(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053725
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】鋼材判定装置、学習済みモデルの生成方法、鋼材判定方法、及び鋼材の製造方法
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20240409BHJP
G06V 10/70 20220101ALI20240409BHJP
G01N 33/20 20190101ALI20240409BHJP
G01N 21/70 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
G06T7/00 350B
G06V10/70
G01N33/20 100
G01N21/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160105
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】重藤 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】岩田 輝久
【テーマコード(参考)】
2G043
2G055
5L096
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043BA07
2G043CA05
2G043EA06
2G043FA01
2G043KA02
2G043LA03
2G043NA01
2G043NA02
2G055AA03
2G055BA20
2G055FA01
2G055FA02
5L096BA18
5L096HA11
5L096JA22
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】鋼材の特徴を判定する際に用いる学習済みモデルを生成する際や実際に当該学習済みモデルを用いて鋼材を判定する際に使用される火花画像に対して事前に画像処理を行っておくことで、適切に外乱を排除した学習済みモデルの生成、及び、利用を図り、もって鋼材の特徴を精度良く判定することができる鋼材判定装置、学習済みモデルの生成方法、鋼材判定方法、及び鋼材の製造方法を提供する。
【解決手段】撮像装置Cによって取得された鋼材Sを研削した際に発生する火花を含む画像データから火花画像のみを抽出する画像処理部22と、画像処理部22による画像処理後の火花画像を推論データとし、予め用意される学習済みモデルに当てはめることで、火花画像が示す鋼材を判定する判定部25と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置によって取得された鋼材を研削した際に発生する火花を含む画像データから火花画像のみを抽出する画像処理部と、
前記画像処理部による画像処理後の前記火花画像を推論データとし、予め用意される学習済みモデルに当てはめることで、前記火花画像が示す前記鋼材を判定する判定部と、
を備える鋼材判定装置。
【請求項2】
前記画像処理部は、前記画像データから画像処理で火花のみを抽出して画像処理後の前記火花画像とすることを特徴とする請求項1に記載の鋼材判定装置。
【請求項3】
画像処理後の前記火花画像を入力データとし、前記鋼材の特徴を教師データとして、前記火花画像が示す前記鋼材を判定する学習済みモデルを機械学習によって生成する学習部と、
を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鋼材判定装置。
【請求項4】
前記学習部では、ニューラルネットワーク、決定木学習、ランダムフォレスト、およびサポートベクター回帰のうち少なくとも1つの機械学習アルゴリズムを用いて機械学習を行うことを特徴とする請求項3に記載の鋼材判定装置。
【請求項5】
撮像装置が取得した鋼材を研削した際に発生する火花を含む画像データを取得するステップと、
前記画像データに対して画像処理を実行して画像処理後の火花画像を取得するステップと、
画像処理後の前記火花画像を入力データとし、前記鋼材の特徴を教師データとして、前記火花画像が示す前記鋼材を判定する学習済みモデルを機械学習によって生成するステップと、
を備えることを特徴とする学習済みモデルの生成方法。
【請求項6】
前記画像処理を実行するステップは、
前記画像データから画像処理で火花のみを抽出して画像処理後の前記火花画像とすることを特徴とする請求項5に記載の学習済みモデルの生成方法。
【請求項7】
前記機械学習においては、ニューラルネットワーク、決定木学習、ランダムフォレスト、及び、サポートベクター回帰のうち少なくとも1つの機械学習アルゴリズムを用いることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の学習済みモデルの生成方法。
【請求項8】
撮像装置が取得した鋼材を研削した際に発生する火花を含む画像データを取得するステップと、
前記画像データに対して画像処理を実行して画像処理後の火花画像を取得するステップと、
画像処理後の前記火花画像を入力データとし前記鋼材の特徴を教師データとして、機械学習によって生成された学習済みモデルを用いて、前記火花画像が示す前記鋼材を判定するステップと、
を備えることを特徴とする鋼材判定方法。
【請求項9】
前記画像処理を実行するステップは、
前記画像データから画像処理で火花のみを抽出して画像処理後の前記火花画像とすることを特徴とする請求項8に記載の鋼材判定方法。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の鋼材判定方法を備える、鋼材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、鋼材判定装置、鋼種学習済みモデルの生成方法、鋼材判定方法、及び鋼材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、パイプ状の鋼材の製造、出荷に当たっては、材質の異なる鋼材(異材)が紛れて出荷されることを防止するために、鋼材の端部にグラインダを接触させることで生ずる火花を、オペレータが観察することで異材の混入を確認する、いわゆる火花試験が実施される。
【0003】
当該火花試験は、鋼材の端部を研削した際に発生する火花を目視で確認する。これは、鋼材に含まれる、例えば、成分組成に伴って火花の破裂数や流線の本数が増減するといった火花の飛散形状や量が変化することが経験的に把握されていることによる。
【0004】
但し、当該火花試験は、オペレータの熟練度に依存する官能検査であり、継続して火花試験を実施するためにも技能の伝承が必要である。また、これら鋼材の納入先によっては、納入対象の鋼材全てに対して火花試験を実施することを要求することもある。
【0005】
そこで火花試験を自動的に行う方法として、例えば、以下の特許文献1に記載の技術が開示されている。この特許文献1には、鋼材の成分を推定するための学習済みモデルを用いて、画像データから鋼材の成分を推定する装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された鋼材の成分を推定する装置では、推定の基礎とする画像データはカメラによって生成されたデータそのものであり、画像処理は施されていない。従って、例えば、撮影場所における照明の輝度の違いや画像に背景設備が映り込む、或いは、照明や火花によって背景設備が反射し、当該反射光が火花の一部と誤って認識されるといった外乱が存在する可能性がある。
【0008】
このような外乱による不確かなデータを使用すると、鋼材の成分を推定するために用いるデータとしては不適切であるとともに、判定の精度が低下することが考えられる。また、このようなデータを用いて学習済みモデルを構築してもそもそもの学習済みモデルにおける精度が低いことから、結局判定の精度も低くならざるを得ない。
【0009】
本発明は、上述したような点に着目してなされたもので、鋼材の特徴を判定する際に用いる学習済みモデルを生成する際や実際に当該学習済みモデルを用いて鋼材を判定する際に使用される火花画像に対して事前に画像処理を行っておくことで、適切に外乱を排除した学習済みモデルの生成、及び、利用を図り、もって鋼材の特徴を精度良く判定することができる鋼材判定装置、学習済みモデルの生成方法、鋼材判定方法、及び鋼材の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施の形態における鋼材判定装置は、撮像装置によって取得された鋼材を研削した際に発生する火花を含む画像データから火花画像のみを抽出する画像処理部と、画像処理部による画像処理後の火花画像を推論データとし、予め用意される学習済みモデルに当てはめることで、火花画像が示す鋼材を判定する判定部と、を備える。
【0011】
本発明の実施の形態における鋼材判定装置における画像処理部は、画像データから画像処理で火花のみを抽出して画像処理後の火花画像とする。
【0012】
本発明の実施の形態における鋼材判定装置は、さらに、画像処理後の火花画像を入力データとし、鋼材の特徴を教師データとして、火花画像が示す鋼材を判定する学習済みモデルを機械学習によって生成する学習部を備える。
【0013】
本発明の実施の形態における学習済みモデルの生成方法は、撮像装置が取得した鋼材を研削した際に発生する火花を含む画像データを取得するステップと、画像データに対して画像処理を実行して画像処理後の火花画像を取得するステップと、画像処理後の火花画像を入力データとし、鋼材の特徴を教師データとして、火花画像が示す鋼材を判定する学習済みモデルを機械学習によって生成するステップと、を備える。
【0014】
本発明の実施の形態における学習済みモデルの生成方法における画像処理を実行するステップは、画像データから画像処理で火花のみを抽出して画像処理後の火花画像とする。
【0015】
本発明の実施の形態における鋼材判定方法は、撮像装置が取得した鋼材を研削した際に発生する火花を含む画像データを取得するステップと、画像データに対して画像処理を実行して画像処理後の火花画像を取得するステップと、画像処理後の火花画像を入力データとし鋼材の特徴を教師データとして、機械学習によって生成された学習済みモデルを用いて、火花画像が示す鋼材を判定するステップと、を備える。
【0016】
本発明の実施の形態における鋼材判定方法における画像処理を実行するステップは、画像データから画像処理で火花のみを抽出して画像処理後の火花画像とする。
【0017】
本発明の実施の形態における鋼材の製造方法は、撮像装置が取得した鋼材を研削した際に発生する火花を含む画像データを取得するステップと、画像データに対して画像処理を実行して画像処理後の火花画像を取得するステップと、画像処理後の火花画像を入力データとし鋼材の特徴を教師データとして、機械学習によって生成された学習済みモデルを用いて、火花画像が示す鋼材を判定するステップと、を備える鋼材判定方法を備えている。
【発明の効果】
【0018】
このような本発明の実施の形態における鋼材判定装置、学習済みモデルの生成方法、鋼材判定方法、及び鋼材の製造方法であれば、鋼材の特徴を判定する際に用いる学習済みモデルを生成する際や実際に当該学習済みモデルを用いて鋼材を判定する際に使用される火花画像に対して事前に画像処理を行っておくことで、適切に外乱を排除した学習済みモデルの生成、及び、利用を図り、もって鋼材の特徴を精度良く判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態における鋼材判定装置を含む鋼材の特徴から鋼材を判別する装置の全体を示す説明図である。
【
図2】本発明の実施の形態における鋼材判定装置が備える制御装置の内部構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施の形態において用いられる火花画像に関し、画像処理部における画像処理前の火花画像である。
【
図4】本発明の実施の形態において用いられる火花画像に関し、画像処理部における画像処理後の火花画像である。
【
図5】本発明の実施の形態において鋼材判定装置が鋼材を判定する際に使用する学習済みモデルを生成するに当たって機械学習を行う流れを示すフローチャートである。
【
図6】本発明の実施の形態において鋼材判定装置が鋼材を判定する推論の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態における鋼材判定装置1を含む鋼材Sの特徴から鋼材Sを判別する装置の全体を示す説明図である。
【0021】
鋼材Sの判別は、鋼材Sの端部をグラインダGで研削した際に発生する火花Fの形態を撮像装置Cで撮影して得られる火花画像を基に行う。火花の飛散形状は上述したように成分組成によって変化し、例えば、炭素の含有量が増加するに伴って火花の破裂数や流線の本数が増加する。従って火花の飛散形状を見ることで鋼材Sを判別することが可能である。
【0022】
なお、当該鋼材SがグラインダGで研削される場所、すなわち、撮像装置Cによって火花画像が撮影される場所は、例えば、製造ラインの途中であっても、或いは、特に鋼材Sを判別するために設けられた場所であっても良い。
【0023】
撮像装置Cは、火花画像を取得する、例えばカメラである。また、本発明の実施の形態において使用する撮像装置Cは、モノクロ画像やカラー画像を取得することができるように構成されている。従って、後述する鋼材判定装置1の制御装置2に送信されるのは、火花のモノクロ画像、或いは、カラー画像の画像データである。そしてモノクロ画像、カラー画像のいずれを用いるかについては任意に選択することが可能とされている。さらには図示していないが、より鮮明に火花画像を撮影するための、例えばストロボといった、補助的な機器が組み合わせられていても良い。
【0024】
なお、
図1においては、撮像装置CはグラインダGの下部であって、下側から火花Fを撮影するような位置に配置されているが、鋼材Sの判定に使用することができるに十分な火花画像を取得することができるのであれば、どのような位置に配置されていても良い。
【0025】
撮像装置Cによって撮影された火花画像のデータは、撮像装置Cに接続されている鋼材判定装置1に送信される。鋼材判定装置1は、撮像装置Cの制御を行うとともに、撮像装置Cによって取得された火花画像のデータを用いて、鋼材Sの判別を行うための学習済みモデルを生成し、生成された当該学習済みモデルを用いて鋼材Sの判別を行う装置である。
【0026】
図2は、本発明の実施の形態における鋼材判定装置1が備える制御装置2の内部構成を示すブロック図である。なお、
図2に示す制御装置2では、以下に説明する鋼材Sの判別を行う際に使用される学習済みモデルの生成や鋼材Sの判定に関連する機能についてのみ示しており、その他の様々な機能については図示を省略している。
【0027】
従って、制御装置2は、
図2においては図示されていない、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)及び入出力インターフェイスがバスを介して接続される様々な構成を備えていても良い。
【0028】
すなわち、当該入出力インターフェイスには、例えば、鋼材Sの判別に使用する学習済みモデルを生成する際に必要な各種パラメータを入力する入力部や、判定の結果、判別された鋼材Sの鋼種等をオペレータに示す表示部、或いは、他の装置との通信を制御する通信制御部が接続されていても良い。
【0029】
制御装置2は、情報取得部21と、画像処理部22と、学習部23と、記憶部24と、判定部25と、判定結果報知部26と、を備えている。情報取得部21は、撮像装置Cから鋼材Sを研削した際に生ずる火花画像のデータを取得する。
【0030】
なお、火花画像のデータについては、撮像装置Cから直接取得しても良く、或いは、一旦、
図2には図示しないデータベース等に保存されたものを、予め設定されたタイミングで取得するようにしても良い。
【0031】
画像処理部22は、情報取得部21を介して取得された火花画像のデータに対して画像処理を実行する。ここで火花画像のデータに対して画像処理を施すのは、当該データ内には、鋼材Sを判別するに不要な様々な外乱が含まれている場合に、その外乱を除去するためである。火花画像に外乱が含まれる場合、当該火花画像のデータを入力データとして生成された学習済みモデルの精度を下げるとともに、実際に当該学習済みモデルを使用して判定処理が実行された際の鋼材判定の精度を低くしてしまうそのため、火花画像のデータに対し画像処理を施し、外乱を除去する必要がある。
【0032】
具体的に画像処理部22では、様々な手法による処理が実行可能であるが、本発明の実施の形態においては、例えば、次のような処理を実行する。まず、取得した火花画像のデータを基に、二値化の処理を行う。二値化処理は、ある閾値を基準として、対象となる画像を画素ごとに白と黒の2色のみに変換する画像処理の方法である。このような処理を行うことによって、対象となる火花とその他の背景とを分離し、背景による外乱を除外することが可能となる。
【0033】
画像のデータにおいては、画素ごとに色が決定される。火花画像のデータがグレースケールの場合、画素ごとに光度の1種類の情報しか含まれていないことから例えば、白から黒までの256の階調で示される。一方、上述したように、撮像装置Cがカラー画像を取得した場合には、画素ごとにRGBのそれぞれを256階調で表すことができる。
【0034】
そこで、取得された画像がカラー画像である場合における画像処理では、例えば、各画素におけるRGBごとに、上限及び下限となる閾値を予め設定しておく。そして、閾値内に含まれる画素は白、閾値の範囲を外れる部分については黒とする。
【0035】
例えば、火花の色に着目すると、主に赤色(R:255、G:0、B:0)、橙色(R:255、G:60~170、B:0)、黄色(R:255、G:255、B:0)といった色で表されている。一方、火花以外に映り込む可能性のある、例えば反射光は白色(R:255、G:255、B:255)であることが多い。
【0036】
そこで例えば、RGBのうち「B」の上限となる閾値を変化させて白色や白色に近い色が抽出されないように閾値を設定する。このような設定を行うことで、火花画像のデータから映り込んでいる可能性のある背景設備等の火花以外の外乱を除外することができ、得られた火花画像のデータから火花のみを抽出しやすくなる。
【0037】
図3は、本発明の実施の形態において用いられる火花画像に関し、画像処理部22における画像処理前の火花画像BFを示しており、
図4は、画像処理後の火花画像AFを示している。
【0038】
図3に示す火花画像BFには、火花Fの他、画像下部には背景設備Bが映っている。このような火花画像BFに対して画像処理部22において、上述したような画像処理を施すことによって、
図4に示す火花画像AFが取得される。
【0039】
図4の火花画像AFに示すように、当該火花画像AFには、火花画像BFの背景設備Bが示されていた下部の領域は黒色に示されており、背景設備Bは示されていない。従って、火花の画像のみが抽出されている。
【0040】
なおこのように、画像処理部22において二値化の処理を実行することによって、火花のみを抽出する画像処理の方法があるが、画像処理の方法について採用しうる方法は、上述したようにこの方法に限られない。
【0041】
例えば、閾値を用いて火花と火花以外とを区別するに当たって、抽出された火花の画像はそのままの色とし、火花以外の部分については、黒等の火花と区別可能な色に変更するといった処理も可能である。すなわち、特に撮像装置Cで取得された画像がカラー画像である場合には、二値化の処理のように火花の部分を白で表すといった処理を行わず、そのままのカラーとし、火花以外の外乱の部分のみ色の変換処理を実行してもよい。この場合、火花の色も鋼材Sの特徴を示すデータとして学習済みモデルに学習させられるため、より精度の高い学習済みモデルを生成することができる。
【0042】
このような処理を行うことによって、二値化の処理を実行する場合と同じような確実さをもって火花の部分のみを抽出できるとともに、画像処理を行う際の画像処理部22の負担が軽減されるのでより迅速な処理を実行することができる。
【0043】
学習部23は、鋼材Sを判別する際に使用する学習済みモデルを機械学習により生成する。すなわち、学習済みモデルを生成に当たって、学習部23では、情報取得部21によって取得され、画像処理部22によって画像処理が実行された後の火花画像のデータを入力データとして用いる。
【0044】
一方、教師データは、判別する鋼材Sの特徴を示すデータである。この教師データとする鋼材Sの特徴を示すデータとしては、例えば、鋼材Sの鋼種(規格)や成分を挙げることができる。さらに、鋼材Sの特徴を示す成分としては、例えば、炭素含有量や合金元素等を挙げることができる。
【0045】
なお教師データについては、鋼材判定装置1の後述する記憶部24から取得して良く、或いは、鋼材判定装置1が別途接続するデータベース等から取得することとしても良い。
【0046】
学習部23は、このように画像処理後の火花画像のデータを入力データとし、鋼材Sの特徴を示すデータを教師データとして学習済みモデルを機械学習によって生成する。そして、当該学習済みモデルの生成に当たって、機械学習のアルゴリズムを利用する。機械学習のアルゴリズムとしては、例えば、ニューラルネットワーク、決定木学習、ランダムフォレスト、サポートベクター回帰等を採用することができる。
【0047】
そして、学習部23よって生成(構築)された学習済みモデルは、例えば、記憶部24に格納され、次に説明する判定部25において鋼材Sの判別処理を行う際に使用される。
【0048】
ここで記憶部24は、例えば、半導体や磁気ディスクで構成されており、上述した生成された学習済みモデルや鋼材判定装置1の制御を行うためのプログラム等が格納されている。
【0049】
なお
図3に示すように、本発明の実施の形態における制御装置2においては、その内部に記憶部24を設けた形態を前提に説明をしているが、記憶部24を制御装置2の内部に設けず、例えば、鋼材判定装置1が接続する外部のデータベースがその機能を果たすようにされていても良く、その構成の仕方は自由に選択することができる。
【0050】
判定部25は、学習済みモデルを用いて鋼材Sを判別する。すなわち、撮像装置Cから取得した火花画像のデータを推論データとして、記憶部24に格納されている学習済みモデルを用いて推論を実行する。なお、推論データとして用いる火花画像は、画像処理部22で画像処理された後の火花画像のデータである。
【0051】
そして、判定部25において推論が実行されると、鋼材Sの鋼種(規格)や成分といった特徴について鋼材Sごとに判定がなされる。判定結果については、判定結果報知部26に送信される。判定結果報知部26では、判定部25によって判定された結果を、例えば表示部等を介してオペレータに報知する。
【0052】
[動作]
次に、制御装置2において学習済みモデルが生成される流れ、及び、生成された学習済みモデルを用いた鋼材Sの判定の流れについて、
図5及び
図6を用いて説明する。
【0053】
まず学習済みモデルを生成する流れである。
図5は、本発明の実施の形態において鋼材判定装置1が鋼材Sを判定する際に使用する学習済みモデルを生成するに当たって機械学習を行う流れを示すフローチャートである。
【0054】
制御装置2の情報取得部21は、撮像装置Cが撮影した鋼材Sの端部にグラインダGが接触した際に発生する火花画像のデータを取得する(ST1)。取得された火花画像のデータは、火花画像の他、背景設備等の外乱についても含まれているデータである。
【0055】
このような火花画像のデータは情報取得部21から画像処理部22へと送信され、画像処理が実行される(ST2)。画像処理部22では、上述したような、例えば、二値化処理等の画像処理を行い、外乱を除去し火花の画像のみの画像とする。画像処理後の火花画像が、学習部23において、学習済みモデルが生成される際の入力データとして用いられる。
【0056】
また、情報取得部21は、教師データとなる鋼材Sの特徴を示すデータを取得する(ST3)。当該教師データについては、上述した通り、例えば、制御装置2と接続される図示しないデータベース等から取得することとしても良い。
【0057】
これで制御装置2は、学習済みモデルを生成するに必要なデータを入手したことになる。そこで、学習部23は、画像処理後の火花画像を入力データとし、鋼材Sの特徴を示すデータを教師データとして機械学習を実行する(ST4)。そして機械学習の結果得られたモデルを、学習済みモデルとし、記憶部24に保存する(ST5)。
【0058】
ここまでで制御装置2における学習段階が終了する。次に、生成された学習済みモデルを使用した鋼材Sの推論処理(判定処理)の流れについて説明する。
図6は、本発明の実施の形態において鋼材判定装置1が鋼材を判定する推論の流れを示すフローチャートである。
【0059】
制御装置2は、まず鋼材Sを判定するために用いる推論データの基礎となるデータを、情報取得部21を介して取得する(ST11)。このデータは、撮像装置Cにおいて取得された火花画像のデータそのものであり、何ら画像処理を施していない。
【0060】
次に情報取得部21は、取得した火花画像のデータを画像処理部22へと送る。画像処理部22では、火花画像のデータに対して画像処理を実行する(ST12)。画像処理部22において、処理された画像処理後の火花画像が推論データとして用いられる。
【0061】
判定部25は、画像処理後の火花画像のデータを推論データとし、記憶部24にアクセスして取得した学習済みモデルを用いて、火花画像の対象となっている鋼材Sの判定処理を行う(ST13、ST14)。判定結果については、判定部25から判定結果報知部26へと送信されて、例えば、オペレータへと報知される(ST15)。
【0062】
以上説明したように、学習済みモデルの生成処理、当該学習済みモデルを用いた鋼材の判定処理のいずれにおいても、撮像装置Cにおいて取得された火花画像のデータをそのまま使用するのではなく、画像処理を行って外乱となり得る情報を除き、火花画像のみのデータとする。このような画像処理後の火花画像を機械学習における入力データとし、或いは、推論処理における推論データとして用いることで、適切に外乱を排除した学習済みモデルの生成、及び、利用を図り、もって鋼材の特徴を精度良く判定することができる。
【0063】
なお、これまで説明してきた本発明の実施の形態は、いずれも本発明の一例を示したものである。また、これらの各実施の形態には種々の変更又は改良を加えることが可能であり、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。これらの各実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1 鋼材判定装置
2 制御装置ン
21 情報取得部
22 画像処理部
23 学習部
24 記憶部
25 判定部
26 判定結果報知部
C 撮像装置
G グラインダ
S 鋼材