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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053555
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】アイスクリーム類
(51)【国際特許分類】
   A23G 9/00 20060101AFI20240408BHJP
   A23G 9/04 20060101ALI20240408BHJP
   A23G 9/32 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
A23G9/00 101
A23G9/04
A23G9/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023171239
(22)【出願日】2023-10-02
(31)【優先権主張番号】P 2022159554
(32)【優先日】2022-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100141771
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 宏和
(74)【代理人】
【識別番号】100118809
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 育男
(74)【代理人】
【識別番号】100164345
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100230857
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 悠也
(72)【発明者】
【氏名】新居 賢紀
(72)【発明者】
【氏名】竹下 尚男
【テーマコード(参考)】
4B014
【Fターム(参考)】
4B014GB18
4B014GG11
4B014GL03
4B014GL04
4B014GL10
4B014GP01
4B014GP13
(57)【要約】
【課題】広いオーバーラン範囲において優れた保型性を示し、かつ健康増進作用も期待できるアイスクリーム類を提供する。
【解決手段】
クロロゲン酸類の含有量が0.01~1.50質量%であり、
前記クロロゲン酸類の含有量に対するカフェインの含有量の比の値が0.60以下である、
アイスクリーム類。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロロゲン酸類の含有量が0.01~1.50質量%であり、
前記クロロゲン酸類の含有量に対するカフェインの含有量の比の値が0.60以下である、
アイスクリーム類。
【請求項2】
前記クロロゲン酸類の含有量が0.10~1.30質量%であり、
前記クロロゲン酸類の含有量に対する前記カフェインの含有量の比の値が0.40以下である、
請求項1に記載のアイスクリーム類。
【請求項3】
乳固形分含有量が3~40質量%である、請求項1又は2に記載のアイスクリーム類。
【請求項4】
オーバーランが20~100%である、請求項1~3のいずれか1項に記載のアイスクリーム類。
【請求項5】
クロロゲン酸類を有効成分とする、アイスクリーム類の保型性向上剤。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載のアイスクリーム類を得るための、請求項5に記載のアイスクリーム類の保型性向上剤。
【請求項7】
アイスクリーム類の原料を混合し、均質化して、撹拌しながら凍結するに当たり、原料混合物中のクロロゲン酸類の含有量を0.01~1.50質量%、前記クロロゲン酸類の含有量に対するカフェインの含有量の比の値を0.60以下に調整することを含む、
アイスクリーム類の製造方法。
【請求項8】
請求項5又は6に記載のアイスクリーム類の保型性向上剤を用いて請求項1~4のいずれか1項に記載のアイスクリーム類を得ることを含む、アイスクリーム類の製造方法。
【請求項9】
アイスクリーム類の原料を混合し、均質化して、撹拌しながら凍結するに当たり、原料混合物中のクロロゲン酸類の含有量を0.01~1.50質量%、前記クロロゲン酸類の含有量に対するカフェインの含有量の比の値を0.60以下に調整することを含む、アイスクリーム類の保型性向上方法。
【請求項10】
請求項5又は6に記載のアイスクリーム類の保型性向上剤を用いて請求項1~4のいずれか1項に記載のアイスクリーム類を得ることを含む、アイスクリーム類の保型性向上方法。
【請求項11】
アイスクリーム類の原料混合物中にクロロゲン酸類を含有させることにより、得られるアイスクリーム類の保型性を向上させることを含む、アイスクリーム類の保型性向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイスクリーム類に関する。
【背景技術】
【0002】
アイスクリーム類は、一般的に、牛乳や生クリーム等の乳製品、砂糖、卵黄、乳化剤等の各原料を混合して均質化処理した後、殺菌し、次いで撹拌しながら凍結(フリージング)することによって製造される。フリージングによって水分が微細な結晶(氷晶)となり、さらにオーバーラン(空気含有率)が高まり、滑らかで口溶けのよい食感になる。
室温ないしその近傍の温度条件下でアイスクリーム類を提供した場合に、できるだけ長く、アイスクリーム類が溶け出さずにその形状を維持できる特性(保型性)が求められている。アイスクリーム類の保型性を向上させるために、例えば上記氷晶を乳化剤等の脂肪球で覆ったり、アイスクリーム類に内包される気泡サイズを大きくしたりすることにより、外部から氷晶に伝わる伝熱速度を低下させることなどが知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、不溶性食物繊維の懸濁液にHLB5~9の蔗糖脂肪酸エステルを0.1~0.3%添加したのち超音波照射して得られる物であることを特徴とする不溶性食物繊維膨潤物が開示されており、当該膨潤物を混合して得られたアイスクリームは、保水性、保型性に優れることが記載されている。
また特許文献2には、ラムザンガムを含有することを特徴とする冷菓用安定剤が開示されており、ラムザンガムを配合して得られたラクトアイスは室温で放置しても離水が抑制されておりヒートショック耐性が向上することが記載されている。
また特許文献3には、アイスクリーム類に含まれる乳類1重量部に対して、糖組成として固形分当たりマルトトリオースが50%以上、マルトースが25%以下であるマルトトリオース含有糖組成物を用いた呈味改良剤を0.05重量部以上0.5重量部以下添加することを特徴とする、アイスクリーム類の保形性を改善する方法が開示されている。
また特許文献4には、非重合体カテキン類、及びカフェインを含有し、非重合体カテキン類に対するカフェインの含有質量比が0.0001~0.18である、アイスクリーム類が開示されており、当該アイスクリーム類が保型性に優れることが記載されている。特許文献4記載の技術においてアイスクリーム類に配合されるカテキン類は、抗菌、抗酸化、体脂肪低減などの生理作用を有する機能性食品素材として知られている。
また特許文献5には、イチゴ濃縮果汁を使用したイチゴクリームが開示されており、作製したイチゴクリームの保形性を評価した結果が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-154503号公報
【特許文献2】特開2007-159570号公報
【特許文献3】特開2013-31458号公報
【特許文献4】特開2011-103878号公報
【特許文献5】特開2011-147422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるような乳化剤をある程度多く添加してアイスクリーム類を製造すると、得られるアイスクリーム類は添加した乳化剤由来の特有の風味(異味)が発現する場合がある。また、特許文献2に記載されるような増粘剤をある程度多く添加してアイスクリーム類を製造すると、得られるアイスクリーム類は糊様の食感を感じるものとなる場合がある。また、特許文献3に記載の方法では得られるアイスクリーム類は糖質量が増してしまい、健康面への配慮に課題が残る。また、特許文献4には、オーバーランをかなり高めたアイスクリーム類において、特定のカテキン類の配合が保型性の向上に作用することが記載されている。他方、よりオーバーランを抑えた一般的なアイスクリーム類に対する保型性については記載されていない。さらに、本発明者らは特許文献5の記載に基づき、特許文献5に記載の果実加工品をアイスクリーム類に適用して保形性(保型性)を調査したところ、特許文献5に記載の果実加工品をアイスクリーム類の原料に添加して撹拌しながら凍結しても、得られるアイスクリーム類の保型性の向上には十分ではないことが明らかとなった。
【0006】
本発明は、広いオーバーラン範囲において優れた保型性を示し、かつ健康増進作用も期待できるアイスクリーム類、当該アイスクリーム類の製造方法、アイスクリーム類の保型性向上方法、及びアイスクリーム類の保型性向上剤に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
クロロゲン酸類はコーヒー中に含まれる代表的なポリフェノールであり、多様な生理効果(老化抑制、発癌抑制、血糖上昇抑制、高血圧改善、脂肪燃焼促進等)が報告されている。かかる生理効果による健康増進を目的として、クロロゲン酸類を有効成分とするサプリメントやクロロゲン酸類含有飲食品等が上市されるに至っている。
本発明者らは、このクロロゲン酸類をアイスクリーム類に特定量含有させ、かつクロロゲン酸類含有量とカフェイン含有量との比率を制御することにより、広いオーバーラン範囲においてアイスクリーム類の保型性が高められることを見出した。本発明はこの知見に基づきさらに検討を重ねて完成されるに至ったものである。
【0008】
本発明は、
クロロゲン酸類の含有量が0.01~1.50質量%であり、
前記クロロゲン酸類の含有量に対するカフェインの含有量の比の値が0.60以下である、
アイスクリーム類を提供するものである。
【0009】
また本発明は、
アイスクリーム類の原料を混合し、均質化して、撹拌しながら凍結するに当たり、原料混合物中のクロロゲン酸類の含有量を0.01~1.50質量%、前記クロロゲン酸類の含有量に対するカフェインの含有量の比の値を0.60以下に調整することを含む、アイスクリーム類の製造方法を提供するものである。
【0010】
また本発明は、
アイスクリーム類の原料を混合し、均質化して、撹拌しながら凍結するに当たり、原料混合物中のクロロゲン酸類の含有量を0.01~1.50質量%、前記クロロゲン酸類の含有量に対するカフェインの含有量の比の値を0.60以下に調整することを含む、アイスクリーム類の保型性向上方法を提供するものである。
【0011】
また本発明は、
クロロゲン酸類を有効成分とする、アイスクリーム類の保型性向上剤を提供するものである。
【0012】
さらに本発明は、
アイスクリーム類の原料混合物中にクロロゲン酸類を含有させることにより、得られるアイスクリーム類の保型性を向上させることを含む、アイスクリーム類の保型性向上方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のアイスクリーム類は、広いオーバーラン範囲において優れた保型性を示し、かつ健康増進作用も期待できる。
また、本発明のアイスクリーム類の製造方法によれば、広いオーバーラン範囲において優れた保型性を示し、かつ健康増進作用も期待できるアイスクリーム類を得ることができる。
また、本発明のアイスクリーム類の保型性向上方法によれば、広いオーバーラン範囲においてアイスクリーム類の保型性を高めることができ、かつ、このアイスクリーム類は健康増進作用も期待できる。
さらに、本発明のアイスクリーム類の保型性向上剤は、アイスクリーム類の製造において配合することにより、得られるアイスクリーム類を、広いオーバーラン範囲において保型性に優れたものとすることができ、かつ、このアイスクリーム類は健康増進作用も期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(アイスクリーム類)
本発明のアイスクリーム類は、クロロゲン酸類の含有量が0.01~1.50質量%、前記クロロゲン酸類の含有量に対するカフェインの含有量の比の値が0.60以下に調整(制御)されている。これにより、クロロゲン酸類の健康増進作用を享受しながら、アイスクリーム類の保型性も高めることができる。
本発明のアイスクリーム類において、前記クロロゲン酸類はアイスクリーム類中に均質に存在していることが好ましい。すなわち、本発明のアイスクリーム類は、各成分が均質に混ざり合った組成物の形態であることが好ましい。
なお、本発明のアイスクリーム類は、原料混合物と均質に混ざり合わない原料を混合することもでき、またアイスクリーム類の表面にトッピング等を添加することもできる。しかし、当該原料やトッピング等の配合量は、本発明のアイスクリーム類の質量に含めないものとする。すなわち、本発明のアイスクリーム類の各成分の含有量(質量%)の決定に当たり、基準となるアイスクリーム類の質量(100%)には、当該原料やトッピング等の質量は含まれないものとする。すなわち、各成分が均質に混ざり合った組成物の状態の部分全体を、上記の基準となるアイスクリーム類の質量(100%)とする。
例えば、本発明のアイスクリーム類が原料としてチョコチップを含有する場合、当該チョコチップは塊状であり本発明のアイスクリーム類中に均質に混ざり合わないため、当該チョコチップの配合量は、本発明のアイスクリーム類の質量には含めない。また、例えば本発明のアイルクリーム類が原料としていちご果肉といちご果汁を含有する場合(本発明のアイスクリーム類がいちご果肉入りストロベリーアイスクリームである場合)、本発明のアイスクリーム類中に均質に混ざり合っているいちご果汁の配合量は、本発明のアイスクリーム類の質量に含め、アイスクリーム類中に塊状で存在し均質に混ざり合わないいちご果肉の配合量は、本発明のアイスクリーム類の質量には含めない。
本発明のアイスクリーム類に含まれる各原料ないし成分について、下記に説明する。
【0015】
アイスクリーム類の定義と規格は、日本国の厚生労働省の乳等省令(乳及び乳製品の成分規格等に関する省令、最終改正:令和2年12月4日)において定められている。乳等省令においては、アイスクリーム類は、乳又はこれらを原料として製造した食品を加工し、又は主要原料としたものを凍結させたものであって、乳固形分3.0%以上を含むもの(発酵乳を除く。)と定義されている。
本発明ないし本明細書における「アイスクリーム類」も上記の定義に従うものである。すなわち、乳又はこれらを原料として製造した食品を加工し、又は主要原料としたものを凍結させたものであって、乳固形分3.0質量%以上を含むもの(発酵乳を除く。)が、本発明ないし本明細書における「アイスクリーム類」である。具体的には、「アイスクリーム」(乳固形分15.0質量%以上 うち乳脂肪分8.0質量%以上)、「アイスミルク」(上記アイスクリームには該当せず、かつ、乳固形分10.0質量%以上 うち乳脂肪分3.0質量%以上)、「ラクトアイス」(上記アイスクリーム及びアイスミルクには該当せず、かつ、乳固形分3.0質量%以上)を合わせて、「アイスクリーム類」と称す。
【0016】
本発明のアイスクリーム類における乳固形分含有量は3質量%以上であり、保型性を向上させる観点から、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることがさらに好ましい。また、当該含有量は、滑らかな口溶けを維持する観点から、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下であることがさらに好ましい。なお、上記と同様の観点から、当該含有量は3~40質量%であることが好ましく、5~40質量%であることがより好ましく、10~30質量%であることがさらに好ましく、15~25質量%であることがさらに好ましい。
本発明のアイスクリーム類は、アイスクリーム、アイスミルク又はラクトアイスであることが好ましい。
【0017】
前記乳固形分は、無脂乳固形分と、乳脂肪分とに分けられる。本発明のアイスクリーム類における乳脂肪分含有量は、アイスクリーム類の保型性を向上させる観点、及びアイスクリーム類の風味を良好とする観点から、3質量%以上であることが好ましく、8質量%以上であることがより好ましい。また、程よいコクを発現させる観点から、当該含有量は40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。
【0018】
(クロロゲン酸類)
本発明のアイスクリーム類は、クロロゲン酸類を含有する。クロロゲン酸類は、植物界に広く存在するポリフェノールの1種であり、いわゆる非フラボノイド系化合物に該当される。クロロゲン酸類は、上述したように、多様な生理効果(老化抑制、発癌抑制、血糖上昇抑制、高血圧改善、脂肪燃焼促進、肌保湿改善、認知機能改善等)を有する。本発明のアイスクリーム類はクロロゲン酸類を含有するため、保型性に優れるだけでなく、上記の多様な生理効果が期待される機能性食品でもある。
【0019】
本発明ないし本明細書において「クロロゲン酸類」とは、3-カフェオイルキナ酸、4-カフェオイルキナ酸及び5-カフェオイルキナ酸から選ばれるカフェオイルキナ酸、3-フェルロイルキナ酸、4-フェルロイルキナ酸及び5-フェルロイルキナ酸から選ばれるフェルロイルキナ酸、3,4-ジカフェオイルキナ酸、3,5-ジカフェオイルキナ酸及び4,5-ジカフェオイルキナ酸から選ばれるジカフェオイルキナ酸の総称である。すなわち、本発明において「クロロゲン酸類の含有量」という場合には、3-カフェオイルキナ酸、4-カフェオイルキナ酸、5-カフェオイルキナ酸、3-フェルロイルキナ酸、4-フェルロイルキナ酸、5-フェルロイルキナ酸、3,4-ジカフェオイルキナ酸、3,5-ジカフェオイルキナ酸及び4,5-ジカフェオイルキナ酸の各含有量の合計を意味する。
本発明のアイスクリーム類において、クロロゲン酸類の配合は、カテキン類等の他のポリフェノールの配合と比べ、アイスクリーム類の保型性を格段に向上させることができる。
【0020】
本発明のアイスクリーム類中のクロロゲン酸類の含有量は0.01~1.50質量%である。アイスクリーム類の保型性をより向上させる観点から、当該含有量は0.05質量%以上であることが好ましく、0.10質量%以上であることがより好ましく、0.15質量%以上であることがさらに好ましい。また、上記と同様の観点から、当該含有量は1.45質量%以下であることが好ましく、1.40質量%以下であることがより好ましく、1.35質量%以下であることがさらに好ましく、1.30質量%以下であることがさらに好ましい。また、上記と同様の観点から、当該含有量は0.05~1.45質量%であることが好ましく、0.05~1.40質量%であることよりが好ましく、0.10~1.35質量%であることがさらに好ましく、0.10~1.30質量%であることがさらに好ましく、0.15~1.30質量%であることがさらに好ましい。
【0021】
本発明のアイスクリーム類中にクロロゲン酸類を混合する際のクロロゲン酸類の形態には特に限定されない。すなわち、クロロゲン酸類そのもの(クロロゲン酸類精製物等)をアイスクリーム類に配合したり、クロロゲン酸類を含有する植物の抽出物、加工品等をアイスクリーム類に配合したりすることにより、得られるアイスクリーム類を、クロロゲン酸類を含有したものとすることができる。当該クロロゲン酸類を含有する植物としては、例えばコーヒー、さつまいも、リンゴ、ごぼう、なす、春菊、ふき、ヤーコン、マテ、じゃがいも等の植物が挙げられる。
クロロゲン酸類は商業的にも入手可能であり、例えばクロロゲン酸類試薬(富士フィルム和光純薬社製)、ルナフェノンC-100(花王社製)、UCCインスタントコーヒー(UCC上島珈琲社製)等をクロロゲン酸類源として用いることができる。
【0022】
アイスクリーム類中のクロロゲン酸類は、例えば下記実施例に記載の方法によって測定することができる。
また、本発明のアイスクリーム類に含有されるクロロゲン酸類として市販のクロロゲン酸類(例えば試薬)を用いることができる。
【0023】
(カフェイン)
本発明のアイスクリーム類は、カフェイン量が規定の範囲内に調整されている。カフェインとは、コーヒー豆や茶葉に含まれる苦味のある無色の結晶成分である。本発明ないし本明細書において、「カフェイン」は、1,3,7-トリメチルキサンチンを意味する。
【0024】
本発明のアイスクリーム類は、カフェインを含有しないものであってもよい。また、本発明のアイスクリーム類に含まれ得るカフェインの含有量は、好ましくは0.00001~0.60質量%である。本発明のアイスクリーム類がカフェインを含有する場合、当該アイスクリーム類中のカフェインの含有量は、アイスクリーム類の保型性を向上させる観点から、0.00001質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましく、0.02質量%以上であることがさらに好ましく、0.03質量%以上であることがさらに好ましい。また、上記と同様の観点から、当該含有量は0.60質量%以下であることが好ましく、0.45質量%以下であることがより好ましく、0.40質量%以下であることがさらに好ましく、0.35質量%以下であることがさらに好ましい。
また、上記と同様の観点から、当該含有量は0.00001~0.60質量%であることが好ましく、0.01~0.45質量%であることがより好ましく、0.02~0.40質量%であることがより好ましく、0.03~0.35質量%であることがさらに好ましい。
【0025】
本発明のアイスクリーム類中にカフェインを混合する際のカフェインの形態については特に限定されない。すなわち、カフェインそのもの(カフェイン精製物等)をアイスクリーム類に配合したり、カフェインを含有する植物の破砕物、抽出物、加工品等をアイスクリーム類に配合したりすることにより、得られるアイスクリーム類を、カフェインを含有したものとすることができる。当該カフェインを含有する植物としては、例えばコーヒー、カカオ、グァラナや、マテ茶、紅茶、烏龍茶、緑茶、プーアル茶等の原料となる茶葉等が挙げられる。
カフェインは商業的にも入手可能であり、例えばカフェイン試薬(富士フィルム和光純薬社製)、ルナフェノンC-100(花王社製)、UCCインスタントコーヒー(UCC上島珈琲社製)等をカフェイン源として用いることができる。
【0026】
アイスクリーム類中、ないしカフェイン製剤中のカフェインは、例えば下記実施例に記載の方法で計測することができる。
また、市販のカフェイン製剤を用いる場合は、付属の成分表等に記載のカフェインの種類及び濃度を参照することができる。
【0027】
(配合比)
本発明のアイスクリーム類中、前記クロロゲン酸類の含有量を(A)、前記カフェインの含有量を(B)としたとき、(A)に対する(B)の比の値((B)/(A))は、0.60以下(すなわち、0.00~0.60)である。アイスクリーム類の保型性を向上させる観点から、当該比の値は0.05以上であることが好ましく、0.10以上であることがより好ましく、0.15以上であることがさらに好ましい。また、上記と同様の観点から、当該比の値が0.55以下であることが好ましく、0.50以下であることがより好ましく、0.45以下であることがさらに好ましく、0.40以下であることがさらに好ましい。
また、当該比の値は0.00~0.60とすることができ、0.05~0.55であることが好ましく、0.10~0.50であることがより好ましく、0.15~0.45であることがさらに好ましく、0.15~0.40であることがさらに好ましい。また、当該比の値を、0.00~0.40とすることも好ましい。
【0028】
本発明のアイスクリーム類は、上記クロロゲン酸類及びカフェイン以外の成分については、アイスクリーム類に通常含まれ得る成分(通常使用され得る原料由来の成分)を含有することができる。
このような成分としては、例えば生乳、牛乳、特別牛乳、生山羊乳、殺菌山羊乳、生めん羊乳、成分調整牛乳、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳及び加工乳等の乳、クリーム、バター、バターオイル、チーズ、濃縮ホエイ、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、たんぱく質濃縮ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、調製液状乳、発酵乳、乳酸菌飲料等の乳製品、天然甘味料又は人工甘味料の糖類、卵黄等由来の成分が挙げられる。これらの成分含有量についても、アイスクリーム類に通常想定される含有量を適用することができる。
【0029】
また本発明のアイスクリーム類には、さらに上記成分の他に本発明の効果を損なわない範囲で種々の添加剤等を含有してもよい。例えば、食用油脂、香辛料、着色料、保存料、果汁、香料等を適宜に含有することができる。
【0030】
例えば本発明のアイスクリーム類は、必要に応じて乳化剤を含有することができる。本発明のアイスクリーム類においてより高い保型性を維持する観点から、乳化剤の含有量は少ない方が好ましく、具体的には1.0質量%以下とすることができ、0.8質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましい。
【0031】
また例えば、本発明のアイスクリーム類は、必要に応じて増粘多糖類等の増粘剤を含有することもできる。本発明のアイスクリーム類において高い保型性を維持する観点から、増粘剤の含有量は少ない方が好ましく、具体的には2.0質量%以下とすることができ、1.0質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましい。
【0032】
本発明のアイスクリーム類において、オーバーラン(空気含有率)は、保型性を向上させる観点、及び口溶けを軽くする観点から、20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、40%以上であることがさらに好ましい。また、風味の良い濃厚なアイスクリーム類とする観点から、当該オーバーランの値は、100%以下であることが好ましく、96%以下であることがより好ましく、92%以下であることがさらに好ましい。
なお、オーバーランの値(%)は下記の計算式により算出される。

オーバーラン(%)=[(アイスクリーム類の容積-アイスクリーム類を解凍して液状にしたときの容積)/(アイスクリーム類を解凍して液状にしたときの容積)]×100
【0033】
本発明のアイスクリーム類は、カップ状、スティック状、最中状、コーンアイスクリームなど、種々の形態を採り得る。
【0034】
[アイスクリーム類の製造方法]
本発明の別の実施形態では、アイスクリーム類の製造方法が提供される。
本発明のアイスクリーム類の製造方法は一実施形態において、アイスクリーム類の原料を混合し、均質化して、撹拌しながら凍結(フリージング)するに当たり、原料混合物中のクロロゲン酸類の含有量を0.01~1.50質量%、前記クロロゲン酸類の含有量に対するカフェインの含有量の比の値を0.60以下に調整することを含む。上記クロロゲン酸類やカフェインの含有量の調整は、上記クロロゲン酸類やカフェインと、他の原料との混合により行われる。上記クロロゲン酸類やカフェインと、他の原料との混合は、上記のフリージングの前に行うことが好ましく、上記の殺菌工程前に行うことが好ましく、上記の均質化工程前に行うことがより好ましい。
上記アイスクリーム類の製造方法における原料混合物中におけるクロロゲン酸類やカフェインの含有量等は、本発明のアイスクリーム類におけるクロロゲン酸類やカフェインの含有量と同じであり、好ましい範囲も同じである。
【0035】
本発明のアイスクリーム類は、目的のアイスクリーム類の原料を混合し、均質化して、撹拌しながら凍結するに当たり、クロロゲン酸類を特定量配合して、また必要によりカフェインを特定量配合すること以外は、一般的なアイスクリーム類の製造方法を適用することはできる。例えば、クロロゲン酸類及び/又はカフェインと、さらに乳、砂糖等の原料を混合して均質化(乳化)し、殺菌後、必要に応じてエージングを行って、更に撹拌しながら凍結(フリージング)することによって、所望のオーバーランのアイスクリーム類を得ることができる。均質化、エージング、フリージングの条件は、目的に応じて適宜設定することができる。
【0036】
また、本発明のアイスクリーム類の製造方法は別の実施形態において、本発明のアイスクリーム類の保型性向上剤を用いて本発明のアイスクリーム類を得ることを含む。本発明のアイスクリーム類の保型性向上剤と、他の原料との混合は、上記のフリージングの前に行うことが好ましく、上記の殺菌工程前に行うことが好ましく、上記の均質化工程前に行うことがより好ましい。
【0037】
フリージング後、アイスクリーム類を容器に詰め、更に冷凍硬化させてもよい。本発明のアイスクリーム類を容器詰して提供する場合、一般のアイスクリーム類と同様の包装材料を使用することができる。また、コーン、ワッフル生地等に充填して提供することもできる。
【0038】
[アイスクリーム類の保型性向上剤]
また本発明の別の実施形態では、上述したクロロゲン酸類を有効成分とする、アイスクリーム類の保型性向上剤(以下、本発明の保型性向上剤とも称す。)が提供される。アイスクリーム類の製造において、本発明の保型性向上剤をクロロゲン酸類源として配合することにより、フリージング工程を経て種々のオーバーランに調整されたアイスクリーム類の保型性を向上させることができる。本発明の保型性向上剤は、上述した本発明のアイスクリーム類を得るためのクロロゲン酸類源として好適に用いることができる。本発明のアイスクリーム類の製造工程において、本発明の保型性向上剤と、他の原料との混合は、上記のフリージングの前に行うことが好ましく、上記の殺菌工程前に行うことが好ましく、上記の均質化工程前に行うことがより好ましい。
【0039】
本発明の保型性向上剤に含まれるクロロゲン酸類の含有量は、アイスクリーム類の製造において配合したときに、得られるアイスクリーム類中のクロロゲン酸類の含有量を上記好ましい含有量とできれば特に制限されない。例えば、保型性向上剤中のクロロゲン酸類の含有量を3質量%以上とすることもでき、10質量%以上とすることもでき、50質量%以上とすることもでき、90質量%以上とすることもできる。また、当該含有量の上限値も特に限定されず、100質量%以下であってもよく、99質量%以下とすることもできる。
また、本発明の保型性向上剤はクロロゲン酸類に加え、カフェインを含有してもよい。この場合、本発明の保型性向上剤中のカフェインの含有量は、本発明の保型性向上剤中のクロロゲン酸類の含有量を(A1)、前記カフェインの含有量を(B1)としたとき、(A1)に対する(B1)の比の値((B1)/(A1))が0.60以下(すなわち、0.00~0.60)であることが好ましい。また、当該比の値は0.05以上であることが好ましく、0.10以上であることがより好ましく、0.15以上であることがさらに好ましい。また、当該比の値が0.55以下であることが好ましく、0.50以下であることがより好ましく、0.45以下であることがさらに好ましく、0.40以下であることがさらに好ましい。
また、当該比の値は0.00~0.60とすることができ、0.05~0.55であることが好ましく、0.10~0.50であることがより好ましく、0.15~0.45であることがさらに好ましく、0.15~0.40であることがさらに好ましい。また、当該比の値を、0.00~0.40とすることも好ましい。
【0040】
[アイスクリーム類の保型性向上方法]
本発明のさらに別の実施形態では、アイスクリーム類の保型性向上方法(以下、「本発明の保型性向上方法」とも称す。)が提供される。
本発明の保型性向上方法は一実施形態において、アイスクリーム類の原料を混合し、均質化して、撹拌しながら凍結(フリージング)するに当たり、原料混合物中のクロロゲン酸類の含有量を0.01~1.50質量%、前記クロロゲン酸類の含有量に対するカフェインの含有量の比の値を0.60以下に調整することを含む。上記クロロゲン酸類やカフェインの含有量の調整は、上記クロロゲン酸類やカフェインと、他の原料との混合により行われる。上記クロロゲン酸類やカフェインと、他の原料との混合は、上記のフリージングの前に行うことが好ましく、上記の殺菌工程前に行うことが好ましく、上記の均質化工程前に行うことがより好ましい。
上記保型性向上方法における原料混合物中におけるクロロゲン酸類やカフェインの含有量等は、本発明のアイスクリーム類におけるクロロゲン酸類やカフェインの含有量と同じであり、好ましい範囲も同じである。
【0041】
また、本発明の保型性向上方法は別の実施形態において、本発明の保型性向上剤を用いて本発明のアイスクリーム類を得ることを含む。本発明の保型性向上剤と、他の原料との混合は、上記のフリージングの前に行うことが好ましく、上記の殺菌工程前に行うことが好ましく、上記の均質化工程前に行うことがより好ましい。
上記保型性向上方法における原料混合物中におけるクロロゲン酸類やカフェインの含有量(質量%)や両者の含有量比等は、上述した、本発明のアイスクリーム類中におけるクロロゲン酸類やカフェインの含有量(質量%)や両者の含有量比等と同じ範囲とすることができる。
【0042】
さらに、本発明の保型性向上方法は、別の実施形態において、アイスクリーム類の原料混合物中にクロロゲン酸類を含有させることにより、得られるアイスクリーム類の保型性を向上させることを含む。当該保型性向上方法において、前記クロロゲン酸類はアイスクリーム類の保型性を向上させるための有効成分として作用する。当該保型性向上方法において、前記クロロゲン酸類と、他の原料との混合は、上記のフリージングの前に行うことが好ましく、上記の殺菌工程前に行うことが好ましく、上記の均質化工程前に行うことがより好ましい。
上記保型性向上方法における原料混合物中における前記クロロゲン酸類やカフェインの含有量(質量%)や両者の含有量比等は、上述した、本発明のアイスクリーム類中におけるクロロゲン酸類やカフェインの含有量(質量%)や両者の含有量比等と同じ範囲とすることができる。
【0043】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下のアイスクリーム類、当該アイスクリーム類の製造方法、アイスクリーム類の保型性向上方法、アイスクリーム類の保型性向上剤を開示する。
【0044】
<1>
クロロゲン酸類の含有量が0.01~1.50質量%であり、
前記クロロゲン酸類の含有量に対するカフェインの含有量の比の値が0.60以下である、
アイスクリーム類。
【0045】
<2>
前記クロロゲン酸類の含有量が、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上、さらに好ましくは0.15質量%以上である、前記<1>に記載のアイスクリーム類。
<3>
前記クロロゲン酸類の含有量が、好ましくは1.45質量%以下、より好ましくは1.40質量%以下、さらに好ましくは1.35質量%以下、さらに好ましくは1.30質量%以下である、前記<1>又は<2>に記載のアイスクリーム類。
<4>
前記クロロゲン酸類の含有量が、好ましくは0.05~1.45質量%、より好ましくは0.05~1.40質量%、さらに好ましくは0.10~1.35質量%、さらに好ましくは0.10~1.30質量%、さらに好ましくは0.15~1.30質量%である、前記<1>~<3>のいずれか1項に記載のアイスクリーム類。
<5>
前記カフェインの含有量が、好ましくは0.00001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、さらに好ましくは0.03質量%以上である、前記<1>~<4>のいずれか1項に記載のアイスクリーム類。
<6>
前記カフェインの含有量が、好ましくは0.60質量%以下、より好ましくは0.45質量%以下、より好ましくは0.40質量%以下、さらに好ましくは0.35質量%以下である、前記<1>~<5>のいずれか1項に記載のアイスクリーム類。
<7>
前記カフェインの含有量が、好ましくは0.00001~0.60質量%、好ましくは0.01~0.45質量%、より好ましくは0.02~0.40質量%、さらに好ましくは0.03~0.35質量%である、前記<1>~<6>のいずれか1項に記載のアイスクリーム類。
<8>
前記クロロゲン酸類の含有量に対する前記カフェインの含有量の比の値が、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上、さらに好ましくは0.15以上である、前記<1>~<7>のいずれか1項に記載のアイスクリーム類。
<9>
前記クロロゲン酸類の含有量に対する前記カフェインの含有量の比の値が、好ましくは0.55以下、より好ましくは0.50以下、さらに好ましくは0.45以下、さらに好ましくは0.40以下である、前記<1>~<8>のいずれか1項に記載のアイスクリーム類。
<10>
前記クロロゲン酸類の含有量に対する前記カフェインの含有量の比の値が、好ましくは0.05~0.55、より好ましくは0.10~0.50、さらに好ましくは0.15~0.45、さらに好ましくは0.15~0.40である、前記<1>~<9>のいずれか1項に記載のアイスクリーム類。
<11>
前記クロロゲン酸類の含有量が0.10~1.30質量%であり、前記クロロゲン酸類の含有量に対する前記カフェインの含有量の比の値が0.40以下である、前記<1>~<10>のいずれか1項に記載のアイスクリーム類。
【0046】
<12>
乳固形分含有量が、3質量%以上であり、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である、前記<1>~<11>のいずれか1項に記載のアイスクリーム類。
<13>
乳固形分含有量が、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下である、前記<1>~<12>のいずれか1項に記載のアイスクリーム類。
<14>
乳固形分含有量が、好ましくは3~40質量%、より好ましくは5~40質量%、さらに好ましくは10~30質量%、さらに好ましくは15~25質量%である、前記<1>~<13>のいずれか1項に記載のアイスクリーム類。
<15>
乳脂肪分含有量が、好ましくは3質量%以上、より好ましくは8質量%以上である、前記<1>~<14>のいずれか1項に記載のアイスクリーム類。
<16>
乳脂肪分含有量が、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である、前記<1>~<15>のいずれか1項に記載のアイスクリーム類。
<17>
乳固形分含有量が、好ましくは3~40質量%、より好ましくは8~30質量%である、前記<1>~<16>のいずれか1項に記載のアイスクリーム類。
<18>
オーバーランが、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは40%以上である、前記<1>~<17>のいずれか1項に記載のアイスクリーム類。
<19>
オーバーランが、好ましくは100%以下、より好ましくは96%以下、さらに好ましくは92%以下である、前記<1>~<18>のいずれか1項に記載のアイスクリーム類。
<20>
オーバーランが、好ましくは20~100%、より好ましくは30~96%、さらに好ましくは40~92%である、前記<1>~<19>のいずれか1項に記載のアイスクリーム類。
【0047】
<21>
クロロゲン酸類を有効成分とする、アイスクリーム類の保型性向上剤。
<22>
前記<1>~<20>のいずれか1項に記載のアイスクリーム類を得るための、前記<21>に記載のアイスクリーム類の保型性向上剤。
<23>
前記保型性向上剤中のクロロゲン酸類の含有量が、3質量%以上であってもよく、10質量%以上であってよく、50質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよい、前記<21>又は<22>に記載のアイスクリーム類の保型性向上剤。
<24>
前記保型性向上剤中のクロロゲン酸類の含有量が、100質量%以下であってもよく、99質量%以下であってもよい、前記<21>~<23>のいずれか1項に記載のアイスクリーム類の保型性向上剤。
<25>
前記保型性向上剤中のクロロゲン酸類の含有量が、3~100質量%であってもよく、10~100質量%であってもよく、50~99質量%であってもよく、90~99質量%であってもよい、前記<21>~<24>のいずれか1項に記載のアイスクリーム類の保型性向上剤。
<26>
前記クロロゲン酸類の含有量に対するカフェインの含有量の比の値が、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上、さらに好ましくは0.15以上である、前記<21>~<25>のいずれか1項に記載のアイスクリーム類の保型性向上剤。
<27>
前記クロロゲン酸類の含有量に対するカフェインの含有量の比の値が、好ましくは0.60以下、より好ましくは0.55以下、さらに好ましくは0.50以下、さらに好ましくは0.45以下、さらに好ましくは0.40以下である、前記<21>~<26>のいずれか1項に記載のアイスクリーム類の保型性向上剤。
<28>
前記クロロゲン酸類の含有量に対するカフェインの含有量の比の値が、好ましくは0.05~0.55、より好ましくは0.10~0.50、さらに好ましくは0.15~0.45、さらに好ましくは0.15~0.40である、前記<21>~<27>のいずれか1項に記載のアイスクリーム類の保型性向上剤。
<29>
前記クロロゲン酸類の含有量に対するカフェインの含有量の比の値が、好ましくは0.00~0.60、より好ましくは0.00~0.40である、前記<21>~<28>のいずれか1項に記載のアイスクリーム類の保型性向上剤。
【0048】
<30>
アイスクリーム類の原料を混合し、均質化して、撹拌しながら凍結するに当たり、原料混合物中のクロロゲン酸類の含有量を0.01~1.50質量%、前記クロロゲン酸類の含有量に対するカフェインの含有量の比の値を0.60以下に調整することを含む、アイスクリーム類の製造方法。
<31>
前記アイスクリーム類が、前記<1>~<20>のいずれか1項に記載のアイスクリーム類である、前記<30>に記載のアイスクリーム類の製造方法。
<32>
前記<21>~<29>のいずれか1項に記載のアイスクリーム類の保型性向上剤を用いて、前記<1>~<20>のいずれか1項に記載のアイスクリーム類を得ることを含む、前記<30>又は<31>に記載のアイスクリーム類の製造方法。
<33>
前記原料混合物中のクロロゲン酸類の含有量が、前記<2>~<4>のいずれか1項に記載の含有量である、前記<30>~<32>のいずれか1項に記載のアイスクリーム類の製造方法。
<34>
前記原料混合物中のカフェインの含有量が、前記<5>~<7>のいずれか1項に記載の含有量である、前記<30>~<33>のいずれか1項に記載のアイスクリーム類の製造方法。
<35>
前記原料混合物中の前記クロロゲン酸類の含有量に対する前記カフェインの含有量の比の値が、前記<8>~<10>のいずれか1項に記載の比の値である、前記<30>~<34>のいずれか1項に記載のアイスクリーム類の製造方法。
【0049】
<36>
アイスクリーム類の原料を混合し、均質化して、撹拌しながら凍結するに当たり、原料混合物中のクロロゲン酸類の含有量を0.01~1.50質量%、前記クロロゲン酸類の含有量に対するカフェインの含有量の比の値を0.60以下に調整することを含む、アイスクリーム類の保型性向上方法。
<37>
前記アイスクリーム類が、前記<1>~<20>のいずれか1項に記載のアイスクリーム類である、前記<36>に記載のアイスクリーム類の保型性向上方法。
<38>
前記<21>~<29>のいずれか1項に記載のアイスクリーム類の保型性向上剤を用いて、前記<1>~<20>のいずれか1項に記載のアイスクリーム類を得ることを含む、前記<36>又は<37>に記載のアイスクリーム類の保型性向上方法。
<39>
前記原料混合物中のクロロゲン類の含有量が、前記<2>~<4>のいずれか1項に記載の含有量である、前記<36>~<38>のいずれか1項に記載のアイスクリーム類の保型性向上方法。
<40>
前記原料混合物中のカフェインの含有量が、前記<5>~<7>のいずれか1項に記載の含有量である、前記<36>~<39>のいずれか1項に記載のアイスクリーム類の保型性向上方法。
<41>
前記原料混合物中の前記クロロゲン酸類の含有量に対する前記カフェインの含有量の比の値が、前記<8>~<10>のいずれか1項に記載の比の値である、前記<36>~<40>のいずれか1項に記載のアイスクリーム類の保型性向上方法。
【0050】
<42>
アイスクリーム類の原料混合物中にクロロゲン酸類を含有させることにより、得られるアイスクリーム類の保型性を向上させることを含む、アイスクリーム類の保型性向上方法。
<43>
前記アイスクリーム類が、前記<1>~<20>のいずれか1項に記載のアイスクリーム類である、前記<42>に記載のアイスクリーム類の保型性向上方法。
<44>
前記<21>~<29>のいずれか1項に記載のアイスクリーム類の保型性向上剤を用いて、前記<1>~<20>のいずれか1項に記載のアイスクリーム類を得ることを含む、前記<42>又は<43>に記載のアイスクリーム類の保型性向上方法。
<45>
前記原料混合物中のクロロゲン類の含有量が、前記<1>~<4>のいずれか1項に記載の含有量である、前記<42>~<44>のいずれか1項に記載のアイスクリーム類の保型性向上方法。
<46>
前記原料混合物中のカフェインの含有量が、前記<5>~<7>のいずれか1項に記載の含有量である、前記<42>~<45>のいずれか1項に記載のアイスクリーム類の保型性向上方法。
<47>
前記原料混合物中の前記クロロゲン酸類の含有量に対する前記カフェインの含有量の比の値が、前記<1>、<8>~<10>のいずれか1項に記載の比の値である、前記<42>~<46>のいずれか1項に記載のアイスクリーム類の保型性向上方法。
【実施例0051】
本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
【0052】
本実施例で用いる各製剤中のクロロゲン酸類の含有量及びカフェインの含有量は、下記の方法により決定した。
【0053】
<クロロゲン酸類の分析>
分析機器はHPLCを使用した。装置の構成ユニットの型番は次の通りである。
UV-VIS検出器:L-2420(日立ハイテクノロジーズ社製)
ラムオーブン:L-2300(日立ハイテクノロジーズ社製)
ポンプ:L-2130(日立ハイテクノロジーズ社製)
オートサンプラー:L-2200(日立ハイテクノロジーズ社製)
カラム:Cadenza CD-C18 内径4.6mm×長さ150mm、粒子径3
μm(インタクト社製)
【0054】
HPLCによる分析条件は次の通りとした。
サンプル注入量:10μL
流量:1.0mL/min
UV-VIS検出器設定波長:325nm
カラムオーブン設定温度:35℃
溶離液A:0.05M酢酸、0.1mMヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸(
HEDPO)、10mM酢酸ナトリウム、5(V/V)%アセトニトリル溶液
溶離液B:アセトニトリル
濃度勾配条件:
時間(分) 溶離液A(vol.%) 溶離液B(vol.%)
0.0 100 0
10.0 100 0
15.0 95 5
20.0 95 5
22.0 92 8
50.0 92 8
52.0 10 90
60.0 10 90
60.1 100 0
70.0 100 0
【0055】
HPLCで分析するサンプルは次のように調製した、測定対象試料1.0gを室温の水100mL中に入れ、マグネットスターラーを用いて10分間撹拌して得られた水溶液をメンブレンフィルター(GLクロマトディスク25A、孔径0.45μm、ジーエルサイエンス社製)にて濾過後、分析に供した。上述した3種のモノカフェオイルキナ酸、3種のモノフェルロイルキナ酸、及び3種のジカフェオイルキナ酸の保持時間は下記の通りである。当該9種のクロロゲン酸類のピーク面積値の合計から、5-カフェオイルキナ酸を標準物質としてクロロゲン酸類の量を求め、測定対象試料中のクロロゲン酸類の含有量(質量%)を算出した。
【0056】
クロロゲン酸類の保持時間
モノカフェオイルキナ酸(3種):
3-カフェオイルキナ酸 5.3分
5-カフェオイルキナ酸 8.8分
4-カフェオイルキナ酸 11.6分
モノフェルロイルキナ酸(3種):
3-フェルロイルキナ酸 13.0分
5-フェルロイルキナ酸 19.9分
4-フェルロイルキナ酸 21.0分
ジカフェオイルキナ酸(3種):
3,4-ジカフェオイルキナ酸 36.6分
3,5-ジカフェオイルキナ酸 37.4分
4,5-ジカフェオイルキナ酸 44.2分
【0057】
<カフェインの分析>
カフェインの保持時間を18.5分とし、試薬カフェイン(富士フィルム和光純薬社製)を標準物質として使用した以外は、上記クロロゲン酸類の分析方法と同様にしてカフェインの含有量(質量%)を算出した。
【0058】
<実施例1>
表1に示す原料配合量に従って実施例1のアイスクリームを得た。以下に具体的な手順を示す。
【0059】
ホバート社製のホバートミキサー N50 MIXERに、砂糖(上白糖、三井製糖社製)、及び生クリーム(特選北海道純生クリーム35、高梨乳業社製)を、下記表1の配合組成に従って秤量して入れ、中速1分間ミキシングした後、ヘラで分散させた。
その後、牛乳(商品名:おいしい牛乳、明治社製)及びクロロゲン酸類を下記表1の配合組成に従って秤量して入れ、中速1分間ミキシングし、ヘラで分散させた後に再び中速1分間ミキシングを行った。

なお、本実施例で用いたクロロゲン酸類源及びカフェイン源の詳細は、以下の通りである。
・クロロゲン酸類試薬(クロロゲン酸類量:95.0質量%、富士フィルム和光純薬社製)
・ルナフェノンC-100(クロロゲン酸類量:11.0質量%、カフェイン量:2.2質量%、花王社製)
・クロロゲン酸類抽出試験品(クロロゲン酸類量:44.05質量%、カフェイン量:0.1質量%、花王社製)
・UCCインスタントコーヒー(クロロゲン酸類量:3.3質量%、カフェイン量:2.8質量%、UCC上島珈琲社製)
・カフェイン試薬(カフェイン量:98.5質量%、富士フィルム和光純薬社製)
・カテキン類抽出試験品(茶カテキン:37.5質量%、カフェイン量:3.61質量%、花王社製)
・いちご濃縮液(B)(固形分量:42.3質量%、特開2011-147422号公報の記載を基に、イチゴを煮詰めてから搾汁し、イチゴ果汁を生成し、更に加熱して濃縮したもの。)
【0060】
上記ミキシング後のアイスクリームミックスを、事前に-18℃で保冷したKAI アイスクリームメーカー(型番:DL-5929、貝印社製)の保冷ポットに移し入れ、初期回転数34rpm/minで撹拌し、オーバーランの状態を見て15~35分で停止させた。
得られたアイスクリームを、内径71mmの丸カップ120cc(C-AP丸カップ86-120(中央化学社製))に移し入れ、移し入れる際にカップ内に気泡による空隙ができないように、軽く振動を付与しながら充填した。なお、カップ容量は、予め水置換法により容積を測定しておき、実施品を120cc充填するために、カップにメモリ線を入れ、実施品をメモリ線まで充填した。前記丸カップに充填したアイスクリームを、-18℃で10日間保管した。保管後、オーバーランの値が20~100%であるアイスクリームについて、下記の保型性評価を行った。
【0061】
<実施例2~19、22及び23>
原料の配合量を下記表1の配合量とした以外は、上記実施例1と同様にして実施例2~19、22及び23のアイスクリームを得た。
【0062】
<実施例20及び21>
オーバーランの値を下記表1に記載の値となるまでKAI アイスクリームメーカーで撹拌した以外は、上記実施例1と同様にして実施例20及び21のアイスクリームを得た。
【0063】
<比較例1~14>
原料の配合量を下記表1の配合量とした以外は、上記実施例1と同様にして比較例1~14のアイスクリームを得た。
【0064】
[保型性試験]
容器の開口部に金網(目開き1.6mm四方、金網線直径0.30mm)を載置し、その金網上に上記実施例1~23、及び比較例1~14のアイスクリームが充填されたカップをそれぞれ逆さにして置き、温度20℃、相対湿度60%の雰囲気にて45分間放置した。その後、容器内に溜まったアイスクリームの溶出量を計測し、下記の評価基準に基づき各アイスクリームの保型性を評価した。結果を下記表1に示す。
【0065】
(保型性評価基準)
5:溶出量が1.0g未満
4:溶出量が1.0g以上4.0g未満
3:溶出量が4.0g以上8.0g未満
2:溶出量が8.0g以上12.0g未満
1:溶出量が12.0g以上
【0066】
【表1-1】
【0067】
【表1-2】
【0068】
【表1-3】
【0069】
クロロゲン酸類もカフェインも含有しない比較例1のアイスクリームは、アイスクリームの溶出量が多く、保型性に優れなかった。また、クロロゲン酸類を含有していても、その含有量が本発明の規定よりも多い比較例3、4、10及び11のアイスクリーム、並びにその含有量が本発明の規定よりも少ない比較例14のアイスクリームも、溶出量が多く保型性に劣っていた。また、カフェインを過剰に含有する比較例5、6及び9のアイスクリームもまた、溶出量が多く保型性に劣っていた。さらに、クロロゲン酸類及びカフェインの含有量が本発明の規定の範囲内であっても、クロロゲン酸類の含有量に対するカフェインの含有量の比の値が本発明の規定範囲を超える比較例2、7及び8のアイスクリームもまた、溶出量が多く保型性に優れなかった。
また、ポリフェノールの1種であるカテキン、又はイチゴポリフェノールを含有するいちご濃縮液を配合した比較例12及び13のアイスクリームも、溶出量が多く保型性に劣っていた。
【0070】
これに対し、本発明の規定の全てを満たす実施例1~23のアイスクリームは、常温で放置してもアイスクリームの溶出量が抑えられ、保型性に優れることが明らかとなった。