報に対応して前記棚区画情報記憶手段に記憶された該棚面タグの位置座標に設置された前記定点タグとして、前記RFID読取手段により検出された前記定点タグの一つとみなし、前記荷役車両の推定位置を算出するものであることを特徴とする請求項1記載の位置検出システム。
【請求項6】
複数の収納ラックが配置された倉庫内において、前記収納ラックの間の通路を移動する複数の荷役車両の安全管理を行う倉庫内安全管理システムであって、
管理サーバと、
前記各荷役車両にそれぞれ搭載され、前記管理サーバと無線で通信可能に接続された車載端末装置と、を備え、
前記各車載端末装置は、
請求項1乃至5の何れか一記載の位置検出システムと、
前記位置検出システムにより検出される各時刻に於ける前記荷役車両の位置情報を、前記管理サーバに送信する位置情報送信手段と、を備えており、
前記管理サーバは、
前記各車載端末装置から送信される位置情報を記憶する車両情報記憶手段と、
車両情報記憶手段に記憶された各時刻の前記各荷役車両の位置情報に基づき、現在から所定の時間T1の経過後に、少なくとも2台の荷役車両が所定距離以内に接近するか否かを予測し、接近すると予測された場合には、その接近が予測される前記各荷役車両に搭載された前記車載端末装置に対して、他の荷役車両の接近を警告する接近警告信号を送信する車両接近検出手段と、を備えており、
前記各車載端末装置は、さらに、前記管理サーバから前記接近警告信号を受信すると、運転者に他の荷役車両の接近を報知する車両接近報知手段を備えたことを特徴とする倉庫内安全管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、倉庫内においてラックの間の通路を移動する荷役車両の位置を検出する位置検出システム、及び荷役車両の倉庫内での事故を防止する倉庫内安全管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
物流倉庫やトランクルームのような倉庫では、保管する荷物をパレット(pallet, JIS Z 0106; JIS Z 0111:2006,1011; JIS Z 0106:1997,1001 参照)に収納してユニットロード(unit load; JIS Z 0111:2006,1009参照)とし、倉庫内に配列されたラック(rack; JIS Z 0111:2006,4006参照)の各棚区画にユニットロードを収納することで、荷物の保管が行われる。ユニットロードをラックの各棚区画に収納するには、倉庫一端に設けられた入出荷ゲートから倉庫建屋内に搬入されるユニットロードを、フォークリフトなどの荷役車両で、そのユニットロードに対し割り当てられたラックの棚区画まで運搬して収納する。
【0003】
倉庫内では、複数の荷役車両を用いて斯かるユニットロードの運搬作業が行われ、各荷役車両は、街区状に配列された各ラックの間の通路を走行する。このとき、ラックの間の通路が交差する箇所に於いて、荷役車両同士が衝突しないように、安全管理を行うことが重要である。そのためには、倉庫内に於ける各荷役車両の位置をリアルタイムで検出し、各荷役車両の進行方向に於いて車両同士の接近が予測されると警告を報知するようなシステムが必要とされる。
【0004】
倉庫内に於ける荷役車両の位置をリアルタイムで検出する技術としては、特許文献1~9に記載のものがある。これらの従来技術を大きく分類し整理すると、およそ次のように分類整理される。
【0005】
(1)ターゲット画像解析方式(特許文献1,2)
倉庫の天井に設けた複数のリトロリフレクタ(retroreflector;入射した光を、入射方向と平行で、かつ反対の方向へと反射する装置もしくは面。)のターゲットに、フォークリフト(荷役車両)から光線を照射し、フォークリフトの天井に設けた撮影装置で各ターゲットを撮影し、画像上に於けるターゲットの位置及び大きさを特定し、撮影された各ターゲットの大きさに基づき撮影距離を計算し、各ターゲットの設置位置と撮影距離とに基づいて各ターゲットを撮影した撮影位置を特定することで、フォークリフトの位置を特定する。
【0006】
(2)ゲートアンテナ方式(特許文献3)
通路の両側に、RFIDリーダ(JIS X 0500:2020, 05.01.01)を備えたゲートを設け、フォークリフト(荷役車両)又は荷物に付されたRFタグ(JIS X 0500:2020, 06.02.04)がゲートを通過するのを検出することで、フォークリフトの位置を特定する。
【0007】
(3)通路タグ検出方式(特許文献4)
フォークリフト(荷役車両)が走行する走行路に沿って建てられた倉庫のラックにRFタグ(3)を設置し(仝文献
図2,明細書〔0021〕参照)、フォークリフト(4)にRFIDリーダ(2)を搭載し(仝文献
図3,明細書〔0021〕参照)、どの位置にどのIDのRFタグ(3)が配置されているかをデータベース(8)に格納しておく(仝文献 明細書〔0025〕参照)。そして、フォークリフト(4)に搭載されたRFIDリーダ(2)で、各RFタグ(3)と通信し、RFタグ(3)が発する情報を受信し、読み込んだRFタグ(3)の情報から、フォークリフト(4)のおよその位置を特定する。
【0008】
(4)床タグ検出方式(特許文献5,6,7,8)
倉庫の床面に所定の間隔をおいてRFタグを配置し、各RFタグの位置及び識別情報を管理サーバに記憶しておく。また、フォークリフトの底部に床面のRFタグを読み取るRFIDリーダを設けて、床面のRFタグの識別情報を検出し、管理サーバに送信する。管理サーバは、読み取られたRFタグの識別情報に基づいてフォークリフトの位置を特定し管理する。
【0009】
(5)車両タグ検出方式(特許文献9)
フォークリフト(20)の天井にフォークリフトIDを記憶するRFタグ(24)を設置し(仝文献
図1参照)、倉庫内部に設置されたRFIDリーダ(天井に設置された天井リーダ(10),ラック棚(2)に設置された棚リーダ(4),倉庫の床に設置される床リーダ(仝文献 明細書〔0014〕))を設置し、各RFIDリーダは、通信回線によりサーバ(12)と情報通信可能に接続し、サーバ(12)には、各RFIDリーダのリーダID及び位置情報をリーダ配置テーブル(40)として格納しておく(仝文献
図6,明細書〔0021〕)。各RFIDリーダにより、フォークリフト(20)のRFタグ(24)を読み取り、読み取ったRFIDリーダの位置情報から、フォークリフト(20)のおよその位置を推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2018-127298号公報
【特許文献2】特開2017-071485号公報
【特許文献3】特開2014-131935号公報
【特許文献4】特開2012-218861号公報
【特許文献5】特開平03-182403号公報
【特許文献6】特開平04-292305号公報
【特許文献7】実用新案登録第3121376号明細書
【特許文献8】特開2004-210429号公報
【特許文献9】特開2007-246250号公報
【特許文献10】米国特許第10430623B1号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】林和則,「狭帯域信号の到来方向推定」,電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review,8巻,3号,pp.143-150,2015年.
【非特許文献2】菊間信良,「アレーアンテナの基礎」,[online],令和4年6月22日検索,2010アジア・パシフィックマイクロ波会議付設 マイクロウェーブ展2010 MWE2009基礎講座データ集,<URL:https://apmc-mwe.org/MicrowaveExhibition2010/program/tutorial2009/TL03-01.pdf>
【非特許文献3】田村光,井上喜雄,芝田京子,「慣性センサを用いた移動物体の位置推定技術の開発(機械力学・計測制御VI)」,日本機械学会 中国四国支部総会・講演会 講演論文集,2015.53巻(2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記従来の荷役車両の位置をリアルタイムで検出する技術に於いては、以下のような課題がある。
【0013】
(1)ターゲット画像解析方式
ターゲットが倉庫内に配置されたラック等の背後に隠れた場合など、フォークリフトの位置からターゲットまでの射線上に障害物が存在し、ターゲットを直接撮影できない場合がある。この場合、フォークリフトの位置の特定ができないこととなり、位置特定不能な死角が存在する。また、フォークリフトとターゲットとの距離が遠いと、各ターゲットの大きさから撮影距離を求める際の誤差が大きくなり、正確な位置推定が困難となる。
【0014】
(2)ゲートアンテナ方式
ゲートアンテナ方式を倉庫内の荷役車両の位置検出に適用する場合、倉庫内に多数のゲートアンテナを設ける必要があり、設置スペースやアンテナ配線がたいへん多く必要となるため、倉庫の利用効率,設置コスト,維持管理コスト等の面から現実的ではない。
【0015】
(3)通路タグ検出方式
この方式では、倉庫のラックに設置するRFタグの数が少ないと、荷役車両の位置検出の精度は低いが、倉庫のラックに設置するRFタグの数を増やして間隔を狭めることで、位置検出の精度を向上させることができると考えられる。然し乍ら、実際のRFIDシステムでは、通路周辺のラック,天井,床等の物体による電波の反射や回折により、荷役車両の位置からは直接見えない隠れたタグが検出される場合が多々ある。RFタグの数が多いほど、斯かる反射や回折による隠れたタグの検出が多くなる。このような反射や回折が生じた場合、単純に検出されたタグの識別情報のみからは位置特定を行うことが困難となる。反射・回折の影響を低減するため、アンテナの電波出力強度を弱めて検出距離を短くした場合、こんどはRFタグが検出できないケースが多発することとなり、検出距離の調整が難しいという問題が生じる。また、反射・回折の影響を低減するため、RFタグの設置間隔を大きくすると、こんどは位置検出の精度が低下するという問題が生じる。
【0016】
(4)床タグ検出方式
この方式では、フォークリフトが走行する通路床面にRFタグ(床タグ)を設置するが、フォークリフトが通路を何度も走行することで、摩耗により床タグが破損するため、メンテナンスのコスト及び労力が大きいという問題がある。また、床タグ検出の為の専用のアンテナをフォークリフトの底部に設ける必要があるため、コストが高くなる問題もある。また、フォークリフトの位置検出精度を上げるには、倉庫内のすべての通路に密に床タグを設置し、各床タグの設置位置の測量や維持管理を行う必要があり、設置コストやメンテナンスコストが高くなる問題もある。
【0017】
(5)車両タグ検出方式
この方式では、正確なフォークリフトの位置特定を行うには、比較的狭い間隔で多数のアンテナを倉庫天井に設ける必要があり、設置コストが大きいという問題がある。また、コスト低減のために天井アンテナの間隔を大きくすると、位置検出の推定誤差が大きくなり、およその位置の把握は可能であるが、正確な位置特定はできないという問題がある。
【0018】
そこで、本発明の目的は、設置コストや維持管理コストが低くでき、且つ精度の高い荷役車両の位置検出が可能な位置検出システムと、其れを利用した荷役車両の倉庫内安全管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係る位置検出システムの第1の構成は、複数の収納ラックが配置された倉庫内において、前記収納ラックの間の通路を移動する荷役車両の位置を検出する位置検出システムであって、
前記各収納ラックの通路側に露出する側部又は倉庫内の固定された部位に、分布して固定状態で設置されたRFタグである定点タグについて、前記各定点タグに記録された該定点タグの識別情報及び該定点タグが設置された位置を関連付けて記憶する定点タグ情報記憶手段と、
前記荷役車両に、該荷役車両の前方向に向け搭載されたフェーズドアレイ型の車載アンテナと、
前記荷役車両に搭載され、前記車載アンテナの向きであるアンテナ方向を検出する向き検出手段と、
前記車載アンテナによりRFタグの情報の読み取りを行うとともに、前記車載アンテナに対してRFタグから送信される電波の到来方向の方向ベクトルを検出するRFID読取手段と、
前記方位検出手段により検出されるアンテナ方向に基づき、前記RFID読取手段が検出する、前記車載アンテナに対する前記各定点タグからの電波の到来方向の方向ベクトルを、慣性座標系に於ける到来方向の方向ベクトルである参照到来方向ベクトルに換算する到来方向変換手段と、
前記RFID読取手段によりN個(N≧2)の前記定点タグAi(i=1,…,N)が検出された場合、前記各定点タグAiに対して、前記定点タグ情報記憶手段に記憶された該定点タグAiの位置から、該定点タグAiを起点とし、該定点タグAiに対する前記参照到来方向ベクトルの逆向きに延びる直線をLiとしたとき、各直線Liからの距離の二乗和が最小となる位置を、前記荷役車両の推定位置として算出する位置推定手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、倉庫内に多数のRFID検出用のアンテナを設ける必要が無いため、設置コストや維持管理コストが低くできる。また、倉庫内の各所に多数の定点タグを設けておけば、高い精度で荷役車両の位置検出が可能となる。定点タグは極めて安価で設置も容易であるため、低コストで設置できる。
【0021】
本発明に係る位置検出システムの第2の構成は、前記第1の構成に於いて、前記位置推定手段は、
前記RFID読取手段によりN個の前記定点タグAi(i=1,2,…,N)が検出された場合、前記各定点タグAiに対して、前記定点タグ情報記憶手段に記憶された該定点タグAiの位置から、該定点タグAiを起点とし、該定点タグAiに対する前記参照到来方向ベクトルの逆向きに延びる直線をLiとしたとき、
検出されたそれぞれの前記定点タグAk(k=1,2,…,N)について、該定点タグAkに対する前記直線Lkと、該定点タグAk以外のすべての前記定点タグAj(j≠k)に対する前記直線Ljとの距離に基づき、該定点タグAkから前記車載アンテナに到来した後方散乱波が直接波か反射波又は回折波かを判別し、反射波又は回折波と判別された場合には、該定点タグAkは推定位置の算出に用いる前記定点タグから除外して、前記荷役車両の推定位置の算出を行うことを特徴とする
【0022】
この構成によれば、検出される定点タグの後方散乱波から、反射波又は回折波を除外することで、位置検出精度を向上させることができる。
【0023】
本発明に係る位置検出システムの第3の構成は、前記第1の構成に於いて、前記荷役車両に搭載され、前記車載アンテナの加速度ベクトルを検出する加速度検出手段と、
前記荷役車両に搭載され、前記車載アンテナの角速度ベクトルを検出する角速度検出手段と、
前記加速度検出手段により検出される加速度、及び前記角速度検出手段により検出される角速度に基づき、各時刻に於ける前記車載アンテナの位置である慣性航法推定位置を算出する慣性航法手段と、を備え、
前記位置推定手段は、
前記RFID読取手段によりN個(N≧2)の前記定点タグAi(i=1,…,N)が検出された場合、前記各定点タグAiに対して、前記定点タグ情報記憶手段に記憶された該定点タグAiの位置から、該定点タグAiを起点とし、該定点タグAiに対する前記参照到来方向ベクトルの逆向きに延びる直線をLiとしたとき、各直線Liから推定位置Tまでの距離の二乗和S1と、前記慣性航法手段が算出する前記慣性航法推定位置A0から推定位置Tまでの距離の二乗S0とに、それぞれ所定の重み係数を掛けて加えた加重和が最小となるような推定位置Tを、前記荷役車両の推定位置として算出するものであることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、定点タグを用いた位置推定に、慣性航法による位置推定をフュージョン(統合)させることで、位置検出精度をさらに向上させることができる。
【0025】
本発明に係る位置検出システムの第4の構成は、前記第1の構成に於いて、前記各収納ラックの各棚区画に収納されるパレットに付されたRFタグであるパレットタグに記録された、該パレットタグの識別情報と、該パレットタグが付されたパレットが前記棚区劃に収納された際の該パレットタグの位置座標とを記憶する荷物情報記憶手段、を備え、
前記位置推定手段は、
前記RFID読取手段により、前記荷物情報記憶手段に記憶された前記パレットタグの識別情報が検出された場合には、該パレットタグを、該パレットタグの識別情報に対応して前記荷物情報記憶手段に記憶された該パレットタグの位置座標に設置された前記定点タグとして、前記RFID読取手段により検出された前記定点タグの一つとみなし、前記荷役車両の推定位置を算出するものであることを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、本来は定点タグではないパレットタグを、パレットが棚区画に収納され位置が固定された際には定点タグと見做して、荷役車両の推定位置の算出に用いることで、位置検出精度をさらに向上させることができる。
【0027】
本発明に係る位置検出システムの第5の構成は、前記第1の構成に於いて、前記各収納ラックのそれぞれの棚区画の棚板の上面に付されたRFタグである棚面タグについて、前記各棚面タグに記録された該棚面タグの識別情報及び該棚面タグが設置された位置座標を関連付けて記憶する棚面タグ情報記憶手段、を備え、
前記位置推定手段は、
前記RFID読取手段により、前記棚面タグ情報記憶手段に記憶された前記棚面タグの識別情報が検出された場合には、該棚面タグを、該棚面タグの識別情報に対応して前記棚区画情報記憶手段に記憶された該棚面タグの位置座標に設置された前記定点タグとして、前記RFID読取手段により検出された前記定点タグの一つとみなし、前記荷役車両の推定位置を算出するものであることを特徴とする。
【0028】
この構成によれば、本来は、棚区劃にパレットが収納されたことの検出の為に使用される棚面タグを、定点タグとして、荷役車両の推定位置の算出に用いることで、位置検出精度をさらに向上させることができる。
【0029】
本発明に係る倉庫内安全管理システムの構成は、複数の収納ラックが配置された倉庫内において、前記収納ラックの間の通路を移動する複数の荷役車両の安全管理を行う倉庫内安全管理システムであって、
管理サーバと、
前記各荷役車両にそれぞれ搭載され、前記管理サーバと無線で通信可能に接続された車載端末装置と、を備え、
前記各車載端末装置は、
請求項1乃至5の何れか一記載の位置検出システムと、
前記位置検出システムにより検出される各時刻に於ける前記荷役車両の位置情報を、前記管理サーバに送信する位置情報送信手段と、を備えており、
前記管理サーバは、
前記各車載端末装置から送信される位置情報を記憶する車両情報記憶手段と、
車両情報記憶手段に記憶された各時刻の前記各荷役車両の位置情報に基づき、現在から所定の時間T1の経過後に、少なくとも2台の荷役車両が所定距離以内に接近するか否かを予測し、接近すると予測された場合には、その接近が予測される前記各荷役車両に搭載された前記車載端末装置に対して、他の荷役車両の接近を警告する接近警告信号を送信する車両接近検出手段と、を備えており、
前記各車載端末装置は、さらに、前記管理サーバから前記接近警告信号を受信すると、運転者に他の荷役車両の接近を報知する車両接近報知手段を備えたことを特徴とする。
【0030】
この構成によれば、ラックなどの遮蔽物が多く見通しの悪い倉庫内に於いても、荷役車両同士の接近が予測されれば事前に運転者に荷役車両の接近が報知されるため、倉庫内に於ける安全を向上させることができる。
【発明の効果】
【0031】
以上のように、本発明の位置検出システムによれば、倉庫内に多数のRFID検出用のアンテナを設ける必要が無いため、設置コストや維持管理コストが低くできる。また、倉庫内の各所に多数の定点タグを設けておけば、高い精度で荷役車両の位置検出が可能となる。定点タグは極めて安価で設置も容易であるため、低コストで設置できる。
【0032】
また、本発明の倉庫内安全管理システムによれば、ラックなどの遮蔽物が多く見通しの悪い倉庫内に於いても、荷役車両同士の衝突事故を未然防止できて、倉庫内に於ける安全を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本実施例で管理対象となる倉庫の建屋内のレイアウト図である。
【
図2】保管エリア2に配置されたラック4及び通路2aの斜視図である。
【
図3】実施例1に係る位置検出システムの物理的な構成を表すブロック図である。
【
図4】実施例1に係る位置検出システムの機能的な構成を表すブロック図である。
【
図5】各記憶部に格納されるデータベースのデータ構造を表すER図である。
【
図6】車載アンテナの向きDとDOAベクトルd
k
Iとk番目の定点タグから見た車載アンテナ60の方向ベクトルd
kとの関係を示す図である。
【
図7】各定点タグA
kからの後方散乱波が全て直接波である場合の直線L
kの様子を表す図である。
【
図8】定点タグA
kからの後方散乱波が反射波である場合の直線L
kの様子を表す図である。
【
図9】評価用のモデルに於けるラック4と定点タグを配置を示す図である。
【
図10】車載アンテナ60で受信される各定点タグの光路を示す図である。
【
図11】車載アンテナ60で受信される各定点タグの光路を示す図である。
【
図12】車載アンテナ60で受信される各定点タグの光路を示す図である。
【
図13】車載アンテナ60により受信される各定点タグA
kに対する射線間距離h
kjの平均値ave
j(h
kj)及び分散値var
j(h
kj)の分布を示す図である。
【
図14】車載アンテナ60により受信される各定点タグA
kに対する射線間距離h
kjの平均値ave
j(h
kj)及び分散値var
j(h
kj)の分布を示す図である。
【
図15】車載アンテナ60により受信される各定点タグA
kに対する射線間距離h
kjの平均値ave
j(h
kj)及び分散値var
j(h
kj)/[ave
j(h
kj)]
2の分布を示す図である。
【
図16】車載アンテナ60により受信される各定点タグA
kに対する射線間距離h
kjの平均値ave
j(h
kj)及び分散値var
j(h
kj)/[ave
j(h
kj)]
2の分布を示す図である。
【
図17】除外点数Mの変化に対する平均値ave
j(h
kj;N-1-M)の変化の様子を示す図である。
【
図18】除外点数Mの変化に対する平均値ave
j(h
kj;N-1-M)の変化の様子を示す図である。
【
図19】実施例1の位置検出システムの全体動作を表すフローチャートである。
【
図20】実施例2に係る位置検出システムの機能的な構成を表すブロック図である。
【
図21】実施例2に係る位置検出システムに於ける、パレット10を棚区劃4aに収納する際のパレットタグ10aの位置登録動作を表すフローチャートである。
【
図22】ターゲットポイント(A),慣性航法推定位置(Q
0),及び定点タグ(アンカーポイント)(Q
1~Q
5)の配置例を表す図である。
【
図23】本発明の実施例4に係る倉庫内安全管理システムの機能的な構成を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【実施例0035】
(1)倉庫建屋内のレイアウト
図1は、本実施例1で管理対象となる倉庫の建屋内のレイアウト図である。尚、
図1は、あくまでも説明のための一例であり、実際には、倉庫レイアウトは、それぞれの倉庫に応じてケース・バイ・ケースで設定される。ユーザ(荷主)から預かる保管荷物は、荷主毎にパレットに収容されてユニットロードとして一つの単位にまとめられ、ユニットロード(JIS Z 0111:2006, 1009参照)単位で倉庫内に保管される。
【0036】
倉庫1の建屋内部は、コンテナ輸送により着荷し又は出荷されるユニットロードを保管する保管エリア2と、保管エリア2に保管されたユニットロードを出し入れする入出荷スペース3とが設けられている。保管エリア2には、複数のラック4(JIS Z 0111:2006, 4006参照)が街区状(行列状)に設置されている。ここで、「街区」とは、通路に囲まれた一区画(ラックブロック)をいう(
図2参照)。各区画(ラックブロック)の間には、フォークリフト7(荷役車両)が自由に走行・離合が可能な通路2aが設けられている。各ラック4は、物品を保管するために使用する支柱と棚で構成される構造物であり、1つのユニットロードを保管可能な棚区劃4a(上下の棚板4cの間の空間区劃)を複数個具有する(
図2,
図3参照)。また、其々の棚区劃4aの棚板4cの上面には、該棚区劃4aを特定する棚区劃IDが記憶されているRFタグ(JIS X 0500-3:2009 参照)である棚面タグ4bが付設されている(
図2参照)。各街区の各ラック4は、表側が通路2aに面しており、表側から各棚区劃4aへ、ユニットロードの出し入れが行われる。入出荷スペース3は、保管エリア2の一側辺に面して設けられた、フォークリフト7が自由に走行・離合が可能なスペースである。入出荷スペース3の、保管エリア2の反対側は、トラック8を駐車して荷物の積み下ろし又は積み込みをする、倉庫1の外側のスペースであるトラックバース5に面している。入出荷スペース3とトラックバース5の間には、ドックシェルター(dock shelter;トラックから荷物を出し入れする際に虫やホコリなどが入らないように、また外気がトラックや倉庫内に入ることも防ぐ囲い。)などの入出ゲート6が設けられている。
【0037】
保管荷物を纏めたユニットロードは、トラック8で輸送され、着荷の際は、フォークリフト7により入出ゲート6から入出荷スペース3へ搬入され、保管エリア2内の各ラック4の棚区劃4aへ収容される。また、出荷の際は、ユニットロードは、フォークリフト7により、保管エリア2内の各ラック4の棚区劃4aから入出荷スペース3,入出ゲート6を通ってトラック8の荷台へ搬出される。
【0038】
図2は、保管エリア2に配置されたラック4及び通路2aの斜視図である。
図2において、
図1と対応する構成部分には同符号を付している。保管エリア2に配置されたラック4は、パレットを保管するためのパレットラックであり、水平の棚板4dが複数段に設けられている。これらの棚板4dと支柱及び筋交とにより区画された、1つのユニットロードが収容可能な区画が、棚区劃4aである。各棚区劃4aの下面中央には、棚面タグ4bが付されている。棚面タグ4bは、棚区劃4aにユニットロードが収容されたときにはユニットロードにより遮蔽される。また、各ラック4の支柱側面上部や支柱側面中央部には、位置を特定する定点タグIDが記憶されているRFタグであるラックタグ4c(定点タグ)が付設されている(
図2参照)。ラックタグ4cは、常時固定され、その位置が事前に測定されて既知である定点タグである。
【0039】
(2)位置検出システムの構成
図3は、実施例1に係る位置検出システムの物理的な構成を表すブロック図である。
図3において、
図1,
図2と同様の構成部分については同符号を付している。本実施例の位置検出システムは、管理サーバ20,車載端末装置40,車載アンテナ60,通信回線70,無線LANルータ71、並びに、棚面タグ4b,ラックタグ4c(定点タグ),パレットタグ10a,床面タグ11(定点タグ),天井タグ12(定点タグ)を備えている。
【0040】
図3に於いて、ラック4の各棚区劃4aの底面には、
図2で示したように、棚面タグ4bが付されている。
図3では、図示の便宜上、棚面タグ4bが棚区劃4aの底面から突出しているが、実際には、棚面タグ4bはシート状であり、棚区劃4aの底面とほぼ面一となるように貼り付けられる(
図2参照)。また、ラック4の棚区劃4aの一部には、ユーザから預かっているパレット10が収納されている。各パレット10の通路2aに面した側面には、パレットタグ10aが付されている。パレットタグ10aは、パレット10の四方の側面に付されていても良いし、パレット10の一側面のみに付されていても良い。パレット10の一側面のみにパレットタグ10aを付す場合には、パレット10を棚区劃4aへ収納する際に、パレットタグ10aが付された面が通路2a側となるように収納する。
【0041】
この位置検出システムで使用するRFタグは、前述の棚面タグ4b及びラックタグ4c以外にも、通路2aの脇(フォークリフト7に踏まれない部分)の床面に貼り付けられる床面タグ11や、倉庫の建屋の天井や梁に付される天井タグ12や、倉庫の建屋の柱や壁面に付される壁タグ(図示せず)などが用いられる。これら床面タグ11,天井タグ12,壁タグ(図示せず)のように、倉庫建屋内の固定物に付されるRFタグは、その位置が事前に測定されて既知である定点タグとして使用される。一方、パレットタグ10aは、パレット10の移動に伴い位置が変化するので、定点タグではない。
【0042】
管理サーバ20と車載端末装置40は、通信回線70及び無線LANルータ71を介して通信可能に接続されている。車載アンテナ60は、車載端末装置40に接続されている。管理サーバ20は、車載端末装置40に対して、各定点タグの位置情報を提供したり、車載端末装置40から送信されるフォークリフト7の推定位置を管理するためのコンピュータである。車載端末装置40は、フォークリフト7に固定して設置されたコンピュータ端末装置であり、車載アンテナ60で受信される各定点タグからの後方散乱波(JIS X 0500:2020, 05.01.02参照)の到来方向(Direction Of Arrival;DOA)及び該定点タグの位置情報などに基づき、フォークリフト7の推定位置の演算を行う。この車載端末装置40は、9軸センサ46(
図4参照)を内蔵している。ここで、「9軸センサ」とは、9自由度のの慣性計測装置モジュールからなる複合センサで、3軸加速度センサ,3軸ジャイロセンサ(3軸角速度センサ),3軸方位センサ(3軸地磁気センサ)を内蔵するセンサをいう。車載アンテナ60は、フォークリフト7の天井部に固定設置されたフェーズドアレイ型のアンテナ(phased array antenna)であり、定点タグ(ラックタグ4c,床面タグ11,天井タグ12等)やパレットタグ10aを含む各RFタグとの間での電波の送受信を行うアンテナである。ここで、「フェーズドアレイ型のアンテナ」とは、複数配列したアンテナ素子に位相の異なる信号を加えることで、アンテナのメインローブ方向を自在に制御して、電波の放射パターンを変えることができるアンテナをいう(例えば、特許文献10,非特許文献1,2参照)。
【0043】
図4は、実施例1に係る位置検出システムの機能的な構成を表すブロック図である。
図4において、
図1~
図3に対応する構成部分には同符号を付している。また、無線LANルータ71は、通信回線70に含めて記載を省略している。
【0044】
図4に於いて、管理サーバ20は、定点タグ情報記憶部21,荷物情報記憶部22,棚面タグ情報記憶部23,車両情報記憶部24,データ送受信部25を備えている。また、車載端末装置40は、定点タグ情報記憶部41,荷物情報記憶部42,棚面タグ情報記憶部43,データ更新部44,RFID読取部45,9軸センサ46,姿勢検出部47,DOA変換部48,タグ選別部49,位置推定部50,慣性航法部51,データ送受信部52を備えている。これらの各部は、管理サーバ20又は車載端末装置40のコンピュータにプログラムを読み込ませて実行することにより、機能モジュールとして実現される。
【0045】
管理サーバ20に於いて、定点タグ情報記憶部21は、各定点タグ(ラックタグ4c,床面タグ11,天井タグ12等)の識別情報(タグID)及び位置情報を関連付けて記憶し管理するモジュールである。荷物情報記憶部22は、倉庫に収納されるパレット10の棚区劃番号、並びに該パレット10に付されたパレットタグ10aの識別情報(タグID)及び収納時の位置情報を関連付けて記憶し管理するモジュールである。棚面タグ情報記憶部23は、各ラック4の各棚区劃4aの底面に付された棚面タグ4bの棚区劃番号、並びに識別情報(タグID)及び位置情報を関連付けて記憶し管理するモジュールである。車両情報記憶部24は、各フォークリフト7の現在の位置情報を記憶し管理するモジュールである。データ更新部25は、定点タグ情報記憶部21,荷物情報記憶部22,棚面タグ情報記憶部23の情報が更新された場合には、更新された情報を車載端末装置40へ送信すると共に、車載端末装置40から各フォークリフト7の位置情報を受信した場合には、その情報に基づき車両情報記憶部24で記憶し管理される該フォークリフト7の位置情報を後進する処理を行うモジュールである。データ送受信部26は、車載端末装置40との間でデータの送受信を行うモジュールである。
【0046】
車載端末装置40に於いて、定点タグ情報記憶部41は、各定点タグ(ラックタグ4c,床面タグ11,天井タグ12等)の識別情報(タグID)及び位置情報を関連付けて記憶し管理するモジュールである。荷物情報記憶部42は、倉庫に収納されるパレット10の棚区劃番号、並びに該パレット10に付されたパレットタグ10aの識別情報(タグID)及び収納時の位置情報を関連付けて記憶し管理するモジュールである。棚面タグ情報記憶部43は、各ラック4の各棚区劃4aの底面に付された棚面タグ4bの棚区劃番号、並びに識別情報(タグID)及び位置情報を関連付けて記憶し管理するモジュールである。データ更新部44は、管理サーバ20から送信される情報に基づき、定点タグ情報記憶部41,荷物情報記憶部42,棚面タグ情報記憶部43に記憶し管理される情報を最新状態に更新する処理を行うモジュールである。データ更新部25,44により、管理サーバ20の定点タグ情報記憶部21,荷物情報記憶部22,棚面タグ情報記憶部23に記憶された情報と、車載端末装置40の定点タグ情報記憶部41,荷物情報記憶部42,棚面タグ情報記憶部43に記憶された情報は、それぞれ同期して、常時同じ状態に保たれている。
【0047】
RFID読取部45は、車載アンテナ60により各RFタグの情報の読み取りを行うとともに、車載アンテナ60に対してRFタグから送信される電波の到来方向の方向ベクトル(以下「DOAベクトル」という。)を検出する処理を行うモジュールである。ここで、RFID読取部45が出力するDOAベクトルは、フォークリフト7(車載アンテナ60)に固定された座標系(以下「物体座標系」(body frame)という。)に於いて表現された3次元ベクトルである。尚、物体座標系は、フォークリフト7の移動に伴い、地面に対して移動する座標系である。9軸センサ46は、車載端末装置40の内部に固定実装された、3軸加速度センサ,3軸ジャイロセンサ(3軸角速度センサ),3軸方位センサ(3軸地磁気センサ)を内蔵する複合センサである。3軸加速度センサは、センサに加わる加速度ベクトルを検出し、3軸ジャイロセンサ(3軸角速度センサ)はセンサの角速度ベクトルを検出し、3軸方位センサ(3軸地磁気センサ)は、センサに対する北磁極方向の北磁方向ベクトルを検出する。9軸センサ46が出力する各ベクトルも、物体座標系に於いて表現された3次元ベクトルである。姿勢検出部47は、9軸センサ46の出力に基づき、地面に固定された座標系(以下「慣性座標系」(inertial reference frame)という。)に於けるフォークリフト7の姿勢、即ち、車載アンテナ60の向きであるアンテナ方向ベクトルを算出する処理を行うモジュールである。DOA変換部48は、姿勢検出部47により検出されるアンテナ方向ベクトルに基づき、RFID読取部45が検出する、車載アンテナ60に対する各定点タグからの電波のDAOベクトルを、慣性座標系に於ける到来方向の方向ベクトルである参照DAOベクトルに換算する処理を行うモジュールである。タグ選別部49は、RFID読取部45によりN個(N≧3)の定点タグAi(i=1,2,…,N)が検出された場合に於いて、各定点タグAiから車載アンテナ60に到来した後方散乱波が直接波か反射波又は回折波かを判別する演算処理を行うモジュールである。位置推定部50は、タグ選別部49により直接波と判定される各定点タグAiからの後方散乱波のDAOベクトル、該定点タグAiの位置情報などに基づき、車載アンテナ60の位置(即ち、フォークリフト7の位置)の推定演算処理を行うモジュールである。
慣性航法部51は、9軸センサ46の出力に基づいて、慣性航法によるフォークリフト7の位置の推定演算処理を行うモジュールである。データ送受信部52は、管理サーバ20との間でデータの送受信を行うモジュールである。
【0048】
図5は、各記憶部に格納されるデータベースのデータ構造を表すER図(Entity-Relatonship Diagram;実体参照図)である。
図5において、「定点タグ情報T」のように「○○T」と記した記載の末尾の「T」は「テーブル」を表す。また、各テーブル(エンティティ)において、グレーで着色された属性は主キー属性を示す。定点タグ情報記憶部21,41には、定点タグ情報テーブル(定点タグ情報T)が格納されている。荷物情報記憶部22,42には、荷物情報テーブル(荷物情報T)が格納されている。棚面タグ情報記憶部23,43には、棚面タグ情報テーブル(棚面タグ情報T)が格納されている。車両情報記憶部24には、車両情報テーブル(車両情報T)が格納されている。
【0049】
定点タグ情報テーブルは、各定点タグに関する情報を管理するテーブルであり、少なくとも「定点タグID」,「タグ種別」,「タグ位置」の3つの属性のカラムを有する。「定点タグID」は定点タグのタグID(タグの識別番号)である。「タグ種別」は、ラックタグ4c,床面タグ11,天井タグ12などの定点タグの種別を表す情報である。「タグ位置」は、定点タグが設置された位置座標の情報である。
【0050】
荷物情報テーブルは、倉庫に保管される各パレットに関する情報を管理するテーブルであり、少なくとも「パレットID」,「収納棚区劃番号」,「パレットタグID」,「収納時タグ位置」の4つの属性のカラムを有する。「パレットID」は、パレット10の識別番号である。「収納棚区劃番号」は、パレット10が収納されるラック4の棚区劃4aの番号(ラック番号と棚区劃番号の組)である。「パレットタグID」は、パレット10に付されたパレットタグ10aのタグID(タグの識別番号)である。「収納時タグ位置」は、パレット10が棚区劃4aに収納されたときのパレットタグ10aの位置座標の情報である。
【0051】
棚面タグ情報テーブルは、各棚面タグに関する情報を管理するテーブルであり、少なくとも「棚面タグID」,「棚区劃番号」,「タグ位置」の3つの属性のカラムを有する。「棚面タグID」は棚面タグのタグID(タグの識別番号)である。「棚区劃番号」は、棚面タグ4bが付されたラック4の棚区劃4aの番号(ラック番号と棚区劃番号の組)である。「タグ位置」は、棚面タグが設置された位置座標の情報である。
【0052】
車両情報テーブルは、各荷役車両(フォークリフト7)に関する情報を管理するテーブルであり、少なくとも「荷役車両ID」,「前時刻」,「前時刻位置・向き」,「現時刻」,「現時刻位置・向き」,「速度」の6つの属性のカラムを有する。「荷役車両ID」は、荷役車両の識別番号である。「前時刻」は、前回の位置検出がされた時刻である。「前時刻位置」は、前回の位置検出により検出された荷役車両の位置座標及び向きの情報である。「現時刻」は、今回(最後)の位置検出がされた時刻である。「現時刻位置」は、今回(最後)の位置検出により検出された荷役車両の位置座標及び向きの情報である。「速度」は、荷役車両の速度(2次元ベクトル)の情報である。
【0053】
(3)9軸センサによる姿勢推定
次に、上記車載端末装置40の姿勢検出部47によるアンテナ方向ベクトルを算出処理について説明する。9軸センサ46の出力ベクトル(3軸の加速度ベクトル,角速度ベクトル,北磁方向ベクトル)からアンテナ方向ベクトルを算出する方法としては、加速度ベクトル及び北磁方向ベクトルを用いて算出する方法と、角速度ベクトルの積分により算出する方法とが考えられる。以下、これらの方法について簡単に説明する。
【0054】
(3.1)加速度ベクトル及び北磁方向ベクトルを用いて算出する方法
加速度センサは、3軸の加速度ベクトル(ax,ay,az)を検出するセンサである。水平に置かれた静止状態では、加速度センサは、重力加速度(0,0,g)を検出する(z軸は下向き)。また、3軸方位センサ(3軸地磁気センサ)は、北磁極方向の単位ベクトルである北磁方向ベクトル(dx,dy,dz)を検出するセンサである。尚、実際には、3軸方位センサが出力する北磁極方向の単位ベクトルにはオフセットが含まれているため、オフセット補正を行う必要があるが、ここでは説明の簡単化のため、3軸方位センサが出力する北磁方向ベクトル(dx,dy,dz)はオフセット補正済みのものであるとする。
【0055】
これら加速度ベクトル(ax,ay,az)及び北磁方向ベクトル(dx,dy,dz)は、荷役車両(フォークリフト7)に固定された物体座標系に於いて表現されたベクトルである。今、荷役車両の前方向(進行方向)を向く軸をロール軸、荷役車両の下方向を向く軸をヨー軸、ロール軸及びヨー軸に垂直で右手系を為す軸(進行方向に向いて水平右向きの軸)をピッチ軸とする。ロール軸,ピッチ軸,ヨー軸の周りの回転角をθr,θp,θyとし、θrをロール角、θpをピッチ角、θyをヨー角とする。ヨー角θyは北を0度とする。このとき、或るベクトルvについて、物体座標系に於ける表現vB=(vx
B,vy
B,vz
B)を、慣性座標系に於ける表現vI=(vx
I,vy
I,vz
I)に変換する変換式は、次のように表される。ここで、CB
Iは物体座標系から慣性座標系への回転行列である。
【0056】
【0057】
倉庫内を移動する荷役車両の場合、倉庫内の床面が水平平面であれば、ロール角及びピッチ角は0と考えられるので、ヨー角θyのみを考えれば良い。この場合は簡単で、3軸方位センサの出力(dx,dy,dz)(実際の北磁極方向は水平よりもやや下向きに偏る。)を水平な水平面に写像して単位化すれば、水平面上の北磁方向ベクトル(Dx,Dy,0)は求められ、ヨー角θyは次式より求められる。
【0058】
【0059】
一方、倉庫の床面に凹凸や傾斜がある場合、荷役車両のロール角及びピッチ角は0ではなくなる。この場合、荷役車両の姿勢をロール角θr,ピッチ角θp,ヨー角θyで表すとすれば、これらは、方向ベクトル(dx,dy,dz)及び加速度ベクトル(ax,ay,az)を用いて、それぞれ次のように表すことが出来る。但し、荷役車両の加速度は重力加速度に比べて十分小さいと仮定した。
【0060】
【0061】
(3.2)角速度ベクトルの積分により算出する方法
慣性航法では、ある時点の荷役車両の姿勢を初期値として、3軸ジャイロセンサ(3軸角速度センサ)が出力する角速度ベクトル(ωx,ωy,ωz)を時間積分することにより、各時点の荷役車両の姿勢を算出する。この場合、途中計算は省略して結果のみ示すと、次式のように表される。
【0062】
【0063】
ここで、aI(t),aB(t)は、其々、時刻tに於ける慣性座標系,物体座標系に於ける加速度ベクトル、CB
I(t)は、時刻tに於ける物体座標系から慣性座標系への変換を表す3次元回転行列、Eは3次元単位行列、δtは微小時間(センサのサンプリング間隔)、ω(t)=(ωx,ωy,ωz)は時刻tに3軸ジャイロセンサが出力する角速度ベクトル、ΩIB
Bは、角速度ベクトルω(t)の歪対称形(skew symmetric form)(即ち、角速度ベクトルω(t)のクロスω(t)×)である。例えば、時刻t=0で静止状態であるとすると、aI(0)=(0,0,g)であり、aB(0)は時刻t=0での角速度センサの出力なので、これから回転行列の初期値CB
I(0)が求められる。これを式(4b)に従って時間積分していくことで、各時刻の回転行列CB
I(t)(即ち、車載アンテナ60の姿勢)が求められる。尚、角速度ベクトルの積分により算出する方法では、積分により誤差が累積するため、適度な時間間隔で補正が必要である。補正方法に関しては、公知の方法を用いることが出来る(例えば、非特許文献3などを参照)。また、3軸加速度センサが出力する加速度ベクトルのノルム|aB(t)|と重力加速度との差の絶対値||aB(t)|-g|が所定の閾値εa以下で、且つ3軸ジャイロセンサが出力する角速度ベクトルのノルム|ω(t)|が所定の閾値εω以下となったときに、加速度ベクトル及び北磁方向ベクトルを用いて式(1a)で求められる回転行列CB
Iに初期値をリセットすることで、定期的に誤差を解消する手法を用いることもできる。
【0064】
(4)定点タグの慣性座標系での方位
次に、車載端末装置40のRFID読取部45による、定点タグからの後方散乱波の到来方向の検出と、DOA変換部48による定点タグに対する車載アンテナ60の方向ベクトルの検出方法について説明する。車載端末装置40のRFID読取部45は、車載アンテナ60から質問信号を発信し、質問信号に対してRFタグから送信される後方散乱波を受信する。RFタグから送信される後方散乱波には、RFタグの識別情報信号が含まれており、この識別情報信号からRFタグのタグIDを特定し、該タグIDに対応する位置情報を、定点タグ情報記憶部21,荷物情報記憶部22,又は棚面タグ情報記憶部23から索出することで、該RFタグの位置を特定することができる。
【0065】
車載アンテナ60は、フェーズドアレイ型のアンテナである。フェーズドアレイでは、アンテナ面に配列された複数のアンテナ素子で放射又は受信する電波の位相を制御することで、アンテナのメインローブ方向を走査し、RFタグからの後方散乱波の到来方向(Direction Of Arrival;DOA)を推定する。このDOA推定に関しては、既に、多くの文献に記載され周知技術である(例えば、非特許文献1,2参照)。RFID読取部45は、この車載アンテナ60を用いて、ビームフォーマ(beamformer)法,Capon法,線型予測法,MUSIC(MUltiple SIgnal Classification)法などを用いて、天井アンテナ4に対するRFタグからの後方散乱波のDOAを推定し、DOAベクトル(ここでは、車載アンテナ60の中心から定点タグ(RFタグ)へ向かう方向のベクトルとする。)を出力する。これら各DOA推定法の詳細については、非特許文献2に詳述されているので、ここでは説明は割愛する。DOAベクトルは3次元単位ベクトル(方向余弦ベクトル)とし、以下では、車載アンテナ60で検出・推定されるk番目の定点タグからの後方散乱波に対するDOAベクトルをdk
B=(αBk,βBk,γBk)(但し、αBk
2+βBk
2+γBk
2=1)と記す。このDOAベクトルは、フォークリフト7(車載アンテナ60)に固定された物体座標系に於ける表現である。DOA変換部48は、これを、慣性座標系での表現dk
I=(αIk,βIk,γIk)に変換する。ベクトルdk
Iを「参照DOAベクトル」と呼ぶ。この変換は、式(1a)や式(4b)で示した回転行列CB
I(t)を用いて次式により計算できる。
【0066】
【0067】
k番目の定点タグから見た車載アンテナ60の方向を表す方向ベクトルd
k=(α
k,β
k,γ
k)は、(α
k,β
k,γ
k)=(-α
Ik,-β
Ik,-γ
Ik)となる。
図6に、車載アンテナの向きDとDOAベクトルd
k
Iとk番目の定点タグから見た車載アンテナ60の方向ベクトルd
kとの関係を示す。
【0068】
(5)直接波と反射・回折波の選別
次に、タグ選別部49により行われる、各定点タグからの後方散乱波が直接波であるか反射・回折波であるかの選別方法について説明する。ここで、「直接波」とは、定点タグから車載アンテナ60に至る光路上に反射点や回折点が存在しない後方散乱波をいう。「反射・回折波」とは、定点タグから車載アンテナ60に至る光路上に反射点及び/又は回折点が少なくとも一つ存在する後方散乱波をいう。位置推定に使用する、定点タグの後方散乱波に反射・回折波が含まれると、大きな推定誤差を生じるため、この選別は極めて重要である。
【0069】
今、N個の定点タグA
k(k=1,2,…,N)に対して車載アンテナOで検出されるDOAベクトルをd
k
B=(α
Bk,β
Bk,γ
Bk)、参照DOAベクトルをd
k
I=(α
Ik,β
Ik,γ
Ik)とし、方向ベクトルd
kをd
k=(α
k,β
k,γ
k)=-d
k
Iとする。まず、各定点タグA
kからの後方散乱波は全て直接波である場合を考える。一般に、DOAベクトルは誤差を含むため、定点タグA
kは、車載アンテナOから参照DOAベクトルをd
k
I方向へ延びる直線上からは、誤差分だけずれた位置となる。従って、各定点タグA
kから方向ベクトルd
k(=-d
k
I)の方向へ延びる直線L
kは車載アンテナOでは交わらず、各直線L
kは車載アンテナOの近傍で接近するが、誤差の分だけ僅かにずれることとなる。
図7は、各定点タグA
kからの後方散乱波が全て直接波である場合の直線L
kの様子を表す図である。
【0070】
一方、一部の定点タグA
kからの後方散乱波が、光路上で障害物により反射又は回折して車載アンテナOで受信された場合には、定点タグA
kから方向ベクトルd
k(=-d
k
I)の方向へ延びる直線L
kは車載アンテナOから大きく離れた直線となる。
図8は、定点タグA
kからの後方散乱波が反射波である場合の直線L
kの様子を表す図である。
図8の場合、定点タグA
2からの後方散乱波は、障害物である反射面S
2上の点A
2’で反射された後、車載アンテナOで受信されるので、光路上には反射点A
2’が存在する。この場合、車載アンテナOで観測される定点タグA
2からの後方散乱波の参照DOAベクトルd
2
Iは、車載アンテナOから反射点A
2’へ向かう方向となる。そのため、定点タグA
2から方向ベクトルd
2(=-d
2
I)の方向へ延びる直線L
2は、
図8に示すように、車載アンテナOから大きく離れた直線となる。この性質を利用して、車載アンテナOで受信された定点タグA
2からの後方散乱波が、直接波であるか反射・回折波であるかを判別する。
【0071】
まず、車載アンテナOで受信された各定点タグAkについて、定点タグAkを発して方向ベクトルdk(=-dk
I)の方向へ延びる直線Lkを、
【0072】
【0073】
とし、直線Lkに対して、直線Lk以外の直線Lj(j≠k)との距離(「射線間距離」という。)をhkjとする。そして、各定点タグAkについて、射線間距離hkjの平均値avej(hkj)及び分散値varj(hkj)を算出する。定点タグAj,Akの位置ベクトルをaj,akとすると、射線間距離hkjは次のようになる。
【0074】
【0075】
従って、定点タグAkに対する射線間距離hkjの平均値avej(hkj)及び分散値varj(hkj)は、
【0076】
【0077】
となる。この射線間距離{hkj}又は平均値avej(hkj)及び分散値varj(hkj)に基づいて各定点タグAkをクラスタリングすることにより、各定点タグAkからの後方散乱波が直接波か反射・回折波かを判別する。
【0078】
以下、実際にこの手法によって各定点タグA
kからの後方散乱波が直接波か反射・回折波かを判別することができることを、簡単な数値計算を用いて示す。評価用のモデルとして、
図9のように、ラック4と定点タグを配置する。
図9において、大きい長方形がラック4を表す。「○」が定点タグの位置を表し、その横の番号はタグ番号を表す。また、
図9で水平右向きをx軸方向、垂直上向きをy軸方向とし、左下のラックの左下隅を原点O(0,0)とする。8つのラックは同型で、横幅8,縦幅14(長さの単位は任意単位)とし、横方向の通路幅を4,縦方向の通路幅を5とする。高さ方向は車載アンテナ60の高さを基準(高さ0)として表し、各定点タグの高さは、-4,-2,0,2,4の中からランダムに設定する。ここでは簡単のため、ラックの各辺は垂直な完全反射壁とし、定点タグの指向性は等方性とする。
【0079】
車載アンテナ60は、通路上であれば任意の位置及び向き(水平向き)に配置できることとし、車載アンテナ60の指向性は、車載アンテナ60の正面方向の方位角をθ=0として、D(θ)=Dmax・cosθ(θ∈[-π/2,π/2])とする。Dmaxは最大受信距離であり、ここではDmax=20とする。各定点タグから車載アンテナ60へ至る後方散乱波の光路は、簡単化のため反射のみを考慮して、回折は考慮しないこととし、レイトレーシングにより光路を計算する。尚、ここでは、反射波の影響評価が目的なので、参照DOAベクトルdk
Iに含まれる方位検出誤差は無視する(誤差0とする)。
【0080】
今回の数値計算評価では、車載アンテナ60の向きは(1,0)方向とし、その中心位置を(0,16)→(2,16)→(4,16)→(6,16)→(8,16)→(10,16)のように動かす。車載アンテナ60がこれら各中心位置にある場合を、其々、Case1,Case2,Case3,Case4,Case5,Case6とする。このとき、車載アンテナ60で受信される各定点タグの光路は、其々、
図10(a),
図10(b),
図11(c),
図11(d),
図12(e),
図12(f)のようになる。
図10~
図12に於いて、「AT」は車載アンテナ60を示し、車載アンテナATの前側の大きい円は車載アンテナATの直接波の受信範囲を表す。受信範囲内の定点タグから車載アンテナATへ至る線分は直接波のレイを表し、折れ線分は、反射波のレイを表す。
図10~
図12から分かるとおり、車載アンテナATで受信される後方散乱波は、定点タグからの直接波に加えて、反射波が多く含まれることが分かる。
【0081】
上記Case1~Case6について、車載アンテナ60により受信される各定点タグA
kに対する射線間距離h
kjの平均値ave
j(h
kj)及び分散値var
j(h
kj)の分布を
図13,
図14に示す。
図13,
図14に於いて、丸点「●」は直接波、白四角点「□」は反射波の値を表す。尚、Case5(
図14(e))は、車載アンテナ60により受信される後方散乱波に反射波が含まれないため、ave
j(h
kj)及びvar
j(h
kj)はすべて0となっている。
図13,
図14より、直接波のクラスタと反射波のクラスタは、ave
j(h
kj)-var
j(h
kj)平面で分離することが分かる。また、ave
j(h
kj)とvar
j(h
kj)の間には正の相関が見られる。そこで、横軸をave
j(h
kj)、縦軸をvar
j(h
kj)/[ave
j(h
kj)]
2としてプロットすると
図15,
図16に示すようになる。
図15,
図16に於いて、丸点「●」は直接波、白四角点「□」は反射波の値を表す。尚、Case5についてはave
j(h
kj)=0なので省略する。
図15,
図16より、ave
j(h
kj)とvar
j(h
kj)/[ave
j(h
kj)]
2とを閾値判別することで、直接波のクラスタと反射波のクラスタとを判別することができることが分かる。すなわち、ave
j(h
kj)に対する所定の閾値をAth,var
j(h
kj)/[ave
j(h
kj)]
2に対する所定の閾値をVthとして、定点タグA
kからの後方散乱波に対して、ave
j(h
kj)<Ath且つvar
j(h
kj)/[ave
j(h
kj)]
2>Vthであれば直接波、それ以外は反射・回折はとして判別することができることが分かる。
【0082】
尚、上記計算例では、参照DOAベクトルdk
Iに含まれる方位検出誤差は無視しており、実際に方位検出誤差が入った場合には、avej(hkj)とvarj(hkj)/[avej(hkj)]2とによる閾値判別では、判定エラーが生じる可能性も考えられる。そこで、より判別の精度を挙げるには、次のような手法を採ることも出来る。
【0083】
(i)車載アンテナ60に於いて検出される各定点タグAkについて、当該定点タグAkに対する直線Lkと、定点タグAk以外の其々の定点タグAj(j≠k)に対する直線Ljとの間の射線間距離hkjを上記式(7a)により算出する。車載アンテナ60に於いて検出される定点タグの個数をNとすると、各定点タグAkについてN-1個の射線間距離hkjが得られる。
(ii)各定点タグAkについてのN-1個の射線間距離hkjを小さい順にソートする。
(iii)上記各定点タグAkに対するN-1個の射線間距離hkjの集合に対し、距離が大きい順にM個(M=0,1,2,…,N-2)を除外したものの平均をavej(hkj;N-1-M)とする。Mを「除外点数」と呼ぶ。判別を行うための除外点数Mを適宜な値p(例えば、p=[N/2],p=[N/3],p=[N/4]等)に設定し、avej(hkj;N-1-p)を計算する。
(iv)所定の閾値εaveに対し、avej(hkj;N-1-p)<εaveの場合には定点タグAkからの後方散乱波は直接波と判定し、それ以外の場合には反射・回折波と判定する。
【0084】
図17,
図18に、前記Case1~Case6についての、除外点数Mの変化に対する平均値ave
j(h
kj;N-1-M)の変化の様子を示す。直接波では、除外点数Mが増加すると、射線間距離の平均ave
j(h
kj;N-1-M)は速やかに0へ収束するが、反射波では平均ave
j(h
kj;N-1-M)は緩やかに減少する。
図17,
図18では、除外点数がM=6で直接波は平均ave
j(h
kj;N-1-M)は0に収束している。従って、この場合、例えば、判別を行うための除外点数をp=6、判定閾値をε
ave=0.5とすれば、直接波と反射波を正確に判別することが可能であることが分かる。
【0085】
また、
図17,
図18より、上記(iii),(iv)の代わりに、pの最大閾値p
max(<N-1)と平均値ave
j(h
kj;N-1-p)の判定閾値ε
aveを予め適宜な値に決めておき、pを0からp
maxまで変化させてave
j(h
kj;N-1-p)≦ε
aveとなったときのpをp
c(但し、ave
j(h
kj;N-1-p
max)>ε
aveのときは、p
cはp
c>p
maxの適当な値とする。)として求め、p
c≦p
maxの場合は直接波、それ以外の場合は反射・回折波として判別することもできる。最大閾値p
maxは、例えば、p=[N/2]~[N/5]程度の値としておけばよい。
【0086】
尚、ここでは後方散乱波が直接波であるか反射・回折波であるかの選別に於いて、射線間距離hkjを用いて行う方法について説明したが、これ以外にも、定点タグAkに対する直線Lkと、定点タグAk以外の定点タグAjに対するの直線Lj(j≠k)との最近接点(直線Lkとの間の距離と直線Ljとの間の距離との2乗和が最小となる点)の位置座標の分散を用いて、同様な方法でこの選別を行うことも可能である。
【0087】
(6)定点タグの位置推定
上記選別の結果、直接波のクラスタに属すると判定されたNa個の定点タグAi(i=1,…,Na)の位置ベクトルをai=(aix,aiy,aiz)とし、位置ベクトルaiの点を「アンカーポイント」(anchor point)と呼ぶ。Naはアンカーポイントの数である。また、位置を求めたい対象点である車載アンテナ60の中心の位置ベクトルをr=(x,y,z)とし、位置ベクトルrの点を「ターゲットポイント」(target point)と呼ぶ。
【0088】
今、各アンカーポイントaiに対するターゲットポイントrの方向を示す、誤差を含んだ方向ベクトルdi=(αi,βi,γi)=(-αIk,-βIk,-γIk)は検出されている。これらの情報に基づき、ターゲットポイントrの位置推定を行う。
【0089】
位置推定の手法としては、ここでは以下に説明する最小二乗法を用いる。各アンカーポイントai(i=1,…,Na)を通り、方向ベクトルdiの方向に延びる直線をLiとし、式(6)と同様にLi:xi=ai+tdiと表す。tは実変数である。評価関数としては、次式のような、各直線Liからターゲットポイントrまでの距離hiの二乗和E(r)を採る。
【0090】
【0091】
そして、この評価関数E(r)が最小となる位置rを、ターゲットポイントの推定位置とする。評価関数E(r)が最小の点では、次の連立方程式が成り立つ。
【0092】
【0093】
式(10)を解くことにより、次式のようにターゲットポイントの推定位置rが算出される。
【0094】
【0095】
(7)位置検出システムの全体動作
図19は、実施例1の位置検出システムの全体動作を表すフローチャートである。まず、準備段階として、車載端末装置40は管理サーバ20に対して定点タグの位置データの要求を送信する(S10)。管理サーバ20は、車載端末装置40から定点タグの位置データの要求を受信すると、定点タグ情報記憶部21に記憶された各定点タグの識別情報(タグID)及び位置情報を車載端末装置40へ送信する(S20)。車載端末装置40のデータ更新部44は、管理サーバ20から各定点タグの識別情報(タグID)及び位置情報を受信すると、それらを定点タグ情報記憶部41に保存する(S10)。そして、以下の位置検出処理ループへと移行する。
【0096】
まず、車載端末装置40のRFID読取部45は、車載アンテナ60により通信可能な各定点タグAk(k=1,…,N)(Nは通信可能な定点タグの数)のタグID情報の読み取りを行うとともに、MUSIC法などのDOA推定法を用いて、車載アンテナ60に対して各定点タグAkから送信される後方散乱波のDOAベクトルdk
Bを検出する(S11)。
【0097】
また、車載端末装置40の姿勢検出部47は、前述の「(3)9軸センサによる姿勢推定」で説明した方法により、フォークリフト7の向きθy(北磁方向に対する角度)と、式(1a)又は式(4a)に示したような、物体座標系から慣性座標系への回転行列CB
Iを算出する(S12)。
【0098】
次に、車載端末装置40のDOA変換部48は、各定点タグAk(k=1,…,N)のDOAベクトルdk
Bと回転行列CB
Iとから、上述の式(5)により、各定点タグAkのから見た車載アンテナ60の方向を表す方向ベクトルdk=(αk,βk,γk)=(-αIk,-βIk,-γIk)を算出する(S13)。
【0099】
次に、車載端末装置40のタグ選別部49は、前述の「(5)直接波と反射波の選別」で説明した方法により、各定点タグAk(k=1,…,N)の中から、車載アンテナ60で受信される後方散乱波が直接波であるものを選出する(S14)。ここで選出された定点タグを「視界内定点タグ」と呼び、Ai(i=1,…,Na)(Naは検出された視界内定点タグの数)と記す。
【0100】
次に、車載端末装置40の位置推定部50は、前述の「(6)定点タグの位置推定」で説明した方法により、定点タグ情報記憶部41に記憶されている各視界内定点タグAi(i=1,…,Na)の位置ベクトルaiと、ステップS13で算出された当該視界内定点タグAiの方向ベクトルdi=(αi,βi,γi)から、車載アンテナ60の位置ベクトルr、即ち、該車載アンテナ60を搭載したフォークリフト7の位置ベクトルrを算出する(S15)。
【0101】
最後に、車載端末装置40のデータ送受信部52は、ステップS15で算出されたフォークリフト7の位置ベクトルr及びステップS12で算出されたフォークリフト7の向きθy並びに該車載端末装置40を搭載したフォークリフト7の識別情報(荷役車両ID)を、位置更新情報として管理サーバ20へ送信する(S16)。管理サーバ20は、該位置更新情報を受信すると(S21)、車両情報記憶部24の車両情報テーブルにおける、当該荷役車両IDに対応するレコードの更新を行う(S22)。この場合、当該荷役車両IDに対応するレコードの「現時刻」フィールド,「現時刻位置・向き」フィールドを、該レコードの「前時刻」フィールド,「前時刻位置・向き」フィールドへ移した後、位置更新情報の受信時刻を、該レコードの「現時刻」フィールドへ格納し、位置ベクトルr及び向きθyを、該レコードの「現時刻位置・向き」フィールドへ格納する。また、前時刻(t-Δt),前時刻の位置ベクトルr(t-Δt)と現時刻(t),現時刻の位置ベクトルr(t)から、現在のフォークリフト7の速度v(t)=(r(t)-r(t-Δt))/Δtを計算して、該レコードの「速度」フィールドへ格納する。そして、ステップS11へ戻る。
【0102】
以上のようにして、管理サーバ20の車両情報記憶部24の車両情報テーブルは、倉庫内にある各フォークリフト7の現在の位置情報及び向き情報並びに速度情報で更新され続けることとなり、この車両情報テーブルを参照することで、管理サーバ20に於いて倉庫内の各フォークリフト7の位置と動きをリアルタイムに監視することができる。
パレットタグ位置検出部53は、パレット10を棚区劃4aに収納する際に、車載アンテナ60を用いて、収納したパレット10に付されたパレットタグ10aの位置推定を行う処理を行うモジュールである。
フォークリフト7に近接する棚面タグ4bが検出された場合(S32)、パレットタグ位置検出部53は、次に、RFID読取部45により近接する棚面タグ4bが検出されなくなるまで待つ(S33)。尚、RFID読取部45により近接する棚面タグ4bが検出されている間は、ステップS31~S33のループを繰り返す。近接する棚面タグ4bが検出されなくなった場合(S33)、パレットタグ位置検出部53は、搬送パレット10が棚面に収納されたと判定し、棚面タグ情報記憶部43の棚面タグ情報テーブルから、その近接する棚面タグ4bのタグIDに対応する棚区劃4aの棚区劃番号及びタグ位置(棚面タグ4bの位置)を取得し、荷物情報記憶部42の荷物情報記テーブルの搬送パレット10のパレットIDのレコードの「収納棚区劃番号」フィールドに、棚区劃番号を登録する(S34)。また、パレットタグ位置検出部53は、管理サーバ20へ、(近接する棚面タグ4bのタグID,棚区劃4aの棚区劃番号及びタグ位置)の情報を送信する(S34)。管理サーバ20は、車載端末装置40から(近接する棚面タグ4bのタグID,棚区劃4aの棚区劃番号及びタグ位置)の情報を受信すると、荷物情報記憶部22の荷物情報記テーブルの搬送パレット10のパレットIDのレコードの「収納棚区劃番号」フィールドに、棚区劃番号を登録する(S42)。
次いで、パレットタグ位置検出部53は、RFID読取部45が検出する、搬送パレット10のパレットタグ10aのDOAベクトルを取得する。このとき、車載アンテナ60中心の3次元空間内の位置は、ステップS31で検出されており既知である。また、搬送パレット10のパレットタグ10aの高さは、ステップS34で取得した棚区劃4aの棚面タグ4bの位置情報から既知である(搬送パレット10の底面からパレットタグ10aの高さまでのオフセット高さ分を棚面タグ4bの高さに加えれば容易に算出できる)。従って、車載アンテナ60の3次元位置情報、パレットタグ10aの高さ情報、及び車載アンテナ60に対するパレットタグ10aのDOAベクトルから、パレットタグ10aの3次元空間内の位置座標は容易に計算することができる。(即ち、車載アンテナ60の中心位置を通りDOAベクトル方向に延びる直線が、パレットタグ10aの高さの水平面と交差する点がパレットタグ10aの位置となる。)このようにして、パレットタグ位置検出部53は、パレットタグ10aの3次元空間内の位置座標を計算する(S35)。そして、パレットタグ位置検出部53は、算出したパレットタグ10aの3次元空間内の位置座標を、荷物情報記憶部42の荷物情報記テーブルの搬送パレット10のパレットIDのレコードの「収納時タグ位置」フィールドに登録した後、(搬送パレット10のパレットID,パレットタグ10aの位置座標)を管理サーバ20へ送信する(S36)。管理サーバ20は、車載端末装置40から(搬送パレット10のパレットID,パレットタグ10aの位置座標)を受信すると、荷物情報記憶部22の荷物情報記テーブルの搬送パレット10のパレットIDのレコードの「収納時タグ位置」フィールドに、位置座標を登録する(S42)。
尚、棚区劃4aに収納された状態のパレット10が入出荷スペース3へ搬出される際には、収納状態のパレット10のパレットタグ10aが、フォークリフト7のRFID読取部45で検出され、フォークリフト7が移動してもパレットタグ10aのDOAベクトルが一定のままとなる。このような状態が検出されると、パレットタグ位置検出部53は、荷物情報記憶部42の荷物情報記テーブルのパレット10のパレットIDのレコードの「収納時タグ位置」フィールドから位置情報を削除する。これにより、棚区劃4aから搬出されたパレット10のパレットタグ10aは、定点タグから除外される。
また、車載端末装置40の荷物情報記憶部42に記憶された荷物情報テーブルは、定期的に管理サーバ20と交信することで、管理サーバ20の荷物情報記憶部22に記憶された荷物情報テーブルと同期させるようにする。これにより、車載端末装置40が搭載されたフォークリフト7以外のフォークリフト7が棚区劃4aへ収納したパレット10のパレットタグ10aの位置情報も取得し、定点タグとして利用することが可能となる。