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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005363
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】運転評価システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20240110BHJP
   B60R 1/26 20220101ALI20240110BHJP
   B60R 1/24 20220101ALI20240110BHJP
【FI】
G08G1/00 D
B60R1/26
B60R1/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105520
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】大石 啓之
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181AA02
5H181AA07
5H181BB04
5H181BB20
5H181CC04
5H181CC24
5H181FF10
5H181LL04
(57)【要約】
【課題】適正な運転者の評価が可能な運転評価システムを提供する。
【解決手段】運転評価システム1は、自車両Vに搭載され、自車両Vの後方を撮像する後方カメラ2Bと、後方カメラ2Bにより撮像された後方画像を取得する本体装置3とを備える。本体装置3は、自車両Vの車線変更を検出する車線変更検出部21と、車線変更検出部21により自車両Vの車線変更が検出された場合、自車両Vの車線変更時に対応する後方画像に基づいて、自車両Vの車線変更先である変更先車線を走行する後方車両Yの挙動を検出する挙動検出部22と、挙動検出部22により検出された後方車両Yの挙動に応じて、自車両Vの運転評価を判定する運転評価判定部23とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両に搭載され、前記自車両の後方を撮像して後方画像を取得する後方カメラと、
前記自車両の車線変更を検出する車線変更検出部と、
前記車線変更検出部により前記自車両の車線変更が検出された場合、前記自車両の車線変更時に対応する前記後方画像に基づいて、前記自車両の車線変更先である変更先車線を走行する後方車両の挙動を検出する挙動検出部と、
前記挙動検出部により検出された前記後方車両の挙動に応じて、前記自車両の運転評価を判定する運転評価判定部と、を備える、
ことを特徴とする運転評価システム。
【請求項2】
前記挙動検出部は、
前記後方車両の挙動として、前記後方車両が走行する前記変更先車線から他車線への車線変更または前記後方車両の減速の少なくとも1つを検出し、
前記運転評価判定部は、
検出された前記後方車両の挙動に応じて、前記自車両の運転評価を相対的に低下させる、
請求項1に記載の運転評価システム。
【請求項3】
前記自車両に搭載され、前記自車両の前方を撮像する前方カメラをさらに備え、
前記車線変更検出部は、
前記前方カメラにより撮像された前方画像を取得し、当該前方画像に基づいて、前記自車両の車線変更を検出する、
請求項1または2に記載の運転評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
運転評価システムは、交通事故削減を目的として、営業車を運転する運転者の運転評価を行うものがある。運転評価システムは、評価車両と同一レーン上の後方車両の後続車挙動を取得し、後続車挙動の単位時間あたりの変化量が閾値以上である場合に、評価車両が後方車両に悪影響を与えていると評価するものである(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、運転評価システムに関連するものとして、例えば、運転支援装置がある。この運転支援装置は、自車両が車線変更して他車両の前に移動する際に、複数の走行レーンを区別できるように割り当てられた検知枠内で他車両を検知した場合、危険性の高い割り込み運転とみなし、このイベントを記録したり、警報を出力して運転を支援する(例えば、特許文献2)。
【0004】
ところで、大型トラックは、高速道路における制限速度が80km/hである。そのため、複数の大型トラックが、同一レーン上で前後に同じ制限速度で走っていても、個体差によって速度差が生じ、先行する他車両との車間距離が詰まることがある。この速度差が生じる原因は、例えば、車両のメーター表示の誤差、坂道での無意識な速度変化、制限速度以下での余裕をもった運転、さらに、クルーズコントロールの速度設定の差などが考えられる。ここで、大型トラックが追い越しをかける場合、速度域の異なる右側車線に移る必要があるが、追い越し車線が混雑していても、少しでも車間距離が開くと強引に割り込む車両も少なくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-179335号公報
【特許文献2】特開2019-28483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
追い越し車線を走行する後方車両の運転者は、先行する大型トラックの車線変更に応じて、強引な割込みをされたと感じる場合がある。例えば、後方車両が普通車の場合、大型トラックと普通車とでは速度差があることから、大型トラックの車線変更により、大型トラックと後方車両との車間距離も詰まり、後方車両の運転者が安全な車間距離を保つべくブレーキをかけるおそれがある。このような割り込みをさせないように、営業車を運転する運転者の運転評価を行うことが望まれている。
【0007】
本発明は、適正な運転者の評価が可能な運転評価システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る運転評価システムは、自車両に搭載され、前記自車両の後方を撮像して後方画像を取得する後方カメラと、前記自車両の車線変更を検出する車線変更検出部と、前記車線変更検出部により前記自車両の車線変更が検出された場合、前記自車両の車線変更時に対応する前記後方画像に基づいて、前記自車両の車線変更先である変更先車線を走行する後方車両の挙動を検出する挙動検出部と、前記挙動検出部により検出された前記後方車両の挙動に応じて、前記自車両の運転評価を判定する運転評価判定部と、を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る運転評価システムによれば、適正な運転者の評価ができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係る運転評価システムの概略構成を示すブロック図である。
図2図2は、実施形態の自車両の車線変更に対する後方車両の状況例を示す図である。
図3図3は、実施形態の自車両の車線変更に対する後方車両の挙動例を示す図である。
図4図4は、実施形態の後方車両の速度(速度変化)を計測する方法を説明するための図である。
図5図5は、実施形態に係る運転評価システムの評価処理を示すフローチャートである。
図6図6は、実施形態の後方画像による直線路上の後方車両の挙動検出を説明する図である。
図7図7は、実施形態の後方画像による右カーブ路上の後方車両の挙動検出を説明する図である。
図8図8は、実施形態の後方画像による左カーブ路上の後方車両の挙動検出を説明する図である。
図9図9は、実施形態の変形例に係る運転評価システムの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記実施形態により本発明が限定されるものではない。すなわち、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれ、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0012】
[実施形態]
図1に示す本実施形態に係る運転評価システム1は、例えば、自動車等の車両Vに搭載され、車両Vの運行を管理するシステムである。運転評価システム1は、例えば、貨物自動車運送事業、旅客自動車運送事業等の事業者の設備として導入される。運転評価システム1は、車両用の運行管理プログラムに従って動作する。本実施形態の運転評価システム1は、車両V(以下、自車両Vとも呼ぶ。)の走行状態を記録すると共に、自車両Vの後方車両Yの挙動を検出し、当該挙動の有無に応じて自車両Vの運転者の運転評価を行う機能を有する。
【0013】
ここで、運転評価システム1が適用される自車両Vは、路面等を走行する移動体である。例えば、荷物を輸送するトラック等である。以下では、自車両Vは、輸送用トラックであるものとして説明する。
【0014】
運転評価システム1は、図1に示すように、前方カメラ2A、後方カメラ2Bと、本体装置3とを含んで構成される。
【0015】
前方カメラ2A、後方カメラ2Bは、それぞれが動画像を撮像して動画像データを生成するものである。前方カメラ2A、後方カメラ2Bは、自車両Vにおける所定の設置場所に設置され、自車両Vの外部を撮影する。前方カメラ2A、後方カメラ2Bは、少なくとも自車両Vの走行している車線(レーン)、車線を分ける車線境界線、及び車線境界線を介して隣接する他の車線を撮像できるように配置されている。前方カメラ2A、後方カメラ2Bは、少なくとも路面に設けられた線の色を判別することが可能となるように、カラーの動画像データを生成する。
【0016】
前方カメラ2Aは、例えば、自車両Vの正面に設置され、撮影対象として車両前方の風景を撮影する。前方カメラ2Aの撮影対象には、自車両Vの先行車両、対向車両や横断車両、歩行者や横断者、標識や標示等が含まれる。
【0017】
後方カメラ2Bは、例えば、自車両Vの後正面に設置され、撮影対象として車両後方の風景を撮影する。この撮影対象には、自車両Vの後方車両、歩行者等が含まれる。
【0018】
本実施形態における前方カメラ2A、後方カメラ2Bは、同一構造、同一機能を有するものとする。前方カメラ2A、後方カメラ2Bは、それぞれが本体装置3に対して自車両Vに配索された電線やケーブル等の配索材により電気的に接続されており、各カメラで撮像した動画像を動画像データとして本体装置3に出力する。
【0019】
本体装置3は、制御部10と、メモリ11とを含んで構成される。本体装置3は、例えば、自車両Vの運行状況を記録するデジタルタコグラフ、ドライブレコーダ、タクシーメータ等である。本体装置3は、自車両Vの走行中に、当該自車両Vの運転や走行に関わる種々の情報を記録する。なお、本体装置3は、制御部10、メモリ11以外に、デジタルタコグラフの構成として、速度インターフェース、エンジンインタフェース、GPS受信部、アナログインタフェース、外部入力インターフェース、広域通信部、カードインタフェース、スイッチ類、及び表示部を有するが、それらについては図示及び説明を省略する。
【0020】
本体装置3は、図2図4に示すように、前方カメラ2Aから取得した動画像データに基づいて自車両Vの車線変更を検出する。ここで図2図4は、自車両Vが、当該自車両Vと前方車両Xaとの車間距離が詰まることで、走行車線101(または第一走行車線101A)から変更先車線である追越車線102(または第二走行車線101B)に車線変更する状態を示す。このとき、車両Vは、追越車線102(または第二走行車線101B)上を前後して走行している前方車両Xbと後方車両Yとの間に割り込む形になる。本体装置3は、検出した自車両Vの車線変更に応じて、後方カメラ2Bから取得した動画像データに基づき、自車両Vの後方側を走行する後方車両Yの挙動を検出する。さらに、本体装置3は、検出した後方車両Yの挙動に応じて、自車両Vを運転する運転者の運転評価を判定する。
【0021】
制御部10は、本体装置3を制御するものである。制御部10は、例えば、周知のマイクロコンピュータを主体とする電子回路を含んで構成される。制御部10は、機能的に、車線変更検出部21と、挙動検出部22と、運転評価判定部23とを含んで構成される。
【0022】
メモリ11は、不揮発性メモリ、揮発性メモリ、記録媒体等で構成される。不揮発性メモリは、制御部10によって実行される処理プログラムや各種データを記憶している。揮発性メモリは、例えば、制御部10による演算結果等を記憶する。記録媒体は、運転評価システム1で取得される情報を記録する。記録媒体は、例えば、種々のインターフェースを介して本体装置3に脱着可能に構成される。記録媒体は、例えば、様々な形式のメモリカードを用いることができる。記録媒体は、前方カメラ2A、後方カメラ2Bにより撮影された動画像データや、運転者による運転操作(ブレーキ操作、ウィンカー操作、走行経路等)状況を示す走行データを記憶する。
【0023】
車線変更検出部21は、自車両Vの車線変更を検出するものである。車線変更検出部21は、前方カメラ2Aにより取得された動画像データから前方画像を抽出し、当該前方画像に基づいて、自車両Vの車線変更を検出する。車線変更検出部21は、前方画像に対して公知の画像処理を行い、道路上の着色線(車線境界線110)を抽出する。車線変更検出部21は、自車両Vの両端から車線境界線110までの距離DL,DRと、自車両Vの車両幅WV(固定値)から、走行車線101(または第一走行車線101A)の車線幅Wを算出することができる。
【0024】
車線変更検出部21は、図2に示すように、自車両Vが2車線道路を走行している場合、抽出した複数の車線境界線110に基づいて自車両Vが走行する走行車線101、走行車線101に車線境界線110を挟んで隣接する追越車線102を検出する。また、車線変更検出部21は、図3図4に示すように、自車両Vが3車線道路を走行している場合、抽出した複数の車線境界線110に基づいて自車両Vが走行する第一走行車線101A、第一走行車線101Aに第一車線境界線110Aを挟んで隣接する第二走行車線101B、第二走行車線101Bに第二車線境界線110Bを挟んで隣接する追越車線102を検出する。
【0025】
車線変更検出部21は、運転者の方向指示器(ウインカー)に対する操作、及び、時系列で連続する複数の前方画像に基づく自車両Vの走行車線101(または第一走行車線101A)から追越車線102(または第二走行車線101B)への車線変更に応じて、自車両Vの車線変更を検出する。車線変更検出部21は、例えば、方向指示器の操作に応じて生じるウィンカーON信号にもとづき、当該ウィンカーON信号中に時系列で連続する複数の前方画像において車線境界線110等の左方向への移動を検出することにより、自車両Vの車線変更を検出する。車線変更検出部21は、ウィンカーON信号中に、距離DRの値が小さくなり、0を越えてマイナスの値になることで、自車両Vの車線変更を検出する。
【0026】
挙動検出部22は、車線変更検出部21により自車両Vの車線変更が検出された場合、自車両Vの車線変更時に対応する後方画像に基づいて、自車両Vの車線変更先である変更先車線を走行する後方車両Yの挙動を検出するものである。ここで後方車両Yは、自車両Vの後方を走行する車両のうち、自車両Vと同一の走行車線101上を走行する車両でなく、走行車線101に隣接する追越車線102や第二走行車線101Bを走行するものである。挙動検出部22は、後方カメラ2Bにより取得された動画像データから後方画像を抽出し、当該後方画像に基づいて、後方車両Yの挙動を検出する。後方車両Yの挙動には、当該後方車両Yの減速、当該後方車両Yが走行する変更先車線から他車線への車線変更が含まれる。ここで変更先車線とは、自車両Vの車線変更時の変更先となる車線であり、例えば追越車線102(図2)、第二走行車線101B(図3図4)となる。
【0027】
挙動検出部22は、自車両Vの車線変更が検出された場合、後方車両Yの速度変化(減速度)を算出し、減速度が閾値以上であった場合、後方車両Yが急ブレーキをかけて減速したと推定する。ここで閾値は、例えば、自車両Vの車線変更に起因する後方車両の減速度を機械学習モデルに入力することで得るようにしてもよい。挙動検出部22は、自車両Vの走行速度と、時系列で連続する複数の後方画像(図6図8に示す30A~30C)に基づいて、後方カメラ2Bの解像度、レンズパラメータにより算出された距離換算テーブルを利用して、後方カメラ2Bから後方車両Yまでの第1離間距離rと、自車両Vの前後方向に沿って中心を通る軸Oから後方車両Yまでの第2離間距離sを算出する。挙動検出部22は、算出した第1離間距離r及び第2離間距離sにより、自車両Vと後方車両Yとの間のオフセット車間距離tを算出する。挙動検出部22は、自車両Vの走行速度Vpと、オフセット車間距離tの変化を監視し、後方車両Yの走行速度および減速度を推定する。挙動検出部22は、自車両Vの車線変更中から車線変更終了して数秒後までの後方車両Yの減速度を推定する。
【0028】
挙動検出部22は、自車両Vの車線変更が検出された場合、後方車両Yの車線変更を検出する。挙動検出部22は、自車両Vの車線変更中において、距離DRの変化と第2離間距離sの変化、及び、車線幅Wを用いて、後方車両Yの車線変更を検出する。挙動検出部22は、例えば、後方車両Yの左右方向の単位時間当たりの移動量を算出し、当該移動量が上記閾値と異なる他の閾値以上であった場合、後方車両Yが急ハンドルを切ったと推定する。ここで他の閾値は、例えば、自車両Vの車線変更に起因する後方車両Yの左右方向の単位時間当たりの移動量を機械学習モデルに入力することで得るようにしてもよい。
【0029】
運転評価判定部23は、挙動検出部22により検出された後方車両Yの挙動に応じて、自車両Vを運転する運転者の運転評価を判定するものである。運転評価判定部23は、検出された後方車両Yの挙動に応じて、自車両Vを運転する運転者の運転評価を相対的に低下させる。例えば、運転評価判定部23は、運転者の評価を5段階に分けて、基準となる評価値:5からマイナス0.5ずつ、またはマイナス0.2ずつ相対的に低下させるように構成してもよい。また、運転評価判定部23は、挙動検出部22により検出された後方車両Yの挙動の度合いに応じて、相対的に低下させる値(減点値)を異なるようにしてもよい。運転評価判定部23は、例えば、自車両Vの車線変更に対して後方車両Yの減速度が高く、後方車両Yに対して急ブレーキをかけさせたと推定される場合には、通常の減点値より相対的に高い減点値としてもよい。運転評価判定部23は、評価結果をメモリ11に記録する。また、運転評価判定部23は、評価結果に基づいて、自車両Vの車線変更により後方車両に影響を与えた事象に対応する後方画像や前方画像、これらに対応する動画像の少なくとも一部をメモリ11に記録する。
【0030】
次に、運転評価システム1において、運転評価処理を図5に示すフローチャートを参照して説明する。運転評価システム1は、例えば、自車両VのACC電源等がONされたときに起動し、当該電源等がOFFされるまで以下に説明する処理を繰り返す。
【0031】
ステップS1では、制御部10は、車線変更検出部21により、自車両Vの車線変更を検出したか否かを判定する。この判定の結果、車線変更を検出していない場合は、ステップS1の処理を繰り返す。一方、車線変更を検出していない場合は、ステップS2へ進む。
【0032】
ステップS2では、制御部10は、挙動検出部22により、後方車両Yの挙動を検出する。
【0033】
ステップS3では、制御部10は、挙動検出部22により、後方車両Yの特定の挙動が検出されたか否かを判定する。具体的には、制御部10は、挙動検出部22により、後方車両Yの挙動として、当該後方車両Yの減速、車線変更が検出されたか否かを判定する。この判定の結果、特定の挙動が検出されない場合は、ステップS1へ戻る。一方、特定の挙動が検出された場合は、ステップS4へ進む。
【0034】
ステップS4では、制御部10は、運転評価判定部23により、自車両Vを運転する運転者の運転評価を行う。
【0035】
ステップS5では、制御部10は、本処理を終了するか否かを判定する。本処理を終了しない場合は、ステップS1へ戻る。一方、本処理を終了する。制御部10は、例えば、自車両VのACC電源等がOFFされたか否かを判定し、当該電源等がOFFされたときは本処理を終了する。
【0036】
以上で説明した本実施形態に係る運転評価システム1は、自車両Vに搭載され、自車両Vの後方を撮像する後方カメラ2Bと、後方カメラ2Bにより撮像された後方画像を取得する本体装置3とを備える。本体装置3は、自車両Vの車線変更を検出する車線変更検出部21と、車線変更検出部21により自車両Vの車線変更が検出された場合、自車両Vの車線変更時に対応する後方画像に基づいて、自車両Vの車線変更先である変更先車線を走行する後方車両Yの挙動を検出する挙動検出部22と、挙動検出部22により検出された後方車両Yの挙動に応じて、自車両Vを運転する運転者の運転評価を判定する運転評価判定部23とを有する。
【0037】
上記構成により、運転評価システム1は、自車両Vの運転者が実施した当該自車両Vの車線変更により、自車両Vの後方を走行する後方車両Yに対して与えた影響を、運転評価として図ること可能となり、適正な運転者の評価が可能となる。また、運転評価システム1は、自車両Vの運転者が実施した当該自車両Vの車線変更により、自車両Vの後方を走行する後方車両Yに対して与えた影響を、当該運転者にリアルタイムで知らせるものではなく、評価結果を記録しておくものである。そのため、運転評価システム1は、例えば、運転者の運行を管理する運行管理責任者が、記録された評価結果に基づいて運転者の安全運転や交通マナーの指導を行うことが可能となる。また、運転評価システム1は、他者によるあおり運転の原因となる運転を控えるように運転者に対する教育が可能となる。
【0038】
また、運転評価システム1は、挙動検出部22が、後方車両Yの挙動として、後方車両Yが走行する変更先車線から他車線への車線変更または後方車両Yの減速を検出する。これにより、例えば、運行管理責任者は、記録された評価結果に基づいて、項目を限定して安全指導を行うことが可能となる。
【0039】
また、運転評価システム1は、運転評価判定部23が、検出された後方車両Yの挙動に応じて、自車両Vを運転する運転者の運転評価を相対的に低下させる。これにより、運転者による自車両Vの車線変更に応じて後方車両Yに与えた影響が、自車両Vの運転評価を低下させるものとなる。
【0040】
また、運転評価システム1は、車線変更検出部21が、前方カメラ2Aにより撮像された前方画像を取得し、当該前方画像に基づいて、自車両Vの車線変更を検出する。これにより、運転評価システム1は、運転者による自車両Vの車線変更を容易に検出することができる。
【0041】
なお、上記実施形態における運転評価システム1は、車両V側の本体装置3が運転評価判定部23を有するが、これに限定されるものではない。図9は、本実施形態の変形例に係る運転評価システムの概略構成を示すブロック図である。本実施形態の変形例に係る運転評価システム1Aは、図9に示すように、車両Vの外部に設けられた運転評価装置4が運転評価判定部23を有する点で上記運転評価システム1とは異なる。
【0042】
運転評価装置4は、例えば、車両Vや当該車両Vの運転者を管理する事業所等に設置され、本体装置3との間でデータのやり取りが可能なPC(Personal Computer)である。運転評価装置4は、本体装置3に対して、SDカード等の記録媒体を介してデータのやり取りを行うことができる。なお、運転評価装置4及び本体装置3は、例えば、USBケーブル等を介した直接通信、または、Wi-Fi等の無線通信等によりデータのやり取りを行ってもよい。また、運転評価装置4は、図9に示すように、例えば、いわゆるインターネット等のネットワークNT上に設置され、本体装置3との間で無線通信、ネットワークNW等によりデータのやり取りが可能なサーバ5であってもよい。この場合、サーバ5は、運転評価判定部23を有するものであってもよい。
【0043】
運転評価装置4は、上述した運転評価判定部23を有する。運転評価装置4は、本体装置3から車線変更検出部21による検出結果、挙動検出部22による検出結果を含むデータを受け取り、当該データを受け取った運転評価判定部23が車両Vを運転する運転者の運転評価を行う。
【0044】
また、上記変形例に係る運転評価システム1Aは、車両V側の本体装置3が、車線変更検出部21、挙動検出部22、及び運転評価判定部23を有するが、これに限定されるものではない。この場合、運転評価装置4は、車線変更検出部21、挙動検出部22、及び運転評価判定部23を有する。運転評価装置4は、本体装置3から動画像データや車両Vの走行速度等の記録データを受け取り、当該記録データを受け取った運転評価判定部23が車両Vを運転する運転者の運転評価を行うものであってもよい。
【0045】
上記実施形態では、挙動検出部22は、図2図4に示す直線状の2車線以上の道路における後方車両Yを、図6に示す後方画像30Aを用いて検出している。この場合、後方車両Yは、後方画像30Aにおいて、車両Vに対して軸Oと重なることなく、軸Oから左方向(追越車線102側)に第2離間距離s分離間した位置にある。そのため、挙動検出部22は、後方画像30Aに基づいて、後方車両Yが追越車線102を走行しているか否かを正確に判定することができる。
【0046】
一方、後方車両Yが直線状ではない2車線以上の道路を走行している場合は、例えば、後方カメラ2Bにより、図7図8に示す後方画像30B,30Cが得られる。この場合、後方車両Yは、後方画像30Bにおいて、車両Vに対して軸Oから左方向(追越車線102側)に第2離間距離s分離間した位置になく、車両Vと同一の第二走行車線101Bを走行する他の後方車両Yaが位置する。一方、後方車両Yは、後方画像30Cにおいて、車両Vに対して軸Oと重なり、軸Oから左方向(追越車線102側)に第2離間距離s分離間した位置にない。そのため、挙動検出部22は、後方画像30B,30Cに基づいて、後方車両Yが追越車線102を走行しているか否かを正確に判定し辛い場合がある。
【0047】
そこで、挙動検出部22は、車線変更検出部21による検出結果に基づいて車線の曲率を算出する。そして、挙動検出部22は、算出した車線の曲率と、車両Vと後方車両Yとのオフセット車間距離tに基づいて、後方車両Yの軸Oから左方向に向かう位置を補正する。これにより、挙動検出部22は、後方画像30B,30Cに基づいて、後方車両Yが追越車線102を走行しているか否かを正確に判定することができる。なお、挙動検出部22は、車線の曲率を算出する場合、走行車線101、追越車線102等が全て略同一の曲率を有するものとして算出する。また、挙動検出部22は、車線変更検出部21による検出結果に基づいて車線の曲率を算出するが、これに限定されず、例えば車両Vに搭載されるジャイロセンサが車速情報に基づいて当該曲率を算出してもよいし、横Gの計測が可能な加速度センサが車速情報に基づいて当該曲率を算出してもよい。また、車両Vに搭載されたGPSが、少なくとも時系列上の過去の3点以上の位置情報によって車線の曲率を算出してもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、車線変更検出部21は、前方カメラ2Aにより取得された動画像データから前方画像を抽出し、当該前方画像に基づいて、車両Vの車線変更を検出するが、これに限定されるものではない。この場合、車線変更検出部21は、後方カメラ2Bにより取得された動画像データから後方画像を抽出し、当該後方画像に基づいて、車両Vの車線変更を検出してもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、車両Vの車線変更時の変更先となる変更先車線が、追越車線102、第二走行車線101Bとしているが、これに限定されるものではない。例えば、車両Vが走行する車線が第二走行車線101B(または追越車線102)であり、変更先車線が第一走行車線101A(または走行車線101)であってもよい。この場合、挙動検出部22による検出対象の後方車両Yは、第一走行車線101A(または走行車線101)を走行する車両となる。
【0050】
また、上記実施形態では、挙動検出部22は、後方車両Yの車線変更を検出するが、変更先車線が、後方車両Yが走行している車線に対して進行方向右側の車線であっても、進行方向左側の車線であってもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、運転評価システム1,1Aは、例えば、運行管理責任者が、本体装置3等に記録された評価結果に基づいて運転者の安全運転指導を行うとしているが、これに限定されるものではない。例えば、運転評価システム1は、複数の車両Vから得られるデータを蓄積し、分析することにより、車両Vの車線変更により後方車両に影響を与える事象が起こりやすい路線を抽出するものであってもよし。この場合、運行管理者が、当該事象が起こりやすい路線を走行する車両の運転者に対して注意喚起を行うことが可能となる。
【0052】
また、運行管理責任者は、例えば、本体装置3等に記録された評価結果を、解析評価ソフト等を利用して解析し、後方車両Yに与えた影響の大きさや発生回数により運転者に対して点数を付与するものであってもよい。
【0053】
また、運転評価システム1は、車両Vの運転者が実施した当該車両Vの車線変更により、車両Vの後方を走行する後方車両Yに対して与えた影響を、当該運転者にリアルタイムで知らせるものではないとしたが、これに限定されるものではない。この場合、運転評価システム1は、本体装置3が車両Vの運転者に対してリアルタイムにアラーム音や音声により警告を行う構成であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 運転評価システム
2A 前方カメラ
2B 後方カメラ
3 本体装置
4 運転評価装置
10 制御部
21 車線変更検出部
22 挙動検出部
23 運転評価判定部
30A,30B,30C 後方画像
101 走行車線
101A 第一走行車線
101B 第二走行車線
102 追越車線
110 車線境界線
110A 第一車線境界線
110B 第二車線境界線
V 車両
Y 後方車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9