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特開2024-53536核酸増幅用の反応組成物およびそれを用いる核酸増幅法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053536
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】核酸増幅用の反応組成物およびそれを用いる核酸増幅法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20240408BHJP
   C12Q 1/6844 20180101ALI20240408BHJP
【FI】
C12N15/11 Z
C12Q1/6844 Z ZNA
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023139750
(22)【出願日】2023-08-30
(31)【優先権主張番号】P 2022159813
(32)【優先日】2022-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年10月7日 日本医療検査科学会 第54回大会 神戸国際会議場にて発表
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100122345
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 繁久
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】松田 将
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA20
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS32
4B063QX02
(57)【要約】
【課題】核酸増幅法(特に、増幅対象の核酸が極めて低濃度である核酸増幅法)の再現性を向上させることができる核酸増幅用の反応組成物を提供すること。
【解決手段】水、増幅対象の核酸を10,000コピー/mL以下の濃度で、および下記のA群から選ばれる1以上の重合体を0.005~0.5w/v%の濃度で含む、核酸増幅法の再現性を向上させるために用いられる反応組成物。
[A群]
(A1)2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに由来する構成単位のみからなる重合体
(A2)2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに由来する構成単位および(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を含む共重合体
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、増幅対象の核酸を10,000コピー/mL以下の濃度で、および下記のA群から選ばれる1以上の重合体を0.005~0.5w/v%の濃度で含む、核酸増幅法の再現性を向上させるために用いられる反応組成物。
[A群]
(A1)2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに由来する構成単位のみからなる重合体
(A2)2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに由来する構成単位および(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を含む共重合体
【請求項2】
請求項1に記載の反応組成物を用いる核酸増幅法。
【請求項3】
請求項2に記載の核酸増幅法を用いる遺伝子検査法。
【請求項4】
水、増幅対象の核酸を10,000コピー/mL以下の濃度で、および下記のA群から選ばれる1以上の重合体を0.005~0.5w/v%の濃度で含む反応組成物を用いて核酸増幅反応を行うことを含む、核酸増幅法の再現性を向上させる方法。
[A群]
(A1)2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに由来する構成単位のみからなる重合体
(A2)2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに由来する構成単位および(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を含む共重合体
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸増幅用の反応組成物(詳しくは、核酸増幅法の再現性を向上させるために用いられる反応組成物)およびそれを用いる核酸増幅法に関する。
【背景技術】
【0002】
核酸増幅法とは、標的核酸を数コピーから数万コピーに増幅する技術であり、遺伝子のクローニングや、臨床検査のために多種多様な分野で活用されている。特に核酸増幅法検査とは、核酸増幅法を用いて細菌、古細菌、真菌等の微生物や、ウイルス、細胞、遺伝子等の存在の有無を判定したり、その存在量を決定したりする検査である。核酸増幅法検査は、医療分野を始め、獣医学、環境学、食品、医薬品製造、分子生物学研究、法医学等様々な分野で活用される検査法である。中でも、標的核酸の有無を判定することを目的とした検査は、核酸増幅法定性検査と呼ぶことができる。
【0003】
核酸増幅法の代表的な方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction、PCR)法である。典型的なPCR法では、(1)鋳型DNAの変性(2本鎖DNAから1本鎖DNAへの乖離)、(2)1本鎖鋳型DNAへのプライマーのアニーリング、(3)DNAポリメラーゼによるプライマーの伸長という3つの工程からなるサイクルを繰り返すことで、核酸中の目的領域を理想条件において1サイクルにつき2倍に複製し増幅する。
【0004】
典型的なPCR法はDNAを鋳型としてDNAを増幅する方法である。一方、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法(以下「RT-PCR法」と略称することがある)はRNAを鋳型としてDNAを増幅する方法である。すなわち、鋳型RNAから逆転写反応で相補DNA(以下「cDNA」と略称することがある)を合成し、このcDNAを鋳型としてさらにPCRを行う。RT-PCR法は、さらに、逆転写反応とPCRを別々の容器で行う2ステップ法と、これらを同一の容器内で一連の反応として行う1ステップ法とに分けられる。
【0005】
さらに、鎖置換反応を組み合わせ、温度サイクルを伴わずに等温条件で核酸増幅を行うLAMP法(Loop-mediated isothermal amplification法)や、ニッキング酵素を組み合わせて等温で核酸増幅を行うNEAR法(Nicking endonuclease amplification reaction)を始め、各種の等温増幅法も多数開発されている。
【0006】
上述の核酸増幅法のうち、最終的な増幅産物の有無や量を問題にするタイプの核酸増幅法は特にエンドポイント法と呼ばれ、標的核酸の有無を判定する核酸増幅法定性検査に利用可能である。
【0007】
また核酸増幅反応の最中に蛍光や濁度を測定することで核酸増幅反応の進行をモニターし、シグナルが検出可能となる早さに基づいて標的核酸を定量するタイプの核酸増幅法はリアルタイム法と呼ばれる。リアルタイム法も、検出の有無のみを判定基準とすれば、核酸増幅法定性検査に利用可能である。
【0008】
さらに近年は、核酸増幅の反応液を多数の微小区画に分配することで1区画当たりの標的核酸の濃度を極めて低く下げ、この状態で全ての区画について一斉に核酸増幅を行い、増幅のあった区画の割合から統計モデルを用いて標的核酸を定量する、デジタルPCR法(以下「dPCR法」と略称することがある)という方法も開発されている。dPCRの各区画内で行われる反応はエンドポイント法核酸増幅である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005-000162号公報
【特許文献2】特開2007-195487号公報
【特許文献3】国際公開第2022/163506号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の核酸増幅法定性検査においては、その再現性の低さがしばしば問題となる。特に検体中に増幅対象である標的核酸が極めて低濃度で含まれる条件においては、同時再現性が低下する、すなわち標的核酸を含む検体を正しく陽性と判定する確率が低下することが知られている。そのため、核酸増幅法検査の再現性を高めるための様々な技術が考案されている。例えば、核酸増幅反応において抗DNAポリメラーゼ抗体等を併用し、室温付近でDNAポリメラーゼをカプセル化しておく、いわゆる「ホットスタート法」と呼ばれる核酸増幅反応の方式が周知である。しかしながら、当該方式を適用しても核酸増幅法定性検査の再現性は、現状、不十分である。
【0011】
また、特許文献1および2には、核酸増幅反応に用いるプライマーの配列設計の工夫により、核酸増幅法検査の再現性を高める方法が開示されている。しかしこれらの方法は、プライマーの設計変更が必要であることから、様々な検査対象への汎用性が不十分であった。
【0012】
特許文献3には、核酸増幅用の反応組成物にホスホリルコリン基を有する重合体を添加することが開示されている。しかし、特許文献3では、核酸の検出感度が検討されており、核酸増幅法の再現性(特に、増幅対象の核酸の濃度が極めて低い核酸増幅法の再現性)については検討されていない。
【0013】
本発明の目的は、核酸増幅法(特に、増幅対象の核酸が極めて低濃度である核酸増幅法)の再現性を向上させることができる核酸増幅用の反応組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、下記のA群から選ばれる1以上の重合体を使用すれば、増幅対象の核酸が極めて低濃度である核酸増幅法の再現性を向上させ得ることを見出した。この知見に基づく本発明は以下の通りである。
【0015】
[1] 水、増幅対象の核酸を10,000コピー/mL以下の濃度で、および下記のA群から選ばれる1以上の重合体を0.005~0.5w/v%の濃度で含む、核酸増幅法の再現性を向上させるために用いられる反応組成物。
[A群]
(A1)2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに由来する構成単位のみからなる重合体
(A2)2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに由来する構成単位および(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を含む共重合体
[2] 前記[1]に記載の反応組成物を用いる核酸増幅法。
[3] 前記[2]に記載の核酸増幅法を用いる遺伝子検査法。
[4] 水、増幅対象の核酸を10,000コピー/mL以下の濃度で、および下記のA群から選ばれる1以上の重合体を0.005~0.5w/v%の濃度で含む反応組成物を用いて核酸増幅反応を行うことを含む、核酸増幅法の再現性を向上させる方法。
[A群]
(A1)2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに由来する構成単位のみからなる重合体
(A2)2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに由来する構成単位および(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を含む共重合体
[5] 前記[4]に記載の方法を用いる遺伝子検査法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の核酸増幅用の反応組成物を用いれば、増幅対象の核酸が極めて低濃度である核酸増幅法において高い再現性が得られる。従って、例えば増幅対象である標的核酸が極めて低濃度である核酸増幅法定性検査において本発明の核酸増幅用の反応組成物を用いれば、高い再現性が得られ、より精確に陽性判定が得られる。また、例えばdPCRの各区画で行われるエンドポイント法核酸増幅において本発明の核酸増幅用の反応組成物を用いれば、高い再現性が得られ、dPCRによる核酸定量をより精確に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書において、段階的な数値範囲が記載されている場合、各数値範囲の下限値および上限値は、組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10~100、より好ましくは20~90」が記載されている場合、「好ましい下限値:10」と「より好ましい上限値:90」とを組み合わせることができる(即ち、「10~90」との数値範囲も本明細書の範囲内である)。
【0018】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、基本的に「アクリル酸またはメタクリル酸」を意味する。複数の(メタ)アクリル酸が存在してもよい場合、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸および/またはメタクリル酸」を意味する。「(メタ)アクリル酸」と類似する他の用語も、「(メタ)アクリル酸」と同様の意味である。
【0019】
[反応組成物]
本発明の核酸増幅用の反応組成物(本明細書中、「本発明の反応組成物」と略称することがある)は、水、増幅対象の核酸を10,000コピー/mL以下の濃度で、および下記のA群から選ばれる1以上の重合体(本明細書中、「本発明の重合体」と略称することがある)を0.005~0.5w/v%の濃度で含む。
[A群]
(A1)2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに由来する構成単位のみからなる重合体(以下「重合体A1」と略称することがある)
(A2)2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに由来する構成単位および(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を含む共重合体(以下「重合体A2」と略称することがある)
【0020】
本発明の反応組成物は、核酸増幅法の再現性を向上させるために用いられる。核酸増幅法としては、例えば、PCR法、LAMP法、NEAR法、TMA法(Transcription Mediated Amplification法)、IICAN(Isothermal and Chimeric primer-initiated Amplification of Nucleic acids法)、SDA法(Strand Displacement Amplification法)、LCR法(Ligase Chain Reaction法)、NASBA法(Nucleic Acid Seqence-Based Amplification法)などが挙げられる。核酸増幅法は、好ましくはPCR法である。
【0021】
なお、PCR法としては、増幅対象の核酸の種類に応じて適切な方法を選択すればよく、増幅対象の核酸がDNAであれば、典型的なPCR法が好ましく選択され、また、増幅対象の核酸がRNAであれば、RT-PCR法が好ましく選択される。
【0022】
本発明の反応組成物は、増幅対象の核酸を10,000コピー/mL以下の濃度で含む。ここで「反応組成物中の核酸の濃度(コピー/mL)」とは、「反応組成物1mLあたりの核酸の量(コピー)」を意味する。
【0023】
後述するように、(1)本発明の反応組成物を用いる核酸増幅法(以下「本発明の核酸増幅法」と略称することがある)または(2)本発明の反応組成物を用いて核酸増幅反応を行うことを含む、核酸増幅法の再現性を向上させる方法(以下「本発明の向上方法」と略称することがある)を、遺伝子検査法に用いることができる。本発明の核酸増幅法または本発明の向上方法を用いる遺伝子検査法では、本発明の反応組成物における増幅対象の核酸は、遺伝子検査法のサンプルに含まれ得る核酸である。この遺伝子検査法のサンプルには、検査対象である核酸が含まれない場合がある。そのため、本発明の反応組成物中の増幅対象の核酸の濃度は0であってもよい。
【0024】
本発明の反応組成物中の増幅対象の核酸の濃度(核酸増幅反応を実施する前の核酸の濃度)は、本発明の効果(再現性)の観点から、50コピー/mL以上10,000コピー/mL以下が好ましく、100コピー/mL以上5,000コピー/mL以下がより好ましく、250コピー/mL以上2,000コピー/mL以下がさらに好ましく、500コピー/mL以上1,000コピー/mL以下が特に好ましい。
【0025】
本発明の反応組成物は、本発明の重合体を0.005~0.5w/v%の濃度で含む。ここで「反応組成物中の重合体の濃度(w/v%)」とは、「反応組成物100mLあたりの重合体の量(g)」を意味する。また、本発明の反応組成物が、2種以上の本発明の重合体を含む場合、前記濃度は、前記重合体の濃度の合計を意味する。
【0026】
本発明の反応組成物中の本発明の重合体の濃度は、再現性の観点から、好ましくは0.01~0.1w/v%、より好ましくは0.05~0.1w/v%である。
【0027】
[増幅対象の核酸]
増幅対象の核酸は、DNAまたはRNAであり、核酸増幅法によって増幅したい配列を含むものである。
【0028】
増幅対象の核酸は、例えばウイルス、菌体、細胞、体液、組織等、またはこれらの懸濁液、またはこれらから調製した核酸抽出液等として提供される。なお、該ウイルス、菌体、細胞、体液、組織等は、自然界や環境中、ヒトや動植物から採取されたものでもよく、また分離・培養されたものであってもよい。また増幅対象の核酸は、in vitro合成品として提供されてもよい。
【0029】
核酸濃度の決定方法としては公知の方法を用いることができ、例えば、該核酸の溶液の260nm付近の吸光度から算出する方法、臭化エチジウム、SYBRTM Green などの蛍光試薬を添加して蛍光強度を測定する方法、qPCRによる方法、dPCRによる方法などが挙げられる。
【0030】
[重合体]
以下、本発明の重合体(重合体A1および重合体A2)について説明する。
重合体A1である「2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに由来する構成単位のみからなる重合体」とは、その構成単位(繰返し単位)が、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに由来する構成単位のみからなる重合体を意味する。重合体A1は、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの単独重合体でもよく、2-アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンおよび2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの共重合体でもよい。
【0031】
本発明の重合体が共重合体である場合、該共重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト重合体、またはこれらのうち2以上の構造を有する共重合体のいずれでもよいが、重合体の製造性の観点から、ランダム共重合体が好ましい。
【0032】
重合体A1は、好ましくは2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの単独重合体であり、より好ましくは2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの単独重合体である。
【0033】
重合体A1の重量平均分子量は特に限定されないが、好ましくは20,000~2,000,000、より好ましくは100,000~1,500,000、さらに好ましくは500,000~1,500,000である。重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー測定(以下「GPC」と略称することがある)により、ポリエチレングリコール換算で算出することができる。
【0034】
重合体A2の形成のために2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンは、1種のみ(即ち、2-アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンまたは2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)を使用してもよく、2種(即ち、2-アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンおよび2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)を使用してもよい。重合体A2の形成のための2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとしては、重合体の保存安定性および原料入手性の観点から、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンが好ましい。
【0035】
重合体A2の形成のために、(メタ)アクリル酸は、1種のみ(即ち、アクリル酸またはメタクリル酸)を使用してもよく、2種(即ち、アクリル酸およびメタクリル酸)を使用してもよい。(メタ)アクリル酸としては、重合体の保存安定性の観点から、メタクリル酸が好ましい。
【0036】
重合体A2の全ての構成単位のうち、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位の割合は、1~80mol%が好ましく、30~80mol%がより好ましく、60~80mol%がさらに好ましい。なお、重合体A2の構成単位の残部は、好ましくは2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに由来する構成単位である。
【0037】
重合体A2は、本発明の効果を損なわない範囲で、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンおよび(メタ)アクリル酸以外の単量体(以下「他の単量体」と記載する)に由来する構成単位を含んでもよい。他の単量体としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート(該アルキル基の炭素数は1~6が好ましく、4~6がより好ましい)、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0038】
重合体A2の全ての構成単位のうち、他の単量体に由来する構成単位の割合は、20mol%以下が好ましく、10mol%以下がより好ましく、5mol%以下がさらに好ましい。重合体A2は、他の単量体に由来する構成単位を含まないことがよりさらに好ましい。
【0039】
重合体A2は、好ましくは2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンおよび(メタ)アクリル酸の共重合体であり、より好ましくは2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンおよびメタクリル酸の共重合体である。
【0040】
重合体A2の重量平均分子量は特に限定されないが、好ましくは10,000~1,000,000、より好ましくは100,000~1,000,000、さらに好ましくは500,000~1,000,000である。
【0041】
本発明の重合体の調製に用いる各単量体は、市販品を使用してもよく、または公知の方法で製造してもよい。本発明の重合体は、公知の方法(例えば、国際公開2018/216628号に記載の方法等)で製造することができる。
【0042】
[他の成分]
本発明の反応組成物は、水、増幅対象の核酸および本発明の重合体以外の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、バッファー、基質、プライマー、酵素、蛍光DNA染色試薬、蛍光プローブ、パッシブリファレンス、増幅対象である核酸以外の核酸等が挙げられる。他の成分は、いずれも、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
前記バッファーとしては、特に限定されないが、例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トリシン、ビシン等の塩基と、硫酸、塩酸、酢酸、リン酸等の酸を混合してpHを6~9、より好ましくは7~8程度に調整したものが挙げられる。またバッファーは、マグネシウム塩および/またはマンガン塩を適宜含むことが望ましい。また、バッファーは、塩化カリウム、硫酸アンモニウム等の塩をさらに含んでいてもよい。また、バッファーには、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、グリセリン等の水溶性有機溶剤をさらに含んでいてもよい。また、バッファーは、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の界面活性剤をさらに含んでいてもよい。また、バッファーは、ウシ血清アルブミン等のタンパク質をさらに含んでいてもよい。また、バッファーは、ポリエチレングリコール等の水溶性高分子をさらに含んでもよい。
【0044】
前記基質としては、特に限定されないが、例えば、デオキシアデノシン三リン酸(dATP)、デオキシチミジン三リン酸(dTTP)、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)、デオキシシチジン三リン酸(dCTP)の混合物(dNTPs)が挙げられる。ここで、dTTPの一部および/または全部をデオキシウリジン三リン酸(dUTP)に置換することも可能である。またシーケンシングPCR等においては、ジデオキシアデノシン三リン酸(ddATP)、ジデオキシチミジン三リン酸(ddTTP)、ジデオキシグアノシン三リン酸(ddGTP)、ジデオキシシチジン三リン酸(ddCTP)の混合物、またはこれらの蛍光標識物を適量添加することも好ましく行われる。
【0045】
前記プライマーとしては、特に限定されないが、例えば、公知の方法により設計・調製された15~30塩基程度のオリゴヌクレオチドが挙げられる。プライマーは、適宜フルオロセイン等を用いた蛍光標識や、重元素を用いた同位体標識等がなされていてもよい。
【0046】
前記酵素としては、DNAポリメラーゼ、制限エンドヌクレアーゼなどから、核酸増幅法の方式に応じて適宜選択されるが、DNAポリメラーゼが好ましい。DNAポリメラーゼとしては、公知のDNAポリメラーゼを使用することができる。耐熱性の観点から、好熱細菌、好熱アーキア、超好熱細菌、超好熱アーキアに由来する酵素、およびその変異型酵素が好ましい。DNAポリメラーゼは、DNA依存DNAポリメラーゼ、RNA依存DNAポリメラーゼ(逆転写酵素)、または両方の機能を兼ね備えた酵素から、増幅対象の核酸の種類に応じて適宜1種以上が選択される。
【0047】
前記蛍光DNA染色試薬としては特に限定されないが、例えば SYBRTM Green I 等が挙げられる。
【0048】
前記蛍光プローブとしては特に限定されないが、例えば TaqManTM プローブが挙げられる。
【0049】
前記パッシブリファレンスは、核酸増幅の目的に応じて適切に選択すればよい。パッシブリファレンスとしては、例えば 50 x ROX Passive Reference(株式会社ニッポンジーン製)等が挙げられる。
【0050】
増幅対象の核酸以外の前記核酸としては、例えば外来性コントロール遺伝子としてのDNAおよび/またはRNA等が挙げられる。前記核酸は、in vitro合成されたものでもよく、細胞、微生物、ウイルス等から公知の方法により調製されたものであってもよい。ここで該細胞、微生物、ウイルス等は、自然界や環境中、ヒトや動植物から採取されたものでもよく、また分離・培養されたものであってもよい。
【0051】
本発明の反応組成物は、さらにミネラルオイル等のオイルを含んでいてもよい。
また、本発明の反応組成物は、さらにシリカビーズ、磁性ビーズ等の固相担体を含んでいてもよい。
【0052】
また、前記の各成分を複数選択してあらかじめ混合し、マスターミックス(プライマーミックス、プレミックス等と呼ばれることもある)とすることも好ましく行われる。
【0053】
[核酸増幅法]
本発明は、本発明の反応組成物を用いる核酸増幅法(詳しくは、本発明の反応組成物を用いて核酸増幅反応を行うことを含む核酸増幅法)も提供する。核酸増幅法(特にPCR法)の条件および装置は周知であり、当業者であれば、核酸増幅法を適宜行うことができる。例えば、本発明の反応組成物を、0.1mLプラスチックチューブ等の容器中で調製し、核酸増幅法の方式に応じた温度プログラムに従って保温することで、本発明の反応組成物中の増幅対象の核酸中の所望の配列が好ましく増幅される。
【0054】
本発明の核酸増幅法は、好ましくはPCR法である。増幅対象の核酸がDNAである場合、本発明の核酸増幅法は、好ましくは典型的なPCR法である。増幅対象の核酸がRNAである場合、本発明の核酸増幅法は、好ましくはRT-PCR法である。
【0055】
[核酸増幅法の再現性を向上させる方法]
本発明は、本発明の反応組成物を用いて核酸増幅反応を行うことを含む、核酸増幅法の再現性を向上させる方法も提供する。核酸増幅反応(特にPCR反応)の条件および装置は周知であり、当業者であれば、核酸増幅反応を適宜行うことができる。
【0056】
本発明の向上方法で行う核酸増幅反応は、好ましくはPCR反応である。増幅対象の核酸がDNAである場合、この核酸増幅反応は、好ましくは典型的なPCR反応である。増幅対象の核酸がRNAである場合、この核酸増幅反応は、好ましくはRT-PCR反応である。
【0057】
[検査法]
本発明は、本発明の核酸増幅法または本発明の向上方法を用いる遺伝子検査法(本明細書中、「本発明の検査法」と略称することがある)も提供する。本発明の検査法は、詳しくは、水、サンプルに含まれ得る増幅対象の核酸を10,000コピー/mL以下の濃度で、および下記のA群から選ばれる1以上の重合体を0.005~0.5w/v%の濃度で含む本発明の反応組成物を用いて核酸増幅反応を行って、核酸増幅法の再現性を向上させることを含む、前記核酸(即ち、遺伝子)を検査する方法である。水、サンプルおよび前記重合体を混合することによって、前記反応組成物を調製することができる。なお、サンプル自体が水を含む場合、該サンプルおよび前記重合体を混合することによって、前記反応組成物を調製することができる。
【0058】
前記検査としては、例えば、医療用検査、獣医学的検査、法医学的検査、医薬品検査、食品検査、環境検査等が挙げられる。本発明の検査法は、好ましくは医療用検査に用いられる。
【0059】
本発明の検査法において、本発明の核酸増幅法または本発明の向上方法の結果に基づく検査対象の有無の判定は、公知の方法を用いて行うことができる。該方法としては、例えば、
(1)増幅反応産物を精製し、精製した核酸溶液の紫外領域の濁度を測定する方法、
(2)増幅反応産物をゲル電気泳動で展開し、エチジウムブロマイド等の核酸染色試薬により核酸を染色し、目的のバンドの染色強度を目視、または機器分析により測定する方法、
(3)CYBRTM Green 等の蛍光試薬を核酸増幅反応の反応組成物に添加しておき、核酸増幅反応の進行に伴う蛍光強度の増加をモニターする方法、
等が挙げられる。
【0060】
本発明の反応組成物の、増幅対象の核酸以外の成分を予め混合して所定の反応容器に充填し、これとサンプル採取器具等の部材と組合わせることによって検査キットとしておき、該キットを増幅対象の核酸を含むサンプルと混合することで、遺伝子検査を行うことができる。前記検査キットは、好ましくは体外診断用医薬品である。
【実施例0061】
以下、本発明を実施例等により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0062】
[重合体の合成]
[合成例1]
重合体A1に該当する重合体a1を以下の要領で調製した。
2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(以下「MPC」と記載する)160gを重合用ガラスフラスコに秤量し、精製水260gを加えて溶解し、得られた溶液に重合開始剤としてtert-ブチルハイドロパーオキシド(以下「BHP」と記載する)3.7gを加えた。撹拌下、70℃で6時間加温することで重合を行った。得られた反応液を氷冷し、アセトンに滴下することで再沈殿精製を行った。得られた沈殿物を濾別し、減圧乾燥することで固形分を分離した。これにより、白色固体の重合体a1を得た。重合体a1の重量平均分子量は、後述する条件でのGPC測定により、ポリエチレングリコール換算で1,010,000であった。
【0063】
[合成例2]
重合体A2に該当する重合体a2を以下の要領で調製した。
MPC 40g、およびメタクリル酸(以下「MAc」と記載する)27g(MPC/MAc=30/70(モル比))を重合用ガラスフラスコに秤量し、精製水391gを加えて溶解した。得られた溶液にBHPを3.3g加えた。以降は合成例1と同様にして、重合体a2を得た。重合体a2の重量平均分子量は、後述する条件でのGPC測定により、ポリエチレングリコール換算で730,000であった。
【0064】
[合成例3]
本発明の重合体の範囲外である重合体b1を以下の要領で調製した。
MPC 11.7g、およびステアリルメタクリレート(以下「SMA」と記載する)3.3g(MPC/SMA=80/20(モル比))を重合用ガラスフラスコに秤量し、エタノール85.0gを加えて溶解し、得られた溶液にAIBNを0.06g加えた。フラスコ内を充分に窒素置換した後、撹拌下、60℃で6時間加温することにより重合を行った。以降は合成例1と同様にして、重合体b1を得た。重合体b1の重量平均分子量は、後述する条件でのGPC測定により、ポリエチレングリコール換算で43,000であった。
【0065】
上述のようにして得られた重合体は、後述の実施例および比較例の各条件に記載の終濃度の10倍の濃度となるようWater, Nuclease free(株式会社ニッポンジーン製、以下同じ)に溶解し、得られた重合体水溶液を用いた。
【0066】
[GPC測定]
合成例1~3で得られた各重合体のGPC測定は、以下の条件で実施した。
GPCシステム:EcoSEC システム(東ソー株式会社製)
カラム:Shodex OHpak SB-802.5 HQ(昭和電工株式会社製)、およびSB-806M HQ(昭和電工株式会社製)を直列に接続
展開溶媒:20mMりん酸ナトリウム緩衝液(pH 7.4)
検出器:示差屈折率検出器
分子量標準:EasiVial PEG/PEO(Agilent Technologies 製)
流速:0.5mL/分
カラム温度:40℃
サンプル:得られた重合体を終濃度0.1重量%となるよう展開溶媒で希釈
注入量:100μL
【0067】
合成例1~3で使用した単量体およびそのモル比、並びに得られた重合体の重量平均分子量を、表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
[実験例1]
第1の実験例の系列(実験例1-1~実験例1-4)として、RT-PCR法に基づく核酸増幅法定性検査を行った。増幅対象の核酸としては、SARS-CoV-2 RT-qPCR Detection Kit(富士フイルム和光純薬株式会社製)に付属の標準RNAをWater, Nuclease freeで希釈して、得られたRNA水溶液を使用した。
【0070】
[反応組成物]
反応試薬、重合体、増幅対象の核酸を用いて、表2に示す10種の反応組成物を調製した。なお、本発明の反応組成物の範囲内であるものは、実験例1-2の実施例1-1、および実験例1-3の実施例1-2である。
【0071】
【表2】
【0072】
上記表2および添付の配列表に記載の「FAM」とは、カルボキシフルオレセインを意味し、「BHQ1」とは、ブラックホールクエンチャー1を意味する。
【0073】
[核酸増幅反応]
上記の各反応組成物は、PCRプレート(MicroAmpTM Fast Optical 96-well Reaction Plate with Barcode, 0.1mL、AppliedBioscience 製)内で調製した。このPCRプレートをStepOnePlusTM Real-Time PCR System(AppliedBioscience 製)にセットし、表3に示す温度プログラムにより、核酸増幅反応を行った。プローブ1-Pに由来するFAMの蛍光強度、およびパッシブリファレンス(50 x ROX Passive Reference)の蛍光強度を読取った。出力されたΔRnの値を、以降シグナル値と記載する。また、最終サイクル(すなわち60サイクル)のシグナル値をエンドポイント値と記載する。
【0074】
【表3】
【0075】
[結果]
実験例1-1の結果を表4に示す。これらは増幅対象の核酸を含まない陰性対照の増幅結果であり、ここで得られるシグナル値は実験上の非特異的なシグナル値であると言える。
【0076】
実験例1-1の結果より、ΔRnの最大値の10倍である「ΔRn=0.2」を閾値として設定した。実験例1-2~実験例1-4では、前記閾値を超えるエンドポイント値が得られたときを「陽性」と、そうでないときを「陰性」と判定した。ただし、シグナル値が初めて閾値を超えたときのサイクル数(以下「C値」と記載することがある)が45を超えるものは、「陰性」と判定した。
【0077】
【表4】
【0078】
実験例1-2~実験例1-4の結果を表5に示す。これらはいずれも増幅対象の核酸を添加した陽性対照の増幅結果であり、理想条件では併行試験の全てが陽性となる。実際に陽性判定が得られた数を比較することで、再現性を評価した。
【0079】
実験例1-2の結果において、対照2の陽性判定の数が3だったのに対し、重合体a1を使用する実施例1-1の陽性判定の数は9であった。従って、本発明の反応組成物を用いることで、核酸増幅法の再現性が著しく改善することが分かる。
【0080】
実験例1-3の結果は、増幅対象の核酸の濃度を、実験例1-2よりもさらに低く設定した場合の増幅結果であり、重合体a1を使用する実施例1-2の再現性が高いことが分かる。
【0081】
実験例1-4の結果は、増幅対象の核酸の濃度を実験例1-2よりも高く設定した場合の増幅結果である。この場合、陽性判定の数は本発明の重合体の有無によって変わらなかった。従って、本発明の効果が好ましく発現するのは、増幅対象の核酸が極めて低濃度の場合であることが分かる。
【0082】
【表5】
【0083】
[実験例2]
第2の実験例として、実験例1とは別の核酸増幅反応系を設定し、実験例1と同様に再現性の評価を行った。
【0084】
[反応組成物]
反応試薬、重合体、増幅対象の核酸を用いて、表6に示す6種の反応組成物を調製した。なお、本発明の反応組成物の範囲内であるものは、実験例2-2の実施例2-1、および実験例2-3の実施例2-2である。
【0085】
【表6】
【0086】
[核酸増幅反応]
上記の各反応組成物は、PCRプレート(MicroAmpTM Fast Optical 96-well Reaction Plate with Barcode, 0.1mL、AppliedBioscience製)内に調製した。このPCRプレートをStepOnePlusTM Real-Time PCR System(AppliedBioscience製)にセットし、表7に示す温度プログラムにより、核酸増幅反応を行った。Primers and Probes No.2 に含まれる TaqManTMプローブに由来するFAMの蛍光強度、およびパッシブリファレンス(50 x ROX Passive Reference)の蛍光強度を読取った。出力されたΔRnの値を、以降シグナル値と記載する。また、最終サイクル(すなわち60サイクル)のシグナル値をエンドポイント値と記載する。
【0087】
【表7】
【0088】
[結果]
実験例2-1の結果を表8に示す。これらは増幅対象の核酸を含まない陰性対照の増幅結果であり、ここで得られるシグナル値は実験上の非特異的なシグナル値であると言える。
【0089】
実験例2-1の結果より、ΔRnの最大値の10倍である「ΔRn=0.2」を閾値として設定した。実験例2-2~実験例2-3では、前記閾値を超えるエンドポイント値が得られたときを「陽性」と、そうでないときを「陰性」と判定した。ただし、シグナル値が初めて閾値を超えたときのサイクル数(C値)が45を超えるものは、「陰性」と判定した。
【0090】
【表8】
【0091】
実験例2-2および実験例2-3の結果を表9に示す。これらはいずれも増幅対象の核酸を添加した陽性対照の増幅結果であり、理想条件では併行試験の全てが陽性となる。実際に陽性判定が得られた数を比較することで、再現性を評価した。
【0092】
実験例2-2および実験例2-3の結果より、重合体a2を使用する実施例2-1および実施例2-2も、核酸増幅法の再現性が好ましく向上したことが分かる。
【0093】
【表9】
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の核酸増幅用の反応組成物を用いれば、核酸増幅法の再現性を高めることができる。従って、本発明の核酸増幅用の反応組成物は、核酸増幅法定性検査の信頼性向上や、dPCR法による核酸の定量における正確性の向上に役立てることができる。
【配列表】
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