(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053670
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】粘着剤組成物およびこれを用いた粘着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 133/04 20060101AFI20240409BHJP
C09J 133/02 20060101ALI20240409BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240409BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240409BHJP
【FI】
C09J133/04
C09J133/02
C09J11/06
C09J7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160017
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】390029458
【氏名又は名称】ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】堀田 隼
(72)【発明者】
【氏名】藤田 和寛
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004BA02
4J004CB02
4J004FA06
4J004FA08
4J040DF012
4J040DF031
4J040HC26
4J040JA03
4J040JB09
4J040KA16
4J040KA22
4J040KA25
4J040MA09
4J040MB03
4J040NA10
(57)【要約】
【課題】 曲面接着性、保持力に優れ、塗工適性が良好で、バイオマス度10%以上の粘着剤層を形成しうる水分散粘着剤組成物およびこれを用いた粘着シートを提供する。
【解決手段】 前記の課題を解決するために、本発明の粘着剤組成物は下記成分(A)および(B)を含む。成分(A)は、単量体の全重量部を100重量部としたとき、炭素数5~18である直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)を10~98重量部、カルボキシ基を有する共重合可能な単量体(a2)を2~10重量部含む単量体の混合物の共重合体である(メタ)アクリル系共重合物。成分(B)は架橋剤である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単量体の全重量部を100重量部としたとき、炭素数5~18である直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)を10~98重量部、カルボキシ基を有する共重合可能な単量体(a2)を2~10重量部含む単量体の混合物の共重合体である(A)(メタ)アクリル系共重合物と(B)架橋剤を含有する水分散粘着剤組成物。
【請求項2】
前記成分(a1)が、(メタ)アクリル酸n-オクチルである請求項1に記載の水分散粘着剤組成物。
【請求項3】
前記成分(a1)が、バイオマスから得られた(メタ)アクリル酸n-オクチルである請求項1または2に記載の水分散粘着剤組成物。
【請求項4】
前記(B)成分が、オキサゾリン基を有する架橋剤である、請求項1から3のいずれかに記載の水分散粘着剤組成物。
【請求項5】
前期粘着剤組成物から形成される粘着剤層のバイオマス度が10%以上である、請求項1から4のいずれかに記載の水分散粘着剤組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の水分散粘着剤組成物から形成される粘着剤層を基材の少なくとも一方に有する粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物および粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着剤組成物およびそれを用いた粘着シートは、産業上の種々の分野において広範に用いられている。とりわけラベルに用いられる粘着シートは、表面が湾曲した物品に貼付される場合がある。表面が湾曲した物品に貼付された粘着シートの端部には粘着シートの基材がもとの平坦な形状に戻ろうとする力が常にかかり続けることとなる。基材が樹脂製シートであったり、基材の厚みが厚かったりすると、端部にかかる力は増し粘着シートは浮き剥がれしやすくなる。ラベルに用いられる粘着シートとしては、表面が湾曲した物品に貼付されても容易に浮き剥がれを生じないことが求められる。この性能のことを曲面接着性という。また、粘着シートは一般に接着信頼性の観点から、せん断応力に対する耐久性を要求される。この性能のことを保持力という。
【0003】
一方、粘着剤組成物の溶媒として従来から揮発性有機化合物(VOC)が用いられてきた。近年、粘着シートの生産工程において揮発性有機化合物が環境中に放出されることによる環境負荷の低減が求められている。また、粘着シート中に残留した微量の揮発性有機化合物が粘着シートを使用する作業者や一般消費者の健康に悪影響を及ぼすリスクを低減する観点から、粘着剤組成物は揮発性有機化合物を含有しないことが望ましい。このような粘着剤組成物として、水分散粘着剤組成物が知られている。
【0004】
さらには地球温暖化等の環境問題に対する関心の高まりから、生物資源(バイオマス)を活用した粘着剤組成物の普及が望まれる。石油由来原料からなる製品の燃焼により発生する二酸化炭素は地球温暖化の原因と考えられており、問題となっている。この問題解決のため石油由来原料の製品をバイオマスからなる製品に置き換えが進められつつある。
【0005】
特許文献1には、種々の被着体に対する粘着性、保持力、曲面接着性に優れ、かつ、経時での粘着力の変化が少なく、再剥離後の糊残りもないといった耐汚染性に優れ、更には、耐水性にも優れた一液型の再剥離型水性粘着剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された組成物はリン酸エステル系化合物を必須とする。また、バイオマスの活用については言及されていない。
【0008】
本発明は、リン酸エステル系化合物を用いずとも、曲面接着性、保持力に優れ、バイオマス度10%以上の粘着剤層を形成しうる水分散粘着剤組成物およびこれを用いた粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、
[1]単量体の全重量部を100重量部としたとき、炭素数5~18である直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)を10~98重量部、カルボキシ基を有する共重合可能な単量体(a2)を2~10重量部含む単量体の混合物の共重合体である(A)(メタ)アクリル系共重合物と(B)架橋剤を含有する水分散粘着剤組成物。
[2]前記成分(a1)が、(メタ)アクリル酸n-オクチルである請求項1に記載の水分散粘着剤組成物。
[3]前記成分(a1)が、バイオマスから得られた(メタ)アクリル酸n-オクチルである請求項1または2に記載の水分散粘着剤組成物。
[4]前記(B)成分が、オキサゾリン基を有する架橋剤である、請求項1から3のいずれかに記載の水分散粘着剤組成物。
[5]前期粘着剤組成物から形成される粘着剤層のバイオマス度が10%以上である、請求項1から4のいずれかに記載の水分散粘着剤組成物。
[6]請求項1から5のいずれかに記載の水分散粘着剤組成物から形成される粘着剤層を基材の少なくとも一方に有する粘着シート。
が前記課題を解決し、目的を達成し得ることを見出した。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、リン酸エステル系化合物を用いずとも、曲面接着性、保持力に優れ、バイオマス度10%以上の粘着剤層を形成しうる水分散粘着剤組成物およびこれを用いた粘着シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について、例を挙げて説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
【0012】
本発明の水分散粘着剤組成物は、バイオマス由来の(メタ)アクリル酸エステル単量体、カルボキシル基を有する共重合可能な単量体を少なくとも含む単量体混合物から重合される(メタ)アクリル系共重合体を少なくとも含み、前記粘着剤組成物より形成される粘着剤層のバイオマス度が10%以上となる粘着剤組成物である。
【0013】
本発明においてバイオマス度は、水分散粘着剤組成物中の不揮発成分の重量に占めるバイオマスの重量の割合であり、式1で計算される。
(式1)
バイオマス度(%)=水分散粘着剤組成物中のバイオマス由来の重量/水分散粘着剤組成物の不揮発成分の重量×100
なお、バイオマスとは動植物由来の再生可能な有機性資源より得られる原料を指す。バイオマス由来の(メタ)アクリル酸エステル単量体として、例えば(メタ)アクリル酸と、パーム核油から得られる炭素数8、炭素数12、炭素数18、炭素数24の長鎖アルキルアルコールとのエステル化反応によって得られる各種(メタ)アクリル酸エステル単量体が知られている。また、バイオマス由来のカルボキシ基を有する共重合可能な単量体として、例えばトウモロコシデンプンおよびグルコースを含む炭化水素を微生物を用いて発酵させることで得られるイタコン酸が知られている。これらの(メタ)アクリル酸エステル単量体および/またはイタコン酸と、石油由来の(メタ)アクリル酸エステル単量体および/またはカルボキシ基を有する担当量との共重合物は、部分的バイオマス(メタ)アクリル系共重合物と言うことができ、そのバイオマス度は(式1)で計算される。
【0014】
本発明において、「(メタ)アクリル」とは「アクリルおよびメタクリルの少なくとも一方」を意味する。例えば、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸およびメタクリル酸の少なくとも一方を意味する。また、「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」は、アクリル酸アルキルエステルおよびメタクリル酸アルキルエステルの少なくとも一方を意味する。また、「(メタ)アクリル系共重合体」は、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの少なくとも一方を含む単量体の重合物を意味する。
【0015】
本発明の水分散粘着剤組成物は、例えば、さらに粘着付与剤、pH調整剤、溶媒、可塑剤、酸化防止剤、架橋防止剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤、消泡剤、光安定剤、帯電防止剤等を含んでもよい。
【0016】
本発明の粘着シートは、例えば、基材が紙であっても、合成高分子化合物であっても、天然高分子化合物であってもよい。
【0017】
本発明の粘着シートは、例えば、粘着剤層が塗工された基材と反対側に、片面もしくは両面にシリコーンや長鎖アルキル基ペンダントポリマー等で剥離処理された保護層が積層されていてもよい。
【0018】
本発明において、「アルキル」は、例えば、直鎖状または分枝状のアルキルを含む。本発明において、アルキル基は、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基およびtert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等が挙げられる。
【0019】
本発明において、「アルキレン」は、例えば、直鎖状アルキレン(メチレンもしくはポリメチレン)または分枝状のアルキレンを含む。本発明において、アルキレン基は、特に限定されないが、例えば、メチレン基、ジメチレン基(エチレン基)、エチリデン基、トリメチレン基、1-メチルエチレン基(プロピレン基)、テトラメチレン基、1-メチルトリメチレン基、2-メチルトリメチレン基、1,1-ジメチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基等が挙げられる。
【0020】
[1.水分散粘着剤組成物の成分]
<成分(A)(メタ)アクリル系共重合体>
前述の通り、本発明の水分散粘着剤組成物が含有する(A)(メタ)アクリル系共重合体は下記(a1)、(a2)の単量体を含む単量体混合物の共重合体であり、単量体の全重量部を100重量部としたとき、単量体混合物中の(a1)の含有量は10~98重量部、(a2)の含有量が2~10重量部の共重合体である。
(a1)炭素数が5~18である直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体
(a2)カルボキシル基を有する共重合可能な単量体
【0021】
成分(A)は、例えば、前記重合体が水中に分散したエマルション、ディスパージョンであってもよい。
【0022】
(メタ)アクリル系共重合体は、後述するように、成分(a1)および(a2)以外の他の単量体との共重合体であってもよく、成分(a1)および(a2)のみから成る共重合体であってもよい。成分(a1)および(a2)以外の他の単量体としては、炭素数が1~4または19以上の直鎖状または分岐のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アクリルエステル単量体が挙げられる。このような単量体として、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピルアクリレート、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。この他に、例えば、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルなどの非芳香族性環含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステルなどの芳香族性環含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのエポキシ基含有アクリル系モノマー、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル系モノマー;スチレン、α-メチルスチレンなどのスチレン系モノマー;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエンなどのオレフィン系モノマー;ビニルエーテルなどのビニルエーテル系モノマー;アクリルアミド、アクリロニトリルなどの窒素含有単量体を用いてもよい。さらに、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシペンチル、(メタ)アクリル酸2ーヒドロキシヘキシル等の水酸基を有する単量体であってもよい。これらは1種類のみ用いても2種類以上併用してもよい。
【0023】
<成分(a1)炭素数が5~18である直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体>
本発明に使用する(a1)炭素数が5~18である直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体は特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。これらの中でも適度な粘着性を得られることから(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸ラウリルが好ましく、(メタ)アクリル酸n-オクチルが特に好ましい。
例えば、バイオマス由来の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、
・アクリル酸n-オクチル:バイオマス由来の炭素数8の直鎖アルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル、バイオマス度72%(商品名:NOAA、大阪有機化学工業株式会社)
・アクリル酸ラウリル:バイオマス由来の炭素数12の直鎖アルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル、バイオマス度80%(商品名:LA、大阪有機化学工業株式会社)
・アクリル酸ステアリル:バイオマス由来の炭素数18の直鎖アルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル、バイオマス度85%(商品名:STA、大阪有機化学工業株式会社)
等が挙げられる。
【0024】
前記重合体の共重合成分中における成分(a1)の含有量は、前述のとおり単量体の全重量部を100重量部としたとき10~98重量部であり、例えば、10重量部以上、50重量部以上であり、例えば、98重量部以下、97重量部以下である。成分(a1)の含有量が50重量部以上であることで、高い接着力が得られる。また、成分(a1)の含有量は、保持力の観点から99重量部以下としてもよい。
【0025】
前記(a1)がバイオマス由来の(メタ)アクリル酸エステル単量体の場合、前記の通りバイオマス度は、水分散粘着剤組成物中の不揮発成分の重量に占めるバイオマスの重量の割合であり、式1で算出される。
(式1)
バイオマス度(%)=水分散粘着剤組成物中のバイオマス由来の重量/水分散粘着剤組成物の不揮発成分の重量×100
なお、バイオマスとは動植物由来の再生可能な有機性資源より得られる原料を指す。
【0026】
<成分(a2)カルボキシ基を有する共重合可能な単量体>
本発明に使用する(a2)カルボキシル基を有する共重合可能な単量体は特に限定されないが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、無水イタコン酸、無水マレイン酸等が挙げられる。これらは1種類のみ用いても良いし複数種類併用してもよい。
【0027】
成分(A)の共重合成分中における成分(a2)の含有量は、前述のとおり単量体の全重量部を100重量部としたとき2~10重量部であり、例えば、2重量部以上、3重量部以上であり、例えば、10重量部以下、5重量部以下である。(a2)の含有量がこの範囲であると、適度な接着力と保持力が得られる。
【0028】
<成分(A)(メタ)アクリル系共重合体の製造方法>
成分(A)(メタ)アクリル系共重合体の製造方法は、特に限定されない。例えば、前記重合体の共重合成分全てを乳化重合させることで、前記重合体を製造するとともに、前記重合体の水分散物を形成させて成分(A)としてもよい。
【0029】
前記乳化重合の方法は、特に限定されず、例えば、一般的な乳化重合の方法と同様もしくはそれに準じてもよいし、または、それに適宜変更を加えてもよい。前記乳化重合の方法は、具体的には、例えば、(1)水および全ての共重合成分を一括混合して乳化重合する方法、(2)水および全ての共重合成分の混合物のうち、一部を反応器に加え、残りを前記反応器中に滴下して乳化重合する方法(プレエマルション法)、(3)モノマー滴下法、等が挙げられる。これらの中でも、乳化重合反応の安定性の点から(2)のプレエマルション法が好ましい。また、水および前記共重合成分に加え、必要に応じ、重合開始剤、乳化剤、分散安定剤等を混合して乳化重合を行ってもよい。
【0030】
前記重合開始剤は、特に限定されないが、例えば、水溶性アゾ重合開始剤、過硫酸塩類、有機過酸化物類、過酸化水素等が挙げられ、1種類のみ用いても2種類以上併用してもよい。前記水溶性アゾ重合開始剤は、例えば、商品名V-50、V-501、VA-086、VA-057、VA-06(いずれも富士フイルム和光純薬株式会社)等が挙げられ、1種類のみ用いても2種類以上併用してもよい。前記過硫酸塩類としては過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられ、1種類のみ用いても2種類以上併用してもよい。
【0031】
前記乳化剤は、特に限定されないが、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等が挙げられ、1種類のみ用いても2種類以上併用してもよい。前記アニオン性界面活性剤は、例えば、アルキル硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、商品名アデカリアソープSR-10、アデカリアソープSR-20(いずれも株式会社ADEKA)、商品名アクアロンHS-10、アクアロンHS-20(いずれも第一工業製薬株式会社)、商品名エレミノールJS-20、エレミノールRS-3000(いずれも三洋化成工業株式会社)、商品名ラテムルPD-104(花王株式会社)等が挙げられ、1種類のみ用いても2種類以上併用してもよい。前記ノニオン性界面活性剤は、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、商品名アデカリアソープER-10、アデカリアソープER-20(いずれも株式会社ADEKA)、商品名アクアロンRN-10、アクアロンRN-20(いずれも第一工業製薬株式会社)、商品名ラテムルPD-420、ラテムルPD-430(いずれも花王株式会社)等が挙げられ、1種類のみ用いても2種類以上併用してもよい。
【0032】
前記分散安定剤は、特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール、デンプン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、水溶性アクリル樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、水溶性ポリアミド樹脂、水溶性ポリウレタン樹脂等が挙げられ、1種類のみ用いても2種類以上併用してもよい。
【0033】
前記(2)のプレエマルション法は、特に限定されないが、例えば、以下のようにして行うことができる。まず、水および全ての共重合成分を混合し、プレエマルションを得る。このプレエマルションには、前記重合開始剤、前記乳化剤、前記分散安定剤等を混合してもよい。また、例えば、必要に応じ、親水性溶剤、疎水性溶剤等を混合してもよい。つぎに、前記プレエマルションの一部を重合反応させる(第1の重合工程)。このとき、必要に応じ、加熱、攪拌等をしてもよい。反応系は、開放系であってもよいが、窒素等の不活性ガスで置換されていてもよい。前記第1の重合工程における反応温度は特に限定されないが、例えば、30~90℃、または40~85℃である。前記第1の重合工程における反応時間も特に限定されないが、例えば10分以上、20分以上、30分以上であり、例えば60分以下、50分以下、40分以下である。つぎに、残りのプレエマルションを滴下し、さらに重合反応させる(第2の重合工程)。前記第2の重合工程は、滴下終了後、さらに重合反応を継続してもよい。前記第2の重合工程における反応温度は特に限定されないが、例えば、前記第1の重合工程と同じである。滴下終了時において、残留モノマー(共重合成分)の量は、共重合成分全ての質量を100重量部とした場合に、例えば、0.01重量部以上、0.1重量部以上、1重量部以上であり、例えば、3重量部以下、2重量部以下、1重量部以下である。前記残りのプレエマルションの滴下時間も特に限定されないが、例えば60分以上、120分以上、180分以上であり、例えば300分以下、240分以下、180分以下である。前記滴下終了後における反応時間も特に限定されないが、例えば60分以上、120分以上、180分以上分以上であり、例えば360分以下、300分以下、240分以下である。以上のようにして、前記重合体を製造できる。
【0034】
前記乳化重合は、例えば、重合反応の途中で前記重合開始剤を追加する工程を含んでいてもよい。これにより、例えば、臭気の原因となる残留モノマー(共重合成分)を抑制できる。例えば、前記第2の重合工程における前記滴下終了後に、前記重合開始剤を追加してもよい。前記重合開始剤の追加は、1回で行ってもよいし、複数回に分けてもよい。
【0035】
<成分(B)架橋剤>
本発明の水分散粘着剤組成物が含有する(B)架橋剤は特に限定されないが、例えば、分子内にオキサゾリン基を有し、かつ水分散体の架橋剤である。架橋剤は、例えば、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリン等の付加重合性オキサゾリンを1種類または2種類以上用いて乳化重合等により得られた水分散系架橋剤等が挙げられ、1種類のみ用いても2種類以上併用してもよい。このような架橋剤として、例えば、商品名エポクロスK-2010E、エポクロスK-2020E、エポクロスK-2030E、エポクロスWS-700(いずれも株式会社日本触媒)等が挙げられる。
【0036】
<その他の成分>
本発明の水分散粘着剤組成物は、前記の通り、成分(A)(メタ)アクリル系共重合体および成分(B)架橋剤以外の成分を含んでもよい。成分(A)、(B)以外の他の成分としては、例えば、粘着付与剤、pH調整剤、溶媒、酸化防止剤、架橋防止剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤、消泡剤、光安定剤、帯電防止剤等が挙げられ、1種類のみ用いても2種類以上併用してもよい。前記その他の成分は、具体的には、特に限定されず、例えば、一般的な粘着剤と同様またはそれに準じてもよい。前記粘着付与剤としては、例えば、ロジン樹脂、変性ロジン樹脂、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂が挙げられ、1種類のみ用いても2種類以上併用してもよい。前記pH調整剤としては、例えば、アンモニア水、水酸化ナトリウム水溶液、希塩酸、希硫酸等が挙げられ、1種類のみ用いても2種類以上併用してもよい。前記紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系等の紫外線吸収剤が挙げられる。前記消泡剤としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン系、鉱物油系等の消泡剤が挙げられる。前記光安定剤としては、特に限定されないが、例えば、ヒンダードアミン系等の光安定剤が挙げられる。前記帯電防止剤としては、無機塩類、有機塩類等のイオン性化合物、ノニオン性界面活性剤等の非イオン性化合物が挙げられる。前記溶媒、前記酸化防止剤および前記架橋防止剤については、特に限定されないが、例えば、一般的な粘着剤と同様またはそれに準じてもよい。
【0037】
[2.水分散粘着剤組成物の製造方法]
本発明の水分散粘着剤組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば、本発明の粘着剤組成物を構成する全成分を単に混合するのみでもよい。混合する順序は特に限定されないが、例えば、重合体の水分散物である成分(A)中に、他の成分を順次混合してもよい。例えば、pH調整剤(アンモニア水等)を用いる場合、凝集物の生成等を防止する観点から、成分(B)は、pH調整剤よりも先に、またはpH調整剤と同時に成分(A)中に混合することが好ましい。
【0038】
本発明の水分散粘着剤組成物の用途も特に限定されないが、例えば、一般的な粘着剤組成物と同様の用途に用いることができる。本発明の粘着剤組成物は、例えば、本発明の粘着シートにおける前記粘着剤層に用いることができる。
【0039】
[3.粘着シート]
つぎに、本発明の粘着シートおよびその製造方法、用途等について、例をあげて説明する。
【0040】
本発明の粘着シートは、前述のとおり、基材と、粘着剤層とを含み、前記粘着剤層が、前記本発明の粘着剤組成物を含むことを特徴とする。前記粘着剤層は、本発明の粘着剤組成物のみからなっていてもよいし、本発明の粘着剤組成物以外の成分を含んでいてもよい。
【0041】
本発明の粘着シートは、前記基材および前記粘着剤層以外の他の構成要素を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。本発明の粘着シートは、例えば、前記粘着剤層における前記基材と反対側に、保護層(剥離シート、セパレーター、またはリリースライナーともいう)が積層されていてもよい。
【0042】
前記基材は、特に限定されず、例えば、一般的な粘着シートの基材と同様でもよい。前記基材は、例えば、プラスチック、ポリウレタン、紙、金属箔等が挙げられる。前記プラスチックとしては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PC(ポリカーボネート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PI(ポリイミド)等が挙げられる。前記紙としては、例えば、和紙、洋紙等が挙げられる。
【0043】
前記基材は、粘着シート全体のバイオマス度を高めるために、バイオマスの基材であってもよい。バイオマスの基材としては、例えば、植物由来のPET、PE、PP、PLA(ポリ乳酸)などが挙げられる。なお、粘着シート全体のバイオマス度の定義は前記(式1)とは異なる。
【0044】
前記基材の形状も特に限定されず、例えば、シート、フィルム、発泡体等が挙げられる。前記基材は、製造後の粘着シートの取扱いやすさ、保存のしやすさ等の観点から、例えば、巻き取り可能な長尺のテープ状であることが好ましい。
【0045】
また、前記基材は、例えば、必要に応じて、前記基材の粘着剤層形成面に、易接着処理を施した基材であってもよい。前記易接着処理は、特に限定されないが、具体的には、例えば、コロナ放電を処理する方法、アンカーコート剤を塗布する方法等が挙げられる。
【0046】
前記保護層は、特に限定されず、例えば、一般的な粘着シートの保護層と同様でもよい。前記保護層は、プラスチック、ポリウレタン、紙、金属箔等が挙げられる。前記プラスチックとしては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PC(ポリカーボネート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PI(ポリイミド)、植物由来のPET、PE、PP、PLA(ポリ乳酸)等が挙げられる。前記紙としては、例えば、和紙、洋紙、等が挙げられる。また、前記保護層は、例えば、前記粘着剤層と接する側に、前記粘着剤層に対する剥離性を高めるための剥離処理がされていてもよい。前記剥離処理は、特に限定されないが、例えば、シリコーンや長鎖アルキル基ペンダントポリマーによるコーティング(シリコーン処理)等でもよい。前記保護層(剥離シート)は、例えば、シリコーンや長鎖アルキル基ペンダントポリマーが処理された剥離紙、またはシリコーンや長鎖アルキル基ペンダントポリマーが処理された剥離フィルムであってもよい。
【0047】
本発明の粘着シートの製造方法は、特に限定されず、例えば、一般的な粘着シートの製造方法と同様でもよい。本発明の粘着シートは、例えば、前記基材に本発明の粘着剤組成物を塗工して前記粘着剤層を形成することにより製造できる。また、本発明の粘着シートは、例えば、前記保護層に本発明の粘着剤組成物を塗工して前記粘着剤層を形成し、さらに、前記粘着剤層に前記基材を積層させることにより製造できる。例えば、基材が紙やポリウレタンの発泡体等の場合は、張力に強く凹凸が少ない前記保護層(例えば、シリコーンや長鎖アルキル基ペンダントポリマーが処理された剥離紙、またはシリコーンや長鎖アルキル基ペンダントポリマーが処理された剥離フィルム)に粘着剤組成物を塗工して乾燥させた後、紙基材やポリウレタンの発泡体基材に転写することが好ましい。
【0048】
本発明の粘着シートは、具体的には、例えば、以下のようにして製造できる。まず、前記保護層に本発明の粘着剤組成物を塗工して前記粘着剤層を形成する(塗工工程)。前記塗工工程における塗工方法は、特に限定されず、公知の方法でもよい。前記塗工方法としては、例えば、ロールコーター法、コンマコーター法、ダイコーター法、リバースコーター法、シルクスクリーン法、グラビアコーター法等が挙げられる。前記塗工工程における前記粘着剤組成物の塗工量(塗布量)は、特に限定されないが、前記粘着剤層の厚みが、例えば、1μm以上、5μm以上、例えば、100μm以下、50μm以下となるようにする。
【0049】
前記塗工工程により形成された前記粘着剤組成物は、そのまま前記粘着剤層としてもよい。また、前記塗工工程後、前記塗工面上において前記粘着剤組成物を加熱し(第1の加熱工程)、架橋反応をさらに進行させて前記粘着剤層としてもよい。前記第1の加熱工程における加熱温度は、特に限定されないが、例えば、60℃以上であり、例えば、180℃以下である。前記第1の加熱工程における加熱時間は、特に限定されないが、例えば、10秒以上、30秒以上であり、例えば、300秒以下、180秒以下である。
【0050】
さらに、前記塗工工程後、前記粘着剤層上の、前記保護層と反対側に前記基材を積層させる(基材積層工程)。前記基材積層工程において、例えば、前記基材と前記粘着剤層との密着性を高めるために、ローラー等で圧着してもよい。また、その後さらに加熱して、前記粘着剤層中における架橋反応をさらに進行させてもよい(第2の加熱工程)。前記第2の加熱工程における加熱温度は、特に限定されないが、例えば、60℃以上であり、例えば、180℃以下である。前記第2の加熱工程における加熱時間は、特に限定されないが、例えば、2時間以上、6時間時間以上であり、例えば、96時間以下、72時間以下である。以上のようにして本発明の粘着シートを製造できるが、前述のとおり、本発明の粘着シートの製造方法はこれに限定されない。
【0051】
本発明の粘着シートの用途は、特に限定されず、例えば、一般的な粘着シートと同様の用途において、広く使用可能である。
【0052】
本発明の粘着シートの形態も特に限定されないが、例えば、保管時には、前記粘着剤層上に前記保護層を貼付して前記粘着剤層を保護し、使用直前に前記セパレーターを剥離することが好ましい。また、例えば、本発明の粘着シートが、巻き取り可能な長尺のテープ状であり、巻き取って保管することが好ましい。
【0053】
さらに、本発明の粘着シートは、例えば、前述のとおり、マスキングテープに限定されず広い用途に使用可能であり、例えば、粘着ラベル、粘着テープ、表面保護フィルム等に用いることができる。
【実施例0054】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0055】
(合成例1)
ビーカーAにアクリル酸2-エチルヘキシル 75.99重合部(成分(a1))、アクリル酸n-オクチル 21.01重量部(成分(a1))、メタクリル酸(成分(a2))3.00重量部、t-ドデシルメルカプタン0.01重量部を量り取り、均一に攪拌した。別のビーカーBに、イオン交換水 29.82重量部、乳化剤(商品名:ラテムルPD-201、花王株式会社、不揮発分40質量%)2.87重量部を量り取り、均一に撹拌した。その後、ビーカーBにビーカーAの内容物を加え、ディスパーで混合してプレエマルションを得た。
撹拌機、冷却管、温度計、滴下ロートを備えたセパラブルフラスコにイオン交換水 34.45重量部を量り取り、撹拌しながら65~75℃まで加熱した。つぎに、前記プレエマルション 1.10重量部および重合開始剤(商品名:V-50、富士フイルム和光純薬株式会社)0.002重量部をイオン交換水 0.86重量部に溶解させた重合開始剤水溶液 0.8602重量部を前記セパラブルフラスコに投入し、前記温度で30分間加熱攪拌して重合反応を行った。その後、前記プレエマルションに重合開始剤(商品名:V-50、富士フイルム和光純薬株式会社)0.11重量部をイオン交換水 4.01重量部に溶解させた重合開始剤水溶液 4.12重量部を添加し、前記温度で加熱攪拌を継続しながら滴下ロートを用いて5時間かけて滴下した。さらに、前記プレエマルションの滴下終了後、前記温度で2.5時間加熱攪拌を継続し重合反応を行った。このようにして、合成例1の成分(A)(メタ)アクリル系共重合物を得た。得られた成分(A)の不揮発成分は59重量%であった。なお、アクリル酸n-オクチルはバイオマス由来の炭素数8の直鎖アルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルであり、そのバイオマス度は72%である(商品名:NOAA、大阪有機化学工業株式会社)。
(合成例2~6)
各成分の重量部を表1の通りとしたことを除いては合成例1と同様の方法で、合成例2~6の成分(A)(メタ)アクリル系共重合物を得た。なお、アクリル酸n-オクチルはバイオマス由来の炭素数8の直鎖アルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルであり、そのバイオマス度は72%である(商品名:NOAA、大阪有機化学工業株式会社)。
【0056】
【0057】
(実施例1)
合成例1で得た成分(A)(メタ)アクリル系共重合物 100重量部(不揮発成分59重量%)中に、中和剤として25重量%アンモニア水 0.22重量部、成分(B)架橋剤 2.4重量部(商品名:エポクロスWS-700、株式会社日本触媒、主成分:オキサゾリン系化合物、不揮発成分25重量%)、増粘剤 0.92重量部(商品名:アロンB-300K、東亞合成株式会社、主成分:アクリル酸系重合物、不揮発成分44重量%)を前記順序で添加して混合し、実施例1の水分散粘着剤組成物を得た。得られた粘着剤組成物の不揮発成分は58質量%、ブルックフィールド粘度計を用いて測定した20℃における粘度は4000mPa・sであった。
つぎに、前記実施例1の水分散粘着剤組成物を、塗工幅100mm、ギャップ75μmのアプリケーターを用いて、剥離処理が施された剥離紙(商品名:SP-8E、リンテック株式会社)に100mm/秒の速度で塗工した。つぎに、前記剥離紙を、塗工した前記粘着剤組成物とともに、100℃の熱風循環式乾燥機内に2分間放置して加熱し、乾燥させた(第1の加熱工程)。このようにして、前記剥離紙上に厚み20μmの粘着剤層を形成した。さらに、前記粘着剤層上に、厚み25μmのポリエチレンテレフタレート製の基材を貼り合わせ、重量5kgのゴムローラーを2往復させて前記粘着剤層を前記ポリエチレンテレフタレート製の基材に圧着し、40℃に調整した恒温槽内で72時間静置して実施例1の粘着シートを得た(第2の加熱工程)。
【0058】
(実施例2)~(実施例4)
成分(A)(メタ)アクリル系共重合物、中和剤、成分(B)架橋剤、増粘剤の配合量(重量部)を表2の通りとしたことを除いては実施例1と同様の方法で、実施例2~実施例4の水分散粘着剤組成物および粘着シートを得た。
【0059】
(比較例1)~(比較例3)
成分(A)(メタ)アクリル系共重合物、中和剤、成分(B)架橋剤、増粘剤の配合量(重量部)を表2の通りとしたことを除いては実施例1と同様の方法で、比較例1~比較例3の水分散粘着剤組成物および粘着シートを得た。なお、比較例2の水分散粘着剤組成物には成分(B)架橋剤を配合しなかった。
【0060】
(接着力)
実施例および比較例の粘着シートを23℃、50%RHの環境下に24時間静置した後、幅25mm、長さ120mmの大きさに切り出した。つぎに剥離紙を剥がし、清浄にしたステンレス板(SUS304)またはポリプロピレン板に2kgゴムローラーを300mm/分の速度で8往復させて圧着させた。1時間静置後、引張試験機を用いて300mm/分の速度で180度方向に剥離するのに要した力を接着力の性能評価結果とした。
【0061】
(粘着性)
実施例および比較例の粘着シートを23℃、50%RHの環境下に24時間静置した後、幅50mm、長さ150mmの大きさに切り出した。つぎに剥離紙を剥がし、30度の傾斜面に粘着剤塗工面が上になるように置き、100mmの助走路の下端から100mmの範囲を測定部とした。つづいて、清浄にしたボールナンバー2~24の鋼球を助走路の上端から転がした。測定部の範囲内で5秒間粘着停止した鋼球のボールナンバーを粘着性の性能評価結果とした。
【0062】
(保持力)
実施例および比較例の粘着シートを23℃、50%RHの環境下に24時間静置した後、幅25mm、長さ150mmの大きさに切り出した。つぎに剥離紙を剥がし、清浄にしたステンレス板(SUS304)に接着面積が25mm×25mmとなるよう2kgゴムローラーを300mm/分の速度で8往復させて圧着させた。30分間静置後、40℃、50%RHに調整された保持力試験機に垂直に取り付け、30分間調温調湿したのちに、試験片の下端に荷重9.8Nをかけた。24時間後の接着部の移動量(ズレ、mm)を保持力の性能評価結果とした。
【0063】
(曲面接着性)
実施例および比較例の粘着シートを23℃、50%RHの環境下に24時間静置した後、幅25mm、長さ45mmの大きさに切り出した。つぎに剥離紙を剥がし、清浄にした直径15mmのポリプロピレン柱の表面に圧着させた。24時間静置後、ポリプロピレン柱の表面から浮き剥がれた試料片の長さを曲面接着性の性能評価結果とした。
〇 : 浮き剥がれの長さは2mm未満であった
× : 浮き剥がれの長さは2mm以上であった
【0064】
(バイオマス度(%))
水分散粘着剤組成物中の不揮発成分の重量に占めるバイオマスの重量の割合であり、式1より算出した。
(式1)
バイオマス度(%)=水分散粘着剤組成物中のバイオマス由来の重量/水分散粘着剤組成物の不揮発成分の重量×100
【0065】
【0066】
表2に示したとおり、実施例1~4の水分散粘着剤組成物は曲面接着性、保持力に優れ、適度な接着力を有していた。これに対し、成分(a1)炭素数が5~18である直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を含まない成分(A)(メタ)アクリル系共重合物を用いた比較例1の水分散粘着剤組成物は、曲面接着性が不良であった。また、成分(B)架橋剤を含まない比較例2の水分散粘着剤組成物は、保持力が不良であった。さらに、成分(a2)カルボキシ基を有する共重合可能な単量体を、単量体の全重量部を100重量部としたとき2~10重量部含まない成分(A)(メタ)アクリル系共重合物を用いた比較例3の水分散粘着剤組成物は、保持力と曲面接着性が不良であった。
以上、説明したとおり、本発明によれば、曲面接着性、保持力に優れ、塗工適性が良好で、バイオマス度10%以上の粘着剤層を形成しうる水分散粘着剤組成物およびこれを用いた粘着シートを提供な粘着剤および粘着シートを提供することができる。本発明の粘着剤組成物および粘着シートは、例えば、一般的な粘着剤組成物および粘着シートと同様の用途において、広く使用可能である。