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特開2024-53756移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置
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  • 特開-移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置 図1
  • 特開-移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置 図2
  • 特開-移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053756
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置
(51)【国際特許分類】
   B62B 3/02 20060101AFI20240409BHJP
   B62B 5/00 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B62B3/02 C
B62B5/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160152
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】522391648
【氏名又は名称】京浜パネル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129159
【弁理士】
【氏名又は名称】黒沼 吉行
(72)【発明者】
【氏名】後藤 太輝
(72)【発明者】
【氏名】山口 俊憲
【テーマコード(参考)】
3D050
【Fターム(参考)】
3D050AA35
3D050BB02
3D050BB29
3D050DD03
3D050EE09
3D050EE15
3D050GG01
3D050HH01
3D050KK08
(57)【要約】
【課題】 倒伏状態のパネルを起立させる動作を安全に行う事のできる移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置を提供する。
【解決手段】 パネルを立てた状態と寝かせた状態で保持できる移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置であって、車輪を備えたベースフレームと、当該ベースフレーム上に水平方向に保持された揺動軸と、移送対象となるパネルを支持可能であって前記揺動軸の軸周りに揺動する揺動部とを備えており、当該揺動部における揺動動作の始点と終点において、相互に揺動方向とは逆向きに揺動動作を規制する動作緩衝部を設けた移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルを立てた状態と寝かせた状態で保持できる移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置であって、
車輪を備えたベースフレームと、当該ベースフレーム上に水平方向に保持された揺動軸と、移送対象となるパネルを支持可能であって前記揺動軸の軸周りに揺動する揺動部とを備えており、
当該揺動部における揺動動作の始点と終点において、相互に揺動方向とは逆向きに揺動動作を規制する動作緩衝部を設けたことを特徴とする移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置。
【請求項2】
前記動作緩衝部は、前記揺動部を寝かせる動作の終点において揺動方向とは反対側に揺動部を付勢する下側動作緩衝部と、前記揺動部を立てる動作の終点において揺動方向とは反対側に揺動部を付勢する上側動作緩衝部とからなる、請求項1に記載の移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置。
【請求項3】
更に前記揺動部の揺動動作を規制する動作規制部が設けられており、
当該動作規制部の解除によって揺動動作を可能とする、請求項1に記載の移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置。
【請求項4】
前記揺動部は移送対象となるパネルが当接する平面部を備えており、当該平面部には、寝かせた状態のパネルを水平移動させるローラーが設けられている、請求項1~3の何れか一項に記載の移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置。
【請求項5】
前記揺動部には、立てた状態における下端側に、正面側に突出して存在し、移送対象となるパネルを載せ置くパネル受け部が設けられており、
当該パネル受け部には、ローラーが設けられている、請求項1~3の何れか一項に記載の移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパネルを移送する台車に関し、特に移送するパネルを、垂直に立てた状態と水平に寝かせた状態で保持できる移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場などにおけるパネルの移送には台車が使用されている。加工対象となるパネルは台車によって作業場所まで移動させ、作業者によって作業台に載せ置かれて、各種の加工が施されることになる。かかる加工対象のパネルが比較的に軽い場合には特に困難なく作業台に載せ置くことも可能であるが、50kgを超えるような重量物である場合には、作業者一人で移送台車から作業台に乗せるのが困難になる。特に移送に際しては、工場内の通路を円滑に移動させるために、パネルを立てた状態で移送することが多く、一方で作業台に乗せる際にはこれを水平に寝かせた状態にする必要がある。
【0003】
そこで特許文献1(特開2019-171990号公報)では、パネルを垂直に立てた状態と水平に寝かせた状態で保持できるパネル移送台車として、床面に置かれる車輪付きベースフレームと、水平方向に配置された揺動軸の周りに揺動自在に、前記ベースフレームに支持されて、移送対象のパネルを、前記床面に対して垂直又は水平に保持する揺動フレームとを備えるとともに、前記揺動軸は、前記パネルが前記床面に対して垂直に保持される状態における、前記パネルの重心よりも低い位置に配置されているパネル移送台車を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-171990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1では、パネルを垂直に立てた状態(以下「起立状態」ともいう)と水平に寝かせた状態(以下「倒伏状態」ともいう)で保持できるパネル移送台車が提案されており、この文献で提案されているパネル移送台車によれば、直立に立てて移送したパネルを水平に寝かせた際に、パネルの床面からの高さを低くすることができる。しかしながらパネルを水平に寝かせた状態から垂直に立てた状態にする際には、その勢い次第ではパネルが反対側に倒れてしまうことも危惧される。そこで本発明は、倒伏状態のパネルを起立させる動作を安全に行う事のできる移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置を提供することを課題の1つとする。
【0006】
また前記特許文献1で提案されているパネル移送台車は、パネルを床面に平行に寝かせた状態において、床面に立つ作業者が楽な姿勢でパネルの上面に手を伸ばして作業するものであり、水平に寝かせた状態で作業台に移動させることは考慮されていない。そこで本発明では、垂直に立てた状態で移送したパネルを水平に寝かせた状態とし、その状態で作業台に移動させる事のできる移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置を提供することも別の課題とする。
【0007】
そして前記特許文献1で提案されているパネル移送台車は、パネルを垂直に立てた状態と水平に寝かせた状態で保持できるものであるが、その動作途中における姿勢を保持することはできないものとなっている。そこで本発明では、パネルを垂直に立てた状態と水平に寝かせた状態を保持できると共に、両状態における姿勢や変化させる際の姿勢を任意に固定可能とするか、または任意に動作可能とすることのできる移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置を提供することも別の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題の少なくとも何れかを解決するべく、本発明では電源などを必要することなく、パネルなどの物体を立てた状態(立て掛け置き)と寝かせた状態(横倒し置き)で保持して移動できる移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置を提供する。かかる移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置は、車輪を備えたベースフレームと、当該ベースフレーム上に水平方向に保持された揺動軸と、移送対象となるパネルを支持可能であって前記揺動軸の軸周りに揺動する揺動部とを備えており、当該揺動部における揺動動作の始点と終点において、相互に揺動方向とは逆向きに揺動動作を規制する動作緩衝部を設けて形成することができる。
【0009】
かかる動作緩衝部は、前記揺動部を寝かせる動作の終点において揺動方向とは反対側に揺動部を付勢する下側動作緩衝部と、前記揺動部を立てる動作の終点において揺動方向とは反対側に揺動部を付勢する上側動作緩衝部とで構成することができる。特に、下側動作緩衝部は、前記揺動部を立てた状態における揺動軸よりも下側に設けることができ、上側動作緩衝部は、揺動部を立てる動作の終点において揺動方向とは反対側に揺動部を付勢するように構成することができる。かかる動作緩衝部は、定荷重バネによって構成することが望ましいが、バネ、ゴム、その他の弾性部材やダンパーなどを用いて形成することもできる。
【0010】
また本発明の移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置では、更に前記揺動部の揺動動作を規制する動作規制部を設けることができ、当該動作規制部の解除によって揺動動作を可能とすることが望ましい。即ち、当該動作規制部は、揺動部における揺動動作を停止または解除するものとして形成することができ、例えばロック機能付きのガスダンパ―などを使用することができ、当該ガスダンパ―を揺動部とベースフレームに連架して設ける事により、当該動作規制部のオン/オフによって、任意の位置で揺動部を保持することができる。なお、前記動作規制部は、当該動作規制部の解除によって揺動動作を停止させるように構成することもできる。即ち、常には揺動動作可能であって当該動作規制部の解除のよって、揺動動作を禁止するように構成することもできる。
【0011】
また本発明の移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置において、前記揺動部は移送対象となるパネルが当接する平面部を備えており、当該平面部には、寝かせた状態(即ち、倒伏状態)のパネルを水平移動させるローラーを設けることが望ましい。
【0012】
また前記揺動部には、立てた状態(即ち、起立状態)における下端側に、正面側に突出して存在し、移送対象となるパネルを載せ置くパネル受け部を設け、当該パネル受け部には、ローラーを設けることが望ましい。
【0013】
また本発明では、車輪を備えたベースフレームと、当該ベースフレーム上に水平方向に保持された揺動軸と、移送対象となるパネルを支持可能であって前記揺動軸の軸周りに揺動する揺動部とを備えており、更に当該揺動部の揺動動作の始点と終点において、揺動方向とは反対向きの力を作用させる動作緩衝部を備える移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置を提供する。
【0014】
かかる移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置において、前記動作緩衝部材として定荷重バネを用いることが望ましく、当該定荷重バネは、前記揺動部を立てた状態における前記揺動軸の下方側と上方側に夫々設けることが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置は、揺動部における揺動動作の始点と終点において、相互に揺動方向とは逆向きに揺動動作を規制する動作緩衝部を設けていることから、寝かせた状態のパネルを立てた状態にする起立動作、及び立てた状態のパネルを寝かせる倒伏動作のそれぞれにおいて、動作終了時の勢いを減じることができる。その結果、水平に寝かせた状態のパネルを垂直に立てた状態にする場合であっても、動作終了時点でその勢いを減じることができるので、立てたパネルが勢い余って反対側に倒れてしまうことを阻止する事ができる。また倒伏状態のパネルを起立させる動作を安全に行う事のできる移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置とすることができる。そして当該起立動作を規制する動作緩衝部は、揺動部が起立した状態において倒伏方向に力を作用させていることから、その倒伏動作を支援して、簡易に倒伏動作を行う事のできる移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置が実現する。
【0016】
また立てた状態のパネルを寝かせる場合であっても、その倒伏動作の終了時点では前記動作緩衝部によって倒伏方向とは逆向きの力が作用することから、勢いよく倒れる事態を阻止することができる。その結果、揺動軸が移送対象となるパネルの重心よりも下方に存在する場合であっても、勢いよくパネルが倒れることを無くして、作業の安全を確保すると共に、円滑な倒伏動作を行うことができる。また当該倒伏動作を規制する動作緩衝部は、倒伏状態の揺動部に対して起立方向の力を作用させていることから、当該倒伏したパネルを起立させる動作を支援し、簡易に起立動作を行う事のできる移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置が実現する。
【0017】
そして前記揺動部の揺動動作を規制する動作規制部を設け、当該動作規制部の解除によって揺動動作を可能とすることにより、意図しない倒伏動作や起立動作を無くすことができ、作業の安全性を確保することができる。更に当該動作規制部を設ける事により、任意の角度・姿勢において前記揺動部を保持できることから、作業環境に応じて揺動部、ひいてはパネルの傾倒角度を実現することができる。
【0018】
更に、前記揺動部に、寝かせた状態のパネルを水平移動させるローラーを設けた場合には、当該移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置から、寝かせた状態で作業台への移送を簡易に行うことができ、また立てた状態における揺動部の下端側に、正面側に突出して存在するパネル受け部を設けた場合には、立てた状態のパネルの積み込み作業や荷降ろし作業を円滑に行うことができる。これにより、垂直に立てた状態で移送したパネルを水平に寝かせた状態とし、その状態で作業台に移動させる事のできる移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施の形態にかかる移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置を示す(A)正面図、(B)側面図
図2】移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置の(A)起立状態と(B)倒伏状態を示す側面図
図3】移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置によるパネルの移送状態を示す(A)正面図、(B)平面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本実施の形態にかかる移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置50を具体的に説明する。特に本実施の形態は板状のパネルPを立てた状態で移送し、その後、横向きに寝かせた状態で作業台T上に移動できるようにした移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置50としたものである。
【0021】
図1は本実施の形態にかかる移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置50を示す(A)正面図、(B)側面図であり、図2は当該移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置50の(A)起立状態と(B)倒伏状態を示す側面図であり、図3は当該移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置50によるパネルPの移送状態を示す(A)正面図、(B)平面図である。
【0022】
図1に示す様に、本実施の形態にかかる移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置50は、車輪21を備えたベースフレーム20と、このベースフレーム20の上に水平方向に保持された揺動軸30と、移送対象となるパネルPを支持可能であって前記揺動軸30の軸周りに揺動する揺動部10と、当該揺動部10の揺動動作を規制する動作緩衝部28とで形成している。
【0023】
前記ベースフレーム20は、本実施の形態ではパイプ材などを組んで形成したフレームとして形成しているが、その他、板材を用いて形成することができる。かかるベースフレーム20は、当該移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置50の土台を構成するものであり、このベースフレーム20に対して各種の構成要素を直接的または他の部材を介して間接的に設けることができる。本実施の形態において、当該ベースフレーム20の下面には、移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置50を移動させるための車輪21を設けており、更に当該移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置50の移動を阻止するストッパー22も設けている。かかるストッパー22は、当該移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置50の移動面に対して進退自在に設けられており、移動面を押圧することにより、当該移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置50の移動を阻止することができる。
【0024】
そして当該ベースフレーム20にの上面の幅方向両側には支柱23を立設している。かかる支柱23は前記揺動軸30を保持すると共に、前記揺動部10を保持する為に機能することができる。従って前記揺動軸30は、この2本の支柱23によって支持されて、前記ベースフレーム20の上に水平方向に支持されている。
【0025】
この支柱23は、前記揺動部10を起立状態と倒伏状態にする為に、4節リンク機構における両てこ機構として構成しており、即ち、固定リンクとなる支柱23と平行に対向配置された、梃子として動作する脚部リンク24と、当該支柱23の上部と脚部リンク24の上部とを連結する上部リンク25と、当該支柱23の下部と脚部リンク24の下部とを連結する下部リンク26とからなる4節リンク機構(特に両てこ機構)を構成している。これら支柱23
と上部リンク25と、脚部リンク24と、下部リンク26とは、それぞれ回り対偶で接続されている。
【0026】
そして前記支柱23と上部リンク25とのジョイント部(対偶部分)、および前記脚部リンク24と上部リンク25とのジョイント部(対偶部分)とには、当該上部リンク25と直交する向きに突起する揺動部支持柱27を設けており、当該揺動部支持柱27によって前記揺動部10を保持している。即ち当該揺動部10は、ベースフレーム20の幅方向両側に存在する上部リンク25の端部同士から突起している合計4個の揺動部支持柱27に固定されており、前記上部リンク25と同じ動作を行うことができる。
【0027】
そしてこの揺動部10における下端側、具体的には前記支柱23と上部リンク25とのジョイント部(対偶)から突起している揺動部支持柱27よりも下方側に、当該揺動部10の倒伏方向への揺動時に逆向きの力を付勢する下側動作緩衝部28aを設け、当該揺動部10における上方側、具体的には前記支柱23と上部リンク25とのジョイント部(対偶)から突起している揺動部支持柱27よりも上方側に、当該揺動部10の起立方向への揺動時に逆向きの力を付勢する上側動作緩衝部28bを設けている。特に本実施の形態では、当該緩衝部28a,bは定荷重バネを用いて構成しており、下側動作緩衝部28aは前記ベースフレーム20と揺動部10の下端に連架して設け、上側動作緩衝部28bは前記ベースフレーム20と脚部リンク24と上部リンク25とのジョイント部(対偶部分)に連架して設けている。
【0028】
以上のように構成することにより、揺動部10を倒伏させる方向に揺動させる際には、その揺動動作初期において上側動作緩衝部28bは揺動部10の倒伏方向への動作を支援することができる。そして寝かせる動作(即ち、倒伏動作)の終点位置では、前記下側動作緩衝部28aが、その揺動方向(寝かせる方向)とは反対向きの力を作用させることができ、これによって勢いよく揺動部10が倒れるおそれを無くしている。一方で、揺動部10を立てる方向(起立方向)に揺動させる際には、その揺動動作初期において下側動作緩衝部28aは揺動部10の起立方向への動作を支援することができる。そして立てる動作(即ち、起立動作)の終点位置では、前記上側動作緩衝部28bが、その揺動方向(立てる方向)とは反対向きの力を作用させることができ、これによって、揺動部10が保持するパネルPが勢い余って揺動方向に倒れてしまう恐れを無くすことができる。
【0029】
更に本実施の形態では、前記揺動部10の揺動動作を規制する動作規制部29を設けている。かかる動作規制部29は、本実施の形態ではガスダンパーを使用しており、当該ガスダンパ―を前記ベースフレーム20と前記上部リンク25との間に連架して設けている。このガスダンパーは前記揺動部10の側方に設けたレバー13によってロックを解除できるようになっており、当該レバー13によってロックを解除することで揺動部10の揺動動作が行えるようになっている。この為、揺動部10の起立動作中または倒伏動作中にロックを動作させることによって、揺動部10はその状態を維持することができる。かかる動作規制部29を設ける事により、揺動動作の途中姿勢を保持することができる他、意図しない倒伏動作や起立動作を阻止することができ、作業安全性を向上させることができる。
【0030】
そして本実施の形態にかかる移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置50において、移送するパネルPは、その重心位置が前記揺動軸30よりも前方に存在することが望ましい。移送するパネルPの重心位置が揺動軸30上、又は揺動軸30よりも前方(正面方向)、即ち起立動作方向に存在する事により、やや斜めに起立させた状態を維持しながら、安定して移送することが可能になる。但し、本実施の形態にかかる移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置50では、前記ロック機能付きのガスダンパ―からなる動作規制部29を設けていることから、仮に移送するパネルPの重心が前記揺動軸30よりも後方(倒伏動作方向)に存在する場合であっても、倒伏方向に揺動させることなく、斜めに起立させた状態を維持して移送する事ができる。
【0031】
そして本実施の形態の移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置50において、前記揺動部10は移送対象となるパネルPが当接する平面部を備えるように構成することができる。かかる揺動部10は例えば板体を用いて形成することができる。そしてこの平面部には、寝かせた状態のパネルPを水平移動させるためのローラー14を設けることが望ましい。立てた状態で移送したパネルPを、移送先において寝かせた姿勢とし、これを作業台Tに移し替える為に使用できるようにするためである。かかるローラー14を設ける事により、重量物であるパネルPであっても、特に困難なく作業台Tに移し替えることが可能となる。
【0032】
そして本実施の形態にかかる移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置50において、前記揺動部10には、斜めに立てた姿勢のパネルPを支持する為のパネル受け部11を設けることが望ましい。かかるパネル受け部11は、前記揺動部10の下端側、即ち斜めに立てた状態における下端側に、正面側に突出して存在し、移送対象となるパネルPを載せ置くように構成することができる。そしてこのパネル受け部11には、ローラー12を設けることにより、移送するパネルPを立てた状態で円滑に移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置50に載せることができる。
【0033】
図2は本実施の形態にかかる移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置50において、(A)パネル移送時における起立状態を示す側面図と(B)移送したパネルを作業台Tに乗せ換える際の倒伏状態を示す側面図である。図2(A)に示す様に、移送するパネルを立てた状態において、その荷重は揺動部10に作用し、これを支柱23で支持している。そして立てた状態における揺動部10は、ガスダンパーのブレーキ機構(動作規制部29)によって保持されることから、パネル受け部11に載せ置いたパネルPは、立てた状態で移送することができる。その結果、工場や施設内における狭い通路であっても、困難なく通ることができる。
【0034】
そして移送の到着地点である作業台Tまで到達した際には、図2(B)に示す様に、揺動部10を倒伏させて、パネルPを寝かせた状態にする。この倒伏動作は前述したとおり動作規制部29における揺動制限を解除して、前記4節リンク機構(特に両てこ機構)を動作させることにより行うことができる。具体的には脚部リンク24を移動面(床面ないしは地面)まで下げることにより行うことができる。このように揺動部10を倒伏させた状態においては、前記揺動部10の上に載せ置かれたパネルPは水平姿勢を取ることができ、その荷重は前記支柱23と脚部リンク24によって支持することができる。このように水平状態に保持されたパネルPは、板体を用いて形成された揺動部10の平面部に設けられたローラー14によって、大きな力を要することなく作業台Tの上に移動させることができる。
【0035】
そして作業台Tにおいて一通りの加工が終了した後には、再び水平状態に保持した揺動部10にスライド移動させ、これを図2(A)に示す様に起立姿勢として移送させることができる。
【0036】
図3(A)は移送対象となるパネルPを移送台車に乗せ換える状態を示す正面図であり、図3(B)は移送したパネルPを作業台Tに移動させる状態を示す平面図である。この図3に示すように、台車などで起立させた状態で搬送されたパネルPは、起立姿勢を保ったまま本実施の形態にかかる移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置50に移動させることができる。具体的には、前記揺動部10の下端に設けたパネル受け部11に載せ置いて、当該パネル受け部11に設けたローラー12の上をスライド移動させることにより、当該移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置50に円滑に移動させることができる。この時、パネルPが揺動部10に立て掛けられるように傾斜させておくことで、前記揺動部10に設けたローラーによって円滑に移動させることができる。
【0037】
そして作業台Tなどの搬送場所まで移動させた後においては、図3(B)に示す様に、前記揺動部10を水平に倒伏させて、水平姿勢となったパネルPを作業台Tにスライド移動させる。これによりパネルPを起立又は倒伏姿勢で変更させるだけでなく、作業台Tへの移動を行う事のできる移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置50が実現する。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明にかかる移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置は、パネルを搬送する為、更には重量物のパネルを移送し、そして任意に起立、倒伏姿勢を変化させるために使用することができる。更に当該移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置は、単なるパネルのみならず、その他の板状物などを搬送し、任意に起立、倒伏姿勢を変化させるための台車として利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
10 揺動部
11 パネル受け部
12、14 ローラー
13 レバー
20 ベースフレーム
21 車輪
22 ストッパー
23 支柱
24 脚部リンク
25 上部リンク
26 下部リンク
27 揺動部支持柱
28a 下側動作緩衝部
28b 上側動作緩衝部
29 動作規制部
30 揺動軸
50 移動式物体横倒し置き・立て掛け置き無電動転換装置
22 ストッパー
P パネル
T 作業台
図1
図2
図3