(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053487
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】組成物及び動物用皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
A61K 36/14 20060101AFI20240408BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20240408BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240408BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20240408BHJP
A61K 33/42 20060101ALI20240408BHJP
A61K 33/241 20190101ALI20240408BHJP
A61K 33/24 20190101ALI20240408BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
A61K36/14
A61K47/04
A61K47/02
A61K47/46
A61K33/42
A61K33/241
A61K33/24
A61P17/00 171
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159803
(22)【出願日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】518332088
【氏名又は名称】株式会社コンフェスタ
(74)【代理人】
【識別番号】100173679
【弁理士】
【氏名又は名称】備後 元晴
(72)【発明者】
【氏名】森下 利香
(72)【発明者】
【氏名】田中 久生
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4C076AA16
4C076BB34
4C076CC18
4C076DD27
4C076DD29
4C076DD38
4C076EE58
4C076FF61
4C076FF63
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA06
4C086HA19
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA63
4C086NA05
4C086ZA89
4C086ZB35
4C086ZC61
4C088AB03
4C088BA08
4C088CA15
4C088MA06
4C088MA63
4C088NA05
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZB35
4C088ZC61
(57)【要約】
【課題】ツヤプリシン等による即効性とチタン系化合物による持続性との両方を確保しつつ、ツヤプリシン等を高濃度にしても対象物の皮膚へのダメージを抑えることの可能な動物用皮膚外用剤組成物を提供する。
【解決手段】本発明の組成物は、以下の(A)成分から(C)成分を含有する。
(A)周期表の第4族元素を含む単体金属、合金、及び金属間化合物からなる群から選択される1種以上と、炭素、ホウ素、窒素、及びケイ素からなる群から選択される1種以上とを含む出発原料を燃焼合成してなる多孔質体
(B)ヒノキ科ネズコ属植物を水蒸気蒸留してなる抽出物
(C)カルシウムナトリウムホスホシリケート
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(A)成分から(C)成分を含有する組成物。
(A)周期表の第4族元素を含む単体金属、合金、及び金属間化合物からなる群から選択される1種以上と、炭素、ホウ素、窒素、及びケイ素からなる群から選択される1種以上とを含む出発原料を燃焼合成してなる多孔質体
(B)ヒノキ科ネズコ属植物を水蒸気蒸留してなる抽出物
(C)カルシウムナトリウムホスホシリケート
【請求項2】
前記(B)成分は、ヒノキ科ネズコ属植物の幹、枝、材部及びおがくずの少なくとも1種を高圧水蒸気蒸留してなる抽出物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記抽出物は、ツヤプリシン、ツヤ酸、及びネズコンを含有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記(C)成分は、二酸化ケイ素、酸化カルシウム、酸化ナトリウム及び五酸化二リンを含有する生体活性ガラスと水系溶媒とを含む生体活性ガラス含有液から前記生体活性ガラスが除去されてなる生体活性ガラス抽出物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記(A)成分は、前記組成物に対して10ppm(0.001%)以上100ppm(0.01%)以下であり、
前記(C)成分は、前記組成物に対して500ppm(0.05%)以上である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
pHが8以上12未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の組成物を含有する動物用皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物及び動物用皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
動物病院における来院動物の多数を占めるのは、皮膚疾患のイヌである。皮膚疾患の中でも、膿皮症や脂漏性皮膚疾患が多い。
【0003】
膿皮症は黄色ブドウ球菌(細菌)、脂漏性皮膚疾患はマラセチア菌(真菌)が原因菌であり、高温多湿になる時期(日本では5月初めから10月末まで)に来院数が増える。そして、皮膚疾患の場合、多くの場合完治せず慢性化し、冬季の低温乾燥期には一旦落ち着くものの、春から初夏にかけて再発を繰り返す場合が多い。
【0004】
皮膚疾患に有効な医薬組成物として、(1)チタニウムと、(2)炭素、ホウ素、窒素、及びケイ素からなる群から選択される少なくとも1種とを含む出発原料を燃焼合成することにより得られる多孔質セラミックを含有する医薬組成物が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、ヒノキ科植物(Cupressaceae)又はその抽出物を有効成分とするセマフォリン発現増強剤が提案されている(特許文献2参照)。この増強剤は、優れたセマフォリン発現増強作用を有することから、セマフォリンの発現の増強が必要とされる皮膚疾患や皮膚症状の予防改善に有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2016/111285号パンフレット
【特許文献2】特開2011-111416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の医薬組成物では、高い抗菌・殺菌性を有するものの、効果の発現が遅延性であり、対象に医薬組成物を適用してから数時間経過しないと効き目が発現しない。
【0008】
それに対し、特許文献2に記載のセマフォリン発現増強剤は、有効成分の濃度によっては即効性を有する。しかしながら、液性が酸性を呈し、有効成分を高濃度にすると対象物の皮膚に刺激を与えることになる。また、有効成分としてツヤプリシン等が知られているところ、ツヤプリシン等が光分解性を有すること、また、セマフォリンも構造的に不安定であることから、効果発現後の持続性に課題を有する。
【0009】
そこで、特許文献1に記載の医薬組成物と、特許文献2に記載のセマフォリン発現増強剤とを混合した組成物にすることも考えられる。そうすると、特許文献2に記載の増強剤による即効性と特許文献1に記載の医薬組成物による持続性との両方を得ることはできる。しかしながら、これらを組み合わせたとしても、全体として液性が酸性であることに変わりはなく、ツヤプリシン等の有効成分を高濃度にすると対象物の皮膚へのダメージが懸念される。
【0010】
本発明の目的は、特許文献2に記載の増強剤による即効性と特許文献1に記載の医薬組成物による持続性との両方を確保しつつ、ツヤプリシン等の有効成分を高濃度にしても対象物の皮膚へのダメージを抑えることの可能な組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特許文献1に記載の成分と、特許文献2に記載の成分とに加え、さらにカルシウムナトリウムホスホシリケートを用いることで、上記の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。具体的に、本発明は以下のものを提供する。
【0012】
第1の特徴に係る発明は、以下の(A)成分から(C)成分を含有する組成物を提供する。
(A)周期表の第4族元素を含む単体金属、合金、及び金属間化合物からなる群から選択される1種以上と、炭素、ホウ素、窒素、及びケイ素からなる群から選択される1種以上とを含む出発原料を燃焼合成してなる多孔質体
(B)ヒノキ科ネズコ属植物を水蒸気蒸留してなる抽出物
(C)カルシウムナトリウムホスホシリケート
【0013】
(A)成分及び(B)成分に(C)成分を加えることでpHを8以上12未満に保つことができる。(C)成分は、それ自体でpH緩衝機能をもっているため、例えば、水酸化ナトリウム等のアルカリ成分とは異なり、配合量を厳密に制御することなくpHを8以上12未満に保つことができる。これにより、液性が酸性であることに起因する(B)成分を高濃度化できないという課題を解決できる。
【0014】
また、(C)成分を加えることによりナトリウムイオンが徐放されるため、(B)成分に含まれるツヤプリシン等の有効成分の光分解を抑えることができる。また、(C)成分が徐放するナトリウムイオンにより皮脂(グリセリンと脂肪酸のエステル)や皮膚角質が軟化し、(A)成分及び(B)成分の対象物体内への浸透性が高まり、皮膚疾患の原因菌に対する殺菌効果が高まる。さらに、その他保湿成分の皮膚浸透性も高まる。
【0015】
よって、第1の特徴に係る発明によると、(B)成分による即効性と(A)成分による持続性との両方を確保しつつ、(B)成分を高濃度にしても対象物の皮膚へのダメージを抑えることの可能な組成物を提供できる。
【0016】
第2の特徴に係る発明は、第1の特徴に係る発明であって、前記(B)成分が、ヒノキ科ネズコ属植物の幹、枝、材部及びおがくずの少なくとも1種を高圧水蒸気蒸留してなる抽出物を含む組成物を提供する。
【0017】
第3の特徴に係る発明は、第2の特徴に係る発明であって、前記抽出物が、ツヤプリシン、ツヤ酸、及びネズコンを含有する組成物を提供する。
【0018】
第2及び第3の特徴に係る発明によると、(B)成分としてツヤプリシン等の有効成分を好適に含む組成物を提供できる。
【0019】
第4の特徴に係る発明は、第1から第3のいずれかの特徴に係る発明であって、前記(C)成分が、二酸化ケイ素、酸化カルシウム、酸化ナトリウム及び五酸化二リンを含有する生体活性ガラスと水系溶媒とを含む生体活性ガラス含有液から前記生体活性ガラスが除去されてなる生体活性ガラス抽出物を含む組成物を提供する。
【0020】
第4の特徴に係る発明によると、生体活性ガラス抽出物によるpH緩衝機能が得られる
ため、第1の特徴に係る発明にて説明した格別の効果が得られる。
【0021】
第5の特徴に係る発明は、第1から第4のいずれかの特徴に係る発明であって、前記(A)成分が前記組成物に対して10ppm(0.001%)以上100ppm(0.01%)以下であり、前記(C)成分が前記組成物に対して500ppm(0.05%)以上である組成物を提供する。
【0022】
(A)成分の含有量が組成物に対して10ppm(0.001%)以上であることにより、(A)成分による抗菌・殺菌効果の持続性を十分に確保できる。また、(A)成分の含有量が組成物に対して500ppm(0.05%)以下であることにより、最終製品における(A)成分の分散性や、色調などに対する影響が低減される。
【0023】
また、(C)成分の含有量が組成物に対して500ppm(0.05%)以上であることにより、組成物のpHを8以上12未満に保つことができる。なお、(C)成分は、それ自体でpH緩衝機能をもっているため、(C)成分の含有量の上限は特に限定されない。
【0024】
よって、第5の特徴に係る発明によると、(A)成分による抗菌・殺菌効果の持続性をよりいっそう確保しつつ、(B)成分を高濃度にしても対象物の皮膚へのダメージをよりいっそう抑えることの可能な組成物を提供できる。
【0025】
第6の特徴に係る発明は、第1から第5のいずれかの特徴に係る発明であって、pHが8以上12未満である組成物を提供する。
【0026】
組成物のpHが8以上であることにより、液性が酸性であることに起因する(B)成分を高濃度化できないという課題を解決できる。また、組成物のpHが12未満であることにより、アルカリによる有効成分の加水分解や、アルカリが対象物の皮膚にダメージを与えることを軽減できる。
【0027】
よって、第6の特徴に係る発明によると、(B)成分による即効性と(A)成分による持続性との両方を確保しつつ、(B)成分を高濃度にしても対象物の皮膚へのダメージをよりいっそう抑えることの可能にしつつ、組成物の強アルカリ性に起因する皮膚へのダメージも軽減可能な組成物を提供できる。
【0028】
第7の特徴に係る発明は、第1から第6のいずれかの特徴に係る発明の組成物を含有する動物用皮膚外用剤を提供する。
【発明の効果】
【0029】
本発明によると、(B)成分による即効性と(A)成分による持続性との両方を確保しつつ、(B)成分を高濃度にしても対象物の皮膚へのダメージを抑えることの可能な組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための好適な形態の一例について説明する。なお、これはあくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
【0031】
<組成物>
本実施形態に係る組成物は、以下の(A)成分から(C)成分を含有する。
(A)周期表の第4族元素を含む単体金属、合金、及び金属間化合物からなる群から選択される1種以上と、炭素、ホウ素、窒素、及びケイ素からなる群から選択される1種以上とを含む出発原料を燃焼合成してなる多孔質体
(B)ヒノキ科ネズコ属植物を水蒸気蒸留してなる抽出物
(C)カルシウムナトリウムホスホシリケート
【0032】
〔(A)成分:多孔質体〕
(A)成分の多孔質体(多孔質セラミック)は、少なくとも、周期表の第4族元素を含む単体金属、合金、及び金属間化合物からなる群から選択される1種以上と、炭素、ホウ素、窒素、及びケイ素からなる群から選択される1種以上とを出発原料として当該出発原料を燃焼合成してなる。
【0033】
周期表の第4族元素として、チタニウム、ジルコニウム及びハフニウムが挙げられる。中でも、資源量が多く動物用皮膚外用剤として安定供給性に優れることから、第4族元素は、チタニウムであることが好ましい。
【0034】
出発原料は、必要に応じて第三成分をさらに含んでもよい。第三成分の例として、銀、金、白金、鉄及び銅等が挙げられる。第三成分は1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0035】
燃焼合成法は、出発原料に局所的着火して化学反応を起こさせた後は、化合物になる際に放出される化学反応熱により連鎖的に反応が進行し、数秒から数分で生成物が得られる製造方法である。燃焼合成反応自体の方法、操作条件等は、従来と同様にすることができ、例えば、放電、レーザー照射、カーボンヒーター等による着火等により出発原料を局部的に加熱することによって反応を開始させることができる。いったん反応が開始すれば、自発的な発熱により反応が進行し、最終的に目的とする多孔質セラミックを得ることができる。反応時間は、出発原料の大きさ等に依存して適宜設定することができ、通常は数秒から数分程度である。
【0036】
燃焼合成反応は真空中及び不活性雰囲気中でも実施できるが、反応雰囲気は空気中又は酸化性ガス雰囲気中とすることが望ましい。例えば、0.1気圧以上(好ましくは1気圧以上)の空気中で燃焼合成反応を好適に行うことができる。
【0037】
多孔質体は、通常3次元スケルトン構造を有している。多孔質体は、特に、気孔(連通孔)が貫通孔であることが好ましい。本発明の多孔質セラミックの相対密度は限定的でなく適宜設定でき、通常30~70%程度とすることが望ましい。相対密度又は気孔率は、成形体の密度、燃焼合成の反応温度、雰囲気圧力等によって制御することができる。また、細孔径分布は、通常0.1~30μm程度である。
【0038】
大気中(空気中)又は酸化性雰囲気中で燃焼合成反応を行うことで、表面部は酸化物系セラミック、内部は非酸化物系セラミックで構成される多孔質体を得ることができる。
【0039】
多孔質体の形態及び大きさは限定されず、用途、使用目的等に見合ったものを設計することができる。形態としては、例えば、円板状、球状、棒状、板状、円柱状等の形態が挙げられる。また、粒径が数mm程度の顆粒のほか、部分的に多孔質形状を保持できる程度に粉砕した0.5~100μmの粉末(粉砕物)とすることもできる。粉砕方法は、ジョークラッシャー、ディスクミル、オリエントミル、回転ボールミル、遊星型ボールミル、ジェットミル等一般的に使用される粉砕機器を使用できる。
【0040】
化合物合成時の化学反応熱を利用した燃焼合成では2500℃~3500℃までの急速昇温~急速冷却により多孔質体が形成される。このような急激な温度変化を伴って高速合成される多孔質体の特徴として、格子欠陥が緩和されるほどの時間的余裕がないため、凍結されて格子欠陥がそのまま残ると考えられる。このため、格子欠陥を含む不均一生成物となり、部分的に正孔(ホール)及び電子の局在化が生じる。金属等を熱した場合、金属表面から熱電子放出が起こることは良く知られている事実である。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、多孔質体の局在化に起因する電位差によって形成される電場が、ラジカル発生機構の一因と考えられる。これは燃焼合成特有の現象であり、均一なセラミック焼結体では上記のような部分的に正孔(ホール)及び電子の局在化を生み出すことは不可能である。
【0041】
このように、燃焼合成材料である本発明の多孔質体は、セラミック焼結体とは異なる特性を有する。しかしながら、そのような特性を正確に解析することは困難であるため、(A)成分の多孔質体を構造又は特性により直接特定することは困難である。
【0042】
(A)成分は、例えば、炭化チタン多孔質セラミックスとして、株式会社オーエスユーから供給されている(商品名:NOCERA)。
【0043】
(A)成分の含有量の下限は、特に限定されるものでないが、皮膚疾患をもつ対象物(動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒト以外の哺乳動物、さらに好ましくは犬又は猫、特に好ましくは犬)の(A)成分による抗菌・殺菌効果の持続性を確保する観点から、(A)成分の含有量の下限は、10ppm(0.001%)以上であることが好ましく、20ppm(0.002%)以上であることがより好ましく、30ppm(0.003%)以上であることがさらに好ましい。
【0044】
(A)成分の含有量の上限は、特に限定されるものでないが、最終製品において分散性や、色調などに対する影響を低減するする観点から、(A)成分の含有量の上限は、500ppm(0.05%)以下であることが好ましく、200ppm(0.02%)以下であることがより好ましく、100ppm(0.01%)以下であることがさらに好ましい。
【0045】
〔(B)成分:ヒノキ科ネズコ属植物を水蒸気蒸留してなる抽出物〕
[原料植物]
ヒノキ科ネズコ属植物の種類は特に限定されず、ネズコ(クロベ、ゴロウヒバ、クロベスギ及びクロビ等とも称される)、及びウエスタンレッドシダー(WRC;ベイスギ、アメリカネズコ、ベイネズコ等とも称される)、台湾産ヒノキ、アスナロ、台湾ヒバ、台湾ヒノキ、ユーカリ及びインセンスシダー等が挙げられる。中でも、抽出物に含まれるツヤプリシン等の含有量に富むことから、植物は、ウエスタンレッドシダー(WRC)であることが好ましい。ウエスタンレッドシダーは、カナダブリテッシュ・コロンビア州やアメリカ北西部に産する樹木である。
【0046】
ヒノキ科ネズコ属植物の部位は特に限定されるものでなく、葉、幹、枝、材部及びおがくずのいずれであってもよいが、抽出物に含まれるツヤプリシン等の含有量に富むことから、植物の部位は、幹、枝、材部及びおがくずの少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0047】
ヒノキ科ネズコ属植物から抽出される抽出物には、殺菌性能、抗菌性能、及び細胞活性化作用を発揮するβ-ツヤプリシン(ヒノキチオールとも称される)、殺菌性能及び抗菌性能を発揮するネズコン、殺虫性能、殺菌性能及び抗菌性能を発揮するツヤ酸、芳香性を有し、病害虫の忌避性能を発揮するツヤ酸メチル、並びに殺菌性能及び抗菌性能を発揮するγ-ツヤプリシン等が含まれる。ツヤプリシン、ツヤ酸、ツヤ酸メチルは、揮発性である。
【0048】
[水蒸気蒸留]
植物から抽出物を得る手法として、蒸留法、アンフルラージュ、及び溶媒抽出/浸出法等が知られているが、(B)成分は、蒸留法、さらには水蒸気蒸留法によるものである。
【0049】
アンフルラージュは、油脂を利用して植物から有効成分を抽出する方法である。しかしながら、作業の大半を手仕事に依存し、効率が悪い上にコストが高いため、好ましくない。
【0050】
溶媒抽出/浸出法は、水蒸気蒸留法より多くの有効成分を抽出できる場合が多いとされている。しかしながら、皮膚外用剤として使用するには、皮膚へのダメージを軽減する必要がある。溶媒抽出/浸出法は、有機溶媒(例えば、石油エーテル、n-ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼン等の炭化水素系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル等のエステル系溶媒;アセトン等のケトン類;ピリジン等の塩基性溶媒;ブタノール、プロパノール、メタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等の一価又は多価アルコール系溶媒等)を用いて有効成分を抽出することから、本実施形態で溶媒抽出/浸出法を採用することは、好ましくない。
【0051】
原料植物を容器に入れ、容器に水蒸気を供給すると、原料植物に水蒸気が当たる。原料植物に水蒸気が当たることで、有効成分が水蒸気に含まれる水蒸気蒸留状態になる。その後、冷却することで抽出物を回収できる。
【0052】
水蒸気蒸留を行うと、回収物は、油相(精油)と水相(水蒸気蒸留水)とに分けられる。本実施形態において、油相(精油)を抽出物として回収してもよいし、水相(水蒸気蒸留水)を抽出物として回収してもよい。また、油相(精油)と水相(水蒸気蒸留水)との両方を抽出物として回収してもよい。しかしながら、皮膚外用剤として使用するには、油系成分の使用量を最小限に抑えるのが好ましいこと、また、精油成分は、ごく少量しか抽出されないのでコスト的に工業化が難しいことから、(B)成分は、水相として回収される水蒸気蒸留水であることが好ましい。
【0053】
なお、本実施形態において、抽出物とは、油相(精油)又は水相(水蒸気蒸留水)としての回収物そのものに限らず、その希釈液、濃縮液又は乾燥末も含む概念である。
【0054】
(B)成分は、例えば、ウエスタンレッドシダー水等の商品名で市販されている。
【0055】
(B)成分の含有量の下限は、特に限定されるものでないが、皮膚疾患をもつ対象物の(B)成分による抗菌・殺菌効果の即効性を確保する観点から、(B)成分のうちツヤプリシンの含有量は、10ppm(0.001%)以上であることが好ましく、30ppm(0.003%)以上であることがより好ましく、50ppm(0.005%)以上であることがさらに好ましい。本実施形態に記載の発明では、組成物に含まれるツヤプリシンの濃度が少なくとも66ppm以上であるにも関わらず、皮膚疾患の顕著な改善が見られる(後述する実施例1-2,1-3等)。これは、後に説明する(C)成分を加えることでpHが8以上12未満に保たれ、液性が酸性であることに起因する皮膚への刺激を抑えられたためと考えられる。
【0056】
(B)成分の含有量の上限は、特に限定されない。実際に、組成物に含まれるツヤプリシンの濃度が120ppmを超えていても、(C)成分を加えることでpHが8以上12未満に保たれ、液性が酸性であることに起因する皮膚への刺激を抑えられ、結果として皮膚疾患の顕著な改善が見られる(後述する実施例1-3等)。
【0057】
〔(C)成分:カルシウムナトリウムホスホシリケート〕
カルシウムナトリウムホスホシリケートは、生体活性ガラス2重量%~50重量%と水系溶媒98重量%~50重量%とを含む生体活性ガラス含有液から生体活性ガラスが除去されてなる生体活性ガラス抽出物に含まれる。
【0058】
[生体活性ガラス]
生体活性ガラスは、二酸化ケイ素及び酸化ナトリウム、酸化カルシウム、五酸化リンを含む粉末状ガラス物質である。生体活性ガラスは、水分により活性化され、高い生物学的利用能を有する構成成分のイオン(生体活性ガラスからの抽出物)が放出される。特に、ナトリウムイオンが徐放されるため、(B)成分に含まれるツヤプリシン等の有効成分の光分解を抑えることができる。また、(C)成分が徐放するナトリウムイオンにより皮脂(グリセリンと脂肪酸のエステル)や皮膚角質が軟化し、(A)成分及び(B)成分の対象物体内への浸透性が高まり、皮膚疾患の原因菌に対する殺菌効果が高まる。さらに、その他保湿成分の皮膚浸透性も高まる。
【0059】
生体活性ガラスは、アルカリイオンを徐放する崩壊性を有するガラスであれば特に制限されない。生体活性ガラスとして、例えば、歯科材料で用いられるフルオロアルミノシリケートガラスや、SCHOTT社のVitryxx等が挙げられる。
【0060】
生体活性ガラスの一次平均粒子径は、特に限定されない。有効成分の抽出作業を容易にする観点から、生体活性ガラスの一次平均粒子径は、0.5μm以上であることが好ましく、1.0μm以上であることがより好ましい。
【0061】
一方で、有効成分をより多く抽出する観点から、生体活性ガラスの一次平均粒子径は、15.0μm以下であることが好ましく、10.0μm以下であることがより好ましく、8.0μm以下であることがさらに好ましく、5.0μm以下であることがよりさらに好ましい。
【0062】
[水系溶媒]
水系溶媒は、生体活性ガラスに含まれる皮膚外用剤としての有効成分を、有効成分としての機能を損なうことなく抽出であり、かつ、皮膚へのダメージを最小限に抑えられる液体であれば特に限定されるものでなく、水、水混和性溶媒、及びこれらの混合溶媒のいずれでもよい。
【0063】
水は、精製水、イオン交換水、水道水等、常温で液体の状態にあるあらゆる態様を含む。
【0064】
水混和性溶媒の例として、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、s-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール等のC1-4アルコール;アセトン等のケトン系溶媒;ジメチルホルムアミドやジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;アセトニトリル等のニトリル系溶媒;酢酸等の有機酸溶媒等が挙げられる。しかしながら、本実施形態では、皮膚へのダメージを軽減する必要があることから、水混和性溶媒は、エタノール又はイソプロパノールであり、エタノールであることが好ましい。
【0065】
[水溶性成分]
水系溶媒には、本実施形態に記載の発明の効果を損なわないものであれば、水溶性成分を含むものであってよい。本実施形態では、組成物全体としてのpHが8以上12未満であることが好ましい。組成物のpHが8以上であることにより、液性が酸性であることに起因する(B)成分を高濃度化できないという課題を解決できる。また、組成物のpHが12未満であることにより、アルカリによる有効成分の加水分解や、アルカリが対象物の皮膚にダメージを与えることを軽減できる。
【0066】
(C)成分は、それ自体でpH緩衝機能をもっているため、例えば、水酸化ナトリウム等のアルカリ成分とは異なり、配合量を厳密に制御することなくpHを8以上12未満に保つことができる。しかしながら、pHの安定性を高めるため、水溶性成分としてpH緩衝性の成分を含むものであってもよい。
【0067】
弱アルカリ性の緩衝溶液として、トリス緩衝液(トリス(ヒドロキシルメチル)アミノメタン)、TE緩衝液(トリス緩衝液にEDTA(エチレンジアミン四酢酸)を加えたもの)、及び塩化アンモニウム緩衝液等が挙げられる。
【0068】
その他、水溶性成分として、通常化粧料や医薬部外品等に配合される粉末類、保湿剤、増粘剤、防腐剤等の添加物が挙げられる。
【0069】
[生体活性ガラス含有液に含まれる生体活性ガラスと水系溶媒との割合]
生体活性ガラス含有液に含まれる生体活性ガラスと水系溶媒との割合は、生体活性ガラス抽出物において、動物用皮膚外用剤としての機能を有効に発揮できれば、特に限定されるものではない。
【0070】
目安ではあるが、生体活性ガラスに含まれる有効成分を効果的に抽出させるため、生体活性ガラスの含有量は、生体活性ガラス含有液100重量%に対して2重量%以上であることが好ましい。言い換えると、水系溶媒の含有量は、生体活性ガラス含有液100重量%に対して98重量%以下であることが好ましい。
【0071】
また、生体活性ガラス含有液から生体活性ガラスを除去したときに十分な量の生体活性ガラス抽出物(ろ過後液)を得るため、生体活性ガラスの含有量は、生体活性ガラス含有液100重量%に対して50重量%以下であることが好ましく、40重量%以下であることがより好ましく、30重量%以下であることがさらに好ましく、20重量%以下であることがよりさらに好ましく、10重量%以下であることが特に好ましい。言い換えると、水系溶媒の含有量は、生体活性ガラス含有液100重量%に対して50重量%以上であることが好ましく、60重量%以上であることがより好ましく、70重量%以上であることがさらに好ましく、80重量%以上であることがよりさらに好ましく、90重量%以上であることが特に好ましい。
【0072】
[(C)成分の含有量]
本実施形態において、(C)成分の含有量は、特に限定されるものでない。pHを8以上に保ち、(B)成分に含まれるツヤプリシン等の有効成分の光分解を抑え、(C)成分が徐放するナトリウムイオンにより皮脂(グリセリンと脂肪酸のエステル)や皮膚角質が軟化し、(A)成分及び(B)成分の対象物体内への浸透性を高める観点から、組成物に対する(C)成分の含有量は、100ppm(0.01%)以上であることが好ましく、200ppm(0.02%)以上であることがより好ましく、500ppm(0.05%)以上であることがさらに好ましい。
【0073】
また、pHを12未満に抑える観点から、組成物に対する(C)成分の含有量は、5%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましく、0.8%以下であることがよりさらに好ましい。組成物のpHが12未満であることにより、アルカリによる有効成分の加水分解や、アルカリが対象物の皮膚にダメージを与えることを軽減できる。
【0074】
[(C)成分の製造方法]
(C)成分は、生体活性ガラス2重量%~50重量%と水系溶媒98重量%~50重量%とを混合して1分以上100000時間以下の間静置し、その後、生体活性ガラス含有液から生体活性ガラスを除去することによって得られる。
【0075】
生体活性ガラスと水系溶媒とを混合する方法は、特に制限されないが、例えば、超音波発振器、シェーカー、ミキサー、スターラー等の機器を用いて混合することができる。
【0076】
生体活性ガラス含有液から生体活性ガラスを除去する手法は特に限定されないが、除去の手法として、ろ過等が挙げられる。ろ過の手法は、特に限定されない。一態様として、生体活性ガラス含有液を、生体活性ガラスの平均粒子径よりも小さい細孔径のフィルターを使用して吸引濾過すること等が挙げられる。
【0077】
必須ではないが、ろ過後液のpHを確認し、必要に応じてろ過後液のpHを8以上12未満に調整してもよい。
【0078】
〔他の成分〕
組成物は、必要に応じて、増粘剤、湿潤剤・保湿剤、皮膚コンディショニング剤、界面活性剤、オイル、顔料、色素、塩類、キレート剤、中和剤、紫外線吸収剤、防腐剤、殺菌剤、精製水、天然水、深層海洋水、エチルアルコール等を適宜配合することができる。
【0079】
増粘剤とは、組成物の粘度を向上させて、ゲル状やクリーム状にするために用いる添加物である。増粘剤は、例えば、クラリアントジャパン社「アリストフレックスHMB」、カルボキシビニルポリマーに代表される合成ポリマー、ペクチンやキサンタンガム等に代表される天然ポリマー、微粒子シリカやベントナイト、ヘクトナイト等が挙げられる。
【0080】
湿潤剤・保湿剤とは、組成物を使用した後の患部を保湿する目的で用いる添加物である。湿潤剤・保湿剤は、例えば、ポリエチレングリコール600(略号:PEG600)、グリセリン、アミノ酸、ピロリドンカルボン酸、乳酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸等のムコ多糖葵質、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ソルビット等の多価アルコール類等が挙げられる。
【0081】
皮膚コンディショニング剤は、乾燥や損傷を受けた皮膚にエモリエント性(皮膚からの水分蒸散を抑えてうるおいを保ち、皮膚を柔らかくすること)や保湿性を与えて皮膚の物理的状態を良くするために用いる添加物である。皮膚コンディショニング剤は、例えば、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、ヒロドキシプロピルセルロース、アシル化プルラン、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース、トレハロースイソステアリン酸エステルなどの糖類誘導体、ヒアルロン酸、アセチル化ヒアルロン酸、コラーゲン、カルボキシメチルキトサンサクシナミド、PPG-2アルギニン、ジラウロイルグルタミン酸リシンNa、アミジノプロリン、ピロリドンカルボン酸類、グルコサミン類、アラニルグルタミン、グリセリル-N-(2-ヒドロキシエチル)カルバメート、グルカミン類等の保湿剤、PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリン等の水溶性保湿油、γ-ドコサラクトン、グルコノラクトン、エルカラクトンなどのラクトン類、2-エチルヘキサン酸セチル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジグリセリル混合脂肪酸エステル、イソステアリン酸イソステアリル、イソステアリン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸フィトステリル、イソステアリン酸プロピレングリコール、イソデシルベンゾエート、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸イソノニル、エイコサン二酸/テトラデカン二酸)ポリグリセリル、オクタン酸セチル、オレイン酸エチル、オレイン酸フィトステリル、コハク酸ジ2-エチルヘキシル、コハク酸ジエチルヘキシル、コハク酸ビス(ジエチレングリコールエチルエーテル)エステル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジネオペンタン酸トリプロピレングリコール、ジペンタエリスリトールとヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸等の混合脂肪酸とのエステル、ジリノール酸ジ(フィトステアリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸硬化ヒマシ油、セバシン酸ジエチル、セバチン酸ジエチル、デキストリン脂肪酸エステル、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリエチルヘキサノイン、ネオペンタン酸イソデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチルヘキシル、パルミチン酸オクチル、ヒドロキシステアリン酸硬化ヒマシ油、フィトステリルイソステアレート、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸ミリスチル、リンゴ酸ジイソステアリル等のエステル油、ラウロイルサルコシンイソプロピル、ラウロイルグルタミン酸(フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル/イソステアリル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、ラウロイルグルタミン酸ジイソステアリル、ラウロイルグルタミン酸ジオクチルドデセス-2、ラウロイルグルタミン酸ジステアレス-2、ラウロイルグルタミン酸ジヘキシルデシル、ミリストイルメチル-β-アラニン(フィトステリル/デシルテトラデシル)等のアシルアミノ酸エステル、18-メチルエイコサン酸、14-メチルペンタデカン酸、14-メチルヘキサデカン酸、15-メチルヘキサデカン酸、15-メチルヘプタデカン酸、16-メチルヘプタデカン酸、16-メチルオクタデカン酸、17-メチルオクタデカン酸、17-メチルノナデカン酸等の分岐脂肪酸、ならびにそのエステル油、ラノリン脂肪酸及びその塩などのラノリンからの抽出品、スフィンゴシン、天然セラミド又は天然型セラミド類、及びその誘導体、流動パラフィン、流動イソパラフィン、ワセリン、スクワレン、スクワラン、2,2,4,6,6-ペンタメチルヘプタン等の炭化水素油、真珠層を有する貝殻又は真珠から得られる蛋白質又はその加水分解物、シルクから得られる蛋白質又はその加水分解物、増粘剤、粘度調整剤、エタノール等の低級アルコール、ナフタレンスルホン酸などの界面活性助剤、乳化剤、乳濁剤、金属イオン封鎖剤、紫外線吸収剤、ニコチン酸アミド、アルギニルフルコトシルグルコース、レチノイン酸トコフェリルなどの酸化防止剤、粉末成分、ウレタン樹脂、疎水変性ポリエーテルウレタン、ポリウレタンゲルなどのウレタン類、血行促進剤、局所刺激剤、抗男性ホルモン剤、抗脂漏剤、抗老化薬剤、エモリエント剤、角質溶解剤、グリチルレチン酸、コレステロール、レチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、メントール、アルコキシサリチル酸、サリチル酸、N-ベンゾイルグリシルグリシン、1-インダニリデン誘導体、アラントイン、グリコサミノグリカン、ポリグルタミン酸類、ニコチン酸類、ホスホセリン、トレハンジェリン、トコフェリルリン酸、アスコルビルエチル、アスコルビン酸-2-リン酸-6-脂肪酸、ホエイ類、グリセロホスホコリン、グルコヘプトン酸、グリセリル-1-オクタデシルウレタン等が挙げられる。
【0082】
〔有機溶媒を実質的に含有しないこと〕
皮膚へのダメージを軽減する観点から、組成物は、有機溶媒を実質的に含有しないことが好ましい。本実施形態において、「実質的に含有しない」とは、組成物をシャンプーや皮膚外用剤等として使用する際に皮膚へのダメージを与える量をいうものとする。
【0083】
その観点から、組成物は、石油エーテル、n-ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼン等の炭化水素系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル等のエステル系溶媒;アセトン等のケトン類;ピリジン等の塩基性溶媒;ブタノール、プロパノール、メタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等の一価又は多価アルコール系溶媒等の有機溶媒を実質的に含有しないことが好ましい。そして、組成物は、さらにイソプロパノールを実質的に含有しないことがより好ましい。また、組成物は、さらにエタノールを実質的に含有しないことが特に好ましい。
【0084】
〔殺菌剤成分や抗生物質を実質的に含有しないこと〕
これまで、皮膚疾患の治療方法として、殺菌剤や抗生物質を含有するシャンプーによる殺菌及び洗浄や、殺菌剤や抗生物質を含有する皮膚外用薬(クリーム、ジェル等)の塗布等が提案されている。
【0085】
殺菌剤を含有するシャンプーの場合、シャンプーが対象動物の目鼻口に入る可能性も考えられ、動物への負担低減が求められている。また、シャンプーで対象動物を洗浄する際m、飼い主の手指の皮膚を著しく傷める可能性がある。そして、皮膚外用薬の場合も同様に、動物への影響や飼い主の負担増が懸念される。
【0086】
また、近年ではヒトと同様に、犬や猫の感染症の薬剤耐性化が進んでおり、動物病院で使用できる抗生物質が効かない症状も増えており、その点において、組成物は、抗生物質を実質的に含有しないものであることが求められる。
【0087】
本実施形態に記載の発明によると、組成物は、殺菌剤成分や抗生物質を実質的に含有しなくてもよいため、以下の効果が期待される。
(1)皮膚刺激性、経口毒性等が低い安全性の高い組成物を提供できる。
(2)動物の目鼻口に入っても問題がなく、人間の手指の皮膚を傷めない。
(3)薬剤耐性菌に効果的で、耐性菌化させない。
(4)皮膚疾患の原因菌を殺菌、排除するだけでなく、皮膚の保湿機能向上を期待できる。
【0088】
〔組成物のpH〕
組成物のpHは、特に制限されない。(B)成分に含まれるツヤプリシン等の有効成分の光分解を抑え、(C)成分が徐放するナトリウムイオンにより皮脂(グリセリンと脂肪酸のエステル)や皮膚角質が軟化し、(A)成分及び(B)成分の対象物体内への浸透性を高める観点から、組成物のpHは、8以上であることが好ましく、8.5以上であることがより好ましく、9以上であることがさらに好ましい。
【0089】
また、強アルカリによる皮膚へのダメージを軽減する観点から、組成物のpHは、12未満であることが好ましく、11以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。
【0090】
〔組成物の用途〕
組成物の用途として、皮膚外用剤、好ましくは動物用皮膚外用剤、より好ましくは哺乳動物用皮膚外用剤、さらに好ましくはヒト以外の哺乳動物用皮膚外用剤、よりさらに好ましくは犬又は猫用皮膚外用剤、特に好ましくは犬用皮膚外用剤が挙げられる。皮膚外用剤の具体的剤型として、軟膏、ローション、乳液、クリーム、シャンプー、ジェル、パック、粉末、エアゾール、パップ剤等が挙げられる。
【0091】
本実施形態に記載の発明によると、(A)成分及び(B)成分に(C)成分を加えることでpHを8以上12未満に保つことができる。(C)成分は、それ自体でpH緩衝機能をもっているため、例えば、水酸化ナトリウム等のアルカリ成分とは異なり、配合量を厳密に制御することなくpHを8以上12未満に保つことができる。これにより、液性が酸性であることに起因する(B)成分を高濃度化できないという課題を解決できる。また、組成物のpHが12未満であることにより、アルカリによる有効成分の加水分解や、アルカリが対象物の皮膚にダメージを与えることを軽減できる。
【0092】
また、(C)成分を加えることによりナトリウムイオンが徐放されるため、(B)成分に含まれるツヤプリシン等の有効成分の光分解を抑えることができる。また、(C)成分が徐放するナトリウムイオンにより皮脂(グリセリンと脂肪酸のエステル)や皮膚角質が軟化し、(A)成分及び(B)成分の対象物体内への浸透性が高まり、皮膚疾患の原因菌に対する殺菌効果が高まる。さらに、その他保湿成分の皮膚浸透性も高まる。
【0093】
よって、本実施形態に記載の発明によると、(B)成分による即効性と(A)成分による持続性との両方を確保しつつ、(B)成分を高濃度にしても対象物の皮膚へのダメージを抑えることの可能な組成物を提供できる。
【実施例0094】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるもので
はない。
【0095】
<試験例1> クリーム製剤
〔試料の調製〕
表1及び表2にしたがって、水系基剤各成分を調合し、大気圧下室温で24時間以上混合し、粘稠液体を得た。同様に、油系基剤各成分を調合し大気圧化室温で混合し均一な液体を得た。最後に、撹拌機を使用して水系基剤及び油系基剤を混合し、クリーム製剤を得た。クリーム製剤をクリーム用チューブ容器に充填し、実施例及び比較例の皮膚用製剤を得た。
【表1】
【表2】
【0096】
表1及び表2において、各種成分は以下の通りである。
WRC水蒸気蒸留水:市販のウエスタン・レッド・シダー水(ツヤプリシン(β・γ)150~450ppm、ネズコン70~250ppm、ツヤ酸70~250ppm、及びツヤ酸メチル5~80ppmを含有する水蒸気蒸留水)
燃焼合成炭化チタン:市販の燃焼合成炭化チタン(製品名NOCERA,オーエスユー社製)
45S5 Bioactive Glass:カルシウムナトリウムホスホシリケート(二酸化ケイ素45重量%、酸化カルシウム24.5重量%、酸化ナトリウム24.5重量%及び五酸化二リン6.0重量%)を含有する生体活性ガラス抽出物
ホホバオイル:ホホバ(Simmondsia chinensis)の種子を原料とする植物油
乳化剤:トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル
【0097】
〔評価〕
皮膚疾患の犬の患部に対して、実施例又は比較例の皮膚用製剤を、1日1回塗擦し、塗擦前(0日後)と14日後の症状の程度を評価した。症状の程度の基準には表3を使用し、各項目のスコアの合計値を評価尺度とした(スコアの合計値が小さい方が良好である。)。
【表3】
【0098】
結果を表4に示す。実施例の皮膚用製剤では、いずれも皮膚疾患の改善が見られたが、比較例の皮膚用製剤では、皮膚疾患の改善が見られなかった。比較例1-1では(B)成分がないために即効性が劣り、比較例1-2では(A)成分がないために持続性が劣ったためと考えられる。また、比較例1-3では(C)成分がないために組成物のpHが酸性になってしまい、動物の皮膚に酸による刺激を与えてしまったためと考えられる。また、(C)成分によるナトリウムイオンの徐放効果が得られず、(B)成分に含まれるツヤプリシン等の有効成分が光分解してしまうとともに、皮脂(グリセリンと脂肪酸のエステル)や皮膚角質の軟化が十分でなく、(A)成分及び(B)成分を対象物体内に十分に浸透できなかったためと考えられる。
【0099】
実施例の中でも、実施例1-2及び1-3は、組成物に含まれるツヤプリシンの濃度が少なくとも66ppm以上であるにも関わらず、皮膚疾患の顕著な改善が見られた。これは、(C)成分を加えることでpHが8以上12未満に保たれ、液性が酸性であることに起因する皮膚への刺激を抑えられたことによるものと考えられる。
【表4】
表4において、改善率は、以下の式から得られる値である。
改善率[%]=((0日後のスコア合計値-14日後のスコア合計値)/16)×100
【0100】
<試験例2> シャンプー製剤
〔試料の調製〕
表5及び表6にしたがって、各成分を計量し、1時間以上混合しシャンプー製剤を調製した。
【表5】
【表6】
【0101】
表5及び表6において、各種成分は以下の通りである。
WRC水蒸気蒸留水:表1及び表2と同じ。
燃焼合成炭化チタン:表1及び表2と同じ。
45S5 Bioactive Glass:表1及び表2と同じ。
両性界面活性剤:アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン
アニオン界面活性剤:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩
【0102】
〔評価〕
膿皮症の症状を呈した犬の患部を、実施例又は比較例のシャンプー製剤を使用して洗浄し、流水で十分にすすぎ皮膚の洗浄を実施した。シャンプー洗浄の頻度は、3日に1回とし、シャンプー前(0日後)と14日後の症状の程度を評価した。症状の程度の基準は、試験例1と同様とし、各項目のスコアの合計値を評価尺度とした。結果を表7に示す。
【表7】
【0103】
実施例の皮膚用製剤では、いずれも皮膚疾患の改善が見られたが、比較例の皮膚用製剤では、皮膚疾患の改善が見られなかった。比較例2-1では(B)成分がないために即効性が劣り、比較例2-2では(A)成分がないために持続性が劣ったためと考えられる。また、比較例2-3では(C)成分がないために組成物のpHが酸性になってしまい、動物の皮膚に酸による刺激を与えてしまったためと考えられる。また、(C)成分によるナトリウムイオンの徐放効果が得られず、(B)成分に含まれるツヤプリシン等の有効成分が光分解してしまうとともに、皮脂(グリセリンと脂肪酸のエステル)や皮膚角質の軟化が十分でなく、(A)成分及び(B)成分を対象物体内に十分に浸透できなかったためと考えられる。
【0104】
実施例の中でも、実施例2-2~2-4は、組成物に含まれるツヤプリシンの濃度が少なくとも66ppm以上であるにも関わらず、皮膚疾患の顕著な改善が見られた。これは、(C)成分を加えることでpHが8以上12未満に保たれ、液性が酸性であることに起因する皮膚への刺激を抑えられたことによるものと考えられる。
【0105】
実施例2-5は、(C)成分の含有量が組成物に対して0.494%(4940ppm)であったため、pHが8.5になり、実施例2-2~2-4に比べて中性に近いことから、(B)成分に含まれるツヤプリシン等の光分解抑制効果や、(A)成分及び(B)成分の対象物体内への浸透効果が実施例2-2~2-4に比べて弱かったためと考えられる。
【0106】
なお、試験例2でのシャンプー製剤は、両性界面活性剤を含有するため、(C)成分からの陽イオン緩衝作用によりpHをそれほど上がらない。そのため、例えば、pHを9以上で保つためには試験例1や試験例3に比べて(C)成分を多く入れることが好ましい。
【0107】
<試験例3> フォーム(泡)製剤
〔試料の調製〕
表8及び表9にしたがって、各成分を計量し、1時間以上混合しフォーム(泡)製剤を調製した。
【表8】
【表9】
【0108】
表8及び表9において、各種成分は以下の通りである。
WRC水蒸気蒸留水:表1及び表2と同じ。
燃焼合成炭化チタン:表1及び表2と同じ。
45S5 Bioactive Glass:表1及び表2と同じ。
皮膚コンディショニング剤:セラミドNP
保湿剤:2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体液
水添ヤシ油誘導体:ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン液
【0109】
〔評価〕
膿皮症の症状を呈した犬の患部を、実施例又は比較例のフォーム(泡)製剤を1日1回塗擦・揉込し、塗擦・揉込前(0日後)と14日後の症状の程度を評価した。症状の程度の基準は、試験例1と同様とし、各項目のスコアの合計値を評価尺度とした。結果を表10に示す。
【表10】
【0110】
実施例の皮膚用製剤では、いずれも皮膚疾患の改善が見られたが、比較例の皮膚用製剤では、皮膚疾患の改善が見られなかった。比較例3-1では(B)成分がないために即効性が劣り、比較例3-2では(A)成分がないために持続性が劣ったためと考えられる。また、比較例3-3では(C)成分がないために組成物のpHが酸性になってしまい、動物の皮膚に酸による刺激を与えてしまったためと考えられる。また、(C)成分によるナトリウムイオンの徐放効果が得られず、(B)成分に含まれるツヤプリシン等の有効成分が光分解してしまうとともに、皮脂(グリセリンと脂肪酸のエステル)や皮膚角質の軟化が十分でなく、(A)成分及び(B)成分を対象物体内に十分に浸透できなかったためと考えられる。
【0111】
実施例の中でも、実施例3-1~3-3は、皮膚疾患の顕著な改善が見られ、実施例2及び3は、組成物に含まれるツヤプリシンの濃度が少なくとも66ppm以上であるにも関わらず、皮膚疾患のさらに顕著な改善が見られた。これは、(C)成分を加えることでpHが8以上12未満に保たれ、液性が酸性であることに起因する皮膚への刺激を抑えられたことによるものと考えられる。
【0112】
実施例3-4は、(A)成分の含有量が組成物に対して0.001%(10ppm)であったため、0.049%(490ppm)である実施例3-1~3-3に比べて皮膚疾患の持続的な改善効果が劣ったものと考えられる。実施例3-5は、(C)成分の含有量が組成物に対して0.978%(9780ppm)であったため、pHが10.6になり、実施例3-1~3-3に比べて強いアルカリ性を示す結果、アルカリによる有効成分の加水分解や、アルカリが対象物の皮膚に与えるダメージの影響が少なからず出たものと考えられる。