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特開2024-53747ビードフィラーゴムの切断方法及びビード部材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053747
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】ビードフィラーゴムの切断方法及びビード部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/48 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
B29D30/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160140
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣藤 典之
【テーマコード(参考)】
4F215
4F501
【Fターム(参考)】
4F215AH20
4F215AM32
4F215VA11
4F215VD12
4F215VL02
4F215VL06
4F215VL09
4F215VL11
4F215VP09
4F215VP11
4F501TA11
4F501TC11
4F501TE02
4F501TE06
4F501TE09
4F501TE10
4F501TL09
4F501TL10
4F501TV04
4F501TV11
(57)【要約】
【課題】 切断時におけるビードフィラーゴムの塑性変形を抑制し、ビード部材の製造不良を抑制可能なビードフィラーゴムの切断方法及びビード部材の製造方法を提供する。
【解決手段】 ビードフィラーゴムの切断方法は、ビードフィラーゴムの側面のうち一方が支持台に支持された状態で、前記ビードフィラーゴムを挟んで前記支持台の反対側に配置されたカッターの刃を前記刃の延在方向に対して前記刃の幅方向の一方に傾斜させた方向に移動させて、少なくとも前記ビードフィラーゴムの底部の厚み方向端部に前記刃を入れる第1工程を含む。ビード部材の製造方法は、前記ビードフィラーゴムの切断方法で切断した前記ビードフィラーゴムで環状のビードフィラーを形成するビードフィラー形成工程と、環状のビードコアに前記ビードフィラーを一体化させる一体化工程と、を含む。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビードフィラーゴムの側面のうち一方が支持台に支持された状態で、前記ビードフィラーゴムを挟んで前記支持台の反対側に配置されたカッターの刃を前記刃の延在方向に対して前記刃の幅方向の一方に傾斜させた方向に移動させて、少なくとも前記ビードフィラーゴムの底部の厚み方向端部に前記刃を入れる第1工程を含む、ビードフィラーゴムの切断方法。
【請求項2】
前記幅方向の一方は、前記ビードフィラーゴムの先端部から前記底部に向かう方向である、請求項1に記載のビードフィラーゴムの切断方法。
【請求項3】
前記第1工程後に、前記刃を前記幅方向の他方に移動させる第2工程を含む、請求項1に記載のビードフィラーゴムの切断方法。
【請求項4】
前記ビードフィラーゴムは、まな板上で切断され、
前記第1工程後に、前記刃の先端が前記まな板と実質的に平行な状態で、前記刃を前記延在方向に沿って前記まな板まで移動させる第3工程を含む、請求項1に記載のビードフィラーゴムの切断方法。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載のビードフィラーゴムの切断方法で切断した前記ビードフィラーゴムで環状のビードフィラーを形成するビードフィラー形成工程と、環状のビードコアに前記ビードフィラーを一体化させる一体化工程と、を含む、ビード部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ビードフィラーゴムの切断方法及びビード部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、長尺のビードフィラーゴムを所定の長さに切断する切断方法が開示されている。切断されたビードフィラーゴムを環状のビードコアに巻き付けることによって、ビード部材が形成される。
【0003】
ところで、当該切断方法でビードフィラーゴムを切断した場合、ビードフィラーゴムの底部が刃によって押しつぶされ塑性変形する恐れがある。また、そのような塑性変形したビードフィラーゴムを用いてビード部材を製造した場合、ビードフィラーゴムとビードコアとの接合が不十分となり、ビード部材の製造不良が生じる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-69775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、切断時におけるビードフィラーゴムの塑性変形を抑制し、ビード部材の製造不良を抑制可能なビードフィラーゴムの切断方法及びビード部材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のビードフィラーゴムの切断方法は、ビードフィラーゴムの側面のうち一方が支持台に支持された状態で、前記ビードフィラーゴムを挟んで前記支持台の反対側に配置されたカッターの刃を前記刃の延在方向に対して前記刃の幅方向の一方に傾斜させた方向に移動させて、少なくとも前記ビードフィラーゴムの底部の厚み方向端部に前記刃を入れる第1工程を含む。
【0007】
本開示のビード部材の製造方法は、前記ビードフィラーゴムの切断方法で切断した前記ビードフィラーゴムで環状のビードフィラーを形成するビードフィラー形成工程と、前記ビードフィラーに環状のビードコアを一体化させる一体化工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係るビード部材の断面図
図2】同実施形態に係るビード部材の製造方法を示すフロー図
図3】同実施形態におけるビードフィラーの形成装置の概要側面図
図4図3の領域IVの拡大図
図5図4のV-V線拡大断面図
図6】同実施形態に係るビードフィラーゴムの切断方法の第1工程を説明するための図
図7】同実施形態に係るビードフィラーゴムの切断方法の第2工程を説明するための図
図8】同実施形態に係るビードフィラーゴムの切断方法の第3工程を説明するための図
図9】同実施形態に係るビードフィラーゴムの切断方法の第4工程を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0009】
[ビード部材]
まずは、本開示のビード部材1について、図1を参照しながら説明する。なお、各図(図2図9も同様)において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0010】
図1は、ビード部材1の断面図である。ビード部材1は、環状のビードコア2と環状のビードフィラー3とを備えている。本実施形態において、ビード部材1は、ビードコア2にビードフィラー3の底部31を接合することによって製造されているが、これに限られない。例えば、ビード部材1は、後述するビードフィラーゴムをビードコア2に巻き付けることによって製造されてもよい。
【0011】
ビードコア2は、鋼線等の収束体をゴム被覆することによって形成されている。ビードコア2は、断面多角形状に形成されている。本実施形態において、ビードコア2は、断面六角形状に形成されているが、これに限られない。例えば、ビードコア2は、断面四角形状などに形成されていてもよい。
【0012】
ビードフィラー3は、硬質ゴムによって形成されている。ビードフィラー3は、断面略三角形状に形成され、ビードコア2から径方向外側に向かって厚みが漸減している。本実施形態において、ビードフィラー3は、1つのゴム部材で形成されているが、これに限られない。例えば、ビードフィラー3は、複数のゴム部材を接合することによって形成されてもよい。
【0013】
ビードフィラー3は、ビードコア2と接合される底部31と、底部31から径方向に沿って外側に延びる第1側面32及び第2側面33と、ビードフィラー3の径方向の外側端に位置する先端部34と、を備える。底部31は、ビードコア2の外周面21の形状に沿った凹状に形成されている。
【0014】
[ビード部材の製造方法]
次に、ビード部材1の製造方法について、図1図9を参照しながら説明する。図2は、ビード部材1の製造方法を示すフロー図である。
【0015】
図2に示すように、ビード部材の製造方法は、ビードフィラーゴムで環状のビードフィラーを形成するビードフィラー形成工程ST1と、環状のビードコアにビードフィラーを一体化させる一体化工程ST3と、を含んでいる。本実施形態において、ビード部材の製造方法は、環状のビードコアを形成するビードコア形成工程ST2をさらに含んでいるが、これに限られない。
【0016】
ビードフィラー形成工程ST1は、押出形成装置からビードフィラーゴムを押し出す押出工程ST11と、ビードフィラーゴムを搬送する搬送工程ST12と、ビードフィラーゴムをドラムに巻き付ける巻付工程ST13と、ビードフィラーゴムを切断する切断工程ST14と、を含む。切断工程ST14は、巻付工程ST13の途中で行われる。
【0017】
図3は、ビードフィラーの形成装置の概要側面図である。押出工程ST11では、図3に示すように、押出形成装置M1からゴム部材を断面略三角形状で押し出すことによって、長尺のビードフィラーゴム4が形成される。
【0018】
図4は、図3の領域IVの拡大断面図であり、図5は、図4のV-V線断面図である。図5に示すように、ビードフィラーゴム4は、高さ方向D1の一方端に位置する底部41と、高さ方向D1の他方端に位置する先端部44と、底部41と先端部44とを接続する一対の側面(第1側面42,第2側面43)と、を備えている。ビードフィラーゴム4は、底部41から先端部44に向かって厚みが漸減している。ビードフィラーゴム4の底部41、第1側面42、第2側面43及び先端部44は、それぞれ図1に示すビードフィラー3の底部31、第1側面32、第2側面33及び先端部34に相当する。
【0019】
底部41は、高さ方向D1の一方側に突出する一対の突起411,411を備える。突起411は、ビードフィラーゴム4の厚み方向D2端に設けられている。本実施形態において、突起411は、断面三角形状に形成され、一対の突起411,411は、それぞれ形状が異なっているが、これに限られない。
【0020】
ビードフィラーゴム4の高さH1は、例えば、80mm以上である。本実施形態において、高さH1は、90mmであるが、これに限られない。ビードフィラーゴム4の底部41の厚みT1は、例えば、20mm以上である。本実施形態において、厚みT1は、25mmであるが、これに限られない。
【0021】
図2及び図3に示すように、搬送工程ST12では、複数の第1搬送装置M2でビードフィラーゴム4を支持台M4まで搬送している。第1搬送装置M2は、例えば、ベルトコンベヤやローラーコンベヤなどである。第1搬送装置M2には、搬送されるビードフィラーゴム4の張力を緩和する張力緩和部M21が設けられている。張力緩和部M21では、ビードフィラーゴム4がU字状に垂れている。
【0022】
搬送工程ST12では、次に、支持台M4まで搬送されたビードフィラーゴム4を第2搬送装置M3でドラムM7まで搬送している。第2搬送装置M3は、ビードフィラーゴム4を間欠送りしている。本実施形態において、第2搬送装置M3は、真空吸着装置である。これにより、ベルトコンベヤやローラーコンベヤよりもビードフィラーゴム4を精度よく搬送することができる。その結果、ビードフィラーの形成不良を抑制できる。なお、第2搬送装置M3は、上記に限られず、例えば、ベルトコンベヤやローラーコンベヤなどであってもよい。また、第1搬送装置M2でビードフィラーゴム4をドラムM7まで搬送してもよい。
【0023】
図3及び図4に示すように、支持台M4は、切断工程ST14における切断時にビードフィラーゴム4を支持するための台である。本実施形態においては、支持台M4にビードフィラーゴム4の第1側面42を支持させているが、これに限られない。
【0024】
支持台M4は、ビードフィラーゴム4が滑り難いものであることが好ましい。これにより、切断時に刃M511と共にビードフィラーゴム4が支持台M4の上を滑ることを抑制し、刃M511に対してビードフィラーゴム4が逃げることを抑制できる。その結果、切断時の刃M511の移動量MA1(図6参照)を小さくすることができる。本実施形態において、支持台M4は、金属(例えば、鉄)であるが、これに限られない。
【0025】
本実施形態において、支持台M4は、水平方向に沿って設けられている。即ち、ビードフィラーゴム4は、第1側面42が水平方向に沿うように支持台M4に支持されている。なお、支持台M4は、上記に限られず、上下方向に沿って設けられていてもよい。斯かる場合、ビードフィラーゴム4は、ビードフィラーゴム4の高さ方向D1(図5参照)が上下方向に沿うように支持台M4に支持される。また、第1搬送装置M2がベルトコンベヤやローラーコンベヤである場合、それらを支持台としてもよい。
【0026】
支持台M4は、第2搬送装置M3によるビードフィラーゴム4の搬送をガイドするガイド部材M41を備えている。これにより、巻付工程ST13においてビードフィラーゴム4が蛇行した状態でドラムM7に巻き付けられることを抑制できる。その結果、ビードフィラーの形成不良を抑制できる。ガイド部材M41は、例えば、略円柱状に形成され、支持台M4に回転可能に取り付けられている。ガイド部材M41の高さは、ビードフィラーゴム4の底部41の厚みよりも小さい。
【0027】
ガイド部材M41は、ビードフィラーゴム4の底部41と接触するように配置されている。本実施形態において、ガイド部材M41は、底部41の突起411と非接触である。ガイド部材M41は、複数(例えば、2つ)設けられ、搬送方向において後述するまな板M6を挟むように配置されている。これにより、切断時にビードフィラーゴム4が後述するカッターM51と共に移動することを抑制できる。その結果、ビードフィラーゴム4の切断ミスを抑制できる。
【0028】
図2及び図3に示すように、巻付工程ST13では、ビードフィラーゴム4をドラムM7に巻き付けてビードフィラーを形成する。ドラムM7の巻始め位置には、不図示の真空パッドが設けられている。これにより、巻始めにおいてもビードフィラーゴム4をドラムM7に保持させることができる。ビードフィラーゴム4は、第2搬送装置M3によって支持台M4からドラムM7の巻始め位置まで搬送される。
【0029】
ビードフィラーゴム4は、寝かせた状態でドラムM7に巻き付けられる。即ち、ビードフィラーゴム4の第1側面42(図5参照)がドラムM7に保持された状態でビードフィラーゴム4がドラムM7に巻き付けられる。ビードフィラーゴム4がドラムM7に任意の長さまで巻き付けられた後、ドラムM7の回転は停止される。そして、ビードフィラーゴム4は、ビードフィラーの周長に合わせて、切断工程ST14で所定の長さに切断される。その後、切断されたビードフィラーゴム4が再びドラムM7に巻き取られ、ビードフィラーゴム4の長手方向の両端部を接合することによって環状のビードフィラーが形成される。このように、切断工程ST14は、巻付工程ST13の途中で行われている。
【0030】
図2及び図4に示すように、切断工程ST14では、ビードフィラーゴム4の側面のうち一方が支持台M4に支持された状態でビードフィラーゴム4を切断する。ビードフィラーゴム4は、カッター装置M5によって切断される。本実施形態において、ビードフィラーゴム4の側面のうち一方は、第1側面42であるが、これに限られない。例えば、ビードフィラーゴム4の側面のうち一方は、第2側面43(図5参照)であってもよい。カッター装置M5は、カッターM51と、カッターM51を駆動する不図示の駆動部と、を備えている。
【0031】
カッターM51は、ビードフィラーゴム4を挟んで支持台M4の反対側に配置されている。本実施形態において、カッターM51は、ビードフィラーゴム4の上方に配置されているが、これに限られない。
【0032】
カッターM51の高さ方向の端部(本実施形態においては、下端部)には、ビードフィラーゴム4を切断するための刃M511が設けられている。ビードフィラーゴム4の長手方向に対する刃M511の延在方向D3の角度θ1は、30度以上で且つ60度以下であることが好ましい。これにより、ビードフィラーゴム4の長手方向の端部(切断部)を長手方向に対し傾斜させることができる。その結果、巻付工程ST13においてビードフィラーゴム4の長手方向の両端部の接合面積を増やすことができ、ビードフィラーの形成を良好にすることができる。
【0033】
図5に示すように、刃M511の幅W1は、ビードフィラーゴム4の高さH1よりも大きい。幅W1は、ビードフィラーゴム4を確実に切断する観点から、高さH1の150%以上が好ましく、200%以上がより好ましく、250%以上がさらに好ましい。本実施形態において、幅W1は、250mm(高さH1の278%)であるが、これに限られない。図5では、ビードフィラーゴム4の底部41の厚み方向D2と刃M511の延在方向D3とを同じ方向で記載しているが、実際の延在方向D3は、刃M511の先端に向かって紙面の手前方向に傾斜している(図4参照)。図6図8についても同様である。
【0034】
図4及び図5に示すように、刃M511の延在方向D3の高さH2は、ビードフィラーゴム4の厚みT1よりも大きい。高さH2は、切断時のビードフィラーゴム4の塑性変形を抑制する観点から、厚みT1の150%以上が好ましく、200%以上がより好ましい。本実施形態において、高さH2は、57mm(厚みT1の228%)である。カッターM51の高さH3は、115mmであり、高さH2の実質的に2倍の大きさである。
【0035】
駆動部は、カッターM51を刃M511の延在方向D3に駆動させる第1駆動部と、カッターM51を刃M511の幅方向D4に駆動させる第2駆動部と、を備えている。第1駆動部及び第2駆動部は、例えば、モーターである。本実施形態において、刃M511の幅方向D4は、ビードフィラーゴム4の高さ方向D1と実質的に同じ方向であるが、これに限られない。例えば、幅方向D4は、高さ方向D1に対し傾斜した方向であってもよい。
【0036】
カッター装置M5は、刃M511を加熱するヒーターM52を備えていることが好ましい。これにより、刃M511の温度を上昇させることによって、ビードフィラーゴム4の切断が容易になる。その結果、切断時のビードフィラーゴム4の塑性変形を抑制することができる。ヒーターM52は、例えば、電熱線である。
【0037】
ビードフィラーゴム4は、まな板M6上で切断されることが好ましい。これにより、まな板M6を設けていない場合と比較して、切断時におけるビードフィラーゴム4の塑性変形を抑制できる。まな板M6は、ビードフィラーゴム4が付着せず、且つ、刃M511よりも柔らかい材質(例えば、MCナイロンやポリアセタールなどの合成樹脂)で形成されていることが好ましい。本実施形態において、まな板M6は、支持台M4に設けられているが、これに限られない。まな板M6を設けずに、刃M511を通過させる隙間を支持台M4に設けてもよい。
【0038】
図6は、ビードフィラーゴム4の切断方法の第1工程ST141を説明するための図である。図2及び図6に示すように、切断工程ST14(ビードフィラーゴム4の切断方法)は、刃M511を延在方向D3に対して幅方向D4の一方に傾斜させた方向に移動させて、少なくともビードフィラーゴム4の底部41の厚み方向D2端部(突起411)に刃M511を入れる第1工程ST141を含む。第1工程ST141では、刃M511を斜め方向に移動させて少なくとも突起411に刃M511を入れている。斯かる方法によれば、刃511を斜め方向に入れることによって、刃M511と接触したビードフィラーゴム4が刃M511の幅方向D4の一方に弾性変形し、ビードフィラーゴム4の塑性変形を抑制することができる。また、特に塑性変形のしやすいビードフィラーゴム4の底部41の厚み方向D2端部(突起411)に刃M511を入れることによって、その部分が塑性変形することを抑制できる。その結果、切断時におけるビードフィラーゴム4の塑性変形を抑制できる。図6のカッターM51において、実線が移動前(第1工程ST141前)を示し、鎖線が移動後(第1工程ST141後)を示している。
【0039】
刃M511の幅方向D4の一方は、ビードフィラーゴム4の先端部44から底部41に向かう方向であることが好ましい。これにより、刃M511とビードフィラーゴム4との接触時にビードフィラーゴム4を底部41側に弾性変形させることができ、ビードフィラーゴム4の塑性変形を抑制できる。なお、上記に限られず、刃M511の幅方向D4の一方は、ビードフィラーゴム4の底部41から先端部44に向かう方向であってもよい。
【0040】
延在方向D3に対する、第1工程ST141における刃M511の移動方向の角度θ2は、70度以上であることが好ましい。これにより、刃M511と接触したビードフィラーゴム4が刃M511の幅方向D4の一方に弾性変形し、ビードフィラーゴム4の塑性変形を抑制することができる。角度θ2は、80度以下であることが好ましい。これにより、ビードフィラーゴム4の切断に要する時間を短くすることができる。
【0041】
第1工程ST141における刃M511の幅方向D4の移動量MA1は、ビードフィラーゴム4の高さH1の30%以上であることが好ましい。これにより、刃M511と接触したビードフィラーゴム4を刃M511の幅方向D4の一方に弾性変形させることができ、ビードフィラーゴム4が塑性変形することを抑制できる。移動量MA1は、高さH1の70%以下であることが好ましい。これにより、ビードフィラーゴム4の切断に要する時間を短くすることができる。移動量MA1は、高さH1の40%以上で且つ60%以下であることがより好ましい。本実施形態において、移動量MA1は、高さH1の50%であるが、これに限られない。
【0042】
第1工程ST141では、ビードフィラーゴム4の底部41の厚み方向D2端から底部41の厚みT1の20%以上の厚みまで刃M511を入れることが好ましい。これにより、特に塑性変形のしやすい部分に刃M511を入れることによって、ビードフィラーゴム4の塑性変形を抑制できる。底部41の厚み方向D2端から厚みT1の30%以上の厚みまで刃M511を入れることがより好ましい。
【0043】
第1工程ST141における刃M511の移動速度は、15mm/s以上であることが好ましい。これにより、カッターM51に設けられたヒーターM52によってビードフィラーゴム4が焼かれることを抑制できる。その移動速度は、25mm/s以下であることが好ましい。これにより、移動速度の速い刃M511と接触したビードフィラーゴム4の接触部分が塑性変形することを抑制できる。後述する第3工程ST143も同様である。
【0044】
図7は、ビードフィラーゴム4の切断方法の第2工程ST142を説明するための図である。図2及び図7に示すように、切断工程ST14(ビードフィラーゴム4の切断方法)は、第1工程ST141後に、刃M511を幅方向D4の他方に移動させる第2工程ST142を含むことが好ましい。斯かる方法によれば、第1工程ST141において刃M511と接触したビードフィラーゴム4の接触部分を確実に切断することができる。これにより、ビードフィラーゴム4の塑性変形をさらに抑制することができる。図7のカッターM51において、実線が移動前(第2工程ST142前)を示し、鎖線が移動後(第2工程ST142後)を示している。
【0045】
本実施形態において、刃M511の幅方向D4の他方は、ビードフィラーゴム4の底部41から先端部44に向かう方向であるが、これに限られない。例えば、刃M511の幅方向D4の他方は、ビードフィラーゴム4の先端部44から底部41に向かう方向であってもよい。
【0046】
第2工程ST142では、刃M511の幅方向D4の中央とビードフィラーゴム4の高さ方向D1の中央とが実質的に一致する位置まで刃M511を移動させている。これにより、後述する第3工程ST143においてビードフィラーゴム4を確実に切断することができる。本実施形態において、第2工程ST142における刃M511の幅方向D4の移動量MA2は、第1工程ST141における刃M511の幅方向D4の移動量MA1(図6参照)よりも小さいが、これに限られない。例えば、移動量MA2は、移動量MA1と実質的に同じであってもよい。
【0047】
本実施形態において、第2工程ST142における刃M511の移動は、幅方向D4の移動のみであるが、これに限られない。例えば、第2工程ST142における刃M511の移動は、延在方向D3の移動を含んでいてもよい。
【0048】
第2工程ST142における刃M511の速度は、15mm/s以上であることが好ましい。これにより、カッターM51に設けられたヒーターM52によってビードフィラーゴム4が焼かれることを抑制できる。第2工程ST142における刃M511の速度は、25mm/s以下であることが好ましい。これにより、ヒーターM52の熱及び刃M511とビードフィラーゴム4との摩擦熱によってビードフィラーゴム4が焼かれることを抑制できる。
【0049】
第2工程ST142における刃M511の速度は、第1工程ST141(第3工程ST143)における刃M511の速度と実質的に同じであることが望ましい。
【0050】
図8は、ビードフィラーゴム4の切断方法の第3工程ST143を説明するための図である。図2及び図8に示すように、切断工程ST14(ビードフィラーゴム4の切断方法)は、第1工程ST141後に、刃M511の先端がまな板M6と実質的に平行な状態で、刃M511を延在方向D3に沿ってまな板M6まで移動させる第3工程ST143を含むことが好ましい。斯かる方法によれば、まな板M6を設けていない場合と比較して、切断時におけるビードフィラーゴム4の塑性変形を抑制できる。また、刃M511の先端をまな板M6と実質的に平行な状態で下ろすことによって、刃M511がまな板M6を傷つけることを抑制できる。図8のカッターM51において、実線が移動前(第3工程ST143前)を示し、鎖線が移動後(第3工程ST143後)を示している。
【0051】
本実施形態において、第3工程ST143は、第2工程ST142の後に行われているが、これに限られない。例えば、切断工程ST14は、第2工程ST142を含まず、第3工程ST143は、第1工程ST141の直後に行われてもよい。
【0052】
各工程ST141~ST143は、略連続的に行われることが好ましい。即ち、各工程ST141~ST143間におけるカッターM51の停止時間が短い(例えば、0.5秒以下)ことが好ましい。これにより、ヒーターM52によってビードフィラーゴム4が焼かれることを抑制できる。
【0053】
図9は、ビードフィラーゴム4の切断方法の第4工程ST144を説明するための図である。図2及び図9に示すように、切断工程ST14(ビードフィラーゴム4の切断方法)は、ビードフィラーゴム4の切断後、ドラムM7(図3参照)への巻付け前のビードフィラーゴム4の切断部において、ビードフィラーゴム4の先端部44を押圧ローラーM8で押圧する第4工程ST144を含むことが好ましい。これにより、ドラムM7への巻付け前におけるビードフィラーゴム4の先端部44の浮き上がりを抑制し、ビードフィラー3の形成不良を抑制できる。
【0054】
図1及び図2に示すように、ビードコア形成工程ST2では、1本又は複数本の鋼線などが円環状に複数周巻かれて束ねられた収束体をゴム被覆することによって、断面多角形状(本実施形態においては、断面六角形状)に形成された環状のビードコア2が形成される。
【0055】
一体化工程ST3では、ビードコア2の外周面21にビードフィラー3を接合してビード部材1を製造する。これにより、切断時におけるビードフィラーゴムの塑性変形を抑制したビードフィラー3を用いてビード部材1を製造することによって、ビード部材1の製造不良を抑制することができる。本実施形態においては、接合時において、ビードフィラー3をターンアップさせている。ビードフィラー3のターンアップは、周知のメカニカル機構を用いてもよく、ブラダーを用いてもよい。
【0056】
本実施形態において、巻付工程ST13と一体化工程ST3とは、別工程であるが、これに限られない。例えば、巻付工程ST13と一体化工程ST3とを同時に行ってもよい。具体的には、ビードコア2がセットされたドラムにビードフィラーゴムを巻き付けてビードフィラー3の形成とビード部材1の製造とを同時に行ってもよい。
【0057】
[1]
以上、本開示のビードフィラーゴム4の切断方法は、ビードフィラーゴム4の側面42,43のうち一方が支持台M4に支持された状態で、ビードフィラーゴム4を挟んで支持台M4の反対側に配置されたカッターM51の刃M511を刃M511の延在方向D3に対して刃M511の幅方向D4の一方に傾斜させた方向に移動させて、少なくともビードフィラーゴム4の底部41の厚み方向D2端部に刃M511を入れる第1工程ST141を含む。
【0058】
斯かる方法によれば、刃511を斜め方向に入れることによって、刃M511と接触したビードフィラーゴム4が刃M511の幅方向D4の一方に弾性変形し、ビードフィラーゴム4の塑性変形を抑制することができる。また、特に塑性変形のしやすいビードフィラーゴム4の底部41の厚み方向D2端部(突起411)に刃M511を入れることによって、その部分が塑性変形することを抑制できる。その結果、切断時におけるビードフィラーゴム4の塑性変形を抑制できる。さらに、切断時におけるビードフィラーゴム4の塑性変形を抑制したビードフィラー3を用いてビード部材1を製造することによって、ビード部材1の製造不良を抑制することができる。
【0059】
[2]
上記実施形態[1]に係るビードフィラーゴム4の切断方法において、幅方向D4の一方は、ビードフィラーゴム4の先端部44から底部41に向かう方向である、ことが好ましい。
【0060】
斯かる方法によれば、刃M511とビードフィラーゴム4との接触時にビードフィラーゴム4を底部41側に弾性変形させることができ、ビードフィラーゴム4の塑性変形を抑制できる。
【0061】
[3]
上記実施形態[1]又は[2]に係るビードフィラーゴム4の切断方法は、第1工程ST141後に、刃M511を幅方向D4の他方に移動させる第2工程ST142を含む、とことが好ましい。
【0062】
斯かる方法によれば、第1工程ST141において刃M511と接触したビードフィラーゴム4の接触部分を確実に切断することができる。これにより、ビードフィラーゴム4の塑性変形をさらに抑制できる。
【0063】
[4]
上記実施形態[1]~[3]に係るビードフィラーゴム4の切断方法において、ビードフィラーゴム4は、まな板M6上で切断され、第1工程ST141後に、刃M511の延在方向D3の先端がまな板M6と実質的に平行な状態で、刃M511を延在方向D3に沿ってまな板M6まで移動させる第3工程ST143を含む、ことが好ましい。
【0064】
斯かる方法によれば、まな板M6を設けていない場合と比較して、切断時におけるビードフィラーゴム4の塑性変形を抑制できる。また、刃M511の延在方向D3の先端をまな板M6と実質的に平行な状態で刃M511を下ろすことによって、刃M511がまな板M6を傷つけることを抑制できる。
【0065】
[5]
本開示のビード部材1の製造方法は、上記実施形態[1]~[4]の何れか1つのビードフィラーゴム4の切断方法で切断したビードフィラーゴム4で環状のビードフィラー3を形成するビードフィラー形成工程ST1と、環状のビードコア2にビードフィラー3を一体化させる一体化工程ST3と、を含む。
【0066】
斯かる方法によれば、切断時におけるビードフィラーゴム4の塑性変形を抑制したビードフィラー3を用いてビード部材1を製造することによって、ビード部材1の製造不良を抑制できる。
【0067】
なお、ビードフィラーゴム4の切断方法及びビード部材1の製造方法は、上記した実施形態の構成及び方法に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、ビードフィラーゴム4の切断方法及びビード部材1の製造方法は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0068】
1…ビード部材、2…ビードコア、21…外周面、3…ビードフィラー、31、41…底部、32、42…第1側面、33、43…第2側面、34、44…先端部、4…ビードフィラーゴム、411…突起、M1…押出形成装置、M2…第1搬送装置、M21…張力緩和部、M3…第2搬送装置、M4…支持台、M41…ガイド部材、M5…カッター装置、M51…カッター、M511…刃、M52…ヒーター、M6…まな板、M7…ドラム、M8…押圧ローラー、ST1…ビードフィラー形成工程、ST11…押出工程、ST12…搬送工程、ST13…巻付工程、ST14…切断工程、ST141…第1工程、ST142…第2工程、ST143…第3工程、ST144…第4工程、ST2…ビードコア形成工程、ST3…一体化工程
図1
図2
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図6
図7
図8
図9