IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 独立行政法人情報通信研究機構の特許一覧

特開2024-53683ホログラフィック光学系の設計方法及びホログラフィック光学系設計プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053683
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】ホログラフィック光学系の設計方法及びホログラフィック光学系設計プログラム
(51)【国際特許分類】
   G03H 1/22 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
G03H1/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160047
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星 郁雄
(72)【発明者】
【氏名】市橋 保之
(72)【発明者】
【氏名】大井 隆太朗
(72)【発明者】
【氏名】涌波 光喜
【テーマコード(参考)】
2K008
【Fターム(参考)】
2K008CC03
(57)【要約】
【課題】ゼロ次回折光が出力面に重畳することを防止し得るホログラフィック光学系を効率的に設計することができるホログラフィック光学系の設計方法を提供する。
【解決手段】ホログラフィック光学系モデル21を用いたホログラフィック光学系の設計方法は、光学条件20を受け付けるステップ(ステップS1)と、ホログラフィック光学系モデル21を生成するステップ(ステップS2)と、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々に初期位相分布を設定するステップ(ステップS3)と、ホログラフィック光学系モデル21を機械学習するステップ(ステップS4)とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホログラフィック光学系モデルを用いたホログラフィック光学系の設計方法であって、前記ホログラフィック光学系モデルは、入力面と、光学的に直列配置されている複数のホログラフィック光学素子と、出力面とを含み、前記ホログラフィック光学系の設計方法は、
前記複数のホログラフィック光学素子の枚数、前記複数のホログラフィック光学素子の各々のサイズ、前記入力面と前記複数のホログラフィック光学素子と前記出力面の配置、並びに、前記複数のホログラフィック光学素子を進む光の波長を含む光学条件を受け付けるステップと、
前記光学条件のうち、前記複数のホログラフィック光学素子の前記枚数、前記複数のホログラフィック光学素子の各々の前記サイズ、及び、前記入力面と前記複数のホログラフィック光学素子と前記出力面の前記配置を満たす前記ホログラフィック光学系モデルを生成するステップとを備え、前記光が前記入力面から前記出力面に向けて前記複数のホログラフィック光学素子を進むことによって前記複数のホログラフィック光学素子において生成されるゼロ次回折光が、前記出力面に重畳しないように、前記入力面と前記複数のホログラフィック光学素子と前記出力面とは配置され、
前記光が前記入力面から前記複数のホログラフィック光学素子を進んで前記出力面に出射するように、前記複数のホログラフィック光学素子の各々に初期位相分布を設定するステップと、
前記光に対して前記複数のホログラフィック光学素子の各々の位相分布を最適化することによって、前記初期位相分布が設定された前記ホログラフィック光学系モデルを機械学習するステップとを備える、ホログラフィック光学系の設計方法。
【請求項2】
前記光は、互いに異なる波長を有する複数波長成分を含む、請求項1に記載のホログラフィック光学系の設計方法。
【請求項3】
前記初期位相分布を設定する前記ステップでは、前記複数波長成分の各々が前記入力面から前記複数のホログラフィック光学素子を進んで前記出力面に出射するように、前記複数のホログラフィック光学素子の各々に前記複数波長成分の各々用の初期位相分布を設定し、
前記ホログラフィック光学系モデルを機械学習する前記ステップでは、前記複数のホログラフィック光学素子の各々の前記複数波長成分の各々用の位相分布を機械学習により最適化する、請求項2に記載のホログラフィック光学系の設計方法。
【請求項4】
ホログラフィック光学系モデルを用いたホログラフィック光学系の設計方法であって、前記ホログラフィック光学系モデルは、入力面と、光学的に直列配置されている複数のホログラフィック光学素子と、出力面とを含み、前記ホログラフィック光学系の設計方法は、
前記複数のホログラフィック光学素子の枚数、前記複数のホログラフィック光学素子の各々のサイズ、前記入力面と前記複数のホログラフィック光学素子と前記出力面の配置、並びに、前記複数のホログラフィック光学素子を進む複数波長成分の波長を含む光学条件を受け付けるステップを備え、前記複数波長成分の波長は互いに異なっており、
複数のホログラフィック光学系サブモデルを生成するステップを備え、前記複数のホログラフィック光学系サブモデルの各々は前記入力面と前記複数のホログラフィック光学素子と前記出力面とを含み、前記複数のホログラフィック光学系サブモデルの各々は、前記光学条件のうち、前記複数のホログラフィック光学素子の前記枚数、前記複数のホログラフィック光学素子の各々の前記サイズ、及び、前記入力面と前記複数のホログラフィック光学素子と前記出力面の前記配置を満たし、前記複数のホログラフィック光学系サブモデルの各々は前記複数波長成分のうち対応する波長成分用のホログラフィック光学系サブモデルであり、前記対応する波長成分が前記複数のホログラフィック光学系サブモデルの各々の前記入力面から前記複数のホログラフィック光学系サブモデルの各々の前記出力面に向けて前記複数のホログラフィック光学系サブモデルの各々の前記複数のホログラフィック光学素子を進むことによって前記複数のホログラフィック光学系サブモデルの各々の前記複数のホログラフィック光学素子において生成されるゼロ次回折光が、前記複数のホログラフィック光学系サブモデルの各々の前記出力面に重畳しないように、前記複数のホログラフィック光学系サブモデルの各々の前記入力面と前記複数のホログラフィック光学素子と前記出力面とは配置され、
前記対応する波長成分が前記複数のホログラフィック光学系サブモデルの各々の前記入力面から前記複数のホログラフィック光学系サブモデルの各々の前記複数のホログラフィック光学素子を進んで前記複数のホログラフィック光学系サブモデルの各々の前記出力面に出射するように、前記複数のホログラフィック光学系サブモデルの各々の前記複数のホログラフィック光学素子の各々に前記対応する波長成分用の初期位相分布を設定するステップと、
前記複数のホログラフィック光学系サブモデルの各々の前記複数のホログラフィック光学素子の各々の前記対応する波長成分用の位相分布を最適化することによって、前記初期位相分布が設定された前記複数のホログラフィック光学系サブモデルの各々を機械学習するステップと、
機械学習された前記複数のホログラフィック光学系サブモデルから前記ホログラフィック光学系モデルを生成するステップとを備え、前記複数波長成分が前記ホログラフィック光学系モデルの前記入力面から前記ホログラフィック光学系モデルの前記出力面に向けて前記ホログラフィック光学系モデルの前記複数のホログラフィック光学素子を進むことによって前記ホログラフィック光学系モデルの前記複数のホログラフィック光学素子において生成されるゼロ次回折光が、前記ホログラフィック光学系モデルの前記出力面に重畳しないように、前記ホログラフィック光学系モデルの前記入力面と前記複数のホログラフィック光学素子と前記出力面とは配置され、
前記複数波長成分に対して前記ホログラフィック光学系モデルの前記複数のホログラフィック光学素子の各々の位相分布を最適化することによって、前記ホログラフィック光学系モデルを機械学習するステップを備える、ホログラフィック光学系の設計方法。
【請求項5】
前記複数のホログラフィック光学素子は、第1のサイズを有する第1ホログラフィック光学素子と、前記第1のサイズとは異なる第2のサイズを有する第2ホログラフィック光学素子とを含み、
前記複数のホログラフィック光学素子の各々に前記初期位相分布を設定する前記ステップでは、前記光が前記第1のサイズの80%以上と前記第2のサイズの80%以上とを照射するように、前記複数のホログラフィック光学素子の各々に前記初期位相分布を設定する、請求項1に記載のホログラフィック光学系の設計方法。
【請求項6】
前記複数のホログラフィック光学素子は、折り返し光路を形成する複数の反射型ホログラフィック光学素子を含む、請求項1に記載のホログラフィック光学系の設計方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の前記ホログラフィック光学系の設計方法の各ステップをプロセッサに実行させる、ホログラフィック光学系設計プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ホログラフィック光学系の設計方法及びホログラフィック光学系設計プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
X.Lin, Y.Rivenson, N.T.Yardimci, Y.Luo, M.Jarrahi, and A.Ozcan, 「All-optical learning using diffractive deep neural network」, Science, 2018, Vol.361 No.6406, pp.1004-1008(非特許文献1)は、光回折ディープニューラルネットワーク(DNN)により、複数の回折層の各々の位相分布を機械学習する方法を開示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】X.Lin, Y.Rivenson, N.T.Yardimci, Y.Luo, M.Jarrahi, and A.Ozcan, 「All-optical learning using diffractive deep neural network」, Science, 2018, Vol.361 No.6406, pp.1004-1008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、非特許文献1では、複数の回折層が真っ直ぐな光の光路に直列配置されているため、複数の回折層において生成されるゼロ次回折光が出力面に重畳する。ゼロ次回折光が出力面に重畳すると、ホログラフィック光学系の出力の信号雑音比(SN比)が低下するという問題がある。本開示の目的は、光学的に直列配置されている複数のホログラフィック光学素子を含み、かつ、複数のホログラフィック光学素子において生成されるゼロ次回折光が出力面に重畳することを防止し得るホログラフィック光学系を効率的に設計することができる、ホログラフィック光学系の設計方法及びホログラフィック光学系設計プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第一の局面のホログラフィック光学系モデルを用いたホログラフィック光学系の設計方法において、ホログラフィック光学系モデルは、入力面と、光学的に直列配置されている複数のホログラフィック光学素子と、出力面とを含む。本開示の第一の局面のホログラフィック光学系の設計方法は、複数のホログラフィック光学素子の枚数、複数のホログラフィック光学素子の各々のサイズ、入力面と複数のホログラフィック光学素子と出力面の配置、並びに、複数のホログラフィック光学素子を進む光の波長を含む光学条件を受け付けるステップと、光学条件のうち、複数のホログラフィック光学素子の枚数、複数のホログラフィック光学素子の各々のサイズ、及び、入力面と複数のホログラフィック光学素子と出力面の配置を満たすホログラフィック光学系モデルを生成するステップとを備える。光が入力面から出力面に向けて複数のホログラフィック光学素子を進むことによって複数のホログラフィック光学素子において生成されるゼロ次回折光が、出力面に重畳しないように、入力面と複数のホログラフィック光学素子と出力面とは配置される。本開示の第一の局面のホログラフィック光学系の設計方法は、光が入力面から複数のホログラフィック光学素子を進んで出力面に出射するように、複数のホログラフィック光学素子の各々に初期位相分布を設定するステップと、光に対して複数のホログラフィック光学素子の各々の位相分布を最適化することによって、初期位相分布が設定されたホログラフィック光学系モデルを機械学習するステップとを備える。
【0006】
本開示の第二の局面のホログラフィック光学系モデルを用いたホログラフィック光学系の設計方法において、ホログラフィック光学系モデルは、入力面と、光学的に直列配置されている複数のホログラフィック光学素子と、出力面とを含む。本開示の第二の局面のホログラフィック光学系の設計方法は、複数のホログラフィック光学素子の枚数、複数のホログラフィック光学素子の各々のサイズ、入力面と複数のホログラフィック光学素子と出力面の配置、並びに、複数のホログラフィック光学素子を進む複数波長成分の波長を含む光学条件を受け付けるステップを備える。複数波長成分の波長は、互いに異なっている。本開示の第二の局面のホログラフィック光学系の設計方法は、複数のホログラフィック光学系サブモデルを生成するステップを備える。複数のホログラフィック光学系サブモデルの各々は、入力面と複数のホログラフィック光学素子と出力面とを含む。複数のホログラフィック光学系サブモデルの各々は、光学条件のうち、複数のホログラフィック光学素子の枚数、複数のホログラフィック光学素子の各々のサイズ、及び、入力面と複数のホログラフィック光学素子と出力面の配置を満たす。複数のホログラフィック光学系サブモデルの各々は、複数波長成分のうち対応する波長成分用のホログラフィック光学系サブモデルである。対応する波長成分が複数のホログラフィック光学系サブモデルの各々の入力面から複数のホログラフィック光学系サブモデルの各々の出力面に向けて複数のホログラフィック光学系サブモデルの各々の複数のホログラフィック光学素子を進むことによって複数のホログラフィック光学系サブモデルの各々の複数のホログラフィック光学素子において生成されるゼロ次回折光が、複数のホログラフィック光学系サブモデルの各々の出力面に重畳しないように、複数のホログラフィック光学系サブモデルの各々の入力面と複数のホログラフィック光学素子と出力面とは配置される。本開示の第二の局面のホログラフィック光学系の設計方法は、対応する波長成分が複数のホログラフィック光学系サブモデルの各々の入力面から複数のホログラフィック光学系サブモデルの各々の複数のホログラフィック光学素子を進んで複数のホログラフィック光学系サブモデルの各々の出力面に出射するように、複数のホログラフィック光学系サブモデルの各々の複数のホログラフィック光学素子の各々に対応する波長成分用の初期位相分布を設定するステップと、複数のホログラフィック光学系サブモデルの各々の複数のホログラフィック光学素子の各々の対応する波長成分用の位相分布を最適化することによって、初期位相分布が設定された複数のホログラフィック光学系サブモデルの各々を機械学習するステップと、機械学習された複数のホログラフィック光学系サブモデルからホログラフィック光学系モデルを生成するステップとを備える。複数波長成分がホログラフィック光学系モデルの入力面からホログラフィック光学系モデルの出力面に向けてホログラフィック光学系モデルの複数のホログラフィック光学素子を進むことによってホログラフィック光学系モデルの複数のホログラフィック光学素子において生成されるゼロ次回折光が、ホログラフィック光学系モデルの出力面に重畳しないように、ホログラフィック光学系モデルの入力面と複数のホログラフィック光学素子と出力面とは配置される。本開示の第二の局面のホログラフィック光学系の設計方法は、複数波長成分に対してホログラフィック光学系モデルの複数のホログラフィック光学素子の各々の位相分布を最適化することによって、ホログラフィック光学系モデルを機械学習するステップを備える。
【0007】
本開示のホログラフィック光学系設計プログラムは、本開示のホログラフィック光学系の設計方法の各ステップをプロセッサに実行させる。
【発明の効果】
【0008】
本開示のホログラフィック光学系設計方法及び本開示のホログラフィック光学系設計プログラムによれば、複数のホログラフィック光学素子において生成されるゼロ次回折光が出力面に重畳することを防止し得るホログラフィック光学系を、効率的に設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1のホログラフィック光学系設計装置のハードウェア構成の一例を示す概略図である。
図2】実施の形態1のホログラフィック光学系設計装置の機能構成の一例を示す概略図である。
図3】実施の形態1のホログラフィック光学系の設計方法のフローチャートを示す図である。
図4】実施の形態1のホログラフィック光学系の設計方法における、ホログラフィック光学系モデルを生成するステップを示す概略図である。
図5】実施の形態1のホログラフィック光学系の設計方法における、複数のホログラフィック光学素子に初期位相分布を設定するステップを示す概略図である。
図6】実施の形態1のホログラフィック光学系の設計方法における、複数のホログラフィック光学素子に初期位相分布を設定するステップを示す概略図である。
図7】実施の形態1のホログラフィック光学系の設計方法における、複数のホログラフィック光学素子に初期位相分布を設定するステップを示す概略図である。
図8】実施の形態1のホログラフィック光学系の設計方法における、ホログラフィック光学系モデルを機械学習するステップを示す概略図である。
図9】実施の形態1の位相分布機械学習部における処理内容を説明するためのブロック図である。
図10】実施の形態1のホログラフィック光学系モデルを機械学習するステップのフローチャートを示す図である。
図11】実施の形態1の複数のホログラフィック光学素子の位相分布を最適化するステップのフローチャートを示す図である。
図12】実施の形態1の第1変形例のホログラフィック光学系モデルを示す概略図である。
図13】実施の形態1の第2変形例のホログラフィック光学系モデルを示す概略図である。
図14】実施の形態1の第3変形例のホログラフィック光学系モデルを示す概略図である。
図15】実施の形態1の第4変形例のホログラフィック光学系の設計方法における、複数のホログラフィック光学素子に初期位相分布を設定するステップを示す概略図である。
図16】実施の形態1の第4変形例のホログラフィック光学系の設計方法における、複数のホログラフィック光学素子に初期位相分布を設定するステップを示す概略図である。
図17】実施の形態2のホログラフィック光学系設計装置のハードウェア構成の一例を示す概略図である。
図18】実施の形態2のホログラフィック光学系設計装置の機能構成の一例を示す概略図である。
図19】実施の形態2のホログラフィック光学系の設計方法のフローチャートを示す図である。
図20】実施の形態2のホログラフィック光学系の設計方法における、ホログラフィック光学系モデルを生成するステップを示す概略図である。
図21】実施の形態2のホログラフィック光学系の設計方法における、複数のホログラフィック光学素子に初期位相分布を設定するステップを示す概略図である。
図22】実施の形態2のホログラフィック光学系の設計方法における、ホログラフィック光学系モデルを機械学習するステップを示す概略図である。
図23】実施の形態2の位相分布機械学習部における処理内容を説明するためのブロック図である。
図24】実施の形態2のホログラフィック光学系モデルを機械学習するステップのフローチャートを示す図である。
図25】実施の形態2の複数のホログラフィック光学素子の位相分布を最適化するステップのフローチャートを示す図である。
図26】実施の形態2の複数のホログラフィック光学素子の位相分布を最適化するステップのフローチャートを示す図である。
図27】実施の形態3のホログラフィック光学系設計装置のハードウェア構成の一例を示す概略図である。
図28】実施の形態3のホログラフィック光学系設計装置の機能構成の一例を示す概略図である。
図29】実施の形態3のホログラフィック光学系の設計方法のフローチャートを示す図である。
図30】実施の形態3の位相分布機械学習部における処理内容を説明するためのブロック図である。
図31】実施の形態3の位相分布機械学習部における処理内容を説明するためのブロック図である。
図32】実施の形態3の位相分布機械学習部における処理内容を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態を説明する。なお、同一の構成には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0011】
(実施の形態1)
【0012】
<ハードウェア構成>
【0013】
図1を参照して、ホログラフィック光学系設計装置1のハードウェア構成を説明する。ホログラフィック光学系設計装置1は、ホログラフィック光学系モデル21(図1及び図4から図9などを参照)を用いて、ホログラフィック光学系を設計するためのコンピュータである。ホログラフィック光学系は、例えば、画像伝送光学系のような軸外し結像光学系、手書き文字を認識するための光学系のような文字認識光学系、データの仕分けのための光学系、画像に含まれるノイズを減少させて、画像の信号雑音比(SN比)を向上させるための光学系、撮像光学系またはディスプレイなどに適用可能である。
【0014】
ホログラフィック光学系設計装置1は、主要なハードウェア要素として、入力装置11と、プロセッサ12と、メモリ13と、ディスプレイ14と、ネットワークコントローラ16と、記憶媒体ドライブ17と、ストレージ19とを含む。
【0015】
入力装置11は、各種の入力操作を受け付ける。入力装置11は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、または、ペンなどである。
【0016】
ディスプレイ14は、ホログラフィック光学系設計装置1における処理に必要な情報などを表示する。ディスプレイ14は、例えば、後述する光学条件20と、ホログラフィック光学系モデル21の複数のホログラフィック光学素子44,45(図4図5及び図8を参照)の各々の位相分布とを表示する。本明細書において、ホログラフィック光学素子(HOE)は、レリーフ型の回折光学素子ではなく、屈折率変調型の回折光学素子を意味する。ディスプレイ14は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)または有機EL(Electroluminescence)ディスプレイである。
【0017】
プロセッサ12は、ホログラフィック光学系設計プログラム60を含む各種プログラムを実行することによって、ホログラフィック光学系設計装置1の機能の実現に必要な処理を実行する演算主体である。プロセッサ12は、例えば、CPU(Central Processing Unit)またはGPU(Graphics Processing Unit)などで構成される。
【0018】
メモリ13は、プロセッサ12がプログラムを実行するにあたって、プログラムコードまたはワークメモリなどを一時的に格納する記憶領域を提供する。メモリ13は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)などの揮発性メモリデバイスである。
【0019】
ネットワークコントローラ16は、通信ネットワーク(図示せず)を介して、外部装置(図示せず)との間でプログラムまたはデータ(例えば、光学条件20、訓練データセット24、複数のホログラフィック光学素子44,45の初期位相分布、及び、複数のホログラフィック光学素子44,45の最適化された位相分布など)を送受信する。ネットワークコントローラ16は、例えば、イーサネット(登録商標)、無線LAN(Local Area Network)またはBluetooth(登録商標)などの任意の通信方式に対応している。
【0020】
記憶媒体ドライブ17は、記憶媒体18に格納されているプログラムまたはデータを読み出す。記憶媒体ドライブ17は、さらに、記憶媒体18にプログラムまたはデータを書き込んでもよい。記憶媒体18は、非一過的(non-transitory)な記憶媒体であり、プログラムまたはデータを不揮発的に格納する。記憶媒体18は、例えば、光学ディスク(例えば、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)もしくはDVD(Digital Versatile Disc))などの光学記憶媒体、フラッシュメモリもしくはUSBメモリなどの半導体記憶媒体、ハードディスク、FD(Floppy Disk)もしくはストレージ19テープなどの磁気記憶媒体、または、MO(Magneto-Optical)ディスクなどの光磁気記憶媒体である。
【0021】
ストレージ19は、光学条件20、ホログラフィック光学系モデル21、訓練データセット24、及び、プロセッサ12において実行される各種プログラム(ホログラフィック光学系設計プログラム60を含む)などを格納する。ストレージ19は、例えば、ハードディスクまたはSSD(Solid State Drive)などの不揮発性メモリデバイスである。
【0022】
ホログラフィック光学系モデル21は、コンピュータ(ホログラフィック光学系設計装置1)上で生成される。図4から図8などに示されるように、ホログラフィック光学系モデル21は、入力面41と、複数のホログラフィック光学素子44,45と、出力面42とを含む。本実施の形態のホログラフィック光学系モデル21は、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々に、光50用の位相分布を与えることが可能な光50用のホログラフィック光学系モデルである。本実施の形態では、光50は単一の波長成分を有し、ホログラフィック光学系モデル21は単一波長成分用のホログラフィック光学系モデルである。
【0023】
光学条件20は、例えば、複数のホログラフィック光学素子44,45の枚数、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々のサイズ、入力面41と複数のホログラフィック光学素子44,45と出力面42の配置、並びに、複数のホログラフィック光学素子44,45を進む光50の波長を含む。図4から図8に示されるように、本実施の形態の一例では、複数のホログラフィック光学素子44,45の枚数は2つであり、複数のホログラフィック光学素子44,45は全て透過型ホログラフィック光学素子である。また、光50は、単一の波長成分を有する。
【0024】
複数のホログラフィック光学素子44,45の各々のサイズは、ピクセルが二次元的に配列されている領域の大きさである。例えば、ホログラフィック光学素子44のサイズは、ピクセル44p(図4図5及び図8を参照)が二次元的に配列されている領域の大きさである。ホログラフィック光学素子45のサイズは、ピクセル45pが二次元的に配列されている領域の大きさである。ピクセル44p,45pは、コンピュータ(ホログラフィック光学系設計装置1)上において複数のホログラフィック光学素子44,45の各々の位相分布を規定する最小単位である。複数のホログラフィック光学素子44,45の各々のサイズは、ホログラフィック光学系設計装置1(コンピュータ)上において複数のホログラフィック光学素子44,45の各々の位相分布を算出する領域の大きさである。
【0025】
訓練データセット24は、光50用の訓練データセットであり、複数の訓練データ24a(図9を参照)を含む。複数の訓練データ24aの各々は、入力訓練データ24b(図9を参照)と、入力訓練データ24bに対応する出力訓練データ24c(図9を参照)とを含む。
【0026】
ホログラフィック光学系設計プログラム60のような、ホログラフィック光学系設計装置1の機能を実現するためのプログラムは、記憶媒体18に格納されて流通して、記憶媒体18からストレージ19にインストールされてもよいし、インターネットまたはイントラネットを介して、ホログラフィック光学系設計装置1にダウンロードされてもよい。
【0027】
本実施の形態では、汎用コンピュータ(プロセッサ12)が、プログラムを実行することによって、ホログラフィック光学系設計装置1の機能を実現する例を示す。ホログラフィック光学系設計装置1の機能の全部または一部は、集積回路などのハードワイヤード回路(hard-wired circuit)を用いて実現されてもよい。例えば、ホログラフィック光学系設計装置1の機能の全部または一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いて実現されてもよい。
【0028】
<機能構成>
【0029】
図2を参照して、ホログラフィック光学系設計装置1の機能構成の例を説明する。本実施の形態のホログラフィック光学系設計装置1は、光学条件受付部30と、ホログラフィック光学系モデル生成部31と、初期位相分布設定部32と、位相分布機械学習部33とを含む。
【0030】
図2を参照して、光学条件受付部30は、ホログラフィック光学系設計装置1のオペレータなどから、光学条件20を受け付ける。光学条件受付部30は、光学条件20を、ストレージ19に出力する。光学条件20は、ストレージ19(図1を参照)に格納される。光学条件20は、記憶媒体18(図1を参照)に格納されてもよい。
【0031】
図2を参照して、ホログラフィック光学系モデル生成部31は、光学条件20のうち、複数のホログラフィック光学素子44,45の枚数、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々のサイズ及び入力面41と複数のホログラフィック光学素子44,45と出力面42の配置に従って、コンピュータ(ホログラフィック光学系設計装置1)上で、ホログラフィック光学系モデル21を生成する。
【0032】
図4に示されるように、複数のホログラフィック光学素子44,45は、互いに軸ずれ配置されている。光50が入力面41から出力面42に向けて複数のホログラフィック光学素子44,45を進むことによって、複数のホログラフィック光学素子44,45においてゼロ次回折光53,55が生成される。ゼロ次回折光53,55が、出力面42に重畳しないように、入力面41と複数のホログラフィック光学素子44,45と出力面42とは配置される。本明細書において、光50がホログラフィック光学素子を進むことは、ホログラフィック光学素子が透過型ホログラフィック光学素子である場合には、光50がホログラフィック光学素子を通過することを意味し、ホログラフィック光学素子が反射型ホログラフィック光学素子である場合には、光50がホログラフィック光学素子において反射されることを意味する。
【0033】
図2を参照して、初期位相分布設定部32は、ホログラフィック光学系モデル生成部31によって生成されたホログラフィック光学系モデル21から、初期位相分布が設定されたホログラフィック光学系モデル21を生成する。例えば、オペレータが、入力装置11(図1を参照)を用いて、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々の初期位相分布を、ホログラフィック光学系設計装置1(図1を参照)に入力する。初期位相分布設定部32は、オペレータが入力した初期位相分布を受け付ける。初期位相分布設定部32は、ホログラフィック光学系モデル21の複数のホログラフィック光学素子44,45の各々に、初期位相分布を設定する。こうして、初期位相分布が設定されたホログラフィック光学系モデル21が生成される。
【0034】
初期位相分布設定部32は、光50が入力面41から複数のホログラフィック光学素子44,45を進んで出力面42に出射するように、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々に初期位相分布を設定する。光50が複数のホログラフィック光学素子44,45の各々を進む際に、光50の波面は、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々の初期位相分布によって変化する。光50は、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々において回折される。光50は、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々における非ゼロ次回折光(例えば、一次回折光など)として、複数のホログラフィック光学素子44,45を進む。
【0035】
複数のホログラフィック光学素子44,45の各々において、光50に対する、初期位相分布の最大位相と初期位相分布の最小位相との間の差は、例えば、2π未満である。そのため、複数のホログラフィック光学素子44,45において、光50からゼロ次回折光53,55が生成される。
【0036】
複数のホログラフィック光学素子44,45の各々における光50の照射領域が広いほど、光50は複数のホログラフィック光学素子44,45の各々のより多くのピクセル44p,45pの影響を受ける。そのため、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々における光50の照射領域が広いほど、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々は、設計された性能をより良く発揮することができる。
【0037】
そこで、初期位相分布設定部32は、光50が複数のホログラフィック光学素子44,45の各々の広い領域を照射するように、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々に初期位相分布を設定する。例えば、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々において、光50が複数のホログラフィック光学素子44,45の各々のサイズの80%以上を照射するように、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々の初期位相分布は設定される。より好ましくは、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々において、光50が複数のホログラフィック光学素子44,45の各々のサイズの全体を照射するように、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々の初期位相分布は設定される。
【0038】
図2を参照して、位相分布機械学習部33は、初期位相分布が設定されたホログラフィック光学系モデル21を機械学習する。位相分布機械学習部33は、ホログラフィック光学系の機能(例えば、画像伝送、文字認識、データの仕分け、画像のSN比の向上など)をより高い精度で実現することができるように、光50に対して複数のホログラフィック光学素子44,45の各々の位相分布を機械学習により最適化する。位相分布機械学習部33は、最適化された位相分布を含むホログラフィック光学系モデル21を出力する。
【0039】
光50が複数のホログラフィック光学素子44,45の各々を進む際に、光50の波面は、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々の最適化された位相分布によって変化する。光50は、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々において回折される。光50は、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々における非ゼロ次回折光(例えば、一次回折光など)として、複数のホログラフィック光学素子44,45を進む。
【0040】
複数のホログラフィック光学素子44,45の各々において、光50に対する、最適化された位相分布の最大位相と最適化された位相分布の最小位相との間の差は、例えば、2π未満である。そのため、複数のホログラフィック光学素子44,45において、光50からゼロ次回折光53,55が生成される。
【0041】
<ホログラフィック光学系の設計方法>
【0042】
図3から図11を参照して、本実施の形態のホログラフィック光学系モデル21を用いたホログラフィック光学系の設計方法を説明する。本実施の形態のホログラフィック光学系の設計方法は、プロセッサ12がホログラフィック光学系設計プログラム60(図1を参照)を実行することによって、コンピュータ(ホログラフィック光学系設計装置1)上で実行される。
【0043】
図3を参照して、本実施の形態のホログラフィック光学系の設計方法は、光学条件20を受け付けるステップ(ステップS1)と、ホログラフィック光学系モデル21を生成するステップ(ステップS2)と、ホログラフィック光学系モデル21の複数のホログラフィック光学素子44,45に初期位相分布を設定するステップ(ステップS3)と、初期位相分布が設定されたホログラフィック光学系モデル21を機械学習するステップ(ステップS4)とを含む。
【0044】
光学条件20を受け付けるステップ(ステップS1)は、光学条件受付部30(図2を参照)によって実行される。オペレータは、入力装置11(図1を参照)を用いて、光学条件20をホログラフィック光学系設計装置1に入力する。ステップS1では、光学条件受付部30は、光学条件20を受け付ける。光学条件受付部30は、光学条件20をストレージ19に出力する。光学条件20は、ストレージ19に格納される。光学条件20は、ネットワークコントローラ16を介して、ホログラフィック光学系設計装置1の外部からストレージ19に格納されてもよい。光学条件20は、記憶媒体18(図1を参照)に格納されてもよい。
【0045】
図3及び図4を参照して、ホログラフィック光学系モデル21を生成するステップ(ステップS2)は、ホログラフィック光学系モデル生成部31(図2を参照)によって実行される。ステップS2では、ホログラフィック光学系モデル生成部31は、ストレージ19などから光学条件20を読み出す。ホログラフィック光学系モデル生成部31は、光学条件20のうち、複数のホログラフィック光学素子44,45の枚数、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々のサイズ及び入力面41と複数のホログラフィック光学素子44,45と出力面42の配置に従って、コンピュータ(ホログラフィック光学系設計装置1)上で、ホログラフィック光学系モデル21を生成する。ホログラフィック光学系モデル21は、入力面41と、複数のホログラフィック光学素子44,45と、出力面42とを含む。
【0046】
図4に示されるように、複数のホログラフィック光学素子44,45は、互いに軸ずれ配置されている。光50が入力面41から出力面42に向けて複数のホログラフィック光学素子44,45を進むことによって、複数のホログラフィック光学素子44,45においてゼロ次回折光53,55が生成される。ゼロ次回折光53,55が、出力面42に重畳しないように、入力面41と複数のホログラフィック光学素子44,45と出力面42とは配置される。
【0047】
ゼロ次回折光53は、光50がホログラフィック光学素子44に入射することによって生成される。ゼロ次回折光53は、入力面41からホログラフィック光学素子44に延びる光路52をホログラフィック光学素子44からさらに延長した光路を進む。ゼロ次回折光55は、光50がホログラフィック光学素子45に入射することによって生成される。ゼロ次回折光55は、ホログラフィック光学素子44からホログラフィック光学素子45に延びる光路54を、ホログラフィック光学素子45からさらに延長した光路を進む。
【0048】
図3及び図5を参照して、ホログラフィック光学系モデル21の複数のホログラフィック光学素子44,45に初期位相分布を設定するステップ(ステップS3)は、初期位相分布設定部32(図2を参照)によって実行される。ステップS3では、オペレータが入力装置11(図1を参照)を用いて、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々の初期位相分布を、ホログラフィック光学系設計装置1(図1を参照)に入力する。初期位相分布設定部32は、オペレータが入力した初期位相分布を受け付ける。初期位相分布設定部32は、ホログラフィック光学系モデル生成部31によって生成されたホログラフィック光学系モデル21の複数のホログラフィック光学素子44,45の各々に初期位相分布を入力する。こうして、初期位相分布が設定されたホログラフィック光学系モデル21が生成される。
【0049】
初期位相分布設定部32は、光50が入力面41から複数のホログラフィック光学素子44,45を進んで出力面42に出射するように、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々に初期位相分布を設定する。光50が複数のホログラフィック光学素子44,45の各々を進む際に、光50の波面は複数のホログラフィック光学素子44,45の各々の初期位相分布によって変化する。光50は、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々において回折される。光50は、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々における非ゼロ次回折光(例えば、一次回折光など)として、複数のホログラフィック光学素子44,45を進む。
【0050】
複数のホログラフィック光学素子44,45の各々において、光50に対する、初期位相分布の最大位相と初期位相分布の最小位相との間の差は、例えば、2π未満である。そのため、複数のホログラフィック光学素子44,45において、光50からゼロ次回折光53,55が生成される。
【0051】
複数のホログラフィック光学素子44,45の各々における光50の照射領域が広いほど、光50は複数のホログラフィック光学素子44,45の各々のより多くのピクセル44p,45pの影響を受ける。そのため、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々における光50の照射領域が広いほど、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々は、設計された性能をより良く発揮することができる。
【0052】
そこで、ステップS3では、光50が複数のホログラフィック光学素子44,45の各々の広い領域を照射するように、初期位相分布設定部32(図2を参照)は、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々に初期位相分布を設定する。例えば、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々において、光50が複数のホログラフィック光学素子44,45の各々のサイズの80%以上を照射するように、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々の初期位相分布は設定される。より好ましくは、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々において、光50が複数のホログラフィック光学素子44,45の各々のサイズの全体を照射するように、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々の初期位相分布は設定される。
【0053】
具体的には、図6及び図7に示されるように複数のホログラフィック光学素子がサイズにおいて互いに同じである場合、n番目のホログラフィック光学素子Lの初期位相分布Φ(x,y)は、以下の式(1)によって与えられる。Φinは、2π以下の定数を表す。kは、光50の波数を表す。x軸及びy軸は、n番目のホログラフィック光学素子Lの主面を規定し、かつ、互いに直交する軸である。z軸は、x軸及びy軸に直交する軸である。
【数1】
【0054】
θは、式(2)によって与えられる。θx,nは、xz面に垂直な方向から見たときの、n番目のホログラフィック光学素子Lの中心とn+1番目のホログラフィック光学素子Ln+1の中心とを結ぶ光軸57とz軸との間の角度を表す。θx,n-1は、xz面に垂直な方向から見たときの、n―1番目のホログラフィック光学素子Ln-1の中心とn番目のホログラフィック光学素子Lの中心とを結ぶ光軸56とz軸との間の角度を表す。θx,n及びθx,n-1では、z軸に対して時計回りの角度が正の角度であり、z軸に対して反時計回りの角度が負の角度である。例えば、図6では、θx,nは正の角度であり、θx,n-1は負の角度である。
θ=θx,n-θx,n-1 (2)
【0055】
θは、式(3)によって与えられる。θy,nは、yz面に垂直な方向から見たときの、n番目のホログラフィック光学素子Lの中心とn+1番目のホログラフィック光学素子Ln+1の中心とを結ぶ光軸57とz軸との間の角度を表す。θy,n-1は、yz面に垂直な方向から見たときの、n―1番目のホログラフィック光学素子Ln-1の中心とn番目のホログラフィック光学素子Lの中心とを結ぶ光軸56とz軸との間の角度を表す。θy,n及びθy,n-1では、z軸に対して時計回りの角度が正の角度であり、z軸に対して反時計回りの角度が負の角度である。例えば、図7では、θy,nは正の角度であり、θy,n-1は負の角度である。
θ=θy,n-θy,n-1 (3)
【0056】
n番目のホログラフィック光学素子Lは、ホログラフィック光学系モデル21の光路(光50の光路)に沿って見たときに、入力面41から数えてn番目のホログラフィック光学素子を意味する。n=1の場合、n―1番目のホログラフィック光学素子Ln-1は、入力面41に読み替える。また、n番目のホログラフィック光学素子Lが最後のホログラフィック光学素子である場合、n+1番目のホログラフィック光学素子Ln+1は出力面42に読み替える。最後のホログラフィック光学素子は、ホログラフィック光学系モデル21の光路(光50の光路)に沿って見たときに、出力面42に最も近いホログラフィック光学素子を意味する。例えば、図4から図8では、ホログラフィック光学素子44が1番目のホログラフィック光学素子であり、ホログラフィック光学素子45が2番目のホログラフィック光学素子でありかつ最後のホログラフィック光学素子である。
【0057】
図3及び図8から図11を参照して、初期位相分布が設定されたホログラフィック光学系モデル21を機械学習するステップ(ステップS4)は、位相分布機械学習部33によって実施される。ステップS4では、位相分布機械学習部33は、ホログラフィック光学系の機能(例えば、画像伝送、文字認識、データの仕分け、画像のSN比の向上など)をより高い精度で実現することができるように、光50に対して複数のホログラフィック光学素子44,45の位相分布を最適化する。位相分布機械学習部33は、最適化された位相分布を含むホログラフィック光学系モデル21を出力する。
【0058】
光50が複数のホログラフィック光学素子44,45の各々を進む際に、光50の波面は、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々の最適化された位相分布によって変化する。光50は、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々において回折される。光50は、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々における非ゼロ次回折光(例えば、一次回折光など)として、複数のホログラフィック光学素子44,45を進む。
【0059】
複数のホログラフィック光学素子44,45の各々において、光50に対する、最適化された位相分布の最大位相と最適化された位相分布の最小位相との間の差は、例えば、2π未満である。そのため、複数のホログラフィック光学素子44,45において、光50からゼロ次回折光53,55が生成される。
【0060】
ホログラフィック光学系モデル21の機械学習は、例えば、光回折ディープニューラルネットワーク(DNN)と、シフテッド角スペクトル法及びシフトフレネル回折法のような光波の回折計算とを用いて行われる。
【0061】
光回折ディープニューラルネットワーク(DNN)は、入力面41と複数のホログラフィック光学素子44,45と出力面42とにおける光50の回折と、入力面41と複数のホログラフィック光学素子44,45のうち入力面41に最も近いホログラフィック光学素子(図4から図6では、ホログラフィック光学素子44)との間の光50の伝搬と、複数のホログラフィック光学素子44,45間の光50の伝搬と、出力面42と複数のホログラフィック光学素子44,45のうち出力面42に最も近いホログラフィック光学素子(図4から図6では、ホログラフィック光学素子45)との間の光50の伝搬とを、ディープニューラルネットワークにおける重み乗算及びバイアス加算を利用して表現したものである。光回折ディープニューラルネットワーク(DNN)は、例えば、非特許文献1に開示されている。
【0062】
本実施の形態において実施される光波の回折計算は、軸ずれ配置された光学層(例えば、入力面41と複数のホログラフィック光学素子44,45と出力面42)間の光波の回折計算である。シフテッド角スペクトル法は、例えば、K.Matsushima, 「Shifted angular spectrum method for off-axis numerical propagation」, Optics Express, 2010, Vol.18 No.17, pp.18453-18463に開示されている。シフトフレネル回折法は、例えば、Richard P. Muffoletto, John M. Tyler, and Joel E. Tohline, 「Shifted Fresnel diffraction for computational holography」, Optics Express, 2007, Vol.15 No.9, pp.5631-5640に開示されている。
【0063】
図9を参照して、位相分布機械学習部33における処理内容を説明する。
【0064】
位相分布機械学習部33は、位相分布最適化モジュール61を含む。位相分布最適化モジュール61は、初期位相が設定されたホログラフィック光学系モデル21の複数のホログラフィック光学素子44,45の位相分布を最適化することによって、最適化された位相分布を含むホログラフィック光学系モデル21を生成する。
【0065】
位相分布最適化モジュール61は、訓練データセット24を用いて、複数のホログラフィック光学素子44,45の位相分布を最適化する。具体的には、位相分布最適化モジュール61は、訓練データセット24に含まれる複数の訓練データ24aのうちの一つの訓練データ24aを選択する。位相分布最適化モジュール61は、選択された訓練データ24aに含まれる入力訓練データ24bを、ホログラフィック光学系モデル21の入力面41に入力する。ホログラフィック光学系モデル21の出力面42に、複素振幅分布が出力される。位相分布最適化モジュール61は、複素振幅分布と出力訓練データ24cとの間の誤差を算出する。
【0066】
位相分布最適化モジュール61は、誤差が減少するように、複数のホログラフィック光学素子44,45の位相分布を更新(最適化)する。位相分布最適化モジュール61が複数のホログラフィック光学素子44,45の位相分布を更新(最適化)するに当たって、任意の最適化アルゴリズムが用いられ得る。最適化アルゴリズムとして、例えば、SGD(Stochastic Gradient Descent:確率的勾配降下法)、Momentum SGD(慣性項付加SGD)、AdaGrad、RMSprop、AdaDeltaまたはAdam(Adaptive moment estimation)などの勾配法が用いられ得る。
【0067】
同様にして、位相分布最適化モジュール61は、訓練データセット24に含まれる各訓練データ24aに基づいて、ホログラフィック光学系モデル21の複数のホログラフィック光学素子44,45の位相分布を繰り返し最適化する。こうして、位相分布最適化モジュール61は、最適化された位相分布を含むホログラフィック光学系モデル21を生成する。
【0068】
位相分布機械学習部33は、最適化された位相分布を含むホログラフィック光学系モデル21を、例えば、ストレージ19(図1を参照)に出力する。最適化された位相分布を含むホログラフィック光学系モデル21は、ストレージ19に格納される。最適化された位相分布を含むホログラフィック光学系モデル21は、記憶媒体18(図1を参照)に出力されてもよい。
【0069】
図10を参照して、初期位相分布が設定されたホログラフィック光学系モデル21を機械学習するステップ(ステップS4)の一例を説明する。
【0070】
図10を参照して、ステップS5において、オペレータは、入力装置11(図1を参照)を用いて、エポック数をホログラフィック光学系設計装置1に入力する。エポック数は、機械学習の繰り返し回数であり、ストレージ19に格納される。
【0071】
ステップS6において、複数のホログラフィック光学素子44,45の位相分布を最適化する。ステップS7において、位相分布機械学習部33は、ストレージ19に格納されているエポック数を読み出す。位相分布機械学習部33は、ステップS6の繰り返し回数がエポック数に達したかを判定する。ステップS6の繰り返し回数がエポック数に達していない場合には、ステップS6の繰り返し回数がエポック数に達するまで、ステップS6を繰り返し実施する。
【0072】
ステップS6の繰り返し回数がエポック数に達すると、位相分布機械学習部33は、ホログラフィック光学系モデル21の機械学習を終了する。位相分布機械学習部33は、最適化された位相分布を含むホログラフィック光学系モデル21を生成する。位相分布機械学習部33は、最適化された位相分布を含むホログラフィック光学系モデル21を、例えば、ストレージ19(図1を参照)に出力する。最適化された位相分布を含むホログラフィック光学系モデル21は、ストレージ19に格納される。最適化された位相分布を含むホログラフィック光学系モデル21は、記憶媒体18(図1を参照)に出力されてもよい。
【0073】
図11を参照して、複数のホログラフィック光学素子44,45の位相分布を最適化するステップ(ステップS6)の一例を説明する。
【0074】
ステップS10では、ストレージ19に格納されている訓練データセット24から、一つの訓練データ24aを選択する。より具体的には、訓練データセット24から、後述するステップS12からステップS17が実行されていない一つの訓練データ24aを選択する。図9に示されるように、訓練データ24aの各々は、入力訓練データ24bと、入力訓練データ24bに対応する出力訓練データ24cとを含む。ステップS11では、ステップS10において選択された訓練データ24aの入力訓練データ24bを、入力面41における複素振幅分布に変換して、入力面41に入力する。
【0075】
ステップS12では、シフテッド角スペクトル法及びシフトフレネル回折法のような光波の回折計算によって、n-1番目のホログラフィック光学素子から光50が出射する際の光50の複素振幅分布とn-1番目のホログラフィック光学素子に対するn番目のホログラフィック光学素子の配置とから、n番目のホログラフィック光学素子に光50が入射する際の光50の複素振幅分布を算出する。n=1の場合、n―1番目のホログラフィック光学素子は入力面41に読み替えられて、ステップS1において受け付けた光学条件20のうち、入力面41に対する1番目のホログラフィック光学素子の配置が用いられる。
【0076】
光波の回折計算としてシフト角スペクトル法を用いる場合には、n番目のホログラフィック光学素子に光50が入射する際の光50の複素振幅分布G(x-x,y-y,z)は、n-1番目のホログラフィック光学素子から光50が出射する際の光50の複素振幅分布g(x,y,0)から、以下の式(4)によって算出される。式(4)におけるH(u,v,x,y,z)は、式(5)によって与えられる。(x,y,z)は、n-1番目のホログラフィック光学素子の座標を表す。λは、ステップS1において受け付けられた光50の波長を表す。(x,y)は、n番目のホログラフィック光学素子の座標を表す。(u,v)は、(x,y)に対応したフーリエ周波数を表す。FTは、フーリエ変換を表す。FT-1は、逆フーリエ変換を表す。
【数2】
【数3】
【0077】
ステップS13では、n番目のホログラフィック光学素子から光50が出射する際の光50の複素振幅分布を算出する。以下の式(6)に示されるように、n番目のホログラフィック光学素子から光50が出射する際の光50の複素振幅分布G’(x,y)は、n番目のホログラフィック光学素子に光50が入射する際の光50の複素振幅分布G(x,y)と、n番目のホログラフィック光学素子の位相分布Φ(x,y)との積として与えられる。式(6)では、n番目のホログラフィック光学素子のz軸方向の座標を0としている。
【数4】
【0078】
ステップS14では、n番目のホログラフィック光学素子が最後のホログラフィック光学素子であるかを判断する。最後のホログラフィック光学素子は、ホログラフィック光学系モデル21の光路(光50の光路)に沿って見たときに、出力面42に最も近いホログラフィック光学素子を意味する。例えば、図4から図8に示されるホログラフィック光学系では、ホログラフィック光学素子45が最後のホログラフィック光学素子である。
【0079】
n番目のホログラフィック光学素子が最後のホログラフィック光学素子でない場合、n+1番目のホログラフィック光学素子について、ステップS12及びステップS13を実行する。ステップS12では、ステップS1において受け付けた光学条件20のうち、n番目のホログラフィック光学素子に対するn+1番目のホログラフィック光学素子の配置が用いられる。
【0080】
n番目のホログラフィック光学素子が最後のホログラフィック光学素子である場合、ステップS15に進む。ステップS15では、シフテッド角スペクトル法及びシフトフレネル回折法のような光波の回折計算によって、最後のホログラフィック光学素子から光50が出射する際の光50の複素振幅分布と最後のホログラフィック光学素子に対する出力面42の配置とから、出力面42における光50の複素振幅分布を算出する。ステップS15では、ステップS1において受け付けた光学条件20のうち、最後のホログラフィック光学素子に対する出力面42の配置が用いられる。
【0081】
ステップS16では、ステップS15において算出された出力面42における光50の複素振幅分布と、ステップS10において選択された訓練データ24aの出力訓練データ24cとの間の誤差を算出する。例えば、ステップS10において選択された訓練データ24aの出力訓練データ24cを、出力面42における複素振幅分布に変換する。ステップS15において算出された出力面42における光50の複素振幅分布と、ステップS10において選択された訓練データ24aの出力訓練データ24cの出力面42における複素振幅分布との間の誤差を算出する。
【0082】
ステップS17では、ステップS16において算出された誤差が減少するように、複数のホログラフィック光学素子44,45の位相分布を更新(最適化)する。複数のホログラフィック光学素子44,45の位相分布の最適化アルゴリズムとして、例えば、SGD(Stochastic Gradient Descent:確率的勾配降下法)、Momentum SGD(慣性項付加SGD)、AdaGrad、RMSprop、AdaDeltaまたはAdam(Adaptive moment estimation)などの勾配法が用いられ得る。
【0083】
ステップS18では、複数のホログラフィック光学素子44,45の位相分布の更新(最適化)のために、全ての訓練データ24aを利用したかを判断する。全ての訓練データ24aを利用していない場合には、ステップS10に戻って未利用の訓練データ24aの一つを新たに選択し、新たに選択された訓練データ24aに対してステップS11からステップS17が実行される。複数のホログラフィック光学素子44,45の位相分布の更新(最適化)のために全ての訓練データ24aを利用した場合には、ホログラフィック光学系モデル21の複数のホログラフィック光学素子44,45の位相分布を最適化するステップ(ステップS6)を終了する。
【0084】
(変形例)
【0085】
図12から図14に示されるように、複数のホログラフィック光学素子44,45,46,47の枚数は、2つに限られず、3つ以上であってもよい。複数のホログラフィック光学素子44,45,46,47は、折り返し光路を形成する複数の反射型ホログラフィック光学素子を含んでもよい。
【0086】
例えば、図12に示される本実施の形態の第1変形例では、複数のホログラフィック光学素子44,45,46,47は、透過型ホログラフィック光学素子であるホログラフィック光学素子44,47と、反射型ホログラフィック光学素子であるホログラフィック光学素子45,46とを含む。図13に示される本実施の形態の第2変形例では、複数のホログラフィック光学素子44,45,46,47は、透過型ホログラフィック光学素子であるホログラフィック光学素子44と、反射型ホログラフィック光学素子であるホログラフィック光学素子45,46,47とを含む。図14に示される本実施の形態の第3変形例では、複数のホログラフィック光学素子44,45,46,47は、全て反射型ホログラフィック光学素子である。
【0087】
図15及び図16に示されるように、本実施の形態の第4変形例では、複数のホログラフィック光学素子は、サイズにおいて互いに異なっていてもよい。例えば、図15及び図16に示されるように、入力面41から出力面42に向かうにつれてホログラフィック光学素子のサイズが次第に大きくなる場合、光50が複数のホログラフィック光学素子の各々の広い領域を照射するように、n番目のホログラフィック光学素子Lの初期位相分布Φ(x,y)は、例えば、以下の式(7)によって与えられる。式(7)では、n番目のホログラフィック光学素子Lのz軸方向の座標を0としている。
【数5】
【0088】
Ψ(x,y)は、n番目のホログラフィック光学素子Lから光50が出射する際の光50の位相分布を表し、この光50は、n+1番目のホログラフィック光学素子Ln+1の広い領域を照射する。Ψn-1(x,y)は、n番目のホログラフィック光学素子Lに光50が入射する際の光50の位相分布を表し、この光50は、n番目のホログラフィック光学素子Lの広い領域を照射する。Ψ(x,y)は、以下の式(8)に示されるように、x軸方向の成分Ψx,n(x,y)とy軸方向の成分Ψy,n(x,y)に分解される。Ψn-1(x,y)は、以下の式(9)に示されるように、x軸方向の成分Ψx,n-1(x,y)とy軸方向の成分Ψy,n-1(x,y)に分解される。
【数6】
【数7】
【0089】
図15に示されるように、n番目のホログラフィック光学素子Lのx軸方向の開口端とn+1番目のホログラフィック光学素子Ln+1のx軸方向の開口端とを結ぶ直線63a,63bの交点を点OXとし、点OXの座標を(xOX,0,zOX)とする。n番目のホログラフィック光学素子Lのx軸方向の開口端とn―1番目のホログラフィック光学素子Ln-1のx軸方向の開口端とを結ぶ直線64a,64bの交点を点PXとし、点PXの座標を(xPX,0,zPX)とする。図16に示されるように、n番目のホログラフィック光学素子Lのy軸方向の開口端とn+1番目のホログラフィック光学素子Ln+1のy軸方向の開口端とを結ぶ直線65a,65bの交点を点OYとし、点OYの座標を(0,yOY,zOY)とする。n番目のホログラフィック光学素子Lのy軸方向の開口端とn―1番目のホログラフィック光学素子Ln-1のy軸方向の開口端とを結ぶ直線66a,66bの交点を点PYとし、点PYの座標を(0,yPY,zPY)とする。
【0090】
式(8)のΨx,n(x,y)及びΨy,n(x,y)並びに式(9)のΨx,n-1(x,y)及びΨy,n-1(x,y)は、以下の式(10)から式(13)によって与えられる。Φx,n,in、Φy,n,in、Φx,n―1,in、及びΦy,n―1,inは、各々、2π以下の定数を表す。
【数8】
【数9】
【数10】
【数11】
【0091】
<ホログラフィック光学系設計プログラム60>
【0092】
ホログラフィック光学系設計プログラム60(図1を参照)は、本実施の形態のホログラフィック光学系の設計方法をプロセッサ12(図1を参照)に実行させる。本実施の形態のコンピュータ読み取り可能な記録媒体(非一過的なコンピュータ可読記録媒体、例えば記憶媒体18)は、ホログラフィック光学系設計プログラム60のようなプログラムが記録されてもよい。
【0093】
本実施の形態のホログラフィック光学系の設計方法及びホログラフィック光学系設計プログラム60の効果を説明する。
【0094】
本実施の形態のホログラフィック光学系モデル21を用いたホログラフィック光学系の設計方法において、ホログラフィック光学系モデル21は、入力面41と、光学的に直列配置されている複数のホログラフィック光学素子44,45と、出力面42とを含む。本実施の形態のホログラフィック光学系の設計方法は、複数のホログラフィック光学素子44,45の枚数、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々のサイズ、入力面41と複数のホログラフィック光学素子44,45と出力面42の配置、並びに、複数のホログラフィック光学素子44,45を進む光50の波長を含む光学条件20を受け付けるステップ(ステップS1)と、光学条件20のうち、複数のホログラフィック光学素子の枚数、複数のホログラフィック光学素子の各々のサイズ、及び、入力面と複数のホログラフィック光学素子と出力面の配置を満たすホログラフィック光学系モデル21を生成するステップ(ステップS2)とを備える。光50が入力面41から出力面42に向けて複数のホログラフィック光学素子44,45を進むことによって複数のホログラフィック光学素子44,45において生成されるゼロ次回折光53,55が、出力面42に重畳しないように、入力面41と複数のホログラフィック光学素子44,45と出力面42とは配置される。本実施の形態のホログラフィック光学系の設計方法は、光50が入力面41から複数のホログラフィック光学素子44,45を進んで出力面42に出射するように、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々に初期位相分布を設定するステップ(ステップS3)と、光50に対して複数のホログラフィック光学素子44,45の各々の位相分布を最適化することによって、初期位相分布が設定されたホログラフィック光学系モデル21を機械学習するステップ(ステップS4)とを備える。
【0095】
本実施の形態のホログラフィック光学系の設計方法では、光50が入力面41から出力面42に向けて複数のホログラフィック光学素子44,45を進むことによって複数のホログラフィック光学素子44,45において生成されるゼロ次回折光53,55が、出力面42に重畳しないように、入力面41と複数のホログラフィック光学素子44,45と出力面42とは配置される。そのため、出力面42にゼロ次回折光53,55が重畳することが防止されたホログラフィック光学系を設計することができる。また、本実施の形態のホログラフィック光学系の設計方法では、光50が入力面41から複数のホログラフィック光学素子44,45を進んで出力面42に出射するように、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々に初期位相分布を設定する。そのため、ホログラフィック光学系の機能をより高い精度で実現することができる。入力面41から複数のホログラフィック光学素子44,45を進んで出力面42に至る光50の光路を実現することができる複数のホログラフィック光学素子44,45の最適化された位相分布を、より確実に、より少ない計算量で、かつ、より短時間で、得ることができる。出力面42にゼロ次回折光53,55が重畳することが防止されたホログラフィック光学系が、より効率的に設計され得る。
【0096】
本実施の形態のホログラフィック光学系の設計方法は、ホログラフィック光学系モデル21を機械学習するステップ(ステップS4)を備えている。そのため、ホログラフィック光学系の光学的機能を向上または拡張させるためにホログラフィック光学素子の数を増加させても、計算量の著しい増加が抑制され得る。ホログラフィック光学系の設計において、光50を波面として扱うとともに、ホログラフィック光学系における光50の回折現象をより正確に反映させることが可能になる。ホログラフィック光学系を、より正確にかつより短時間でシミュレーションすることができる。
【0097】
本実施の形態のホログラフィック光学系の設計方法では、複数のホログラフィック光学素子44,45は、第1のサイズを有する第1ホログラフィック光学素子(例えば、ホログラフィック光学素子44)と、第1のサイズとは異なる第2のサイズを有する第2ホログラフィック光学素子(例えば、ホログラフィック光学素子45)とを含む。複数のホログラフィック光学素子44,45の各々に初期位相分布を設定するステップでは、光50が第1のサイズの80%以上と第2のサイズの80%以上とを照射するように、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々に初期位相分布を設定する。
【0098】
そのため、光50の波面は、複数のホログラフィック光学素子44,45の多くのピクセル44p,45pの影響を受ける。複数のホログラフィック光学素子44,45は、光50に対して、設計された性能をより良く発揮することができる。より高い性能を有するホログラフィック光学系が、より効率的に設計され得る。
【0099】
本実施の形態のホログラフィック光学系の設計方法では、複数のホログラフィック光学素子44,45は、折り返し光路を形成する複数の反射型ホログラフィック光学素子を含む。そのため、コンパクトなホログラフィック光学系が、より効率的に設計され得る。
【0100】
本実施の形態のホログラフィック光学系設計プログラム60は、本実施の形態のホログラフィック光学系の設計方法の各ステップをプロセッサ12に実行させる。そのため、出力面42にゼロ次回折光53,55が重畳することを防止されたホログラフィック光学系が、効率的に設計され得る。
【0101】
(実施の形態2)
【0102】
図17及び図18を参照して、実施の形態2のホログラフィック光学系設計装置1を説明する。本実施の形態のホログラフィック光学系設計装置1は、実施の形態1のホログラフィック光学系設計装置1と同様であるが、光50が複数波長成分50a,50b,50cを含むこと(図20から図22を参照)に起因して、主に以下の点で、実施の形態1のホログラフィック光学系設計装置1と異なっている。
【0103】
<ハードウェア構成>
【0104】
図20から図22に示されるように、本実施の形態では、光50は複数波長成分50a,50b,50cを含む。複数波長成分50a,50b,50cの波長は、互いに異なる。本実施の形態の一例では、光50は、3つの波長成分50a,50b,50cを含む。波長成分50aは、例えば、赤色光である。波長成分50bは、例えば、緑色光である。波長成分50cは、例えば、青色光である。
【0105】
図17を参照して、本実施の形態のホログラフィック光学系モデル22は、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々に、複数波長成分50a,50b,50cの各々用の位相分布を与えることが可能な複数波長成分50a,50b,50c用のホログラフィック光学系モデルである。
【0106】
図17を参照して、本実施の形態では、訓練データセット24(図1を参照)に代えて、訓練データセット25がストレージ19に格納されている。本実施の形態の訓練データセット25は、複数波長成分50a,50b,50c用の訓練データセットであり、複数の訓練データ25a(図23を参照)を含む。複数の訓練データ25aの各々は、入力訓練データ25b(図23を参照)と、入力訓練データ25bに対応する出力訓練データ25c(図23を参照)とを含む。入力訓練データ25b及び出力訓練データ25cは、各々、複数波長成分50a,50b,50cを含む。入力訓練データ25b及び出力訓練データ25cは、例えば、カラー画像である。
【0107】
<機能構成>
【0108】
図18を参照して、光学条件受付部30は、ホログラフィック光学系設計装置1のオペレータなどから、光学条件20を受け付ける。本実施の形態では、光学条件受付部30は、光50の波長として、複数波長成分50a,50b,50cの波長を受け付ける。複数波長成分50a,50b,50cの波長は、互いに異なる。
【0109】
図18を参照して、ホログラフィック光学系モデル生成部31は、実施の形態1と同様にして、ホログラフィック光学系モデル22を生成する。ホログラフィック光学系モデル22は、複数波長成分50a,50b,50c用のホログラフィック光学系モデルである。図20に示されるように、複数波長成分50a,50b,50cが入力面41から出力面42に向けて複数のホログラフィック光学素子44,45を進むことによって、複数のホログラフィック光学素子44,45においてゼロ次回折光53,55が生成される。ゼロ次回折光53,55が出力面42に重畳しないように、入力面41と複数のホログラフィック光学素子44,45と出力面42とは配置される。
【0110】
本実施の形態では、ゼロ次回折光53は、ゼロ次回折光53aと、ゼロ次回折光53bと、ゼロ次回折光53cとを含む。ゼロ次回折光53aは、波長成分50aが入力面41から出力面42に向けてホログラフィック光学素子44を進むことによってホログラフィック光学素子44において生成される。ゼロ次回折光53bは、波長成分50bが入力面41から出力面42に向けてホログラフィック光学素子44を進むことによってホログラフィック光学素子44において生成される。ゼロ次回折光53cは、波長成分50cが入力面41から出力面42に向けてホログラフィック光学素子44を進むことによってホログラフィック光学素子44において生成される。
【0111】
本実施の形態では、ゼロ次回折光55は、ゼロ次回折光55aと、ゼロ次回折光55bと、ゼロ次回折光55cとを含む。ゼロ次回折光55aは、波長成分50aが入力面41から出力面42に向けてホログラフィック光学素子45を進むことによってホログラフィック光学素子45において生成される。ゼロ次回折光55bは、波長成分50bが入力面41から出力面42に向けてホログラフィック光学素子45を進むことによってホログラフィック光学素子45において生成される。ゼロ次回折光55cは、波長成分50cが入力面41から出力面42に向けてホログラフィック光学素子45を進むことによってホログラフィック光学素子45において生成される。
【0112】
図18を参照して、初期位相分布設定部32は、ホログラフィック光学系モデル生成部31によって生成されたホログラフィック光学系モデル22から、初期位相分布が設定されたホログラフィック光学系モデル22を生成する。例えば、オペレータが、入力装置11(図17を参照)を用いて、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々の初期位相分布を、ホログラフィック光学系設計装置1(図17を参照)に入力する。初期位相分布設定部32は、オペレータが入力した初期位相分布を受け付ける。初期位相分布設定部32は、ホログラフィック光学系モデル生成部31によって生成されたホログラフィック光学系モデル22の複数のホログラフィック光学素子44,45の各々に初期位相分布を設定する。こうして、初期位相分布設定部32は、初期位相分布が設定されたホログラフィック光学系モデル22を生成する。
【0113】
初期位相分布設定部32は、複数波長成分50a,50b,50cが入力面41から複数のホログラフィック光学素子44,45を進んで出力面42に出射するように、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々に初期位相分布を設定する。複数波長成分50a,50b,50cが複数のホログラフィック光学素子44,45を進む際に、複数波長成分50a,50b,50cの各々の波面は、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々の複数波長成分50a,50b,50cの各々用の初期位相分布によって変化する。複数波長成分50a,50b,50cの各々は、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々において回折される。
【0114】
具体的には、波長成分50aが複数のホログラフィック光学素子44,45を進む際に、波長成分50aの波面は、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々の波長成分50a用の初期位相分布によって変化する。波長成分50aは、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々において回折される。波長成分50bが複数のホログラフィック光学素子44,45を進む際に、波長成分50bの波面は、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々の波長成分50b用の初期位相分布によって変化する。波長成分50bは、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々において回折される。波長成分50cが複数のホログラフィック光学素子44,45を進む際に、波長成分50cの波面は、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々の波長成分50c用の初期位相分布によって変化する。波長成分50cは、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々において回折される。
【0115】
複数波長成分50a,50b,50cの各々は、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々における非ゼロ次回折光(例えば、一次回折光など)として、複数のホログラフィック光学素子44,45を進む。初期位相分布設定部32は、初期位相分布が設定されたホログラフィック光学系モデル22を出力する。
【0116】
複数のホログラフィック光学素子44,45の各々において、複数波長成分50a,50b,50cの各々に対する、初期位相分布の最大位相と初期位相分布の最小位相との間の差は、例えば、2π未満である。そのため、複数のホログラフィック光学素子44,45において、複数波長成分50a,50b,50cからゼロ次回折光53,55が生成される。ゼロ次回折光53は、ゼロ次回折光53aと、ゼロ次回折光53bと、ゼロ次回折光53cとを含む。ゼロ次回折光55は、ゼロ次回折光55aと、ゼロ次回折光55bと、ゼロ次回折光55cとを含む。
【0117】
複数のホログラフィック光学素子44,45の各々における複数波長成分50a,50b,50cの各々の照射領域が広いほど、複数波長成分50a,50b,50cの各々は複数のホログラフィック光学素子44,45の各々のより多くのピクセル44p,45pの影響を受ける。そのため、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々における複数波長成分50a,50b,50cの各々の照射領域が広いほど、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々は、設計された性能をより良く発揮することができる。
【0118】
そこで、複数波長成分50a,50b,50cの各々が複数のホログラフィック光学素子44,45の各々の広い領域を照射するように、初期位相分布設定部32(図18を参照)は、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々に初期位相分布を設定する。例えば、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々において、複数波長成分50a,50b,50cの各々が複数のホログラフィック光学素子44,45の各々のサイズの80%以上を照射するように、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々の初期位相分布は設定される。より好ましくは、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々において、複数波長成分50a,50b,50cの各々が複数のホログラフィック光学素子44,45の各々のサイズの全体を照射するように、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々の初期位相分布は設定される。
【0119】
図18を参照して、位相分布機械学習部33は、初期位相分布が設定されたホログラフィック光学系モデル22を機械学習する。位相分布機械学習部33は、ホログラフィック光学系の機能をより高い精度で実現することができるように、複数波長成分50a,50b,50cの各々に対して複数のホログラフィック光学素子44,45の各々の位相分布を機械学習により最適化する。位相分布機械学習部33は、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々に、複数波長成分50a,50b,50cの各々用の最適化された位相分布を与える。
【0120】
複数波長成分50a,50b,50cが複数のホログラフィック光学素子44,45を進む際に、複数波長成分50a,50b,50cの各々の波面は、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々の複数波長成分50a,50b,50cの各々用の最適化された位相分布によって変化する。複数波長成分50a,50b,50cの各々は、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々において回折される。
【0121】
具体的には、波長成分50aが複数のホログラフィック光学素子44,45を進む際に、波長成分50aの波面は、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々の波長成分50a用の最適化された位相分布によって変化する。波長成分50aは、複数のホログラフィック光学素子44,45において回折される。波長成分50bが複数のホログラフィック光学素子44,45を進む際に、波長成分50bの波面は、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々の波長成分50b用の最適化された位相分布によって変化する。波長成分50bは、複数のホログラフィック光学素子44,45において回折される。波長成分50cが複数のホログラフィック光学素子44,45を進む際に、波長成分50cの波面は、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々の波長成分50c用の最適化された位相分布によって変化する。波長成分50cは、複数のホログラフィック光学素子44,45において回折される。
【0122】
複数波長成分50a,50b,50cの各々は、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々における非ゼロ次回折光(例えば、一次回折光など)として、複数のホログラフィック光学素子44,45を進む。位相分布機械学習部33は、最適化された位相分布を含むホログラフィック光学系モデル22を出力する。
【0123】
複数のホログラフィック光学素子44,45の各々において、複数波長成分50a,50b,50cの各々に対する、最適化された位相分布の最大位相と最適化された位相分布の最小位相との間の差は、例えば、2π未満である。そのため、複数のホログラフィック光学素子44,45において、複数波長成分50a,50b,50cからゼロ次回折光53,55が生成される。ゼロ次回折光53は、ゼロ次回折光53aと、ゼロ次回折光53bと、ゼロ次回折光53cとを含む。ゼロ次回折光55は、ゼロ次回折光55aと、ゼロ次回折光55bと、ゼロ次回折光55cとを含む。
【0124】
<ホログラフィック光学系の設計方法>
【0125】
図19から図26を参照して、本実施の形態のホログラフィック光学系の設計方法を説明する。本実施の形態のホログラフィック光学系の設計方法は、実施の形態1のホログラフィック光学系の設計方法と同様であるが、光50が複数波長成分50a,50b,50cを含むこと(図20から図22を参照)に起因して、主に以下の点で実施の形態1のホログラフィック光学系の設計方法と異なっている。
【0126】
図19を参照して、本実施の形態のホログラフィック光学系の設計方法は、光学条件20を受け付けるステップ(ステップS21)と、ホログラフィック光学系モデル22を生成するステップ(ステップS22)と、ホログラフィック光学系モデル22の複数のホログラフィック光学素子44,45に初期位相分布を設定するステップ(ステップS23)と、初期位相分布が設定されたホログラフィック光学系モデル22を機械学習するステップ(ステップS24)とを含む。
【0127】
図19を参照して、本実施の形態の光学条件20を受け付けるステップ(ステップS21)は、光学条件受付部30(図18を参照)によって実行される。ステップS21は実施の形態1のステップS1(図3を参照)と同様であるが、ステップS21では、光学条件受付部30は、光50の波長として、複数波長成分50a,50b,50cの波長を受け付ける。複数波長成分50a,50b,50cの波長は、互いに異なる。
【0128】
図19及び図20を参照して、本実施の形態のホログラフィック光学系モデル22を生成するステップ(ステップS22)は、ホログラフィック光学系モデル生成部31(図18を参照)によって実行される。ステップS22は実施の形態1のステップS2(図3を参照)と同様であるが、ステップS22では、ホログラフィック光学系モデル生成部31は、光学条件20のうち、複数のホログラフィック光学素子44,45の枚数、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々のサイズ及び入力面41と複数のホログラフィック光学素子44,45と出力面42の配置に従って、コンピュータ(ホログラフィック光学系設計装置1)上で、ホログラフィック光学系モデル22を生成する。ホログラフィック光学系モデル22は、複数波長成分50a,50b,50c用のホログラフィック光学系モデルである。
【0129】
複数波長成分50a,50b,50cが入力面41から出力面42に向けて複数のホログラフィック光学素子44,45を進むことによって、複数のホログラフィック光学素子44,45においてゼロ次回折光53,55が生成される。ゼロ次回折光53,55が出力面42に重畳しないように、入力面41と複数のホログラフィック光学素子44,45と出力面42とは配置される。ゼロ次回折光53は、ゼロ次回折光53aと、ゼロ次回折光53bと、ゼロ次回折光53cとを含む。ゼロ次回折光55は、ゼロ次回折光55aと、ゼロ次回折光55bと、ゼロ次回折光55cとを含む。
【0130】
図19及び図21を参照して、本実施の形態のホログラフィック光学系モデル22の複数のホログラフィック光学素子44,45に初期位相分布を設定するステップ(ステップS23)は、初期位相分布設定部32(図18を参照)によって実行される。本実施の形態のステップS23では、初期位相分布設定部32は、ホログラフィック光学系モデル生成部31によって生成されたホログラフィック光学系モデル22の複数のホログラフィック光学素子44,45の各々に初期位相分布を設定する。
【0131】
具体的には、初期位相分布設定部32は、ホログラフィック光学素子44に、波長成分50a用の初期位相分布と、波長成分50b用の初期位相分布と、波長成分50c用の初期位相分布とを設定する。初期位相分布設定部32は、ホログラフィック光学素子45に、波長成分50a用の初期位相分布と、波長成分50b用の初期位相分布と、波長成分50c用の初期位相分布とを設定する。ホログラフィック光学素子45に設定される波長成分50a用の初期位相分布は、ホログラフィック光学素子44に設定される波長成分50a用の初期位相分布と同じであってもよいし、異なっていてもよい。ホログラフィック光学素子45に設定される波長成分50b用の初期位相分布は、ホログラフィック光学素子44に設定される波長成分50b用の初期位相分布と同じであってもよいし、異なっていてもよい。ホログラフィック光学素子45に設定される波長成分50c用の初期位相分布は、ホログラフィック光学素子44に設定される波長成分50c用の初期位相分布と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0132】
こうして、初期位相分布設定部32は、初期位相分布が設定されたホログラフィック光学系モデル22を生成する。
【0133】
初期位相分布設定部32は、複数波長成分50a,50b,50cが入力面41から複数のホログラフィック光学素子44,45を進んで出力面42に出射するように、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々に初期位相分布を設定する。複数波長成分50a,50b,50cが複数のホログラフィック光学素子44,45を進む際に、複数波長成分50a,50b,50cの各々の波面は、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々の初期位相分布によって変化する。複数波長成分50a,50b,50cは、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々において回折される。
【0134】
具体的には、波長成分50aの波面は、ホログラフィック光学素子44の波長成分50a用の初期位相分布とホログラフィック光学素子45の波長成分50a用の初期位相分布とによって変化する。波長成分50aは、ホログラフィック光学素子44,45において回折される。波長成分50bの波面は、ホログラフィック光学素子44の波長成分50b用の初期位相分布とホログラフィック光学素子45の波長成分50b用の初期位相分布とによって変化する。波長成分50bは、ホログラフィック光学素子44,45において回折される。波長成分50cの波面は、ホログラフィック光学素子44の波長成分50c用の初期位相分布とホログラフィック光学素子45の波長成分50c用の初期位相分布とによって変化する。波長成分50cは、ホログラフィック光学素子44,45において回折される。
【0135】
複数波長成分50a,50b,50cの各々は、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々における非ゼロ次回折光(例えば、一次回折光など)として、複数のホログラフィック光学素子44,45を進む。初期位相分布設定部32は、初期位相分布が設定されたホログラフィック光学系モデル22を出力する。
【0136】
複数のホログラフィック光学素子44,45の各々の初期位相分布において、複数波長成分50a,50b,50cの各々に対する、初期位相分布の最大位相と初期位相分布の最小位相との間の差は、例えば、2π未満である。そのため、複数のホログラフィック光学素子44,45において、複数波長成分50a,50b,50cからゼロ次回折光53,55が生成される。ゼロ次回折光53は、ゼロ次回折光53aと、ゼロ次回折光53bと、ゼロ次回折光53cとを含む。ゼロ次回折光55は、ゼロ次回折光55aと、ゼロ次回折光55bと、ゼロ次回折光55cとを含む。
【0137】
複数のホログラフィック光学素子44,45の各々における複数波長成分50a,50b,50cの各々の照射領域が広いほど、複数波長成分50a,50b,50cの各々は複数のホログラフィック光学素子44,45の各々のより多くのピクセル44p,45pの影響を受ける。そのため、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々における複数波長成分50a,50b,50cの各々の照射領域が広いほど、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々は、設計された性能をより良く発揮することができる。
【0138】
そこで、複数波長成分50a,50b,50cの各々が複数のホログラフィック光学素子44,45の各々の広い領域を照射するように、初期位相分布設定部32(図18を参照)は、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々に初期位相分布を設定する。例えば、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々において、複数波長成分50a,50b,50cの各々が複数のホログラフィック光学素子44,45の各々のサイズの80%以上を照射するように、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々の初期位相分布は設定される。より好ましくは、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々において、複数波長成分50a,50b,50cの各々が複数のホログラフィック光学素子44,45の各々のサイズの全体を照射するように、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々の初期位相分布は設定される。
【0139】
図19及び図22から図26を参照して、本実施の形態の初期位相分布が設定されたホログラフィック光学系モデル22を機械学習するステップ(ステップS24)は、位相分布機械学習部33(図18を参照)によって実行される。ステップS24では、位相分布機械学習部33は、ホログラフィック光学系の機能をより高い精度で実現することができるように、複数のホログラフィック光学素子44,45の位相分布を最適化する。位相分布機械学習部33は、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々に、複数波長成分50a,50b,50cの各々用の最適化された位相分布を与える。
【0140】
複数のホログラフィック光学素子44,45の各々の位相分布は、複数波長成分50a,50b,50cの各々に応じて最適化される。すなわち、ホログラフィック光学素子44の最適化された位相分布は、波長成分50a用の最適化された位相分布と、波長成分50b用の最適化された位相分布と、波長成分50c用の最適化された位相分布とを含む。ホログラフィック光学素子45の最適化された位相分布は、波長成分50a用の最適化された位相分布と、波長成分50b用の最適化された位相分布と、波長成分50c用の最適化された位相分布とを含む。
【0141】
複数波長成分50a,50b,50cが複数のホログラフィック光学素子44,45を進む際に、複数波長成分50a,50b,50cの各々の波面は、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々の複数波長成分50a,50b,50cの各々用の最適化された位相分布によって変化する。複数波長成分50a,50b,50cの各々は、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々において回折される。
【0142】
具体的には、波長成分50aの波面は、ホログラフィック光学素子44の波長成分50a用の最適化された位相分布とホログラフィック光学素子45の波長成分50a用の最適化された位相分布とによって変化する。波長成分50aは、ホログラフィック光学素子44,45において回折される。波長成分50bの波面は、ホログラフィック光学素子44の波長成分50b用の最適化された位相分布とホログラフィック光学素子45の波長成分50b用の最適化された位相分布とによって変化する。波長成分50bは、ホログラフィック光学素子44,45において回折される。波長成分50cの波面は、ホログラフィック光学素子44の波長成分50c用の最適化された位相分布とホログラフィック光学素子45の波長成分50c用の最適化された位相分布とによって変化する。波長成分50cは、ホログラフィック光学素子44,45において回折される。
【0143】
複数波長成分50a,50b,50cの各々は、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々における非ゼロ次回折光(例えば、一次回折光など)として、複数のホログラフィック光学素子44,45を進む。位相分布機械学習部33は、最適化された位相分布を含むホログラフィック光学系モデル22を出力する。
【0144】
複数のホログラフィック光学素子44,45の各々において、複数波長成分50a,50b,50cの各々に対する、最適化された位相分布の最大位相と最適化された位相分布の最小位相との間の差は、例えば、2π未満である。そのため、複数のホログラフィック光学素子44,45において、複数波長成分50a,50b,50cからゼロ次回折光53,55が生成される。ゼロ次回折光53は、ゼロ次回折光53aと、ゼロ次回折光53bと、ゼロ次回折光53cとを含む。ゼロ次回折光55は、ゼロ次回折光55aと、ゼロ次回折光55bと、ゼロ次回折光55cとを含む。
【0145】
ホログラフィック光学系モデル22の機械学習は、実施の形態1のホログラフィック光学系モデル21の機械学習と同様に、例えば、光回折ディープニューラルネットワーク(DNN)と、シフテッド角スペクトル法及びシフトフレネル回折法のような光波の回折計算とを用いて行われる。
【0146】
図23を参照して、本実施の形態の位相分布機械学習部33における処理内容を説明する。位相分布機械学習部33は、波長成分抽出部71,72,73と、位相分布最適化モジュール61とを含む。
【0147】
波長成分抽出部71は、訓練データ25aから、波長成分50a用の訓練データ25aを抽出する。具体的には、波長成分抽出部71は、訓練データ25aのうち入力訓練データ25bから、波長成分50a用の入力訓練データ25bを抽出する。波長成分50a用の入力訓練データ25bは、入力訓練データ25bのうち、波長成分50aと同じ波長を有するデータである。波長成分抽出部71は、訓練データ25aのうち出力訓練データ25cから、波長成分50a用の出力訓練データ25cを抽出する。波長成分50a用の出力訓練データ25cは、出力訓練データ25cのうち、波長成分50aと同じ波長を有するデータである。
【0148】
波長成分抽出部72は、訓練データ25aから、波長成分50b用の訓練データ25aを抽出する。具体的には、波長成分抽出部72は、訓練データ25aのうち入力訓練データ25bから、波長成分50b用の入力訓練データ25bを抽出する。波長成分50b用の入力訓練データ25bは、入力訓練データ25bのうち、波長成分50bと同じ波長を有するデータである。波長成分抽出部72は、訓練データ25aのうち出力訓練データ25cから、波長成分50b用の出力訓練データ25cを抽出する。波長成分50b用の出力訓練データ25cは、出力訓練データ25cのうち、波長成分50bと同じ波長を有するデータである。
【0149】
波長成分抽出部73は、訓練データ25aから、波長成分50c用の訓練データ25aを抽出する。具体的には、波長成分抽出部73は、訓練データ25aのうち入力訓練データ25bから、波長成分50c用の入力訓練データ25bを抽出する。波長成分50c用の入力訓練データ25bは、入力訓練データ25bのうち、波長成分50cと同じ波長を有するデータである。波長成分抽出部73は、訓練データ25aのうち出力訓練データ25cから、波長成分50c用の出力訓練データ25cを抽出する。波長成分50c用の出力訓練データ25cは、出力訓練データ25cのうち、波長成分50cと同じ波長を有するデータである。
【0150】
位相分布最適化モジュール61は、初期位相が設定されたホログラフィック光学系モデル22の複数のホログラフィック光学素子44,45の位相分布を、訓練データセット25を用いて、最適化する。
【0151】
具体的には、位相分布最適化モジュール61は、訓練データセット25に含まれる複数の訓練データ25aのうち一つの訓練データ25aを選択する。位相分布最適化モジュール61は、選択された訓練データ25aに含まれかつ波長成分抽出部71,72,73によって抽出された複数波長成分50a,50b,50cの各々用の入力訓練データ25bを、ホログラフィック光学系モデル22の入力面41に入力する。ホログラフィック光学系モデル22の出力面42に、複数波長成分50a,50b,50cの各々の複素振幅分布が出力される。位相分布最適化モジュール61は、選択された訓練データ25aの入力訓練データ25bから生成される出力面42における複数波長成分50a,50b,50cの各々の複素振幅分布と選択された訓練データ25aの複数波長成分50a,50b,50cの各々の出力訓練データ25cとの間の誤差を算出する。
【0152】
例えば、位相分布最適化モジュール61は、選択された訓練データ25aに含まれる波長成分50a用の入力訓練データ25bから生成される出力面42における波長成分50aの複素振幅分布と選択された訓練データ25aに含まれる波長成分50a用の出力訓練データ25cとの間の誤差を算出する。位相分布最適化モジュール61は、選択された訓練データ25aに含まれる波長成分50b用の入力訓練データ25bから生成される出力面42における波長成分50bの複素振幅分布と選択された訓練データ25aに含まれる波長成分50b用の出力訓練データ25cとの間の誤差を算出する。位相分布最適化モジュール61は、選択された訓練データ25aに含まれる波長成分50c用の入力訓練データ25bから生成される出力面42における波長成分50cの複素振幅分布と選択された訓練データ25aに含まれる波長成分50c用の出力訓練データ25cとの間の誤差を算出する。
【0153】
位相分布最適化モジュール61は、誤差が減少するように、複数のホログラフィック光学素子44,45の位相分布を更新(最適化)する。位相分布最適化モジュール61が複数のホログラフィック光学素子44,45の位相分布を更新(最適化)するに当たって、任意の最適化アルゴリズムが用いられ得る。最適化アルゴリズムとして、例えば、SGD(Stochastic Gradient Descent:確率的勾配降下法)、Momentum SGD(慣性項付加SGD)、AdaGrad、RMSprop、AdaDeltaまたはAdam(Adaptive moment estimation)などの勾配法が用いられ得る。
【0154】
同様にして、位相分布最適化モジュール61は、訓練データセット25に含まれる各訓練データ25a(入力訓練データ25b、出力訓練データ25c)に基づいて、ホログラフィック光学系モデル22の複数のホログラフィック光学素子44,45の位相分布を繰り返し最適化する。
【0155】
位相分布機械学習部33は、最適化された位相分布を含む複数波長成分50a,50b,50c用のホログラフィック光学系モデル22を、例えば、ストレージ19(図17を参照)に出力する。最適化された位相分布を含むホログラフィック光学系モデル22は、ストレージ19に格納される。最適化された位相分布を含むホログラフィック光学系モデル22は、記憶媒体18(図17を参照)に出力されてもよい。
【0156】
図24を参照して、初期位相分布が設定されたホログラフィック光学系モデル22を機械学習するステップ(ステップS24)の一例を説明する。本実施の形態のステップS24は、実施の形態1のステップS4と同様であるが、光50が複数波長成分50a,50b,50cを含むこと(図20から図22を参照)に起因して、複数のホログラフィック光学素子44,45の位相分布を最適化するステップ(ステップS25)において、実施の形態1のステップS4と異なっている。図25及び図26を参照して、ステップS25の一例を説明する。
【0157】
図25を参照して、ステップS27では、ストレージ19に格納されている訓練データセット25から、一つの訓練データ25aを選択する。より具体的には、訓練データセット25から、後述するステップS28からステップS36が実行されていない一つの訓練データ25aを選択する。本実施の形態では、訓練データセット25は、複数波長成分50a,50b,50c用の訓練データセットであり、複数の訓練データ25a(図23を参照)を含む。複数の訓練データ25aの各々は、入力訓練データ25b(図23を参照)と、入力訓練データ25bに対応する出力訓練データ25c(図23を参照)とを含む。入力訓練データ25b及び出力訓練データ25cは、各々、複数波長成分50a,50b,50cを含む。
【0158】
ステップS28では、波長成分抽出部71,72,73は、ステップS27において選択された訓練データ25aから、複数波長成分50a,50b,50cの各々用の訓練データ25aを抽出する。具体的には、波長成分抽出部71は、選択された訓練データ25aから、波長成分50a用の訓練データ25aを抽出する。波長成分抽出部72は、選択された訓練データ25aから、波長成分50b用の訓練データ25aを抽出する。波長成分抽出部73は、選択された訓練データ25aから、波長成分50c用の訓練データ25aを抽出する。
【0159】
より具体的には、波長成分抽出部71は、ステップS27において選択された訓練データ25aのうち入力訓練データ25bから、波長成分50a用の入力訓練データ25bを抽出する。波長成分抽出部71は、ステップS27において選択された訓練データ25aのうち出力訓練データ25cから、波長成分50a用の出力訓練データ25cを抽出する。波長成分抽出部72は、ステップS27において選択された訓練データ25aのうち入力訓練データ25bから、波長成分50b用の入力訓練データ25bを抽出する。波長成分抽出部72は、ステップS27において選択された訓練データ25aのうち出力訓練データ25cから、波長成分50b用の出力訓練データ25cを抽出する。波長成分抽出部73は、ステップS27において選択された訓練データ25aのうち入力訓練データ25bから、波長成分50c用の入力訓練データ25bを抽出する。波長成分抽出部73は、ステップS27において選択された訓練データ25aのうち出力訓練データ25cから、波長成分50c用の出力訓練データ25cを抽出する。
【0160】
ステップS29では、ステップS28において抽出された複数波長成分50a,50b,50cの各々用の入力訓練データ25bを、入力面41に入力する。例えば、波長成分50a用の入力訓練データ25bと波長成分50b用の入力訓練データ25bと波長成分50c用の入力訓練データ25bとを、入力面41における複素振幅分布に変換して、入力面41に入力する。
【0161】
ステップS30では、シフテッド角スペクトル法及びシフトフレネル回折法のような光波の回折計算によって、n-1番目のホログラフィック光学素子から複数波長成分50a,50b,50cの各々が出射する際の複数波長成分50a,50b,50cの各々の複素振幅分布とn-1番目のホログラフィック光学素子に対するn番目のホログラフィック光学素子の配置とから、n番目のホログラフィック光学素子に複数波長成分50a,50b,50cの各々が入射する際の複数波長成分50a,50b,50cの各々の複素振幅分布を算出する。n=1の場合、n―1番目のホログラフィック光学素子は入力面41に読み替えられ、かつ、ステップS21において受け付けた光学条件20のうち、入力面41に対する1番目のホログラフィック光学素子の配置が用いられる。
【0162】
ステップS31では、n番目のホログラフィック光学素子から複数波長成分50a,50b,50cの各々が出射する際の複数波長成分50a,50b,50cの各々の複素振幅分布を算出する。n番目のホログラフィック光学素子から複数波長成分50a,50b,50cの各々が出射する際の複数波長成分50a,50b,50cの各々の複素振幅分布は、n番目のホログラフィック光学素子に複数波長成分50a,50b,50cの各々が入射する際の複数波長成分50a,50b,50cの各々の複素振幅分布と、n番目のホログラフィック光学素子の複数波長成分50a,50b,50cの各々用の位相分布との積として与えられる。
【0163】
ステップS32では、n番目のホログラフィック光学素子が最後のホログラフィック光学素子であるかを判断する。最後のホログラフィック光学素子は、ホログラフィック光学系モデル22の光路(光50の光路)に沿って見たときに、出力面42に最も近いホログラフィック光学素子を意味する。例えば、図20から図22に示されるホログラフィック光学系では、ホログラフィック光学素子45が最後のホログラフィック光学素子である。
【0164】
n番目のホログラフィック光学素子が最後のホログラフィック光学素子でない場合、n+1番目のホログラフィック光学素子について、ステップS30及びステップS31を実行する。ステップS30では、ステップS21において受け付けた光学条件20のうち、n番目のホログラフィック光学素子に対するn+1番目のホログラフィック光学素子の配置が用いられる。
【0165】
n番目のホログラフィック光学素子が最後のホログラフィック光学素子である場合、ステップS33に進む。ステップS33では、シフテッド角スペクトル法及びシフトフレネル回折法のような光波の回折計算によって、最後のホログラフィック光学素子から複数波長成分50a,50b,50cの各々が出射する際の光50の複素振幅分布と、ステップS1において受け付けた光学条件20のうち最後のホログラフィック光学素子に対する出力面42の配置とから、出力面42における複数波長成分50a,50b,50cの各々の複素振幅分布を算出する。
【0166】
ステップS34では、ステップS28において抽出された複数波長成分50a,50b,50cの各々用の出力訓練データ25cを、位相分布最適化モジュール61に入力する。具体的には、ステップS27において選択された訓練データ25aに含まれる出力訓練データ25cから抽出された波長成分50a用の出力訓練データ25c、波長成分50b用の出力訓練データ25c及び波長成分50c用の出力訓練データ25cを、出力面42における複素振幅分布に変換して、位相分布最適化モジュール61に入力する。
【0167】
ステップS35では、ステップS33において算出された出力面42における複数波長成分50a,50b,50cの各々の複素振幅分布と、ステップS34において位相分布最適化モジュール61に入力された複数波長成分50a,50b,50cの各々用の出力訓練データ25cとの間の誤差を算出する。具体的には、出力面42における波長成分50aの複素振幅分布と波長成分50a用の出力訓練データ25cとの間の誤差と、出力面42における波長成分50bの複素振幅分布と波長成分50b用の出力訓練データ25cとの間の誤差と、出力面42における波長成分50cの複素振幅分布と波長成分50c用の出力訓練データ25cとの間の誤差とを算出する。
【0168】
ステップS36では、複数波長成分50a,50b,50cの各々についてステップS35において算出された誤差が減少するように、複数のホログラフィック光学素子44,45の位相分布を更新(最適化)する。複数のホログラフィック光学素子44,45の位相分布の最適化アルゴリズムとして、例えば、SGD(Stochastic Gradient Descent:確率的勾配降下法)、Momentum SGD(慣性項付加SGD)、AdaGrad、RMSprop、AdaDeltaまたはAdam(Adaptive moment estimation)などの勾配法が用いられ得る。
【0169】
ステップS37では、複数のホログラフィック光学素子44,45の位相分布の更新(最適化)のために、全ての訓練データ25aを利用したかを判断する。全ての訓練データ25aを利用していない場合には、ステップS27に戻って未利用の訓練データ25aの一つを選択し、新たに選択された訓練データ25aに対してステップS28からステップS36が実行される。複数のホログラフィック光学素子44,45の位相分布の更新(最適化)のために全ての訓練データ25aを利用した場合には、ホログラフィック光学系モデル22の複数のホログラフィック光学素子44,45の位相分布を最適化するステップ(ステップS25)を終了する。
【0170】
位相分布機械学習部33は、最適化された位相分布を含む複数波長成分50a,50b,50c用のホログラフィック光学系モデル22を、例えば、ストレージ19(図17を参照)に出力する。最適化された位相分布を含む複数波長成分50a,50b,50c用のホログラフィック光学系モデル22は、ストレージ19に格納される。最適化された位相分布を含む複数波長成分50a,50b,50c用のホログラフィック光学系モデル22は、記憶媒体18(図17を参照)に出力されてもよい。
【0171】
<ホログラフィック光学系設計プログラム60>
【0172】
ホログラフィック光学系設計プログラム60(図17を参照)は、本実施の形態のホログラフィック光学系の設計方法をプロセッサ12(図17を参照)に実行させる。本実施の形態のコンピュータ読み取り可能な記録媒体(非一過的なコンピュータ可読記録媒体、例えば記憶媒体18)は、ホログラフィック光学系設計プログラム60のようなプログラムが記録されてもよい。
【0173】
(変形例)
【0174】
光50は、2つの波長成分を含んでもよいし、4つ以上の波長成分を含んでもよい。
【0175】
本実施の形態のホログラフィック光学系の設計方法及びホログラフィック光学系設計プログラム60は、実施の形態1のホログラフィック光学系の設計方法及びホログラフィック光学系設計プログラム60の効果に加えて、以下の効果を奏する。
【0176】
本実施の形態のホログラフィック光学系の設計方法では、光50は、互いに異なる波長を有する複数波長成分50a,50b,50cを含む。
【0177】
そのため、出力面42にゼロ次回折光53,55が重畳することが防止された複数波長成分50a,50b,50c用のホログラフィック光学系を効率的に設計することができる。
【0178】
本実施の形態のホログラフィック光学系の設計方法では、ホログラフィック光学系モデル22の複数のホログラフィック光学素子44,45に初期位相分布を設定するステップ(ステップS23)では、複数波長成分50a,50b,50cの各々が入力面41から複数のホログラフィック光学素子44,45を進んで出力面42に出射するように、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々に複数波長成分50a,50b,50cの各々用の初期位相分布を設定する。初期位相分布が設定されたホログラフィック光学系モデル22を機械学習するステップ(ステップS24)では、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々の複数波長成分50a,50b,50cの各々用の位相分布を機械学習により最適化する。
【0179】
そのため、複数波長成分50a,50b,50c用のホログラフィック光学系の機能をより高い精度で実現することができる。入力面41から複数のホログラフィック光学素子44,45を進んで出力面42に至る複数波長成分50a,50b,50cの光路を実現することができる複数のホログラフィック光学素子44,45の最適化された位相分布を、より確実に、より少ない計算量で、かつ、より短時間で、得ることができる。出力面42にゼロ次回折光53,55が重畳することが防止された複数波長成分50a,50b,50c用のホログラフィック光学系が、より効率的に設計され得る。
【0180】
本実施の形態のホログラフィック光学系設計プログラム60は、本実施の形態のホログラフィック光学系の設計方法の各ステップをプロセッサ12に実行させる。そのため、出力面42にゼロ次回折光53,55が重畳することが防止された複数波長成分50a,50b,50c用のホログラフィック光学系を効率的に設計することができる。
【0181】
(実施の形態3)
【0182】
図27及び図28を参照して、実施の形態3のホログラフィック光学系設計装置1を説明する。本実施の形態のホログラフィック光学系設計装置1は、実施の形態2のホログラフィック光学系設計装置1と同様であるが、主に以下の点で、実施の形態2のホログラフィック光学系設計装置1と異なっている。
【0183】
<ハードウェア構成>
【0184】
図27を参照して、本実施の形態では、光学条件20、ホログラフィック光学系モデル22、訓練データセット25及びホログラフィック光学系設計プログラム60に加えて、複数のホログラフィック光学系サブモデル23a,23b,23cと訓練データセット26,27,28とが、ストレージ19に格納されている。
【0185】
複数のホログラフィック光学系サブモデル23a,23b,23cは、コンピュータ(ホログラフィック光学系設計装置1)上で生成される。図30から図32に示されるように、複数のホログラフィック光学系サブモデル23a,23b,23cの各々は、入力面41と、複数のホログラフィック光学素子44,45と、出力面42とを含む。複数のホログラフィック光学系サブモデル23a,23b,23cの各々は、単一波長成分用のホログラフィック光学系サブモデルであり、複数波長成分50a,50b,50cのうちの一つの波長成分に対応している。
【0186】
具体的には、ホログラフィック光学系サブモデル23aは、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々に波長成分50a用の位相分布を与えることが可能な波長成分50a用のホログラフィック光学系サブモデルである。ホログラフィック光学系サブモデル23bは、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々に波長成分50b用の位相分布を与えることが可能な波長成分50b用のホログラフィック光学系サブモデルである。ホログラフィック光学系サブモデル23cは、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々に波長成分50c用の位相分布を与えることが可能な波長成分50c用のホログラフィック光学系サブモデルである。
【0187】
図27を参照して、本実施の形態の訓練データセット25は、実施の形態2の訓練データセット25と同じである。訓練データセット26,27,28の各々は、複数のホログラフィック光学系サブモデル23a,23b,23cのうちの対応するホログラフィック光学系サブモデルを訓練するために用いられる。具体的には、訓練データセット26は、波長成分50a用の訓練データセットであり、波長成分50a用のホログラフィック光学系サブモデル23aを訓練するために用いられる。訓練データセット27は、波長成分50b用の訓練データセットであり、波長成分50b用のホログラフィック光学系サブモデル23bを訓練するために用いられる。訓練データセット28は、波長成分50c用の訓練データセットであり、波長成分50c用のホログラフィック光学系サブモデル23cを訓練するために用いられる。
【0188】
図30に示されるように、訓練データセット26は、複数の訓練データ26aを含む。複数の訓練データ26aの各々は、入力訓練データ26bと、入力訓練データ26bに対応する出力訓練データ26cとを含む。入力訓練データ26b及び出力訓練データ26cは、波長成分50aで形成されている。入力訓練データ26b及び出力訓練データ26cは、例えば、赤色画像である。
【0189】
図31に示されるように、訓練データセット27は、複数の訓練データ27aを含む。複数の訓練データ27aの各々は、入力訓練データ27bと、入力訓練データ27bに対応する出力訓練データ27cとを含む。入力訓練データ27b及び出力訓練データ27cは、波長成分50bで形成されている。入力訓練データ27b及び出力訓練データ27cは、例えば、緑色画像である。
【0190】
図32に示されるように、訓練データセット28は、複数の訓練データ28aを含む。複数の訓練データ28aの各々は、入力訓練データ28bと、入力訓練データ28bに対応する出力訓練データ28cとを含む。入力訓練データ28b及び出力訓練データ28cは、波長成分50cで形成されている。入力訓練データ28b及び出力訓練データ28cは、例えば、青色画像である。
【0191】
<機能構成>
【0192】
図28を参照して、本実施の形態のホログラフィック光学系設計装置1は、ホログラフィック光学系サブモデル生成部35と、ホログラフィック光学系サブモデル選択部36と、サブモデル機械学習終了判定部37とをさらに備える。
【0193】
ホログラフィック光学系サブモデル生成部35は、光学条件20のうち、複数のホログラフィック光学素子44,45の枚数、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々のサイズ及び入力面41と複数のホログラフィック光学素子44,45と出力面42の配置に従って、コンピュータ(ホログラフィック光学系設計装置1)上で、ホログラフィック光学系サブモデル23a,23b,23cを生成する。
【0194】
ホログラフィック光学系サブモデル23a,23b,23cの各々は、実施の形態1のホログラフィック光学系モデル21と同様に、単一波長成分用のホログラフィック光学系サブモデルである。具体的には、ホログラフィック光学系サブモデル23aは、波長成分50a用のホログラフィック光学系サブモデルである。ホログラフィック光学系サブモデル23bは、波長成分50b用のホログラフィック光学系サブモデルである。ホログラフィック光学系サブモデル23cは、波長成分50c用のホログラフィック光学系サブモデルである。
【0195】
ホログラフィック光学系サブモデル23aでは、波長成分50aが入力面41から出力面42に向けて複数のホログラフィック光学素子44,45を進むことによって、複数のホログラフィック光学素子44,45においてゼロ次回折光が生成される。このゼロ次回折光が出力面42に重畳しないように、ホログラフィック光学系サブモデル23aの入力面41と複数のホログラフィック光学素子44,45と出力面42とは配置される。
【0196】
ホログラフィック光学系サブモデル23bでは、波長成分50bが入力面41から出力面42に向けて複数のホログラフィック光学素子44,45を進むことによって、複数のホログラフィック光学素子44,45においてゼロ次回折光が生成される。このゼロ次回折光が出力面42に重畳しないように、ホログラフィック光学系サブモデル23bの入力面41と複数のホログラフィック光学素子44,45と出力面42とは配置される。
【0197】
ホログラフィック光学系サブモデル23cでは、波長成分50cが入力面41から出力面42に向けて複数のホログラフィック光学素子44,45を進むことによって、複数のホログラフィック光学素子44,45においてゼロ次回折光が生成される。このゼロ次回折光が出力面42に重畳しないように、ホログラフィック光学系サブモデル23cの入力面41と複数のホログラフィック光学素子44,45と出力面42とは配置される。
【0198】
図28を参照して、ホログラフィック光学系サブモデル選択部36は、複数のホログラフィック光学系サブモデル23a,23b,23cのうちの一つを選択する。より具体的には、ホログラフィック光学系サブモデル選択部36は、複数のホログラフィック光学系サブモデル23a,23b,23cのうち、位相分布機械学習部33による機械学習がまだ実行されていない一つのホログラフィック光学系サブモデルを選択する。
【0199】
図28を参照して、初期位相分布設定部32は、実施の形態2と同様に、ホログラフィック光学系モデル生成部31によって生成されたホログラフィック光学系モデル22から、初期位相分布が設定されたホログラフィック光学系モデル22を生成する。初期位相分布設定部32は、さらに、ホログラフィック光学系サブモデル選択部36によって選択されたホログラフィック光学系サブモデルから、初期位相分布が設定されたホログラフィック光学系サブモデルを生成する。
【0200】
具体的には、オペレータが、入力装置11(図27を参照)を用いて、複数波長成分50a,50b,50cの各々用の初期位相分布を、ホログラフィック光学系設計装置1(図27を参照)に入力する。初期位相分布設定部32は、複数波長成分50a,50b,50cの各々用の初期位相分布を受け付ける。初期位相分布設定部32は、ホログラフィック光学系サブモデル選択部36によって選択されたホログラフィック光学系サブモデルの複数のホログラフィック光学素子44,45の各々に、ホログラフィック光学系サブモデル選択部36によって選択されたホログラフィック光学系サブモデルに対応する波長成分用の初期位相分布を設定する。こうして、初期位相分布設定部32は、初期位相分布が設定されたホログラフィック光学系サブモデル23a,23b,23cの各々を生成する。
【0201】
例えば、ホログラフィック光学系サブモデル選択部36がホログラフィック光学系サブモデル23aを選択する場合、初期位相分布設定部32は、波長成分50aがホログラフィック光学系サブモデル23aの入力面41からホログラフィック光学系サブモデル23aの複数のホログラフィック光学素子44,45を進んでホログラフィック光学系サブモデル23aの出力面42に出射するように、ホログラフィック光学系サブモデル23aの複数のホログラフィック光学素子44,45の各々に波長成分50a用の初期位相分布を設定する。波長成分50aは、ホログラフィック光学系サブモデル23aの複数のホログラフィック光学素子44,45の各々における非ゼロ次回折光(例えば、一次回折光など)として、ホログラフィック光学系サブモデル23aの複数のホログラフィック光学素子44,45を進む。
【0202】
ホログラフィック光学系サブモデル選択部36がホログラフィック光学系サブモデル23bを選択する場合、初期位相分布設定部32は、波長成分50bがホログラフィック光学系サブモデル23bの入力面41からホログラフィック光学系サブモデル23bの複数のホログラフィック光学素子44,45を進んでホログラフィック光学系サブモデル23bの出力面42に出射するように、ホログラフィック光学系サブモデル23bの複数のホログラフィック光学素子44,45の各々に波長成分50b用の初期位相分布を設定する。波長成分50bは、ホログラフィック光学系サブモデル23bの複数のホログラフィック光学素子44,45の各々における非ゼロ次回折光(例えば、一次回折光など)として、ホログラフィック光学系サブモデル23bの複数のホログラフィック光学素子44,45を進む。
【0203】
ホログラフィック光学系サブモデル選択部36がホログラフィック光学系サブモデル23cを選択する場合、初期位相分布設定部32は、波長成分50cがホログラフィック光学系サブモデル23cの入力面41からホログラフィック光学系サブモデル23cの複数のホログラフィック光学素子44,45を進んでホログラフィック光学系サブモデル23cの出力面42に出射するように、ホログラフィック光学系サブモデル23cの複数のホログラフィック光学素子44,45の各々に波長成分50c用の初期位相分布を設定する。波長成分50cは、ホログラフィック光学系サブモデル23cの複数のホログラフィック光学素子44,45の各々における非ゼロ次回折光(例えば、一次回折光など)として、ホログラフィック光学系サブモデル23cの複数のホログラフィック光学素子44,45を進む。
【0204】
ホログラフィック光学系サブモデル選択部36によって選択されたホログラフィック光学系サブモデルの複数のホログラフィック光学素子44,45の各々において、ホログラフィック光学系サブモデル選択部36によって選択されたホログラフィック光学系サブモデルに対応する波長成分に対する、初期位相分布の最大位相と初期位相分布の最小位相との間の差は、例えば、2π未満である。そのため、ホログラフィック光学系サブモデル選択部36によって選択されたホログラフィック光学系サブモデルの複数のホログラフィック光学素子44,45において、ホログラフィック光学系サブモデル選択部36によって選択されたホログラフィック光学系サブモデルに対応する波長成分からゼロ次回折光が生成される。
【0205】
図28を参照して、位相分布機械学習部33は、ホログラフィック光学系サブモデル選択部36によって選択されかつ初期位相分布が設定されたホログラフィック光学系サブモデルを機械学習する。位相分布機械学習部33は、ホログラフィック光学系の機能をより高い精度で実現することができるように、ホログラフィック光学系サブモデル選択部36によって選択されかつ初期位相分布が設定されたホログラフィック光学系サブモデルの複数のホログラフィック光学素子44,45の位相分布を機械学習により最適化する。
【0206】
ホログラフィック光学系サブモデル選択部36がホログラフィック光学系サブモデル23aを選択する場合、位相分布機械学習部33は、ホログラフィック光学系サブモデル23aの複数のホログラフィック光学素子44,45の各々に、波長成分50a用の最適化された位相分布を与える。こうして、位相分布機械学習部33は、最適化された位相分布を含む波長成分50a用のホログラフィック光学系サブモデル23aを出力する。
【0207】
ホログラフィック光学系サブモデル選択部36がホログラフィック光学系サブモデル23bを選択する場合、位相分布機械学習部33は、ホログラフィック光学系サブモデル23bの複数のホログラフィック光学素子44,45の各々に、波長成分50b用の最適化された位相分布を与える。こうして、位相分布機械学習部33は、最適化された位相分布を含む波長成分50b用のホログラフィック光学系サブモデル23bを出力する。
【0208】
ホログラフィック光学系サブモデル選択部36がホログラフィック光学系サブモデル23cを選択する場合、位相分布機械学習部33は、ホログラフィック光学系サブモデル23cの複数のホログラフィック光学素子44,45の各々に、波長成分50c用の最適化された位相分布を与える。こうして、位相分布機械学習部33は、最適化された位相分布を含む波長成分50c用のホログラフィック光学系サブモデル23cを出力する。
【0209】
ホログラフィック光学系サブモデル選択部36によって選択されたホログラフィック光学系サブモデルの複数のホログラフィック光学素子44,45の各々において、ホログラフィック光学系サブモデル選択部36によって選択されたホログラフィック光学系サブモデルに対応する波長成分に対する、最適化された位相分布の最大位相と最適化された位相分布の最小位相との間の差は、例えば、2π未満である。そのため、ホログラフィック光学系サブモデル選択部36によって選択されたホログラフィック光学系サブモデルの複数のホログラフィック光学素子44,45において、ホログラフィック光学系サブモデル選択部36によって選択されたホログラフィック光学系サブモデルに対応する波長成分からゼロ次回折光が生成される。
【0210】
図28を参照して、サブモデル機械学習終了判定部37は、位相分布機械学習部33によって複数のホログラフィック光学系サブモデル23a,23b,23cの全ての機械学習が終了したか否かを判定する。
【0211】
図28を参照して、本実施の形態では、ホログラフィック光学系モデル生成部31は、複数のホログラフィック光学系サブモデル23a,23b,23cから、ホログラフィック光学系モデル22を生成する。例えば、ホログラフィック光学系モデル生成部31は、位相分布機械学習部33によって機械学習された複数のホログラフィック光学系サブモデル23a,23b,23cを統合することによって、ホログラフィック光学系モデル22を生成する。
【0212】
<ホログラフィック光学系の設計方法>
【0213】
図29を参照して、本実施の形態のホログラフィック光学系の設計方法を説明する。本実施の形態のホログラフィック光学系の設計方法は、実施の形態2のホログラフィック光学系の設計方法と同様であるが、以下の点で実施の形態2のホログラフィック光学系の設計方法と異なっている。
【0214】
図29を参照して、本実施の形態のホログラフィック光学系の設計方法は、実施の形態2のステップS21、ステップS22及びステップS24(図19を参照)に加えて、複数のホログラフィック光学系サブモデル23a,23b,23cを生成するステップ(ステップS40)と、複数のホログラフィック光学系サブモデル23a,23b,23cの一つを選択するステップ(ステップS41)と、ステップS41において選択されたホログラフィック光学系サブモデルの複数のホログラフィック光学素子44,45に初期位相分布を設定するステップ(ステップS42)と、ステップS41において選択されかつ初期位相分布が設定されたホログラフィック光学系サブモデルを機械学習するステップ(ステップS43)と、複数のホログラフィック光学系サブモデル23a,23b,23cの全ての機械学習が終了したかを判断するステップ(ステップS44)とをさらに含む。ステップS40からステップS44は、ステップS21とステップS22との間に実行される。
【0215】
図29から図32を参照して、本実施の形態のホログラフィック光学系サブモデル23a,23b,23cを生成するステップ(ステップS40)は、ホログラフィック光学系サブモデル生成部35(図28を参照)によって実行される。ホログラフィック光学系サブモデル23a,23b,23cの各々を生成するステップ(ステップS40)は、実施の形態1のホログラフィック光学系モデル21を生成するステップ(ステップS2)と同様である。
【0216】
具体的には、ステップS40では、ホログラフィック光学系サブモデル生成部35は、ステップS21において受け付けた光学条件20のうち、複数のホログラフィック光学素子44,45の枚数、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々のサイズ及び入力面41と複数のホログラフィック光学素子44,45と出力面42の配置に従って、コンピュータ(ホログラフィック光学系設計装置1)上で、波長成分50a用のホログラフィック光学系サブモデル23aと、波長成分50b用のホログラフィック光学系サブモデル23bと、波長成分50c用のホログラフィック光学系サブモデル23cとを生成する。
【0217】
ホログラフィック光学系サブモデル23aでは、波長成分50aが入力面41から出力面42に向けて複数のホログラフィック光学素子44,45を進むことによって、複数のホログラフィック光学素子44,45においてゼロ次回折光が生成される。このゼロ次回折光が出力面42に重畳しないように、ホログラフィック光学系サブモデル23aの入力面41と複数のホログラフィック光学素子44,45と出力面42とは配置される。
【0218】
ホログラフィック光学系サブモデル23bでは、波長成分50bが入力面41から出力面42に向けて複数のホログラフィック光学素子44,45を進むことによって、複数のホログラフィック光学素子44,45においてゼロ次回折光が生成される。このゼロ次回折光が出力面42に重畳しないように、ホログラフィック光学系サブモデル23bの入力面41と複数のホログラフィック光学素子44,45と出力面42とは配置される。
【0219】
ホログラフィック光学系サブモデル23cでは、波長成分50cが入力面41から出力面42に向けて複数のホログラフィック光学素子44,45を進むことによって、複数のホログラフィック光学素子44,45においてゼロ次回折光が生成される。このゼロ次回折光が出力面42に重畳しないように、ホログラフィック光学系サブモデル23cの入力面41と複数のホログラフィック光学素子44,45と出力面42とは配置される。
【0220】
ステップS40において生成された複数のホログラフィック光学系サブモデル23a,23b,23cのうち一つのホログラフィック光学系サブモデルを選択するステップ(ステップS41)は、ホログラフィック光学系サブモデル選択部36(図28を参照)によって実行される。具体的には、ホログラフィック光学系サブモデル選択部36は、複数のホログラフィック光学系サブモデル23a,23b,23cのうち、後述するステップS42及びステップS43がまだ実行されていないホログラフィック光学系サブモデルを一つ選択する。
【0221】
ステップS41において選択されたホログラフィック光学系サブモデルの複数のホログラフィック光学素子44,45に初期位相分布を設定するステップ(ステップS42)は、初期位相分布設定部32(図28を参照)によって実行される。本実施の形態のステップS42は、実施の形態1のステップS3と同様であるが、本実施の形態のステップS42における初期位相分布は、ホログラフィック光学系サブモデル選択部36によって選択されたホログラフィック光学系サブモデルに対応する波長成分用の初期位相分布である。
【0222】
具体的には、ステップS42では、オペレータが入力装置11(図27を参照)を用いて、複数波長成分50a,50b,50cの各々用の初期位相分布を、ホログラフィック光学系設計装置1(図27を参照)に入力する。初期位相分布設定部32は、複数波長成分50a,50b,50cの各々用の初期位相分布を受け付ける。初期位相分布設定部32は、ホログラフィック光学系サブモデル選択部36によって選択されたホログラフィック光学系サブモデルの複数のホログラフィック光学素子44,45の各々に、ホログラフィック光学系サブモデル選択部36によって選択されたホログラフィック光学系サブモデルに対応する波長成分用の初期位相分布を設定する。こうして、初期位相分布設定部32は、ステップS41において選択されかつ初期位相分布が設定されたホログラフィック光学系サブモデルを生成する。
【0223】
例えば、ステップS41においてホログラフィック光学系サブモデル選択部36がホログラフィック光学系サブモデル23aを選択する場合、初期位相分布設定部32は、波長成分50aがホログラフィック光学系サブモデル23aの入力面41からホログラフィック光学系サブモデル23aの複数のホログラフィック光学素子44,45を進んでホログラフィック光学系サブモデル23aの出力面42に出射するように、ホログラフィック光学系サブモデル23aの複数のホログラフィック光学素子44,45の各々に波長成分50a用の初期位相分布を設定する。波長成分50aは、ホログラフィック光学系サブモデル23aの複数のホログラフィック光学素子44,45の各々における非ゼロ次回折光(例えば、一次回折光など)として、ホログラフィック光学系サブモデル23aの複数のホログラフィック光学素子44,45を進む。
【0224】
ステップS41においてホログラフィック光学系サブモデル選択部36がホログラフィック光学系サブモデル23bを選択する場合、初期位相分布設定部32は、波長成分50bがホログラフィック光学系サブモデル23bの入力面41からホログラフィック光学系サブモデル23bの複数のホログラフィック光学素子44,45を進んでホログラフィック光学系サブモデル23bの出力面42に出射するように、ホログラフィック光学系サブモデル23bの複数のホログラフィック光学素子44,45の各々に波長成分50b用の初期位相分布を設定する。波長成分50bは、ホログラフィック光学系サブモデル23bの複数のホログラフィック光学素子44,45の各々における非ゼロ次回折光(例えば、一次回折光など)として、ホログラフィック光学系サブモデル23bの複数のホログラフィック光学素子44,45を進む。
【0225】
ステップS41においてホログラフィック光学系サブモデル選択部36がホログラフィック光学系サブモデル23cを選択する場合、初期位相分布設定部32は、波長成分50cがホログラフィック光学系サブモデル23cの入力面41からホログラフィック光学系サブモデル23cの複数のホログラフィック光学素子44,45を進んでホログラフィック光学系サブモデル23cの出力面42に出射するように、ホログラフィック光学系サブモデル23cの複数のホログラフィック光学素子44,45の各々に波長成分50c用の初期位相分布を設定する。波長成分50cは、ホログラフィック光学系サブモデル23cの複数のホログラフィック光学素子44,45の各々における非ゼロ次回折光(例えば、一次回折光など)として、ホログラフィック光学系サブモデル23cの複数のホログラフィック光学素子44,45を進む。
【0226】
ステップS41において選択されたホログラフィック光学系サブモデルの複数のホログラフィック光学素子44,45の各々において、ステップS41において選択されたホログラフィック光学系サブモデルに対応する波長成分に対する、初期位相分布の最大位相と初期位相分布の最小位相との間の差は、例えば、2π未満である。そのため、ステップS41において選択されたホログラフィック光学系サブモデルの複数のホログラフィック光学素子44,45において、ステップS41において選択されたホログラフィック光学系サブモデルに対応する波長成分からゼロ次回折光が生成される。
【0227】
ステップS41において選択されかつ初期位相分布が設定されたホログラフィック光学系サブモデルを機械学習するステップ(ステップS43)は、位相分布機械学習部33(図28を参照)によって実行される。ステップS43では、位相分布機械学習部33は、ホログラフィック光学系の機能をより高い精度で実現することができるように、ステップS41において選択されたホログラフィック光学系サブモデルの複数のホログラフィック光学素子44,45の位相分布を最適化する。位相分布機械学習部33は、最適化された位相分布を含むホログラフィック光学系サブモデルを出力する。
【0228】
ステップS43は、実施の形態1のステップS4と同様であるが、ステップS43では、ステップS41において選択されたホログラフィック光学系サブモデルに対応する波長成分用の訓練データセットを用いて、ステップS41において選択されかつ初期位相分布が設定されたホログラフィック光学系サブモデルを機械学習する。
【0229】
例えば、ステップS41においてホログラフィック光学系サブモデル23aが選択される場合、ステップS43では、波長成分50a用の訓練データセット26(図30を参照)を用いて、ホログラフィック光学系サブモデル23aを機械学習する。具体的には、波長成分50a用の入力訓練データ26bをホログラフィック光学系サブモデル23aの入力面41に入力することによってホログラフィック光学系サブモデル23aの出力面42に生成される波長成分50aの複素振幅分布と、位相分布最適化モジュール61に入力された波長成分50a用の出力訓練データ26cとの間の誤差を算出する。位相分布最適化モジュール61は、この誤差が減少するように、ホログラフィック光学系サブモデル23aの複数のホログラフィック光学素子44,45の位相分布を更新(最適化)する。
【0230】
ステップS41においてホログラフィック光学系サブモデル23bが選択される場合、ステップS43では、波長成分50b用の訓練データセット27(図31を参照)を用いて、ホログラフィック光学系サブモデル23bを機械学習する。具体的には、波長成分50b用の入力訓練データ27bをホログラフィック光学系サブモデル23bの入力面41に入力することによってホログラフィック光学系サブモデル23bの出力面42に生成される波長成分50bの複素振幅分布と、位相分布最適化モジュール61に入力された波長成分50b用の出力訓練データ27cとの間の誤差を算出する。位相分布最適化モジュール61は、この誤差が減少するように、ホログラフィック光学系サブモデル23bの複数のホログラフィック光学素子44,45の位相分布を更新(最適化)する。
【0231】
ステップS41においてホログラフィック光学系サブモデル23cが選択される場合、ステップS43では、波長成分50c用の訓練データセット28(図32を参照)を用いて、ホログラフィック光学系サブモデル23cを機械学習する。具体的には、波長成分50c用の入力訓練データ28bをホログラフィック光学系サブモデル23cの入力面41に入力することによってホログラフィック光学系サブモデル23cの出力面42に生成される波長成分50cの複素振幅分布と、位相分布最適化モジュール61に入力された波長成分50c用の出力訓練データ28cとの間の誤差を算出する。位相分布最適化モジュール61は、この誤差が減少するように、ホログラフィック光学系サブモデル23cの複数のホログラフィック光学素子44,45の位相分布を更新(最適化)する。
【0232】
ステップS41において選択されたホログラフィック光学系サブモデルの複数のホログラフィック光学素子44,45の各々において、ステップS41において選択されたホログラフィック光学系サブモデルに対応する波長成分に対する、最適化された位相分布の最大位相と最適化された位相分布の最小位相との間の差は、例えば、2π未満である。そのため、ステップS41において選択されたホログラフィック光学系サブモデルの複数のホログラフィック光学素子44,45において、ステップS41において選択されたホログラフィック光学系サブモデルに対応する波長成分からゼロ次回折光が生成される。
【0233】
複数のホログラフィック光学系サブモデル23a,23b,23cの全ての機械学習が終了したかを判断するステップ(ステップS44)は、サブモデル機械学習終了判定部37(図28を参照)によって実行される。複数のホログラフィック光学系サブモデル23a,23b,23cの全ての機械学習が終了していない場合には、ステップS41に戻って、複数のホログラフィック光学系サブモデル23a,23b,23cのうち未だ機械学習されていないホログラフィック光学系サブモデルを一つ新たに選択し、新たに選択されたホログラフィック光学系サブモデルに対してステップS42及びステップS43を実行する。
【0234】
複数のホログラフィック光学系サブモデル23a,23b,23cの全ての機械学習が終了した場合には、ホログラフィック光学系モデル22を生成するステップ(ステップS22)に進む。本実施の形態のステップS22は、ホログラフィック光学系モデル生成部31によって実行される。本実施の形態では、ホログラフィック光学系モデル生成部31は、個別に最適化された位相分布を含むホログラフィック光学系サブモデル23a,23b,23cから、複数波長成分50a,50b,50c用のホログラフィック光学系モデル22を生成する。例えば、ホログラフィック光学系モデル生成部31は、個別に最適化された位相分布を含むホログラフィック光学系サブモデル23a,23b,23cを統合して、複数波長成分50a,50b,50c用のホログラフィック光学系モデル22を生成する。
【0235】
本実施の形態のステップS24は、位相分布機械学習部33によって実行される。本実施の形態のステップS24では、実施の形態2のステップS24と同様に、位相分布機械学習部33は、ホログラフィック光学系の機能をより高い精度で実現することができるように、ステップS22で生成された複数波長成分50a,50b,50c用のホログラフィック光学系モデル22の複数のホログラフィック光学素子44,45の位相分布を最適化する。位相分布機械学習部33は、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々に、複数波長成分50a,50b,50cの各々用の最適化された位相分布を与える。
【0236】
<ホログラフィック光学系設計プログラム60>
【0237】
ホログラフィック光学系設計プログラム60(図27を参照)は、本実施の形態のホログラフィック光学系の設計方法をプロセッサ12(図27を参照)に実行させる。本実施の形態のコンピュータ読み取り可能な記録媒体(非一過的なコンピュータ可読記録媒体、例えば記憶媒体18)は、ホログラフィック光学系設計プログラム60のようなプログラムが記録されてもよい。
【0238】
本実施の形態のホログラフィック光学系の設計方法及びホログラフィック光学系設計プログラム60は、実施の形態2のホログラフィック光学系の設計方法及びホログラフィック光学系設計プログラム60の効果に加えて、以下の効果を奏する。
【0239】
本実施の形態のホログラフィック光学系モデル22を用いたホログラフィック光学系の設計方法において、ホログラフィック光学系モデル22は、入力面41と、光学的に直列配置されている複数のホログラフィック光学素子44,45と、出力面42とを含む。本実施の形態のホログラフィック光学系の設計方法は、複数のホログラフィック光学素子44,45の枚数、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々のサイズ、入力面41と複数のホログラフィック光学素子44,45と出力面42の配置、並びに、複数のホログラフィック光学素子44,45を進む複数波長成分50a,50b,50cの波長を含む光学条件20を受け付けるステップ(ステップS21)を備える。複数波長成分50a,50b,50cの波長は、互いに異なっている。本実施の形態のホログラフィック光学系の設計方法は、複数のホログラフィック光学系サブモデル23a,23b,23cを生成するステップ(ステップS40)を備える。複数のホログラフィック光学系サブモデル23a,23b,23cの各々は、入力面41と複数のホログラフィック光学素子44,45と出力面42とを含む。複数のホログラフィック光学系サブモデル23a,23b,23cの各々は、光学条件20のうち、複数のホログラフィック光学素子44,45の枚数、複数のホログラフィック光学素子44,45の各々のサイズ、及び、入力面41と複数のホログラフィック光学素子44,45と出力面42の配置を満たす。複数のホログラフィック光学系サブモデル23a,23b,23cの各々は、複数波長成分50a,50b,50cのうち対応する波長成分用のホログラフィック光学系サブモデルである。対応する波長成分が複数のホログラフィック光学系サブモデル23a,23b,23cの各々の入力面41から複数のホログラフィック光学系サブモデル23a,23b,23cの各々の出力面42に向けて複数のホログラフィック光学系サブモデル23a,23b,23cの各々の複数のホログラフィック光学素子44,45を進むことによって複数のホログラフィック光学系サブモデル23a,23b,23cの各々の複数のホログラフィック光学素子44,45において生成されるゼロ次回折光が、複数のホログラフィック光学系サブモデル23a,23b,23cの各々の出力面42に重畳しないように、複数のホログラフィック光学系サブモデル23a,23b,23cの各々の入力面41と複数のホログラフィック光学素子44,45と出力面42とは配置される。本実施の形態のホログラフィック光学系の設計方法は、対応する波長成分が複数のホログラフィック光学系サブモデル23a,23b,23cの各々の入力面41から複数のホログラフィック光学系サブモデル23a,23b,23cの各々の複数のホログラフィック光学素子44,45を進んで複数のホログラフィック光学系サブモデル23a,23b,23cの各々の出力面42に出射するように、複数のホログラフィック光学系サブモデル23a,23b,23cの各々の複数のホログラフィック光学素子44,45の各々に、対応する波長成分用の初期位相分布を設定するステップ(ステップS42)と、複数のホログラフィック光学系サブモデル23a,23b,23cの各々の複数のホログラフィック光学素子44,45の各々の、対応する波長成分用の位相分布を最適化することによって、初期位相分布が設定された複数のホログラフィック光学系サブモデル23a,23b,23cの各々を機械学習するステップ(ステップS43)と、機械学習された複数のホログラフィック光学系サブモデル23a,23b,23cからホログラフィック光学系モデル22を生成するステップ(ステップS22)とを備える。複数波長成分50a,50b,50cがホログラフィック光学系モデル22の入力面41からホログラフィック光学系モデル22の出力面42に向けてホログラフィック光学系モデル22の複数のホログラフィック光学素子44,45を進むことによってホログラフィック光学系モデル22の複数のホログラフィック光学素子44,45において生成されるゼロ次回折光が、ホログラフィック光学系モデル22の出力面42に重畳しないように、ホログラフィック光学系モデル22の入力面41と複数のホログラフィック光学素子44,45と出力面42とは配置される。本実施の形態のホログラフィック光学系の設計方法は、複数波長成分50a,50b,50cに対してホログラフィック光学系モデル22の複数のホログラフィック光学素子44,45の各々の位相分布を最適化することによって、ホログラフィック光学系モデルを機械学習するステップ(ステップS24)を備える。
【0240】
複数のホログラフィック光学系サブモデル23a,23b,23cの各々の機械学習に必要なメモリ13(図27を参照)の大きさは、ホログラフィック光学系モデル22の機械学習に必要なメモリ13の大きさよりも少なく済む。また、本実施の形態では、ホログラフィック光学系モデル22は個別に機械学習された複数のホログラフィック光学系サブモデル23a,23b,23cから生成されるため、ホログラフィック光学系モデル22の機械学習に必要な計算量は減少する。そのため、出力面42にゼロ次回折光が重畳することが防止されたホログラフィック光学系が、より効率的にまたはより高速に設計され得る。
【0241】
本実施の形態のホログラフィック光学系設計プログラム60は、本実施の形態のホログラフィック光学系の設計方法の各ステップをプロセッサ12に実行させる。そのため、出力面42にゼロ次回折光が重畳することが防止されたホログラフィック光学系が、より効率的にまたはより高速に設計され得る。
【0242】
今回開示された実施の形態1から実施の形態3及びそれらの変形例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【符号の説明】
【0243】
1 ホログラフィック光学系設計装置、11 入力装置、12 プロセッサ、13 メモリ、14 ディスプレイ、16 ネットワークコントローラ、17 記憶媒体ドライブ、18 記憶媒体、19 ストレージ、20 光学条件、21,22 ホログラフィック光学系モデル、23a,23b,23c ホログラフィック光学系サブモデル、24,25,26,27,28 訓練データセット、24a,25a,26a,27a,28a 訓練データ、24b,25b,26b,27b,28b 入力訓練データ、24c,25c,26c,27c,28c 出力訓練データ、30 光学条件受付部、31 ホログラフィック光学系モデル生成部、32 初期位相分布設定部、33 位相分布機械学習部、35 ホログラフィック光学系サブモデル生成部、36 ホログラフィック光学系サブモデル選択部、37 サブモデル機械学習終了判定部、41 入力面、42 出力面、44,45,46,47 ホログラフィック光学素子、44p,45p ピクセル、50 光、50a,50b,50c 波長成分、52,54 光路、53,53a,53b,53c,55,55a,55b,55c ゼロ次回折光、56,57 光軸、60 ホログラフィック光学系設計プログラム、61 位相分布最適化モジュール、63a,63b,64a,64b,65a,65b,66a,66b 直線、71,72,73 波長成分抽出部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32