(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053525
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】ヤスリ工具
(51)【国際特許分類】
B27G 17/06 20060101AFI20240408BHJP
B23D 71/04 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
B27G17/06
B23D71/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023048929
(22)【出願日】2023-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2022168695
(32)【優先日】2022-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】317000821
【氏名又は名称】株式会社カスタム・クール・センター
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 政晴
【テーマコード(参考)】
3C050
【Fターム(参考)】
3C050CA00
(57)【要約】
【課題】 刃先を順方向に向けた順方向ヤスリ目と、逆方向に向けた逆方向ヤスリ目を交互に配列することにより、目詰まりがし難く、しかも、両方向に切削可能にすることができるヤスリ工具を提供する。
【解決手段】 ヤスリ工具1は、金属板2の表面に多数のヤスリ目が形成され、ヤスリ目1は、所定の高さを有する鋸歯状に突出形成するとともに、ヤスリ工具1の移動方向に対して、刃先を順方向に向けた順方向ヤスリ目3aと、逆方向に向けた逆方向ヤスリ目3bを交互かつ平行に配列する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板の表面に多数のヤスリ目が形成されたヤスリ工具であって、
前記ヤスリ目は、所定の高さを有する鋸歯状に突出形成するとともに、前記ヤスリ工具の移動方向に対して、刃先を順方向に向けた順方向ヤスリ目と、逆方向に向けた逆方向ヤスリ目を平行かつ交互に配列したことを特徴とするヤスリ工具。
【請求項2】
前記ヤスリ目の前記順方向ヤスリ目と前記逆方向ヤスリ目の高さを異ならせた請求項1に記載のヤスリ工具。
【請求項3】
前記ヤスリ目の各前記順方向ヤスリ目と各前記逆方向ヤスリ目の間隔、及び、前記順方向ヤスリ目と前記逆方向ヤスリ目の間隔を互いに離間させた請求項1もしくは請求項2に記載のヤスリ工具。
【請求項4】
前記ヤスリ目の前記順方向ヤスリ目と前記逆方向ヤスリ目を前記ヤスリ工具の移動方向に対して傾斜させた請求項1に記載のヤスリ工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数のヤスリ目が形成されたヤスリ工具に関し、特に、木材、樹脂等の軟質材のヤスリ掛けに好適なヤスリ工具に関する。
【背景技術】
【0002】
金属や木などの被加工物の表面を削るときや角を取るために、従来からヤスリ工具が使用されている。ヤスリ工具は、一般的に、例えば、帯鋼板これらの等で形成した基体の表面に、直線上又は円弧状の細かいヤスリ目を多数形成している。これらのヤスリ工具は、殆どが金属の被加工物を削るために種々のヤスリ工具が実用に供されている。一方、木の被加工物を削るためのヤスリ工具としては、例えば、実開昭57-181524号公報(特許文献1)に示されるように、ヤスリ本体の表面及び裏面の一方向に、傾斜した斜線状のヤスリ目を設けた木工用目立てヤスリが提案されている。また、木工用のヤスリ工具のヤスリ目としては、斜線状のヤスリ目の他に、複目や鬼目といったヤスリ目が一般的に使用されている。
【0003】
例えば、上記特許文献1に開示されているヤスリ工具など、この種のヤスリ工具は、ヤスリ目が一方向に向けていることから、切削、研磨方向は一方向と定められ、先の方向に押したときに削れ、手前方向に引いたときは空滑りとなる。そこで、特開平4-152018号公報(特許文献2)には、ヤスリ目を相互に交差する複目に形成するとともに、交差する一方のヤスリ目の刃先を相互に反対方向に指向させるように形成し、ヤスリ工具を押した場合と引いた場合の双方で被加工物を研磨することができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭57-181524号公報
【特許文献2】特開平4-152018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に示されるように、一般に使用されるヤスリ工具は、ヤスリ目の向きを一方向に向けた鋸歯状に形成していることから、切削、研磨方向が一方向と定められているため、作業効率が低下する問題がある。特に、被加工物が木材や樹脂の場合は、素材が軟質であり、容易に切削することが可能なことから、一方向のみでは作業性が半減する。一方、特許文献2に示されるヤスリ工具は、ヤスリ目の刃先を相互に反対方向に指向させるように形成し、双方向で切削可能に構成されている。ところが、ヤスリ目が相互に交差していることから、刃先が小さな菱形の凹陥部が形成されるため、切り粉が凹陥部に埋って目詰まりするため、以後の切削が困難になる問題が生ずる。このため、ヤスリ掛けの作業性を著しく低下させる問題があった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、刃先を順方向に向けた順方向ヤスリ目と、逆方向に向けた逆方向ヤスリ目を交互に配列することにより、目詰まりがし難く、しかも、両方向に切削可能にすることができるヤスリ工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明によるヤスリ工具は、金属板の表面に多数のヤスリ目が形成され、前記ヤスリ目は、所定の高さを有する鋸歯状に突出形成するとともに、前記ヤスリ工具の移動方向に対して、刃先を順方向に向けた順方向ヤスリ目と、逆方向に向けた逆方向ヤスリ目を交互かつ平行に配列したことを要旨としている。
【0008】
また、前記ヤスリ目の前記順方向ヤスリ目と前記逆方向ヤスリ目の高さを異ならせることが望ましい。
【0009】
さらに、前記ヤスリ目の各前記順方向ヤスリ目と各前記逆方向ヤスリ目の間隔、及び、前記順方向ヤスリ目と前記逆方向ヤスリ目の間隔を互いに離間させている。
【0010】
さらにまた、前記ヤスリ目の各前記順方向ヤスリ目と前記逆方向ヤスリ目を前記ヤスリ工具移動方向に対して傾斜させることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、金属板の表面に形成した多数のヤスリ目を、所定の高さを有する鋸歯状に突出形成し、ヤスリ工具の移動方向に対して、刃先を順方向に向けた順方向ヤスリ目と、逆方向に向けた逆方向ヤスリ目を交互に配列することにより、ヤスリ工具を押した場合と引いた場合の双方で被加工物を切削することができるので、ヤスリ掛けの作業性を向上させることができる。また、順方向ヤスリ目と逆方向ヤスリ目を平行かつ交互に配列しているので、削り屑がヤスリ目の間を通り左右に排出され易くなり、目詰まりが生じ難くなる。
【0012】
また、ヤスリ目の順方向ヤスリ目と逆方向ヤスリ目の高さを異ならせることにより、ヤスリ工具を順方向の移動方向に移動させたときには、高さの大きいヤスリ目により荒削りができ、逆方向に移動させたときには、高さの小さいヤスリ目により仕上げ削りができるので、一つのヤスリ工具により、2通りのヤスリ掛けができる。
【0013】
さらに、ヤスリ目の各順方向ヤスリ目と各逆方向ヤスリ目の間隔、及び、順方向ヤスリ目と逆方向ヤスリ目の間隔を互いに離間させることにより、被加工物を切削したときに生ずる削り屑が離間したヤスリ目の間を通り左右に排出され易くなり、目詰まりを生じ難くさせることができる。
【0014】
さらにまた、ヤスリ目の順方向ヤスリ目と逆方向ヤスリ目を移動方向に対して傾斜させることにより、特に、木材を切削するとき、ヤスリ目が木目に対して傾斜しているので、木目による引っ掛かりが防止されるので、小さな力で円滑に切削することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】 本発明によるヤスリ工具を示す斜視図である。
【
図2】 ヤスリ工具に形成されたヤスリ目を示す一部拡大斜視図である。
【
図3】 ヤスリ工具の順方向ヤスリ目と逆方向ヤスリ目を示す断面図である。
【
図4】 (A)(B)(C)は、ヤスリ目の形成工程を示す工程説明図である。
【
図5】 (A)(B)は、ヤスリ工具により被加工物を切削する状態を示した説明図である。
【
図6】 本発明によるヤスリ工具の他の実施例を示す一部断面図である。
【
図7】 順方向ヤスリ目と逆方向ヤスリ目を傾斜させたヤスリ工具を示す平面図である。
【
図8】 傾斜させた順方向ヤスリ目と逆方向ヤスリ目を示す斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
ヤスリ工具は、金属板の表面に多数のヤスリ目が形成され、このヤスリ目は、所定の高さを有する鋸歯状に突出形成するとともに、ヤスリ工具の移動方向に対して、刃先を順方向に向けた順方向ヤスリ目と、逆方向に向けた逆方向ヤスリ目を交互かつ平行に配列している。
【0017】
以下、本発明によるヤスリ工具について、図面により詳細に説明する。
図1は、ヤスリ工具1を示し、このヤスリ工具1に使用される金属板2は、ステンレス、鋼等の高い硬度を有し、切削加工が可能な金属材が使用される。この金属板2は、一般的なヤスリ工具と同様の長方形に形成され、板厚は、0.5mmから2.0mmとしている。さらに、ヤスリ工具1の長手方向の一端側には、一般的なヤスリ工具と同様の形状とした、二点鎖線で示す把持部1aが装着されている。なお、把持部1aは、ヤスリ工具1自体を把持可能な形状とした場合には装着しなくても良い。そして、金属板2の一方の表面には、多数のヤスリ目3が形成されている。
【0018】
ヤスリ目3は、
図2、
図3に示すように、金属板2の表面に、ヤスリ工具1の移動方向に対して、刃先を順方向Fに向けた順方向ヤスリ目3aと、逆方向Rに向けた逆方向ヤスリ目3bを交互かつ平行に配列している。これらの順方向ヤスリ目3aと逆方向ヤスリ目3bは、ヤスリ工具1の移動方向と直行するように形成されている。
【0019】
そして、
図3に示すように、順方向ヤスリ目3aの高さH1は、金属板2表面から概ね0.2mm乃至0.5mmの適宜の高さに形成されている。この順方向ヤスリ目3aは鋸歯状に形成され、刃先が図示左方に向けた順方向Fに向けられている。一方、逆方向ヤスリ目3bは、順方向ヤスリ目3aの高さH1よりも低い高さH2に形成され、金属板2表面から概ね0.1mm乃至0.4mmの適宜の高さに形成されている。この逆方向ヤスリ目3bも鋸歯状に形成され、刃先が図示右方の逆方向Rに向けられている。
【0020】
さらに、順方向ヤスリ目3aと隣接する逆方向ヤスリ目3bは、寸法D1の間隔で離間させている。また、各順方向ヤスリ目3a又は各逆方向ヤスリ目3bの間は、ピッチPの間隔で離間させている。なお、図示のように、順方向ヤスリ目3aと隣接する逆方向ヤスリ目3bを小さい間隔D2により離間させた組として形成しているが、これらの順方向ヤスリ目3aと逆方向ヤスリ目3bの間隔は、等間隔又は不等間隔のいずれでも良い。
【0021】
図4は、ヤスリ工具1の順方向ヤスリ目3a及び隣接する逆方向ヤスリ目3bを形成する工程を示している。ヤスリ工具1の母材となる金属板2は、ステンレス、鋼等の硬度が高く、切削可能な金属材から選択される。金属板2の板厚は、1mmから3.0mmの適宜の板厚としている。金属板2は、図示しない加工装置に載置される。その後、
図4に示すように、掘り起こし工具5により、順方向ヤスリ目3aを等間隔に起立形成する。
【0022】
掘り起こし工具5は、底面側の刃先に移動方向と直角な刃部5aが形成されていて、その幅は、角質削り具1を形成する順方向ヤスリ目3aの幅に設定されている。また、この掘り起こし工具5は、金属材1の一方面に対して後端側が高くなるように所定の角度θ1で傾斜させて図示しない駆動装置に取り付けられる。この傾斜角度θ1は、概ね10度から60度に設定される。また、掘り起こし工具5の摺接面5bと移動方向との角度θ2は概ね30度から80度に設定されている。
【0023】
まず、
図4(A)に示すように、掘り起こし工具5の刃部5aを金属板2の順方向ヤスリ目3aを形成する位置に当接させた後、掘り起こし工具5を駆動装置により所定の角度θ1で矢示の方向で金属板2に侵入させると、掘り起こし工具5の刃部5aが金属板2の一方面に食い込むことにより、順方向ヤスリ目3aが起立形成される。この順方向ヤスリ目3aの高さH1は、0.1mm乃至0.5mm程度が望ましい。
【0024】
次いで、掘り起こし工具5を原点位置まで復帰させるとともに、次の順方向ヤスリ目3aを起立形成する位置まで金属板2を前進させ、その位置に掘り起こし工具5を当接させた後、
図4(B)に示すように、掘り起こし工具5を駆動装置により所定の角度θ1で矢示の方向で金属板2に挿入させると、掘り起こし工具5の刃部5aが金属板2の一方面に食い込むことにより、
図4(A)によって形成された順方向ヤスリ目3aよりも、
図3に示したピッチPの寸法に離間した位置に、次の順方向ヤスリ目3aが起立形成される。このように形成される2つの順方向ヤスリ目3aは、概ね3mm~10mm程度の等間隔とする。以後、掘り起こし工具5の原点復帰と金属板2への前進を繰り返すことにより、順次所定数の順方向ヤスリ目3aを平行に形成する。
【0025】
その後、多数の順方向ヤスリ目3aが起立形成された金属板2を180度反転する。そして、上述した工程によって形成された順方向ヤスリ目3aの間に、
図4(C)に示すように、逆方向ヤスリ目3bを起立形成する。この逆方向ヤスリ目3bを起立形成する工程は、前述した
図4(A)(B)による工程と同様であるが、前述した順方向ヤスリ目3aと異なる点は、高さと向きである。
【0026】
すなわち、逆方向ヤスリ目3bを起立形成する位置に、掘り起こし工具5を当接させた後、
図4(C)に示すように、掘り起こし工具5を駆動装置により所定の角度θ1で矢示の方向で金属板2に挿入させると、掘り起こし工具5の刃部5aが金属板2の表面に食い込み、
図4(A)によって形成された順方向ヤスリ目3aの間に、逆方向ヤスリ目3bが起立形成される。この逆方向ヤスリ目3bは、金属板2表面から概ね0.1mm乃至0.4mmの所定の高さH2に形成される、また、順方向ヤスリ目3bの刃先の向きは、順方向ヤスリ目3aと反対の逆方向に向いている。以後、掘り起こし工具5の原点復帰と金属板2の前進を、逆方向ヤスリ目3bを形成すべき長さに達するまで繰り返す。
【0027】
以上のように形成された多数の順方向ヤスリ目3aと、刃先の向きが異なる多数の逆方向ヤスリ目3bは、各々の断面が略鋸歯状に形成され、両ヤスリ目3a、3bは、交互かつ平行に配列される。また、図示のように、金属板2の表面に対して、掘り起こし工具5の摺接面5bに摺接した側面の傾斜角度が鈍角に形成され、他方の側面の傾斜角度が鋭角に形成される。
【0028】
このように形成されたヤスリ工具1によりヤスリ掛けを行うときは、荒削りと仕上げ削りの2通りの使い方ができる。例えば、被加工物である木材6を荒削りにより切削する場合には、
図5(A)に示すように、ヤスリ工具1の順方向ヤスリ目3aの刃先が順方向となるように木材6に押し当てながら、矢示の進行方向に移動する。このとき、順方向ヤスリ目3aの刃先が鋭角に形成されているので、木材6に順方向ヤスリ目3aが食い込むことより、大きく切削することができる。そして、順方向ヤスリ目3aによって生ずる削り屑は、離間した順方向ヤスリ目3aと離間した逆方向ヤスリ目3bの間に押し出されるので、ヤスリ工具1の左右に排出される。この結果、目詰まりを生じ難くさせることができる。このように、順方向ヤスリ目3aによって木材6を切削するとき、逆方向ヤスリ目3bは、刃先が逆方向に向いているので、木材6は切削されない。このように、木材6は、順次進行する後続の多数の順方向ヤスリ目3aによって、二点鎖線で示すように切削される。
【0029】
また、木材6を仕上げ削りするときは、ヤスリ工具1を
図5(B)に示すように、ヤスリ工具1の逆方向ヤスリ目3bの刃先が逆方向となるように木材6に押し当てながら、矢示の逆方向に移動する。逆方向ヤスリ目3bは、順方向ヤスリ目3aよりも高さH2が低く形成されていることから、木材6は小さく切削される。逆方向ヤスリ目3bによって切削した直後には順方向ヤスリ目3aが到来する。このとき、順方向ヤスリ目3aの刃先は逆方向となっているので、木材6には順方向ヤスリ目3aの斜面部分が押圧される。この結果、逆方向ヤスリ目3bによって小さく切削した木材6の表面が滑らかに形成される。このように、ヤスリ工具1を逆方向に移動することにより、木材6の表面を小さく切削するとともに、順方向ヤスリ目3aによって木材6の表面が円滑に形成される。
【0030】
このように、被加工物の木材6を荒削りによりヤスリ掛けを行う場合には、ヤスリ工具1を順方向に移動し、仕上げ削りを行う場合には、ヤスリ工具1を逆方向に移動することにより、2通りのヤスリ加工ができる。一方、ヤスリ工具1を順方向と逆方向の往復移動した場合には、順方向ヤスリ目3aによる荒削りと、逆方向ヤスリ目3bによる仕上げ削りが交互に繰り返され、短時間に木材6を切削することができる。そして、最終的には、
図5(B)に示す仕上げ加工を行うことにより、表面を美麗に仕上げることができる。
【0031】
図6は、本発明によるヤスリ工具の他の実施例を示し、金属板2の表面に起立形成した多数の順方向ヤスリ目3aの間に、刃先の向きを順方向ヤスリ目3aと反対の方向に向けた逆方向ヤスリ目3bを突出形成した例を示している。そして、逆方向ヤスリ目3bの高さH1は、順方向ヤスリ目3aの高さH1と同じに形成している。このように、順方向ヤスリ目3aと逆方向ヤスリ目3bの高さを同じに形成したヤスリ工具を使用する場合には、順方向と逆方向に往復移動させたときも、例えば、前述した木材6を切削することができるので、ほぼ2倍の効率で切削することが可能となる。
【0032】
図7、
図8は、本発明によるヤスリ工具のさらに他の実施例を示し、順方向ヤスリ3a目と逆方向ヤスリ目3bをヤスリ工具の移動方向に対して傾斜させている。前述したヤスリ工具1は、ヤスリ工具1の順方向ヤスリ目3a及び隣接する逆方向ヤスリ目3bを移動方向と直行するように形成している。この場合、被加工物である木材6の繊維の方向と順方向ヤスリ目3aまたは逆方向ヤスリ目3bが平行になるように移動するので、木材6の繊維に引っ掛かることがあり、このため大きな力が必要となる。
【0033】
そこで、
図8に示すヤスリ工具1は、順方向ヤスリ3a目と逆方向ヤスリ目3bを移動方向に対して、所定の傾斜角θで傾斜させている。この傾斜角度θは、被加工物が前述した木材の場合、5度から30度が好ましい。このように順方向ヤスリ3a目と逆方向ヤスリ目3bを傾斜させることにより、木材6の繊維の方向に対して順方向ヤスリ3a目と逆方向ヤスリ目3bを傾斜状態で切削するので、繊維に引っ掛かることなく軽い力で木材をヤスリ掛けすることが可能となる。なお、
図7に示したヤスリ工具1は、ヤスリ目3を形成しない金属板2を把持部としているが、この把持部は、前述したヤスリ工具1と同様の形状にしても良い。
【0034】
以上説明した実施例においては、ヤスリ工具1を用いてヤスリ掛けを行う被加工物として、木材6を例示したが、木材6の他に好適な被加工物として樹脂等の軟質材を被加工物とすることができる。これらの被加工物は、ヤスリ工具1よりも硬度が小さく、切削可能な素材であれば、例えば、石膏ボード、プラスチック類など、種々の素材の被加工物に使用することができる。
【0035】
また、上述したヤスリ工具1は、平坦な金属板2にヤスリ目3を形成しているが、多様な形状の被加工物、或いは、切削する部位に対応させるために、少なくともヤスリ目3を形成した金属板2を円弧に屈曲して蒲鉾状に形成すること、断面略コ字状に屈曲形成した略角柱状に形成すること、或いは、所定角度に折り曲げて略略三角状に形成するなど、各種の形状に変形させることも可能である。また、ヤスリ目3は、金属板2の両面に形成することも可能である。
【0036】
以上説明した本発明は、これら実施例に限定されることなく本発明を逸脱しない範囲において種々変更できる。前述した実施例においては、ヤスリ工具の形状として長方形を例示したが、四角形、円形等任意の形状に形成しても良い。また、順方向ヤスリ目と逆方向ヤスリ目は、ヤスリ工具の長手方向を2分し、左右にヤスリ目の刃先の方向を異ならせて形成しても良く、この場合、ヤスリ目の高さを左右で異ならせても良い。さらに、ヤスリ目の高さを部分的に異ならせても良い。また、ヤスリ目を表裏両面に形成し、表面と裏面でヤスリ目の高さ或いはピッチを異ならせても良い。
【符号の説明】
【0037】
1 ヤスリ工具
2 金属板
3 ヤスリ目
3a 順方向ヤスリ目
3b 逆方向ヤスリ目
6 木材(被加工物)