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特開2024-53554組織アブレーションの異なるモード間のシームレスな切り替え
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053554
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】組織アブレーションの異なるモード間のシームレスな切り替え
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20240408BHJP
【FI】
A61B18/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023171192
(22)【出願日】2023-10-02
(31)【優先権主張番号】17/958,760
(32)【優先日】2022-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレス・クラウディオ・アルトマン
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK05
4C160KK22
4C160MM38
(57)【要約】      (修正有)
【課題】組織の異なるアブレーションモード間をシームレスに切り替えるためのシステムを提供すること。
【解決手段】システムは、インターフェース及びプロセッサを含む。インターフェースは、損傷パラメータを受信するように構成されている。プロセッサは、(i)第1のアブレーションモード及び第2のアブレーションモードに対して、組織に適用されたときに損傷パラメータを有する損傷を形成する、第1のパラメータセット及び第2のパラメータセットをそれぞれ選択することと、(ii)複数のセクションの中から選択されたセクションに対して、第1のアブレーションモードが選択されたのか、第2のアブレーションモードが選択されたのかを検出することと、(iii)少なくとも1つのアブレーション電極を有するカテーテルを制御して、選択されたモードのアブレーション信号を、セクションに印加することと、を行うように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
器官の組織の複数のセクションに順次適用されるよう意図された第1のアブレーションモード及び第2のアブレーションモードのうちの少なくとも1つを使用して前記組織に形成されるよう意図された損傷の仕様を示す、損傷パラメータを受信するように構成されたインターフェースと、
プロセッサであって、(i)前記第1のアブレーションモード及び前記第2のアブレーションモードに対して、前記組織に適用されたときに前記損傷パラメータを有する前記損傷を形成する、第1のパラメータセット及び第2のパラメータセットをそれぞれ選択することと、(ii)前記複数のセクションの中から選択されたセクションに対して、前記第1のアブレーションモードが選択されたのか、前記第2のアブレーションモードが選択されたのかを検出することと、(iii)少なくとも1つのアブレーション電極を有するカテーテルを制御して、前記選択されたアブレーションモードに基づいており、かつ、前記第1のアブレーションモード又は前記第2のアブレーションモードに対応しているアブレーション信号を、前記セクションに印加することと、を行うように構成されているプロセッサと、
を備える、システム。
【請求項2】
前記プロセッサは、(i)前記第1のアブレーションパラメータ及び前記第2のアブレーションパラメータを計算すること、又は(ii)前記第1のアブレーションモード及び前記第2のアブレーションモードに対応する記憶された経験的データに基づいて、前記第1のアブレーションパラメータ及び前記第2のアブレーションパラメータを選択すること、によって、前記第1のパラメータセット及び前記第2のパラメータセットを選択するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記器官は、患者の心臓を含み、前記プロセッサは、(i)パルスフィールドアブレーション(PFA)エネルギーのパルス列を選択することによって前記第1のパラメータセットを選択すること、及び(ii)高周波(RF)エネルギーを選択することによって前記第2のパラメータセットを選択することを行うように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記選択されたPFAエネルギーのパルス列を前記セクションに印加するように前記カテーテルを制御することと、その後に、(i)前記複数のセクションの中から選択された後続のセクションに、前記第1のアブレーション信号に続く第2のアブレーション信号を印加するために前記第2のアブレーションモードが選択されたことを検出することと、(iii)前記カテーテルを制御して、前記選択されたRFエネルギーを前記後続のセクションに印加することと、を行うように構成されている、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記損傷パラメータは、(i)前記損傷の深さ、(ii)前記損傷の幅、及び(iii)前記損傷の連続性からなる幾何学的パラメータのリストから選択される、少なくとも1つの幾何学的パラメータを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記インターフェースは、前記幾何学的パラメータを示す指示に基づいて決定された前記損傷パラメータを、ユーザから受信するように構成され、前記プロセッサは、前記ユーザによって決定された前記指示に基づいて、前記第1のパラメータセット及び前記第2のパラメータセットを選択するように構成されている、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記プロセッサは、(i)前記第1のセットを選択するための第1のデフォルトパラメータ、及び前記第2のセットを選択するための第2のデフォルトパラメータを選択することと、(ii)前記組織の電気解剖学的マッピングに基づいて前記第1のデフォルトパラメータ及び前記第2のデフォルトパラメータを調整することによって、前記第1のパラメータセット及び前記第2のパラメータセットを選択することと、を行うように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
ディスプレイを備え、前記プロセッサは、前記第1のアブレーションモード又は前記第2のアブレーションモードの前記選択を検出することに応答して、前記第1のパラメータセット又は前記第2のパラメータセットをそれぞれ、ユーザに対して表示させるように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記プロセッサは、前記第1のアブレーションモードと前記第2のアブレーションモードとの間で切り替えを行うための切り替えスイッチを、前記ユーザに対して、前記ディスプレイ上に表示させるように構成され、かつ、前記プロセッサは、前記切り替えに基づいて、前記第1のアブレーションモードが選択されたのか又は前記第2のアブレーションモードが選択されたのかを検出するように構成されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記プロセッサは、前記選択されたアブレーションモードに基づいて、(i)アブレーション部位に前記カテーテルを位置決めすること、及び(ii)推奨される接触力で前記組織に対して前記カテーテルを当てることのうちの、少なくとも1つのための指標を、前記ユーザに提供するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に医療用装置に関し、特に、組織の異なるアブレーションモード間をシームレスに切り替えるための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
組織アブレーションは、患者の心臓内の所定の部位に損傷を生成するために、1つ以上のアブレーションカテーテルを使用して、医師が患者の心臓の不整脈を治療する際など、様々な医療手技において使用される。異なるアブレーションモードが存在し、アブレーション中に、医師は、第1のアブレーションモードから、所望の損傷を得るのにより適した第2のアブレーションモードに切り替えることを決定することがある。
【0003】
本開示は、図面と併せて、本開示の実施例の以下の詳細な説明からより完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】本開示の一実施例による、電気生理学的マッピング及びアブレーションを行うカテーテルベースのシステムの概略描写図である。
図2】本開示の一実施例による、心臓の組織に印加されるパルスフィールドアブレーション(PFA)エネルギー及び高周波(RF)エネルギーを示し、心臓の解剖学的マップ上に重ね合わせられる、アノテーションの概略描写図である。
図3】本開示の一実施例による、PFAベースのアブレーションモードとRFベースのアブレーションモードとをシームレスに切り替える方法を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0005】
概要
パルスフィールドアブレーション(PFA)及び高周波(RF)アブレーション(ただし、それらに限定されない)など、様々なアブレーションモードが、好適な電極を有する1つ以上のカテーテルを使用して、患者の心臓における不整脈を治療するために使用され得る。PFAは、組織に高電圧パルスを印加することによって組織細胞をアブレーションするために使用され得る。膜貫通電位が閾値を超えたときに細胞破壊が起こり、細胞死及び組織の不可逆的エレクトロポレーション(irreversible electroporation、IRE)をもたらし、心臓のそれぞれのセクションにおける損傷の形成をもたらす。PFAベースのアブレーション手技では、一連のマイクロ秒高電圧電気パルスが、アブレーションされることが意図される組織に印加され、RFベースのアブレーションでは、PFAのものと比較して、より低い電力及びより長い持続時間を有する電気パルスを組織に印加することによって、損傷が形成される。異なるアブレーションパラメータの実施例を、以下の図2において説明する。
【0006】
場合によって、アブレーション手技は、本明細書でアブレーションラインと呼ばれるラインに沿って実行され、アブレーションラインに沿ってアブレーションパルスを印加している間に、アブレーションを行う医師は、アブレーションモードを(例えば、PFAからRFに)切り替えることを決定する場合があり得る。そのような場合、医師は、損傷の必要とされる特性を得るために、アブレーションパラメータの新しいセットを選択しなければならない。アブレーションラインに沿って均一な深さ及び幅を有する連続した損傷を得るためには、いくつかのパラメータが変更されなければならない。例えば、アブレーションポイントの各対の間の距離、及びカテーテルと組織との間の接触力は、PFAベースのアブレーションモードとRFベースのアブレーションモードとの間で切り替えを行うときには、調整されなければならない。パラメータを手動で調整すると、損傷の質が低下する場合があり、しかもアブレーション手技に要する時間を望ましくなく増加させる場合がある。
【0007】
以下に説明する本開示の例は、組織アブレーション手技中のアブレーションモード間の切り替えに応答して、提案されたアブレーションパラメータを自動的に調整することによって、アブレーションモード間のシームレスな切り替えを行うための技術を提供する。
【0008】
いくつかの実施例では、患者の心臓における不整脈を治療するためのシステムは、1つ以上のカテーテルを備え、カテーテルのうちの少なくとも1つは、例えばRFアブレーション信号及びPFAアブレーション信号などの、異なるタイプのアブレーション信号を印加するように構成された1つ以上のアブレーション電極を有する。システムは、両方のタイプのアブレーション信号を生成するように構成された発生器と、発生器によって印加されるPFAベースのアブレーション信号とRFベースのアブレーション信号との間を切り替えるように構成されたスイッチングボックスとを更に備える。
【0009】
いくつかの実施例では、システムは、プロセッサを備え、そのプロセッサは、心臓の組織に形成されることが意図される損傷の仕様を示す標的損傷パラメータを、(例えば、医師から)受信するように構成されている。例えば、損傷パラメータは、少なくとも損傷の深さ及び幅を含んでもよい。
【0010】
いくつかの実施例では、プロセッサは、PFAベースのアブレーションモードのためのアブレーションパラメータの第1のセットと、RFベースのアブレーションモードのためのアブレーションパラメータの第2のセットとを計算するように構成されている。あるいは、プロセッサは、以前の好適なアブレーション手技において得られたデータであって、記憶されたデータに基づいて、アブレーションパラメータを選択してもよい。アブレーションパラメータの第1のセット及び第2のセットが適用されるとき、その損傷パラメータを有する損傷が、患者の心臓内の対応する位置に形成されると期待されるということに留意されたい。損傷パラメータ及び対応するアブレーションパラメータのセットの例が、以下の図2において詳細に説明される。
【0011】
場合によっては、医師は、アブレーションラインに沿ってアブレーションを実施しながら、アブレーションラインに沿った所与のアブレーションポイントにおいて、アブレーションモードを切り替えてもよい。いくつかの実施例では、プロセッサは、切り替えに応答して、(i)どのアブレーションモード(例えば、PFA又はRF)が医師によって選択されたかを検出し、(ii)選択されたアブレーションモード(例えば、PFA又はRF)に基づいて、カテーテルをアブレーション部位に位置決めするためのガイダンスを提供し、(iii)選択されたアブレーションモードに対応するアブレーション信号を、所与のアブレーションポイントに印加するように構成されている。
【0012】
開示される技法は、事前計画を伴わずに、アブレーションラインに沿ったアブレーションモード間のシームレスな切り替えを可能にし、したがって、損傷の品質を改善し、アブレーション手技が要する時間を低減する。
【0013】
システムの説明
図1は、本開示の一実施例による、電気生理学的マッピング及びアブレーションを行うカテーテルベースのシステム10の概略描写図である。
【0014】
いくつかの実施例では、システム10は、患者の血管系を通じて、心臓12の腔又は血管構造内に、医師24によって経皮的に挿入される複数のカテーテルを含む。典型的には、送達シースカテーテルは、心臓12の所望の位置の近くの左心房又は右心房内に挿入される。その後、1本以上のカテーテルを、送達シースカテーテルに挿入して、心臓12内の所望の場所に到達させることができる。複数のカテーテルには、心内電位図(Intracardiac Electrogram、IEGM)信号を感知するための専用のカテーテル、アブレーション専用のカテーテル、及び/又は感知及びアブレーションの両方に適応されたカテーテルが含まれ得る。IEGMを検知するように構成された例示的なカテーテル14が、本明細書に示されている。いくつかの実施形態では、医師24は、心臓12の標的部位を感知するために、カテーテル14の遠位先端部28を心臓壁と接触させて配置し得る。それに加えて又はその代わりに、アブレーションのために、医師24は、上と同様に、アブレーションカテーテルの遠位端を、アブレーションされるよう意図された組織をアブレーションするための標的部位と接触させて配置する。
【0015】
本実施例では、カテーテル14は、カテーテル14の遠位先端28において、1つの電極26、又は好ましくは複数の電極26であってシャフト22に沿って任意選択的に分配された電極26を含む。電極26は、IEGM信号を感知するように構成されている。カテーテル14は、遠位先端部28の位置及び配向を追跡するために、遠位先端部28内又はその近くに埋め込まれた位置センサ29を更に含むことができる。任意選択的にかつ好ましくは、位置センサ29は、三次元(three-dimensional、3D)での位置及び配向を感知するための、3つの磁気コイルを含む磁気ベースの位置センサである。
【0016】
いくつかの実施例では、磁気ベースの位置センサ29は、所定の作業空間内に複数(例えば3つ)の磁場を生成するように構成された、複数(例えば3つ)の磁気コイル32を含む位置パッド25と共に動作してもよい。カテーテル14の遠位先端部28のリアルタイムの位置は、位置パッド25によって生成され、磁気ベースの位置センサ29によって検知される磁場に基づいて追跡されてもよい。磁気ベースの位置感知技術の詳細は、参照により本明細書に組み込まれる、例えば、米国特許第5,5391,199号、同第5,443,489号、同第5,558,091号、同第6,172,499号、同第6,239,724号、同第6,332,089号、同第6,484,118号、同第6,618,612号、同第6,690,963号、同第6,788,967号、及び同第6,892,091号に記載されている。
【0017】
いくつかの実施例では、カテーテル14は、接触力センサ31を含み、その接触力センサ31は、遠位先端部28によって心臓12の組織に加えられる接触力を感知し、感知された接触力を示す信号を生成するように構成されている。
【0018】
いくつかの実施例では、システム10は、1つ以上の電極パッチ38を含み、その電極パッチ38は、患者23上に、皮膚と接触するように配置され、位置パッド25のため及び電極26のインピーダンスベースの追跡のための位置基準を確立する。インピーダンスベースの追跡のために、電流が電極26に向けて流され、皮膚の電極パッチ38において検知され、それにより、各電極の位置を電極パッチ38を介して三角測量することができる。この技術は、本明細書では高度電流位置特定(ACL)とも呼ばれ、インピーダンスベースの位置追跡技術の詳細は、米国特許第7,536,218号、同第7,756,576号、同第7,848,787号、同第7,869,865号、及び同第8,456,182号に記載されている。いくつかの実施形態では、磁気ベースの位置感知及びACLは、同時に適用されてもよく、剛性カテーテルのシャフト又は、別の種類のカテーテルの遠位先端部における可撓性アームもしくはスプラインに連結された例えば1つ以上の電極の位置感知を改善してもよく、上記のような別の種類のカテーテルとしては、例えば、Biosense Webster,Inc.(31A Technology Drive,Irvine,CA 92618)から入手可能なPentaRay(登録商標)又はOPTRELL(登録商標)カテーテル等が挙げられる。
【0019】
いくつかの実施例では、レコーダ11が、体表面ECG電極18で捕捉された電位図21と、カテーテル14の電極26で捕捉された心内電位図(IEGM)とを表示する。レコーダ11は、心臓の律動をペーシングするためのペーシング能力を含んでもよく、かつ/又は独立型ペーサに電気的に接続されてもよい。
【0020】
いくつかの実施例では、システム10は、アブレーションエネルギー発生器50を含み得るが、そのアブレーションエネルギー発生器50は、アブレーションするように構成されたカテーテルの遠位先端部にある1つ以上の電極にアブレーションエネルギーを伝達するように適合されたものである。アブレーションエネルギー発生器50によって生成されるエネルギーとしては、不可逆エレクトロポレーション(IRE)をもたらすために使用され得るような単極性又は双極性高電圧直流パルスを含む、高周波(RF)エネルギー又はパルスフィールドアブレーション(PFA)エネルギーのパルス列、あるいはそれらの組み合わせが挙げられ得るが、それらに限定されない。本実施例では、カテーテル14は、アブレーション電極33を含むが、任意選択的に、複数の電極33(図示せず)を含み、これらは遠位先端部28に配置され、RFエネルギー及び/又はPFAエネルギーのパルス列を、心臓12の壁の組織に印加するように構成されている。
【0021】
いくつかの実施例では、患者インターフェースユニット(patient interface unit、PIU)30は、カテーテル、電気生理学的機器、電源、及びワークステーション55の間の電気通信を確立して、システム10の動作を制御するように構成されたインターフェースである。システム10の電気生理学的機器は、例えば、複数のカテーテル、位置パッド25、体表面ECG電極18、電極パッチ38、アブレーションエネルギー発生器50、及びレコーダ11を含み得る。任意選択的にかつ好ましくは、PIU30は、カテーテルの位置のリアルタイムでの計算を実装し、ECG計算を実行するための処理能力を更に含む。
【0022】
いくつかの実施例では、ワークステーション55は、記憶装置、適切なランダムアクセスメモリを有するプロセッサ77、又は適切なオペレーティングソフトウェアが記憶された記憶装置、(例えば、プロセッサ77とシステム10の別のエンティティとの間で)データの信号を交換するように構成されたインターフェース56、及びユーザインターフェース能力を含む。ワークステーション55は、複数の機能を提供してもよく、それらの機能としては、任意選択的に、(1)心内膜の解剖学的構造を3次元(3D)でモデルリングし、モデル又は解剖学的マップ20をレンダリングしてディスプレイデバイス27上に表示させることと、(2)記録された電位図21からコンパイルされた活性化シーケンス(又は他のデータ)を、レンダリングされた解剖学的マップ20上に重ね合わされた代表的な視覚的指標又は画像でディスプレイデバイス27上に表示させること、(3)心腔内の複数のカテーテルのリアルタイム位置及び配向を表示させること、及び(4)アブレーションエネルギーが印加された場所などの関心部位を表示装置27上に表示させることなどが挙げられる。システム10の要素を具現化する1つの市販製品は、Biosense Webster,Inc.(31A Technology Drive,Irvine,CA 92618)から市販されている、CARTO(商標)3システムとして入手可能である。
【0023】
いくつかの実施例では、プロセッサ77は、接触力センサ31から、アブレーション電極33とアブレーションされるよう意図される組織との間に印加される接触力を示す信号を受信する。更に、プロセッサ77は、接触力に関する1つ以上の閾値(例えば、RFベースのアブレーションモードに対する第1の閾値、及びPFAベースのアブレーションモードに対する第2の異なる閾値)を記憶してもよく、その目的は、アブレーション電極33とアブレーションされるよう意図される組織との間に印加される接触力が、計画されたアブレーションモードに対して十分であるかどうかの指示を医師24に提供することである。
【0024】
図2は、本開示の一例による、心臓12の組織に印加されるPFAエネルギー及びRFエネルギーをそれぞれ示すアノテーション44及び46であって、解剖学的マップ20上に重ね合わされたアノテーション44及び46の概略描写図である。
【0025】
図2の例では、複数のアノテーション44と1つのアノテーション44aが、心臓12の組織細胞をアブレーションするために使用されるPFAエネルギーに応答したアブレーション事象を示すものである。同様に、複数のアノテーション66及び1つのアノテーション66aが、心臓12の組織細胞をアブレーションするために使用されるRFエネルギーに応答して形成される損傷を示す。アノテーション44及び44aは類似しており、アノテーション66及び66aは類似しており、アノテーション44a及び66aの記号「a」は、以下で説明されるように、プレゼンテーションを明確にするために本明細書で使用されることに留意されたい。
【0026】
PFAベースのアブレーションでは、膜貫通電位が閾値を超えるときに組織の細胞破壊が起こり、それは、組織の細胞死及び不可逆的電気穿孔(IRE)をもたらし、心臓12の壁組織のセクション40における損傷の形成をもたらす。PFAベースのアブレーション手技では、一連のマイクロ秒高電圧電気パルスが、セクション40の組織に印加される。
【0027】
本明細書においてRFアブレーション又はRFベースのアブレーションモードとも呼ばれるRFエネルギーの印加に応答して、PFAの電気パルスと比較して、より低い電力及びより長い持続時間を有する電気パルスを組織に印加することによって損傷が形成される。異なるアブレーションパラメータの例が、以下に説明される。
【0028】
両方のアブレーションモードは、組織内に損傷を形成するために使用されるが、損傷の特性は、それらを生成するために使用されるアブレーションモード(例えば、PFAベースのアブレーション又はRFベースのアブレーション)に依存して変化し得る。更に、両方のアブレーションモードは、単極(unipolar、本明細書ではmonopolarとも呼ばれる)アブレーションを使用して、又は双極アブレーション(例えば、カテーテル14が2つ以上のアブレーション電極33を有する場合、2つのアブレーション電極間でのアブレーション)を使用して、パルスを印加することによって実行されてもよい。本実施例では、単極アブレーションは、カテーテル14のシャフト22に連結されたアブレーション電極33と、不関電極(例えば、電極パッチ38のうちの1つ)との間で実行されてもよい。加えて又は代替として、システム10は、組織をアブレーションするために好適な任意の他のタイプのカテーテルであって、電極33(ただしこれらに限定されない)等のアブレーション電極を有するカテーテルを有してもよい。以下に説明する本開示の実施例は、フォーカルカテーテル14に適用でき、必要な変更を加えた上で、他の好適なタイプのカテーテル、例えばバスケットカテーテル、バルーンカテーテル、ラッソーカテーテル、及びアブレーション電極を有する他の好適なタイプのカテーテルに適用できるということに留意されたい。
【0029】
場合によって、アブレーション手技は、本明細書ではアブレーションラインとも呼ばれるセクション40及びセクション60に沿って実行され、アブレーションを行う医師24は、アブレーションエネルギーを印加している間に、アブレーションモードを(例えば、PFAベースからRFベースに)切り替えることを決定することができる。本実施例では、アブレーション電極33をセクション40からセクション60に移動させるときに、医師24は、損傷の必要な特性を得るために、アブレーションパラメータの新しいセットを選択しなければならない。アブレーションラインに沿って均一な深さ及び幅を有する連続した損傷を得るためには、いくつかのパラメータが、セクション40とセクション60との間で変更されなければならない。例えば、電圧及び電力、パルス持続時間、パルスの数、並びにシャフト22の遠位先端部28と組織との間の接触力は、PFAベースのアブレーションモードとRFベースのアブレーションモードとの間で切り替えが行われる場合には、調整されなければならない。これらのパラメータの手動調整は、(例えば、最適でないアブレーション条件の使用に起因して)損傷の質を低下させ、アブレーション手技の持続時間を増加させ得るということに留意されたい。
【0030】
以下に説明される本開示の実施例は、組織アブレーション手技の間に、アブレーションモードどうしの間の切り替え(例えば、PFAベースのアブレーションモードからRFベースのアブレーションモードへの切り替え及びその逆)に応答して、アブレーションパラメータを自動的に調整するための技法を提供する。
【0031】
いくつかの実施例では、アブレーション電極33は、RFエネルギー及びPFAエネルギーの両方を心臓12の組織に印加するように構成されている。例示的な構成では、システム10は、PFAパルス発生器(PFA pulse generator、PPG)及びRFパルス発生器を備え、これらは、本実施例では、本明細書では、発生器50と呼ばれる単一の発生器に組み込まれる。別の例示的一構成では、システム10は、2つの別個の発生器、すなわち、PFAエネルギーを印加するためのPPGと、RFエネルギーを印加するための別の発生器とを備え得る。両方の構成において、システム10は、PFAベースのアブレーションモードとRFベースのアブレーションモードとの間で切り替えを行うように構成された、スイッチングボックス(図示せず)を備え得る。
【0032】
いくつかの実施例では、ディスプレイデバイス27は、医師24から(例えば、ディスプレイデバイス27の上に表示されるグラフィカルユーザインターフェースを使用して)、1つ以上の損傷パラメータを受信するように構成され、損傷パラメータは、上記の図1に記載されるようにワークステーション55内に実装されるインターフェース56に転送される。本実施例では、損傷パラメータは、心臓12の組織のセクション40及びセクション60に形成されるよう意図された損傷の仕様を示す。例えば、損傷パラメータは、損傷の深さ(例えば、約5mm)及び損傷の幅(例えば、約8mm~13mm)のうちの少なくとも1つを含む。他の実施例では、医師24は、事前定義されたタイプの損傷パラメータ(例えば、浅い、中間、及び深いアブレーション)を選択することができ、それに応じて、プロセッサ77は、RFベース及びPFAベースのアブレーションモードのそれぞれについて、この深さレベルに合致するアブレーションパラメータを選択する。更に、特定のタイプのアブレーションカテーテル(例えば、1つ以上のスプラインに沿って又はバルーンに沿って配置された、電極33等の複数のアブレーション電極を有するカテーテル)を使用するとき、損傷パラメータは、損傷の連続性を示すものであり得る。
【0033】
いくつかの実施例では、損傷パラメータに基づいて、プロセッサ77は、(i)PFAベースのアブレーションモードのためのアブレーションパラメータの第1のセットと、(ii)RFベースのアブレーションモードのためのアブレーションパラメータの第2のセットと、を計算するように構成されている。他の実施例では、プロセッサ77は、以前のアブレーション手技からの経験的データに基づいた1つ以上の記憶されたルックアップテーブルを有してもよく、かつ選択された損傷パラメータに基づいて、プロセッサ77は、PFAベースのアブレーションモードのためのアブレーションパラメータの第1のセットと、RFベースのアブレーションモードのためのアブレーションパラメータの第2のセットとを選択する。
【0034】
図2の実施例では、アブレーションパラメータの第1のセットは、セクション40のアブレーションラインに沿って組織に適用され、アブレーションパラメータの第2のセットは、セクション60のアブレーションラインに沿って組織に適用される。アブレーションパラメータの第1セットと第2のセットとは、それぞれ、セクション40及びセクション60に沿って、医師24によって規定される前述の損傷パラメータを有する損傷を形成するように意図されるということに留意されたい。
【0035】
例えば、医師24は、セクション60に沿って約5mmの損傷の深さ及び約10mmの損傷の幅を含む損傷パラメータを規定し得る。本実施例では、プロセッサ77は、例えば、電力、持続時間、接触力、温度、及びアブレーションポイントどうしの間の距離など、RFベースのアブレーションモードのためのアブレーションパラメータを選択及び/又は計算する。例えば、約35ワット(又は約20ワット~50ワットの間の任意の他の好適な電力)のパルス振幅が、約35秒間(又は約10秒~60秒の任意の他の好適な時間間隔)にわたって、組織に印加される。
【0036】
同様に、医師24は、セクション40に沿って、同じ5mmの深さと10mmの幅とを規定し得る。この例では、プロセッサ77は、PFAベースのアブレーションモードのためのアブレーションパラメータを計算するように構成され、そのパラメータの例としては、列内のパルスの数、列の数、パルス振幅、及びアブレーションポイントどうしの間の距離などが挙げられるが、それらに限定されない。例えば、約1500ボルト(又は約900ボルトと2000ボルトとの間の任意の他の好適な電圧)の電圧振幅が、約150ミリ秒間(又は約100ミリ秒と250ミリ秒との間の任意の他の好適な時間間隔)にわたって、組織に印加される。PFAエネルギーの150ミリ秒の時間間隔は、約50マイクロ秒のそれぞれの時間間隔を有する、複数のパルス列のシーケンスを備え、複数のパルスのシーケンスを備える各パルス列は、約2マイクロ秒と5マイクロ秒との間の時間間隔をおいて組織に印加されるということに留意されたい。典型的には、RFベースのアブレーションモードにおける距離は、PFAベースのアブレーションモードの距離と比較して大きい。プロセッサ77は、ディスプレイデバイス27上に、前のアブレーションポイントからの距離を表示させ、医師24に、次のアブレーションポイントをどの距離に設定すべきかを知らせ得る。医師24がアブレーションモードを切り替えると、プロセッサ77は、次のアブレーションポイントをどこに配置するかについての指示を自動的に切り替える。例えば、医師24が、RFベースのアブレーションモードからPFAベースのアブレーションモードに切り替える場合、プロセッサ77は、前のアブレーションポイントと次のアブレーションポイントとの間の提案される距離を減少させる。隣接するアブレーションポイントどうしの間の距離は、均一な深さ及び幅を有する連続した損傷を得るためには重要である。
【0037】
損傷サイズの5mmの深さ及び10mmの幅を規定した後、医師24は、事前計画なしに、RFベースのアブレーションモードとPFAベースのアブレーションモードとの間での切り替えを随意に行うことができ、プロセッサ77は、選択されたアブレーションモードに対応するアブレーションパラメータのそれぞれのセットを電極33に適用するように発生器50を制御し、かつまた、次のアブレーションを行う際に医師を誘導する指標であって、GUI上に提供される指標を調節することに留意されたい。誘導は、例えば、カテーテルを次のアブレーション部位に(隣接するアブレーション部位から推奨される距離に)配置する際に医師を誘導すること、並びにカテーテルを組織に対して推奨される接触力で配置させることを含み得る。
【0038】
いくつかの実施例では、プロセッサ77は、ディスプレイデバイス27上に、PFAベースのアブレーションモードとRFベースのアブレーションモードとの間で切り替えを行うための切り替えスイッチを表示させるように構成されている。セクション40及びセクション60を含むアブレーションラインに沿ってアブレーション手技を行うとき、医師24は、(i)切り替えスイッチにおいてPFAベースのアブレーションモードを選択し、カテーテル14を使用してセクション40にPFAエネルギーを印加し(本明細書では第1のアブレーションモードとも呼ばれる)、その後、(ii)切り替えスイッチにおいてRFベースのアブレーションモードを選択し、カテーテル14を使用してセクション60にRFエネルギーを印加する(本明細書では第1のアブレーションモードとも呼ばれる)ことができる。医師24は、心臓12の壁組織上のセクション40の最上点で組織アブレーションを開始し、第1のアブレーションモードと第2のアブレーションモードとの間の移行が、セクション40とセクション60との間の界面、本実施例では、アノテーション44aの位置とアノテーション66aの位置との間で行われるということに留意されたい。
【0039】
いくつかの実施例では、アノテーション44aに対応する点でアブレーションを終了した後、アノテーション66aに対応する点でアブレーションを実行する前に、医師24は、アブレーションモードを、PFAベースのアブレーションモードからRFベースのアブレーションモードに切り替える。アノテーション44、44a、66、及び66aの各々は、典型的には、アブレーションを実行した後に解剖学的マップ20上に表示されるということに留意されたい。GUIの指標を医師に提供して、次のアブレーションをどの場所に行うかについて医師を誘導することができる。任意選択的に、RFアブレーション中の複数のアノテーション44として示される複数のアブレーション部位間の距離と比較して、PFA中には、複数のアノテーション66として示される複数のアブレーション部位間のより短い距離が推奨される。示された推奨は、切り替えの検出に基づいて調整され得る。任意選択的に、本明細書でアノテーション44aと呼ばれるアブレーション部位に対する、アノテーション66aと呼ばれるアブレーション部位の推奨位置が、事前に定義され、切り替えの検出に基づいて医師に示されてもよい。
【0040】
いくつかの実施例では、プロセッサ77は、アブレーションモードが切り替えられたこと(例えば、PFAベースのアブレーションモードからRFベースのアブレーションモードへの切り替え)を検出し、それに応じて、RFエネルギーのパラメータのセットをセクション60のアブレーション部位に適用して、セクション60において所定の損傷パラメータ(例えば、約5mmの損傷の深さ及び約10mmの損傷の幅)を得るように構成されている。言い換えれば、プロセッサ77は、アノテーション66aに対応するアブレーションポイントから、セクション60に沿って、カテーテル14及び電極33を介して、心臓12の壁組織にRFエネルギーを印加するようにカテーテル14を制御する。
【0041】
いくつかの実施例では、ディスプレイデバイス27は、(i)解剖学的マップ20、(ii)損傷パラメータ(医師24によって決定される)と、それに対応する各アブレーションモードのアブレーションパラメータ(プロセッサ77によって決定される)、並びに(iii)その位置におけるアブレーション事象を示すアノテーション44及びアノテーション66(例えば、アブレーションタグ)を表示するように構成されている。
【0042】
図3は、本開示の一実施例による、PFAベースのアブレーションモードとRFベースのアブレーションモードとをシームレスに切り替える方法を概略的に示すフローチャートである。
【0043】
この方法は、損傷仕様定義ステップ100で始まり、このステップ100では、心臓12の組織のセクション40及びセクション60に沿って形成されるよう意図される損傷の仕様を医師24が決定する。例えば、上記の図2に詳細に記載されるように、損傷の深さは約5mmであり、損傷の幅は約10mmである。
【0044】
予備的アブレーションパラメータ設定ステップ102において、プロセッサ77は、上記の図2で説明したように、PFAベースのアブレーションモード及びRFベースのアブレーションモードのための所定の(例えば、デフォルトの)アブレーションパラメータの第1のセット及び第2のセットを(例えば、ワークステーション55の前述の記憶装置から)それぞれ選択する。
【0045】
検出ステップ104において、プロセッサ77は、上記の図2において詳細に説明されるように、医師24が切り替えスイッチにおいて、PFAベースのアブレーションモードを選択したことを検出する。
【0046】
アブレーションパラメータ調整設定ステップ106において、プロセッサ77は、組織に適用されたときに、上記のステップ100において医師24によって決定された損傷の仕様を得ることが期待される(例えば、PFAベースのアブレーションモードの)アブレーションパラメータを計算する。
【0047】
アブレーションステップ108において、プロセッサ77は、発生器50及びカテーテル14を制御して、PFAベースのエネルギーの信号を、セクション40のアブレーションポイントにおいて組織に印加する。PFAベースのエネルギーの信号は、ステップ102及びステップ106においてそれぞれ選択及び調節(例えば、計算)され、かつ任意選択的に、プロセッサ77は、PFAベースのエネルギーのアブレーションパラメータをディスプレイデバイス27上に表示させ、医師24及びシステム10の任意の他の好適なユーザが、計算されたアブレーションパラメータを見ることができるようにするように更に構成されているということに留意されたい。
【0048】
本実施例ではアノテーション44aの位置でのアブレーションを終了した後に実行される決定ステップ110において、医師24は、アノテーション66aの位置でアブレーションモードを例えばPFAベースからRFベースに切り替えたいと考えるかどうかを決定した。アブレーションモードどうしの間の切り替えは、事前に計画されていなくてもよく、医師24は、手技中に(あるいは、手技前に)アブレーションモード間を切り替えることを決定してもよいということに留意されたい。医師24がアブレーションモードを切り替えることを決定した場合、上記の方法はステップ104にループバックし、プロセッサ77は、(i)医師24がPFAベースのアブレーションモードからRFベースのアブレーションモードに切り替えたことを検出し、(ii)上記ステップ106で説明したようにアブレーションパラメータを計算し、(iii)ステップ106で計算されたアブレーションパラメータに基づいて、発生器50及びカテーテル14を制御して、組織のセクション60にRFエネルギーを印加する。
【0049】
本方法を終了するアブレーション終了ステップ112においては、RFベースのアブレーションモードに切り替えて、セクション60のアブレーションを終了した後で、プロセッサ77は、アノテーション44及びアノテーション66を表示させ、発生器50を制御して、アブレーションエネルギーをカテーテル14に印加することを停止させる。
【0050】
あるいは、決定ステップ110において、医師24は、セクション60にもPFAエネルギーを印加することによって、アブレーションを継続すると決定してもよい。この実施例では、プロセッサ77は、PFAベースのアブレーションモードのアブレーションパラメータを維持し、アブレーション手技の進行に従ってアノテーション44及びアノテーション66を表示させるように構成されている。更に、セクション40及びセクション60におけるアブレーションを終了した後、プロセッサ77は、発生器50を制御して、カテーテル14へのアブレーションエネルギーの印加を停止する。
【実施例0051】
方法は、器官(12)の組織の複数のセクション(40、60)に順次適用されるよう意図された第1のアブレーションモード及び第2のアブレーションモードのうちの少なくとも1つを使用して組織に形成されるよう意図された損傷の仕様を示す、損傷パラメータを受信することを含む。第1のアブレーションモード及び第2のアブレーションモードに対して、組織に適用されたときに損傷パラメータを有する損傷を形成する、第1のパラメータセット及び第2のパラメータセットが、それぞれ選択される。複数のセクション(40、60)の中から選択されたセクションに対して、第1のアブレーションモードが選択されたのか第2のアブレーションモードが選択されたのかを検出する。選択されたアブレーションモードに基づいており、かつ、選択されたアブレーションパラメータに対応しているアブレーション信号が、セクションに印加される。
【実施例0052】
第1のアブレーションパラメータ及び第2のアブレーションパラメータを選択することは、第1のアブレーションパラメータ及び第2のアブレーションパラメータを計算すること、又は、第1のアブレーションモード及び第2のアブレーションモードに対応する記憶された経験的データに基づいて、第1のアブレーションパラメータ及び第2のアブレーションパラメータを選択することを含む、実施例1に記載の方法。
【実施例0053】
器官は、患者の心臓を含み、(i)第1のパラメータセットを選択することは、パルスフィールドアブレーション(PFA)エネルギーのパルス列を選択することを含み、(ii)第2のパラメータセットを選択することは、高周波(RF)エネルギーを選択することを含む、実施例1及び2に記載の方法。
【実施例0054】
セクションにアブレーション信号を印加することは、セクションに、選択されたPFAエネルギーのパルス列を印加することを含み、(i)複数のセクションの中から選択された後続のセクションに、第1のアブレーション信号に続く第2のアブレーション信号を印加するために、第2のアブレーションモードが選択されたことを検出することと、(iii)選択されたRFエネルギーを、後続のセクションに印加することととを更に含む、実施例3に記載の方法。
【実施例0055】
損傷パラメータを受信することは、(i)損傷の深さ、(ii)損傷の幅、及び(iii)損傷の連続性からなる幾何学的パラメータのリストから選択される、少なくとも1つの幾何学的パラメータを受信することを含む、実施例1及び2に記載の方法。
【実施例0056】
損傷パラメータを受信することは、幾何学的パラメータを示す指示を、ユーザによって決定することと、ユーザによって決定された指示に基づいて、第1のパラメータセット及び第2のパラメータセットを選択することとを含む、実施例5に記載の方法。
【実施例0057】
第1のパラメータセット及び第2のパラメータセットを選択することは、第1のセットに対する第1のデフォルトパラメータ及び第2のセットに対する第2のデフォルトパラメータを選択することと、組織の電気解剖学的マッピングに基づいて第1のデフォルトパラメータ及び第2のデフォルトパラメータを調整することによって、第1のパラメータセット及び第2のパラメータセットを選択することとを含む、実施例1及び2に記載の方法。
【実施例0058】
方法が、選択されたアブレーションモードに基づいて、(i)アブレーション部位にカテーテルを位置決めすること、及び(ii)推奨される接触力で組織に対してカテーテルを当てることのうちの、少なくとも1つのための指標を、ユーザに提供することを含む、実施例1及び2に記載の方法。
【実施例0059】
方法が、第1のアブレーションモード又は第2のアブレーションモードの選択を検出することに応じて、第1のパラメータセット又は第2のパラメータセットをそれぞれ、ユーザに対して表示することを含む、実施例1及び2に記載の方法。
【実施例0060】
方法が、第1のアブレーションモードと第2のアブレーションモードとの間で切り替えを行うことと、切り替えに基づいて、第1のアブレーションモードが選択されたのか又は第2のアブレーションモードが選択されたのかを検出することと、を含む、実施例1及び2に記載の方法。
【実施例0061】
システム(10)は、インターフェース(56)と、プロセッサ(77)と、を含む。インターフェース(56)は、器官(12)組織の複数のセクション(40、60)に順次適用されるよう意図された第1のアブレーションモード及び第2のアブレーションモードのうちの少なくとも1つを使用して組織に形成されるよう意図された損傷の仕様を示す、損傷パラメータを受信するように構成されている。プロセッサ(77)は、(i)第1のアブレーションモード及び第2のアブレーションモードに対して、組織に適用されたときに損傷パラメータを有する損傷を形成する、第1のパラメータセット及び第2のパラメータセットをそれぞれ選択することと、(ii)複数のセクション(40、60)の中から選択されたセクションに対して、第1のアブレーションモードが選択されたのか、第2のアブレーションモードが選択されたのかを検出することと、(iii)少なくとも1つのアブレーション電極(26)を有するカテーテル(22)を制御して、選択されたアブレーションモードに基づいており、かつ、第1のアブレーションモード又は第2のアブレーションモードに対応しているアブレーション信号を、セクションに印加することと、を行うように構成されている。
【実施例0062】
プロセッサは、(i)第1のアブレーションパラメータ及び第2のアブレーションパラメータを計算すること、又は(ii)第1のアブレーションモード及び第2のアブレーションモードに対応する記憶された経験的データに基づいて、第1のアブレーションパラメータ及び第2のアブレーションパラメータを選択すること、によって、第1のパラメータセット及び第2のパラメータセットを選択するように構成されている、実施例11に記載のシステム。
【実施例0063】
器官は、患者の心臓を含み、プロセッサは、(i)パルスフィールドアブレーション(PFA)エネルギーのパルス列を選択することによって第1のパラメータセットを選択すること、及び(ii)高周波(RF)エネルギーを選択することによって第2のパラメータセットを選択することを行うように構成されている、実施例11及び12に記載のシステム。
【実施例0064】
プロセッサは、選択されたPFAエネルギーのパルス列をセクションに印加するようにカテーテルを制御することと、その後に、(i)複数のセクションの中から選択された後続のセクションに、第1のアブレーション信号に続く第2のアブレーション信号を印加するために第2のアブレーションモードが選択されたことを検出することと、(iii)カテーテルを制御して、選択されたRFエネルギーを後続のセクションに印加することとを行うように構成されている、実施例13に記載のシステム。
【実施例0065】
損傷パラメータは、(i)損傷の深さ、(ii)損傷の幅、及び(iii)損傷の連続性からなる幾何学的パラメータのリストから選択される、少なくとも1つの幾何学的パラメータを含む、実施例11及び12に記載のシステム。
【実施例0066】
インターフェースは、幾何学的パラメータを示す指示に基づいて決定された損傷パラメータを、ユーザから受信するように構成され、プロセッサは、ユーザによって決定された指示に基づいて、第1のパラメータセット及び第2のパラメータセットを選択するように構成されている、実施例15に記載のシステム。
【実施例0067】
プロセッサは、(i)第1のセットを選択するための第1のデフォルトパラメータ、及び第2のセットを選択するための第2のデフォルトパラメータを選択することと、(ii)組織の電気解剖学的マッピングに基づいて第1のデフォルトパラメータ及び第2のデフォルトパラメータを調整することによって、第1のパラメータセット及び第2のパラメータセットを選択することとを行うように構成されている、実施例11及び12に記載のシステム。
【実施例0068】
プロセッサは、第1のアブレーションモード又は第2のアブレーションモードの選択を検出することに応答して、第1のパラメータセット又は第2のパラメータセットをそれぞれ、ユーザに対して表示させるように構成されている、実施例11及び12に記載のシステム。
【実施例0069】
プロセッサは、第1のアブレーションモードと第2のアブレーションモードとの間で切り替えを行うための切り替えスイッチを、ユーザに対して、ディスプレイ上に表示させるように構成され、かつ、プロセッサは、切り替えに基づいて、第1のアブレーションモードが選択されたのか又は第2のアブレーションモードが選択されたのかを検出するように構成されている、実施例18に記載のシステム。
【実施例0070】
プロセッサは、選択されたアブレーションモードに基づいて、(i)アブレーション部位にカテーテルを位置決めすること、及び(ii)推奨される接触力で組織に対してカテーテルを当てることのうちの、少なくとも1つのための指標を、ユーザに提供するように構成されている、実施例11及び12に記載のシステム。
【0071】
本明細書に記載される実施例は、主に、RFアブレーションエネルギーとPFAエネルギーのパルス列とを、心臓12の心臓壁の組織に印加する電気生理学的手技に対するものであるが、本明細書に記載される方法及びシステムは、例えば、患者の任意の好適な器官に信号を印加することを含む異なる動作モードどうしの間での、任意の他の切り替えにおける用途など、他の用途にも使用することができる。
【0072】
上に記載される実施例は例として挙げたものであり、本開示は本明細書の上記で特に図示及び記載されるものに限定されない点が理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上述した様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の説明を読んで当業者が思いつくであろう、先行技術には開示されていないそれらの変形及び修正を含む。参照により本特許出願に組み込まれた文献は、本出願の不可欠な部分と見なされるべきであり、ただし、これらの組み込まれた文献においていずれかの用語が、本明細書で明示的又は暗黙的になされた定義と矛盾する方法で定義されている限り、本明細書の定義のみが考慮されるべきである。
【0073】
〔実施の態様〕
(1) 器官の組織の複数のセクションに順次適用されるよう意図された第1のアブレーションモード及び第2のアブレーションモードのうちの少なくとも1つを使用して前記組織に形成されるよう意図された損傷の仕様を示す、損傷パラメータを受信することと、
前記第1のアブレーションモード及び前記第2のアブレーションモードに対して、前記組織に適用されたときに前記損傷パラメータを有する前記損傷を形成する、第1のパラメータセット及び第2のパラメータセットをそれぞれ選択することと、
前記複数のセクションの中から選択されたセクションに対して、前記第1のアブレーションモードが選択されたのか、前記第2のアブレーションモードが選択されたのかを検出することと、
前記選択されたアブレーションモードに基づいており、かつ、前記選択されたアブレーションパラメータに対応しているアブレーション信号を、前記セクションに印加することと、
を含む、方法。
(2) 前記第1のアブレーションパラメータ及び前記第2のアブレーションパラメータを選択することは、前記第1のアブレーションパラメータ及び前記第2のアブレーションパラメータを計算すること、又は、前記第1のアブレーションモード及び前記第2のアブレーションモードに対応する記憶された経験的データに基づいて、前記第1のアブレーションパラメータ及び前記第2のアブレーションパラメータを選択することを含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記器官は、患者の心臓を含み、(i)前記第1のパラメータセットを選択することは、パルスフィールドアブレーション(PFA)エネルギーのパルス列を選択することを含み、(ii)前記第2のパラメータセットを選択することは、高周波(RF)エネルギーを選択することを含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記セクションに前記アブレーション信号を印加することは、前記セクションに、前記選択されたPFAエネルギーのパルス列を印加することを含み、(i)前記複数のセクションの中から選択された後続のセクションに、前記第1のアブレーション信号に続く第2のアブレーション信号を印加するために、前記第2のアブレーションモードが選択されたことを検出することと、(iii)前記選択されたRFエネルギーを、前記後続のセクションに印加することと、を含む、実施態様3に記載の方法。
(5) 前記損傷パラメータを受信することは、(i)前記損傷の深さ、(ii)前記損傷の幅、及び(iii)前記損傷の連続性からなる幾何学的パラメータのリストから選択される、少なくとも1つの幾何学的パラメータを受信することを含む、実施態様1に記載の方法。
【0074】
(6) 前記損傷パラメータを受信することは、前記幾何学的パラメータを示す指示を、ユーザによって決定することと、前記ユーザによって決定された前記指示に基づいて、前記第1のパラメータセット及び前記第2のパラメータセットを選択することと、を含む、実施態様5に記載の方法。
(7) 前記第1のパラメータセット及び前記第2のパラメータセットを選択することは、前記第1のセットに対する第1のデフォルトパラメータ及び前記第2のセットに対する第2のデフォルトパラメータを選択することと、前記組織の電気解剖学的マッピングに基づいて前記第1のデフォルトパラメータ及び前記第2のデフォルトパラメータを調整することによって、前記第1のパラメータセット及び前記第2のパラメータセットを選択することと、を含む、実施態様1に記載の方法。
(8) 前記選択されたアブレーションモードに基づいて、(i)アブレーション部位にカテーテルを位置決めすること、及び(ii)推奨される接触力で前記組織に対して前記カテーテルを当てることのうちの、少なくとも1つのための指標を、ユーザに提供することを含む、実施態様1に記載の方法。
(9) 前記第1のアブレーションモード又は前記第2のアブレーションモードの前記選択を検出することに応じて、前記第1のパラメータセット又は前記第2のパラメータセットをそれぞれ、ユーザに対して表示することを含む、実施態様1に記載の方法。
(10) 前記第1のアブレーションモードと前記第2のアブレーションモードとの間で切り替えを行うことと、前記切り替えに基づいて、前記第1のアブレーションモードが選択されたのか又は前記第2のアブレーションモードが選択されたのかを検出することと、を含む、実施態様1に記載の方法。
【0075】
(11) 器官の組織の複数のセクションに順次適用されるよう意図された第1のアブレーションモード及び第2のアブレーションモードのうちの少なくとも1つを使用して前記組織に形成されるよう意図された損傷の仕様を示す、損傷パラメータを受信するように構成されたインターフェースと、
プロセッサであって、(i)前記第1のアブレーションモード及び前記第2のアブレーションモードに対して、前記組織に適用されたときに前記損傷パラメータを有する前記損傷を形成する、第1のパラメータセット及び第2のパラメータセットをそれぞれ選択することと、(ii)前記複数のセクションの中から選択されたセクションに対して、前記第1のアブレーションモードが選択されたのか、前記第2のアブレーションモードが選択されたのかを検出することと、(iii)少なくとも1つのアブレーション電極を有するカテーテルを制御して、前記選択されたアブレーションモードに基づいており、かつ、前記第1のアブレーションモード又は前記第2のアブレーションモードに対応しているアブレーション信号を、前記セクションに印加することと、を行うように構成されているプロセッサと、
を備える、システム。
(12) 前記プロセッサは、(i)前記第1のアブレーションパラメータ及び前記第2のアブレーションパラメータを計算すること、又は(ii)前記第1のアブレーションモード及び前記第2のアブレーションモードに対応する記憶された経験的データに基づいて、前記第1のアブレーションパラメータ及び前記第2のアブレーションパラメータを選択すること、によって、前記第1のパラメータセット及び前記第2のパラメータセットを選択するように構成されている、実施態様11に記載のシステム。
(13) 前記器官は、患者の心臓を含み、前記プロセッサは、(i)パルスフィールドアブレーション(PFA)エネルギーのパルス列を選択することによって前記第1のパラメータセットを選択すること、及び(ii)高周波(RF)エネルギーを選択することによって前記第2のパラメータセットを選択することを行うように構成されている、実施態様11に記載のシステム。
(14) 前記プロセッサは、前記選択されたPFAエネルギーのパルス列を前記セクションに印加するように前記カテーテルを制御することと、その後に、(i)前記複数のセクションの中から選択された後続のセクションに、前記第1のアブレーション信号に続く第2のアブレーション信号を印加するために前記第2のアブレーションモードが選択されたことを検出することと、(iii)前記カテーテルを制御して、前記選択されたRFエネルギーを前記後続のセクションに印加することと、を行うように構成されている、実施態様13に記載のシステム。
(15) 前記損傷パラメータは、(i)前記損傷の深さ、(ii)前記損傷の幅、及び(iii)前記損傷の連続性からなる幾何学的パラメータのリストから選択される、少なくとも1つの幾何学的パラメータを含む、実施態様11に記載のシステム。
【0076】
(16) 前記インターフェースは、前記幾何学的パラメータを示す指示に基づいて決定された前記損傷パラメータを、ユーザから受信するように構成され、前記プロセッサは、前記ユーザによって決定された前記指示に基づいて、前記第1のパラメータセット及び前記第2のパラメータセットを選択するように構成されている、実施態様15に記載のシステム。
(17) 前記プロセッサは、(i)前記第1のセットを選択するための第1のデフォルトパラメータ、及び前記第2のセットを選択するための第2のデフォルトパラメータを選択することと、(ii)前記組織の電気解剖学的マッピングに基づいて前記第1のデフォルトパラメータ及び前記第2のデフォルトパラメータを調整することによって、前記第1のパラメータセット及び前記第2のパラメータセットを選択することと、を行うように構成されている、実施態様11に記載のシステム。
(18) ディスプレイを備え、前記プロセッサは、前記第1のアブレーションモード又は前記第2のアブレーションモードの前記選択を検出することに応答して、前記第1のパラメータセット又は前記第2のパラメータセットをそれぞれ、ユーザに対して表示させるように構成されている、実施態様11に記載のシステム。
(19) 前記プロセッサは、前記第1のアブレーションモードと前記第2のアブレーションモードとの間で切り替えを行うための切り替えスイッチを、前記ユーザに対して、前記ディスプレイ上に表示させるように構成され、かつ、前記プロセッサは、前記切り替えに基づいて、前記第1のアブレーションモードが選択されたのか又は前記第2のアブレーションモードが選択されたのかを検出するように構成されている、実施態様18に記載のシステム。
(20) 前記プロセッサは、前記選択されたアブレーションモードに基づいて、(i)アブレーション部位に前記カテーテルを位置決めすること、及び(ii)推奨される接触力で前記組織に対して前記カテーテルを当てることのうちの、少なくとも1つのための指標を、前記ユーザに提供するように構成されている、実施態様11に記載のシステム。
図1
図2
図3
【外国語明細書】