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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053769
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】肌処理装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
A61N1/36
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160185
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000114628
【氏名又は名称】ヤーマン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 朝子
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053JJ04
4C053JJ13
4C053JJ24
4C053JJ33
4C053JJ40
(57)【要約】
【課題】電気偏りが抑制された均一な電気印加を実現する。
【解決手段】ユーザの肌に当接可能な複数の電極30を備え、複数の電極30のそれぞれは、内側電極31と、内側電極31を取り囲む外側電極32とを有し、複数の外側電極32は、一の外側電極32が他の一の外側電極32に近接、接触、又は一体化する態様で、アレイ状に配置される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの肌に当接可能な複数の電極を備え、
複数の前記電極のそれぞれは、内側電極と、前記内側電極を取り囲む外側電極とを有し、
複数の前記外側電極は、一の前記外側電極が他の一の前記外側電極に近接、接触、又は一体化する態様で、アレイ状に配置される、肌処理装置。
【請求項2】
複数の前記電極のうちの少なくとも一部が同じ形状である、請求項1に記載の肌処理装置。
【請求項3】
前記電極が3個以上であり、相互に隣り合う3個の前記電極のそれぞれの前記内側電極の中心を結んだ三角形が直角三角形とは異なる、請求項1に記載の肌処理装置。
【請求項4】
前記内側電極の外周縁と前記外側電極の内周縁との間の寸法が、前記内側電極と前記外側電極との間の空間全体にわたって一定である、請求項1に記載の肌処理装置。
【請求項5】
前記内側電極の外周縁の形状と前記外側電極の内周縁の形状とが、どちらも直線で相互に平行な部分を有する、請求項1に記載の肌処理装置。
【請求項6】
前記内側電極の外周縁の形状と前記外側電極の内周縁の形状とが、相互に相似する多角形若しくは楕円形である、請求項1に記載の肌処理装置。
【請求項7】
前記内側電極の外周縁の形状と前記外側電極の内周縁の形状とが、正六角形である、請求項1に記載の肌処理装置。
【請求項8】
隣り合う前記電極の前記外側電極のうちの少なくとも一部が共通である、請求項1に記載の肌処理装置。
【請求項9】
複数の前記電極の前記内側電極の面積と前記外側電極の面積との合計に対する前記内側電極と前記外側電極との間の空間の面積の合計の比が、0.6以上1.6以下である、請求項1に記載の肌処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、肌処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
4つの同心状の円環状の電極を利用して低周波の出力波形と高周波の出力波形とを肌に印加する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/167109号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複数の電極を利用して電流を肌に流すことで美容関連効果を与える場合、電流が局所的に流れることを防いで、所望の効果をむらなく均一に与えることができると有用である。
【0005】
そこで、本開示は、電気偏りが抑制された均一な電気印加を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの側面では、ユーザの肌に当接可能な複数の電極を備え、複数の前記電極のそれぞれは、内側電極と、前記内側電極を取り囲む外側電極とを有し、複数の前記外側電極は、一の前記外側電極が他の一の前記外側電極に近接、接触、又は一体化する態様で、アレイ状に配置される、肌処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、電気偏りが抑制された均一な電気印加を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の肌処理装置の外観を示す斜視図である。
図2図1の肌処理装置のヘッド部を説明する図である。(A)は複数の電極の配置を示す正面図である。(B)は電極の正面図である。
図3】電極の個数の他の例を示す正面図である。
図4】複数の電極の配置の態様の例を説明する正面図である。
図5】複数の電極の配置の態様の比較を説明する正面図である。
図6図2のヘッド部の電極の直線平行出力領域及び等間隔出力領域を説明する正面図である。
図7】比較例の電極装置の複数の電極の配置を示す正面図である。
図8】検証試験でのゲルシートの平面視における温度分布を示す図である。
図9】複数の電極の形状及び配置の他の例を示す正面図である。
図10】複数の電極の形状及び配置の他の例を示す正面図である。
図11】複数の電極の形状及び配置の他の例を示す正面図である。
図12】複数の電極の形状及び配置の他の例を示す正面図である。
図13】複数の電極の形状及び配置の他の例を示す正面図である。
図14】外縁電極の形状及び配置の他の例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について詳細に説明する。
【0010】
図1は、本実施形態の肌処理装置1の外観を示す斜視図である。図2は、肌処理装置1のヘッド部3を説明する図であって、複数の電極の配置及び電極を示す正面図である。
【0011】
本実施形態の肌処理装置1は、美顔器の形態であり、ユーザの顔部の肌に美容関連効果を付与するように構成される。ただし、変形例では、肌処理装置1は、ユーザの顔部に加えて又は代えて、ユーザの顔部以外に同様の美容関連効果を付与するように構成されてもよい。また、肌処理装置1は、美容関連効果とは異なる効果(例えば医薬品の経皮吸収の促進効果)を付与するために利用されてもよい。
【0012】
美容関連効果は、任意であり、たるみの解消や、引き締め、脂肪燃焼、リフトアップ、小顔化、肌のハリやツヤ、潤いの向上、又はその類の1つ以上の任意の組み合わせを含んでよい。美容関連効果は、また、数値化可能な効果であってもよいし、数値化可能でない効果であってもよい。
【0013】
本実施形態の肌処理装置1は、ユーザの肌に当接する複数の電極を介して各種出力を付与することで、ユーザの肌に美容関連効果を付与するように構成される。
【0014】
本実施形態の肌処理装置1は、ユーザの手により把持可能な携帯型であるが、固定機器にアーム等を介して可動に支持される可動式に適用されてもよい。
【0015】
本実施形態の肌処理装置1は、把持部2と、ヘッド部3とを含む。この場合、ユーザは、把持部2を挟持して、ヘッド部3を自身の顔部や他人(例えば患者)の顔部における所望の部位に当てることで、所望の部位に対して肌処理装置1からの各種出力を付与できる。
【0016】
把持部2は、ユーザの手で把持されやすい形態を有する。把持部2には、電源のオン/オフボタンや強さ調整ボタン等のような各種ボタンを含むユーザインターフェイス20を含んでよい。なお、各種ボタンは、機械式のボタンであってもよいし、タッチスイッチであってもよい。また、把持部2には、肌処理装置1の状態等を表示する表示部(図示せず)が設けられてもよい。また、把持部2は、ユーザの手に触れる電極(図示せず)が設けられてもよい。
【0017】
ヘッド部3は、把持部2の端部に設けられる。なお、ヘッド部3は、把持部2に対して固定されてもよいし、取り外し可能であってもよいし、把持部2に対して可動であってもよい。
【0018】
ヘッド部3は、ユーザの肌に当接可能であり、ユーザの肌に当接されるのに適した形態を有する。ヘッド部3は、例えば、略平面状(比較的大きい曲率半径の曲面状を含む)の当接面3aを有してよい。当接面3aは、側面視で略直線に近似できる平面である。正面視での当接面3aの形態(即ち、当接面3aに対して垂直な方向に視たときの形態)は、矩形や円形、楕円形、多角形等のような任意であり、本実施形態では、一例として、図2(A)に示すように、円形である。ヘッド部3の当接面3aについて、当接面3aを正面視したときの中心(即ち、当接面3aに対して垂直な方向に視たときの重心位置)のことを「当接面3aの中心C」と称する。
【0019】
ヘッド部3は、当接面3aにアレイ状に配置される複数の電極30を有する。複数の電極30は、ユーザの肌に当接しやすいように形成され、ヘッド部3の当接面3aの基本面と同一平面状であってもよく、或いは、ヘッド部3の当接面3aの基本面よりも僅かに突出した形態であってもよい。本実施形態ではヘッド部3は7個の電極30を有するようにしているが、電極30の個数は、7個に限定されるものではなく、2個以上であればいくつでもよい。例えば、図3に示すように、電極30が3個配置されるようにしたり(同図(A))、電極30が19個配置されるようにしたり(同図(B))してもよい。
【0020】
複数の電極30のそれぞれは、内側電極31と、内側電極31と離間して内側電極31を取り囲む外側電極32とを有する。複数の電極30それぞれの内側電極31と外側電極32とは、例えば美容関連作用(具体的には、加温作用、筋電気刺激作用など)を有する所定の周波数の出力波形をユーザの肌に印加するための対の電極を形成する。
【0021】
本実施形態では、加温作用を与える電極として複数の電極30が配置され、さらに、筋電気刺激作用を与える電極として3個の外縁電極33が配置される。筋電気刺激作用を与える外縁電極33の個数は、3個に限定されるものではなく、2個以上であればいくつでもよい。加温作用を与える複数の電極30のうちの少なくとも一部を囲むように、筋電気刺激作用を与える複数の外縁電極33を配置することにより、加温作用と筋電気刺激作用との相乗効果を奏するように構成することができる。また、加温作用を与える複数の電極30の集合体全体の形状に沿った形状にすることにより、ヘッド部3の当接面3aを無駄なく使用して、筋電気刺激作用を与える電極として適当な(言い換えると、十分な)面積を確保することができる。このため、面積が小さい電極で低い周波数の電流を流すと体感する刺激が強いために不快感を与えてしまうことを防止することができる。
【0022】
本実施形態では、複数の電極30それぞれが、内側電極31の外周縁の形状が正六角形に形成されるとともに、外側電極32の内周縁及び外周縁の形状が正六角形に形成され、外側電極32は内側電極31と離間して内側電極31を取り囲むように正六角形の帯環状に形成される。すなわち、内側電極31の中心(正面視における重心位置;以下同じ)と外側電極32の中心(正面視における重心位置;以下同じ)とが一致するように内側電極31の径方向外側に外側電極32が配置される。
【0023】
本実施形態では、複数の電極30それぞれが、内側電極31の外周縁の形状並びに外側電極32の内周縁及び外周縁の形状が角丸正六角形に形成され、これにより、内側電極31の外周縁と外側電極32の内周縁との間の寸法dが、内側電極31と外側電極32との間の空間Sの全体にわたって一定であるようにしている(図2(B)参照)。この場合、内側電極31から外側電極32までの距離の対称性、均一性により、内側電極31と外側電極32との間において、電気偏りが抑制された均一な電気印加が実現される。ただし、内側電極31の外周縁の形状並びに外側電極32の内周縁及び外周縁の形状は、角丸ではない形状に形成されるようにしてもよい。
【0024】
本実施形態では、複数の電極30のすべてが同じ形状である。ただし、複数の電極30のうちの一部が異なる形状である(言い換えると、一部が同じ形状である)ようにしてもよく、或いは、複数の電極30のすべてが相互に異なる形状であるようにしてもよい。すなわち、複数の電極30として、すべて同じ形状の電極が配置されるようにしてもよく、また、相互に異なる2種類以上の形状の電極が配置されるようにしてもよい。
【0025】
一の電極30(図2(A)中の符号30c)が、内側電極31の中心が当接面3aの中心Cに一致する態様で配置される。さらに、6個の電極30(図2(A)中の符号30a)が、当接面3aの中心Cに配置される電極30((A)中の符号30c)の周りに、当接面3aの中心Cを中心とする円周上に、相互に等間隔の態様で配置される。
【0026】
内側電極31の外周縁の対辺間の寸法Liは、特定の値には限定されないものの、あくまでも例として挙げると、2~5mm程度の範囲のうちのいずれかの値に設定されるようにしてもよい。
【0027】
隣り合う電極30の内側電極31の中心間の寸法は、特定の値には限定されないものの、あくまでも例として挙げると、4~12mm程度の範囲のうちのいずれかの値に設定されるようにしてもよい。
【0028】
本実施形態では、上記のとおり、複数の電極30それぞれが、内側電極31の外周縁の形状が正六角形(詳細には、角丸正六角形;以下同じ)に形成されるとともに、外側電極32の内周縁及び外周縁の形状が正六角形に形成され、内側電極31の中心と外側電極32の中心とが一致するように内側電極31及び外側電極32が組み合わせられて構成される。
【0029】
そのうえで、複数の電極30は、複数の外側電極32が、一の外側電極32が他の一の外側電極32に近接する態様(図4(A)参照)、接触する態様(同図(B)参照)、又は一体化する態様(同図(C)参照;本実施形態)で、アレイ状に配置される。隣り合う電極30において、外側電極32どうしが、一体化しても(言い換えると、重なり合っても、共通であっても)よいが、交差しないように配置される。
【0030】
本実施形態では、複数の電極30が、隣り合う電極30の外側電極32のうちの少なくとも一部が共通である態様で、すなわち図4(C)に示す態様で配置されている。この場合、外側電極32は、正面視において、網目状に形成され、具体的にはハニカム形状に形成される。さらに、外側電極32の外周縁の形状が正六角形に形成されるとともに、隣り合う電極30の外側電極32のうちの少なくとも一部が一体化される(言い換えると、重なり合う、共通である)ように複数の電極30が配置されることにより、電極30どうしの間に隙間なく(言い換えると、無駄なスペースなく)、当接面3aの大きさや形状に合わせて電極30の個数や並べ方が調整されて、当接面3aの全面を埋めるように電極30が配置され得る。
【0031】
また、内側電極31とそれを取り囲む外側電極32とからなる電極30を複数個集合させて電極集合体を構成することにより、電極配置の拡張性や配置の自由度を高めることができ、美容関連効果などを付与する部位に応じて電極集合体全体の形状を自由に調整することが可能となる。具体的には例えば、電極集合体全体の形状を、本実施形態のように凡そ円形の範囲を埋めるような形状としたり、凡そ楕円の範囲を埋めるような形状としたり、凡そ長方形の範囲を埋めるような形状としたり、さらに、凡そ瓢箪形の範囲を埋めるような形状としたりしてもよい。
【0032】
複数の電極30は、相互に隣り合う3個の電極30のそれぞれの内側電極31の中心を結んだ三角形が直角三角形とは異なる態様でアレイ状に配置されている(図5(A)参照)。このように配置することにより、隣り合う電極30どうしの間に生じる隙間に他の電極30を配置して電極30どうしの隙間を小さくしたり無くしたりする配置が実現される。これにより、相互に隣り合う3個の電極30のそれぞれの内側電極31の中心を結んだ三角形が直角三角形となる態様でアレイ状に配置されている場合(図5(B)参照)と比べて、複数の電極30を高密度に配置することが可能となる。電極30どうしの隙間(具体的には、外側電極32どうしの隙間)は、電気が流れない領域であるので、電気偏りが抑制された均一な電気印加の実現にとっての障害となる。
【0033】
内側電極31と、内側電極31と離間して内側電極31を取り囲む外側電極32とによって対の電極を構成することにより、内側電極31や外側電極32の大きさを変更したり外側電極32の幅を変更したりすることによって対の電極の間隔(即ち、内側電極31の外周縁と外側電極32の内周縁との間の寸法d)が任意の値に調整され得る。内側電極31の外周縁と外側電極32の内周縁との間の寸法dは、特定の値には限定されないものの、好ましくは1.0mm以上3.0mm以下であり、さらに好ましくは1.6mm以上2.0mm以下であり、最も好ましくは1.8mm程度である。
【0034】
電極30は、本実施形態のように、内側電極31の外周縁の形状と外側電極32の内周縁の形状とが、どちらも直線で相互に平行な部分を有することが好ましい。このようにすることにより、一層良好に電気偏りが抑制された均一な電気印加が実現される。
【0035】
本実施形態では、図6に示すように、電極30の内側電極31の外周縁の形状と外側電極32の内周縁の形状とが、どちらも直線で相互に平行な部分SPを有し、この平行な部分SPにおける内側電極31と外側電極32との間の領域(図6中の濃い灰色の網掛部分である「直線平行出力領域」)では一層良好に電気偏りが抑制された均一な電気印加が実現される。また、内側電極31の外周縁の形状並びに外側電極32の内周縁の形状が角丸正六角形に形成されることにより、内側電極31の外周縁と外側電極32の内周縁との間の寸法dが、内側電極31と外側電極32との間の空間Sの全体にわたって一定であり、角丸の部分における内側電極31と外側電極32との間の領域(図6中の直線平行出力領域どうしの間の部分である「等間隔出力領域」)では電気偏りが抑制された均一な電気印加が実現される。
【0036】
電極30各々の内側電極31の面積に対する外側電極32の面積の比(「内外電極面積の比」と称する)が、所定の範囲であることが好ましい。内外電極面積の比は、好ましくは0.8以上1.2以下であり、より好ましくは0.9以上1.1以下であり、さらに好ましくは0.95以上1.05以下であり、最も好ましくは1.0である。内外電極面積の比が適切な範囲に設定されることにより、内側電極31と外側電極32との間における良好な電気印加が実現される。
【0037】
複数の電極30の内側電極31の面積と外側電極32の面積との合計に対する内側電極31と外側電極32との間の空間Sの面積の合計の比(「電極面積に対する電極間面積の比」と称する)が、所定の範囲であることが好ましい。電極面積に対する電極間面積の比は、好ましくは0.6以上1.6以下であり、より好ましくは0.6以上1.2以下であり、さらに好ましくは0.7以上1.1以下であり、最も好ましくは0.9以上1.0以下である。電極面積に対する電極間面積の比が適切な範囲に設定されることにより、内側電極31と外側電極32との間における良好な電気印加が実現される。
【0038】
肌処理装置1は、制御系(図示せず)として、制御装置と出力生成部とを含む。制御装置は、マイクロコンピュータのようなコンピュータにより形成されてもよい。出力生成部は、電源に電気的に接続される電気回路により形成されてよい。なお、電源は、肌処理装置1に内蔵される電源であってもよいし、外部電源であってもよい。
【0039】
制御装置は、ユーザインターフェイス20からのユーザ入力に基づいて、出力生成部を制御することで、複数の電極30それぞれの内側電極31と外側電極32とを介して出力波形を生成する。
【0040】
出力生成部は、複数の電極30それぞれの内側電極31及び外側電極32に電気的に接続される。出力生成部は、制御装置による制御下で、複数の電極30それぞれの内側電極31と外側電極32とを対の電極として利用して、それぞれの電極の対を介して所望の美容関連作用(具体的には例えば、加温作用、筋電気刺激作用)などを有する所定の周波数の出力波形であってユーザの肌に印加可能な出力波形を生成する。
【0041】
出力生成部が生成する出力波形の周波数は、特定の値に限定されるものではなく、例えば所望の美容関連効果などに適した周波数が考慮されるなどしたうえで適当な周波数に適宜設定される。出力生成部が生成する出力波形の周波数は、例えば、10kHzから5MHz程度の範囲のうちのいずれかの値に設定されるようにしてもよい。なお、出力生成部は、周波数の異なる2種類以上の出力波形を生成するようにしてもよい。
【0042】
(肌処理装置の特性)
肌処理装置の特性を確認するために実施した検証試験の結果を下記に整理する。
【0043】
本検証試験では、本発明に係る肌処理装置に相当する特性を有する電極装置(実施例)による加温作用と、本発明に係る肌処理装置に相当する特性を有しない電極装置(比較例)による加温作用とが比較された。
【0044】
実施例は、上述の実施形態の肌処理装置1と同様の複数の電極30を有する電極装置(ヘッド部3)である(図2(A)参照)。実施例のヘッド部3では、複数の電極30それぞれの内側電極31と外側電極32とが対の電極として利用されて、それぞれの電極の対を介して周波数165kHzの出力波形が同時に生成される。
【0045】
比較例の電極装置50は、正面視において扇形の第1電極51、第2電極52、第3電極53、及び第4電極54を有する(図7参照)。比較例の電極装置50では、第1電極51及び第3電極53のそれぞれと第2電極52及び第4電極54のそれぞれとを対の電極として、合計4組の電極の対が利用されて、それぞれの電極の対を介して周波数165kHzの出力波形が同時に生成される。
【0046】
本検証試験では、実施例のヘッド部3と比較例の電極装置50とのそれぞれにより与えられる加温作用によるゲルシートの平面的な熱分布/温度分布が検証された。実施例のヘッド部3と比較例の電極装置50とのそれぞれによりゲルシートに加温作用が与えられ、サーモカメラによりゲルシートの温度が計測された。
【0047】
出力波形の印加開始から7秒後においてサーモカメラによって計測された平面的な温度分布(具体的には、サーモ画像)を図8に示す。図8では、符号Hで指し示す色が濃い部分が、他の部分よりも温度が高くなっている。なお、本検証試験で観測される温度分布は、ゲルシートの、実施例のヘッド部3の当接面3a又は比較例の電極装置50の電極側の面50aと当接している面の反対側の面から観測される温度分布である。
【0048】
図8に示す結果から、対の電極どうしの間の領域において温度が高くなっており、実施例のヘッド部3の温度分布(同図(A))は、比較例の電極装置50の温度分布(同図(B))と比べて、高い温度の部分が広範囲にわたって高密度で分布していることが確認される。このことから、実施例によれば、比較的細かい内側電極31と外側電極32との対の電極を有する複数の(更に言えば、多数の)電極30を間隔を詰めて密集させて近距離でまんべんなく配置することにより、むらなく均一に効率のよい加温作用が実現されることが確認される。すなわち、実施例によれば、電気偏りが抑制された均一な電気印加が実現されるので、所望の美容関連効果などをむらなく均一に与えることが可能であることが確認される。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の具体的な構成態様は上述の実施形態に限定されるものではなく、上述の実施形態に本発明の要旨を逸脱しない範囲の変形や変更などが加えられた形態も本発明に含まれる。また、上述の実施形態の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【0050】
例えば、上述した実施形態では、複数の電極30それぞれが、内側電極31の外周縁の形状が正六角形に形成されるとともに、外側電極32の内周縁及び外周縁の形状が正六角形に形成されるようにしているが、内側電極31の外周縁の形状や外側電極32の内周縁及び外周縁の形状は、正六角形に限定されるものではなく、縦長若しくは横長の六角形でもよく、或いは、三角以上の他の正多角形又は縦長若しくは横長の多角形でもよく、さらに、円形や楕円形でもよい。なお、内側電極の外周縁の形状と外側電極の内周縁の形状とは、相互に相似する多角形や楕円形であることが好ましいものの、相互に相似しない多角形や楕円形であってもよい。
【0051】
例えば、図9に示すように、複数の電極30それぞれが、すべて、内側電極31の外周縁の形状が三角形に形成されるとともに、外側電極32の内周縁及び外周縁の形状が三角形に形成されるようにしてもよい。図9に示す例では、内側電極31の中心と外側電極32の中心とが一致するように内側電極31の径方向外側に外側電極32が配置され、内側電極31の外周縁と外側電極32の内周縁との間の寸法が、内側電極31と外側電極32との間の空間の全体にわたって一定であるようにしている。すなわち、図9に示す例では、複数の電極30がすべて同じ形状であり、内側電極31と外側電極32との間の空間が直線平行出力領域と等間隔出力領域とから構成される。図9に示す例では、複数の電極30が、隣り合う電極30の外側電極32のうちの少なくとも一部が共通である態様で配置されており、また、相互に隣り合う3個の電極30のそれぞれの内側電極31の中心を結んだ三角形が直角三角形とは異なる態様でアレイ状に配置されている。
【0052】
また、図10に示すように、複数の電極30それぞれが、すべて、内側電極31の外周縁の形状が正五角形に形成されるとともに、外側電極32の内周縁及び外周縁の形状が正五角形に形成されるようにしてもよい。図10に示す例では、内側電極31の中心と外側電極32の中心とが一致するように内側電極31の径方向外側に外側電極32が配置され、内側電極31の外周縁と外側電極32の内周縁との間の寸法が、内側電極31と外側電極32との間の空間の全体にわたって一定であるようにしている。すなわち、図10に示す例では、複数の電極30がすべて同じ形状であり、内側電極31と外側電極32との間の空間が直線平行出力領域と等間隔出力領域とから構成される。図10に示す例では、複数の電極30が、隣り合う電極30の外側電極32のうちの少なくとも一部が共通である態様で配置されており、また、相互に隣り合う3個の電極30のそれぞれの内側電極31の中心を結んだ三角形が直角三角形とは異なる態様でアレイ状に配置されている。
【0053】
また、図11に示すように、複数の電極30それぞれが、すべて、内側電極31の外周縁の形状が正八角形に形成されるとともに、外側電極32の内周縁及び外周縁の形状が正八角形に形成されるようにしてもよい。図11に示す例では、内側電極31の中心と外側電極32の中心とが一致するように内側電極31の径方向外側に外側電極32が配置され、内側電極31の外周縁と外側電極32の内周縁との間の寸法が、内側電極31と外側電極32との間の空間の全体にわたって一定であるようにしている。すなわち、図11に示す例では、複数の電極30がすべて同じ形状であり、内側電極31と外側電極32との間の空間が直線平行出力領域と等間隔出力領域とから構成される。図11に示す例では、複数の電極30が、隣り合う電極30の外側電極32のうちの少なくとも一部が共通である態様でアレイ状に配置されている。
【0054】
また、図12に示すように、複数の電極30それぞれが、すべて、内側電極31の外周縁の形状が正円形に形成されるとともに、外側電極32の内周縁及び外周縁の形状が正円形に形成されるようにしてもよい。図12に示す例では、内側電極31の中心と外側電極32の中心とが一致するように内側電極31の径方向外側に外側電極32が配置され、内側電極31の外周縁と外側電極32の内周縁との間の寸法が、内側電極31と外側電極32との間の空間の全体にわたって一定であるようにしている。すなわち、図12に示す例では、複数の電極30がすべて同じ形状である。図12に示す例では、複数の電極30が、隣り合う電極30の外側電極32のうちの少なくとも一部が共通である態様で配置されており、また、相互に隣り合う3個の電極30のそれぞれの内側電極31の中心を結んだ三角形が直角三角形とは異なる態様でアレイ状に配置されている。
【0055】
また、上述した実施形態では複数の電極30(具体的には、内側電極31の外周縁並びに外側電極32の内周縁及び外周縁)のすべてが同じ形状であるようにしているが、複数の電極として、相互に異なる2種類以上の形状の電極が配置されるようにしてもよい。例えば、図13に示すように、複数の電極のうちの一部が八角形の電極30Aであり、これら八角形の電極30Aどうしの間に四角形の電極30Bが配置されるようにしてもよい。図13に示す例では、内側電極31と外側電極32との間の距離が、ヘッド部3の当接面3aの全面(複数の電極の集合体の全面)にわたって均一になっている。内側電極31と外側電極32との間の距離が場所によって異なると、美容関連作用にむらが生じる(例えば、加温作用にむらが生じ、早く温まる部分と温まるまでに時間がかかる部分とが生じる)。これに対して、内側電極31と外側電極32との間の距離をヘッド部3の当接面3aの全面にわたって均一とすることにより、むらなく均一に効率のよい美容関連作用を実現することができる。ただし、例えば、ヘッド部3の当接面3aの中心から外側へと向けて美容関連作用が徐々に与えられるように、内側電極31と外側電極32との間の距離を、ヘッド部3の当接面3aの中心に配置される電極では小さくするとともに外側に配置される電極では中心よりも大きくするようにしてもよい。
【0056】
また、筋電気刺激作用を与える外縁電極33の形状及び配置も、上述した実施形態における形状及び配置(具体的には、図2(A)における形状及び配置)に限定されるものではなく、例えば、図3(A)、図9、又は図14に示すような形状及び配置であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 肌処理装置
2 把持部
3 ヘッド部
3a 当接面
C 当接面の中心
20 ユーザインターフェイス
30 電極(加温作用を与える電極)
31 内側電極
32 外側電極
S 内側電極と外側電極との間の空間
33 外縁電極(筋電気刺激作用を与える電極)
50 電極装置(比較例)
50a 電極側の面
51 第1電極
52 第2電極
53 第3電極
54 第4電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図14