(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053692
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】ホウ素除去された純水の製造方法、純水製造装置、超純水製造システム
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20230101AFI20240409BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20240409BHJP
B01D 65/08 20060101ALI20240409BHJP
B01D 61/04 20060101ALI20240409BHJP
B01D 61/12 20060101ALI20240409BHJP
B01D 61/44 20060101ALI20240409BHJP
B01D 69/00 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
C02F1/44 H
B01D61/58
B01D65/08
B01D61/04
B01D61/12
B01D61/44
B01D69/00
C02F1/44 J
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160066
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000245531
【氏名又は名称】野村マイクロ・サイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(72)【発明者】
【氏名】野口 幸男
(72)【発明者】
【氏名】山田 賢吾
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA17
4D006GA32
4D006KA12
4D006KA17
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4D006KA41
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4D006KE07R
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4D006PA01
4D006PB02
4D006PB05
4D006PB28
4D006PC02
4D006PC03
4D006PC41
(57)【要約】
【課題】逆浸透膜のスケール閉塞を抑制することで、長期間安定的かつ効率的に純水を製造することのできる純水製造装置及び純水製造方法の提供。
【解決手段】原水を2段以上の逆浸透膜に順に通水してホウ素の除去された純水を得る純水製造方法において、1段の逆浸透膜にアルカリ性の被処理水が通水されるアルカリ処理工程と、他の1段の逆浸透膜に酸性の被処理水が通水される酸処理工程と、が所定の順序で行われ、アルカリ処理工程で第1の逆浸透膜が用いられるとともに、酸処理工程で第2の逆浸透膜が用いられる第1の処理期間と、アルカリ処理工程で第2の逆浸透膜が用いられるとともに、酸処理工程で第1の逆浸透膜が用いられる第2の処理期間と、を第1の逆浸透膜と第2の逆浸透膜を入れ替えることで、所定の間隔で繰り返す方法。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を2段以上の逆浸透膜に順に通水してホウ素の除去された純水を得る純水製造方法において、
前記逆浸透膜のうち1段の逆浸透膜にアルカリ性の被処理水が通水されるアルカリ処理工程と、
前記逆浸透膜のうち他の1段の逆浸透膜に酸性の被処理水が通水される酸処理工程と、が所定の順序で行われ、
アルカリ処理工程で第1の逆浸透膜が用いられるとともに、酸処理工程で第2の逆浸透膜が用いられる第1の処理期間と、
アルカリ処理工程で第2の逆浸透膜が用いられるとともに、酸処理工程で第1の逆浸透膜が用いられる第2の処理期間と、を
第1の逆浸透膜と第2の逆浸透膜を入れ替えることで、所定の間隔で繰り返すことを特徴とする、
純水製造方法。
【請求項2】
前記第1の処理期間において、アルカリ性の被処理水が前記第1の逆浸透膜に通水されてアルカリ処理工程が行われ、前記第1の逆浸透膜の透過水が酸性に調整され、生成した酸性の被処理水が前記第2の逆浸透膜に通水されて前記酸処理工程が行われ、
前記第2の処理期間において、アルカリ性の被処理水が前記第2の逆浸透膜に通水されて、アルカリ処理工程が行われ、前記第2の逆浸透膜の透過水が酸性に調整され、生成した酸性の被処理水が前記第1の逆浸透膜に通水されて前記酸処理工程が行われ、
前記アルカリ性の被処理水のpHは9.0以上11.0以下であり、
前記酸性の被処理水のpHは5.0以下である、
請求項1に記載の純水製造方法。
【請求項3】
さらに、前記アルカリ処理工程の前に、
第3の逆浸透膜装置にpH5.0以上7.5以下の原水が通水される工程を有する、請求項2に記載の純水製造方法。
【請求項4】
前記第1の処理期間において、酸性の被処理水が前記第2の逆浸透膜に通水されて前記酸処理工程が行われ、前記第2の逆浸透膜の透過水がアルカリ性に調整され、生成したアルカリ性の被処理水が第1の逆浸透膜に通水されてアルカリ処理工程が行われ、
前記第2の処理期間において、酸性の被処理水が前記第1の逆浸透膜に通水されて前記酸処理工程が行われ、第1の逆浸透膜の透過水がアルカリ性に調整され、生成したアルカリ性の被処理水が前記第2の逆浸透膜に通水されてアルカリ処理工程が行われ、
前記アルカリ性の被処理水のpHは9.0以上11.0以下であり、
前記酸性の被処理水のpHは5.0以上6.0以下である、
請求項1に記載の純水製造方法。
【請求項5】
直列に接続された2以上の逆浸透膜装置を有してホウ素の除去された純水を製造する純水製造装置であって、
原水を供給する原水供給管と、
第1の逆浸透膜装置と、第2の逆浸透膜装置と、
被処理水をアルカリ性又は酸性に調整する第1の調整機構と、
被処理水を酸性とアルカリ性のうち第1の調整機構と異なる液性に調整する第2の調整機構と、
原水を、第1の調整機構、第1の逆浸透膜装置、第2の調整機構、第2の逆浸透膜装置にこの順に通流させる第1の処理経路と、
原水を、第1の調整機構、第2の逆浸透膜装置、第2の調整機構、第1の逆浸透膜装置にこの順に通流させる第2の処理経路と、
第1の処理経路と第2の処理経路とを切替可能な切替機構と、
所定の処理期間経過ごとに、前記切替機構を制御して、第1の処理経路と第2の処理経路とを切り替える制御機構と、
を有することを特徴とする純水製造装置。
【請求項6】
前記第1の調整機構が、原水をアルカリ性に調整するアルカリ調整機構であり、
前記第2の調整機構が、被処理水を酸性に調整する酸調整機構である、
請求項5に記載の純水製造装置。
【請求項7】
前記第1の処理経路は、
原水を第1の逆浸透膜装置の供給側に供給する第1の供給管と、
第1の逆浸透膜装置の透過水を前記第2の調整機構に供給する第2の供給管と、
前記第2の調整機構を経た被処理水を前記第2の逆浸透膜装置の供給側に供給する第3の供給管と、
前記第2の逆浸透膜装置の透過水を後段へ送る第4の供給管と、
前記第1乃至第4の供給管にそれぞれ介装された4つの切替弁と、を有し、前記第1の調整機構は前記第1の供給管の切替弁の上流側に設置されて成り、
前記第2の処理経路は、
原水を第2の逆浸透膜装置の供給側に供給する第5の供給管と、
第2の逆浸透膜装置の透過水を前記第2の調整機構に供給する第6の供給管と、
前記第2の調整機構を経た被処理水を前記第1の逆浸透膜装置の供給側に供給する第7の供給管と、
前記第1の逆浸透膜装置の透過水を後段へ送る第8の供給管と、
前記第5乃至第8の供給管にそれぞれ介装された4つの切替弁と、
を有し、前記第1の調整機構は前記第6の供給管の切替弁の上流側に設置されて成り、
前記制御機構は、8つの前記切替弁を制御して第1の処理経路と第2の処理経路とを切り替える、請求項5又は6に記載の純水製造装置。
【請求項8】
前記第1の調整機構が、原水を弱酸性に調整する酸調整機構であり、
前記第2の調整機構が、被処理水をアルカリ性に調整するアルカリ調整機構である、
請求項5に記載の純水製造装置。
【請求項9】
一次純水システムと二次純水システムをこの順に備える超純水製造システムであって、
前記一次純水システムは、請求項5又は6に記載の純水製造装置と、その後段に、紫外線酸化装置と、電気式脱イオン装置とを備え、
前記二次純水システムは、紫外線酸化装置、非再生式ポリッシャー、膜脱気装置及び限外ろ過装置をこの順に備え、
ホウ素濃度が0.1μg/L以下の超純水を製造する
超純水製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホウ素の除去された純水の製造方法、純水製造装置、及びこれを用いた超純水製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ホウ素を含有する原水を処理して純水を製造する方法として、原水にアルカリを添加してpHを9.2以上に調整したのち、逆浸透膜処理を行う純水製造方法が知られている。この方法では、ホウ素の除去された透過水に酸を添加し、さらに逆浸透膜処理することで、処理水の比抵抗を高めることも行われている(例えば、特許文献1、2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-128921号
【特許文献2】特開平11-128922号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水のpHを10以上に高めることでホウ素除去率は向上するものの、pHが高くなるほど、逆浸透膜において、カルシウムやマグネシウムなどの硬度によるスケール閉塞が起こりやすくなる。このため、従来のホウ素を除去する純水の製造方法では、前段に硬度除去機構や、脱炭酸機能の高い脱気装置を設けることで、スケール閉塞の抑制が図られている。これに対し、逆浸透膜の供給水のpHを5以下に調整すると、硬度スケールの生成は抑制されるものの、シリカスケールが発生しやすくなる。
【0005】
硬度スケール閉塞が生じた場合、例えばpH=1~3程度の酸系の洗浄剤を逆浸透膜に通液させてスケール洗浄が行われる。シリカスケール閉塞が生じた場合には、例えばpH=11.5~13のアルカリ系の洗浄剤を逆浸透膜に通液させてスケール洗浄が行われる。
【0006】
硬度スケール閉塞及びシリカスケール閉塞いずれの場合も、スケール閉塞を完全に防ぐことは困難であり、原水の水質や運転条件によっては短期運転でのスケール閉塞が起こる。スケール閉塞が進行すると、逆浸透膜の逆洗や洗浄、洗浄設備の設置、膜交換のために装置停止をせざるを得ず、純水製造効率が低下する。そのため、例えば、半年から1年以上の期間で可能な限り逆浸透膜の洗浄を避けて継続運転し、例えば、透過水流量の著しい低下や供給側と透過側の差圧の著しい上昇により、運転の継続が困難になってきたときに洗浄することが多い。しかし、このような運転手法では、運転の継続が困難になってきたときの逆浸透膜表面には、スケール成分の強固な結晶が成長し、かつ、結晶が成長する間に膜表面の物性が変わって劣化してしまう場合がある。
【0007】
このようなハードなスケールが逆浸透膜表面に形成された場合には、高濃度の薬剤による、長時間の洗浄が行われることから、逆浸透膜の薬剤による劣化が進みやすい。また、洗浄を行っても、通水時の結晶成長と同時に生じた膜表面の劣化は回復しないので、洗浄後の逆浸透膜の処理水質悪化は避けられない。
【0008】
これに対し、ハードなスケールを形成させないように、頻繁に洗浄を繰り返すことも可能ではある。しかし、この手法では、頻繁に運転を停止させることとなるだけでなく、洗浄の繰り返しによる排水量が多くなりすぎ、かつ、排水の再利用も困難であるため、実用的ではない。すなわち、逆浸透膜の劣化の抑制や薬剤使用量の低減の観点からも、スケール洗浄及び純水製造装置の停止を行わずに、高い水回収率で純水を製造できる方法が望まれている。
【0009】
本発明は上記した課題を解決するためになされたものであって、逆浸透膜のスケール閉塞を抑制することで、逆浸透膜の洗浄を行わずに、長期間安定的かつ効率的に純水を製造することのできる純水製造装置及び純水製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態の純水製造方法は、原水を2段以上の逆浸透膜に順に通水してホウ素の除去された純水を得る純水製造方法において、前記逆浸透膜のうち1段の逆浸透膜にアルカリ性の被処理水が通水されるアルカリ処理工程と、前記逆浸透膜のうち他の1段の逆浸透膜に酸性の被処理水が通水される酸処理工程と、が所定の順序で行われ、アルカリ処理工程で第1の逆浸透膜が用いられるとともに、酸処理工程で第2の逆浸透膜が用いられる第1の処理期間と、アルカリ処理工程で第2の逆浸透膜が用いられるとともに、酸処理工程で第1の逆浸透膜が用いられる第2の処理期間と、を第1の逆浸透膜と第2の逆浸透膜を入れ替えることで、所定の間隔で繰り返すことを特徴とする。
【0011】
実施形態の純水製造方法においては、前記第1の処理期間において、アルカリ性の被処理水が前記第1の逆浸透膜に通水されてアルカリ処理工程が行われ、前記第1の逆浸透膜の透過水が酸性に調整され、生成した酸性の被処理水が前記第2の逆浸透膜に通水されて前記酸処理工程が行われ、前記第2の処理期間において、アルカリ性の被処理水が前記第2の逆浸透膜に通水されて、アルカリ処理工程が行われ、前記第2の逆浸透膜の透過水が酸性に調整され、生成した酸性の被処理水が前記第1の逆浸透膜に通水されて前記酸処理工程が行われ、前記アルカリ性の被処理水のpHは9.0以上11.0以下であり、前記酸性の被処理水のpHは5.0以下であることが好ましい。
【0012】
実施形態の純水製造方法は、さらに、前記アルカリ処理工程の前に、第3の逆浸透膜装置にpH5.0以上7.5以下の原水が通水される工程を有することが好ましい。
【0013】
実施形態の純水製造方法においては、前記第1の処理期間において、酸性の被処理水が前記第2の逆浸透膜に通水されて前記酸処理工程が行われ、前記第2の逆浸透膜の透過水がアルカリ性に調整され、生成したアルカリ性の被処理水が第1の逆浸透膜に通水されてアルカリ処理工程が行われ、前記第2の処理期間において、酸性の被処理水が前記第1の逆浸透膜に通水されて前記酸処理工程が行われ、第1の逆浸透膜の透過水がアルカリ性に調整され、生成したアルカリ性の被処理水が前記第2の逆浸透膜に通水されてアルカリ処理工程が行われ、前記アルカリ性の被処理水のpHは9.0以上11.0以下であり、
前記酸性の被処理水のpHは5.0以上6.0以下であることが好ましい。
【0014】
実施形態の純水製造装置は、直列に接続された2以上の逆浸透膜装置を有してホウ素の除去された純水を製造する純水製造装置であって、原水を供給する原水供給管と、第1の逆浸透膜装置と、第2の逆浸透膜装置と、被処理水をアルカリ性又は酸性に調整する第1の調整機構と、被処理水を酸性とアルカリ性のうち第1の調整機構と異なる液性に調整する第2の調整機構と、原水を、第1の調整機構、第1の逆浸透膜装置、第2の調整機構、第2の逆浸透膜装置にこの順に通流させる第1の処理経路と、原水を、第1の調整機構、第2の逆浸透膜装置、第2の調整機構、第1の逆浸透膜装置にこの順に通流させる第2の処理経路と、第1の処理経路と第2の処理経路とを切替可能な切替機構と、所定の処理期間経過ごとに、前記切替機構を制御して、第1の処理経路と第2の処理経路とを切り替える制御機構と、を有することを特徴とする。
【0015】
実施形態の純水製造装置において、前記第1の調整機構が、原水をアルカリ性に調整するアルカリ調整機構であり、前記第2の調整機構が、被処理水を酸性に調整する酸調整機構であることが好ましい。
【0016】
実施形態の純水製造装置において、前記第1の処理経路は、原水を第1の逆浸透膜装置の供給側に供給する第1の供給管と、第1の逆浸透膜装置の透過水を前記第2の調整機構に供給する第2の供給管と、前記第2の調整機構を経た被処理水を前記第2の逆浸透膜装置の供給側に供給する第3の供給管と、前記第2の逆浸透膜装置の透過水を後段へ送る第4の供給管と、前記第1乃至第4の供給管にそれぞれ介装された4つの切替弁と、を有し、前記第1の調整機構は前記第1の供給管の切替弁の上流側に設置されて成り、前記第2の処理経路は、原水を第2の逆浸透膜装置の供給側に供給する第5の供給管と、第2の逆浸透膜装置の透過水を前記第2の調整機構に供給する第6の供給管と、前記第2の調整機構を経た被処理水を前記第1の逆浸透膜装置の供給側に供給する第7の供給管と、前記第1の逆浸透膜装置の透過水を後段へ送る第8の供給管と、前記第5乃至第8の供給管にそれぞれ介装された4つの切替弁と、を有し、前記第1の調整機構は前記第6の供給管の切替弁の上流側に設置されて成り、前記制御機構は、8つの前記切替弁を制御して第1の処理経路と第2の処理経路とを切り替えることが好ましい。
【0017】
実施形態の純水製造装置において、前記第1の調整機構が、原水を弱酸性に調整する酸調整機構であり、前記第2の調整機構が、被処理水をアルカリ性に調整するアルカリ調整機構であることが好ましい。
【0018】
実施形態の超純水製造システムは、一次純水システムと二次純水システムをこの順に備える超純水製造システムであって、前記一次純水システムは、請求項5又は6に記載の純水製造装置と、その後段に、紫外線酸化装置と、電気式脱イオン装置とを備え、前記二次純水システムは、紫外線酸化装置、非再生式ポリッシャー、膜脱気装置及び限外ろ過装置をこの順に備え、ホウ素濃度が0.1μg/L以下の超純水を製造することを特徴とする。
【0019】
なお、本明細書において「~」の符号は、符号の左の値以上右の値以下の数値範囲を表す。
【発明の効果】
【0020】
本発明の純水製造装置及び純水製造方法によれば、逆浸透膜のスケール閉塞を長期に亘って抑制することで、逆浸透膜の洗浄を行わずに長期間安定的かつ効率的に純水を製造することができる。
本発明の純水製造システムによれば、超純水製造システムの前段側に備えられる逆浸透膜のスケール閉塞を長期に亘って抑制することで、逆浸透膜の洗浄を行わずに長期間安定的かつ効率的に超純水を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1の実施形態の純水製造方法を概略的に示すブロック図である。
【
図2】第2の実施形態の純水製造方法を概略的に示すブロック図である。
【
図3】第3の実施形態の純水製造装置を模式的に示すブロック図である。
【
図4】第3の実施形態の第1の変形例の純水製造装置を模式的に示すブロック図である。
【
図5】第4の実施形態の純水製造装置を模式的に示すブロック図である。
【
図6】第4の実施形態の純水製造装置における第1の処理経路を説明する図である。
【
図7】第4の実施形態の純水製造装置における第2の処理経路を説明する図である。
【
図8】四方弁を使用した場合の第1の処理期間の処理経路を模式的に表す図である。
【
図9】四方弁を使用した場合の第2の処理期間の処理経路を模式的に表す図である。
【
図10】第4の実施形態の純水製造装置の第1の変形例の純水製造装置を模式的に示すブロック図である。
【
図11】四方弁を使用した場合の第4の逆浸透膜装置の配置を模式的に表す図である。
【
図12】実施形態の超純水製造システムの構成を概略的に示すブロック図である。
【
図13】逆浸透膜装置の被処理水のpHと、ホウ素の除去率及び処理水の抵抗率の関係を表すグラフである。
【
図14】逆浸透膜装置の被処理水のpHと、処理水の抵抗率の関係を表すグラフである。
【
図15】逆浸透膜装置の被処理水のpHを9、10.5、11に調整したときの通水時間と透過水流量の変化を表すグラフである。
【
図16】逆浸透膜装置の被処理水のpHを3、4、6に調整して処理を開始した直後の透過水流量の変化を表すグラフである。
【
図17】90日ごとに2段の前後の逆浸透膜装置が入れ替わるようにしたときの処理水流量の変化を表すグラフである。
【
図18】
図17に示される運転条件下での、2段目及び3段目の逆浸透膜装置の透過水質の変化を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。本実施形態の純水製造方法は、半導体製造などの電子産業や、医薬用水に用いられる純水を製造する方法である。実施形態の純水製造方法は、原水を2段以上の逆浸透膜に順に通水してホウ素の除去された純水を製造する方法であり、1段の逆浸透膜にアルカリ性の被処理水が通水されるアルカリ処理工程と、他の1段の逆浸透膜に酸性の被処理水が通水される酸処理工程とを有している。このアルカリ処理工程と、酸処理工程は所定の順序で行われ、アルカリ処理工程後に酸処理工程を行ってもよいし、酸処理工程後にアルカリ処理工程を行ってもよい。本実施形態の純水製造方法においては、アルカリ処理工程で第1の逆浸透膜が用いられるとともに、酸処理工程で第2の逆浸透膜が用いられる第1の処理期間と、アルカリ処理工程で第2の逆浸透膜が用いられるとともに、酸処理工程で第1の逆浸透膜が用いられる第2の処理期間と、を第1の逆浸透膜と第2の逆浸透膜を入れ替えることで、所定の間隔で繰り返すことを特徴としている。第1の処理期間と第2の処理期間におけるアルカリ処理工程と酸処理工程の順序は同一とされる。この方法について具体例を用いて以下に詳細に説明する。
【0023】
図1は、第1の実施形態の純水製造方法を概略的に示すブロック図である。
図1に示されるように、第1の実施形態の純水製造方法は、原水を逆浸透膜処理して硬度成分を除去する工程101と、硬度成分の除去された被処理水をアルカリ性に調整したのち逆浸透膜処理してホウ素を除去する工程102と、ホウ素の除去された被処理水を酸性に調整したのち逆浸透膜処理してイオン成分を除去する工程103とを有している。
【0024】
図1に示される第1の実施形態の純水製造方法において、工程102はアルカリ処理工程に、工程103は酸処理工程に、それぞれ該当する。工程102におけるアルカリ性の被処理水のpHは、ホウ素の除去率を向上させる点で、9.0以上11.0以下、より好ましくは9.2以上10.5以下である。工程103における酸性の被処理水のpHは、イオン成分の除去率を向上させる点で、5.0以下であることが好ましく、4.5以下であることがより好ましく、2.0以上であることが好ましく、3.0以上であることがより好ましい。なお、工程102と工程103の間及び工程202と工程203の間、あるいは両工程の後に、イオン成分を除去する目的で、さらに1段以上の逆浸透膜に通水する工程を備えていてもよい。各逆浸透膜の間には、必要に応じて、ブースターポンプや脱気装置、タンクを設置してもよい。
【0025】
本実施形態の純水製造方法では、硬度成分を除去する工程101、ホウ素を除去する工程102、イオン成分を除去する工程103をこの順に所定の期間継続したのち、ホウ素を除去する工程102で使用された逆浸透膜装置(第1の逆浸透膜装置(第1RO))と、イオン成分を除去する工程103で使用された逆浸透膜装置(第2の逆浸透膜装置(第2RO))を入れ替えて、第2の逆浸透膜装置でホウ素を除去する工程202を行い、第1の逆浸透膜装置を用いてイオン成分を除去する工程203を行う。そして、硬度成分を除去する工程101、ホウ素を除去する工程102、イオン成分を除去する工程103をこの順に行う処理期間100(第1の処理期間)と、硬度成分を除去する工程101、ホウ素を除去する工程202、イオン成分を除去する工程203をこの順に行う処理期間200(第2の処理期間)を所定の期間ごとに交互に繰り返して行う。第1の逆浸透膜装置と第2の逆浸透膜装置の入れ替えは、被処理水の流路を切替可能にバルブや配管を組み合わせて構成することで実現される。また、流路切替の為の配管を設ける方法に代えて、2つの逆浸透膜ないし逆浸透膜モジュールを抜き出して、互いに位置を入れ替えることでも実現可能である。
【0026】
本実施形態の純水製造方法においては、処理期間100において、硬度成分は工程101において除去されるものの、水質や運転期間によっては逆浸透膜装置の透過水に硬度成分が漏れ出すことがある。第1の逆浸透膜装置では、アルカリ性の被処理水を処理するため、被処理水が硬度成分を含む場合に、硬度スケール閉塞が進行しやすくなる。また、酸性の被処理水を処理する第2の逆浸透膜装置では、シリカによるスケール閉塞が進行しやすくなる。そのため、第1及び第2の逆浸透膜装置のスケール閉塞が水回収率を悪化させる前に、第1の逆浸透膜装置と第2の逆浸透膜装置を入れ替えて処理期間200を行う。処理期間200において第1の逆浸透膜装置は、工程203において、酸性に調整された被処理水を処理することとなり、その過程で、硬度成分が酸により溶解され、スケール閉塞が改善される。また、シリカによるスケール閉塞が進行した第2の逆浸透膜装置においては、工程202において、アルカリ性に調整された被処理水を処理することでシリカスケールがアルカリにより溶解され、スケール閉塞が改善される。処理期間200においては、工程202に供される第2の逆浸透膜装置の硬度スケール閉塞と、工程203に供される第1の逆浸透膜装置のシリカスケール閉塞が進行することがあるが、これによる水回収率の低下が生じる前に再度第1の逆浸透膜装置と第2の逆浸透膜装置を入れ替えて、処理期間100を行うことで、処理期間200と同様に、第1及び第2の逆浸透膜装置のスケール閉塞が改善される。これにより、長期に亘って第1及び第2の逆浸透膜装置におけるスケール閉塞の進行を抑制できるので、長期間安定的かつ効率的に純水を製造することができる。さらに、工程102(工程202)及び工程103(工程203)で使用される酸及びアルカリ条件は、一般のスケール洗浄に用いられる薬剤よりも温和な酸・アルカリ条件であるため、逆浸透膜の劣化も抑制することができ、その結果、高水質の純水を長期間安定的に製造することができる。
【0027】
図2は、第2の実施形態の純水製造方法を概略的に示すブロック図である。
図2に示されるように、第2の実施形態の純水製造方法は、原水を弱酸性に調整したのち逆浸透膜処理して硬度成分を除去する工程301と、硬度成分の除去された被処理水をアルカリ性に調整したのち逆浸透膜処理してホウ素を除去する工程302と、ホウ素の除去された被処理水を酸性に調整したのち逆浸透膜処理してイオン成分を除去する工程303とを有している。
【0028】
図2に示される第2の実施形態の純水製造方法において、工程302はアルカリ処理工程に、工程301は酸処理工程に、それぞれ該当する。工程301における酸性の被処理水のpHは、硬度成分の除去率を向上させる点で、5以上6以下であることが好ましい。工程302におけるアルカリ性の被処理水のpHは、ホウ素の除去率を向上させる点で、9.0以上11.0以下、より好ましくは9.2以上10.5以下である。なお、工程302と工程303の間及び工程402と工程403の間あるいは後に、イオン成分を除去する目的で、さらに1段以上の逆浸透膜に通水する工程を備えていてもよい。各逆浸透膜の間には、必要に応じブースターポンプや、脱気装置、タンクが設置されていてもよい。
【0029】
本実施形態の純水製造方法では、硬度成分を除去する工程301、ホウ素を除去する工程302、イオン成分を除去する工程303をこの順に所定の期間継続したのち、硬度成分を除去する工程301で使用された逆浸透膜装置(第3の逆浸透膜装置(第3RO))と、ホウ素を除去する工程302で使用された逆浸透膜装置(第1の逆浸透膜装置)を入れ替えて、第1の逆浸透膜装置を用いて硬度成分を除去する工程401を行い、第3の逆浸透膜装置でホウ素を除去する工程402を行う。そして、硬度成分を除去する工程301、ホウ素を除去する工程302、イオン成分を除去する工程303をこの順に行う処理期間300(第1の処理期間)と、硬度成分を除去する工程401、ホウ素を除去する工程402、カチオン成分を除去する工程303をこの順に行う処理期間400(第2の処理期間)を所定の期間ごとに交互に繰り返して行う。第1の逆浸透膜装置と第3の逆浸透膜装置の入れ替えは、被処理水の流路を切替可能にバルブや配管を組み合わせて構成することで実現される。この際、流路切替の為の配管を設ける方法に代えて、2つの逆浸透膜ないし逆浸透膜モジュールを抜き出して、互いに位置を替えることでも実現可能である。
【0030】
本実施形態の純水製造方法においては、処理期間300において、硬度成分は工程301において除去されるものの、水質や運転期間によっては第3の逆浸透膜装置の透過水に硬度成分が漏れ出し、後段の第1の逆浸透膜装置のスケール閉塞が進行することがある。また、弱酸性の被処理水を処理する第3の逆浸透膜装置では、シリカによるスケール閉塞が進行しやすくなる。そのため、第1及び第3の逆浸透膜装置のスケール閉塞が水回収率を悪化させる前に、第1の逆浸透膜装置と第3の逆浸透膜装置を入れ替えて処理期間400を行う。処理期間400において第1の逆浸透膜装置は、工程401において弱酸性に調整された被処理水を処理することとなり、その過程で、硬度スケールが酸により溶解され、スケール閉塞が改善される。また、シリカによるスケール閉塞が進行した第3の逆浸透膜装置は、工程402において、アルカリ性に調整された被処理水を処理することでシリカスケールがアルカリにより溶解され、スケール閉塞が改善される。処理期間400においては、工程402に供される第3の逆浸透膜装置の硬度スケール閉塞と、工程401に供される第1の逆浸透膜装置のシリカスケール閉塞が進行することがあるが、これによる水回収率の低下が生じる前に再度第1の逆浸透膜装置と第3の逆浸透膜装置を入れ替えて、処理期間300を行うことで、処理期間400と同様に、第1及び第3の逆浸透膜装置のスケール閉塞が改善される。これにより、長期に亘って第1及び第3の逆浸透膜装置11、12におけるスケール閉塞の進行を抑制できるので、長期間安定的かつ効率的に純水を製造することができる。さらに、工程301(工程401)及び工程302(工程402)で使用される酸及びアルカリ条件は、一般のスケール洗浄に用いられる薬剤よりも温和な酸・アルカリ条件であるため、逆浸透膜の劣化も抑制することができ、その結果、高水質の純水を長期間安定的に製造することができる。
【0031】
なお、スケール成分は具体的には、主に水に不溶性の、炭酸カルシウム、フッ化カルシウム、水酸化カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウムなどのカルシウム(Ca)化合物、炭酸マグネシウム、フッ化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、リン酸マグネシウムなどのマグネシウム(Mg)化合物などの硬度成分のほか、シリカ、アルミニウムなどであり、スケール閉塞とは、これらスケール成分が膜表面に付着して、膜の一部または全部を閉塞させることで透過水量が減少する現象をいう。また、硬度成分によるスケール閉塞は、アルカリ性の条件下で生じやすく、シリカによるスケール閉塞は酸性条件下で生じやすい。
【0032】
第1の実施形態及び第2の実施形態における、逆浸透膜装置の入れ替えのタイミングは、例えば、最下流の処理水流量を測定し、処理水流量が初期から所定の割合まで低下したときに行うことができる。水回収率を考慮して予め、最下流の処理水流量が初期から所定の割合まで低下するまでの期間を算出して、当該期間ごとに入れ替えを行ってもよい。また、各々の逆浸透膜装置の供給水圧と透過水圧を測定し、これらの差が所定の値になったときに行ってもよいし、水回収率を考慮して予め、逆浸透膜装置の供給水圧と透過水圧の差が所定の値になる期間を算出して、当該期間ごとに入れ替えを行ってもよい。また、膜の不可逆的な劣化が生じる差圧を予備実験で求めておき、その差圧になる前に切り替えてもよい。
【0033】
次に、
図3を参照して、第1の実施形態の純水製造方法を実現する純水製造装置について説明する。
図3は、第3の実施形態の純水製造装置1を模式的に示すブロック図である。第3の実施形態の純水製造装置1は、直列に接続された2基の逆浸透膜装置(逆浸透膜装置11と逆浸透膜装置12)を有している。純水製造装置1はさらに、逆浸透膜装置11の供給側に接続されて、逆浸透膜装置11に被処理水を供給するための供給管13と、供給管13の経路に設けられ、逆浸透膜装置11の被処理水をアルカリ性に調整するアルカリ調整機構14とを備えている。純水製造装置1はさらに、逆浸透膜装置11の透過側と逆浸透膜装置12の供給側を接続し、逆浸透膜装置11の透過水を逆浸透膜装置12の供給側に供給するための供給管15と、供給管15の経路に設けられ、逆浸透膜装置12の被処理水を酸性に調整する酸調整機構16を備えている。逆浸透膜装置12の透過側には供給管17が接続されており、供給管17を介して純水製造装置1で製造された純水が後段に送られるようになっている。
【0034】
逆浸透膜装置11、12は、例えば、ケーシング内に、逆浸透膜と、逆浸透膜に被処理水を通水するための流路材とを収容して構成された逆浸透膜モジュールを1又は複数備えて成る。逆浸透膜としては、例えば、酢酸セルロース、脂肪族ポリアミド系若しくは芳香族ポリアミド系又はこれらの複合系からなる各種有機高分子膜或いはセラミック膜等を使用することができる。逆浸透膜の形状は、中空糸状、スパイラル状、平板状、チューブ状等である。本実施形態の逆浸透膜は、耐圧性を高くして処理効率を向上させる点から、スパイラル状であることが好ましい。また、逆浸透膜装置11、12は、超低圧型、低圧型、中圧型又は高圧型の逆浸透膜装置であり、2つの逆浸透膜装置は同一の型である。例えば、逆浸透膜装置11が超低圧型である場合には逆浸透膜装置12も超低圧型、逆浸透膜装置11が低圧型である場合には逆浸透膜装置12も低圧型、逆浸透膜装置11が中圧型である場合には逆浸透膜装置12も中圧型、逆浸透膜装置11が高圧型である場合には、逆浸透膜装置12も高圧型である。
【0035】
アルカリ調整機構14及び酸調整機構16、21は、例えば、酸調整剤又はアルカリ調整剤を貯留するタンクと、当該タンク内の薬剤を所定量で計量して、各供給管内に添加する薬注ポンプからなる。
【0036】
供給管13の、アルカリ調整機構14の下流側の分岐点B11には、供給管18が接続されている。分岐点B11の下流には、他の分岐点B14が位置している。供給管18の、分岐B11との接続部の反対側は、供給管15の酸調整機構16より下流側に位置する分岐点B12において、供給管15に接続されている。アルカリ調整機構14によってアルカリ性に調整された被処理水は、分岐点B11を経て供給管18を介して逆浸透膜装置12の供給側へ供給される。
【0037】
供給管17の経路に位置する分岐点B13には、供給管19が接続されている。供給管19の、分岐点13との接続部の反対側の端部は、分岐点B14において供給管13に接続されている。逆浸透膜装置12の透過水は、供給管17から分岐点B13を経て、供給管19を通流し、分岐点B14から供給管13の下流側の経路を介して逆浸透膜装置11の供給側に供給される。供給管19の経路には、逆浸透膜装置12の透過水を酸性に調整する酸調整機構21が設けられている。逆浸透膜装置11の透過側の供給管15の分岐点B15には供給管20が接続されており、供給管20を介して純水製造装置1で製造された純水が後段に送られるようになっている。
【0038】
純水製造装置1において、供給管13、逆浸透膜装置11、供給管15、逆浸透膜装置12及び供給管17で構成され、被処理水を逆浸透膜装置11と逆浸透膜装置12とでこの順に処理する流路が、第1の処理経路である。また、供給管13の分岐点B11より上流側の経路から、供給管18、供給管15の分岐点B12の下流側の経路、逆浸透膜装置12、供給管17の分岐点B13の上流側の経路、供給管19を経て、さらに、供給管13の分岐点B14の下流側の経路により、被処理水を逆浸透膜装置12と逆浸透膜装置11とでこの順に処理する流路が第2の処理経路である。
【0039】
純水製造装置1において、第1の処理経路と第2の処理経路とで切替可能となるように、供給管13、15、17、19、20の経路にそれぞれバルブV11~V16が介装されている。これらのバルブV11~V16が切替機構として機能する。例えば、バルブV11は、供給管13の経路の、分岐点B11と分岐点B14の間に、バルブV14は、供給管18の経路の、分岐点B11近傍の下流側に介装されている。バルブV12は、供給管15の経路の、分岐点B12の上流側(逆浸透膜装置11側)、かつ分岐点15の下流側(逆浸透膜装置12側)に、バルブV16は、供給管20の経路に介装されている。バルブV13は、供給管17の経路の、分岐点B13の下流側に、バルブV15は、供給管19の経路の分岐点B13の下流側かつ、酸調整機構21の上流側(逆浸透膜装置12側)に介装されている。バルブV11~V16は例えば、開閉可能な開閉バルブであり、制御装置22が出力する制御信号を受信することで開閉が自動制御される自動開閉バルブであってもよい。また、分岐に設けられた2つのバルブ、例えばバルブV11とバルブV14、バルブV12とバルブV16、バルブV13とバルブV15をそれぞれまとめて、1つの三方弁に代え、同様の切替機能を持たせてもよい。
【0040】
純水製造装置1は、任意に、供給管13の前段に、ポンプP1、逆浸透膜装置23、タンクTK、ポンプP2と、これらを接続して原水をポンプP1から逆浸透膜装置23及びタンクTKを経て供給管13へ送る供給管24を備えている。供給管24の最下流側はポンプP2を介して供給管13に接続されている。逆浸透膜装置23の好ましい構成は逆浸透膜装置11、12と同様である。また、逆浸透膜装置23は、超低圧型、低圧型又は高圧型の逆浸透膜装置であり、逆浸透膜装置11、12と同一の型であることが好ましい。ポンプP1、P2は、例えば、吐出圧の調節可能な給水ポンプである。
【0041】
また、逆浸透膜装置11、12、23の供給側及び透過側には、被処理水又は透過水の水圧を測定する水圧計が備えられていてもよい。また、水圧計に加えて、又は水圧計に代えて、被処理水又は透過水の流量を測定する流量計が備えられていてもよい。
【0042】
逆浸透膜装置11、逆浸透膜装置12の濃縮側には、濃縮水の排出管25、26がそれぞれ接続されている。濃縮水は排出管25、26を介して純水製造装置1の系外に排出されるか、逆浸透膜装置23の前段に戻されて再処理することができる。逆浸透膜装置23の濃縮側には、濃縮水の排出管27が接続されており、逆浸透膜装置23の濃縮水は排出管27を介して純水製造装置1の系外に排出される。
【0043】
純水製造装置1は、予め入力されたプログラムに従ってバルブV11~V16の開閉を制御する制御装置22を備えている。以下に、制御装置22を用いた、第1の処理期間と第2の処理期間の切替方法について説明する。
【0044】
先ず、制御装置22が制御信号を出力して、バルブV11、V12、V13を開き、バルブV14、V15、V16を閉じる。これによって第1の処理経路が開通される。原水が図示しない原水タンクからポンプP1によって、逆浸透膜装置23に供給される。原水は、例えば、市水、井水、工業用水等である。また、原水は、超純水の使用場所で使用され、回収され、その後必要に応じて薬品除去処理等の施された使用済み回収水であってもよい。例えば、原水には、水に不溶性の無機塩を形成してスケール成分を生成し得るイオンとして、カルシウム、マグネシウム等の硬度成分及び溶存炭酸ガスが、炭酸カルシウム換算の合計で10mg/L~300mg/L含まれている。また、原水には、例えば、シリカ(Si)が1mg/L~50mg/L程度、塩素がCl換算で、0.1mg/L~0.6mg/L程度、ホウ素が、5μg/L~100μg/L程度含まれている。原水のpHは5~7.5程度である。
【0045】
逆浸透膜装置23への原水の供給圧は、例えば、0.4MPa~8.0MPa、好ましくは0.5MPa~3.0MPaである。原水が逆浸透膜装置23において逆浸透膜処理されることで、原水中の硬度成分が除去される(
図1の工程101)。供給管24の、逆浸透膜装置23のより上流側に、酸調整機構を設け、原水を酸性に調整したのちに、逆浸透膜装置23で処理してもよい。この場合の、酸性に調整された原水のpHは、5.0以上6.0以下であることが好ましく、これにより原水中の硬度成分の除去率を向上させることができる。
【0046】
逆浸透膜装置23の透過水は、一旦、タンクTKに貯留される。タンクTKに貯留された透過水は、ポンプP2によって、第1の処理経路の供給管13を介して逆浸透膜装置11に被処理水として供給される。被処理水が供給管13を通流する過程で、アルカリ調整機構14により被処理水にアルカリ性調整剤が添加され、これにより被処理水がアルカリ性に調整される。アルカリ調整剤としては、例えば、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液等であり、水酸化ナトリウム水溶液を用いるのが一般的である。また、アルカリ性に調整された透過水のpHは、逆浸透膜装置11におけるホウ素の除去率を向上させるため、9.0以上11.0以下、より好ましくは9.2以上10.5以下である。
【0047】
被処理水は逆浸透膜装置11で処理されて、被処理水中のホウ素のほか、シリカ、炭酸イオン、アニオンが除去される(
図1の工程102)。ホウ素の除去された逆浸透膜装置11の透過水の導電率は、例えば、1μS/cm~15μS/cm、ホウ素濃度は、例えば、0.3ppb(μg/L)~10ppb(μg/L)であり、逆浸透膜装置11におけるホウ素の除去率は50%~95%である。ホウ素の除去された逆浸透膜装置11の透過水は、次いで、第1の処理経路の供給管15を介して、逆浸透膜装置12の供給側に被処理水として供給される。被処理水が供給管15を通流する過程で、酸調整機構16により被処理水に酸調整剤が添加され、これにより被処理水が酸性に調整される。酸調整剤としては、例えば、塩酸水溶液、硫酸水溶液などであり、硫酸水溶液を用いるのが一般的である。また、酸性に調整された透過水のpHは、逆浸透膜装置12におけるイオン成分の除去率を向上させるため、2.0以上5.0以下であることが好ましく、3.0以上4.5以下であることがより好ましい。
【0048】
被処理水は逆浸透膜装置12で処理されて、被処理水中のイオン成分が除去される(
図1の工程103)。逆浸透膜装置12で除去されるイオン成分は、主に、塩化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、フッ化物イオン、イオン化した重炭酸イオン等のアニオン成分や、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のカチオン成分、及びシリカ等の弱電解質である。イオン成分が除去された逆浸透膜装置12の透過水の比抵抗(抵抗率)は、例えば、0.5MΩ・cm~10MΩ・cm、ホウ素濃度は、例えば、0.1ppb(μg/L)~5ppb(μg/L)である。逆浸透膜装置12の透過水は、供給管17を介して後段に送られる。逆浸透膜装置11及び逆浸透膜装置12の濃縮水は、純水製造装置1の系外に排出されるか、逆浸透膜装置23の前段側に戻されて再処理される。
【0049】
以上のとおり、第1の処理経路を介して、タンクTK内の被処理水が、逆浸透膜装置11と逆浸透膜装置12にこの順に通水して処理される。この処理が行われる所定の期間が第1の処理期間である。第1の処理期間の後、制御装置22が制御信号を出力して、バルブV11、V12及びV13を閉じ、バルブV14、V15及びV16を開く。これによって第2の処理経路が開通され、第2の処理期間が開始する。
【0050】
第2の処理期間において、タンクTKに貯留された被処理水は、ポンプP2によって、第2の処理経路の供給管13の分岐点B11から供給管18を介して逆浸透膜装置12に供給される。被処理水が供給管13を通流する過程で、アルカリ調整機構14により、被処理水にアルカリ調整剤が添加され、これにより被処理水がアルカリ性に調整される。アルカリ調整剤の種類及び被処理水のpHの好ましい態様は、第1の処理期間と同様である。
【0051】
被処理水は逆浸透膜装置12(
図1の工程202)で処理されて、第1の処理期間と同様に、被処理水中のホウ素、シリカ、炭酸イオン、アニオンが除去される。ホウ素の除去された逆浸透膜装置11の透過水の水質は、第1の処理期間と同様である。
【0052】
逆浸透膜装置12の透過水は、次いで、第2の処理経路の供給管17の分岐点B13から供給管19、供給管13の分岐点B14の下流側を順に通流して逆浸透膜装置11の供給側に被処理水として供給される。被処理水が供給管19を通流する過程で、酸調整機構16により被処理水に酸調整剤が添加され、これにより被処理水が酸性に調整される。酸調整剤の種類及び被処理水のpHの好ましい態様は、第1の処理期間と同様である。
【0053】
被処理水は逆浸透膜装置11で処理されて、第1の処理期間と同様に、被処理水中のイオン成分が除去される(
図1の工程203)。イオン成分が除去された逆浸透膜装置11の透過水の水質も第1の処理期間と同様である。逆浸透膜装置11の透過水は、供給管15、分岐点B15、供給管20をこの順に介して後段に送られる。逆浸透膜装置11及び逆浸透膜装置12の濃縮水は、純水製造装置1の系外に排出されるか、逆浸透膜装置23の前段側に戻されて再処理される。
【0054】
以上のとおり、第2の処理期間では、第2の処理経路を介してタンクTK内の被処理水が、逆浸透膜装置12と逆浸透膜装置11にこの順に通水されて処理される。第2の処理期間の後、制御装置22が制御信号を出力して、バルブV11、V12及びV13を開き、バルブV14、V15及びV16を閉じる。これによって第1の処理経路が開通され、第1の処理期間が再開する。これらを繰り返すことで、第1の処理期間と第2の処理期間が交互に繰り返される。
【0055】
本実施形態の純水製造装置1においては、第1の処理期間において、硬度成分は逆浸透膜装置11において除去されるものの、水質や運転期間によっては逆浸透膜装置の透過水に硬度成分が漏れ出し、逆浸透膜装置11のスケール閉塞が進行することがある。また、酸性の被処理水を処理する第2の逆浸透膜装置では、シリカによるスケール閉塞が進行しやすくなる。そのため、逆浸透膜装置11、12のスケール閉塞が水回収率を悪化させる前に、逆浸透膜装置11と逆浸透膜装置12の順序を入れ替えて第2の処理期間を行う。第2の処理期間において逆浸透膜装置11は、酸性に調整された被処理水を処理することとなり、その過程で、硬度成分が酸により溶解され、スケール閉塞が改善される。また、シリカによるスケール閉塞が進行した第2の逆浸透膜装置12においては、アルカリ性に調整された被処理水を処理することでシリカスケールがアルカリにより溶解され、スケール閉塞が改善される。第2の処理期間においては、前段側に配置される逆浸透膜装置12のスケール閉塞が上記同様進行することがあるが、これによる水回収率の低下が生じる前に再度逆浸透膜装置11と逆浸透膜装置12への被処理水の通流順序を入れ替えて、第1の処理期間を行うことで、第2の処理期間と同様に、逆浸透膜装置11、12のスケール閉塞が改善される。これにより、長期に亘って逆浸透膜装置11、12におけるスケール閉塞の進行を抑制できるので、長期間安定的かつ効率的に純水を製造することができる。さらに、純水製造装置1で使用される酸及びアルカリ条件は、一般のスケール洗浄に用いられる薬剤よりも温和な酸・アルカリ条件であるため、逆浸透膜の劣化も抑制することができ、その結果、高水質の純水を長期間安定的に製造することができる。
【0056】
第1の処理期間と第2の処理期間の切替のタイミングは、次のように決定することができる。第1の切替方法は、最下流の処理水流量を測定し、処理水流量が初期から所定の割合まで低下したときに行う方法である。具体的には、次のようにして行うことができる。配管の最下流側に流量計を接続し、制御装置22に演算手段を設け、流量計が測定値を演算手段に入力する。流量計の設置個所は、例えば、供給管17及び供給管20の末端付近や、供給管17と第2の逆浸透膜装置12の供給側との接続部近傍及び供給管20と第1の逆浸透膜装置の透過側との接続部近傍である。演算手段が通水初期からの流量の低下割合を演算し、演算された流量の低下割合が、予め決定した閾値を超えたときに制御装置22が切替機構を制御する制御信号を出力してバルブの開閉が行われる。第2の切替方法における切替時の流量低下割合の閾値は、例えば、初期流量を1としたときに、0.05以上0.5以下の範囲、すなわち、初期流量100%に対して流量が50%以上95%以下の範囲、の所定の値に設定することで、逆浸透膜装置11、12のスケール洗浄を行わずに長期間の逆浸透膜処理を継続することができる。切替時の流量低下割合の閾値は、好ましくは、初期流量を1としたときに、0.05以上0.2以下の範囲、すなわち、初期流量100%に対して流量が80%以上95%以下の範囲、とすることで、膜劣化を抑制して、水質を安定して逆浸透膜処理を継続できる。水回収率を考慮して予め、最下流の処理水流量が初期から所定の割合まで低下する期間を算出して、当該期間ごとに入れ替えを行ってもよい。
【0057】
第2の切替方法は、逆浸透膜装置11と逆浸透膜装置12の供給側及び透過側にそれぞれ水圧計を配置し、第1の処理期間では、逆浸透膜装置11の供給水と逆浸透膜装置12の透過水の差圧が所定の値になったときに、第2の処理期間では、逆浸透膜装置12の供給水と逆浸透膜装置11の透過水の差圧が所定の値になったときに、制御装置によって第1の処理経路と第2の処理経路の切替を行う方法である。この方法も、上述した第1の切替方法と同様に、次のようにして実行することができる。制御装置22に演算手段を設け、各水圧計が測定値を演算手段に入力し、演算手段が差圧を算出する。演算された差圧が、予め決定した閾値を超えたときに制御装置22が切替機構を制御する制御信号を出力してバルブの開閉が行われる。第2の切替方法における切替時の差圧の閾値は、例えば、
通水開始初期の通水差圧に対して、105%以上200%以下の範囲の所定の値であることが好ましく、105%以上125%以下の範囲の所定の値であることが好ましい。これにより、逆浸透膜装置11、12のスケール洗浄を行わずに長期間の逆浸透膜処理を継続することができる。なお、通水差圧とは、透過水水圧から、供給水圧と濃縮水圧の平均の値を引いた差の値である。
【0058】
第3の切替方法は、原水水質や、アルカリ調整機構14によるアルカリ調整剤の添加量、酸調整機構16、21による酸調整剤の添加量、逆浸透膜装置11、12のスペックと水回収率を考慮して、第1の処理期間及び第2の処理期間の継続時間を決定しておき、この継続時間に応じて制御装置22が切替機構を制御する方法である。この場合は、次のようにして実施される。制御装置22に、時間を測定するとともに、予め設定した時間に切替信号を出力するタイマー手段を設ける。タイマー手段が予め設定した時間に切替信号を出力すると、切替信号は制御増値22に入力される。切替信号の入力によって制御装置22が制御信号を出力して切替機構(バルブV11~V16)を制御する。第1の処理期間及び第2の処理期間の継続時間は、予備実験によりスケール閉塞の進行速度を調べ、これに基づいて決定してもよい。
【0059】
次に、
図4を参照して、第3の実施形態の純水製造装置1の第1の変形例である純水製造装置2について説明する。
図4は、本変形例の純水製造装置2を模式的に示すブロック図である。純水製造装置2は、直列に接続された2基の逆浸透膜装置(逆浸透膜装置11と逆浸透膜装置12)の間に、さらに逆浸透膜装置28を有している点で、純水製造装置1とは異なっている。
図4において、
図3と同様の機能を奏する構成には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。また、
図4は、任意の構成も一部省略して示される。
【0060】
逆浸透膜装置28は、供給管15の、例えば、分岐点B15の上流側(逆浸透膜装置11側)に介装される。逆浸透膜装置28の濃縮側には濃縮水排水管29が備えられており、濃縮水は排出管29を介して純水製造装置2の系外に排出されるか、逆浸透膜装置23の前段に戻されて再処理される。逆浸透膜装置28は超低圧型、低圧型又は高圧型の逆浸透膜装置であり、逆浸透膜装置11、12、23と同一の型であっても、異なる型であってもよい。また、逆浸透膜装置28の供給側及び透過側には、被処理水又は透過水の水圧を測定する水圧計が備えられていてもよい。また、水圧計に加えて、又は水圧計に代えて、被処理水又は透過水の流量を測定する流量計が備えられていてもよい。
【0061】
純水製造装置2では、第1の処理期間において、第1の処理経路、すなわち、供給管13、逆浸透膜装置11、逆浸透膜装置28、供給管15、逆浸透膜装置12にこの順に被処理水が通流されて、処理される。第1の処理期間における、逆浸透膜装置28の透過水の導電率は、例えば、1μS/cm~15μS/cm、ホウ素濃度は、例えば、0.1ppb(μg/L)~5ppb(μg/L)であり、逆浸透膜装置12の透過水の抵抗率は、例えば、0.5MΩ~10MΩ、ホウ素濃度は、例えば、0.1ppb(μg/L)~3ppb(μg/L)である。このように、逆浸透膜装置28を備えることで、製造される純水の、ホウ素やシリカの除去率を向上させることができ、純水製造装置2におけるホウ素の除去率は、60%~98%を達成することができる。
【0062】
純水製造装置2では、第2の処理期間において、被処理水は、第2の処理経路、すなわち供給管13の分岐点B11の上流側、分岐点B11、供給管18、分岐点B12、逆浸透膜装置12、供給管17の分岐点B13の上流側、供給管19、供給管13の分岐点B14の下流側、逆浸透膜装置11、供給管15、逆浸透膜装置28、供給管20にこの順に被処理水が通流されて、処理される。第2の処理期間における、逆浸透膜装置11の透過水の水質は第1の処理期間と同様である。
【0063】
純水製造装置2においても、上述した純水製造装置1と同様に第1の処理期間と第2の処理期間の切替を繰り返すことで、逆浸透膜装置11、12のスケール洗浄を行わずに長期間安定的に純水の製造を継続することができる。
【0064】
また、純水製造装置1の第2の変形例として、逆浸透膜装置23と逆浸透膜装置11の通水順序を入れ替える構成としてもよい。この変形例では、前段で逆浸透膜装置23を使用し、その後段で逆浸透膜装置11を使用する第1の処理期間と前段で逆浸透膜装置11を使用し、その後段で逆浸透膜装置23を使用する第2の処理期間とを繰り返すことができる。この変形例では、上述した実施形態の純水製造装置1と同様に配管及びバルブを設置することで切替機構を設置するとともに、原水を、逆浸透膜装置23、アルカリ調整機構14、逆浸透膜装置11にこの順に通流させる第1の処理経路と、原水を、逆浸透膜装置11、アルカリ調整機構14、逆浸透膜装置23にこの順に通流させる第2の処理経路とを構成する。これにより、制御装置22が、所定の処理期間経過ごとに、前記切替機構を制御して、第1の処理経路と第2の処理経路とを切り替えて、第1の処理経路を用いる第1の処理期間と、第2の処理経路を用いる第2の処理期間を交互に繰り返すことができる。また、この変形例では、逆浸透膜装置23は、超低圧型、低圧型又は高圧型の逆浸透膜装置であり、逆浸透膜装置11と同一の型である。供給管24の経路の、ポンプP1の直後に酸調整機構を設け、被処理水を酸性に調整して第1段目の逆浸透膜装置に供給してもよい。これにより、第1段目の逆浸透膜装置における硬度成分の除去率を向上させることができる。この場合の酸調整剤は上記したものと同様であるが、被処理水はpHが5.0~6.0に調整されることが好ましい。
【0065】
本変形例においては、第1の処理期間において、硬度成分は逆浸透膜装置23において除去されるものの、水質や運転期間によっては逆浸透膜装置23の透過水に硬度成分が漏れ出し、後段の逆浸透膜装置11のスケール閉塞が進行することがある。また、弱酸性の被処理水を処理する逆浸透膜装置23では、シリカによるスケール閉塞が進行しやすくなる。そのため、逆浸透膜装置11及び逆浸透膜装置23のスケール閉塞が水回収率を悪化させる前に、逆浸透膜装置11と逆浸透膜装置23の通水順序を入れ替えて第2の処理期間を行う。第2の処理期間において逆浸透膜装置11は、弱酸性に調整された被処理水を処理することとなり、その過程で、硬度スケールが酸により溶解され、スケール閉塞が改善される。また、シリカによるスケール閉塞が進行した逆浸透膜装置23は、アルカリ性に調整された被処理水を処理することでシリカスケールがアルカリにより溶解され、スケール閉塞が改善される。第2の処理期間においては、アルカリ性の被処理水を処理する逆浸透膜装置23のシリカスケール閉塞と弱酸性の被処理水を処理する逆浸透膜装置11の硬度スケール閉塞が進行することがあるが、これによる水回収率の低下が生じる前に再度逆浸透膜装置11と逆浸透膜装置23を入れ替えて、第1の処理期間を行うことで、第2の処理期間と同様に、逆浸透膜装置11、23のスケール閉塞が改善される。これにより、長期に亘って逆浸透膜装置23、11におけるスケール閉塞の進行を抑制できるので、長期間安定的かつ効率的に純水を製造することができる。さらに、本変形例で使用される酸及びアルカリ条件は、一般のスケール洗浄に用いられる薬剤よりも温和な酸・アルカリ条件であるため、逆浸透膜の劣化も抑制することができ、その結果、高水質の純水を長期間安定的に製造することができる。
【0066】
次に、
図5を参照して、第4の実施形態の純水製造装置3について説明する。
図5は、第4の実施形態の純水製造装置3を模式的に示すブロック図である。
図5に示される純水製造装置3は、酸調整機構を一箇所に集約している点で、純水製造装置1とは異なっており、その結果、配管(供給管)及びバルブの設置の態様も異なっている。そのため、主に、純水製造装置3の配管方法について以下に説明する。また、
図5において、
図3と同様の機能を奏する構成には同一の符号を付して詳細な説明を省略するとともに、
図3に示される純水製造装置1と同様の方法及び効果についての説明も一部を省略する。
【0067】
第4の実施形態の純水製造装置3は、第3の実施形態の純水製造装置1と同様に、直列に接続された2基の逆浸透膜装置(逆浸透膜装置11と逆浸透膜装置12)を有している。純水製造装置1はさらに、逆浸透膜装置11の供給側に接続されて、逆浸透膜装置11に被処理水を供給するための供給管13と、供給管13の経路に設けられ、逆浸透膜装置11の被処理水をアルカリ性に調整するアルカリ調整機構14とを備えている。供給管13の、逆浸透膜装置11の接続点と反対側の端部には、ポンプP2が配置され、ポンプP2によって被処理水がタンクTKから逆浸透膜装置11へ送られる。供給管13はその経路に、2か所の分岐点、すなわち上流側より順に、分岐点B1、B7を有している。さらに、供給管13の経路の、分岐点B1と分岐点B7の間にバルブV31が介装されている。
【0068】
純水製造装置3はさらに、逆浸透膜装置11の透過側に接続されて被処理水を後段に送る供給管35を備えている。供給管35の経路には、上流側(逆浸透膜装置11の透過側)から順に、分岐点B2、B3、B6、B4が位置している。供給管35の経路の分岐点B3と分岐点B6の間には、逆浸透膜装置12の被処理水を酸性に調整する酸調整機構16が備えられている。供給管35の分岐点B2と分岐点B3の間にバルブV32が介装され、分岐点B6とB4の間にバルブV33が介装されている。
【0069】
供給管35の、分岐点B4には、供給管36が接続されている。供給管36の分岐点B4と反対側の端部は逆浸透膜装置12の供給側に接続されている。これにより、酸調整機構16によって酸性に調整された被処理水が供給管36を介して逆浸透膜装置12の供給側から供給される。
【0070】
供給管13の、アルカリ調整機構14とバルブV31の間の分岐点B1には、供給管18が接続されている。アルカリ調整機構14によってアルカリ性に調整された被処理水は、分岐点B1を経て供給管18に送られる。供給管18は分岐点B4において供給管36に接続されており、被処理水は、供給管13、分岐点B1、供給管18、分岐点B4及び供給管36を順に経て逆浸透膜装置12の供給側へ供給される。純水製造装置3はさらに、供給管17の分岐点B5と供給管35の分岐点B3との間に接続された供給管37を備えている。供給管37にはバルブV36が介装されている。純水製造装置3は、供給管35の分岐点B6と供給管13の間に接続された供給管39を備えている。供給管39にはバルブV37が介装されている。供給管37には、分岐点B5において供給管17が接続されており、供給管17を介して純水製造装置1で製造された純水が後段に送られるようになっている。供給管17の経路には、バルブV34が介装されている。
【0071】
逆浸透膜装置12の透過水は、供給管17、分岐点B5、供給管37、分岐点B3、供給管35を順に経る過程で、供給管35の経路に設けられた酸調整機構16によって酸性に調整される。その後、酸性に調整された被処理水は、分岐点B6、供給管39、分岐点B7を経て、供給管13に通流され、続いて、第1の逆浸透膜装置11の供給側に供給される。逆浸透膜装置11の透過側に接続された分岐管35には、分岐点B2において、供給管20が接続されており、供給管20を介して純水製造装置1で製造された純水が後段に送られるようになっている。供給管20の経路にはバルブV38が介装されている。
【0072】
バルブV31~V38及びポンプP1、P2の好ましい態様は第3の実施形態の純水製造装置1と同様である。
【0073】
純水製造装置3において、供給管13、逆浸透膜装置11、供給管35、供給管36、逆浸透膜装置12及び供給管17で構成され、被処理水を逆浸透膜装置11と逆浸透膜装置12とでこの順に処理する流路が、第1の処理経路である。
図6に第1の処理経路を実線で示し、被処理水の通流しない経路を破線で示す。また、供給管13の分岐点B1より上流側から、供給管18から分岐点B4までの経路、供給管36、逆浸透膜装置12、逆浸透膜装置12の透過側から供給管17の分岐点B5までの経路、供給管37、供給管35の分岐点B3から分岐点B6までの経路、供給管39、供給管13の分岐点B7より下流の流路、逆浸透膜装置11、供給管35の逆浸透膜装置11の透過側から分岐点B2までの経路及び供給管20からなり、被処理水を逆浸透膜装置12と逆浸透膜装置11とでこの順に処理する流路が第2の処理経路である。
図7に、第2の処理経路を実線で示し、被処理水の通流しない経路を破線で示す。
【0074】
純水製造装置3では、タンクTKに貯留された被処理水は、第1の処理期間において、第1の処理経路に通流され、第2の処理期間において、第2の処理経路に通流される。
【0075】
純水製造装置3は、予め入力されたプログラムに従ってバルブV31~V38の開閉を制御する制御装置22を備えている。以下に、制御装置22を用いた、第1の処理期間と第2の処理期間の切替方法について説明する。
【0076】
先ず、制御装置22が、制御信号を出力することで、バルブV31、V32、V33及びV34を開き、バルブV35、V36、V37及びV38を閉じる。これによって第1の処理経路が開通され、ポンプP2が作動することで第1の処理期間が開始する。第1の処理期間が所定の期間行われた後、制御装置22が制御信号を出力することで、バルブV31、V32、V33及びV34を閉じ、バルブV35、V36V37及びV38を開く。これによって第2の処理経路が開通され、第2の処理期間が開始する。第2の処理期間の後、制御装置22が制御信号を出力して、バルブV31、V32、V33及びV34を開き、V35、V36、V37及びV38を閉じる。これによって第1の処理経路が開通され、第1の処理期間が再開する。これらを繰り返すことで、第1の処理期間と第2の処理期間が交互に繰り返される。
【0077】
本実施形態の純水製造装置3においては、第1の処理期間において、硬度成分は逆浸透膜装置23において除去されるものの、水質や運転期間によっては逆浸透膜装置23の透過水に硬度成分が漏れ出し、逆浸透膜装置11のスケール閉塞が進行することがある。また、酸性の被処理水を処理する逆浸透膜装置12では、シリカによるスケール閉塞が進行しやすくなる。そのため、逆浸透膜装置11、12のスケール閉塞が水回収率を悪化させる前に、逆浸透膜装置11と逆浸透膜装置12の順序を入れ替えて第2の処理期間を行う。第2の処理期間において逆浸透膜装置11は、酸性に調整された被処理水を処理することとなり、その過程で、硬度スケールが酸により溶解され、スケール閉塞が改善される。また、シリカによるスケール閉塞が進行した逆浸透膜装置12は、アルカリ性に調整された被処理水を処理することでシリカスケールがアルカリにより溶解され、スケール閉塞が改善される。第2の処理期間においては、上記同様に逆浸透膜装置11、12のスケール閉塞が上記同様進行することがあるが、これによる水回収率の低下が生じる前に再度逆浸透膜装置11と逆浸透膜装置12への被処理水の通流順序を入れ替えて、第1の処理期間を行うことで、第2の処理期間と同様に、逆浸透膜装置11、12のスケール閉塞が改善される。これにより、長期に亘って逆浸透膜装置11、12におけるスケール閉塞の進行を抑制できるので、長期間安定的かつ効率的に純水を製造することができる。さらに、純水製造装置3で使用される酸及びアルカリ条件は、一般のスケール洗浄に用いられる薬剤よりも温和な酸・アルカリ条件であるため、逆浸透膜の劣化も抑制することができ、その結果、高水質の純水を長期間安定的に製造することができる。
【0078】
なお、バルブV31~V38のうち、各分岐に設けられた1組の2つのバルブ、例えば、バルブV31とバルブV35、バルブV32とバルブV38、バルブV33とバルブV37、バルブV34とV36をそれぞれまとめて、1つの三方弁に代え、同様の流路切替機能を持たせてもよい。さらに、バルブV31、V33、V35、V37を1つの四方弁にまとめ、V32、V34、V36、V38をもう1つの四方弁にまとめて、同様の流路切替機能を持たせてもよい。
【0079】
図8及び
図9に、2つの四方弁であるバルブV41とV42を用いた場合の、配管構成の純水製造装置4を模式的に示す。純水製造装置4は、四方弁であるバルブV41とV42と、供給管13と、逆浸透膜装置11の供給側に接続された供給管131と、逆浸透膜装置11の透過側に接続された供給管141と、逆浸透膜装置12の供給側に接続された供給管132と、逆浸透膜装置12の透過側に接続された供給管142と、バルブV41と、バルブV42とをつなぐ配管143と、処理水(透過水)を後段に送る供給管150を備えている。純水製造装置4において、供給管13に、バルブV41を介して、供給管131と、供給管132と、配管143が接続される。配管143のバルブV41との接続側と反対側は、バルブV42に接続される。さらに、供給管150にバルブV42を介して供給管141と、供給管142と、配管143が接続される。
【0080】
図8は四方弁を使用した場合の第1の処理期間の処理経路を模式的に表す図である。
図8に示される通り、第1の処理期間ではバルブV41の流路が、供給管13と供給管131とが接続され、配管143と供給管132とが接続される方に切り替えられる。バルブV42の流路が、供給管141と配管143とが接続され、供給管142と供給管150とが接続される方に切り替えられる。なお、
図8において、四方弁を複数の二方弁に変更してもよい。
【0081】
図9は四方弁を使用した場合の第2の処理期間の処理経路を模式的に表す図である。第2の処理期間では
図9に示される通り、バルブV41の流路が、供給管13と供給管132が接続され、配管143と供給管131が接続される方に切り替えられる。バルブV42の流路が、供給管141と供給管150とが接続され、供給管142と配管143とが接続される方に切り替えられる。なお、
図9において、四方弁を複数の二方弁に変更してもよい。
【0082】
次に、
図5に示される純水製造装置3の第1の変形例について、
図10を参照して説明する。
図10は、第1の変形例の純水製造装置5を概略的に表すブロック図である。純水製造装置5は、供給管35の経路の分岐点B3の下流側かつ酸調整機構16より上流側に、逆浸透膜装置40が介装されて、逆浸透膜装置40が3段目の逆浸透膜処理を行う点で、
図5に示される純水製造装置3と異なっている。その他は純水製造装置3と同様である。そのため、同用の効果を奏する構成には同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0083】
純水製造装置5では、第1の処理期間において、逆浸透膜装置11の透過水が、供給管35を介して第4の逆浸透膜装置40の供給側に供給される。アルカリ性の被処理水が逆浸透膜装置40で処理されることで、ホウ素やシリカがさらに除去され、その後、逆浸透膜装置40の透過水が酸調整機構16によって酸性に調整され、分岐点B6及びB4を経て供給管36に通流される。供給管36に通流された酸性の被処理水が、逆浸透膜装置12で処理される。
【0084】
また、純水製造装置5では、第2の処理期間において、逆浸透膜装置12の透過水が、供給管37を介して分岐点B3に送られ、分岐点B3から供給管35を介して第4の逆浸透膜装置40の供給側に供給される。アルカリ性の被処理水が逆浸透膜装置40で処理されることで、ホウ素やシリカがさらに除去される。その後、逆浸透膜装置40の透過水が酸調整機構16によって酸性に調整され、分岐点B6を経て供給管39に通流される。供給管39に通流された酸性の被処理水が、分岐点B7を経て供給管13から逆浸透膜装置11の供給側から供給され、処理される。
【0085】
この純水製造装置5を用いることで、ホウ素濃度がさらに低く、例えば、0.1ppb(μg/L)以下の純水を得ることができる。
【0086】
図11は、
図10に示される純水製造装置5のバルブとして四方弁を使用した場合の純水製造装置6を模式的に表す図である。
図11に示す純水製造装置6においては、逆浸透膜装置40は、配管143の経路に、配管143の上流側(バルブV42側)が供給側、配管143の下流側(バルブV41側)が透過側となるように介装される。また、逆浸透膜装置40は、酸調整機構16の上流側に配置される。これにより、逆浸透膜装置11、逆浸透膜装置40及び逆浸透膜装置12にこの順に被処理水を通水する第1の処理経路と、逆浸透膜装置12、逆浸透膜装置40及び逆浸透膜装置11にこの順に被処理水を通水する第2の処理経路と、を構成することができる。また、純水製造装置6においてバルブV41とバルブV42の流路を上記純水製造装置4と同様に切り替えることで第1の処理期間と第2の処理期間を交互に繰り返し行うことができる。なお、
図11において、四方弁を二方弁に変更してもよい。
【0087】
次に、純水製造装置3の第2の変形例について説明する。本変形例は、純水製造装置1の第1の変形例と同様に、逆浸透膜装置23と逆浸透膜装置11への通水順序を入れ替えて第1の処理期間と第2の処理期間を行う構成とする。この変形例では、上述した実施形態の純水製造装置、本変形例は、純水製造装置1の第1の変形例と同様に配管及びバルブを用いることで逆浸透膜装置23と逆浸透膜装置11への被処理水の通流順序を切替可能な切替機構を設置するとともに、原水を、逆浸透膜装置23、アルカリ調整機構14、逆浸透膜装置11にこの順に通流させる第1の処理経路と、原水を、逆浸透膜装置11、アルカリ調整機構14、逆浸透膜装置23にこの順に通流させる第2の処理経路とを構成する。これにより、制御装置22が、所定の処理期間経過ごとに、前記切替機構を制御して、第1の処理経路と第2の処理経路とを切り替えて、第1の処理経路を用いる第1の処理期間と、第2の処理経路を用いる第2の処理期間を交互に繰り返すことができる。この際、流路切替の為の配管を設ける方法に代えて、2つの逆浸透膜ないし逆浸透膜モジュールを抜き出して、互いの位置を替えることでも実現可能である。
【0088】
この変形例では、供給管24の経路の、ポンプP1の直後に酸調整機構を設け、被処理水を酸性に調整して第1段目の逆浸透膜装置に供給してもよい。これにより、第1段目の逆浸透膜装置における硬度成分の除去率を向上させることができる。この場合の酸調整剤は上記したものと同様であるが、被処理水はpHが5.0~6.0に調整されることが好ましい。本変形例の純水製造装置においても、純水製造装置1の第1の変形例と同様に逆浸透膜装置23と逆浸透膜装置11の入れ替えによってスケール閉塞を改善することができるので、長期に亘って逆浸透膜装置23、11におけるスケール閉塞の進行を抑制でき、その結果、長期間安定的かつ効率的に純水を製造することができる。
【0089】
次に、上記した純水製造装置1を用いた、実施形態の超純水製造システム7について、
図12を参照して説明する。
図12は、超純水製造システム7の構成を概略的に示すブロック図である。
【0090】
図12に示すように、超純水製造システム7は、前処理システム70と、一次純水システム71と二次純水システム(サブシステム)72とをこの順に備えている。二次純水システム72はユースポイント(POU)73に配管によって接続されており、これにより超純水製造システム7により製造された超純水がPOU73に供給される。
【0091】
前処理システム70は、凝集、ろ過、膜分離等の処理を行い、必要に応じて熱交換器等により温度調節を行い、被処理水(原水)に含まれる懸濁物質やコロイダル物質等の濁質分を取り除く。具体的に例えば、前処理システム70は、凝集沈殿装置、加圧浮上装置、砂ろ過装置、精密ろ過装置、限外濾過装置、熱交換器などを適宜組み合わせて備えている。なお、原水の水質が一次純水システム71に供給するために十分な水質である場合には、前処理システム70は省略されてもよい。
【0092】
超純水製造システム7は、前処理システム70の後段に、タンクTK1を備えており、前処理システム70によって前処理された被処理水はタンクTK1に導入されて、一旦貯留される。タンクTK1内の被処理水はポンプP3によって一次純水システム71に供給される。
【0093】
一次純水システム71は、前処理水から有機物、イオン成分及び溶存気体を除去して一次純水を製造する。一次純水システム71は、ポンプP3、活性炭装置(AC)711、脱気装置712、上記実施形態の純水製造装置1、紫外線酸化装置(TOC-UV)713、電気式脱イオン装置(EDI)714をこの順に備えている。なお、一次純水システム71に用いられる純水製造装置1は、水処理装置として逆浸透膜装置23、11、12の3段の逆浸透膜装置を備える構成であることが好ましい。また、一次純水システム71は、純水製造装置1に代えて、上記実施形態の純水製造装置2~6又はこれらの変形例の純水製造装置を備えていてもよい。
【0094】
一次純水システム71では、先ず、活性炭装置(AC)711が前処理水中に混入する過酸化水素や塩素等、膜劣化の原因となる不純物を除去する。
【0095】
次いで、脱気装置712が、被処理水中の炭酸ガスを除去する。脱気装置712は、真空下で水中の溶存気体を除去する真空脱気塔や脱気膜を介して溶存気体を除去する膜脱気装置である。その後、純水製造装置1が脱気装置712の処理水中のイオン成分とホウ素を除去する。
【0096】
紫外線酸化装置713は、例えば、185nm付近の波長を有する紫外線を照射可能な紫外線ランプを有し、この紫外線ランプから紫外線を被処理水に照射することで、被処理水中の全有機炭素成分(TOC)を酸化分解する。紫外線酸化装置713に用いられる紫外線ランプは、185nm付近の波長の紫外線を発生するランプを使用することができ、185nm付近の波長の紫外線とともに254nm付近の波長の紫外線を放射する低圧水銀ランプを使用してもよい。紫外線酸化装置713の放射する紫外線により、水が分解されてOHラジカルが生成し、このOHラジカルによって被処理水中の有機物が有機酸に酸化分解される。一次純水システムの紫外線酸化装置713における紫外線照射量は、被処理水の水質によって適宜変更することができる。
【0097】
電気式脱イオン装置(EDI)714は、例えば、陽極と陰極の間に交互に配置された陰イオン交換膜と陽イオン交換膜とを有し、陰イオン交換膜と陽イオン交換膜によって仕切られた脱塩室と、除去されたイオン成分を含む濃縮水が流入する濃縮室とを交互に有している。そして、電気式脱イオン装置は、脱塩室内に充填された陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂との混合体と、直流電圧を印加するための電極を有している。
【0098】
電気式脱イオン装置714において、例えば、被処理水は脱塩室及び濃縮室に並行して供給され、脱塩室の陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂の混合体が被処理水中のイオン成分を吸着する。吸着されたイオン成分は直流電流の作用により濃縮室に移行されて、濃縮室の濃縮水は系外に排出される。
【0099】
電気式脱イオン装置714は、イオン交換樹脂を再生するための、酸やアルカリのような薬品を一切使用せずに連続的にイオン成分の除去を行うことができる。そのため、超純水製造における安全性の向上や製造コスト削減、装置の小型化などを実現することができ、製造効率の向上につながる。
【0100】
また、本実施形態の超純水製造システム7においては、逆浸透膜装置を2つ以上直列に接続した2段以上の逆浸透膜装置を備える上記実施形態の純水製造装置1を用いるため、電気式脱イオン装置714への供給水の水質が向上する。その結果、電気式脱イオン装置714以降への負担が小さくなり、得られる超純水の水質の向上が期待される。
【0101】
このようにして得られる一次純水は、例えば抵抗率17MΩ・cm以上、TOC濃度が10μgC/L以下である。
【0102】
本実施形態の超純水製造システムは、一次純水システム71の後段に、一次純水を貯留する一次純水タンクTK2、ポンプP4、二次純水システム72をこの順に備えている。一次純水システムで製造された一次純水は、一次純水タンクTK2に一旦貯留された後、ポンプP4によって二次純水システム72に送られる。二次純水システム72は、紫外線酸化装置(TOC-UV)721、非再生式ポリッシャー(Polisher)722、膜脱気装置(MDG)723及び限外ろ過装置(UF)724を備えている。
【0103】
二次純水システム72における紫外線酸化装置721の構成は、一次純水システム71の紫外線酸化装置712と同様である。非再生式ポリッシャー722は、ボンベ等の容器に強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂が混合充填されて成る混床式のイオン交換樹脂装置である。非再生式ポリッシャー722は、紫外線酸化装置721が有機物を分解することで生成したイオン成分を吸着除去する。
【0104】
膜脱気装置723は、脱気膜を介して溶存気体を除去する。膜脱気装置723は、一次純水中の微量溶存酸素を除去して溶存酸素濃度を例えば1μg/L程度以下まで低減する。限外ろ過膜装置724は、限外ろ過膜によってろ過処理を行い、上流側のイオン交換樹脂からの微量溶出物や微粒子成分を除去して、例えば、0.05μm以上の微粒子数を250Pcs./L以下程度まで低減する。
【0105】
このように、二次純水システム72は、一次純水を処理してさらに高純度の超純水を製造する。超純水の水質は、例えば、全有機炭素(TOC)濃度が1μgC/L以下、抵抗率が18MΩ・cm以上、ホウ素濃度は0.1ppb(μg/L)以下である。二次純水システムで製造された超純水はユースポイント73に供給される。
【0106】
なお、上述した各実施形態において、原水、前処理水、純水又は超純水の水質はそれぞれ、次の方法又は装置によって測定することができる。
pH:電極法
ホウ素濃度:ICP発光分光法・ICP-MS法
硬度成分:ICP-MS法
溶存炭酸ガス(炭酸カルシウム換算):SUEZ社製 Sievers M9e
シリカ(Si):原子吸光光度法・吸光光度法
塩素(Cl換算):DPD法
導電率:導電率計(堀場製作所製 HE-960CW)
抵抗率(比抵抗):抵抗率計(堀場製作所製 HE-960RW)
全有機炭素(TOC)濃度:TOC計(超純水以外:SUEZ社製 Sievers M9e、超純水:BECKMAN COULTER社製 Anatel A―1000XP)
0.05μm以上の微粒子数:パーティクルカウンター(Particle Measuring Systems社製 UDI―50)
【実施例0107】
次に、実験例及び実施例について説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0108】
[実験例1]
図5に示すような3段の逆浸透膜装置を有する純水製造装置を用いて2段目の逆浸透膜装置の被処理水のpHと、ホウ素の除去率及び処理水の抵抗率の関係について調べた。3段目の逆浸透膜装置の被処理水のpHを4に固定して、2段目の逆浸透膜装置の被処理水のpHを変化させて、被処理水を処理し、3段目の逆浸透膜装置の透過水中のホウ素濃度及び抵抗率を測定した。厚木市水を原水として、原水に脱気及び活性炭処理をこの順に施して被処理水を得た。この被処理水を、調整せずに、1段目の逆浸透膜装置に供給した。
なお、本実験例において、1段目の逆浸透膜装置の供給水水質は、カルシウム、マグネシウム等の硬度成分及び溶存炭酸ガスの含有割合が、炭酸カルシウム換算の合計で10mg/L~300mg/L、シリカ(Si)の含有割合が1mg/L~50mg/L程度、塩素がCl換算で、0.1mg/L~0.6mg/L程度、pHが7.2程度である。
【0109】
以上の結果を
図13に示す。
図13に示されるように、2段目の逆浸透膜装置の被処理水のpHが9.0~10.5付近で、処理水の抵抗率が最大となり、pHが9.0以上でホウ素の除去率が向上することが分かる。
なお、
図13~
図18において、「逆浸透膜-2」は2段目の逆浸透膜装置を、「逆浸透膜-3」は3段目の逆浸透膜装置を表す。
【0110】
[実験例2]
実験例1において、2段目の逆浸透膜装置の被処理水のpHを10.5に調整し、3段目の逆浸透膜装置の被処理水のpHを変化させて、3段目の逆浸透膜装置の透過水の抵抗率を計測した。これにより、3段目の逆浸透膜装置の被処理水のpHと、処理水の抵抗率の関係について調べた。結果を
図14に示す。
図14に示されるように、3段目の逆浸透膜装置の被処理水のpHが4~5.5付近で、処理水の抵抗率が最大になることが分かる。
【0111】
[実験例3]
図5に示す2段目の逆浸透膜装置を単独で用い、被処理水のpHを9、10.5、11に調整したときの通水時間と透過水流量の変化を調べた。他の条件は実験例1と同様である。結果を
図15に示す。
図15に示されるように、通水90日目において、pH=9で1%程度、pH=10.5では7.5%、pH=11では11%の流量低下が見られた。
なお、
図15において「RO」は逆浸透膜、「RO-2」は2段目の逆浸透膜を意味する。
【0112】
[実験例4]
実験例3で、被処理水のpHを10.5で90日通水し、透過水流量が低下したときの逆浸透膜装置を3段目の逆浸透膜装置として、被処理水のpHを3、4、6に調整して処理を開始した直後の透過水流量の変化を調べた。他の条件は実験例1と同様である。結果を
図16に示す。
図16に示されるように、pH=6付近では3日経過も流量の回復は2~3%程度であったのに対し、pH=4の場合は2日後に流量は初期値に回復し、pH=3の場合は1日後には流量が初期値に回復した。
【0113】
[実施例1]
以上の結果をもとに、
図5に示すような3段の逆浸透膜装置を有する純水製造装置を用い、2段目の逆浸透膜装置に逆浸透膜装置Bを、3段目の逆浸透膜装置に逆浸透膜装置Cを設置し、処理期間を90日として90日ごとに、バルブの開閉により逆浸透膜装置B、Cの順序を切替えて被処理水を処理した。2段目の逆浸透膜装置の被処理水のpHを10.5、3段目の逆浸透膜装置の被処理水のpHを4とした場合の、処理水流量(3段目の逆浸透膜装置の透過水流量)の変化を調べた。結果を
図17に示す。
図17に示されるように、通水初期に2段目に配置した逆浸透膜Bは、通水90日で7.5%程度の流量低下がみられた。通水90日で、逆浸透膜Bは3段目に、逆浸透膜Cは2段目に配置されるように流路を切り替えたことで、切替後、逆浸透膜Bは約2日で初期の流量に回復した。その後、逆浸透膜Cの方の流量が低下し、通水180日に再度切り替えた。
【0114】
図18に、実施例1における2段目の逆浸透膜装置の処理水(透過水)の導電率と、3段目の逆浸透膜装置の処理水(透過水)の比抵抗の変化を表す。
図18に示されるように、流路切替直前には、2段目と3段目の逆浸透膜装置の透過水質は若干低下するが、切替によって水質が回復されることがわかる。
【0115】
以上で説明した実施例の純水製造装置によれば、アルカリ性の被処理水を処理する前段側の逆浸透膜装置と、酸性の被処理水を処理する後段側の逆浸透膜装置都の通水順序を、所定の処理期間(ここでは90日)ごとに、入れ替えることで、洗浄操作を行わずに、長期使用により発生するスケール閉塞を水処理の過程で改善することができる。このため、長期間安定的かつ効率的に純水を製造することができる。