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  • 特開-フェルト製の椅子およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053597
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】フェルト製の椅子およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/16 20060101AFI20240409BHJP
   B29C 43/20 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
A47C7/16
B29C43/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159916
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000114385
【氏名又は名称】株式会社クオリ
(74)【代理人】
【識別番号】100068663
【弁理士】
【氏名又は名称】松波 祥文
(72)【発明者】
【氏名】神谷 成昭
(72)【発明者】
【氏名】長谷田 未弦
(72)【発明者】
【氏名】安藤 淳
【テーマコード(参考)】
4F204
【Fターム(参考)】
4F204AA11
4F204AA24
4F204AD16
4F204AG03
4F204AH51
4F204FA01
4F204FB01
4F204FB22
4F204FG02
4F204FN11
4F204FN15
(57)【要約】
【課題】フェルト製の座体を短時間に製造でき、脚体への支持が簡便な椅子を提供する。
【解決手段】この椅子は、脚体3上部に厚さ5~30mmで目付が2000~4000g/mのフェルト材1Aを深絞り成形した座体1が取り付けられている。座体1は、表材層1a、基材層1b、ホットメルトシート1c、基材層1b、表材層1aの5層に形成され、基材層1bはポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、アクリル、ポリプロピレンを主成分としたフェルト材1Aに、接着用繊維を混合したもので、表材層1aはこれにポリプロピレンを除き、表面付近にポリエチレンテレフタレートが配置されたものとしている。この座体1はフェルト材1Aをホットプレスで加熱、加圧して平板にし、深絞り型30でフェルト材1Aを成形して製造する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚体上部に厚さ5~30mmのフェルト材を深絞り成形した座体が取り付けられた椅子であって、該座体は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、アクリル、ポリプロピレンを主成分としたフェルト材に、接着用繊維(融点100~180度)を20~50%混合した基材層と、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、アクリルを主成分としたフェルト材に、該接着用繊維を20~50%混合し、表面付近はポリエチレンテレフタレートが配置された表材層とを、上面から表材層、基材層、ホットメルトシート、基材層、表材層の順に配置し、目付が2000~4000g/mであることを特徴とするフェルト製の椅子。
【請求項2】
前記表材層は、ポリエチレンテレフタレート100%のカラーフェルトを使用したことを特徴とする請求項1に記載のフェルト製の椅子。
【請求項3】
前記座体の形状が背もたれ部と側部の3方が立設した塵取状であるときは、前記脚体に該背もたれ部と側部の上端付近を外側からパイプまたは木材を添わせて配置した側背支持部を付設したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフェルト製の椅子。
【請求項4】
前記座体は、前記表材層と基材層を合わせてニードルパンチを施して結合し、これを2枚造り、両表材層を外側にしてホットメルトシートで接着し、ホットプレスで加温加圧して平板とし、これを絞り型の下型の上に載置し、該平板を冷えない内にプレス成形することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフェルト製の椅子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座体にフェルト材を用いた椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
資源を有効利用する観点から、使用済みのペットボトルや食品トレイなどの合成樹脂および古着を回収して、これらを原料として種々の製品が造られている。
この中に、古着を原料としたフェルトを用いた椅子も造られており、椅子の部品が多いが、背もたれと一体の座体(特許文献1参照)も開発されている。また、さらに脚を含めた椅子全体をフェルトで造ったものも開発されている(特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1には、背もたれと一体のL字状の座体を、平板なフェルト材を成形型で、加熱および加圧して製造する実施例が記載されている。また、特許文献2には、座体のみならず脚もフェルト材で製造し、強度が必要な部分には、切り込みや孔を設け硬化物質を浸透させて硬化させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019ー18570号公報
【特許文献2】特許第2678923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の座体は、ほぼL字状であるので成形は容易であるが、座体のみでは強度的に弱く、これを支持する強固な背もたれ支持装置を必要とする。また、座体の成形には加熱装置を備えた成形型を必要とするので、設備が高価なものとなり、製造時間も多く必要とする。
一方、特許文献2の椅子は、脚もフェルト材で製造されるので、資源のリサイクル率は高いが、加工が複雑で、製造時間を多く必要とする。しかも、木材で作られた同形状のものに比べても高価で、耐久性にも問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、フェルト製の丈夫な座体を短時間に製造でき、脚体への支持が簡便確実な経済的なフェルト製の椅子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のフェルト製の椅子は、次のように構成した。すなわち、脚体上部に厚さ5~30mmのフェルト材を深絞り成形した座体が取り付けられた椅子であって、該座体は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、アクリル、ポリプロピレンを主成分としたフェルト材に、接着用繊維(融点100~180度)を20~50%混合した基材層と、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、アクリルを主成分としたフェルト材に、該接着用繊維を20~50%混合し、表面付近はポリエチレンテレフタレートが配置された表材層とを、上面から表材層、基材層、ホットメルトシート、基材層、表材層の順に配置し、目付が2000~4000g/mであることを特徴としている。
【0008】
座体は、成形型で深絞りすることによって造っている。形状は、特に限定しないが、例えば、背もたれと側面が座面から50~300mmの高さに立設した塵取状の形状のものや、座面の部分を凹曲面状に形成したものでもよい。
座体の構成は、フェルト材で表材層と基材層を造り、上から表材層、基材層、ホットメルトシート、基材層、表材層の順に配置している。
【0009】
基材層は、厚さ2~14mmで、素材は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、アクリル、ポリプロピレンを主成分とし、これに、低融点(100~180度)の接着用繊維(例えばユニチカ製キャスベン7080)を20~50%混合している。
【0010】
また、表材層は、厚さ0.2~10mmで、素材は、ポリプロピレンを配合せずポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、アクリルを主成分とし、これに接着用繊維(同キャスベン7080)を20~50%混合し、表面付近はポリエチレンテレフタレートを配置している。
表材層をこのように構成したのは、ホットプレスを行ったときに、基材層の中の低融点である素材(ポリプロピレン)が流出することを防止したものである。低融点の素材が流出すると、これが成形型に接着して、成形に支障をきたすからである。
本発明では、上面と下面に表材層を配置したので、低融点の素材が流出することはない。
【0011】
また、表材層は、任意の色を選定できる。表材層に再生PETを使用すると、色むらが起こり、見栄えが悪くなる。そこで、請求項2に記載のように、表材層にカラーフェルト(例えば信栄フェルト工業製:カラーニードルフェルト)を使用するのが望ましい。
なお、上面の表材層と下面の表材層の色は任意に選定できる。また、表材層の表面には撥水加工を施してもよい。
【0012】
座体の製造は、請求項4に記載のように、表材層と基材層をニードルパンチを施して結合したものを2枚造り、両表材層を外側にしてホットメルトシートで接着し、ホットプレスで平板にする。次に、これを絞り型の下型の上に載置し、該平板が冷えない内にプレスで深絞り成形する。なお、型締めは、90~180秒(常温)行うことが望ましい。成形された座体の不要な部分は、刃物などで切断して所定の寸法にすることが望ましい。
【0013】
座体は、脚体上部に設けた座支持部へ支持させればよいが、座体の形状が背もたれ部と側部の3方が立設した塵取状であるときは、請求項3に記載のように、該背もたれ部と側部の上端付近を外側からパイプまたは木材を添わせて配置した側背支持部を脚体に付設するとよい。
脚体は種々のものが使用できる。パイプで座体を載せるように組み上げたものでもよいし、事務用椅子のように、中央脚柱に5本足で支持したものとしてもよい。
また、座体の脚体への取り付けは、ビス止めや接着など任意で特に限定しない。
【発明の効果】
【0014】
本発明のフェルト製の椅子は、脚体上部に厚さ5~30mmのフェルト材を深絞り成形した座体が取り付けられているので、座体自体が、変形しづらく丈夫であり、脚体に設ける支持部は簡素なものでよい。
【0015】
また、座体は、表材層、基材層、ホットメルトシート、基材層、表材層の順に配置し、基材層は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、アクリル、ポリプロピレンを主成分とし、これに、低融点(100~180度)の接着用繊維を20~50%混合したものとしたので、ホットプレスを行うと柔らかくなり、成形しやすくなり、深絞りに適したものとなった。
さらに、表材層にはポリプロピレンを配合せず、かつ、表面付近はポリエチレンテレフタレートを配置したので、ホットプレスで加熱、加圧しても基材層に含まれる低融点の素材が流出することはなく、清掃などの作業が楽になり、生産性が良い。
また、表材層を請求項2に記載のように、カラーフェルト(再生品でない)を使用すれば、色むらが生ぜず、商品価値が向上する。
【0016】
また、座体の製造は、請求項4のように、表材層と基材層を合わせてニードルパンチを施して結合したものを2枚造り、両表材層を外側にしてホットメルトシートで接着し、ホットプレスで平板とし、これを絞り型の下型の上に載置し、これを冷えない内にプレス成形することとしたので、深絞り型に加熱装置を必要とせず、座体を短時間で深絞り成形できる。
【0017】
さらに、座体が背もたれ部と側部の3方が立設した塵取状であるときは、請求項3に記載のように、該背もたれ部と側部の上端付近を外側からパイプまたは木材を添わせて配置した側背支持部を脚体に付設すると、簡素構造で座体が確実に支持され椅子全体としても軽量にできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】請求項1の発明のフェルト材の椅子の実施の形態を示す斜視図である。
図2】同、フェルト材の椅子の展開図である。
図3】同、フェルト材の構成説明図である。
図4】請求項4のフェルト製の椅子の製造方法における深絞り作業を説明するもので、(a)は深絞り型の上型および下型を示す斜視図、(b)は、平板(フェルト材)を下型の上に載せた状態を示す斜視図、(c)は、上型を下降させて深絞りしている状態を示す斜視図、(d)は、上型を上昇させた状態を示す斜視図である。
図5】同、脚体を中央脚柱にキャスター付きの5本足としたフェルト製の椅子の実施の形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明のフェルト製の椅子の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明のフェルト製の椅子の全体を示す斜視図で、図2は、その構成部品を示す分解展開図である。また、図3はフェルト材1Aの構成を示す詳細図で、図4は深絞り型による作業を示す説明図である。
【0020】
フェルト製の椅子10は、図1に示すように、4本のパイプで形成された脚体3の上に背座一体で、かつ、側部にもフェルト材1Aが立設されるように深絞りした座体1が取り付けられている。座体1の大きさは、ここでは、横600mm、奥行き560mm、背もたれ部高さ220mmで、側部は背もたれ部から前方へ暫時低くなるように形成されている。
【0021】
脚体3は、図2に示すように4本足であり、この上部に、座体1の座面を支持する座支持部5と、座体1の側部と背部を支持する側背支持部4とが固設されている。なお、座支持部5と側背支持部4はパイプ製で脚体3と一体に作られている。
また、図において2は、クッションである。
【0022】
フェルト材1Aは、図3に示すように、上から表材層1a、基材層1b、ホットメルトシート1c、基材層1b、表材層1aの5層から構成されている。
基材層1bは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、アクリル、ポリプロピレンを主成分としたフェルト材に、接着用繊維(融点100~180度)を20~50%混合したもので目付は1000~2000g/mである。
具体的には、ここでは、再生プロポリピレン反毛40%、PET25%、接着用繊維(キャスベン7080)30%、PET雑5%の割合としている。
【0023】
表材層1aは、ポリプロピレンを配合せずポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、アクリルに接着用繊維(融点100~180度)を20~50%混合し、表面付近はポリエチレンテレフタレートを配置したもので、目付は500~1000g/mである。
具体的には、ここでは、PET(ポリエチレンテレフタレート)50%、 反毛(ポリエステル80%+アクリル20%)25%、接着用繊維(ユニチカ株式会社キャスベン7080融点110度)20%、ポリプロピレン5%の割合としている。
また、ホットメルトシート(バリュテックインターナショナル株式会社スパンファブPA1541)は、共重合ポリアミドを主成分とするもので、融点は130℃、目付は30g/mである。
【0024】
次に、座体1の製造方法(請求項4)の実施の形態について、説明する。
フェルト材1Aの原料は開繊し所定の目付になるように混合し、表材層1aと基材層1bを造り、ニードルパンチを施して基材層1bの上に表材層1aを結合させる。
更に、同じものを造り、一方を裏返しにして置き、その上面である基材層1bの表面にホットメルトシート1cを貼り付け、もう一方のフェルト材を表材層1aを上にして基材層1bの下面を該ホットメルトシート1cへ載せ接着して5層のフェルト材1Aとする。
【0025】
次に、この5層のフェルト材1Aをホットプレスで、180~230度で加熱、加圧し、厚さ10mmのフェルト材(平板)にする。
続いて、深絞り型30で成形するが、深絞り型30は図4(a)に示すように、下型32に嵌着する上型31を備えている。
ホットプレスで加熱、加圧されたフェルト材1Aは、図4(b)に示すように、深絞り型30の下型32の上に載置する。この場合、フェルト材1Aは拘束しない。
続いて、図4(c)に示すように、上型31を下型32に嵌着する。なお、深絞り型30は、常温で使用する。また、型締めは90秒行う。
次に、図4(d)に示すように、上型31を上昇させ、下型32から成形された座体1を取り出す。その後、フェルト材1Aの不要な部分を刃物などで切断すれば、深絞りされた座体1が出来上がる。
【0026】
次に、脚体21を中央脚柱にキャスター付きの5本足としたフェルト製の椅子20の実施の形態を図5に基いて説明する。なお、図5において図1と同じ符号のものは、同じものである。
図示されてないが、5本足の脚体21の上端には、座体1が取り付けられる支持体が設けられており、これに座支持部が一体に固設され、また、支持体から側背支持部4が座体1の上端付近を沿って設けられている。座体1は昇降でき、回動も可能である。
このように構成されているので、通常のオフィス椅子としても使用できる。
【符号の説明】
【0027】
1 座体
1A フェルト材
1a 表材層
1b 基材層
1c ホットメルトシート
2 クッション
3 脚体
4 側背支持部
5 底支持部
10 フェルト製の椅子
20 フェルト製の椅子
21 脚体
30 深絞り型
31 上型
32 下型

図1
図2
図3
図4
図5