(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053685
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】液体吐出システム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/195 20060101AFI20240409BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B41J2/195
B41J2/01 451
B41J2/01 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160050
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】村山 寿郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 伸朗
(72)【発明者】
【氏名】宮岸 暁良
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 智良
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB07
2C056EB32
2C056EB39
(57)【要約】
【課題】未知の液体を吐出する場合であっても、吐出異常の判定精度の劣化を抑制すること。
【解決手段】液体吐出システムは、液体を吐出する第1ノズルが設けられた液体吐出ヘッドの動作を制御する液体吐出システムであって、前記第1ノズルの吐出状態を示す第1情報を取得する取得部と、ユーザーの操作に応じて、前記第1ノズルの吐出状態が異常であると判断するための判断基準に関する第2情報を受け付ける受付部と、前記第1情報と前記第2情報とに基づいて、前記第1ノズルの吐出異常の有無を判断する判断部と、を有する。
【選択図】
図20
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する第1ノズルが設けられた液体吐出ヘッドの動作を制御する液体吐出システムであって、
前記第1ノズルの吐出状態を示す第1情報を取得する取得部と、
ユーザーの操作に応じて、前記第1ノズルの吐出状態が異常であると判断するための判断基準に関する第2情報を受け付ける受付部と、
前記第1情報と前記第2情報とに基づいて、前記第1ノズルの吐出異常の有無を判断する判断部と、
を有することを特徴とする液体吐出システム。
【請求項2】
前記第1ノズルの吐出状態が異常であると判断するための複数の判断基準の各々に関する情報を記憶する記憶部を更に備え、
前記第2情報は、前記複数の判断基準の中から前記ユーザーにより選択された判断基準に関する情報である、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出システム。
【請求項3】
前記第2情報は、前記ユーザーによって入力された判断基準に関する情報であることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出システム。
【請求項4】
前記第1ノズルの吐出状態が異常であると判断するための複数の判断基準のうち、初期状態で使用される判断基準に関する情報を記憶する記憶部を更に備え、
前記受付部は、前記ユーザーによって前記初期状態で使用される判断基準が選択された場合、前記初期状態で使用される判断基準に関する情報を前記第2情報として受け付け、
前記受付部が前記第2情報を受け付けなかった場合、前記判断部は、前記第1情報と、前記初期状態で使用される判断基準に関する情報とに基づいて、前記第1ノズルの吐出異常の有無を判断する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出システム。
【請求項5】
前記第1ノズルが吐出する液体は、第1種類の液体であり、
前記液体吐出ヘッドには、更に、前記第1種類の液体とは異なる第2種類の液体を吐出する第2ノズルが設けられ、
前記第2情報は、前記第1種類の液体を吐出するノズルの吐出状態が異常であると判断するための判断基準に関する第3情報と、前記第2種類の液体を吐出するノズルの吐出状態が異常であると判断するための判断基準に関する第4情報と、を含み、
前記取得部は、更に、前記第2ノズルの吐出状態を示す第5情報を取得し、
前記判断部は、
前記第3情報と前記第1情報とに基づいて、前記第1ノズルの吐出異常の有無を判断し、
前記第4情報と前記第5情報とに基づいて、前記第2ノズルの吐出異常の有無を判断する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出システム。
【請求項6】
前記受付部は、媒体に液体を吐出することにより前記媒体に画像を形成する印刷処理を実行させる印刷ジョブが生成される度に、前記第2情報を受け付け可能であることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出システム。
【請求項7】
前記第2情報は、第1時間帯に前記判断部が前記第1ノズルの吐出異常の有無を判断する場合に前記第1ノズルの吐出状態が異常であると判断するための判断基準に関する第6情報と、前記第1時間帯と重ならない第2時間帯に前記判断部が前記第1ノズルの吐出異常の有無を判断する場合に前記第1ノズルの吐出状態が異常であると判断するための判断基準に関する第7情報とを含み、
前記判断部は、
現在時刻が前記第1時間帯に含まれる場合、前記第1情報と前記第6情報とに基づいて、前記第1ノズルの吐出異常の有無を判断し、
現在時刻が前記第2時間帯に含まれる場合、前記第1情報と前記第7情報とに基づいて、前記第1ノズルの吐出異常の有無を判断する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出システム。
【請求項8】
前記第1情報は、前記第1ノズル内の液体の粘度を推定した推定粘度であって、
前記第2情報は、前記推定粘度に対する閾値であって、
前記判断部は、前記推定粘度が前記閾値以上である場合、前記第1ノズルの吐出状態が異常であると判断し、前記推定粘度が前記閾値よりも低い場合、前記第1ノズルの吐出状態が正常であると判断する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンター等の液体吐出装置は、液体吐出ヘッドに設けられた複数のノズルからインク等の液体を吐出させ、媒体に画像を形成する印刷処理を実行する。このような液体吐出装置において、液体の増粘等により、ノズルから液体を正常に吐出できなくなる吐出異常が生じる場合がある。例えば、特許文献1には、液体吐出ヘッドを駆動信号により駆動した後に生じる残留振動に基づいて、液体の粘度を推定する技術が記載されている。
【0003】
更に、特許文献1では、推定した粘度に基づいて、液体を排出させるクリーニングを実施するか否かを判定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術では、未知の液体を吐出する場合、液体の粘度の推定精度が劣化し、推定した粘度に基づく吐出異常の判定精度も劣化するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、本発明に係る液体吐出装置の液体吐出システムは、液体を吐出する第1ノズルが設けられた液体吐出ヘッドの動作を制御する液体吐出システムであって、前記第1ノズルの吐出状態を示す第1情報を取得する取得部と、ユーザーの操作に応じて、前記第1ノズルの吐出状態が異常であると判断するための判断基準に関する第2情報を受け付ける受付部と、前記第1情報と前記第2情報とに基づいて、前記第1ノズルの吐出異常の有無を判断する判断部と、を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係る液体吐出システム10の構成例を示す概略図。
【
図4】インクジェットプリンター100の構成の一例を例示する模式図。
【
図5】インクジェットプリンター100の構成例を示すブロック図。
【
図8】液体吐出ヘッド110の構成の一例を示すブロック図。
【
図9】インクジェットプリンター100の記録期間Tuにおける動作を説明するためのタイミングチャートを示す図。
【
図10】接続状態指定信号SLa[m]、SLb[m]、及び、SLs[m]の生成を説明するための説明図。
【
図11】推定ユニット190の構成の一例を示すブロック図。
【
図12】残留振動信号NES[m]を説明するための説明図。
【
図14】液体吐出システム10の機能を説明するための図。
【
図15】液体吐出システム10の一連の動作を示すフローチャート。
【
図16】液体吐出システム10の一連の動作を示すフローチャート。
【
図17】液体吐出システム10の一連の動作を示すフローチャート。
【
図18】環境評価値テーブル321の内容の一例を示す図。
【
図19】吐出異常検出モード設定画面CDの表示処理の一例を示すフローチャート。
【
図20】吐出異常検出モード設定画面CDの一例を示す図。
【
図21】判断基準テーブル221の内容の一例を示す図。
【
図22】補完関係テーブル223の内容の一例を示す図。
【
図23】インクごとの判断基準が入力可能である吐出異常検出モード設定画面CDの一部分の一例を示す図。
【
図24】時間帯ごとの判断基準が入力可能である吐出異常検出モード設定画面CDの一部分の一例を示す図。
【
図25】第1変形例に係る液体吐出システム10-Aの機能を説明するための図。
【
図26】吐出異常検出モード設定画面CD-Aの一例を示す図。
【
図27】第1変形例に係る吐出異常検出モード設定画面CDの表示処理を示すフローチャート。
【
図28】推奨補完処理更新処理の一例を示すフローチャート。
【
図29】第2変形例に係るインクジェットプリンター100-Bの構成の一例を例示する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。ただし、各図において、各部の寸法及び縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0009】
1.第1実施形態
図1は、第1実施形態に係る液体吐出システム10の構成例を示す概略図である。液体吐出システム10は、インクジェット方式による印刷処理で得られる画像の質を向上させるシステムである。画像の質を向上させる具体的な方法については後述する。
図1に示す例では、液体吐出システム10は、インクジェットプリンター100_1~100_3と処理装置200_1~200_3とサーバー300とを有する。
【0010】
ここで、インクジェットプリンター100_1~100_3は、インクジェットプリンター100_1~100_3のメーカーが提供する装置である。以下の記載では、インクジェットプリンター100_1~100_3のそれぞれを区別せずに、インクジェットプリンター100と総称することがある。インクジェットプリンター100は、液体の一例であるインクを吐出する液体吐出装置である。インクジェットプリンター100のメーカーは、インクジェットプリンター100を製造する業者である。インクジェットプリンター100のメーカーを、「プリンターメーカー」と記載することがある。インクジェットプリンター100_1~100_3のそれぞれは、同一のプリンターメーカーによって提供されてもよいし、異なるプリンターメーカーによって提供されてもよい。但し、インクジェットプリンター100_1~100_3に組み込まれる液体吐出ヘッド110は、液体吐出ヘッド110のメーカーが提供する。液体吐出ヘッド110のメーカーは、液体吐出ヘッド110を製造する業者である。以下、液体吐出ヘッド110のメーカーを、「ヘッドメーカー」と記載することがある。プリンターメーカーは、ヘッドメーカーから液体吐出ヘッド110の提供を受け、提供された液体吐出ヘッド110をインクジェットプリンター100に組み込むことにより、インクジェットプリンター100を製造する。サーバー300は、ヘッドメーカーによって管理される。
【0011】
図1には、インクジェットプリンター100_1を使用するユーザーU_1と、インクジェットプリンター100_2を使用するユーザーU_2と、インクジェットプリンター100_3を使用するユーザーU_3と、を示してある。以下の記載では、ユーザーU_1~U_3のそれぞれを区別せずにユーザーUと総称することがある。ユーザーUは、例えば、プリンターメーカーに属する作業者がインクジェットプリンター100を使用する場合、この作業者がユーザーUである。また、例えば、プリンターメーカーからインクジェットプリンター100の提供を受けた第三者がインクジェットプリンター100を使用する場合、この第三者がユーザーUである。以下の記載では、プリンターメーカーからインクジェットプリンター100の提供を受けた第三者を、「エンドユーザー」と記載することがある。1から3までのそれぞれの整数iについて、ユーザーU_iは、インクジェットプリンター100_iに加えて、処理装置200_iを使用する。
【0012】
インクジェットプリンター100_1は、処理装置200_1に通信可能に接続される。インクジェットプリンター100_2は、処理装置200_2に通信可能に接続される。インクジェットプリンター100_3は、処理装置200_3に通信可能に接続される。このように、インクジェットプリンター100_1~100_3は、処理装置200_1~200_3にそれぞれ対応しており、処理装置200_1~200_3に通信可能に接続される。以下の記載では、処理装置200_1~200_3のそれぞれを区別せずに、処理装置200と総称することがある。
【0013】
なお、
図1に示す例では、液体吐出システム10が有するインクジェットプリンター100及び処理装置200のそれぞれの数が3個であるが、当該数は、これに限定されず、1個、2個または4個以上でもよい。すなわち、インクジェットプリンター100及び処理装置200の組は、3組に限定されず、1組、2組または4組以上でもよい。
【0014】
インクジェットプリンター100は、画像をインクジェット方式により印刷するプリンターである。インクジェットプリンター100は、処理装置200から、印刷処理を実行させる印刷ジョブJBを受け付ける。印刷ジョブJBは、当該印刷ジョブJBを一意に識別する不図示の識別情報と、媒体PPに形成される画像を示す記録データDPとを含む。更に、印刷ジョブJBは、媒体PPに形成される画像の印刷部数を示す情報を含んでもよい。印刷ジョブJBは、ユーザーUの操作によって印刷指示PIが処理装置200に通知された場合に、処理装置200によって生成される。印刷指示PIは、記録データDPの元となる画像データを識別する情報を含む。画像データは、PostScript、PDF、XPS等のファイル形式のデータである。PDFは、Portable Document Formatの略称である。XPSは、XML Paper Specificationの略称である。画像データを識別する情報は、例えば、処理装置200内に記憶された画像データのファイルパスである。インクジェットプリンター100は、記録データDPに基づく画像を、後述する媒体PPに形成する。
【0015】
インクジェットプリンター100は、液体吐出ヘッド110を有する。液体吐出ヘッド110は、液体吐出ヘッド110に設けられたノズルNから、液体の一例であるインクを吐出する。以下では、インクジェットプリンター100を構成する要素のうち液体吐出ヘッド110を除く要素を「プリンター本体」という場合がある。
【0016】
なお、
図1に示す例では、説明の簡略化のため、インクジェットプリンター100は1個の液体吐出ヘッド110を有するが、液体吐出ヘッド110の個数は1個に限定されず、2個以上でもよい。
【0017】
処理装置200は、デスクトップ型またはノート型等のコンピューターである。処理装置200は、記録データDPを生成する機能と、インクジェットプリンター100による印刷を制御する機能と、を有する。
【0018】
処理装置200は、LAN、WAN、及び、インターネット等のネットワークNWを介してサーバー300に通信可能に接続される。LANは、Local Area Networkの略称である。WANは、Wide Area Networkの略称である。処理装置200は、例えば、印刷指示PIによって識別される画像データをRIP処理または色変換処理等の各種処理を実行することにより、記録データDPを生成する。RIPは、Raster Image Processorの略称である。
【0019】
本実施形態では、印刷処理で得られる画像の質を向上させるため、インクジェットプリンター100が有する複数のノズルNに対するインクの粘度を推定させ、処理装置200が、推定した粘度を示す情報に基づいて、後述する吐出異常を判断し、吐出異常である場合に、吐出異常を補完するための様々な補完処理を実行する。補完処理の具体的な説明は、
図13を用いて後述する。以下、サーバー300の構成と処理装置200の構成とを説明した後に、インクの粘度の推定例について説明する。
【0020】
1-2.サーバー300の構成
図2は、サーバー300の構成の一例を示す図である。サーバー300は、制御回路310と、記憶回路320と、通信装置380とを有する。制御回路310と、記憶回路320と、通信装置380とは、情報を通信するためのバス390により相互に接続される。
【0021】
制御回路310は、例えば、1個以上のCPU等のプロセッサーを含む。CPUは、Central Processing Unitの略称である。なお、制御回路310は、CPUに代えて、又は、CPUに加えて、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを含んでもよい。FPGAは、Field Programmable Gate Arrayの略称である。
【0022】
記憶回路320は、磁気記憶装置又はフラッシュROM等で構成される。記憶回路320は、制御回路310が読取可能な記録媒体であり、制御回路310が実行する制御プログラムPM1を含む複数のプログラム、及び、制御回路310が使用する各種の情報などを記憶する。記憶回路320は、例えば、RAM等の揮発性の1または複数のメモリーとROM、EEPROMまたはPROM等の1または複数の不揮発性メモリーとの一方または両方の半導体メモリーを含む。RAMは、Random Access Memoryの略称である。ROMは、Read Only Memoryの略称である。EEPROMは、Electrically Erasable Programmable Read-Only Memoryの略称である。PROMは、Programmable ROMの略称である。
【0023】
通信装置380は、ネットワークNWを介して処理装置200と通信を行うための通信回路を有するハードウェアである。通信装置380は、例えば、ネットワークデバイス、ネットワークコントローラー、ネットワークカードまたは通信モジュールとも表記される。
【0024】
1-3.処理装置200の構成
図3は、処理装置200の構成を示す図である。処理装置200は、制御回路210と、記憶回路220と、通信装置230と、入力装置260と、表示装置270とを有する。制御回路210と、記憶回路220と、通信装置230と、入力装置260と、表示装置270とは、情報を通信するためのバス290により相互に接続される。なお、記憶回路220は、「記憶部」の一例である。表示装置270は、「表示部」の一例である。
【0025】
制御回路210は、例えば、1個以上のCPU等のプロセッサーを含む。なお、制御回路210は、CPUに代えて、又は、CPUに加えて、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを含んでもよい。
【0026】
記憶回路220は、磁気記憶装置又はフラッシュROM等で構成される。記憶回路220は、制御回路210が読取可能な記録媒体であり、制御回路210が実行する制御プログラムPM2を含む複数のプログラム、及び、制御回路210が使用する各種の情報などを記憶する。記憶回路220は、例えば、RAM等の揮発性の1または複数のメモリーとROM、EEPROMまたはPROM等の1または複数の不揮発性メモリーとの一方または両方の半導体メモリーを含む。制御プログラムPM2は、例えば、処理装置200がインクジェットプリンター100に接続した場合に、サーバー300からダウンロードされ、処理装置200にインストールされる。
【0027】
通信装置230は、ネットワークNWを介して処理装置200と通信を行うための通信回路を有するハードウェアである。通信装置230は、例えば、ネットワークデバイス、ネットワークコントローラー、ネットワークカードまたは通信モジュールとも表記される。
【0028】
通信装置240は、インクジェットプリンター100と通信可能な回路である。例えば、通信装置240は、USB、またはBluetooth等のネットワークカードである。USBは、Universal Serial Busの略称である。USB及びBluetoothは、登録商標である。
【0029】
入力装置260は、ユーザーUの操作に応じた操作情報を出力するデバイスである。入力装置260は、例えば、マウス及びキーボードである。
【0030】
表示装置270は、何らかの情報を示す画像をユーザーUに表示する。表示装置270は、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、及び、LCDである。ELは、Electro-Luminescenceの略称である。LEDは、Light Emitting Diodeの略称である。LCDは、Liquid Crystal Displayの略称である。また、入力装置260及び表示装置270が一体である構成でもよい。入力装置260及び表示装置270が一体である構成は、例えば、タッチパネルである。
【0031】
1-4.インクジェットプリンター100の構成
図4は、インクジェットプリンター100の構成の一例を例示する模式図である。
図5は、インクジェットプリンター100の構成例を示すブロック図である。以下の説明では、相互に直交するX軸とY軸とZ軸とを想定する。任意の地点からみてX軸に沿う一方向をX1方向と表記し、X1方向の反対の方向をX2方向と表記する。同様に、任意の地点からY軸に沿って相互に反対の方向をY1方向及びY2方向と表記し、任意の地点からZ軸に沿って相互に反対の方向をZ1方向及びZ2方向と表記する。X軸とY軸とを含むX-Y平面は水平面に相当する。Z軸は鉛直方向に沿う軸線であり、Z2方向は鉛直方向の下方に相当する。
【0032】
第1実施形態に係るインクジェットプリンター100は、マルチパス方式により媒体PPに画像を形成するシリアルプリンターである。マルチパス方式とは、複数回の走査によって媒体PPに画像を形成させることを言う。具体的には、
図4に示すように、インクジェットプリンター100は、副走査方向であるY1方向に媒体PPを搬送し主走査方向であるX1方向及びX2方向に液体吐出ヘッド110を移動させつつ、ノズルNからインクを吐出することで、媒体PPに画像を形成する印刷処理を実行する。以下の記載において、液体吐出ヘッド110を主走査方向に1回移動させることを、1つのパスと記載する。1つのパスと1回の走査とは、同義である。インクジェットプリンター100は、1つのパスの間に液体吐出ヘッド110を移動させて1回のパスに対応する部分画像を媒体PPに形成する処理と、媒体PPを1つのパスに対応する分搬送する処理とを繰り返すことにより、媒体PPに画像を形成する。媒体PPは、インクジェットプリンター100が印刷可能な媒体であれば特に限定されず、例えば、各種紙、各種布または各種フィルム等である。
図4では、液体吐出ヘッド110が有する複数のノズルNのうちの一部のノズルNが代表的に図示される。
【0033】
図4及び
図5に示すように、インクジェットプリンター100は、液体吐出ヘッド110と、液体容器120と、移動機構130と、搬送機構140と、通信装置150と、記憶回路160と、制御回路170と、制御モジュール180と、推定ユニット190とを有する。
【0034】
図5に示す例では、液体吐出ヘッド110は、ヘッドチップ111及び駆動回路112を有する。なお、液体吐出ヘッド110に制御モジュール180の一部または全部が組み込まれてもよい。制御モジュール180は、電源回路183及び駆動信号生成回路184を含む。
【0035】
ヘッドチップ111は、インクを媒体PPに向けて吐出する。
図5では、ヘッドチップ111の構成要素の一部である2M個の吐出部Dのいくつかの吐出部Dが代表的に図示される。本実施形態において、Mは、2以上の偶数である。但し、Mは、1であってもよい。1つの吐出部Dには1つのノズルNが含まれる。なお、ヘッドチップ111の詳細の一例については、後に
図6に基づいて説明する。
【0036】
以下では、ヘッドチップ111に設けられた2M個の吐出部Dの各々を区別するために、順番に、1段、2段、…、2M段と称することがある。また、m段の吐出部Dを、吐出部D[m]と称する場合がある。以下の記載において、変数mは、1以上2M以下を満たす整数である。また、液体吐出ヘッド110の構成要素や信号等が、吐出部D[m]の段数mに対応するものである場合には、当該構成要素や信号等を表すための符号に、段数mに対応していることを示す添え字[m]を付して表現することがある。
【0037】
図5に示す例では、説明の簡略化のため、液体吐出ヘッド110が有するヘッドチップ111の数が1個であるが、ヘッドチップ111の数は、2個以上でもよい。媒体PPの幅方向であるX軸の一部にわたり複数のノズルNが分布するように、1個以上のヘッドチップ111が配置される。
【0038】
駆動回路112は、切替回路115と、検出回路117とを含む。切替回路115は、制御回路170による制御のもと、ヘッドチップ111が有する複数の吐出部Dのそれぞれについて、駆動信号生成回路184から出力される駆動信号Comを供給するか否かを切り替える。また、切替回路115は、各吐出部Dと検出回路117とを電気的に接続するか否かを切り替える。本実施形態では、駆動信号Comが、駆動信号Com-Aと駆動信号Com-Bとを含む場合を想定する。更に、駆動信号Com-A及びCom-Bのうち、吐出部D[m]に実際に供給される信号を、供給駆動信号Vin[m]と称する場合がある。切替回路115は、例えば、当該切り替えのためのトランスミッションゲート等のスイッチ群を含む。切替回路115の詳細については、
図7を用いて後述する。検出回路117は、吐出部Dが駆動された後に、吐出部Dにおいて残留している振動を示す残留振動信号NESを推定ユニット190に出力する。より具体的には、検出回路117は、駆動信号Comにより駆動された吐出部D[m]から検出した検出信号Vout[m]に基づいて残留振動信号NES[m]を生成する。以下、吐出部Dにおいて残留している振動を、「残留振動」と記載する。
【0039】
電源回路183は、図示しない商用電源から電力の供給を受け、所定の各種電位を生成する。生成した各種電位は、インクジェットプリンター100の各部に適宜に供給される。
図5に示す例では、電源回路183は、電源電位VHVとオフセット電位VBSとを生成する。オフセット電位VBSは、ヘッドチップ111等に供給される。また、電源電位VHVは、駆動信号生成回路184等に供給される。
【0040】
駆動信号生成回路184は、ヘッドチップ111が有する各吐出部Dを駆動するための駆動信号Comを生成する回路である。具体的には、駆動信号生成回路184は、例えば、DA変換回路と増幅回路とを有する。駆動信号生成回路184では、当該DA変換回路が制御回路170からの後述の波形指定信号dComをデジタル信号からアナログ信号に変換し、当該増幅回路が電源回路183からの電源電位VHVを用いて当該アナログ信号を増幅することにより駆動信号Comを生成する。
【0041】
図4に例示される通り、インクジェットプリンター100には、インクを貯留する液体容器120が設置される。例えばインクジェットプリンター100に着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、又は、インクを補充可能なインクタンクが、液体容器120として利用される。本実施形態では、液体容器120は、2種類のインクを貯留することを前提として説明する。液体容器120は、第1種類のインクを貯留する液体容器121と、第2種類のインクを貯留する液体容器122とを有する。第1種類のインクと第2種類のインクとは、例えば、互いに異なる色材を有するインクである。第1種類のインクと第2種類のインクとは、互いに同系色のインクでもよい。同系色とは、色相が同一又は類似する色である。同系色のインクの一例は、シアンインクとライトシアンインクとである。また、液体容器120が有するインクの種類は、2種類に限らず、1種類でもよいし、3種類以上でもよい。例えば、液体容器120は、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、及び、ブラックインクという4種類のインクを貯留してもよい。なお、第1種類のインクは、「第1種類の液体」の一例であり、第2種類のインクは、「第2種類の液体」の一例である。
【0042】
移動機構130及び搬送機構140は、制御回路170の制御のもと、媒体PPと液体吐出ヘッド110との相対的な位置を移動させる。相対的な位置を移動とは、媒体PPの位置を固定したまま液体吐出ヘッド110を移動させてもよいし、液体吐出ヘッド110の位置を固定したまま媒体PPを移動させてもよい。本実施形態では、主走査方向であるX軸に沿う方向に対しては、媒体PPのX軸における位置を固定したまま液体吐出ヘッド110をX軸に沿う方向に移動させ、副走査方向であるY1方向に対しては、液体吐出ヘッド110のY軸に沿う方向の位置を固定したまま媒体PPをY1方向に移動させる。
【0043】
移動機構130は、制御回路170の制御のもと、液体吐出ヘッド110をX軸に沿って往復させる。
図4に示すように、移動機構130は、液体吐出ヘッド110を収容する略箱型のキャリッジ131と、キャリッジ131が固定された無端ベルト132とを具備する。なお、液体容器120を液体吐出ヘッド110とともにキャリッジ131に搭載した構成も採用され得る。
【0044】
搬送機構140は、制御回路170の制御のもと、媒体PPをY1方向に搬送する。具体的には、搬送機構140は、回転軸がX軸に平行な不図示の搬送ローラーと、搬送ローラーを制御回路170による制御のもとで回転させる不図示のモーターとを具備する。
【0045】
通信装置150は、処理装置200と通信可能な回路である。例えば、通信装置150は、USB、またはBluetooth等のネットワークカードである。また、通信装置150は、制御回路170と一体でもよい。
【0046】
記憶回路160は、制御回路170が実行する各種プログラムと、制御回路170が処理する印刷ジョブJB等の各種データと、を記憶する。記憶回路160は、例えば、RAM等の揮発性の1または複数のメモリーとROM、EEPROMまたはPROM等の1または複数の不揮発性メモリーとの一方または両方の半導体メモリーを含む。なお、記憶回路160は、制御回路170の一部として構成されてもよい。
【0047】
制御回路170は、インクジェットプリンター100の各部の動作を制御する機能と、各種データを処理する機能と、を有する。制御回路170は、例えば、1個以上のCPU等のプロセッサーを含む。なお、制御回路170は、CPUに代えて、又は、CPUに加えて、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを含んでもよい。
【0048】
制御回路170は、記憶回路160に記憶されるプログラムを実行することにより、インクジェットプリンター100の各部の動作を制御する。ここで、制御回路170は、インクジェットプリンター100の各部の動作を制御するための信号として、制御信号Sk1、制御信号Sk2、印刷信号SI及び波形指定信号dCom等の信号を生成する。
【0049】
制御信号Sk1は、移動機構130の駆動を制御するための信号である。制御信号Sk2は、搬送機構140の駆動を制御するための信号である。印刷信号SIは、駆動回路112の駆動を制御するための信号である。具体的には、印刷信号SIは、駆動回路112が駆動信号生成回路184からの駆動信号Comを吐出部Dに対して供給するか否かと、吐出部Dが駆動された後に、後述する吐出部Dにおいて残留している振動を示す残留振動信号NESを出力するか否かとを、所定の単位期間ごとに指定する。この指定により、ヘッドチップ111から吐出されるインク量等が指定される。波形指定信号dComは、駆動信号生成回路184で生成される駆動信号Comの波形を規定するためのデジタル信号である。
【0050】
印刷処理が実行される場合、制御回路170は、まず、処理装置200から供給される印刷ジョブJBを、記憶回路160に記憶させる。次に、制御回路170は、記憶回路160に記憶されている印刷ジョブJBに含まれる記録データDP等の各種データに基づいて、印刷信号SI、波形指定信号dCom、制御信号Sk1、及び、制御信号Sk2等の各種制御信号を生成する。そして、制御回路170は、各種制御信号と、記憶回路160に記憶されている各種データに基づいて、液体吐出ヘッド110に対する媒体PPの相対位置を変化させるように搬送機構140及び移動機構130を制御しつつ、吐出部Dが駆動されるように液体吐出ヘッド110を制御する。これにより、制御回路170は、吐出部Dからのインクの吐出の有無、インクの吐出量、及び、インクの吐出タイミング等を調整し、記録データDPに基づく画像を媒体PPに形成する印刷処理の実行を制御する。
【0051】
更に、本実施形態に係るインクジェットプリンター100は、処理装置200から粘度推定指示を受け付けた場合、各吐出部Dからのインクの吐出状態が正常であるか否か、すなわち、各吐出部Dに含まれるノズルNの吐出異常の有無を判定するために、吐出部Dのインクの粘度を推定する粘度推定処理を実行する。以下、吐出部Dに含まれるノズルNの吐出異常を、吐出部Dの吐出異常と記載することがある。ここで、吐出異常とは、駆動信号Comにより吐出部Dを駆動して吐出部Dからインクを吐出させようとしても、駆動信号Comが規定する態様によりインクを吐出できない状態である。ここで、駆動信号Comが規定するインクの吐出態様とは、吐出部Dが駆動信号Comの波形により規定される量のインクを吐出し、吐出部Dが駆動信号Comの波形により規定される吐出速度でインクを吐出することである。すなわち、駆動信号Comが規定するインクの吐出態様によりインクを吐出できない状態とは、吐出部Dからインクを吐出できない状態の他に、駆動信号Comにより規定されるインクの吐出量よりも少ない量のインクが吐出部Dから吐出される状態、駆動信号Comにより規定されるインクの吐出量よりも多くの量のインクが吐出部Dから吐出される状態、又は、駆動信号Comにより規定されるインクの吐出速度と異なる速度でインクが吐出されるために媒体PP上の所望の着弾位置にインクを着弾させることができない状態、等を含む。なお、以下では、粘度の推定の対象となる吐出部Dを、推定対象吐出部D-Hと称する場合がある。
【0052】
吐出異常は、インクの増粘等によって発生することがある。インクの増粘は、ノズルNの界面からのインクの溶媒、典型的には水が蒸発すること等によって進行する。本実施形態では、吐出部Dの増粘を推定し、推定した粘度に基づいて吐出部Dに含まれるノズルNの吐出異常の有無を判定する。
【0053】
粘度推定処理において、インクジェットプリンター100は、第1に、制御回路170により、2M個の吐出部Dの中から推定対象吐出部D-Hを選択し、第2に、制御回路170による制御の下で、推定対象吐出部D-Hを駆動させることで、推定対象吐出部D-Hに残留振動を生じさせ、第3に、検出回路117により、推定対象吐出部D-Hから検出された検出信号Voutに基づいて残留振動信号NESを生成し、第4に、推定ユニット190により、残留振動信号NESに基づいて粘度を推定し、推定した粘度を示す粘度情報NNDを生成する、という一連の処理を実行する。粘度が高くなることに応じて、吐出状態が正常から異常になることから、粘度情報NNDは、ノズルNの吐出状態を示すともいえる。
【0054】
更に本実施形態に係るインクジェットプリンター100は、吐出部Dに吐出異常が生じた場合に、吐出異常を補完するための様々な補完処理を実行する場合がある。補完処理は、記録データDPに基づき決定される供給駆動信号Vinを吐出部Dに印加しても、吐出異常が発生する状態である場合に実行される。一方、記録データDPに基づき決定される供給駆動信号Vinを吐出部Dに印加して、供給駆動信号Vinが規定する態様によりインクを吐出する処理を、通常印刷処理と記載することがある。
【0055】
更に本実施形態に係るインクジェットプリンター100は、吐出異常を有する吐出部Dの吐出異常を回復させるためのメンテナンス処理を実行してもよい。メンテナンス処理には、吐出部Dからインクを排出させるフラッシング処理がある。フラッシング処理は、フラッシング処理用の駆動信号Comにより吐出部Dを繰り返し駆動させることにより、増粘したインク、及び、インクに混入した気泡を強制的に除去する処理である。フラッシング処理を実行することにより、吐出異常が回復することがある。メンテナンス処理は、「回復処理」の一例である。
【0056】
図6は、ヘッドチップ111の構成例を示す断面図である。但し、
図6では、ヘッドチップ111に加えて駆動回路112も図示してある。
【0057】
図6に示すように、ヘッドチップ111は、Y軸に沿う方向に配列される2M個のノズルNを有する。2M個のノズルNは、
図4に示すように、X軸に沿う方向に互いに間隔をあけて並ぶ第1ノズル列Ln1と第2ノズル列Ln2とに区分される。第1ノズル列Ln1及び第2ノズル列Ln2のそれぞれは、Y軸に沿う方向に直線状に配列されるM個のノズルNの集合である。また、
図4に示すように、第1ノズル列Ln1に区分されるM個のノズルNを、ノズルN[1]~ノズルN[M]と表記し、第2ノズル列Ln2に区分されるM個のノズルNを、ノズルN[M+1]~ノズルN[2M]と表記することがある。
【0058】
ヘッドチップ111は、X軸に沿う方向で互いに略対称な構成である。ただし、第1ノズル列Ln1のM個のノズルNと第2ノズル列Ln2のM個のノズルNとのY軸に沿う方向での位置は、互いに一致してもよいし異なってもよい。本実施形態では、第1ノズル列Ln1のM個のノズルNと第2ノズル列Ln2のM個のノズルNとのY軸に沿う方向での位置が互いに一致する構成であるとして説明する。従って、1からMまでの全てのmについて、ノズルN[m]のY軸に沿う方向の位置と、ノズルN[M+m]のY軸に沿う方向の位置とは、互いに一致する。
【0059】
図6に示すように、ヘッドチップ111は、流路基板111aと圧力室基板111bとノズル板111cと吸振体111dと振動板111eと複数の圧電素子111fと保護板111gとケース111hと配線基板111iとを有する。
【0060】
流路基板111a及び圧力室基板111bは、この順でZ1方向に積層されており、複数のノズルNにインクを供給するための流路を形成する。流路基板111a及び圧力室基板111bからなる積層体よりもZ1方向に位置する領域には、振動板111eと複数の圧電素子111fと保護板111gとケース111hと配線基板111iとが設置される。他方、当該積層体よりもZ2方向に位置する領域には、ノズル板111cと吸振体111dとが設置される。ヘッドチップ111の各要素は、概略的にはY方向に長尺な板状部材であり、例えば接着剤により、互いに接合される。以下、ヘッドチップ111の各要素を順に説明する。
【0061】
ノズル板111cは、第1ノズル列Ln1及び第2ノズル列Ln2のそれぞれの複数のノズルNが設けられた板状部材である。複数のノズルNのそれぞれは、インクを通過させる貫通孔である。ここで、ノズル板111cのZ2方向を向く面がノズル面FNである。ノズル板111cは、例えば、ドライエッチングまたはウェットエッチング等の加工技術を用いる半導体製造技術によりシリコン単結晶基板を加工することにより製造される。ただし、ノズル板111cの製造には、他の公知の方法及び材料が適宜に用いられてもよい。また、ノズルNの断面形状は、典型的には円形状であるが、これに限定されず、例えば、多角形または楕円形等の非円形状であってもよい。
【0062】
流路基板111aには、第1ノズル列Ln1及び第2ノズル列Ln2のそれぞれについて、空間R1と複数の供給流路Raと複数の連通流路Naとが設けられる。空間R1は、Z軸に沿う方向でみた平面視で、Y軸に沿う方向に延びる長尺状の開口である。供給流路Ra及び連通流路Naのそれぞれは、ノズルNごとに形成された貫通孔である。各供給流路Raは、空間R1に連通する。
【0063】
圧力室基板111bは、第1ノズル列Ln1及び第2ノズル列Ln2のそれぞれについて、キャビティと称される複数の圧力室CVが設けられた板状部材である。複数の圧力室CVは、Y軸に沿う方向に配列される。各圧力室CVは、ノズルNごとに形成され、平面視でX軸に沿う方向に延びる長尺状の空間である。流路基板111a及び圧力室基板111bそれぞれは、前述のノズル板111cと同様に、例えば、半導体製造技術によりシリコン単結晶基板を加工することにより製造される。ただし、流路基板111a及び圧力室基板111bのそれぞれの製造には、他の公知の方法及び材料が適宜に用いられてもよい。
【0064】
圧力室CVは、流路基板111aと振動板111eとの間に位置する空間である。第1ノズル列Ln1及び第2ノズル列Ln2のそれぞれについて、複数の圧力室CVがY軸に沿う方向に配列される。また、圧力室CVは、連通流路Na及び供給流路Raのそれぞれに連通する。従って、圧力室CVは、連通流路Naを介してノズルNに連通し、かつ、供給流路Raを介して空間R1に連通する。
【0065】
圧力室基板111bのZ1方向を向く面には、振動板111eが配置される。振動板111eは、弾性的に振動可能な板状部材である。振動板111eは、例えば、第1層と第2層とを有し、これらがこの順でZ1方向に積層される。第1層は、例えば、酸化シリコンで構成される弾性膜である。当該弾性膜は、例えば、シリコン単結晶基板の一方の面を熱酸化することにより形成される。第2層は、例えば、酸化ジルコニウムで構成される絶縁膜である。当該絶縁膜は、例えば、スパッタ法によりジルコニウムの層を形成し、当該層を熱酸化することにより形成される。なお、振動板111eは、前述の第1層及び第2層の積層による構成に限定されず、例えば、単層で構成されてもよいし、3層以上で構成されてもよい。
【0066】
振動板111eのZ1方向を向く面には、第1ノズル列Ln1及び第2ノズル列Ln2のそれぞれについて、互いにノズルNに対応する複数の圧電素子111fが配置される。各圧電素子111fは、駆動信号Comの供給により変形する受動素子である。各圧電素子111fは、平面視でX軸に沿う方向に延びる長尺状をなす。複数の圧電素子111fは、複数の圧力室CVに対応するようにY軸に沿う方向に配列される。圧電素子111fは、平面視で圧力室CVに重なる。圧電素子111fは、「駆動素子」の一例である。
【0067】
図7は、圧電素子111fの近傍を拡大した断面図である。但し、
図7では、図面の煩雑化を防ぐため、保護板111gの図示を省略してある。
【0068】
図7に例示される通り、圧電素子111fは、オフセット電位VBSが供給される上部電極Zuと、駆動信号Comが供給される下部電極Zdとの間に、圧電体Zmを介在させた積層体である。圧電素子111fは、例えば、Z1方向から見たときに、下部電極Zdと上部電極Zuと圧電体Zmとが重なる部分である。また、圧電素子PZのZ2方向には、圧力室CVが設けられる。なお、第1実施形態では、上部電極Zuにオフセット電位VBSが供給され、下部電極Zdに駆動信号Comが供給される態様であるが、上部電極Zuに駆動信号Comが供給され、下部電極Zdにオフセット電位VBSが供給される態様でもよい。
【0069】
説明を
図6に戻す。保護板111gは、振動板111eのZ1方向を向く面に設置される板状部材であり、複数の圧電素子111fを保護するとともに振動板111eの機械的な強度を補強する。ここで、保護板111gと振動板111eとの間には、複数の圧電素子111fが収容される。保護板111gは、例えば、樹脂材料で構成される。
【0070】
ケース111hは、複数の圧力室CVに供給されるインクを貯留するための部材である。ケース111hは、例えば、樹脂材料で構成される。ケース111hには、第1ノズル列Ln1及び第2ノズル列Ln2のそれぞれについて、空間R2が設けられる。空間R2は、前述の空間R1に連通する空間であり、空間R1とともに、複数の圧力室CVに供給されるインクを貯留するリザーバーRとして機能する。ケース111hには、各リザーバーRにインクを供給するための導入口IHが設けられる。各リザーバーR内のインクは、各供給流路Raを介して圧力室CVに供給される。
【0071】
吸振体111dは、コンプライアンス基板とも称され、リザーバーRの壁面を構成する可撓性の樹脂フィルムであり、リザーバーR内のインクの圧力変動を吸収する。なお、吸振体111dは、金属製の可撓性を有する薄板であってもよい。吸振体111dのZ1方向を向く面は、流路基板111aに接着剤等により接合される。
【0072】
配線基板111iは、振動板111eのZ1方向を向く面に実装されており、ヘッドチップ111と駆動回路112及び制御モジュール110b等とを電気的に接続するための実装部品である。配線基板111iは、例えば、COF、FPCまたはFFC等の可撓性の配線基板である。本実施形態の配線基板111iには、前述の駆動回路112が実装される。COFは、Chip On Filmの略称である。FPCは、Flexible Printed Circuitの略称である。FFCは、Flexible Flat Cableの略称である。
【0073】
図6に例示される通り、1つの吐出部Dは、1つの圧電素子111fと、1つの圧力室CVと、1つのノズルNとを含む。すなわち、2M個の圧電素子111fは、2M個の圧力室CVに1対1に対応する。圧力室CVに対応する圧電素子111fとは、
図6等から理解されるように、Z2方向への平面視において、圧力室CVの一部又は全部に重なる圧電素子111fを意味する。吐出部Dは、印刷信号SIに基づき圧電素子111fに駆動信号Comが供給される場合、当該圧電素子111fが駆動信号Comにより駆動されることにより、圧力室CV内のインクをノズルNから吐出させる。
【0074】
1-5.液体吐出ヘッド110の構成
以下、
図8を参照しつつ、液体吐出ヘッド110の構成について説明する。
【0075】
図8は、液体吐出ヘッド110の構成の一例を示すブロック図である。上述のように、液体吐出ヘッド110は、記録ヘッドHDと、切替回路115と、検出回路117と、を備える。また、液体吐出ヘッド110は、駆動信号生成回路184から駆動信号Com-Aが供給される内部配線LHaと、駆動信号生成回路184から駆動信号Com-Bが供給される内部配線LHbと、圧電素子111fから検出される検出信号Voutを検出回路117に供給するための内部配線LHsと、を備える。
【0076】
図8に示すように、切替回路115は、2M個のスイッチSWa[1]~SWa[2M]と、2M個のスイッチSWb[1]~SWb[2M]と、2M個のスイッチSWs[1]~SWs[2M]と、各スイッチの接続状態を指定する接続状態指定回路116と、を備える。なお、各スイッチとしては、例えば、トランスミッションゲートを採用することができる。
接続状態指定回路116は、制御回路170から供給される印刷信号SI、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及び、期間指定信号Tsigの少なくとも一部の信号に基づいて、スイッチSWa[1]~SWa[2M]のオンオフを指定する接続状態指定信号SLa[1]~SLa[2M]と、スイッチSWb[1]~SWb[2M]のオンオフを指定する接続状態指定信号SLb[1]~SLb[2M]と、スイッチSWs[1]~SWs[2M]のオンオフを指定する接続状態指定信号SLs[1]~SLs[2M]と、を生成する。
1から2Mまでの任意のmについて、それぞれのスイッチSWa[m]は、接続状態指定信号SLa[m]に応じて、内部配線LHaと、圧電素子111f[m]の下部電極Zd[m]と、の導通及び非導通を切り替える。例えば、スイッチSWa[m]は、接続状態指定信号SLa[m]がハイレベルの場合にオンし、ローレベルの場合にオフする。
1から2Mまでの任意のmについて、スイッチSWb[m]は、接続状態指定信号SLb[m]に応じて、内部配線LHbと、吐出部D[m]に設けられた圧電素子PZ[m]の下部電極Zd[m]との、導通及び非導通を切り替える。例えば、スイッチSWb[m]は、接続状態指定信号SLb[m]がハイレベルの場合にオンし、ローレベルの場合にオフする。
1から2Mまでの任意のmについて、スイッチSWs[m]は、接続状態指定信号SLs[m]に応じて、内部配線LHsと、圧電素子PZ[m]の下部電極Zd[m]と、の導通及び非導通を切り替える。例えば、スイッチSWs[m]は、接続状態指定信号SLs[m]がハイレベルの場合にオンし、ローレベルの場合にオフする。
【0077】
検出回路117には、1から2Mまでの任意のmについて、圧電素子111f[m]から出力される検出信号Vout[m]が、内部配線LHsを介して供給される。そして、検出回路117は、当該検出信号Vout[m]に基づいて残留振動信号NESを生成する。
【0078】
1-6.液体吐出ヘッド110の動作
以下、
図9及び
図10を参照しつつ、液体吐出ヘッド110の動作について説明する。
【0079】
本実施形態において、インクジェットプリンター100の動作期間は、1又は複数の記録期間Tuを含む。本実施形態に係るインクジェットプリンター100は、各記録期間Tuにおいて、印刷処理における各吐出部Dの駆動と、粘度推定処理の準備処理における推定対象吐出部D-Hの駆動及び残留振動の検出と、の一方を実行する場合を想定する。但し、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、各記録期間Tuにおいて、印刷処理における各吐出部Dの駆動と、粘度推定処理の準備処理における推定対象吐出部D-Hの駆動及び残留振動の検出と、の両方を実行可能であってもよい。
なお、一般的に、インクジェットプリンター100は、連続的又は間欠的な複数の記録期間Tuに亘り各吐出部Dから1又は複数回ずつインクを吐出させることで、記録データDPに基づく画像を形成する。また、本実施形態に係るインクジェットプリンター100は、連続的又は間欠的に設けられた2M個の記録期間Tuにおいて、2M回の粘度推定処理の準備処理を実行することで、2M個の吐出部D[1]~D[2M]の各々を推定対象吐出部D-Hとした粘度推定処理を実行する。
【0080】
図9は、インクジェットプリンター100の記録期間Tuにおける動作を説明するためのタイミングチャートである。
図9に示すように、制御回路170は、パルスPlsLを有するラッチ信号LATと、パルスPlsCを有するチェンジ信号CHと、を出力する。これにより、制御回路170は、パルスPlsLの立ち上がりから次のパルスPlsLの立ち上がりまでの期間として、記録期間Tuを規定する。また、制御回路170は、パルスPlsCにより、記録期間Tuを2つの制御期間Tu1及びTu2に区分する。
印刷信号SIは、各記録期間Tuにおける吐出部D[1]~D[2M]の駆動の態様を指定する個別指定信号Sd[1]~Sd[2M]を含む。そして、制御回路170は、記録期間Tuにおいて印刷処理及び粘度推定処理の少なくとも一方が実行される場合、
図9に示すように、当該記録期間Tuの開始に先立って、個別指定信号Sd[1]~Sd[2M]を含む印刷信号SIを、クロック信号CLに同期させて接続状態指定回路116に供給する。この場合、接続状態指定回路116は、1から2Mまでの任意のmについて、当該記録期間Tuにおいて、個別指定信号Sd[m]に基づいて、接続状態指定信号SLa[m]、SLb[m]、SLs[m]を生成する。
【0081】
なお、1から2Mまでの任意のmについて、本実施形態に係る個別指定信号Sd[m]は、各記録期間Tuにおいて、吐出部D[m]に対して、大ドットに相当する量のインクの吐出、中ドットに相当する量のインクの吐出、小ドットに相当する量のインクの吐出、インクの非吐出、及び、粘度推定処理における判定対象としての駆動、の5つの駆動態様のうち、いずれか一つの駆動態様を指定する信号である。以下の記載では、大ドットに相当する量を、「大程度の量」と称することがあり、大ドットに相当する量のインクの吐出を、「大ドットの形成」と称することがある。同様に、中ドットに相当する量を、「中程度の量」と称することがあり、中ドットに相当する量のインクの吐出を、「中ドットの形成」と称することがある。小ドットに相当する量を、「小程度の量」と称することがあり、小ドットに相当する量のインクの吐出を、「小ドットの形成」と称することがある。粘度推定処理における推定対象としての駆動を、「推定対象吐出部D-Hとしての駆動」と称する場合がある。本実施形態では、一例として、個別指定信号Sd[m]が、
図10に例示するように、3ビットのデジタル信号である場合を想定する。
【0082】
図9に示すように、駆動信号生成回路184は、制御期間Tu1に設けられた中ドット波形PXと、制御期間Tu2に設けられた小ドット波形PYと、を有する駆動信号Com-Aを出力する。本実施形態では、中ドット波形PXの最高電位VHXと最低電位VLXとの電位差が、小ドット波形PYの最高電位VHYと最低電位VLYとの電位差よりも大きくなるように、中ドット波形PX及び小ドット波形PYを定める。具体的には、1から2Mまでの任意のmについて、中ドット波形PXを有する駆動信号Com-Aにより吐出部D[m]を駆動する場合、吐出部D[m]から中程度の量のインクが吐出されるように、中ドット波形PXを定める。また、小ドット波形PYを有する駆動信号Com-Aにより吐出部D[m]を駆動する場合、吐出部D[m]から小程度の量のインクが吐出されるように、小ドット波形PYを定める。なお、中ドット波形PX及び小ドット波形PYは、開始時及び終了時の電位が基準電位V0に設定されている。
【0083】
そして、1から2Mまでの任意のmについて、個別指定信号Sd[m]が吐出部D[m]に対して、大ドットの形成を指定する場合、接続状態指定回路116は、接続状態指定信号SLa[m]を、制御期間Tu1及びTu2においてハイレベルに設定し、接続状態指定信号SLb[m]及びSLs[m]を、記録期間Tuにおいてローレベルに設定する。この場合、吐出部D[m]は、制御期間Tu1において中ドット波形PXの駆動信号Com-Aにより駆動されて中程度の量のインクを吐出し、また、制御期間Tu2において小ドット波形PYの駆動信号Com-Aにより駆動されて小程度の量のインクを吐出する。これにより、吐出部D[m]は、記録期間Tuにおいて、合計で大程度の量のインクを吐出し、媒体PPには大ドットが形成される。
また、個別指定信号Sd[m]が吐出部D[m]に対して、中ドットの形成を指定する場合、接続状態指定回路116は、接続状態指定信号SLa[m]を、制御期間Tu1においてハイレベルに、制御期間Tu2においてローレベルに、それぞれ設定し、接続状態指定信号SLb[m]及びSLs[m]を、記録期間Tuにおいてローレベルに設定する。この場合、吐出部D[m]は、記録期間Tuにおいて中程度の量のインクを吐出し、媒体PPには中ドットが形成される。
また、1から2Mまでの任意のmについて、個別指定信号Sd[m]が吐出部D[m]に対して、小ドットの形成を指定する場合、接続状態指定回路116は、接続状態指定信号SLa[m]を、制御期間Tu1においてローレベルに、制御期間Tu2においてハイレベルに、それぞれ設定し、接続状態指定信号SLb[m]及びSLs[m]を、記録期間Tuにおいてローレベルに設定する。この場合、吐出部D[m]は、記録期間Tuにおいて小程度の量のインクを吐出し、媒体PPには小ドットが形成される。
また、1から2Mまでの任意のmについて、個別指定信号Sd[m]が吐出部D[m]に対して、インクの非吐出を指定する場合、接続状態指定回路116は、接続状態指定信号SLa[m]とSLb[m]とSLs[m]とを、記録期間Tuにおいてローレベルに設定する。この場合、吐出部D[m]は、記録期間Tuにおいて、インクを吐出せず、媒体PPにドットを形成しない。
【0084】
図9に示すように、駆動信号生成回路184は、記録期間Tuに設けられた検査波形PSを有する駆動信号Com-Bを出力する。本実施形態では、検査波形PSの最高電位VHSと最低電位VLSとの電位差が、小ドット波形PYの最高電位VHYと最低電位VLYとの電位差よりも小さくなるように、検査波形PSを定める。具体的には、1から2Mまでの任意のmについて、検査波形PSを有する駆動信号Com-Bを吐出部D[m]に供給する場合、吐出部D[m]からインクが吐出されない程度に吐出部D[m]が駆動されるように、検査波形PSを定める。なお、検査波形PSは、開始時及び終了時の電位が基準電位V0に設定されている。
また、制御回路170は、パルスPlsT1及びパルスPlsT2を有する期間指定信号Tsigを出力する。これにより、制御回路170は、記録期間Tuを、パルスPlsLの開始からパルスPlsT1の開始までの制御期間TSS1と、パルスPlsT1の開始からパルスPlsT2の開始までの制御期間TSS2と、パルスPlsT2の開始から次のパルスPlsLの開始までの制御期間TSS3と、に区分する。
【0085】
そして、1から2Mまでの任意のmについて、個別指定信号Sd[m]が吐出部D[m]を、推定対象吐出部D-Hとして指定する場合、接続状態指定回路116は、接続状態指定信号SLa[m]を、記録期間Tuにおいてローレベルに設定し、接続状態指定信号SLb[m]を、制御期間TSS1及びTSS3においてハイレベルに、制御期間TSS2においてローレベルに、それぞれ設定し、接続状態指定信号SLs[m]を、制御期間TSS1及びTSS3においてローレベルに、制御期間TSS2においてハイレベルに、それぞれ設定する。
この場合、推定対象吐出部D-Hは、制御期間TSS1において検査波形PSの駆動信号Com-Bにより駆動される。具体的には、推定対象吐出部D-Hが有する圧電素子PZは、制御期間TSS1において検査波形PSの駆動信号Com-Bにより変位させられる。その結果、推定対象吐出部D-Hにおいて振動が生じ、この振動は、制御期間TSS2においても残留する。そして、制御期間TSS2において、推定対象吐出部D-Hの圧電素子111fが有する下部電極Zdは、推定対象吐出部D-Hにおいて生じている残留振動に応じて電位を変化させる。換言すれば、制御期間TSS2において、推定対象吐出部D-Hの圧電素子111fが有する下部電極Zdは、推定対象吐出部D-Hにおいて生じている残留振動に起因する圧電素子111fの起電力に応じた電位を示す。そして、当該下部電極Zdの電位は、制御期間TSS2において、検出信号Voutとして検出することができる。
【0086】
図10は、1から2Mまでの任意のmについて、接続状態指定信号SLa[m]、SLb[m]、及び、SLs[m]の生成を説明するための説明図である。接続状態指定回路116は、
図10に従って、個別指定信号Sd[m]をデコードし、接続状態指定信号SLa[m]、SLb[m]、及び、SLs[m]を生成する。
図10に示すように、本実施形態に係る個別指定信号Sd[m]は、大ドットの形成を指定する値(1,1,0)、中ドットの形成を指定する値(1,0,0)、小ドットの形成を指定する値(0,1,0)、インクの非吐出を指定する値(0,0,0)、又は、推定対象吐出部D-Hとしての駆動を指定する値(1,1,1)のいずれかの値を示す。そして、接続状態指定回路116は、個別指定信号Sd[m]が(1,1,0)を示す場合、制御期間Tu1及びTu2において接続状態指定信号SLa[m]をハイレベルとし、個別指定信号Sd[m]が(1,0,0)を示す場合、制御期間Tu1において接続状態指定信号SLa[m]をハイレベルとし、個別指定信号Sd[m]が(0,1,0)を示す場合、制御期間Tu2において接続状態指定信号SLa[m]をハイレベルとし、個別指定信号Sd[m]が(1,1,1)を示す場合、制御期間TSS1及びTSS3において接続状態指定信号SLb[m]をハイレベルとするとともに、制御期間TSS2において接続状態指定信号SLs[m]をハイレベルとし、以上に該当しない場合において各信号をローレベルとする。
【0087】
検出回路117は、上述のとおり、検出信号Voutに基づいて残留振動信号NESを生成する。残留振動信号NESとは、検出信号Voutの振幅を増幅し、また、検出信号Voutからノイズ成分を除去する等することで、検出信号Voutを推定ユニット190における処理に適した波形に整形した信号である。残留振動信号NESは、アナログの信号である。
検出回路117は、例えば、検出信号Voutを増幅させるための負帰還型のアンプと、検出信号Voutの高域周波数成分を減衰させるためのローパスフィルターと、インピーダンスを変換してローインピーダンスの残留振動信号NESを出力するボルテージフォロアと、を含む構成等であってもよい。
【0088】
1-7.推定ユニット190
次に、推定ユニット190について説明する。
【0089】
図11は、推定ユニット190の構成の一例を示すブロック図である。また、
図12は、残留振動信号NES[m]を説明するための説明図である。
図11に示すように、推定ユニット190は、振幅特定回路1900と粘度推定回路1950とを備える。振幅特定回路1900は、残留振動信号NES[m]に基づいて、残留振動信号NES[m]の振幅を示す振幅情報NSPを生成する。粘度推定回路1950は、振幅情報NSPに基づいて、吐出部Dの内部に存在するインクの粘度を推定し、当該推定されたインクの粘度を示す粘度情報NNDを生成する。
【0090】
図11に示すように、振幅特定回路1900は、残留振動信号NES[m]を閾値電位と比較することで、残留振動信号NES[m]を2値化する比較部1910と、比較部1910の比較結果に基づいて、残留振動信号NES[m]の振幅を示す振幅情報NSPを生成する振幅情報生成部1920と、を備える。
【0091】
図11に示すように、比較部1910は、残留振動信号NES[m]の電位と、残留振動信号NES[m]の振幅中心レベルの電位である閾値電位VthWとを比較して、当該比較の結果を示す比較信号CPWを生成する比較回路1911と、残留振動信号NES[m]の電位と、閾値電位VthWよりも高電位の閾値電位VthZとを比較して、当該比較の結果を示す比較信号CPZを生成する比較回路1912と、を備える。具体的には、
図12に示すように、比較回路1911は、残留振動信号NES[m]の電位が閾値電位VthW以上の場合にハイレベルとなる比較信号CPWを生成する。また、比較回路1912は、残留振動信号NES[m]の電位が閾値電位VthZ以上の場合にハイレベルとなる比較信号CPZを生成する。
【0092】
図11に示すように、振幅情報生成部1920は、時間長特定回路1930と振幅算出回路1940と、を含む。時間長特定回路1930は、比較信号CPWがハイレベルである期間の時間長を特定する時間長特定回路1931と、比較信号CPZがハイレベルである期間の時間長を特定する時間長特定回路1932と、を備える。
【0093】
図12に示すように、時間長特定回路1931は、制御期間TSS2において、比較信号CPWがq番目にハイレベルになる期間Wqの時間長TWqを特定し、時間長TWqを示す時間情報NTWを生成する。ここで、変数qは、「q≧1」を満たす自然数である。なお、以下では、制御期間TSS2のうち、残留振動信号NES[m]の電位が、j番目に閾値電位VthWに一致する時刻を時刻ts-jと称する。ここで、変数jは、「j≧1」を満たす自然数である。そして、本実施形態では、期間Wqが、時刻ts-(2*q-1)から時刻ts-2*qまでの期間である場合を、一例として想定する。また、時間長特定回路1931は、期間Wqの開始時刻である時刻ts-(2*q-1)から、期間W(q+1)の開始時刻である時刻ts-(2*q+1)までの時間長を、周期TCqとして特定し、周期TCqを示す時間情報NTCを生成する。すなわち、時間長特定回路1931は、期間Wqの開始時刻から期間W(q+1)の開始時刻までの時間長を、周期TCqとして特定する。
このように、時間長特定回路1931は、制御期間TSS2において、Q個の期間W1~WQと1対1に対応するQ個の時間長TW1~TWQを特定し、当該Q個の時間長TW1~TWQを示すQ個の時間情報NTWを生成するとともに、Q個の期間W1~WQと1対1に対応するQ個の周期TC1~TCQを特定し、当該Q個の周期TC1~TCQを示すQ個の時間情報NTCを生成する。ここで、値Qは、「Q≧2」を満たす自然数である。なお、上述した変数qは、「1≦q≦Q」を満たすこととする。
【0094】
また、時間長特定回路1932は、制御期間TSS2において、比較信号CPZがq番目にハイレベルになる期間の時間長TZqを特定し、時間長TZqを示す時間情報NTZを生成する。なお、
図12に示すように、比較信号CPZがq番目にハイレベルになる期間は、期間Wqの一部の期間である。すなわち、時間長特定回路1932は、期間Wqのうち、比較信号CPZがハイレベルである期間の時間長を、時間長TZqとして特定する。
このように、時間長特定回路1932は、制御期間TSS2において、Q個の期間W1~WQと1対1に対応するQ個の時間長TZ1~TZQを特定し、当該Q個の時間長TZ1~TZQを示すQ個の時間情報NTZを生成する。
【0095】
図11及び
図12に示すように、振幅算出回路1940は、時間情報NTW及び時間情報NTZに基づいて、期間Wqにおける残留振動信号NES[m]の振幅VMqを特定し、振幅VMqを示す振幅情報NSPを生成する。具体的には、振幅算出回路1940は、残留振動信号NES[m]を正弦波に近似することで、以下に示す式(1)を用いて、振幅VMqを特定する。
【0096】
【0097】
ところで、一般的に、残留振動信号NES[m]の振幅VMqは、以下に示す式(2)で表される。ここで、初期振幅Aは、制御期間TSS2が開始された時刻tstにおける残留振動信号NES[m]の振幅であり、時刻tmqは、期間Wqの開始時刻と期間Wqの終了時刻との中間の時刻であり、減衰値λは、残留振動信号NES[m]の減衰率に応じたスカラー値である。
【0098】
【0099】
また、変数q1を、「q1≧1」を満たす自然数とし、変数q2を、「q2>1」且つ「q2>q1」を満たす自然数とした場合、振幅VMq1に対する振幅VMq2の比率は、式(2)に基づいて、以下に示す式(3)で表される。そして、式(3)は、以下に示す式(4)に変形される。更に、式(4)は、時刻tmqから時刻tm(q+1)までの時間長を、周期TCqにより近似することで、以下に示す式(5)に変形される。
【0100】
【0101】
粘度推定回路1950は、期間Wq1から期間W(q2-1)までに対応する(q2-q1)個の時間情報NTCの示す周期TCq1~TC(q2-1)と、期間Wq1及び期間Wq2に対応する2個の振幅情報NSPの示す振幅VMq1及び振幅VMq2とを、式(5)に代入することで、減衰値λを算出する。そして、粘度推定回路1950は、残留振動信号NES[m]に係る減衰値λと、粘度算出情報NSJとに基づいて、推定対象吐出部D-Hとして駆動された吐出部D[m]に充填されているインクの粘度を推定する。ここで、粘度算出情報NSJとは、推定対象吐出部D-Hとして駆動された吐出部D[m]に生じる残留振動信号NES[m]の減衰値λと、吐出部D[m]に充填されているインクの粘度との関係性を示す情報である。具体的には、粘度算出情報NSJは、例えば、既知の粘度を有する一のインクを吐出部D[m]に充填させて、吐出部D[m]を推定対象吐出部D-Hとして駆動することで特定した、吐出部D[m]に生じる残留振動信号NES[m]の減衰値λと、一のインクとは異なる既知の粘度を有する他のインクを吐出部D[m]に充填させて、吐出部D[m]を推定対象吐出部D-Hとして駆動することで特定した、吐出部D[m]に生じる残留振動信号NES[m]の減衰値λと、を用いて、吐出部D[m]に充填されるインクの粘度と、吐出部D[m]に生じる残留振動信号NES[m]の減衰値λとの関係を線形近似した方程式の係数を示す情報であってもよい。粘度算出情報NSJは、例えば、推定ユニット190内の記憶領域に記憶されている。
粘度推定回路1950は、推定対象吐出部D-Hとして駆動された吐出部D[m]に充填されているインクの粘度を推定した場合、当該推定の結果を示す粘度情報NND[m]を出力する。
【0102】
制御回路170は、吐出部D[m]を推定対象吐出部D-Hとして駆動することを指定する印刷信号SIを出力した場合、粘度推定回路1950から取得した粘度情報NND[m]を、吐出部D[m]の番号「m」と関連付けて、処理装置200に送信する。
【0103】
1-8.補完処理の詳細
インクジェットプリンター100は、粘度情報NNDが閾値より高い場合に増粘が進行していると判断して、吐出部Dに吐出異常が有ると判定する。以下、吐出異常が有ると判定された吐出部Dを、異常吐出部D-Sと記載することがある。また、異常吐出部D-Sに含まれるノズルNを、異常ノズルN-Sと記載することがある。吐出部Dに吐出異常が生じた場合に、インクジェットプリンター100は、吐出異常を補完するための複数の補完処理のいずれかの補完処理を実行することにより、画像の質を向上できる。本実施形態では、複数の補完処理は、例えば、波形補正処理と、他色補完処理と、他パス補完処理と、隣接補完処理と、フラッシング処理付き通常印刷処理と、という5つの補完処理がある。
【0104】
図13は、補完処理を説明するための図である。上述したように、本実施形態では、液体吐出ヘッド110のY軸に沿う方向の位置を固定したまま媒体PPをY1方向に移動させることを説明したが、説明を容易にするため、
図13では、媒体PPの位置を固定とし、媒体PPの位置に対するaパス目における液体吐出ヘッド110と、媒体PPに対するa+1パス目における液体吐出ヘッド110とを示してある。aは、1以上の整数である。更に、
図13では、媒体PPのうち、aパス目において液体吐出ヘッド110が第1種類のインク及び第2種類のインクを吐出する吐出領域Rp0と、a+1パス目において液体吐出ヘッド110が第1種類のインク及び第2種類のインクを吐出する吐出領域Rp1とを示してある。以下の記載において、1つのパスにおいてインクを吐出する吐出領域を、吐出領域Rpと記載することがある。本来、吐出領域Rp0のX軸に沿う方向の幅と、吐出領域Rp1のX軸に沿う方向の幅とは略同一であるが、理解を容易にするため、
図13では、吐出領域Rp1のX軸に沿う方向の幅を吐出領域Rp0のX軸に沿う方向の幅に対して短く表示してある。
図13から理解されるように、吐出領域Rp0と吐出領域Rp1とは、一部が重なる。
【0105】
補完処理の説明を容易にするため、第1ノズル列Ln1に区分されるノズルN[m1]が吐出異常を有する場合を想定する。
図13において、m1は、2からM-1までの整数である。即ち、ノズルN[m1]が異常ノズルN-Sである。
【0106】
波形補正処理は、ノズルN[m1]が吐出異常を有する場合に、ノズルN[m1]を含む吐出部Dの圧電素子111fに印加する駆動信号Comの波形を異ならせることにより補完を行う。例えば、ノズルN[m1]が、吐出異常として、駆動信号Comにより規定されるインクの吐出量よりも少ない量のインクが吐出される状態であることを想定する。吐出量を多くさせる態様として、例えば、以下の2つの態様がある。第1の態様として、制御回路170は、波形指定信号dComを変更することにより、駆動信号Comの波形の最低電位と最高電位との電位差を大きくさせる。電位差が大きくなることにより、吐出量が増加する。第2の態様として、制御回路170は、記録データDPに基づいて本来指定するドット波形によって吐出されるインクの量よりも多くインクを吐出するドット波形を指定する個別指定信号Sdを出力する。例えば、制御回路170は、本来であれば小ドット波形PYを指定する個別指定信号Sdを出力する場合、中ドット波形PXを指定する個別指定信号Sdを出力する。
【0107】
他色補完処理は、ノズルN[m1]が吐出異常を有する場合に、第2ノズル列Ln2に区分されるノズルNから第2種類のインクを吐出することにより補完を行う。例えば、ノズルN[m1]が、吐出異常として第1種類のインクが吐出されない状態であることを想定する。インクジェットプリンター100は、第2ノズル列Ln2に区分される複数のノズルNのいずれか1つのノズルNから第2種類のインクを吐出する。第2ノズル列Ln2に区分される複数のノズルNのいずれのノズルNから第2種類のインクを吐出してもよいが、媒体PPに形成される画像の質の向上のため、第2種類のインクが媒体PP上で着弾する位置は、ノズルN[m1]が媒体PPに第1種類のインクを着弾すべき位置に近い程好ましい。
図13では、a+1パス目にノズルN[m1]が媒体PPに第1種類のインクを着弾すべき位置P1を示してある。
【0108】
処理装置200とインクジェットプリンター100とは、他色補完処理を協同して実行する。
図13の例では、制御回路210は、a+1パス目に、ノズルN[m1]とY軸に沿う方向が同一であるノズルN[M+m1]から、第2種類のインクを位置P1に着弾することを示す記録データDPを生成する。記録データDPに基づいて、インクジェットプリンター100は、a+1パス目に、ノズルN[M+m1]から第2種類のインクを位置P1に着弾するように吐出する。
【0109】
他パス補完処理は、ノズルN[m1]が吐出異常を有する場合に、ノズルN[m1]が吐出すべきパスとは異なるパスにおいて第1ノズル列Ln1に区分されるM個のノズルNのうち異常ノズルN-Sとは異なるノズルNがインクを吐出する。
図13に示すように、位置P1は、吐出領域Rp1に含まれるとともに、吐出領域Rp0にも含まれる。
図13に示すように、他パス補完処理は、連続する2つのパスにおいて互いの吐出領域が重なる場合に実行可能である。
図13の例では、インクジェットプリンター100は、aパス目に、ノズルN[M]から第1種類のインクを位置P1に着弾するように吐出する。ノズルN[M]は、aパス目において第1ノズル列Ln1に区分されるM個のノズルNのうち、Y軸に沿う方向の位置が位置P1に最も近いノズルNである。
【0110】
処理装置200とインクジェットプリンター100とは、他パス補完処理を協同して実行する。
図13の例では、制御回路210は、aパス目に、ノズルN[M]から第1種類のインクを位置P1の近傍に吐出することを示す記録データDPを生成する。記録データDPに基づいて、インクジェットプリンター100は、aパス目に、ノズルN[M]から第2種類のインクを位置P1に着弾するように吐出する。
【0111】
隣接補完処理は、ノズルN[m1]が吐出異常を有する場合に、ノズルN[m1]が吐出すべきパスと同じパスにおいて第1ノズル列Ln1に区分されるM個のノズルNのうちノズルN[m1]に隣り合うノズルN[m1-1]又はノズルN[m1+1]から第1種類の液体を吐出することにより補完を行う。
図13の例では、インクジェットプリンター100は、a+1パス目に、ノズルN[m1-1]又はノズルN[m1+1]から第1種類のインクを、位置P1の近傍に着弾するように吐出する。なお、隣接補完処理において、a+1パス目にノズルN[m1-1]又はノズルN[m1+1]から吐出する第1種類のインクの量は、a+1パス目にノズルN[m1]が本来吐出すべき量よりも多いことが好ましいが、同一であってもよい。
【0112】
処理装置200とインクジェットプリンター100とは、隣接補完処理を協同して実行する。
図13の例では、制御回路210は、a+1パス目に、ノズルN[m1-1]又はノズルN[m1+1]から第1種類のインクを、位置P1の近傍に吐出することを示す記録データDPを生成する。記録データDPに基づいて、a+1パス目にノズルN[m1-1]又はノズルN[m1+1]から第1種類のインクを、位置P1の近傍に吐出する。
【0113】
フラッシング処理付き通常印刷処理は、ノズルN[m1]に対してフラッシング処理を実行し、フラッシング処理の後に通常印刷処理を実行する。なお、インクジェットプリンター100は、ノズルN[m1]に対してのみフラッシング処理を実行してもよいし、ノズルN[m1]を含む全てのノズルNに対してフラッシング処理を実行してもよい。
【0114】
1-9.吐出異常の有無の判定精度について
上述したように、粘度情報NNDが示す粘度は、残留振動信号NES[m]に係る減衰値λと、粘度算出情報NSJとに基づいて推定される。そして、上述したように、粘度算出情報NSJは、既知の粘度のインクを用いて生成された情報である。従って、未知のインクがインクジェットプリンター100に使用された場合、推定した粘度の精度が劣化するという問題があった。推定した粘度の推定精度が劣化すると、推定した粘度に基づく判定処理、具体的には、吐出異常の有無の判定精度も劣化するという問題があった。どの種類のインクがインクジェットプリンター100に使用されるかは、ユーザーUが選択することであり、ヘッドメーカーは知り得ない情報である。未知のインクにおいて、残留振動に基づいて正確な粘度を得るためには、インクの密度及びインクのコンプライアンスが必要となるが、ユーザーUがインクの密度及びインクのコンプライアンスを把握していない場合があった。
【0115】
未知のインクがインクジェットプリンター100に使用された場合、粘度情報NNDの推定精度は劣化する可能性があるが、粘度情報NNDが示す粘度の変化の態様は真の粘度の変化の態様に近い傾向にある。より具体的に説明すると、推定精度の劣化により、粘度情報NNDが示す推定粘度そのものは、インクの真の粘度から離れてしまう可能性があるが、インクの真の粘度が上昇した場合には粘度情報NNDが示す推定粘度も上昇し、インクの真の粘度が下降した場合には粘度情報NNDが示す推定粘度も下降する傾向にある。そこで、第1実施形態では、ユーザーUから、ノズルNの吐出異常の有無を判断するための判断基準に関する判断基準情報HDIを受け付ける。インクの真の粘度と推定粘度との差に応じて、ユーザーUが判断基準情報HDIを適切に設定することにより、推定した粘度の推定精度が劣化したとしても、吐出異常の有無の判定精度の劣化を抑制できる。例えば、インクの真の粘度に対して推定粘度が高い場合には、判断基準も高く設定することにより、吐出異常の有無の判定精度の劣化を抑制できる。インクの真の粘度に対して推定粘度が低い場合には、判断基準も低く設定することにより、吐出異常の有無の判定精度の劣化を抑制できる。
【0116】
1-10.適切な補完処理の選択について
また、ノズルNに吐出異常が有ると判定した状態において、仮に、ヘッドメーカーが、自身が製造した液体吐出ヘッド110をインクジェットプリンター100に組み込んだ場合、インクジェットプリンター100に使用されるインクの特性及びプリンター本体の特性もヘッドメーカーには既知であるため、複数の補完処理のうちどの補完処理が最適か、一意に決定することができる。ここで、最適な補完処理とは、例えば、複数の補完処理のうち、ユーザーUの観点において質が最も高い画像が得られる補完処理である。ユーザーUの観点は複数考えられる。例えば、ドット抜けが発生した画像よりも他色のドットが形成された画像が質の高い画像という観点も有り得るし、他色のドットが形成された画像よりもドット抜けが発生した画像が質の高い画像という観点も有り得る。また、最適な補完処理とは、質が最も高い画像が得られる補完処理に限られず、例えば、画像が得られることに要する期間が最も短い補完処理でもよい。なお、ユーザーUは、1つの補完処理を最適な補完処理としても決定してもよいし、複数の補完処理を最適な補完処理として決定してもよい。
【0117】
インクジェットプリンター100_1~100_3では、インクジェットプリンター100に使用されるインクの特性及びプリンター本体の特性を、ヘッドメーカーが一意に決定することはできない。例えば、インクジェットプリンター100をエンドユーザーが使用する場合、産業用として用いられるインクジェットプリンター100では、エンドユーザーごとに多岐にわたるインクを用いる場合もあり、更に、状況に応じて同一のエンドユーザーであっても異なるインクを用いる場合もある。従って、エンドユーザーでなければ、複数の補完処理のうち、最適な補完処理を決定することができない。エンドユーザーが、ヘッドメーカー及びプリンターメーカーに使用するインクの種類を通知して、ヘッドメーカー及びプリンターメーカーが適切な補完処理を設定することにより、最適な補完処理を決定することはできるが、莫大な工数負荷が発生する。また、インクジェットプリンター100を、プリンターメーカーに属する作業者が使用する場合でも、ヘッドメーカーには、インクジェットプリンター100に使用されるインクの特性及びプリンター本体の特性が未知であるため、最適な補完処理を決定することはできない。
【0118】
そこで、第1実施形態では、ユーザーUが適切な補完処理を指定した補完処理指定情報CSIを受け付けることにより、媒体PPに形成される画像の質を向上させることができる。補完処理指定情報CSIは、
図14を用いて後述する。
【0119】
1-11.液体吐出システム10の機能
図14~
図17を用いて、液体吐出システム10の機能について説明する。
【0120】
図14は、液体吐出システム10の機能を説明するための図である。
図14に示すように、サーバー300の制御回路310は、記憶回路320から制御プログラムPM1を読み取り、読み取った制御プログラムPM1を実行することによって、選択部311として機能する。処理装置200の制御回路210は、記憶回路220から制御プログラムPM2を読み取り、読み取った制御プログラムPM2を実行することによって、取得部211と、受付部213と、判断部215と、提案部217として機能する。インクジェットプリンター100は、推定部101として機能する。更に、インクジェットプリンター100及び処理装置200の協同により、実行部103として機能する。
【0121】
また、液体吐出システム10の一連の動作を実行するため、
図14に示すように、記憶回路220は、判断基準テーブル221と、補完関係テーブル223と、入力情報225とを記憶し、記憶回路320は、環境評価値テーブル321を記憶する。
【0122】
選択部311と、取得部211と、受付部213と、判断部215と、提案部217と、推定部101と、実行部103とについて、
図15から
図17までに示すフローチャートを用いて説明する。
【0123】
図15、
図16、及び、
図17は、液体吐出システム10の一連の動作を示すフローチャートである。
図15に示すように、ユーザーUは、ステップSU2において、入力装置260を操作することによって、印刷指示PIを処理装置200に通知する。例えば、ユーザーUは、表示装置270に表示されたウインドウ内の「印刷」ボタンをマウスで押下することにより、印刷指示PIを示す操作情報を処理装置200に通知する。本実施形態では、前述のウインドウ内に、判断基準情報HDIと補完処理指定情報CSIとを受け付け可能な吐出異常検出モード設定画面CDを表示させるか否かを示すウィジェットがあり、このウィジェットがONである状態であるとして説明する。
【0124】
ステップSC2において、処理装置200の制御回路210は、印刷指示PIを受け付ける。印刷指示PIを受け付けた場合、制御回路210は、ステップSC4において、インクジェットプリンター100に、粘度推定指示を送信する。推定部101として機能するインクジェットプリンター100は、ステップSP2において、吐出部D[1]~D[2M]に対する粘度推定処理を実行し、ステップSP4において、吐出部D[1]~D[2M]のそれぞれに対する粘度情報NNDを、処理装置200に送信する。ステップSP4の処理終了後、取得部211として機能する制御回路210は、ステップSC6において、吐出部D[1]~D[2M]のそれぞれに対する粘度情報NNDを取得する。
【0125】
また、印刷指示PIを受け付けた場合、制御回路210は、ステップSC8において、ユーザーUが液体吐出ヘッド110を使用する環境に関する環境情報EIをサーバー300に送信する。
図15では、処理装置200がステップSC6の処理終了後に、ステップSC8を実行しているが、ステップSC8は、ステップSC2の後に実行すればよく、ステップSC4の前に実行してもよいし、ステップSC4と同時に実行してもよい。
【0126】
環境情報EIは、例えば、液体吐出ヘッド110が吐出するインクに関する情報、液体吐出ヘッド110が画像を形成する媒体PPに関する情報、液体吐出ヘッド110の環境温度を示す情報、及び、液体吐出ヘッド110の製造番号のうちいずれか1つの情報又は複数の情報を有する。インクに関する情報は、例えば、インクの色を示す情報、及び、インクの製造元を示す情報の一方又は両方である。媒体PPに関する情報は、例えば、媒体PPの種類を示す情報である。更に、媒体PPに関する情報は、媒体PPの厚さを示す情報を含んでもよい。環境情報EIは、例えば、ユーザーUの入力装置260の操作によって生成される。但し、環境情報EIは、ユーザーUの入力装置260の操作以外によっても生成されてもよい。例えば、インクジェットプリンター100が温度センサーを有する場合には、インクジェットプリンター100は、この温度センサーが測定した温度を示す情報を処理装置200に送信し、処理装置200の制御回路210は、受信した情報を環境温度を示す情報として、サーバー300に送信してもよい。
【0127】
環境情報EIを受信した場合、ステップSS2において、サーバー300の選択部311は、環境情報EIに基づいて、複数の補完処理の中から実行部103が実行することを推奨する一部の補完処理を選択する。以下、実行部103が実行することを推奨する一部の補完処理を、「推奨補完処理」と記載することがある。例えば、選択部311は、
図14に示すように、記憶回路320に記憶された環境評価値テーブル321を参照して、推奨補完処理を選択する。
【0128】
図18は、環境評価値テーブル321の内容の一例を示す図である。環境評価値テーブル321は、環境情報EIが示す各種の情報に対して、複数の補完処理のそれぞれを推奨する度合いを示す評価値を記憶する情報である。
図18の例では、環境評価値テーブル321には、インクに関する情報が、インクの色を示す情報、及び、インクの製造元を示す情報であり、媒体PPに関する情報が、媒体PPの種類を示す情報であるとして説明する。
図18に示す[℃]は、摂氏温度を意味する。
図18に表示されたa11~a15、a21~a25、b11~b15、c11~c15は、評価値を示す整数である。例えば、インクがA社製シアンインクである場合、波形補正処理の評価値はa11であり、他色補完処理の評価値がa12であり、他パス補完処理の評価値がa13であり、隣接補完処理の評価値がa14であり、フラッシング処理付き通常印刷処理がa15であることを示す。環境評価値テーブル321は、ヘッドメーカーによって生成される。
【0129】
評価値の具体的な設定方法としては、ヘッドメーカーは、質が高い画像が得られる補正処理程、評価値を高く設定する。インクに関する情報の一例として、例えば、隣接補完処理では、異常ノズルN-Sに隣り合うノズルNからインクを吐出するため、インクが滲みにくい性質を有する場合に隣接補完処理を実行しても、異常ノズルN-Sが着弾すべき位置の近傍にインクを吐出するため、異常ノズルN-Sが着弾すべき位置のドット抜けが目立ってしまう。一方、インクが滲みやすい性質を有する場合に隣接補完処理を実行すると、異常ノズルN-Sが着弾すべき位置の近傍に着弾されたインクが滲むため、異常ノズルN-Sが着弾すべき位置のドット抜けが目立ちにくくなる。従って、例えば、A社製シアンインクが、B社製シアンインクと比較して滲みやすい性質である場合、ヘッドメーカーは、A社製シアンインクの隣接補完処理の評価値であるa14を、A社製シアンインクの隣接補完処理の評価値であるa24より高く設定する。
【0130】
媒体PPに関する情報、及び、環境温度に関しても、ヘッドメーカーは、質が高い画像が得られる補正処理程、評価値を高く設定する。例えば、媒体PPの種類によって、同一のインクを吐出したとしても発色の程度が異なる場合がある。発色の程度が良い媒体PPでは、例えば、ユーザーUが発色の程度を重視している可能性があるため、他色補完処理の評価値を低く設定してもよい。また、環境温度に関して、一般的に、液体の温度が上昇するほど、液体の粘度が低くなり、滲みやすくなる傾向にある。環境温度が高い程インクの温度も高くなる傾向にあるため、ヘッドメーカーは、環境温度が高い程、隣接補完処理の評価値を高く設定してもよい。
【0131】
また、
図18には記載していないが、液体吐出ヘッド110の製造番号によっても、ヘッドメーカーは、質が高い画像が得られる補正処理ほど、評価値を高く設定してもよい。液体吐出ヘッド110の製造時における組み立て精度、及び、部品の寸法精度に起因して、圧力室CV等の形状がばらつくため、同一の液体吐出ヘッド110に対して同一の駆動信号Comを印加したとしても、吐出量が異なる場合がある。例えば、インクの吐出量が本来の吐出量よりも少ない液体吐出ヘッド110に対しては、電位差が大きくなるように駆動信号Comを補正することにより、吐出異常を解消できる場合がある。ヘッドメーカーは、インクの吐出量が本来の吐出量よりも少ない液体吐出ヘッド110に対する波形補正処理の評価値を高く設定する。
【0132】
選択部311は、環境情報EIが示す各種の情報に対する評価値を、補完処理ごとに合計し、評価値の合計が所定の閾値以上である補完処理を、推奨補完処理として選択する。所定の閾値は、ヘッドメーカーによって設定される。選択部311は、1つの補完処理を推奨補完処理として選択してもよいし、複数の補完処理を推奨補完処理として選択してもよい。例えば、環境情報EIに含まれるインクに関する情報がA社製シアンインクを示し、環境情報EIに含まれる媒体PPに関する情報が印刷用紙を示し、環境温度を示す情報が10[℃]未満を示す場合、選択部311は、波形補正処理の評価値を、a11+b11+c11と算出する。
【0133】
図18には記載していないが、選択部311は、環境情報EIが示す各種の情報の組み合わせによって、特定の補完処理に対する評価値の合計を増減させてもよい。例えば、選択部311は、液体吐出ヘッド110が同系色の複数種類のインクを使用している場合、他色補完処理の評価値の合計を増加させてもよい。
【0134】
ステップSS2の処理終了後、制御回路310は、ステップSS4において、通信装置380を制御して、推奨補完処理を示す推奨補完処理情報RHIを処理装置200に送信する。ステップSS4の処理終了後、ステップSC10において、処理装置200の制御回路210は、サーバー300から、推奨補完処理情報RHIを取得する。
【0135】
吐出部D[1]~D[2M]のそれぞれに対する粘度情報NND及び推奨補完処理情報RHIを受信した場合、処理装置200の制御回路210は、ステップSC12において、吐出異常検出モード設定画面CDの表示処理を実行する。吐出異常検出モード設定画面CDの表示処理について、
図19及び
図20を用いて説明する。
【0136】
図19は、吐出異常検出モード設定画面CDの表示処理の一例を示すフローチャートである。
図20は、吐出異常検出モード設定画面CDの一例を示す図である。吐出異常検出モード設定画面CDの表示処理は、吐出異常検出モード設定画面CDを表示装置270に表示させるための一連の処理である。
【0137】
ステップSD2において、制御回路210は、吐出異常検出モード設定画面CDを示す画像情報を生成する。
図20に示すように、吐出異常検出モード設定画面CDは、吐出状態が異常であると判断するための判断基準をユーザーUに指定させる領域RE1と、この判断基準を特定の条件で変更するモードをユーザーUに指定させる領域RE2と、吐出異常時の対応をユーザーUに指定させる領域RE3と、テスト記録画像を印刷させるか否かをユーザーUに指定させる領域RE4と、OKボタンBt1とを有する。
【0138】
領域RE1は、判断基準情報HDIを受け付けるための領域である。判断基準情報HDIは、ノズルNの吐出状態が異常であると判断するための判断基準に関する情報である。判断基準情報HDIは、判断基準に関する情報として、吐出部Dの推定粘度に対する閾値そのものでもよいし、吐出部Dの推定粘度に対する閾値の大きさの程度を示す情報もよい。
【0139】
領域RE1は、判断基準が指定なしであることを示すラジオボタンRD11と、高い判断基準を指定することを示すラジオボタンRD12と、低い判断基準を指定することを示すラジオボタンRD13と、判断基準をユーザーUが指定することを示すラジオボタンRD14と、判断基準である閾値をユーザーUが入力する入力欄NPとを含む。入力欄NPには、判断基準となる粘度の閾値を入力する。粘度の単位は、パスカル秒である。
図20では、パスカル秒を[Pa・S]と記載してある。
【0140】
領域RE2は、インクごとに判断基準を変更することを示すチェックボックスCB21と、印刷ジョブJBごとに判断基準を変更することを示すチェックボックスCB22と、時間帯ごとに判断基準を変更することを示すチェックボックスCB23とを含む。時間帯とは、本実施形態では、時間帯とは、24時間制で示される開始時刻及び終了時刻とを含む。開始時刻及び終了時刻は、1日の中の時刻の意味である。例えば、開始時刻が11時であり、年月日を含まない。
【0141】
領域RE3は、吐出異常の対応を自動実行することを示すラジオボタンRD31と、指定された補完処理のみ実行することを示すラジオボタンRD32とを含む。更に、領域RE3は、吐出異常時に波形補正処理を実行することを示すチェックボックスCB31と、吐出異常時に他色補完処理を実行することを示すチェックボックスCB32と、吐出異常時に他パス補完処理を実行することを示すチェックボックスCB33と、吐出異常時に隣接補完処理を実行することを示すチェックボックスCB34と、吐出異常時フラッシング処理付き通常印刷処理を実行することを示すチェックボックスCB35と、を含む。
【0142】
領域RE4は、テスト記録画像を印刷することを示すチェックボックスCB41を含む。テスト記録画像は、判断基準情報HDIによって吐出部Dが吐出異常を有すると判定した場合に、補完処理指定情報CSIが示す補完処理によって媒体PPに形成される画像をユーザーUが確認するための画像である。ユーザーUは、テスト記録画像を確認することにより、補完処理指定情報CSIが示す補完処理による画像の質の程度を確認できる。テスト記録画像は、記憶回路220に予め記憶されたテスト記録画像情報が示す画像である。テスト記録画像の大きさは、印刷指示PIによって識別される画像データが示す画像の大きさよりも小さいことが好ましい。また、テスト記録画像の内容は、どのようなものでもよいが、液体吐出ヘッド110の全てのノズルNの吐出状態を確認するため、例えば、液体吐出ヘッド110の全てのノズルNからインクを吐出することにより形成される画像であることが好ましい。但し、テスト記録画像は、印刷指示PIによって識別される画像データが示す画像の部分画像でもよい。
【0143】
ステップSD2の処理終了後、ステップSD4において、制御回路210は、判断基準テーブル221及び補完関係テーブル223に基づいて、吐出異常検出モード設定画面CDの画像情報を更新する。判断基準テーブル221について
図21を用いて説明し、補完関係テーブル223について
図22を用いて説明する。
【0144】
図21は、判断基準テーブル221の内容の一例を示す図である。判断基準テーブル221は、判断基準ごとに、推定粘度に対する閾値と、初期状態で選択される判断基準であるか否かを示す初期選択情報とを対応付けて記憶する。判断基準テーブル221は、複数の判断基準の各々に関する情報である。
図21に示すように、判断基準テーブル221は、1つの判断基準に対して1つのレコードを有する。
【0145】
判断基準テーブル221は、判断基準が指定なしである場合に対応するレコードRC11と、高い判断基準が指定された場合に対応するレコードRC12と、低い判断基準が指定された場合に対応するレコードRC13と、判断基準をユーザーUが指定する場合に対応するレコードRC14とを有する。例えば、レコードRC11は、判断基準が指定なしである場合に、推定粘度に対する閾値が閾値μth1であり、且つ、初期状態で使用される判断基準であることを示す。また、レコードRC12は、高い判断基準が指定された場合に、推定粘度に対する閾値が閾値μth2であり、且つ、初期状態で使用される判断基準ではないことを示す。また、レコードRC12は、低い判断基準が指定された場合に、推定粘度に対する閾値が閾値μth3であり、且つ、初期状態で使用される判断基準ではないことを示す。以下の記載では、閾値μth1、閾値μth2、及び、閾値μth3を区別せずに、閾値μthと総称することがある。閾値μth1、閾値μth2、及び、閾値μth3の大小関係について、閾値μth3が最も大きく、閾値μth1が次に大きく、閾値μth2が最も小さい。なお、判断基準ごとの初期選択情報が、「初期状態で使用される判断基準に関する情報」の一例である。
【0146】
ステップSD4において、制御回路210は、ラジオボタンRD11、RD12、RD13、及び、RD14のうち、判断基準テーブル221の初期選択情報を参照して、初期状態で選択される判断基準のラジオボタンを選択する。
図21の例では、制御回路210は、ラジオボタンRD11を選択した吐出異常検出モード設定画面CDとなるように、吐出異常検出モード設定画面CDの画像情報を更新する。
【0147】
図22は、補完関係テーブル223の内容の一例を示す図である。補完関係テーブル223は、補完処理ごとに、自動実行時に実行される補完処理であるか否かを示す自動実行情報と、初期状態で選択される補完処理であるか否かを示す初期選択情報とを対応付けて記憶する。
図22に示すように、補完関係テーブル223は、1つの補完処理に対して1つのレコードを有する。
【0148】
補完関係テーブル223は、波形補正処理に関するレコードRC21と、他色補完処理に関するレコードRC22と、他パス補完処理に関するレコードRC23と、隣接補完処理に関するレコードRC24と、フラッシング処理付き通常印刷処理に関するレコードRC25とを有する。
【0149】
ステップSD4において、制御回路210は、チェックボックスCB31、CB32、CB33、CB34、CB35について、補完関係テーブル223の自動実行情報を参照して、初期状態で選択される補完処理のチェックボックスを選択する。
図22の例では、補完関係テーブル223に登録された全ての補完処理が、初期状態で選択される補完処理であることを示している。従って、制御回路210は、チェックボックスCB31、CB33、CB34、CB35を選択した吐出異常検出モード設定画面CDとなるように、吐出異常検出モード設定画面CDの画像情報を更新する。
【0150】
ステップSD6において、制御回路210は、記憶回路220に記憶された入力情報225に基づいて、吐出異常検出モード設定画面CDを示す画像情報を更新する。入力情報225は、ユーザーUの過去の入力内容を示す。例えば、入力情報225は、ラジオボタンRD11~RD14のうちユーザーUが過去に選択したチェックボックスを示す第1過去情報と、ラジオボタンRD31及びRD32のうちユーザーUが過去に選択したチェックボックスを示す第2過去情報と、チェックボックスCB21~CB23、CB31~CB35、及び、CB41のそれぞれについてユーザーUが過去に選択したか否かを示す第3過去情報と、入力欄NPに入力された数値を示す第4過去情報とを有する。例えば、制御回路210は、第1過去入力情報が示すチェックボックスと、第2過去入力情報が示すチェックボックスと、第3過去情報が過去に選択されたことを示すチェックボックスとを選択し、第4過去情報が示す数値を入力欄NPに設定する。なお、入力情報225が記憶回路220に記憶されていない場合には、制御回路210は、ステップSD6の処理を実行しない。
【0151】
ステップSD6の処理終了後、提案部217は、推奨補完処理をユーザーUに提案する。具体的には、提案部217としても機能する制御回路210は、ステップSD8において、推奨補完処理を示す推奨補完処理情報RHIに基づいて、吐出異常検出モード設定画面CDを示す画像情報を更新する。
図20では、推奨補完処理情報RHIが波形補正処理と他パス補完処理とを示す例を示す。
図20では、チェックボックスCB31及びCB33に対して右方向に、波形補正処理と他パス補完処理とを推奨することを示す「推奨」文字列RMDが表示されてある。但し、ユーザーUに提案する態様は、
図20の態様に限らない。例えば、提案部217は推奨補完処理情報RHIが波形補正処理を示す場合、「波形補正処理を推奨します」という文字列を表示してもよい。
【0152】
ステップSD8の処理終了後、ステップSD10において、表示装置270は、制御回路210の制御のもと、ステップSD4、ステップSD6、ステップSD8のそれぞれの処理によって更新された画像情報に基づいて吐出異常検出モード設定画面CDを表示する。ステップSD6によって更新された画像情報が示す画像が、「更新画像」の一例である。そして、ステップSD12において、制御回路210は、ユーザーUの操作に応じた操作情報を受け付ける。ステップSD12の処理終了後、制御回路210は、ステップSD14において、操作情報に応じて吐出異常検出モード設定画面CDを更新する。操作情報に応じた具体的な更新内容について説明する。
【0153】
制御回路210は、操作情報がラジオボタンRD11~RD14のいずれかを選択する操作を示す場合、選択されたラジオボタンが押下された状態となり、残余のラジオボタンの押下が解除された状態となるように吐出異常検出モード設定画面CDを更新する。更に、操作情報がラジオボタンRD14を選択する操作を示す場合、制御回路210は、入力欄NPが入力可能に変更するように吐出異常検出モード設定画面CDを更新する。制御回路210は、操作情報がラジオボタンRD31、RD32の一方を選択する操作を示す場合、選択された一方のラジオボタンが押下された状態となり、他方のラジオボタンの押が解除された状態となるように吐出異常検出モード設定画面CDを更新する。制御回路210は、操作情報がチェックボックスCB21~CB23、CB31~CB35、CB41のうちいずれかのチェックボックスを選択する操作を示す場合、選択されたチェックボタンが押下される状態となるように吐出異常検出モード設定画面CDを更新する。操作情報がチェックボックスCB21~CB23、CB31~CB35のうちいずれかの選択を解除する操作を示す場合、選択を解除されたチェックボックスの押下が解除された状態となるように吐出異常検出モード設定画面CDを更新する。
【0154】
上述したように、補完関係テーブル223に登録された全ての補完処理が、初期状態で選択される補完処理であることを示している。従って、チェックボックスCB31~CB35のうち選択を解除することは、実行部103による実行をユーザーUが許可しない補完処理を選択しているともいえる。
【0155】
更に、操作情報がチェックボックスCB21を選択する操作を示す場合、制御回路210は、領域RE1がインクごとの判断基準を入力可能となるように変化するように、吐出異常検出モード設定画面CDを更新する。インクごとの判断基準を入力可能となる画面例について、
図23を用いて説明する。
【0156】
図23は、インクごとの判断基準が入力可能である吐出異常検出モード設定画面CDの一部分の一例を示す図である。チェックボックスCB21が選択されると、タブコントロールTA1が表示される。タブコントロールTA1は、インクごとに設けられたタブTB1と、1つのパネルPNとを有する。
図23の例では、タブコントロールTA1は、インクごとに設けられた4つのタブTB1として、シアンインクを吐出する吐出部Dの判断基準を入力可能とするタブTB1-Cと、マゼンタインクを吐出する吐出部Dの判断基準を入力可能とするタブTB1-Mと、イエローインクを吐出する吐出部Dの判断基準を入力可能とするタブTB1-Yと、ブラックインクを吐出する吐出部Dの判断基準を入力可能とするタブTB1-Kとを有する。
【0157】
タブコントロールTA1は、4つのタブTB1のうち選択されたタブに対応するインクの判断基準が入力可能である。
図23の例では、タブTB1-Cが選択されている。従って、
図23の例では、タブコントロールTA1は、シアンインクの判断基準が指定なしであることを示すラジオボタンRD11-ICと、シアンインクの判断基準が高い判断基準であることを示すラジオボタンRD12-ICと、シアンインクの判断基準が低い判断基準であることを示すラジオボタンRD13-ICと、シアンインクの判断基準をユーザーUが指定することを示すラジオボタンRD14-ICと、シアンインクの判断基準である閾値をユーザーUが入力する入力欄NP-ICとを含む。
【0158】
タブコントロールTA1は、
図23の例では非表示であるが、タブTB1-M、タブTB1-Y、タブTB1-Kのそれぞれに対応した判断基準を指定するラジオボタン及び閾値を入力する入力欄を有する。以下、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクのそれぞれの判断基準が指定なしであることを示すラジオボタンを総称して、ラジオボタンRD11-Iと記載することがある。同様に、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクのそれぞれの判断基準が高い判断基準であることを示すラジオボタンを総称して、ラジオボタンRD12-Iと記載することがある。シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクのそれぞれの判断基準が低い判断基準であることを示すラジオボタンを総称して、ラジオボタンRD13-Iと記載することがある。シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクのそれぞれの判断基準をユーザーUが指定することを示すラジオボタンを総称して、ラジオボタンRD14-Iと記載することがある。シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクのそれぞれの判断基準である閾値をユーザーUが入力する入力欄を総称して、入力欄NP-Iと記載することがある。
【0159】
説明を
図19のステップSD14に戻す。操作情報がチェックボックスCB22を選択する操作を示す場合には、チェックボックスCB22を選択するように吐出異常検出モード設定画面CDを更新する以外には、特に処理を行わない。ただし、チェックボックスCB22を選択した状態でOKボタンBt1が押下された場合には、この処理後にユーザーUが印刷指示PIを処理装置200に通知した場合、吐出異常検出モード設定画面CDを表示させるか否かを示すウィジェットがオフである場合でも、領域RE1の各項目を設定する画面が表示される。印刷指示PI後に領域RE1の各項目を設定する画面が表示されることにより、後述するステップSC24の処理、ステップSC30、及び、ステップSC32のうちいずれかの処理によって印刷ジョブJBが生成されるため、印刷ジョブJBが生成される度に判断基準を変更できる。
【0160】
操作情報がチェックボックスCB23を選択する操作を示す場合、制御回路210は、領域RE1が時間帯ごとの判断基準を入力可能となるように変化するように、吐出異常検出モード設定画面CDを更新する。時間帯ごとの判断基準を入力可能となる画面例について、
図24を用いて説明する。
【0161】
図24は、時間帯ごとの判断基準が入力可能である吐出異常検出モード設定画面CDの一部分の一例を示す図である。チェックボックスCB23が選択されると、タブコントロールTA2が表示される。タブコントロールTA2には、時間帯ごとに設けられたタブTB2と、1つのパネルPNとを有する。
図24の例では、タブコントロールTA2は、時間帯ごとに設けられた3つのタブTB2として、22時から8時までの吐出部Dの判断基準を入力可能とするタブTB2-1と、8時から16時までの吐出部Dの判断基準を入力可能とするタブTB2-2と、16時から22時までの吐出部Dの判断基準を入力可能とするタブTB2-3とを有する。
図24の例では、1日の時間帯を3つの時間帯に分割し、分割した3つの時間帯のそれぞれに対応する判断基準を入力可能とする態様を示してあるが、これに限らない。例えば、1日の時間帯を分割した2つの時間帯のそれぞれに対応する判断基準を入力可能とする態様でもよいし、4つ以上に時間帯のそれぞれに対応する判断基準を入力可能とする態様でもよい。
【0162】
タブコントロールTA2は、3つのタブTB2のうち選択されたタブに対応するインクの判断基準が入力可能である。
図24の例では、タブTB2-1が選択されている。従って、
図24の例では、タブコントロールTA2は、22時から8時までの判断基準が指定なしであることを示すラジオボタンRD11-T1と、22時から8時までの判断基準が高い判断基準であることを示すラジオボタンRD12-T1と、22時から8時までの判断基準が低い判断基準であることを示すラジオボタンRD13-T1と、22時から8時までの判断基準をユーザーUが指定することを示すラジオボタンRD14-T1と、22時から8時までの判断基準である閾値をユーザーUが入力する入力欄NP-T1とを含む。
【0163】
タブコントロールTA2は、
図24の例では非表示であるが、タブTB2-2、タブTB2-3のそれぞれに対応した判断基準を指定するラジオボタン及び閾値を入力する入力欄を有する。以下、複数の時間帯のそれぞれの判断基準が指定なしであることを示すラジオボタンを総称して、ラジオボタンRD11-Tと記載することがある。同様に、複数の時間帯のそれぞれの判断基準が高い判断基準であることを示すラジオボタンを総称して、ラジオボタンRD12-Tと記載することがある。複数の時間帯のそれぞれの判断基準が低い判断基準であることを示すラジオボタンを総称して、ラジオボタンRD13-Tと記載することがある。複数の時間帯のそれぞれの判断基準をユーザーUが指定することを示すラジオボタンを総称して、ラジオボタンRD14-Tと記載することがある。複数の時間帯のそれぞれの判断基準である閾値をユーザーUが入力する入力欄を総称して、入力欄NP-Tと記載することがある。
【0164】
なお、本実施形態では、チェックボックスCB21及びCB23が同時に選択されないことを想定する。
【0165】
説明を
図19のステップSD14に戻す。操作情報がチェックボックスCB22を選択する操作を示す場合には、チェックボックスCB22を選択するように吐出異常検出モード設定画面CDを更新する以外には、特に処理を行わない。
【0166】
ステップSD14の処理終了後、制御回路210は、ステップSD16において、操作情報がOKボタンBt1の押下を示すか否かを判断する。ステップSD16の判断結果が否定である場合、制御回路210は、処理をステップSD12に戻す。ステップSD16の判断結果が肯定である場合、受付部213として機能する制御回路210は、ステップSD18において、吐出異常検出モード設定画面CDの現在の状態に基づいて、判断基準情報HDIと、補完処理指定情報CSIと、印刷対象指定情報TPIとを受け付ける。印刷対象指定情報TPIは、媒体PPに形成する画像を指定する情報である。
【0167】
チェックボックスCB21及びCB23が選択されていない状態を説明する。受付部213は、ラジオボタンRD11~RD13のいずれかのラジオボタンが選択されている場合、この選択されたラジオボタンを示す情報を判断基準情報HDIとして受け付ける。ラジオボタンRD11を示す情報は、推定粘度に対する閾値の大きさが中程度であることを示す情報と同義である。ラジオボタンRD12を示す情報は、推定粘度に対する閾値の大きさが小さいことを示す情報と同義である。ラジオボタンRD13を示す情報は、推定粘度に対する閾値の大きさが大きいことを示す情報と同義である。受付部213は、ラジオボタンRD14が選択されており、且つ、入力欄NPに数値が入力されている場合、入力欄NPに入力された数値を判断基準情報HDIとして受け付ける。
【0168】
ユーザーUが領域RE1内のラジオボタンRD11、RD12、RD13、RD14、及び、入力欄NPのいずれも選択せずにOKボタンBt1が押下された場合、初期状態で選択されるラジオボタンを示す情報を、判断基準情報HDIとして受け付ける。初期状態で選択されるラジオボタンは、判断基準テーブル221の初期選択情報に基づき選択される。
図20及び
図21の例では、受付部213は、ラジオボタンRD11を示す情報を判断基準情報HDIとして受け付ける。
【0169】
次に、チェックボックスCB21が選択されている状態を説明する。受付部213は、複数種類のインクのそれぞれについて、ラジオボタンRD11-I~RD13-Iのうち選択されたラジオボタンを示す情報、又は、入力欄NP-Iに入力された数値を含む判断基準情報HDIを受け付ける。以下の記載では、複数種類のインクのうち1種類のインクに対してラジオボタンRD11-I~RD13-Iのうち選択されたラジオボタンを示す情報、又は、当該1種類のインクに対する入力欄NPに入力された数値を、「インク別情報」と記載することがある。従って、チェックボックスCB21が選択されている状態では、受付部213は、複数のインクのそれぞれに対するインク別情報を含む判断基準情報HDIを受け付ける。
【0170】
また、チェックボックスCB23が選択されている状態を説明する。受付部213は、複数の時間帯のそれぞれについて、ラジオボタンRD11-T~RD13-Tのうち選択されたラジオボタンを示す情報、又は入力欄NP-Tに入力された数値を含む判断基準情報HDIを受け付ける。以下の記載では、複数の時間帯のうち1つの時間帯に対してラジオボタンRD11-T~RD13-Tのうち選択されたラジオボタンを示す情報、又は、当該1つの時間帯に対する入力欄NPに入力された数値を、「時間帯別情報」と記載することがある。従って、チェックボックスCB23が選択されている状態では、受付部213は、複数の時間帯の各々に対する時間帯別情報を含む判断基準情報HDIを受け付ける。
【0171】
更に、受付部213は、ラジオボタンRD31が選択されている場合、補完関係テーブル223の自動実行情報を補完処理指定情報CSIとして受け付ける。例えば、
図22の例では、受付部213は、波形補正処理、他パス補完処理、隣接補完処理、フラッシング処理付き通常印刷処理を自動で実行する自動実行情報を補完処理指定情報CSIとして受け付ける。また、受付部213は、ラジオボタンRD32が選択されている場合、チェックボックスCB31、CB32、CB33、CB34、CB35のうち選択されているチェックボックスに対応する補完処理を示す情報を、補完処理指定情報CSIとして受け付ける。
【0172】
チェックボックスCB41が選択された状態でOKボタンBt1が押下された場合、受付部213は、テスト記録画像を媒体PPに形成することを示す印刷対象指定情報TPIを受け付ける。チェックボックスCB41が選択されていない状態でOKボタンBt1が押下された場合、印刷指示PIによって識別される画像データが示す画像を媒体PPに形成することを示す印刷対象指定情報TPIを受け付ける。
【0173】
ステップSD18の処理終了後、制御回路210は、ステップSD20において、吐出異常検出モード設定画面CDの現在の状態に基づいて入力情報225を更新し、
図19に示す一連の処理を終了する。
【0174】
説明を
図15、
図16及び
図17に戻す。ステップSC12の処理終了後、判断部215として機能する制御回路210は、ステップSC20において、吐出部D[1]~D[2M]のそれぞれに対して、ステップSC6によって取得した粘度情報NNDと、判断基準情報HDIとに基づいて、吐出異常の有無を判定する。制御回路210は、吐出部D[1]~D[2M]にそれぞれに対して、吐出異常の有無を示す判断結果情報HI[1]~HI[2M]を生成する。
【0175】
ステップSC20の具体例について説明する。判断部215は、1から2Mまでの全てのmについて、粘度情報NND[m]が示す推定粘度が判断基準情報HDIに基づく閾値以上である場合、吐出部D[m]が吐出異常を有する、即ち、吐出部D[m]の吐出状態が異常であると判断する。一方、判断部215は、1から2Mまでの全てのmについて、粘度情報NND[m]が示す推定粘度が判断基準情報HDIに基づく閾値未満である場合、吐出部D[m]が吐出異常を有さない、即ち、吐出状態が正常であると判断する。
【0176】
まず、チェックボックスCB21及びCB23が選択されていない状態について説明する。判断基準情報HDIがラジオボタンRD11を示す場合、判断部215は、吐出部D[1]~D[2M]のそれぞれの粘度情報NNDと、判断基準テーブル221のレコードRC11の閾値μth1とを比較する。判断基準情報HDIがラジオボタンRD12を示す場合、判断部215は、吐出部D[1]~D[2M]のそれぞれの粘度情報NNDと、判断基準テーブル221のレコードRC12の閾値μth2とを比較する。判断基準情報HDIがラジオボタンRD13を示す場合、判断部215は、吐出部D[1]~D[2M]のそれぞれの粘度情報NNDと、判断基準テーブル221のレコードRC13の閾値μth3とを比較する。判断基準情報HDIが入力欄NPに入力された数値である場合、判断部215は、吐出部D[1]~D[2M]のそれぞれの粘度情報NNDと、判断基準情報HDIである数値とを比較する。
【0177】
次に、チェックボックスCB21が選択されていた状態について説明する。
図24の例を用いると、判断部215は、吐出部D[1]~D[2M]のうちシアンインクを吐出する吐出部Dの吐出異常の有無を、当該吐出部Dの粘度情報NNDと、判断基準情報HDIに含まれるシアンインクのインク別情報とに基づいて判断する。また、判断部215は、吐出部D[1]~D[2M]のうちマゼンタインクを吐出する吐出部Dの吐出異常の有無を、当該吐出部Dの粘度情報NNDと、判断基準情報HDIに含まれるマゼンタインクのインク別情報とに基づいて判断する。判断部215は、吐出部D[1]~D[2M]のうちイエローインクを吐出する吐出部Dの吐出異常の有無を、当該吐出部Dの粘度情報NNDと、判断基準情報HDIに含まれるイエローインクのインク別情報とに基づいて判断する。判断部215は、吐出部D[1]~D[2M]のうちブラックインクを吐出する吐出部Dの吐出異常の有無を、当該吐出部Dの粘度情報NNDと、判断基準情報HDIに含まれるブラックインクのインク別情報とに基づいて判断する。
【0178】
次に、チェックボックスCB23が選択されていた状態について説明する。
図24の例を用いると、判断部215は、例えば、現在時刻が22時から8時までの時間帯に含まれる場合、吐出部D[1]~D[2M]のそれぞれの吐出部Dの吐出異常の有無を、当該吐出部Dの粘度情報NNDと、判断基準情報HDIに含まれる22時から8時までの時間帯に対する時間帯別情報と基づいて判断する。
【0179】
ステップSC20の処理終了後、制御回路210は、ステップSC22において、吐出部D[1]~D[2M]の判断結果情報HI[1]~HI[2M]を参照して、吐出異常を有する吐出部Dがあるか否かを判定する。ステップSC22の判定結果が否定である場合、言い換えれば、吐出異常を有する吐出部Dが無い場合、制御回路210は、ステップSC24において、印刷指示PIに基づいて、印刷ジョブJBを生成する。そして、制御回路210は、ステップSC26において、印刷ジョブJBを、インクジェットプリンター100に送信する。
【0180】
ステップSC22の判定結果が肯定である場合、実行部103は、ステップSC28、SC30、SC32、SC34、SP12、SP14、SP16、SP18、SP20によって、受付部213が受け付けた補完処理指定情報CSIが示す補完処理を実行する。以下、ステップSC28、SC30、SC32、SC34、SP12、SP14、SP16、SP18、SP20について説明する。
【0181】
ステップSC22の判定結果が肯定である場合、制御回路210は、ステップSC28において、印刷対象指定情報TPIがテスト記録画像を媒体PPに形成することを示すかを判断する。
【0182】
ステップSC28の判定結果が肯定である場合、制御回路210は、ステップSC30において、吐出異常を有する吐出部Dを示す情報と、補完処理を示す補完処理指定情報CSIと、テスト記録画像情報とに基づいて、印刷ジョブJBを生成する。ステップSC30の処理によって生成される印刷ジョブJBに含まれる記録データDPは、テスト記録画像情報に対してRIP処理または色変換処理等の各種処理を実行して得られたデータである。
【0183】
ステップSC28の判定結果が否定である場合、制御回路210は、ステップSC32において、吐出異常を有する吐出部Dを示す情報と、補完処理指定情報CSIと、印刷指示PIに基づいて、印刷ジョブJBを生成する。ステップSC24の判定結果が否定である場合とは、印刷対象指定情報TPIが印刷指示PIによって識別される画像データが示す画像を媒体PPに形成することを示す場合である。
【0184】
ステップSC30及びステップSC32の処理において、補完処理指定情報CSIが、他色補完処理、他パス補完処理と、隣接補完処理とのうち1つの補完処理又は複数の補完処理を示す場合、制御回路210は、
図13を用いて説明した方法に従って、記録データDPを生成する。
【0185】
ステップSC30の処理終了後、又は、ステップSC32の処理終了後、制御回路210は、ステップSC34において、通信装置240を介して、印刷ジョブJBと補完処理指定情報CSIと吐出異常を有する吐出部Dを示す情報とを、インクジェットプリンター100に送信する。
【0186】
ステップSC26の処理終了後、又は、ステップSC34の処理終了後、制御回路210は、インクジェットプリンター100の応答を待ち受ける。
【0187】
インクジェットプリンター100が印刷ジョブJBと補完処理指定情報CSIと吐出異常を有する吐出部Dを示す情報とを受信した場合、又は、インクジェットプリンター100が印刷ジョブJBを受信した場合、制御回路170は、ステップSP12において、補完処理指定情報CSIが「フラッシング処理付き通常印刷処理」を示すか否かを判定する。なお、インクジェットプリンター100が補完処理指定情報CSIを受信していない場合、制御回路170は、ステップSP12の判定結果が否定であると判定する。ステップSP12の判定結果が肯定である場合、ステップSP14において、インクジェットプリンター100は、吐出異常を有する吐出部Dに対してフラッシング処理を実行する。
【0188】
ステップS12の判定結果が否定である場合、又は、ステップSP14の処理終了後、制御回路170は、ステップSP16において、補完処理指定情報CSIが「波形補正処理」を示すか否かを判定する。なお、インクジェットプリンター100が補完処理指定情報CSIを受信していない場合、制御回路170は、ステップSP16の判定結果が否定であると判定する。ステップSP16の判定結果が肯定である場合、制御回路170は、ステップSP18において、吐出異常を有する吐出部Dの圧電素子111fに印加する駆動信号Comの波形を補正する。
【0189】
ステップSP16の判定結果が否定である場合、又は、ステップSP18の処理終了後、制御回路170は、ステップSP20において、印刷ジョブJBに基づき印刷処理を実行する。ステップSP20の処理終了後、制御回路170は、ステップSP22において、印刷処理の終了を処理装置200に通知する。ステップSP22の処理終了後、インクジェットプリンター100は、
図15から
図17までの一連の処理を終了する。
【0190】
処理装置200が印刷処理の終了を受信した場合、制御回路210は、ステップSC36において、印刷対象指定情報TPIがテスト記録画像を媒体PPに形成することを示すか否かを判定する。ステップSC36の判定結果が肯定である場合、制御回路210は、処理をステップSC12に戻す。処理をステップSC12に戻すことにより、吐出異常検出モード設定画面CDが再び表示される。ユーザーUは、媒体PPに形成されたテスト記録画像を確認して、例えば、判断基準情報HDIが正しいと判断し、且つ、補完処理指定情報CSIが示す補完処理による画像の質の程度が良いと判断した場合、チェックボックスCB41の選択を解除する。判断基準情報HDIが正しくない場合とは、例えば、以下に示す2つの状況がある。第1の状況は、吐出異常を有しており媒体PPにインクが正しく吐出されていないのにも関わらず、吐出異常を有さないと判断されてしまい補完処理が実行されない状況である。第2の状況は、吐出異常を有さず媒体PPにインクが正しく吐出されているにも関わらず、吐出異常を有すると判断されてしまい補完処理が実行されている場合である。判断基準情報HDIが正しくない場合、ユーザーUは、ラジオボタンRD11、RD12、RD13、RD14のうち選択されているラジオボタンを変更する、又は、入力欄NPに入力された数値を変更する。ユーザーUが選択した補完処理による画像の質の程度が悪いと判断した場合、ユーザーUは、チェックボックスCB31、CB32、CB33、CB34、及び、CB35のうち選択されているチェックボックスを変更する。ステップSC36の判定結果が否定である場合、処理装置200は、
図15から
図17までの一連の処理を終了する。
【0191】
1-12.第1実施形態のまとめ
以下、液体吐出ヘッド110に設けられた第1ノズル列Ln1に区分されるm1番目のノズルN[m1]を例として、吐出異常の有無の判定精度についてと、適切な補完処理の選択についてとのそれぞれについて説明する。m1は、1以上且つM以下の整数である。なお、ノズルN[m1]が、「第1ノズル」の一例である。
【0192】
1-12-1.吐出異常の有無の判定精度に関するまとめ
以上説明したように、第1実施形態に係る液体吐出システム10は、第1種類のインクを吐出するノズルN[m1]が設けられた液体吐出ヘッド110の動作を制御するためのシステムである。液体吐出システム10は、ノズルN[m1]の吐出状態を示す粘度情報NND[m1]を取得する取得部211と、ユーザーUの操作に応じて、ノズルN[m1]の吐出状態が異常であると判断するための判断基準に関する判断基準情報HDIを受け付ける受付部213と、粘度情報NND[m1]と判断基準情報HDIとに基づいて、ノズルN[m1]の吐出異常の有無を判断する判断部215と、を有する。
第1実施形態に係る液体吐出システム10は、ユーザーUが判断基準情報HDIを適切に設定することにより、推定した粘度の精度が劣化したとしても、吐出異常の有無の判定精度の劣化を抑制できる。
なお、吐出部D[m1]の粘度情報NND[m1]が、「第1情報」の一例である。判断基準情報HDIは、「第2情報」の一例である。
【0193】
また、第1実施形態に係る液体吐出システム10は、ノズルN[m1]の吐出状態が異常であると判断するための複数の判断基準の各々に関する情報である判断基準テーブル221を記憶する記憶回路220を更に備え、判断基準情報HDIは、複数の判断基準の中からユーザーUにより選択された判断基準に関する情報である。
第1実施形態に係る液体吐出システム10によれば、ユーザーUは、記憶回路220に予め記憶された判断基準テーブル221から、判断基準を選択できる。
【0194】
判断基準情報HDIは、ユーザーUによって入力された判断基準に関する情報であってもよい。
第1実施形態に係る液体吐出システム10によれば、ユーザーUが具体的な判断基準を設定できる。例えば、ユーザーUは、判断基準を微調整できる。
【0195】
また、判断基準テーブル221は、ノズルN[m1]の吐出状態が異常であると判断するための複数の判断基準のうち、初期状態で使用される判断基準に関する初期選択情報を記憶し、受付部213は、ユーザーUによって初期状態で使用される判断基準が選択された場合、初期状態で使用される判断基準に関する情報を判断基準情報HDIとして受け付ける。
第1実施形態に係る液体吐出システム10によれば、ユーザーUがインクに対する適切な判断基準を把握していない場合でも、初期状態で使用される判断基準に関する情報に基づいて、ノズルN[m1]の吐出異常の有無を判定できる。
【0196】
ノズルN[m1]は、第1ノズル列Ln1に区分されるため、第1種類のインクを吐出する。更に、第2ノズル列Ln2に区分されるノズルN[m2]を用いて、吐出異常の有無の判定精度について説明する。m2は、M+1以上且つ2M以下の整数である。液体吐出ヘッド110には、更に、第1種類のインクとは異なる第2種類のインクを吐出するノズルN[m2]が設けられ、判断基準情報HDIは、第1種類のインクのインク別情報と、第2種類のインクのインク別情報とを含んでもよい。取得部211は、更に、ノズルN[m2]の吐出状態を示す粘度情報NND[m2]を取得し、判断部215は、第1種類のインクのインク別情報と粘度情報NND[m1]とに基づいて、ノズルN[m1]の吐出異常の有無を判断し、第2種類のインクのインク別情報と粘度情報NND[m2]とに基づいて、ノズルN[m2]の吐出異常の有無を判断する。
インクごとにインクの特性が異なるため、吐出異常の有無を判断するための判断基準も、インクごとに設定できることが好ましい。第1実施形態に係る液体吐出システム10によれば、複数種類のインクを1つの判断基準情報HDIを用いて吐出異常の有無を判断する態様と比較して、吐出異常の有無の判断精度を向上できる。
なお、ノズルN[m2]が、「第2ノズル」の一例である。吐出部D[m2]の粘度情報NND[m2]が、「第5情報」の一例である。第1種類のインクのインク別情報は、「第3情報」の一例である。第2種類のインクのインク別情報は、「第4情報」の一例である。
【0197】
また、受付部213は、印刷ジョブJBが生成される度に、判断基準情報HDIを受け付け可能であってもよい。
印刷ジョブJBによる印刷部数が多い場合、判断基準を低くすると、本来であれば吐出異常であるにも関わらず吐出異常でないと判断して補完処理が実行されず、質が低下した画像が多く形成される虞がある。従って、ユーザーUには、印刷ジョブJBによる印刷部数が多い程、判断基準を高く設定したいという要求がある。第1実施形態に係る液体吐出システム10によれば、印刷ジョブJBが生成される度に、判断基準情報HDIを受け付け可能とすることにより、ユーザーUは、印刷部数が多い程判断基準を高くして、質が低下した画像が多く形成されることを抑制できる。
【0198】
また、判断基準情報HDIは、複数の時間帯のうち第1時間帯に対する時間帯別情報と、第1時間帯と重ならない第2時間帯に対する時間帯別情報とを含んでもよい。第1時間帯に対する時間帯別情報は、第1時間帯に判断部215がノズルN[m1]の吐出異常の有無を判断する場合にノズルN[m1]の吐出状態が異常であると判断するための判断基準に関する情報である。第2時間帯に対する時間帯別情報は、第2時間帯に判断部215がノズルN[m1]の吐出異常の有無を判断する場合にノズルN[m1]の吐出状態が異常であると判断するための判断基準に関する情報である。判断部215は、現在時刻が第1時間帯に含まれる場合、粘度情報NND[m1]と第1時間帯に対する時間帯別情報とに基づいて、ノズルN[m1]の吐出異常の有無を判断し、現在時刻が第2時間帯に含まれる場合、粘度情報NND[m1]と第2時間帯に対する時間帯別情報とに基づいて、ノズルN[m1]の吐出異常の有無を判断する。
ユーザーUには、時間帯に応じて判断基準を変更させたい要求がある。例えば、深夜に印刷処理を実行させる場合には、媒体PPに形成される画像を確認する作業員がいない可能性が高いため、判断基準を低くすると、本来であれば吐出異常であるにも関わらず吐出異常でないと判断して補完処理が実行されず、質が低下した画像が多く形成される虞がある。一方、昼間に印刷処理を実行させる場合には、媒体PPに形成される画像を確認する作業員がいる可能性が高いため、本来であれば吐出異常であるにも関わらず吐出異常でないと判断して補完処理が実行されなくても、質が低下した画像が形成されていることに作業員が気づき、印刷処理を停止させることができる。従って、第1実施形態に係る液体吐出システム10によれば、複数の時間帯のそれぞれに対して判断基準を設定できることにより、ユーザーUは、深夜等の作業員がいない時刻には判断基準を高くして、質が低下した画像が多く形成されることを抑制できる。
なお、第1時間帯に対する時間帯別情報は、「第6情報」の一例である。第2時間帯に対する時間帯別情報は、「第7情報」の一例である。
【0199】
また、粘度情報NND[m1]は、ノズルN[m1]内のインクの粘度を推定した推定粘度であって、判断基準情報HDIは、推定粘度に対する閾値であって、判断部215は、推定粘度が閾値よりも高い場合、ノズルN[m1]の吐出状態が異常であると判断し、推定粘度が閾値よりも低い場合、ノズルN[m1]の吐出状態が正常であると判断する。
推定粘度が高くなることに応じて吐出異常が生じやすくなる傾向にあるため、第1実施形態に係る推定粘度を用いることにより、ノズルN[m1]の吐出状態を判断できる。
【0200】
1-12-2.適切な補完処理の選択のまとめ
以上説明したように、第1実施形態に係る液体吐出システム10は、インクを吐出する複数のノズルNが設けられた液体吐出ヘッド110の動作を制御するためのシステムである。液体吐出システム10は、複数のノズルNのうちノズルN[m1]の吐出異常の有無を判断する判断部215と、ユーザーUの操作に応じて、ノズルN[m1]が吐出異常を有する場合にノズルN[m1]の吐出異常を補完するための複数の補完処理であって、互いに異なる複数の補完処理の中から、ユーザーUが指定した補完処理を示す補完処理指定情報CSIを受け付ける受付部213と、ノズルN[m1]が吐出異常を有すると判断部215が判断した場合に、受付部213が受け付けた補完処理指定情報CSIが示す補完処理を実行する実行部103と、を有する。
第1実施形態に係る液体吐出システム10は、ユーザーUが適切な補完処理を指定した補完処理指定情報CSIを受け付けることにより、媒体PPに形成される画像の質を向上させることができる。
【0201】
補完処理指定情報CSIは、複数の補完処理のうち、実行部103による実行をユーザーUが許可しない補完処理以外の補完処理を示す。
補完処理を実行することにより画像の質を向上させることができるが、複数の補完処理のうち、特定の補完処理が実行されない方が好ましいとユーザーUが考えることも想定される。例えば、他色補完処理では、想定される色とは異なる色のドットが形成されるため、他色のドットが形成された画像よりもドット抜けが発生した画像が質の高い画像とユーザーUが考えることも想定される。このように、実行部103による実行をユーザーUが許可しない補完処理が存在する場合が想定されるが、実行部103による実行をユーザーUが許可する補完処理の個数は、実行部103による実行をユーザーUが許可しない補完処理の個数よりも多い傾向にある。そこで、第1実施形態に係る液体吐出システム10は、実行部103による実行をユーザーUが許可しない補完処理を選択させることにより、実行部103による実行をユーザーUが許可する補完処理を選択することと比較して、実行部103に実行させる補完処理の選択の手間を軽減させることができる。
【0202】
また、複数の補完処理のうち、自動で実行される補完処理を示す自動実行情報を有する補完関係テーブル223を記憶する記憶回路220を有し、受付部213は、自動で実行される補完処理を実行することを示すユーザーUの操作を受け付けた場合、記憶回路220に記憶された自動実行情報を、補完処理指定情報CSIとして受け付ける。
複数の補完処理のうち、ユーザーUが適切な補完処理を把握していない場合でも自動実行情報が示す補完処理を実行することにより、媒体PPに形成される画像の質を向上させることができる。
【0203】
また、第1実施形態に係る液体吐出システム10は、ユーザーUが液体吐出ヘッド110を使用する環境に関する環境情報EIに基づいて、複数の補完処理の中から実行することを推奨する一部の補完処理を選択する選択部311と、当該一部の補完処理をユーザーUに提案する提案部217と、を更に有する。
第1実施形態に係る液体吐出システム10によれば、ユーザーUが適切な補完処理を把握していない状態であっても、提案部217の提案に沿って補完処理を選択することにより、環境情報EIに応じて媒体PPに形成される画像の質を向上させることができる。
【0204】
また、第1実施形態に係る液体吐出システム10は、ユーザーUの過去の入力内容を示す入力情報225を記憶する記憶回路220と、複数の補完処理を選択するための画像を表示する表示装置270と、を更に有し、表示装置270は、入力情報225に基づき更新された吐出異常検出モード設定画面CDを表示し、受付部213は、ユーザーUが吐出異常検出モード設定画面CDに従って操作することにより補完処理指定情報CSIを受け付ける。
インクジェットプリンター100が使用するインクの種類及び媒体PPの種類等が変化しない場合、ユーザーUが選択する補完処理も変化しない可能性がある。従って、第1実施形態に係る液体吐出システム10によれば、ユーザーUの過去の入力内容に基づいた吐出異常検出モード設定画面CDを表示することにより、ユーザーUの操作量を減らすことができるので、ユーザーUの手間を軽減できる。
なお、吐出異常検出モード設定画面CDが、「入力情報に基づいた画像」の一例である。
【0205】
受付部213は、補完処理指定情報CSIが示す補完処理によって媒体PPに形成される画像をユーザーが確認するためのテスト記録画像を媒体PPに形成させることを示す印刷対象指定情報TPIを更に受け付け可能である。
ユーザーUは、テスト記録画像を確認することにより、補完処理指定情報CSIが示す補完処理による画像の質の程度を確認できる。テスト記録画像の大きさが印刷指示PIによって識別される画像データが示す画像の大きさよりも小さい場合には、印刷指示PIによって識別される画像データを媒体PPに形成する態様を比較して、少ない印刷枚数で補完処理指定情報CSIが示す補完処理による画像の質の程度を確認できる。
なお、印刷対象指定情報TPIは、「テスト記録画像を媒体PPに形成させることを示す情報」の一例である。
【0206】
液体吐出ヘッド110は、駆動信号Comに基づいて駆動することでノズルN[m1]から液体を吐出させる圧電素子111fを更に備え、複数の補完処理は、ノズルN[m1]が吐出異常を有する場合に、圧電素子111fに印加する駆動信号Comの波形を異ならせることにより補完を行う波形補正処理を含む。
第1実施形態に係る液体吐出システム10によれば、ユーザーUは、波形補正処理を実行することによって質の高い画像を媒体PPに形成できると考えた場合に、波形補正処理を実行させることができる。波形補正処理を実行することによってインクの吐出量を多くできるが、どの程度多くなるかは実際に波形補正処理を実行させないと不明である。従って、例えば、ユーザーUは、媒体PPに形成させるドットの大きさを重視しない場合、実行部103に波形補正処理を実行させ、媒体PPに形成させるドットの大きさを重視する場合、波形補正処理とは異なる補完処理を実行部103に実行させてもよい。
【0207】
ノズルN[m1]は、第1ノズル列Ln1に区分されるため、第1種類のインクを吐出する。更に、第2ノズル列Ln2に区分されるノズルN[m2]を用いて、適切な補完処理の選択について説明する。m2は、M+1以上且つ2M以下の整数である。ノズルN[m1]が吐出するインクは、第1種類のインクであり、液体吐出ヘッド110には、更に、第1種類のインクとは異なる第2種類のインクを吐出するノズルN[m2]が設けられ、複数の補完処理は、ノズルN[m1]が吐出異常を有する場合に、第2ノズルから第2種類のインクを吐出することにより補完を行う他色補完処理を含む。
第1実施形態に係る液体吐出システム10によれば、ユーザーUは、他色補完処理を実行することによって質の高い画像を媒体PPに形成できると考えた場合に、他色補完処理を実行させることができる。例えば、ユーザーUは、媒体PPに形成させるドットの色を重視しない場合、実行部103に他色補完処理を実行させ、媒体PPに形成させるドットの色を重視する場合、他色補完処理とは異なる補完処理を実行部103に実行させてもよい。
【0208】
また、液体吐出ヘッド110は、複数回の走査によって媒体PPに画像を形成し、複数の補完処理は、ノズルN[m1]が吐出異常を有する場合に、ノズルN[m1]が吐出すべきパスとは異なるパスにおいて複数のノズルNのうちノズルN[m1]とは異なるノズルN[m3]がインクを吐出することにより補完を行う他パス補完処理を含む。m3は、1以上且つM以下であり、m1とは異なる整数である。
第1実施形態に係る液体吐出システム10によれば、ユーザーUは、他パス補完処理を実行することによって質の高い画像を媒体PPに形成できると考えた場合に、他パス補完処理を実行させることができる。
【0209】
液体吐出ヘッド110は、複数回の走査によって媒体PPに画像を形成し、複数の補完処理は、ノズルN[m1]が吐出異常を有する場合に、ノズルN[m1]が吐出すべきパスと同じ走査において複数のノズルNのうちノズルN[m1]に隣り合うノズルN[m1-1]又はノズルN[m1+1]からインクを吐出することにより補完を行う隣接補完処理を含む。但し、m1が1である場合、ノズルN[2]からインクを吐出し、m1がMである場合、ノズルN[M-1]からインクを吐出する。
第1実施形態に係る液体吐出システム10によれば、ユーザーUは、隣接補完処理を実行することによって質の高い画像を媒体PPに形成できると考えた場合に、隣接補完処理を実行させることができる。例えば、ユーザーUは、媒体PPに形成させるドットのY軸に沿う方向の位置を重視しない場合、実行部103に隣接補完処理を実行させ、媒体PPに形成させるドットのY軸に沿う方向の位置を重視する場合、隣接補完処理とは異なる補完処理を実行部103に実行させてもよい。
【0210】
複数の補完処理は、ノズルN[m1]が吐出異常を有する場合に、ノズルN[m1]の吐出異常を解消するためのフラッシング処理とフラッシング処理の後にノズルNからインクを吐出させる処理とを有するフラッシング処理付き通常印刷処理を含む。
第1実施形態に係る液体吐出システム10によれば、ユーザーUは、隣接補完処理を実行することによって質の高い画像を媒体PPに形成できると考えた場合に、隣接補完処理を実行させることができる。例えば、ユーザーUは、フラッシング処理によって吐出異常が解消すると考えた場合、実行部103にフラッシング処理付き通常印刷処理を実行させ、フラッシング処理によって吐出異常が解消しないと考えた場合、実行部103にフラッシング処理付き通常印刷処理とは異なる補完処理を実行部103に実行させてもよい。
【0211】
2.変形例
以上に例示した各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0212】
2-1.第1変形例
第1実施形態では、選択部311は、環境情報EIに基づいて推奨補完処理を選択したが、他の情報に基づいて推奨補完処理を選択してもよい。第1変形例では、判断部215の判断結果である判断結果情報HI[1]~HI[2M]に基づいて、推奨補完処理を選択する。
【0213】
図25は、第1変形例に係る液体吐出システム10-Aの機能を説明するための図である。液体吐出システム10-Aは、処理装置200の替わりに処理装置200-Aを有する点で、液体吐出システム10と相違する。処理装置200-Aは、記憶回路220の替わりに記憶回路220-Aを有し、制御回路210の替わりに制御回路210-Aを有する点で、処理装置200と相違する。記憶回路220-Aは、制御プログラムPM2の替わりに制御プログラムPM2-Aを記憶する点で、記憶回路220と相違する。制御回路210-Aは、制御プログラムPM2-Aを読み取り、読み取った制御プログラムPM2-Aを実行することによって、提案部217の替わりに提案部217-Aとして機能し、更に、選択部219としても機能する点で、制御回路210と相違する。
【0214】
液体吐出システム10-Aの一連の動作は、
図15に示すステップSC12の吐出異常検出モード設定画面CDの表示処理の替わりに、第1変形例に係る吐出異常検出モード設定画面CDの表示処理を実行し、
図16に示すステップSC14を実行しない点で異なり、他の点で共通する。提案部217-A及び選択部219について、
図26に示す吐出異常検出モード設定画面CD-Aと、
図27に示す第1変形例に係る吐出異常検出モード設定画面CDの表示処理のフローチャートとを用いて説明する。
【0215】
図26は、吐出異常検出モード設定画面CD-Aの一例を示す図である。吐出異常検出モード設定画面CD-Aは、領域RE1内に推奨補正処理の更新ボタンBt2を有する点で、吐出異常検出モード設定画面CDと相違する。
【0216】
図27は、第1変形例に係る吐出異常検出モード設定画面CDの表示処理を示すフローチャートである。
図27に示すフローチャートは、
図19に示すフローチャートと比較して、ステップSD14の処理終了後にステップSD32及びステップSD34の処理を実行し、ステップSD32の判定結果が否定である場合にステップSD16の処理を実行する点で異なり、他の点で一致する。以下、
図19に示すフローチャートに対して異なる点のみ説明する。
【0217】
ステップSD14の処理終了後、制御回路210は、ステップSD32において、操作情報が更新ボタンBt2の押下を示すか否かを判断する。ステップSD32の判断結果が肯定である場合、制御回路210は、ステップSD34において、推奨補完処理更新処理を実行する。
【0218】
図28は、推奨補完処理更新処理の一例を示すフローチャートである。推奨補完処理更新処理は、推奨補完処理を選択し、吐出異常検出モード設定画面CD-Aを更新する処理である。
【0219】
ステップSD42において、受付部213として機能する制御回路210-Aは、吐出異常検出モード設定画面CD-Aの領域RE1内の現在の状態に基づいて、判断基準情報HDIを受け付ける。
【0220】
ステップSD42の処理終了後、判断部215として機能する制御回路210-Aは、ステップSD44において、吐出部D[1]~D[2M]のそれぞれに対して、ステップSC6によって取得した粘度情報NNDと、判断基準情報HDIとに基づいて、吐出異常の有無を判定する。制御回路210-Aは、吐出部D[1]~D[2M]にそれぞれに対して、吐出異常の有無を示す判断結果情報HI[1]~HI[2M]を生成する。
【0221】
ステップSD44の処理終了後、選択部219として機能する制御回路210-Aは、ステップSD46において、判断結果情報HI[1]~HI[2M]に基づいて、推奨補完処理を選択する。
【0222】
ステップSD46の具体例について説明する。選択部219は、判断結果情報HI[1]~HI[2M]に基づいて、他色補完処理と、他パス補完処理と、隣接補完処理とのそれぞれについて、異常ノズルN-Sの替わりに吐出するノズルNも異常ノズルN-Sとなる場合に、推奨補完処理として選択しない。
【0223】
以下、
図13の例を用いて、ノズルN[m1]が異常ノズルN-Sであるとして説明する。選択部219は、判断結果情報HI[M+m1]が吐出異常を示す場合、他色補完処理を推奨補完処理として選択しない。また、選択部219は、判断結果情報HI[M]が吐出異常を示す場合、他パス補完処理を推奨補完処理として選択しない。また、選択部219は、判断結果情報HI[m1-1]及び判断結果情報HI[m1+1]が吐出異常を示す場合、隣接補完処理を推奨補完処理として選択しない。選択部219は、推奨補完処理情報RHIを生成する。
【0224】
ステップSD46の処理終了後、提案部217-Aとして機能する制御回路210-Aは、選択部311が生成した推奨補完処理情報RHI、及び、選択部219が生成した推奨補完処理情報RHIに基づいて、ユーザーUに提案する。具体的には、制御回路210は、ステップSD48において、選択部311が生成した推奨補完処理情報RHI、及び、選択部219が生成した推奨補完処理情報RHIに基づいて、吐出異常検出モード設定画面CD-Aを示す画像情報を更新する。例えば、制御回路210は、選択部311が生成した推奨補完処理情報RHI、及び、選択部219が生成した推奨補完処理情報RHIの両方に示された補完処理を推奨することを示す文字列RMDを表示する。又は、制御回路210は、選択部311が生成した推奨補完処理情報RHI、及び、選択部219が生成した推奨補完処理情報RHIのうち一方又は両方に示された補完処理を推奨することを示す文字列RMDを表示してもよい。
【0225】
ステップSD48の処理終了後、制御回路210-Aは、
図28に示す一連の処理を終了する。
【0226】
説明を
図27に戻す。ステップSD34の処理終了後、制御回路210-Aは、処理をステップSD12に戻す。
【0227】
以上、判断部215は、複数のノズルNのそれぞれの吐出異常の有無を判断し、第1変形例に係る液体吐出システム10-Aは、判断部215の判断結果に基づいて、複数の補完処理の中から推奨補完処理を選択する選択部219と、当該一部の補完処理をユーザーUに提案する提案部217-Aと、を更に有する。
第1変形例によれば、判断部215の判断結果に基づいて推奨補完処理を選択することにより、吐出異常を有するノズルNの替わりに吐出するノズルNも吐出異常を有して適切に補完できない補完処理をユーザーUに推奨しないので、ユーザーUは、適切に補完できる補完処理を指定できるようになり、媒体PPに形成される画像の質を向上できる。
【0228】
なお、第1変形例では、ステップSD48において、制御回路210は、選択部311が生成した推奨補完処理情報RHI、及び、選択部219が生成した推奨補完処理情報RHIに基づいて、吐出異常検出モード設定画面CD-Aを示す画像情報を更新したが、これに限らない。制御回路210は、選択部219が生成した推奨補完処理情報RHIのみに基づいて、吐出異常検出モード設定画面CD-Aを示す画像情報を更新してもい。
【0229】
2-2.第2変形例
上述の各態様におけるインクジェットプリンター100はシリアルプリンターであったが、シングルパス方式により媒体PPに画像を形成するラインプリンターでもよい。シングルパス方式とは、1回の走査によって媒体PPに画像を形成させることを言う。
【0230】
図29は、第2変形例に係るインクジェットプリンター100-Bの構成の一例を例示する模式図である。インクジェットプリンター100-Bは、移動機構130を有さず、ヘッドモジュールHMを有する点で、インクジェットプリンター100と相違する。
【0231】
ヘッドモジュールHMは、X軸における媒体PPの全範囲にわたり複数のノズルNが分布するように配置される複数の液体吐出ヘッド110を有するラインヘッドである。つまり、複数の液体吐出ヘッド110の集合体は、X軸に沿う方向に延びる長尺なラインヘッドを構成する。更に、
図29に示すように、複数の液体吐出ヘッド110は、Y軸に沿う方向に互いに間隔をあけて並ぶ第1ヘッド列Lh1と第2ヘッド列Lh2とに区分される。
【0232】
第2変形例に係る液体吐出システム10は、他パス補完処理の替わりに他ヘッド補完処理を実行可能である。他ヘッド補完処理は、第1ヘッド列Lh1に区分される液体吐出ヘッド110に設けられたノズルNが吐出異常を有する場合に、第2ヘッド列Lh2に区分される液体吐出ヘッド110に設けられたノズルNからインクを吐出することにより補完を行う。第2ヘッド列Lh2に区分される液体吐出ヘッド110に設けられる複数のノズルNのうち、異常ノズルN-Sの補完を行うノズルNのX軸の位置は、第1ヘッド列Lh1に区分される液体吐出ヘッド110内の異常ノズルN-SのX軸の位置と近いことが好ましく、同一であることが最も好ましい。更に、異常ノズルN-Sの補完を行うノズルNが吐出するインクの種類は、異常ノズルN-Sが吐出すべきインクの種類と同一であることが好ましいが、異なってもよい。
【0233】
以上、第2変形例に係る液体吐出システム10は、更に、インクを吐出するノズルNが設けられた複数の液体吐出ヘッド110の動作を制御し、複数の補完処理は、ノズルNが吐出異常を有する場合に、このノズルNとは別の液体吐出ヘッド110に設けられたノズルNからインクを吐出することにより補完を行う他ヘッド補完処理を含む。
第2変形例に係る液体吐出システム10によれば、ユーザーUは、他ヘッド補完処理を実行することによって質の高い画像を媒体PPに形成できると考えた場合に、他ヘッド補完処理を実行させることができる。
【0234】
また、隣接補完処理において、第1実施形態では、複数回のパスのうち、異常ノズルN-Sが吐出すべきパスと同じパスにおいて異常ノズルN-Sに隣り合うノズルNが吐出する。一方、第2変形例では、1回のパスによって媒体PPに画像を形成させる。従って、第2変形例における隣接補完処理は、この1回のパスの間に、異常ノズルN-Sに隣り合うノズルNが吐出すればよい。
【0235】
2-3.第3変形例
第1実施形態において、吐出異常を補完するための複数の補完処理は、波形補正処理と、他色補完処理と、他パス補完処理と、隣接補完処理と、フラッシング処理付き通常印刷処理と、という5つの補完処理であったが、これに限らない。例えば、インクジェットプリンター100が、同色のインクを吐出する複数の液体吐出ヘッド110を有する場合であれば、吐出異常を補完するための複数の補完処理は、この複数の液体吐出ヘッド110のうち、異常ノズルN-Sを有する液体吐出ヘッド110とは異なる液体吐出ヘッド110のノズルNから吐出する補完処理を含む6つの補完処理でもよい。
【0236】
2-4.第4変形例
第1実施形態では、吐出異常を補完するための複数の補完処理の個数は、5つであり、第3変形例では6つであったが、これに限らない。例えば、連続する2つのパスの吐出領域Rpが重ならない場合には、吐出異常を補完するための複数の補完処理の個数は、他パス補完処理を除いた4つである。
【0237】
2-5.第5変形例
上述の各態様において、粘度情報NNDは、推定した粘度を示したが、これに限らない。例えば、粘度情報NNDは、ノズルNの吐出状態を示す情報として、残留振動信号NESをデジタル化したデータでもよい。又は、粘度情報NNDは、残留振動の特性を示すデータでもよい。残留振動の特性は、例えば残留振動の振幅、周期、及び、減衰率である。粘度情報NNDが推定した粘度以外の情報を示す場合、判断基準情報HDIも第1実施形態とは異なる。例えば、粘度情報NNDが、残留振動の振幅を示す場合、判断基準情報HDIは、残留振動の振幅に対する閾値である。
【0238】
2-6.第6変形例
第5変形例を除く上述の各態様において、粘度情報NNDは、残留振動信号NESにより推定された粘度を示していたが、他の情報により推定された粘度でもよい。例えば、粘度情報NNDは、インクの飛翔速度により推定された粘度でもよいし、テストパターンの着弾位置のずれ量により推定された粘度でもよい。
【0239】
2-7.第7変形例
上述の各態様では、メンテナンス処理には、フラッシング処理があることを記載したが、メンテナンス処理は、フラッシング処理に限らない。例えば、メンテナンス処理は、フラッシング処理と、ワイピング処理と、ポンピング処理とのうち1つ又は複数の処理であってもよい。ワイピング処理は、吐出部DのノズルN近傍に付着した紙粉等の異物をワイパーにより拭き取る処理である。ポンピング処理は、吐出部D内のインクや気泡等をチューブポンプにより吸引する処理である。
【0240】
2-8.第8変形例
上述の各態様において、圧電素子111fの替わりに、電気エネルギーを熱エネルギーに変換し、加熱により圧力室CVの内部に気泡を発生させて、圧力室CVの内部の圧力を変動させる発熱素子を採用してもよい。第8変形例において、「発熱素子」が、「駆動素子」の一例である。発熱素子は、例えば、駆動信号Comの供給により発熱体が発熱する素子であってもよい。発熱素子を有する場合、液体吐出システム10は、吐出異常を補完するための複数の補完処理として、例えば、他色補完処理と、他パス補完処理と、隣接補完処理と、フラッシング処理付き通常印刷処理と、という4つの補完処理のいずれかの補完処理を実行する。
【0241】
2-9.第9変形例
上述の各態様において、取得部211と判断部215とは、制御回路210によって実現されたが、これに限らない。例えば、取得部211と判断部215とは、インクジェットプリンター100の制御回路170によって実現されてもよい。
【0242】
2-10.第10変形例
上述の各態様における液体吐出システム10には、サーバー300と、処理装置200と、インクジェットプリンター100とを有したが、これに限らない。例えば、液体吐出システム10は、処理装置200を有さず、サーバー300とインクジェットプリンター100とがネットワークNWを介して通信可能に接続されてもよい。第7変形例に係るインクジェットプリンター100は、入力装置と表示装置とを更に有する。第7変形例において、制御回路210によって実現された取得部211、受付部213、判断部215、及び、提案部217は、インクジェットプリンター100の制御回路170によって実現される。但し、取得部211及び判断部215は、サーバー300の制御回路310によって実現されてもよい。更に、処理装置200とインクジェットプリンター100との協同によって実現された実行部103は、インクジェットプリンター100によって実現される。
【0243】
又は、液体吐出システム10は、サーバー300を有さなくてもよい。制御回路310によって実現された選択部311は、制御回路210によって実現されてもよい。
【0244】
2-11.第11変形例
液体吐出システム10は、サーバー300及び処理装置200を有さなくてもよい。第8変形例に係るインクジェットプリンター100は、入力装置と表示装置とを更に有する。第8変形例において、制御回路210によって実現された取得部211、受付部213、判断部215、及び、提案部217、並びに、制御回路310によって実現された選択部311は、インクジェットプリンター100の制御回路170によって実現される。
【0245】
2-12.第12変形例
上述した第1実施形態、及び、第1変形例乃至第5変形例で例示した液体吐出装置は、印刷に専用される機器のほか、ファクシミリ装置及びコピー機等の各種の機器に採用され得る。もっとも、本発明の液体吐出装置の用途は印刷に限定されない。例えば、色材の溶液を吐出する液体吐出装置は、液晶表示装置のカラーフィルターを形成する製造装置として利用される。また、導電材料の溶液を吐出する液体吐出装置は、配線基板の配線及び電極を形成する製造装置として利用される。
【符号の説明】
【0246】
10,10-A…液体吐出システム、100,100-B,100_1,100_2,100_3…インクジェットプリンター、101…推定部、103…実行部、110…液体吐出ヘッド、110b…制御モジュール、111…ヘッドチップ、111a…流路基板、111b…圧力室基板、111c…ノズル板、111d…吸振体、111e…振動板、111f…圧電素子、111g…保護板、111h…ケース、111i…配線基板、112…駆動回路、115…切替回路、116…接続状態指定回路、117…検出回路、120,121,122…液体容器、130…移動機構、131…キャリッジ、132…無端ベルト、140…搬送機構、150…通信装置、160…記憶回路、170…制御回路、180…制御モジュール、183…電源回路、184…駆動信号生成回路、190…推定ユニット、200,200-A,200_1,200_2,200_3…処理装置、210,210-A…制御回路、211…取得部、213…受付部、215…判断部、217,217-A…提案部、219…選択部、220,220-A…記憶回路、221…判断基準テーブル、223…補完関係テーブル、225…入力情報、230,240…通信装置、260…入力装置、270…表示装置、290…バス、300…サーバー、310…制御回路、311…選択部、320…記憶回路、321…環境評価値テーブル、380…通信装置、390…バス、1900…振幅特定回路、1910…比較部、1911,1912…比較回路、1920…振幅情報生成部、1930,1931,1932…時間長特定回路、1940…振幅算出回路、1950…粘度推定回路、A…初期振幅、Bt1…OKボタン、Bt2…更新ボタン、CD,CD-A…吐出異常検出モード設定画面、CH…チェンジ信号、CL…クロック信号、CPW,CPZ…比較信号、CSI…補完処理指定情報、CV…圧力室、Com,Com-A,Com-B…駆動信号、D…吐出部、DP…記録データ、EI…環境情報、FN…ノズル面、HD…記録ヘッド、HDI…判断基準情報、HI…判断結果情報、HM…ヘッドモジュール、IH…導入口、JB…印刷ジョブ、LAT…ラッチ信号、LHa,LHb,LHs…内部配線、Lh1…第1ヘッド列、Lh2…第2ヘッド列、Ln1…第1ノズル列、Ln2…第2ノズル列、N,N-L1…ノズル、N-S…異常ノズル、NES…残留振動信号、NND…粘度情報、NP,NP-I,NP-IC,NP-T,NP-T1…入力欄、NSJ…粘度算出情報、NSP…振幅情報、NTC,NTW,NTZ…時間情報、NW…ネットワーク、Na…連通流路、PI…印刷指示、PM1,PM2,PM2-A…制御プログラム、PN…パネル、PP…媒体、PS…検査波形、PX…中ドット波形、PY…小ドット波形、PZ…圧電素子、PlsC,PlsL,PlsT1,PlsT2…パルス、R…リザーバー、R1,R2…空間、RC11,RC12,RC13,RC14,RC21,RC22,RC23,RC24,RC25…レコード、RE1,RE2,RE3,RE4…領域、RHI…推奨補完処理情報、RMD…文字列、Ra…供給流路、Rp,Rp0,Rp1…吐出領域、SI…印刷信号、SLa,SLb,SLs…接続状態指定信号、SWa,SWb,SWs…スイッチ、Sd…個別指定信号、Sk1,Sk2…制御信号、TA1,TA2…タブコントロール、TB1,TB1-C,TB1-K,TB1-M,TB1-Y,TB2,TB2-1,TB2-2,TB2-3…タブ、TC1,TCq,TCq1…周期、TPI…印刷対象指定情報、TSS1,TSS2,TSS3…制御期間、TW1,TWq,TZ1,TZq…時間長、Tsig…期間指定信号、Tu…記録期間、Tu1,Tu2…制御期間、U,U_1,U_2,U_3…ユーザー、V0…基準電位、VBS…オフセット電位、VHS…最高電位、VHV…電源電位、VHX,VHY…最高電位、VLS,VLX,VLY…最低電位、VMq,VMq1,VMq2…振幅、Vin…供給駆動信号、Vout…検出信号、VthW,VthZ…閾値電位、W,W1,Wq,Wq1,Wq2…期間、Zd…下部電極、Zm…圧電体、Zu…上部電極、dCom…波形指定信号、λ…減衰値、μth,μth1,μth2,μth3…閾値。