(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053560
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】ロック機構及びコネクターセット
(51)【国際特許分類】
H01R 13/639 20060101AFI20240408BHJP
H01R 13/633 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
H01R13/639 Z
H01R13/633
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023172003
(22)【出願日】2023-10-03
(31)【優先権主張番号】P 2022159686
(32)【優先日】2022-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】513314171
【氏名又は名称】宏致電子股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】ACES ELECTRONICS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.13,Dongyuan Rd.,Zhongli City,Taoyuan County 32063,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宣和
(72)【発明者】
【氏名】橋本 公明
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA05
5E021FA11
5E021FA14
5E021FB02
5E021FB08
5E021FB11
5E021FC31
5E021FC40
5E021HC12
5E021HC35
(57)【要約】
【課題】コネクター及びコネクターの実装スペースの小型化を図ることができるとともに、コネクターの挿入時及び抜去時の作業性を向上できるロック機構及びコネクターセットを提供する。
【解決手段】ロック機構は、第1コネクターと、第1コネクターと嵌合可能な第2コネクターとの嵌合状態を保持するように構成されたロック機構であって、係合部を有し、第1コネクターに設けられるロック部材と、ロック部材と接続され、ロック部材を基準状態に保持する付勢部と、第1コネクターの嵌合方向と直交する方向と平行に配置され、ロック部材を回動可能に支持する回動軸と、第2コネクターに設けられ、係合部と係合可能な係合受け部と、を備え、ロック部材は、回動軸を中心に回動可能となるように、第1コネクターに取り付けられている。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1コネクターと、前記第1コネクターと嵌合可能な第2コネクターとの嵌合状態を保持するように構成されたロック機構であって、
係合部を有し、前記第1コネクターに設けられるロック部材と、
前記ロック部材と接続され、前記ロック部材を基準状態に保持する付勢部と、
嵌合方向に直交する方向と平行に配置され、前記ロック部材を回動可能に支持する回動軸と、
前記第2コネクターに設けられ、前記係合部と係合可能な係合受け部と、を備え、
前記ロック部材は、前記回動軸を中心に回動可能となるように、前記第1コネクターに取り付けられている、
ロック機構。
【請求項2】
前記第1コネクター及び前記第2コネクターは、前記嵌合方向に直交する方向に配列されたコンタクトを有し、前記第1コネクター及び前記第2コネクターは、前記コンタクトにより電気的に接続される、
請求項1に記載のロック機構。
【請求項3】
前記ロック部材に接続され、前記回動軸の延在方向と直交する抜去方向に引っ張ることが可能な抜去操作部材をさらに備え、
前記抜去操作部材の前記抜去方向への直線運動により、前記回動軸を中心に前記ロック部材を回転させる第1モーメントが生じる、
請求項1に記載のロック機構。
【請求項4】
前記ロック部材は、前記抜去操作部材が接続される抜去部材取付部を有し、
前記抜去部材取付部と前記回動軸を結ぶ方向は、前記抜去方向と交差する、
請求項3に記載のロック機構。
【請求項5】
前記回動軸の延在方向から見た際、前記回動軸と前記係合部の係合点を結ぶ直線と前記抜去方向とのなす角をθ、前記係合点における前記係合部の係合面と前記抜去方向と直交する方向とのなす角をαとした場合、αとθの関係がα≧θを満たす、
請求項1に記載のロック機構。
【請求項6】
前記ロック部材は、板状のプレート部を有し、
前記プレート部の板厚方向が前記回動軸の延在方向と一致するように配置されている、
請求項3に記載のロック機構。
【請求項7】
前記抜去操作部材及び前記ロック部材のうちの一方は、前記抜去方向に対して傾斜して形成された傾斜面を有し、
前記抜去操作部材及び前記ロック部材のうちの他方は、前記傾斜面に係合する係合片を有し、
前記傾斜面及び前記係合片の係合により、前記抜去操作部材の直線運動を回転運動に変換して前記ロック部材に伝達するカムが構成される、
請求項3に記載のロック機構。
【請求項8】
前記ロック部材は、前記回動軸の延在方向に対向する前記第1コネクターの2つの側面に配置され、
前記抜去操作部材は、2つの前記ロック部材を連結する、
請求項3に記載のロック機構。
【請求項9】
前記抜去操作部材は、前記抜去方向への引張動作に対して変形不能な剛体である、
請求項8に記載のロック機構。
【請求項10】
前記抜去操作部材の抜去操作をガイドするガイド部材をさらに備え、
前記抜去操作部材は、前記抜去方向及び前記回動軸の延在方向に直交する方向における前記第1コネクターの第1面側に配置された第1抜去操作部材と、前記第1面とは反対側の第2面側に配置された第2抜去操作部材のうちのいずれかであり、
前記ガイド部材は、前記第1抜去操作部材をガイドするための第1ガイド部と、前記第2抜去操作部材をガイドするための第2ガイド部と、を有する、
請求項3に記載のロック機構。
【請求項11】
前記抜去操作部材は、作業者が把持して引っぱり可能に構成されたプルタブを有し、
前記第1抜去操作部材には、前記第1面側から露出するように前記プルタブが配置されており、
前記第2抜去操作部材には、前記第2面側から露出するように前記プルタブが配置されている、
請求項10に記載のロック機構。
【請求項12】
前記付勢部は、前記ロック部材と一体的に形成され、前記ロック部材の回動に伴い変形して、前記ロック部材の回動方向とは逆向きの第2モーメントを生じさせる、
請求項1に記載のロック機構。
【請求項13】
前記付勢部は、前記第1コネクターの構成部材と当接する自由端部と、前記ロック部材に接続される固定端部と、前記自由端部及び前記固定端部を連結するアーム部と、を有する、
請求項12に記載のロック機構。
【請求項14】
前記ロック部材は、板状のプレート部を有し、
前記付勢部は、前記固定端部に、前記抜去方向と交差する方向に沿って延在し、湾曲して形成された曲げ部を有し、
前記アーム部は、前記曲げ部を介して前記プレート部の外側に配置されている、
請求項13に記載のロック機構。
【請求項15】
前記アーム部は、板厚方向が前記回動軸の延在方向と一致するように配置されている、
請求項14に記載のロック機構。
【請求項16】
前記係合受け部は、前記第1コネクターを挿入方向に移動させたときに、前記係合部と当接する当接面を有し、
前記当接面は、傾斜して形成され、前記第1コネクターの前記挿入方向への移動に伴い前記ロック部材が回動するように前記係合部をせり上げ可能である、
請求項1に記載のロック機構。
【請求項17】
第1コネクターと、
前記第1コネクターと嵌合可能な第2コネクターと、
請求項1に記載のロック機構と、
を備えるコネクターセット。
【請求項18】
前記第2コネクターは、第2コネクター本体を覆う第1シェルと、前記第2コネクター本体の嵌合方向と直交する方向の両側に配置される側面部を有する第2シェルと、を備え、
前記第2シェルは、前記側面部の前記第1コネクターとの嵌合面側の下端部に配置される基板実装部と、前記側面部の上端から張り出して形成され前記第1コネクターの上面と係合する天面部と、を有する、
請求項17に記載のコネクターセット。
【請求項19】
前記第1シェルと前記第2シェルは、別部材で構成される、
請求項18に記載のコネクターセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクターのロック機構及びコネクターセットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、互いに嵌合可能な第1コネクター及び第2コネクターからなるコネクターセットには、嵌合状態を保持するためのロック機構が設けられている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、第1コネクターに、第2コネクターと係合する可動式のロックレバーを設け、このロックレバーに接続されたプルタブを操作して、プルタブを引く力によりロックレバーを動かしてコネクターの嵌合状態を解除する技術が開示されている。特許文献1に開示のコネクターによれば、プルタブを一方向に引くという簡単な操作によりコネクターの嵌合状態を解除することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示のコネクターは、作業性に優れるものの、ロックレバーがピッチ方向(コンタクトの配列方向)に動く構造であり、ロックレバーの可動領域を考慮してコネクターの実装スペースを設計する必要があるため、実装スペースのさらなる小型化を図る上で、改良の余地がある。
【0005】
本発明の目的は、コネクターの実装スペースの小型化を図ることができるとともに、コネクターの挿入時及び抜去時の作業性を向上できるロック機構及びコネクターセットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るロック機構は、
第1コネクターと、前記第1コネクターと嵌合可能な第2コネクターとの嵌合状態を保持するように構成されたロック機構であって、
係合部を有し、前記第1コネクターに設けられるロック部材と、
前記ロック部材と接続され、前記ロック部材を基準状態に保持する付勢部と、
嵌合方向に直交する方向と平行に配置され、前記ロック部材を回動可能に支持する回動軸と、
前記第2コネクターに設けられ、前記係合部と係合可能な係合受け部と、を備え、
前記ロック部材は、前記回動軸を中心に回動可能となるように、前記第1コネクターに取り付けられている。
【0007】
本発明に係るコネクターセットは、
第1コネクターと、
前記第1コネクターと嵌合可能な第2コネクターと、
上記のロック機構と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コネクターの実装スペースの小型化を図ることができるとともに、コネクターの挿入時及び抜去時の作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1A、
図1Bは、本発明を適用した第1の実施の形態に係るコネクターセットの嵌合状態の外観を示す図である。
【
図3】
図3は、コネクターセットの非嵌合状態の外観を示す図である。
【
図4】
図4A、
図4Bは、非嵌合状態のコネクターセットの平面図及び側面図である。
【
図5】
図5は、ケーブル側コネクターの分解斜視図である。
【
図6】
図6は、基板側コネクターの分解斜視図である。
【
図8】
図8A~
図8Dは、基板側コネクターに対してケーブル側コネクターを挿入する作業時のロック機構の状態遷移を示す図である。
【
図9】
図9A~
図9Dは、基板側コネクターからケーブル側コネクターを抜去する作業時のロック機構の状態遷移を示す図である。
【
図10】
図10A、
図10Bは、本発明を適用した第2の実施の形態に係るコネクターセットの嵌合状態の外観を示す図である。
【
図12】
図12は、コネクターセットの非嵌合状態の外観を示す図である。
【
図14】
図14は、ケーブル側コネクターの分解斜視図である。
【
図16】
図16A~
図16Dは、基板側コネクターに対して、ケーブル側コネクターを挿入する作業時のロック機構の状態遷移を示す図である。
【
図17】
図17A~
図17Dは、基板側コネクターからケーブル側コネクターを抜去する作業時のロック機構の状態遷移を示す図である。
【
図20】
図20は、第3の実施の形態に係るコネクターセットの外観を示す平面図である。
【
図21】
図21は、第3の実施の形態に係るコネクターセットの外観を示す側面図である。
【
図23】
図23は、第3の実施の形態に係るロック機構の係合状態を示す図である。
【
図24】
図24は、第3の実施の形態に係る第1ロック機構の変形例を示す図である。
【
図25】
図25は、
図24の第1ロック機構を有するコネクターセットの使用態様の一例を示す図である。
【
図27】
図27は、第4の実施の形態に係るコネクターセットの外観を示す斜視図である。
【
図28】
図28は、第4の実施の形態に係るケーブル側コネクターの分解斜視図である。
【
図29】
図29は、第4の実施の形態におけるカム機構、回動軸及び係合部の位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
本発明は、ロック機構の発明であり、いわゆる電気を接続するコネクター以外にも適用される。例えば、壁に物を掛けるユニットに適用可能である。この場合、壁側に設置される一方のユニット(第2コネクター)に係合受け部が設けられ、着脱される他方のユニット(第1コネクター)に係合部が設けられる。以下の実施の形態では、いわゆる電気を接続するコネクターを例に挙げて説明する。
【0012】
[第1の実施の形態]
図1A、
図1Bは、本発明を適用した第1の実施の形態に係るコネクターセット1の嵌合状態の外観を示す図である。
図2A、
図2Bは、嵌合状態のコネクターセット1の平面図及び側面図である。
図2A、
図2Bでは、内部のロック機構30が図面に現れるように、カバーシェル12を透過して示している。
【0013】
図3は、コネクターセット1の非嵌合状態の外観を示す図である。
図4A、
図4Bは、非嵌合状態のコネクターセット1の平面図及び側面図である。
図4A、
図4Bでは、内部のロック機構30が図面に現れるように、カバーシェル12を透過して示している。
【0014】
本開示では、コネクターセット1の構造を、直交座標系(X,Y,Z)を使用して説明する。後述する図においても共通の直交座標系(X,Y,Z)で示している。X軸及びY軸に沿う方向が、回路基板Bの基板面に平行な方向であり、Z軸に沿う方向が、回路基板Bの基板面に垂直な方向である。以下において、X軸、Y軸及びZ軸に沿う方向を、それぞれ「X軸方向」、「Y軸方向」及び「Z軸方向」と称する。また、Z軸方向の正側を上側、Z軸方向の負側を下側として説明する。
【0015】
コネクターセット1は、水平嵌合タイプの電線対基板用のコネクターセットであり、Y軸方向がコネクターセット1のピッチ方向である。また、X軸方向がコネクターセット1の嵌合方向である。ピッチ方向は、嵌合方向に直交する。嵌合方向は、X軸方向正側に向かう挿入方向及びX軸方向負側に向かう抜去方向を含む。コネクターセット1は、例えば、サーバー、スイッチ(ネットワーク機器)及びストレージ等の情報機器内において、ケーブルCを用いて回路基板間を相互に接続する際に用いられる。
【0016】
図1A、1B等に示すように、コネクターセット1は、ケーブル側コネクター10、基板側コネクター20及びロック機構30を備える。ケーブル側コネクター10は、ケーブルCが接続されるコネクターであり、基板側コネクター20は、回路基板Bに実装されるコネクターである。
【0017】
ケーブルCは、例えば、内部導体(図示略)と、絶縁体を介して内部導体の外側に配置される外部シールド層(図示略)と、を有する同軸ケーブルである。ケーブルCの内部導体は、例えば、高速(高周波)信号の伝送に用いられる。
【0018】
ケーブルCは、例えば、2芯の内部導体が一括して絶縁体、外部シールド層及びシースで覆われたツイナックスケーブルであってもよい。また例えば、ケーブルCには、フレキシブルフラットケーブル(FFC)等のフラットケーブルを適用することもできる。
【0019】
コネクターセット1は、ケーブル側コネクター10と基板側コネクター20との水平嵌合により、ケーブルCと回路基板Bとを電気的に接続する。具体的には、ケーブルCの内部導体は、ケーブル側コネクター10のケーブル側信号コンタクト111と、基板側コネクター20の基板側信号コンタクト211とを介して、回路基板Bの信号パターンと電気的に接続される。また、ケーブルCの外部シールド層は、ケーブル側コネクター10のケーブル側グランドコンタクト112と、基板側コネクター20の基板側グランドコンタクト212とを介して、回路基板Bのグランドパターンに接続される。
【0020】
図5は、ケーブル側コネクター10の分解斜視図である。
【0021】
図5に示すように、ケーブル側コネクター10は、ケーブル側コネクター本体11及びカバーシェル12を有する。ケーブルCは、例えば、ケーブル側コネクター本体11に対して、2段に段積みされた状態で装着される。
【0022】
ケーブル側コネクター本体11は、ケーブル側信号コンタクト111、ケーブル側グランドコンタクト112、ケーブル側グランド金具113及びケーブル側インシュレーター114等を有する。
【0023】
カバーシェル12、ケーブル側信号コンタクト111、ケーブル側グランドコンタクト112及びケーブル側グランド金具113は、金属(例えば、銅合金)等の導電材料で形成される。ケーブル側インシュレーター114は、合成樹脂(例えば、液晶ポリマー)等の絶縁材料で形成される。
【0024】
カバーシェル12は、ケーブル側コネクター本体11の外側を覆うように配置され、ケーブル側グランド金具113と接触し、電気的に接続される。カバーシェル12は、グランド電位となり、シールドとして機能する。なお、カバーシェル12は、ケーブル側インシュレーター114と同様に、合成樹脂等の絶縁材料で形成され、ケーブル側コネクター10のハウジングを形成してもよい。
【0025】
ケーブル側信号コンタクト111は、ケーブルCの内部導体に接続される部材である。ケーブル側グランドコンタクト112は、基準電位であるグランドに接続されるグランド部材である。ケーブル側信号コンタクト111及びケーブル側グランドコンタクト112は、例えば、1枚の金属板の板金加工(抜き加工、曲げ加工を含む)により形成される。
【0026】
ケーブル側信号コンタクト111及びケーブル側グランドコンタクト112は、それぞれ、X軸方向(嵌合方向)に延在する直線形状を有し、主面(板面)がXY面に沿うように配置される。
【0027】
ケーブル側信号コンタクト111及びケーブル側グランドコンタクト112は、ピッチ方向であるY軸方向に並んで配置される。ケーブル側グランドコンタクト112は、隣り合うケーブル側信号コンタクト111の間に配置され、信号線間の遮へいとして機能する。
【0028】
ケーブル側信号コンタクト111は、同様の構成を有し、それぞれ、信号線接点部及び信号線結線部を有する(符号略)。信号線接点部及び信号線結線部は、信号線中継部によって接続される。信号線接点部は、ケーブル側コネクター10と基板側コネクター20を嵌合させたときに、基板側コネクター20の基板側信号コンタクト211と接触し、電気的に接続される部分である。信号線結線部は、先端部の段剥ぎ加工により露出したケーブルCの内部導体が、例えば、はんだ付け、溶接、又は圧着等の機械的な接合方法により接続される部分である。
【0029】
ケーブル側グランドコンタクト112は、同様の構成を有し、それぞれ、グランド接点部及びグランド結線部を有する(符号略)。グランド接点部及びグランド結線部は、グランド中継部によって接続される。グランド接点部は、ケーブル側コネクター10と基板側コネクター20を嵌合させたときに、基板側コネクター20の基板側グランドコンタクト212と接触し、電気的に接続される部分である。グランド結線部は、先端部の段剥ぎ加工により露出したケーブルCの外部シールド層が、例えば、はんだ付け、溶接、又は圧着等の機械的な接合方法により接続される部分である。
【0030】
ケーブル側グランド金具113は、ケーブル側グランドコンタクト112とともに、基準電位であるグランドに接続されるグランド部材である。ケーブル側グランド金具113は、例えば、1枚の金属板の板金加工(抜き加工、曲げ加工を含む)により形成される。
【0031】
ケーブル側インシュレーター114は、ケーブル側コネクター10のハウジングを形成する。ケーブル側インシュレーター114には、ケーブル側信号コンタクト111、ケーブル側グランドコンタクト112及びケーブル側グランド金具113が組み付けられる。
【0032】
ケーブル側信号コンタクト111、ケーブル側グランドコンタクト112及びケーブル側グランド金具113は、例えば、インサート成形により、ケーブル側インシュレーター114と一体的に形成される。ケーブル側信号コンタクト111と、ケーブル側グランドコンタクト112及びケーブル側グランド金具113とは、それぞれ、離間した状態で配置され、ケーブル側インシュレーター114によって互いに電気的に絶縁される。
【0033】
【0034】
図6に示すように、基板側コネクター20は、基板側コネクター本体21及び基板側シェル22を備える。基板側コネクター本体21は、基板側信号コンタクト211、基板側グランド金具213及び基板側インシュレーター214等を有する。
【0035】
基板側シェル22、基板側信号コンタクト211、及び基板側グランド金具213は、金属(例えば、銅合金)等の導電材料で形成される。基板側インシュレーター214は、合成樹脂(例えば、液晶ポリマー)等の絶縁材料で形成される。
【0036】
基板側シェル22は、回路基板Bのグランドパターンに接続される枠体であり、Z軸方向から見た平面視において基板側インシュレーター214の外縁に対応する矩形形状を有する。基板側シェル22は、例えば、1枚の金属板の板金加工(抜き加工、曲げ加工を含む)により形成される。基板側シェル22は、基板側コネクター本体21の外側を覆うように配置され、基板側コネクター本体21の基板側グランド金具213と接触し、電気的に接続される。基板側シェル22は、グランド電位となり、シールドとして機能する。基板側シェル22は、例えば、基板側インシュレーター214の周縁部に嵌着される。
【0037】
基板側信号コンタクト211は、ケーブル側コネクター10のケーブル側信号コンタクト111に接続される部材である。基板側グランド金具213は、ケーブル側コネクター10のケーブル側グランドコンタクト112と接続される複数の基板側グランドコンタクト212を有する。基板側信号コンタクト211及び基板側グランド金具213は、例えば、1枚の金属板の板金加工(抜き加工、曲げ加工を含む)により形成される。
【0038】
基板側信号コンタクト211及び基板側グランドコンタクト212のケーブル側信号コンタクト111及びケーブル側グランドコンタクト112との接点部分は、それぞれ、X軸方向(嵌合方向)に延在する直線形状を有し、主面(板面)がXY面に沿うように配置される。
【0039】
基板側信号コンタクト211及び基板側グランドコンタクト212は、ピッチ方向であるY軸方向に並んで配置される。基板側グランドコンタクト212は、隣り合う基板側信号コンタクト211の間に配置され、信号線間の遮へいとして機能する。
【0040】
基板側インシュレーター214は、Z軸方向から見た平面視で矩形形状を有し、基板側コネクター20のハウジングを形成する。基板側インシュレーター214には、基板側信号コンタクト211及び基板側グランド金具213が組み付けられる。
【0041】
基板側信号コンタクト211、及び基板側グランド金具213は、例えば、インサート成形により、基板側インシュレーター214と一体的に形成される。基板側信号コンタクト211と、基板側グランド金具213とは、それぞれ、離間した状態で配置され、基板側インシュレーター214によって互いに電気的に絶縁される。
【0042】
さらに、コネクターセット1には、ケーブル側コネクター10と基板側コネクター20との嵌合状態を保持するためのロック機構30が設けられている。ロック機構30は、ケーブル側コネクター10に設けられる第1ロック機構31と、基板側コネクター20に設けられる第2ロック機構32と、で構成される。
【0043】
ロック機構30は、基板側コネクター20に対してケーブル側コネクター10を挿入して嵌合させる作業に連動して、第1ロック機構31と第2ロック機構32とが機械的に係合するように構成されている。また、ロック機構30は、基板側コネクター20からケーブル側コネクター10を抜去して嵌合状態を解除する作業に連動して、第1ロック機構31と第2ロック機構32との係合が解除されるように構成されている。
【0044】
本実施の形態では、コネクターセット1のXZ面に沿う2つの側面に、ロック機構30A、30Bが設けられている。ロック機構30A、30Bは、同様の構成を有し、XZ面に関して面対称となるように配置されている。
【0045】
ケーブル側コネクター10に設けられる第1ロック機構31は、
図7A~
図7Cに示すように、ロック部材311及び抜去操作部材312を有する。
図7A~
図7Cは、それぞれ、第1ロック機構31の斜視図、平面図及び側面図である。
【0046】
抜去操作部材312は、基板側コネクター20からケーブル側コネクター10を抜去する際に作業者が操作する操作部材である。
【0047】
抜去操作部材312は、抜去方向への引張動作に対して変形不能な剛体であることが好ましい。抜去操作部材312は、例えば、1枚の金属板の板金加工(抜き加工、曲げ加工を含む)により形成される。これにより、抜去操作部材312を引っ張る力を効率よくロック部材311に伝達し、第1ロック機構31と第2ロック機構32との係合を容易に解除することができる。
【0048】
抜去操作部材312は、例えば、XY面に沿って拡がる平面部312aと、平面部312aから垂下して形成された側面部312bと、を有する。2つの側面部312bの内面には、プレート取付片312cが設けられる。また、抜去操作部材312には、作業時に指を引っ掛けるための操作穴312dが設けられている。
【0049】
ロック部材311は、例えば、1枚の金属板の板金加工(抜き加工)により形成される板状の部材である。ロック部材311は、ケーブル側コネクター本体11のXZ面に沿う2つの側面に、板厚方向がピッチ方向(Y軸方向)と一致するように配置される。ロック機構30A、30Bの2つのロック部材311は、それぞれ、抜去操作部材312と接続され、ケーブル側コネクター本体11と抜去操作部材312によって挟持される。つまり、2つのロック部材311は、抜去操作部材312によって連結されており、抜去操作部材312を抜去方向(X軸方向の負側)に引っ張る動作に連動して、一緒に動くようになっている。
【0050】
ロック部材311は、係合部311a、ロックプレート部311b、付勢部311c及び固定部311dを有する。
【0051】
係合部311aは、基板側コネクター20に設けられる第2ロック機構32と係合する部分である。係合部311aは、例えば、ロックプレート部311bのX軸方向における正側の先端に配置される。係合部311aは、鉤形状を有し、第2ロック機構32に係合されることで、ロック部材311のX軸方向における負側への移動を規制する。
【0052】
固定部311dは、ケーブル側コネクター本体11に取り付けられる部分である。固定部311dには、開口311e、ボス311f及び抜去部材取付穴311gが形成されている。
【0053】
ロックプレート部311bは、固定部311dからX軸方向の正側に延在し、先端に、係合部311aが配置されている。
【0054】
付勢部311cは、ロック部材311を基準状態に保持する機能を有する。付勢部311cは、ロック部材311が基準状態から回動して変位したときに、基準状態に戻すための復元力を生じる部分である。付勢部311cは、ケーブル側コネクター10のカバーシェル12と当接する先端側の自由端部、ロックプレート部311bに接続される固定端部、及び、自由端部と固定端部を連結するアーム部を有する(いずれも符号略)。付勢部311cの固定端部は、例えば、固定部311dとロックプレート部311bの接続部分に連設され、付勢部311cのアーム部は、弾性変形により所定の復元力が生じるように、屈曲して形成されている。「基準状態」とは、ロック部材311に外力(例えば、抜去操作部材312を抜去方向に引っ張るときの引張力)が作用していない状態である。
【0055】
開口311eは、ケーブル側コネクター本体11の突出部11aに嵌め込まれる部分である。開口311eは、突出部11aよりも一回り大きく形成される。開口311eは、突出部11aに遊嵌され、ロック部材311の回動を許容しつつ、回動範囲を規制する。突出部11aは、例えば、ケーブル側インシュレーター114に形成される。
【0056】
ボス311fは、ケーブル側コネクター本体11のボス受け凹部11bに嵌め込まれる部分である。ボス311fは、ケーブル側コネクター本体11側に向けて、Y軸方向に沿って形成される。ボス311fは、ボス受け凹部11bに回動可能に嵌め込まれ、ロック部材311が回動するときの回動軸として機能する。ボス受け凹部11bは、例えば、ケーブル側インシュレーター114に形成される。つまり、ボス受け凹部11bを有するケーブル側コネクター本体11(例えば、ケーブル側インシュレーター114)は、第1ロック機構31の一部を構成している。
【0057】
抜去部材取付穴311gは、抜去操作部材312のプレート取付片312cが取り付けられる部分である。抜去操作部材312をX軸方向の負側に引っ張るとき、抜去部材取付穴311gの部分に引張力が作用することとなる。ロック部材311が基準状態となっているとき、抜去部材取付穴311gは、ボス311fのZ軸方向の正側に位置する。つまり、ロック部材311の基準状態において、抜去部材取付穴311gのZ軸方向の位置は、ボス311fのZ軸方向の位置と異なっている。
【0058】
ケーブル側コネクター10において、ケーブル側コネクター本体11のXZ面に沿う2つの側面に、それぞれ、ロック部材311が配置される。具体的には、ケーブル側コネクター本体11の突出部11a及びボス受け凹部11bに、ロック部材311の開口311e及びボス311fが嵌め込まれる。この状態で、ロック部材311の抜去部材取付穴311gに抜去操作部材312のプレート取付片312cが接続される。また、ケーブル側コネクター本体11にカバーシェル12が取り付けられる。このようにして、ロック部材311は、所定の姿勢で、ケーブル側コネクター10に対して脱落不能に保持される。
【0059】
このとき、付勢部311cの自由端部とカバーシェル12とが当接することにより、係合部311aがZ軸方向の正側に変位するようなロック部材311の回動は規制される。また、開口311eのZ軸方向の正側の端縁と突出部11aとが当接することにより、係合部311aがZ軸方向の負側に変位するようなロック部材311の回動は規制される。この状態がロック部材311の「基準状態」である(
図8A参照)。
【0060】
以下において、係合部311aがZ軸方向の正側に変位する向き(
図8A等では時計回り)にロック部材311を回動させるモーメントを「第1モーメント」、係合部311aがZ軸方向の負側に変位する向き(
図8A等では反時計回り)にロック部材311を回動させるモーメントを「第2モーメント」と称する。他の実施の形態でも同様である。
【0061】
また、基準状態において、付勢部311cは、反時計回りの方向に付勢する(いわゆるプリロード)、すなわち、ロック部材311に第2モーメントを生じさせることが好ましい。付勢部311cの付勢力によって、ロック部材311の姿勢が安定するので、嵌合状態(
図9A参照)では確実にロックされた状態を保持することができ、非嵌合状態(
図8A参照)においてはロック部材311のがたつきを防止することができる。
【0062】
基板側コネクター20に設けられる第2ロック機構32は、ロック部材311の係合部311aと係合し、ロック部材311のX軸方向への移動を規制する係合受け部である(以下、「係合受け部32」と称する)。
【0063】
係合受け部32は、例えば、基板側コネクター20の基板側シェル22のXZ面に沿う側面に設けられる。係合受け部32のZ軸方向の位置は、基準状態におけるロック部材311の係合部311aの位置と同程度である。
【0064】
係合受け部32は、ロック部材311のX軸方向の正側への移動に伴い、ロック部材311の係合部311aと当接する当接面32aを有する(
図8A参照)。当接面32aは、ロック部材311の挿入方向(X軸方向の正側)への移動に伴い、ロック部材311の係合部311aがZ軸方向の正側に変位してせり上がるように傾斜して形成されている。
【0065】
図8A~
図8Dは、基板側コネクター20に対してケーブル側コネクター10を挿入する作業時のロック機構30の状態遷移を示す図である。
【0066】
基板側コネクター20に対してケーブル側コネクター10を嵌合させる場合、作業者は、まず、ケーブル側コネクター10及び基板側コネクター20の嵌合部分が適合するように、Z軸方向の位置を調整する(
図8A参照)。このとき、ロック部材311は、基準状態であり、回動困難な状態となっている。すなわち、ロック部材311に外力が加わっていない基準状態では、ロック部材311は、時計回りも反時計回りにも回動しづらい安定した状態となっている。
【0067】
次に、基板側コネクター20に対してケーブル側コネクター10をX軸方向の正側に移動させる。ロック部材311は、係合部311aが係合受け部32に到達するまで、基準状態のままで維持される(
図8B参照)。
【0068】
さらに、ケーブル側コネクター10に対してX軸方向の正側に力を加えると、係合部311aが係合受け部32の当接面32aをZ軸方向の正側にせり上がり、ロック部材311に第1モーメントが生じる。ロック部材311は、ボス311fを中心にY軸方向の正側から見て時計回りに回動する(
図8C参照)。このとき、付勢部311cは、カバーシェル12に当接する部分が移動(回動)不能となっているので、弾性変形により復元力が生じる。ロック部材311には、付勢部311cの復元力により第2モーメントが生じる。
【0069】
さらに、ケーブル側コネクター10に対してX軸方向の正側に力を加えると、係合部311aが係合受け部32の当接面32aを乗り越える。付勢部311cに生じた復元力により、ロック部材311は、ボス311fを中心にY軸方向の正側から見て反時計回りに回動し、基準状態に戻る(
図8D参照)。
【0070】
基板側コネクター20に設けられた係合受け部32と、ケーブル側コネクター10に設けられたロック部材311の係合部311aが機械的に係合し、コネクターセット1は、所定値以下の外力に対しては抜脱不能な状態で保持される。
【0071】
図9A~
図9Dは、基板側コネクター20からケーブル側コネクター10を抜去する作業時のロック機構30の状態遷移を示す図である。
【0072】
基板側コネクター20とケーブル側コネクター10とが嵌合した状態では、基板側コネクター20に設けられた係合受け部32と、ケーブル側コネクター10に設けられたロック部材311の係合部311aが機械的に係合し、コネクターセット1は、所定値以下の外力に対しては抜脱不能な状態で保持される(
図9A参照)。
【0073】
基板側コネクター20からケーブル側コネクター10を抜去する場合、作業者は、抜去操作部材312をX軸方向の負側に引っ張る。ロック部材311において、ボス311f及び抜去部材取付穴311gのZ軸方向における位置は異なり、ボス311fと抜去部材取付穴311gを結ぶ方向と、引張力の方向とは交差する。したがって、ロック部材311には、ボス311fを支点(回動軸)、抜去部材取付穴311gを力点として、第1モーメントが生じる。ロック部材311に第1モーメントが生じることにより、係合部311aは、Z軸方向の正側に変位しようとする。
【0074】
この第1モーメントが、係合部311aと係合受け部32との係合による力を超えると、ロック部材311は、ボス311fを中心にY軸方向の正側から見て時計回りに回動し、係合部311aが係合受け部32を乗り上げる(
図9B参照)。より具体的には、ロック部材311は、嵌合状態(ロック状態)において、付勢部311cのプリロードによって第2モーメントが生じている。抜去操作部材312を引っ張ったときにロック部材311に生じる第1モーメントが、プリロードによる第2モーメントを上回ると、ロック部材311は時計回りに回動する。このとき、付勢部311cは、カバーシェル12に当接する部分が移動(回動)不能となっているので、弾性変形により復元力が生じる。付勢部311cの復元力により、ロック部材311には、第2モーメントが生じる。
【0075】
さらに、抜去操作部材312をX軸方向の負側に引っ張ると、付勢部311cに生じた復元力により、係合部311aが係合受け部32の当接面32aを滑り落ちる(
図9C参照)。ロック部材311は、ボス311fを中心にY軸方向の正側から見て反時計回りに回動し、基準状態に戻る(
図9D参照)。
【0076】
第1の実施の形態に係るロック機構30は、以下の特徴事項を単独で、又は、適宜組み合わせて備えている。
【0077】
すなわち、ロック機構30は、ケーブル側コネクター10(第1コネクター)と、ケーブル側コネクター10と嵌合可能な相手側の基板側コネクター20(第2コネクター)との嵌合状態を保持するように構成されたロック機構であって、係合部311aを有し、ケーブル側コネクター10に設けられるロック部材311と、ロック部材311に接続されロック部材311を基準状態に保持する付勢部311cと、ケーブル側コネクター10のピッチ方向(嵌合方向に直交する方向)と平行に配置され、ロック部材311を回動可能に支持するボス311f(回動軸)と、基板側コネクター20に設けられ、係合部311aと係合可能な係合受け部32と、を備える。ロック部材311は、ボス311fを中心に回動可能となるように、ケーブル側コネクター10に取り付けられている。
【0078】
ロック機構30によれば、ロック部材311がコネクターセット1の実装面と直交するXZ面に沿って回動するので、ロック部材311の可動領域を考慮してコネクターの実装スペースを設計する必要はなく、ピッチ方向におけるコネクターの実装スペースの小型化を図ることができる。さらには、ケーブル側コネクター10の高さを高くすることなくロック部材311が回動する空間を確保できるため、コネクターの低背化が損なわれることはない。また、コネクターセット1の嵌合状態を解除する際に、ロック機構30は破壊されないので、再利用も可能となる。
【0079】
また、ロック機構30は、ロック部材311に接続され、ピッチ方向(回動軸の延在方向)と直交する抜去方向に引っ張ることが可能な抜去操作部材312をさらに備え、抜去操作部材312の抜去方向への直線運動は、ボス311f(回動軸)を中心とする回転運動に変換されてロック部材311に伝達される。すなわち、抜去操作部材312の抜去方向への直線運動により、ボス311f(回動軸)を中心にロック部材311を回転させる第1モーメントが生じる。これにより、抜去操作部材312を引っ張って、ケーブル側コネクター10を抜去方向に移動させて基板側コネクター20から抜去する作業に連動して、ロック部材311が回動し、係合受け部32との係合状態が解除される。したがって、コネクターの抜去時の作業性が向上する。
【0080】
また、ロック機構30において、ロック部材311は、ピッチ方向(回動軸の延在方向)に対向するケーブル側コネクター10(第1コネクター)の2つの側面に配置され、抜去操作部材312は、2つのロック部材311を連結する。これにより、2つのロック部材311により、ケーブル側コネクター10と基板側コネクター20の嵌合状態が強固に保持されるとともに、抜去操作部材312を引っ張る操作により2ヶ所の係合を容易に解除することができる。
【0081】
また、ロック機構30において、抜去操作部材312は、引張動作に対して変形不能な剛体である。これにより、抜去操作部材312を引っ張る力が効率よくロック部材311に伝達されるので、係合部311aと係合受け部32との係合を容易に解除することができる。
【0082】
また、ロック機構30において、ロック部材311は、抜去操作部材312が接続される抜去部材取付穴311g(抜去部材取付部)を有し、抜去部材取付穴311gとボス311f(回動軸)を結ぶ方向は、抜去方向と交差する。これにより、抜去操作部材312を抜去方向に引っ張ったときに、ロック部材311に、ボス311fを中心とする第1モーメントを生じさせ、ロック部材311を回動させることができる。
【0083】
また、ロック機構30において、付勢部311cは、ロック部材311の一部によって構成され、ロック部材311の回動に伴い変形して、復元力を生じる。すなわち、付勢部311cは、ロック部材311の回動に伴い変形して、ロック部材311の回動方向とは逆向きの第2モーメントをロック部材311に生じさせる。これにより、ロック部材311を基準状態に保持する構成を簡易化することができる。
【0084】
また、ロック機構30において、付勢部311cは、カバーシェル12(第1コネクターの構成部材)と当接し、ロック部材311が回動するときの移動が規制されている。具体的には、付勢部311cは、カバーシェル12(第1コネクターの構成部材)と当接する自由端部と、ロック部材311のロックプレート部311bに接続される固定端部と、自由端部及び固定端部を連結するアーム部と、を有する。これにより、付勢部311cは弾性変形することとなり、容易に復元力を生じさせることができる。
【0085】
また、ロック機構30において、係合受け部32は、ケーブル側コネクター10(第1コネクター)を抜去方向とは逆向きの挿入方向に移動させたときに、係合部311aと当接する当接面32aを有し、当接面32aは、傾斜して形成され、ケーブル側コネクター10の挿入方向への移動に伴いロック部材311が回動するように係合部311aをせり上げ可能である。これにより、コネクターセット1における挿入時及び抜去時の作業を滑らかに行うことができる。
【0086】
また、ロック機構30において、ロック部材311は、板状のロックプレート部311b(プレート部)を有し、ロックプレート部311bの板厚方向がピッチ方向と一致するように配置されている。これにより、ロック機構30を設けるためにケーブル側コネクター10の内部空間を大幅に拡大する必要はなく、コネクターの小型化を図ることができる。
【0087】
[第2の実施の形態]
図10A、
図10Bは、本発明を適用した第2の実施の形態に係るコネクターセット2の嵌合状態の外観を示す図である。
図11A、
図11Bは、嵌合状態のコネクターセット2の平面図及び側面図である。
図11A、
図11Bでは、内部のロック機構60が図面に現れるように、カバーシェル42を省略して示している。
【0088】
図12は、コネクターセット2の非嵌合状態の外観を示す図である。
図13A、
図13Bは、非嵌合状態のコネクターセット2の平面図及び側面図である。
図13A、
図13Bでは、内部のロック機構60が図面に現れるように、カバーシェル42を省略して示している。
【0089】
第2の実施の形態に係るコネクターセット2は、主に、ロック機構60の構造が特徴的であり、ケーブル側コネクター40及び基板側コネクター50の主要構成は、第1の実施の形態のケーブル側コネクター10及び基板側コネクター20とほぼ同様であるので、説明を省略又は簡略化する。
【0090】
コネクターセット2は、水平嵌合タイプの電線対基板用のコネクターセットであり、Y軸方向がコネクターセット2のピッチ方向である。また、X軸方向がコネクターセット2の嵌合方向である。ピッチ方向は、嵌合方向に直交する。嵌合方向は、X軸方向正側に向かう挿入方向及びX軸方向負側に向かう抜去方向を含む。コネクターセット2は、例えば、サーバー、スイッチ(ネットワーク機器)及びストレージ等の情報機器内において、ケーブルCを用いて回路基板間を相互に接続する際に用いられる。
【0091】
図10A、10B等に示すように、コネクターセット2は、ケーブル側コネクター40、基板側コネクター50及びロック機構60を備える。ケーブル側コネクター40は、ケーブルCが接続されるコネクターであり、基板側コネクター50は、回路基板(図示略)に実装されるコネクターである。
【0092】
ケーブルCは、例えば、内部導体(図示略)と、絶縁体を介して内部導体の外側に配置される外部シールド層(図示略)と、を有する同軸ケーブルである。ケーブルCの内部導体は、例えば、高速(高周波)信号の伝送に用いられる。
【0093】
ケーブルCは、例えば、2芯の内部導体が一括して絶縁体、外部シールド層及びシースで覆われたツイナックスケーブルであってもよい。また例えば、ケーブルCには、フレキシブルフラットケーブル(FFC)等のフラットケーブルを適用することもできる。
【0094】
コネクターセット2は、ケーブル側コネクター40と基板側コネクター50との水平嵌合により、ケーブルCと回路基板(図示略)とを電気的に接続する。
【0095】
図14は、ケーブル側コネクター40の分解斜視図である。
【0096】
図14に示すように、ケーブル側コネクター40は、ケーブル側コネクター本体41及びカバーシェル42を有する。ケーブルCは、例えば、ケーブル側コネクター本体41に対して、2段に段積みされた状態で装着される。
【0097】
コネクターセット2には、ケーブル側コネクター40と基板側コネクター50との嵌合状態を保持するためのロック機構60が設けられている。ロック機構60は、ケーブル側コネクター40に設けられる第1ロック機構61と、基板側コネクター50に設けられる第2ロック機構62と、で構成される。
【0098】
ロック機構60は、基板側コネクター50に対してケーブル側コネクター40を挿入して嵌合させる作業に連動して、第1ロック機構61と第2ロック機構62とが機械的に係合するように構成されている。また、ロック機構60は、基板側コネクター50からケーブル側コネクター40を抜去して嵌合状態を解除する作業に連動して、第1ロック機構61と第2ロック機構62との係合が解除されるように構成されている。
【0099】
本実施の形態では、コネクターセット2のXZ面に沿う2つの側面に、ロック機構60A、60Bが設けられている。ロック機構60A、60Bは、同様の構成を有し、XZ面に関して面対称となるように配置されている。
【0100】
ケーブル側コネクター40に設けられる第1ロック機構61は、
図14及び
図15A~
図15Cに示すように、ロック部材611及び抜去操作部材612を有する。
図15A~
図15Cは、それぞれ、第1ロック機構61の斜視図、平面図及び側面図である。
【0101】
抜去操作部材612は、基板側コネクター50からケーブル側コネクター40を抜去する際に作業者が操作する操作部分である。抜去操作部材612は、例えば、ロック部材611に接続される連結部材613及び連結部材613に接続されるプルタブ614を有する。
【0102】
連結部材613は、抜去方向への引張動作に対して変形不能な剛体であることが好ましい。連結部材613は、例えば、1枚の金属板の板金加工(抜き加工、曲げ加工を含む)により形成される。これにより、連結部材613を引っ張る力を効率よくロック部材611に伝達し、第1ロック機構61と第2ロック機構62との係合を容易に解除することができる。
【0103】
プルタブ614は、抜去時に作業者が把持する部分であり、例えば、可撓性を有する樹脂シートで構成される。これにより、コネクターセット2を回路基板に実装したときに、他の実装部品と干渉しないようにプルタブ614を容易に退避させることができるので、実装スペースの小型化を図ることができる。
【0104】
連結部材613は、例えば、XY面に沿って拡がる平面部613aと、平面部613aから垂下してX軸方向に延在するように形成された側面部613bと、を有する。2つの側面部613bには、プレート取付スリット613c及びガイド片係合穴613dが設けられる。
【0105】
プレート取付スリット613cは、ロック部材611の抜去部材取付片611eに嵌め込まれる部分である。プレート取付スリット613cは、側面部613bの上端縁に、X軸方向の正側に向かって下方に傾斜するように形成されている。プレート取付スリット613cは、少なくともX軸方向正側(抜去方向と逆側)の傾斜面において、抜去部材取付片611eと当接する。これにより、抜去操作部材612のX軸方向負側への移動に伴い第1モーメントが生じ、ロック部材611はZ軸方向正側へ回動する。
【0106】
ガイド片係合穴613dは、ケーブル側コネクター本体41のガイド片41aに嵌め込まれる部分である。ガイド片係合穴613dは、ガイド片41aよりもX軸方向に長く形成される。ガイド片係合穴613dは、ガイド片41aに嵌着され、抜去操作部材612の移動方向を規制する。ガイド片41aは、例えば、ケーブル側インシュレーター414に、X軸方向に沿って延在するように形成される。つまり、ガイド片41aを有するケーブル側コネクター本体41(例えば、ケーブル側インシュレーター414)は、抜去操作部材612の抜去操作をガイドするガイド部材として機能し、第1ロック機構61の一部を構成している。なお、ケーブル側コネクター本体41とは別に、ガイド部材を設けるようにしてもよい。
【0107】
ロック部材611は、例えば、1枚の金属板の板金加工(抜き加工及び曲げ加工を含む)により形成される部材である。ロック部材611は、ケーブル側コネクター本体41のXZ面に沿う2つの側面に形成されたロック部材収容部41cに配置される。
【0108】
ロック機構60A、60Bの2つのロック部材611は、それぞれ、連結部材613と接続され、ケーブル側コネクター本体41と連結部材613によって挟持される。つまり、2つのロック部材611は、抜去操作部材612によって連結されており、抜去操作部材612を抜去方向(X軸方向の負側)に引っ張る動作に連動して、一緒に動くようになっている。
【0109】
ロック部材611は、係合部611a、ロックプレート部611b、付勢部611c及び内側プレート部611dを有する。
【0110】
係合部611aは、基板側コネクター50に設けられる第2ロック機構62(
図13A、
図13B参照)と係合する部分である。係合部611aは、例えば、ロックプレート部611bのX軸方向における正側の先端に配置される。係合部611aは、鉤形状を有し、第2ロック機構62に係合されることで、ロック部材611のX軸方向における負側への移動を規制する。
【0111】
ロックプレート部611bは、ケーブル側コネクター本体41に取り付けられる部分である。ロックプレート部611bは、X軸方向に沿って延在し、先端に、係合部611aが配置されている。ロックプレート部611bには、抜去部材取付片611e及びボス611fが形成されている。
【0112】
付勢部611cは、ロック部材611を基準状態に保持する機能を有する。付勢部611cは、ロック部材611が基準状態から回動して変位したときに、基準状態に戻すための復元力を生じる部分である。付勢部611cは、ケーブル側コネクター40のバネ受け部41dと当接する先端側の自由端部、ロックプレート部611b及び内側プレート部611dに接続される固定端部、及び、自由端部と固定端部を連結するアーム部を有する(いずれも符号略)。付勢部611cは、例えば、曲げ加工により、ロックプレート部611bと内側プレート部611dとの間に形成される。付勢部611cは、弾性変形により所定の復元力が生じるように、屈曲して形成された板バネである。「基準状態」とは、ロック部材611に外力(例えば、抜去操作部材612を抜去方向に引っ張るときの引張力)が作用していない状態である。
【0113】
ボス611fは、ケーブル側コネクター本体41のボス受け凹部41bに嵌め込まれる部分である。ボス611fは、ケーブル側コネクター本体41側に向けて、Y軸方向に沿って形成される。ボス611fは、ボス受け凹部41bに回動可能に嵌め込まれ、ロック部材611が回動するときの回動軸として機能する。ボス受け凹部41bは、例えば、ケーブル側インシュレーター414に形成される。つまり、ボス受け凹部41bを有するケーブル側コネクター本体41(例えば、ケーブル側インシュレーター414)は、第1ロック機構61の一部を構成している。
【0114】
抜去部材取付片611eは、連結部材613のプレート取付スリット613cと係合する部分である。抜去操作部材612をX軸方向の負側に引っ張るとき、抜去部材取付片611eの部分に引張力が作用することとなる。抜去部材取付片611eは、ロック部材611に第1モーメントが生じるように、プレート取付スリット613cと係合する。ここでは、ロック部材611が基準状態となっているとき、抜去部材取付片611eは、ボス611fのZ軸方向の正側に位置する。つまり、ロック部材611の基準状態において、抜去部材取付片611eのZ軸方向の位置は、ボス611fのZ軸方向の位置と異なっている。
【0115】
ケーブル側コネクター40において、ケーブル側コネクター本体41のXZ面に沿う2つの側面に、それぞれ、ロック部材611が配置される。具体的には、ケーブル側コネクター本体41のボス受け凹部41bに、ロック部材611のボス611fが嵌め込まれる。この状態で、ロック部材611の抜去部材取付片611eに連結部材613のプレート取付スリット613cが接続される。抜去部材取付片611e及びプレート取付スリット613cにより、抜去方向の直線運動を、ボス611f(回動軸)を中心とする回転運動に変換してロック部材611に伝達するカムが構成される。また、ケーブル側コネクター本体41にカバーシェル42が取り付けられる。このようにして、ロック部材611は、所定の姿勢で、ケーブル側コネクター40に対して脱落不能に保持される。
【0116】
このとき、ロック部材611の抜去部材取付片611eと連結部材613のプレート取付スリット613cとが係合することにより、係合部611aがZ軸方向の正側に変位するようなロック部材611の回動は規制される。また、付勢部611cの自由端部とケーブル側コネクター本体41のバネ受け部41dとが当接することにより、係合部611aがZ軸方向の負側に変位するようなロック部材611の回動は規制される。この状態がロック部材611の「基準状態」である。
【0117】
また、基準状態において、付勢部611cは、反時計回りの方向に付勢する(いわゆるプリロード)、すなわち、ロック部材611に第2モーメントを生じさせることが好ましい。付勢部611cの付勢力によって、ロック部材611の姿勢が安定するので、嵌合状態(
図17A参照)では確実にロックされた状態を保持することができ、非嵌合状態(
図16A参照)においてはロック部材611のがたつきを防止することができる。
【0118】
基板側コネクター50に設けられる第2ロック機構62は、ロック部材611の係合部611aと係合し、ロック部材611のX軸方向への移動を規制する係合受け部である(以下、「係合受け部62」と称する)。係合受け部62の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0119】
すなわち、係合受け部62は、例えば、基板側コネクター50の基板側シェル52のXZ面に沿う側面に設けられる(
図12参照)。係合受け部62のZ軸方向の位置は、基準状態におけるロック部材611の係合部611aの位置と同程度である。
【0120】
係合受け部62は、ロック部材611のX軸方向の正側への移動に伴い、ロック部材611の係合部611aと当接する当接面62aを有する。当接面62aは、ロック部材611の挿入方向(X軸方向の正側)への移動に伴い、ロック部材611の係合部611aがZ軸方向の正側に変位してせり上がるように傾斜して形成されている。
【0121】
第2の実施の形態においても、基板側コネクター50に対してケーブル側コネクター40を挿入する動作に連動してロック部材611が回動し、係合部611aと係合受け部62とが機械的に係合される。また、基板側コネクター50からケーブル側コネクター40を抜去する動作に連動してロック部材611が回動し、係合部611aと係合受け部62との係合が解除される。
【0122】
図16A~
図16Dは、基板側コネクター50に対してケーブル側コネクター40を挿入する作業時のロック機構60の状態遷移を示す図である。
【0123】
基板側コネクター50に対してケーブル側コネクター40を嵌合させる場合、作業者は、まず、ケーブル側コネクター40及び基板側コネクター50の嵌合部分が適合するように、Z軸方向の位置を調整する(
図16A参照)。このとき、ロック部材611は、基準状態であり、回動困難な状態となっている。すなわち、ロック部材611に外力が加わっていない基準状態では、ロック部材611は、時計回りも反時計回りにも回動しづらい安定した状態となっている。
【0124】
次に、基板側コネクター50に対してケーブル側コネクター40をX軸方向の正側に移動させる。ロック部材611は、係合部611aが係合受け部62に到達するまで、基準状態のままで維持される(
図16B参照)。なお、ロック機構60においては、抜去操作部材612(具体的には、連結部材613)を把持してケーブル側コネクター40を移動させると、ロック部材611が回動するときに抜去操作部材612と干渉するため、ケーブル側コネクター40の挿入作業は、カバーシェル42を把持して行われる。
【0125】
さらに、ケーブル側コネクター40に対してX軸方向の正側に力を加えると、係合部611aが係合受け部62の当接面62aをZ軸方向の正側にせり上がり、ロック部材611に第1モーメントが生じる。ロック部材611は、ボス611fを中心にY軸方向の正側から見て時計回りに回動する(
図16C参照)。このとき、付勢部611cは、バネ受け部41dに当接する部分が移動(回動)不能となっているので、弾性変形により復元力が生じる。ロック部材611には、付勢部611cの復元力により第2モーメントが生じる。
【0126】
また、ロック部材611が回動するとき、ロック部材611の抜去部材取付片611eは、Z軸方向の負側に移動する。抜去部材取付片611eは、連結部材613のプレート取付スリット613cに沿って移動するので、連結部材613を含む抜去操作部材612は、挿入方向とは逆向きに押される。カバーシェル42を把持してケーブル側コネクター40を挿入する場合、抜去操作部材612は、ケーブル側コネクター40に対して移動可能であるので、X軸方向の負側に移動する。
【0127】
さらに、ケーブル側コネクター40に対してX軸方向の正側に力を加えると、係合部611aが係合受け部62の当接面62aを乗り越える。付勢部611cに生じた復元力により、ロック部材611は、ボス611fを中心にY軸方向の正側から見て反時計回りに回動し、基準状態に戻る(
図16D参照)。
【0128】
基板側コネクター50に設けられた係合受け部62と、ケーブル側コネクター40に設けられたロック部材611の係合部611aが機械的に係合し、コネクターセット2は、所定値以下の外力に対しては抜脱不能な状態で保持される。
【0129】
図17A~
図17Dは、基板側コネクター50からケーブル側コネクター40を抜去する作業時のロック機構60の状態遷移を示す図である。
【0130】
基板側コネクター50とケーブル側コネクター40とが嵌合した状態では、基板側コネクター50に設けられた係合受け部62と、ケーブル側コネクター40に設けられたロック部材611の係合部611aが機械的に係合し、コネクターセット2は、所定値以下の外力に対しては抜脱不能な状態で保持される(
図17A参照)。
【0131】
基板側コネクター50からケーブル側コネクター40を抜去する場合、作業者は、プルタブ614(抜去操作部材612)をX軸方向の負側に引っ張る。プルタブ614に対する引張力は、連結部材613を介してロック部材611に伝達される。具体的には、プルタブ614が抜去方向に引っ張られると、連結部材613がガイド片41aに沿って移動し、プレート取付スリット613cの傾斜面(抜去部材取付片611eと当接するX軸方向正側の面)から抜去部材取付片611eに引張力が伝達される。このとき、引張力による抜去操作部材612の直線運動は、ロック部材611の回転運動に変換される。
【0132】
ロック部材611において、ボス611f及び抜去部材取付片611eのZ軸方向における位置は異なり、ボス611fと抜去部材取付片611eを結ぶ方向と、引張力の方向とは交差する。したがって、ロック部材611には、ボス611fを支点(回動軸)、抜去部材取付片611eを力点として、第1モーメントが生じる。ロック部材611に第1モーメントが生じることにより、係合部611aは、Z軸方向の正側に変位しようとする。
【0133】
このとき、抜去操作部材612の引張動作に伴い、付勢部611cによる反力(第2モーメント)が増大していく。引張力が付勢部611cの反力を超えたとき、すなわち、第1モーメントが第2モーメントを超えたときに、ロック部材611は回転運動を開始することとなる。
【0134】
また、ボス611fは、係合点P(係合受け部62と係合部611aの接触点)よりもZ軸方向正側に位置しており、ボス611fと係合点Pを結ぶ直線Lは、抜去方向と交差する。直線Lは、抜去方向を反時計回りに0-45°回転させた方向と一致する。この場合、係合点Pの回転軌跡と係合受け部62が干渉しないので、係合部611aは回動可能となる。
【0135】
したがって、ロック部材611は、ボス611fを中心にY軸方向の正側から見て時計回りにスムーズに回動し、係合部611aが係合受け部62を乗り上げる(
図17B参照)。このとき、付勢部611cは、ケーブル側コネクター本体41のバネ受け部41dに当接する部分が移動(回動)不能となっているので、弾性変形により復元力が生じる。付勢部611cの復元力により、ロック部材611には、第2モーメントが生じる。プレート取付スリット613cは、X軸方向の正側(抜去方向と逆側)に向かって下方に傾斜しているので、ロック部材611は滑らかに回動することができる。
【0136】
さらに、プルタブ614(抜去操作部材612)をX軸方向の負側に引っ張ると、係合部611aと係合受け部62とが完全に離間する(
図17C参照)。
【0137】
この状態で、把持していたプルタブ614を離すと、付勢部611cに生じた復元力により、ロック部材611は、ボス611fを中心にY軸方向の正側から見て反時計回りに回動し、基準状態に戻る(
図17D参照)。このとき、ロック部材611の抜去部材取付片611eは、Z軸方向の正側に移動する。抜去部材取付片611eは、連結部材613のプレート取付スリット613cに沿って移動するので、連結部材613を含む抜去操作部材612は、抜去方向とは逆向きに押される。抜去操作部材612は、ケーブル側コネクター40に対して移動可能であるので、X軸方向の正側に移動する。
【0138】
第2の実施の形態に係るロック機構60は、以下の特徴事項を単独で、又は、適宜組み合わせて備えている。
【0139】
すなわち、ロック機構60は、ケーブル側コネクター40(第1コネクター)と、ケーブル側コネクター40と嵌合可能な相手側の基板側コネクター50(第2コネクター)との嵌合状態を保持するように構成されたロック機構であって、係合部611aを有し、ケーブル側コネクター40に設けられるロック部材611と、ロック部材611に接続されロック部材611を基準状態に保持する付勢部611cと、ケーブル側コネクター40のピッチ方向(嵌合方向と直交する方向)と平行に配置され、ロック部材611を回動可能に支持するボス611f(回動軸)と、基板側コネクター50に設けられ、係合部611aと係合可能な係合受け部62と、を備える。ロック部材611は、ボス611fを中心に回動可能となるように、ケーブル側コネクター40に取り付けられている。
【0140】
ロック機構60によれば、ロック部材611がコネクターセット2の実装面と直交するXZ面に沿って回動するので、ロック部材611の可動領域を考慮してコネクターの実装スペースを設計する必要はなく、ピッチ方向におけるコネクターの実装スペースの小型化を図ることができる。さらには、ケーブル側コネクター40の高さを高くすることなくロック部材611が回動する空間を確保できるため、コネクターの低背化が損なわれることはない。また、コネクターセット2の嵌合状態を解除する際に、ロック機構60は破壊されないので、再利用も可能となる。
【0141】
また、ロック機構60は、ロック部材611に接続され、ピッチ方向(回動軸の延在方向)と直交する抜去方向に引っ張ることが可能な抜去操作部材612をさらに備え、抜去操作部材612の抜去方向への直線運動は、ボス611f(回動軸)を中心とする回転運動に変換されてロック部材611に伝達される。すなわち、抜去操作部材612の抜去方向への直線運動により、ボス611f(回動軸)を中心にロック部材611を回転させる第1モーメントが生じる。これにより、抜去操作部材612を引っ張って、ケーブル側コネクター40を抜去方向に移動させて基板側コネクター50から抜去する作業に連動して、ロック部材611が回動し、係合受け部62との係合状態が解除される。したがって、コネクターの抜去時の作業性が向上する。
【0142】
また、ロック機構60において、ロック部材611は、ピッチ方向(回動軸の延在方向)に対向するケーブル側コネクター40(第1コネクター)の2つの側面に配置され、連結部材613(抜去操作部材)は、2つのロック部材611を連結する。これにより、2つのロック部材611により、ケーブル側コネクター40と基板側コネクター50の嵌合状態が強固に保持されるとともに、連結部材613を引っ張る操作により2ヶ所の係合を容易に解除することができる。
【0143】
また、ロック機構60において、連結部材613(抜去操作部材)は、引張動作に対して変形不能な剛体である。これにより、連結部材613を引っ張る力が効率よくロック部材611に伝達されるので、係合部611aと係合受け部62との係合を容易に解除することができる。
【0144】
また、ロック機構60において、ロック部材611は、連結部材613(抜去操作部材)が接続される抜去部材取付片611e(抜去部材取付部)を有し、抜去部材取付片611eとボス611f(回動軸)を結ぶ方向は、抜去方向と交差する。これにより、連結部材613を抜去方向に引っ張ったときに、ロック部材611に、ボス611fを中心とする第1モーメントを生じさせ、ロック部材611を回動させることができる。なお、第2の実施の形態のように、カムを利用してロック部材611を回動させる場合、抜去部材取付片611eとボス611f(回動軸)を結ぶ方向は、抜去方向と交差していなくてもよい。
【0145】
また、ロック機構60において、付勢部611cは、ロック部材611の一部によって構成され、ロック部材611の回動に伴い変形して、復元力を生じる。すなわち、付勢部611cは、ロック部材611の回動に伴い変形して、ロック部材611の回動方向とは逆向きの第2モーメントをロック部材611に生じさせる。これにより、ロック部材611を基準状態に保持する構成を簡易化することができる。
【0146】
また、ロック機構60において、付勢部611cは、ケーブル側コネクター本体41のバネ受け部41d(第1コネクターの構成部材)と当接し、ロック部材611が回動するときの移動が規制されている。具体的には、付勢部611cは、バネ受け部41d(第1コネクターの構成部材)と当接する自由端部と、ロック部材611のロックプレート部611b及び内側プレート部611d(プレート部)に接続される固定端部と、自由端部及び固定端部を連結するアーム部と、を有する。これにより、付勢部611cは弾性変形することとなり、容易に復元力を生じさせることができる。
【0147】
また、ロック機構60において、係合受け部62は、ケーブル側コネクター40(第1コネクター)を抜去方向とは逆向きの挿入方向に移動させたときに、係合部611aと当接する当接面62aを有し、当接面62aは、傾斜して形成され、ケーブル側コネクター40の挿入方向への移動に伴いロック部材611が回動するように係合部611aをせり上げ可能である。これにより、コネクターセット2における挿入時及び抜去時の作業を滑らかに行うことができる。
【0148】
また、ロック機構60において、ロック部材611は、板状のロックプレート部611b(プレート部)を有し、ロックプレート部611bの板厚方向がピッチ方向と一致するように配置されている。これにより、ロック機構60を設けるためにケーブル側コネクター40の内部空間を大幅に拡大する必要はなく、コネクターの小型化を図ることができる。
【0149】
また、ロック機構60において、抜去操作部材612は、抜去方向に対して傾斜して形成されたプレート取付スリット613c(傾斜面)を有し、ロック部材611は、プレート取付スリット613cに係合する抜去部材取付片611e(係合片)を有し、プレート取付スリット613c及び抜去部材取付片611eの係合により、抜去操作部材612の直線運動を回転運動に変換してロック部材611に伝達するカムが構成される。これにより、抜去操作部材612の直線運動を、効率よく回転運動に変換してロック部材611に伝達することができる。
【0150】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0151】
例えば、ケーブル側コネクター10及び基板側コネクター20の細部の構造は、第1の実施の形態で説明した例に限定されず、適宜変更可能である。また、ケーブルCの本数についても、適宜変更可能である。
【0152】
第1の実施の形態では、電線対基板用のコネクターセット1について説明したが、本発明は、電線対電線用のコネクターセットに適用することもできる。
【0153】
また、第1の実施の形態は、抜去時に、抜去操作部材312を利用してロック部材311を回動させる構成であるが、抜去操作部材312に代えて、ロック部材311を回動させるための操作部を別途設けてもよい。例えば、ロック部材311に操作片を一体的に設け、この操作片を把持して直接ロック部材311を回動させるようにしてもよい。
【0154】
また、第1の実施の形態では、抜去操作部材312によって2つのロック部材311を連結しているが、2つのロック部材311のそれぞれに、別々の抜去操作部材312が接続されてもよい。また、抜去操作部材312は、可撓性を有する部材(例えば、紐状の部材)で構成されてもよい。
【0155】
また、ケーブル側コネクター本体11に対してロック部材311を軸支する構造は、実施の形態で説明した例に限定されない。例えば、ケーブル側コネクター本体11に回動軸となる凸部を設け、ロック部材311に凸部が嵌め込まれる係合穴を設けるようにしてもよい。
【0156】
また、第1の実施の形態では、ロック部材311の一部に付勢部311cが形成されているが、ロック部材311とは別部材(例えば、圧縮コイルバネなど)で、ロック部材311を基準状態に保持する付勢部を構成してもよい。
【0157】
第1の実施の形態に対する上記の変形例は、第2の実施の形態においても適用可能である。さらに、第2の実施の形態に対しては、以下の変形例も適用可能である。
【0158】
第2の実施の形態におけるロック部材611の付勢部611cとして、
図18A~
図18Cに示すような構造を適用してもよい。すなわち、
図18A~
図18Cに示すように、複数(例えば、2つ)の付勢部611cを板厚方向がピッチ方向と一致するように、ロック部材611に一体的に形成してもよい。この場合、ピッチ方向の幅を小さくしてコネクターの小型化を図ることができるとともに、付勢部611cの弾性力を容易に増大させることができる。
【0159】
また、ロック部材611に形成されるプレート取付スリット613cを、
図19A、
図19Bに示すような構造としてもよい。つまり、プレート取付スリット613cは、抜去操作部材612を抜去方向に引っ張るときに抜去部材取付片611eと当接する傾斜面を有していればよい。
図19A、
図19Bに示す構造の場合、ケーブル側コネクター40の挿入作業に伴いロック部材611が回動するとき、抜去部材取付片611eはプレート取付スリット613cの領域内で移動することができ、ロック部材611と連結部材613は干渉しない。したがって、抜去操作部材612を把持してケーブル側コネクター40の挿入作業を行うこともできる。
【0160】
[第3の実施の形態]
図20、
図21は、それぞれ、本発明を適用した第3の実施の形態に係るコネクターセット3の外観を示す平面図及び側面図である。
図20、
図21では、内部のロック機構60が図面に現れるように、カバーシェルを省略して示している。
【0161】
第3の実施の形態に係るコネクターセット3は、主に、ロック機構60の構造が特徴的であり、ケーブル側コネクター40及び基板側コネクター50の主要構成は、第2の実施の形態のケーブル側コネクター40及び基板側コネクター50とほぼ同様であるので、説明を省略又は簡略化する。また、ロック機構60についても、第2の実施の形態のロック機構60と同一又は対応する要素は同一の名称で記載し、説明を省略又は簡略化する。
【0162】
図20、
図21に示すように、コネクターセット3は、ケーブル側コネクター40、基板側コネクター50及びロック機構60を備える。コネクターセット3は、ケーブル側コネクター40と基板側コネクター50との水平嵌合により、ケーブルCと回路基板(図示略)とを電気的に接続する。
【0163】
ロック機構60は、基板側コネクター50に対してケーブル側コネクター40を挿入して嵌合させる作業に連動して、第1ロック機構63と第2ロック機構64(「係合受け部64」と称することもある)とが機械的に係合するように構成されている。また、ロック機構60は、基板側コネクター50からケーブル側コネクター40を抜去して嵌合状態を解除する作業に連動して、第1ロック機構63と第2ロック機構64との係合が解除されるように構成されている。
【0164】
図22A、
図22Bは、第3の実施の形態に係る第1ロック機構63を示す斜視図である。
図22Aでは、第1ロック機構63を組み付けた状態を示し、
図22Bでは、第1ロック機構63を分解した状態を示している。
【0165】
図22A、
図22Bに示すように、第1ロック機構63は、ロック部材631及び抜去操作部材632を有する。抜去操作部材632は、例えば、ロック部材631に接続される連結部材633及び連結部材633に接続されるプルタブ634を有する。
【0166】
本実施の形態では、抜去操作部材632の操作部(作業者が把持して操作する部分)は、抜去方向及び回動軸の延在方向に直交するZ軸方向におけるケーブル側コネクター40の上面(第1面)側に配置されている。具体的には、連結部材633の平面部633a及びプルタブ634は、コネクターセット3が搭載される回路基板Bの実装面から遠い遠位側に配置されている。
【0167】
この場合、回路基板Bの実装面に対して、ケーブル側コネクター40に接続されるケーブルCが近く、平面部633a及びプルタブ634が遠くに位置する。コネクターセット3が回路基板Bの上面に搭載される場合に、ケーブル側コネクター40に接続されるケーブルCの上方にプルタブ634が位置する。プルタブ634の操作空間が開放されているため、ケーブルCに阻害されることなくプルタブ634の抜去操作を容易に行うことができる。
【0168】
第1ロック機構63の2つのロック部材631は、それぞれ、連結部材633と接続され、ケーブル側コネクター40のカバーシェル42と連結部材633によって挟持される。つまり、2つのロック部材631は、抜去操作部材632によって連結されており、抜去操作部材632を抜去方向に引っ張る動作に連動して、一緒に動くようになっている。
【0169】
ロック部材631は、係合部631a、ロックプレート部631b及び付勢部631cを有する。ロックプレート部631bは、X軸方向に沿って延在し、先端に、係合部631aが配置されている。ロックプレート部631bには、抜去部材取付片631e及びボス631fが配置されている。抜去部材取付片631eはY軸方向において内側(ケーブル側コネクター本体41が配置される側)に突出し、ボス631fは、Y軸方向において外側に突出する。
【0170】
付勢部631cは、固定端部631g、自由端部631h及びアーム部631iを有する。固定端部631gは、ロックプレート部631bに接続される部分である。自由端部631hは、X軸方向正側の先端部分であり、ケーブル側コネクター40の構成部材(例えば、ケーブル側コネクター本体41のバネ受け部41d)と当接する。アーム部631iは、固定端部631gと自由端部631hを連結する。
【0171】
付勢部631cは、固定端部631gに、曲げ加工により形成された曲げ部を有する。曲げ部は、Y軸方向(抜去方向と交差する方向)に沿って湾曲して形成されている。アーム部631iは、固定端部631g(曲げ部)を介してロックプレート部631bの外側に配置される。アーム部631iは、板厚方向がY軸方向(回動軸の延在方向)と一致するように配置される。付勢部631cには、ロック部材631の回動に伴い、弾性変形により所定の復元力が生じる。すなわち、付勢部631cは、ロック部材631の回動に伴い変形して、ロック部材631の回動方向とは逆向きの第2モーメントを生じさせる。
【0172】
ロック部材631の抜去部材取付片631eに連結部材633のプレート取付スリット633cが接続される。抜去部材取付片631e及びプレート取付スリット633cにより、抜去方向の直線運動を、ボス631f(回動軸)を中心とする回転運動に変換してロック部材631に伝達するカムが構成される。
【0173】
この状態で、連結部材633の内側に、ケーブル側コネクター本体41が配置される。ケーブル側コネクター本体41のXZ面に沿う2つの側面に、それぞれ、ロック部材631が配置され、ケーブル側コネクター本体41のガイド片係合穴(図示略)に連結部材633のガイド片633eが嵌着される。つまり、ガイド片係合穴を有するケーブル側コネクター本体41(例えば、ケーブル側インシュレーター414)は、抜去操作部材632の抜去操作をガイドするガイド部材として機能する。
【0174】
また、ケーブル側コネクター本体41にカバーシェル42が取り付けられ、カバーシェルのボス受け凹部(図示略)にロック部材631のボス631fが回動可能に嵌め込まれる。ボス631fは、ロック部材631が回動するときの回動軸として機能する。このようにして、ロック部材631は、所定の姿勢で、ケーブル側コネクター40に対して脱落不能に保持される。ガイド片係合穴及びボス受け凹部(いずれも図示略)を有するケーブル側コネクター本体41は、第1ロック機構63の一部を構成しているといえる。
【0175】
抜去操作部材632をX軸方向の負側に引っ張るとき、抜去部材取付片631eの部分に引張力が作用することとなる。ロック部材631が基準状態となっているとき、抜去部材取付片631eは、ボス631fのZ軸方向の正側に位置する。つまり、ロック部材631の基準状態において、抜去部材取付片631eのZ軸方向の位置は、ボス631fのZ軸方向の位置と異なっている。
【0176】
基準状態において、付勢部631cは、反時計回りの方向に付勢する(いわゆるプリロード)、すなわち、ロック部材631に第2モーメントを生じさせることが好ましい。付勢部631cの付勢力によって、ロック部材631の姿勢が安定するので、嵌合状態では確実にロックされた状態を保持することができ、非嵌合状態においてはロック部材631のがたつきを防止することができる。
【0177】
第2の実施の形態では、ロックプレート部611bの外側にカム機構が配置され、ロックプレート部611bの内側に付勢部611cが配置されている。付勢部611cは、コネクターの嵌合方向(X軸方向)に延在しており、湾曲して形成された板バネで構成されている。また、ロックプレート部611bの先端部(係合部611aが形成される部分)には、基板側コネクター50の係合受け部62との位置合わせのために内側に折曲された傾斜部が形成されている。そのため、ケーブルCが引っ張られたときに、ロックプレート部611bの先端部に形成された傾斜部が伸びる虞がある。一方、ロックプレート部611bの先端部を真っ直ぐに形成することにより、ケーブルCが引っ張られたときの不具合を解消できるが、基板側コネクター50のピッチ方向の寸法を大きくする必要がある。
【0178】
これに対して、本実施の形態では、ロックプレート部631bの内側にカム機構が配置され、ロックプレート部631bの外側に付勢部631cが配置されている。ロックプレート部631bの先端部の形状は、付勢部631cの制約を受けないので、基板側コネクター50の係合受け部62の位置に合わせて、ロックプレート部631bを、傾斜部を設けることなく真っ直ぐに形成することができる。したがって、ケーブルCが引っ張られても、ロックプレート部631bは変形しない。また、付勢部631cは、開放された空間に配置されることとなるため、設計の自由度が向上し、バネ荷重点となる自由端部631hを、回動軸となるボス631fよりも嵌合面側(基板側コネクター50側)の最先端に位置させるとともに、固定端部631gを最後端に位置させてバネ長さを最大化し、バネ性の向上を図ることができる。
【0179】
図23は、第3の実施の形態に係るロック機構60の係合状態を示す図である。
【0180】
図23に示すように、基板側コネクター50とケーブル側コネクター40とが嵌合した状態では、基板側コネクター50に設けられた係合受け部64と、ケーブル側コネクター40に設けられたロック部材631の係合部631aが機械的に係合し、コネクターセット3は、所定値以下の外力に対しては抜脱不能な状態で保持される。
【0181】
ボス631fは、係合点P(係合受け部64と係合部631aの接触点)よりもZ軸方向正側に位置している。ボス631fと係合点Pを結ぶ直線Lは、抜去方向と交差する。直線Lは、抜去方向を反時計回りに0-45°回転させた方向と一致する。この場合、係合点Pの回転軌跡と係合受け部64が干渉しないので、係合部631aは回動可能となる。
【0182】
ここで、直線Lと抜去方向(X軸方向)とのなす角をθ、係合点Pにおける係合部631aの係合面とZ軸方向(抜去方向及びピッチ方向と直交する方向)のなす角をαとした場合、αとθの関係が「α≧θ」を満たすように設計することが好ましい。実際の製品では、αをθに対して一定量大きくするのが好ましい。θがαよりも大きい場合、抜去操作の初期からロック部材631に第1モーメントが発生して、ロックを解除する方向に力がかかり、ロック状態が容易に解除される。これに対して、θがα以下である場合、抜去方向に所定以上の力が加わるまでは、ロック部材631に第2モーメントが生じる。したがって、誤操作などにより係合部631aと係合受け部64のロックが解除されるのを防止でき、信頼性が向上する。かかる設計は、第2の実施の形態の第1ロック機構61においても有効である。なお、一定の外力が加わった場合に部分的な破損が生じるのを防止するために、あえてθをαよりも大きくする場合もある。
【0183】
[第3の実施の形態の変形例1]
図24は、第3の実施の形態に係る第1ロック機構63の変形例を示す図である。
【0184】
図24に示すように、本実施の形態では、抜去操作部材632の操作部(作業者が把持して操作する部分)は、抜去方向及び回動軸の延在方向に直交するZ軸方向におけるケーブル側コネクター40の背面(第2面)側に配置されてもよい。具体的には、連結部材633の平面部633a及びプルタブ634は、コネクターセット3が搭載される回路基板Bの実装面に近い近位側に配置されてもよい。この場合、回路基板Bの実装面に対して、ケーブル側コネクター40に接続されるケーブルCが遠く、平面部633a及びプルタブ634が近くに位置する。
【0185】
第3の実施の形態では、連結部材633の平面部633a及びプルタブ634は、コネクターセット3が搭載される回路基板Bの実装面から遠い遠位側に配置されている(
図22B参照)。そのため、コネクターセット3が回路基板Bの背面に搭載される場合に、ケーブルCの下方にプルタブ634が位置することとなり、ケーブルCに阻害され、プルタブ634の抜去操作が困難となる。
【0186】
これに対して、
図24に示す変形例では、コネクターセット3が回路基板Bの背面に搭載される場合に、ケーブル側コネクター40に接続されるケーブルCの上方にプルタブ634が位置する(
図25参照)。プルタブ634の操作空間が開放されているため、ケーブルCに阻害されることなくプルタブ634の抜去操作を容易に行うことができる。
【0187】
第3の実施の形態の抜去操作部材612(以下、「第1抜去操作部材612」と称する)と、変形例で示した抜去操作部材632(以下、「第2抜去操作部材632」と称する)は、連結部材633及びプルタブ634の配置が異なるだけで、その他の構造は共通である。したがって、共通のロック部材611又は613に対して、第1抜去操作部材612及び第2抜去操作部材632の何れか一方を選択的に適用することができる。
【0188】
ガイド部材として機能するケーブル側コネクター本体41(例えば、ケーブル側インシュレーター414)は、第1抜去操作部材612用の第1ガイド部(例えば、ガイド片633eに係合するガイド片係合穴)と、第2抜去操作部材632用の第2ガイド部の両方を有することが好ましい。これにより、第1抜去操作部材612及び第2抜去操作部材632を適宜選択するだけで、搭載面に適したコネクターセット3を容易に実現することができる。また、第1抜去操作部材612を適用した上面搭載用のコネクターセット3と、第2抜去操作部材632を適用した背面搭載用のコネクターセット3の部品を共通化できるので、低コスト化を図ることができる。
【0189】
[第3の実施の形態の変形例2]
図26A、
図26Bは、第3の実施の形態に係る基板側コネクター50の変形例を示す図である。
図26Bでは、基板側コネクター50にケーブル側コネクター40を嵌合した状態を示している。
【0190】
第3の実施の形態に係る基板側コネクター50は、回路基板Bのグランドパターンに接続される基板側シェル52を有する。基板側シェル52には、回路基板Bのスルーホールに挿入される基板実装部52aが設けられている(
図21参照)。
【0191】
変形例2では、基板側シェル52(第1シェル)に加えて、補強シェル53(第2シェル)が設けられている。補強シェル53は、基板側コネクター本体51のY軸方向の両側に配置される。2つの補強シェル53は、例えば、1枚の金属板の板金加工(抜き加工、曲げ加工を含む)により、基板側シェル52と一体的に形成される。
【0192】
補強シェル53は、基板実装部53a、天面部53b及び側面部53cを有する。側面部53cは、基板側コネクター本体51のY軸方向の両側に配置される部分である。
【0193】
基板実装部53aは、側面部53cのX軸方向負側(嵌合面側)の下端部に配置される。回路基板Bのスルーホールに基板実装部53aが挿入され、はんだ付けされることにより、補強シェル53は、回路基板Bのグランドパターンと電気的に接続される。
【0194】
天面部53bは、側面部53cの上端から張り出して形成される。天面部53bは、例えば、片端が開放された庇形状を有する。天面部53bは、基板側コネクター50にケーブル側コネクター40を嵌合した状態で、ケーブル側コネクター40のカバーシェル42を上方から押さえ付け、カバーシェル42と物理的かつ電気的に接続される。
【0195】
ケーブル側コネクター40を抜去する際、抜去方向(水平方向)に対して斜め上方に抜去操作が行われると、連結部材633とプルタブ634の接続部分(抜去力作用辺)に力が加わり、基板側コネクター50にモーメントが生じる。
【0196】
補強シェル53を配置した場合、基板側コネクター50と回路基板Bとのはんだ付け部分に作用するモーメントは、基板実装部52a、53aに分散されるため、補強シェル53がない場合に比較して、小さくなる。特に、基板実装部53aは、基板側コネクター50の嵌合面側に配置されており、抜去力作用辺からの距離が短いので、抜去操作時に生じるモーメントは小さい。さらに、ケーブル側コネクター40の上面が天面部53bによって押さえ付けられており、斜め上方への抜去操作が制限される。これにより、ケーブル側コネクター40の抜去操作によってはんだ付け部分が損壊して、回路基板Bとの電気的接続が損なわれるのを防止でき、信頼性が向上する。
【0197】
ここで、2つの補強シェル53は、基板側シェル52とは別体で構成されてもよい。この場合、コネクターセット3の使用形態(例えば、要求される強度)に応じて補強シェル53の必要性を判断し、適宜追加することができる。したがって、利便性が向上するとともに、補強シェル53を備えない基本構成のコネクターセット3のコストを低減することができる。
【0198】
また、2つの補強シェル53を基板側シェル52と別体で構成する場合、2つの補強シェル53が連結されて、一体化されてもよい。例えば、2つの補強シェル53の天面部53bを連結して一枚の天面部を形成し、ケーブル側コネクター40及び基板側コネクター50の上面を全体的に覆うようにしてもよい。
【0199】
なお、補強シェル53は、第1の実施の形態及び第2の実施の形態の基板側コネクター20、50に対しても有効である。
【0200】
[第4の実施の形態]
図27は、第4の実施の形態に係るコネクターセット4の外観を示す斜視図である。
図28は、ケーブル側コネクター70の分解斜視図である。
【0201】
図27に示すように、コネクターセット4は、ケーブル側コネクター70、基板側コネクター80及びロック機構90を備える。コネクターセット4は、ケーブル側コネクター70と基板側コネクター80との水平嵌合により、ケーブルと回路基板(図示略)とを電気的に接続する。
【0202】
コネクターセット4において、ケーブル側コネクター70及び基板側コネクター80の主要構成は、第2の実施の形態のケーブル側コネクター40及び基板側コネクター50とほぼ同様であるので、説明を省略又は簡略化する。また、ロック機構90についても、第2の実施の形態のロック機構60と同一又は対応する要素は同一の名称で記載し、説明を省略又は簡略化する。
【0203】
ロック機構90は、基板側コネクター80に対してケーブル側コネクター70を挿入して嵌合させる作業に連動して、第1ロック機構91と第2ロック機構92(「係合受け部92」と称することもある)とが機械的に係合するように構成されている。また、ロック機構90は、基板側コネクター80からケーブル側コネクター70を抜去して嵌合状態を解除する作業に連動して、第1ロック機構91と第2ロック機構92との係合が解除されるように構成されている。
【0204】
図28に示すように、第1ロック機構91は、ロック部材911及び抜去操作部材912を有する。抜去操作部材912は、例えば、ロック部材911に接続される連結部材913及び連結部材913に接続されるプルタブ914を有する。
【0205】
ロック部材911は、係合部911a、ロックプレート部911b、付勢部911c及び橋架部911iを有する。本実施の形態では、2つのロックプレート部911bがY軸方向に対向して配置されており、アーチ状の橋架部911iによって連結されている。
【0206】
ロックプレート部911bは、X軸方向に沿って延在し、先端に、係合部911aが配置されている。ロックプレート部911bには、抜去部材取付片911e及びボス911fが配置されている。抜去部材取付片911eはY軸方向において内側(ケーブル側コネクター本体71が配置される側)に突出し、ボス911fは、Y軸方向において外側に突出する。なお、ボス911fは、ケーブル側コネクター本体71のインシュレーター(符号略)に一体的に設けられ、ロックプレート部911bに設けられた貫通穴を貫通して、外側に突出してもよい。
【0207】
本実施の形態では、ロック部材911のロックプレート部911bの内側にロック機構が配置され、ロックプレート部911bの外側に付勢部911cが配置されている。
【0208】
ロック部材911の抜去部材取付片911eに連結部材913のプレート取付スリット913cが接続される。抜去部材取付片911e及びプレート取付スリット913cにより、抜去方向の直線運動を、ボス911f(回動軸)を中心とする回転運動に変換しロック部材911に伝達するカム機構が構成される。カム機構は、ボス911f(回動軸)と係合部911aの中間に位置する(
図29参照)。
【0209】
第4の実施の形態では、2つのロックプレート部911bが橋架部911iによって連結され一部材で構成されている。これにより、ロック機構90の組み立て作業が容易になる。ただし、ロックプレート部911bとともに橋架部911iも回動することになるため、他の構成要素と干渉しないように工夫する必要がある。
【0210】
第4の実施の形態の変形例として、2つのロックプレート部911bを別部材で構成してもよい(第2及び第3の実施の形態参照)。この場合、他の構成要素との干渉を考慮する必要はないので、設計の自由度が向上するが、ロック機構90の組立作業が繁雑になる虞がある。
【0211】
なお、第2及び第3の実施の形態において、2つのロックプレート部611bを連結して一部材で構成してもよい。
【0212】
第2-第4実施の形態では、抜去操作部材が抜去方向に対して傾斜して形成された傾斜面を有し、ロック部材が傾斜面に係合する係合片を有する構造となっているが、抜去操作部材が抜去方向に対して傾斜して形成された傾斜面を有し、ロック部材が傾斜面に係合する係合片を有する構造でカム機構が構成されてもよい。
【0213】
上記実施の形態では、第1コネクター(例えば、ケーブル側コネクター10)と第2コネクター(例えば、基板側コネクター20)を、物理的かつ電気的に接続するコネクターセットについて説明したが、本発明のロック機構は、2つの対象物間を物理的に接続するコネクターセットに適用可能である。つまり、本発明のロック機構を適用可能なコネクターは、実施の形態で説明したようなコンタクト等の電気的要素を備えていなくてもよい。
【0214】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0215】
2022年10月3日出願の特願2022-159686の日本出願に含まれる明細書、図面および要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。
【符号の説明】
【0216】
1 コネクターセット
C ケーブル
10 ケーブル側コネクター(第1コネクター)
20 基板側コネクター(第2コネクター)
30 ロック機構
31 第1ロック機構
32 第2ロック機構、係合受け部
311 ロック部材
311a 係合部
311b ロックプレート部
311c 付勢部
311d 固定部
311e 開口
311f ボス(回動軸)
311g 抜去部材取付穴
312 抜去操作部材