(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053691
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】乗員保護装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/00 20060101AFI20240409BHJP
B60R 21/0136 20060101ALI20240409BHJP
B60R 21/015 20060101ALI20240409BHJP
G08B 21/00 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B60R21/00 340
B60R21/0136 310
B60R21/015 310
G08B21/00 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160064
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】シム チュイチュアン
(72)【発明者】
【氏名】後藤 雄太
(72)【発明者】
【氏名】橋本 伊代
【テーマコード(参考)】
5C086
【Fターム(参考)】
5C086AA22
5C086AA54
5C086BA22
5C086CA28
5C086CB36
5C086DA40
5C086FA02
5C086FA11
5C086FA17
5C086FA18
(57)【要約】
【課題】医療機器を装着している乗員の安全性を高めることができる乗員保護装置を得る。
【解決手段】本発明の一実施の形態に係る乗員保護装置は、車両の衝突を検出可能な衝突センサ、衝突センサが車両の衝突を検出した場合に、車両に医療機器を装着している乗員がいるかどうかを検出可能な乗員検出部と、電磁波を検出可能な電磁波検出部と、電磁波検出部の検出結果に基づいて、車内の電磁波を低減するように車両を制御可能な制御部と、制御部が車両を制御した後における電磁波検出部の検出結果に基づいて、医療機器を装着している乗員を保護する保護処理を行うことが可能な保護処理部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の衝突を検出可能な衝突センサと、
前記衝突センサが前記車両の衝突を検出した場合に、前記車両に医療機器を装着している乗員がいるかどうかを検出可能な乗員検出部と、
電磁波を検出可能な電磁波検出部と、
前記電磁波検出部の検出結果に基づいて、車内の電磁波を低減するように前記車両を制御可能な制御部と、
前記制御部が前記車両を制御した後における前記電磁波検出部の検出結果に基づいて、医療機器を装着している前記乗員を保護する保護処理を行うことが可能な保護処理部と
を備えた乗員保護装置。
【請求項2】
前記保護処理は、前記車両に医療機器を装着している前記乗員がいることを、前記車両の周囲のデバイスと通信可能な通信部が前記デバイスに通知するように、前記通信部の動作を制御することを含む
請求項1に記載の乗員保護装置。
【請求項3】
前記保護処理は、前記車両の周囲のデバイスと通信可能な通信部が前記デバイスに救助要請を通知するように、前記通信部の動作を制御することを含む
請求項1に記載の乗員保護装置。
【請求項4】
前記保護処理は、視覚および聴覚のうちの少なくとも一方により情報を通知可能な通知部の動作を制御することを含む
請求項1に記載の乗員保護装置。
【請求項5】
前記保護処理は、前記車両の周囲のデバイスと通信可能な通信部が、前記車両の周囲のデバイスから出力される電磁波の低減あるいは停止を指示する制御信号を送信するように、前記通信部の動作を制御することを含む
請求項1に記載の乗員保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の乗員を保護する乗員保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両では、しばしば、車内の乗員が検出される。例えば、特許文献1には、車内の乗員が危険な状態であるかどうかを判定し、危険な状態である場合に車両の外部に通知を行うシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両には、ペースメーカなどの医療機器を装着している人が乗車し得る。車両では、このような乗員の安全性が高いことが望まれており、さらなる安全性の向上が期待される。
【0005】
医療機器を装着している乗員の安全性を高めることができる乗員保護装置を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施の形態に係る乗員保護装置は、衝突センサと、乗員検出部と、電磁波検出部と、制御部と、保護処理部とを備えている。衝突センサは、車両の衝突を検出可能なものである。乗員検出部は、衝突センサが車両の衝突を検出した場合に、車両に医療機器を装着している乗員がいるかどうかを検出可能なものである。電磁波検出部は、電磁波を検出可能なものである。制御部は、電磁波検出部の検出結果に基づいて、車内の電磁波を低減するように車両を制御可能なものである。保護処理部は、制御部が車両を制御した後における電磁波検出部の検出結果に基づいて、医療機器を装着している乗員を保護する保護処理を行うことが可能なものである。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一実施の形態に係る乗員保護装置によれば、医療機器を装着している乗員の安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施の形態に係る乗員保護装置の一構成例を表すブロック図である。
【
図2A】
図1に示した乗員保護装置の一動作例を表すフローチャートである。
【
図2B】
図1に示した乗員保護装置の一動作例を表す他のフローチャートである。
【
図3】
図1に示した乗員検出部の一動作例を表す説明である。
【
図4】
図1に示した発生源検出部の一動作例を表す説明図である。
【
図5】
図1に示した通知制御部の一動作例を表す説明図である。
【
図6】
図1に示した通知制御部の一動作例を表す他の説明図である。
【
図7】
図1に示した外部機器制御部の一動作例を表す他の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
<実施の形態>
[構成例]
図1は、一実施の形態に係る乗員保護装置を備えた車両1の一構成例を表すものである。この例では、車両1は電動車両である。なお、これに限定されるものではなく、例えば、車両1は、ガソリンにより走行する車両であってもよい。車両1は、乗員保護装置10と、モータ31と、バッテリ32と、スマートキーシステム33と、ランプ装置41と、ホーン装置42と、ヘッドアップディスプレイ43と、通信部15とを備えている。
【0011】
乗員保護装置10は、車両1の乗員を保護するように構成される。乗員保護装置10は、衝突センサ11と、カメラ12と、着座センサ13と、電磁波センサ14と、処理部20とを有している。
【0012】
衝突センサ11は、車両1の衝突を検出するように構成される。具体的には、衝突センサ11は、例えば、車両1が、他の車両や建造物などの様々な物体に衝突したときの衝撃を検出することにより、車両が物体に衝突したことを検出するようになっている。
【0013】
カメラ12は、イメージセンサを含んで構成され、車両1の内部を撮像することにより、車両1の各座席に座っている乗員を撮像するように構成される。
【0014】
着座センサ13は、車両1の複数の座席のそれぞれに設けられ、座席に乗員が座っているかどうかを検出するように構成される。
【0015】
電磁波センサ14は、電磁波を検出するように構成される。電磁波センサ14は、例えば、車両1の様々な位置に配置された複数のセンサを含み、様々な位置における電磁波の強度を検出するようになっている。車両1は、様々な部品により構成されており、これらの部品には、電磁波を発するものもある。一般的には、車両1の車内では、部品の配置を工夫し、あるいは電磁波の遮蔽体を設けることにより、電磁波はある程度抑えられている。しかしながら、例えば車両1が物体に衝突し、車両1の車体の一部が変形した場合には、部品の位置がずれ、あるいは遮蔽体が破損し、車内の電磁波が強くなる可能性がある。また、例えば、車両1が外部の装置に衝突した場合に、その装置が電磁波を発することもあり得る。車両1では、例えばこのような場合において、電磁波センサ14が電磁波を検出するようになっている。
【0016】
処理部20は、衝突センサ11、カメラ12、着座センサ13、および電磁波センサ14の検出結果に基づいて、乗員を保護するための様々な保護処理を行うように構成される。処理部20は、例えば、1または複数のプロセッサや、1または複数のメモリなどを含んで構成される。処理部20は、乗員データ生成部21と、乗員検出部22と、電磁波検出部23と、発生源制御部24と、保護処理部25とを有している。
【0017】
乗員データ生成部21は、車両1の乗員についてのデータ(乗員データ)を生成し、生成した乗員データを記憶するように構成される。乗員データは、例えば、車両に乗車している1または複数の乗員のそれぞれについての、乗員の顔認識を行うためのデータと、その乗員がペースメーカなどの医療機器を装着しているかどうかを示すデータとを含む。
【0018】
乗員検出部22は、カメラ12の撮像画像、および着座センサ13の検出結果に基づいて、車両1の各座席における乗員を検出し、乗員データ生成部21から供給された乗員データに基づいて、ペースメーカなどの医療機器を装着している乗員の位置を特定するように構成される。
【0019】
電磁波検出部23は、電磁波センサ14の検出結果に基づいて、電磁波の発生源の位置を特定するように構成される。具体的には、電磁波検出部23は、電磁波センサ14に含まれる様々な位置に配置された複数のセンサにより検出された電磁波の強度に基づいて、電磁波の発生源の位置を特定するようになっている。
【0020】
発生源制御部24は、乗員検出部22の検出結果、および電磁波検出部23の検出結果に基づいて、電磁波の発生源である車両1の部品の動作を制御するように構成される。この例では、車両1は電動車両であり、電磁波の発生源は、モータ31、バッテリ32、スマートキーシステム33である。なお、これに限定されるものではなく、他の様々な部品をさらに含んでもよい。発生源制御部24は、例えば、車両1における設計段階でのこれらの部品の位置を把握しており、電磁波検出部23の検出結果が示す位置および電磁波の強度に基づいて、その位置における電磁波の発生源が、これらの様々な部品のうちのどの部品であるかを特定する。そして、発生源制御部24は、その部品の動作を制御することにより、電磁波の出力を抑制させ、あるいは電磁波の出力を停止させるようになっている。
【0021】
保護処理部25は、例えば、車両1が物体に衝突した場合に、乗員を保護するための様々な保護処理を行うように構成される。保護処理部25は、通知制御部26と、外部機器制御部27とを有している。
【0022】
通知制御部26は、車両1が物体に衝突した場合に、車両1の周囲に情報を通知する通知制御を行うように構成される。具体的には、通知制御部26は、通信部15が緊急通報サーバ91に対して緊急通報を行うように、通信部15の動作を制御する。また、通知制御部26は、ランプ装置41が光を発し、あるいはホーン装置42が音を発するように、ランプ装置41やホーン装置42の動作を制御する。これにより、車両1は、車両1の車内に救助を求めている乗員がいることを、車両1の周囲の人々に通知する。また、通知制御部26は、ヘッドアップディスプレイ43が、車両1の車内に救助を求めている乗員がいる旨のメッセージを、車両1のフロントガラス、リアガラス、サイドガラスなどに、車両1の外部から視認可能な態様で表示するように、ヘッドアップディスプレイ43の動作を制御する。また、通知制御部26は、通信部15が、車両1の周囲の車両92や、車両1の周囲の人が所持する携帯端末93に対して、車両1の車内に救助を求めている乗員がいる旨のメッセージを送信するように、通信部15の動作を制御するようになっている。
【0023】
外部機器制御部27は、車両1が物体に衝突した場合に、車両1の周囲の外部機器の動作を制御するように構成される。具体的には、外部機器制御部27は、通信部15が、車両1の周囲の車両92や、車両1の周囲の人の携帯端末93に対して、電磁波の出力を抑制させ、あるいは電磁波の出力を停止させるような制御信号を送信するように、通信部15の動作を制御するようになっている。
【0024】
モータ31は、車両1の駆動力を生成するように構成される。バッテリ32は、モータ31へ供給される電力を蓄電するように構成される。スマートキーシステム33は、例えばドライバが所持するスマートキーとの間で通信を行うことにより、車両1のドアを施錠し、あるいは開鍵するように構成される。モータ31、バッテリ32、スマートキーシステム33は、電磁波を発する部品である。なお、これに限定されるものでなはく、例えばインバータなどの各種回路もまた、電磁波を発生し得る。これらの部品の動作は、例えば車両1が物体に衝突した場合に、発生源制御部24により制御されることができるようになっている。
【0025】
ランプ装置41は、例えば車両1のヘッドランプ、テールランプ、方向指示ランプなどであり、発光することにより周囲を照らし、あるいは周囲に対してドライバの意図を通知するように構成される。ホーン装置42は、音を発することにより、周囲に対してドライバの意図を通知するように構成される。ヘッドアップディスプレイ43は、車両1のフロントガラス、リアガラス、サイドガラスなどに、車両1についての情報を表示するように構成される。これにより、車両1の乗員は、車両1の走行状態などの情報を得ることができる。ランプ装置41、ホーン装置42、ヘッドアップディスプレイ43は、このように情報を通知し得る。ランプ装置41、ホーン装置42、およびヘッドアップディスプレイ43は、例えば車両1が物体に衝突した場合に、通知制御部26により制御される。ランプ装置41は、車両1が物体に衝突した場合に、光を発することにより、車両1の車内に救助を求めている乗員がいることを、車両1の周囲の人々に通知することができる。ホーン装置42は、車両1が物体に衝突した場合に、音を発することにより、車両1の車内に救助を求めている乗員がいることを、車両1の周囲の人々に通知することができる。また、ヘッドアップディスプレイ43は、車両1が物体に衝突した場合に、車両1の車内に救助を求めている乗員がいる旨のメッセージを、車両1の外部から視認可能な態様で表示することにより、その旨を車両1の周囲の人々に通知することができるようになっている。
【0026】
通信部15は、車両1の外部と通信を行うように構成される。通信部15は、例えば、セルラーネットワーク(移動体通信)、車車間通信、ブルートゥース(登録商標)などを用いて、車両1の外部と通信を行う。この例では、通信部15は、セルラーネットワークを用いて緊急通報サーバ91と通信を行う。緊急通報サーバ91は、車両事故などの緊急時に車両1からの緊急通報を受け付けるものであり、この緊急通報に基づいて警察や消防などへ通報を行うようになっている。また、通信部15は、車車間通信を用いて車両1の周囲の車両92と通信を行い、ブルートゥース(登録商標)を用いて車両1の周囲の人が所持するスマートフォンなどの携帯端末93と通信を行うようになっている。
【0027】
ここで、衝突センサ11は、本開示における「衝突センサ」の一具体例に対応する。乗員検出部22は、本開示における「乗員検出部」の一具体例に対応する。電磁波センサ14は、本開示における「電磁波センサ」の一具体例に対応する。発生源制御部24は、本開示における「制御部」の一具体例に対応する。保護処理部25は、本開示における「保護処理部」の一具体例に対応する。通信部15は、本開示における「通信部」の一具体例に対応する。ランプ装置41、ホーン装置42、およびヘッドアップディスプレイ43は、本開示における「通知部」の一具体例に対応する。
【0028】
[動作および作用]
続いて、本実施の形態の乗員保護装置10の動作および作用について説明する。
【0029】
(全体動作概要)
まず、
図1を参照して、乗員保護装置10の動作を説明する。衝突センサ11は、車両1の衝突を検出する。カメラ12は、車両1の内部を撮像することにより、車両1の各座席に座っている乗員を撮像する。着座センサ13は、車両1の各座席に乗員が座っているかどうかを検出する。電磁波センサ14は、電磁波を検出する。処理部20は、衝突センサ11、カメラ12、着座センサ13、および電磁波センサ14の検出結果に基づいて、乗員を保護するための様々な保護処理を行う。具体的には、処理部20の乗員データ生成部21は、車両1の乗員についてのデータ(乗員データ)を生成し、生成した乗員データを記憶する。乗員検出部22は、カメラ12の撮像画像、および着座センサ13の検出結果に基づいて、車両1の各座席における乗員を検出し、乗員データ生成部21から供給された乗員データに基づいて、ペースメーカなどの医療機器を装着している乗員の位置を特定する。電磁波検出部23は、電磁波センサ14の検出結果に基づいて、電磁波の発生源の位置を特定する。発生源制御部24は、乗員検出部22の検出結果、および電磁波検出部23の検出結果に基づいて、電磁波の発生源である車両1の部品の動作を制御する。保護処理部25の通知制御部26は、車両1が物体に衝突した場合に、車両1の周囲に情報を通知する通知制御を行う。保護処理部25の外部機器制御部27は、車両1が物体に衝突した場合に、車両1の周囲の外部機器の動作を制御する。
【0030】
(詳細動作)
図2A,2Bは、乗員保護装置10の一動作例を表すものである。
【0031】
まず、乗員データ生成部21は、乗員データを生成する(ステップS101)。具体的には、乗員データ生成部21は、車両に乗車している1または複数の乗員のそれぞれについての、乗員の顔認識を行うためのデータと、その乗員がペースメーカなどの医療機器を装着しているかどうかを示すデータとを含む乗員データを生成する。乗員データ生成部21は、例えば、乗員の乗車時において、カメラ12の撮像画像に基づいて、乗員の顔認識を行うためのデータを生成してもよいし、その乗員のスマートフォンの撮像画像に基づいて、乗員の顔認識を行うためのデータを生成してもよい。また、乗員データ生成部21は、例えば、乗員の乗車時において、乗員が車両1のユーザインタフェースに対して行った入力操作に基づいて、乗員が医療機器を装着しているかどうかを示すデータを生成してもよいし、乗員がその乗員のスマートフォンに対して行った入力操作に基づいて、乗員が医療機器を装着しているかどうかを示すデータを生成してもよい。そして、乗員データ生成部21は、生成した乗員データを記憶する。
【0032】
次に、処理部20は、衝突センサ11が車両の衝突を検出したかどうかを確認する(ステップS102)。衝突センサ11が車両の衝突を検出していない場合(ステップS102において“N”)には、処理部20は、衝突センサ11が車両の衝突を検出するまで、このステップS102の処理を繰り返す。
【0033】
ステップS102において、衝突センサ11が車両の衝突を検出した場合(ステップS102において“Y”)には、車両1は、緊急通報を行う(ステップS103)。具体的には、通知制御部26は、通信部15が緊急通報サーバ91に対して緊急通報を行うように、通信部15の動作を制御する。緊急通報サーバ91は、この緊急通報に基づいて、警察や消防などへ通報を行う。
【0034】
次に、乗員検出部22は、乗員データ生成部21から供給された乗員データに基づいて、車両1の車内に、ペースメーカなどの医療機器を装着している乗員がいるかどうかを確認する(ステップS104)。医療機器を装着している乗員がいない場合(ステップS104において“N”)には、この処理は終了する。
【0035】
ステップS104において、医療機器を装着している乗員がいる場合(ステップS104において“Y”)には、乗員検出部22は、医療機器を装着している乗員の位置を特定する(ステップS105)。具体的には、乗員検出部22は、カメラ12の撮像画像、および着座センサ13の検出結果に基づいて、車両1の各座席における乗員を検出し、乗員データ生成部21から供給された乗員データに基づいて医療機器を装着している乗員の位置を特定する。例えば、車両1の前席にいる乗員の位置は、衝突によりエアバッグが動作することにより、ある程度制限される。よって、乗員検出部22は、着座センサ13の検出結果に基づいて、前席にいる乗員の位置をより高い精度で推定することができる。また、乗員検出部22は、カメラ12の撮像画像に基づいて、前席にいる乗員の位置を推定することができる。
【0036】
図3は、乗員検出部22により検出された、医療機器を装着している乗員の位置の一例を表すものである。この例では、車両1の4つの座席のうち、左前の座席に、医療機器を装着している乗員が座っている。この例では、乗員検出部22により検出された、医療機器を装着している乗員の位置POS1は、車両1における左前の座席に位置する。
【0037】
次に、電磁波センサ14は、電磁波を検出し(ステップS106)、電磁波検出部23は、電磁波センサ14の検出結果に基づいて、電磁波の発生源の位置を特定する(ステップS107)。具体的には、電磁波検出部23は、電磁波センサ14に含まれる、車両1の様々な位置に配置された複数のセンサにより検出された電磁波の強度に基づいて、電磁波の発生源の位置を特定する。
【0038】
図4は、電磁波検出部23により検出された、電磁波の発生源の位置の一例を表すものである。この例では、電磁波検出部23により検出された電磁波の発生源の位置POS2は、車両1における左前の座席に位置する。
【0039】
次に、発生源制御部24は、医療機器を装着している乗員が、電磁波の発生源の位置を含む所定の範囲内にいるかどうかを確認する(ステップS108)。
図4の例では、医療機器を装着している乗員の位置POS1は、電磁波の発生源の位置を含む所定の範囲R内にある。この例では、所定の範囲Rは、電磁波の発生源の位置を中心とする円状の領域範囲である。
【0040】
ステップS108において、医療機器を装着している乗員が、電磁波の発生源の位置を含む所定の範囲内にいる場合(ステップS108において“Y”)には、発生源制御部24は、その電磁波の発生源の動作を停止させる(ステップS109)。具体的には、例えば、電磁波の発生源がモータ31である場合には、発生源制御部24は、モータ31が動作を停止するようにモータ31の動作を制御する。また、例えば、電磁波の発生源がバッテリ32である場合には、発生源制御部24は、バッテリ32が充放電を行わないようにバッテリ32を制御する。また、例えば、電磁波の発生源がスマートキーシステム33である場合には、発生源制御部24は、スマートキーシステム33が動作を停止するようにスマートキーシステム33の動作を制御する。これにより、発生源制御部24は、電磁波の発生源が、電磁波を発しないようにすることができる。すなわち、この場合には、医療機器を装着している乗員は、電磁波の発生源に近いので、その電磁波により医療機器が誤動作する可能性があり得る。よって、発生源制御部24は、電磁波の発生源の動作を停止させ、発生源が電磁波をほとんど発しないようにする。
【0041】
また、ステップS108において、医療機器を装着している乗員が、電磁波の発生源の位置を含む所定の範囲内にいない場合(ステップS108において“N”)には、発生源制御部24は、その電磁波の発生源の動作を制限させる(ステップS110)。具体的には、例えば、電磁波の発生源がモータ31である場合には、発生源制御部24は、モータ31が回転数を下げるようにモータ31の動作を制御する。また、例えば、電磁波の発生源がバッテリ32である場合には、発生源制御部24は、バッテリ32が充放電量を制限するようにバッテリ32の動作を制限する。また、例えば、電磁波の発生源がスマートキーシステム33である場合には、発生源制御部24は、スマートキーシステム33が送信電力を低減するようにスマートキーシステム33の動作を制限する。これにより、発生源制御部24は、車両1の機能をある程度維持したまた、電磁波の発生源が発する電磁波の強度を低減させることができる。すなわち、この場合には、医療機器を装着している乗員は、電磁波の発生源からやや離れているものの、その電磁波により医療機器が誤動作する可能性があり得る。よって、発生源制御部24は、電磁波の発生源の動作を制限させ、発生源が発する電磁波の強度を低減させる。
【0042】
次に、電磁波センサ14は、電磁波を検出する(ステップS111)。すなわち、ステップS109,S110において、車両1における電磁波の発生源から発せられる電磁波の強度は低減しているので、電磁波センサ14は、このステップS111において、車両1の外部からの電磁波を検出する。
【0043】
そして、電磁波検出部23は、電磁波センサ14の検出結果に基づいて、電磁波の強度が所定レベル以上であるかどうかを確認する(ステップS112)。電磁波の強度が所定レベル以上ではない場合(ステップS112において“N”)には、処理はステップS114に進む。
【0044】
ステップS112において、電磁波の強度が所定レベル以上である場合(ステップS112において“Y”)には、車両1は、救助通知を行う(ステップS113)。具体的には、通知制御部26は、ランプ装置41が光を発し、あるいはホーン装置42が音を発するように、ランプ装置41やホーン装置42の動作を制御する。これにより、車両1は、車両1の車内に救助を求めている乗員がいることを、車両1の周囲の人々に通知する。また、通知制御部26は、
図5に示すように、ヘッドアップディスプレイ43が、車両1の車内に救助を求めている乗員がいる旨のメッセージを、フロントガラス、リアガラス、サイドガラスなどに、車両1の外部から視認可能な態様で表示するように、ヘッドアップディスプレイ43の動作を制御する。また、通知制御部26は、
図6に示すように、通信部15が、車両1の周囲の車両92や、車両1の周囲の人が所持する携帯端末93に対して、車両1の車内に救助を求めている乗員がいる旨のメッセージ(救助メッセージMSG)を送信するように、通信部15の動作を制御する。救助メッセージMSGは、車両1に医療機器を装着している乗員がいることを含んでいてもよいし、乗員の救助を周囲に要請する救助要請を含んでいてもよい。
【0045】
次に、乗員検出部22は、例えば、カメラ12の撮像画像や着座センサ13の検出結果に基づいて、医療機器を装着している乗員が車外に救出されたかどうかを確認する(ステップS114)。具体的には、乗員検出部22は、例えばカメラ12の撮像画像や、着座センサ13の検出結果に基づいて、医療機器を装着している乗員が車外に救出されたかどうかを確認する。なお、これに限定されるものではなく、例えば、図示しないドアセンサの検出結果に基づいて医療機器を装着している乗員が車外に救出されたかどうかを確認してもよい。乗員検出部22は、医療機器を装着している乗員が車外に救出されるまで、このステップS114の動作を繰り返す。
【0046】
ステップS114において、医療機器を装着している乗員が車外に救出された場合(ステップS114において“Y”)には、外部機器制御部27は、車外の電磁波の発生源の動作を制限させる(ステップS115)。具体的には、外部機器制御部27は、
図7に示すように、通信部15が、車両1の周囲の車両92や、車両1の周囲の人の携帯端末93に対して、電磁波の出力を抑制させ、あるいは電磁波の出力を停止させるような制御信号(制御信号CTL)を送信するように、通信部15の動作を制御する。車両1が他車両に衝突した場合には、車両92は、車両1が衝突した、この他車両であってもよい。これにより、車外に救出された乗員の医療機器が、電磁波により誤動作する可能性を低減することができる。
【0047】
以上で、この処理は終了する。
【0048】
なお、この例では、ステップS114において、医療機器を装着している乗員が車外に救出された場合に、ステップS115において、外部機器制御部27は、車外の電磁波の発生源の動作を制限させたが、これに限定されるものではない。これに代えて、例えば、ステップS112において、電磁波の強度が所定レベル以上である場合に、外部機器制御部27は、車外の電磁波の発生源の動作を制限させてもよい。
【0049】
このように、乗員保護装置10では、車両1の衝突を検出可能な衝突センサ11と、衝突センサ11が車両1の衝突を検出した場合に、車両1に医療機器を装着している乗員がいるかどうかを検出可能な乗員検出部22と、電磁波を検出可能な電磁波検出部23と、電磁波検出部23の検出結果に基づいて、車内の電磁波を低減するように車両1を制御可能な発生源制御部24と、発生源制御部24が車両1を制御した後における電磁波検出部23の検出結果に基づいて、医療機器を装着している乗員を保護する保護処理を行うことが可能な保護処理部25とを備えるようにした。これにより、乗員保護装置10では、例えば、緊急通報に基づいて警察や消防が駆けつける前に、医療機器を装着している乗員を適切に保護することができる。
【0050】
乗員保護装置10では、ステップS113に示したように、保護処理は、車両1に医療機器を装着している乗員がいることを、車両1の周囲のデバイス(車両92や携帯端末93)と通信可能な通信部15がこのデバイスに通知するように、通信部15を制御することを含むようにした。これにより、車両1の周囲の人々は、医療機器を装着している乗員が、車両1の車内において救助を求めていることを知ることができるので、この乗員を車両1から救出することができる。よって、乗員保護装置10では、医療機器を装着している乗員を適切に保護することができる。
【0051】
乗員保護装置10では、ステップS113に示したように、保護処理は、車両1の周囲のデバイス(車両92や携帯端末93)と通信可能な通信部15がこのデバイスに救助要請を通知するように、通信部15を制御することを含むようにした。これにより、車両1の周囲の人々は、車両1の車内に救助を求めている乗員がいることを知ることができるので、この乗員を車両1から救出することができる。よって、乗員保護装置10では、医療機器を装着している乗員を適切に保護することができる。
【0052】
乗員保護装置10では、ステップS113に示したように、保護処理は、視覚および聴覚のうちの少なくとも一方により情報を通知可能な通知部(ランプ装置41、ホーン装置42、ヘッドアップディスプレイ43)の動作を制御することを含むようにした。これにより、車両1は、車両1の車内に救助を求めている乗員がいることを、車両1の周囲の人々に通知する。車両1の周囲の人々は、乗員を救出することができる。よって、乗員保護装置10では、医療機器を装着している乗員を適切に保護することができる。
【0053】
乗員保護装置10では、ステップS115に示したように、保護処理は、車両1の周囲のデバイスと通信可能な通信部15が、車両1の周囲のデバイス(車両92や携帯端末93)から出力される電磁波の低減あるいは停止を指示する制御信号CTLを送信するように、通信部15の動作を制御することを含むようにした。これにより、例えば、車外に救出された乗員の医療機器が、電磁波により誤動作する可能性を低減することができる。よって、乗員保護装置10では、医療機器を装着している乗員を適切に保護することができる。
【0054】
[効果]
以上のように本実施の形態では、車両の衝突を検出可能な衝突センサと、衝突センサが車両の衝突を検出した場合に、車両に医療機器を装着している乗員がいるかどうかを検出可能な乗員検出部と、電磁波を検出可能な電磁波検出部と、電磁波検出部の検出結果に基づいて、車内の電磁波を低減するように車両を制御可能な発生源制御部と、発生源制御部が車両を制御した後における電磁波検出部の検出結果に基づいて、医療機器を装着している乗員を保護する保護処理を行うことが可能な保護処理部とを備えるようにしたので、医療機器を装着している乗員を適切に保護することができる。
【0055】
本実施の形態では、保護処理は、車両に医療機器を装着している乗員がいることを、車両の周囲のデバイスと通信可能な通信部がこのデバイスに通知するように、通信部を制御することを含むようにしたので、医療機器を装着している乗員を適切に保護することができる。
【0056】
本実施の形態では、保護処理は、車両の周囲のデバイスと通信可能な通信部がこのデバイスに救助要請を通知するように、通信部を制御することを含むようにしたので、医療機器を装着している乗員を適切に保護することができる。
【0057】
本実施の形態では、保護処理は、視覚および聴覚のうちの少なくとも一方により情報を通知可能な通知部の動作を制御することを含むようにしたので、医療機器を装着している乗員を適切に保護することができる。
【0058】
本実施の形態では、保護処理は、車両の周囲のデバイスと通信可能な通信部が、車両の周囲のデバイスから出力される電磁波の低減あるいは停止を指示する制御信号を送信するように、通信部の動作を制御することを含むようにしたので、医療機器を装着している乗員を適切に保護することができる。
【0059】
[変形例1]
上記実施の形態では、乗員データ生成部21が乗員データを生成し、生成した乗員データを記憶するようにしたが、これに限定されるものではない。これに代えて、例えば、車両1の外部にある、サーバなどの情報処理装置が乗員データを生成し、生成した乗員データを記憶してもよい。この場合は、乗員検出部22は、車両1が物体に衝突した場合に、情報処理装置からこの乗員データを取得してもよい。
【0060】
[変形例2]
上記実施の形態では、カメラ12を設けたが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えばカメラ12を設けなくてもよい。この場合、乗員データ生成部21は、例えば、通信部15が、乗員の携帯端末との間で通信を行うことにより取得した、乗員を識別するためのデータに基づいて、乗員データを生成することができる。この場合、乗員データは、乗員を識別するためのデータと、その乗員がペースメーカなどの医療機器を装着しているかどうかを示すデータとを含む。この場合、乗員検出部22は、通信部15の通信結果、および着座センサ13の検出結果に基づいて、車両1の各座席における乗員を検出し、乗員データ生成部21から供給された乗員データに基づいて、ペースメーカなどの医療機器を装着している乗員の位置を特定することができる。例えば、乗員検出部22は、通信部15における、医療機器を装着している乗員の携帯端末から送信された信号の受信強度に基づいて、医療機器を装着している乗員がどの席に座っているかを把握することができる。
【0061】
以上、実施の形態および変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等には限定されず、種々の変形が可能である。
【0062】
例えば、モータ31、バッテリ32、およびスマートキーシステム33は、電磁波の発生源であるとしたが、これに限定されるものではなく、他の部品が、電磁波の発生源であってもよい。例えば、ガソリンにより走行する車両では、エンジンが、電磁波の発生源であってもよい。
【符号の説明】
【0063】
1…車両、11…衝突センサ、12…カメラ、13…着座センサ、14…電磁波センサ、15…通信部、20…処理部、21…乗員データ生成部、22…乗員検出部、23…電磁波検出部、24…発生源制御部、25…保護処理部、26…通知制御部、27…外部機器制御部、31…モータ、32…バッテリ、33…スマートキーシステム、41…ランプ装置、42…ホーン装置、43…ヘッドアップディスプレイ、91…緊急通報サーバ、92…車両、93…携帯端末、CTL…制御信号、MSG…救助メッセージ、POS1,POS2…位置、R…範囲。