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特開2024-53643セメント系地盤改良工法による地盤改良効果の評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053643
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】セメント系地盤改良工法による地盤改良効果の評価方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 1/00 20060101AFI20240409BHJP
   E02D 3/12 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
E02D1/00
E02D3/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159975
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596164652
【氏名又は名称】太洋基礎工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519232068
【氏名又は名称】NPO法人地盤防災ネットワーク
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】下坂 賢二
(72)【発明者】
【氏名】利根 誠
(72)【発明者】
【氏名】大野 康年
(72)【発明者】
【氏名】加藤 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】村田 芳信
(72)【発明者】
【氏名】八嶋 厚
(72)【発明者】
【氏名】沢田 和秀
【テーマコード(参考)】
2D040
2D043
【Fターム(参考)】
2D040AB00
2D040CA01
2D040GA02
2D043AA01
2D043BA10
(57)【要約】
【課題】サンプリングによる一軸圧縮強度試験に依ることなく、改良前後の電気比抵抗の計測によって、改良体の一軸圧縮強度を評価可能とする。
【解決手段】事前に、セメント系固化材添加量と一軸圧縮強さ(qu)との第1相関図を得るとともに、セメント系固化材添加量と電気比抵抗の比(Rimp/Runimp)との第2相関図を得る第1手順と、前記第1相関図及び第2相関図に基づいて、目標とする電気比抵抗の比(Rk)を設定する第2手順と、地盤改良前後にそれぞれ、地盤に縦方向に形成した貫入孔を用いて電気検層による電気比抵抗(Runimp、Rimp)を計測し、電気比抵抗の比(Rimp/Runimp)が前記目標とする電気比抵抗の比(Rk)以下である条件を満たすかどうかで目標とする一軸圧縮強さ(quck)が確保されているかを判断する第3手順とからなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント系地盤改良工法による地盤改良効果の評価方法であって、
事前に、セメント系固化材添加量と、一軸圧縮強さ(qu)との第1相関図を得るとともに、セメント系固化材添加量と、改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)との第2相関図を得る第1手順と、
前記第1相関図に基づいて、目標とする一軸圧縮強さ(quck)から目標とするセメント系固化材添加量を求め、次いで前記第2相関図に基づいて、前記目標とするセメント系固化材添加量から目標とする電気比抵抗の比(Rk)を設定する第2手順と、
地盤改良前後にそれぞれ、地盤に縦方向に形成した貫入孔を用いて電気検層による電気比抵抗(Runimp、Rimp)を計測し、改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)が前記目標とする電気比抵抗の比(Rk)以下である条件を満たすかどうかで、目標とする一軸圧縮強さ(quck)が確保されているかを判断する第3手順とからなることを特徴とするセメント系地盤改良工法による地盤改良効果の評価方法。
【請求項2】
セメント系地盤改良工法による地盤改良効果の評価方法であって、
事前に、セメント系固化材添加量と、液状化強度比(RL)又は粘着力(c)との第1相関図を得るとともに、セメント系固化材添加量と、改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)との第2相関図を得る第1手順と、
前記第1相関図に基づいて、目標とする液状化強度比(RL)又は粘着力(c)から目標とするセメント系固化材添加量を求め、次いで前記第2相関図に基づいて、前記目標とするセメント系固化材添加量から目標とする電気比抵抗の比(Rk)を設定する第2手順と、
地盤改良前後にそれぞれ、地盤に縦方向に形成した貫入孔を用いて電気検層による電気比抵抗(Runimp、Rimp)を計測し、改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)が前記目標とする電気比抵抗の比(Rk)以下である条件を満たすかどうかで、目標とする一軸圧縮強さ(quck)が確保されているかを判断する第3手順とからなることを特徴とするセメント系地盤改良工法による地盤改良効果の評価方法。
【請求項3】
セメント系地盤改良工法による地盤改良効果の評価方法であって、
事前に、セメント系固化材添加量と、一軸圧縮強さ(qu)との第1相関図を得るとともに、セメント系固化材添加量と、未改良地盤の導電率(σunimp)と改良地盤の導電率(σimp)の比(σunimp/σimp)との第2相関図を得る第1手順と、
前記第1相関図に基づいて、目標とする一軸圧縮強さ(quck)から目標とするセメント系固化材添加量を求め、次いで前記第2相関図に基づいて、前記目標とするセメント系固化材添加量から目標とする導電率の比(σk)を設定する第2手順と、
地盤改良前後にそれぞれ、地盤に縦方向に形成した貫入孔を用いて電気検層による導電率(σunimp、σimp)を計測し、未改良地盤の導電率(σunimp)と改良地盤の導電率(σimp)の比(σunimp/σimp)が前記目標とする導電率の比(σk)以下である条件を満たすかどうかで、目標とする一軸圧縮強さ(quck)が確保されているかを判断する第3手順とからなることを特徴とするセメント系地盤改良工法による地盤改良効果の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧噴射撹拌工法、深層混合処理工法 ソイルセメント工法等のセメント系固化材を用いた地盤改良工法による地盤改良効果の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、埋立て地等の軟弱地盤の地盤強化のために、セメント系固化材を用いた高圧噴射撹拌工法、深層混合処理工法、ソイルセメント工法等の地盤改良工法によって地盤改良工事が行われている。この地盤改良工事では、セメント系固化材による改良体がしっかりと造成されているかを確認する施工確認調査が行われる。
【0003】
セメント系地盤改良工法の施工確認調査として最も一般的な方法は、硬化後にコアサンプリングによって採取した供試体の一軸圧縮強度(qu)によって評価する方法である。しかし、試料のサンプリングと室内での一軸圧縮試験に時間とコストが掛かるという問題と、一軸圧縮強度試験の材齢は28日強度であるため、改良体に問題があることが分かっても時間が経過しているため再施工などの処置が難しいなどの問題があった。
【0004】
上記一軸圧縮強度試験以外の方法により改良地盤の品質を直接的に評価する方法としては、地表から実施する物理探査(表面波探査、高密度電気探査、弾性波探査、地震探査)や弾性波を用いたトモグラフィ探査(下記特許文献1参照)、音響トモグラフィ探査(下記特許文献2、3等参照)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-45366号公報
【特許文献2】特開2015-214838号公報
【特許文献3】特開2019-143432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記地表から実施する物理探査の場合は、深度に関係無く品質評価の精度が低いという問題があり、前記弾性波を用いたトモグラフィ探査の場合は、精度を確保しようとすると探査距離を10m以下にしなければならないという問題があり、更に音響トモグラフィ探査の場合は、広範囲な調査が可能なものの調査が大掛かりであるとともに、地層と音波の伝播特性との関係が場所によって異なることがあるため、解析にはキャリブレーションを要するなど、改良直後の品質評価が難しいという問題の他、測定機器自体が高価であるなどの問題があった。
【0007】
そこで本発明の主たる課題は、サンプリングによる一軸圧縮強度試験に依ることなく、改良前後の電気比抵抗の計測によって、改良体の一軸圧縮強度を評価可能としたセメント系地盤改良工法の改良効果の評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、セメント系地盤改良工法による地盤改良効果の評価方法であって、
事前に、セメント系固化材添加量と、一軸圧縮強さ(qu)との第1相関図を得るとともに、セメント系固化材添加量と、改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)との第2相関図を得る第1手順と、
前記第1相関図に基づいて、目標とする一軸圧縮強さ(quck)から目標とするセメント系固化材添加量を求め、次いで前記第2相関図に基づいて、前記目標とするセメント系固化材添加量から目標とする電気比抵抗の比(Rk)を設定する第2手順と、
地盤改良前後にそれぞれ、地盤に縦方向に形成した貫入孔を用いて電気検層による電気比抵抗(Runimp、Rimp)を計測し、改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)が前記目標とする電気比抵抗の比(Rk)以下である条件を満たすかどうかで、目標とする一軸圧縮強さ(quck)が確保されているかを判断する第3手順とからなることを特徴とするセメント系地盤改良工法による地盤改良効果の評価方法が提供される。
【0009】
上記請求項1記載の発明では、セメント系地盤改良工法による地盤改良効果(一軸圧縮強さ)を評価するに当たって、原位置土を用いた室内実験によって、事前に、セメント系固化材添加量と、一軸圧縮強さ(qu)との第1相関図を得るとともに、セメント系固化材添加量と、改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)との第2相関図を得るようにする(第1手順)。
【0010】
次に、前記第1相関図に基づいて、目標とする一軸圧縮強さ(quck)から目標とするセメント系固化材添加量を求め、次いで前記第2相関図に基づいて、前記目標とするセメント系固化材添加量から目標とする電気比抵抗の比(Rk)を設定する(第2手順)。すなわち、セメント系固化材添加量を介して、目標とする一軸圧縮強さ(quck)を得るための電気比抵抗の比(Rimp/Runimp)を設定するようにする。地盤改良前後に測定した電気比抵抗の比(Rimp/Runimp)が前記目標とする電気比抵抗の比(Rk)以下である場合には、目標とする一軸圧縮強さ(quck)が確保されていることになる。
【0011】
あとは、地盤改良前後にそれぞれ、地盤に縦方向に形成した貫入孔を用いて電気検層による電気比抵抗(Runimp、Rimp)を計測し、改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)が前記目標とする電気比抵抗の比(Rk)以下である条件を満たすかどうかで、目標とする一軸圧縮強さ(quck)が確保されているかを判断する(第3手順)。
【0012】
本発明では、地盤改良前後の電気比抵抗の計測によって、改良体の一軸圧縮強さを評価することが可能になる。
【0013】
請求項2に係る本発明として、セメント系地盤改良工法による地盤改良効果の評価方法であって、
事前に、セメント系固化材添加量と、液状化強度比(RL)又は粘着力(c)との第1相関図を得るとともに、セメント系固化材添加量と、改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)との第2相関図を得る第1手順と、
前記第1相関図に基づいて、目標とする液状化強度比(RL)又は粘着力(c)から目標とするセメント系固化材添加量を求め、次いで前記第2相関図に基づいて、前記目標とするセメント系固化材添加量から目標とする電気比抵抗の比(Rk)を設定する第2手順と、
地盤改良前後にそれぞれ、地盤に縦方向に形成した貫入孔を用いて電気検層による電気比抵抗(Runimp、Rimp)を計測し、改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)が前記目標とする電気比抵抗の比(Rk)以下である条件を満たすかどうかで、目標とする一軸圧縮強さ(quck)が確保されているかを判断する第3手順とからなることを特徴とするセメント系地盤改良工法による地盤改良効果の評価方法が提供される。
【0014】
上記請求項2記載の発明は、一軸圧縮強さ(qu)と液状化強度比(RL)とは一定の換算式によって変換が可能であること、一軸圧縮強さ(qu)と粘着力(c)とは一定の換算式によって変換が可能であることに鑑み、請求項1のセメント系固化材添加量と、一軸圧縮強さ(qu)との第1相関図において、一軸圧縮強さ(qu)の軸を液状化強度比(RL)又は粘着力(c)に代えた相関図とし、これに基づいて、地盤改良効果を判定するようにしたものである。
【0015】
請求項3に係る本発明として、セメント系地盤改良工法による地盤改良効果の評価方法であって、
事前に、セメント系固化材添加量と、一軸圧縮強さ(qu)との第1相関図を得るとともに、セメント系固化材添加量と、未改良地盤の導電率(σunimp)と改良地盤の導電率(σimp)の比(σunimp/σimp)との第2相関図を得る第1手順と、
前記第1相関図に基づいて、目標とする一軸圧縮強さ(quck)から目標とするセメント系固化材添加量を求め、次いで前記第2相関図に基づいて、前記目標とするセメント系固化材添加量から目標とする導電率の比(σk)を設定する第2手順と、
地盤改良前後にそれぞれ、地盤に縦方向に形成した貫入孔を用いて電気検層による導電率(σunimp、σimp)を計測し、未改良地盤の導電率(σunimp)と改良地盤の導電率(σimp)の比(σunimp/σimp)が前記目標とする導電率の比(σk)以下である条件を満たすかどうかで、目標とする一軸圧縮強さ(quck)が確保されているかを判断する第3手順とからなることを特徴とするセメント系地盤改良工法による地盤改良効果の評価方法が提供される。
【0016】
上記請求項3記載の発明は、電気比抵抗(R)と導電率(σ)とは換算式(R=1/σ)によって変換が可能であることに鑑み、請求項1の改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)との第2相関図において、前記改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)を、改良地盤の導電率(σimp)と未改良地盤の導電率(σunimp)の比(σunimp/σimp)に代えた第2相関図を用い、これに基づいて、地盤改良効果を判定するものである。
【発明の効果】
【0017】
以上詳説のとおり本発明によれば、サンプリングによる一軸圧縮強度試験に依ることなく、改良前後の電気比抵抗の計測によって、改良体の一軸圧縮強度を評価可能としたセメント系地盤改良工法の改良効果の評価方法を提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係るセメント系地盤改良工法による地盤改良効果の評価方法の説明図(第1手順及び第2手順)である。
図2】本発明に係るセメント系地盤改良工法による地盤改良効果の評価方法の説明図(第3手順)である。
図3】電気検層に用いる測定機器の概略を示す縦断面図である。
図4】外装スリーブ8が取り付けられた測定プローブ2の正面図である。
図5】外装スリーブ本体12を示す、(A)は正面図、(B)はB-B断面図、(c)は裏面図、(d)はD-D断面図である。
図6】外装スリーブ先端13を示す、(A)は正面図、(B)は上面図である。
図7】一軸圧縮強さ(qu)と液状化強度比(RL)との間の相関式を示す図である。
図8】一軸圧縮強さ(qu)と粘着力(c)との間の相関式を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0020】
本発明は、埋立て地等の軟弱地盤の地盤強化のために、高圧噴射撹拌工法、深層混合処理工法 ソイルセメント工法等のセメント系固化材を用いた地盤改良工法による地盤改良効果の評価方法であり、具体的には以下の手順によるものである。
【0021】
事前に、セメント系固化材添加量と、一軸圧縮強さ(qu)との第1相関図を得るとともに、セメント系固化材添加量と、改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)との第2相関図を得る第1手順と、
前記第1相関図に基づいて、目標とする一軸圧縮強さ(quck)から目標とするセメント系固化材添加量を求め、次いで前記第2相関図に基づいて、前記目標とするセメント系固化材添加量から目標とする電気比抵抗の比(Rk)を設定する第2手順と、
地盤改良前後にそれぞれ、地盤に縦方向に形成した貫入孔を用いて電気検層による電気比抵抗(Runimp、Rimp)を計測し、改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)が前記目標とする電気比抵抗の比(Rk)以下である条件を満たすかどうかで、目標とする一軸圧縮強さ(quck)が確保されているかを判断する第3手順とからなるものである。
【0022】
以下、さらに具体的に詳述する。
(第1手順)
地盤改良に先立って、本発明では、事前に、現地土砂を用いた配合試験、すなわち現地土砂にセメント系固化材の添加量を変えた複数個の供試体(地盤改良体)を作成し、各供試体について一軸圧縮強さ試験を行って、図1の上段左側に示されるような、セメント系固化材添加量と、一軸圧縮強さ(qu)との相関図(第1相関図)を得るようにする。セメント系固化材添加量の増加に伴って、一軸圧縮強さは1次関数的に増加する傾向を示すため、両者間には明確な相関性を有する。
【0023】
また、現地土砂を用いた電気比抵抗試験、すなわち現地土砂にセメント系固化材の添加量を変えた複数個の供試体(地盤改良体)を作成し、セメント系固化材の添加前後でそれぞれ、電気比抵抗試験を行って、図1の上段右側に示されるような、セメント系固化材添加量と、改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)との相関図(第2相関図)を得るようにする。既往の文献によれば、セメントミルク(セメント系固化材)の比抵抗は1.2~2.6(Ω・m)程度であり、電気比抵抗はかなり小さな数値である。セメント系固化材添加量の増加に伴って、電気比抵抗の比(Rimp/Runimp)が2次曲線的に減少する傾向を示すことが知られており(既往文献:電気比抵抗による改良体の品質評価に関する現場実験、田村ら、2000.5)、両者間には明確な相関性を有する。
【0024】
ここで、前記第2相関図において、一方側の軸を改良地盤後の電気比抵抗(Rimp)ではなく、電気比抵抗の比(Rimp/Runimp)としたのは、仮に改良地盤後の電気比抵抗(Rimp)とした場合は、地盤性状(地層変化)によって未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)及び地盤改良後の電気比抵抗が異なることになるため、地質変化によって地盤深さ方向に客観的評価が行いずらい。そのため、電気比抵抗の比(Rimp/Runimp)をもって評価することにより、地盤性状が深さ方向に変化しても改良程度を一元的かつ客観的に評価できるようになる。
【0025】
なお、前記第2相関図において、前記電気比抵抗の比(Rimp/Runimp)の軸の目盛りは対数とするのが望ましい。前記電気比抵抗試験については後述する。
【0026】
(第2手順)
図1の下段に示されるように、前記第1相関図と前記第2相関図の横軸(セメント系固化材添加量)のスケールを合わせた上で、両相関図を組み合わせたグラフ(以下、統合グラフという。)を作成する。このグラフ上で、第1相関図に基づいて、目標とする一軸圧縮強さ(quck)から目標とするセメント系固化材添加量を求め、次いで前記第2相関図に基づいて、前記目標とするセメント系固化材添加量から目標とする電気比抵抗の比(Rk)を設定する。なお、前記統合グラフによって直感的には一軸圧縮強さ(quck)と電気比抵抗の比との関係を把握し得るメリットが生じるが、この統合グラフは必ずしも作成する必要はなく、それぞれの相関図毎で必要な数値を得るようにしてもよい。
【0027】
(第3手順)
第3手順では、地盤改良の施工現場において、地盤改良前後にそれぞれ、地盤に縦方向に形成した貫入孔を用いて電気検層による電気比抵抗(Runimp、Rimp)を計測し、改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)が前記目標とする電気比抵抗の比(Rk)以下である条件を満たすかどうかで、目標とする一軸圧縮強さ(quck)が確保されているかを判断する。
【0028】
前記電気検層による電気比抵抗の計測は下記の要領によって行う。
【0029】
電気検層は、図3に示される圧入装置1によって、縦方向に形成した貫入孔Hに図3及び図4に示されるように、1つの電流電極3及び2つの電位電極4、4を備えた測定プローブ2を挿入し、孔壁にこれらの電極3、4を接触させながら、電流電極3に電流を流したときの電位を電位電極4によって検出し、孔壁近傍の地盤の電気比抵抗Rを深度方向に連続的に測定する物理探査手法である。
前記圧入装置1は、図3に示されるように、貫入孔Hの直上の地表面に、貫入孔Hの両側にそれぞれ上下方向に沿って伸縮自在とされたピストン20、20が配置され、これらピストン20、20の上端同士に跨設された架台21の中央部に、下端に測定プローブ2が連結された貫入ロッド5を挟持するチャック22が備えられるとともに、前記ピストン20、20の動作を制御するコントロールユニット23が備えられたものである。また、前記コントロールユニット23には、エンジン及び油圧ポンプからなる油圧ユニット24が接続されている。
【0030】
前記圧入装置1では、両側のピストン20、20が同調して伸縮し、前記架台21が上下方向に移動することにより、前記チャック22によって挟持された貫入ロッド5が上下方向に移動し、測定プローブ2の貫入孔Hへの押し込み及び引き抜きが行われるようになっている。
【0031】
電気検層に用いる測定装置は、図4に示されるように、前記電極3、4…が備えられた測定プローブ2と、この測定プローブ2の上端から延び、前記測定プローブ2の内部において先端が前記電極3、4…に接続された電気ケーブル7と、前記測定プローブ2が着脱可能に挿嵌される中空状の外装スリーブ8とを含んでいる。前記電気ケーブル7は、中空円筒状に形成された貫入ロッド5の中空部を通って地上まで延出され、地上において、先端が測定装置に接続されるようになっている。
【0032】
前記測定プローブ2は、断面略円形の棒状の外観を成し、上端部には、貫入ロッド5を連結するための雄ねじ部6が形成され、貫入ロッド5の下端部に設けられた雌ねじ部が螺合できるようになっている。また、前記雄ねじ部6の下端に連続して、中間部を介して、複数の電極が軸方向(上下方向)に所定の間隔を空けて配列された本体部10が設けられるとともに、この本体部10の下端に連続して、前記本体部10より小径の先端部11が設けられている。
【0033】
前記電気検層の電極配置は、4極法や3極法でもよいが、2極法とするのが好ましい。2極法の電極配置は、図4に示されるように、上下方向に所定の間隔を空けて1つの電流電極3及び2つの電位電極4、4を配置し、地表付近に設置した電流遠電極(図示せず)に電流のリターンをとり、同じく地表付近に設置した電位遠電極(図示せず)を基準として、電流電極3から一定電流を流しながら電位電極4、4で電位を測定するものである。4極法や3極法の電極配置に比べて、地盤の改良効果がより明確に把握できるようになる。
【0034】
図4に示されるように、測定プローブ2の本体部10に設けられた3つの電極のうち、最上部に配置された電極が電流電極3であり、その下側に配置された2つの電極がそれぞれ電位電極4である。前記電流電極3と上側の電位電極4との電極間隔aは2.5cm、電流電極3と下側の電位電極4との電極間隔bは5cmとするのが好ましい。このように、電流電極3との電極間隔が異なる2つの電位電極4、4を配置することにより、電極間隔が異なる2つの電位差を同時に測定することができるため、測定精度が向上するとともに、測定時間が短縮化できる。
【0035】
前記電極3、4…は導電性の金属材からなり、測定プローブ2の内部から外面まで貫通して設けられ、測定プローブ2の内部でそれぞれ電気ケーブル7の先端が接続している。
【0036】
次いで、前記測定プローブ2を貫入孔Hに貫入する際、前記測定プローブ2の先端側に取り付けられる外装スリーブ8について説明する。前記外装スリーブ8は、製作を容易化するため、図5に示されるように、測定プローブ2の本体部10に外嵌される外装スリーブ本体12と、測定プローブ2の先端部11に外嵌される外装スリーブ先端13とに分割して構成するのが好ましい。
【0037】
前記外装スリーブ本体12は、図5に示されるように、軸方向の両端に開放した略円筒状に形成され、図4に示されるように、測定プローブ2に挿嵌した状態で、外径が測定プローブ2の外径より大きくなるように形成されている。外装スリーブ8の外径を測定プローブ2の外径より大きくすることにより、貫入孔Hに貫入した際、外装スリーブ8が孔壁に接触しやすくなり、測定精度が向上するとともに、測定プローブ2の損傷が抑制できる。前記外装スリーブ8の外径は、小型動的コーン貫入試験に使用される先端コーンの外径とほぼ同等とするのが好ましい。
【0038】
前記外装スリーブ先端13は、図6に示されるように、上側部分が上方に開放した有底円筒形に形成され、下側部分の外形が下方に向けて尖った円錐形(コーン形)に形成されている。上側の有底円筒形部分の外径は、前記外装スリーブ本体12の外径とほぼ同等に形成されている。コーン先端角は45°~90°程度が好ましく、60°がより好ましい。
【0039】
前記外装スリーブ8は、図5及び図6に示されるように、前記測定プローブ2が貫入孔1への挿入先端側から電極3、4…の取付位置を含む範囲に亘って挿嵌される中空部14と、前記測定プローブ2の電極3、4…に対応する位置に、前記中空部14内から外面まで連続して貫通するとともに、前記測定プローブ2を前記中空部14に挿嵌した状態で内側の先端がそれぞれ前記電極3、4…に接触する外側電極15、16、16とが備えられている。測定プローブ2に備えられた電極3、4…と、外装スリーブ8に備えられた外側電極15、16…とは対応しており、最も上側に配置された外側電極15が電流電極であり、その下側に配置された2つの外側電極16、16が電位電極である。
【0040】
前記外装スリーブ8が取り付けられた測定プローブ2を前記圧入装置1によって貫入孔Hに貫入して電気検層を行った後、貫入孔Hから測定プローブ2を引き抜くことが困難になった場合に、引抜き抵抗により前記測定プローブ2が外装スリーブ8から抜けて、測定プローブ2が回収できるようになっている。このように、測定プローブ2を引き抜く際の引抜き抵抗により、外装スリーブ8が抜けて地中に残置されるとともに、外装スリーブ8から抜けた測定プローブ2が確実に回収できるため、電気検層における高価な測定プローブ2の回収不能リスクが無くなる。前述の通り、前記測定プローブ2は、前記外装スリーブ8より外径が小さく形成されているため、外装スリーブ8を取り付けた状態で圧入された貫入孔Hから比較的スムーズに引き抜くことができるようになる。
【0041】
前記外装スリーブ8は、貫入孔Hに挿入した際、外側電極15、16…を孔壁に接触させるため、外側電極15、16…の反対側の外面に、外方に突出した接触促進用凸部17が設けられるようにするのが好ましい。前記接触促進用凸部17は、外装スリーブ8の軸方向に対して外側電極15、16…の配置区間の全長を含む範囲に形成された縦長の凸部である。高さは1~8mmが好ましく、3~5mmがより好ましい。前記接触促進用凸部17を設けることによって、外装スリーブ8に備えられた外側電極15、16…が貫入孔1の孔壁により確実に接触でき、電気検層の測定精度が更に向上できる。
【0042】
図5に示されるように、測定プローブ2の周面に周方向固定用凸部18が設けられ、この周方向固定用凸部18が外装スリーブ8に設けられた嵌合部19に嵌合することにより、外装スリーブ8と測定プローブ2との周方向への回転が固定されるようにするのが好ましい。前記周方向固定用凸部18は、測定プローブ2の本体部10の上端部に形成され、前記嵌合部19は、外装スリーブ8の外装スリーブ本体12の上端部に形成されている。前記周方向固定用凸部18を嵌合部19に嵌合することにより、測定プローブ2と、外装スリーブ8のうち外装スリーブ本体12との周方向の回転が防止され、測定プローブ2を貫入孔1に貫入する際などにおいて、測定プローブ2の電極3、4…と外装スリーブ8の外側電極15、16…との位置ずれが生じなくなる。
【0043】
前記電気検層の手順は、貫入孔Hの直上の地表面に、図2に示される圧入装置1を設置し、前記外装スリーブ8が取り付けられた測定プローブ2を貫入孔Hに挿入し、測定プローブ2を徐々に圧入しながら深度方向に連続的に電気比抵抗Rの測定を行う。電気比抵抗Rの測定間隔は任意であるが、10cm以下、好ましくは5cm以下、より好ましくは1cmとするのがよい。所定の深度まで測定が終了したら、測定プローブ2を貫入孔Hから引き抜いて回収する。
【0044】
図2に示されるように、電気検層による比抵抗計測は、地盤改良前後にそれぞれで行うようにする。そして、改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)を求めるようにする。この電気比抵抗の比(Rimp/Runimp)が、前記目標とする電気比抵抗の比(Rk)以下である条件を満たすかどうかで、目標とする一軸圧縮強さ(quck)が確保されているかを判断する。具体的には、前記電気比抵抗の比(Rimp/Runimp)≦電気比抵抗の比(Rk)である場合は、改良品質は良好であるとし、同じ施工条件で地盤改良を続行するようにし、そうでない場合は、再度同一箇所で地盤改良を行うようにするとともに、施工条件の見直しを検討するようにする。
【0045】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、第1相関図としてセメント系固化材添加量と、一軸圧縮強さ(qu)との相関図を用いたが、一軸圧縮強さ(qu)と液状化強度比(RL)とは一定の換算式によって変換が可能である。また、一軸圧縮強さ(qu)と粘着力(c)とも一定の換算式によって変換が可能である。具体的に、一軸圧縮強さ(qu)と液状化強度比(RL)との相関式を図7に示し(出典:浸透固化処理方法 技術マニュアル改訂版 R2年7月 一般財団法人沿岸技術研究センター)、一軸圧縮強さ(qu)と粘着力(c)との相関式を図8に示す(出典:浸透固化処理方法 技術マニュアル改訂版 R2年7月 一般財団法人沿岸技術研究センター)。従って、第1相関図として、セメント系固化材添加量と、液状化強度比(RL)又は粘着力(c)との相関図を用いて、地盤改良効果の確認を行うようにしてもよい。
【0046】
(2)上記形態例では、第2相関図として、セメント系固化材添加量と、改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)との相関図を用いたが、電気比抵抗と導電率とは換算式によって変換が可能である。具体的に、電気比抵抗(R)と導電率(σ)とは、R(Ω・m)=1/σ(S/m)の関係にある。従って、第2相関図として、セメント系固化材添加量と、未改良地盤の導電率(σunimp)と改良地盤の導電率(σimp)の比(σunimp/σimp)との相関図を用いて、地盤改良効果の確認を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…圧入装置、2…測定プローブ、3…電流電極、4…電位電極、5…貫入ロッド、6…雄ねじ部、7…電気ケーブル、8…外装スリーブ、9…中間部、10…本体部、11…先端部、12…外装スリーブ本体、13…外装スリーブ先端、14…中空部、15…外側電極(電流電極)、16…外側電極(電位電極)、17…接触促進用凸部、18…周方向固定用凸部、19…嵌合部、20…ピストン、21…架台、22…チャック、23…コントロールユニット、24…油圧ユニット、H…貫入孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8