(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053688
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】吊体の位置把握方法および位置把握システム
(51)【国際特許分類】
B66C 13/46 20060101AFI20240409BHJP
B66C 13/22 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B66C13/46 B
B66C13/22 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160061
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000219406
【氏名又は名称】東亜建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】藤山 映
(72)【発明者】
【氏名】宮本 憲都
(72)【発明者】
【氏名】田淵 朝人
【テーマコード(参考)】
3F204
【Fターム(参考)】
3F204AA04
3F204CA01
3F204DB03
3F204DB04
3F204DB06
3F204DC08
(57)【要約】
【課題】クレーンによって吊上げられた吊体の基準面に対する吊上げ高さを簡易に把握できる吊体の位置把握方法および位置把握システムを提供する。
【解決手段】クレーン30のブーム31の先端部31aに設置した撮影装置3により、吊体33に配置した吊体用ターゲット2を撮影した撮影画像データ20を取得する。演算装置8により、吊体用ターゲット2の画像データを教師データとして機械学習されたターゲット検出モデルと撮影画像データ20とに基づいて、撮影画像データ20での吊体用ターゲット2の大きさPS1を検出し、その検出データに基づいて、撮影装置3に対する吊体用ターゲット2のターゲット離間距離H1を算出する。ターゲット離間距離H1と、演算装置8に入力された基準面Rに対する撮影装置3の撮影高さH2とに基づいて、基準面Rに対する吊体用ターゲット2のターゲット離間距離H3を算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンによって吊り上げられた吊体の基準面に対する吊上げ高さを把握する吊体の位置把握方法において、
前記吊体の上部または側方の一箇所以上に吊体用ターゲットを配置して、前記クレーンのブームの先端部に設置した撮影装置により前記吊体用ターゲットを撮影し、その前記撮影装置によって取得した撮影画像データを演算装置に入力し、
前記演算装置には、前記吊体用ターゲットの画像データを教師データとして機械学習されたターゲット検出モデルを予め記憶させておき、前記演算装置を用いて、前記ターゲット検出モデルと前記撮影画像データとに基づいて、前記撮影画像データでの前記吊体用ターゲットの大きさ、または、前記吊体の上部または側方の複数箇所に前記吊体用ターゲットを配置している場合にはそれらの前記吊体用ターゲットどうしの画像離間距離を検出し、その検出データに基づいて、前記撮影装置に対する前記吊体用ターゲットの上下方向のターゲット離間距離を算出し、そのターゲット離間距離のデータと、前記基準面に対する前記撮影装置の撮影高さのデータとに基づいて、前記基準面に対する前記吊体用ターゲットのターゲット高さを算出することを特徴とする吊体の位置把握方法。
【請求項2】
前記吊体用ターゲットとして、前記吊体に吊体用標識を付設する請求項1に記載の吊体の位置把握方法。
【請求項3】
前記ブームの先端部に設置した測位装置によって取得した位置座標データ、または、傾斜計によって計測した前記ブームの傾斜角度に基づいて、前記撮影高さのデータを取得する請求項1または2に記載の吊体の位置把握方法。
【請求項4】
前記基準面の一箇所以上に基準面用ターゲットを設けて、前記撮影装置により前記吊体用ターゲットとともに前記基準面用ターゲットを撮影し、前記演算装置には、前記基準面用ターゲットの画像データを教師データとして機械学習された前記ターゲット検出モデルを予め記憶させておき、前記演算装置を用いて、前記ターゲット検出モデルと前記撮影画像データとに基づいて、前記撮影画像データでの前記基準面用ターゲットの大きさ、または、前記基準面の複数箇所に前記基準面用ターゲットを設けている場合にはそれらの前記基準面用ターゲットどうしの画像離間距離を検出し、その検出データに基づいて、前記撮影高さを算出する請求項1または2に記載の吊体の位置把握方法。
【請求項5】
前記基準面用ターゲットとして、前記基準面に基準面用標識を付設する請求項4に記載の吊体の位置把握方法。
【請求項6】
前記ターゲット検出モデルが、前記撮影画像データにおいて前記吊体用ターゲットとして検出した境界枠の大きさを、前記撮影画像データでの前記吊体用ターゲットの大きさとして扱う請求項1または2に記載の吊体の位置把握方法。
【請求項7】
クレーンによって吊り上げられた吊体の基準面に対する吊上げ高さを把握する吊体の位置把握システムにおいて、
前記吊体の上部または側方の一箇所以上に配置された吊体用ターゲットと、前記クレーンのブームの先端部に設置されて前記吊体用ターゲットを撮影する撮影装置と、前記撮影装置によって取得された撮影画像データが入力される演算装置とを備え、
前記演算装置には、前記吊体用ターゲットの画像データを教師データとして機械学習されたターゲット検出モデルが予め記憶されていて、前記演算装置により、前記ターゲット検出モデルと前記撮影画像データとに基づいて、前記撮影画像データでの前記吊体用ターゲットの大きさ、または、前記吊体の上部または側方の複数箇所に前記吊体用ターゲットが配置されている場合にはそれらの前記吊体用ターゲットどうしの画像離間距離が検出され、その検出データに基づいて、前記撮影装置に対する前記吊体用ターゲットの上下方向のターゲット離間距離が算出され、そのターゲット離間距離のデータと、前記基準面に対する前記撮影装置の撮影高さのデータとに基づいて、前記基準面に対する前記吊体用ターゲットのターゲット高さが算出されることを特徴とする吊体の位置把握システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊体の位置把握方法および位置把握システムに関し、さらに詳しくは、クレーンによって吊上げられた吊体の基準面に対する吊上げ高さを簡易に把握できる吊体の位置把握方法および位置把握システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、クレーンによって吊り上げられた吊体(吊具、吊荷)の基準面に対する吊上げ高さを把握する方法が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のクレーンの吊荷標高検出装置では、吊体(吊具)に吊具気圧計を設置して、吊具気圧計によって検出した気圧に基づいて、吊体の標高(高さ)を把握している。このような吊体に計測機器を設置する方法では、吊体は着床時などに激しく振動することがあるため、計測機器が故障するリスクや計測機器が誤作動するリスクが比較的高くなる。
【0003】
吊体に計測用プリズムを設置し、地上にトータルステーションを設置して、トータルステーションによって計測用プリズムの高さ位置を計測する方法もあるが、この方法ではトータルステーションの大掛かりな設備を設置する必要があり、設備コストも比較的高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、クレーンによって吊上げられた吊体の基準面に対する吊上げ高さを簡易に把握できる吊体の位置把握方法および位置把握システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明の吊体の位置把握方法は、クレーンによって吊り上げられた吊体の基準面に対する吊上げ高さを把握する吊体の位置把握方法において、前記吊体の上部または側方の一箇所以上に吊体用ターゲットを配置して、前記クレーンのブームの先端部に設置した撮影装置により前記吊体用ターゲットを撮影し、その前記撮影装置によって取得した撮影画像データを演算装置に入力し、前記演算装置には、前記吊体用ターゲットの画像データを教師データとして機械学習されたターゲット検出モデルを予め記憶させておき、前記演算装置を用いて、前記ターゲット検出モデルと前記撮影画像データとに基づいて、前記撮影画像データでの前記吊体用ターゲットの大きさ、または、前記吊体の上部または側方の複数箇所に前記吊体用ターゲットを配置している場合にはそれらの前記吊体用ターゲットどうしの画像離間距離を検出し、その検出データに基づいて、前記撮影装置に対する前記吊体用ターゲットの上下方向のターゲット離間距離を算出し、そのターゲット離間距離のデータと、前記基準面に対する前記撮影装置の撮影高さのデータとに基づいて、前記基準面に対する前記吊体用ターゲットのターゲット高さを算出することを特徴とする。
【0007】
本発明の吊体の位置把握システムは、クレーンによって吊り上げられた吊体の基準面に対する吊上げ高さを把握する吊体の位置把握システムにおいて、前記吊体の上部または側方の一箇所以上に配置された吊体用ターゲットと、前記クレーンのブームの先端部に設置されて前記吊体用ターゲットを撮影する撮影装置と、前記撮影装置によって取得された撮影画像データが入力される演算装置とを備え、前記演算装置には、前記吊体用ターゲットの画像データを教師データとして機械学習されたターゲット検出モデルが予め記憶されていて、前記演算装置により、前記ターゲット検出モデルと前記撮影画像データとに基づいて、前記撮影画像データでの前記吊体用ターゲットの大きさ、または、前記吊体の上部または側方の複数箇所に前記吊体用ターゲットが配置されている場合にはそれらの前記吊体用ターゲットどうしの画像離間距離が検出され、その検出データに基づいて、前記撮影装置に対する前記吊体用ターゲットの上下方向のターゲット離間距離が算出され、そのターゲット離間距離のデータと、前記基準面に対する前記撮影装置の撮影高さのデータとに基づいて、前記基準面に対する前記吊体用ターゲットのターゲット高さが算出されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、吊体の上部または側方に吊体用ターゲットを配置して、クレーンのブームの先端部に設置した撮影装置により吊体用ターゲットを撮影し、その取得した撮影画像データを演算装置に入力すると、演算装置によって基準面に対する吊体用ターゲットのターゲット高さが算出される。それ故、吊体に計測機器を設置せずとも、吊体の基準面に対する吊上げ高さを簡易に把握することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る実施形態の吊体の位置把握システムを使用して、クレーンによって吊上げた吊体の基準面に対する吊上げ高さを把握している状況を側面視で例示する説明図である。
【
図2】
図1の撮影装置によって取得した撮影画像データを例示する説明図である。
【
図3】
図1の表示装置に表示される管理画像データを例示する説明図である。
【
図4】
図1の吊体を基準面に載置させた状態で、撮影装置によって吊体用ターゲットを撮影している状況を側面視で例示する説明図である。
【
図5】
図4の表示装置に表示される管理画像データを例示する説明図である。
【
図6】
図1の状況からクレーンのブームの傾斜角度を変更した状況を側面視で例示する説明図である。
【
図7】
図6の表示装置に表示される管理画像データを例示する説明図である。
【
図8】本発明に係るさらに別の実施形態の吊体の位置把握システムの表示装置に表示される管理画像データを例示する説明図である。
【
図9】本発明に係るさらに別の実施形態の吊体の位置把握システムの表示装置に表示される管理画像データを例示する説明図である。
【
図10】本発明に係るさらに別の実施形態の吊体の位置把握システムを使用して、クレーンによって吊上げた吊体の基準面に対する吊上げ高さを把握している状況を側面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の吊体の位置把握方法および位置把握システムを図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0011】
図1に例示する本発明の吊体の位置把握方法および位置把握システム1では、クレーン30によって吊り上げられた吊体33の基準面Rに対する吊上げ高さH5を把握する。この位置把握システム1は、陸上で荷役作業を行うクレーン30に限らず、水上で荷役作業を行うクレーン30(例えば、作業船に搭載されたクレーン30など)に適用することもできる。この実施形態では、陸上で荷役作業を行うクレーン30に搭載した場合を例示する。
【0012】
クレーン30は、傾動可能なブーム31を備えており、ブーム31の先端部31aから吊り下げられた吊ワイヤ32の下端に吊具34が設けられている。前述した吊体33は、吊具34に吊荷35を吊下げていない状態では吊具34であり、吊具34に吊荷35を吊下げている状態では、吊具34および吊荷35である。この実施形態では、吊具34に吊荷35を吊下げている状態の場合を例示して説明する。
【0013】
基準面Rは、荷役作業における高さの基準とする面である。地面を基準面Rとすることもできるし、建造物の床面や船舶の床面を基準面Rにすることもできる。陸地や船舶に配置されている置荷の上面や、吊荷35を着床させる運搬機の荷台の上面などを基準面Rにすることもできる。この実施形態では、地面を基準面Rとする場合を例示している。位置把握システム1を水上で荷役作業を行うクレーン30に適用する場合には、水面を基準面Rとすることもできるし、水上構造体の上面を基準面Rとすることもできる。
【0014】
図1に例示するように、位置把握システム1は、吊体33の上部または側方の一箇所以上に配置された吊体用ターゲット2と、クレーン30のブーム31の先端部31aに設置された撮影装置3と、撮影装置3に通信可能に接続された演算装置8とを備えている。位置把握システム1はさらに、基準面Rに対する撮影装置3の上下方向の撮影高さH2のデータを取得する撮影高さ計測手段4と、演算装置8に通信可能に接続された表示装置9と、演算装置8に通信可能に接続された管理装置10とを備えている。
【0015】
撮影装置3はクレーン30のブーム31の先端部31aに撮影方向を下向きで設置され、下方に位置する吊体用ターゲット2を撮影する。撮影装置3には例えば、デジタルカメラなどが使用される。撮影装置3は予め設定した一定のズーム倍率で吊体用ターゲット2、吊体33および基準面Rを撮影する。
図1では、撮影装置3の撮影範囲を一点鎖線で示している。撮影装置3はクレーン30のブーム31の上下方向の傾斜角度θが変更された場合にも、撮影方向が下向きに維持される構成にする。この実施形態では、ブーム31の先端部31aに撮影装置3の撮影方向を下向きに維持する回動機構3aを設けている。
【0016】
図2は、撮影装置3によって取得された撮影画像データ20を例示している。撮影装置3によって取得された撮影画像データ20は、演算装置8に逐次入力される。この実施形態では、撮影装置3によって取得された撮影画像データ20が、演算装置8に送信される構成になっている。ブーム31の先端部31aに既設のクレーンカメラが設けられている場合には、そのクレーンカメラを撮影装置3として使用することもできる。既設のクレーンカメラとは別に撮影装置3を設けることもできる。なお、図中の撮影画像データ20では、吊ワイヤ32を省略している。
【0017】
吊体用ターゲット2は、吊体33の位置の特定に使用する目印である。この実施形態では、吊体用ターゲット2として、吊具34の上部に吊体用標識2aを付設している。吊体用標識2aは、板状部材やシート状部材に目印となる図形や文字が付されたものである。
【0018】
図2に例示するように、この実施形態では平面視で円形の吊体用標識2aを使用している。この吊体用標識2aは、円を十字に四分割した図形を有し、その図形の隣り合う区画どうしが異なる色で彩色されたデザインになっている。吊体用標識2aの形状や図形のデザイン、色彩などはこの実施形態に限定されず、他にも様々な構成にすることができる。例えば、吊体用標識2aは、四角形を十字に四分割したデザインなどにすることもできる。吊体用標識2aは、玉掛作業を行う作業者などが身に着けるヘルメットと識別できる色彩にすることが好ましい。吊体用標識2aの色彩は、例えば、黒色と黄色の組み合わせや、黒色と赤色の組み合わせにするとよい。吊体用標識2aの実寸の大きさS1(直径の実寸法或いは縦横の実寸法)は、例えば、200mm~500mm程度である。吊体用標識2aとして公知の対空標識を用いることもできる。吊体用標識2aは、磁石や粘着剤を付した板状部材やシート状部材で作製し、吊体33に対して着脱可能な構成にするとよい。
【0019】
吊具34や吊荷35に目印となる特徴的な部位や部品、模様、印字などがある場合にはその吊具34や吊荷35に元々ある目印を吊体用ターゲット2として使用することもできる。また、例えば、吊具34や吊荷35に吊体用ターゲット2として塗料で目印となる図形や文字を描くこともできる。
【0020】
この実施形態では、吊体33の上部の中央の一箇所に吊体用ターゲット2を配置している。後に別の実施形態で詳述するが、吊体33の複数箇所に吊体用ターゲット2を配置することもできる。吊体用ターゲット2は、例えば、吊具34の側方に配置することもできるし、吊荷35の上部や側方に配置することもできる。吊具34と吊荷35の両方に吊体用ターゲット2を配置することもできる。吊体33に対する吊体用ターゲット2の配置は撮影装置3によって撮影できる位置であれば特に限定されない。
【0021】
演算装置8には、コンピュータ等を用いる。この実施形態では、クレーン30の運転室に演算装置8を配置しているが、演算装置8の配置は特に限定されず他の位置に配置することもできる。例えば、クレーン30とは別の位置に演算装置8を配置することもできる。
【0022】
演算装置8には、吊体用ターゲット2の画像データを教師データとして機械学習されたターゲット検出モデルが記憶されている。このターゲット検出モデルは、入力された撮影画像データ20における吊体用ターゲット2を検出し、その吊体用ターゲット2の撮影画像データ20での大きさPS1(直径の寸法或いは縦横の寸法)を検出するためのコンピュータプログラムである。
【0023】
教師データとして、吊体用ターゲット2の多数の画像データが記憶されている。吊体用ターゲット2の特徴を人工知能(AI)に機械学習させることで、撮影画像データ20における吊体用ターゲット2の大きさPS1を検出するターゲット検出モデルを生成することが可能である。演算装置8による機械学習の手法としては、例えば、ディープラーニングや、ニュートラルネットワーク、回帰、クラスタリング、パターンマッチングなどが例示できる。
【0024】
演算装置8には、撮影装置3から撮影画像データ20が逐次入力される。演算装置8には、さらに、撮影高さ計測手段4から基準面Rに対する撮影装置3の撮影高さH2のデータが逐次入力される。
図3に例示するように、演算装置8は、予め記憶されているターゲット検出モデルと、撮影装置3から入力された撮影画像データ20とに基づいて、撮影画像データ20での吊体用ターゲット2の大きさPS1を検出する。この実施形態のターゲット検出モデルは、撮影画像データ20において吊体用ターゲット2として検出した境界枠22(所謂、バウンディングボックス)の大きさを、撮影画像データ20での吊体用ターゲット2の大きさPS1として扱う構成になっている。
図3では、境界枠22を一点鎖線で示している。
【0025】
そして、演算装置8は、撮影画像データ20での吊体用ターゲット2の大きさPS1の検出データに基づいて、撮影装置3に対する吊体用ターゲット2の上下方向のターゲット離間距離H1を算出する。そして、演算装置8は、その算出したターゲット離間距離H1のデータと、撮影高さ計測手段4から入力された撮影高さH2のデータとに基づいて、基準面Rに対する吊体用ターゲット2のターゲット高さH3を算出する構成になっている。演算装置8は、吊荷35を吊っていない場合には、このターゲット高さH3を吊体33の基準面Rに対する吊上げ高さH5として出力する。
【0026】
この実施形態のように、吊荷35を吊っている場合には、演算装置8は、さらに、ターゲット高さH3のデータと、予め入力されている吊体用ターゲット2と吊荷35の下端との上下方向の離間距離である吊体高さH4のデータとに基づいて、吊体33(吊荷35)の基準面Rに対する吊上げ高さH5を算出して出力する。
【0027】
演算装置8は、さらに、入力された撮影画像データ20と、算出した吊上げ高さH5のデータを含む高さ情報23とを組み合わせた管理画像データ21を生成し、その生成した管理画像データ21を、表示装置9と管理装置10とにそれぞれ送信する構成になっている。表示装置9は、クレーン30の運転室に設置されるモニタである。管理装置10は、クレーン30による荷役作業を管理する管理者が使用するコンピュータである。
図3に例示するように、表示装置9と管理装置10のモニタにはそれぞれ撮影画像データ20と前述した高さ情報23とが組み合わせた管理画像データ21が表示される構成になっている。
【0028】
撮影高さ計測手段4は、撮影高さH2のデータを取得できる構成であれば、特に限定されず様々な構成にすることができる。この実施形態では、撮影高さ計測手段4として、基準面Rの一箇所に基準面用ターゲット5を設けている。この実施形態では、基準面用ターゲット5、撮影装置3および演算装置8が、撮影高さ計測手段4として機能する構成になっている。
【0029】
基準面用ターゲット5は、基準面Rの位置の特定に使用する目印である。この実施形態では、基準面用ターゲット5として、基準面Rに基準面用標識5aを付設している。基準面用標識5aは、板状部材やシート状部材に目印となる図形や文字が付されたものである。基準面用ターゲット5は、演算装置8に記憶されているターゲット検出モデルによって、吊体用ターゲット2と識別できるものとする。
【0030】
図2に例示するように、この実施形態では平面視で四角形状の基準面用標識5aを使用している。この基準面用標識5aは、四角を十字に四分割した図形を有し、その図形の隣り合う区画どうしが異なる色で彩色されたデザインになっている。基準面用標識5aの形状や図形のデザイン、色彩などはこの実施形態に限定されず、他にも様々な構成にすることができる。基準面用標識5aの色彩は、玉掛作業を行う作業者などが身に着けるヘルメットの色と識別できる色彩にすることが好ましい。基準面用標識5aの色彩は、例えば、黒色と黄色の組み合わせや、黒色と赤色の組み合わせにするとよい。基準面用標識5aは吊体用標識2aと異なる色彩にすることが好ましい。基準面用標識5aの実寸の大きさS2(直径の実寸法或いは縦横の実寸法)は、例えば、200mm~500mm程度である。基準面用標識5aとして公知の対空標識を用いることもできる。
【0031】
基準面Rに目印となる特徴的な標示や印字などがある場合にはその基準面Rに元々ある目印を基準面用ターゲット5として使用することもできる。また、例えば、基準面Rに基準面用ターゲット5として塗料で目印となる図形や文字を描くこともできる。
【0032】
この実施形態では、撮影装置3により吊体用ターゲット2とともに基準面用ターゲット5が撮影される構成になっている。演算装置8には、基準面用ターゲット5の画像データを教師データとして機械学習されたターゲット検出モデルが記憶されている。演算装置8は、ターゲット検出モデルと撮影画像データ20とに基づいて、撮影画像データ20での基準面用ターゲット5の大きさPS2(直径の寸法或いは縦横の寸法)を検出する。この実施形態のターゲット検出モデルは、撮影画像データ20において基準面用ターゲット5として検出した境界枠22の大きさを、撮影画像データ20での基準面用ターゲット5の大きさPS2として扱う構成になっている。そして、演算装置8は、撮影画像データ20での基準面用ターゲット5の大きさPS2の検出データに基づいて撮影高さH2を算出する構成になっている。
【0033】
後に別の実施形態で詳述するが、撮影高さ計測手段4は、例えば、ブーム31の先端部31aに設置した測位装置6や、ブーム31に設置した傾斜計7などで構成することもできる。
【0034】
次に、この位置把握システム1を使用した吊体33の位置把握方法を説明する。以下では、吊荷35を吊り上げる場合を例示する。
【0035】
図4に例示するように、事前準備作業として、クレーン30のブーム31の先端部31aに撮影装置3を設置する。ブーム31の先端部31aに既設のクレーンカメラが設置されている場合には、そのクレーンカメラを撮影装置3として使用してもよい。吊体33の上部の一箇所以上に吊体用ターゲット2を配置する。この実施形態では、吊具34の上部の中央の一箇所に吊体用ターゲット2として吊体用標識2aを付設する。
【0036】
撮影高さ計測手段4として、基準面用ターゲット5を用いる場合には、基準面Rの一箇所以上に基準面用ターゲット5を設ける。この実施形態では、基準面用ターゲット5として基準面Rの一箇所に基準面用標識5aを付設する。基準面用ターゲット5は、撮影画像データ20において基準面用ターゲット5が吊体33によって隠れないように、吊体用ターゲット2から水平方向に離間した位置に配置する。
【0037】
図4に例示するように、吊体33を基準面Rに載置し、クレーン30のブーム31の傾斜角度θを予め設定した基準となる傾斜角度θに調整する。クレーン30の吊ワイヤ32は張った状態にする。そして、ブーム31が基準となる傾斜角度θである場合の撮影高さH2を測定し、その基準となる撮影高さH2のデータを演算装置8に記憶させる。さらに、吊体高さH4を測定し、その吊体高さH4のデータを演算装置8に記憶させる。
【0038】
さらに、撮影装置3により、吊体用ターゲット2と基準面用ターゲット5とを撮影して、その撮影装置3によって取得した撮影画像データ20を演算装置8に入力する。演算装置8は、予め記憶されているターゲット検出モデルと、入力された撮影画像データ20とに基づいて、撮影画像データ20での吊体用ターゲット2(吊体用標識2a)の大きさPS1と基準面用タ―ゲット5(基準面用標識5a)の大きさPS2を検出する。
【0039】
この実施形態のターゲット検出モデルは、撮影画像データ20において吊体用ターゲット2として検出した境界枠22の大きさを、撮影画像データ20での吊体用ターゲット2の大きさPS1として扱う。また、ターゲット検出モデルは、撮影画像データ20において基準面用ターゲット5として検出した境界枠22の大きさを、撮影画像データ20での基準面用ターゲット5の大きさPS2として扱う。
【0040】
そして、演算装置8に、ターゲット検出モデルによって検出した撮影画像データ20での吊体用ターゲット2の大きさPS1と基準面用ターゲット5の大きさPS2を、吊体33が基準面Rに載置され、ブーム31が予め設定した基準となる傾斜角度θである場合の吊体用ターゲット2の基準となる大きさPS1と基準面用ターゲット5の基準となる大きさPS2として記憶させる。
【0041】
次いで、
図1に例示するように、ブーム31を基準となる傾斜角度θにした状態で、吊体33を基準面Rよりも上方に吊り上げた状態にする。そして、吊体33の吊上げ高さH5を測定する。次いで、その測定した吊上げ高さH5と、予め測定した撮影高さH2および吊体高さH4からターゲット離間距離H1を算出する。ターゲット離間距離H1は、撮影高さH2から吊上げ高さH5と吊体高さH4とを引くことで算出できる。
【0042】
さらに、撮影装置3により、吊体用ターゲット2と基準面用ターゲット5とを撮影して、その撮影装置3によって取得した撮影画像データ20を演算装置8に入力する。演算装置8は、入力された撮影画像データ20とターゲット検出モデルとに基づいて、撮影画像データ20での吊体用ターゲット2の大きさPS1を検出する。そして、その検出した吊体用ターゲット2の大きさPS1を演算装置8に記憶させる。
【0043】
演算装置8は、吊体33が基準面Rに載置された状態におけるターゲット離間距離H1および撮影画像データ20での吊体用ターゲット2の基準となる大きさPS1と、吊体33が基準面Rから離間した状態におけるターゲット離間距離H1および撮影画像データ20での吊体用ターゲット2の基準となる大きさPS1とに基づいて、ターゲット離間距離H1の変化量と、撮影画像データ20での吊体用ターゲット2の大きさPS1の変化量との比率を算出する。そして、演算装置8はその比率を記憶する。
【0044】
ターゲット離間距離H1が短くなるほど、撮影画像データ20での吊体用ターゲット2の大きさPS1は大きくなる。このターゲット離間距離H1の変化量と、撮影画像データ20での吊体用ターゲット2の大きさPS1の変化量の比率は一定である。それ故、演算装置8は、前述した比率を算出して記憶することで、撮影画像データ20での吊体用ターゲット2の大きさPS1から、ターゲット離間距離H1を算出することが可能になる。以上により、位置把握システム1の事前準備作業が完了する。
【0045】
クレーン30により荷役作業を行う際には、撮影装置3によって吊体用ターゲット2を撮影し、その撮影装置3によって取得した撮影画像データ20を演算装置8に逐次入力する。そして、演算装置8は、ターゲット検出モデルと撮影画像データ20とに基づいて、撮影画像データ20での吊体用ターゲット2の大きさPS1を検出する。そして、演算装置8は、その検出データに基づいてターゲット離間距離H1を算出する。
【0046】
演算装置8には、事前準備作業で算出した、ターゲット離間距離H1の変化量と撮影画像データ20での吊体用ターゲット2の大きさPS1の変化量との比率のデータが記憶されているので、撮影画像データ20での吊体用ターゲット2の大きさPS1の検出データに基づいて、ターゲット離間距離H1を算出することができる。
【0047】
この実施形態では、基準面用ターゲット5、撮影装置3および演算装置8が撮影高さ計測手段4として機能する。演算装置8は、入力された撮影画像データ20とターゲット検出モデルとに基づいて、撮影画像データ20での基準面用ターゲット5の大きさPS2を検出する。そして、演算装置8は、その検出データに基づいて撮影高さH2を算出する。
【0048】
撮影高さH2の変化量と、撮影画像データ20での基準面用ターゲット5の大きさPS2の変化量との比率は一定であり、その比率は、事前準備作業で算出した、ターゲット離間距離H1の変化量と、撮影画像データ20での吊体用ターゲット2の大きさPS1の変化量との比率と同じである。演算装置8には、事前準備作業で算出した前述の比率のデータが記憶されている。それ故、
図6および
図7に例示するように、ブーム31の傾斜角度θが事前準備作業の状態から変更されて、撮影高さH2が変化した場合にも、撮影画像データ20での基準面用ターゲット5の大きさPS2の検出データに基づいて、撮影高さH2を算出することができる。
【0049】
さらに、演算装置8は、算出したターゲット離間距離H1のデータと撮影高さH2のデータとに基づいて、ターゲット高さH3を算出する。演算装置8は、さらに、ターゲット高さH3と、予め入力されている吊体高さH4とに基づいて、吊体33の吊上げ高さH5を算出して出力する。
【0050】
そして、演算装置8は、入力された撮影画像データ20と、算出した吊上げ高さH5のデータを含む高さ情報23とを組み合わせた管理画像データ21を生成し、その生成した管理画像データ21を、表示装置9と管理装置10とにそれぞれ送信する。表示装置9と管理装置10のモニタにはそれぞれ管理画像データ21が表示される。演算装置8により、撮影装置3の撮影周期毎に前述した吊上げ高さH5の算出と管理画像データ21の生成が繰り返し実行されることで、表示装置9と管理装置10のモニタにはリアルタイムの撮影画像データ20と高さ情報23とを組み合わせた管理画像データ21が表示された状態となる。
【0051】
図3に例示するように、この実施形態では、管理画像データ21として、撮影画像データ20に重ね合わせて、撮影高さH2とターゲット高さH3と吊上げ高さH5とがそれぞれ数値表示される構成になっている。管理画像データ21は、ターゲット高さH3と吊上げ高さH5のいずれかのみを表示する構成にすることもできる。
【0052】
一度、事前準備作業を行っておけば、その後は、事前準備作業で使用した吊荷35とは別の吊荷35の荷役作業を行う場合にも、事前準備作業を行わずに、クレーン30によって吊上げられた吊体33の基準面Rに対する吊上げ高さH5を把握することができる。荷役する吊荷35が変わり、吊体高さH4が変わった場合にも、吊体高さH4のデータを更新するだけで、同様に、吊体33の吊上げ高さH5を算出することが可能である。
【0053】
クレーン30がブーム31を旋回させて、基準面用ターゲット5が撮影装置3の撮影範囲から外れた場合や、いずれかの基準面用ターゲット5の上に吊体33が重なった場合には、撮影画像データ20での基準面用ターゲット5の大きさPS2をターゲット検出モデルで検出できない状況になる場合もあるが、そのような場合には、管理画像データ21に撮影高さH2を正常に算出できていないことを示す通知が表示される構成になっている。
【0054】
このように、本発明によれば、吊体33の上部に吊体用ターゲット2を配置して、クレーン30のブーム31の先端部31aに設置した撮影装置3により吊体用ターゲット2を撮影し、その取得した撮影画像データ20を演算装置8に入力すると、演算装置8によって基準面Rに対する吊体用ターゲット2のターゲット高さH3が算出される。それ故、吊体33に計測機器を設置せずとも、吊体33の基準面Rに対する吊上げ高さH5を簡易に把握することが可能になる。
【0055】
吊体33は着床時などに激しく振動することがあるため、吊体33に吊具気圧計や測位装置(GNNS受信装置)などの計測機器を設置すると故障するリスクや誤作動するリスクが比較的高くなるが、この位置把握システム1では、吊体33に吊体用ターゲット2を配置するだけでよいため、位置把握システム1を構成する各機器が故障するリスクや誤作動するリスクは非常に低い。
【0056】
また、一般的に、クレーン30のブーム31の先端部31aには、既設のクレーンカメラがあり、この位置把握システム1では、その既設のクレーンカメラを撮影装置3として利用することができる。吊体33に吊体用ターゲット2を設ける作業も非常に簡易に短時間で行える。この位置把握システム1は、既存のクレーン30に簡易に適用することができ、設備コストも比較的低いので、当業者にとって非常に有用である。
【0057】
吊体用ターゲット2として、吊体33の上部に吊体用標識2aを付設する構成にすると、吊体33に目印となる特徴的な部位や部品、模様、印字などが無い場合にも、吊体33に簡易に吊体用ターゲット2を設けることが可能になる。吊体33は荷役作業中に水平方向に回転する場合があるが、この実施形態のように、吊体33に円形の吊体用ターゲット2(吊体用標識2a)を設けると、吊体33とともに吊体用ターゲット2が水平方向に回転した場合にも、撮影画像データ20において吊体用ターゲット2として検出した境界枠22(バウンディングボックス)の大きさが変化し難くなり、演算装置8のターゲット検出モデルによって検出される撮影画像データ20での吊体用ターゲット2の大きさPS2の検出誤差が比較的小さくなる。それ故、吊体33の基準面Rに対する吊上げ高さH5を精度よく検出するには有利になる。
【0058】
この実施形態のように、撮影高さ計測手段4を基準面用ターゲット5、撮影装置3、および演算装置8で構成すると、ブーム31に測位装置6や傾斜計7を設置せずとも、基準面Rに基準面用ターゲット5を設けるだけで撮影高さH2を算出することが可能になる。基準面Rに基準面用ターゲット5を設けるだけでよいため、設備コストを低くするには有利になる。基準面用ターゲット5として、基準面Rに基準面用標識5aを付設する構成にすると、基準面Rに目印となる特徴的な標示や印字などが無い場合にも、基準面Rに簡易に基準面用ターゲット5を設けることが可能になる。
【0059】
図8に本発明に係る別の実施形態の位置把握システム1を例示する。
図8に例示するように、この実施形態では、吊体33(吊具34)の側方の二箇所に吊体用ターゲット2を配置している。より具体的には、上面に吊体用標識2aが設けられていて側面に磁石が設けられている連結具を、吊具34の側面に磁力で接着させている。また、基準面Rの二箇所に基準面用ターゲット5を設けている。吊体33の側方に吊体用ターゲット2を配置する構造はこの実施形態に限定されず、他にも様々な構成にすることができる。例えば、吊具34の底面に接合した連結具を吊具34の側方に突出した構造にして、その連結具の吊具34の側方に突出した部位に吊体用ターゲット2を配置することもできる。
【0060】
図1~
図7に例示した実施形態の演算装置8では、予め記憶されているターゲット検出モデルと撮影装置3から入力される撮影画像データ20とに基づいて、撮影画像データ20での吊体用ターゲット2の大きさPS1と基準面用ターゲット5の大きさPS2を検出する構成にしていた。
【0061】
それに対して、この実施形態の演算装置8は、ターゲット検出モデルと撮影画像データ20とに基づいて、撮影画像データ20での吊体用ターゲット2どうしの画像離間距離PD1と基準面用ターゲット5どうしの画像離間距離PD2を検出する構成にしている。そして、その吊体用ターゲット2どうしの画像離間距離PD1の検出データに基づいてターゲット離間距離H1を算出し、基準面用ターゲット5どうしの画像離間距離PD2の検出データに基づいて撮影高さH2を算出する構成になっている。
【0062】
この実施形態の演算装置8は、ターゲット検出モデルにより撮影画像データ20でのそれぞれの吊体用ターゲット2の位置とそれぞれの基準面用ターゲット5を検出し、その検出したそれぞれの吊体用ターゲット2の中心位置どうしの画像離間距離PD1と、それぞれの基準面用ターゲット5の中心位置どうしの画像離間距離PD2を検出する構成になっている。
【0063】
撮影画像データ20での吊体用ターゲット2の大きさPS1と同様に、ターゲット離間距離H1の変化量と撮影画像データ20での吊体用ターゲット2どうしの画像離間距離PD1の変化量との比率は一定である。それ故、同様に、撮影画像データ20での吊体用ターゲット2どうしの画像離間距離PD1に基づいて、ターゲット離間距離H1を算出できる。
【0064】
撮影高さH2の変化量と、撮影画像データ20での基準面用ターゲット5どうしの画像離間距離PD2の変化量との比率も一定である。そして、その比率は、ターゲット離間距離H1の変化量と、撮影画像データ20での吊体用ターゲット2どうしの画像離間距離PD1の変化量との比率と同じである。それ故、同様に、撮影画像データ20での基準面用ターゲット5どうしの画像離間距離PD2に基づいて、撮影高さH2を算出することができる。その他の構成は、
図1~
図7に例示した実施形態の位置把握システム1と同じである。
【0065】
この実施形態のように、吊体33の上部または側方の複数箇所に吊体用ターゲット2を配置する場合には、演算装置8を、撮影画像データ20とターゲット検出モデルとに基づいて、吊体用ターゲット2どうしの画像離間距離PD1を検出し、その検出データに基づいてターゲット離間距離H1を算出する構成にすることで、
図1~
図7に例示した実施形態の位置把握システム1と同様の効果を奏することができる。
【0066】
図1~
図7に例示した実施形態のように、演算装置8をターゲット検出モデルにより、撮影画像データ20での吊体用ターゲット2の大きさPS1を検出する構成にした場合には、吊体用ターゲット2を吊体33の一箇所のみに配置した場合にもターゲット離間距離H1を算出できるというメリットがある。一方で、撮影画像データ20での吊体用ターゲット2の大きさPS1を精度よく検出するには、吊体用ターゲット2をある程度大きくする必要がある。
【0067】
それに対して、この実施形態のように、演算装置8をターゲット検出モデルにより、撮影画像データ20での吊体用ターゲット2どうしの画像離間距離PD1を検出する構成にした場合には、吊体33の上部の複数箇所に吊体用ターゲット2を配置する必要はあるが、それぞれの吊体用ターゲット2のサイズを比較的小さくした場合にも、撮影画像データ20での吊体用ターゲット2どうしの画像離間距離PD1は比較的精度よく検出できる。それ故、吊体33の上部に吊体用ターゲット2を配置できるスペースが小さい場合には、この実施形態のように、吊体33の上部の複数箇所に吊体用ターゲット2を配置する構成にするとよい。
【0068】
この実施形態のように、基準面Rの複数箇所に基準面用ターゲット5を設ける場合には、演算装置8により、撮影画像データ20とターゲット検出モデルとに基づいて、撮影画像データ20での基準面用ターゲット5どうしの画像離間距離PD2を検出し、その検出データに基づいて撮影高さH2を算出する構成にすることで、
図1~
図7に例示した実施形態の位置把握システム1と同様の効果を奏することができる。
【0069】
図1~
図7に例示した先の実施形態のように、演算装置8をターゲット検出モデルにより、撮影画像データ20での基準面用ターゲット5の大きさPS2を検出する構成にした場合には、基準面用ターゲット5を基準面Rの一箇所のみに設けた場合にも、撮影高さH2を算出できるというメリットがある。一方で、撮影画像データ20での基準面用ターゲット5の大きさPS2を精度よく検出するには、基準面用ターゲット5をある程度大きくする必要がある。
【0070】
それに対して、この実施形態のように、演算装置8をターゲット検出モデルにより、撮影画像データ20での基準面用ターゲット5どうしの画像離間距離PD2を検出する構成にすると、基準面Rの複数箇所に基準面用ターゲット5を設ける必要はあるが、それぞれの基準面用ターゲット5のサイズを比較的小さくした場合にも、撮影画像データ20での基準面用ターゲット5どうしの画像離間距離PD2を比較的精度よく検出できる。撮影高さH2は比較的距離が遠く、撮影画像データ20での基準面用ターゲット5の大きさPS2は比較的小さくなる。そのため、この実施形態のように、基準面Rの複数箇所に基準面用ターゲット5を設ける構成にすると、撮影高さH2を精度よく検出するには有利になる。
【0071】
図9に本発明に係る位置把握システム1のさらに別の実施形態を例示する。
図9に例示するように、この実施形態の位置把握システム1では、基準面Rの三箇所以上に基準面用ターゲット5を設けている。この実施形態では、吊体33の一箇所に吊体用ターゲット2を配置している。その他の構成は
図8に例示した実施形態の位置把握システム1と同じである。
【0072】
基準面Rの三箇所以上に基準面用ターゲット5を設ける場合には、それぞれの基準面用ターゲット5の形状や図形、色彩などを異ならせるとよい。演算装置8には、それぞれの基準面用ターゲット5の画像データを教師データとして機械学習されたターゲット検出モデルを予め記憶しておく。そして、演算装置8は、撮影画像データ20とターゲット検出モデルとに基づいて、撮影画像データ20でのそれぞれの基準面用ターゲット5を別々の基準面用ターゲット5として識別して検出し、それぞれの基準面用ターゲット5どうしの画像離間距離PD2を検出する。そして、それぞれの基準面用ターゲット5どうしの画像離間距離PD2の検出データに基づいて撮影高さH2をそれぞれ算出し、それぞれの算出値の平均値を出力する構成にする。このような構成にすることで、撮影高さH2をより精度よく把握するにはより有利になる。
【0073】
基準面Rの三箇所以上に基準面用ターゲット5を設けると、クレーン30がブーム31を旋回させて、いずれかの基準面用ターゲット5が撮影装置3の撮影範囲から外れた場合や、いずれかの基準面用ターゲット5の上に吊体33が重なった場合にも、二箇所以上の基準面用ターゲット5が撮影画像データ20に含まれていれば、撮影画像データ20での基準面用ターゲット5どうしの画像離間距離PD2を検出することが可能になる。それ故、基準面Rの三箇所以上に基準面用ターゲットを設けることで、クレーン30の作業範囲が広い場合にも対応することができる。
【0074】
図8に例示した実施形態のように、吊体33の上部の複数箇所に吊体用ターゲット2を配置する場合に、演算装置8が、撮影画像データ20とターゲット検出モデルとに基づいて、撮影画像データ20でのそれぞれの吊体用ターゲット2の大きさPS1を検出する構成にすることもできる。そして、それぞれの吊体用ターゲット2の大きさPS1の検出データに基づいて、ターゲット離間距離H1をそれぞれ算出し、それぞれの算出値の平均値を出力する構成にすることもできる。
【0075】
また、例えば、演算装置8が、撮影画像データ20とターゲット検出モデルとに基づいて、撮影画像データ20でのそれぞれの吊体用ターゲット2の大きさPS1と吊体用ターゲット2どうしの画像離間距離PD1を両方検出する構成にすることもできる。そして、それぞれの検出データに基づいて、ターゲット離間距離H1をそれぞれ算出し、それぞれの算出値の平均値を出力する構成にすることもできる。このような構成にすると、ターゲット離間距離H1を精度よく把握するにはより一層有利になる。
【0076】
また、
図8に例示した実施形態や
図9に例示した実施形態のように、基準面Rの複数箇所に基準面用ターゲット5を設ける場合に、演算装置8が、撮影画像データ20とターゲット検出モデルとに基づいて、撮影画像データ20でのそれぞれの基準面用ターゲット5の大きさPS2を検出する構成にすることもできる。そして、それぞれの基準面用ターゲット5の大きさPS2の検出データに基づいて、撮影高さH2をそれぞれ算出し、それぞれの算出値の平均値を出力する構成にすることもできる。
【0077】
また、例えば、演算装置8が、撮影画像データ20とターゲット検出モデルとに基づいて、撮影画像データ20でのそれぞれの基準面用ターゲット5の大きさPS2と基準面用ターゲット5どうしの画像離間距離PD2を両方検出する構成にすることもできる。そして、それぞれの検出データに基づいて撮影高さH2をそれぞれ算出し、それぞれの算出値の平均値を出力する構成にすることもできる。このような構成にすると、撮影高さH2を精度よく把握するにはより一層有利になる。
【0078】
図10に本発明に係るさらに別の実施形態の位置把握システム1を例示する。この実施形態では、撮影高さ計測手段4として、ブーム31の先端部31aに測位装置6を設置している。また、撮影高さ計測手段4として、ブーム31に傾斜計7を設置している。基準面Rには基準面用ターゲット5は設けていない。その他の構成は
図1~
図7に例示した実施形態の位置把握システム1と同じである。
【0079】
測位装置6は位置座標データを取得する。測位装置6は、例えば、全地球測位システムから位置座標データを取得するGNSS受信装置で構成される。傾斜計7はブーム31の傾斜角度θを計測する。この実施形態では、ブーム31の先端部31aに設置した測位装置6が取得した位置座標データに基づいて撮影高さH2を計測する構成になっている。また、傾斜計7によって計測したブーム31の傾斜角度θに基づいて、基準面Rに対する撮影装置3の上下方向の撮影高さH2を計測する構成になっている。この実施形態では、測位装置6が取得した位置座標データに基づいて算出した撮影高さH2と、傾斜計7によって計測したブーム31の傾斜角度θに基づいて算出した撮影高さH2の平均値を出力する構成にしている。例えば、測位装置6が取得した位置座標データに基づいて算出した撮影高さH2、または、傾斜計7によって計測したブーム31の傾斜角度θに基づいて算出した撮影高さH2のいずれかの算出値を出力する構成にすることもできる。
【0080】
この実施形態では、測位装置6と傾斜計7を両方設けているが、測位装置6または傾斜計7のいずれかを備えていれば、撮影高さH2を算出することが可能である。撮影高さ計測手段4をブーム31の先端部31aに設置した測位装置6で構成した場合にも、撮影高さ計測手段4をブーム31の傾斜角度θを計測する傾斜計7で構成した場合にも、
図1~
図7に例示した実施形態の位置把握システム1と同様の効果を奏することができる。
【0081】
ブーム31の先端部31aに設置した測位装置6によって取得した位置座標データ、または、傾斜計7によって計測したブーム31の傾斜角度θに基づいて、撮影高さH2のデータを取得する構成にすると、非常に簡易に撮影高さH2のデータを取得できる。ブーム31にかかる衝撃や振動は吊体33に比べて小さいので、ブーム31に設置した測位装置6や傾斜計7が故障するリスクや誤作動するリスクは低い。
【0082】
なお、本発明の位置把握システム1では、上記で例示した実施形態に限らず、例えば、吊体33の上部または側方の一箇所に吊体用ターゲット2を配置して、基準面Rの複数箇所に基準面用ターゲット5を設ける構成や、吊体33の上部または側方の複数箇所に吊体用ターゲット2を配置して、基準面Rの一箇所に基準面用ターゲット5を設ける構成にすることもできる。吊体33の上部または側方に配置する吊体用ターゲット2の数や位置、基準面Rに設ける基準面用ターゲット5の数や配置は他にも様々な構成にすることができる。位置把握システム1を水上で荷役作業を行う作業船に搭載されたクレーン30に適用する場合には、撮影高さ計測手段4として、例えば、作業船の上下方向の揺動を検出する揺動検出装置を使用する構成にすることもできる。
【符号の説明】
【0083】
1 位置把握システム
2 吊体用ターゲット
2a 吊体用標識
3 撮影装置
3a 回動機構
4 撮影高さ計測手段
5 基準面用ターゲット
5a 基準面用標識
6 測位装置
7 傾斜計
8 演算装置
9 表示装置
10 管理装置
20 撮影画像データ
21 管理画像データ
22 境界枠
23 高さ情報
30 クレーン
31 ブーム
31a (ブームの)先端部
32 吊ワイヤ
33 吊体
34 吊具
35 吊荷
R 基準面