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  • 特開-健康状態検査材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053508
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】健康状態検査材
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/493 20060101AFI20240408BHJP
   E03D 9/00 20060101ALN20240408BHJP
   E03D 1/00 20060101ALN20240408BHJP
【FI】
G01N33/493 Z
E03D9/00 Z
E03D1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159853
(22)【出願日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】522390526
【氏名又は名称】平松 義松
(74)【代理人】
【識別番号】100181582
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 直斗
(72)【発明者】
【氏名】平松 義松
【テーマコード(参考)】
2D038
2D039
2G045
【Fターム(参考)】
2D038ZA03
2D039AA02
2D039BA00
2G045AA15
2G045AA40
2G045CB03
2G045DB03
2G045FB15
2G045GC12
(57)【要約】
【課題】排尿や排便で健康状態を簡便に確認でき、かつ、長期間に渡って使用できる健康状態検査材を提供すること。
【解決手段】健康状態検査材1は、多孔質体と、多孔質体に保持される被保持材とを備える。被保持材は、少なくとも、pH指示薬と、pH指示薬を多孔質体に吸着保持させる吸着保持材とを含む。多孔質体は、軽石であってもよい。吸着保持材は、にがりを含んでいてもよい。健康状態検査材1は、水洗トイレ2の貯水タンク21内に貯留された水Wに浸漬して用いられてもよい。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質体と、
前記多孔質体に保持される被保持材と、を備え、
前記被保持材は、少なくとも、pH指示薬と、前記pH指示薬を前記多孔質体に吸着保持させる吸着保持材と、を含む、健康状態検査材。
【請求項2】
前記多孔質体は、軽石である、請求項1に記載の健康状態検査材。
【請求項3】
前記吸着保持材は、にがりを含む、請求項1又は2に記載の健康状態検査材。
【請求項4】
前記健康状態検査材は、水洗トイレの貯水タンク内に貯留された水に浸漬して用いられる、請求項1に記載の健康状態検査材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、健康状態検査材に関する。
【背景技術】
【0002】
人の健康において、早期に病気を発見することができれば、治療は短くて済むし、体に大きな負担もなく、健康状態を維持することができる。ただ、早期に病気を発見するためには、常に体を検査しておかなければならず、またその検査の準備(器材、薬品等)が非常に煩わしい。
【0003】
従来、人の排尿等の排泄物のpHを検査し、糖尿病、腎臓病等の病気の診断に利用することが行われている。また、その検査を水洗トイレで簡便に実施できるように、例えば特許文献1には、支持体上にpH検査薬等を担持させた水洗トイレ用尿検査体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-262010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の尿検査体は、水洗トイレの便器の中に入れて尿中の検査成分と反応させ、尿検査体を反応させることにより尿中の検査成分の判定を行い、その後その尿検査体をそのまま水洗トイレに流すものである。そのため、検査のたびに準備が必要となり、準備の煩わしさを解消することはできない。また、1回のみの使用を想定しており、継続的な検査に用いることができない。
【0006】
本発明は、排尿や排便で健康状態を簡便に確認でき、かつ、長期間に渡って使用できる健康状態検査材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の態様である健康状態検査材は、多孔質体と、多孔質体に保持される被保持材と、を備える。被保持材は、少なくとも、pH指示薬と、pH指示薬を多孔質体に吸着保持させる吸着保持材と、を含む。
【0008】
上記健康状態検査材によれば、多孔質体に保持される被保持材は、少なくとも、pH指示薬と、そのpH指示薬を多孔質体に吸着保持させる吸着保持材とを含む。そのため、健康状態検査材を、例えば、水洗トイレの貯水タンク内に貯留された水に浸漬して用いることにより、排尿や排便で健康状態を簡便に確認でき、かつ、長期間に渡って継続的に健康状態の検査を行うことができる。
【0009】
すなわち、被保持材に含まれるpH指示薬が水洗トイレの貯水タンク内の水に溶出し、pH指示薬を含む水が便器内に溜まるため、そこへ排尿や排便を行うことにより、pH指示薬に尿や便を接触させ、pH指示薬の色の変化を容易に確認できる。よって、健康状態の検査のために煩わしい準備が不要であり、老若男女問わず、日常的に行う排尿や排便で健康状態を簡便に確認できる。
【0010】
また、被保持材に含まれる吸着保持材により、pH指示薬を多孔質体に十分かつ確実に吸着保持できると共に、pH指示薬の溶出を適度に調節できる。よって、pH指示薬の過度な溶出を抑制し、長期間に渡って継続的に健康状態の検査を行うことができる。そして、継続的な検査により、健康状態の変化に気付きやすくなり、病気の早期発見につなげることができる。
【0011】
上記健康状態検査材において、多孔質体は、軽石であってもよい。この場合には、多孔質体に被保持材を容易に保持させることができる。また、多孔質体に十分な量の被保持材、特にpH指示薬を保持させることができる。
【0012】
また、吸着保持材は、にがりを含んでいてもよい。この場合には、pH指示薬を多孔質体に対してより十分かつ確実に吸着保持できる。また、pH指示薬をより適度に溶出させ、pH指示薬の過度な溶出をさらに抑制できる。
【0013】
また、健康状態検査材は、水洗トイレの貯水タンク内に貯留された水に浸漬して用いられてもよい。この場合には、排尿や排便で健康状態を簡便に確認でき、かつ、長期間に渡って使用できるという上述の効果を容易に発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態の健康状態検査材の使用例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の健康状態検査材は、多孔質体と被保持材とを備える。
多孔質体は、被保持材を保持するための多孔質の材料である。多孔質体は、多数の細孔を有することにより、細孔内に多くの被保持材を保持することができる。
【0016】
多孔質体としては、被保持材を保持させることができればどのような多孔質の材料を用いてもよいが、例えば、軽石、活性炭、ゼオライト等を用いることができる。その中でも、十分な量の被保持材を容易に保持させることができる点で軽石を用いることが好ましく、特に人工の軽石に比べて多数の細孔を有する天然の軽石が好ましい。軽石としては、各種の軽石を用いることができる。また、多孔質体は、使用後に洗浄すれば、再度被保持材を保持させることができ、繰り返しの使用が可能である。
【0017】
被保持材は、多孔質体に保持される材料である。被保持材は、多孔質体の外表面上、多孔質体が有する多数の細孔内等に保持される。被保持材は、少なくとも、pH指示薬と吸着保持材とを含む。
【0018】
pH指示薬(酸塩基指示薬)は、水素イオン濃度(pH)により変色する物質である。pH指示薬に尿や便を接触させると、尿や便に含まれる水素イオンの濃度によりpH指示薬の色が変化する。pH指示薬の色の変化により、尿や便のpH(酸性、中性、アルカリ性)を視覚的に確認できる。
【0019】
pH指示薬としては、例えば、ブロモチモールブルー(BTB)、フェノールフタレイン(PP)、チモールブルー(TB)、メチルオレンジ(MO)、メチルレッド(MR)等を用いることができる。通常、尿や便は弱酸性でpHは6前後であるため、そこから酸性側又はアルカリ性側への変化がわかりやすい点でブロモチモールブルー(変色域:pH6.0~7.6)を用いることが好ましい。
【0020】
pH指示薬の色の変化により、尿や便のpHが酸性側であれば、糖尿病、痛風等の病気の疑いがあることを確認できる。また、尿や便のpHがアルカリ性側であれば、腎臓病等の病気の疑いがあることを確認できる。このように、pH指示薬を利用することにより、健康状態を簡便に確認でき、病気の早期発見につなげることができる。
【0021】
吸着保持材は、pH指示薬を多孔質体に吸着保持させる材料である。吸着保持材としては、pH指示薬を多孔質体に吸着保持させることに寄与すればどのような材料を用いてもよいが、特に多孔質体の細孔内に吸着保持させる効果を十分に発揮できる材料が好ましい。
【0022】
具体的に、吸着保持材としては、pH指示薬を多孔質体に十分かつ確実に吸着保持でき、また吸着保持されたpH指示薬を適度に溶出させ、かつ、pH指示薬の過度な溶出を抑制できる点でにがり(苦汁)を用いることが好ましい。なお、にがりは、海水を煮詰めて精製した後に残る母液であり、塩化マグネシウムを主成分とし、その他に硫酸マグネシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム等を含む。吸着保持材としては、例えば、にがりに含まれる一部の成分(塩化マグネシウム等)を用いることもできる。
【0023】
被保持材は、その機能や効果を妨げない範囲で、pH指示薬及び吸着保持材以外の材料を含んでいてもよく、例えば、ケイ素を含むケイ素化合物、カリウムを含むカリウム化合物等を含んでいてもよい。
【0024】
ケイ素化合物は、これを添加することによって健康状態検査材全体に含まれるケイ素含有量を増やし、多孔質体に吸着保持されたpH指示薬を適度に溶出させ、かつ、pH指示薬の過度な溶出を抑制する効果を高めることができる。ケイ素化合物としては、例えば、水ガラス等を用いることができる。ケイ素化合物の添加量は、例えば、多孔質体に含まれるケイ素の含有量等に合わせて適宜調整することができる。
【0025】
カリウム化合物は、これを添加することによって吸着保持材によって得られる上述の効果、すなわちpH指示薬を多孔質体に十分かつ確実に吸着保持でき、また吸着保持されたpH指示薬を適度に溶出させ、かつ、pH指示薬の過度な溶出を抑制するという効果を高めることができる。特に、多孔質体に対する被保持材の吸着保持効果に大きく寄与する。カリウム化合物としては、例えば、炭酸カリウム等を用いることができる。
【0026】
また、被保持材は、多孔質体の多数の細孔内に被保持材を吸着保持させる効果を高めるために、気体(ガス)を発生する発泡性の材料を含んでいてもよい。例えば、水素を発生する水素化ホウ素ナトリウムを含むことにより、多孔質体の細孔内の気体(空気)を排除して被保持材をより吸着させ、多孔質体に対する被保持材の吸着量を高めることができる。そのため、吸着保持材による効果を促進させることができる。
【0027】
(実施形態例)
本発明の実施形態例について説明する。
ここでは、本発明の健康状態検査材を水洗トイレで使用する例について説明する。
【0028】
健康状態検査材は、多孔質体と、多孔質体に保持される被保持材とを備える。本実施形態では、多孔質体として軽石を用いている。軽石は、天然の軽石であり、球状である。被保持材は、多孔質体である軽石が有する多数の細孔内に保持されている。
【0029】
被保持材は、少なくとも、pH指示薬と、pH指示薬を多孔質体に吸着保持させる吸着保持材とを含む。本実施形態では、pH指示薬としてブロモチモールブルー(BTB)を用い、吸着保持材としてにがりを用いている。
【0030】
健康状態検査材を製造するに当たっては、まず、pH指示薬であるBTB溶液:200mlに、ケイ素化合物として水ガラス:2g以上を添加し、混合する。さらに、吸着保持材であるにがり:8g、カリウム化合物として炭酸カリウム:8g、水素化ホウ素ナトリウム:2gを添加し、混合する。そして、得られた混合液に、天然の軽石を24~36時間浸漬する。その後、浸漬した軽石を取り出し、乾燥させる。これにより、健康状態検査材が得られる。
【0031】
次に、健康状態検査材を用いた健康状態の検査方法について説明する。
図1に示すように、健康状態検査材1は、水洗トイレ2で使用する。具体的には、水洗トイレ2は、貯水タンク21、便器22等を備える。貯水タンク21内には、便器22を洗浄するための水Wが貯留されている。貯水タンク21から便器22に供給された水Wは、便器22から排水路23を介して排水管24に排出される。便器22内には、通常時、水Wが溜まった状態となっている。
【0032】
健康状態を検査する際には、健康状態検査材1を、水洗トイレ2の貯水タンク21内に投入する。具体的には、健康状態検査材1を、貯水タンク21内に貯留された水Wに浸漬する。健康状態検査材1は、貯水タンク21内に貯留された水Wに浮いた状態となる。
【0033】
健康状態検査材1を浸漬した後、5~10分で貯水タンク21内の水Wに、健康状態検査材1に含まれるpH指示薬(BTB)が溶出し、水Wの色が緑色に変化する。一度、貯水タンク21から便器22に水Wを流すことで、pH指示薬を含む水Wが便器22内に溜まった状態となる。これにより、健康状態の検査の準備が完了する。
【0034】
そして、日常生活において、水洗トイレ2の便器22内に排尿や排便を行うことにより、便器22内に溜まった水Wに含まれるpH指示薬に尿や便が接触し、約1~5秒で便器22内の水Wの色が変化する。すなわち、pH指示薬の色の変化により、尿や便のpHを視覚的に確認できる。
【0035】
本実施形態では、pH指示薬を含む水Wの色が緑色からオレンジ色・赤色に変化した場合、尿や便のpHが酸性側であり、糖尿病、痛風等の病気の疑いがあることを確認できる。また、pH指示薬を含む水Wの色が緑色から青色・濃い青色に変化した場合、尿や便のpHがアルカリ性側であり、腎臓病等の病気の疑いがあることを確認できる。一方、pH指示薬を含む水Wの色が緑色から変化しない場合、尿や便のpHが中性付近で正常であり、健康状態が良好であることを確認できる。
【0036】
次に、健康状態検査材1の作用効果について説明する。
本実施形態の健康状態検査材1によれば、多孔質体に保持される被保持材は、少なくとも、pH指示薬と、そのpH指示薬を多孔質体に吸着保持させる吸着保持材とを含む。そのため、健康状態検査材を、本実施形態のように、水洗トイレ2の貯水タンク21内に貯留された水Wに浸漬して用いることにより、排尿や排便で健康状態を簡便に確認でき、かつ、長期間に渡って継続的に健康状態の検査を行うことができる。
【0037】
すなわち、被保持材に含まれるpH指示薬が水洗トイレ2の貯水タンク21内の水Wに溶出し、pH指示薬を含む水Wが便器22内に溜まるため、そこへ排尿や排便を行うことにより、pH指示薬に尿や便を接触させ、pH指示薬の色の変化を容易に確認できる。よって、健康状態の検査のために煩わしい準備が不要であり、老若男女問わず、日常的に行う排尿や排便で健康状態を簡便に確認できる。
【0038】
また、被保持材に含まれる吸着保持材により、pH指示薬を多孔質体に十分かつ確実に吸着保持できると共に、pH指示薬の溶出を適度に調節できる。よって、pH指示薬の過度な溶出を抑制し、長期間に渡って継続的に健康状態の検査を行うことができる。そして、継続的な検査により、健康状態の変化に気付きやすくなり、病気の早期発見につなげることができる。
【0039】
また、本実施形態において、多孔質体は、軽石である。そのため、多孔質体に被保持材を容易に保持させることができる。また、多孔質体に十分な量の被保持材、特にpH指示薬を保持させることができる。
【0040】
また、吸着保持材は、にがりである。そのため、pH指示薬を多孔質体に対してより十分かつ確実に吸着保持できる。また、pH指示薬をより適度に溶出させ、pH指示薬の過度な溶出をさらに抑制できる。
【0041】
(実験例)
本発明の健康状態検査材の効果について、比較例と対比しながら説明する。
ここでは、実施例及び比較例1~3の健康状態検査材(以下、検査材という。)を準備し、評価を行った。
【0042】
<実施例>
BTB溶液:200mlに、水ガラス:2g以上を添加し、混合する。さらに、にがり:8g、炭酸カリウム:8g、水素化ホウ素ナトリウム:2gを添加し、混合する。そして、得られた混合液に、天然の軽石を24~36時間浸漬する。その後、浸漬した軽石を取り出し、乾燥させる。これにより、検査材(実施例)が得られる。なお、実施例の検査材は、上述した実施形態例の健康状態検査材1と同様である。
【0043】
<比較例1>
BTB溶液:100mlに、重曹:2g、クエン酸:2g、炭酸カリウム:8g、水素化ホウ素ナトリウム:1gを添加し、混合する。そして、得られた混合液を型に流し込み、乾燥させる。これにより、固形状に形成された比較例1の検査材が得られる。
【0044】
<比較例2>
BTB溶液:200mlに、ラテックス:100g、炭酸カリウム:16gを添加し、混合する。そして、得られた混合液を型に流し込み、乾燥させる。これにより、固形状に形成された比較例2の検査材が得られる。
【0045】
<比較例3>
BTB溶液:200mlに、水ガラス:2g以上を添加し、混合する。さらに、炭酸カリウム:8g、水素化ホウ素ナトリウム:2gを添加し、混合する。そして、得られた混合液に、天然の軽石を24~36時間浸漬する。その後、浸漬した軽石を取り出し、乾燥させる。これにより、比較例3の検査材が得られる。なお、比較例3の検査材は、にがりを使用していないこと以外は、実施例の検査材と同様である。
【0046】
次に、実施例及び比較例1~3の検査材について、上述した実施形態例と同様に、水洗トイレの貯水タンク内に貯留された水に浸漬して使用したときのpH指示薬の溶出や使用回数について評価した。なお、使用回数とは、水洗トイレで排尿や排便をして健康状態の検査の行い、水(貯水タンク内の水)を流すまでを1回とする。
【0047】
比較例1の検査材は、貯水タンク内の水に浸漬させると形を維持できずに溶けて崩れてしまい、pH指示薬が全て溶出したため、貯水タンク内の水の色がすぐに変化した。また、pH指示薬が全て溶出してしまうため、検査を2~3回しか行うことができなかった。そのため、継続的な検査が困難であり、繰り返しの使用もできなかった。
【0048】
比較例2の検査材は、pH指示薬の吸着が強いため、pH指示薬の溶出が遅く、貯水タンク内の水の色が変化するまで2~3日かかった。そのため、検査を1回行うと、次の検査を行うことができる状態となるまでに非常に時間を要し、適切な頻度で継続的な検査を行うことが困難であった。
【0049】
比較例3の検査材は、pH指示薬の溶出が遅く、貯水タンク内の水の色が変化するまで1時間くらいかかった。また、pH指示薬の吸着量が少ないため、検査を2~3回行うとpH指示薬の溶出がほとんどなくなった。そのため、適切な頻度で継続的な検査を行うことが困難であった。
【0050】
一方、実施例の検査材は、比較例1、2の検査材とは異なり、pH指示薬を多孔質体(天然の軽石)に保持させている。また、比較例3の検査材とは異なり、pH指示薬を多孔質体に吸着保持させる吸着保持材(にがり)を用いている。そのため、pH指示薬を適度に溶出させることができ、貯水タンク内の水の色が変化するまで5~10分程度であった。また、pH指示薬の過度な溶出を抑制できることから、7~10日間継続して検査を行うことができた。すなわち、1日20回程度の検査として、約140~200回の検査を行うことができた。
【0051】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
【0052】
(1)上記実施形態では、健康状態検査材を水洗トイレの貯水タンク内に貯留された水に浸漬して用いたが、例えば、水洗トイレの貯水タンクのさらに上流側に健康状態検査材を配置して用いることもできるし、その他、健康状態検査材から溶出したpH指示薬と排尿や排便を接触させることができれば、どのような方法で適用してもよい。
【0053】
(2)上記実施形態において、多孔質体に、pH指示薬を含む被保持材を保持させているが、多孔質体に対する被保持材の保持量は、例えば、多孔質体の質量等によって調整することができる。被保持材の保持量を増やせば、多孔質体に対するpH指示薬の吸着量も増えるため、検査可能な回数を増やすことができる。
【0054】
(3)上記実施形態では、水洗トイレの貯水タンク内に投入した健康状態検査材を、貯水タンク内に貯留された水に浮いた状態としている(図1参照)。この状態とすることにより、健康状態検査材から溶出したpH指示薬が貯水タンク内の水に広がりやすくなる。健康状態検査材を水に浮かせるためには、多孔質体に対する被保持材の保持量を調整する必要がある。被保持材の保持量は、上述したように、例えば、多孔質体の質量等によって調整することができる。
【0055】
(4)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本発明の実施形態である。
【符号の説明】
【0056】
1…健康状態検査材、2…水洗トイレ、21…貯水タンク、W…水
図1