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特開2024-53749低光沢性付与樹脂及び低光沢性樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053749
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】低光沢性付与樹脂及び低光沢性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/36 20060101AFI20240409BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240409BHJP
   C08L 33/14 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
C08F20/36
C08L101/00
C08L33/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160142
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100165021
【弁理士】
【氏名又は名称】千々松 宏
(72)【発明者】
【氏名】高杉 水晶
(72)【発明者】
【氏名】宗形 裕基
(72)【発明者】
【氏名】長澤 敦
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002AA01X
4J002BB00X
4J002BB03X
4J002BB12X
4J002BB15X
4J002BG00X
4J002BG04W
4J002BG05W
4J002BG06W
4J002BG07W
4J002BN06X
4J002BN12X
4J002BN15X
4J002CF05X
4J002CG00X
4J002CL00X
4J002GN00
4J100AL03Q
4J100AL04Q
4J100AL05Q
4J100AL08P
4J100BA34P
4J100CA01
4J100CA04
4J100CA05
4J100JA00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】自動車部品用などの樹脂組成物に配合することにより低光沢性を付与できる低光沢性付与樹脂を提供する。
【解決手段】下記式(1)で示されるアミド基含有単量体(a1)に由来する構成単位が1~100質量%、下記式(2)で示される(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a2)に由来する構成単位が0~99質量%である重合体(A)からなる低光沢性付与樹脂。

(式(1)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは炭素数1~4のアルキレン基を示し、Rは炭素数7~31のアルキル基を示す。)

(式(2)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは炭素数1~22のアルキル基を示す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示されるアミド基含有単量体(a1)に由来する構成単位が1~100質量%、下記式(2)で示される(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a2)に由来する構成単位が0~99質量%である重合体(A)からなる低光沢性付与樹脂。
【化1】

(式(1)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは炭素数1~4のアルキレン基を示し、Rは炭素数7~31のアルキル基を示す。)
【化2】

(式(2)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは炭素数1~22のアルキル基を示す。)
【請求項2】
熱可塑性樹脂100質量部に対し、請求項1に記載の低光沢性付与樹脂を0.1~50質量部含有することを特徴とする低光沢性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用に好適な新規の低光沢性付与樹脂及びこれを含む低光沢性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレン系樹脂組成物を自動車部品の分野で利用する場合、部品の軽量化による高燃費性を有する自動車を生産でき、また再利用の容易性が高いという長所を持っている。しかし、プロピレン樹脂組成物を自動車部品で利用する場合、プラスチックの光沢が高くなることによって反射された太陽光が運転者の視野を邪魔して運転中の安全に深刻な影響をあたえることがある。たとえば、自動車用内装材であるインストルメントパネルは、自動車の運転席の前に位置するため、太陽光が反射して事故が起きないように、低光沢性の材料が要求されるが、これまで、材料自体が充分に低光沢性を有するものは見出されていない。
【0003】
特許文献1では、プロピレン系樹脂組成物とタルクを用いることで剛性と耐衝撃性、剛性と引張伸びのバランスに優れるとともに、表面の低光沢性に優れることが記載されている。同様に特許文献2では、エチレン-プロピレンブロック共重合体を含む樹脂組成物は剛性と衝撃耐性に優れ、かつ低光沢性とフローマークの外観不良が抑制できる樹脂組成物を提供できることが記載されている。特許文献3では、耐衝撃性及び耐傷付白化性に優れかつ低光沢性・光沢ムラが少なく外観が良好であり、さらにプロピレン系樹脂組成物を射出成形することにより、塗装の必要がなくそのためコストダウンを図ることができる自動車用内部材を提供できることが記載されている。
【0004】
しかしながら、上記のような試みによって、これら樹脂組成物を使用しても低光沢性が不十分であるなど、満足できるものではなかった。材料自体が十分に低光沢性を有するものではないため、無機物(タルク、シリカなど)の添加、プラスチックゴム製品の混合、表面を低光沢物質で塗布することが必要となり、工数・コストが増える場合があった。そのため、材料自体が十分に低光沢性を有することができる樹脂組成物が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-75619号公報
【特許文献2】特表2018-529810号公報
【特許文献3】特開平10-7851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、自動車部品などに使用する樹脂組成物に対して、低光沢性を付与することができる低光沢性付与樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決すべく検討した結果、特定構造の重合体を低光沢性付与樹脂として用いることにより上記課題を解決できることを見出した。すなわち、本発明は以下のものである。
【0008】
[1]下記式(1)で示されるアミド基含有単量体(a1)に由来する構成単位が1~100質量%、下記式(2)で示される(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a2)に由来する構成単位が0~99質量%である重合体(A)からなる低光沢性付与樹脂。
【化1】

(式(1)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは炭素数1~4のアルキレン基を示し、Rは炭素数7~31のアルキル基を示す。)
【化2】

(式(2)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは炭素数1~22のアルキル基を示す。)
【0009】
[2]熱可塑性樹脂100質量部に対し、前記[1]に記載の低光沢性付与樹脂を0.1~50質量部含有することを特徴とする低光沢性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、自動車部品などに使用される樹脂組成物に配合することにより低光沢性を付与できる低光沢性付与樹脂、及び該低光沢性付与樹脂を含む低光沢性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を説明する。
本発明の低光沢性付与樹脂は、下記式(1)で示されるアミド基含有単量体(a1)に由来する構成単位が1~100質量%、下記式(2)で示される(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a2)に由来する構成単位が0~99質量%である重合体(A)であることを特徴とする。
【化3】

(式(1)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは炭素数1~4のアルキレン基を示し、Rは炭素数7~31のアルキル基を示す。)
【化4】

(式(2)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは炭素数1~22のアルキル基を示す。)
【0012】
なお、本発明において「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを包含する総称である。また、重合体を構成する構成単位とは、当該重合体を合成するために用いたモノマーから重合反応により誘導された化学構造を有し、重合体鎖の連鎖構造を構成する単位のことを意味する。また、各モノマーに由来する構成単位の重合前モノマーの質量基準での共重合割合とは、重合反応によって重合体(A)中に組み込まれたモノマーの重合前における全質量に対する、当該重合体(A)に取り込まれた各モノマーの重合前における質量の割合を意味する。
【0013】
各モノマーに由来する構成単位の重合前モノマーの質量基準での共重合割合は、重合体(A)を合成する際に用いた各モノマーの仕込み量から計算することができる。
仕込み量から計算する場合には、重合体(A)を合成する時のモノマーの重合転化率が100%(つまり、未反応状態のまま残存するモノマーの量がゼロ)の場合には、重合体(A)に組み込まれたモノマーの量は仕込み量と等しいと考える。一方、重合体(A)を合成する時のモノマーの重合転化率が100%未満の場合には、モノマーの仕込み量から未反応状態のまま残存するモノマーの量を差し引いた値を重合体(A)に組み込まれたモノマーの量と考える。
先ず、重合体(A)の合成に用いた各モノマーの仕込み量から、重合体(A)に組み込まれた各モノマーの量を計算する。次に、重合体(A)に組み込まれたモノマーの合計量を計算する。そして、重合体(A)に組み込まれたモノマーの合計量に対する、重合体(A)に組み込まれた各モノマーの割合を計算する。
【0014】
また、他の方法としては、合成された重合体(A)中に存在する各モノマーに由来する構成単位の量を、プロトン核磁気共鳴分光法や熱分解ガスクロマトグラフィー等の適切な方法で分析した結果から、各モノマーに由来する構成単位の重合前モノマーの質量基準での共重合割合を特定することができる。
この場合、先ず、重合体(A)の分析結果から、各モノマーに由来する構成単位の量を測定又は計算する。この段階では、通常、各モノマーに由来する構成単位の量は、モル単位の値として得られる。次に、各モノマーに由来する構成単位の量を、重合前のモノマーの質量に換算する。そして、得られた換算値を用いて、重合体(A)に組み込まれたモノマーの合計量に対する、重合体(A)に組み込まれた各モノマーの割合を計算する。
【0015】
〔アミド基含有単量体(a1)〕
本発明で用いるアミド基含有単量体(a1)は下記式(1)で示される。
【化5】

(式(1)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは炭素数1~4のアルキレン基を示し、Rは炭素数7~31のアルキル基を示す。)
【0016】
式(1)中、Rは水素原子またはメチル基であり、反応性の観点から水素原子が好ましい。
は炭素数1~4のアルキレン基である。炭素数1~4のアルキレン基としては、直鎖のアルキレン基であってもよいし、分岐のアルキレン基であってもよいが、直鎖のアルキレン基であることが好ましい。炭素数1~4の直鎖のアルキレン基としては、メチレン基(-CH-)、エチレン基(-CH-CH-)、プロピレン基(-CH-CH-CH-)、ブチレン基(-CH-CH-CH-CH-)が挙げられ、中でもエチレン基(-CH-CH-)が好ましい。
は炭素数7~31のアルキル基である。炭素数7~31のアルキル基としては、エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、ステアリル基、ベヘニル基などが挙げられる。樹脂中での相溶性の観点から、Rは炭素数12~31のアルキル基が好ましく、炭素数16~31のアルキル基がより好ましく、炭素数16~22のアルキル基がさらに好ましい。また、Rは直鎖でも分岐でもよいが、直鎖のものが好ましい。
【0017】
重合体(A)における、アミド基含有単量体(a1)に由来する構成単位は、1~100質量%であり、20~100質量%が好ましく、40~80質量%がより好ましい。アミド基含有単量体(a1)に由来する構成単位が上記の範囲であると低光沢性により優れ、光沢ムラも抑制されやすくなる。
なお、重合体(A)におけるアミド基含有単量体(a1)に由来する構成単位(質量%)は、重合体(A)を構成する構成単位に占めるアミド基含有単量体(a1)に由来する構成単位の共重合割合である。該共重合割合は、重合前モノマーの質量基準での共重合割合を意味する。
【0018】
〔(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a2)〕
本発明で用いる(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a2)は下記式(2)で示される。
【化6】

(一般式(2)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは炭素数1~22のアルキル基を示す。)
【0019】
一般式(2)中、Rは水素原子またはメチル基であり、重合性の観点からメチル基が好ましい。Rは炭素数1~22のアルキル基である。炭素数1~22のアルキルとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、ステアリル基、ベヘニル基などが挙げられる。分散性安定性の観点から、炭素数は12~22が好ましく、16~22がより好ましい。
【0020】
重合体(A)における、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a2)に由来する構成単位は、0~99質量%であり、0~70質量%が好ましく、20~60質量%がより好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a2)に由来する構成単位が上記の範囲であると低光沢性に優れ、光沢ムラも抑制されやすくなる。
なお、重合体(A)における(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a2)に由来する構成単位(質量%)は、重合体(A)を構成する構成単位に占める(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a2)に由来する構成単位の共重合割合である。該共重合割合は、重合前モノマーの質量基準での共重合割合を意味する。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a2)は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。すなわち、重合体(A)における(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a2)に由来する構成単位は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0021】
〔他のモノマー〕
本発明の重合体(A)は、アミド基含有単量体(a1)および(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a2)に由来する構成単位だけで構成されていてよく、あるいはこれらのモノマーと重合可能な他のモノマーに由来する構成単位を、重合前モノマーの質量基準で、更に30質量%以下含有していてもよい。他のモノマーの比率は、30質量%以下とするが、15質量%以下が更に好ましく、5質量%以下がより好ましく、0質量%であってもよい。こうした他のモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、アクリルアミド、アクリロニトリルなどを挙げることができる。その他のモノマーとして、(メタ)アクリル酸を用いた場合、自動車部品用材料の低光沢性をより向上させることができるため好ましい。
【0022】
本発明の重合体(A)の重量平均分子量、数平均分子量、分散度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてポリスチレン換算で求めることができる。重合体(A)の重量平均分子量は、好ましくは3,000~150,000であり、より好ましくは10,000~100,000、さらに好ましくは30,000~70,000である。重合体(A)の重量平均分子量が低すぎると、樹脂組成物とした際の保存安定性が不足し、重量平均分子量が高すぎると、低光沢性が低下するおそれがある。
本発明の重合体(A)の分散度[重量平均分子量/数平均分子量]は、分散性の観点から、1.0~5.0が好ましく、1.5~3.0がより好ましい。
【0023】
〔重合体(A)の製造方法〕
次に、本発明の重合体(A)を製造する方法について説明する。重合体(A)は、アミド基含有単量体(a1)を単独でラジカル重合させるか、又は、アミド基含有単量体(a1)、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a2)を少なくとも含有するモノマー混合物をラジカル重合させることにより得ることができる。
重合は公知の方法で行うことができる。例えば、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などが挙げられるが、重合体(A)の重量平均分子量を上記範囲内に調整しやすいという面で、溶液重合や懸濁重合が好ましい。
重合開始剤は、公知のものを使用することができる。例えば、t-ブチルパーオキシネオデカノエートなどの有機過酸化物、2,2’-アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系重合開始剤などを挙げることができる。これらの重合開始剤は1種類のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合開始剤の使用量は、用いるモノマーの組み合わせや、反応条件などに応じて適宜設定することができる。
なお、重合開始剤を投入するに際しては、例えば、全量を一括仕込みしてもよいし、一部を一括仕込みして残りを滴下してもよく、あるいは全量を滴下してもよい。また、前記モノマーとともに重合開始剤を滴下すると、反応の制御が容易となるので好ましく、さらにモノマー滴下後も重合開始剤を添加すると、残存モノマーを低減できるので好ましい。溶液重合の際に使用する重合溶媒としては、モノマーと重合開始剤が溶解するものを使用することができ、具体的には、メタノール、エタノール、1-プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどを挙げることができる。
【0024】
重合溶媒に対するモノマー(合計量)の濃度は、10~60質量%が好ましく、特に好ましくは20~50質量%である。モノマー混合物の濃度が低すぎると、モノマーが残存しやすく、得られる重合体(A)の分子量が低下するおそれがあり、モノマーの濃度が高すぎると、発熱を制御し難くなるおそれがある。
モノマーを投入するに際しては、例えば、全量を一括仕込みしても良いし、一部を一括仕込みして残りを滴下しても良いし、あるいは全量を滴下しても良い。発熱の制御しやすさから、一部を一括仕込みして残りを滴下するか、または全量を滴下するのが好ましい。
重合温度は、重合溶媒の種類などに依存し、例えば、50℃~110℃である。重合時間は、重合開始剤の種類と重合温度に依存し、例えば、重合開始剤としてt-ブチルパーオキシネオデカノエートを使用した場合、重合温度を70℃として重合すると、重合時間は6時間程度が適している。
以上の重合反応を行なうことにより、本発明の低光沢性付与樹脂である重合体(A)が得られる。得られた重合体(A)は、そのまま用いてもよいし、重合反応後の反応液に、脱溶媒、ろ取や精製を施して単離してもよい。
【0025】
〔低光沢性樹脂組成物〕
本発明の重合体(A)からなる低光沢性付与樹脂は、各種樹脂組成物の光沢を低下させる光沢調整剤として用いることができ、自動車用内装材等として使用できる低光沢性樹脂組成物へ好適に用いられる。本発明の低光沢性付与樹脂によれば、該低光沢性付与樹脂を含む低光沢性樹脂組成物により作製された自動車用内装材の光沢及び光沢ムラを抑制することができる。
本発明の低光沢性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂、及び上記した重合体(A)からなる低光沢性付与樹脂を含有する。
【0026】
熱可塑性樹脂として、例えば、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン-プロピレン共重合体など)、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、PBT樹脂、PET樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。これらの中でも、ポリプロピレン樹脂が好ましい。
ポリプロピレン樹脂は、インストルメントパネルなどの自動車内装材として汎用されており、光沢性が高く、改善が求められていたが、本発明の低光沢性付与樹脂を、ポリプロピレン樹脂を含む樹脂組成物に配合することで、低光沢性の自動車内装材を提供することができ好ましい。
【0027】
低光沢性樹脂組成物中での本発明の重合体(A)からなる低光沢性付与樹脂の含有量は、熱可塑性樹脂の質量を100質量部としたとき、0.1~50質量部が好ましく、0.1~45質量部がより好ましく、5.0~40質量部がさらに好ましく、15~40質量部がさらに好ましい。
本発明の低光沢性樹脂組成物には、その目的に応じ、所望の特性を付与する他の成分、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤などの一種または二種以上を含有させてもよい。
【0028】
本発明の低光沢性樹脂組成物の光沢度は、好ましくは80未満であり、より好ましくは50以下である。光沢度は、実施例に記載の方法で測定できる。
【0029】
本発明の低光沢性樹脂組成物は、全面あるいは部分的(ウエルド部)に艶消し塗装を施すことなく材料自体が低光沢性を有するため自動車内装材などの自動車部品の原料として使用でき、射出成形、ブロー成形などにより所望の形状に成形して、自動車部品して使用することが出来る。
【実施例0030】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明の実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0031】
<合成例1>[低光沢性付与樹脂の合成]
ステアリン酸アミドエチルアクリレート300g、ステアリルメタクリレート100g、メチルメタクリレート100gを4つ口フラスコに入れ、トルエン500gで溶解させ、30分窒素ガスの吹き込みを行った。この後、重合開始剤としてt-ブチルペルオキシネオデカノエート5gを加えて70℃で6時間重合反応を行った。その後、120℃で減圧乾燥を行い、重合体(A)からなる低光沢性付与樹脂を得た。
【0032】
<合成例2~6>[低光沢性付与樹脂の合成]
下記表1に示す種類および量の成分を使用した以外は、合成例1と同様の手順に従って重合体(A)からなる低光沢性付与樹脂を得た。
【0033】
<比較合成例1~2>[低光沢性付与樹脂の合成]
下記表1に示す種類および量の成分を使用した以外は、合成例1と同様の手順に従って重合体からなる低光沢性付与樹脂を得た。
【0034】
合成例及び比較合成例で製造した各重合体の重量平均分子量は、下記の条件でGPCを用いて測定した。
〔重量平均分子量の測定〕
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件により、各重合体の重量平均分子量を求めた。
装置:東ソー(株)社製、HLC-8220
カラム: shodex社製、LF-804
標準物質:ポリスチレン
溶離液:THF(テトラヒドロフラン)
流量:1.0ml/min
カラム温度:40℃
検出器:RI(示差屈折率検出器)
【0035】
【表1】
【0036】
〔低光沢性樹脂組成物の調製〕
(実施例1)
PP-1:MFR30g/10分のホモタイプのポリプロピレン(サンアロマー社製,PM900A)74質量部、合成例1で製造した低光沢性付与樹脂(重合体(A))を26質量部の割合で混合し、二軸混錬機(製品名「ラボプラストミル」、東洋精機社製)を用いて溶融混錬を行ない、低光沢性樹脂組成物を得た。溶融混錬は220℃、60rpm/分で約5分間行った。
(実施例2~7、比較例1~3)
下記表2に示す種類および量の成分を使用した以外は、実施例1と同様の手順に従って低光沢性樹脂組成物を調製した。
【0037】
〔評価方法〕
実施例1~7及び比較例1~3で製造した低光沢性樹脂組成物について、以下の方法で、マット感及び光沢ムラを評価した。その結果を表2に示す。
【0038】
<マット感>
低光沢性樹脂組成物のマット感について、以下の方法で測定し、低光沢性を評価した。
実施例1~7および比較例1~3のそれぞれについて、評価サンプルを作成した。低光沢性樹脂組成物を熱プレス機によって、平滑板状(100×100mm)に成形し、評価サンプルとした。ブランクサンプルとしては合成例で製造した重合体(A)を含まないポリプロピレンの平滑板状成形物を使用した。
それぞれの評価サンプルについて、サンプル表面をハンディ光沢計(株式会社堀場製作所製「グロスチェッカーIG-340」)を用いて、測定角度60°の条件で、平滑板状に成形した低光沢性樹脂組成物の光沢度を測定し、得られた光沢度から、マット感を以下の通りに評価した。
ブランクサンプルの平滑板状成形物から得られた光沢度を100とした時、評価サンプルの光沢度を次のように評価した。
◎(低光沢性が非常に良好):50以下
○(低光沢性が良好) :51以上~80未満
△(低光沢性が劣る) :80以上
【0039】
<光沢ムラ>
各実施例及び比較例の各樹脂組成物から作製した上記平滑板状成形物にシボ付き面を形成させた。シボ付き面の光沢ムラを目視評価した。光沢ムラが顕著に目立つ場合を△,幾分目立つ場合を○,殆ど目立たない場合を◎とした。
【0040】
実施例1~7で用いた低光沢性付与樹脂を含む低光沢性樹脂組成物はマット感(低光沢性)に優れていた。一方、比較例1~3では、いずれの条件でもマット感が劣っていた。以上より、本発明の低光沢性付与樹脂は、自動車部品にマット感を付与できることが分かった。
【0041】
【表2】