IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 細川製畳株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-袋ごと燃やす藁燃料 図1
  • 特開-袋ごと燃やす藁燃料 図2
  • 特開-袋ごと燃やす藁燃料 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053511
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】袋ごと燃やす藁燃料
(51)【国際特許分類】
   C10L 5/44 20060101AFI20240408BHJP
【FI】
C10L5/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022167964
(22)【出願日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】521494360
【氏名又は名称】細川製畳株式会社
(72)【発明者】
【氏名】細川 恭弘
(72)【発明者】
【氏名】加藤 翔也
【テーマコード(参考)】
4H015
【Fターム(参考)】
4H015AA12
4H015AB01
4H015AB05
4H015BA06
4H015BA07
4H015BA09
4H015BA12
4H015BB03
4H015BB10
4H015CB01
(57)【要約】
【課題】 稲藁の取り扱いを容易にすることにより、藁を燃料として有効利用する。
【解決手段】 可燃性にのシートからなる直方体形状の袋または箱の内部に、底面から部位ごとに分別した稲藁を3層に構成して充填する。その際、上段5には、稲藁の穂先を充填し、中段4には、稲藁の穂先と茎元の混合物を充填し、下段3には、稲藁の葉片と葉鞘の少なくともいずれかを充填する。また、底面の四隅の、底面に垂直な方向には、稲藁の最も太い部分である茎元の少なくとも1本を束ねた柱状部材2a、2b、2c、2dを配する。これによって下からの着火が容易で、容易に全体が燃焼して、一定量の炎が得られ、しかも上下方向からの外力で潰れることが少ない燃料を提供できる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可燃性のシートを四角柱形状に成形してなる容器の内部に、稲藁を充填してなる燃料において、前記容器の側面が交差する四つの稜の部分に、前記稲藁の最も太い部分である茎元の少なくとも1本からなる柱状部材が配され、底面からの高さ方向を領域を、上段、中段、下段に3分割し、上段には、稲藁の穂先が充填され、中段には、稲藁の穂先と茎元の混合物が充填され、下段には、稲藁の葉片と葉鞘の少なくともいずれかが充填されてなることを特徴とする燃料。
【請求項2】
前記の稲藁は、含水率が10%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の燃料。
【発明の詳細な説明】
【秘術分野】
【0001】
本発明は、燃料に関わるもので、特に可燃性のシート状材料からなる袋または箱に稲藁を充填した燃料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の稲作においては、農業の機械化のため、収穫作業にはコンバインを用い、根元から刈り取った稲の穂先から、籾の分離、つまり脱穀を行い、残りの藁の部分は、ディスクカッターにより細かく裁断され、そのまま圃場に散布される場合がある。散らばった藁は、土壌に鋤き込まれ、肥料として利用される。
【0003】
裁断しないで結束し、次のような用途に供されることもある。
(1)堆肥の原料 (2)畜舎の敷き藁 (3)家畜の飼料 (4)雑草や外注に発生を抑制し、地面の保温のための農業用マルチ (5)注連縄などの工芸品 (6)畳床
【0004】
また、稲藁は、前記の他に燃料としても用いられる。特に鰹のたたきなどでは、切身の表面を稲藁を燃焼させた火炎で炙ると、鰹の生臭さを消し、稲藁の風味が、鰹の旨みを、より一層引き立てると言われている。
【0005】
稲藁は、着火が容易であるという特徴から、バーベキューのような屋外での調理でも有用であると考えられる。しかし、ガスコンロ用のバスボンベなどと異なり、
(1)ホームセンターなどで販売されていない。(2)自宅での稲藁の管理が困難である。(3)持ち運びに際して、服や自動車の内部が、藁屑などで汚れる。(4)稲藁の内部に害虫が潜んでいる可能性がある。
そのような問題点があるため、稲藁を燃料として調理に用いるには課題がある。
【0006】
一方で、再生可能なエネルギー源として、各種のバイオマス燃料が注目されていて、たとえば、特許文献1には、草本類の萱、葦、芒、稲藁、籾殻、タバコの茎、トウモロコシの茎、大豆の枝葉、小豆の枝葉、トマトの枝葉は、収穫した状態から水分を蒸発させて乾燥させ、含水率を5%から10%の範囲になるようにし、裁断して短冊片とし、更にこの短冊片を粉砕してペレット直径の1/2の網目を通過する大きさにする。粉砕された萱、葦、芒、稲藁、籾殻、タバコの茎、トウモロコシの茎、大豆の枝葉、小豆の枝葉、トマトの枝葉は、ペレタイザー〈ペレット成形機〉により低温成形温度でペレット状に成形して、前記ペレットの直径は、4から25mmとした、燃料用草本ペレットが開示されている。しかし、ここに開示されている燃料用草本ペレットは、製造工程が複雑で、藁を燃料化するための課題には、十分対応していないと考えられる。
【0007】
また、特許文献2には、木質系バイオマスの含水率を15から50質量%、好ましくは20から40質量%に調整し、該含水率を調整した木質系バイオマス100質量部と廃油30から300質量部とを混合することを特徴とする、固体燃料の製造方法が開示されている。しかし、ここに開示されている固体燃料は、稲藁よりも着火が困難な木質系バイオマスに、油分を添加することで、着火を容易にしたものと考えられ、前記の課題に対応したものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実用新案登録第3187902号公報
【特許文献2】特開2011-116908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、前記の課題に鑑み、稲藁の取り扱いを容易にすることにより、藁を燃料として有効利用することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、稲藁を活用した燃料の構造を、鋭意検討した結果、本発明をなしたものである。
【0011】
上記課題を解決するための、本発明の一態様に係る燃料は、可燃性のシートを四角柱形状に成形してなる容器の内部に、稲藁を充填してなる燃料において、前記容器の側面が交差する四つの稜の部分に、前記稲藁の最も太い部分である茎元の少なくとも1本からなる柱状部材が配され、底面からの高さ方向を領域を、上段、中段、下段に3分割し、上段には、稲藁の穂先が充填され、中段には、稲藁の穂先と茎元の混合物が充填され、下段には、稲藁の葉片と葉鞘の少なくともいずれかが充填されてなることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一態様に係る燃料は、前記の稲藁の含水率が、10%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
一般に稲藁は、茎と、葉片の基部が発達して鞘状となり、茎元を抱擁する葉鞘と、葉鞘の上部に延在する葉片と、茎元の上方に延在する穂を有する。葉鞘と葉片は薄くて比較的幅が広い形状なので、乾燥状態では、着火が極めて容易で、穂先は穂長い棒状の形状なので緊密な状態にすることで大きな火力が得られ、茎の部分は、葉鞘・葉片と穂先の中間の燃料特性を有する。
【0014】
本発明に係る燃料は、前記の稲藁の部位の特徴を活用すべく、可燃性のシートからなる容器に、部位毎に分別した稲藁が3層に充填されているために、次のような特長が得られる。(1)上段には、最大火力を生じる稲藁の穂先が配されているため、大きな火力が得られ、燃え残りが少なく、さらに中段と下段の灰の飛散を抑えることができる。長さは200mmから220mm程度。(2)中段には、稲藁の穂先と茎元の混合物が配されているため、下段からの火炎を大きくしながら、上段に火炎を円滑に移行できる。長さは100mm程度。(3)下段には、稲藁の葉片や葉鞘がまとめて配されているため、着火が早く容易である。長さは200mmから220mm程度。
【0015】
容器の内側の、容器の側面が交わる4箇所の隅には、稲藁の中で最も太く、機械的な強度が最も大きい茎元を複数本束ねた部材を柱として配置するので、積み重ねたり、外力が加わったりしても、潰れ難くなる。そして、袋内に空気を含ませることができるため燃えやすくなる。また、容器の上下左右にミシン目を設け、着火前に小窓のように開けることにより、空気の通りがよくなり、効率よく強い火力で燃やすことができる。
【0016】
容器に用いる可燃性のシートの材質としては、紙、木綿布、麻布のようなセルロース系のものが、燃焼後の灰が少ないことから好適であり、用いる可燃性シートと稲藁は燃焼性を確保するために、十分に乾燥させる必要がある。その乾燥の度合いは、含水率が10%以下であることが望ましい。稲藁自体は、105度の熱風で状態を見ながら約2時間乾燥することにより、含水率を10%以下にする他、細菌やダニなどの害虫やその卵を薬剤を用いることなく死滅させることが可能である。
【0017】
本発明に係る燃料は、前記のように袋状または箱状の可燃性シートからなる容器に、稲藁を層状に充填してあるので、次のような特長を有し、藁焼きによる調理が手軽に行える。(1)直接藁に手を触れることがないので、着衣や自動車の内部が汚れることがない。(2)容器ごと燃焼し、灰が極めて少ないのでゴミが生じない。(3)計量が不要で、毎回安定した炎量が得られる。(4)内部を決まった順番で燃焼することが可能で、必要な分だけを使用できる。(5)燃焼時に藁が飛散し難い。(6)着火が容易で、炭火の上に置くだけで、底部から着火できる、(6)運搬・取り扱いが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】 本発明の燃料の外観の一例を示す斜視図
図2】 本発明の燃料の容器内部の構成の一例を模式的に示した斜視図
図3】 本発明の燃料の容器外部の構成の一例を模式的に示した斜視図
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に本発明を実施するための形態について、図を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、本発明の燃料1の外観の一例を示す図である。この例は、矩形の紙を、断面が長方形の筒状に折り畳み、内部に稲藁を充填した後に、両端の開口部を折り畳んで閉塞したものである。
【0021】
図2は、図1に示した燃料の容器内部の構成の一例を、模式的に示した斜視図である。ここに示したように、四隅には、複数の茎元を束ねた柱状部材2a、2b、2c、2dが入れている。
【0022】
図2に示したように、本発明に係る燃料は、図における縦方向で3層に分割され、下段には、稲藁の葉片や葉鞘が充填され、中断には、稲藁の穂先と茎元の混合物が充填され、上段には、稲藁の穂先が充填されているので、着火が容易で、一定の炎の量が得られる燃料を提供できる。
【0023】
また、図3に示したように、本発明に係る燃料は、着火前に上下左右のミシン目から開封することにより、空気の通りがよくなり、強い炎量でより確実な燃焼を提供できる。
【0024】
以上に、説明したように、本発明によれば、稲藁を利用した、屋外での調理、特に藁焼きに適した燃料を提供できる。なお、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の分野における通常の知識を有する者であれば想到し得る、各種変形、修正を含む、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0025】
1・・・燃料 2a,2b,2c,2d・・・柱状部材
3・・・下段 4・・・中段 5・・・上段
6a,6b,6c,6d・・・開封ミシン目
図1
図2
図3