(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053580
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】電気化学反応モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20240409BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20240409BHJP
【FI】
H01M8/04 J
H01M8/04 N
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159889
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】519322392
【氏名又は名称】森村SOFCテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤木 陽祐
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA07
5H127AC02
5H127BA05
5H127BA13
5H127BA18
5H127BA34
5H127BA47
5H127BB02
5H127BB19
5H127BB27
5H127EE03
(57)【要約】
【課題】電気化学反応モジュールの運転状態を安定化する。
【解決手段】電気化学反応モジュールは、電気化学反応セルスタックと、酸化剤ガス供給外側部材と、酸化剤ガス排出外側部材と、カバー部材と、補助流路部材と、を備える。電気化学反応セルスタックは、電解質層と、電解質層を挟んで互いに対向する空気極および燃料極と、を含む単セルを備える。酸化剤ガス供給外側部材は、電気化学反応セルスタックに酸化剤ガスを供給する一連のガス流路である酸化剤ガス供給流路を形成する。酸化剤ガス排出外側部材は、電気化学反応セルスタックから酸化剤ガスを排出する一連のガス流路である酸化剤ガス排出流路を形成する。カバー部材は、電気化学反応セルスタックの外側に取り付けられ、酸化剤ガス収容空間を形成する。補助流路部材は、酸化剤ガス収容空間と、酸化剤ガス供給流路および酸化剤ガス排出流路からなる酸化剤ガス流路と、を接続する補助流路を形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質層と、前記電解質層を挟んで互いに対向する空気極および燃料極と、を含む単セルと、前記空気極に面するガス流路を画定する空気極側フレームと、をそれぞれ有する複数の電気化学反応単位が積層されてなる電気化学反応ブロックを備える電気化学反応セルスタックであって、前記ガス流路に酸化剤ガスを供給する空気極側ガス供給マニホールドと、前記ガス流路から前記酸化剤ガスを排出する空気極側ガス排出マニホールドと、が形成された、電気化学反応セルスタックと、
前記空気極側ガス供給マニホールドに前記酸化剤ガスを供給する一連のガス流路である酸化剤ガス供給流路を形成する酸化剤ガス供給外側部材と、
前記空気極側ガス排出マニホールドから前記酸化剤ガスを排出する一連のガス流路であって、前記空気極側ガス排出マニホールドと連続する酸化剤ガス排出流路を形成する酸化剤ガス排出外側部材と、
を備える、電気化学反応モジュールにおいて、
前記空気極側フレームにおける前記電気化学反応セルスタックの外周面を形成する部分の少なくとも一部を覆うようにして前記電気化学反応セルスタックの外側に取り付けられ、前記電気化学反応セルスタックの外側に酸化剤ガス収容空間を形成するカバー部材と、
前記酸化剤ガス収容空間と、前記酸化剤ガス供給流路および前記酸化剤ガス排出流路からなる酸化剤ガス流路と、を接続する補助流路を形成する補助流路部材と、を備える、
ことを特徴とする、電気化学反応モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の電気化学反応モジュールにおいて、
前記酸化剤ガス排出外側部材は、前記酸化剤ガスを燃焼する燃焼器を収容し、前記燃焼器による可燃性ガスの燃焼空間を内部に形成する容器と、前記空気極側ガス排出マニホールドと前記燃焼器とを接続する接続流路を形成する酸化剤ガス接続部材と、を備え、
前記補助流路は、前記酸化剤ガス収容空間と、前記酸化剤ガス排出流路を構成する前記燃焼空間と前記接続流路との少なくとも一方と、を接続する、
ことを特徴とする、電気化学反応モジュール。
【請求項3】
請求項1に記載の電気化学反応モジュールにおいて、
前記補助流路は、前記酸化剤ガス収容空間と、前記酸化剤ガス供給流路と、を接続する、
ことを特徴とする、電気化学反応モジュール。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電気化学反応モジュールにおいて、
前記カバー部材は、前記空気極側フレームにおける前記電気化学反応セルスタックの外周面を形成する部分の全体を覆うようにして前記電気化学反応セルスタックの外側に取り付けられる、
ことを特徴とする、電気化学反応モジュール。
【請求項5】
請求項1に記載の電気化学反応モジュールにおいて、
前記カバー部材は、前記電気化学反応セルスタックにおける前記単セルとは電気的に絶縁されている、
ことを特徴とする、電気化学反応モジュール。
【請求項6】
請求項1に記載の電気化学反応モジュールにおいて、
前記カバー部材は、前記電気化学反応セルスタックの全体を覆うようにして取り付けられる、
ことを特徴とする、電気化学反応モジュール。
【請求項7】
請求項1に記載の電気化学反応モジュールにおいて、さらに、
前記単セルに電気的に接続され、少なくとも一部が前記酸化剤ガス収容空間に覆われる端子部を備え、
前記カバー部材と、前記端子部とは、電気的に絶縁されている、
ことを特徴とする、電気化学反応モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、電気化学反応モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
水素と酸素との電気化学反応を利用して発電を行う燃料電池の種類の1つとして、固体酸化物形の燃料電池(以下、「SOFC」という。)が知られている。SOFCは、例えば、燃料電池スタックと、その他の装置とを備える燃料電池モジュールの形態で利用される(例えば、特許文献1参照)。その他の装置は、例えば、燃料電池スタックに供給されるガス(燃料ガス)を生成するための改質器や燃料電池スタックから排出されるガス(燃料オフガスおよび酸化剤オフガス)を燃焼させるための燃焼器である。
【0003】
燃料電池スタックは、複数の発電単位を備える構造体である。各発電単位は、電解質層と、電解質層を挟んで互いに対向する空気極および燃料極と、を含む燃料電池単セル(以下、単に「単セル」という。)を有する。発電に利用される酸化剤ガスは、酸化剤ガス供給流路を介して燃料電池スタックに供給され、各単セルにおいて空気極に面したガス流路を通過し、酸化剤ガス排出流路を介して燃料電池スタックから排出される。空気極に面するガス流路は、例えば、マイカ等の絶縁体で構成された空気極側フレームによって画定されており、燃料電池スタックの外側に酸化剤ガスが漏出しないよう密封されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
燃料電池の運転中に、空気極側フレームとその周辺部材との間で隙間が生じた場合、燃料電池スタック内のガス流路を流れる酸化剤ガスは、燃料電池スタックから漏出し、漏出した酸化剤ガスはそのまま大気へと放出される。この場合、本来燃料電池スタックに供給されるはずであった酸化剤ガスの供給量が減少し、燃料電池モジュールの運転状態を不安定化させるという課題がある。
【0006】
なお、このような課題は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う電解セル(以下、「SOEC」という。)の一形態である電解セルスタックを備える電解モジュールにも共通の課題である。なお、本明細書では、燃料電池単セルと電解単セルとをまとめて電気化学反応単セルといい、燃料電池発電単位と電解セル単位とをまとめて電気化学反応単位といい、燃料電池スタックと電解セルスタックとをまとめて電気化学反応セルスタックといい、燃料電池モジュールと電解モジュールとをまとめて電気化学反応モジュールという。また、このような課題は、SOFCやSOECに限らず、他のタイプの燃料電池や電解セルにも共通の課題である。
【0007】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
(1)本明細書に開示される電気化学反応モジュールは、電気化学反応セルスタックと、酸化剤ガス供給外側部材と、酸化剤ガス排出外側部材と、カバー部材と、補助流路部材と、を備える。前記電気化学反応セルスタックは、電解質層と、前記電解質層を挟んで互いに対向する空気極および燃料極と、を含む単セルと、前記空気極に面するガス流路を画定する空気極側フレームと、をそれぞれ有する複数の電気化学反応単位が積層されてなる電気化学反応ブロックを備え、前記ガス流路に酸化剤ガスを供給する空気極側ガス供給マニホールドと、前記ガス流路から前記酸化剤ガスを排出する空気極側ガス排出マニホールドと、が形成されている。前記酸化剤ガス供給外側部材は、前記空気極側ガス供給マニホールドに前記酸化剤ガスを供給する一連のガス流路である酸化剤ガス供給流路を形成する。前記酸化剤ガス排出外側部材は、前記空気極側ガス排出マニホールドから前記酸化剤ガスを排出する一連のガス流路であって、前記空気極側ガス排出マニホールドと連続する酸化剤ガス排出流路を形成する。前記カバー部材は、前記空気極側フレームにおける前記電気化学反応セルスタックの外周面を形成する部分の少なくとも一部を覆うようにして前記電気化学反応セルスタックの外側に取り付けられ、前記電気化学反応セルスタックの外側に酸化剤ガス収容空間を形成する。前記補助流路部材は、前記酸化剤ガス収容空間と、前記酸化剤ガス供給流路および前記酸化剤ガス排出流路からなる前記酸化剤ガス流路と、を接続する補助流路を形成する。
【0010】
本電気化学反応モジュールによれば、カバー部材を備えることにより、電気化学反応セルスタックの外周面から酸化剤ガスが漏出した際に、漏出した酸化剤ガスを酸化剤ガス収容空間に回収することができ、酸化剤ガスが大気へと放出されることを抑制できる。さらに、補助流路部材を備えることにより、酸化剤ガス収容空間に回収された酸化剤ガスを、酸化剤ガス流路へと供給することができる。そのため、電気化学反応セルスタックから酸化剤ガスがリークした場合であっても、電気化学反応セルスタックの運転状態を安定化することができる。
【0011】
(2)上記電気化学反応モジュールにおいて、前記酸化剤ガス排出外側部材は、前記酸化剤ガスを燃焼する燃焼器を収容し、前記燃焼器による可燃性ガスの燃焼空間を内部に形成する容器と、前記空気極側ガス排出マニホールドと前記燃焼器とを接続する接続流路を形成する酸化剤ガス接続部材と、を備える。前記補助流路は、前記酸化剤ガス収容空間と、前記酸化剤ガス排出流路を構成する前記燃焼空間と前記接続流路との少なくとも一方と、を接続する構成としてもよい。本電気化学反応モジュールによれば、電気化学反応セルスタックから漏出した酸化剤ガスを回収し、酸化剤ガスを燃焼器の作動により生ずる燃焼空間へ供給することができる。そのため、電気化学反応セルスタックから酸化剤ガスがリークした場合であっても、燃焼器を安定的に運転することができ、電気化学反応セルスタックの運転状態をより効果的に安定化することができる。
【0012】
(3)上記電気化学反応モジュールにおいて、前記補助流路は、前記酸化剤ガス収容空間と、前記酸化剤ガス供給流路と、を接続する構成としてもよい。本電気化学反応モジュールによれば、電気化学反応セルスタックから漏出した酸化剤ガスを回収し、再び電気化学反応セルスタックへ供給することができる。そのため、電気化学反応セルスタックから酸化剤ガスがリークした場合であっても、未反応の酸化剤ガスを再び電気化学反応単セルに供することができ、電気化学反応セルスタックの運転状態をより効果的に安定化することができる。
【0013】
(4)上記電気化学反応モジュールにおいて、前記カバー部材は、前記空気極側フレームにおける前記電気化学反応セルスタックの外周面を形成する部分の全体を覆うようにして前記電気化学反応セルスタックの外側に取り付けられる構成としてもよい。本電気化学反応モジュールによれば、各発電単位から漏出する酸化剤ガスを漏れなく回収することができ、電気化学反応セルスタックの運転状態をより効果的に安定化することができる。
【0014】
(5)上記電気化学反応モジュールにおいて、前記カバー部材は、前記電気化学反応セルスタックにおける前記単セルとは電気的に絶縁されている構成としてもよい。本電気化学反応モジュールによれば、カバー部材の取り付けによる電気化学反応セルスタックの短絡を防止することができる。
【0015】
(6)上記電気化学反応モジュールにおいて、前記カバー部材は、前記電気化学反応セルスタックの全体を覆うようにして取り付けられる構成としてもよい。本電気化学反応モジュールによれば、電気化学反応セルスタックの外周面のみならず、上面および下面から漏出した酸化剤ガスも漏れなく回収することができ、電気化学反応セルスタックの運転状態をより効果的に安定化することができる。
【0016】
(7)上記電気化学反応モジュールにおいて、さらに、前記単セルに電気的に接続され、少なくとも一部が前記酸化剤ガス収容空間に覆われる端子部を備える。前記カバー部材と、前記端子部とは、電気的に絶縁されている構成としてもよい。本電気化学反応モジュールによれば、カバー部材の取り付けによる端子部の短絡を防止することができる。
【0017】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、電気化学反応モジュールおよびその製造方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態における燃料電池モジュール10の構成を模式的に示す説明図
【
図2】第1実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図
【
図3】
図2のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図
【
図4】
図2のIV-IVの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図
【
図5】
図2のV-Vの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図
【
図6】
図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図
【
図7】
図4に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図
【
図8】
図5に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図
【
図9】第1実施形態における燃料電池モジュール10のカバー部材510および補助流路部材520の構成
【
図10】第2実施形態における燃料電池モジュール10aの構成を模式的に示す説明図
【
図11】第3実施形態における燃料電池モジュール10bの構成を模式的に示す説明図
【
図12】第4実施形態における燃料電池モジュール10cの構成を模式的に示す説明図
【
図13】第5実施形態における燃料電池モジュール10dの構成を模式的に示す説明図
【
図14】第6実施形態における燃料電池モジュール10eのカバー部材510eおよび補助流路部材520eの構成
【発明を実施するための形態】
【0019】
A.第1実施形態:
A-1.燃料電池モジュール10の構成:
図1は、第1実施形態における燃料電池モジュール10の構成を模式的に示す説明図である。燃料電池モジュール10は、燃料電池スタック100と、その他の装置(後述する改質・加熱器330等)とを備える。以下では、まず燃料電池スタック100の構成について説明し、その後、燃料電池モジュール10を構成する他の装置の構成について説明する。燃料電池モジュール10は、特許請求の範囲における電気化学反応モジュールの一例である。燃料電池スタック100は、特許請求の範囲における電気化学反応セルスタックの一例である。
【0020】
A-2.燃料電池スタック100の構成:
図2は、第1実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図であり、
図3は、
図2のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、
図4は、
図2のIV-IVの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、
図5は、
図2のV-Vの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向と呼び、Z軸負方向を下方向と呼ぶものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。また、本明細書では、便宜的に、燃料電池スタック100の外観を構成する面のうち、XY平面に平行なZ軸正方向の面を上面と呼び、XY平面に平行なZ軸負方向の面を下面と呼び、XY平面に垂直な各面を総称して外周面と呼ぶ。
図6以降についても同様である。
【0021】
燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では7つの)燃料電池発電単位(以下、単に「発電単位」という。)102と、末端セパレータ210と、上端プレート220と、下端プレート189と、一対のターミナルプレート410,420と、一対の電流線414,424と、絶縁部200と、一対のエンドプレート104,106とを備える。
【0022】
7つの発電単位102は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向)に積層されて配置されている。一対のターミナルプレート410,420のうちの一方(以下、「上側ターミナルプレート410」という。)は、7つの発電単位102から構成される集合体(以下、「発電ブロック103」という。)の上側に配置されており、一対のターミナルプレート410,420のうちの他方(以下、「下側ターミナルプレート420」という。)は、発電ブロック103の下側に配置されている。末端セパレータ210は、上側ターミナルプレート410の上側に配置されており、下端プレート189は、下側ターミナルプレート420の下側に配置されている。絶縁部200は、末端セパレータ210の上側に配置されている。一対のエンドプレート104,106のうちの一方(以下、「上側エンドプレート104」という。)は、絶縁部200の上側に配置されており、一対のエンドプレート104,106のうちの他方(以下、「下側エンドプレート106」という。)は、下端プレート189の下側に配置されている。一対のエンドプレート104,106は、発電ブロック103と、末端セパレータ210と、下端プレート189と、一対のターミナルプレート410,420と、絶縁部200とを上下から挟むように配置されている。発電単位102は、特許請求の範囲における電気化学反応単位の一例である。発電ブロック103は、特許請求の範囲における電気化学反応ブロックの一例である。ターミナルプレート410,420は、特許請求の範囲における端子部の一例である。
【0023】
図2および
図5に示すように、燃料電池スタック100を構成する各層(発電ブロック103、末端セパレータ210、下端プレート189、一対のターミナルプレート410,420、および、絶縁部200)のZ軸方向回りの外周の4つの角部付近には、各層を上下方向に貫通する孔が形成されている。上側エンドプレート104のZ軸方向回りの外周の4つの角部付近には、孔が貫通形成されており、下側エンドプレート106のZ軸方向回りの外周の4つの角部付近には、孔が貫通形成されている。これらの各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、上下方向に延びるボルト孔109を構成している。以下の説明では、ボルト孔109を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、ボルト孔109と呼ぶ場合がある。
【0024】
各ボルト孔109にはボルト22が挿入されている。各ボルト22の上端部は、上側エンドプレート104の孔を介してナット24のネジ孔に螺合しており、各ボルト22の下端部は、下側エンドプレート106の孔を介してナット24のネジ孔に螺合している。このような構成のボルト22およびナット24により、燃料電池スタック100の各層が一体に締結されている。
【0025】
また、
図2から
図4に示すように、燃料電池スタック100を構成する各層(各発電単位102、下側ターミナルプレート420、下端プレート189、下側エンドプレート106)のZ軸方向回りの周縁部には、各層を上下方向に貫通する4つの孔が形成されており、各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、最上部の発電単位102から下側エンドプレート106にわたって上下方向に延びる連通孔108を構成している。以下の説明では、連通孔108を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、連通孔108と呼ぶ場合がある。なお、以下、連通孔108のうち、下側エンドプレート106に形成された孔を、特にエンド貫通孔107という。
【0026】
図2および
図3に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周を構成する1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸正方向側の辺)の付近に位置する1つの連通孔108は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが導入され、その酸化剤ガスOGを各発電単位102の後述する空気室166に供給するガス流路である空気極側ガス供給マニホールド161として機能し、該辺の反対側の辺の付近に位置する1つの連通孔108は、各発電単位102の空気室166から排出されたガスである酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へ排出するガス流路である空気極側ガス排出マニホールド162として機能する。なお、酸化剤ガスOGとしては、例えば空気が使用される。空気室166は、特許請求の範囲におけるガス流路の一例である。
【0027】
また、
図2および
図4に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周を構成する辺の内、上述した空気極側ガス排出マニホールド162として機能する連通孔108に最も近い辺の付近に位置する他の1つの連通孔108は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが導入され、その燃料ガスFGを各発電単位102の後述する燃料室176に供給するガス流路である燃料極側ガス供給マニホールド171として機能し、上述した空気極側ガス供給マニホールド161として機能する連通孔108に最も近い辺の付近に位置する他の1つの連通孔108は、各発電単位102の燃料室176から排出されたガスである燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へ排出するガス流路である燃料極側ガス排出マニホールド172として機能する。なお、燃料ガスFGとしては、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。
【0028】
図2から
図4に示すように、燃料電池スタック100には、4つのガス通路部材27が設けられている。各ガス通路部材27は、例えば金属により形成され、中空筒状の本体部28とフランジ部29とを有している。本体部28には、上下方向に貫通するガス貫通孔26が形成されている。本体部28の上端は、下側エンドプレート106に形成されたエンド貫通孔107内に挿入され、例えば溶接により接合されている。フランジ部29は、本体部28の下端側から上下方向に垂直な面方向に張り出すように設けられている。フランジ部29の上下方向視での形状は略矩形状であり、フランジ部29の4つの角部のそれぞれにはボルト孔29A(
図2参照)が形成されている。各ボルト孔29Aには、燃料電池スタック100を外部装置に接続するためのボルト(図示せず)が挿入される。
【0029】
図3に示すように、空気極側ガス供給マニホールド161の位置に配置されたガス通路部材27のガス貫通孔26は、空気極側ガス供給マニホールド161に連通しており、空気極側ガス排出マニホールド162の位置に配置されたガス通路部材27のガス貫通孔26は、空気極側ガス排出マニホールド162に連通している。また、
図4に示すように、燃料極側ガス供給マニホールド171の位置に配置されたガス通路部材27のガス貫通孔26は、燃料極側ガス供給マニホールド171に連通しており、燃料極側ガス排出マニホールド172の位置に配置されたガス通路部材27のガス貫通孔26は、燃料極側ガス排出マニホールド172に連通している。
【0030】
(エンドプレート104,106の構成)
一対のエンドプレート104,106は、Z軸方向視での外形が略矩形の平板状の部材であり、例えば金属により形成されている。一対のエンドプレート104,106の中央付近には、それぞれ、Z軸方向に貫通する孔32,34が形成されている。Z軸方向視で、一対のエンドプレート104,106のそれぞれに形成された孔32,34の内周線は、後述する各単セル110の少なくとも一部を内包している。各ボルト22およびナット24による締結によって生じるZ軸方向の圧縮力は、主として各発電単位102の周縁部(後述する各単セル110より外周側の部分)に作用する。
【0031】
(ターミナルプレート410,420および電流線414,424の構成)
一対のターミナルプレート410,420は、Z軸方向視での外形が略矩形の平板状の部材であり、導電材料により形成されている。上側ターミナルプレート410の中央付近には、Z軸方向に貫通する孔412が形成されている。Z軸方向視で、上側ターミナルプレート410に形成された孔412の内周線は、後述する各単セル110を内包している。Z軸方向視で、一対のターミナルプレート410,420のそれぞれの一方側の端部は、発電ブロック103から側方に張り出している。ターミナルプレート410,420のそれぞれの上面には、溶接部415,425を介して電流線414,424が接続されている。電流線414,424は平板状の部材であり、導電材料により形成されている。電流線414,424のうち、上側にある上側電流線414は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側にある下側電流線424は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。
【0032】
(上端プレート220の構成)
上端プレート220は、Z軸方向視での外形が略矩形の平板状の部材であり、導電材料により形成されている。上端プレート220は、発電ブロック103の上側に配置されており、発電ブロック103における上端に位置するインターコネクタ190(後述)に電気的に接続されている。本実施形態では、上端プレート220とインターコネクタ190とは、後述の燃料極側集電部材144と同一構造の接続部材を介して電気的に接続されている。
【0033】
(末端セパレータ210の構成)
末端セパレータ210は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の貫通孔211が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。末端セパレータ210における貫通孔211を取り囲む部分(以下、「貫通孔周囲部」という。)は、上端プレート220の周縁部における上側の表面に例えば溶接により接合されている。末端セパレータ210は、上端プレート220と発電ブロック103との間の空間と燃料電池スタック100の外部空間とを区画する。
【0034】
末端セパレータ210は、末端セパレータ210の貫通孔周囲部を含む内側部216と、内側部216より外周側に位置する外側部217と、内側部216と外側部217とを連結する連結部218とを備える。本実施形態では、内側部216および外側部217は、Z軸方向に略直交する方向に延びる略平板状である。また、連結部218は、内側部216と外側部217との両方に対して下側に突出するように湾曲した形状である。すなわち、連結部218は、下側に凸、かつ、上側に凹な形状である。連結部218は、Z軸方向における位置が内側部216および外側部217とは異なる部分を含んでいる。
【0035】
(下端プレート189の構成)
下端プレート189は、Z軸方向視での外形が略矩形の平板状の部材であり、例えば絶縁材料により形成されている。下端プレート189の周縁部は、下側ターミナルプレート420と下側エンドプレート106との間に挟み込まれており、これにより、下側ターミナルプレート420と下側エンドプレート106との絶縁性とが確保されている。
【0036】
(絶縁部200の構成)
絶縁部200は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の貫通孔が形成されたフレーム状の部材であり、例えば絶縁材料により形成されている。絶縁部200は、上側エンドプレート104と末端セパレータ210との間に挟み込まれており、これにより、上側エンドプレート104と末端セパレータ210との絶縁性とが確保されている。
【0037】
(発電単位102の構成)
図6は、
図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、
図7は、
図4に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、
図8は、
図5に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。
【0038】
図6から
図8に示すように、発電単位102は、燃料電池単セル(以下、「単セル」という。)110と、単セル用セパレータ120と、空気極側フレーム130と、燃料極側フレーム140と、燃料極側集電部材144と、発電単位102の最上層および最下層を構成する一対のインターコネクタ190および一対のIC用セパレータ180とを備えている。単セル用セパレータ120、空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、IC用セパレータ180におけるZ軸方向回りの周縁部には、各マニホールド161,162,171,172として機能する各連通孔108を構成する孔と、各ボルト孔109を構成する孔とが形成されている。
【0039】
単セル110は、電解質層112と、電解質層112の上側に配置された空気極114と、電解質層112の下側に配置された燃料極116と、電解質層112と空気極114との間に配置された反応防止層118とを備える。なお、本実施形態の単セル110は、燃料極116で単セル110を構成する他の層(電解質層112、空気極114、反応防止層118)を支持する燃料極支持形の単セルである。
【0040】
電解質層112は、Z軸方向視で略矩形の平板形状部材であり、固体酸化物(例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア))を含むように構成されている。すなわち、本実施形態の単セル110は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。空気極114は、Z軸方向視で電解質層112より小さい略矩形の平板形状部材であり、例えばペロブスカイト型酸化物(例えば、LSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物))を含むように構成されている。燃料極116は、Z軸方向視で電解質層112と略同じ大きさの略矩形の平板形状部材であり、例えば、Ni(ニッケル)、Niとセラミック粒子からなるサーメット、Ni基合金等により形成されている。反応防止層118は、Z軸方向視で空気極114と略同じ大きさの略矩形の平板形状部材であり、例えばGDC(ガドリニウムドープセリア)を含むように構成されている。反応防止層118は、空気極114から拡散した元素(例えば、Sr)が電解質層112に含まれる元素(例えば、Zr)と反応して高抵抗な物質(例えば、SrZrO3)が生成されることを抑制する機能を有する。
【0041】
単セル用セパレータ120は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の貫通孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。単セル用セパレータ120における貫通孔121を取り囲む部分(以下、「貫通孔周囲部」という。)は、単セル110(電解質層112)の周縁部における上側の表面に対向している。単セル用セパレータ120は、その対向した部分に配置されたロウ材(例えばAgロウ)により形成された接合部124により、単セル110と接合されている。単セル用セパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画される。
【0042】
単セル用セパレータ120は、単セル用セパレータ120の貫通孔周囲部を含む内側部126と、内側部126より外周側に位置する外側部127と、内側部126と外側部127とを連結する連結部128とを備える。本実施形態では、内側部126および外側部127は、Z軸方向に略直交する方向に延びる略平板状である。また、連結部128は、内側部126と外側部127との両方に対して下側に突出するように湾曲した形状である。すなわち、連結部128は、下側に凸、かつ、上側に凹な形状である。換言すれば、連結部128は、単セル用セパレータ120により区画される空気室166および燃料室176のうちの圧力が高い方である空気室166側に凹な形状である。連結部128は、Z軸方向における位置が内側部126および外側部127とは異なる部分を含んでいる。
【0043】
単セル用セパレータ120における貫通孔121付近には、ガラスを含むガラスシール部125が配置されている。ガラスシール部125は、接合部124に対して空気室166側に位置しており、単セル用セパレータ120の貫通孔周囲部の表面と、単セル110(本実施形態では電解質層112)の表面との両方に接触するように形成されている。ガラスシール部125により、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリーク(クロスリーク)が効果的に抑制される。
【0044】
インターコネクタ190は、略矩形の平板形状の平板部150と、平板部150から空気極114側に突出した複数の略柱状の空気極側集電部134とを有する導電性の部材であり、金属(例えば、フェライト系ステンレス)により形成されている。本実施形態では、インターコネクタ190の表面(空気室166に面する表面)に、例えばスピネル型酸化物により構成された導電性の被覆層194が形成されている。以下では、被覆層194に覆われたインターコネクタ190を、単にインターコネクタ190という。インターコネクタ190の各空気極側集電部134は、例えばスピネル型酸化物により構成された導電性接合材196を介して、単セル110の空気極114に接合されており、これにより単セル110の空気極114に電気的に接続されている。インターコネクタ190は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を抑制する。なお、本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ190は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ190は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ190と同一部材である。また、燃料電池スタック100は下側ターミナルプレート420および下端プレート189を備えているため、燃料電池スタック100において最も下側に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ190を備えていない(
図3から
図5参照)。
【0045】
IC用セパレータ180は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の貫通孔181が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。IC用セパレータ180における貫通孔181を取り囲む部分(以下、「貫通孔周囲部」という。)は、インターコネクタ190の平板部150の周縁部における上側の表面に例えば溶接により接合されている。ある発電単位102に含まれる一対のIC用セパレータ180のうち、上側のIC用セパレータ180は、該発電単位102の空気室166と、該発電単位102に対して上側に隣り合う他の発電単位102の燃料室176とを区画する。また、ある発電単位102に含まれる一対のIC用セパレータ180のうち、下側のIC用セパレータ180は、該発電単位102の燃料室176と、該発電単位102に対して下側に隣り合う他の発電単位102の空気室166とを区画する。このように、IC用セパレータ180により、発電単位102の周縁部における発電単位102間のガスのリークが抑制される。なお、燃料電池スタック100において最も上側に位置する発電単位102の上側のインターコネクタ190に接合されたIC用セパレータ180は、上側ターミナルプレート410に電気的に接続されている。
【0046】
IC用セパレータ180は、IC用セパレータ180の貫通孔周囲部を含む内側部186と、内側部186より外周側に位置する外側部187と、内側部186と外側部187とを連結する連結部188とを備える。本実施形態では、内側部186および外側部187は、Z軸方向に略直交する方向に延びる略平板状である。また、連結部188は、内側部186と外側部187との両方に対して下側に突出するように湾曲した形状である。すなわち、連結部188は、下側に凸、かつ、上側に凹な形状である。連結部188は、Z軸方向における位置が内側部186および外側部187とは異なる部分を含んでいる。
【0047】
空気極側フレーム130は、中央付近にZ軸方向に貫通する略矩形の孔131が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、マイカ等の絶縁体により形成されている。空気極側フレーム130の孔131は、空気極114に面する空気室166を画定する。空気極側フレーム130は、単セル用セパレータ120の周縁部における上側の表面と、上側のIC用セパレータ180の周縁部における下側の表面とに接触しており、両者の間のガスシール性(すなわち、空気室166のガスシール性)を確保するシール部材として機能する。また、空気極側フレーム130によって、発電単位102に含まれる一対のIC用セパレータ180の間(すなわち、一対のインターコネクタ190の間)が電気的に絶縁される。また、空気極側フレーム130には、空気極側ガス供給マニホールド161と空気室166とを連通する酸化剤ガス供給連通孔132と、空気室166と空気極側ガス排出マニホールド162とを連通する酸化剤ガス排出連通孔133とが形成されている。
【0048】
燃料極側フレーム140は、中央付近にZ軸方向に貫通する略矩形の孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。燃料極側フレーム140の孔141は、燃料極116に面する燃料室176を画定する。燃料極側フレーム140は、単セル用セパレータ120の周縁部における下側の表面と、下側のIC用セパレータ180の周縁部における上側の表面とに接触している。また、燃料極側フレーム140には、燃料極側ガス供給マニホールド171と燃料室176とを連通する燃料ガス供給連通孔142と、燃料室176と燃料極側ガス排出マニホールド172とを連通する燃料ガス排出連通孔143とが形成されている。
【0049】
燃料極側集電部材144は、燃料室176内に配置されている。燃料極側集電部材144は、インターコネクタ対向部146と、電極対向部145と、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部147とを備えており、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成されている。電極対向部145は、燃料極116の下側の表面に接触しており、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ190の平板部150の上側の表面に接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も下側に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ190を備えていないため、該発電単位102における燃料極側集電部材144のインターコネクタ対向部146は、下側ターミナルプレート420に接触している。燃料極側集電部材144は、このような構成であるため、燃料極116とインターコネクタ190(または下端プレート189)とを電気的に接続する。なお、燃料極側集電部材144の電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間には、例えばマイカにより形成されたスペーサー149が配置されている。そのため、燃料極側集電部材144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位102の変形に追随し、燃料極側集電部材144を介した燃料極116とインターコネクタ190(または下側ターミナルプレート420)との電気的接続が良好に維持される。燃料極側集電部材144は、例えば、平板状の材料(例えば、厚さ10~200μmのニッケル箔)に複数の矩形の切り込みを入れ、複数の矩形部分を曲げ起こしてスペーサー149を挟むように加工することにより作製される。曲げ起こされた各矩形部分が電極対向部145となり、曲げ起こされた部分以外の穴が開いた状態の平板部分がインターコネクタ対向部146となり、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ部分が連接部147となる。
【0050】
A-3.燃料電池モジュール10における燃料電池スタック100以外の装置の構成:
次に、燃料電池モジュール10における燃料電池スタック100以外の装置の構成について説明する。
図1に示すように、燃料電池モジュール10は、燃料電池スタック100と、蒸発器310および改質・加熱器330を含む補助器300と、カバー部材510と、補助流路部材520と、各装置間を結ぶ各種流路とを備える。各装置は、燃料電池スタック100の外側に位置している。各装置(燃料電池スタック100、蒸発器310、改質・加熱器330)は、断熱材350によって囲まれた断熱空間351に収容されている。なお、
図1では、便宜的に、断熱材350は全装置の周囲を覆う単純な四角形状をなすものとしてあるが、実際には、全装置の周囲を覆い、かつ、各装置の周囲を覆っている。なお、
図1では、便宜的に、燃料極側のガス(原燃料ガスRFG、燃料ガスFG、および燃料オフガスFOGを含む)の流れを一点鎖線で示し、空気極側のガス(酸化剤ガスOGおよび酸化剤オフガスOOGを含む)の流れを実線で示し、排ガスEGの流れを破線で示し、水の流れを二点鎖線で示している。
【0051】
蒸発器310は、内部に空間が形成された箱形部材であり、例えば金属により形成されている。蒸発器310は、水WAを蒸発させて水蒸気を生成するための装置である。蒸発器310には、水WAを導入するための純水導入流路251が接続されている。純水導入流路251は、主として配管により構成されており、純水導入流路251上には、イオン交換樹脂(図示せず)と、浄水タンク・フロート(図示せず)と、流量制御機構(図示せず)とが設けられている。給水源から純水導入流路251に供給された水WAは、イオン交換樹脂においてカルシウムイオン等の除去が行われ、浄水タンク・フロートにおいて浄化・貯留され、流量制御機構により制御された流量で、純水として蒸発器310に導入される。
【0052】
また、蒸発器310には、原燃料ガスRFGを導入するための原燃料ガス導入流路261が接続されている。原燃料ガス導入流路261は、主として配管により構成されており、原燃料ガス導入流路261上には、流量制御機構(図示せず)と、水素添加脱硫器(図示せず)とが設けられている。ガス源から原燃料ガス導入流路261に供給された原燃料ガスRFGは、水素添加脱硫器において硫黄成分を除去された状態で、流量制御機構により制御された流量で蒸発器310に導入される。
【0053】
また、蒸発器310には、改質・加熱器330のハウジング335(後述)から蒸発器310へ排ガスEGを送り出すための排ガス中継流路226と、蒸発器310から改質・加熱器330の改質器331(後述)へ混合ガスを送り出すための混合ガス流路228と、蒸発器310から排ガスEGを排出するための排ガス排出流路(図示せず)とが接続されている。これらの流路は、主として配管により構成されている。
【0054】
改質・加熱器330は、改質器331と、燃焼器333と、ハウジング335とを備える。ハウジング335は、例えば金属により形成された密閉型の容器であり、改質器331と燃焼器333とを収容しており、ハウジング335の内部には、燃焼器333による可燃性ガスの燃焼が起こる空間である燃焼空間334が形成されている。ハウジング335は、内壁336と外壁337とを有する二重壁構造に構成されており、内壁336と外壁337との間に形成された空気流路338には、伝熱用フィン339が配置されている。なお、
図1では、便宜的に、伝熱用フィン339の一部の図示を省略している。ハウジング335には、酸化剤ガスOG(空気)を導入するための酸化剤ガス導入流路271を形成する酸化剤ガス導入部材272が接続されている。酸化剤ガス導入部材272は、主として配管により構成されており、酸化剤ガス導入流路271上には流量制御機構(図示せず)が設けられている。酸化剤ガス導入流路271に供給された酸化剤ガスOGは、流量制御機構により制御された流量でハウジング335の空気流路338に導入される。また、ハウジング335には、燃料電池スタック100の空気極側ガス供給マニホールド161(後述)に向けて酸化剤ガスOGを送り出すための空気極側ガス供給流路61が接続されている。空気極側ガス供給流路61は、空気極側ガス供給流路部材62によって形成されている。空気極側ガス供給流路部材62は主として配管により構成されている。ハウジング335は、特許請求の範囲における容器の一例である。
【0055】
改質器331は、内部に空間が形成された箱形部材であり、例えば金属により形成されている。改質器331は、原燃料ガスRFGを改質(水蒸気改質)して燃料ガスFGを生成するための装置である。改質器331内には、改質反応を促進させる触媒が配置されている。上述したように、改質器331には、蒸発器310から改質器331へ混合ガスを送り出すための混合ガス流路228が接続されている。また、改質器331には、燃料電池スタック100の燃料極側ガス供給マニホールド171(後述)に向けて燃料ガスFGを送り出すための燃料極側ガス供給流路71が接続されている。燃料極側ガス供給流路71は、燃料極側ガス供給流路部材72によって形成されている。燃料極側ガス供給流路部材72は主として配管により構成されている。
【0056】
燃焼器333は、内部に空間が形成された箱形部材であり、例えば金属により形成されている。燃焼器333は、酸化剤オフガスOOGおよび燃料オフガスFOGを燃焼させるための装置である。燃焼器333内には、酸化剤オフガスOOGおよび燃料オフガスFOGの燃焼を促進させる触媒が配置されていてもよい。燃焼器333には、燃料電池スタック100の空気極側ガス排出マニホールド162から酸化剤オフガスOOGが送り出される空気極側ガス排出流路240と、燃料電池スタック100の燃料極側ガス排出マニホールド172から燃料オフガスFOGが送り出される燃料極側ガス排出流路230とが接続されている。空気極側ガス排出流路240は、空気極側ガス排出流路部材242によって形成され、燃料極側ガス排出流路230は、燃料極側ガス排出流路部材232によって形成されている。空気極側ガス排出流路部材242および燃料極側ガス排出流路部材232は、主として配管により構成されている。空気極側ガス排出流路240は、特許請求の範囲における接続流路の一例である。空気極側ガス排出流路部材242は、特許請求の範囲における酸化剤ガス接続部材の一例である。
【0057】
酸化剤ガス流路OCは、燃料電池スタック100に酸化剤ガスOGを供給する一連のガス流路である酸化剤ガス供給流路OC1と、燃料電池スタック100から酸化剤ガスOGを排出する一連のガス流路であって、空気極側ガス排出マニホールド162と連続する酸化剤ガス排出流路OC2とからなる、燃料電池モジュール10における酸化剤ガスOGの流路の総称である。
【0058】
酸化剤ガス供給流路OC1は、酸化剤ガス供給外側部材OCM1によって形成される。酸化剤ガス供給外側部材OCM1は、酸化剤ガス導入部材272と、空気流路338を形成するハウジング335と、空気極側ガス供給流路部材62とを含む。すなわち、酸化剤ガス供給流路OC1は、酸化剤ガス導入流路271と、空気流路338と、空気極側ガス供給流路61とを含む。
【0059】
酸化剤ガス排出流路OC2は、酸化剤ガス排出外側部材OCM2によって形成される。酸化剤ガス排出外側部材OCM2は、燃焼器333を収容し、内部に燃焼空間334を形成するハウジング335と、空気極側ガス排出流路部材242とを含む。すなわち、酸化剤ガス排出流路OC2は、燃焼空間334と、空気極側ガス排出流路240とを含む。
【0060】
A-4.カバー部材510および補助流路部材520の詳細構成:
次に、カバー部材510および補助流路部材520の詳細構成について説明する。
図1には、カバー部材510および補助流路部材520の配置が模式的に示されている。カバー部材510は、燃料電池スタック100の外側に取り付けられる。補助流路部材520が形成する補助流路522は、後述する酸化剤ガス収容空間512と、空気極側ガス供給流路61とを接続する。
【0061】
図9は、第1実施形態における燃料電池モジュール10のカバー部材510および補助流路部材520の構成を示している。
図9aは、カバー部材510設置後の燃料電池スタック100の正面図(XZ平面に垂直な方向から見た燃料電池スタック100)を示している。
図9bは、カバー部材510設置後の燃料電池スタック100の上面図(XY平面に垂直な方向視から見た燃料電池スタック100)を示している。
【0062】
カバー部材510は、各発電単位102が有する空気極側フレーム130における燃料電池スタック100の外周面を形成する部分の全体を覆うようにして燃料電池スタック100の外側に取り付けられる。カバー部材510は、例えば板状の金属部材によって構成される。カバー部材510は、例えばエンドプレート104,106に取り付けられ、燃料電池スタック100における単セル110とは電気的に絶縁されるようにして、燃料電池スタック100と接続される。カバー部材510とエンドプレート104,106とは、例えば溶接によって接続される。カバー部材510の取り付けにより、燃料電池スタック100と、カバー部材510との間に、酸化剤ガス収容空間512が形成される。ターミナルプレート410,420には絶縁部材430が取り付けられ、カバー部材510と、ターミナルプレート410,420とは、絶縁部材430を介して接続されることによって、酸化剤ガス収容空間512はシールされる。これにより、カバー部材510と、ターミナルプレート410,420とは、電気的に絶縁される。絶縁部材430は、例えばガラスやマイカ等によって構成される。補助流路部材520は、例えば配管によって構成される。補助流路部材520が形成する補助流路522は、酸化剤ガス収容空間512と、空気極側ガス供給流路部材62とを接続する。
【0063】
A-5.燃料電池モジュール10の動作:
次に、燃料電池モジュール10の動作について説明する。
図1に示すように、酸化剤ガスOGは、酸化剤ガス導入流路271を流れ、改質・加熱器330のハウジング335に形成された空気流路338内に導入される。空気流路338内に導入された酸化剤ガスOGは、燃焼器333によって生成された燃焼熱(排ガスEG)によって加熱されつつ空気流路338内を流れ、空気極側ガス供給流路61を介して燃料電池スタック100の空気極側ガス供給マニホールド161に供給される。
図3および
図6に示すように、空気極側ガス供給マニホールド161に供給された酸化剤ガスOGは、空気極側ガス供給マニホールド161から、各発電単位102の酸化剤ガス供給連通孔132を介して空気室166に供給される。また、
図1に示すように、原燃料ガス導入流路261を介して蒸発器310に原燃料ガスRFGが供給されると共に、純水導入流路251を介して蒸発器310に水WAが供給されると、蒸発器310において、排ガス中継流路226を介して導入された排ガスEGの熱を利用して水WAを蒸発させることにより水蒸気が生成されると共に、この水蒸気が原燃料ガスRFGと混合される。水蒸気と混合された原燃料ガスRFGは、混合ガス流路228を介して蒸発器310から改質器331に導入され、改質器331において水蒸気改質され、その結果、水素リッチな燃料ガスFGが生成される。生成された燃料ガスFGは、燃料極側ガス供給流路71を介して燃料電池スタック100の燃料極側ガス供給マニホールド171に供給される。
図4および
図7に示すように、燃料極側ガス供給マニホールド171に供給された燃料ガスFGは、燃料極側ガス供給マニホールド171から、各発電単位102の燃料ガス供給連通孔142を介して燃料室176に供給される。
【0064】
各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室176に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGおよび燃料ガスFGの電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は上側のインターコネクタ190に電気的に接続され、燃料極116は燃料極側集電部材144を介して下側のインターコネクタ190(または、下端プレート189)に電気的に接続されている。すなわち、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、電気的に直列に接続されている。また、最も上側に位置する発電単位102の上側のインターコネクタ190およびIC用セパレータ180は、上側ターミナルプレート410に電気的に接続されており、最も下側に位置する発電単位102の燃料極側集電部材144には、下側ターミナルプレート420が電気的に接続されている。そのため、ターミナルプレート410,420と電気的に接続され、燃料電池スタック100の出力端子として機能する電流線414,424から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば600℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
【0065】
図1、
図3および
図6に示すように、各発電単位102の空気室166から酸化剤ガス排出連通孔133を介して空気極側ガス排出マニホールド162に排出された酸化剤オフガスOOGは、空気極側ガス排出流路240を介して燃焼器333に導入される。また、
図1、
図4および
図7に示すように、各発電単位102の燃料室176から燃料ガス排出連通孔143を介して燃料極側ガス排出マニホールド172に排出された燃料オフガスFOGは、燃料極側ガス排出流路230を介して燃焼器333に導入される。燃焼器333に導入された酸化剤オフガスOOGおよび燃料オフガスFOGは、燃焼器333において混合されて燃焼され、その後、排ガスEGとして排ガス中継流路226を介して蒸発器310へと排出される。なお、燃焼器333において発生する熱により、改質器331における改質反応が促進されると共に、燃料電池スタック100が加熱される。
【0066】
空気極側フレーム130における燃料電池スタック100の外周面を形成する部分から酸化剤ガスOGが漏出した場合、燃料電池スタック100とカバー部材510との間に形成された酸化剤ガス収容空間512に酸化剤ガスOGが捕集される。捕集された酸化剤ガスOGは、酸化剤ガス収容空間512に接続された補助流路部材520が形成する補助流路522を介して空気極側ガス供給流路61に流入する。流入した酸化剤ガスOGは、空気極側ガス供給マニホールド161に供給され、空気極側ガス供給マニホールド161から、各発電単位102の酸化剤ガス供給連通孔132を介して再び空気室166に供給される。
【0067】
A-6.第1実施形態の効果:
以上説明したように、燃料電池モジュール10は、燃料電池スタック100と、酸化剤ガス供給外側部材OCM1と、酸化剤ガス排出外側部材OCM2と、カバー部材510と、補助流路部材520と、を備える。燃料電池スタック100は、電解質層112と、電解質層112を挟んで互いに対向する空気極114および燃料極116と、を含む単セル110と、空気極114に面する空気室166を画定する空気極側フレーム130と、をそれぞれ有する複数の発電単位102が積層されてなる発電ブロック103を備え、空気室166に酸化剤ガスOGを供給する空気極側ガス供給マニホールド161と、空気室166から酸化剤ガスOGを排出する空気極側ガス排出マニホールド162と、が形成されている。酸化剤ガス供給外側部材OCM1は、空気極側ガス供給マニホールド161に酸化剤ガスOGを供給する一連のガス流路である酸化剤ガス供給流路OC1を形成する。酸化剤ガス排出外側部材OCM2は、空気極側ガス排出マニホールド162から酸化剤ガスOGを排出する一連のガス流路であって、空気極側ガス排出マニホールド162と連続する酸化剤ガス排出流路OC2を形成する。カバー部材510は、空気極側フレーム130における燃料電池スタック100の外周面を形成する部分の少なくとも一部を覆うようにして燃料電池スタック100の外側に取り付けられ、燃料電池スタック100の外側に酸化剤ガス収容空間512を形成する。補助流路部材520は、酸化剤ガス収容空間512と、酸化剤ガス供給流路OC1および酸化剤ガス排出流路OC2からなる酸化剤ガス流路OCと、を接続する補助流路522を形成する。
【0068】
燃料電池スタック100における空気極側フレーム130は、ボルト22の軸力によって周辺部材と圧着されることにより、ガスシール性を確保している。しかしながら、燃料電池スタック100の運転中にボルト22の軸力が弱まり、空気極側フレーム130のガスシール性が低下する場合がある。そのような場合、カバー部材510と補助流路部材520を有しない従来の燃料電池モジュールにおいては、酸化剤ガスOGは空気極側フレーム130における燃料電池スタック100の外周面を形成する部分から漏出し、そのまま大気へと放出される。
【0069】
これに対し、本燃料電池モジュール10によれば、カバー部材510を備えることにより、燃料電池スタック100の外周面から酸化剤ガスOGが漏出した際に、漏出した酸化剤ガスOGを酸化剤ガス収容空間512に回収することができ、酸化剤ガスOGが大気へと放出されることを抑制できる。さらに、補助流路部材520を備えることにより、酸化剤ガス収容空間512に回収された酸化剤ガスOGを、酸化剤ガス流路OCへと供給することができる。そのため、燃料電池スタック100から酸化剤ガスOGがリークした場合であっても、燃料電池スタック100の運転状態を安定化することができる。
【0070】
また、本実施形態の燃料電池モジュール10では、補助流路522は、酸化剤ガス収容空間512と、空気極側ガス供給流路61と、を接続する。すなわち、補助流路522は、酸化剤ガス収容空間512と、酸化剤ガス供給流路OC1と、を接続している。これにより、燃料電池スタック100から漏出した酸化剤ガスOGを回収し、再び燃料電池スタック100へ供給することができる。そのため、燃料電池スタック100から酸化剤ガスOGがリークした場合であっても、未反応の酸化剤ガスOGを、再び単セル110に供することができ、燃料電池スタック100の運転状態をより効果的に安定化することができる。
【0071】
また、本実施形態の燃料電池モジュール10では、カバー部材510は、空気極側フレーム130における燃料電池スタック100の外周面を形成する部分の全体を覆うようにして燃料電池スタック100の外側に取り付けられる。そのため、各発電単位102から漏出する酸化剤ガスOGを漏れなく回収することができ、燃料電池スタック100の運転状態をより効果的に安定化することができる。
【0072】
また、本実施形態の燃料電池モジュール10では、カバー部材510は、燃料電池スタック100における単セル110とは電気的に絶縁されている。そのため、カバー部材510の取り付けによる燃料電池スタック100の短絡を防止することができる。
【0073】
また、本実施形態の燃料電池モジュール10では、さらに、単セル110に電気的に接続され、少なくとも一部が酸化剤ガス収容空間512に覆われるターミナルプレート410,420を備える。カバー部材510と、ターミナルプレート410,420とは、電気的に絶縁されている。そのため、カバー部材510の取り付けによる、ターミナルプレート410,420の短絡を防止することができる。
【0074】
B.第2実施形態:
図10は、第2実施形態における燃料電池モジュール10aの構成を模式的に示す説明図である。以下では、第2実施形態の燃料電池モジュール10aの構成のうち、上述した第1実施形態の燃料電池モジュール10と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0075】
第2実施形態における燃料電池モジュール10aは、装置間を結ぶ流路の構成が、第1実施形態における燃料電池モジュール10と異なっている。具体的には、第2実施形態における燃料電池モジュール10aでは、補助流路522aが、酸化剤ガス収容空間512と、空気流路338とを接続している。
【0076】
燃料電池スタック100の外周面から酸化剤ガスOGが漏出した場合、燃料電池スタック100とカバー部材510との間に形成された酸化剤ガス収容空間512に酸化剤ガスOGが捕集される。捕集された酸化剤ガスOGは、酸化剤ガス収容空間512に接続された、補助流路部材520aが形成する補助流路522aを介して空気流路338に流入する。流入した酸化剤ガスOGは、空気極側ガス供給流路61を介して、空気極側ガス供給マニホールド161に供給され、空気極側ガス供給マニホールド161から、各発電単位102の酸化剤ガス供給連通孔132を介して再び空気室166に供給される。
【0077】
第2実施形態における燃料電池モジュール10aでは、上述した第1実施形態の燃料電池モジュール10と同様に、燃料電池スタック100と、酸化剤ガス供給外側部材OCM1と、酸化剤ガス排出外側部材OCM2と、カバー部材510と、補助流路部材520aと、を備える。補助流路部材520aが形成する補助流路522aは、酸化剤ガス収容空間512と、空気流路338と、を接続する。すなわち、補助流路522aは、酸化剤ガス収容空間512と、酸化剤ガス供給流路OC1と、を接続している。そのため、燃料電池スタック100から酸化剤ガスOGがリークした場合であっても、未反応の酸化剤ガスOGを、再び燃料電池スタック100に供することができ、燃料電池スタック100の運転状態を安定化することができる。
【0078】
C.第3実施形態:
図11は、第3実施形態における燃料電池モジュール10bの構成を模式的に示す説明図である。以下では、第3実施形態の燃料電池モジュール10bの構成のうち、上述した第1実施形態の燃料電池モジュール10と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0079】
第3実施形態における燃料電池モジュール10bは、装置間を結ぶ流路の構成が、第1実施形態における燃料電池モジュール10と異なっている。具体的には、第3実施形態における燃料電池モジュール10bでは、補助流路522bが、酸化剤ガス収容空間512と、酸化剤ガス導入流路271とを接続している。
【0080】
燃料電池スタック100の外周面から酸化剤ガスOGが漏出した場合、燃料電池スタック100とカバー部材510との間に形成された酸化剤ガス収容空間512に酸化剤ガスOGが捕集される。捕集された酸化剤ガスOGは、酸化剤ガス収容空間512に接続された補助流路部材520bが形成する補助流路522bを介して酸化剤ガス導入流路271に流入する。流入した酸化剤ガスOGは、空気流路338および空気極側ガス供給流路61を介して、空気極側ガス供給マニホールド161に供給され、空気極側ガス供給マニホールド161から、各発電単位102の酸化剤ガス供給連通孔132を介して再び空気室166に供給される。
【0081】
第3実施形態における燃料電池モジュール10bでは、上述した第1実施形態の燃料電池モジュール10と同様に、燃料電池スタック100と、酸化剤ガス供給外側部材OCM1と、酸化剤ガス排出外側部材OCM2と、カバー部材510と、補助流路部材520bと、を備える。補助流路部材520bが形成する補助流路522bは、酸化剤ガス収容空間512と、酸化剤ガス導入流路271と、を接続する。すなわち、補助流路522bは、酸化剤ガス収容空間512と、酸化剤ガス供給流路OC1とを接続している。そのため、燃料電池スタック100から酸化剤ガスOGがリークした場合であっても、未反応の酸化剤ガスOGを、再び燃料電池スタック100に供することができ、燃料電池スタック100の運転状態をより効果的に安定化することができる。
【0082】
D.第4実施形態:
図12は、第4実施形態における燃料電池モジュール10cの構成を模式的に示す説明図である。以下では、第4実施形態の燃料電池モジュール10cの構成のうち、上述した第1実施形態の燃料電池モジュール10と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0083】
第4実施形態における燃料電池モジュール10cは、装置間を結ぶ流路の構成が、第1実施形態における燃料電池モジュール10と異なっている。具体的には、第4実施形態における燃料電池モジュール10cでは、補助流路522cが、酸化剤ガス収容空間512と、空気極側ガス排出流路240とを接続している。
【0084】
燃料電池スタック100の外周面から酸化剤ガスOGが漏出した場合、燃料電池スタック100とカバー部材510との間に形成された酸化剤ガス収容空間512に酸化剤ガスOGが捕集される。捕集された酸化剤ガスOGは、酸化剤ガス収容空間512に接続された補助流路部材520cが形成する補助流路522cを介して空気極側ガス排出流路240に流入する。流入した酸化剤ガスOGは、空気極側ガス排出流路240を介して燃焼空間334に導入される。
【0085】
第4実施形態における燃料電池モジュール10cでは、上述した第1実施形態の燃料電池モジュール10と同様に、燃料電池スタック100と、酸化剤ガス供給外側部材OCM1と、酸化剤ガス排出外側部材OCM2と、カバー部材510と、補助流路部材520cと、を備える。酸化剤ガス排出外側部材OCM2は、酸化剤ガスOGを燃焼する燃焼器333を収容し、燃焼器333による可燃性ガスの燃焼空間334を内部に形成するハウジング335と、空気極側ガス排出マニホールド162と燃焼器333とを接続する空気極側ガス排出流路240を形成する空気極側ガス排出流路部材242と、を備える。補助流路522cは、酸化剤ガス収容空間512と、空気極側ガス排出流路240と、を接続する。すなわち、補助流路522cは、酸化剤ガス収容空間512と、酸化剤ガス排出流路OC2を構成する燃焼空間334と空気極側ガス排出流路240の少なくとも一方と、を接続する。これにより、燃料電池スタック100から漏出した酸化剤ガスOGを回収し、燃焼器333の作動により生ずる燃焼空間334へ供給することができる。そのため、燃料電池スタック100から酸化剤ガスOGがリークした場合であっても、燃焼器333を安定的に運転することができ、燃料電池スタック100の運転状態をより効果的に安定化することができる。
【0086】
E.第5実施形態:
図13は、第5実施形態における燃料電池モジュール10dの構成を模式的に示す説明図である。以下では、第5実施形態の燃料電池モジュール10dの構成のうち、上述した第1実施形態の燃料電池モジュール10と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0087】
第5実施形態における燃料電池モジュール10dは、装置間を結ぶ流路の構成が、第1実施形態における燃料電池モジュール10と異なっている。具体的には、第5実施形態における燃料電池モジュール10dでは、補助流路522dが、酸化剤ガス収容空間512と、燃焼空間334とを接続している。
【0088】
燃料電池スタック100の外周面から酸化剤ガスOGが漏出した場合、燃料電池スタック100とカバー部材510との間に形成された酸化剤ガス収容空間512に酸化剤ガスOGが捕集される。捕集された酸化剤ガスOGは、酸化剤ガス収容空間512に接続された補助流路部材520dが形成する補助流路522dを介して燃焼空間334に導入される。
【0089】
第5実施形態における燃料電池モジュール10dでは、上述した第1実施形態の燃料電池モジュール10と同様に、燃料電池スタック100と、酸化剤ガス供給外側部材OCM1と、酸化剤ガス排出外側部材OCM2と、カバー部材510と、補助流路部材520dと、を備える。補助流路部材520dが形成する補助流路522dは、酸化剤ガス収容空間512と、燃焼空間334と、を接続する。すなわち、補助流路522dは、酸化剤ガス収容空間512と、酸化剤ガス排出流路OC2を構成する燃焼空間334と空気極側ガス排出流路240の少なくとも一方と、を接続する。そのため、燃料電池スタック100から酸化剤ガスOGがリークした場合であっても、燃焼器333を安定的に運転することができ、燃料電池スタック100の運転状態をより効果的に安定化することができる。
【0090】
F.第6実施形態:
図14は、第6実施形態における燃料電池モジュール10eのカバー部材510eおよび補助流路部材520eの構成を示している。以下では、第6実施形態の燃料電池モジュール10eのうち、上述した第1実施形態における燃料電池モジュール10と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0091】
第6実施形態にけるカバー部材510eは、燃料電池スタック100の外周面のみならず、燃料電池スタック100の全体を覆うという点において、第1実施形態におけるカバー部材510と異なっている。具体的には、カバー部材510eにおける上面は上側エンドプレート104を覆い、カバー部材510eにおける下面はガス通路部材27を覆い、カバー部材510eにおける側面は燃料電池スタック100の外周面を覆う。カバー部材510eの取り付けにより、燃料電池スタック100とカバー部材510eとの間に、酸化剤ガス収容空間512eが形成される。補助流路部材520eが形成する補助流路522eは、酸化剤ガス収容空間512eと、空気極側ガス供給流路61とを接続する(図示せず)。
【0092】
燃料電池スタック100の外周面もしくは上下面から酸化剤ガスOGが漏出した場合、燃料電池スタック100とカバー部材510eとの間に形成された酸化剤ガス収容空間512eに酸化剤ガスOGが捕集される。捕集された酸化剤ガスOGは、酸化剤ガス収容空間512eに接続された補助流路部材520eが形成する補助流路522eを介して空気極側ガス供給流路61に流入する。流入した酸化剤ガスOGは、空気極側ガス供給マニホールド161に供給され、空気極側ガス供給マニホールド161から、各発電単位102の酸化剤ガス供給連通孔132を介して再び空気室166に供給される。
【0093】
第6実施形態における燃料電池モジュール10eでは、上述した第1実施形態の燃料電池モジュール10と同様に、燃料電池スタック100と、酸化剤ガス供給外側部材OCM1と、酸化剤ガス排出外側部材OCM2と、カバー部材510eと、補助流路部材520eと、を備える。カバー部材510eは、燃料電池スタック100の全体を覆うようにして取り付けられ、燃料電池スタック100の外側に酸化剤ガス収容空間512eを形成する。補助流路部材520eが形成する補助流路522eは、酸化剤ガス収容空間512eと、酸化剤ガス流路OCと、を接続する。
【0094】
燃料電池モジュール10eの運転中にボルト22の軸力が弱まり、空気極側フレーム130のガスシール性が低下した結果、酸化剤ガスOGは燃料電池スタック100の外周面のみならず、上面および下面からも漏出する場合がある。そのため、カバー部材510eが燃料電池スタック100の全体を覆うようにして取り付けられることにより、燃料電池スタック100の外周面のみならず、上面および下面から漏出する酸化剤ガスOGを漏れなく回収することができ、燃料電池スタック100の運転状態をより効果的に安定化することができる。
【0095】
G.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0096】
上記実施形態における燃料電池モジュール10の構成や燃料電池モジュール10を構成する各部分の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。上記実施形態における燃料電池スタック100の構成や燃料電池スタック100を構成する各部分の構成も、あくまで一例であり、種々変形可能である。
【0097】
また、上記実施形態では、カバー部材510eの下面はガス通路部材27を覆う構成としているが、下側エンドプレート106および下端プレート189を覆い、ガス通路部材27の一部はカバー部材510eに覆われない構成であってもよい。
【0098】
また、上記実施形態では、カバー部材510は、エンドプレート104,106に取り付けられているが、カバー部材510と単セル110とが絶縁されていればよく、カバー部材510の取り付け位置は限定されない。例えば、カバー部材510をガラス等の絶縁材料で構成することによって、カバー部材510と単セル110とが絶縁されていてもよい。
【0099】
また、上記実施形態では、ターミナルプレート410,420に絶縁部材430が取り付けられているが、カバー部材510とターミナルプレート410,420が絶縁されれば、絶縁部材430を有しない構成であってもよい。例えば、カバー部材510をセラミックやガラス等の絶縁材料で構成することによって、カバー部材510とターミナルプレート410,420とが絶縁されていてもよい。
【0100】
また、上記実施形態では、単セル110は燃料極支持形の単セルであるが、電解質支持形や金属支持形等の他のタイプの単セルであってもよい。また、上記各実施形態では、燃料電池スタック100がカウンターフロータイプの燃料電池であるが、燃料電池スタック100がコフロータイプといった他のタイプの燃料電池であってもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、インターコネクタ190は導電性の被覆層194を含んでいるが、インターコネクタ190が該被覆層194を含んでいなくてもよい。また、上記実施形態では、単セル110が反応防止層118を有しているが、単セル110が反応防止層118を有さないとしてもよい。
【0102】
また、上記実施形態において、燃料電池スタック100に含まれる単セル110の個数(発電単位102の個数)は、あくまで一例であり、単セル110の個数は燃料電池スタック100に要求される出力電圧等に応じて適宜決められる。また、上記各実施形態における各部材を構成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により構成されていてもよい。
【0103】
また、上記実施形態では、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応を利用して発電を行うSOFCを対象としているが、本明細書に開示される技術は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形電解セル(SOEC)の構成単位である電解セル単位や、電解セル単位を複数備える電解セルスタックにも同様に適用可能である。なお、電解セル単位および電解セルスタックの構成は、例えば特開2016-81813号に記載されているように公知であるためここでは詳述しないが、概略的には上述した実施形態における発電単位102および燃料電池スタック100と同様の構成である。すなわち、上述した実施形態における燃料電池スタック100を電解セルスタックと読み替え、発電単位102を電解セル単位と読み替え、単セル110を電解単セルと読み替えればよい。ただし、電解セルスタックの運転の際には、空気極114がプラス(陽極)で燃料極116がマイナス(陰極)となるように両電極間に電圧が印加されると共に、マニホールドを介して原料ガスとしての水蒸気が供給される。これにより、各電解セル単位において水の電気分解反応が起こり、燃料室176で水素ガスが発生し、マニホールドを介して電解セルスタックの外部に水素が取り出される。
【0104】
また、上記実施形態では、固体酸化物形燃料電池(SOFC)を例に説明したが、本明細書に開示される技術は、固体高分子形燃料電池(PEFC)、リン酸型燃料電池(PAFC)、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)といった他のタイプの燃料電池(または電解セル)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0105】
10,10a~10e:燃料電池モジュール 22:ボルト 24:ナット 26:ガス貫通孔 27:ガス通路部材 28:本体部 29:フランジ部 29A:ボルト孔 32,34:孔 61:空気極側ガス供給流路 62:空気極側ガス供給流路部材 71:燃料極側ガス供給流路 72:燃料極側ガス供給流路部材 100:燃料電池スタック 102:発電単位 103:発電ブロック 104:上側エンドプレート 106:下側エンドプレート 107:エンド貫通孔 108:連通孔 109:ボルト孔 110:単セル 112:電解質層 114:空気極 116:燃料極 118:反応防止層 120:単セル用セパレータ 121:貫通孔 124:接合部 125:ガラスシール部 126:内側部 127:外側部 128:連結部 130:空気極側フレーム 131:孔 132:酸化剤ガス供給連通孔 133:酸化剤ガス排出連通孔 134:空気極側集電部 140:燃料極側フレーム 141:孔 142:燃料ガス供給連通孔 143:燃料ガス排出連通孔 144:燃料極側集電部材 145:電極対向部 146:インターコネクタ対向部 147:連接部 149:スペーサー 150:平板部 161:空気極側ガス供給マニホールド 162:空気極側ガス排出マニホールド 166:空気室 171:燃料極側ガス供給マニホールド 172:燃料極側ガス排出マニホールド 176:燃料室 180:IC用セパレータ 181:貫通孔 186:内側部 187:外側部 188:連結部 189:下端プレート 190:インターコネクタ 194:被覆層 196:導電性接合材 200:絶縁部 210:末端セパレータ 211:貫通孔 216:内側部 217:外側部 218:連結部 220:上端プレート 226:排ガス中継流路 228:混合ガス流路 230:燃料極側ガス排出流路 232:燃料極側ガス排出流路部材 240:空気極側ガス排出流路 242:空気極側ガス排出流路部材 251:純水導入流路 261:原燃料ガス導入流路 271:酸化剤ガス導入流路 272:酸化剤ガス導入部材 300:補助器 310:蒸発器 330:改質・加熱器 331:改質器 333:燃焼器 334:燃焼空間 335:ハウジング 336:内壁 337:外壁 338:空気流路 339:伝熱用フィン 350:断熱材 351:断熱空間 410:上側ターミナルプレート 412:孔 414:上側電流線 415,425:溶接部 420:下側ターミナルプレート 424:下側電流線 430:絶縁部材 510,510e:カバー部材 512,512e:酸化剤ガス収容空間 520,520a~520e:補助流路部材 522,522a~522e:補助流路 EG:排ガス FG:燃料ガス FOG:燃料オフガス OC1:酸化剤ガス供給流路 OC2:酸化剤ガス排出流路 OC:酸化剤ガス流路 OCM1:酸化剤ガス供給外側部材 OCM2:酸化剤ガス排出外側部材 OG:酸化剤ガス OOG:酸化剤オフガス RFG:原燃料ガス WA:水