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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005353
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】コンパクト容器
(51)【国際特許分類】
   A45D 33/00 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
A45D33/00 615B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105507
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】501004095
【氏名又は名称】ジュテック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000158781
【氏名又は名称】紀伊産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】西原 利彦
(72)【発明者】
【氏名】井野 勝敏
(72)【発明者】
【氏名】寺内 啓
(57)【要約】
【課題】中皿を交換できるコンパクト容器において、美感に優れて保持枠の起こし回動も容易な技術を開示する。
【解決手段】コンパクト容器は、トレー状の本体1と、本体1に配置される中皿8の群と、中皿8を押さえ保持する保持枠2と、中皿8及び保持枠2を覆う蓋3とを有しており、蓋3と保持枠2とはその後端を支点にして回動するように、本体1にピン4で連結されている。保持枠2のうち塗布具収容凹所12よりも前方の部位に下向きの第2係合爪37が形成されており、第2係合爪37が本体1の係合部35に係合することにより、保持枠2は閉じた状態に保持されている。塗布具収容凹所12の後ろ壁12bに指先を当てて引くことにより、係合部35に対する第2係合爪37の係合を解除して、保持枠2を起こし回動できる。塗布具収容凹所12を指掛け凹所に兼用しているため、美感の悪化は生じないし、保持枠2の起こし回動も容易に行える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周壁を有するトレー状で内部に化粧料収納用の中皿を載置できる上向き開口の本体と、前記本体に上から重なって前記中皿を離脱不能に保持する保持枠と、前記中皿及び保持枠を覆う蓋と、を備えて、
前記本体と保持枠と蓋の一側部を回動支点にして相対回動するように互いに連結されている、コンパクト容器であって、
前記保持枠に、人が指先を上から挿入して当該保持枠を起こし回動させることを許容する指掛け凹所が少なくとも上向きに開口するように形成されており、
前記保持枠と本体とには、互いに係合して前記保持枠を本体に保持する係合手段が、前記保持枠の起こし回動によって係合解除するように形成されている、
コンパクト容器。
【請求項2】
前記保持枠には、化粧料塗布具を収納する底付きの塗布具収容凹所が形成されており、前記塗布具収容凹所が前記指掛け凹所に兼用されている、
請求項1に記載したコンパクト容器。
【請求項3】
前記保持枠の塗布具収容凹所と前記中皿とは、前記塗布具収容凹所が前記中皿を挟んで前記回動支点と反対側の前側に位置するように配置されており、
前記係合手段は、前記塗布具収容凹所よりも前側に配置されている、
請求項2に記載したコンパクト容器。
【請求項4】
前記係合手段は、前記保持枠から垂下した足状の係合爪と、前記本体の周壁に形成された係合部とで構成されている、
請求項3に記載したコンパクト容器。
【請求項5】
前記回動支点から離れた自由端部を前として前記回動支点の長手方向を左右方向とした状態で、
前記本体の前端部でかつ左右中間部に、前記蓋の閉じ状態を解除するフックピースが配置された操作枠部を前記本体の内部に入り込むように形成しており、前記操作枠部を挟んだ左右両側の部位に前記係合手段を設けている、
請求項3又は4に記載したコンパクト容器。
【請求項6】
前記保持枠に、化粧料塗布具を収納する底付きの塗布具収容凹所と前記指掛け凹所とが独立して形成されている、
請求項1に記載したコンパクト容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、化粧料が収容された中皿を交換できる化粧用コンパクト容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化粧用コンパクト容器において、化粧料が収容された中皿を交換できるタイプのものは広く普及している。このように中皿を交換できるタイプでは、中皿がずれないように保持する保持枠が必要であり、保持枠は蓋と一緒に本体に対して回動可能に連結されている。保持枠は、係合爪などを使用した係合手段によって本体に保持されており、係合手段を係合解除して保持枠を起こし回動することによって中皿を交換している。
【0003】
そして、中皿の交換のために保持枠を起こし回動させるに際しては、例えば特許文献1,2に開示されているように、本体の底部に穴を空けて、ピンで保持枠を下から突き上げるようになっていることが多い。他方、特許文献3には、蓋を180度開きると、蓋の基部で保持枠の基部が押されて、保持枠が開き回動する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭62-109009号のマイクロフィルム
【特許文献2】特開2008-12081号公報
【特許文献3】実開昭63-76205号のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2のように保持枠をピンで突き上げる方式は、手頃な径のピンがあるとは限らないため、いざとなって慌てるという事態が起きやすくて、確実性に劣るという問題がある。この点、穴を大きくして指先で保持枠を突き上げできるようすることが考えられるが、この場合は穴が目立つため美感に劣るという問題がある。
【0006】
また、ピンによる突き出しにしても指先による突き出しにしても、コンパクト容器を裏返したり大きく傾けたりして行うことが多いため、作業が面倒であるのみならず、保持枠の回動によって中皿が落下したり化粧料がこぼれ落ちたりしやすくなる不具合もある。
【0007】
他方、特許文献3のように蓋を利用した起こし方法は、突き上げ用のピンが不要である利点はあるが、コンパクト容器を使用するに際して中皿の交換と関係なく蓋を大きく空けることがあるため、意図せずに保持枠が本体から起きてしまうことがあって、確実性に劣るという問題がある。
【0008】
本願発明は、このような現状を改善すべく成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明のコンパクト容器は、
「周壁を有するトレー状で内部に化粧料収納用の中皿を載置できる上向き開口の本体と、前記本体に上から重なって前記中皿を離脱不能に保持する保持枠と、前記中皿及び保持枠を覆う蓋と、を備えて、
前記本体と保持枠と蓋の一側部を回動支点にして相対回動するように互いに連結されている」
という基本構成である。
【0010】
そして、上記基本構成において、
「前記保持枠に、人が指先を上から挿入して当該保持枠を起こし回動させることを許容する指掛け凹所が少なくとも上向きに開口するように形成されており、
前記保持枠と本体とには、互いに係合して前記保持枠を本体に保持する係合手段が、前記保持枠の起こし回動によって係合解除するように形成されている」
という特徴を有している。
【0011】
本願発明は、様々に展開できる。その例として請求項2では、
「前記保持枠には、化粧料塗布具を収納する底付きの塗布具収容凹所が形成されており、前記塗布具収容凹所が前記指掛け凹所に兼用されている」
いう構成になっている。
【0012】
請求項3の発明は、請求項2において、
「前記保持枠の塗布具収容凹所と中皿とは、前記塗布具収容凹所が前記中皿を挟んで前記回動支点と反対側の前側に位置するように配置されており、
前記係合手段は、前記塗布具収容凹所よりも前側に配置されている」
という構成になっている。
【0013】
請求項3の展開例として、請求項4では、
「前記係合手段は、前記保持枠から垂下した足状の係合爪と、前記本体の周壁に形成された係合部とで構成されている」
という構成になっている。
【0014】
請求項5の発明は、請求項3又は4の展開例として、
「前記回動支点から離れた自由端部を前として前記回動支点の長手方向を左右方向とした状態で、
前記本体の前端部でかつ左右中間部に、前記蓋の閉じ状態を解除するフックピースが配置された操作枠部を前記本体の内部に入り込むように形成しており、前記操作枠部を挟んだ左右両側の部位に前記係合手段を設けている」
という構成になっている。
【0015】
請求項6の発明は、請求項1において、
「前記保持枠に、化粧料塗布具を収納する底付きの塗布具収容凹所と前記指掛け凹所とが独立して形成されている」
という構成になっている。
【発明の効果】
【0016】
本願発明では、指掛け凹所に指先を入れて保持枠を起こすものであるため、ピンのような道具は不要であって即応性・確実性に優れている。また、本体に突き上げ用の穴を設ける必要はないため、美感の悪化は生じない。更に、指先を凹所に挿入しないと保持枠は回動しないため、保持枠が意図せずに起こし回動される不具合も生じない。
【0017】
また、上向きに開口した指掛け凹所に指先を掛けて保持枠を起こすものであり、保持枠の起こし操作はコンパクト容器を水平状の姿勢にして蓋を開いた状態で行えるため、作業をごく簡単に行えると共に、中皿の落下や化粧料の零れ落ちの問題も皆無にできる。
【0018】
コンパクト容器には、一般にブラシ、チップ、パフのような塗布具が付属しており、保持枠には塗布具を収納する底付きの凹所が形成されているが、請求項2のように塗布具収容凹所を保持枠起こし用の凹所に兼用すると、構造を単純化できる利点や美感の悪化防止を確実化できる利点がある。
【0019】
コンパクト容器では、一般に、使いやすいように、回動支点の側に中皿を配置して自由端の側に塗布具収容凹所を配置しているが、請求項3はこのようなオーソドックスな構造に適用するにおいて、係合手段が塗布具収容凹所よりも手前に配置されているため、塗布具収容凹所を回動支点の側に指先で押すと係合手段がスムースに係合解除する。従って、塗布具の使い勝手を悪化させることなく保持枠の起こし回動を無理なく行える。
【0020】
請求項3において、係合手段の爪を塗布具収容凹所に前壁に設けることも可能であるが、請求項4のように係合爪を保持枠から垂下した足状に形成すると、係合爪の弾性変形を容易化して、係合手段の係脱を確実化できる利点がある。
【0021】
コンパクト容器においては、蓋も係合爪を利用した係合手段によって本体に係止しており、本体の前端部(自由端部)の左右中間部にフックピースを備えた操作枠部を設けていることが多いが、この場合、操作枠部は本体の内部に入り込んでいるため、本体のうち操作部を挟んだ左右両側の部位は塗布具収容凹所の手前に位置したデッドスペースになっている。そして、請求項5の発明は、操作枠部の左右両側のデッドスペースを有効利用して係合手段を配置できる。
【0022】
指掛け凹所は、請求項6のように、塗布具収容凹所から独立して設けることも可能である。この場合は、指掛け凹所が保持枠を起こすためのものであることをユーザーに理解させやすい利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態に係るコンパクト容器を示す図で、(A)は開蓋状態の斜視図、(B)は閉蓋状態の斜視図である。
図2】蓋と保持枠とを開いた状態の斜視図である。
図3】蓋を開いた状態での平断面図である。
図4】(A)は図3のIV-IV視で見た分離断面図、(B)は図3の IV-IV視で見た閉蓋状態の断面図である。
図5】(A)は閉蓋状態での図3の VA-VA視断面図、(B)は閉蓋状態での図3の VB-VB視断面図である。
図6】(A)は図3のVI-VI 視断面図、(B)は保持枠の開き状態(起こし状態)を示す断面図である。
図7】(A)は第2実施形態の斜視図、(B)は第3実施形態の斜視図である。
図8】(A)は第4実施形態の斜視図、(B)は(A)のB-B視断面図、(C)は(B)のC-C視断面図、(D)は別例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(1).第1実施形態の基本構造
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。まず、図1~6に示す第1実施形態(主たる実施形態)を説明する。図2に明示するように、本実施形態のコンパクト容器は、それぞれ平面視長方形に形成された本体1と保持枠2と蓋3とを備えており、これらの部材は、1つの短辺部においてピン4によって相対回動可能に連結されている。なお、本体1と保持枠2と蓋3とは、いずれもABS等の合成樹脂を材料にした成形品である。
【0025】
以下では、方向を特定するため前後・左右の文言を使用するが、回動軸心の方向を左右方向として、回動軸心と直交した方向を前後方向としている。前と後ろについては、自由端の側を前として回動支点の側を後ろとしている。念のため、図1(A)に方向を明示している。実施形態のコンパクト容器は前後長手の形態になっているが、左右横長の形態や正方形の形態も採用できる。
【0026】
図2に明示するように、本体1は、前壁5と後ろ壁6と側壁7と底面(底板)を有して浅いトレー状に形成されており、底面のうち後ろ側の2/3程度の範囲に、中皿8を前後2列に配置できるようになっている。そこで、底面に、中皿8を位置決めするため、左右長手の横長リブ9と前後長手の縦長リブ10とを形成している。中皿8は上向きに開口した角形トレーの形態であり、内部にクリーム状や粉状等の化粧料が収納されている。
【0027】
本実施形態では、本体1には前後2列の中皿配置エリアが形成されており、図1図2で中皿8を4個表示しているが、中皿8の左右幅は任意に設定できる。例えば、前後のエリアに1個ずつの中皿を前後に配置したり、1個の中皿8と2個の中皿8とを前後に分けて配置したり、1つのエリアに3個以上の中皿8を配置したりすることも可能である。ユーザーは、好みに応じて化粧料を選択して、コンパクト容器にセットできる。
【0028】
保持枠2は中皿8を離脱しないように保持するもので、四周に本体1の上面に重なるフランジ11a~11cが形成されていると共に、前寄り部位に、左右長手で底付きの塗布具収容凹所12が形成されている。塗布具収容凹所12の後ろの部位は、中皿8を露出させる開口13になっている。
【0029】
塗布具収容凹所12は、前壁12aと後ろ壁12bと側壁12cとを有している。保持枠2は、更に、左右のサイドフランジ11bから下向きに垂下した前後長手の位置決めリブ14を有している。図4に示すように、塗布具収容凹所12の後端にもフランジを設けている。図5(B)に示すとおり、位置決めリブ14は、本体1の側壁7と密接又は近接している。
【0030】
図3に塗布具15の例を示している。図示の塗布具15は両端に塗布部を設けているが、柄の一端のみにブラシを設けたタイプやパフなども使用できる。当然ながら、塗布具15は化粧料の種類に応じて選択される。
【0031】
図5(B)に明示するように、位置決めリブ14と塗布具収容凹所12とは分離しているが、塗布具収容凹所12の箇所では位置決めリブ14を無くして、塗布具収容凹所12の左右外面を本体1の側壁7に密接させることも可能である。
【0032】
保持枠2におけるフランジ11a~11cの内周部は本体1の内部に張り出して、その内周縁が中皿8の上面に重なっている。また、保持枠2は、前後の中皿8の列の間に位置した左右長手の仕切りバー17を有しており、仕切りバー17が、前列の中皿8の後端部と後ろ列の中皿8の前端部とに上から重なっている(或いは近接している。)。従って、開口13は仕切りバー17で前後に区分されている。例えば図4に示すように、仕切りバー17には、前後列の中皿8の間隔を保持する下向きリブ18を設けている。
【0033】
なお、中皿配置エリアに収まる大きさの中皿8を単体で配置する場合や、中皿配置エリアに左右横長の中皿を前後に複数例配置する場合、或いは、中皿配置エリアに前後長手の中皿を左右に複数列配置する場合は、仕切りバー17は設ける必要はない。また、1つの中皿8を複数の収納部に仕切って、各収納部に色等が異なる化粧料を収納することも可能である。
【0034】
本実施形態では、本体1に中皿配置エリアが前後2列形成されていることに対応して、保持枠2には1本の仕切りバー17が形成されているが、本体1に中皿配置エリアを3列以上形成することも可能であり、この場合は、保持枠2の開口に2本以上の仕切りバー17が形成される。
【0035】
また、実施形態では本体1の中皿配置エリアが前後に分かれて形成されているが、中皿配置エリアを左右に分かれた状態に形成することも可能であり、この場合は、仕切りバー17は前後長手の形態になる。この場合も、本体1の仕切り態様に応じて、仕切りバー17の本数や姿勢を任意に設定できる。
【0036】
図1に示すように、蓋3は、前壁19と側壁20とを有しており、下面には鏡21を装着している。図4,5,6(A)に明示するように、保持枠2におけるフランジ11a~11cの外周は本体1の外周面よりも内側に位置しており、従って、本体1の上面は、保持枠2におけるフランジ11a~11cの外側に露出した部位を有しており、この露出した部位に蓋3の壁19,20が重なっている。
【0037】
図2及び図4から理解できるように、本体1の後端部の左右両端に軸受け部22を設けている一方、保持枠2の後端に、軸受け部22の内側面に重なる左右一対の軸受けブラケット23を一体に設け、更に、蓋3の後端に、左右の軸受けブラケット23の間に位置する軸受けボス部24を一体に設けて、軸受けブラケット23と軸受けボス部24とを、左右のピン4によって軸受け部22に連結している。
【0038】
(2).蓋の閉止状態保持構造
例えば図2,4に示すように、本体1のうち先端部の左右中間部に、左右横長で前方及び上方に開口した操作枠部27が形成されており、操作枠部27にフックピース28が前後動自在で抜け不能に配置されている。フックピース28は、大まかには後ろ向きに開口した箱状の形態を成しており、上面には角形で後ろ向きに開口した切欠き部29を形成している。
【0039】
図4に示すように、操作枠部27の内部のうちのその下部には前向きのリブ30を突設しており、操作枠部27の底板27aとリブ30との間に形成された空間に、フックピース(係合解除具)28の底板28aを前から挿入している。そして、フックピース28の底板28aの先端に下向きの抜け止め爪31を形成する一方、操作枠部27の底板27aに、抜け止め爪31が入り込む凹所32を形成している。従って、フックピース28は、操作枠部27に前後動自在で抜け不能に保持されている。
【0040】
図4に示すように、蓋3における前壁19の左右中間部の下端に、フックピース28の切欠き部29に挿入するように斜め下向きに傾斜した第1係合爪33が後ろ向きに突設されている一方、操作枠部27の前内面に、第1係合爪33が下方から係合する第1係合部34を形成している。
【0041】
第1係合爪33の爪部33a及び第1係合部34は、側面視で山形(三角形)に形成されている。従って、開いた状態の蓋3を閉じると、第1係合爪33の爪部33aは、第1係合爪33の弾性変形や蓋3における前壁19の弾性変形によっていったん前進してから後退する動きを成して、第1係合部34に下方から係合する。これにより、蓋3は閉じた状態に保持される。
【0042】
閉蓋状態でフックピース28を後ろ向きに押すと、切欠き部29の前内面が第1係合爪33の前面に当たるが、第1係合爪33は斜め下方に向けて傾斜しているため、フックピース28の後退動によって第1係合爪33は上向きに押し上げられる。これにより、第1係合部34に対する第1係合爪33の係合が解除されて、蓋3を開くことができる。
【0043】
そして、蓋3が開くと第1係合爪33の爪部33aが第1係合部34の上面に載って、蓋3は少し開いた状態に保持される。すなわち、蓋3はフックピース28によってプッシュアップされる。従って、ユーザーは蓋3の前端に指先を当てて容易に開くことができる。
【0044】
(3).保持枠の閉止状態保持構造
図2,3,6に示すように、本体1の前壁5のうち操作枠部27を挟んだ左右両側の内面に、請求項に記載した係合手段の一環として、側面視山形の第2係合部35が後ろ向きに突設されている。他方、保持枠2の前フランジ11aには操作枠部27に対応した切欠き部36が形成されているが、本体1の内部のうち切欠き部36を挟んだ左右両側は空間になっており、この空間の箇所に、請求項に記載した係合手段の一環を成す係合爪として、保持枠2の前フランジ11aに、第2係合部35に係合する足状の第2係合爪37を下向きに突設している。
【0045】
第2係合爪37の爪部37aは側面視山形(三角形)に形成されているため、保持枠2に対してある程度の力が上下方向から掛かると、保持枠2の弾性変形に抗して第2係合爪37を第2係合部35に係脱させることができる。
【0046】
上記のとおり、保持枠2に対してある程度の力をかけて当該保持枠2に起こし力を作用させると、第2係合部35に対する第2係合爪37の係合を解除できるが、保持枠2に起こし力を作用させるための手段として、本実施形態では、塗布具収容凹所12を指掛け凹所に兼用している。
【0047】
すなわち、図6(B)に示すように、ユーザーは、開蓋状態で塗布具収容凹所12における後ろ壁12bの内面に指先38を当てて後ろ向きに引くことにより、第2係合部35に対する第2係合爪37の係合を解除させて、保持枠2を起こし回動させることができる。これにより、中皿8を交換できる。
【0048】
本実施形態では、塗布具収容凹所12を指掛け凹所に兼用しているため、保持枠2を起こすための設計変更は不要であり、従って、美感を悪化させることなく保持枠2を起こし回動させることができる。従って、高いデザイン性を保持できる。保持枠2を起こした状態から倒して本体1に対して押しつけると、第2係合爪37が弾性変形してから元に戻ることにより、保持枠2は閉じた状態に保持される。
【0049】
なお、保持枠2は、上下に貫通した開口13を有するフレーム構造であるため、開口13の前後幅を狭めるように弾性変形させることができる。また、開口13の前後内面と中皿8との間には若干のクリアランスがあり、かつ、前後の中皿8の間にも若干のクリアランスがある。
【0050】
従って、塗布具収容凹所12の後ろ壁12bに指先を当てて後ろ向きに押すと、塗布具収容凹所12は保持枠2の弾性変形によって僅かながら後退しうる。この面でも、保持枠2の起こし回動がサポートされる。実施形態のように、第2係合部35及び第2係合爪37を左右に一対設けると、保持枠2の閉じ状態を安定化できる利点がある。
【0051】
さて、保持枠2はピン4を支点にして回動するため、保持枠2に対するモーメント(回動させる力)を大きくするには、ピン4(回動支点)から指先38までのスパン(長さ)はできるだけ大きいのが好ましい。この点、実施形態のように塗布具収容凹所12を指掛け凹所に利用すると、ピンから指先38までのスパン(長さ)をできるだけ大きくして、保持枠2の軽快な起こし回動を実現できる。
【0052】
塗布具収容凹所12を指掛け凹所に兼用する場合、人は指先38を塗布具収容凹所12における後ろ壁12bの左右中間部に当てることが普通であるため、実施形態のように、第2係合部35及び第2係合爪37を操作枠部27に寄せて配置すると、指先38から左右の第2係合爪37までの距離をできるだけ短くして、第2係合爪37の係合解除を確実化できる利点がある。
【0053】
(4).他の実施形態
図7,8では他の実施形態を示している。このうち図7(A)に示す第2実施形態は第1実施形態の変形例であり、塗布具収容凹所12における後ろ壁12bの前面のうち左右中間部に、指先を当てるに際しての指の引っ掛かりを良くするめに、横長ローレット状の凹凸部39を形成している。
【0054】
他方、図7(B)に示す第3実施形態も第1実施形態の変形例であり、塗布具収容凹所12における後ろ壁12bの前面のうち左右中間部の上端に、指先を当てるに際しての指の引っ掛かりを良くするめに、左右長手の突条40を形成している。
【0055】
これら第2実施形態及び第3実施形態のように、塗布具収容凹所12における後ろ壁12bに凹凸部39や突条40を形成すると、ユーザーに、凹凸部39や突条40が保持枠2を起こすための指掛け部であることを容易に理解せしめることができる。
【0056】
図8に示す第4実施形態では、保持枠2の前フランジ11aのうち操作枠部27を挟んだ左右両側に専用の指掛け凹所41を形成している。指掛け凹所41は上下に開口した刳り抜き穴の方式になっており、後端縁に指掛けのための突条40を形成している。また、指掛け凹所41の前端縁には、本体1の前壁5に重なる位置決めリブ42を形成している。
【0057】
そして、指掛け凹所41のうち操作枠部27と反対側の部位から足状の第2係合爪37を下向きに突設する一方、本体1の側壁7に、第2係合爪37が係脱する第2係合部35を形成している。この実施形態では、ユーザーは、突条40に指先(例えば、人指し指と中指、又は人指し指と薬指)を挿入して、2本の指を保持枠2を引き起こすことができる。
【0058】
この実施形態では、指掛け凹所41は回動中心から遠く離れていると共に第2係合爪37とは近接しているため、指先による引っ張り力を第2係合爪37に対して強く作用させることができる。従って、指掛け凹所41の面積が小さくて指先の引っ掛かり面積が小さくても、保持枠2を軽快に起こすことができる。なお、この実施形態では、塗布具収容凹所12に指を掛けて保持枠2を起こすことも可能である。指掛け凹所41は、底付きの構造に形成することも可能である。
【0059】
図8(D)に示すように、第2係合爪37を指掛け凹所41の前端部から下向きに突設して、本体1の前壁5に第2係合部35を形成することも可能である。第2係合部35は係合溝になっているが、他の実施形態と同様の突起に形成することもできる。
【0060】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。例えは、蓋の開き手段としては実施形態のようなフックピースを使用せずに、蓋の前端に設けたタブに指先を掛けて引き起こす方式も採用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本願発明はコンパクト容器に適用できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0062】
1 本体
2 保持枠
3 蓋
4 ピン
5 本体の前壁
8 中皿
11a~11c 保持枠のフランジ
12 塗布具収容凹所
13 開口
15 塗布具
17 仕切りバー
27 操作枠部
28 フックピース
35 係合手段を構成する第2係合部
37 係合手段を構成する第2係合爪
41 専用の指掛け凹所
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8