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  • 特開-ワーク搬送用ハンド 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005352
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ワーク搬送用ハンド
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20240110BHJP
   B25J 15/06 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H01L21/68 B
B25J15/06 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105506
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(72)【発明者】
【氏名】佐渡 大介
【テーマコード(参考)】
3C707
5F131
【Fターム(参考)】
3C707AS05
3C707AS24
3C707DS02
3C707DS05
3C707ES04
3C707ES17
3C707FS01
3C707FT02
3C707FT11
3C707FU01
3C707FU05
3C707HS14
5F131AA02
5F131CA34
5F131CA42
5F131DB02
5F131DB22
5F131DB54
5F131DB57
5F131DB72
5F131DB86
5F131KA12
5F131KA52
5F131KA72
5F131KB32
(57)【要約】
【課題】真空吸着式のハンドを多段式に構成する場合において、簡易な構成により、いずれかのハンドにワークが載置されない状況が生じても、他のハンドがワークを適正に吸着保持できるようにする。
【解決手段】上下方向に所定間隔で並ぶ複数のハンド体2a~2fと、複数のハンド体2a~2fをそれらの基端において支持する支持ベース3と、を備えるワーク搬送用ハンドA1であって、各ハンド体2a~2fは、それらの上面に開口する1または複数の吸着パッド21を有しており、各ハンド体2a~2fの吸着パッド21は、ハンド体2a~2fごとに設けられた複数の通気路41を介して真空源(5)に連絡させられており、複数の通気路41には、それぞれ、吸着パッド21が開放状態にあるとき、真空源(5)の負圧により空気流量を絞る負圧作動弁6が設けられている。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に所定間隔で並ぶ複数のハンド体と、上記複数のハンド体をそれらの基端において支持する支持ベースと、を備えるワーク搬送用ハンドであって、
上記各ハンド体は、それらの上面に開口する1または複数の吸着パッドを有しており、
上記各ハンド体の上記吸着パッドは、上記ハンド体ごとに設けられた複数の通気路を介して真空源に連絡させられており、
上記複数の通気路には、それぞれ、上記吸着パッドが開放状態にあるとき、上記真空源の負圧により空気流量を絞る負圧作動弁が設けられていることを特徴とする、ワーク搬送用ハンド。
【請求項2】
上記支持ベースは、底板を有しており、上記底板には、直立状の真空源連絡ポートと、当該真空源連絡ポートを取り囲んで環状に配置された、上記複数のハンド体の数と対応する数の上記負圧作動弁と、が設けられており、上記複数の通気路は、上記負圧作動弁を介して上記真空源連絡ポートに共通に連絡させられている、請求項1に記載のワーク搬送用ハンド。
【請求項3】
上記各ハンド体の上記吸着パッドから上記各負圧作動弁までの連絡は、上記各ハンド体の内部に形成した通気路と、当該ハンド体の通気路と上記各負圧作動弁とをつなぐ、チューブからなる通気路とにより行われている、請求項2に記載のワーク搬送用ハンド。
【請求項4】
上記各負圧作動弁と上記真空源連絡ポートとの間の連絡は、上記底板に放射状に形成した通気路により行われている、請求項2または3に記載のワーク搬送用ハンド。
【請求項5】
上記複数のハンド体には、それぞれ、ワークが載置されているかどうかを検出するセンサが設けられている、請求項1ないし4のいずれかに記載のワーク搬送用ハンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板や半導体ウエハ等の薄板状のワークを搬送するために用いられるハンドのうち、1度に複数枚のワークを搬送することができるように構成されたワーク搬送用ハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のワーク搬送用ハンドを備えた搬送ロボットは、ワークをハンド上に保持して搬送する。このような搬送ロボットは、例えば、複数枚のワークが多段式に収納されたカセットからワークを取り出してこのワークを処理装置に搬送したり、処理済のワークをカセットに戻したりする場合に用いられる。
【0003】
ハンド上にワークを保持する方式として、例えば特許文献1に示されているように、ハンドの上面に設けた吸着パッドに真空圧を作用させる、吸着式のものがある。
【0004】
一方、例えば、複数枚のワークを一度にカセットから取り出したり、カセットに戻したりて処理効率を上げるために、特許文献2に示されているように、ハンドを多段式に構成する場合がある。
【0005】
ここで吸着式のハンドを多段式に構成する場合において、すべてのハンドの吸着パッドを共通の真空源に連携させると、いずれかのハンドにワークが正しく載置できない状況が生じたとき、当該ハンドの吸着パッドから空気が吸い込まれる状態が続き、ワークが載置されたハンドの吸着パッドに真空圧が適正に作用しなくなり、ワークを適正に吸着保持できなくなるという問題が生じる。
【0006】
この問題を解決するには、例えば、各ハンドにワークが載置されているか否かを検出するセンサを設けるとともに、各ハンドの吸着パッドに通じる空気経路にそれぞれ電磁弁を設け、ワークが載置されていないハンドの吸着パッドに通じる空気経路の電磁弁を「閉」とするという方策が考えられる。
【0007】
しかしながらこの方策は、装置および制御の複雑化、高コスト化を招くため、採用しづらい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2020-161585号公報
【特許文献2】特開2021-158243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、真空吸着式のハンドを多段式に構成する場合において、簡易な構成により、いずれかのハンドにワークが載置されない状況が生じても、他のハンドがワークを適正に吸着保持できるようにすることをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を採用した。
【0011】
すなわち、本発明によって提供されるワーク搬送用ハンドは、上下方向に所定間隔で並ぶ複数のハンド体と、上記複数のハンド体をそれらの基端において支持する支持ベースと、を備えるワーク搬送用ハンドであって、上記各ハンド体は、それらの上面に開口する1または複数の吸着パッドを有しており、上記各ハンド体の上記吸着パッドは、上記ハンド体ごとに設けられた複数の通気路を介して真空源に連絡させられており、上記複数の通気路には、それぞれ、上記吸着パッドが開放状態にあるとき、上記真空源の負圧により空気流量を絞る負圧作動弁が設けられていることを特徴とする。
【0012】
好ましい実施の形態では、上記支持ベースは、底板を有しており、上記底板には、直立状の真空源連絡ポートと、当該真空源連絡ポートを取り囲んで環状に配置された、上記複数のハンド体の数と対応する数の上記負圧作動弁と、が設けられており、上記複数の通気路は、上記負圧作動弁を介して上記真空源連絡ポートに共通に連絡させられている。
【0013】
好ましい実施の形態では、上記各ハンド体の上記吸着パッドから上記各負圧作動弁までの連絡は、上記各ハンド体の内部に形成した通気路と、当該ハンド体の通気路と上記各負圧作動弁とをつなぐ、チューブからなる通気路とにより行われている。
【0014】
好ましい実施の形態では、上記各負圧作動弁と上記真空源連絡ポートとの間の連絡は、上記底板に放射状に形成した通気路により行われている。
【0015】
好ましい実施の形態では、上記複数のハンド体には、それぞれ、ワークが載置されているかどうかを検出するセンサが設けられている。
【発明の効果】
【0016】
複数のハンド体のいずれかにワークが載置されない状態が生じたとき、当該ハンド体の吸着パッドが開放状態となり、当該ハンド体に対応する通気路の空気流量は負圧作動弁の作用により自動的に絞られる。したがって、当該ハンド体の吸着パッドから空気が真空源に向かって流れることによる負圧低下がなく、すなわち、当該ハンド体以外のワークが適切に載置されたハンド体の吸着パッドによる吸着力が減じられることはなく、ワークの適正な保持が維持される。
【0017】
このように、上記構成のワーク搬送用ハンドによれば、真空吸着式のハンド体を多段式に構成する場合において、簡易な構成により、いずれかのハンド体にワークが載置されない状況が生じても、他のハンド体がワークを適正に吸着保持できるようになる。
【0018】
本発明のその他の特徴および利点は、図面を参照して以下に行う詳細な説明から、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るワーク搬送用ハンドの側面図である。
図2図1に示すワーク搬送用ハンドの平面図である。
図3図2のIII-III線に沿う拡大断面図である。
図4】支持ベースの天井板を取り除いた状態で示す上記ワーク搬送用ハンドの要部平面図である。
図5図4のV-V線に沿う断面図である。
図6】負圧作動弁の具体的構成と作用を示す縦断面図である。
図7】負圧作動弁の具体的構成と作用を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0021】
ワーク搬送用ハンドA1は、ロボット(図示略)により所定の3次元空間を移動・姿勢制御されるものであり、図1に示されているように、複数のハンド体2a~2fと、複数のハンド体2a~2fをそれらの基端において支持する支持ベース3とを備える。実施形態においては、6枚の同一形態のハンド体2a~2fが上下方向に並んで配置されている。支持ベース3はまた、底板31と天井板33とを有している。
【0022】
ハンド体2a~2fは、軽金属や硬質の樹脂でできた板状をしており、図2に示されるように、先端側は二股ホーク状をしている。この二股ホーク状の先端部は半導体ウエハなどの薄板状のワークWを上面に載置して吸着保持する部分であり、この部分に3つの吸着パッド21が設けられている。
【0023】
吸着パッド21は、図3に詳示するように、気道211を有する筒部212の上部に上に向けて拡開するスカート部213を有するゴム製の部材であり、ハンド体2a~2fの上面に形成した保持孔22に筒部212を嵌合させるようにして設けられている。
【0024】
吸着パッド21の気道211は、通気路4(41,321,34,313,314)により後記する負圧作動弁6ないし真空源連絡ポート5に連絡させられる。以下、具体的に説明する。
【0025】
ハンド体2a~2fに形成される通気路41は、図2図3に示すように、ハンド体2a~2fの下面に凹溝23を設けるとともに、この凹溝23をアルミニウムなどのフィルム24で覆うことにより形成されている。
【0026】
最下位のハンド体2aの基端側は、図5に示すように、支持ベース3の底板31とスペーサブロック32との間に挟持されるようにして、下から2番目以降それより上位の4枚のハンド体2b~2eの基端側は、上下のスペーサブロック32に挟持されるようにして、最上位のハンド体2fの基端側は、スペーサブロック32と押さえ板35に挟持されるようにして、それぞれ支持ベース3に支持されている。
【0027】
上位5枚のハンド体2b~2fの通気路41は、当該ハンド体2b~2fの下位に接するスペーサブロック32に形成された通気路321を介して当該スペーサブロック32の後端の通気ポート322にそれぞれ連絡させられており、最下位のハンド体2aの通気路41は、支持ベース3の底板31に形成された通気路313を介して、底板31に直立状に設けた通気ポート323に連絡させられている。通気路313は、底板31の底面に凹溝313aを形成するとともに、この凹溝313aをアルミニウム等のシート313bで覆うことによって形成することができる。
【0028】
図4および図5に表れているように、底板31には、直立状の真空源連絡ポート5と、当該真空源連絡ポート5を取り囲んで環状に直立配置された、上記6枚のハンド体2b~2fと対応した6つの負圧作動弁6とが設けられている。
【0029】
各ハンド体2a~2fの通気路41に対応する上記6つの通気ポート322,323は、チューブからなる通気路34を介して上記6つの負圧作動弁6の上端に連絡させられており、6つの負圧作動弁6の下端は、底板31に形成された放射状の通気路314を介して真空源連絡ポート5に連絡させられている。真空源連絡ポート5には、チューブ51が接続され、このチューブ51は、図示しないロボットのアーム内を配策するなどした後、開閉弁を介するなどして真空ポンプなどの真空源(図示略)に接続される。通気路314は、底板31の底面に凹溝314aを形成するとともに、この凹溝314aをアルミニウム等のシート314bで覆うことによって形成することができる。
【0030】
図6および図7に、各負圧作動弁6の具体的構成例を示す。
【0031】
負圧作動弁6は、真空源による負圧の作用時に、吸着パッド21がワークWを吸着して閉塞された状態(吸着状態)と、吸着パッド21がワークWを吸着せずに開放する状態(非吸着状態)とで作動状態が切り換わる作動弁である。
【0032】
図6および図7に示されるように、負圧作動弁6は、たとえばハウジング61、可動体62、シール材63、および付勢部材64を備えて構成される。ハウジング61は、可動体62を収容しており、真空側通路611およびワーク側通路612を有する。真空側通路611は、支持ベース3の底板31の通気路314に接続されており、真空源連絡ポート5を介して図示しない真空源に連通させられる。ワーク側通路612は、チューブ34に接続されており、スペーサブロック32の通気路321ないしハンド体2a~2fの通気路41を介して吸着パッド21に連通させられる。
【0033】
可動体62は、ハウジング61の内部空間に収容されており、図中上下方向にスライド移動可能とされている。付勢部材64は、ハウジング61と可動体62間に介在している。付勢部材64は、可動体62に図中上方への付勢力を与えるものであり、たとえば圧縮コイルばねである。シール材63は、可動体62の下端部近傍に装着されており、たとえばOリングである。
【0034】
可動体62は、概略円筒状とされており、通気孔621および開口622を有する。通気孔621は、可動体62下端部に形成された小径の絞り孔である。開口622は、可動体62の周壁に形成されたエア流路である。
【0035】
真空源による負圧の作用時において、ハンド体2a~2fにワークWが載置されず、吸着パッド21が開放する非吸着状態にあると、真空圧(負圧)の吸引力によって小径の通気孔621をエアが流れ、可動体62が付勢部材64の付勢力に抗して図6に示すように図中下方に移動する。ここで、シール材63がハウジング61に密着し、開口622側の流路は閉じている。可動体62は、通気孔621を流れるエア圧によって図中下方への押圧力が作用し、シール材63がハウジング61に密着する状態が維持される。このとき、負圧作動弁6は略閉じた状態である。通気孔621は小径の絞り孔であるので、負圧作動弁6が略閉じた状態にあるときに吸着パッド21側の真空圧の低下が抑制される。
【0036】
真空源による負圧の作用時において、ハンド体2a~2fにワークWが適正に載置され、ワークWが吸着パッド21に吸着されると、通気路41からの吸込流量が減少ないし無くなる。そうすると、図7に示すように、付勢部材64による付勢力によって可動体62が図中上方に押し付けられ、シール材63がハウジング61から離れる。このとき、開口622を介して真空側通路611とワーク側通路612とが連通しており、負圧作動弁6は開いた状態になる。
【0037】
本実施形態においては、各ハンド体2a~2fに、ワークWが載置されているかどうかを検出するセンサ7が設けられている。このセンサ7は、レーザ発光部と受光部とを備える光学式のものを採用することができる。本実施形態において、各ハンド体2a~2fに設けられたセンサ7に対応する6つのレーザ発振装置71が支持ベース3の内部に設置されている。
【0038】
次に、上記構成のワーク搬送用ハンドA1の作用について説明する。
【0039】
6枚のハンド体2a~2fのうちのいずれかにワークWが適正に載置されない状態が生じたとき、当該ハンド体2a~2fの吸着パッド21が開放状態となるが、上記したように、当該開放状態の吸着パッド21に通じる負圧作動弁6が負圧源の負圧により自動的に略閉じた状態となるため、ワークWが適正に載置された他のハンド体2a~2fの吸着パッド21に通じる系の負圧が維持され、当該他のハンド体2a~2fによるワークWの適正な吸着保持状態が維持される。
【0040】
このように、負圧作動弁6は、吸着パッド21を備えるワーク搬送用ハンドA1が本来的に備える真空源の負圧を動力として作動するため、簡便な構成により、多段式のハンド体2a~2fにおいていずれかのハンド体にワークが載置されていない状況においても、他のハンド体によるワークWの吸着保持状態を維持することができる。
【0041】
実施形態では、支持ベースの底板31に環状に配置した複数の負圧作動弁6とこれら負圧作動弁6の配置中心に設けた真空源連絡ポート5との間の連絡を底板31に形成した放射状の通気路314により行っているので、複数の負圧作動弁6と真空源連絡ポート5とを支持ベース3内に効率よく配置することができる。
【0042】
負圧作動弁6の作動がハンド体2a~2f上のワークWの不存在を知らしめるものではないが、本実施形態では、各ハンド体2a~2fにワークWが載置されているかどうかを検出するセンサ7が設けられているため、ワーク搬送の不具合を検知して適正な対処を行うことができる。
【0043】
もちろん、本発明な上記した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した事項の範囲内でのあらゆる設計変更は、すべて本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
W:ワーク、A1:ワーク搬送用ハンド、2a~2f:ハンド体、21:吸着パッド、3:支持ベース、31:底板、34:チューブ(通気路)、4:通気路、41:通気路(ハンド体の)、5:真空源連絡ポート、6:負圧作動弁、7:センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7