IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ NSウエスト株式会社の特許一覧 ▶ 日本精機株式会社の特許一覧

特開2024-5362ヘッドアップディスプレイ装置およびヘッドアップディスプレイ装置の制御方法
<>
  • 特開-ヘッドアップディスプレイ装置およびヘッドアップディスプレイ装置の制御方法 図1
  • 特開-ヘッドアップディスプレイ装置およびヘッドアップディスプレイ装置の制御方法 図2
  • 特開-ヘッドアップディスプレイ装置およびヘッドアップディスプレイ装置の制御方法 図3
  • 特開-ヘッドアップディスプレイ装置およびヘッドアップディスプレイ装置の制御方法 図4
  • 特開-ヘッドアップディスプレイ装置およびヘッドアップディスプレイ装置の制御方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005362
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置およびヘッドアップディスプレイ装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/20 20060101AFI20240110BHJP
   B60K 35/23 20240101ALI20240110BHJP
   G09G 3/36 20060101ALI20240110BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20240110BHJP
   F21V 23/00 20150101ALI20240110BHJP
   H05B 45/38 20200101ALI20240110BHJP
   H05B 45/10 20200101ALI20240110BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240110BHJP
【FI】
G09G3/20 680B
B60K35/00 A
G09G3/20 642C
G09G3/20 670D
G09G3/20 670E
G09G3/36
F21S2/00 355
F21S2/00 390
F21V23/00 140
H05B45/38
H05B45/10
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105519
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】591182112
【氏名又は名称】NSウエスト株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145229
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 雅則
(74)【代理人】
【識別番号】100138955
【弁理士】
【氏名又は名称】末次 渉
(74)【代理人】
【識別番号】100195648
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 悠太
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 健朗
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 卓治
(72)【発明者】
【氏名】岡村 雄一
(72)【発明者】
【氏名】弥永 徳介
(72)【発明者】
【氏名】大下 慎司
(72)【発明者】
【氏名】西▲崎▼ 壮
【テーマコード(参考)】
3D344
3K014
3K273
5C006
5C080
【Fターム(参考)】
3D344AA22
3D344AB01
3D344AC25
3D344AD13
3K014AA01
3K273AA05
3K273BA20
3K273BA36
3K273CA02
3K273DA02
3K273DA09
3K273EA15
3K273EA25
3K273EA36
3K273FA03
3K273FA14
3K273FA26
3K273FA41
3K273GA06
3K273GA14
3K273GA25
3K273HA18
5C006AA15
5C006AF67
5C006BB16
5C006BC03
5C006BC11
5C006BF15
5C006EA01
5C080AA10
5C080BB05
5C080EE28
5C080FF11
5C080JJ02
5C080JJ04
5C080JJ06
5C080KK20
(57)【要約】
【課題】表示器の、車両の起動スイッチがオンされたときからの表示の遅延が小さく、起動スイッチがオンされる前に不自然な表示が表示されないヘッドアップディスプレイ装置および表示器の制御方法を提供する。
【解決手段】HUD装置1は、表示光を被投射部材に放射することにより虚像を表示する表示器20と、入力電圧を昇圧した電圧で表示器20を駆動して表示光の輝度を調整する昇圧型LEDドライバ23と、起動された後の、IGSW90がオンされるまでの間、昇圧型LEDドライバ23を制御することにより、表示器20に視認不能な第一輝度で表示光を放射させ、IGSW90がオンされた後、昇圧型LEDドライバ23を制御することにより、表示器20に第一輝度よりも明るい視認可能な輝度で表示光を放射させるマイコン60と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示光を被投射部材に放射することにより虚像を表示する表示器と、
入力電圧を昇圧した電圧で前記表示器を駆動して前記表示光の輝度を調整する昇圧型表示器駆動部と、
起動された後の、車両の起動スイッチがオンされるまでの間、前記昇圧型表示器駆動部を制御することにより、前記表示器に視認不能な第一輝度で前記表示光を放射させ、前記起動スイッチがオンされた後、前記昇圧型表示器駆動部を制御することにより、前記表示器に前記第一輝度よりも明るい視認可能な輝度で前記表示光を放射させる制御部と、
を備えるヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記起動スイッチがオフされた後の、前記起動スイッチが再度オンされるまでの間、または、前記起動スイッチがオフされた後の、前記制御部それ自体の処理を終了するまでの間、前記昇圧型表示器駆動部を制御することにより、前記表示器に視認不能な第二輝度で前記表示光を放射させる、
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
前記表示器と前記被投射部材との間で前記表示光を反射する反射部材と、
前記反射部材の向きを、前記反射部材で反射した前記表示光が前記被投射部材へ到達する表示方向と前記反射部材で反射した前記表示光が前記被投射部材へ到達しない待機方向とに変更する反射部材駆動部と、
を備え、
前記制御部は、
制御動作を終了する場合に、前記反射部材駆動部に前記反射部材の向きを前記待機方向へ向けさせた後に前記制御動作を終了すると共に、前記昇圧型表示器駆動部を制御して前記表示器からの前記表示光の放射を停止させ、
前記制御部それ自体を起動する場合に、前記反射部材駆動部に前記反射部材の向きを前記待機方向から前記表示方向へ変更させ、
前記反射部材が前記待機方向へ向いている段階で、または前記反射部材が前記待機方向から前記表示方向へその向きを変更している段階で、前記昇圧型表示器駆動部を制御することにより、前記表示器に前記第一輝度よりも明るい第三輝度で前記表示光を放射させ、その後、前記第一輝度で前記表示光を放射させる、
請求項1または2に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記反射部材駆動部が前記反射部材の向きを前記表示方向へ向けた後、かつ前記起動スイッチがオンされた後に、前記昇圧型表示器駆動部を制御することにより、前記表示器に前記第一輝度よりも明るい視認可能な輝度で前記表示光を放射させる、
請求項3に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
前記制御部は、起動された後の、前記起動スイッチがオンされるまでの間、前記表示器に黒画面を表示させ、前記起動スイッチがオンされた後、前記表示器に映像信号に応じた画像を表示させる、
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項6】
表示光を被投射部材に放射することにより虚像を表示する表示器と、
入力電圧を昇圧した電圧で前記表示器を駆動して前記表示光の輝度を調整する昇圧型表示器駆動部と、を備えるヘッドアップディスプレイ装置の制御方法であって、
車両の起動スイッチがオンされるまでの間、前記昇圧型表示器駆動部を制御することにより、前記表示器に視認不能な第一輝度で前記表示光を放射させるステップと、
前記起動スイッチがオンされた後、前記昇圧型表示器駆動部を制御することにより、前記表示器に前記第一輝度よりも明るい視認可能な輝度で前記表示光を放射させるステップと、
を備えるヘッドアップディスプレイ装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヘッドアップディスプレイ装置およびヘッドアップディスプレイ装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドアップディスプレイ装置には、車両の起動スイッチ、例えば、イグニッションスイッチのオン、オフに応じて表示器を点灯、消灯するものがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、イグニッションスイッチのオンに応じて表示器に備えられる発光ダイオードを発光させ、その後、発光ダイオードの輝度を徐々に上げる制御部を備えるヘッドアップディスプレイ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-160426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のヘッドアップディスプレイ装置は、昇圧型駆動装置を備える。この昇圧型駆動装置は、入力電圧を昇圧した電圧で発光ダイオードをPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)方式によって駆動する。
【0006】
しかしながら、この種の昇圧型駆動装置には、それ自体の起動直後に、出力するPWM信号のデューティ比が小さい場合、PWM信号の生成が遅延してしまうものがある。
【0007】
このような昇圧型駆動装置の場合、イグニッションスイッチがオンされることに応じて、発光ダイオードを発光させる場合に、発光ダイオードの発光、すなわち表示器の表示がイグニッションスイッチのオンから遅延してしまい、無表示期間が発生してしまう。
【0008】
一方、昇圧型駆動装置の起動直後に、デューティ比が大きいPWM信号を仮で出力することが考えられる。しかし、その場合、イグニッションスイッチがオンされる前に不自然な表示がヘッドアップディスプレイ装置に表示されてしまうおそれがある。
【0009】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、表示器の、車両の起動スイッチがオンされたときからの表示の遅延が小さく、起動スイッチがオンされる前に不自然な表示が表示されないヘッドアップディスプレイ装置および表示器の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明の第一の観点に係るヘッドアップディスプレイ装置は、
表示光を被投射部材に放射することにより虚像を表示する表示器と、
入力電圧を昇圧した電圧で前記表示器を駆動して前記表示光の輝度を調整する昇圧型表示器駆動部と、
起動された後の、車両の起動スイッチがオンされるまでの間、前記昇圧型表示器駆動部を制御することにより、前記表示器に視認不能な第一輝度で前記表示光を放射させ、前記起動スイッチがオンされた後、前記昇圧型表示器駆動部を制御することにより、前記表示器に前記第一輝度よりも明るい視認可能な輝度で前記表示光を放射させる制御部と、
を備える。
【0011】
本発明の第二の観点に係るヘッドアップディスプレイ装置の制御方法は、
表示光を被投射部材に放射することにより虚像を表示する表示器と、
入力電圧を昇圧した電圧で前記表示器を駆動して前記表示光の輝度を調整する昇圧型表示器駆動部と、を備えるヘッドアップディスプレイ装置の制御方法であって、
車両の起動スイッチがオンされるまでの間、前記昇圧型表示器駆動部を制御することにより、前記表示器に視認不能な第一輝度で前記表示光を放射させるステップと、
前記起動スイッチがオンされた後、前記昇圧型表示器駆動部を制御することにより、前記表示器に前記第一輝度よりも明るい視認可能な輝度で前記表示光を放射させるステップと、
を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明の構成によれば、制御部は、起動された後の、車両の起動スイッチがオンされるまでの間、昇圧型表示器駆動部を制御することにより、表示器に視認不能な第一輝度で表示光を放射させている。このため、起動スイッチがオンされた後に、表示器に第一輝度よりも明るい視認可能な輝度で表示光を放射させる場合に、表示器の、起動スイッチがオンされたときからの表示の遅延が小さい。また、制御部が起動された後から起動スイッチがオンされるまでの間、表示器に視認不能な第一輝度で表示光を放射させるので、起動スイッチがオンされる前に不自然な表示が表示器に表示されることもない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の模式的な断面図である。
図2】本発明の実施の形態に係るヘッドアップディスプレイ装置が搭載された車両の概念図である。
図3】本発明の実施の形態に係るヘッドアップディスプレイ装置が備える反射部材の向きを示す模式的な断面図である。
図4】本発明の実施の形態に係るヘッドアップディスプレイ装置のブロック図である。
図5】本発明の実施の形態に係るヘッドアップディスプレイ装置が備える制御部と昇圧型LEDドライバのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係るヘッドアップディスプレイ装置およびヘッドアップディスプレイ装置の制御方法について図面を参照して詳細に説明する。なお、図中、同一又は同等の部分には同一の符号を付す。
【0015】
本実施の形態に係るヘッドアップディスプレイ装置(以下、HUD装置という)は、車両に設置されて、表示画像、例えば、車両に関する情報(ナビゲーション情報、エンジンの回転数等)を含む画像を表す表示光を車両のウインドシールド(被投射部材ともいう)に出射する装置である。このHUD装置は、車両のイグニッションスイッチ(起動スイッチともいう)がオンにされたときのイグニッションオン信号(車両起動信号ともいう)に応じて、上記の表示光Lを放射するところ、表示光Lの放射のイグニッションオン信号からの遅延を抑制するため、イグニッションスイッチがオンにされる前から、予め表示器を視認不能な輝度で発光させておく。まず、図1図4を参照して、HUD装置1の構成について詳細に説明する。
【0016】
図1に示すように、HUD装置1は、筐体10と、表示器20と、平面鏡30と、反射部材40と、反射部材駆動部50と、マイクロコントローラ(以下、マイコンという)60とを備える。
【0017】
筐体10は、内部に表示器20、反射部材40等のHUD装置1の各部品を収容するため、箱状に形成されている。筐体10は、遮光性の材料で形成されている。これにより、筐体10は、不要な光の入射、出射を防いでいる。
【0018】
筐体10の上面部には、開口部11が形成されている。開口部11は、防塵性を高めるため、透光部12により覆われている。透光部12は、アクリル樹脂等の透光性材料で形成されている。その結果、筐体10は、内部にある表示器20が生成する表示光Lを外部へ出射可能にする。そして、筐体10は、図2に示すように、開口部11が形成された側を、ウインドシールド3側にし、かつ透光部12をウインドシールド3に対向させて、車両2のダッシュボード4に設置されている。これにより、筐体10は、表示器20の表示光Lをウインドシールド3に向けて出射することが可能にする。
【0019】
図1に戻って、表示器20は、表示光Lを生成するため、光を発するバックライト21と、そのバックライト21の光の透過の程度を調整して画像を表す表示光Lを生成する液晶パネル22と、を有する。
【0020】
バックライト21は、例えば、複数のLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)により構成されている。そして、バックライト21は、昇圧型LEDドライバ23(昇圧型表示器駆動部ともいう)が生成するPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)信号によって駆動される。ここで、昇圧型LEDドライバ23は、電源から入力される入力電圧を昇圧し、昇圧した電圧でバックライト21を駆動する。バックライト21は、複数のLEDがPWM信号のデューティ比に応じた比率の時間で点灯することにより、デューティ比に応じた明るさで、換言すると、デューティ比に応じた見かけ上の輝度(以下、単に輝度という)で発光する。バックライト21は、液晶パネル22の下面側に配置され、上述した輝度で液晶パネル22を照射する。
【0021】
液晶パネル22は、例えば、透過型のTFT(Thin Film Transistor)液晶パネルにより構成されている。液晶パネル22は、多数の画素を有し、図1に示す液晶ドライバ24に制御されることにより、画素毎に光の透過率を変化させる。これにより、液晶パネル22は、バックライト21からの光を受けて画像を含む表示光Lを放射する。
【0022】
平面鏡30は、液晶パネル22の上に配置され、前方斜め下に鏡面を向けている。平面鏡30は、液晶パネル22から放射された表示光Lを前方斜め下にある反射部材40へ反射する。
【0023】
反射部材40は、凹面鏡41と、凹面鏡41を支持すると共に、軸部43が設けられた支持部材42とにより構成されている。反射部材40は、HUD装置1の動作状況に応じて鏡面の向きを変更可能とするため、支持部材42の軸部43を中心に回動することが可能である。反射部材40は、支持部材42に連結された反射部材駆動部50が支持部材42を軸部43の周りに回動することによって、回動する。
【0024】
反射部材駆動部50は、例えば、図示しないモータとカムにより構成され、軸部43を中心にして支持部材42を回動させる。これにより、反射部材駆動部50は、反射部材40の鏡面をHUD装置1の動作状況に応じた方向に向ける。
【0025】
詳細には、反射部材駆動部50は、HUD装置1の動作開始時に、支持部材42を回動させて、図3に実線で示すように、反射部材40を、鏡面が後方斜め上に向いた表示方向へ向ける。これにより、反射部材駆動部50は、反射部材40を、表示光Lが車両2のウインドシールド3へ出射する方向へ向ける。その結果、表示光Lが、図2に示すように、ウインドシールド3で反射して車両2の運転者5に達することが可能な状態となる。これにより、反射部材駆動部50は、運転者5がウインドシールド3前方に形成された虚像Vを視認することが可能な状態にする。
【0026】
また、反射部材駆動部50は、HUD装置1の動作終了時に、支持部材42を回動させて、図3に点線で示すように、反射部材40を、鏡面が前方斜め上に向いた待機方向へ向ける。これにより、反射部材駆動部50は、反射部材40を、表示光Lを反射せず、表示光Lが筐体10の透光部12から外部へ出射しない方向へ向ける。また、反射部材40を、透光部12から入射した外光を反射してその外光の反射光が筐体10内の表示器20に達しない方向へ向ける。その結果、反射部材駆動部50は、表示器20が保護された状態にする。
【0027】
反射部材駆動部50は、このように、反射部材40を表示方向または待機方向へ向ける。反射部材駆動部50は、この反射部材40の向きの変更をマイコン60の指示によって行う。
【0028】
マイコン60(制御部ともいう)は、図4に示すように、CPU(Central Processing Unit)61、ROM(Read Only Memory)62、RAM(Random Access Memory)63等を有する。
【0029】
CPU61は、CAN(Controller Area Network)信号線70を介して、車両2に設けられた、車両2の各部を制御するECU(Electronic Control Unit)80およびイグニッションスイッチ(以下、IGSWという)90と電気的に接続されている。また、CPU61は、ROM62に記憶されている制御プログラムを実行することにより、昇圧型LEDドライバ23、液晶ドライバ24および反射部材駆動部50を動作させる各種制御処理を行う。
【0030】
例えば、CPU61は、HUD装置1の動作を開始させるため、または動作を終了させるため、ECU80が出力するマイコンスタート信号またはマイコン停止信号に応答して、反射部材駆動部50を制御し、反射部材40の向きを変更する。また、CPU61は、ECU80が出力するマイコンスタート信号、マイコン停止信号に基づいて、昇圧型LEDドライバ23と液晶ドライバ24に対する各種処理を実行したり各種処理を停止させて昇圧型LEDドライバ23と液晶ドライバ24を待機させたりする。さらに、CPU61は、IGSW90がオンされると、昇圧型LEDドライバ23と液晶ドライバ24を制御することにより、ECU80から出力される車両に関する情報(以下、車両情報という)を含む表示光Lを表示器20に生成させる。
【0031】
このように、マイコン60は、ECU80が出力するマイコンスタート信号、マイコン停止信号に基づいて反射部材40を表示方向または待機方向へ向け、IGSW90がオン状態になると、表示器20に車両情報を含む表示光Lを生成させる。
【0032】
しかしながら、バックライト21を駆動する昇圧型LEDドライバ23には、起動直後に生成するPWM信号のデューティ比が小さすぎると、そのPWM信号の生成が起動時から遅延してしまうものがある。その場合、IGSW90がオンされ、イグニッションオン信号に応じて昇圧型LEDドライバ23を起動すると、昇圧型LEDドライバ23に表示光Lを生成させたとしても、HUD装置1からの表示光Lの放射がIGSW90のオンから遅れてしまう。その結果、運転者5が車両情報を含む虚像Vを視認できる状態になるまで時間がかかってしまい、無表示時間が発生してしまう。
【0033】
そこで、HUD装置1では、マイコン60が、ECU80からマイコンスタート信号が出力された後の、IGSW90がオンにされる前から、昇圧型LEDドライバ23を起動することにより、視認不能な輝度でバックライト21を発光させるPWM信号を昇圧型LEDドライバ23に生成させる制御処理を行う。
【0034】
次に、そのマイコン60の制御処理について説明する。図5にその制御処理を説明するためのマイコン60と昇圧型LEDドライバ23のタイミングチャートを示す。
【0035】
なお、図5に示す「マイコン」の波形は、マイコン60のモードの変化、すなわち、マイコン60が待機モード(スリープモード、制御動作の終了ともいう)と動作モードのいずれのモードであるかを示している。また、同図に示す「IGSW」と「PWM」の波形は、IGSW90と昇圧型LEDドライバ23の信号を示している。さらに、同図に示す「DUTY比(%)」の波形は、昇圧型LEDドライバ23が出力するPWM信号のデューティ比を示している。
【0036】
まず、制御処理の前提として、マイコン60は、車両2の常時電源により給電され、予め起動されて、待機モードにあるものとする。また、待機モードでは、予め反射部材40を上述した待機方向へ向けているものとする。さらに、待機モードでは、表示器20のバックライト21が消灯され、液晶パネル22への入力がオフ状態にあるものとする。
【0037】
車両2のECU80は、例えば、車両2のドアロック解除信号、ドアオープン信号等の着座信号を得た場合に、HUD装置1の動作を開始するため、マイコンスタート信号をマイコン60に送信するものとする。さらに、ECU80は、例えば、車両2のドアクローズ信号、ドアロック信号の退座信号を得た場合に、HUD装置1の動作を終了させるため、マイコン停止信号をマイコン60に送信するものとする。
【0038】
HUD装置1が待機モードにあるときに、ECU80からのマイコンスタート信号を受信すると、マイコン60は、図5に示すように、待機モードから制御処理を行う動作モードへ移行する(図5に示す時刻t1)。
【0039】
動作モードに移行すると、マイコン60は、まず、表示器20の表示光Lが筐体10の内部から外へ出る状態にするため、反射部材駆動部50を制御して反射部材40を表示方向へ向ける。詳細には、マイコン60は、反射部材駆動部50を制御することにより、反射部材40を軸部43の周りに回動させる。そして、反射部材40の向きを待機方向から表示方向へ変更する。この鏡面の向きの変更は、後述する液晶パネル22が黒画面を表示している間(図5に示す時刻t1~t3)に行うことが望ましい。
【0040】
また、マイコン60は、動作モードに移行すると、昇圧型LEDドライバ23の出力を安定させるため、昇圧型LEDドライバ23に、短時間だけ、視認可能な最低輝度(第三輝度ともいい、この視認可能な最低輝度には、後述する人が視認不能な輝度のPWM信号7による輝度は含まれない。以下、単に最低輝度という)でバックライト21を発光させるPWM信号6を出力させる(図5に示す時刻t1~t2)。
【0041】
ここで、最低輝度とは、昇圧型LEDドライバ23がバックライト21の輝度を高輝度から低輝度まで複数の段階に分けて制御する場合の最低の輝度、すなわち、車両情報画像の表示を行う際の最低の段階の輝度のことをいう。なお、本実施の形態では、時刻t1~t2でバックライト21が発光する輝度を、最低輝度としているが、この時刻t1~t2の輝度は、最低輝度よりも高い輝度であってもよい。
【0042】
詳細には、マイコン60は、例えば、昇圧型LEDドライバ23に短時間(例えば150msの間)だけ、183Hzでデューティ比1.00%のPWM信号6を出力させる。昇圧型LEDドライバ23は、一定のデューティ比のPWM信号6を短時間出力する結果、出力が安定する。
【0043】
このPWM信号6が出力されているときは(図5に示す時刻t1~t2)、反射部材40の向きを待機方向から表示方向へ変更している段階である。このため、反射部材40は、まだ待機方向へ向いたままであるか、または待機方向付近に向いており、まだ表示方向へ向いていない。このため、表示光Lは、反射部材40に反射されず、筐体10の透光部12から外部へ出射しない。バックライト21は、最低輝度といえども発光するが、その光は筐体10の外へ漏れ出すことがない。その結果、車両2の運転者5に迷光が視認されてしまうことが防がれる。
【0044】
さらに、マイコン60は、画面全体が無彩色かつ明度0である黒画面の画像の映像信号を生成して、生成した黒画像の映像信号を液晶ドライバ24に出力する(図5に示す時刻t1~)。これにより、マイコン60は、液晶パネル22の画面に黒画像を表示する。その結果、運転者5により迷光が視認されにくくする。
【0045】
続いて、マイコン60は、昇圧型LEDドライバ23に、人が視認不能な輝度(第一輝度という)でバックライト21を発光させるPWM信号7を出力させる(図5に示す時刻t2~)。例えば、マイコン60は、昇圧型LEDドライバ23に、100Hzでデューティ比0.01%のPWM信号7を出力させる。これにより、マイコン60は、後述するIGSW90がオンされて表示光Lを生成する状態に備える。
【0046】
マイコン60は、IGSW90がオンされるまで、上記の液晶パネル22での黒画像の表示と昇圧型LEDドライバ23からのPWM信号7の出力を続ける(図5に示す時刻t2~t3)。このとき、液晶パネル22で黒画像が表示されると共に、バックライト21が認識不能な輝度で発光する。その結果、運転者5には表示光Lがほとんど見えない。これにより、マイコン60は、HUD装置1を、視覚的に停止していると同じ状態にしておく。
【0047】
その後、車両2のエンジンをかけるため、運転者5がIGSW90をオンにすると(図5に示す時刻t3)、IGSW90からイグニッションオン信号が図4に示すCAN信号線70を介してマイコン60に入力される。マイコン60は、ECU80から車両情報を取得し、その車両情報に応じた画像(以下、車両情報画像という)の映像信号を生成して、生成した車両情報画像の映像信号を液晶ドライバ24に出力する(図5に示す時刻t3~t4)。これにより、マイコン60は、液晶パネル22の画面に車両情報画像を表示させる。その結果、運転者5に車両情報画像が提供される。
【0048】
また、マイコン60は、IGSW90のイグニッションオン信号に応じて、昇圧型LEDドライバ23に、車両情報画像に応じた輝度でバックライト21を発光させるPWM信号8を出力させる(図5に示す時刻t3~t4)。例えば、マイコン60は、昇圧型LEDドライバ23に、183Hzでデューティ比T%(T%は車両情報画像に応じた輝度を実現するデューティ比である)のPWM信号8を出力させる。マイコン60は、表示環境の照度や車両情報画像に応じた輝度を人が視認可能な輝度とすることにより、表示器20に運転者5が車両情報画像を視認できる表示光Lを放射させる。
【0049】
このPWM信号8を出力するとき、PWM信号8のデューティ比が小さすぎる場合でも、人が視認不能な輝度でバックライト21を発光させるPWM信号7を、予めマイコン60が昇圧型LEDドライバ23に出力させていたため、上記のPWM信号8の出力がIGSW90のイグニッションオン信号から遅れてしまうことがない。その結果、IGSW90がオンされた後、表示器20に画像が表示されない無表示の期間が生じない。これにより、マイコン60は、IGSW90のオン後、遅延なく運転者5に車両情報画像を提供する。また、PWM信号8を出力する前に出力するPWM信号7は、人が視認不能な輝度でバックライト21を発光させる信号であるため、PWM信号8の出力の前に、不自然な画像が運転者5に視認されることもない。
【0050】
その後、車両2の運転者5が、車両2のエンジンを止めるため、IGSW90をオフにすると(図5に示す時刻t4)、IGSW90からオフ信号がCAN信号線70を介してマイコン60に入力される。マイコン60は、時刻t2~t3の場合と同様に、昇圧型LEDドライバ23にPWM信号7を出力させる(図5に示す時刻t4~t5)。これにより、マイコン60は、人が視認不能な輝度(この輝度のことを第二輝度ともいう)でバックライト21を発光させる。そして、その後再度IGSW90がオンされて、車両情報画像を含む表示光Lの発光が再度必要となる場合に備える。
【0051】
また、このPWM信号7を出力するとき(図5に示す時刻t4~t5)も、マイコン60は、上述した黒画像の映像信号を生成して、生成した黒画像の映像信号を液晶ドライバ24に出力する。これにより、マイコン60は、時刻t2~t3の場合と同様に、運転者5が表示光Lをほとんど視認できない状態にする。その結果、マイコン60は、HUD装置1を、視覚的に停止していると同じ状態にする。
【0052】
IGSW90がオフにされた後、運転者5が車両2から降りるため、車両2のドアを開閉すると、ドアクローズ信号をECU80が検出する。その結果、ECU80は、マイコン停止信号をマイコン60へ送信する。マイコン60は、マイコン停止信号を受信すると、動作モードから待機モードへ移行する(図5に示す時刻t5)。また、マイコン60は、内部タイマーを備え、そのタイマーがIGSW90のオフ後、一定の時間(例えば3分)だけ経過したことを計時すると、動作モードから待機モードへ移行する。なお、マイコン60は、その待機モードへの移行時に、反射部材駆動部50を制御して反射部材40の向きを表示方向から待機方向へ変更する。この反射部材40の向きの変更は、液晶パネル22が黒画面を表示している間に行うことが望ましい。または、反射部材40の向きの変更は、液晶パネル22が画像を非表示にしたときに行うことが望ましい。
【0053】
以上により、マイコン60は待機モードへ戻る。その後、車両2がドアロック解除、ドアオープン等されて、ECU80からマイコンスタート信号が入力されると、マイコン60は上述した動作モードへ再度移行する。マイコン60は、このような動作を繰り返すことにより、IGSW90のオンに応じて、速やかに車両情報画像を運転者5に提供する。
【0054】
以上のように、実施の形態に係るHUD装置1では、マイコン60が、待機モードから動作モードへ移行した後、IGSW90がオンされるまでの間、昇圧型LEDドライバ23を制御することにより、バックライト21に視認不能な輝度で表示光Lを放射させる。このため、IGSW90がオンされた後に、視認可能な輝度でバックライト21から表示光Lを放射させる場合に、バックライト21の、IGSW90がオンされたときからの発光の遅延が小さい。また、待機モードから動作モードへ移行した後から、IGSW90がオンされるまでの間、バックライト21に視認不能な輝度の表示光Lを放射させるので、IGSW90がオンされる前に不自然な表示が表示器20に表示されることもない。
【0055】
また、マイコン60は、IGSW90のオフからIGSW90が再度オンされるまでの間と、IGSW90のオフからマイコン60それ自体が待機モード、すなわち制御処理を終了させるまでの間に、バックライト21に視認不能な輝度で表示光Lを放射させる。このため、マイコン60は、IGSW90が再度オンされたとき、IGSW90のオンから遅滞なくバックライト21に表示光Lを放射させることができる。その結果、HUD装置1は、速やかに車両情報画像を運転者5に提供できる。
【0056】
マイコン60は、待機モードから動作モードへ移行した後の、IGSW90がオンされるまでの間と、IGSW90のオフ後からIGSW90が再度オンされるまでの間と、IGSW90のオフからマイコン60の制御処理を終了させるまでの間とで、液晶パネル22に黒画面を表示させる。バックライト21が視認不能な輝度で表示光Lを放射するだけでなく、液晶パネル22が黒画面を表示するので、これらの間でHUD装置1が不要な光を放射することを防ぐことができる。
【0057】
さらに、HUD装置1は、待機モードから動作モードへ移行した後、IGSW90がオンされるまでの間と、IGSW90のオフ後からIGSW90が再度オンされるまでの間と、IGSW90のオフからマイコン60の制御処理を終了させるまでの間とで、反射部材40の鏡面の向きを表示方向以外の方向に向けることにより、不要な光を放射することを防ぐことができる。
【0058】
マイコン60は、待機モードから動作モードへ移行した直後、バックライト21が最低輝度で発光するPWM信号6を昇圧型LEDドライバ23に出力させる。予め昇圧型LEDドライバ23にPWM信号6を出力させているので、その後に昇圧型LEDドライバ23を別のデューティ比のPWM信号を出力する場合でも、例えば、視認不能な輝度でバックライト21を発光させるPWM信号7を出力する場合でも、その出力が安定する。
【0059】
さらに、マイコン60は、上記のPWM信号6を昇圧型LEDドライバ23に出力させるときに、反射部材40の鏡面の向きを待機方向に向けることにより、不要な光の放射を防ぐ。
【0060】
以上、本発明の実施の形態に係るヘッドアップディスプレイ装置およびヘッドアップディスプレイ装置の制御方法について説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0061】
例えば、実施の形態では、待機モードから動作モードへ移行後、マイコン60が昇圧型LEDドライバ23に、最低輝度でバックライト21を発光させるPWM信号6を出力させている。しかし、本発明では、待機モードから動作モードへ移行後に最低輝度でバックライト21を発光させるか否かは任意である。例えば、マイコン60が待機モードから動作モードへ移行した後からIGSW90がオンになるまで十分な時間があり、マイコン60が待機モードから動作モードへ移行した直後に昇圧型LEDドライバ23の出力を安定化させる必要がない場合、待機モードから動作モードへ移行後に最低輝度でバックライト21を発光させないで、待機モードから動作モードへ移行後すぐに、視認不能な輝度でバックライト21をさせてもよい。
【0062】
なお、上記の最低輝度は、人が視認不能な輝度よりも明るい輝度であればよい。このような輝度でも、昇圧型LEDドライバ23の出力を安定化させることができるからである。
【0063】
さらに、本実施の形態では、マイコン60は、待機モードから動作モードへ移行後、かつ最低輝度でバックライト21を発光させた後、人が視認不能な輝度でバックライト21を発光させているが、本発明はこれに限定されない。本発明では、人が視認不能な輝度で発光するものは、表示器20であればよい。すなわち、バックライト21と液晶パネル22を備える表示器20であればよい。例えば、人が視認可能な輝度でバックライト21が発光していても、液晶パネル22の透過率が低い結果、人が視認不能な輝度で表示器20が表示光Lを放射すればよい。
【0064】
本実施の形態では、車両に関する情報に応じた画像、すなわち車両情報画像を運転者5に提供しているが、HUD装置1は、それ以外の画像、例えば、道路情報、天気情報等の画像を運転者5に提供してもよい。また、HUD装置1では、マイコン60がECU80から取得した車両情報から映像信号を生成しているが、映像信号は、ECU80から得てもよいし、CAN信号線70を介して他の機器、装置から得てもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 HUD装置
2 車両
3 ウインドシールド
4 ダッシュボード
5 運転者
6-8 PWM信号
10 筐体
11 開口部
12 透光部
20 表示器
21 バックライト
22 液晶パネル
23 昇圧型LEDドライバ
24 液晶ドライバ
30 平面鏡
40 反射部材
41 凹面鏡
42 支持部材
43 軸部
50 反射部材駆動部
60 マイコン
61 CPU
62 ROM
63 RAM
70 CAN信号線
80 ECU
90 IGSW
L 表示光
V 虚像
図1
図2
図3
図4
図5