(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053569
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】発電用複合材料および発電用複合材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
H10N 30/85 20230101AFI20240409BHJP
H10N 30/30 20230101ALI20240409BHJP
H10N 30/853 20230101ALI20240409BHJP
H10N 30/078 20230101ALI20240409BHJP
H10N 30/092 20230101ALI20240409BHJP
H02N 2/18 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
H01L41/18
H01L41/113
H01L41/187
H01L41/318
H01L41/37
H02N2/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106999
(22)【出願日】2022-07-01
(31)【優先権主張番号】P 2022540644
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100143834
【弁理士】
【氏名又は名称】楠 修二
(72)【発明者】
【氏名】王 真金
(72)【発明者】
【氏名】丸山 衡平
(72)【発明者】
【氏名】成田 史生
【テーマコード(参考)】
5H681
【Fターム(参考)】
5H681AA12
5H681BB08
5H681GG01
5H681GG11
(57)【要約】
【課題】耐久性が高く、比較的優れた圧電特性を有する発電用複合材料および発電用複合材料の製造方法を提供する。
【解決手段】所定の厚みを有する板状を成し、圧電性を有するセラミックと、圧電性を有するポリマーとを含み、厚み方向に沿ってセラミックの含有率が連続的に徐々に変化するよう構成されている。圧電性を有するセラミックと、圧電性を有するポリマーとを含み、セラミックの含有率が異なる複数種類の圧電薄膜を、その厚み方向に沿ってセラミックの含有率が徐々に変化するよう積層した後、熱処理を行うことにより製造される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電性を有するセラミックと、圧電性を有するポリマーとを含み、所定の方向に沿って前記セラミックの含有率が連続的に徐々に変化するよう構成されていることを特徴とする発電用複合材料。
【請求項2】
前記所定の方向に沿って、前記セラミックの含有率が連続的に徐々に増加または減少するよう構成されていることを特徴とする請求項1記載の発電用複合材料。
【請求項3】
前記所定の方向に沿った前記セラミックの含有率の分布が、前記所定の方向での中心面に対して面対称を成すよう構成されていることを特徴とする請求項1記載の発電用複合材料。
【請求項4】
前記所定の方向に沿って、前記セラミックの含有率が増加する範囲と減少する範囲とを有するよう構成されていることを特徴とする請求項1記載の発電用複合材料。
【請求項5】
前記セラミックは、ペロブスカイト構造を有していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発電用複合材料。
【請求項6】
前記セラミックは、チタン酸バリウム(BaTiO3;BTO)、ニオブ酸カリウムナトリウム[(K,Na)NbO3;KNN]、チタン酸ビスマスナトリウム[(Bi1/2Na1/2)Ti3;BNT]、および、ビスマスフェライト(BiFeO3;BF)のうちの少なくとも1つ以上を含み、
前記ポリマーは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、および、ポリフッ化ビニリデンと三フッ化エチレンとの共重合体であるP(VDF-TrFE)のうち少なくともいずれか一方を含むことを
特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発電用複合材料。
【請求項7】
板状を成し、厚み方向が前記所定の方向であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発電用複合材料。
【請求項8】
圧電性を有するセラミックと、圧電性を有するポリマーとを含み、前記セラミックの含有率が異なる複数種類の圧電薄膜を、その膜厚方向に沿って前記セラミックの含有率が徐々に変化するよう積層した後、熱処理を行うことを特徴とする発電用複合材料の製造方法。
【請求項9】
前記熱処理は、積層した各圧電薄膜をその膜厚方向に圧縮した状態で、各圧電薄膜の再結晶温度よりも低い温度で加熱することを特徴とする請求項8記載の発電用複合材料の製造方法。
【請求項10】
溶媒中に前記セラミックと前記ポリマーとを加えて撹拌した混合液を用いて、スピンコート法により各圧電薄膜を作製することを特徴とする請求項8記載の発電用複合材料の製造方法。
【請求項11】
各圧電薄膜を作製した後、各圧電薄膜を積層することを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載の発電用複合材料の製造方法。
【請求項12】
製造した圧電薄膜の上に、順次、圧電薄膜を作製していくことにより、各圧電薄膜を積層することを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載の発電用複合材料の製造方法。
【請求項13】
前記セラミックは、ペロブスカイト構造を有していることを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載の発電用複合材料の製造方法。
【請求項14】
前記セラミックは、チタン酸バリウム(BaTiO3;BTO)、ニオブ酸カリウムナトリウム[(K,Na)NbO3;KNN]、チタン酸ビスマスナトリウム[(Bi1/2Na1/2)Ti3;BNT]、および、ビスマスフェライト(BiFeO3;BF)のうちの少なくとも1つ以上を含み、
前記ポリマーは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、および、ポリフッ化ビニリデンと三フッ化エチレンとの共重合体であるP(VDF-TrFE)のうち少なくともいずれか一方を含むことを
特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載の発電用複合材料の製造方法。
【請求項15】
各圧電薄膜を積層した積層体が板状を成し、厚み方向が前記積層体の積層方向であることを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載の発電用複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電用複合材料および発電用複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モノのインターネット(Internet of Things;IoT)の普及に伴い、IoTデバイスへの電力供給源の一つとして、周囲の環境にある熱や風、振動などの微小なエネルギーを電気エネルギーに変えることのできる環境発電デバイスが注目されている。環境発電を行う材料の一つとして、機械エネルギーを電気エネルギーに変えることのできる圧電材料がある。圧電材料は、比較的耐久性が高く、微小なひずみに対して敏感で、高い出力電力密度および出力電圧が期待できる。また、圧電材料は、小さくコンパクトであり、湿度などの環境要因の影響を受けにくいため、IoTデバイスの電力供給源として最適である。
【0003】
優れた圧電特性を有する材料として圧電セラミックスが知られているが、圧電セラミックスは、高周波の繰り返し荷重を受けると疲労き裂の影響を受けやすくなるため、それのみでは使用するのが難しいという問題があった。そこで、この問題を解決するために、従来、金属製の弾性板などの基板の一方の表面または両面に圧電セラミックスを貼り付けた圧電発電ユニットが、多く利用されている(例えば、特許文献1参照)。また、柔軟性を有する高分子にセラミックスを加えた圧電複合材料も開発されている(例えば、非特許文献1乃至3参照)。
【0004】
また、曲げ耐性を向上させるために、樹脂と圧電粒子とを有する圧電体層として、2つの第1圧電体層と、各第1圧電体層の間に配された第2圧電体層とを有し、第2圧電体層の圧電粒子の体積パーセント濃度を、各第1圧電体層よりも低くした複合圧電素子も提案されている(例えば、特許文献2参照)。この複合圧電素子では、第2圧電体層の圧電粒子の体積パーセント濃度が低いため、第2圧電体層の曲げ耐性が向上し、圧電粒子の体積パーセント濃度が高い圧電体の単層で構成した場合と比較して、圧電体層全体の曲げ耐性も向上させることができる。しかも、その第2圧電体層を、圧電粒子の体積パーセント濃度が高い2つの第1圧電体層で挟んだ構造をしているため、各第1圧電体層による性能が優先されて、圧電体層全体での圧電性能は大きく低下しないという特徴を有している。
【0005】
なお、圧電複合材料の一つとして、セラミックスに濃度勾配を持たせた傾斜機能材料(Functionally Graded Material;FGM)の研究も行われており、高強度かつ高靱性であり、高い疲労強度を有することが確認されている(例えば、非特許文献4参照)が、圧電特性についてはまだ確認されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-250536号公報
【特許文献2】特開2015-50432号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Zhenjin Wang, Fumio Narita, “Corona Poling Conditions for Barium Titanate/Epoxy Composites and their Unsteady Wind Energy Harvesting Potential”, Advanced Engineering Materials, 2019, Volume 21, 1900169
【非特許文献2】Zhenjin Wang, Fumio Narita, “Fabrication of Potassium Sodium Niobate Nano-Particle/Polymer Composites with Piezoelectric Stability and Their Application to Unsteady Wind Energy Harvesters”, Journal of Applied Physics, 2019, Volume 126, 224501
【非特許文献3】Zhenjin Wang, Hiroki Kurita, Hiroaki Nagaoka, Fumio Narita, “Potassium Sodium Niobate Lead-Free Piezoelectric Nanocomposite Generators Based on Carbon-Fiber-Reinforced Polymer Electrodes for Energy-Harvesting Structures”, Composites Science and Technology, 2020, Volume 199, 108331
【非特許文献4】Saurav Sharma, Anuruddh Kumar, Rajeev Kumar, Mohammad Talha, Rahul Vaish, “Geometry Independent Direct and Converse Flexoelectric Effects in Functionally Graded Dielectrics: An Isogeometric Analysis”, Mechanics of Materials, 2020, Volume 148, 103456
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載のような従来の圧電発電ユニットは、圧電セラミックスを接着剤などで基板に貼り付ける必要があり、振動や衝撃が繰り返し加わると剥がれてしまうという課題があった。また、従来の圧電複合材料では、圧電特性が小さいという課題があった。また、特許文献2に記載の複合圧電素子では、圧電体層が、2つの第1圧電体層の間に、圧電粒子の体積パーセント濃度が異なる第2圧電体層を挟んでいるため、圧電体層に曲げ荷重を加えると、各第1圧電体層と第2圧電体層との界面で、ひずみや応力のギャップが発生してしまう。このため、これらの界面で圧電体層が剥がれ、破壊されてしまうという課題があった。
【0009】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、耐久性が高く、比較的優れた圧電特性を有する発電用複合材料および発電用複合材料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る発電用複合材料は、圧電性を有するセラミックと、圧電性を有するポリマーとを含み、所定の方向に沿って前記セラミックの含有率が連続的に徐々に変化するよう構成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る発電用複合材料の製造方法は、圧電性を有するセラミックと、圧電性を有するポリマーとを含み、前記セラミックの含有率が異なる複数種類の圧電薄膜を、その膜厚方向に沿って前記セラミックの含有率が徐々に変化するよう積層した後、熱処理を行うことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る発電用複合材料の製造方法は、本発明に係る発電用複合材料を好適に製造することができる。本発明に係る発電用複合材料は、セラミックだけでなく、柔軟性を有するポリマーも含んでいるため、繰り返し荷重に弱いセラミックのみから成る圧電材料と比べて耐久性が高い。また、弾性を有する基板などに貼り付ける必要もないため、振動や衝撃にも強く、優れた耐久性を有している。また、セラミックの含有率が急激に変化する界面などでは割れが発生しやすいが、本発明に係る発電用複合材料は、セラミックの含有率が連続的に徐々に変化するよう構成されており、セラミックの含有率が急激に変化する界面が存在していないため、割れが発生しにくく、耐久性が高い。
【0013】
本発明に係る発電用複合材料は、セラミックだけでなく、ポリマーも圧電性を有しているため、セラミックと圧電性を有さない材料との複合材料と比べて、優れた圧電特性を有している。本発明に係る発電用複合材料は、セラミックの含有率が徐々に変化しているため、圧電定数が異なるセラミックとポリマーとを含むことにより、その含有率の値の大きさや含有率の変化の状態によって、様々な特性を有することができる。本発明に係る発電用複合材料は、特に優れた圧電特性を得るために、正の圧電定数を有するセラミックと、負の圧電定数を有するポリマーとを含むことが好ましい。
【0014】
本発明に係る発電用複合材料の製造方法は、セラミックの含有率が異なる複数種類の圧電薄膜を積層した後、熱処理を行うことにより、セラミックの含有率が圧電薄膜の境界で急激に変化せず、連続的に徐々に変化するよう構成することができる。これにより、圧電薄膜の境界が、セラミックの含有率が急激に変化する界面にならず、圧電薄膜の境界で割れたり剥がれたりするのを防ぐことができ、耐久性を高めることができる。
【0015】
本発明に係る発電用複合材料の製造方法で、前記熱処理は、積層した各圧電薄膜をその膜厚方向に圧縮した状態で加熱してもよく、積層した各圧電薄膜を圧縮せずに加熱してもよい。また、各圧電薄膜の再結晶温度よりも低い温度で加熱することが好ましい。この場合、再結晶による圧電特性の低下を防ぐことができる。熱処理は、積層した各圧電薄膜を圧縮するときには、例えば、ホットプレスにより行うことができる。
【0016】
本発明に係る発電用複合材料の製造方法は、溶媒中に前記セラミックと前記ポリマーとを加えて撹拌した混合液を用いて、スピンコート法により各圧電薄膜を作製することが好ましい。この場合、薄く、濃度が均一な圧電薄膜を、比較的容易に作製することができる。なお、圧電薄膜は、スピンコート法以外にも、例えば、溶剤キャスティング法により作製することができる。
【0017】
本発明に係る発電用複合材料の製造方法は、各圧電薄膜を作製した後、各圧電薄膜を積層してもよく、製造した圧電薄膜の上に、順次、圧電薄膜を作製していくことにより、各圧電薄膜を積層してもよい。後者の場合には、前者と比べて、作製した各圧電薄膜を積層する工程を省略することができ、比較的短い時間で効率よく製造することができる。
【0018】
本発明に係る発電用複合材料は、前記所定の方向に沿って、前記セラミックの含有率が連続的に徐々に増加または減少するよう構成されていてもよい。この場合、本発明に係る発電用複合材料の製造方法において、各圧電薄膜を、その膜厚方向に沿って前記セラミックの含有率が徐々に増加または減少するよう積層した後、前記熱処理を行うことにより製造することができる。本発明に係る発電用複合材料は、一方の表面側の圧電定数と、他方の表面側の圧電定数とが異なっているため、所定の方向(積層方向)に曲げたときの発電効率が高い。このため、例えば、所定の方向への振動を利用した振動発電に、効果的に利用することができる。
【0019】
また、本発明に係る発電用複合材料は、前記所定の方向に沿った前記セラミックの含有率の分布が、前記所定の方向での中心面に対して面対称を成すよう構成されていてもよい。この場合、本発明に係る発電用複合材料の製造方法において、各圧電薄膜を積層した積層体の積層方向に沿った前記セラミックの含有率が、前記積層体の積層方向での中心面に対して面対称になるよう、各圧電薄膜を積層した後、前記熱処理を行うことにより製造することができる。本発明に係る発電用複合材料は、所定の方向(積層方向)での中心面に対して、圧電定数の分布が面対称になるため、所定の方向に圧縮されたときの発電効率が高い。このため、例えば、所定の方向の衝撃を利用した衝撃発電に、効果的に利用することができる。
【0020】
また、本発明に係る発電用複合材料は、前記所定の方向に沿って、前記セラミックの含有率が増加する範囲と減少する範囲とを有するよう構成されていてもよい。この場合、本発明に係る発電用複合材料の製造方法において、各圧電薄膜を積層した積層体の積層方向に沿って、前記セラミックの含有率が増加する範囲と減少する範囲とを有するよう、各圧電薄膜を積層した後、前記熱処理を行うことにより製造することができる。本発明に係る発電用複合材料は、所定の方向(積層方向)に沿って圧電定数が増減する分布を有している。
【0021】
本発明に係る発電用複合材料および発電用複合材料の製造方法で、前記セラミックは、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3;BTO)、ニオブ酸カリウムナトリウム[(K,Na)NbO3;KNN]、チタン酸ビスマスナトリウム[(Bi1/2Na1/2)Ti3;BNT]、ビスマスフェライト(BiFeO3;BF)といったペロブスカイト構造を有するものなど、圧電性を有するものであれば、いかなるものから成っていてもよいが、有毒な鉛を含んでいないことが好ましい。ペロブスカイト構造を有するものは、強誘電体であるため、分極することで圧電性を示す。また、前記ポリマーは、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)や、ポリフッ化ビニリデンと三フッ化エチレンとの共重合体であるP(VDF-TrFE)など、圧電性を有するものであれば、いかなるものから成っていてもよい。P(VDF-TrFE)は、分極を行うことで、水素とフッ素の電気陰性度の差により電荷に偏りが生じ、圧電性を示す。また、PVDFは、伸ばした状態で分極を行う必要があるが、P(VDF-TrFE)は、分極の際に、伸ばしておく必要がない。
【0022】
本発明に係る発電用複合材料は、板状を成し、厚み方向が前記所定の方向であることが好ましい。本発明に係る発電用複合材料の製造方法では、各圧電薄膜を積層した積層体が板状を成し、厚み方向が前記積層体の積層方向であることが好ましい。また、本発明に係る発電用複合材料は、所定の方向に沿った任意の範囲でのセラミックの含有率が50%以下であることが好ましい。この場合、本発明に係る発電用複合材料の製造方法において、各圧電薄膜のセラミックの含有率を50%以下にすることにより製造することができる。セラミックの含有率が50%以下であるため、繰り返し荷重や振動、衝撃などを受けたときに割れにくく、耐久性が高い。
【0023】
本発明に係る発電用複合材料は、セラミックの含有率がほぼ連続的に変化していることが好ましい。例えば、セラミックの含有率が連続的に変化していれば、その変化がある程度急激であってもよい。また、本発明に係る発電用複合材料は、ポリマーとセラミックとの界面に、物理的あるいは化学的処理が施されていてもよい。また、本発明に係る発電用複合材料は、圧電性を有するポリマーおよびセラミックの他に、鉄コバルト(FeCo)や鉄コバルトバナジウム(FeCoV)などの正の磁歪効果を有する合金粉末や、コバルトフェライト(CoFeO)などの負の磁歪効果を有するセラミック粉末を含んでいてもよい。また、本発明に係る発電用複合材料は、強靱化のため、例えば炭素繊維強化プラスチックを用いた電極などに取り付けられてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、耐久性が高く、比較的優れた圧電特性を有する発電用複合材料および発電用複合材料の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施の形態の発電用複合材料の製造方法の、実施例1でのフローを示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態の発電用複合材料の、実施例1の(a)比較例であるBTOの体積分率が30 vol.%の試料、(b)BTOの体積分率が徐々に増加する試料(FGM1)、(c)両側の表面から中心面に向かって、BTOの体積分率が徐々に減少する試料(FGM2)、(d)両側の表面から中心面に向かって、BTOの体積分率が徐々に増加する試料(FGM3)を示す斜視図(上図)および側面図(下図)である。
【
図3】(a)
図2(a)に示す比較例の試料、(b)
図2(b)に示すFGM1、(c)
図2(c)に示すFGM2、(d)
図2(d)に示すFGM3の、断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図4】本発明の実施の形態の発電用複合材料の、実施例1の比較例であるBTOの体積分率が一定の各試料の、示差走査熱量測定によるDSC曲線を示すグラフである。
【
図5】本発明の実施の形態の発電用複合材料の、実施例1の各試料の圧電定数d
33を示すグラフである。
【
図6】本発明の実施の形態の発電用複合材料の、実施例1の衝撃発電試験の試験装置を示す全体構成図である。
【
図7】本発明の実施の形態の発電用複合材料の、実施例1の比較例であるBTOの体積分率が30 vol.%の試料、FGM1、FGM2、FGM3の、衝撃発電試験による出力電圧(Output voltage)を示すグラフである。
【
図8】本発明の実施の形態の発電用複合材料の、実施例1の振動発電試験の試験装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図9】本発明の実施の形態の発電用複合材料の、実施例1の比較例であるBTOの体積分率が30 vol.%の試料、FGM1、FGM2、FGM3の、振動発電試験による各周波数での出力電圧(Output voltage)を示すグラフである。
【
図10】本発明の実施の形態の発電用複合材料の、(a)有限要素解析モデルを示す正面図、(b)有限要素解析モデルを示す斜視図および境界条件である。
【
図11】
図10に示す有限要素解析モデルによる解析結果を示す、(a)6つのBTOの体積分率の分布パターンならびに、各パターンでの電位差、(b)6つのBTOの体積分率の分布パターンおよび、各パターンでの電位差である。
【
図12】本発明の実施の形態の発電用複合材料の製造方法の、実施例3でのフローを示す斜視図である。
【
図13】本発明の実施の形態の発電用複合材料の製造方法の、実施例3の(a)試料AFGC1、(b)試料AFGC2、(c)試料AFGC3の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真、(d) (b)の中心部分を拡大したSEM写真、(e) (b)の中心近傍を拡大したSEM写真である。
【
図14】本発明の実施の形態の発電用複合材料の、実施例3の試料AFGC1および試料FGM1(図中では、FGC1と記載)の、振動発電試験による各周波数(Vibration frequency)での出力電圧(Output voltage)を示すグラフである。
【
図15】本発明の実施の形態の発電用複合材料の、実施例3の試料AFGC1の耐久試験による、各経過時間(Time)が(a)0~4005 secのとき、(b)4000~8005 secのときの出力電圧(Real-time output voltage)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、実施例等に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の実施の形態の発電用複合材料は、所定の厚みを有する板状を成している。本発明の実施の形態の発電用複合材料は、圧電性を有するセラミックと、圧電性を有するポリマーとを含み、厚み方向に沿ってセラミックの含有率が連続的に徐々に変化するよう構成されている。
【0027】
セラミックは、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3;BTO)、ニオブ酸カリウムナトリウム[(K,Na)NbO3;KNN]、チタン酸ビスマスナトリウム[(Bi1/2Na1/2)Ti3;BNT]、ビスマスフェライト(BiFeO3;BF)などのペロブスカイト構造を有するものから成り、ポリマーは、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)や、ポリフッ化ビニリデンと三フッ化エチレンとの共重合体であるP(VDF-TrFE)などから成っている。
【0028】
また、本発明の実施の形態の発電用複合材料は、例えば、厚み方向に沿って、セラミックの含有率が徐々に増加または減少するよう構成されていてもよく、厚み方向に沿ったセラミックの含有率の分布が、厚み方向の中心面に対して面対称を成すよう構成されていてもよい。
【0029】
本発明の実施の形態の発電用複合材料は、本発明の実施の形態の発電用複合材料の製造方法により製造することができる。すなわち、本発明の実施の形態の発電用複合材料の製造方法では、まず、圧電性を有するセラミックと、圧電性を有するポリマーとを含み、セラミックの含有率が異なる複数種類の圧電薄膜を作製する。このとき、薄く、濃度が均一な圧電薄膜を作製可能であれば、いかなる方法で圧電薄膜を作製してもよい。例えば、溶媒中にセラミックとポリマーとを加えて撹拌した混合液を用いて、スピンコート法により各圧電薄膜を作製してもよい。
【0030】
圧電薄膜を作製後、その厚み方向に沿ってセラミックの含有率が徐々に変化するよう積層した後、熱処理を行う。このとき、例えば、ホットプレスにより、積層した各圧電薄膜をその厚み方向に圧縮した状態で加熱してもよく、積層した各圧電薄膜を圧縮せずに加熱してもよい。また、各圧電薄膜の再結晶温度よりも低い温度で加熱することにより、再結晶による圧電特性の低下を防ぐことができる。また、熱処理により、セラミックの含有率が圧電薄膜の境界で急激に変化せず、連続的に徐々に変化するよう構成することができる。こうして、本発明の実施の形態の発電用複合材料を製造することができる。
【0031】
本発明の実施の形態の発電用複合材料は、セラミックだけでなく、柔軟性を有するポリマーも含んでいるため、繰り返し荷重に弱いセラミックのみから成る圧電材料と比べて耐久性が高い。また、弾性を有する基板などに貼り付ける必要もないため、振動や衝撃にも強く、優れた耐久性を有している。また、セラミックの含有率が急激に変化する界面などでは割れが発生しやすいが、本発明の実施の形態の発電用複合材料は、セラミックの含有率が連続的に徐々に変化するよう構成されており、セラミックの含有率が急激に変化する界面が存在していないため、圧電薄膜の境界などで割れや剥がれが発生しにくく、耐久性が高い。
【0032】
本発明の実施の形態の発電用複合材料は、セラミックだけでなく、ポリマーも圧電性を有しているため、セラミックと圧電性を有さない材料との複合材料と比べて、優れた圧電特性を有している。本発明の実施の形態の発電用複合材料は、圧電定数が異なるセラミックとポリマーとを含み、セラミックの含有率が徐々に変化するよう構成されているため、その含有率の値の大きさや含有率の変化の状態によって、様々な特性を有することができる。
【0033】
なお、本発明の実施の形態の発電用複合材料の製造方法は、複数種類の圧電薄膜を作製した後、各圧電薄膜を積層するのではなく、製造した圧電薄膜の上に、順次、圧電薄膜を作製していくことにより、複数種類の圧電薄膜を積層してもよい。この場合、作製した各圧電薄膜を積層する工程を省略することができ、比較的短い時間で効率よく製造することができる。また、この場合にも、スピンコート法により各圧電薄膜を作製することができる。
【実施例0034】
本発明の実施の形態の発電用複合材料の製造方法により発電用複合材料を製造し、圧電定数の測定および発電試験を行った。
【0035】
[発電用複合材料の製造]
発電用複合材料を製造するための原料のうち、圧電性を有するセラミックとして、BaTiO3(BTO、サイズ 1.04μm;日本化学工業株式会社製)を用い、圧電性を有するポリマーとして、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)の共重合体であるポリフッ化ビニリデン三フッ化エチレン P(VDF-TrFE)(株式会社イデアルスター製「ispp015-1」)を用いた。BTOは、身体に有毒な鉛を含まず、ペロブスカイト構造を有する強誘電体であり、分極することで圧電性を示す材料である。また、P(VDF-TrFE)は、分極すると、水素の電気陰性度とフッ素の電気陰性度との差により電荷に偏りが生じて、圧電性を示すものである。
【0036】
図1に示すように、発電用複合材料の製造では、まず、粉末状のP(VDF-TrFE)を、溶媒のジメチルホルムアミド(DMF、富士フイルム株式会社製)に、P(VDF-TrFE):DMF=10:90の重量比で加え、撹拌器(IKA-Werke GmbH & Co. KG社製「C-MAG HS4」)により、60℃で20分間撹拌(Stirring)した。その後、その溶液にBTOのナノ粒子(nanoparticle)を加え、撹拌機により室温で1時間撹拌(Stirring)し、さらに40℃で2時間超音波(Ultrasonic)を照射して撹拌した。撹拌後の混合液を、スピンコーター(ミカサ株式会社製「MS-B150」)により、直径10 mmのシリコンウエハー上に薄く広げ、90℃のホットプレートで加熱して溶媒を蒸発させて、BaTiO3/P(VDF-TrFE)から成る圧電薄膜11を作製した。このスピンコート法(Spin coating)では、スピンコーターを、1000 rpm/secの回転速度で5秒間回転させた後、-200 rpm/secで減速させた。
【0037】
圧電薄膜11は、P(VDF-TrFE)に対して、BTOの体積分率がそれぞれ、0 vol.%、10 vol.%、20 vol.%、30 vol.%、40 vol.%、50 vol.%の6種類を作製した。各圧電薄膜11の平均厚さは、それぞれ 0.010 mm、0.012 mm、0.014 mm、0.016 mm、0.018 mm、0.020mmであった。
【0038】
作製した各種の圧電薄膜11を、その厚み方向に沿って複数枚積層(Laminating)し、ホットプレス(Hot press)により、厚み方向に 7.5 MPaで圧縮した状態で、130℃で30秒間加熱した。こうして、複数種類の発電用複合材料の試料10を製造した。ホットプレス後、各試料10を、所望の大きさの矩形状に切断した。なお、厚みは、0.15 mmである。
【0039】
試料10は、まず、
図2(a)に示すように、BTOの体積分率が一定の試料10(比較例)として、BTOの体積分率が同じ圧電薄膜11のみを積層したもの、すなわち、0 vol.%、10 vol.%、20 vol.%、30 vol.%、40 vol.%、50 vol.%の6種類を製造した。これらの試料10では、BTOの体積分率によって圧電薄膜11の膜厚が異なるため、ホットプレス後の厚さが0.15 mm になるよう、積層させる枚数をそれぞれ18枚、14枚、13枚、12枚、9枚、8枚としている。なお、
図2(a)には、BTOの体積分率が30 vol.%の試料10を示している。
【0040】
また、
図2(b)~(d)に示すように、BTOの体積分率が徐々に変化する試料10として、積層体の一方の表面から他方の表面に向かって、BTOの体積分率が0 vol.%から50 vol.%まで徐々に増加するよう、圧電薄膜11を積層したもの(以下、FGM1と呼ぶ)、積層体の厚み方向の中心面に対して面対称になるよう、両側の表面から中心面に向かって、BTOの体積分率が50 vol.%から0 vol.%まで徐々に減少するよう圧電薄膜11を積層したもの(以下、FGM2と呼ぶ)、積層体の厚み方向の中心面に対して面対称になるよう、両側の表面から中心面に向かって、BTOの体積分率が0 vol.%から50 vol.%まで徐々に増加するよう圧電薄膜11を積層したもの(以下、FGM3と呼ぶ)の3種類を製造した。これら3種類の試料10の、BTOの平均体積分率は、30 vol.%である。
【0041】
製造した
図2(a)~(d)に示す各試料10をエポキシ樹脂で覆い、走査型電子顕微鏡(SEM;株式会社日立ハイテク製「SU-70」)により、断面観察を行った。その結果を、それぞれ
図3(a)~(d)に示す。
図3(a)~(d)に示すように、各試料10とも、積層した圧電薄膜11の境界が認められず、一体化していることが確認された。特に、
図3(b)~(d)に示す各試料10では、図中の矢印の方向に沿って、BTOの体積分率が徐々に増加している様子が確認された。
【0042】
BTOの体積分率が一定の各試料10に対し、示差走査熱量測定分析装置(ネッチ・ジャパン株式会社製「DSC 404F3」)を用いて、示差走査熱量測定(DSC)を行った。その結果を、
図4に示す。
図4に示すように、各試料10の融点は、150℃~155℃であり、BTOの体積分率が大きくなるほど、融点が低くなることが確認された。また、再結晶温度は、140℃であることも確認された。このことから、130℃でのホットプレスは、試料10の結晶構造に影響を与えていないといえる。
【0043】
[分極処理]
製造した各試料10に圧電性を発現させるために、コロナ放電システム(エレメント有限会社製「ELC-01N」)を用いて、コロナ分極法により分極処理を行った。コロナ分極法では、裏面を接地すると共に、ホットプレートで加熱した状態の各試料10に対して、各試料10の表面から離れて設置されたタングステン針に高電圧を印加することにより、各試料10とタングステン針との間にコロナ放電を起こす。これにより、各試料10の表面にタングステン針から電荷が吹き付けられるため、各試料10の表面と裏面との間に電界が発生し、分極することができる。なお、タングステン針に印加する電圧を、7.0 kV、ホットプレートの温度を、65℃とした。
【0044】
[圧電特性の測定]
厚み方向に分極した圧電材料では、電界がゼロのとき、厚み方向に応力Tを加えたときに発生する電界密度Dは、圧電定数d33を用いて(1)式で表される。また、(1)式から、圧電定数d33は、(2)式で求められる。
D=d33×T (1)
d33=D/T=(Q/A)/(F/A)=Q/F (2)
ここで、Qは表面電荷(C)、Aは電極面積(m2)、Fは印加した交番力(N)である。
【0045】
製造した各試料10の裏面に交番力Fを印加して、各試料10の表面に取り付けた電極により、発生電荷Qを測定し、(2)式により圧電定数d
33を求めた。測定には、圧電d
33メーター(Sinocera Piezotronics INC.製「YE2730A」)を用いた。測定からは、正および負の圧電定数が得られるため、正の圧電定数と負の圧電定数との平均値を、圧電定数d
33とした。求められた各試料10の圧電定数d
33を、
図5に示す。
【0046】
図5に示すように、BTOの体積分率が一定の各試料10では、P(VDF-TrFE)が負の圧電定数d
33を有し、BTOが正の圧電定数d
33を有するため、BTOの体積分率が 0 vol.%のときには、圧電定数d
33が負であるが、BTOの体積分率が大きくなるに従って、圧電定数d
33が負から正に大きくなっていく様子が確認された。また、BTOの体積分率が 10 vol.%程度のとき、圧電定数d
33がゼロになることが確認された。
【0047】
また、
図5に示すように、BTOの体積分率が徐々に変化する各試料(FGM1, FGM2, FGM3)10では、BTOの平均体積分率が 30 vol.%であるにもかかわらず、圧電定数d
33が負になっていることが確認された。FGM1では、BTOの体積分率が一定の 0 vol.%の試料10とほぼ同じ大きさの負の圧電定数d
33が得られ、FGM2およびFGM3では、FGM1よりさらに大きい負の圧電定数d
33が得られることが確認された。これは、BTOの体積分率が徐々に変化する試料10では、ホットプレス時に内部応力が発生することが影響している、すなわち内部応力が圧電セラミックと圧電ポリマーとを分極しやすくしていると考えられる。
【0048】
次に、BTOの体積分率が徐々に変化する各試料(FGM1, FGM2, FGM3)の比誘電率εγを、LCRメーター(株式会社エヌエフ回路設計ブロック社製「ZM2371」)を用いて測定した。その結果、各試料FGM1~3の比誘電率εγは、約17~18であった。
【0049】
以上の結果から、各試料FGM1~3の性能指数FoM(figure of merit)を求めた。FoMは、d×g=d2×εで求めることができる。ここで、dは圧電ひずみ定数、gは圧電電圧定数、εは誘電率である。FoMは、33モードでの圧電材料のエネルギー生成効率を表しており、FoMが大きいほど環境発電(エネルギーハーベスティング)効率が高くなる。各試料のFoMは、FGM1が 279、FGM2が 402、FGM3が 551であった。このことから、各試料FGM1~3のうち、FGM3が最も環境発電効率が高いと考えられる。
【0050】
[衝撃発電試験]
BTOの体積分率が一定の30 vol.%の試料10、および、BTOの体積分率が徐々に変化する各試料10について、衝撃発電試験を行った。
図6に示すように、試験では、各試料10の表面をたたいたときの衝撃による発電量を調べるために、10 mm×20 mmの矩形状に切断した各試料10を、キーボード1のエンターキー1aに張り付け、エンターキー1aを押したときの出力電圧(Output voltage)を、オシロスコープ(横河電機株式会社製「DL850E」)2により測定した。測定は、各試料に対して200回行い、その平均値を測定値とした。測定結果を、
図7に示す。
【0051】
図7に示すように、BTOの体積分率が徐々に変化する各試料(FGM1, FGM2, FGM3)10の方が、BTOの体積分率が一定の30 vol.%の試料10と比べて、出力電圧が大きくなっており、発電量が大きいことが確認された。また、BTOの体積分率が徐々に変化する各試料10の中でも、FGM3の出力電圧が特に大きく、BTOの体積分率が一定の30 vol.%の試料10の約2倍の電力が得られることが確認された。
【0052】
[振動発電試験]
BTOの体積分率が一定の30 vol.%の試料10、および、BTOの体積分率が徐々に変化する各試料10について、振動発電試験を行った。
図8に示すように、試験では、まず、40 mm×10 mmの矩形板状に切断した各試料10の一端を、加振機(Labworks社製「ET-132」)3に取り付け、他端に1.5 gの錘4を取り付けた。ファンクションジェネレーター(株式会社ケンウッド製「FG-281」)5により、所望の周波数で各試料10を振動させて、データロガー(株式会社キーエンス製「Keyence NR-500」)6により出力電圧を測定した。試験では、振幅を0.9 mmとし、周波数を 0~68 Hzの範囲で変化させて、各周波数での出力電圧(Output voltage)を測定した。測定結果を、
図9に示す。
【0053】
図9に示すように、各試料10とも、周波数が大きくなるに従って、出力電圧が大きくなっていることが確認された。例えば、周波数が68 Hzのときの各試料10の出力電圧は、BTOの体積分率が一定の30 vol.%の試料10が 0.973 mV、FGM1が 9.024 mV、FGM2が 2.374 mV、FGM3が 1.987 mVであった。また、BTOの体積分率が徐々に変化する試料10のFGM1の出力電圧が非常に大きく、周波数が約30 Hz以上のとき、他の各試料10の5~10倍の電力が得られることが確認された。これは、FGM1では、厚みの中心面に対してBTOの体積分率が非対称であるため、振動したときに一方の表面(例えば、曲げの外側になる面)に発生する電荷と、他方の表面(例えば、曲げの内側になる面)に発生する電荷とが打ち消しあわず、出力電圧が大きくなったと考えられる。これに対し、他の各試料10では、厚みの中心面に対してBTOの体積分率が対称であるため、振動したときに一方の表面に発生する電荷と、他方の表面に発生する電荷とが打ち消しあい、出力電圧が小さくなったと考えられる。