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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053695
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】魚釣り用疑似餌
(51)【国際特許分類】
   A01K 85/00 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
A01K85/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160073
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】520385021
【氏名又は名称】ウェトラブホールディング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141472
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 善弘
(72)【発明者】
【氏名】岡野 仁夫
【テーマコード(参考)】
2B307
【Fターム(参考)】
2B307BA42
2B307BA70
2B307BB10
(57)【要約】
【課題】水濡れ性および魚釣り用疑似餌に好適な柔軟性を有し、魚類が魚釣り用疑似餌を口に咥えたときに当該魚釣り用疑似餌に刺し込まれている釣り針によって当該魚釣り用疑似餌が容易に千切れない性質を有する魚釣り用疑似餌およびその製造方法、ならびに魚釣り用疑似餌の使用者などが自分の好みに応じて着色剤、集魚剤などを適宜配合することができ、自分の好みの形状、大きさおよび色彩を有し、個性豊かな独自性のある魚釣り用疑似餌を自宅などで容易に作製することができる魚釣り用疑似餌製作キットを提供する。
【解決手段】ポリビニルアルコールの水性ゲルを含有してなる魚釣り用疑似餌であって、前記水性ゲルが、平均重合度が300~3500であり、ケン化度が90モル%以上であるポリビニルアルコールとクエン酸化合物との水性ゲルであることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコールの水性ゲルを含有してなる魚釣り用疑似餌であって、前記水性ゲルが、平均重合度が300~3500であり、ケン化度が90モル%以上であるポリビニルアルコールとクエン酸化合物との水性ゲルであることを特徴とする魚釣り用疑似餌。
【請求項2】
ポリビニルアルコールの水性ゲルを含有してなる魚釣り用疑似餌の製造方法であって、平均重合度が300~3500であり、ケン化度が90モル%以上であるポリビニルアルコール水溶液とクエン酸化合物またはその水溶液とを混合し、得られた疑似餌用成形材料を疑似餌用成形型に充填し、当該疑似餌用成形材料に含まれているポリビニルアルコール水溶液をクエン酸化合物またはその水溶液でゲル化させて魚釣り用疑似餌を成形することを特徴とする魚釣り用疑似餌の製造方法。
【請求項3】
前記疑似餌用成形材料を疑似餌用成形型に充填した後、前記疑似餌用成形材料を冷解凍させて魚釣り用疑似餌を成形する請求項2に記載の魚釣り用疑似餌の製造方法。
【請求項4】
ポリビニルアルコールの水性ゲルを含有する魚釣り用疑似餌を製造するための魚釣り用疑似餌製作キットであって、平均重合度が300~3500であり、ケン化度が90モル%以上であるポリビニルアルコールの水溶液と、クエン酸化合物またはその水溶液とを有することを特徴とする魚釣り用疑似餌製作キット。
【請求項5】
さらに、魚釣り用疑似餌を成形するための疑似餌用成形型を有する請求項4に記載の魚釣り用疑似餌製作キット。
【請求項6】
さらに、魚釣り用疑似餌を成形する際に用いられる疑似餌用成形型を作製するための型材を有する請求項4に記載の魚釣り用疑似餌製作キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣り用疑似餌に関する。さらに詳しくは、本発明は、水濡れ性およびしなやかさを有し、魚類が魚釣り用疑似餌を口に咥えたときに当該魚釣り用疑似餌に刺し込まれている釣り針によって当該魚釣り用疑似餌が千切れにくく、魚類の釣りに好適に使用することができる魚釣り用疑似餌およびその製造方法、さらに魚釣り用疑似餌の使用者が自分の好みによって着色剤、集魚剤などを適宜配合することができ、自分の好みに応じた大きさおよび形状を有する魚釣り用疑似餌を作製することができる前記魚釣り用疑似餌の製作キットに関する。
【背景技術】
【0002】
魚釣り用疑似餌として、一般に小魚、ゴカイなどの環形動物、昆虫の幼虫(ワーム)などに模した疑似餌が用いられている。市場で販売されている疑似餌の材料として、主にシリコーンゴム、塩化ビニル樹脂エラストマーなどが使用されている。しかし、シリコーンゴムが使用されている疑似餌および塩化ビニル樹脂エラストマーが使用されている疑似餌は、いずれも、実際の釣り餌のような水濡れ性および柔軟性を有していないため、魚の食いつきがよくないことから実際に魚釣りをするときの疑似餌に適していない。
【0003】
近年、機械的強度に優れ、海、川などに廃棄されたときでも崩壊し、分解することから環境への負荷が小さい魚釣り用疑似餌として、(A)側鎖に炭素数が6~22の長鎖アルキル基を含有し、水溶性を有するポリビニルアルコール系樹脂、(B)ポリビニルアルコール重合体、(C)ポリオ-ルおよび(D)水を主成分とし、ポリビニルアルコール系樹脂(A)/ポリビニルアルコール重合体(B)/ポリオ-ル(C)/水(D)の重量比が3~20/2~30/10~60/20~80である含水ゲル組成物を主成分とする魚釣り用疑似餌が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、海水中で良好な水溶性を示す疑似餌として、ポリビニルアルコール系重合体を含有する海水溶解成形物からなる人工餌と錘部材とからなる疑似餌が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
しかし、前記疑似餌は、いずれも原料としてポリビニルアルコールが用いられているので水濡れ性および水中における分解性に優れている反面、魚釣り用疑似餌としての柔軟性に劣るとともに魚類が魚釣り用疑似餌を口に咥えたときに当該魚釣り用疑似餌に刺し込まれている釣り針によって当該魚釣り用疑似餌が千切れやすいため、釣った魚を取り逃がしてしまうおそれがある。
【0005】
また、近年、魚釣りの愛好家から、自分の好みに応じて着色剤、集魚剤などを適宜配合することができ、自分の好みの大きさおよび形状を有し、個性豊かな独自性のある魚釣り用疑似餌を自宅などで容易に作製することができる魚釣り用疑似餌製作キットの開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-279762号公報
【特許文献2】特開2009-155587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、水濡れ性および魚釣り用疑似餌に好適な柔軟性を有し、魚類が魚釣り用疑似餌を口に咥えたときに当該魚釣り用疑似餌に刺し込まれている釣り針によって当該魚釣り用疑似餌が千切れがたい性質を有する魚釣り用疑似餌およびその製造方法を提供することを課題とする。
【0008】
また、本発明は、魚釣り用疑似餌の使用者などが自分の好みに応じて着色剤、集魚剤などを適宜配合することができ、自分の好みの大きさおよび形状を有し、個性豊かな独自性のある魚釣り用疑似餌を自宅などで容易に作製することができる前記魚釣り用疑似餌の製作キットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
(1)ポリビニルアルコールの水性ゲルを含有してなる魚釣り用疑似餌であって、前記水性ゲルが、平均重合度が300~3500であり、ケン化度が90モル%以上であるポリビニルアルコールとクエン酸化合物との水性ゲルであることを特徴とする魚釣り用疑似餌、
(2)ポリビニルアルコールの水性ゲルを含有してなる魚釣り用疑似餌の製造方法であって、平均重合度が300~3500であり、ケン化度が90モル%以上であるポリビニルアルコール水溶液とクエン酸化合物またはその水溶液とを混合し、得られた疑似餌用成形材料を疑似餌用成形型内に充填し、当該疑似餌用成形材料に含まれているポリビニルアルコール水溶液をクエン酸化合物またはその水溶液でゲル化させて魚釣り用疑似餌を成形することを特徴とする魚釣り用疑似餌の製造方法、
(3)前記疑似餌用成形材料を疑似餌用成形型内に充填した後、前記疑似餌用成形材料を冷解凍させて魚釣り用疑似餌を成形する前記(2)に記載の魚釣り用疑似餌の製造方法、
(4)ポリビニルアルコールの水性ゲルを含有する魚釣り用疑似餌を製造するための魚釣り用疑似餌製作キットであって、平均重合度が300~3500であり、ケン化度が90モル%以上であるポリビニルアルコール水溶液と、クエン酸化合物またはその水溶液とを有することを特徴とする魚釣り用疑似餌製作キット、
(5)さらに、魚釣り用疑似餌を成形するための疑似餌用成形型を有する前記(4)に記載の魚釣り用疑似餌製作キット、および
(6)さらに、魚釣り用疑似餌を成形する際に用いられる疑似餌用成形型を作製するための型材を有する前記(4)に記載の魚釣り用疑似餌製作キット
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、水濡れ性および魚釣り用疑似餌に好適な柔軟性を有し、魚類が魚釣り用疑似餌を口に咥えたときに当該魚釣り用疑似餌に刺し込まれている釣り針によって当該魚釣り用疑似餌が千切れがたい性質(以下、「耐千切れ性」という)を有する魚釣り用疑似餌およびその製造方法が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、魚釣り用疑似餌の使用者などが自分の好みに応じて着色剤、集魚剤などを適宜配合することができ、自分の好みの大きさおよび形状を有し、個性豊かな独自性のある魚釣り用疑似餌を自宅などで容易に作製することができる前記魚釣り用疑似餌の製作キットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の魚釣り用疑似餌を作製するときの操作を示す概略説明図である。
図2】本発明の魚釣り用疑似餌の一実施態様を示す概略斜視図である。
図3】本発明の魚釣り用疑似餌製作キットの一実施態様を示す概略説明図である。
図4】本発明の実施例1で得られた魚釣り用疑似餌(ワーム)の図面代用写真である。
図5】魚釣り用疑似餌(ワーム)の柔軟性の測定方法の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の魚釣り用疑似餌は、ポリビニルアルコールの水性ゲルを含有する魚釣り用疑似餌であり、前記水性ゲルが、平均重合度が300~3500であり、ケン化度が90モル%以上であるポリビニルアルコールとクエン酸化合物との水性ゲルであることを特徴とする。
【0014】
本発明の魚釣り用疑似餌に用いられる水性ゲルは、前記したように、平均重合度が300~3500であり、ケン化度が90モル%以上であるポリビニルアルコールとクエン酸化合物との水性ゲルである。
【0015】
ポリビニルアルコールは、従来のシリコーンゴムおよび塩化ビニル樹脂エラストマーと対比して水中で分解しやすく、地球環境に優しく、水濡れ性にも優れている。また、クエン酸、クエン酸ナトリウムなどに代表されるクエン酸化合物は、蜜柑などの柑橘類などにも含まれており、生体に対する安全性および水溶性に優れている化合物である。
【0016】
したがって、本発明の魚釣り用疑似餌に用いられている水性ゲルは、原料としてポリビニルアルコールおよびクエン酸化合物が使用されているので、水中で分解しやすく、地球環境に優しいことから「持続可能な開発目標」(SDGs)の要望に応えるものであり、さらに水濡れ性および柔軟性にも優れている。
【0017】
ポリビニルアルコールは、商業的に容易に入手することができる化合物である。ポリビニルアルコールの粘度法で求められる平均重合度は、魚釣り用疑似餌の弾力性および耐千切れ性を高める観点から、300以上、好ましくは500以上、より好ましくは1000以上であり、魚釣り用疑似餌の柔軟性および水濡れ性を向上させる観点から、3500以下、好ましくは3000以下、より好ましくは2500以下である。
【0018】
また、ポリビニルアルコールのケン化度は、魚釣り用疑似餌の柔軟性、水濡れ性、弾力性および耐耐千切れ性に総合的に向上させる観点から、90モル%以上、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上である。ポリビニルアルコールのケン化度の上限値には限定がなく、高ければ高いほど好ましく、完全ケン化のポリビニルアルコールがさらに一層好ましい。
【0019】
ポリビニルアルコールは、水溶液として用いられる。ポリビニルアルコールを水に溶解させるとき、ポリビニルアルコールの溶解性を高める観点から、ポリビニルアルコールおよび/または水を適宜加温しておくことが好ましい。ポリビニルアルコール水溶液におけるポリビニルアルコールの濃度は、特に限定されないが、魚釣り用疑似餌を効率よく製造する観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、ポリビニルアルコールを水に十分に溶解させるとともに成形性を向上させる観点から、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0020】
ポリビニルアルコール水溶液には、本発明の目的を阻害しない範囲内で水溶性有機溶媒を含有させてもよい。水溶性有機溶媒としては、例えば、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコールなどの水溶性1価アルコール;エチレングリコール、グリセリンなどの水溶性多価アルコール;アセトン、メチルエチルケトンなどの水溶性ケトンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの水溶性有機溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0021】
クエン酸化合物またはその水溶液は、ポリビニルアルコール水溶液をゲル化させる成分である。クエン酸化合物としては、例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム(クエン酸三ナトリウム)、クエン酸カリウム(クエン酸三カリウム)などのクエン酸アルカリ金属塩、クエン酸カルシウム、クエン酸マグネシウムなどのクエン酸アルカリ土類金属塩、クエン酸アルミニウム、クエン酸亜鉛、クエン酸鉄、クエン酸ジアンモニウム、クエン酸二水素アンモニウムなどが挙げられる。これらのクエン酸化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのクエン酸化合物のなかでは、クエン酸、クエン酸アルカリ金属塩およびクエン酸アルカリ土類金属塩が好ましく、食品添加物などとして使用されており、人体などに対する安全性が高いことからクエン酸、クエン酸ナトリウムおよびクエン酸カリウムがより好ましく、クエン酸およびクエン酸ナトリウムがさらに好ましい。
【0022】
クエン酸化合物は、粉末の状態で用いることができるほか、水溶液として用いることができる。クエン酸化合物およびその水溶液のなかでは、クエン酸化合物をポリビニルアルコール水溶液と混合したときに、得られる疑似餌用成形材料中でクエン酸化合物を容易に均一に分散させる観点からクエン酸化合物の水溶液が好ましく、保存安定性に優れていることからクエン酸化合物が好ましい。クエン酸化合物の水溶液を使用する場合、魚釣り用疑似餌を作製するときに、クエン酸化合物を水に溶解させてクエン酸化合物の水溶液を調製することが好ましい。クエン酸化合物の水溶液の濃度は、特に限定されないが、通常、使用時の温度で5質量%~飽和濃度であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましい。
【0023】
ポリビニルアルコール100質量部あたりのクエン酸化合物の量は、当該ポリビニルアルコールの平均重合度などによって異なるので一概には決定することができないが、水性ゲルを効率よく得る観点から、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上である。また、ポリビニルアルコール100質量部あたりのクエン酸化合物の量は、クエン酸化合物の残存量を低減させる観点から、好ましくは60質量部以下、より好ましくは55質量部以下、さらに好ましくは50質量部以下である。
【0024】
ポリビニルアルコール水溶液とクエン酸化合物またはその水溶液とを混合することにより、疑似餌用成形材料を得ることができる。疑似餌用成形材料に含まれているポリビニルアルコール水溶液は、経時とともにクエン酸化合物またはその水溶液によってゲル化するので、水性ゲルが形成される。疑似餌用成形材料に含まれているポリビニルアルコール水溶液は、大気中でゲル化させてもよく、必要により、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気中でゲル化させてもよい。疑似餌用成形材料の液温は、特に限定されないが、取り扱い性を向上させる観点から、5~60℃であることが好ましく、10~40℃であることが好ましく、室温であることがさらに好ましい。
【0025】
疑似餌用成形材料に含まれているポリビニルアルコール水溶液のゲル化に要する時間は、ポリビニルアルコール水溶液におけるポリビニルアルコールの濃度、クエン酸化合物の使用量、疑似餌用成形材料の温度などによって異なるので一概には決定することができない。したがって、疑似餌用成形材料のゲル化は、通常、疑似餌用成形材料に含まれているポリビニルアルコール水溶液がクエン酸化合物またはその水溶液によってゲル化し、水性ゲルが形成されるまで行なうことが好ましい。水性ゲルの形成の終点は、例えば、生成する水性ゲルの粘性の変化が殆ど認められなくなった時点とすることができる。
【0026】
疑似餌用成形材料には、シリカ粒子が適量で含有されていてもよい。疑似餌用成形材料に含有させるシリカ粒子の量を調整することにより、魚釣り用疑似餌が好みの柔軟性、水濡れ性、弾力性および耐千切れ性を有するように適宜調節することができる。
【0027】
シリカ粒子の粒子径は、特に限定されないが、ポリビニルアルコール水溶液におけるシリカ粒子の分散安定性および魚釣り用疑似餌の表面の平滑性を高める観点から、3~100nm程度であることが好ましい。
【0028】
疑似餌用成形材料に含まれるポリビニルアルコール100質量部あたりのシリカ粒子の量は、魚釣り用疑似餌の弾力性を高める観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは0.1質量部以上であり、魚釣り用疑似餌の柔軟性および耐千切れ性を向上させる観点から、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。シリカ粒子は、通常、ポリビニルアルコールまたはその水溶液と混合することができる。
【0029】
シリカ粒子は、例えば、コロイダルシリカとして用いることが好ましい。コロイダルシリカにおけるシリカ粒子の含有量は、コロイダルシリカにおけるシリカ粒子の分散安定性などの観点から、3~40質量%程度であることが好ましい。コロイダルシリカは、例えば、日産化学工業(株)製、商品名:スノーテックス(登録商標)などとして商業的に容易に入手することができる。
【0030】
疑似餌用成形材料には、魚釣り用疑似餌の表面の乾燥を防止するために多糖類を含有させることができる。多糖類としては、例えば、キチン、脱アセチル化キチン、キトサン、キトサンアセテート、キトサンマレエート、キトサングリコネート、キトサンソルベート、キトサンホルメート、キトサンサリチレート、キトサンプロピオネート、キトサンラクテート、キトサンイタコネート、キトサンナイアシネート、キトサンガラート、キトサングルタメート、カルボキシメチルキトサン、アルキルセルロース、ニトロセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、コラーゲン、アルギネート、ヒアルロン酸、ヘパリンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。多糖類のなかでは、魚釣り用疑似餌の表面の乾燥を防止する観点から、キトサンおよびその誘導体が好ましく、キトサンがより好ましい。キトサンは、例えば、エビ、カニ、イカなどの甲殻類に由来のキチンを脱アセチル化させたものなどが挙げられる。キトサンは、商業的に容易に入手することができる。キトサンは、通常、粉末の形態で使用することができる。キトサンの分子量は、特に限定されないが、通常、好ましくは10000~200000、より好ましくは10000~40000である。
【0031】
多糖類の量は、その種類などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、疑似餌用成形材料に含まれるポリビニルアルコール100質量部あたり、魚釣り用疑似餌の表面の乾燥を防止する観点から、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であり、魚釣り用疑似餌が適度な弾力性を有するようにする観点から、好ましくは300質量部以下、より好ましくは250質量部以下、さらに好ましくは200質量部以下である。
【0032】
多糖類は、分散安定性を高めるために水溶液として用いることができる。多糖類水溶液は、例えば、酢酸、塩酸、乳酸などの酸の水溶液に濃度が0.5~10質量%程度となるように溶解させることによって得ることができる。なお、この水溶液は、必要により、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基性物質で中性~塩基性に調整してもよい。
【0033】
疑似餌用成形材料には、魚釣り用疑似餌の使用をする者、例えば、釣りの愛好家の好みに応じて魚釣り用疑似餌を所望の色彩に着色するために着色剤を適宜配合することができ、魚釣り用疑似餌に魚類を誘惑させるために集魚剤を適宜配合することができる。
【0034】
着色剤としては、顔料および染料が挙げられる。これらのなかでは、耐候性に優れており、海水、淡水などの水中に溶け出し難く、水を汚染しがたいことから、顔料が好ましい。顔料は、ペーストなどの顔料分散液の形態で用いてもよい。顔料としては、有機顔料および無機顔料が挙げられる。これらの顔料は、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。顔料の平均粒子径は、特に限定されないが、ポリビニルアルコール水溶液における分散安定性および魚釣り用疑似餌の表面の平滑性を高める観点から、30~200nm程度であることが好ましい。
【0035】
有機顔料としては、例えば、ベンジジン、ハンザイエローなどのアゾ顔料、アゾメチン顔料、メチン顔料、アントラキノン顔料、フタロシアニンブルーなどのフタロシアニン顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、ジケトピロロピロール顔料、チオインジゴ顔料、イミノイソインドリン顔料、イミノイソインドリノン顔料、キナクリドンレッドやキナクリドンバイオレットなどのキナクリドン顔料、フラバントロン顔料、インダントロン顔料、アントラピリミジン顔料、カルバゾール顔料、モノアリーライドイエロー、ジアリーライドイエロー、ベンゾイミダゾロンイエロー、トリルオレンジ、ナフトールオレンジ、キノフタロン顔料などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの有機顔料は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0036】
無機顔料としては、例えば、二酸化チタン、三酸化アンチモン、亜鉛華、鉛白、黄鉛、クロム酸鉛、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、酸化鉄、酸化クロムグリーン、カーボンブラック、モリブデン赤、フェロシアン化第二鉄(プルシアンブルー)、ウルトラマリン、雲母(マイカ)、クレー、アルミニウム粉末、タルク、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウムなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの無機顔料は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0037】
染料としては、例えば、分散染料、塩基性染料、酸性染料、直接染料などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0038】
疑似餌用成形材料に使用される着色剤の量は、魚釣り用疑似餌に付与する所望の色彩などによって異なるので一概には決定することができないことから、魚釣り用疑似餌に好みの色彩が付与されるように適宜調整することが好ましい。
【0039】
集魚剤としては、例えば、エビエキス、イカエキス、カニエキス、魚粉エキス、海藻エキス、ニンニクエキス、米ぬかエキスなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの集魚剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0040】
疑似餌用成形材料に使用される集魚剤の量は、集魚剤の種類、集魚剤によって付与される好みの臭気の強さなどによって異なるので一概には決定することができないことから、魚釣り用疑似餌に付与される集魚剤による臭気の強さなどに応じて適宜調整することが好ましい。
【0041】
また、疑似餌用成形材料には、本発明の目的を阻害しない範囲内で、例えば、酸化防止剤、防黴剤、抗菌剤などの添加剤を適量で含有させてもよい。
【0042】
魚釣り用疑似餌は、前記疑似餌用成形材料を疑似餌用成形型内に充填し、前記疑似餌用成形材料に含まれているポリビニルアルコール水溶液をクエン酸化合物またはその水溶液によってゲル化させて魚釣り用疑似餌を成形することによって作製することができる。
【0043】
魚釣り用疑似餌は、例えば、図1に示される操作を行なうことによって作製することができる。図1は、本発明の魚釣り用疑似餌を作製するときの操作を示す概略説明図である。
【0044】
疑似餌用成形型を作製するために使用される型枠1を用意する。型枠1としては、例えば、表面に樹脂が被覆されている紙材、木材、樹脂、金属などの材料からなる型枠が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0045】
まず、図1(a)に示されるように、魚釣り用疑似餌を成形する際に用いられる疑似餌用成形型を作製するための型材2を型枠1内に充填する。図1(a)は、型枠1内に疑似餌用成形型の型材2が充填されているときの状態を示す概略説明図である。疑似餌用成形型の型材2としては、例えば、プラスター(石膏)をはじめ、シリコーンゴム、エラストマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリカーボネートなどの樹脂などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0046】
型枠1内に充填されている疑似餌用成形型の型材2が軟化ないし流動性を有する状態で魚釣り用疑似餌の原型3の半面を疑似餌用成形型の型材2に押し付ける。魚釣り用疑似餌の原型3の形状および大きさは、任意であり、使用者の好みに応じて適宜設定することができる。魚釣り用疑似餌の原型は、市販の魚釣り用疑似餌であってもよく、木材、樹脂材料、金属材料などの素材を切削したり、彫刻したりすることによって作製された自分の好みの形状および大きさを有する魚釣り用疑似餌の原型であってもよく、三次元プリンタ(3Dプリンタ)を利用して作製された所望の形状を有する魚釣り用疑似餌の原型であってもよく、本発明は、魚釣り用疑似餌の原型によって限定されるものではない。
【0047】
魚釣り用疑似餌の原型3の半面が疑似餌用成形型の型材2に押し付けられている状態で疑似餌用成形型の型材2を硬化させ、魚釣り用疑似餌の原型3に対応する形状および大きさを型材2に転写させて疑似餌用成形型4aを作製した後、図1(b)に示されるように疑似餌用成形型4aを型枠1から取り出す。図1(b)は、魚釣り用疑似餌の原型3の半面が疑似餌用成形型の型材2に押し付けられているときの状態を示す概略説明図である。その後、疑似餌用成形型4aから魚釣り用疑似餌の原型3を除去することにより、魚釣り用疑似餌の原型3の半面の形状および大きさが転写された疑似餌用成形型4aを得ることができる。
【0048】
なお、図1(b)に示されるように、魚釣り用疑似餌の原型3の末端に棒状体5が接続されている。棒状体5は、魚釣り用疑似餌を成形するための成形材料を疑似餌用成形型4aの内部に導入するためのゲート6を形成させるために用いられている。
【0049】
次に、再度、疑似餌用成形型の型材2を型枠1内に充填する。型枠1内に充填されているが軟化ないし流動性を有する状態で、魚釣り用疑似餌の原型3の反対面の半面を疑似餌用成形型の型材2に押し付ける。
【0050】
魚釣り用疑似餌の原型3の反対面の半面が疑似餌用成形型の型材2に押し付けられている状態で疑似餌用成形型の型材2を硬化させ、魚釣り用疑似餌の原型3の反対面に対応する形状および大きさを型材2に転写させて疑似餌用成形型4bを作製した後、図1(c)に示されるように疑似餌用成形型4bを型枠1から取り出す。図1(c)は、魚釣り用疑似餌の原型3の反対面の半面が疑似餌用成形型の型材2に押し付けられているときの状態を示す概略説明図である。その後、疑似餌用成形型4bから魚釣り用疑似餌の原型3を除去することにより、魚釣り用疑似餌の原型3の反対面の半面の形状および大きさが転写された疑似餌用成形型4bを得ることができる。
【0051】
次に、図1(d)に示されるように、疑似餌用成形型4aの内面に形成されている魚釣り用疑似餌の形状と疑似餌用成形型4bの内面に形成されている魚釣り用疑似餌の形状とが一致するように疑似餌用成形型4aと疑似餌用成形型4bとを重ね合わせ、クリップなどを用いて疑似餌用成形型4aと疑似餌用成形型4bとを型締めする。図1(d)は、疑似餌用成形型4aと疑似餌用成形型4bとが型締めされているときの状態を示す概略説明図である。
【0052】
引き続いて、疑似餌用成形型4aおよび疑似餌用成形型4bの内部と連通しているゲート6から疑似餌用成形材料(図示せず)を疑似餌用成形型4aおよび疑似餌用成形型4bの内部に流し込み、前記疑似餌用成形材料に含まれているポリビニルアルコール水溶液をクエン酸化合物またはその水溶液によってゲル化させた後、疑似餌用成形型4aと疑似餌用成形型4bとを型割りすることにより、例えば、図2に示される形状を有する魚釣り用疑似餌7を得ることができる。図2は、本発明の魚釣り用疑似餌の一実施態様を示す概略斜視図である。
【0053】
なお、前記で得られた魚釣り用疑似餌7に付着しているライナー(図示せず)、疑似餌用成形型4aと疑似餌用成形型4bとの接続面で形成されているバリなどは、必要により刃物などで除去してもよい。
【0054】
魚釣り用疑似餌7は、図1に示される操作を行なう以外に、三次元プリンタ(以下、3Dプリンタという)を用いて作製することもできる。3Dプリンタを用いて魚釣り用疑似餌を作製する場合、例えば、以下の方法に基づいて魚釣り用疑似餌を作製することができる。
【0055】
まず、三次元スキャナを用いて魚釣り用疑似餌の原型をスキャニングすることにより、当該魚釣り用疑似餌の原型のデータを取得し、取得されたデータに基づき、3Dプリンタで、紫外線硬化樹脂、熱硬化性樹脂などの硬化性樹脂を積層しながら硬化させて造形を行なうことにより、魚釣り用疑似餌の原型に対応する形状および大きさが転写され、内部が空洞となっている疑似餌用成形型を作製する。
【0056】
次に、前記疑似餌用成形材料を疑似餌用成形型内に導入するための疑似餌用成形型のゲートから前記疑似餌用成形材料を疑似餌用成形型の空洞内に充填し、前記疑似餌用成形材料に含まれているポリビニルアルコール水溶液をクエン酸化合物またはその水溶液によってゲル化させた後、疑似餌用成形型から成形された魚釣り用疑似餌を取り出し、必要により、バリの除去などの後加工を施すことにより、魚釣り用疑似餌を得ることができる。
【0057】
なお、前記疑似餌用成形材料に含まれているポリビニルアルコール水溶液を常温でゲル化させる場合、ゲル化に要する時間は、前記疑似餌用成形材料の組成、魚釣り用疑似餌の形状および大きさなどによって異なるので一概には決定することができないが、通常、30~50時間程度である。
【0058】
疑似餌用成形材料に含まれているポリビニルアルコール水溶液は、クエン酸化合物またはその水溶液によってゲル化するが、さらに疑似餌用成形材料を冷解凍させることによって当該疑似餌用成形材料に含まれているポリビニルアルコール水溶液のゲル化を進行させてもよい。疑似餌用成形材料を冷解凍させることによって当該疑似餌用成形材料に含まれているポリビニルアルコール水溶液のゲル化を進行させた場合、疑似餌用成形材料を冷解凍させずに疑似餌用成形材料に含まれているポリビニルアルコール水溶液をクエン酸化合物またはその水溶液によってゲル化させた場合と対比して、均質な組成を有する魚釣り用疑似餌を得ることができる。
【0059】
疑似餌用成形材料を冷解凍させる方法としては、例えば、所定の疑似餌に対応する形状および大きさを内面に有する疑似餌用成形型内に疑似餌用成形材料を充填し、-10℃以下の温度に冷凍した後、解凍し、成形された魚釣り用疑似餌を疑似餌用成形型から取り出す方法などが挙げられるが、本発明は、かかる方法のみによって限定されるものではない。
【0060】
疑似餌用成形材料の冷凍温度は、水濡れ性および魚釣り用疑似餌に好適な柔軟性を有し、耐千切れ性を有する魚釣り用疑似餌を得る観点から、好ましくは-10℃以下、より好ましくは-15℃以下、さらに好ましくは-20℃以下であり、本発明の魚釣り用疑似餌の生産効率を高める観点から、好ましくは-35℃以上、より好ましくは-30℃以上である。
【0061】
疑似餌用成形材料を前記温度で冷凍する時間は、魚釣り用疑似餌を使用する者が好む魚釣り用疑似餌の柔軟性、耐千切れ性などの性質に応じて適宜調節することができるが、水濡れ性および魚釣り用疑似餌に好適な柔軟性を有し、耐千切れ性を有する魚釣り用疑似餌を得るとともに、魚釣り用疑似餌の生産効率を高める観点から、好ましくは1~80時間程度、より好ましくは1.5~70時間程度である。
【0062】
疑似餌用成形材料を冷凍することによって疑似餌用成形材料が凍結するが、そのときに疑似餌用成形材料に含まれているポリビニルアルコール水溶液がクエン酸化合物またはその水溶液によってゲル化するとともに凍結によってゲル化する。
【0063】
次に、ポリビニルアルコール水溶液のゲル化させることによって成形された疑似餌を解凍する。疑似餌は、例えば、室温中に放置することによって自然解凍させてもよく、あるいは加熱することによって解凍させてもよいが、エネルギー効率を高める観点から、自然解凍させることが好ましい。疑似餌を解凍させるときの温度は、特に限定されず、通常、0~40℃程度であればよいが、室温であることが好ましい。以上のようにして凍結した疑似餌用成形材料を解凍することにより、魚釣り用疑似餌が得られる。
【0064】
疑似餌用成形材料の冷解凍を行なう回数は、1回だけであってもよく、複数回であってもよい。疑似餌用成形材料の冷解凍を行なう回数、冷凍時間などを適宜調整することにより、魚釣り用疑似餌の柔軟性、耐千切れ性などの性質を好みに応じて調整することができる。
【0065】
前記で得られた魚釣り用疑似餌は、必要により乾燥させてもよい。魚釣り用疑似餌の乾燥の程度は、本発明の魚釣り用疑似餌の種類などによって異なるので一概には決定することができないことから、魚釣り用疑似餌の種類に応じて適宜調整することが好ましい。魚釣り用疑似餌の乾燥の程度は、通常、魚釣り用疑似餌を絶乾状態となるまで乾燥するのではなく、魚釣り用疑似餌の表面に付着している水分が除去される程度とすることが好ましい。
【0066】
なお、魚釣り用疑似餌を加熱することによって乾燥させた場合、魚釣り用疑似餌のゲル組織の均一化を図ることができる。魚釣り用疑似餌は、例えば、乾燥室内で加熱することによって乾燥させることができる。魚釣り用疑似餌の加熱温度は、ゲル組織の均一化を図る観点から、好ましくは35℃以上、より好ましくは40℃以上であり、魚釣り用疑似餌の変性を防止する観点から、好ましくは80℃以下、より好ましくは75℃以下である。魚釣り用疑似餌の加熱時間は、加熱温度によって異なるので一概には決定することができないが、通常、魚釣り用疑似餌のゲル組織の均一化を図る観点から、0.5~3時間程度であることが好ましい。魚釣り用疑似餌を所定温度で加熱した後、魚釣り用疑似餌を室温まで放冷すればよい。
【0067】
本発明の魚釣り用疑似餌は、そのままの状態で魚釣り用疑似餌として使用することができるが、必要により、所望の色彩を有するように魚釣り用疑似餌に着色を施してもよく、切削などの後加工を魚釣り用疑似餌に施してもよい。
【0068】
本発明の魚釣り用疑似餌は、前記したように、水濡れ性および魚釣り用疑似餌に好適な柔軟性を有し、耐千切れ性を有することから、例えば、小魚、ゴカイなどの環形動物、昆虫の幼虫(ワーム)などの釣り餌に対応する形状で用いることができる。
【0069】
なお、疑似餌が小魚の形状を有する場合と環形動物の形状を有する場合と昆虫の幼虫(ワーム)の形状を有する場合とでは、疑似餌全体の硬さなどが相違するが、その表面における柔軟性、水濡れ性、弾力性および耐千切れ性は、比較的それぞれ釣り餌に近似している。しかし、前記疑似餌を用いることによる釣果を高めるためには、当該釣り餌の種類および形状に応じて疑似餌の形状、柔軟性、水濡れ性および耐千切れ性を適宜調整することが好ましい。疑似餌の柔軟性、水濡れ性および耐千切れ性は、例えば、ポリビニルアルコールおよびクエン酸化合物の量、疑似餌用成形材料のゲル化の時間、疑似餌用成形材料の冷解凍条件、疑似餌用成形材料における含水量などを調整することによって調節することができる。
【0070】
以上説明したように、本発明の魚釣り用疑似餌は、濡れ性および魚釣り用疑似餌に好適な柔軟性を有し、耐千切れ性を有する。本発明の魚釣り用疑似餌は、魚釣り用疑似餌製作キットによって作製することができる。
【0071】
本発明の魚釣り用疑似餌を魚釣り用疑似餌製作キットで作製することができるようにした場合、魚釣り用疑似餌の使用者などが自分の好みに応じて着色剤、集魚剤などを適宜配合することができ、自分の好みの大きさおよび形状を有し、個性豊かな独自性のある魚釣り用疑似餌を自宅などで容易に作製することができる。
【0072】
本発明の魚釣り用疑似餌製作キットは、ポリビニルアルコールの水性ゲルを含有する魚釣り用疑似餌を製造するための魚釣り用疑似餌製作キットであり、本発明の魚釣り用疑似餌に用いられる水性ゲルの原料として平均重合度が300~3500であり、ケン化度が90モル%以上であるポリビニルアルコールの水溶液と、クエン酸化合物またはその水溶液とが用いられていることを特徴とする。
【0073】
魚釣り用疑似餌製作キットとしては、例えば、図3に示される魚釣り用疑似餌製作キットが挙げられる。図3は、本発明の魚釣り用疑似餌製作キットの一実施態様を示す概略説明図であるが、本発明は、図3に示される実施態様のみに限定されるものではない。
【0074】
ポリビニルアルコールの水溶液(図示せず)は、ポリビニルアルコール用収容容器8内に充填されている。ポリビニルアルコールの水溶液をポリビニルアルコール用収容容器8内に入れ、ポリビニルアルコール用収容容器8の開口部(図示せず)を密閉することによってポリビニルアルコールの水溶液をポリビニルアルコール用収容容器8内に収容することができる。
【0075】
ポリビニルアルコール用収容容器8は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ナイロン6などに代表されるポリアミド、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどに代表されるポリエステル、ポリカーボネート、アクリル樹脂、AS樹脂などの樹脂で成形されている成形容器であってもよく、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ナイロン6などに代表されるポリアミド、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどに代表されるポリエステルなどの樹脂フィルムで形成されている袋体であってもよい。
【0076】
ポリビニルアルコール用収容容器8が成形容器である場合、ポリビニルアルコールの水溶液を成形容器内に収容した後、例えば、螺子嵌合によって成形容器の開口部(図示せず)に蓋本体(図示せず)を取り付けたり、ゴム、コルクなどからなる栓(図示せず)を成形容器の開口部に押し込んだりすることによって成形容器の開口部を封止することができる。
【0077】
ポリビニルアルコール用収容容器8が袋体である場合、ポリビニルアルコールの水溶液を袋体内に収容した後、袋体の開口部を開閉チャック、融着などによって袋体の開口部を封止することができる。
【0078】
ポリビニルアルコール用収容容器8の容量は、目的とする魚釣り用疑似餌の大きさ、作製する魚釣り用疑似餌の個数などによって異なるので一概には決定することができない。ポリビニルアルコール用収容容器8の容量の一例として、50~500mL程度が挙げられるが、本発明は、当該ポリビニルアルコール用収容容器8の容量によって限定されるものではない。ポリビニルアルコール用収容容器8の外面には、例えば、ポリビニルアルコール用収容容器8内に収容されているポリビニルアルコールの水溶液に関する情報、使用品名などの情報が記載されているラベルが貼付されていてもよい。
【0079】
クエン酸化合物は、粉末状のクエン酸化合物などの固体のクエン酸化合物またはその水溶液として用いることができる。
【0080】
クエン酸化合物またはその水溶液(図示せず)は、クエン酸化合物用収容容器9内に充填されている。クエン酸化合物またはその水溶液をクエン酸化合物用収容容器9内に入れ、クエン酸化合物用収容容器9の開口部(図示せず)を密閉することによってクエン酸化合物またはその水溶液をクエン酸化合物用収容容器9内に収容することができる。
【0081】
クエン酸化合物用収容容器9は、ポリビニルアルコール用収容容器8と同様であることが好ましい。
【0082】
クエン酸化合物またはその水溶液の量は、ポリビニルアルコールの水溶液に含まれているポリビニルアルコールの量に応じて適宜決定することができる。
【0083】
ポリビニルアルコール用収容容器8およびクエン酸化合物用収容容器9は、例えば、図3に示されるように、疑似餌製作キット用ボックス10内に収納することができる。疑似餌製作キット用ボックス10は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、AS樹脂、ABS樹脂などの樹脂で形成させることができる。
【0084】
図3に示される疑似餌製作キット用ボックス10は、ボックス本体10aおよび蓋本体10bを有する。蓋本体10bの長手方向の一方の側面(図示せず)とボックス本体10aの上端部(図示せず)とは、ヒンジ10cを介して連結されている。ポリビニルアルコール用収容容器8およびクエン酸化合物用収容容器9をボックス本体10a内に収納した後、蓋本体10bを閉じ、蓋本体10bのフック10dの貫通孔10eをボックス本体10aの上端部の凸部10fに引っ掻けることにより、蓋本体10bをボックス本体10aに固定することができる。
【0085】
疑似餌製作キット用ボックス10内には、さらに疑似餌用成形型(図示せず)が収容されていてもよく、疑似餌用成形型の代わりに疑似餌用成形型を作製するための型材(図示せず)が充填されている型材収容容器11、疑似餌用成形型を作製するために使用される型枠1などが収容されていてもよい。また、疑似餌製作キット用ボックス10内には、必要により、疑似餌を作製する方法などを解説した取扱説明書12などが収容されていてもよい。
【0086】
疑似餌用成形型を作製するための型材は、型材収容容器11内に入れ、型材収容容器11の開口部(図示せず)を密閉することによって型材を型材収容容器11内に収容することができる。型材収容容器11は、ポリビニルアルコール用収容容器8と同様であることが好ましい。取扱説明書12は、疑似餌を作製する方法などの解説書としての役割のほか、魚釣り用疑似餌製作キットの製造者に関する情報を掲載することができ、取扱説明書12に掲載する事項は任意である。
【0087】
また、疑似餌製作キット用ボックス10内には、疑似餌用成形材料や型材などを攪拌するための攪拌棒、温度計、軽量スプーンなどの用具、着色剤、集魚剤などが任意で含まれていてもよい。
【0088】
以上のように構成される本発明の魚釣り用疑似餌製作キットを用いることにより、魚釣り用疑似餌の使用者などが自分の好みに応じて着色剤、集魚剤などを適宜配合することができ、自分の好みの大きさおよび形状を有し、個性豊かな独自性のある本発明の魚釣り用疑似餌を自宅などで容易に作製することができる。
【実施例0089】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0090】
実施例1
粘度平均重合度が1700であり、ケン化度が98~99モル%であるポリビニルアルコール〔(株)クラレ製、商品名:クラレポバールPVA-117〕を500mL容のビーカーに入れ、当該ポリビニルアルコールの濃度が13質量%となるように当該ビーカー内に水を添加し、80℃に加温しながらビーカーの内容物を15分間攪拌した後、常温まで放冷することにより、ポリビニルアルコール水溶液100mLを得た。
【0091】
次に、クエン酸ナトリウムの20質量%水溶液15mLを前記ビーカー内に添加し、ビーカー内の内容物を均一な組成となるように攪拌することにより、疑似餌用成形材料を得た。
【0092】
魚釣り用疑似餌として図4に示される形状を有するワーム(長さ:80mm、頭部の直径:約4mm、尻尾部の直径:約1.5mm)に対応する内面形状を有する2つ割の割型からなるシリコーン製の疑似餌用成形型を用意し、これらの疑似餌用成形型を型締めし、疑似餌用成形型のゲートからその内部に前記で得られた疑似餌用成形材料を流し込んだ後、疑似餌用成形型のゲートを封じた。
【0093】
次に、前記疑似餌用成形型を冷凍室(冷凍室内温度:-20℃)内に入れ、62時間冷凍した後、冷凍室から取り出し、4℃となるまで静置した。その後、前記疑似餌用成形型を型割りすることにより、図4に示される形状を有するワームを作製した。
【0094】
実施例2
実施例1において、クエン酸ナトリウムの20質量%水溶液の代わりにクエン酸ナトリウムの30質量%水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして図4に示される形状と同様の形状を有する魚釣り用疑似餌を作製した。
【0095】
比較例1
実施例1において、クエン酸ナトリウムの20質量%水溶液を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして図4に示される形状と同様の形状を有するワームを作製した。
【0096】
実施例3
粘度平均重合度が1700であり、ケン化度が98~99モル%であるポリビニルアルコール〔(株)クラレ製、商品名:クラレポバールPVA-117〕を500mL容のビーカーに入れ、当該ポリビニルアルコールの濃度が13質量%となるように当該ビーカー内に水を添加し、80℃に加温しながらビーカーの内容物を15分間攪拌した後、常温まで放冷することにより、ポリビニルアルコール水溶液100mLを得た。
【0097】
次に、クエン酸ナトリウムの20質量%水溶液15mLを前記ビーカー内に添加し、ビーカー内の内容物を均一な組成となるように攪拌することにより、疑似餌用成形材料を得た。
【0098】
魚釣り用疑似餌として図4に示される形状を有するワーム(長さ:80mm、頭部の直径:約4mm、尻尾部の直径:約1.5mm)に対応する内面形状を有する2つ割の割型からなるシリコーン製の疑似餌用成形型を用意し、これらの疑似餌用成形型を型締めし、疑似餌用成形型のゲートからその内部に前記で得られた疑似餌用成形材料を流し込んだ後、疑似餌用成形型のゲートを封じた。
【0099】
前記疑似餌用成形型を冷凍室(冷凍室内温度:-20℃)内に入れ、62時間冷凍した後、冷凍室から取り出し、4℃となるまで静置した。
【0100】
次に、前記疑似餌用成形型を再度、冷凍室(冷凍室内温度:-20℃)内に入れ、19時間冷凍した後、冷凍室から取り出し、4℃となるまで静置した。その後、前記疑似餌用成形型を型割りすることにより、図4に示される形状と同様の形状を有するワームを作製した。
【0101】
実施例4
実施例3において、クエン酸ナトリウムの20質量%水溶液の代わりにクエン酸ナトリウムの30質量%水溶液を用いたこと以外は、実施例3と同様にして図4に示される形状と同様の形状を有する魚釣り用疑似餌を作製した。
【0102】
比較例2
実施例3において、クエン酸ナトリウムの20質量%水溶液を使用しなかったこと以外は、実施例3と同様にして図4に示される形状と同様の形状を有するワームを作製した。
【0103】
実施例5
粘度平均重合度が1700であり、ケン化度が98~99モル%であるポリビニルアルコール〔(株)クラレ製、商品名:クラレポバールPVA-117〕を500mL容のビーカーに入れ、当該ポリビニルアルコールの濃度が13質量%となるように当該ビーカー内に水を添加し、80℃に加温しながらビーカーの内容物を15分間攪拌した後、常温まで放冷することにより、ポリビニルアルコール水溶液100mLを得た。
【0104】
次に、クエン酸ナトリウムの20質量%水溶液15mLを前記ビーカー内に添加し、ビーカー内の内容物を均一な組成となるように攪拌することにより、疑似餌用成形材料を得た。
【0105】
魚釣り用疑似餌として図4に示される形状を有するワーム(長さ:80mm、頭部の直径:約4mm、尻尾部の直径:約1.5mm)に対応する内面形状を有する2つ割の割型からなるシリコーン製の疑似餌用成形型を用意し、これらの疑似餌用成形型を型締めし、疑似餌用成形型のゲートからその内部に前記で得られた疑似餌用成形材料を流し込んだ後、疑似餌用成形型のゲートを封じた。
【0106】
前記疑似餌用成形型を冷凍室(冷凍室内温度:-20℃)内に入れ、1.5時間かけて急速冷凍した後、冷凍室から取り出し、室温(約25℃)まで1.5時間かけて急速解凍した。
【0107】
次に、前記疑似餌用成形型を再度、冷凍室(冷凍室内温度:-20℃)内に入れ、1.5時間かけて急速冷凍した後、冷凍室から取り出し、室温(約25℃)まで1.5時間かけて急速解凍した。
【0108】
引き続いて、前記疑似餌用成形型を再度、冷凍室(冷凍室内温度:-20℃)内に入れ、1.5時間かけて急速冷凍した後、冷凍室から取り出し、室温(約25℃)まで1.5時間かけて急速解凍した。その後、前記疑似餌用成形型を型割りすることにより、図4に示される形状と同様の形状を有するワームを作製した。
【0109】
比較例3
実施例5において、クエン酸ナトリウムの20質量%水溶液を使用しなかったこと以外は、実施例5と同様にして図4に示される形状と同様の形状を有するワームを作製した。
【0110】
実施例6
粘度平均重合度が1700であり、ケン化度が98~99モル%であるポリビニルアルコール〔(株)クラレ製、商品名:クラレポバールPVA-117〕を500mL容のビーカーに入れ、当該ポリビニルアルコールの濃度が13質量%となるように当該ビーカー内に水を添加し、80℃に加温しながらビーカーの内容物を15分間攪拌した後、常温まで放冷することにより、ポリビニルアルコール水溶液100mLを得た。
【0111】
次に、クエン酸ナトリウムの20質量%水溶液15mLを前記ビーカー内に添加し、ビーカー内の内容物を均一な組成となるように攪拌することにより、疑似餌用成形材料を得た。
【0112】
魚釣り用疑似餌として図4に示される形状を有するワーム(長さ:80mm、頭部の直径:約4mm、尻尾部の直径:約1.5mm)に対応する内面形状を有する2つ割の割型からなるシリコーン製の疑似餌用成形型を用意し、これらの疑似餌用成形型を型締めし、疑似餌用成形型のゲートからその内部に前記で得られた疑似餌用成形材料を流し込んだ後、疑似餌用成形型のゲートを封じた。
【0113】
前記疑似餌用成形型を室温中で48時間放置した後、前記疑似餌用成形型を型割りすることにより、図4に示される形状と同様の形状を有するワームを作製した。
【0114】
実施例7
実施例6において、クエン酸ナトリウムの20質量%水溶液の代わりにクエン酸ナトリウムの30質量%水溶液を用いたこと以外は、実施例6と同様にして図4に示される形状と同様の形状を有する魚釣り用疑似餌を作製した。
【0115】
比較例4
実施例6において、クエン酸ナトリウムの20質量%水溶液を使用しなかったこと以外は、実施例6と同様にして図4に示される形状と同様の形状を有するワームを作製しようとしたが、流動性を有するため、ワームを作製することができなかったことから、ワームの物性の評価をすることができなかった。
【0116】
実施例8
粘度平均重合度が1700であり、ケン化度が98~99モル%であるポリビニルアルコール〔(株)クラレ製、商品名:クラレポバールPVA-117〕を500mL容のビーカーに入れ、当該ポリビニルアルコールの濃度が10質量%となるように当該ビーカー内に水を添加し、80℃に加温しながらビーカーの内容物を15分間攪拌した後、常温まで放冷することにより、ポリビニルアルコール水溶液100mLを得た。
【0117】
次に、クエン酸ナトリウムの30質量%水溶液15mLを前記ビーカー内に添加し、ビーカー内の内容物を均一な組成となるように攪拌することにより、疑似餌用成形材料を得た。
【0118】
魚釣り用疑似餌として図4に示される形状を有するワーム(長さ:80mm、頭部の直径:約4mm、尻尾部の直径:約1.5mm)に対応する内面形状を有する2つ割の割型からなるシリコーン製の疑似餌用成形型を用意し、これらの疑似餌用成形型を型締めし、疑似餌用成形型のゲートからその内部に前記で得られた疑似餌用成形材料を流し込んだ後、疑似餌用成形型のゲートを封じた。
【0119】
次に、前記疑似餌用成形型を冷凍室(冷凍室内温度:-20℃)内に入れ、13時間かけて冷凍した後、冷凍室から取り出し、10時間かけて4℃となるまで静置した。その後、前記疑似餌用成形型を型割りすることにより、図4に示される形状と同様の形状を有する魚釣り用疑似餌を作製した。
【0120】
比較例5
実施例8において、クエン酸ナトリウムの30質量%水溶液を使用しなかったこと以外は、実施例8と同様にして図4に示される形状と同様の形状を有するワームを作製した。
【0121】
比較例6
図4に示される形状に近似している形状を有し、シリコーンゴムからなるワームを用意した。
【0122】
比較例7
図4に示される形状に近似している形状を有し、塩化ビニル樹脂エラストマーからなるワームを用意した。
【0123】
次に、各実施例および各比較例で得られた魚釣り用疑似餌(ワーム)の物性として、水濡れ性、柔軟性および耐千切れ性を以下の方法にしたがって調べた。その結果を表1に示す。
【0124】
(1)水濡れ性(親水性)
各魚釣り用疑似餌(ワーム)の表面に水滴を付着させた後、魚釣り用疑似餌(ワーム)の表面状態を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて水濡れ性(親水性)を評価した。
〔評価基準〕
〇:魚釣り用疑似餌(ワーム)の表面の水濡れ性に優れている。
△:魚釣り用疑似餌(ワーム)の表面が水濡れ性に劣る。
×:魚釣り用疑似餌(ワーム)の表面が水濡れ性を有してない。
【0125】
(2)柔軟性
図5に示されるように、ワーム13をステンレス製の表面が平滑であり、水平な試験台14上に置き、試験台14の端部からワーム13の頭部(直径:約4mm)を30mmの長さで突出させ、試験台14の上面から垂れ下がっているワーム13の下端までの長さXを測定し、以下の評価基準に基づいてワーム13の柔軟性を評価した。なお、図5は、魚釣り用疑似餌(ワーム)の柔軟性の測定方法の概略説明図である。
〔評価基準〕
〇:長さXが5mm以上20mm未満である。
△:長さXが2mm以上5mm未満である。
×:長さXが2mm未満であるか、または20mm以上である。
【0126】
(3)耐千切れ性
ワームの頭部(直径:約4mm)の先端から3mmの位置に釣り針〔(株)がまかつ製、商品名:メバル王7号〕を刺し込み、釣り針に取り付けたテグス(ナイロン製、10号)の一端と、ワームの他端を小型卓上試験機〔(株)島津製作所製、品番:EZ-SX〕のチャックにそれぞれ固定し、引張速度5mm/minにて引張試験を行ない、ワームが釣り針によって千切れるときの最大強度を3回測定し、3回測定された最大強度の平均値Aを求め、当該平均値Aに基づいて耐千切れ性を評価した。なお、平均値Aが高いほど耐千切れ性に優れている。
〔評価基準〕
◎:平均値Aが2.0N以上
○:平均値Aが1.5N以上2.0N未満
△:平均値Aが1.0N以上1.5未満
×:平均値Aが1.0N未満
【0127】
【表1】
【0128】
表1に示された結果から、各実施例で得られた魚釣り用疑似餌は、いずれも、ポリビニルアルコール水溶液がクエン酸化合物によってゲル化されているので、水濡れ性および魚釣り用疑似餌に好適な柔軟性を有し、魚類が魚釣り用疑似餌を口に咥えたときに当該魚釣り用疑似餌に刺し込まれている釣り針によって当該魚釣り用疑似餌が容易に千切れない性質を有することがわかる。
【0129】
以上のことから、本発明の魚釣り用疑似餌は、小魚、ゴカイなどの環形動物、昆虫の幼虫(ワーム)などに模した疑似餌として、魚類のみならず、イカなどの海生軟体動物などの釣りに好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0130】
1 型枠
2 疑似餌用成形型の型材
3 魚釣り用疑似餌の原型
4a 疑似餌用成形型
4b 疑似餌用成形型
5 棒状体
6 ゲート
7 魚釣り用疑似餌
8 ポリビニルアルコール用収容容器
9 クエン酸化合物用収容容器
10 疑似餌製作キット用ボックス
10a ボックス本体
10b 蓋本体
10c ヒンジ
10d フック
10e フックの貫通孔
10f ボックス本体の上端部の凸部
11 型材収容容器
12 取扱説明書
13 ワーム
14 試験台
図1
図2
図3
図4
図5