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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053582
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】電力消費装置
(51)【国際特許分類】
   H10N 10/17 20230101AFI20240409BHJP
   H10N 10/13 20230101ALI20240409BHJP
   G01C 19/00 20130101ALI20240409BHJP
   G01C 19/72 20060101ALN20240409BHJP
【FI】
H01L35/32 Z
H01L35/30
G01C19/00 Z
G01C19/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159891
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】山本 健広
【テーマコード(参考)】
2F105
【Fターム(参考)】
2F105BB09
2F105BB20
2F105DD01
2F105DE01
2F105DE25
2F105DF10
(57)【要約】
【課題】熱電変換素子部材により吸熱された熱を利用して電力消費装置を省電力化する。
【解決手段】ジャイロ装置1は、電力消費部を構成するジャイロ本体部20と、ジャイロ本体部20を収容するケース部材30と、ケース部材30に設けられた熱電変換素子部材40と、熱電変換素子部材40により発電された電力が入力され、熱電変換素子部材40により発電された電力を、ジャイロ本体部20の稼働電力として出力する電源部70とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力消費部(20)と、
前記電力消費部(20)を収容するケース部材(30)と、
前記ケース部材(30)に設けられた熱電変換素子部材(40)と、
前記熱電変換素子部材(40)により発電された電力が入力され、前記熱電変換素子部材(40)により発電された電力を、前記電力消費部(20)の稼働電力として出力する電源部(70)と
を備える、電力消費装置。
【請求項2】
前記ケース部材(30)の壁面部(31)は、少なくとも1つのケース曲面部(33)を有し、
前記ケース曲面部(33)に設けられた前記熱電変換素子部材(40)は、フレキシブル基板に複数の熱電変換素子が配設された可撓性部材(42)を含み、前記可撓性部材(42)は前記ケース曲面部(33)に沿って曲げられている、請求項1に記載の電力消費装置。
【請求項3】
前記電力消費部は、ジャイロ本体部(20)である、請求項1又は2に記載の電力消費装置。
【請求項4】
前記熱電変換素子部材(40)は、赤外線領域の光を吸収して発熱する発熱部材(51)を含む、請求項1又は2に記載の電力消費装置。
【請求項5】
前記電力消費部(20)と、前記熱電変換素子部材(40)との間には、熱伝導部材(34)が設けられている請求項1又は2に記載の電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は電力消費装置に関し、特に熱電変換素子部材を有する電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電力消費装置として、例えば特許文献1に記載されているようなジャイロ装置が知られている。この特許文献1に記載されたジャイロ装置は、ジャイロ及び加速度計が取り付けられた取付体を有し、この取付体には熱電変換素子としてペルチェ素子が取り付けられている。そして、このジャイロ装置では、ジャイロ及び加速度計の稼働時に発生する熱をペルチェ素子により吸熱することでジャイロ及び加速度計が冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-77267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されているようなジャイロ装置では、ジャイロ及び加速度計の稼働時に発生する熱はペルチェ素子により吸熱され、ジャイロ装置の外部に排熱されるため、熱エネルギーが廃棄されるのみであり有効に活用されていないという問題点があった。
【0005】
この発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、熱電変換素子部材により吸熱された熱を利用して電力消費装置を省電力化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の電力消費装置は、電力消費部と、電力消費部を収容するケース部材と、ケース部材に設けられた熱電変換素子部材と、熱電変換素子部により発電された電力が入力され、熱電変換素子部により発電された電力を、電力消費部の稼働電力として出力する電源部とを備える。
【0007】
また、ケース部材の壁面部は、少なくとも1つのケース曲面部を有し、ケース曲面部に設けられた熱電変換素子部は、フレキシブル基板に複数の熱電変換素子が配設された可撓性部材を含み、可撓性部材はケース曲面部に沿って曲げられていてもよい。
また、電力消費部は、ジャイロ本体部であってもよい。
また、熱電変換素子部は、赤外線領域の光を吸収して発熱する発熱部材を含んでもよい。
また、電力消費部と、熱電変換素子部との間には、熱伝導部材が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係る電力消費装置は、ケース部材に設けられた熱電変換素子部材と、熱電変換素子部により発電された電力が入力され、熱電変換素子部により発電された電力を、電力消費部の稼働電力として出力する電源部とを備えるため、熱電変換素子部材により吸熱された熱を利用して電力消費装置を省電力化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1のジャイロ装置の分解図である。
図2図1に示すジャイロ装置1を、中心軸に沿って切断した断面図である。
図3図1に示す熱電変換素子部材の構成の一部分を示す概略図である。
図4図3に示す熱電変換素子部材の部分概略図である。
図5】側面部側素子部材と光ファイバコイルとの位置関係を示す部分概略図である。
図6】従来の熱電変換素子部材の構成の一部分を示す概略図である。
図7】実施の形態2の熱電変換素子部材の部分拡大概略図である。
図8】実施の形態3のジャイロ装置を中心軸に沿って切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態1に係る電力消費装置を添付図面に基づいて説明する。図1は、実施の形態1のジャイロ装置を示す分解図である。ジャイロ装置1は、円柱状のケース部材30と、ケース部材30に収容される熱電変換素子部材40と、ケース部材30に収容される円柱状のジャイロ本体部20とを有している。なお、ジャイロ装置1は電力消費装置を構成している。
【0011】
ケース部材30は、金属で形成された円柱状のケースであり、壁面部31を有している。壁面部31は、閉じられた円形平面状のケース上面部32と、周方向に沿って湾曲したケース側面部33とから構成されている。ケース上面部32及びケース側面部33の外側部分は、ジャイロ装置1の周囲の大気に接している。なお、ケース側面部33は、ケース曲面部を構成している。
【0012】
熱電変換素子部材40は、ケース上面部32の側に設けられた上面部側素子部材41と、ケース側面部33の側に設けられた側面部側素子部材42とを有している。上面部側素子部材41は、ケース部材30に収容可能な略円形に形成されている。側面部側素子部材42は、ケース部材30に収容可能な直径を有する円柱状に曲げられて形成されている。また、側面部側素子部材42は、ケース部材30の軸方向に沿う方向の長さが、ケース部材30に収容可能な大きさとなるように形成されている。
【0013】
ジャイロ本体部20は、光ファイバジャイロであるジャイロ装置1の本体部を構成しており、ケース部材30に収容されるコイルボビン21と、コイルボビン21に巻回された光ファイバコイル22と、ベース部23と、ベース部23上でコイルボビン21の内側に配設されている演算部24とを有している。光ファイバコイル22は、図示しないレーザダイオード光源からレーザ光が入射され、サニャック効果によりジャイロ装置1の回転運動を検出する。ベース部23は、光ファイバコイル22の下端部に接続されており、演算部24をジャイロ装置1の下端部を構成するとともに、演算部24を支持している。演算部24は、光ファイバコイル22において検出された、ジャイロ装置1の回転運動を演算し、演算結果をジャイロ装置1の測定結果としてジャイロ装置1の外部に出力する。なお、ジャイロ本体部20は、電力消費部を構成している。
【0014】
図2は、図1に示すジャイロ装置1を、ジャイロ本体部20の中心軸に沿って切断した断面図である。熱電変換素子部材40の上面部側素子部材41は、ケース上面部32の下部に平坦に貼付されている。また、上面部側素子部材41の後述するフレキシブル基板43が、ケース上面部32の下部に接触している。熱電変換素子部材40の側面部側素子部材42は、ケース側面部33の湾曲に沿うように円柱状に曲げられており、絶縁部材35を介してケース側面部33の内面に貼付されている。この絶縁部材35は、熱伝導性を有する絶縁材料又は熱が伝導するように十分に薄く形成された絶縁材料で構成されている。なお、以降の説明では、上面部側素子部材41の演算部24に面する側、及び側面部側素子部材42の光ファイバコイル22に面する側を内側という。また、上面部側素子部材41のケース上面部32に接する側、及び側面部側素子部材42のケース側面部33に接する側を外側という。光ファイバコイル22の内側且つベース部23の上部には、演算部24と、電源部70とが配置されている。電源部70は、ジャイロ装置1の稼働時に、ジャイロ装置1の各構成に電力を供給する。
【0015】
次に、図3及び図4を参照して熱電変換素子部材の構成を説明する。図3は、図1に示す熱電変換素子部材40の構成の一部分を示す部分概略図である。図4は、図3に示す熱電変換素子部材40の部分概略図である。熱電変換素子部材40は、フレキシブル基板43上に配列された長方形状の複数の下部電極44を有している。各下部電極44には、n型半導体部材45及びp型半導体部材46が1個ずつ配置されている。n型半導体部材45及びp型半導体部材46は、ビスマス・テルル材(ビスマス・テルライド:BiTe)のn型半導体及びp型半導体を作製して、直方体状のインゴットに形成したものである。n型半導体部材45及びp型半導体部材46の上部には、長方形状の複数の上部電極47が配列されている。各上部電極47は、長手方向が同一方向に沿うように配列される。図3及び図4に示すフレキシブル基板43上において、上部電極47の長手方向が沿う方向を、行方向であるX方向といい、X方向と垂直な方向を列方向であるY方向という。
【0016】
下部電極44と、上部電極47とは、隣り合うn型半導体部材45及びp型半導体部材46を、交互に直列に接続している。例えば、フレキシブル基板43のX方向の一端部である第1端部43aから数えて2列目のn型半導体部材45と3列目のp型半導体部材46とは、下部電極44により接続されている。また、第1端部43aから数えて3列目のp型半導体部材46と4列目のn型半導体部材45とは、上部電極47により接続されている。そして、行方向に沿ってn型半導体部材45及びp型半導体部材46を下部電極44と上部電極47とが交互に接続することで、隣り合うn型半導体部材45及びp型半導体部材46が、交互に直列に接続されている。
【0017】
また、図3に示すように、フレキシブル基板43の第1端部43aから数えて1列目の、Y方向に沿って隣り合うn型半導体部材45及びp型半導体部材46のうち、Y方向の一端部である第3端部43cから数えて1行目及び2行目のものと、3行目及び4行目のものとを1組ずつ接続するように、長手方向がY方向に沿っている下部電極44aが配列されている。これにより、フレキシブル基板43上に配列されたn型半導体部材45及びp型半導体部材46の1行目と2行目とが接続され、また3行目と4行目とが接続されている。
【0018】
また、フレキシブル基板43のX方向の他端部である第2端部43bにおいては、Y方向に沿って隣り合うn型半導体部材45及びp型半導体部材46のうち、第3端部43cから数えて2行目及び3行目のものの1組を接続するように、長手方向がY方向に沿っている下部電極44bが配列されている。これにより、フレキシブル基板43上に配列されたn型半導体部材45及びp型半導体部材46の2行目と3行目が接続されている。また、第2端部43bにおいて、1行目のn型半導体部材45及び4行目のp型半導体部材46には、長手方向が列方向Xに沿うように下部電極44c,44dが配列されている。また、その他の下部電極44は、長手方向がX方向に沿うように配列されている。
【0019】
これにより、熱電変換素子部材40では、第2端部43b側の下部電極44cから下部電極44dまでの間で、各下部電極44及び各上部電極47を介して、フレキシブル基板43上に配列されたn型半導体部材45及びp型半導体部材46が、交互に直列に接続されてゼーベック素子を構成している。また、熱電変換素子部材40は、このような構成が適宜組み合わされて、図2に示す上面部側素子部材41及び側面部側素子部材42として形成されている。
【0020】
図5は、熱電変換素子部材40である、側面部側素子部材42を光ファイバコイル22の周囲に設けたときの、側面部側素子部材42と光ファイバコイル22との位置関係を示す部分概略図である。コイルボビン21に巻回された光ファイバコイル22の径方向外側には、上部電極47側の面がケース側面部33(図2を参照)の内面に貼り付けられている、側面部側素子部材42(熱電変換素子部材40)が配置されている。熱電変換素子部材40の、フレキシブル基板43側、すなわち径方向内側に位置する下部電極44には、長手方向が光ファイバコイル22の軸方向に沿う方向に延びるものと、長手方向が光ファイバコイル22の周方向に沿う方向に延びる下部電極44a,44bとが含まれている。また、熱電変換素子部材40の、径方向外側に位置する上部電極47は、長手方向が光ファイバコイル22の軸方向に沿う方向に延びるもののみで構成されている。
【0021】
すなわち、側面部側素子部材42においては、径方向内側に位置する下部電極44には、長手方向が光ファイバコイル22の周方向に延びる電極が含まれており、径方向外側に位置する上部電極47は、長手方向が光ファイバコイル22の軸方向に沿う方向に延びるもののみで構成されている。そのため、側面部側素子部材42(熱電変換素子部材40)は、上部電極47が設けられている側を外側にしたときに、光ファイバコイル22の周方向に沿って湾曲させやすく、可撓性を有している。なお、側面部側素子部材42は可撓性部材を構成している。
【0022】
熱電変換素子部材40である上面部側素子部材41及び側面部側素子部材42の、一端側の下部電極44c及び他端側の下部電極44dは、図示しない導線により図2に示す電源部70に接続されている。電源部70は、ジャイロ装置1の外部に設けられた図示しない外部電源に接続されており、外部から供給された電力を適当に変換してジャイロ装置1の演算部24の稼働電力及び光ファイバコイル22の稼働電力として供給する。また、電源部70には、上面部側素子部材41及び側面部側素子部材42から出力された電力が入力される。さらに、電源部70は、図示しない昇圧変換器により上面部側素子部材41及び側面部側素子部材42からの入力電力を昇圧して、演算部24の稼働電力及び光ファイバコイル22の稼働電力として供給する。
【0023】
図6は、従来の熱電変換素子部材100の構成の一部分を示す概略図であり、本図を参照して従来の熱電変換素子部材100と、本願の実施の形態1の熱電変換素子部材40との差異を説明する。なお、従来の熱電変換素子部材100において本願の実施の形態1の熱電変換素子部材40と同じ符号を付した構成要素は、熱電変換素子部材40と同一又は対応する構成要素である。従来の熱電変換素子部材100は、フレキシブル基板、又は可撓性を有さない例えばガラスエポキシ基板等であるリジット基板が用いられる、基板103を有する。基板103には、長手方向がX方向に沿うように下部電極44が配列されている。下部電極44には、n型半導体部材45及びp型半導体部材46が配置されており、n型半導体部材45及びp型半導体部材46には、上部電極47が接続されている。
【0024】
基板103の第1端部103aから数えて1列目の、Y方向に沿って隣り合うn型半導体部材45及びp型半導体部材46のうち、Y方向の一端部である第3端部103cから数えて1行目及び2行目のものと、3行目及び4行目のものとを1組ずつ接続して、長手方向がY方向に沿うように上部電極47aが配列されている。これにより、基板103上に配列されたn型半導体部材45及びp型半導体部材46の1行目と2行目、及び3行目と4行目とが接続されている。
【0025】
また、基板103のX方向の他端部である第2端部103bにおいては、Y方向に沿って隣り合うn型半導体部材45及びp型半導体部材46のうち、第3端部103cから数えて2行目及び3行目のものの1組を接続して、長手方向がY方向に沿うように上部電極47bが配列されている。これにより、基板103上に配列されたn型半導体部材45及びp型半導体部材46の2行目と3行目が接続されている。また、第2端部103bにおいて、1行目のn型半導体部材45及び4行目のp型半導体部材46には、長手方向が列方向Xに沿うように上部電極47c,47dが配列されている。また、その他の上部電極47は、長手方向がX方向に沿うように配列されている。
【0026】
従来の熱電変換素子部材100は、基板103としてリジット基板が用いられている場合には、湾曲させることが困難であり、可撓性を有さない。また、従来の熱電変換素子部材100は、基板103としてフレキシブル基板が用いられている場合であっても、径方向外側に位置する上部電極47には、長手方向が光ファイバコイル22(図5参照)の周方向に沿う方向に延びるように配列されたものが含まれている。そのため、熱電変換素子部材40は光ファイバコイル22の周方向に沿って湾曲させにくく、本願の実施の形態1の熱電変換素子部材40に対して可撓性が低い。
【0027】
次に、本実施の形態1に係るジャイロ装置1の動作について説明する。図2に示すジャイロ装置1の稼働中には、電源部70から演算部24及び光ファイバコイル22に稼働電力が供給され、演算部24及び光ファイバコイル22で熱が発生する。すなわち、演算部24及び光ファイバコイル22は、ジャイロ装置1の稼働中において熱源となる。演算部24で発生した熱は、ケース上面部32に貼り付けられた上面部側素子部材41に主として伝導する。光ファイバコイル22で発生した熱は、ケース側面部33に貼り付けられた側面部側素子部材42に主として伝導する。また、ケース上面部32及びケース側面部33はジャイロ装置1の周囲の大気に接している。
【0028】
上面部側素子部材41の外側にはケース上面部32が接触しており、上面部側素子部材41の内側には主として演算部24から放熱された熱が伝導することにより、上面部側素子部材41の内側と外側との間で温度勾配が発生する。また、側面部側素子部材42の外側にはケース側面部33が接触しており、側面部側素子部材42の内側には主として光ファイバコイル22から放熱された熱が伝導することにより、側面部側素子部材42の内側と外側との間で温度勾配が発生する。これにより、上面部側素子部材41及び側面部側素子部材42の内側と外側との間には、ゼーベック効果により起電力が生じ、上面部側素子部材41及び側面部側素子部材42は電力を出力する。このとき、図5に示すように側面部側素子部材42は光ファイバコイル22の周方向に沿って湾曲しているため、側面部側素子部材42と、熱源である光ファイバコイル22との距離が近く、光ファイバコイル22から伝導される熱が効率良く側面部側素子部材42に伝達される。
【0029】
次に、上面部側素子部材41及び側面部側素子部材42が出力した電力は、電源部70(図2を参照)に入力される。電源部70は、昇圧変換器により上面部側素子部材41及び側面部側素子部材42が出力した電力を適当な電圧に昇圧変換して、演算部24及び光ファイバコイル22の稼働電力として出力する。
【0030】
これにより、ジャイロ装置1の稼働によってジャイロ本体部20のコイルボビン21及び演算部24から発生した熱を、熱電変換素子部材40である上面部側素子部材41及び側面部側素子部材42により電力に変換し、電源部70に入力することで、ジャイロ装置1の稼働によって発生した熱をジャイロ装置1の稼働電力に変換するため、ジャイロ装置1の消費電力量を低減して省電力化することができる。
【0031】
このように、本実施の形態1に係るジャイロ装置1は、電力消費部を構成するジャイロ本体部20と、ジャイロ本体部20を収容するケース部材30と、ケース部材30に設けられた熱電変換素子部材40と、熱電変換素子部材40により発電された電力が入力され、熱電変換素子部材40により発電された電力を、ジャイロ本体部20の稼働電力として出力する電源部70とを備えるため、熱電変換素子部材40により吸熱された熱をジャイロ装置1の稼働電力に利用して、ジャイロ装置1の消費電力量を低減して省電力化することができる。
【0032】
また、ケース部材30の壁面部31は、少なくとも1つのケース側面部33を有し、ケース側面部33に設けられた熱電変換素子部材40は、フレキシブル基板に複数の熱電変換素子が配設された側面部側素子部材42を含み、側面部側素子部材42はケース側面部33に沿って曲げられているため、熱源である側面部側素子部材42は光ファイバコイル22の周方向に沿って湾曲し、側面部側素子部材42と光ファイバコイル22との距離が近くなり、側面部側素子部材42への熱の伝導性が向上して、ジャイロ装置1を更に省電力化することができる。
【0033】
また、電力消費部は、ジャイロ本体部20であるため、発熱量の大きいジャイロ本体部20の熱を利用してジャイロ装置1を省電力化することができる。
【0034】
なお、本実施の形態1では、側面部側素子部材42のフレキシブル基板43に下部電極44が設けられ、下部電極44を内側にして側面部側素子部材42がケース側面部33に取り付けられていたが、側面部側素子部材42はこれ以外の可撓性を有する任意の熱電変換素子部材であってもよい。例えば、側面部側素子部材42のフレキシブル基板43に上部電極47が設けられ、上部電極47を外側にしてフレキシブル基板43がケース側面部33の内側に取り付けられていてもよい。
【0035】
また、本実施の形態1では、上面部側素子部材41はフレキシブル基板43を備えた、可撓性を有する熱電変換素子部材40であったが、可撓性を有さない任意の熱電変換素子部材であってもよい。例えば、図6に示す従来の熱電変換素子部材100であってもよい。
【0036】
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2について説明する。図1図6の参照符号と同一の符号は、同一または同様な構成要素であるのでその詳細な説明は省略する。実施の形態2に係る電力消費装置は、実施の形態1に対して、赤外線領域の光を吸収して発熱する発熱部材を含む熱電変換素子部材を用いるものである。
【0037】
図7は、本実施の形態2の熱電変換素子部材の部分拡大概略図である。ジャイロ装置1(図2を参照)の熱電変換素子部材40には、n型半導体部材45とp型半導体部材46とを接続する上部電極48が設けられている。上部電極48は、銀(Ag)フィルムで形成されている。上部電極48の上部には、フッ化カルシウム(CaF)層49が積層されている。フッ化カルシウム層49の上部には、平板状の銀ナノ粒子である銀ナノディスク(AgND)50が複数配列されている。上部電極48、フッ化カルシウム層49及び銀ナノディスク50は、メタマテリアル構造51を構成している。また、メタマテリアル構造51は、発熱部材を構成している。
【0038】
メタマテリアル構造51は、熱輻射による赤外線領域の光を吸収して磁場共鳴を励起する。その結果、磁場共鳴の損失の一部により熱が発生する。発生した熱は銀フィルムで形成された上部電極48を介して下部のn型半導体部材45及びp型半導体部材46に伝搬し、n型半導体部材45の内部及びp型半導体部材46の内部で温度勾配が発生することで、熱電変換素子部材40において起電力が生じる。銀ナノディスク50の直径と配列周期、フッ化カルシウム層49の厚さは、メタマテリアル構造51の吸収ピークが500K(ケルビン)の黒体の熱輻射スペクトルピークと一致するように最適化されている。その他の構成は実施の形態1と同じである。
【0039】
次に、本実施の形態2に係るジャイロ装置1の動作について説明する。図2に示すジャイロ装置1の熱電変換素子部材40に、光ファイバコイル22及び演算部24から、熱輻射により赤外線領域の光が放射されると、図7に示すメタマテリアル構造51が赤外線領域の光を吸収して磁場共鳴を励起し、磁場共鳴の損失の一部により熱が発生する。この発生した熱が上部電極48を介して下部のn型半導体部材45及びp型半導体部材46に伝搬し、n型半導体部材45の内部及びp型半導体部材46の内部で温度勾配(熱勾配)が発生することで、熱電変換素子部材40において起電力が生じる。これにより発生した電力が、電源部70(図2を参照)に入力されることで、ジャイロ装置1の稼働電力として利用される。
【0040】
一般的に、熱電変換素子部材は、一方の面と他方の面との間の温度勾配が0℃又は0℃に近い小さい値の場合には、起電力を生じないか、又は非常に小さな起電力しか生じない。一方、本実施の形態2のメタマテリアル構造51を有する熱電変換素子部材40は、熱源である光ファイバコイル22及び演算部24の熱輻射による赤外線領域の光を吸収してn型半導体部材45の膜内及びp型半導体部材46の膜内で温度勾配を発生させることができる。そのため、ジャイロ装置1の周囲の大気温度が高い、又はジャイロ装置1の稼働開始からの経過時間が少なく、光ファイバコイル22と演算部24とに蓄積された熱量が小さい等の理由で、ケース部材30の内部と外部との間の温度勾配が0℃又は0℃に近い小さい値であることにより、熱電変換素子部材40の外側の面と内側の面との間の温度勾配が0℃又は0℃に近い小さい値となる場合であっても、赤外線領域の光によりn型半導体部材45の膜内及びp型半導体部材46の膜内で発生した温度勾配により、熱電変換素子部材40が電力を出力することができる。
【0041】
このように、本実施の形態2に係るジャイロ装置1は、熱電変換素子部材40が、赤外線領域の光を吸収して発熱するメタマテリアル構造51を含むため、熱電変換素子部材40の一方の面と他方の面との間の温度勾配が0℃又は0℃に近い小さい値である場合であっても、熱電変換素子部材40が電力を出力することができる。
【0042】
なお、本実施の形態2のメタマテリアル構造51は、銀フィルムにより形成された上部電極48と、フッ化カルシウム層49と、銀ナノディスク50とから構成されていたが、これ以外の任意の材料及び構成によるものであってもよい。また、本実施の形態2に係る発熱部材は、メタマテリアル構造51から構成されていたが、発熱部材は他の任意の構造及び部材から構成されていてもよい。
【0043】
実施の形態3.
次に、本発明の実施の形態3について説明する。実施の形態3に係る電力消費装置は、実施の形態1に対して、ジャイロ本体部と熱電変換素子部材との間に熱伝導部材を設けたものである。
図8は、実施の形態3に係るジャイロ装置を中心軸に沿って切断した断面図である。ジャイロ本体部20の光ファイバコイル22と、熱電変換素子部材40である側面部側素子部材42との間には、熱伝導部材34が配置されている。熱伝導部材34は、シリコーンベースの粘土状熱伝導部材であって、高い熱伝導性、絶縁性及び可塑性を有する。これにより、光ファイバコイル22と側面部側素子部材42との間の熱伝導性が向上する。その他の構成は実施の形態1と同じである。
【0044】
このように、ジャイロ本体部20と、熱電変換素子部材40との間には、熱伝導部材34が設けられているため、ジャイロ本体部20の光ファイバコイル22と側面部側素子部材42との間の熱伝導性が向上することにより、光ファイバコイル22から発生する熱をジャイロ装置1の稼働電力としてより効率よく利用することができる。
【0045】
なお、本実施の形態3に係るジャイロ装置では、光ファイバコイル22と側面部側素子部材42との間に、熱伝導部材34が設けられていたが、ジャイロ本体部20の演算部24と、熱電変換素子部材40である上面部側素子部材41との間に熱伝導部材34が配置されていてもよい。また、光ファイバコイル22と側面部側素子部材42との間、及び演算部24と上面部側素子部材41との間の両方に熱伝導部材34が設けられていてもよい。これにより、演算部24と上面部側素子部材41との間の熱伝導性が向上し、演算部24から発生する熱をジャイロ装置1の稼働電力としてより効率よく利用することができる。
【0046】
また、本実施の形態3に係る熱伝導部材34は、シリコーンベースの粘土状熱伝導部材であったが、これ以外の任意の熱伝導部材を用いてもよい。例えば、セラミックス材料をシリコーン部材に充填した、絶縁性を有する熱伝導部材を用いてもよいし、また、熱電変換素子部材40に適切な絶縁処理を施して、任意の絶縁性を有さない熱伝導部材を用いてもよいし、さらに、既知の熱伝導シート部材を用いてもよい。
【0047】
また、本実施の形態1~3では、電力消費装置として光ファイバジャイロであるジャイロ装置1を用いていたが、これに限定されるものではなく、例えばリングレーザジャイロ装置等の他の種類のジャイロ装置を用いてもよいし、例えば加速度計等のジャイロ装置以外の任意の電力消費装置を用いてもよい。
【0048】
また、本実施の形態1~3では、ケース部材30は金属により形成されていたが、これに限定されるものではない。例えば、ケース部材30は一部又は全体が放熱性に優れる任意の樹脂等により形成されていてもよい。
【0049】
また、本実施の形態1~3では、熱電変換素子部材40である上面部側素子部材41及び側面部側素子部材42としてゼーベック効果を生じるゼーベック素子が用いられていたが、この上面部側素子部材41及び側面部側素子部材42の少なくともいずれか一方に電力を供給してペルチェ素子として用いてもよい。これにより、特にジャイロ本体部20の冷却が必要な場合に、上面部側素子部材41及び側面部側素子部材42の少なくともいずれか一方に電力を供給し、ペルチェ効果によりジャイロ本体部20を冷却することができる。
【0050】
また、本実施の形態1~3では、n型半導体部材45とp型半導体部材46とは、ビスマス・テルル材のインゴットにより形成されていたが、ビスマス・テルル材以外の半導体材料を用いて形成されていてもよい。
【0051】
また、本発明の実施の形態1~3に含まれる構成要素及びその変形例に含まれる構成要素は、適当に組み合わせて用いることができる。
【0052】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0053】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0054】
(付記1)
電力消費部(20)と、
前記電力消費部(20)を収容するケース部材(30)と、
前記ケース部材(30)に設けられた熱電変換素子部材(40)と、
前記熱電変換素子部材(40)により発電された電力が入力され、前記熱電変換素子部材(40)により発電された電力を、前記電力消費部(20)の稼働電力として出力する電源部(70)と
を備える、電力消費装置。
(付記2)
前記ケース部材(30)の壁面部(31)は、少なくとも1つのケース曲面部(33)を有し、
前記ケース曲面部(33)に設けられた前記熱電変換素子部材(40)は、フレキシブル基板に複数の熱電変換素子が配設された可撓性部材(42)を含み、前記可撓性部材(42)は前記ケース曲面部(33)に沿って曲げられている、付記1に記載の電力消費装置。
(付記3)
前記電力消費部は、ジャイロ本体部(20)である、付記1又は2に記載の電力消費装置。
(付記4)
前記熱電変換素子部材(40)は、赤外線領域の光を吸収して発熱する発熱部材(51)を含む、付記1~3のいずれか1項に記載の電力消費装置。
(付記5)
前記電力消費部(20)と、前記熱電変換素子部材(40)との間には、熱伝導部材(34)が設けられている付記1~4のいずれか1項に記載の電力消費装置。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本実施の形態1に係るジャイロ装置1によると、電力消費部を構成するジャイロ本体部20と、ジャイロ本体部20を収容するケース部材30と、ケース部材30に設けられた熱電変換素子部材40と、熱電変換素子部材40により発電された電力が入力され、熱電変換素子部材40により発電された電力を、ジャイロ本体部20の稼働電力として出力する電源部70とを備えるため、熱電変換素子部材40により吸熱された熱をジャイロ装置1の稼働電力に利用して、ジャイロ装置1の消費電力量を低減して省電力化することができ、稼働により熱が発生するジャイロ装置において使用する用途に適している。
【符号の説明】
【0056】
20 ジャイロ本体部(電力消費部)、30 ケース部材、31 壁面部、33 ケース側面部(ケース曲面部)、34 熱伝導部材、40 熱電変換素子部材、42 側面部側素子部材(可撓性部材)、51 メタマテリアル構造(発熱部材)、70 電源部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8