(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053547
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】特性変化推定プログラム、学習モデル生成プログラムおよび特性変化推定システム
(51)【国際特許分類】
G01N 33/44 20060101AFI20240408BHJP
G01N 21/3563 20140101ALI20240408BHJP
【FI】
G01N33/44
G01N21/3563
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023170270
(22)【出願日】2023-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2022159752
(32)【優先日】2022-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】向井 孝次
(72)【発明者】
【氏名】弓山 翔平
(72)【発明者】
【氏名】近藤 峻右
(72)【発明者】
【氏名】小柳 昂平
(72)【発明者】
【氏名】野村 圭一郎
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA03
2G059BB08
2G059EE01
2G059EE12
2G059HH01
2G059MM01
2G059MM10
(57)【要約】
【課題】劣化処理後の樹脂組成物の物性値を推定することができる特性変化推定プログラム、学習モデル生成プログラムおよび特性変化推定システムを提供すること。
【解決手段】本発明に係る特性変化推定プログラムは、コンピュータに、熱可塑性樹脂組成物における劣化処理前後の分光分析によってそれぞれ得られるスペクトル強度の差である差スペクトル強度を説明変数、当該熱可塑性樹脂組成物の劣化処理後の特性保持率を目的変数とする特性保持率予測モデルに、推定対象の熱可塑性樹脂組成物の差スペクトル強度を入力し、該推定対象の熱可塑性樹脂組成物の劣化処理後の特性保持率を取得する特性保持率取得ステップと、推定対象の熱可塑性樹脂組成物の劣化処理前の機械物性値と、特性保持率とを用いて、当該推定対象の熱可塑性樹脂組成物の機械物性値を推定する物性値推定ステップと、を実行させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂組成物の劣化処理後の機械物性値を推定する特性変化推定プログラムであって、
コンピュータに、
前記熱可塑性樹脂組成物における劣化処理前後の分光分析によってそれぞれ得られるスペクトル強度の差である差スペクトル強度を説明変数、当該熱可塑性樹脂組成物の劣化処理後の特性保持率を目的変数とする特性保持率予測モデルに、推定対象の熱可塑性樹脂組成物の差スペクトル強度を入力し、該推定対象の熱可塑性樹脂組成物の劣化処理後の特性保持率を取得する特性保持率取得ステップと、
前記推定対象の熱可塑性樹脂組成物の劣化処理前の機械物性値と、前記特性保持率とを用いて、当該推定対象の熱可塑性樹脂組成物の機械物性値を推定する物性値推定ステップと、
を実行させる特性変化推定プログラム。
【請求項2】
前記特性保持率取得ステップは、
既知の熱可塑性樹脂組成物の差スペクトル強度を前記特性保持率予測モデルに入力して、前記推定対象の熱可塑性樹脂組成物の劣化処理後の特性保持率を取得する、
請求項1に記載の特性変化推定プログラム。
【請求項3】
前記特性保持率取得ステップは、
既知の熱可塑性樹脂組成物を構成する原料の配合条件を説明変数、該熱可塑性樹脂組成物の機械物性値を目的変数とする機械学習によって生成された物性値推定モデルに対して、設定対象の熱可塑性樹脂組成物の複数の配合条件をそれぞれ入力し、前記機械物性値の推定値を出力する物性値推定プログラムによって配合条件が推定された熱可塑性樹脂組成物の差スペクトル強度を、前記特性保持率予測モデルに入力して、前記推定対象の熱可塑性樹脂組成物の劣化処理後の特性保持率を取得する、
請求項1に記載の特性変化推定プログラム。
【請求項4】
コンピュータに、
既知の熱可塑性樹脂組成物における劣化処理前後の分光分析によってそれぞれ得られるスペクトル強度の差である差スペクトル強度を説明変数、当該熱可塑性樹脂組成物の劣化処理後の特性保持率を目的変数とする学習用データを用いて機械学習することによって、劣化処理後の機械物性値の特性保持率を出力する学習モデルを生成する学習モデル生成ステップ、
を実行させる学習モデル生成プログラム。
【請求項5】
前記学習モデル生成ステップは、
前記学習用データの一部を互いに異なる複数の統計モデルに適用して機械学習をそれぞれ実行することによって複数の検証用の学習モデルを生成し、
前記複数の検証用の学習モデルを用いて最適な統計モデルを選択し、
前記選択した統計モデルおよび前記学習用データを用いて前記学習モデルを生成する、
請求項4に記載の学習モデル生成プログラム。
【請求項6】
前記学習モデル生成ステップは、
前記検証用の学習モデルの精度を評価することによって前記統計モデルを選択する、
請求項5に記載の学習モデル生成プログラム。
【請求項7】
前記学習モデル生成ステップは、
前記検証用の学習モデルに対する精度評価指標を算出し、
前記精度評価指標が最も良好な前記検証用の学習モデルの生成に用いた統計モデルを選択する、
請求項6に記載の学習モデル生成プログラム。
【請求項8】
前記精度評価指標は、前記検証用の学習モデルの未学習のデータに対する汎化性能を評価する交差検定によって算出される決定係数を用いて定義される値である、
請求項7に記載の学習モデル生成プログラム。
【請求項9】
前記学習モデル生成ステップは、
既知の熱可塑性樹脂組成物の劣化処理前後の吸収スペクトル強度を用いて算出される差スペクトル強度を前記説明変数として、前記学習モデルを生成する、
請求項4に記載の学習モデル生成プログラム。
【請求項10】
熱可塑性樹脂組成物の劣化処理後の機械物性値を推定する特性変化推定システムであって、
前記熱可塑性樹脂組成物における劣化処理前後の分光分析によってそれぞれ得られるスペクトル強度の差である差スペクトル強度を説明変数、当該熱可塑性樹脂組成物の劣化処理後の特性保持率を目的変数とする特性保持率予測モデルに、推定対象の熱可塑性樹脂組成物の差スペクトル強度を入力し、該推定対象の熱可塑性樹脂組成物の劣化処理後の特性保持率を取得する特性保持率予測部と、
前記推定対象の熱可塑性樹脂組成物の劣化処理前の機械物性値と、前記特性保持率とを用いて、当該推定対象の熱可塑性樹脂組成物の機械物性値を推定する特性推定部と、
を備える特性変化推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特性変化推定プログラム、学習モデル生成プログラムおよび特性変化推定システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂組成物は、耐熱性、難燃性、耐薬品性、電気絶縁性、耐湿熱性および機械的強度や寸法安定性などに優れたエンジニアリングプラスチックの一つである。この熱可塑性樹脂組成物は、配合や製造条件によって機械特性が変わるため、要求する特性に合わせた配合や製造条件が選択される。例えば、所望の機械特性を有する樹脂組成物の製造条件として、機械学習によって制御パラメータを決定する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の制御パラメータの決定方法等、従来の機械特性の予測技術は、樹脂組成物の劣化処理前の物性値を予測するものであり、劣化した樹脂組成物の物性値については考慮されていない。このため、劣化処理後の樹脂組成物の物性値を推定できる技術が求められていた。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、劣化処理後の樹脂組成物の物性値を推定することができる特性変化推定プログラム、学習モデル生成プログラムおよび特性変化推定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る特性変化推定プログラムは、熱可塑性樹脂組成物の劣化処理後の機械物性値を推定する特性変化推定プログラムであって、コンピュータに、前記熱可塑性樹脂組成物における劣化処理前後の分光分析によってそれぞれ得られるスペクトル強度の差である差スペクトル強度を説明変数、当該熱可塑性樹脂組成物の劣化処理後の特性保持率を目的変数とする特性保持率予測モデルに、推定対象の熱可塑性樹脂組成物の差スペクトル強度を入力し、該推定対象の熱可塑性樹脂組成物の劣化処理後の特性保持率を取得する特性保持率取得ステップと、前記推定対象の熱可塑性樹脂組成物の劣化処理前の機械物性値と、前記特性保持率とを用いて、当該推定対象の熱可塑性樹脂組成物の機械物性値を推定する物性値推定ステップと、を実行させる。
【0007】
また、本発明に係る特性変化推定プログラムは、上記発明において、前記特性保持率取得ステップは、既知の熱可塑性樹脂組成物の差スペクトル強度を前記特性保持率予測モデルに入力して、前記推定対象の熱可塑性樹脂組成物の劣化処理後の特性保持率を取得する。
【0008】
また、本発明に係る特性変化推定プログラムは、上記発明において、前記特性保持率取得ステップは、既知の熱可塑性樹脂組成物を構成する原料の配合条件を説明変数、該熱可塑性樹脂組成物の機械物性値を目的変数とする機械学習によって生成された物性値推定モデルに対して、設定対象の熱可塑性樹脂組成物の複数の配合条件をそれぞれ入力し、前記機械物性値の推定値を出力する物性値推定プログラムによって配合条件が推定された熱可塑性樹脂組成物の差スペクトル強度を、前記特性保持率予測モデルに入力して、前記推定対象の熱可塑性樹脂組成物の劣化処理後の特性保持率を取得する。
【0009】
また、本発明に係る学習モデル生成プログラムは、コンピュータに、既知の熱可塑性樹脂組成物における劣化処理前後の分光分析によってそれぞれ得られるスペクトル強度の差である差スペクトル強度を説明変数、当該熱可塑性樹脂組成物の劣化処理後の特性保持率を目的変数とする学習用データを用いて機械学習することによって、劣化処理後の機械物性値の特性保持率を出力する学習モデルを生成する学習モデル生成ステップ、を実行させる。
【0010】
また、本発明に係る学習モデル生成プログラムは、上記発明において、前記学習モデル生成ステップは、前記学習用データの一部を互いに異なる複数の統計モデルに適用して機械学習をそれぞれ実行することによって複数の検証用の学習モデルを生成し、前記複数の検証用の学習モデルを用いて最適な統計モデルを選択し、前記選択した統計モデルおよび前記学習用データを用いて前記学習モデルを生成する。
【0011】
また、本発明に係る学習モデル生成プログラムは、上記発明において、前記学習モデル生成ステップは、前記検証用の学習モデルの精度を評価することによって前記統計モデルを選択する。
【0012】
また、本発明に係る学習モデル生成プログラムは、上記発明において、前記学習モデル生成ステップは、前記検証用の学習モデルに対する精度評価指標を算出し、前記精度評価指標が最も良好な前記検証用の学習モデルの生成に用いた統計モデルを選択する。
【0013】
また、本発明に係る学習モデル生成プログラムは、上記発明において、前記精度評価指標は、前記検証用の学習モデルの未学習のデータに対する汎化性能を評価する交差検定によって算出される決定係数を用いて定義される値である。
【0014】
また、本発明に係る学習モデル生成プログラムは、上記発明において、前記学習モデル生成ステップは、既知の熱可塑性樹脂組成物の劣化処理前後の吸収スペクトル強度を用いて算出される差スペクトル強度を前記説明変数として、前記学習モデルを生成する。
【0015】
また、本発明に係る特性変化推定システムは、熱可塑性樹脂組成物の劣化処理後の機械物性値を推定する特性変化推定システムであって、前記熱可塑性樹脂組成物における劣化処理前後の分光分析によってそれぞれ得られるスペクトル強度の差である差スペクトル強度を説明変数、当該熱可塑性樹脂組成物の劣化処理後の特性保持率を目的変数とする特性保持率予測モデルに、推定対象の熱可塑性樹脂組成物の差スペクトル強度を入力し、該推定対象の熱可塑性樹脂組成物の劣化処理後の特性保持率を取得する特性保持率予測部と、前記推定対象の熱可塑性樹脂組成物の劣化処理前の機械物性値と、前記特性保持率とを用いて、当該推定対象の熱可塑性樹脂組成物の機械物性値を推定する特性推定部と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、劣化処理後の樹脂組成物の物性値を推定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る特性変化推定システムの概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る特性変化推定システムが備える学習装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、熱処理による吸収スペクトルの変化の一例について説明するための図である。
【
図4】
図4は、熱処理による特性保持率の変化の一例について説明するための図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態に係る学習装置が行う学習用データ生成処理の概要を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態に係る特性変化推定システムが備える特性変化推定装置の構成を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態に係る特性変化推定システムが行う特性保持率取得処理の流れを説明するための図である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態に係る学習装置が行う学習処理の概要を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態に係る特性変化推定装置が行う特性変化推定処理の概要を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態の変形例1に係る学習装置が行う学習処理の概要を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、本発明の実施形態の変形例2に係る特性変化推定システムが備える特性変化推定装置の構成を示すブロック図である。
【
図12】
図12は、本発明の実施形態の変形例2に係る特性変化推定システムが行う配合条件設定処理の流れを説明するための図である。
【
図13】
図13は、本発明の実施形態の変形例2に係る特性変化推定装置が行う配合条件設定処理の概要を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る特性変化推定システムの実施形態を、図面に基づいて、詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係る特性変化推定システムの概略構成を示す図である。特性変化推定システム1は、学習用データを作成し、該作成した学習用データを用いて学習した学習モデルを生成する学習装置2と、学習装置2が生成した学習モデルを用いて、劣化処理後の熱可塑性樹脂組成物の特性を推定する特性変化推定装置3と、特性変化推定装置3の推定結果を含む情報を表示する表示装置4と、入力装置5とを備える。
【0020】
特性変化推定装置3が推定する機械物性値としては、例えば、引張強度、引張破断伸度、引張弾性率、曲げ強度、曲げ破断歪み、曲げ弾性率、ウェルド強度、シャルピー衝撃強度、線膨張係数、メルトフローレート、溶融粘度、スパイラル流動長等が挙げられる。
【0021】
熱可塑性樹脂組成物としては特に制限されないが、例えば、スチレン系樹脂、フッ素樹脂、ポリオキシメチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリアミドイミド、塩化ビニル、オレフィン系樹脂、ポリアクリレート、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリーレンサルファイド、セルロース誘導体、液晶性樹脂およびこれらの変性樹脂などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0022】
スチレン系樹脂としては、例えば、PS(ポリスチレン)、HIPS(高衝撃ポリスチレン)、AS(アクリロニトリル/スチレン共重合体)、AES(アクリロニトリル/エチレン・プロピレン・非共役ジエンゴム/スチレン共重合体)、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体)、MBS(メタクリル酸メチル/ブタジエン/スチレン共重合体)などが挙げられる。ここで、「/」は共重合体を示し、以下同じである。これらを2種以上含有してもよい。これらの中でも、特にABSが好ましい。
【0023】
ポリアミドの具体的な例としては、例えば、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリペンタメチレンアジパミド(ナイロン56)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/12)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ-2-メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/M5T)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)およびこれらの共重合体などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0024】
オレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1-ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/非共役ジエン共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル共重合体、プロピレン-g-無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン-g-無水マレイン酸共重合体、メタクリル酸/メタクリル酸メチル/グルタル酸無水物共重合体などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0025】
ポリエステルとしては、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体の残基を主構造単位とする重合体または共重合体が好ましい。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリプロピレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート/ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート/ナフタレートなどの芳香族ポリエステルが特に好ましく、ポリブチレンテレフタレートが最も好ましい。これらを2種以上含有してもよい。これらのポリエステルにおいては、全ジカルボン酸残基に対するテレフタル酸残基の割合が30モル%以上であることが好ましく、40モル%以上であることがさらに好ましい。
【0026】
また、ポリエステルは、ヒドロキシカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体およびラクトンから選択された一種以上の残基を含有していてもよい。ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、o-ヒドロキシ安息香酸、m-ヒドロキシ安息香酸、p-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸などが挙げられる。ラクトンとしては、例えば、カプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5-オキセパン-2-オンなどが挙げられる。これらの残基を構造単位とする重合体または共重合体としては、例えば、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸/乳酸、ポリヒドロキシ酪酸/β-ヒドロキシ酪酸/β-ヒドロキシ吉草酸などの脂肪族ポリエステル樹脂が挙げられる。
【0027】
ポリカーボネートは、二官能フェノール系化合物に苛性アルカリおよび溶剤の存在下でホスゲンを吹き込むホスゲン法、二官能フェノール系化合物と炭酸ジエチルとを触媒の存在下でエステル交換させるエステル交換法などにより得ることができる。ポリカーボネートとしては、芳香族ホモポリカーボネート、芳香族コポリカーボネート等が挙げられる。
【0028】
二官能フェノール系化合物としては、例えば、2,2’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2’-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジフェニル)ブタン、2,2’-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジプロピルフェニル)プロパン、1,1’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1-フェニル-1,1’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン等が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0029】
ポリアリーレンサルファイドとしては、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0030】
セルロース誘導体としては、例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、エチルセルロースなどを挙げることができる。これらを2種以上含有してもよい。
【0031】
なお、熱可塑性樹脂組成物は、強化繊維や、非繊維状の無機充填材等を含んでもよい。
【0032】
強化繊維としては、ガラス繊維、ガラスミルドファイバー、ガラスフラットファイバー、異形断面ガラスファイバー、ガラスカットファイバー、扁平ガラス繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維、黄銅繊維、ロックウール、PAN(Polyacrylonitrile)系やピッチ系等の炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、炭酸カルシウムウィスカー、ワラステナイトウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、アスベスト繊維、石膏繊維、セラミック繊維、ジルコニア繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維等が挙げられ、これらは2種類以上を併用することも可能である。なかでもガラス繊維、炭素繊維が好ましい。
【0033】
非繊維状の無機充填材としては、タルク、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケート、ハイドロタルサイト等の珪酸塩、酸化珪素、ガラス粉、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、シリカ(破砕状・球状)、石英、ガラスビーズ、ガラスフレーク、破砕状・不定形状ガラス、ガラスマイクロバルーン、二硫化モリブデン、酸化アルミニウム(破砕状)や、透光性アルミナ(繊維状・板状・鱗片状・粒状・不定形状・破砕品)、酸化チタン(破砕状)、酸化亜鉛(繊維状・板状・鱗片状・粒状・不定形状・破砕品)等の酸化物、炭酸カルシウムや、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛等の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩、水酸化カルシウムや、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、炭化珪素、カーボンブラックおよびシリカ、黒鉛、窒化アルミニウム、透光性窒化アルミニウム(繊維状・板状・鱗片状・粒状・不定形状・破砕品)、ポリリン酸カルシウム、グラファイト、金属粉、金属フレーク、金属リボン、金属酸化物等が挙げられる。ここで、金属種(金属粉、金属フレーク、金属リボン)の具体例としては、銀、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、鉄、黄銅、クロム、錫等が例示できる。また、その他の無機充填材としてカーボン粉末、黒鉛、カーボンフレーク、鱗片状カーボン、フラーレン、グラフェン等が挙げられ、これらは中空であってもよく、さらにはこれら無機充填材を2種類以上併用することも可能である。なかでも炭酸カルシウム、カーボンブラック、黒鉛が好ましい。
【0034】
その他の添加剤としては、例えば、シラン化合物(γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランや、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプト基含有アルコキシシラン化合物、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシランや、γ-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物、γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシランや、γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルエチルジメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルエチルジエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリクロロシラン等のイソシアネート基含有アルコキシシラン化合物、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシランや、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基含有アルコキシシラン化合物、および、γ-ヒドロキシプロピルトリメトキシシランや、γ-ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン等の水酸基含有アルコキシシラン化合物等)や、酸化防止剤および耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、リン系、ホスファイト系、アミン系、硫黄系およびこれらの置換体等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤および滑剤(モンタン酸およびその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、ステアラート、ビス尿素およびポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、着色用カーボンブラック等)、染料(ニグロシン等)、結晶核剤(タルク、シリカ、カオリン、クレー等)、可塑剤(p-オキシ安息香酸オクチル、N-ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(例えば、赤燐、燐酸エステル、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂、または、これらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)、熱安定剤、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸リチウムなどの滑剤、ビスフェノールA型などのビスフェノールエポキシ樹脂、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等の強度向上材、紫外線防止剤や、着色剤、難燃剤および発泡剤等の通常の添加剤が挙げられる。
【0035】
続いて、学習装置2の構成について
図2を参照して説明する。学習装置2は、特性変化推定装置3と電気的に接続されている。学習装置2は、学習用データを選択的に抽出して、抽出した学習用データを用いた学習によって学習モデルを生成して出力する。
【0036】
図2は、本実施形態に係る特性変化推定システムが備える学習装置の構成を示すブロック図である。学習装置2は、抽出部21、学習部22、制御部23および記憶部24を有する。
【0037】
抽出部21は、記憶部24に記憶されているデータから、対象の熱可塑性樹脂組成物における、劣化処理前後の分光分析によって得られるスペクトル特性を示すデータと、劣化処理後の物性保持率とが対応付いたデータを抽出する。ここで、劣化処理前後のスペクトル特性を示すデータとは、劣化処理前のスペクトル強度と、劣化処理後のスペクトル強度との差を示す差スペクトル強度である。具体的には、スペクトル強度は、吸収スペクトルに基づくものである。なお、抽出部21は、入力装置5を介して入力された条件にしたがってデータを抽出してもよい。
抽出部21が抽出したデータセットは、差スペクトル強度を説明変数、物性保持率を目的変数とする学習用データとして用いられる。
【0038】
ここで、熱可塑性樹脂組成物の特性は、経時変化や劣化処理時間によって、特性が変化する。劣化処理として、例えば、樹脂組成物が、熱、湿度、水、油、酸、アルカリ、溶剤類、紫外線、可視光線、放射線、空気、酸素、オゾン、二酸化硫黄、硫化水素、窒素酸化物、金属、塩分、降下塵埃などに晒されることが挙げられ、さらに冷熱サイクル、乾湿サイクル、デユーサイクルなどによる劣化処理が挙げられる。この際、熱可塑性樹脂組成物の吸収スペクトル強度が、劣化処理に応じて変化する。具体的には、熱可塑性樹脂組成物を構成する官能基における特徴的な吸収の強度が、劣化処理によって変化する。吸収スペクトル強度は、劣化処理によって変化する伸縮振動、変角振動、結晶吸収等のスペクトル強度を示す。
【0039】
図3は、熱処理による吸収スペクトルの変化の一例について説明するための図である。
図3では、曲線L
1、L
2、L
3の順に熱処理時間が長い。
図3に示すように、劣化処理によって、吸収の強度が増大する。なお、
図3に示す曲線は一例であり、熱処理時間の増大によって強度が低下する場合等、組成物によって異なる場合がある。
【0040】
図4は、熱処理による特性保持率の経時変化の一例について説明するための図である。
図4は、特性保持率として引張強度の保持率の一例を示す。なお、ここでは、
図3に示す吸収スペクトルの変化と対応付いているものとして説明する。
図4に示す例では、熱可塑性樹脂組成物は、熱処理の増大によって引張強度の低下が進み、強度保持率が低下する。
【0041】
図3および
図4に示すように、吸収の強度(吸収スペクトル強度)と、引張強度の保持率とは、それぞれの強度変化に相関をもつ。このため、強度変化を示す差から、強度保持率を推定することができる。本実施の形態では、劣化処理前および劣化処理後、例えば、熱処理前と熱処理後の吸収スペクトル強度の差を示す差スペクトル強度と、強度保持率の時間変化とを学習用データとする。この際、差スペクトル強度は、例えば
図3に示す曲線L
1と、曲線L
2またはL
3との差によって生成される。
学習用データとしては、差スペクトル強度が説明変数、特性保持率が目的変数とされる。
【0042】
説明変数として用いる差スペクトル強度は、学習済みモデルの予測精度を向上させることを目的に変数選択を行ってもよい。ここで、変数選択とは、目的変数となる特性保持率と強い相関を示す、または、吸収スペクトルから判断される樹脂の構造情報に強い因果関係がある波数の差スペクトル強度を説明変数として選択することである。さらに、吸収スペクトルを用いた回帰分析における多重共線性の問題を解決するために、変数選択は、説明変数間の相関が弱いもの同士を選択する手法も含む。このような方法によって目的変数の変動を説明するために重要であると考えられる変数を選択することで、予測精度が高い回帰モデルの構築が可能になる。
【0043】
学習部22は、差スペクトル強度を説明変数、特性保持率を目的変数とした学習用データを用いて、学習モデルを生成する。
【0044】
学習部22が行う学習は、公知の学習方法を採用することができる。学習に採用される統計モデルとしては、例えば、単純線形回帰モデル、Ridge回帰、Lasso回帰、Elastic Net回帰、一般加法モデル、ランダムフォレスト回帰、ルールフィット回帰、勾配ブースティング木、エクストラツリー、サポートベクトル回帰、ガウス過程回帰、k最近傍法による回帰、カーネルリッジ回帰、ニューラルネットワーク等が挙げられる。
【0045】
例えば、学習部22が正則化を用いた学習によって学習済みモデルを生成する場合、学習部22は、学習モデルのハイパーパラメータの候補値を複数与え、与えられたハイパーパラメータの候補値のそれぞれに対して学習を実行し、一つの目的変数(各物性値の特性保持率)について、一つの学習モデルを生成し、記憶部24に格納する。その後、学習部22は、各候補値によって学習して得たモデルに対し、学習用データを用いて、交差検証またはホールドアウト検証による予測誤差を算出し、最小の予測誤差を与える学習モデルを選択する。なお、ここでいうハイパーパラメータは、学習部22が学習を行うために予め設定しておくパラメータであり、例えば正則化の係数などを含む。また、ニューラルネットワークを用いた学習モデルの場合のハイパーパラメータには、ニューラルネットワークの層の数なども含まれる。
【0046】
図2に戻り、制御部23は、学習装置2の動作を統括して制御する。
【0047】
記憶部24は、学習装置2を動作させるための各種プログラム、および学習装置2の動作に必要な各種パラメータ等を含むデータを記憶する。各種プログラムには、学習モデルを生成するための学習用データを生成する学習用データ生成プログラム、学習用データを用いて学習して学習モデルを生成する学習モデル生成プログラムも含まれる。各種パラメータには、ハイパーパラメータや、学習部22が学習することによって取得したパラメータ等が含まれる。また、記憶部24は、学習用データを構成するためのデータ(例えば、上述した差スペクトル強度や特性保持率、機械物性値)を記憶する。
【0048】
記憶部24は、各種プログラム等があらかじめインストールしたROM(Read Only Memory)、および各処理の演算パラメータやデータ等を記憶するRAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等を用いて構成される。
【0049】
各種プログラムは、HDD、フラッシュメモリ、CD-ROM、DVD-ROM、Blu-ray(登録商標)等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して広く流通させることも可能である。ここでいう通信ネットワークは、例えば既存の公衆回線網、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等を用いて構成されるものであり、有線、無線を問わない。
【0050】
以上の機能構成を有する学習装置2は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の1または複数のハードウェアを用いて構成されるコンピュータである。
【0051】
ここで、学習部22が行う学習用データ生成処理について、
図5を参照して説明する。
図5は、本発明の一実施形態に係る学習装置が行う学習用データ生成処理の概要を示すフローチャートである。
【0052】
まず、学習装置2は、対象の熱可塑性樹脂組成物の劣化処理前の吸光度(n強度)を取得する(ステップS1)。そして、学習装置2は、この熱可塑性樹脂組成物の機械物性値を取得する(ステップS2)。
なお、ステップS1およびS2は、ステップS2を先に行ってもよいし、同時に行ってもよい。
【0053】
その後、学習装置2は、対象の熱可塑性樹脂組成物の劣化処理後の吸光度(吸収スペクトル強度)を取得する(ステップS3)。そして、学習装置2は、この熱可塑性樹脂組成物の機械物性値を取得する(ステップS4)。機械物性値は、ステップS2と同じ種別の機械物性値である。ステップS3およびS4では、劣化処理後または所定期間経過後の熱可塑性樹脂組成物の吸収スペクトル強度および機械物性値が得られる。
なお、ステップS3およびS4は、ステップS4を先に行ってもよいし、同時に行ってもよい。
【0054】
劣化処理前後のデータが得られると、学習装置2は、差スペクトル強度(以下、差スペクトルデータともいう)を生成する(ステップS5)。学習装置2は、劣化処理前と劣化処理後との吸収スペクトル強度の差分を算出したものを差スペクトルデータとする。
【0055】
また、学習装置2は、特性保持率を算出する(ステップS6)。学習装置2では、劣化処理前に対する劣化処理後の機械物性値の比率を算出し、これを特性保持率とする。
なお、ステップS5およびS6は、ステップS6を先に行ってもよいし、同時に行ってもよい。
【0056】
以上説明したようにして、差スペクトルデータと特性保持率とが生成され、これらは、差スペクトルデータを説明変数、特性保持率を目的変数とする学習用データとして用いられる。なお、生成した学習用データは、記憶部24に格納され、学習モデルを生成する際に、抽出部21によって抽出される。
【0057】
続いて、特性変化推定装置3について、
図6を参照して説明する。
図6は、本実施形態に係る特性変化推定システムが備える特性変化推定装置の構成を示すブロック図である。特性変化推定装置3は、学習装置2および表示装置4と電気的に接続されている。特性変化推定装置3は、保持率予測部31、特性推定部32、制御部33および記憶部34を有する。
【0058】
特性変化推定装置3は、予測候補となる熱可塑性樹脂組成物の差スペクトル強度と、学習装置2から取得した学習モデルとを用いて、劣化処理後の機械物性値を推定する。
【0059】
図7は、本発明の一実施形態に係る特性変化推定システムが行う特性保持率取得処理の流れを説明するための図である。保持率予測部31は、学習装置2から学習モデル100を取得する。保持率予測部31は、熱可塑性樹脂組成物の差スペクトルデータIPを、学習モデル100に入力することによって、予測値である、特性保持率OPをそれぞれ出力する。
【0060】
特性推定部32は、保持率予測部31が出力した特性保持率をもとに、劣化処理後の特性(機械物性値)を推定する。特性推定部32は、例えば、劣化処理前の機械物性値と、特性保持率とを乗算して、劣化処理後の機械物性値を推定する。
【0061】
制御部33は、特性変化推定装置3の動作を統括して制御する。制御部33は、特性推定部32の処理結果(推定結果)を表示装置4に表示させる表示制御部331を有する。表示制御部331は、推定結果に加えて、特性保持率(予測値)や、熱可塑性樹脂組成物の情報等を表示装置4に表示させてもよい。
【0062】
記憶部34は、特性変化推定装置3を動作させるための各種プログラム、および特性変化推定装置3の動作に必要な各種パラメータ等を含むデータを記憶する。各種プログラムには、学習モデルを用いて実行される特性変化推定プログラムも含まれる。記憶部34は、各種プログラム等があらかじめインストールされたROM、および各処理の演算パラメータやデータ等を記憶するRAM、HDD、SSD等を用いて構成される。
【0063】
各種プログラムは、HDD、フラッシュメモリ、CD-ROM、DVD-ROM、Blu-ray(登録商標)等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して広く流通させることも可能である。また、特性変化推定装置3が、通信ネットワークを介して各種プログラムを取得することも可能である。ここでいう通信ネットワークは、例えば既存の公衆回線網、LAN、WAN等を用いて構成されるものであり、有線、無線を問わない。
【0064】
以上の機能構成を有する特性変化推定装置3は、CPU、GPU、ASIC、FPGA等の1または複数のハードウェアを用いて構成されるコンピュータである。
【0065】
表示装置4は、液晶や有機EL(Electro Luminescence)などからなるディスプレイであり、特性変化推定装置3と電気的に接続されている。表示装置4は、表示制御部331の制御のもとで特性変化推定装置3から出力される表示用データを取得して表示する。なお、表示装置4がスピーカ等の音声出力機能を有してもよい。
【0066】
入力装置5は、分光分析によって得られるスペクトル特性を示すデータおよびそれに対応する劣化処理後の物性保持率、熱可塑性樹脂組成物の配合条件およびそれに対応する劣化処理前の機械物性値等の情報を含む各種情報の入力を受け付け、受け付けた情報を学習装置2および特性変化推定装置3に出力する。入力装置5は、キーボード、マウス、マイク、タッチパネル等のユーザインタフェースを用いて構成される。
【0067】
次に、学習装置2が行う学習処理の流れについて、
図8を参照して説明する。
図8は、本実施形態に係る学習装置が行う学習処理の概要を示すフローチャートである。まず、学習装置2は、記憶部24を参照して、学習に用いるデータセットを抽出する(ステップS11)。ここでは、抽出部21が、対象の熱可塑性樹脂組成物の物性値について、差スペクトルデータと、特性保持率とを組とするデータセットを抽出する。
【0068】
学習部22は、ステップS11において生成された学習用データを用いて機械学習を実行することによって学習モデルを生成する(ステップS12)。
【0069】
その後、特性変化推定装置3において、熱可塑性樹脂組成物の劣化処理後の機械物性値を推定する。
図9は、本発明の一実施形態に係る特性変化推定装置が行う特性変化推定処理の概要を示すフローチャートである。保持率予測部31は、学習装置2から学習モデルを取得し、差スペクトルデータを、この学習モデルに入力する(ステップS21)。この時、熱処理時間等、劣化条件を入力してもよい。
【0070】
差スペクトルデータが学習モデルに入力されると、特性保持率(予測値)が出力される(ステップS22)。保持率予測部31は、出力された特性保持率を、特性推定部32に出力する。
【0071】
特性推定部32は、保持率予測部31が出力した特性保持率と、推定対処とする熱可塑性樹脂組成物の劣化処理前の物性値とを用いて、劣化処理後の機械物性値を算出する(ステップS23)。特性推定部32は、算出した機械物性値を、推定結果として出力する。
【0072】
その後、例えば、表示制御部331は、特性推定部32ら推定結果を取得すると、この推定結果を表示装置4に出力し、該表示装置4に推定結果を表示させる表示制御を行う。表示装置4は、劣化処理後の機械物性値(推定値)を表示する。
【0073】
以上説明した実施の形態では、劣化処理前後の吸収スペクトル強度の差を示す差スペクトルデータと、特性保持率とをもとに学習モデルを生成し、該学習モデルを用いて、劣化処理後の特性保持率を予測する。その後、予測された特性保持率を用いて、劣化処理後の機械物性値を推定する。本実施形態によれば、劣化処理前の熱可塑性樹脂組成物について、吸光度の情報をもとに、劣化処理後の樹脂組成物の物性値を推定することができる。また、劣化処理後の熱可塑性樹脂組成物の機械物性値を推定するうえで、劣化処理前の吸収スペクトル強度のみが分かれば推定可能であり、熱可塑樹脂組成物を非破壊のまま、劣化処理後の機械物性値を推定することができる。
【0074】
ここで、従来、非破壊で分析する技術として、近赤外のスペクトルデータを二次微分処理して補正スペクトルデータを取得し、この補正スペクトルデータを用いて推定物性値を算出することが知られている(例えば、特開2022-7236号公報参照)。しかしながら、二次微分すると、微小変化を示す情報が消えてしまい、推定精度が低下する場合があった。これに対し、実施の形態では、差スペクトル強度として、変化した情報を消さずに、その変化を正確に表現するため、推定精度を低下させることなく、機械物性値を推定することができる。さらに、差スペクトル強度は、複雑な変化であってもその変化を差として表現できるため、構造的に変化が複雑な場合であっても、高精度に機械物性値を推定することができる。
【0075】
(変形例1)
次に、本実施の形態の変形例1について、
図10を参照して説明する。変形例1では、上述した学習モデルの生成処理(
図8参照)が異なる。なお、学習モデルの生成以外の処理は、実施の形態と同じである。変形例1では、互いに異なる複数の統計モデルを用いて検証用の学習モデルを生成し、検証用の学習モデルにおける予測値の予測精度が最も良好な統計モデルを抽出し、抽出した統計モデルを用いて学習モデルを生成する。
【0076】
本変形例1において、検証用の学習モデルの精度を評価するための指標(以下、精度評価指標という)として、5分割交差検定における5つの訓練サブセットを用いてそれぞれ生成された検証用の学習モデルと、各検証用の学習モデルにおいて未学習の検証サブセットを用いて計算した5つの決定係数の平均値を用いる。
【0077】
ここで、交差検定とは、学習モデルの未学習データに対する予測性能、つまり汎化性能を評価する手法である。5分割交差検定の場合、訓練データセットを5つのサブセットに分割する。そのうち4つのサブセットを学習用データとして検証用の学習モデルを生成し、1つを未学習の検証サブセットとして、生成した検証用の学習モデルの精度検証に用いる。これを5つのサブセットのうち異なるサブセットを検証サブセットとして5回繰り返すことで、未学習データに対する汎化性能を評価する。
【0078】
本変形例1では、検証用の学習モデルの精度を評価する精度評価指標として、検証用の学習モデルi(i=1~5)の決定係数Ri
2の平均値Rbarを用いる。
Rbar=ΣiRi
2/5・・・(1)
ここで、決定係数Ri
2は下式(2)で定義される。また、Σiはiに関する和を意味する。
Ri
2=1-Σj(yj-fi(xj))2/Σj(yj-ybar)2・・・(2)
上式(2)において、yjは検証サブセットにおける機械物性値の実測値(j=1~n。nは検証サブセットにおける実測値の数)、fi(xi)はyjと組をなす未学習の配合比率xjを学習モデルiに入力したときに出力される機械物性値(予測値)、ybarは実測値yiの平均値である。また、Σjはjに関する和を意味する。
【0079】
図10は、本変形例1に係る学習装置が行う学習処理の概要を示すフローチャートである。
【0080】
まず、学習装置2は、ステップS11と同様にして、抽出部21が学習に用いるデータセットを抽出する(ステップS31)。
【0081】
学習部22は、複数の統計モデルを用いて、サブセットに対して検証用の学習モデルを生成する(ステップS32)。学習部22は、例えば上述した複数の統計モデルから選択される互いに異なる複数の統計モデルを用いて、検証用の学習モデルを生成する。この際に選択される統計モデルは、学習モデルを構築することができるすべての統計モデルを選択してもよいし、予め設定された複数の統計モデルを選択してもよいし、ユーザによって指定された統計モデルを選択してもよい。
【0082】
学習部22は、ステップS32で生成した検証用の学習モデルに対して決定係数を算出し、精度評価指標として複数の決定係数の平均値(ここでは5つの検証用の学習モデルの決定係数Ri
2の平均値Rbar)を算出する(ステップS33)。
【0083】
学習部22は、精度評価指標が最も良好な検証用の学習モデルを生成する際に用いた統計モデルを選択する(ステップS34)。具体的には、学習部22は、決定係数の平均値Rbarを算出し、その平均値Rbarが所定の条件を満たす検証用の学習モデルを与える統計モデルを選択する。例えば、所定の条件として、平均値Rbarが0.5以上であることが好ましく、0.7以上であることがより好ましく、0.9以上であることがさらに好ましい。この閾値の値は予め設定されて記憶部24に格納されている。学習部22は、この閾値の条件を満たす検証用の学習モデルを与える統計モデルを選択する。なお、閾値の条件を満たす平均値Rbarが複数ある場合には、そのうち最大値を取る統計モデルを選択すればよい。これにより、予測に適した統計モデルによる学習モデルが選択される。なお、決定係数の平均値に替えて、決定係数そのものや、決定係数の最頻値等を用いるようにしてもよい。
また、学習部22が、精度評価指標が所定の条件を満たす統計モデルを抽出し、表示装置4に抽出結果を表示させることによって、ユーザに所望の条件に適合する統計モデルを選択させるようにしてもよい。
【0084】
その後、学習部22は、選択された統計モデルを用いて、ステップS31で抽出したデータセットに対して機械学習を実行することによって学習モデルを生成する(ステップS35)。学習部22は、例えば、
図8に示すステップS12と同様にして、学習モデルを生成する。
【0085】
本変形例1によれば、複数の統計モデルによって生成された学習モデルのうち、予測精度が高い学習モデルが選択され、この学習モデルによって特性保持率が出力されるため、特性保持率の予測値を一層正確に得ることができる。
【0086】
(変形例2)
次に、本発明の実施の形態の変形例2について、
図11~
図13を参照して説明する。本変形例2は、劣化処理前の熱可塑性樹脂組成物に対して要求される機械物性値を有する配合比率を予測し、該予測された配合比率を有する熱可塑性樹脂組成物について、劣化処理後の機械物性値を推定する。本変形例2にかかるシステム構成は、実施の形態に係る特性変化推定システム1の特性変化推定装置3に代えて特性変化推定装置3Aを備える以外は、実施の形態と同様である。なお、劣化処理後の機械物性値の推定については、実施の形態と同様である。以下、要求された機械物性値を有する配合条件の予測について説明する。
【0087】
特性変化推定装置3Aは、学習装置2および表示装置4と電気的に接続されている。特性変化推定装置3Aは、保持率予測部31、特性推定部32、配合条件設定部35、制御部33および記憶部34を有する。特性変化推定装置3Aは、特性変化推定装置3の構成に対し、配合条件設定部35をさらに備える。
【0088】
特性変化推定装置3Aは、要求された劣化処理前の機械物性値を有する熱可塑性樹脂組成物の配合条件を予測して設定し、該設定した配合条件の熱可塑性樹脂組成物の劣化処理後の機械物性値を推定する。特性変化推定装置3Aが設定する配合条件は、熱可塑性樹脂組成物を構成する原料の配合比率を含む。なお、配合条件には、配合比率のほか、プロセス条件やその他の物性値、樹脂組成から算出する化学構造に由来する物理量、物性値、例えば、原料のうち繊維状充填材の形状に関する値を含んでもよい。ここで、繊維状充填材の形状に関する値とは、繊維状充填材の繊維長、繊維径、繊維長分布などの値をさし、例えば繊維状充填材の繊維長、繊維径および繊維長分布の少なくとも一つを含む。以下、配合条件が配合比率のみを含む例について説明する。
【0089】
ここで、学習装置2では、熱可塑性樹脂組成物を構成する複数の原料、該原料の配合比率と、当該配合比率によって製造される熱可塑性樹脂組成物の機械物性値とが対応付いているデータを用いて配合比率を設定するための学習モデルを生成する。具体的には、学習装置2は、配合比率を説明変数、機械物性値を目的変数とする学習用データを用いて学習モデルである物性値推定モデルを生成する。この際、抽出部21は、記憶部24に記憶されているデータから、例えば、対象の熱可塑性樹脂組成物の配合比率および機械物性値を抽出する。学習部22は、抽出された配合比率および機械物性値を用いて物性値推定モデルを生成する。学習部22は、特性保持率を予測する学習モデルと同様にして、配合条件を予測するための学習モデルを生成する。
【0090】
また、本変形例2において、学習装置2は、熱可塑性樹脂組成物の差スペクトルデータを予測するための差スペクトル予測モデルを、熱可塑性樹脂組成物を構成する複数の原料、該原料の配合比率と、熱可塑性樹脂の暴露環境を規定する温度、処理時間、温度、湿度などの劣化条件とを説明変数、劣化処理後の各波数における差スペクトル強度を目的変数とする機械学習によって生成する。
【0091】
図12は、本変形例2に係る特性変化推定システムが行う配合条件設定処理の流れを説明するための図である。配合条件設定部35は、学習装置2から学習モデル100を取得する。配合条件設定部35は、この学習モデル101を用いて、熱可塑性樹脂組成物を構成する原料の配合条件IP100から、機械物性値の予測値OP100をそれぞれ出力する。各配合条件IP100(配合条件1~N)は、熱可塑性樹脂組成物の配合条件候補である。予測値OP100は、配合条件1~Nから生成される機械物性値(予測値)1~Nである。配合条件設定部35は、設定入力された機械物性値に適した予測値を抽出し、該抽出した配合条件候補を配合条件に設定する。なお、この際に設定する配合条件は、予測値が条件を満たす複数の配合条件のうち最も好適な一つの配合条件であってもよいし、予測値が条件を満たす複数の配合条件であってもよい。
【0092】
最適な予測値の抽出は、目的とする機械物性値(予測値)が、最も好ましい値になった状態となることであり、本実施の形態において、例えば強度の場合は最大化であり、線膨張係数の場合は最小化することと同義である。好ましい範囲がある場合には、その範囲内に機械物性値(予測値)が収まることである。このときの目的変数に対する予測値が最も好ましい値を示す配合条件が最適配合条件である。
【0093】
ここで、最適な配合比率を得る具体的な探索方法としては、各原料の取り得る配合比率の範囲から配合比率の候補を網羅的に算出し、学習モデルおよび各配合比候補から目的とする各機械物性値の予測値を算出し、予測結果から各機械物性値の予測値が目標域を満たす配合比率を選定するグリッドサーチ法、または、予め探索回数の上限を決めてランダムに配合比率候補を算出し、予測値が最大化/最小化される配合比率を得るランダムサーチ法が挙げられる。また、学習モデルの生成に採用された統計モデルが予測値の誤差や分布を同時に算出できる場合には、予測値の予測誤差が考慮された、予測値平均±予測誤差で表される信頼区間を対象にして蓄積データの極値付近を選択する「活用」と、データ点が少ない空間を選択する「探索」を繰り返すベイズ最適化法を探索方法として用いることができる。
【0094】
図13は、本変形例2に係る特性変化推定装置が行う配合条件設定処理の概要を示すフローチャートである。配合条件設定部35は、学習装置2から学習モデルを取得し、記憶部34を参照して配合条件候補を学習モデルに入力する(ステップS41)。各配合条件候補が学習モデルに入力されると、それぞれについて予測される機械物性値(予測値)が出力される(
図12参照)。
【0095】
配合条件設定部35は、各配合条件候補の予測値から、最適な予測値を選択する(ステップS42)。本実施の形態において、配合条件設定部35は、設定されている機械物性値のうち、最適となる予測値を選択する。なお、設定されている条件(ここでは所望の機械物性値)のうち、最適な一つの予測値が選択されるものして説明するが、設定条件を満たす予測値が複数存在する場合、設定条件を満たすすべての予測値を選択してもよいし、設定条件を満たす予測値の上位数個を選択してもよい。
【0096】
その後、配合条件設定部35は、選択された予測値に対応する配合条件候補を、最適な配合条件に設定する(ステップS43)。
【0097】
なお、表示制御部331は、配合条件設定部35から設定結果を取得すると、この設定結果を表示装置4に出力し、該表示装置4に設定結果を表示させる表示制御を行ってもよい。表示装置4は、設定対象の機械物性値を示すことが予測される最適な熱可塑性樹脂組成物の配合条件を表示する。
【0098】
学習装置2は、さらに、差スペクトル予測モデルに最適配合条件と、所定の劣化条件とを入力し、劣化処理後の差スペクトルデータを予測する。
【0099】
保持率予測部31は、実施の形態と同様にして、予測された配合条件を有する熱可塑性樹脂組成物の差スペクトルデータを学習モデルに入力することによって、特性保持率の予測値を出力する。
【0100】
また、特性推定部32は、出力された特性保持率と、予測された機械物性値とを用いて、予測した配合条件を有する熱可塑性樹脂組成物について、劣化処理後の機械物性値を推定する。
【0101】
変形例2によれば、実施の形態1と同様の効果を、予測した配合条件を有する熱可塑性樹脂組成物に対しても得ることができる。
【0102】
(その他の実施の形態)
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は、上述した実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。例えば、特性変化推定装置が学習部の機能を備えてもよい。この場合、特性変化推定装置は、予測対象の目的変数を生成することに加え、学習モデルを逐次更新する。
【符号の説明】
【0103】
1 特性変化推定システム
2 学習装置
3、3A 特性変化推定装置
4 表示装置
5 入力装置
21 抽出部
22 学習部
23、33 制御部
24、34 記憶部
31 保持率予測部
32 特性推定部
35 配合条件設定部
331 表示制御部