(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053549
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】抗ウイルス剤
(51)【国際特許分類】
A01N 47/18 20060101AFI20240408BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240408BHJP
A01N 43/78 20060101ALI20240408BHJP
A01N 43/50 20060101ALI20240408BHJP
A01N 43/653 20060101ALI20240408BHJP
C09D 5/14 20060101ALI20240408BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20240408BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20240408BHJP
A61K 31/4184 20060101ALN20240408BHJP
A61K 31/427 20060101ALN20240408BHJP
A61K 31/4174 20060101ALN20240408BHJP
A61K 31/4196 20060101ALN20240408BHJP
A61P 31/16 20060101ALN20240408BHJP
A61P 31/12 20060101ALN20240408BHJP
【FI】
A01N47/18 101C
A01P3/00
A01N43/78 A
A01N43/50 C
A01N43/653 G
A01N43/653 C
C09D5/14
C09D7/63
C09D201/00
A61K31/4184
A61K31/427
A61K31/4174
A61K31/4196
A61P31/16
A61P31/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023171020
(22)【出願日】2023-10-02
(31)【優先権主張番号】P 2022159543
(32)【優先日】2022-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004152
【氏名又は名称】弁理士法人お茶の水内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】二ツ亀 雅文
(72)【発明者】
【氏名】岸田 透
【テーマコード(参考)】
4C086
4H011
4J038
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC38
4C086BC39
4C086BC60
4C086BC82
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA10
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA70
4C086NA14
4C086ZB33
4H011AA04
4H011BB09
4H011BB10
4H011BB13
4H011BC07
4H011DA13
4H011DD05
4J038JB32
4J038JB35
4J038JC11
4J038KA06
4J038NA05
(57)【要約】
【課題】本発明は、抗ウイルス作用のみならず、細菌、真菌等の微生物に対する抗微生物作用をも発揮することが可能な、抗ウイルス剤の提供を課題とする。
【解決手段】ベンゾイミダゾール系化合物及びアゾール系化合物から選択される1種以上を、有効成分とする抗ウイルス剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベンゾイミダゾール系化合物及びアゾール系化合物から選択される1種以上を、有効成分とする抗ウイルス剤。
【請求項2】
対象ウイルスがエンベロープウイルスである、請求項1に記載の抗ウイルス剤。
【請求項3】
請求項1に記載の抗ウイルス剤を、ヒト以外に用いるウイルス抑制方法。
【請求項4】
請求項1に記載の抗ウイルス剤を、物品に配合すること、又は物品表面にコーティングすることを含む、抗ウイルス加工された物品を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗ウイルス剤、ヒト以外に用いるウイルス抑制方法及び、抗ウイルス加工された物品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザやノロウイルス等によるウイルス性の感染症の拡大はこれまでも繰り返し流行しており、これらのウイルスに感染すると高熱や激しい嘔吐、下痢などの重い症状が発症するため、感染予防に対する生活者の意識は非常に高い。
そのため、生活者に身近な物品に抗微生物性(抗菌性、抗カビ性、防藻性等)の付与のみならず、抗ウイルス性の付与の要望は高まっている。しかしながら、微生物学的には、抗微生物性と抗ウイルス性は全く別異なものであるため、抗微生物性と抗ウイルス性の両方を物品に付与させる場合は、抗微生物性成分と抗ウイルス性成分の2種類の成分を併用する必要があるものの、この併用は薬剤安定性の問題やコスト面における課題があった。
一方、ベンゾイミダゾール系化合物やアゾール系化合物が、優れた抗かび効果を発揮すること(特許文献1、2等)等は公知であるが、ベンゾイミダゾール系化合物やアゾール系化合物がウイルス抑制効果を示すことは、これまで報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-155205号公報
【特許文献2】特開2003-095829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、細菌、真菌等の微生物に対する抗微生物作用のみならず、ウイルス抑制効果を発揮する、抗ウイルス剤の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、細菌、真菌等の微生物に対する抗微生物作用を有することが知られているベンゾイミダゾール系化合物やアゾール系化合物が、ウイルス抑制効果を発揮することを見出し、上記課題を解決するに至ったものである。
【0006】
本発明は、具体的には次の事項を要旨とする。
1.ベンゾイミダゾール系化合物及びアゾール系化合物から選択される1種以上を、有効成分とする抗ウイルス剤。
2.対象ウイルスがエンベロープウイルスである、1.に記載の抗ウイルス剤。
3.1.に記載の抗ウイルス剤を、ヒト以外に用いるウイルス抑制方法。
4.1.に記載の抗ウイルス剤を、物品に配合すること、又は物品表面にコーティングすることを含む、抗ウイルス加工された物品を製造する方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の抗ウイルス剤は、細菌、真菌等の微生物に対しても抗微生物作用を発現するのみならず、優れたウイルス抑制効果を発揮することが出来るので有用である。
特に、各種の工業製品や工業用材料に適用することにより、微生物防除活性に加えて、優れたウイルス抑制効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の抗ウイルス剤、ウイルス抑制方法及び、抗ウイルス加工された物品を製造する方法について詳細に説明する。
<ベンゾイミダゾール系化合物について>
本発明の抗ウイルス剤に用いられるベンゾイミダゾール系化合物は、ベンゾイミダゾール骨格を有する化合物である。本発明において好ましく用いられるベンゾイミダゾール系化合物としては、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【化1】
(式中、R
1はNHCOOR
3(R
3は置換基を有していても良い炭素原子数1~6のアルキル基を示す。)で表される基、置換基を有していても良いフェニル基又は置換基を有していても良い5員複素芳香環基を示す。R
2は水素原子またはCONHR
4(R
4は置換基を有していても良い炭素原子数1~6のアルキル基を示す。)で表される基を示す。)
R
3またはR
4における置換基を有していても良い炭素原子数1~6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基などが挙げられる。
R
3における5員複素芳香環基としては、ピロール-1-イル基、ピロール-2-イル基、ピロール-3-イル基などのピロリル基;フラン-2-イル基、フラン-3-イル基などのフリル基;チオフェン-2-イル基、チオフェン-3-イル基などのチエニル基;イミダゾール-1-イル基、イミダゾール-2-イル基、イミダゾール-4-イル基、イミダゾール-5-イル基などのイミダゾリル基;ピラゾール-1-イル基、ピラゾール-3-イル基、ピラゾール-4-イル基、ピラゾール-5-イル基などのピラゾリル基;オキサゾール-2-イル基、オキサゾール-4-イル基、オキサゾール-5-イル基などのオキサゾリル基;イソオキサゾール-3-イル基、イソオキサゾール-4-イル基、イソオキサゾール-5-イル基などのイソオキサゾリル基;チアゾール-2-イル基、チアゾール-4-イル基、チアゾール-5-イル基などのチアゾリル基;イソチアゾール-3-イル基、イソチアゾール-4-イル基、イソチアゾール-5-イル基などのイソチアゾリル基;1,2,3-トリアゾール-1-イル基、1,2,3-トリアゾール-4-イル基、1,2,3-トリアゾール-5-イル基、1,2,4-トリアゾール-1-イル基、1,2,4-トリアゾール-3-イル基、1,2,4-トリアゾール-5-イル基などのトリアゾリル基;1,2,4-オキサジアゾール-3-イル基、1,2,4-オキサジアゾール-5-イル基、1,3,4-オキサジアゾール-2-イル基などのオキサジアゾリル基;1,2,4-チアジアゾール-3-イル基、1,2,4-チアジアゾール-5-イル基、1,3,4-チアジアゾール-2-イル基などのチアジアゾリル基;テトラゾール-1-イル基、テトラゾール-2-イル基などのテトラゾリル基;等が挙げられる。
【0009】
ベンズイミダゾール系化合物の具体例としては、ベンズイミダゾール-2-イルカルバミン酸メチル(略称:BCM、一般名:カルベンダジム)、1-ブチルカルバモイルベンズイミダゾール-2-イルカルバミン酸メチル(一般名:ベノミル)、2-(チアゾール-4-イル)ベンズイミダゾール(略称:TBZ、一般名:チアベンダゾール)、5-(プロピルチオ)ベンズイミダゾール-2-イルカルバミン酸メチル(一般名:アルベンダゾール)、2-(2-クロロフェニル)ベンズイミダゾール(一般名:クロルフェナゾール)、1-(5-シアノペンチルカルバモイル)ベンズイミダゾール-2-イルカルバミン酸メチル(一般名:シペンダゾール)、2-(2-エトキシエトキシ)エチルベンズイミダゾール-2-イルカルバミン酸(一般名:デバカルブ)、2-(2-フリル)ベンズイミダゾール(一般名:フベリダゾール)、1-(2-メチルチオエチルカルバモイル)ベンズイミダゾール-2-イルカルバミン酸メチル(一般名:メカルビンジド)、2-(3,5-ジメチルピラゾール-1-イル)ベンズイミダゾール(一般名:ラベンザゾール)、2-(2-フリルメチレン)アミノフェニルアミノチオキソメチルカルバミン酸メチル(一般名:フロファナート)、4,4-(o-フェニレン)ビス(3-チオアロファネート)ジエチル(一般名:チオファネート)、4,4-(o-フェニレン)ビス(3-チオアロファネート)ジメチル(一般名:チオファネートメチル)などが挙げられる。
【0010】
本発明の抗ウイルス剤の有効成分として、ベンズイミダゾール-2-イルカルバミン酸メチル(略称:BCM、一般名:カルベンダジム)、1-ブチルカルバモイルベンズイミダゾール-2-イルカルバミン酸メチル(一般名:ベノミル)、2-(チアゾール-4-イル)ベンズイミダゾール(略称:TBZ、一般名:チアベンダゾール)、4,4-(o-フェニレン)ビス(3-チオアロファネート)ジエチル(一般名:チオファネート)、4,4-(o-フェニレン)ビス(3-チオアロファネート)ジメチル(一般名:チオファネートメチル)が好適である。
【0011】
<アゾール系化合物について>
本発明の抗ウイルス剤に用いられるアゾール系化合物は、1個のベンゼン環が適当な結合を介して含窒素5員環と結合する化学構造を有する化合物である。本発明において好ましく用いられるアゾール系化合物の具体例としては、アザコナゾール、ビテルタノール、ブロムコナゾール、ジプロコナゾール、ジフェノコナゾール、シプロコナゾール、ジニコナゾール、フェンブコナゾール、フルキンコナゾール、フルトリアホール、ヘキサコナゾール、イマザリル、イミベンコナゾール、メトコナゾール、イプコナゾール、ミクロブタニル、ペフラゾエート、ペンコナゾール、プロクロラズ、プロピコナゾール、プロチオコナゾール、エポキシコナゾール、ウニコナゾール、シメコナゾール、テブコナゾール、テトラコナゾール、トリアジメホン、トリアジメノール、トリフルミゾール、トリチコナゾール、フルシラゾール、オキスポコナゾール、メフェントリフルコナゾールおよびイプフェントリフルコナゾール等が挙げられる。
【0012】
本発明の抗ウイルス剤の有効成分として、ヘキサコナゾール、イマザリル、メトコナゾール、プロクロラズ、プロピコナゾール、エポキシコナゾール、ウニコナゾール、テブコナゾール、トリアジメホン、トリアジメノール、トリフルミゾールが好適である。
【0013】
本発明の抗ウイルス剤に用いられるベンズイミダゾール系化合物、アゾール系化合物は、SHIBUYA INDEX(2014)、若しくはPesticide Mannual 15th Editionに記載されている公知化合物である。
本発明の抗ウイルス剤は、ベンズイミダゾール系化合物及びアゾール系化合物から選択される1種以上を有効成分とするものである。
【0014】
<対象ウイルス>
本発明の抗ウイルス剤の対象ウイルスとしては、特に制限されないが、例えばインフルエンザウイルス(例えばA型、B型等)、風疹ウイルス、エボラウイルス、コロナウイルス、麻疹ウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、ヘルペスウイルス、ムンプスウイルス、アルボウイルス、RSウイルス、SARSウイルス、肝炎ウイルス(例えば、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス等)、黄熱ウイルス、エイズウイルス、狂犬病ウイルス、ハンタウイルス、デングウイルス、ニパウイルス、リッサウイルス等のエンベロープウイルス(エンベロープを有するウイルス);アデノウイルス、ノロウイルス、ロタウイルス、ネコカリシウイルス、ヒトパピローマウイルス、ポリオウイルス、エンテロウイルス、コクサッキーウイルス、ヒトパルボウイルス、脳心筋炎ウイルス、ポリオウイルス、ライノウイルス等のノンエンベロープウイルス(エンベロープを有さないウイルス)等が挙げられる。
ウイルスは遺伝子を有しており、その遺伝子はカプシドと呼ばれる外殻タンパク質の中に保持されている。そのためウイルスは、その遺伝子がDNAかRNAかにより大別され、カプシドがエンベロープで覆われているものといないものとに分類される。
具体的には、遺伝子がDNAでエンベロープを持つものとしてヘルペスウイルス等が、遺伝子がDNAでエンベロープを持たないものとしてアデノウイルス等が、遺伝子がRNAでエンベロープを持つものとしてインフルエンザウイルス等が、遺伝子がRNAでエンベロープを持たないものとしてノロウイルス、ネコカリシウイルス、ポリオウイルス等が挙げられる。
本発明の抗ウイルス剤の対象ウイルスは、特に制限されない。中でも、本発明の抗ウイルス剤は、エンベロープウイルスに対して高い抑制効果が得られるため、対象ウイルスとしてはエンベロープウイルスが好適である。中でも、インフルエンザウイルスに対して優れた抑制効果を発揮する。
【0015】
<製剤>
本発明の抗ウイルス剤は、ベンゾイミダゾール系化合物及びアゾール系化合物から選択される1種以上の有効成分に加えて、その目的、用途等に応じて、ウイルス抑制効果及び安定性に影響を与えない範囲で、液状担体、固体担体等の種々の担体に分散等させることにより、種々の製剤形とすることができる。例えば、水和剤、懸濁剤、分散剤、乳剤、油剤などの液剤;粉剤、粒剤、マイクロカプセル剤、マイクロスフェア、フロアブル剤、発泡剤などの固形剤;ペースト剤、クリームなどの半固形剤;噴霧剤、エアゾール剤;塗料などが挙げられ、これらは使用目的や適用状態に応じて適宜選択できる。これらの製剤は、慣用の方法で製造できる。
本発明の抗ウイルス剤における、ベンゾイミダゾール系化合物及びアゾール系化合物から選択される1種以上の有効成分の含有量は、特に制限されないが、例えば0.0001~100重量%、好ましくは0.001~50重量%とすることができる。
【0016】
本発明において用い得る前記液状担体としては、水;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール等の低級アルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルカルビトール)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルカルビトール)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールブチルエーテル等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレンカーボネート等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、γ-ブチロラクトン、アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、コハク酸ジメチル等のエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、イソプロピルナフタレン、ジイソプロピルナフタレン、エチルビフェニル、ジエチルビフェニル、ソルベントナフサ等の芳香族系溶剤;四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N-メチルピロリドン等の極性有機溶剤などが挙げられる。これらの液状担体は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、これら液状担体の中では、水、プロピレンカーボネート等のケトン類、低級アルコール類および多価アルコール類が好ましく用いられる。
【0017】
本発明において用い得る前記固体担体としては、例えば、ケイソウ土、雲母、粘土、カオリン、タルク、シリカ、ベントナイト、滑石粉、ロウ石粉などのタルク類、微粉末クレイなどのクレイ類や炭酸カルシウムなどの鉱物性粉末;硫黄粉末;尿素粉末;木粉、澱粉などの植物性粉末;抗ウイルス剤などに繁用される各種担体が挙げられる。これらの固体担体は、増量材として使用される場合も多い。これらの固体担体も、1種又は2種以上混合して使用できる。
前記エアゾール剤は、ベンゾイミダゾール系化合物及びアゾール系化合物から選択される1種以上の有効成分を、必要に応じて適当な溶剤で希釈し、噴射剤と共に容器に充填することにより製造できる。溶剤としては、例えば、前記例示の液状担体などが挙げられる。噴射剤としては、フロン、液化天然ガスなどが挙げられる。
【0018】
本発明の抗ウイルス剤は、製剤の種類に応じて、必要により種々の添加剤、例えば、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの安定化剤;結合剤;被膜形成能を有する樹脂;乳化剤、分散剤、展着剤、湿潤剤、浸透剤;増粘剤;流動助剤;固結防止剤;凝集剤;紫外線散乱剤;水分除去剤;着色剤などを含んでいてもよい。
【0019】
酸化防止剤としては、例えば、4,4’-チオビス-6-t-ブチル-3-メチルフェノール、ブチル化ヒドロキシアニソール(2-t-ブチル-4-メトキシフェノールと3-t-ブチル-4-メトキシフェノールの混合物)、p-オクチルフェノール、モノ(またはジまたはトリ)-(α-メチルベンジル)フェノール、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)、ペンタエリスリチル テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)]プロピオネートなどのフェノール系酸化防止剤;N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミンなどのアミン系酸化防止剤、2,5-ジ(t-アミル)ヒドロキノリンなどのヒドロキノリン系酸化防止剤;ジラウリルチオジプロピオネートなどの硫黄系酸化防止剤;トリフェニルホスファイトなどのリン系酸化防止剤などが例示できる。
紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-4’-n-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系化合物;2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物;サリチル酸フェニル、p-t-ブチルフェニルサリシレートなどのサリチル酸系化合物;2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸2-エチルヘキシル、2-エトキシ-2’-エチルシュウ酸ビスアニリド、コハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物などが挙げられる。
結合剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、デキストリン、アルファ化デンプン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、リグニンスルホン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸カリウムなどが例示できる。
被膜形成能を有する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、スチレン系樹脂、フッ素樹脂、塩素化ポリオレフィン、アルキド樹脂、ポリアミド、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂などが例示でき、これら樹脂については、溶剤型やエマルジョン型などあらゆる形態が含まれる。
【0020】
乳化剤、分散剤、展着剤、湿潤剤、浸透剤としては、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤などの慣用の界面活性剤が使用できる。アニオン系界面活性剤には、例えば、金属石鹸類、硫酸アルキルナトリウムなどの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム(例えば、竹本油脂(株)製、商品名ニューカルゲンBX-C)などのアルキルナフタレンスルホン酸塩、2-スルホコハク酸ジアルキルナトリウム(例えば、第一工業製薬(株)製、商品名ネオコールSW-C)などの2-スルホコハク酸ジアルキル塩、ポリカルボン酸型界面活性剤(例えば、三洋化成工業(株)製、商品名トキサノンGR-30)、α-オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルサルフェートアンモニウム塩(例えば、第一工業製薬(株)製、商品名ディクスゾール60A)、リグニンスルホン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸カリウムなどが例示できる。ノニオン系界面活性剤には、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル(例えば、第一工業製薬(株)製、商品名ノイゲン(EA-142))、ポリオキシエチレンアリールエーテル、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールポリオキシエチレン、ショ糖脂肪酸エステル、酸化エチレンと酸化プロピレンとのブロック共重合体(例えば、三洋化成工業(株)製、商品名ニューポールPE-64)などが例示できる。
増粘剤には、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸とその塩などが例示でき、流動助剤として、PAP助剤(例えば、イソプロピルリン酸)、ワックス、ポリエチレン、脂肪酸金属塩、パラフィン、シリコーンオイルなどの有機滑剤、タルクなどの無機滑剤が例示できる。固結防止剤として、例えば、ホワイトカーボン、ケイソウ土、ステアリン酸マグネシウム、酸化アルミニウム、二酸化チタンなどが挙げられる。凝集剤としては、例えば、流動パラフィン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、イソブチレン重合体(例えば、出光興産(株)製、商品名IPソルベント-2835)などが挙げられる。紫外線散乱剤としては、二酸化チタンなどが例示できる。水分除去剤としては、無水石膏、シリカゲル粉末などの乾燥剤などが挙げられる。着色剤には、例えば、有機又は無機顔料や染料が含まれる。
【0021】
さらに、本発明の抗ウイルス剤は、公知の防腐防カビ剤、防虫剤、害虫忌避剤、昆虫成長制御剤、効力増強剤を含んでいてもよい。
【0022】
本発明の抗ウイルス剤は、ウイルス抑制効果を要する各種分野において広く使用することができる。本発明の抗ウイルス剤は、例えば工業、洗浄、医療、食品等の各種分野において使用して、ウイルスを抑制することができる。
本発明の抗ウイルス剤のより具体的な使用態様としては、ヒト以外(例えば、物品等)に適用すること、具体的には、物品に配合する態様、物品表面にコーティングする態様等が挙げられる。これにより、物品を抗ウイルス加工することができる。すなわち、物品に既に付着しているウイルスに対してウイルス抑制効果を発揮し、これから物品に付着するウイルスに対してもウイルス抑制効果を発揮し、さらには該物品にこれから接触する他の物品に既に付着しているウイルスやこれから付着するウイルスに対してウイルス抑制効果を発揮することができる。
【0023】
物品としては、各種分野において用いられている工業製品やその原材料が挙げられる。工業製品の具体例としては、塗料、接着剤、合成ゴムラテックス、インキ、ポリビニルアルコールフィルム、塩化ビニルフィルム、樹脂製品、石膏ボード、屋根材、壁材、床材、建具、塗工紙、壁紙、フロア外張り、OA機器、家電、空調機器、掃除機、机、椅子、ソファー、ベンチ、窓、つり革、ハンドル、シート、自動改札機、自動券売機、自動販売機、扉、柵、手摺、食器、調理用具、包装フィルム、包装袋、瓶、ボトル、包装パック、シンク、便器、文房具、書籍、棚、歯ブラシ、鏡、フィルター、マスク、コート、ジャケット、ズボン、スカート、ワイシャツ、ニットシャツ、ブラウス、セーター、カーディガン、ナイトウエア、肌着、下着、オムツ、サポーター、靴下、タイツ、ストッキング、帽子、スカーフ、マフラー、襟巻き、ストール、手袋、服の裏地、服の芯地、服の中綿、作業着、ユニフォーム、学童用制服等の衣料、カーテン、アミ戸、布団地、布団綿、布団カバー、枕カバー、シーツ、マット、カーペット、タオル、ハンカチ、壁布、バンドエイド、包帯等、さらにはこれらの複合材料等が挙げられる。
【0024】
「物品に配合する」とは、物品中にベンゾイミダゾール系化合物及びアゾール系化合物から選択される1種以上の有効成分が含まれるような態様(好ましくは、物品の表面にベンゾイミダゾール系化合物及びアゾール系化合物から選択される1種以上の有効成分が存在するような態様)である限り特に限定されず、物品の種類に応じて適宜選択することができる。配合の態様は、例えば物品に混合する、物品の製造工程において練り込む、物品(例えば繊維の集積体からなる物品等)に含浸させる等の態様が挙げられる。
【0025】
「物品表面にコーティングする」とは、物品の表面にベンゾイミダゾール系化合物及びアゾール系化合物から選択される1種以上の有効成分が存在するような態様である限り特に限定されず、物品の種類に応じて適宜選択することができる。コーティングの態様は、例えば物品表面に塗布する、物品表面に噴霧する、物品表面を浸漬する等の態様が挙げられる。なお、コーティングの態様には、物品の表面にベンゾイミダゾール系化合物及びアゾール系化合物から選択される1種以上の有効成分が固定される態様、固定されない態様のいずれも包含される。
【0026】
本発明の抗ウイルス剤の適用量は、その使用態様、適用対象物品の種類、ウイルス抑制効果を期待する期間等に応じて、適宜選択することができる。例えば、工業製品に配合する場合、工業製品1Kgあたりに対し、ベンゾイミダゾール系化合物及びアゾール系化合物から選択される1種以上の有効成分の量として10~50000mgとなるように配合することができる。
【実施例0027】
以下、試験例等により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの例に限定されるものではない。
本発明の抗ウイルス剤が、ウイルス抑制効果を発揮することを試験例に示す。
【0028】
<エンベロープウイルス抑制効果の確認試験1>
(1)試験検体
ベンゾイミダゾール系化合物であるカルベンダジム(MBC)、チアベンダゾール(TBZ)を、アゾール系化合物であるイマザリル、プロピコナゾール、テブコナゾール、ヘキサコナゾールを、それぞれ試験検体として使用した。これらの化合物は全て、富士フイルム和光純薬株式会社製の試薬を使用した。
(2)試験検体液
滅菌済遠沈管に、各試験検体0.01g、ジメチルスルホキシド(以下、「DMSO」という。)0.05g、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(PBS、富士フイルム和光純薬社製)0.84gを加えて、試験検体1.1%濃度の試験検体液Aを調製した。
また、滅菌済遠沈管に、各試験検体0.05g、DMSO0.05g、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(PBS、富士フイルム和光純薬社製)0.80gを加えて、試験検体5.5%濃度の試験検体液Bを調製した。
DMSO0.05g、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(PBS、富士フイルム和光純薬社製)0.85gを加えたものを、コントロールの試験検体液として使用した。
(3)試験用ウイルス
バクテリオファージφ6:Pseudomonas Syringae phage φ6
バクテリオファージφ6を、1/500NB(普通ブイヨン培地の500倍希釈液)で希釈して107~108PFU/mLに調製したものを、バクテリオファージφ6液とした。
普通ブイヨン培地:肉エキス3g、塩化ナトリウム5g、ハイポリペプトン10g、イオン交換水1000mL
【0029】
(4)試験方法
撹拌子を入れたガラスビンに、各試験検体液A又は各試験検体液B0.9mLと、バクテリオファージφ6液0.1mLを入れて混合し、試験検体液の最終濃度が1%又は5%である混合液を2時間撹拌した。所定時間撹拌後の混合液0.1mLに、薬剤不活化剤(SCDLP液体培地)0.9mLを加えて混合し、滅菌水を用いて10倍段階希釈液を調製した。
得られた不活化後の混合液及び10倍段階希釈液と宿主菌(シュードモナス・シリンガエ)を軟寒天培地で混合し、平板培地に重層した。宿主菌の至適温度で1晩培養した後、プラークの形成を確認し、プラーク測定法によりウイルス感染価を測定した。
コントロールの試験検体液とバクテリオファージφ6液を用いて、同様にウイルス感染価を測定した。
ウイルス感染価に基づいて、以下の算出式により、ウイルス抑制活性値(Mv)を算出した。
[算出式]
ウイルス抑制活性値(Mv)=Ig(Vb)-Ig(Vc)
Ig(Vb)=コントロール試験体との混合後のウイルス感染価の常用対数値
Ig(Vc)=試験検体液との混合後のウイルス感染価の常用対数値
試験検体液A、Bそれぞれ2回、ウイルス抑制効果の確認試験を実施し、得られたウイルス抑制活性値(Mv)の平均値を、下記表1にまとめて示す。
ウイルス抑制活性値(Mv)が概略「1」以上の場合をエンベロープウイルス抑制効果ありと、さらに、概略「2」以上の場合を、実用的なエンベロープウイルス抑制効果ありと判断した。
【0030】
【0031】
表1に示すとおり、本発明の抗ウイルス剤の有効成分であるベンゾイミダゾール系化合物とアゾール系化合物は、エンベロープウイルスに対して抑制効果があることが確認できた。中でも、本発明の抗ウイルス剤の有効成分であるベンゾイミダゾール系化合物であるカルベンダジム(MBC)、チアベンダゾール(TBZ)、また、アゾール系化合物であるイマザリル、プロピコナゾール、ヘキサコナゾールは、エンベロープウイルスに対して実用的な抑制効果を発揮することが、明らかとなった。また、アゾール系化合物であるテブコナゾールは、5%の濃度においてウイルス抑制活性値(Mv)が1.0であることから、エンベロープウイルスに対して抑制効果を発現することも、明らかとなった。
【0032】
<ノンエンベロープウイルス抑制効果の確認試験1>
(1)試験用ウイルス
バクテリオファージQβ:Escherichia Coli phage Qβ(ノンエンベロープウイルス)
バクテリオファージQβを、1/500NB(普通ブイヨン培地の500倍希釈液)で希釈して107~108PFU/mLに調製したものを、バクテリオファージQβ液とした。
普通ブイヨン培地:肉エキス3g、塩化ナトリウム5g、ハイポリペプトン10g、イオン交換水1000mL
(2)試験方法
バクテリオファージφ6液をバクテリオファージQβ液に、宿主菌のシュードモナスシリンガエを大腸菌に代える以外は、上記の「エンベロープウイルス抑制効果の確認試験」と同様にして、ウイルス抑制効果の確認試験を実施した。得られたウイルス抑制活性値(Mv)の平均値を、下記表2にまとめて示す。
ウイルス抑制活性値(Mv)が概略「1」以上の場合をウイルス抑制効果ありと、さらに、概略「2」以上の場合を、実用的なウイルス抑制効果ありと判断した。
【0033】
【0034】
表2に示すとおり、本発明の抗ウイルス剤の有効成分であるベンゾイミダゾール系化合物とアゾール系化合物は、ノンエンベロープウイルスに対して抑制効果があることが確認できた。中でも、本発明の抗ウイルス剤の有効成分であるベンゾイミダゾール系化合物であるチアベンダゾール(TBZ)は、ノンエンベロープウイルスに対して実用的な抑制効果を発揮することが、明らかとなった。
また、本発明の抗ウイルス剤の有効成分であるベンゾイミダゾール系化合物であるカルベンダジム(MBC)また、アゾール系化合物であるプロピコナゾール、ヘキサコナゾールは、ノンエンベロープウイルスに対して抑制効果を発現することが、明らかとなった。
【0035】
<エンベロープウイルス抑制効果の確認試験2>
上記「エンベロープウイルス抑制効果の確認試験1」における、試験検体、試験検体A、コントロールの試験検体液と同じものを使用した。
インフルエンザウイルス(ATCC VR-1679)を108 TCID50/mLに調整したものを試験ウイルス懸濁液とした。
撹拌子を入れたマイクロチューブに、試験検体液A0.9mLと試験ウイルス懸濁液0.1mLを混合し、試験検体液の最終濃度が1%である混合液を2時間又は24時間撹拌した。所定時間撹拌後の混合液50μLを、薬剤不活化剤(SCDLP液体培地、栄研化学社製)450μLに加え混合した。
不活化後の混合液を、希釈用培地(E-MEM、富士フイルム和光純薬社製)を用いて10倍段階希釈液として、宿主細胞(MDCK細胞、ATCC CCL-34)を用いたTCID50測定法(Median Tissue Culture Infectious Dose)により、ウイルス感染価を測定した。
一方、コントロールの試験検体液も同様に、ウイルス感染価を測定した。ウイルス感染価に基づいて、下記算出式により、ウイルス抑制活性値(Mv)を算出した。
[算出式]
ウイルス抑制活性値(Mv)=Ig(Vb)-Ig(Vc)
Ig(Vb)=コントロール試験体との混合後のウイルス感染価の常用対数値
Ig(Vc)=試験検体液との混合後のウイルス感染価の常用対数値
得られたウイルス抑制活性値(Mv)を、下記表3にまとめて示す。
ウイルス抑制活性値(Mv)が概略「1」以上の場合をエンベロープウイルス抑制効果ありと、さらに、概略「2」以上の場合を、実用的なエンベロープウイルス抑制効果ありと判断した。
【0036】
【0037】
表3に示すとおり、本発明の抗ウイルス剤の有効成分であるベンゾイミダゾール系化合物とアゾール系化合物は、エンベロープウイルスであるインフルエンザウイルスに対して抑制効果があることが確認できた。中でも、本発明の抗ウイルス剤の有効成分であるアゾール系化合物であるイマザリルは、1%の濃度で2時間後においてウイルス抑制活性値(Mv)が「2」以上であり、さらに、ベンゾイミダゾール系化合物であるカルベンダジム(MBC)、チアベンダゾール(TBZ)、また、アゾール系化合物であるイマザリル、プロピコナゾール、テブコナゾール、ヘキサコナゾールは、1%の濃度で24時間後においてウイルス抑制活性値(Mv)が「2」以上であることから、エンベロープウイルスに対して実用的な抑制効果を発揮することが、明らかとなった。
【0038】
<ノンエンベロープウイルス抑制効果の確認試験2>
上記「エンベロープウイルス抑制効果の確認試験2」における、試験ウイルス懸濁液のインフルエンザウイルスを、ネコカリシウイルス(ATCC VR-782)に、希釈用培地のE-MEMを、RPMI―1640(富士フイルム和光純薬社製)に、宿主細胞のMDCK細胞を、CRFK細胞(ATCC CCL―94)に代える以外は同様にして、ノンエンベロープウイルス抑制効果の確認試験2を実施した。測定されたウイルス感染価に基づいて、上記「エンベロープウイルス抑制効果の確認試験2」の算出式により、ウイルス抑制活性値(Mv)を算出した。
得られたウイルス抑制活性値(Mv)を、下記表4にまとめて示す。
ウイルス抑制活性値(Mv)が概略「1」以上の場合をノンエンベロープウイルス抑制効果ありと、さらに、概略「2」以上の場合を、実用的なノンエンベロープウイルス抑制効果ありと判断した。
【0039】
【0040】
表4に示すとおり、本発明の抗ウイルス剤の有効成分であるベンゾイミダゾール系化合物とアゾール系化合物は、ノンエンベロープウイルスであるネコカリシウイルスに対して抑制効果があることが確認できた。中でも、ベンゾイミダゾール系化合物であるカルベンダジム(MBC)、チアベンダゾール(TBZ)、また、アゾール系化合物であるヘキサコナゾールは、1%の濃度で2時間後においてウイルス抑制活性値(Mv)が「2」以上であり、加えて、アゾール系化合物であるイマザリル、プテブコナゾールも、1%の濃度で24時間後においてウイルス抑制活性値(Mv)が「2」以上であることから、ノンエンベロープウイルスに対して実用的な抑制効果を発揮することが、明らかとなった。また、アゾール系化合物であるプロピコナゾールも、1%の濃度で24時間後においてウイルス抑制活性値(Mv)が「1」であることから、ノンエンベロープウイルスに対して抑制効果を発揮することが、明らかとなった。