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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053596
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】下半内車室の変形調整方法
(51)【国際特許分類】
   F01D 25/26 20060101AFI20240409BHJP
   F01D 25/28 20060101ALI20240409BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20240409BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
F01D25/26 F
F01D25/28 A
F02C7/00 E
F02C7/00 D
F01D25/00 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159915
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】横井 伯幸
(72)【発明者】
【氏名】堤 栄一
(72)【発明者】
【氏名】小松原 拓也
(72)【発明者】
【氏名】合屋 直樹
(57)【要約】
【課題】下半内車室の変形調整中でも、この下半内車室に上半内車室を容易に接続できるようにする。
【解決手段】下半内車室は、半円弧状を成す下半内車室本体と、前記下半内車室本体に設けられている内車室付属部と、有する。前記内車室付属部は、前記下半内車室本体より径方向外側に突出し且つ前記下半内車室本体の下接触面より上側に突出した突出部を有する。この回転機械における下半内車室の変形調整方法では、前記突出部に対して径方向に相対移動不能に取り付け可能な内車室側部材を有する変形調整装置を準備する準備工程と、前記内車室側部材を前記突出部に取り付けて、前記変形調整装置を前記突出部周りに配置する装置配置工程と、前記突出部に取り付けられた前記内車室側部材を径方向内側に押す変形調整工程と、を実行する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に延びる軸線を中心として回転可能なロータと、
前記ロータの外周を覆う内車室と、
前記内車室の外周を覆う外車室と、
を備え、
前記内車室は、前記軸線を中心として半円弧状を成し、前記ロータ中で前記軸線より下側の部分を覆う下半内車室と、前記軸線を中心として半円弧状を成し、前記ロータ中で前記軸線よりも上側の部分を覆う上半内車室と、を有し、
前記外車室は、前記軸線を中心として半円弧状を成し、前記下半内車室の外周側を覆う下半外車室と、前記軸線を中心として半円弧状を成し、前記上半内車室の外周側を覆う上半外車室と、を有し、
前記下半内車室は、前記軸線を中心として半円弧状を成し、前記ロータ中で前記軸線より下側の部分を覆う下半内車室本体と、前記下半内車室本体に設けられている内車室付属部と、有し、
前記下半内車室本体は、前記軸線に対する周方向の両端に、水平方向に広がって、前記上半内車室と接触可能な下接触面を有し、
前記内車室付属部は、前記下半内車室本体より前記軸線に対する径方向外側に突出し且つ前記下接触面より上側に突出した突出部を有する、
回転機械における下半内車室の変形調整方法において、
前記突出部に対して前記軸線に対する径方向に相対移動不能に取り付け可能な内車室側部材を有する変形調整装置を準備する準備工程と、
前記内車室側部材を前記突出部に取り付け、前記内車室側部材を有する前記変形調整装置を前記突出部周りに配置する装置配置工程と、
前記突出部に取り付けられた前記内車室側部材を前記軸線に対する径方向内側に押す、又は前記内車室側部材を前記径方向外側に引く変形調整工程と、
を実行する下半内車室の変形調整方法。
【請求項2】
請求項1に記載の下半内車室の変形調整方法において、
前記準備工程で準備する前記変形調整装置は、
前記下半外車室の前記周方向の端に、前記下半外車室に対して前記径方向外側又は前記径方向内側に相対移動不能に取り付け可能な外車室側部材と、
前記突出部に取り付けられた前記内車室側部材と前記下半外車室に取り付けられた前記外車室側部材との間の前記径方向の距離を調整可能な距離調整機構と、
を有し、
前記装置配置工程では、前記外車室側部材を前記下半外車室に取り付けると共に、前記距離調整機構を設け、
前記変形調整工程では、前記距離調整機構を操作して、前記内車室側部材と前記外車室側部材との間の前記径方向の距離を縮める、又は、前記内車室側部材と前記下半外車室との間の前記径方向の距離を広げる、
下半内車室の変形調整方法。
【請求項3】
請求項2に記載の下半内車室の変形調整方法において、
前記下半外車室は、前記周方向の両端に、水平方向に広がって、前記上半外車室と接触可能な下接触面と、前記下接触面から凹み、前記上半外車室と前記下半外車室とを接続するための締結ボルトが通る複数のボルト孔と、を有し、
前記装置配置工程では、前記複数のボルト孔のうち、少なくとも一のボルト孔を利用して、前記外車室側部材を前記径方向外側又は前記径方向内側に相対移動不能に前記下半外車室に取り付ける、
下半内車室の変形調整方法。
【請求項4】
請求項3に記載の下半内車室の変形調整方法において、
前記外車室側部材は、前記複数のボルト孔のうちの一のボルト孔に挿入可能なピンを有し、
前記装置配置工程では、前記複数のボルト孔のうちの一のボルト孔に前記ピンの一部を入れ、前記ピンの他の一部を前記一のボルト孔から突出させる、
下半内車室の変形調整方法。
【請求項5】
請求項3に記載の下半内車室の変形調整方法において、
前記外車室側部材は、前記複数のボルト孔のうちのいずれかのボルト孔に挿入可能な第一ピン及び第二ピンと、前記第一ピン及び前記第二ピンに接触可能なピン接触部材と、を有し、
前記装置配置工程では、前記複数のボルト孔のうちの第一ボルト孔に前記第一ピンの一部を入れ、前記第一ピンの他の一部を前記第一ボルト孔から突出させ、前記複数のボルト孔のうちの第二ボルト孔に前記第二ピンの一部を入れ、前記第二ピンの他の一部を前記第二ボルト孔から突出させ、前記ピン接触部材を前記第一ピン及び前記第二ピンに接触させる、
下半内車室の変形調整方法。
【請求項6】
請求項5に記載の下半内車室の変形調整方法において、
前記第一ピンは、前記第一ボルト孔に挿通可能な前記締結ボルトであり、
前記第二ピンは、前記第一ボルト孔に挿通可能な前記締結ボルトである、
下半内車室の変形調整方法。
【請求項7】
請求項2から6のいずれか一項に記載の下半内車室の変形調整方法において、
前記距離調整機構は、雄ネジが形成されているロッドと、前記ロッドの前記雄ネジに螺合可能な雌ネジが形成されているナット又は前記外車室側部材と、を有し、
前記装置配置工程では、前記ロッドを前記外車室側部材に挿通させると共に、前記ロッドの先端を前記内車室側部材に取り付け、前記ロッドの雄ネジを前記雌ネジに螺合させ、
前記変形調整工程では、前記雌ネジが形成されている前記ナット又は前記外車室側部材を前記ロッドに対して相対回転させる、
下半内車室の変形調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機械における下半内車室の変形調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンやガスタービン等の回転機械は、一般的に、水平方向に延びる軸線を中心として回転可能なロータと、ロータの外周を覆う内車室と、内車室の外周を覆う外車室と、を備える。内車室は、軸線を中心として半円弧状を成しロータ中で軸線より下側の部分を覆う下半内車室と、軸線を中心として半円弧状を成し、ロータ中で軸線よりも上側の部分を覆う上半内車室と、を有する。外車室は、軸線を中心として半円弧状を成し、下半内車室の外周側を覆う下半外車室と、軸線を中心として半円弧状を成し、上半内車室の外周側を覆う上半外車室と、を有する。
【0003】
以上のような回転機械では、内車室が自重や熱影響等で経年変形することがある。内車室が変形すると、回転機械の分解等が困難になることがある。そこで、以下の特許文献1に記載には、変形調整装置を用いて、内車室の変形を調整する技術が開示されている。
【0004】
変形調整装置は、下半翼環である下半内車室に取り付けられる内車室側部材と、この下半内車室の外周側に配置されている下半外車室に取り付けられる外車室側部材と、内車室側部材と外車室側部材との距離を調節するためのロッドと、を有する。下半内車室には、水平方向に広がって上半内車室と接触可能な下接触面と、この下接触面から鉛直方向に凹んでいるボルト孔と、を有する。下半外車室には、水平方向に広がって上半外車室と接触可能な下接触面と、この下接触面から鉛直方向に凹んでいるボルト孔と、を有する。内車室側部材は、下半内車室のボルト孔に一部が挿通され、下半内車室の下接触面から上方に突出している締結ボルトに取り付けられる。また、外車室側部材は、下半外車室のボルト孔に一部が挿通され、下半外車室の下接触面から上方に突出している締結ボルトに取り付けられる。ロッドの先端には雄ネジが形成されている。また、外車室側部材には、ロッドの雄ネジがネジ込み可能な雌ネジが形成されている。この技術では、外車室側部材に対するロッドのネジ込み量を調整することで、内車室側部材と外車室側部材との距離が調整され、内車室側部材が取り付けられている下半内車室の変形が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2020/036120号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の技術では、下半内車室の下接触面から突出している締結ボルトに、変形調整装置の内車室側部材を取り付けるため、変形調整装置を用いて下半内車室の変形を調整しているとき、下半内車室の下接触面上に変形調整装置の内車室側部材が存在することになる。このため、上記特許文献1に記載の技術では、下半内車室の変形を調整している状態で、この下半内車室に上半内車室を接続することが極めて面倒である、という問題点がある。
【0007】
そこで、本開示は、下半内車室の変形を調整している状態でも、この下半内車室に上半内車室を容易に接続することが可能な下半内車室の変形調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するための発明に係る一態様の下半内車室の変形調整方法は、以下の回転機械に適用される。
この回転機械は、水平方向に延びる軸線を中心として回転可能なロータと、前記ロータの外周を覆う内車室と、前記内車室の外周を覆う外車室と、を備える。前記内車室は、前記軸線を中心として半円弧状を成し、前記ロータ中で前記軸線より下側の部分を覆う下半内車室と、前記軸線を中心として半円弧状を成し、前記ロータ中で前記軸線よりも上側の部分を覆う上半内車室と、を有する。前記外車室は、前記軸線を中心として半円弧状を成し、前記下半内車室の外周側を覆う下半外車室と、前記軸線を中心として半円弧状を成し、前記上半内車室の外周側を覆う上半外車室と、を有する。前記下半内車室は、前記軸線を中心として半円弧状を成し、前記ロータ中で前記軸線より下側の部分を覆う下半内車室本体と、前記下半内車室本体に設けられている内車室付属部と、有する。前記下半内車室本体は、前記軸線に対する周方向の両端に、水平方向に広がって、前記上半内車室と接触可能な下接触面を有する。前記内車室付属部は、前記下半内車室本体より前記軸線に対する径方向外側に突出し且つ前記下接触面より上側に突出した突出部を有する。
以上の回転機械における下半内車室の変形調整方法では、前記突出部に対して前記軸線に対する径方向に相対移動不能に取り付け可能な内車室側部材を有する変形調整装置を準備する準備工程と、前記内車室側部材を前記突出部に取り付け、前記内車室側部材を有する前記変形調整装置を前記突出部周りに配置する装置配置工程と、前記突出部に取り付けられた前記内車室側部材を前記軸線に対する径方向内側に押す、又は前記内車室側部材を前記径方向外側に引く変形調整工程と、を実行する。
【0009】
本態様では、下半内車室の変形を調整できるので、回転機械の分解時や組立時に、下半内車室とロータとが接触する等の不具合を回避することができる。さらに、本態様では、変形調整装置を用いて下半内車室の変形を調整しているときに、下半内車室の下接触面上に、変形調整装置が存在しないため、変形調整中の下半内車室に上半内車室を容易に接続することができる。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一態様によれば、下半内車室の変形又は位置を調整している状態でも、この下半内車室に上半内車室を容易に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示に係る一実施形態における回転機械の模式的な断面図である。
図2】本開示に係る一実施形態における回転機械の要部断面図である。
図3】本開示に係る一実施形態における下半内車室の第一変形形態を示す説明図である。
図4】本開示に係る一実施形態における下半内車室の第二変形形態を示す説明図である。
図5】本開示に係る第一実施形態における下半内車室の変形調整方法を示すフローチャートである。
図6】本開示に係る第一実施形態で、変形で下半内車室の左右方向の寸法が長くなっているときの変形調整装置の配置を示す平面図である。
図7図6におけるVII-VII線断面図である。
図8図6におけるVIII-VIII線断面図である。
図9】本開示に係る第一実施形態で、変形で下半内車室の上下方向の寸法が長くなっているときの変形調整装置の配置を示す断面図である。
図10】本開示に係る第二実施形態で、変形で下半内車室の左右方向の寸法が長くなっているときの変形調整装置の配置を示す平面図である。
図11図10におけるXI-XI線断面図である。
図12図10におけるXII-XII線断面図である。
図13】本開示に係る第二実施形態で、変形で下半内車室の上下方向の寸法が長くなっているときの変形調整装置の配置を示す平面図である。
図14図13におけるXIV-XIV線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の各種実施形態及びその変形例について、図面を参照して詳細に説明する。「下半内車室の変形調整方法」の実施形態について説明する前に、この方法が適用される回転機械の実施形態について説明する。
【0013】
「回転機械の実施形態」
回転機械の実施形態について、図1図4を参照して説明する。
【0014】
本実施形態における回転機械は、例えば、ガスタービンである。この回転機械は、図1に示すように、水平方向に延びる軸線Arを中心として回転可能なロータ10と、複数の静翼列15と、ロータ10の外周を覆う内車室20と、内車室20の外周を覆う外車室30と、を備える。ここで、軸線Arが延びる方向を軸線方向Da、軸線Arに垂直な方向を径方向Dr、軸線Arに対する周方向を単に周方向Dcとする。また、径方向Drで、軸線Arに近づく側を径方向内側Dri、その反対側を径方向外側Droとする。さらに、径方向Drで且つ鉛直方向を上下方向Dvとする。
【0015】
ロータ10は、軸線Arを中心として軸線方向Daに延びるロータ軸11と、ロータ軸11に取り付けられている複数の動翼列12と、を有する。複数の動翼列12は、軸線方向Daに並んでいる。複数の動翼列12は、いずれも、周方向Dcに並ぶ複数の動翼13を有する。
【0016】
複数の静翼列15は、軸線方向Daに並んで、内車室20の内周側に取り付けられている。このため、この内車室20は、翼環と呼ばれることもある。複数の静翼列15は、いずれも、周方向Dcに並ぶ複数の静翼16を有する。
【0017】
内車室20は、上半内車室22uと、下半内車室22dと、上半内車室22uと下半内車室22dとを締結する複数の内車室締結ボルト21と、を有する。上半内車室22uは、軸線Arを中心として半円弧状を成し、ロータ10中で軸線Arよりも上側Dvuの部分を覆う。下半内車室22dは、軸線Arを中心として半円弧状を成し、ロータ10中で軸線Arより下側Dvdの部分を覆う。
【0018】
外車室30は、上半外車室32uと、下半外車室32dと、上半外車室32uと下半外車室32dとを締結する複数の外車室締結ボルト31と、を有する。上半外車室32uは、軸線Arを中心として半円弧状を成し、上半内車室22uの外周側を覆う。下半外車室32dは、軸線Arを中心として半円弧状を成し、下半内車室22dの外周側を覆う。
【0019】
下半内車室22dは、図1及び図2に示すように、下半内車室本体23と、複数の内車室付属部26と、を有する。下半内車室本体23は、軸線Arを中心として半円弧状を成し、ロータ10中で軸線Arより下側Dvdの部分を覆う。複数の内車室付属部26は、下半内車室本体23に設けられている。下半内車室本体23は、下接触面25と、複数のボルト孔24と、を有する。下接触面25は、下半内車室本体23における周方向Dcの両端で、水平方向に広がって、上側Dvuを向き、上半内車室22uと接触する面である。複数のボルト孔24は、下接触面25から凹んで、下半内車室本体23を上下方向Dvに貫通する孔である。複数のボルト孔24は、軸線方向Daに並んでいる。複数のボルト孔24には、内車室締結ボルト21が挿通される。この内車室締結ボルト21により、下半内車室22dと上半内車室22uとが締結される。複数の内車室付属部26は、いずれも、下半内車室本体23から径方向外側Droに突出し且つ下接触面25より上側Dvuに突出した突出部27を有する。複数の内車室付属部26は、軸線方向Daに並んでいる。複数の内車室付属部26は、いずれも、ネジ28で下半内車室本体23に固定されている。この内車室付属部26は、キーと呼ばれることがある。
【0020】
下半外車室32dは、下半外車室本体33と、複数の外車室付属部36と、を有する。下半外車室本体33は、軸線Arを中心として半円弧状を成し、下半内車室22dの外周側を覆う。複数の外車室付属部36は、下半外車室本体33に設けられている。下半外車室本体33は、下接触面35と、複数のボルト孔34と、を有する。下接触面35は、下半外車室本体33における周方向Dcの両端に、水平方向に広がって、上側Dvuを向き、上半外車室32uと接触する面である。複数のボルト孔34は、下接触面35から凹んで、下半外車室本体33を上下方向Dvに貫通する孔である。複数のボルト孔34は、軸線方向Daに並んでいる。複数のボルト孔34には、外車室締結ボルト31が挿通される。この外車室締結ボルト31により、下半外車室32dと上半外車室32uとが締結される。複数の外車室付属部36は、軸線方向Daに並んでいる。複数の外車室付属部36は、いずれも、下半外車室本体33の下接触面35中で径方向内側Driの部分に、ネジで固定されている。外車室付属部36は、ライナーと呼ばれることがある。
【0021】
外車室付属部36は、内車室付属部26の突出部27と下半外車室本体33の下接触面35との間に位置し、内車室付属部26の突出部27と下半外車室本体33とで挟まれる。このため、外車室付属部36の上下方向Dvの厚さを調節することで、下半外車室32dに対する下半内車室22dの上下方向Dvの位置を調節することができる。よって、内車室付属部26及び外車室付属部36は、下半外車室32dに対する下半内車室22dの上下方向Dvの位置を調節する役目を担う。
【0022】
下半内車室22dは、自重や熱影響等で経年変形する。この場合、例えば、図3に示すように、変形後の下半内車室22d(図3中で想像線で示す)の上下方向Dvの寸法が長くなり、水平方向の寸法が短くなる場合や、図4に示すように、変形後の下半内車室22d(図4中で想像線で示す)の左右方向の寸法が長くなり、上下方向Dvの寸法が短くなる場合がある。このように、下半内車室22dが変形すると、回転機械の分解時や組立時に、下半内車室22dとロータ10とが接触する等の不具合が発生する。
【0023】
このため、下半内車室22dの変形を調整する方法が検討されている。
【0024】
「下半内車室の変形調整方法の第一実施形態」
下半内車室の変形調整方法の第一実施形態について、図5図9を参照して説明する。
【0025】
本実施形態における下半内車室の変形調整方法について、図5に示すフローチャートに従って説明する。
【0026】
まず、変形調整装置50を準備する(準備工程S1)。この変形調整装置50は、図6図8に示すように、内車室側部材51と、外車室側部材53と、距離調整機構57と、を有する。
【0027】
内車室側部材51は、内車室付属部26の突出部27に対して、径方向Drに相対移動不能に取付可能である。具体的に、本実施形態における内車室側部材51は、内車室付属部26の突出部27にネジ52(図8参照)で固定可能である。
【0028】
外車室側部材53は、下半外車室32dに対して径方向Drに相対移動不能に取付可能である。この外車室側部材53は、下半外車室32dのボルト孔34に挿通可能なピン54を有する。
【0029】
距離調整機構57は、突出部27に取り付けられた内車室側部材51と下半外車室32dに取り付けられた外車室側部材53との間の径方向Drの距離を調整可能である。距離調整機構57は、雄ネジが形成されているロッド58と、ロッド58の雄ネジに螺合可能な雌ネジが形成されているナット59と、を有する。ピン54には、このロッド58が挿通可能なロッド挿通孔54hが形成されている。内車室側部材51には、このロッド58の先端を固定可能なロッド固定孔51hが形成されている。
【0030】
次に、変形調整装置50を内車室付属部26の突出部27周りに配置する(装置配置工程S2)。この装置配置工程S2では、まず、下半外車室32dの複数のボルト孔34のうちで、突出部27に最も近い位置の一のボルト孔34に、外車室側部材53のピン54の一部を入れ、このピン54の一部をボルト孔34から突出させる。次に、変形調整装置50のロッド58をピン54のロッド挿通孔54hに挿通させてから、このロッド58の先端を内車室側部材51のロッド固定孔51hに入れて、このロッド58を内車室側部材51に固定する。次に、変形調整装置50の内車室側部材51を突出部27にネジ52で固定する。この結果、ロッド58の長手方向が径方向Drに維持される。そして、ロッド58の雄ネジに変形調整装置50のナット59を螺合させる。なお、装置配置工程S2において、変形調整装置50を構成する各部品の配置順序は、以上の順序に限定されない。
【0031】
仮に、図3に示すように、下半内車室22dの変形により、変形後の下半内車室22d(図3中で想像線で示す)の上下方向Dvの寸法が長くなり、この下半内車室22dの左右方向の寸法が短くなっている場合には、図6及び図7に示すように、ナット59がピン54の径方向外側Droに位置するように、このナット59をロッド58の雄ネジに螺合させる。また、仮に、図4に示すように、下半内車室22dの変形により、変形後の下半内車室22d(図3中で想像線で示す)の左右方向の寸法が長くなり、この下半内車室22dの上下方向Dvの寸法が短くなっている場合には、図9に示すように、ナット59がピン54の径方向内側Driに位置するように、このナット59をロッド58の雄ネジに螺合させる。この場合、ロッド58をピン54のロッド挿通孔54hに挿通させる前に、このナット59をロッド58の雄ネジに螺合させておく必要がある。
【0032】
そして、変形調整装置50のナット59を操作して、内車室側部材51と外車室側部材53との間の径方向Drの距離を変更する(変形調整工程S3)。仮に、装置配置工程S2で、図6及び図7に示すように、ナット59をピン54の径方向外側Droに位置するように、このナット59をロッド58の雄ネジに螺合させた場合、ロッド58に対してナット59を回転させて、内車室側部材51と外車室側部材53との間の径方向Drの距離を縮める。この結果、内車室側部材51が径方向外側Droに引かれる。以上のナット59操作で、図3に示すように、下半内車室22dの変形により、この下半内車室22dの上下方向Dvの寸法が長くなり、この下半内車室22dの左右方向の寸法が短くなっている場合でも、この下半内車室22dの上下方向Dvの寸法が短くなり、下半内車室22dの左右方向の寸法が長くなって、下半内車室22dの変形量が少なくなる。また、仮に、装置配置工程S2で、図9に示すように、ナット59をピン54の径方向内側Driに位置するように、このナット59をロッド58の雄ネジに螺合させた場合、ロッド58に対してナット59を回転させて、内車室側部材51と外車室側部材53との間の径方向Drの距離を広げる。この結果、内車室側部材51が径方向外側Driに押される。以上のナット59操作で、図4に示すように、下半内車室22dの変形により、この下半内車室22dの左右方向の寸法が長くなり、この下半内車室22dの上下方向Dvの寸法が短くなっている場合でも、下半内車室22dの左右方向の寸法が短くなり、下半内車室22dの上下方向Dvの寸法が長くなって、下半内車室22dの変形量が少なくなる。
【0033】
以上で、下半内車室22dの変形調整方法における全工程が終了する。
【0034】
以上のように、本実施形態では、下半内車室22dの変形を調整できるので、回転機械の分解時や組立時に、下半内車室22dとロータ10とが接触する等の不具合を回避することができる。さらに、本実施形態では、変形調整装置50を用いて下半内車室22dの変形を調整しているときに、下半内車室22dの下接触面25上に、変形調整装置50が存在しないため、変形調整中の下半内車室22dに上半内車室22uを容易に接続することができる。
【0035】
また、本実施形態では、雌ネジが形成されているナット59をロッド58に対して相対回転させることで、内車室側部材51と外車室側部材53との間の距離を縮める、又は、内車室側部材51と外車室側部材53との間の距離を広げることができる。このため、本実施形態では、下半内車室22dの変形を容易に微調整することができる。
【0036】
なお、本実施形態の距離調整機構57は、ロッド58とナット59とを有する。しかしながら、ナット59を省略してもよい。この場合、ピン54をナットとして使用する。具体的に、ピン54に、ロッド58の雄ネジに螺合可能な雌ネジを形成しておく。さらに、突出部27に対してロッド58を、径方向Dr及び軸線方向Daに移動不能で且つ回転自在に取り付ける。そして、変形調整工程S3では、ロッド58をピン54に対して回転させて、内車室側部材51と外車室側部材53との間の距離を変更する。
【0037】
「下半内車室の変形調整方法の第二実施形態」
下半内車室の変形調整方法の第二実施形態について、図10図14を参照して説明する。
【0038】
本実施形態における下半内車室の変形調整方法も、第一実施形態における下半内車室の変形調整方法と同様、準備工程S1、装置配置工程S2、変形調整工程S3を実行する。
【0039】
本実施形態における下半内車室22dの変形調整方法では、図10図12に示すように、準備工程S1で準備する変形調整装置50xが第一実施形態における変形調整装置50と異なる。
【0040】
第一実施形態では、図6に示すように、突出部27の軸線方向Daの中心を通り、径方向Drに延びる仮想線LV上に、下半外車室32dのボルト孔34が存在する。第一実施形態における変形調整装置50xは、このような場合に好適な装置である。しかしながら、図10に示すように、突出部27の軸線方向Daの中心を通り、径方向Drに延びる仮想線LV上に、下半外車室32dのボルト孔34が存在しない場合がある。本実施形態における変形調整装置50xは、このような場合に好適な装置である。
【0041】
図10図12に示すように、本実施形態における変形調整装置50xは、第一実施形態における変形調整装置50と同様、内車室側部材51と、外車室側部材53xと、距離調整機構57と、を有する。
【0042】
本実施形態における内車室側部材51は、第一実施形態における内車室側部材51と同じである。よって、本実施形態における内車室側部材51は、内車室付属部26の突出部27に対して、径方向Drに相対移動不能に取付可能である。具体的に、本実施形態における内車室側部材51は、内車室付属部26の突出部27にネジ52で固定可能である。
【0043】
本実施形態における距離調整機構57は、第一実施形態における距離調整機構57と同じである。よって、本実施形態における距離調整機構57は、突出部27に取り付けられた内車室側部材51と下半外車室32dに取り付けられた外車室側部材53xとの間の径方向Drの距離を調整可能である。この距離調整機構57も、雄ネジが形成されているロッド58と、ロッド58の雄ネジに螺合可能な雌ネジが形成されているナット59と、を有する。内車室側部材51には、このロッド58の先端を固定可能なロッド固定孔51hが形成されている。
【0044】
本実施形態における外車室側部材53xは、第一実施形態における外車室側部材53と異なる。本実施形態における外車室側部材53xは、下半外車室32dに対して径方向内側Dri又は径方向外側Droに相対移動不能に取付可能である。この外車室側部材53xは、下半外車室32dの複数のボルト孔34のうちの第一ボルト孔34aに挿入可能な第一ピン55aと、下半外車室32dの複数のボルト孔34のうちの第二ボルト孔34bに挿入可能な第二ピン55bと、第一ピン55a及び第二ピン55bに接触可能なピン接触部材56と、を有する。
【0045】
第一ボルト孔34aは、下半外車室32dの複数のボルト孔34のうち、突出部27の軸線方向Daの中心を通り、径方向Drに延びる仮想線LVを基準にして、軸線方向Daの一方側に配置されているボルト孔34である。第二ボルト孔34bは、下半外車室32dの複数のボルト孔34のうち、前述の仮想線LVを基準にして、軸線方向Daの他方側に配置されているボルト孔34である。この第二ボルト孔34bの径方向Drの位置は、第一ボルト孔34aの径方向Drの位置と異なる。
【0046】
ピン接触部材56は、図10及び図12に示すように、第一ピン55a及び第二ピン55bに接触可能な本体56mと、この本体56mにネジで固定されているシュー56sと、を有する。この本体56mは、第一ピン55aに接触可能な第一接触部56aと、第二ピン55bに接触可能な第二接触部56bと、第一接触部56aと第二接触部56bとを連結する連結部56cと、を有する。第一接触部56aと第二接触部56bとは、互いに同じ方向に延びている。言い換えると、第一接触部56aと第二接触部56bとは、互いに平行である。前述したように、第二ボルト孔34bの径方向Drの位置が第一ボルト孔34aの径方向Drの位置と異なるため、第二ボルト孔34bに挿入された第二ピン55bの径方向Drの位置は第一ボルト孔34aに挿入された第一ピン55aの径方向Drの位置と異なる。このため、第二ピン55bに接触可能な第二接触部56bは、第一ピンに接触可能な第一接触部56aに対して、第二接触部56b及び第一接触部56aが延びている方向に対して垂直な方向に、第二ボルト孔34bと第一ボルト孔34aとの間の径方向Drの距離分だけシフトしている。また、第二接触部56b及び第一接触部56aが延びている方向に対して垂直な方向における、第一接触部56a中で第一ピン55aに接触する部分の厚さと第二接触部56b中で第二ピン55bに接触する部分の厚さとは同じである。シュー56sは、第一ピン55a及び第二ピン55bに本体56mが接触している状態での本体56mの下に取り付けられる。このシュー56sは、下半外車室32dの下接触面35と接して、この下接触面35が傷つくのを防止する等の役目を担う。このため、シュー56sは、樹脂等で形成されている。本体56mには、図10及び図11に示すように、この本体56mを第一ピン55a及び第二ピン55bに接触させた際、軸線方向Daにおける第一ピン55aと第二ピン55bとの間になる位置に、距離調整機構57のロッド58が挿通可能なロッド挿通孔56h形成されている。
【0047】
本実施形態における準備工程S1では、以上で説明した変形調整装置50xを準備する。
【0048】
本実施形態における装置配置工程S2では、まず、下半外車室32dの第一ボルト孔34aに、外車室側部材53xの第一ピン55aの一部を入れ、この第一ピン55aの一部を第一ボルト孔34aから突出させる。同様に、下半外車室32dの第二ボルト孔34bに、外車室側部材53xの第二ピン55bの一部を入れ、この第二ピン55bの一部を第二ボルト孔34bから突出させる。次に、変形調整装置50xのロッド58をピン接触部材56のロッド挿通孔56hに挿通させてから、このロッド58の先端を内車室側部材51のロッド固定孔51hに入れて、このロッド58を内車室側部材51に固定する。次に、変形調整装置50xの内車室側部材51を突出部27に52で固定する。この結果、ロッド58の長手方向が径方向Drに維持される。そして、ロッド58の雄ネジに変形調整装置50xのナット59を螺合させ、ピン接触部材56を第一ピン55a及び第二ピン55bに接触させる。つまり、ピン接触部材56の第一接触部56aを第一ピン55aに接触させ、ピン接触部材56の第二接触部56bを第二ピン55bに接触させる。なお、装置配置工程S2において、変形調整装置50xを構成する各部品の配置順序は、以上の順序に限定されない。
【0049】
仮に、図3に示すように、下半内車室22dの変形により、変形後の下半内車室22d(図4中で想像線で示す)の上下方向Dvの寸法が長くなり、この下半内車室22dの左右方向の寸法が短くなっている場合には、図10及び図11に示すように、ピン接触部材56を第一ピン55a及び第二ピン55bの径方向外側Droに配置し、第一ピン55a及び第二ピン55bの径方向外側Droの面にピン接触部材56を接触させる。そして、ナット59がピン接触部材56の径方向外側Droに位置するように、このナット59をロッド58の雄ネジに螺合させる。また、仮に、図4に示すように、下半内車室22dの変形により、変形後の下半内車室22d(図4中で想像線で示す)の左右方向の寸法が長くなり、この下半内車室22dの上下方向Dvの寸法が短くなっている場合には、図13及び図14に示すように、ピン接触部材56を第一ピン55a及び第二ピン55bの径方向内側Driに配置し、第一ピン55a及び第二ピン55bの径方向内側Driの面にピン接触部材56を接触させる。そして、ナット59がピン接触部材56の径方向内側Driに位置するように、このナット59をロッド58の雄ネジに螺合させる。この場合、ロッド58をピン接触部材56のロッド挿通孔56hに挿通させる前に、このナット59をロッド58の雄ネジに螺合させておく必要がある。
【0050】
本実施形態における変形調整工程S3でも、変形調整装置50xのナット59を操作して、内車室側部材51と外車室側部材53xとの間の径方向Drの距離を変更する。仮に、装置配置工程S2で、図10及び図11に示すように、ナット59をピン接触部材56の径方向外側Droに位置するように、このナット59をロッド58の雄ネジに螺合させた場合、ロッド58に対してナット59を回転させて、内車室側部材51と外車室側部材53xとの間の径方向Drの距離を縮める。この結果、内車室側部材51が径方向外側Droに引かれる。以上のナット59の操作で、図3に示すように、下半内車室22dの変形により、この下半内車室22dの上下方向Dvの寸法が長くなり、この下半内車室22dの左右方向の寸法が短くなっている場合でも、この下半内車室22dの上下方向Dvの寸法が短くなり、下半内車室22dの左右方向の寸法が長くなって、下半内車室22dの変形量が少なくなる。また、仮に、装置配置工程S2で、図13及び図14に示すように、ナット59をピン接触部材56の径方向内側Driに位置するように、このナット59をロッド58の雄ネジに螺合させた場合、ロッド58に対してナット59を回転させて、内車室側部材51と外車室側部材53xとの間の径方向Drの距離を広げる。この結果、内車室側部材51が径方向内側Driに押される。以上のナット59の操作で、図4に示すように、下半内車室22dの変形により、この下半内車室22dの左右方向の寸法が長くなり、この下半内車室22dの上下方向Dvの寸法が短くなっている場合でも、下半内車室22dの左右方向の寸法が短くなり、下半内車室22dの上下方向Dvの寸法が長くなって、下半内車室22dの変形量が少なくなる。
【0051】
以上で、下半内車室22dの変形調整方法における全工程が終了する。
【0052】
以上のように、本実施形態でも、下半内車室22dの変形を調整できるので、回転機械の分解時や組立時に、下半内車室22dとロータ10とが接触する等の不具合を回避することができる。さらに、本実施形態でも、変形調整装置50xを用いて下半内車室22dの変形を調整しているときに、下半内車室22dの下接触面25上に、変形調整装置50xが存在しないため、変形調整中の下半内車室22dに上半内車室22uを容易に接続することができる。
【0053】
また、本実施形態でも、雌ネジが形成されているナット59をロッド58に対して相対回転させることで、内車室側部材51と外車室側部材53xとの間の距離を縮める、又は、内車室側部材51と外車室側部材53xとの間の距離を広げることができる。このため、本実施形態でも、下半内車室22dの変形を容易に微調整することができる。
【0054】
また、本実施形態の外車室側部材53xは第一ピン55a及び第二ピン55bに接触可能なピン接触部材56を有するので、前述したように、仮想線LV上に下半外車室32dのボルト孔34が存在しない場合でも、さらに、第二ボルト孔34bに挿入された第二ピン55bの径方向Drの位置が第一ボルト孔34aに挿入された第一ピン55aの径方向Drの位置と異なる場合でも、本実施形態では、下半内車室22dの変形を調整できる。
【0055】
本実施形態では、第二接触部56bが、第一接触部56aに対して、第二接触部56b及び第一接触部56aが延びている方向に対して垂直な方向にシフトしている。このため、ナット59の操作によるロッド58の移動方向に対して、第一ピン55aに接触している第一接触部56aの面、及び第二ピン55bに接触している第二接触部56bの面が、いずれも垂直な方向に広がることになる。従って、本実施形態では、ナット59を操作した際、第一ピン55aからピン接触部材56が受ける力の方向、第二ピン55bからピン接触部材56が受ける力の方向、さらに、ナット59からピン接触部材56が受ける力の方向がいずれも径方向Drになり、ナット59の操作が容易になって、ロッド58を無理なく容易に移動させることができる。
【0056】
なお、本実施形態の距離調整機構57は、ロッド58とナット59とを有する。しかしながら、ナット59を省略してもよい。この場合、ピン接触部材56をナットとして使用する。具体的に、ピン接触部材56に、ロッド58の雄ネジに螺合可能な雌ネジを形成しておく。さらに、突出部27に対してロッド58を、径方向Dr及び軸線方向Daに移動不能で且つ回転自在に取り付ける。そして、変形調整工程S3では、ロッド58をピン接触部材56に対して回転させて、内車室側部材51と外車室側部材53xとの間の距離を変更する。
【0057】
また、本実施形態の第一ピン55a及び第二ピン55bは、変形調整装置50xの専用品であってもよいが、外車室締結ボルト31であってよい。
【0058】
「変形例」
以上の各実施形態における変形調整装置50,50xは、外車室側部材53,53xを有する。しかしながら、変形調整装置50,50xは、外車室側部材53,53xが無くてもよい。この場合、突出部27に取り付けた内車室側部材51をジャッキ等で押すか、この内車室20部材をチェーンブロック等で引っ張るかして、変形調整工程S3を実行する。
【0059】
以上の実施形態における回転機械の下半内車室本体23と内車室付属部26とは、互に別部品である。しかしながら、下半内車室本体23と内車室付属部26と一体成型されたものであってもよい。
【0060】
本開示は、以上で説明した実施形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲において、種々の追加、変更、置き換え、部分的削除等が可能である。
【0061】
「付記」
以上の実施形態及び変形例における下半内車室22dの変形調整方法は、例えば、以下のように把握される。
【0062】
(1)第一態様における下半内車室の変形調整方法は、以下の回転機械に適用される。
この回転機械は、水平方向に延びる軸線Arを中心として回転可能なロータ10と、前記ロータ10の外周を覆う内車室20と、前記内車室20の外周を覆う外車室30と、を備える。前記内車室20は、前記軸線Arを中心として半円弧状を成し、前記ロータ10中で前記軸線Arより下側Dvdの部分を覆う下半内車室22dと、前記軸線Arを中心として半円弧状を成し、前記ロータ10中で前記軸線Arよりも上側Dvuの部分を覆う上半内車室22uと、を有する。前記外車室30は、前記軸線Arを中心として半円弧状を成し、前記下半内車室22dの外周側を覆う下半外車室32dと、前記軸線Arを中心として半円弧状を成し、前記上半内車室22uの外周側を覆う上半外車室32uと、を有する。前記下半内車室22dは、前記軸線Arを中心として半円弧状を成し、前記ロータ10中で前記軸線Arより下側Dvdの部分を覆う下半内車室本体23と、前記下半内車室本体23に設けられている内車室付属部26と、有する。前記下半内車室本体23は、前記軸線Arに対する周方向Dcの両端に、水平方向に広がって、前記上半内車室22uと接触可能な下接触面25を有する。前記内車室付属部26は、前記下半内車室本体23より前記軸線Arに対する径方向外側Droに突出し且つ前記下接触面25より上側Dvuに突出した突出部27を有する。
以上の回転機械における下半内車室22dの変形調整方法では、
前記突出部27に対して前記軸線Arに対する径方向Drに相対移動不能に取り付け可能な内車室側部材51を有する変形調整装置50,50xを準備する準備工程S1と、前記内車室側部材51を前記突出部27に取り付け、前記内車室側部材51を有する前記変形調整装置50,50xを前記突出部27周りに配置する装置配置工程S2と、前記突出部27に取り付けられた前記内車室側部材51を前記軸線Arに対する径方向内側Driに押す、又は前記内車室側部材51を前記径方向外側Droに引く変形調整工程S3と、を実行する。
【0063】
本態様では、下半内車室22dの変形を調整できるので、回転機械の分解時や組立時に、下半内車室22dとロータ10とが接触する等の不具合を回避することができる。さらに、本態様では、変形調整装置50,50xを用いて下半内車室22dの変形を調整しているときに、下半内車室22dの下接触面25、35上に、変形調整装置50,50xが存在しないため、変形調整中の下半内車室22dに上半内車室22uを容易に接続することができる。
【0064】
(2)第二態様における下半内車室の変形調整方法は、
前記第一態様における下半内車室22dの変形調整方法において、前記準備工程S1で準備する前記変形調整装置50,50xは、前記下半外車室32dの前記周方向Dcの端に、前記下半外車室32dに対して前記径方向外側Dro又は前記径方向内側Driに相対移動不能に取り付け可能な外車室側部材53,53xと、前記突出部27に取り付けられた前記内車室側部材51と前記下半外車室32dに取り付けられた前記外車室側部材53,53xとの間の前記径方向Drの距離を調整可能な距離調整機構57と、を有する。前記装置配置工程S2では、前記外車室側部材53,53xを前記下半外車室32dに取り付けると共に、前記距離調整機構57を設ける。前記変形調整工程S3では、前記距離調整機構57を操作して、前記内車室側部材51と前記外車室側部材53,53xとの間の前記径方向Drの距離を縮める、又は、前記内車室側部材51と前記下半外車室32dとの間の前記径方向Drの距離を広げる。
【0065】
本態様では、距離調整機構57を操作することで、内車室側部材51と外車室側部材53,53xとの間の距離を縮める、又は、内車室側部材51と下半外車室32dとの間の距離を広げることができる。よって、本態様では、下半内車室22dの変形を容易に調整できる。
【0066】
(3)第三態様における下半内車室の変形調整方法は、
前記第二態様における下半内車室22dの変形調整方法において、前記下半外車室32dは、前記周方向Dcの両端に、水平方向に広がって、前記上半外車室32uと接触可能な下接触面35と、前記下接触面35から凹み、前記上半外車室32uと前記下半外車室32dとを接続するための締結ボルト31が通る複数のボルト孔34と、を有する。前記装置配置工程S2では、前記複数のボルト孔34のうち、少なくとも一のボルト孔34を利用して、前記外車室側部材53,53xを前記径方向外側Dro又は前記径方向内側Driに相対移動不能に前記下半外車室32dに取り付ける。
【0067】
本態様では、下半外車室32dのボルト孔34を利用して、外車室側部材53,53xを径方向外側Dro又は径方向内側Driに相対移動不能に下半外車室32dに取り付けることができる。このため、本態様では、外車室側部材53,53xを径方向外側Dro又は径方向内側Driに相対移動不能に下半外車室32dに取り付けるための構成を簡略化できる。
【0068】
(4)第四態様における下半内車室の変形調整方法は、
前記第三態様における下半内車室22dの変形調整方法において、前記外車室側部材53は、前記複数のボルト孔34のうちの一のボルト孔34に挿入可能なピン54を有する。前記装置配置工程S2では、前記複数のボルト孔34のうちの一のボルト孔34に前記ピン54の一部を入れ、前記ピン54の他の一部を前記一のボルト孔34から突出させる。
【0069】
(5)第五態様における下半内車室の変形調整方法は、
前記第三態様における下半内車室22dの変形調整方法において、前記外車室側部材53xは、前記複数のボルト孔34のうちのいずれかのボルト孔34に挿入可能な第一ピン55a及び第二ピン55bと、前記第一ピン55a及び前記第二ピン55bに接触可能なピン接触部材56と、を有する。前記装置配置工程S2では、前記複数のボルト孔34のうちの第一ボルト孔34aに前記第一ピン55aの一部を入れ、前記第一ピン55aの他の一部を前記第一ボルト孔34aから突出させ、前記複数のボルト孔34のうちの第二ボルト孔34bに前記第二ピン55bの一部を入れ、前記第二ピン55bの他の一部を前記第二ボルト孔34bから突出させ、前記ピン接触部材56を前記第一ピン55a及び前記第二ピン55bに接触させる。
【0070】
(6)第六態様における下半内車室の変形調整方法は、
前記第五態様における下半内車室22dの変形調整方法において、前記第一ピン55aは、前記第一ボルト孔34aに挿通可能な前記締結ボルト31である。前記第二ピン55bは、前記第一ボルト孔34aに挿通可能な前記締結ボルト31である。
【0071】
(7)第七態様における下半内車室の変形調整方法は、
前記第二態様から前記第六態様のうちのいずれか一態様における下半内車室22dの変形調整方法において、前記距離調整機構57は、雄ネジが形成されているロッド58と、前記ロッド58の前記雄ネジに螺合可能な雌ネジが形成されているナット59又は前記外車室側部材53xと、を有する。前記装置配置工程S2では、前記ロッド58を前記外車室側部材53xに挿通させると共に、前記ロッド58の先端を前記内車室側部材51に取り付け、前記ロッド58の雄ネジを前記雌ネジに螺合させる。前記変形調整工程S3では、前記雌ネジが形成されている前記ナット59又は前記外車室側部材53xを前記ロッド58に対して相対回転させる。
【0072】
本態様では、雌ネジが形成されているナット59又は外車室側部材53xをロッド58に対して相対回転させることで、内車室側部材51と外車室側部材53,53xとの間の径方向Drの距離を縮める、又は、内車室側部材51と下半外車室32dとの間の径方向Drの距離を広げることができる。このため、本態様では、下半内車室22dの変形を容易に微調整することができる。
【符号の説明】
【0073】
10:ロータ
11:ロータ軸
12:動翼列
13:動翼
15:静翼列
16:静翼
20:内車室
21:内車室締結ボルト
22u:上半内車室
22d:下半内車室
23:下半内車室本体
24:ボルト孔
25:下接触面
26:内車室付属部
27:突出部
28:ネジ
30:外車室
31:外車室締結ボルト
32u:上半外車室
32d:下半外車室
33:下半外車室本体
34:ボルト孔
34a:第一ボルト孔
34b:第二ボルト孔
35:下接触面
36:外車室付属部
50,50x:変形調整装置
51:内車室側部材
51h:ロッド固定孔
52:ネジ
53,53x:外車室側部材
54:ピン
54h:ロッド挿通孔
55a:第一ピン
55b:第二ピン
56:ピン接触部材
56m:本体
56a:第一接触部
56b:第二接触部
56c:連結部
56h:ロッド挿通孔
56s:シュー
57:距離調整機構
58:ロッド
59:ナット
Ar:軸線
Da:軸線方向
Dc:周方向
Dr:径方向
Dri:径方向内側
Dro:径方向外側
Dv:上下方向
Dvu:上側
Dvd:下側
LV:仮想線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
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