(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053652
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】電流制御装置
(51)【国際特許分類】
H01F 7/18 20060101AFI20240409BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20240409BHJP
F16K 31/06 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
H01F7/18 Q
E02F9/20 H
F16K31/06 310C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159990
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】名倉 宏貴
(72)【発明者】
【氏名】岡村 潤
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 甚之
(72)【発明者】
【氏名】萩原 信幸
【テーマコード(参考)】
2D003
3H106
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003BA01
2D003CA02
2D003DA02
2D003DA04
2D003FA02
3H106DA05
3H106DA23
3H106EE14
3H106FA04
3H106FB25
3H106KK03
(57)【要約】
【課題】目標電流値にディザ波形を重畳せずディザの効果を得るとともに、電流の持ち上がりを防ぎつつディザの振幅の調整が可能な電流制御装置を提供する。
【解決手段】デューティ比設定部は、目標電流設定部により設定された目標電流値に基づき、スイッチング周期と等しい第1周期ごとに更新される第1デューティ比と、目標電流設定部により設定された目標電流値に基づき、第1周期の自然数倍である第2周期ごとに更新される第2デューティ比と、第2デューティ比と第2周期で表される2値のパルス波形を第1周期ごとに時間軸上で分割し、第1周期ごとの積分率として算出される第3デューティ比をそれぞれ算出し、第1デューティ比と第3デューティ比の加重平均値として算出される加重平均デューティ比を駆動回路に指示することによって、励磁電流に第2周期での周期的振動を発生させる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソレノイドの励磁電流を制御する電流制御装置であって、
前記励磁電流を前記ソレノイドに供給するための駆動回路と、
前記駆動回路が出力するスイッチング信号のデューティ比を決定するデューティ比設定部と、
前記励磁電流の目標電流値を設定する目標電流設定部と、
を備え、
前記デューティ比設定部は、
前記目標電流設定部により設定された目標電流値に基づき、スイッチング周期と等しい第1周期ごとに更新される第1デューティ比と、
前記目標電流設定部により設定された目標電流値に基づき、前記第1周期の自然数倍である第2周期ごとに更新される第2デューティ比と、
前記第2デューティ比と前記第2周期で表される2値のパルス波形を前記第1周期ごとに時間軸上で分割し、前記第1周期ごとの積分率として算出される第3デューティ比をそれぞれ算出し、
前記第1デューティ比と前記第3デューティ比の加重平均値として算出される加重平均デューティ比を前記駆動回路に指示することによって、前記励磁電流に前記第2周期での周期的振動を発生させることを特徴とする、電流制御装置。
【請求項2】
前記第1デューティ比と前記第3デューティ比のそれぞれの加重平均割合は、0から1の範囲で、両者の合計が1になる任意の値、もしくは0%から100%の範囲で、両者の合計が100%になる任意の値に設定され、
前記励磁電流の前記第2周期における周期的振動の振幅を調整することを特徴とする、請求項1に記載の電流制御装置。
【請求項3】
前記加重平均割合の最小値または最大値において、前記駆動回路は、前記周期的振動を含まない前記第1周期における第1デューティ比での駆動、もしくは前記第2周期における第2デューティ比での駆動、のいずれかを実施することを特徴とする、請求項2に記載の電流制御装置。
【請求項4】
前記加重平均割合は、前記目標電流値の値に応じて変更されることを特徴とする、請求項2に記載の電流制御装置。
【請求項5】
前記加重平均割合は、前記目標電流値の時間微分値に応じて変更されることを特徴とする、請求項2に記載の電流制御装置。
【請求項6】
前記加重平均割合は、前記目標電流値、ならびに前記目標電流値の時間微分値の両方に応じて変更されることを特徴とする、請求項2に記載の電流制御装置。
【請求項7】
前記デューティ比設定部は、前記目標電流値から前記第1デューティ比を算出する際、前記励磁電流の検出値の、前記第3デューティ比との加重平均に基づく変動分を相殺することを特徴とする、請求項1に記載の電流制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
建設機械等の車両に搭載される、油圧制御用のソレノイドの電流を制御する電流制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の建設機械では、オペレータへの操作支援や遠隔操作をはじめとした施工効率の向上等を目的に、各種制御の電子化が進んでいる。
【0003】
建設機械は各部のアクチュエータによって動作し、その動力源は油圧である。油圧部品の中で電磁比例弁は、内部のソレノイドに印加する駆動電流に応じて油圧経路の切り替えや調整を行う、電気と油圧の境界の役割を担う部品である。
【0004】
通常、電磁比例弁の駆動電流はオルタネータやバッテリの直流電圧をスイッチングすることで制御される。また、ヒステリシス特性の改善のため、駆動電流を特定の周波数で振動させて使用することが一般的で、従来、スイッチングに起因する電流リプル自体を振動として利用する手法が広く用いられている。
【0005】
近年、より高いスイッチング周波数で駆動しつつ、低い周波数で駆動電流を周期的に振動(ディザ)させる手法が公知になっており、その具体的な制御手法について、下記特許文献1、2をはじめとして様々な例がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5761580号公報
【特許文献2】特開2020-068357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
油圧機器の良好な応答性を得るために、目標電流値やその変化率に応じてディザの振幅を調整できることが望ましい。上記特許文献1、2では、PWMの周期よりも長い周期で振動する波形の信号を、目標電流値に対して直接重畳することで、ディザの効果を得ている。しかし、目標電流値とは別でディザ波形を生成し、目標電流値等と連携させて重畳する場合、設定手順が煩雑になるおそれがある。
【0008】
また、低電流においては、原理的にディザの振幅を確保しにくく、油圧機器にヒステリシス等の影響を生じるおそれがある。その対策として、目標電流値に重畳するディザ波形の振幅を大きくすることが考えられるが、周期的振動の下振れ側でデューティ下限に飽和することによって電流の持ち上がりが発生し、目標電流値に追従しなくなるおそれがある。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、目標電流値にディザ波形を重畳せずディザの効果を得るとともに、電流の持ち上がりを防ぎつつディザの振幅の調整が可能な電流制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の電流制御装置は、ソレノイドの励磁電流を制御する電流制御装置であって、前記励磁電流を前記ソレノイドに供給するための駆動回路と、前記駆動回路が出力するスイッチング信号のデューティ比を決定するデューティ比設定部と、前記励磁電流の目標電流値を設定する目標電流設定部と、を備え、前記デューティ比設定部は、前記目標電流設定部により設定された目標電流値に基づき、スイッチング周期と等しい第1周期ごとに更新される第1デューティ比と、前記目標電流設定部により設定された目標電流値に基づき、前記第1周期の自然数倍である第2周期ごとに更新される第2デューティ比と、前記第2デューティ比と前記第2周期で表される2値のパルス波形を前記第1周期ごとに時間軸上で分割し、前記第1周期ごとの積分率として算出される第3デューティ比をそれぞれ算出し、前記第1デューティ比と前記第3デューティ比の加重平均値として算出される加重平均デューティ比を前記駆動回路に指示することによって、前記励磁電流に前記第2周期での周期的振動を発生させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、目標電流値にディザ波形を重畳せず、ディザの効果を得られる。
【0012】
また、本発明では、上記第1デューティ比と第3デューティ比の加重平均割合のみを変更することによって、ディザの振幅を調整可能である。第1デューティ比と、ディザの効果に寄与する第3デューティ比はいずれも同じ目標電流値に基づく算出値であることから、電流の持ち上がりを防ぎつつディザ振幅の調整が可能である。
【0013】
上記以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の適用対象とする油圧ショベルを示す側面図。
【
図2】
図1の油圧ショベルの油圧システムを示す図。
【
図4】本発明の第1実施形態における制御ユニット10の機能構成を示す図。
【
図5】本発明の第1実施形態における駆動電流の制御ロジックを示す図。
【
図6】第2デューティ比変換部53の働きの説明図。
【
図8】本発明の第2実施形態における制御ユニット10の機能構成を示す図。
【
図9】本発明の第2実施形態における駆動電流の制御ロジックを示す図。
【
図10】本発明の第3実施形態における制御ユニット10の機能構成を示す図。
【
図12A】本発明の第3実施形態における加重平均割合αの設定例の表。
【
図12B】本発明の第3実施形態における処理フローチャート。
【
図13】本発明の第3実施形態における電流値推移の例の説明図。
【
図14】本発明の第4実施形態における制御ユニット10の機能構成を示す図。
【
図15A】本発明の第4実施形態における加重平均割合αの設定例の表。
【
図15B】本発明の第4実施形態における処理フローチャート。
【
図16】本発明の第4実施形態における電流値推移の例の説明図。
【
図17A】本発明の第5実施形態における加重平均割合αの設定例の表。
【
図17B】本発明の第5実施形態における処理フローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。各図において、同一の構成もしくは機能を有する部分には同一の符号を付して繰り返し説明を省略する場合がある。なお、以下の説明では、建設機械の一種である油圧ショベルを適用対象とするが、油圧ショベルに限定されることなく、油圧制御用のソレノイドの電流を制御する各種機械に適用可能であることは勿論である。
【0016】
【0017】
油圧ショベル19の基本構造は、履帯を駆動させて走行する下部走行体7、下部走行体7上に旋回可能に設けられた上部旋回体8、上部旋回体8に回動可能(仰動可能)に取り付けられたフロントアタッチメント9の、計3つの基本部位で構成される。
【0018】
上部旋回体8には、原動機3、ポンプユニット4等が搭載される。
【0019】
油圧ショベル19が動作するために直接動力を発生する構成要素をアクチュエータと呼ぶ。油圧ショベル19は複数のアクチュエータを有するが、図中では具体例として、フロントアタッチメント9のアームの動作用アクチュエータであるアームシリンダ1、ならびに下部走行体7の走行用アクチュエータである走行モータ2に限定して示す。
【0020】
【0021】
原動機3はポンプユニット4に回転駆動力を与え、ポンプユニット4はコントロールバルブ5、信号制御弁6のそれぞれに圧油を供給する。
【0022】
コントロールバルブ5は、油圧シリンダであるアームシリンダ1、油圧モータである走行モータ2をはじめとする複数のアクチュエータを駆動するため、図示しないスプールによって油圧経路の切り替えを行う。コントロールバルブ5の動作は、主に、信号制御弁6から供給される、アクチュエータ駆動回路よりも低圧の圧油によって制御される。
【0023】
ポンプユニット4、コントロールバルブ5、信号制御弁6はいずれも、搭載される電磁比例弁14によって、動作の一部または全部の制御が行われる。全ての電磁比例弁14は、電磁比例弁制御ユニット(以下、単に制御ユニットと呼ぶことがある)10から供給される電流によって動作する。制御ユニット10は、操作装置15をはじめとする各種外部装置からの入力信号を処理し、電磁比例弁14に供給する電流の制御を行う。
【0024】
電磁比例弁14は、内部のソレノイドに印加する励磁電流によってスプールに変位を生じさせ、低圧側の油圧回路の切り替えや調整を行う。
【0025】
電磁比例弁14は通常、電流-油圧特性においてヒステリシスを有するが、ヒステリシスを低減する手法として、電流を振動させるディザ制御が一般的に行われる。
【0026】
制御ユニット10は電磁比例弁14の電流を制御するが、本発明での前提となる電流ディザ制御について、
図3を用いて説明する。
図3中、i
L1、i
L2、i
L3は電流(駆動電流)、I
L1、I
L2、I
L3はそれぞれi
L1、i
L2、i
L3の平均値、ΔI
L1、ΔI
L2、ΔI
L3はそれぞれi
L1、i
L2、i
L3の振幅を意味する。スイッチングのキャリア周期T
Cよりも長いディザ周期T
Dの周期的振動を加えることで、ディザ制御の効果を得る。
【0027】
通常、ディザ周期はキャリア周期の自然数倍、かつ、キャリア周期より長い期間とする。
図3では一例として、ディザ周期がキャリア周期に対して10倍としている。
【0028】
以下、電磁比例弁14の電流を制御する電流制御装置である制御ユニット10の機能構成などを実施形態ごとに詳細に説明する。
【0029】
<< 第1実施形態 >>
本発明の第1実施形態を実施するにあたり、制御ユニット10の機能構成を
図4に示す。制御ユニット10は電磁比例弁14の制御を主に行い、複数接続される電磁比例弁については代表として電磁比例弁14のみを示す。
【0030】
制御ユニット10は操作装置15やセンサ16等から信号を受信し、内部の入力信号処理部21で処理された信号は中央処理部20に送られる。
【0031】
電磁比例弁駆動部204は、中央処理部20から来る駆動信号に基づき、電磁比例弁14に駆動電流207を供給する。駆動電流207は、電圧源+VBより、電磁比例弁駆動部204がスイッチングによって供給する。すなわち、電磁比例弁駆動部204は、駆動電流(励磁電流)207を電磁比例弁14(のソレノイド)に供給するための駆動回路として機能し、後述するデューティ比を持つスイッチング信号を電磁比例弁14(のソレノイド)に出力する。
【0032】
電流検出部205は、駆動電流207を検出し、中央処理部20に伝達する。
【0033】
中央処理部20は、操作装置15や、電流検出部205から来る信号をもとに、電磁比例弁駆動部204に駆動信号を指示する。操作装置15からの入力等をもとに、目標電流設定部201は、電磁比例弁14の駆動電流目標値(励磁電流の目標電流値)206を生成し、電磁比例弁制御部202に伝達する。また、電流算出部203は、電流検出部205から伝達された信号に基づき電流値を算出のうえ、電磁比例弁制御部202に伝達する。電磁比例弁制御部202は、目標電流設定部201や電流算出部203から伝達される信号に基づき、電磁比例弁駆動部204に指示する駆動信号を生成する。
【0034】
本実施形態において、電磁比例弁制御部202は、駆動回路としての電磁比例弁駆動部204が出力するスイッチング信号のデューティ比を決定するデューティ比設定部として機能する。各部の機能は
図5などと共に後で説明するが、電磁比例弁制御部202は、第1デューティ比演算部511、第2デューティ比演算部512、第2デューティ比変換部53、加重平均部54を備える。また、電磁比例弁制御部202の構成に対応して、電流算出部203は、第1平均値算出部521、第2平均値算出部522を備える。
【0035】
本実施形態における駆動電流の制御ロジックを
図5に示す。
図5の制御ロジックを構成するそれぞれのブロックは、
図4の制御ユニット10中の同じ記号と名称の部位に対応する。
【0036】
制御ロジック全体の入力は目標電流I
r、出力は実電流I
aである。出力は入力にフィードバックされて制御に反映されるが、フィードバックのループは2系統存在する。
図5中の一点鎖線の50a、50bがそれぞれ該当し、異なる周期、すなわち第1周期、第2周期ごとにフィードバック制御を行う。
【0037】
50aのループは、第1周期ごとのフィードバック制御を実施する。第1周期は、スイッチング(PWM)のキャリア周期と同じで、
図3で例示したT
Cが該当する(以降、第1周期をキャリア周期と表記)。第1平均値算出部521は、フィードバックされる実電流I
aに基づき、キャリア周期ごとの実電流平均値をサンプリングや平均化処理によって算出する。第1平均値算出部521によって算出された電流値I
a1は、第1デューティ比演算部511の前段にフィードバックされ、第1デューティ比演算部511には、キャリア周期ごとの偏差が入力される。
【0038】
50bのループは、第2周期ごとのフィードバック制御を実施する。第2周期はディザ周期と同じで、
図3で例示したT
Dが該当する(以降、第2周期をディザ周期と表記)。第2平均値算出部522は、フィードバックされる実電流I
aに基づき、ディザ周期ごとの実電流平均値をサンプリングや平均化処理によって算出する。第2平均値算出部522によって算出された電流値I
a2は、第2デューティ比演算部512の前段にフィードバックされ、第2デューティ比演算部512には、ディザ周期ごとの偏差が入力される。第2デューティ比演算部512によって生成された第2デューティ比D
2はディザ周期毎のデューティ比であり、これをキャリア周期ごとのデューティ比に換算して第3デューティ比D
3として生成する処理を、第2デューティ比変換部53が行う。
【0039】
第1デューティ比演算部511、ならびに第2デューティ比演算部512の実装例としてはいずれもPID制御器が挙げられ、それらの出力となるD1、D2は、スイッチングのデューティ比が該当する。
【0040】
50a、50bそれぞれで演算されたデューティ比D1、D3は加重平均部54に入力され、542にてD3に定数α(0≦α≦1)(もしくは0%≦α≦100%)、541にてD1に1-α(もしくは100%-α)を乗じ、それぞれ加算した結果が出力される。
【0041】
加重平均部54より生成されたデューティ比は、電磁比例弁駆動部204に伝達され、電磁比例弁14に供給される実電流Iaとして最終的な出力が決定される。
【0042】
図5中のループ50b中、第2デューティ比変換部53の働きについて、
図6で説明する。
【0043】
第2デューティ比D
2はディザ周期T
D毎のデューティ比、すなわち通電時間割合を表す。第2デューティ比D
2の推移を
図6中(a)で示す。また、第2デューティ比D
2とディザ周期T
Dに基づく通電指示波形を
図6中(b)に示す。
【0044】
ディザ周期TDはキャリア周期TCよりも長いが、スイッチング自体はキャリア周期TC毎に実施されるため、キャリア周期TC毎の通電信号に変換する処理が必要になる。この働きを担うのが第2デューティ比変換部53で、第2デューティ比D2に基づき、ディザ周期TD内における周期的変動として変換した第3デューティ比D3を出力する。
【0045】
第2デューティ比変換部53は内部にカウンタ変数Cを有し、その推移を
図6中(c)に示す。カウンタ変数Cはキャリア周期T
Cの経過と同期してインクリメントされる。また、カウンタ変数Cは最大値Nに達すると同時にリセットされ、0に戻る。なお、カウンタ最大値Nは、ディザ周期T
Dとキャリア周期T
Cの比の値で表される自然数である。
【0046】
さらに、第2デューティ比変換部53は、前段からの入力になる第2デューティ比D
2に対して、キャリア周期毎のデューティ比に割り当てる演算を実施し、第3デューティ比D
3を算出する。具体的には下記式(1)、式(2)の演算を行う。
【数1】
【0047】
上記式(1)、(2)のD3、DTMPのいずれも単位は“%”である。
【0048】
第3デューティ比D
3の推移を
図6中(d)に示す。D
2に対して式(1)、式(2)の演算を実施することによって、キャリア周期T
CごとのD
3をディザ周期T
Dの長さ分、時間的に連続で結合した場合に、時間平均値の観点でD
2と等しい通電信号を得られることになる。第3デューティ比D
3について別の表現をすると、ディザ周期T
Dと第2デューティ比D
2で表される2値のパルス波形を、キャリア周期T
C毎の時間積分率で表したもの、あるいは、ディザ周期T
Dと第2デューティ比D
2で表される2値のパルス波形をキャリア周期T
C毎に時間軸上で分割し、キャリア周期T
C毎の積分率として算出したものである。
【0049】
図6で説明した、第2デューティ比変換部53の生成する第3デューティ比D
3と、それと第1デューティ比D
1の加重平均によって得られる効果について、
図7を用いて説明する。
図7はディザ周期がキャリア周期の5倍の場合を示す。
【0050】
第1デューティ比演算部511が生成するデューティ比D
1は、フィードバック制御によってキャリア周期ごとに更新され、
図7中(a)に示すように推移しているとする。また、第2デューティ比演算部512が生成する第2デューティ比D
2は、第2デューティ比変換部53によってキャリア周期ごとに更新される第3デューティ比D
3に変換され、
図7中(b)に示す値で推移しているとする。
【0051】
なお、第1デューティ比演算部511、ならびに第2デューティ比演算部512は、それぞれ目標電流Irが共通であるとともに、いずれも実電流Iaに基づく値がフィードバックされる。そのため、更新周期は異なるが、生成される第1デューティ比D1、ならびに図示しない第2デューティ比D2は互いに相関がある。
【0052】
加重平均部54によるD
1とD
3の加重平均値(加重平均デューティ比)αD
3+(1-α)D
1の推移を、同様に
図7中(c)に示す。加重平均割合αは0≦α≦1の範囲で、両者の合計が1になる任意の値で設定される。あるいは、加重平均割合αは0%≦α≦100%の範囲で、両者の合計が100%になる任意の値で設定される。加重平均値(加重平均デューティ比)αD
3+(1-α)D
1はキャリア周期T
Cごとに更新されるデューティ比の値で、この値に従って、電磁比例弁駆動部204は電磁比例弁14に電流を供給する。
【0053】
電磁比例弁14への印加電圧(駆動電圧)と駆動電流の波形を、同様に
図7中(d)に示す。キャリア周期T
Cごとのデューティ比の推移D
1に対して、ディザ周期T
Dの振動成分を有するD
3を加重平均することによって、駆動電流にディザの効果、すなわちディザ周期T
Dでの周期的振動を得る。
【0054】
本実施形態によって、目標電流値に対してディザの波形を重畳することなく、ディザの効果を得られる。
【0055】
<< 第2実施形態 >>
本発明の第2実施形態を実施するにあたり、制御ユニット10の機能構成を
図8に示す。
【0056】
第2実施形態の基本的な機能構成は第1実施形態の
図4と同様だが、第2実施形態では第1平均値補正部521aが電磁比例弁制御部202の内部に備わっている。
【0057】
第2実施形態における駆動電流の制御ロジックを
図9に示す。
図9の制御ロジックを構成するそれぞれのブロックは、
図8の制御ユニット10中の同じ記号と名称の部位に対応する。
【0058】
第2実施形態では、第1平均値補正部521aが第1平均値算出部521と第1デューティ比演算部511の間に加わる。第1平均値補正部521aは、第1平均値算出部521による算出結果から、第3デューティ比D3に加重平均割合αを乗じた値に比例する分を減算する。この働きによって、D1とD3の加重平均に起因する、第1平均値算出部521の計算結果に予想される変動分を補正する。すなわち、第1平均値補正部521aは、目標電流Irから第1デューティ比D1を算出する際、励磁電流の検出値(実電流Ia)の、第3デューティ比D3との加重平均に基づく変動分を相殺する。その結果、第1デューティ比演算部511の算出結果である第1デューティ比D1に対する、第3デューティ比D3の影響を軽減することができ、電流制御の精度を改善することができる。
【0059】
<< 第3実施形態 >>
本発明の第3実施形態を実施するにあたり、制御ユニット10の機能構成を
図10に示す。
【0060】
第3実施形態の基本的な機能構成は第1実施形態の
図4と同様で、制御ロジックも第1実施形態の
図5と同じだが、第3実施形態では、加重平均部54に対して加重平均設定部202bが加わっている。なお、第2実施形態の
図8で説明した、第1平均値補正部521aを導入のうえ、
図9の制御ロジックを使用していてもよい。
【0061】
第1実施形態にて説明した通り、電磁比例弁駆動部204に指示されるデューティ比は、キャリア周期に基づくフィードバックと、ディザ周期に基づくフィードバックのそれぞれから算出されたデューティ比の加重平均値となる。加重平均割合αは0≦α≦1(もしくは0%≦α≦100%)の範囲で任意に設定可能とし、加重平均割合ごとの駆動電圧と駆動電流の波形を示したものを
図11に示す。説明の簡単化のため、目標電流値は一定値としている。
【0062】
α=0(最小値)の場合(
図11の上段図)、目標電流値が一定の場合、キャリア周期T
Cごとの一定デューティによるスイッチングとなる。電磁比例弁制御部202のデューティ比にディザ周期T
Dの波形成分は含まれない。つまり、電磁比例弁駆動部204は、前記周期的振動を含まないキャリア周期T
Cにおける第1デューティ比D
1での駆動を実施する。一方、α=1(最大値)の場合(
図11の下段図)、スイッチングの演算自体はキャリア周期T
C毎に実行されても、生成されるデューティ比としてはディザ周期T
Dに基づく値となり、ディザ周期T
Dでスイッチングを行う波形と等しくなる。つまり、電磁比例弁駆動部204は、ディザ周期T
Dにおける第2デューティ比D
2での駆動を実施する。この場合、原理上最もディザ振幅が大きくなる。
【0063】
このように、加重平均割合αの大きさを任意に設定することで、ディザ振幅(ディザ周期での周期的振動の振幅)を調整することが可能である。
【0064】
なお、駆動電流の実現可能なディザ振幅の大きさは、原理的にキャリア周期T
Cに依存し、キャリア周期T
Cが長いほど大きいディザの振幅を得やすくなる。加重平均割合α=1の場合、駆動回路に指示するデューティ比がD
3と等しくなり、これは第1実施形態の
図6、
図7で説明した通り、ディザ周期T
Dにおけるスイッチングと実質的に同じになる。したがって、加重平均割合α=1において最も大きなディザの振幅が得られる。
【0065】
本発明の第3実施形態では、目標電流値に応じて、加重平均割合αを切り替えるとする。しきい値の数に制限はないが、説明を簡単にするためI
rth1、I
rth2の2つを用いるとし、加重平均割合αの設定を
図12Aに示す。
【0066】
ディザ制御は、電磁比例弁の油圧特性としてのヒステリシスを低減させる目的で実施されるが、一般に、駆動電流が小さい場合には大きなディザの振幅を得にくい。目標電流の大きさごとに
図12Aのような加重平均割合αを割り当てるとし、目標電流が小さいほど加重平均割合αの値を大きくする。すなわち、目標電流が小さいほど加重平均割合αの値を大きくし、加重平均部54より生成されるデューティ比(加重平均デューティ比)における第3デューティ比D
3の割合を大きくし、ディザの振幅を得やすくする。また、目標電流が大きいほど加重平均割合αの値を小さくし、加重平均部54より生成されるデューティ比(加重平均デューティ比)における第1デューティ比D
1の割合を大きくする。
【0067】
加重平均設定部202bのキャリア周期ごとの処理を
図12Bに示す。
図12Bの処理は、第1実施形態で説明した、第2デューティ比変換部53の操作するカウンタ変数Cに基づき、加重平均割合αをディザ周期毎に更新する。
【0068】
加重平均設定部202bがα設定処理を開始すると(S1000)、カウンタ変数C=N-1かを判定し(S1001)、Yesの場合はS1002に進み、Noの場合はα設定処理を終了する(S1007)。S1002では目標電流Irがしきい値Irth1未満かを判定し、Yesの場合はS1004に進み、Noの場合はS1003に進む。S1003では目標電流Irがしきい値Irth1以上でしきい値Irth2以下かを判定し、Yesの場合はS1005に進み、Noの場合はS1006に進む。S1004ではα=1、S1005ではα=0.7、S1006ではα=0.3を設定し、α設定処理を終了する(S1007)。
【0069】
図12A、Bと関連付けて、
図13に目標電流I
rと実電流I
aの推移の例を示す。
図13中t
1の時点で、目標電流I
rはしきい値I
rth1を超え、ディザ周期が終了した時点で、
図12BのフローチャートのS1002で“No”をたどることによって、加重平均設定部202bは異なる加重平均割合を割り当てる。t
1の時点で、それまでα=1.0で設定されていたのを、α=0.7に切り替える。
【0070】
また、
図13中t
2の時点で、目標電流I
rはしきい値I
rth2を超え、ディザ周期が終了した時点で、
図12BのフローチャートのS1003で“No”をたどることによって、加重平均設定部202bは異なる加重平均割合を割り当てる。t
2の時点で、それまでα=0.7で設定されていたのを、α=0.3に切り替える。
【0071】
目標電流I
rが下降していく
図13中t
3、t
4についても、同様に
図12Bのフローチャートに示す処理によって、加重平均割合αを切り替える。
【0072】
この実施形態によって、目標電流値にディザの波形を重畳することなく、目標電流値に応じてディザの電流振幅を調節することが可能になる。
【0073】
<< 第4実施形態 >>
本発明の第4実施形態を実施するにあたり、制御ユニット10の機能構成を
図14に示す。
【0074】
第4実施形態の基本的な機能構成は第3実施形態の
図10と同様だが、第4実施形態では、加重平均設定部202bに対して目標微分値算出部202cが加わっている。なお、第2実施形態の
図8で説明した、第1平均値補正部521aを導入のうえ、
図9の制御ロジックを使用していてもよい。
【0075】
前述の通り、加重平均割合αの値によってディザ振幅を調整可能で、加重平均割合αを大きくするほどディザ振幅は大きくなる。追従性の観点では、加重平均割合αが小さいほどキャリア周期単位での追従が支配的となり、高速な追従を得やすい一方、加重平均割合αが大きいほどディザ周期単位での追従が支配的になり、追従速度は制限される。
【0076】
本第4実施形態では、目標微分値算出部202cによって目標電流の時間微分値を算出する。微分値が正でその大きさが基準値より大きい場合には、応答性向上の目的で、加重平均割合αを小さくする。つまり、加重平均部54より生成されるデューティ比(加重平均デューティ比)における第1デューティ比D1の割合を大きくする。一方、微分値が負で大きさが基準値より大きい場合には、ディザ振幅確保によるヒステリシス特性の改善の目的で、加重平均割合αを大きく設定する。つまり、加重平均部54より生成されるデューティ比(加重平均デューティ比)における第3デューティ比D3の割合を大きくする。
【0077】
本第4実施形態における加重平均割合αの設定を
図15Aに示す。目標電流微分値のしきい値の数に制限はないが、説明を簡単にするため-ΔI
rt、ΔI
rtの2つのしきい値を用いる。また、
図15Aでは目標電流微分値の大きさが基準値を超えた場合のαについて、最大値の1、もしくは最小値の0を設定することとしているが、他の任意の値でも実施可能である。
【0078】
加重平均設定部202bのキャリア周期ごとの処理を
図15Bに示す。
図15Bの処理は、第1形態で説明した、第2デューティ比変換部53の操作するカウンタ変数Cに基づき、加重平均割合αをディザ周期毎に更新する。
【0079】
加重平均設定部202bがα設定処理を開始すると(S2000)、カウンタ変数C=N-1かを判定し(S2001)、Yesの場合はS2002に進み、Noの場合はα設定処理を終了する(S2007)。S2002では目標電流微分値がしきい値-ΔIrt未満かを判定し、Yesの場合はS2004に進み、Noの場合はS2003に進む。S2003では目標電流微分値がしきい値-ΔIrt以上でしきい値ΔIrt以下かを判定し、Yesの場合はS2005に進み、Noの場合はS2006に進む。S2004ではα=1、S2005ではα=0.5、S2006ではα=0を設定し、α設定処理を終了する(S2007)。
【0080】
つまり、目標電流微分値の大きさが小さい場合、
図15BにおけるS2002でNo、S2003でYesを辿ることによって、α=0.5を設定する。
【0081】
図15A、Bと関連付けて、目標電流I
rと実電流I
aの推移の例を
図16に示す。
図16においては、t
1とt
2の間と、t
5とt
6の間で目標電流値が変化するが、微分値の大きさは小さいため、αの設定値は0.5から変更されない。
【0082】
t
3とt
4の間では目標電流微分値が正でその大きさが基準値より大きいため、
図15BにおけるS2002でNo、S2003でNoを辿ることによって、α=0を設定する。
【0083】
t
7とt
8の間では目標電流微分値が負でその大きさが基準値より大きく、
図15BにおけるS2002でYesを辿ることによって、α=1を設定する。
【0084】
この実施形態によって、目標電流値が大きく上昇する際には(目標電流値の時間微分値が正でその大きさが基準値より大きい場合には)キャリア周期ごとの高速追従を主とし、目標電流値が大きく下降する際には(目標電流の時間微分値が負でその大きさが基準値より大きい場合には)ディザの電流振幅を確保することによって、油圧機器の応答性を改善することができる。
【0085】
<< 第5実施形態 >>
本発明の第5実施形態を実施するにあたり、制御ユニット10の機能構成は第4実施形態の
図14と同様とする。
【0086】
第5実施形態では、第3実施形態で説明した目標電流値に応じた加重平均割合αの設定変更と、第4実施形態で説明した目標電流微分値に応じた加重平均割合αの設定変更を組み合わせて実施する。目標電流値と目標電流微分値のそれぞれの値に応じた加重平均割合αの設定を、
図17Aに示す。
【0087】
なお、第5実施形態では、目標電流値と目標電流微分値の両方に応じて加重平均割合αを変更することを主旨とし、しきい値やその数については任意とする。なお、
図17Aに示す設定例では、目標電流I
rがしきい値I
rth1よりも小さい場合においては目標電流I
rが増加傾向にある(減少傾向にはない)として目標電流微分値のしきい値として正の値を設定し、目標電流I
rがしきい値I
rth2よりも大きい場合においては目標電流I
rが減少傾向にある(増加傾向にはない)として目標電流微分値のしきい値として負の値を設定している。
【0088】
加重平均設定部202bのキャリア周期ごとの処理を
図17Bに示す。
図17Bの処理によって、第1実施形態で説明した、第2デューティ比変換部53の操作するカウンタ変数Cに基づき、加重平均割合αをディザ周期毎に更新する。
【0089】
図17Bの各ステップS3000~S3019の詳細説明は省略するが、例えば、
図17BのS3002、S3003は、
図12BのS1002、S1003に対応し、
図17BのS3004、S3005、S3009、S3010、S3014、S3015は、
図15BのS2002、S2003に対応する。
【0090】
本第5実施形態の説明にあたり、電流波形目標電流値と電流波形による説明は省略するが、目標電流値に対する加重平均割合αの変更については第3実施形態、目標電流微分値に対する加重平均割合αの変更については第4実施形態と同様である。
【0091】
目標電流値の小さい領域では第3実施形態での説明と同様、ディザの電流振幅を確保し、低電流領域でのヒステリシスを改善することができる。また、第4実施形態での説明と同様、目標電流値が大きく上昇する際にはキャリア周期ごとの追従を主とし、目標電流値が大きく下降する際にはディザの電流振幅を確保することを主とすることによって、油圧機器の応答性を改善させることができる。
【0092】
<< まとめ >>
以上で説明したように、本実施形態の電流制御装置(制御ユニット10)は、ソレノイドの励磁電流を制御する電流制御装置であって、前記励磁電流を前記ソレノイドに供給するための駆動回路(電磁比例弁駆動部204)と、前記駆動回路が出力するスイッチング信号のデューティ比を決定するデューティ比設定部(電磁比例弁制御部202)と、前記励磁電流の目標電流値を設定する目標電流設定部201と、を備え、前記デューティ比設定部(電磁比例弁制御部202)は、前記目標電流設定部201により設定された目標電流値に基づき、スイッチング周期と等しい第1周期(キャリア周期TC)ごとに更新される第1デューティ比D1と、前記目標電流設定部201により設定された目標電流値に基づき、前記第1周期(キャリア周期TC)の自然数倍である第2周期(ディザ周期TD)ごとに更新される第2デューティ比D2と、前記第2デューティ比D2と前記第2周期(ディザ周期TD)で表される2値のパルス波形を前記第1周期(キャリア周期TC)ごとに時間軸上で分割し、前記第1周期(キャリア周期TC)ごとの積分率として算出される第3デューティ比D3をそれぞれ算出し(第1デューティ比演算部511、第2デューティ比演算部512、第2デューティ比変換部53)、前記第1デューティ比D1と前記第3デューティ比D3の加重平均値として算出される加重平均デューティ比を前記駆動回路に指示することによって(加重平均部54)、前記励磁電流に前記第2周期(ディザ周期TD)での周期的振動を発生させる。
【0093】
前記第1デューティ比D1と前記第3デューティ比D3のそれぞれの加重平均割合は、0から1の範囲で、両者の合計が1になる任意の値、もしくは0%から100%の範囲で、両者の合計が100%になる任意の値に設定され、前記励磁電流の前記第2周期(ディザ周期TD)における周期的振動の振幅を調整する。
【0094】
前記加重平均割合の最小値または最大値において、前記駆動回路は、前記周期的振動を含まない前記第1周期(キャリア周期TC)における第1デューティ比D1での駆動、もしくは前記第2周期(ディザ周期TD)における第2デューティ比D2での駆動、のいずれかを実施する。
【0095】
本実施形態によれば、目標電流値にディザ波形を重畳せず、ディザの効果を得られる。
【0096】
また、本実施形態では、上記第1デューティ比D1と第3デューティ比D3の加重平均割合αのみを変更することによって、ディザの振幅(ディザ周期での周期的振動の振幅)を調整可能である。第1デューティ比D1と、ディザの効果に寄与する第3デューティ比D3はいずれも同じ目標電流値に基づく算出値であることから、電流の持ち上がりを防ぎつつディザ振幅の調整が可能である。
【0097】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形形態が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0098】
また、上記した実施形態のコントローラの各機能は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計することによりハードウェアで実現してもよい。また、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、コントローラ内の記憶装置の他に、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【符号の説明】
【0099】
10 制御ユニット(電流制御装置)
14 電磁比例弁
20 中央処理部
201 目標電流設定部
202 電磁比例弁制御部(デューティ比設定部)
203 電流算出部
204 電磁比例弁駆動部(駆動回路)
205 電流検出部
511 第1デューティ比演算部
512 第2デューティ比演算部
521 第1平均値算出部
522 第2平均値算出部
53 第2デューティ比変換部
54 加重平均部