(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053753
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】たんぱく質凝集剤を含む口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20240409BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20240409BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q11/00
A61K8/81
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160148
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100165021
【弁理士】
【氏名又は名称】千々松 宏
(72)【発明者】
【氏名】服部 莉奈
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 圭
(72)【発明者】
【氏名】笹木 友美子
(72)【発明者】
【氏名】原 真佐夫
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AB282
4C083AB312
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC302
4C083AC862
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD532
4C083CC41
4C083EE33
4C083EE34
(57)【要約】
【課題】使用感、及びたんぱく質凝集作用に優れ、口腔内を清潔に保つことができる口腔用組成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、(a)ペカン殻またはその抽出物を含有するたんぱく質凝集剤を含む、pHが4.0~9.0の口腔用組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ペカン殻またはその抽出物を含有するたんぱく質凝集剤を含む、pHが4.0~9.0である口腔用組成物。
【請求項2】
前記たんぱく質凝集剤が、(b)2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位を含む共重合体を含有する請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
(a)ペカン殻またはその抽出物を0.05~2.0w/v%、(b)2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位を含む共重合体を0.001~5.0w/v%含有する、請求項2に記載の口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用感、及びたんぱく質凝集作用に優れ、口腔内を清潔に保つことができる口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、口臭予防等に関心が高まっており、口腔内を清潔に保つために様々な特徴を有する洗口液が用いられている。これらの洗口液には口臭予防だけでなく、歯肉炎、う蝕をはじめとする各種口腔内疾患を予防する効果も有することが望まれている。主な口腔内疾患である口臭、歯肉炎、及びう蝕は、デンタルプラークが主な要因となっており、このデンタルプラーク内の細菌が歯周ポケットから組織内へ侵入し、さらには血流にのって全身に播種される症例も報告されている。デンタルプラークは、口腔内細菌が共凝集することにより形成される。具体的には、口腔内細菌は唾液中に含まれるたんぱく質を足場として歯面へ付着し、糖-レクチン反応で早期定着細菌と後期定着細菌が共凝集する(例えば、非特許文献1参照)。
このような唾液中のたんぱく質または口腔内細菌を凝集させ除去することで、デンタルプラーク形成を抑制させることが可能な洗口剤として、特許文献1及び2に記載の洗口剤が知られている。
特許文献1には、カリン抽出物及びスイカズラ抽出物を有効成分とする組成物を含む洗口剤が開示されている。また、特許文献2には、チャ葉抽出物及びスイカズラ抽出物を含むたんぱく質凝集型の洗口剤が開示されている。
【0003】
一方、歯のエナメル質表面は、pH5.5以下になると脱灰が始まることが知られている(例えば、非特許文献1)。エナメル質表面のpH低下の要因としては、飲食等で口腔内に残存したブドウ糖やショ糖が口腔内細菌により代謝され、酸が産生されることが挙げられる。この点、産生された酸に基づいて低下したエナメル質表面のpHは、唾液の緩衝能により上昇するものの、このpHが酸の産生前に戻る(約pH6.5)には20分~1時間を要する。また、エナメル質表面にデンタルプラークが形成されている場合、エナメル質表面と外界唾液との接触が制限されているため、さらにpHが酸の産生前に戻るまで時間を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-256259号公報
【特許文献2】特開2018-090558号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】新予防歯科学第4版、米満正美他、医歯薬出版株式会社、2015年3月10日発行、第28~42頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、洗口液は口腔内を清潔に保つが、唾液や凝集物を除去するため洗口液のpHが低い場合は唾液による緩衝能が弱まることから、pH上昇に時間を要することが考えられる。また、低pHの洗口液を口に含むと、歯のエナメル質が低pH溶液により脱灰される場合があり、これにより歯面にざらつき等を生じさせ、洗口液使用者の使用感を損ねる。この使用感の観点から、口に含んだ際に口腔内のpHを低下させない洗口液が望まれている。
本発明は、使用感、及びたんぱく質凝集作用に優れ、口腔内を清潔に保つことができる口腔用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、洗口液等の口腔内ケア用品は中性に近い方が好ましく、また、洗口液等がpH5.5を多少下回る程度であれば、残存した唾液による緩衝能によりpH低下は小さくなるとする知見を見出した。具体的には、ペカン殻またはその抽出物を含有するたんぱく質凝集剤を含むpH4.0~9.0の口腔用組成物を用いることで、上記の課題を解決できるとの知見を見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下に関する。
[1](a)ペカン殻またはその抽出物を含有するたんぱく質凝集剤を含む、pHが4.0~9.0である口腔用組成物。
[2]前記たんぱく質凝集剤が、(b)2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位を含む共重合体を含有する、上記[1]に記載の口腔用組成物。
[3](a)ペカン殻またはその抽出物を0.05~2.0w/v%、(b)2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位を含む共重合体を0.001~5.0w/v%含有する、上記[2]に記載の口腔用組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の口腔用組成物は、ペカン殻又はその抽出物を含有するたんぱく質凝集剤を含み、pHを4.0~9.0とすることで、優れた使用感とたんぱく質凝集作用を有する。本発明により、優れた使用感とたんぱく質凝集作用を有し、口腔内を清潔に保つことができる口腔用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
なお、本明細書において、好ましい数値範囲(例えば、含有量等)を段階的に記載した場合、各下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10~100、より好ましくは20~90」という記載において、「好ましい下限値:10」と「より好ましい上限値:90」とを組み合わせて、「10~90」とすることができる。
【0011】
本発明の口腔用組成物は、(a)ペカン殻またはその抽出物(以下単に(a)成分ともいう)を含有するたんぱく質凝集剤を含む。該たんぱく質凝集剤は、さらに(b)2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位を含む共重合体(以下単に(b)成分ともいう)を含有することが好ましい。
本発明におけるたんぱく質凝集剤は、(a)成分及び(b)成分以外の成分を含んでいてもよいが、(a)成分及び(b)成分のみからなることが好ましい。
【0012】
<(a)ペカン殻またはその抽出物>
本発明においてたんぱく質凝集剤として含まれる(a)成分は、ペカン殻またはその抽出物である。性状は粉末及び液体のどちらでもかまわない。(a)成分を含有することにより、たんぱく質凝集効果を発揮させることができる。
【0013】
ペカン殻は、クルミ科ペカン属に属する植物の種子殻を意味し、例えば、ヒッコリーやペカン等の種子殻である。また、ペカン殻の抽出物は、ペカン殻を公知の方法によって抽出して得られる抽出物である。抽出の方法は特に限定されないが、例えば、炭化水素化合物類、エステル類、ケトン類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素化合物類、アルコール類及水から選ばれる一種または二種以上の溶媒により加熱還流あるいは浸漬することにより目的の抽出物を得ることができる。
【0014】
本発明の口腔用組成物における(a)成分の含有量は、0.05~2.0w/v%であり、たんぱく質凝集効果の観点から、好ましくは0.1~2.0w/v%であり、より好ましくは0.2~2.0w/v%であり、更に好ましくは0.45~1.0w/v%である。含有量が0.05w/v%未満の場合は、十分にたんぱく質凝集効果を発揮することができない可能性がある。また、2.0w/v%より多い場合は、性状が澄明でなく外観を損ねる可能性があり、好ましくない。
【0015】
<(b)2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位を含む共重合体>
本発明におけるたんぱく質凝集剤は、(b)成分を含むことが好ましい。(b)成分は、重量平均分子量が10,000~5,000,000であり、式(1)で示される2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン10~90モル%と式(2)で示されるアルキル基含有アクリル系単量体90~10モル%の共重合体であることが好ましい。
【0016】
<2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(1)>
2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンは、具体的には式(1)で示される。
【化1】
【0017】
本発明の(b)成分は、分子鎖中に2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを有することによって、歯面へのたんぱく質吸着抑制により凝集効果を促進することで、たんぱく質凝集効果に優れるたんぱく質凝集剤とすることができる。2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの含有量が10モル%未満の場合は、たんぱく質吸着を抑制できない可能性がある。また、90モル%より多い場合は、共重合体の親水性が高くなるため口腔内組織や舌への吸着が低下し、歯面におけるたんぱく質吸着抑制効果を得られない可能性がある。
【0018】
<アルキル基含有アクリル系単量体(2)>
アルキル基含有アクリル系単量体は、具体的には式(2)で示される。
【化2】
(式(2)中、R
1は炭素数4~18のアルキル基を示す。)
【0019】
式(2)において、R1は炭素数4~18の直鎖状または分岐状のアルキルである。
本発明の(b)成分は、分子鎖中にアルキル基含有アクリル系単量体を有することによって、疎水性を付与することができ、口腔内組織や舌への吸着性を高めることができる。
R1の炭素数4~18の直鎖状アルキル基としては、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-へプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基が挙げられる。
炭素数4~18の分岐状アルキル基としては、t-ブチル基、イソブチル基、イソペンチル基、t-ペンチル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基、イソへプチル基、イソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基、イソウンデシル基、イソドデシル基、イソトリデシル基、イソテトラデシル基、イソペンタデシル基、イソヘキサデシル基、イソヘプタデシル基、イソオクタデシル基などが挙げられる。
R1は、より好ましくは、n-ブチル基、n-ドデシル基、n-ヘキサデシル基、n-オクタデシル基等である。
【0020】
アルキル基含有アクリル系単量体の好適な例として、ブチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート等が挙げられる。これらの中では、ブチルアクリレート、ステアリルアクリレートがより好ましく、ブチルアクリレートがさらに好ましい。
本発明の(b)成分の重量平均分子量は、10,000~5,000,000であり、好ましくは50,000~1,000,000である。重量平均分子量が10,000未満の場合は、口腔内組織や舌への吸着性が低下する可能性がある。また、5,000,000より大きい場合は、粘度が急激に上昇し、たんぱく質凝集剤及び口腔用組成物を製することが困難となる可能性があり、好ましくない。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてポリエチレングリコール(PEG)換算で求めることができる。
本発明の口腔用組成物における(b)成分の含有量は、好ましくは0.001~5.0w/v%であり、たんぱく質付着抑制効果の観点から、より好ましくは0.001~3.0w/v%であり、さらに好ましくは0.001~1.0w/v%であり、さらに好ましくは0.005~1.0w/v%である。(b)成分の含有量が0.001w/v%未満の場合は、歯面におけるたんぱく質吸着を抑制できない可能性がある。また、5.0w/v%より多い場合は、含有量に見合う効果が得られない可能性がある。
【0021】
<(c)モノテルペン類>
本発明の口腔用組成物は、メントール、及びシトラールからなる群から選択される少なくとも1種のモノテルペン類(以下、(c)成分ともいう)を含有することが好ましい。
(c)成分としては、メントール、及びシトラールの中でも、清涼感の持続性の観点からメントールが好ましい。
本発明の口腔用組成物における(c)成分の含有量は、好ましくは0.001~0.5w/v%であり、清涼感の持続性の観点から、より好ましくは0.01~0.5w/v%であり、さらに好ましくは0.01~0.25w/v%である。含有量が0.001w/v%未満の場合は、清涼感が持続しない可能性がある。また、0.5w/v%より多い場合は、刺激が強く味を損ねる可能性があり、好ましくない。なお、(c)成分の含有量は、(c)成分を2種以上併用する場合は、その合計量を意味することとする。
【0022】
<(d)甘味剤>
本発明の口腔用組成物は、(d)キシリトール、グリチルリチン酸及び/またはその塩、ステビア抽出物、サッカリン及び/またはその塩からなる群から選択される少なくとも1種の甘味剤(以下、(d)成分ともいう)を含有することが好ましい。
(d)成分としては、キシリトール、グリチルリチン酸及び/またはその塩、ステビア抽出物、サッカリン及び/またはその塩の中でも、キシリトール、グリチルリチン酸及び/またはその塩、ステビア抽出物が好ましく、キシリトールがより好ましい。
本発明の口腔用組成物における(d)成分の含有量は、好ましくは0.001~5.0w/v%であり、味の観点から、より好ましくは0.01~5.0w/v%であり、さらに好ましくは0.01~2.5w/v%である。含有量が0.001w/v%未満の場合は、味を調整できない可能性がある。また、5.0w/v%より多い場合は、甘みが強くなり、味の観点から好ましくない。なお、(d)成分の含有量は、(d)成分を2種以上併用する場合は、その合計量を意味することとする。
【0023】
<(e)低級アルコール>
本発明の口腔用組成物は、(e)炭素数1~3の一価の低級アルコール(以下、(e)成分ともいう)を含有することが好ましい。
(e)成分としては、エタノール、及び1-プロパノールが挙げられ、中でもエタノールが好ましい。(e)成分は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の口腔用組成物における(e)成分の含有量は、好ましくは0.1~30w/v%であり、溶解性及び味の観点から、より好ましくは0.1~20w/v%であり、更に好ましくは0.5~10w/v%であり、更に好ましくは0.5~5.0w/v%である。含有量が0.1w/v%未満の場合は、油性成分を溶解できない可能性がある。また、30w/v%より多い場合は、口腔粘膜に刺激を感じる可能性があり、使用感の観点から好ましくない。なお、(e)成分の含有量は、(e)成分を2種以上併用する場合は、その合計量を意味することとする。
【0024】
<(f)植物性プロテオグリカン>
本発明の口腔用組成物は、(f)植物性プロテオグリカン(以下、(f)成分ともいう)を含有することが好ましい。
本発明の口腔用組成物における(f)成分の含有量は、好ましくは0.0001~1.0w/v%であり、口腔内保護の観点から、より好ましくは0.0005~1.0w/v%であり、更に好ましくは0.0005~0.5w/v%であり、更に好ましくは0.0005~0.1w/v%である。含有量が0.0001w/v%未満の場合は、口腔内保護効果を発揮できない可能性がある。また、1.0w/v%より多い場合は、含有量に見合う効果が得られない可能性がある。
【0025】
<水>
本発明の口腔用組成物において、上記した(a)~(f)成分、及び後述する必要に応じて配合されるその他の成分以外の残部は水であることが好ましい。水としては、特に限定されないが、例えば、イオン交換水、精製水などを使用することができる。水の含有量は、口腔用組成物において、好ましくは70~99.5w/v%であり、より好ましくは85~99w/v%である。
【0026】
本発明の口腔用組成物は、本発明の効果を阻害しない限り、上記説明した成分以外に、必要に応じて一般に口腔用組成物に使用できる保湿剤、エモリエント剤、防腐剤、pH調整剤、及び香料等のその他の成分を含有してもかまわない。
【0027】
保湿剤としては、例えば、濃グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、乳酸ナトリウム、ヒアルロン酸及びその塩、ソルビトール、ピロリドンカルボン酸及びその塩、N-ココイル-L-アルギニンエチルエステルDL-ピロリドンカルボン酸塩、ならびに尿素等を挙げることができ、これらの1種以上を含むことができる。
エモリエント剤としては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソプロピル、オレイン酸イソブチル、およびマレイン酸イソブチル等の脂肪酸エステル等を挙げることができ、これらの1種以上を含むことができる。
防腐剤としては、例えば、ベンゼトニウム塩化物、アルキルジアミノエチルグリシン塩酸塩、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等のパラベン類、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール等を挙げることができ、これらの1種以上を含むことができる。
pH調整剤としては、例えば、塩酸、クエン酸及びその塩、リン酸及びその塩、リンゴ酸及びその塩、グルコン酸、第一級アミン、第二級アミン、炭酸ナトリウム及びその塩、水酸化ナトリウム、および水酸化カリウム等を挙げることができ、これらの1種以上を含むことができる。
【0028】
本発明の口腔用組成物のpHは4.0~9.0である。pHが4.0未満であると、歯面にざらつきが生じやすくなり、使用感が低下する。pHが9.0を超えると口腔粘膜への刺激が強くなり、口腔内トラブルが発生し得る。
本発明の口腔用組成物のpHは、好ましくは4.0~8.0であり、より好ましくは4.5~7.5であり、さらに好ましくは5.3~7.3である。
【0029】
本発明のたんぱく質凝集剤を含む口腔用組成物の形態は特に限定されず、例えば、液状、ゲル状、ペースト状等の形態を挙げることができる。本発明の口腔用組成物の具体的な形態は、液状、ゲル状、ペースト状の歯磨剤や、液状、ゲル状の口中清涼剤、洗口剤、含嗽薬等である。
本発明のたんぱく質凝集剤を含む口腔用組成物の使用方法は特に限定されないが、例えば、適当なボトルに充填し、吐出して使用することができる。
このようにしてたんぱく質凝集剤を含む口腔用組成物を使用することにより、良い使用感を保ちつつ口腔内のたんぱく質を凝集させ除去することができ、口腔内を清潔に保つことができる。
【実施例0030】
以下、本発明を実施例、比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
なお、実施例及び比較例で使用した各成分は以下のとおりである。
【0031】
[口腔用組成物の各成分]
<成分(a)>
ピーカンナッツエキスPW-2(日油株式会社製)
<成分(b)>
MPCポリマー(1):2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・ブチルメタクリレート共重合体〔共重合組成比(モル比)80/20、重量平均分子量:600,000〕である。
MPCポリマー(2):2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・ブチルメタクリレート共重合体〔共重合組成比(モル比)30/70、重量平均分子量:142,000〕である。
<成分(c)>
l-メントール(小堺製薬株式会社製)
<成分(d)>
キシリトール(三菱商事株式会社製)
グリチルリチン酸ジカリウム(丸善製薬株式会社製)
ステビオサイドT100(株式会社常盤植物化学研究所製)
サッカリンナトリウム(純正化学株式会社製)
<成分(e)>
エタノール(富士フィルム和光純薬株式会社製)
<成分(f)>
プロテオグリカン(植物)粉末(日油株式会社製)
【0032】
(実施例1)
精製水にピーカンナッツエキス(成分(a))とMPCポリマー(1)(成分(b))を加え攪拌し、本発明の口腔用組成物を得た。なお、各成分の配合量は、後述の表1にまとめた。
なお、表1に記載の単位「g/100mL」は、「w/v%」と同義である。
【0033】
(実施例2)
エタノール(成分(e))にl-メントール(成分(c))を加え攪拌し、油層を得た。別容器にて、精製水にピーカンナッツエキス(成分(a))、MPCポリマー(1)(成分(b))、及びキシリトール(成分(d))を加え攪拌し、水層を得た。上記油層及び水層を混合し、本発明の口腔用組成物を得た。なお、各成分の配合量は、後述の表1にまとめた。
【0034】
(実施例3)
エタノール(成分(e))にl-メントール(成分(c))を加え攪拌し、油層を得た。別容器にて、精製水にピーカンナッツエキス(成分(a))、MPCポリマー(1)(成分(b))、グリチルリチン酸(成分(d))、ステビア抽出物(成分(d))、サッカリンナトリウム(成分(d))、及び植物性プロテオグリカン(成分(f))を加え攪拌し、水層を得た。上記油層及び水層を混合し、本発明の口腔用組成物を得た。なお、各成分の配合量は、後述の表1にまとめた。
【0035】
(実施例4~14、比較例1~2)
表1に記載の種類及び量の各成分を使用し、実施例1~3に準じて口腔用組成物を得た。
【0036】
実施例1~実施例14、及び比較例1及び2の口腔用組成物について、以下の通りpHの測定、使用感の評価、凝集物有無の評価、及び外観の評価を行った。その結果を下記表に示す。
各評価は以下のように実施した。
【0037】
1.pHの測定
各口腔用組成物10mL(25℃)について、pHメーター(株式会社堀場製作所製)を用いてpHを測定した。
【0038】
2.使用感の評価
官能評価により使用感を評価した。健常な被験者10名に、各口腔用組成物を用いて洗口させ、下記の評価基準に基づき評価し、平均点を評価結果とした。なお、沈殿が生じた口腔用組成物については評価を実施しなかった。
5点:歯面のざらつきを感じない
4点:歯面のざらつきをほとんど感じない
3点:歯面のざらつきをあまり感じない
2点:歯面のざらつきを少し感じる
1点:歯面のざらつきを感じる
【0039】
3.凝集物有無の評価
<凝集物有無の評価方法>
官能評価により凝集物の有無を評価した。健常者10名に、各口腔用組成物を用いて約30秒間洗口後、白地のコップへ吐き出させ、凝集物の有無を目視確認した。凝集物が確認できたものを良好「○」、凝集物が確認できなかったものを不可「×」とし、以下の式に従って点数化した。
【数1】
【0040】
4.外観の評価
20mLのガラス製スクリュー管に各口腔用組成物を充填し、外観を評価した。褐色澄明のものを良好「○」、白濁もしくは分散状態のものを可「△」、沈殿を生じたものを不可「×」とした。
【0041】
【0042】
以上の結果、各実施例で用いた本発明のたんぱく質凝集剤を含む口腔用組成物は、使用感及びたんぱく質凝集効果に優れることがわかった。
これに対して、比較例に示すたんぱく質凝集剤を含む口腔用組成物は、使用感もしくはたんぱく質凝集効果が劣る結果となった。
本発明のたんぱく質凝集剤を含む口腔用組成物を用いることで、良い使用感を保ちつつ口腔内のたんぱく質を凝集除去させることができ、口腔内の汚れを除去し口腔内を清潔に保つことができる。