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特開2024-53770蓄電デバイスの製造方法及び蓄電デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053770
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】蓄電デバイスの製造方法及び蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/15 20210101AFI20240409BHJP
   H01M 50/169 20210101ALI20240409BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20240409BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20240409BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20240409BHJP
【FI】
H01M50/15
H01M50/169
H01M50/103
H01G11/84
H01G11/78
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160186
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友紀
(72)【発明者】
【氏名】内田 陽三
(72)【発明者】
【氏名】江原 強
(72)【発明者】
【氏名】土屋 詔一
(72)【発明者】
【氏名】浅井 正孝
(72)【発明者】
【氏名】浅野 剛史
(72)【発明者】
【氏名】内村 将大
(72)【発明者】
【氏名】松本 繁
(72)【発明者】
【氏名】永野 泰章
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
【Fターム(参考)】
5E078AA14
5E078AB01
5E078HA05
5E078HA13
5E078LA07
5H011AA09
5H011CC02
5H011DD01
5H011DD13
(57)【要約】
【課題】レーザ溶接の際に蓋部材の周縁部を溶け易くすると共に、蓋部材と端子部材の間の樹脂部材に焦げ部が生じるのを抑制できる蓄電デバイスの製造方法等を提供すること。
【解決手段】蓄電デバイス1の製造方法は、蓋部材30に樹脂部材70,80を介して端子部材50,60を一体化した蓋アセンブリ7のうち蓋部材30で、本体部材20の開口部21を塞ぐ閉塞工程S3と、本体部材20の開口部21及び蓋部材30の周縁部31にレーザ光LBを照射して全周にわたりレーザ溶接する溶接工程S4とを備える。蓋部材30は、周縁部31と挿通孔周囲部33,34との間で、かつ、溶融金属部18Zから離間する位置に設けられ、レーザ光LBの照射部位Pから挿通孔周囲部33,34に向かう熱移動を抑制する凹溝35を有する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する有底筒状の本体部材、及び、上記開口部を閉塞する形態で上記本体部材に全周にわたりレーザ溶接された蓋部材を有するケースと、
上記蓋部材を蓋厚み方向に貫通する挿通孔内に挿通された端子部材と、
上記蓋部材の上記挿通孔を囲む挿通孔周囲部と上記端子部材との間を絶縁しつつ、上記蓋部材の上記挿通孔周囲部及び上記端子部材にそれぞれ接合した樹脂部材と、を備える
蓄電デバイスの製造方法であって、
上記蓋部材に上記樹脂部材を介して上記端子部材を一体化した蓋アセンブリのうち上記蓋部材で、上記本体部材の上記開口部を塞ぐ閉塞工程と、
上記蓋部材の上記蓋厚み方向の外側からレーザ光を照射し、上記本体部材の上記開口部及び上記蓋部材の周縁部を溶融させ混合し溶融金属部を形成した後に固化させて溶融固化部を形成するレーザ溶接を全周にわたり行って、上記ケースを形成する溶接工程と、を備え、
上記蓋部材は、
上記周縁部と上記挿通孔周囲部との間で、かつ、上記溶融金属部から離間する位置に設けられ、上記蓋厚み方向に凹み、上記レーザ光の照射部位から上記挿通孔周囲部に向かう熱移動を抑制する凹溝を有する
蓄電デバイスの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、
前記本体部材の前記開口部は、
一対の長辺開口部と一対の短辺開口部とを有する矩形環状であり、
前記蓋部材の前記周縁部は、
一対の長辺周縁部と一対の短辺周縁部とを有する矩形環状であり、
前記閉塞工程は、
上記蓋部材の上記一対の長辺周縁部を上記本体部材の上記一対の長辺開口部に、上記蓋部材の上記一対の短辺周縁部を上記本体部材の上記一対の短辺開口部にそれぞれ対向させて、上記蓋部材で上記本体部材の上記開口部を塞ぎ、
前記凹溝は、
上記蓋部材のうち、上記一対の長辺周縁部と前記挿通孔周囲部との間にそれぞれ位置し、上記長辺周縁部に沿って延びる一対の長辺凹溝を含む
蓄電デバイスの製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、
前記凹溝は、
前記蓋部材の外側面に設けられ、前記周縁部側に位置する周縁部側内面と、前記挿通孔周囲部側に位置する孔周囲部側内面とを有する外側凹溝を含み、
上記外側凹溝の上記周縁部側内面は、
前記蓋厚み方向の上記外側面側ほど上記周縁部から遠ざかる形態を有する
蓄電デバイスの製造方法。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、
前記凹溝は、
前記蓋部材の内側面に設けられた内側凹溝を含む
蓄電デバイスの製造方法。
【請求項5】
開口部を有する有底筒状の本体部材、及び、上記開口部を閉塞する形態で上記本体部材に全周にわたりレーザ溶接された蓋部材を有するケースと、
上記蓋部材を蓋厚み方向に貫通する挿通孔内に挿通された端子部材と、
上記蓋部材の上記挿通孔を囲む挿通孔周囲部と上記端子部材との間を絶縁しつつ、上記蓋部材の上記挿通孔周囲部及び上記端子部材にそれぞれ接合した樹脂部材と、を備える
蓄電デバイスであって、
上記蓋部材は、
上記蓋部材の周縁部と上記挿通孔周囲部との間で、かつ、レーザ光の照射で形成される溶融金属部から離間する位置に設けられ、上記蓋厚み方向に凹み、上記レーザ光の照射部位から上記挿通孔周囲部に向かう熱移動を抑制する凹溝を有し、
上記樹脂部材は、
上記蓋部材の上記凹溝により、焦げ部の発生が抑制された
蓄電デバイス。
【請求項6】
請求項5に記載の蓄電デバイスであって、
前記本体部材の前記開口部は、
一対の長辺開口部と一対の短辺開口部とを有する矩形環状であり、
前記蓋部材の前記周縁部は、
一対の長辺周縁部と一対の短辺周縁部とを有する矩形環状であり、
前記凹溝は、
上記蓋部材のうち、上記一対の長辺周縁部と前記挿通孔周囲部との間にそれぞれ位置し、上記長辺周縁部に沿って延びる一対の長辺凹溝を含み、
前記樹脂部材は、
上記蓋部材の上記長辺凹溝により、上記樹脂部材のうち上記長辺周縁部に近接する周縁近接部位で、焦げ部の発生が抑制された
蓄電デバイス。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の蓄電デバイスであって、
前記凹溝は、
前記蓋部材の外側面に設けられ、前記周縁部側に位置する周縁部側内面と、前記挿通孔周囲部側に位置する孔周囲部側内面とを有する外側凹溝を含み、
上記外側凹溝の上記周縁部側内面は、
前記蓋厚み方向の上記外側面側ほど上記周縁部から遠ざかる形態を有する
蓄電デバイス。
【請求項8】
請求項5または請求項6に記載の蓄電デバイスであって、
前記凹溝は、
前記蓋部材の内側面に設けられた内側凹溝を含む
蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケースに樹脂部材を介して端子部材が固設された、電池やキャパシタなどの蓄電デバイスの製造方法及び蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電デバイスとして、直方体箱状のケースに樹脂部材を介して正負の端子部材がそれぞれ固設された角形の電池が知られている。具体的には、ケースは、矩形環状の開口部を有する有底角筒状の本体部材と、開口部を閉塞する形態で本体部材に全周にわたりレーザ溶接された矩形板状の蓋部材とからなる。また正負の端子部材は、蓋部材に穿設された一対の挿通孔内にそれぞれ挿通されて、ケース内部からケース外部に延びている。そして、一対の樹脂部材が、蓋部材と正負の端子部材との間をそれぞれ絶縁しつつ、蓋部材及び端子部材にそれぞれ接合している。関連する従来技術として、例えば特許文献1,2が挙げられる(特許文献1の図1図2等、及び、特許文献2の図1図4等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-086813号公報
【特許文献2】特開2004-039445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような電池の製造過程において、蓋部材で本体部材の開口部を塞ぎ、本体部材の開口部と蓋部材の周縁部とを全周にわたりレーザ溶接するに当たり、蓋部材の周縁部近傍に熱絶縁用の凹溝を設けて、レーザ光の照射部位からの放熱を抑制し、蓋部材の周縁部を溶け易くして溶接性を向上させることが考えられる。
しかしながら、このように蓋部材の周縁部近傍に凹溝を設けると、レーザ光の照射で形成される溶融金属部をなす溶融金属の一部が、この凹溝に流れ込むことがある。すると、溶融金属部が、凹溝に流れ込まない場合とは異なる形状となる。具体的には、溶融金属の一部が凹溝に流れ込むことで、凹溝側に向かうほど低くなる斜面を有する形状となることがある。そして、この斜面に照射されたレーザ光の高強度の散乱光が、蓋部材と端子部材との間を絶縁する樹脂部材に照射されて、樹脂部材に焦げ部が生じることが判ってきた。
【0005】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、本体部材と蓋部材とをレーザ溶接してケースを形成する際に、蓋部材の周縁部を溶け易くすると共に、レーザ光の散乱光により、蓋部材と端子部材との間を絶縁する樹脂部材に焦げ部が生じるのを抑制することができる蓄電デバイスの製造方法及び蓄電デバイスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記課題を解決するための本発明の一態様は、開口部を有する有底筒状の本体部材、及び、上記開口部を閉塞する形態で上記本体部材に全周にわたりレーザ溶接された蓋部材を有するケースと、上記蓋部材を蓋厚み方向に貫通する挿通孔内に挿通された端子部材と、上記蓋部材の上記挿通孔を囲む挿通孔周囲部と上記端子部材との間を絶縁しつつ、上記蓋部材の上記挿通孔周囲部及び上記端子部材にそれぞれ接合した樹脂部材と、を備える蓄電デバイスの製造方法であって、上記蓋部材に上記樹脂部材を介して上記端子部材を一体化した蓋アセンブリのうち上記蓋部材で、上記本体部材の上記開口部を塞ぐ閉塞工程と、上記蓋部材の上記蓋厚み方向の外側からレーザ光を照射し、上記本体部材の上記開口部及び上記蓋部材の周縁部を溶融させ混合し溶融金属部を形成した後に固化させて溶融固化部を形成するレーザ溶接を全周にわたり行って、上記ケースを形成する溶接工程と、を備え、上記蓋部材は、上記周縁部と上記挿通孔周囲部との間で、かつ、上記溶融金属部から離間する位置に設けられ、上記蓋厚み方向に凹み、上記レーザ光の照射部位から上記挿通孔周囲部に向かう熱移動を抑制する凹溝を有する蓄電デバイスの製造方法である。
【0007】
上述の蓄電デバイスの製造方法では、周縁部と挿通孔周囲部との間に上述の凹溝を設けた蓋部材を用いる。これにより、溶接工程において、レーザ光の照射部位から挿通孔周囲部に向かう熱移動を凹溝で抑制し、蓋部材の周縁部を溶け易くして溶接性を向上させることができる。一方、この凹溝は、レーザ光の照射で形成される溶融金属部から離間し、溶融金属が凹溝に流れ込まない。このため、溶融金属が凹溝に流れ込んで溶融金属部が凹溝側ほど低い斜面を有する形状となることが防止され、溶融金属部に照射されたレーザ光の散乱光が、樹脂部材に照射されて、樹脂部材に焦げ部が生じるのを防止することができる。
【0008】
なお、蓋部材の「凹溝」は、例えば、周縁部と挿通孔周囲部との間に、周縁部に沿って周縁部の全周にわたり設けてもよいし、周縁部に沿って周縁部の一部にのみ設けてもよい。また「凹溝」は、蓋部材の外側面に設けてもよいし、蓋部材の内側面に設けてもよい。
「蓄電デバイス」としては、例えば、リチウムイオン二次電池等の二次電池や、リチウムイオンキャパシタ等のキャパシタ、全固体電池などが挙げられる
【0009】
(2)更に(1)に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、前記本体部材の前記開口部は、一対の長辺開口部と一対の短辺開口部とを有する矩形環状であり、前記蓋部材の前記周縁部は、一対の長辺周縁部と一対の短辺周縁部とを有する矩形環状であり、前記閉塞工程は、上記蓋部材の上記一対の長辺周縁部を上記本体部材の上記一対の長辺開口部に、上記蓋部材の上記一対の短辺周縁部を上記本体部材の上記一対の短辺開口部にそれぞれ対向させて、上記蓋部材で上記本体部材の上記開口部を塞ぎ、前記凹溝は、上記蓋部材のうち、上記一対の長辺周縁部と前記挿通孔周囲部との間にそれぞれ位置し、上記長辺周縁部に沿って延びる一対の長辺凹溝を含む蓄電デバイスの製造方法とすると良い。
【0010】
この製造方法では、本体部材の矩形環状の開口部と蓋部材の矩形環状の周縁部とをレーザ溶接する。この場合、蓋部材に設けた樹脂部材は、蓋部材の周縁部のうち長辺周縁部の一部に近接する形態とされ易く、樹脂部材のうち長辺周縁部に近接する周縁近接部位の近傍において、溶融金属が凹溝に流れ込んで溶融金属部が凹溝側ほど低い斜面を有する形状となることにより、溶融金属部に照射されたレーザ光の散乱光が、樹脂部材(周縁近接部位)に照射されて、この部位に焦げ部が発生し易い。レーザ光の散乱光が樹脂部材(周縁近接部位)まで届く距離が短いからである。
これに対し、上述の蓄電デバイスの製造方法では、蓋部材に設ける凹溝は、長辺周縁部と挿通孔周囲部との間に位置して長辺周縁部に沿って延びる長辺凹溝を含んでいる。このため、樹脂部材のうち、特に焦げ部が生じ易い、長辺周縁部に近接する周縁近接部位で、焦げ部が生じるのを抑制することができる。
【0011】
(3)更に(1)または(2)に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、前記凹溝は、前記蓋部材の外側面に設けられ、前記周縁部側に位置する周縁部側内面と、前記挿通孔周囲部側に位置する孔周囲部側内面とを有する外側凹溝を含み、上記外側凹溝の上記周縁部側内面は、前記蓋厚み方向の上記外側面側ほど上記周縁部から遠ざかる形態を有する蓄電デバイスの製造方法とすると良い。
【0012】
上述の蓄電デバイスの製造方法では、蓋部材の外側面に、周縁部側内面が蓋厚み方向の外側面側ほど周縁部から遠ざかる形態の外側凹溝を設けている。このため、溶融金属部から外側凹溝の開口までの距離を長くして、溶融金属の外側凹溝への流れ込みを防止しつつ、周縁部側内面が蓋厚み方向に延びる外側凹溝を設ける場合よりも、外側凹溝の内部空間をレーザ光の照射部位に近い位置(周縁部に近い位置)に設けることができる。これにより、レーザ光の照射部位から挿通孔周囲部に向かう熱移動をより効果的に抑制することができ、溶接性を向上させることができる。
【0013】
(4)更に(1)または(2)に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、前記凹溝は、前記蓋部材の内側面に設けられた内側凹溝を含む蓄電デバイスの製造方法とすると良い。
【0014】
上述の蓄電デバイスの製造方法では、蓋部材の内側面に内側凹溝を設けている。内側凹溝では、外側凹溝のように溶融金属が流れ込むおそれがない。このため、内側凹溝は、外側凹溝を設ける場合よりも、レーザ光の照射部位に近い位置(周縁部に近い位置)に設けることができるので、レーザ光の照射部位から挿通孔周囲部に向かう熱移動をより効果的に抑制することができ、溶接性を向上させることができる。
【0015】
(5)また他の態様は、開口部を有する有底筒状の本体部材、及び、上記開口部を閉塞する形態で上記本体部材に全周にわたりレーザ溶接された蓋部材を有するケースと、上記蓋部材を蓋厚み方向に貫通する挿通孔内に挿通された端子部材と、上記蓋部材の上記挿通孔を囲む挿通孔周囲部と上記端子部材との間を絶縁しつつ、上記蓋部材の上記挿通孔周囲部及び上記端子部材にそれぞれ接合した樹脂部材と、を備える蓄電デバイスであって、上記蓋部材は、上記蓋部材の周縁部と上記挿通孔周囲部との間で、かつ、レーザ光の照射で形成される溶融金属部から離間する位置に設けられ、上記蓋厚み方向に凹み、上記レーザ光の照射部位から上記挿通孔周囲部に向かう熱移動を抑制する凹溝を有し、上記樹脂部材は、上記蓋部材の上記凹溝により、焦げ部の発生が抑制された蓄電デバイスである。
【0016】
上述の蓄電デバイスでは、樹脂部材における焦げ部の発生が抑制されているので、樹脂部材の本来の外観を保つことができる上、発生した焦げ部を経由して蓋部材と端子部材との間の絶縁抵抗が低下するのを抑制することができる。
【0017】
(6)更に(5)に記載の蓄電デバイスであって、前記本体部材の前記開口部は、一対の長辺開口部と一対の短辺開口部とを有する矩形環状であり、前記蓋部材の前記周縁部は、一対の長辺周縁部と一対の短辺周縁部とを有する矩形環状であり、前記凹溝は、上記蓋部材のうち、上記一対の長辺周縁部と前記挿通孔周囲部との間にそれぞれ位置し、上記長辺周縁部に沿って延びる一対の長辺凹溝を含み、前記樹脂部材は、上記蓋部材の上記長辺凹溝により、上記樹脂部材のうち上記長辺周縁部に近接する周縁近接部位で、焦げ部の発生が抑制された蓄電デバイスとすると良い。
【0018】
上述の蓄電デバイスでは、樹脂部材のうち、特に焦げ部が発生し易い、蓋部材の長辺周縁部に近接する周縁近接部位で、焦げ部の発生が抑制されているので、この周縁近接部位においても樹脂部材の本来の外観を保つことができると共に、絶縁抵抗が低下するのを抑制することができる。
【0019】
(7)更に(5)または(6)に記載の蓄電デバイスであって、前記凹溝は、前記蓋部材の外側面に設けられ、前記周縁部側に位置する周縁部側内面と、前記挿通孔周囲部側に位置する孔周囲部側内面とを有する外側凹溝を含み、上記外側凹溝の上記周縁部側内面は、前記蓋厚み方向の上記外側面側ほど上記周縁部から遠ざかる形態を有する蓄電デバイスとすると良い。
【0020】
上述の蓄電デバイスでは、上述の外側凹溝を含む凹溝により、樹脂部材における焦げ部の発生が抑制されているので、樹脂部材の本来の外観を保つことができる上、発生した焦げ部を経由して蓋部材と端子部材との間の絶縁抵抗が低下するのを抑制することができる。
【0021】
(8)更に(5)または(6)に記載の蓄電デバイスであって、前記凹溝は、前記蓋部材の内側面に設けられた内側凹溝を含む蓄電デバイスとすると良い。
【0022】
上述の蓄電デバイスでは、内側凹溝を含む凹溝により、樹脂部材における焦げ部の発生が抑制されているので、樹脂部材の本来の外観を保つことができる上、発生した焦げ部を経由して蓋部材と端子部材との間の絶縁抵抗が低下するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態1に係る電池の斜視図である。
図2】実施形態1に係る電池の電池高さ方向及び電池幅方向に沿う断面図である。
図3】実施形態1に係る電池の本体部材の開口部及び蓋部材の周縁部近傍における部分拡大断面図であり、(a)は電池高さ方向及び電池幅方向に沿う部分拡大断面図であり、(b)は電池高さ方向及び電池厚み方向に沿う部分拡大断面図である。
図4】実施形態1に係る電池の製造方法のフローチャートである。
図5】実施形態1に係る電池の製造方法に関し、蓋アセンブリ形成工程で形成される蓋アセンブリを示す説明図である。
図6】実施形態1に係る電池の製造方法に関し、閉塞工程において、蓋アセンブリをなす蓋部材で、本体部材の開口部を閉塞した様子を示す説明図である。
図7】実施形態1に係る電池の製造方法に関し、溶接工程において、本体部材の開口部(長辺開口部)と蓋部材の周縁部(長辺周縁部)とをレーザ溶接する様子を示す説明図であり、(a)はレーザ光の照射を開始した様子を示す説明図であり、(b)はレーザ光の照射で溶融金属部が形成された様子を示す説明図である。
図8】実施形態3に係る電池の本体部材の開口部及び蓋部材の周縁部近傍における、図3に対応した部分拡大断面図であり、(a)は電池高さ方向及び電池幅方向に沿う部分拡大断面図であり、(b)は電池高さ方向及び電池厚み方向に沿う部分拡大断面図である。
図9】実施形態3に係る電池の製造方法に関し、蓋形成工程において、(a)は蓋部材に凹溝形成のための第1プレスを行う前の様子を示す説明図であり、(b)は第1プレスを行った様子を示す説明図である。
図10】実施形態3に係る電池の製造方法に関し、蓋形成工程において、(a)は蓋部材に第2プレスを行う前の様子を示す説明図であり、(b)は第2プレスを行った様子を示す説明図である。
図11】実施形態3に係る電池の製造方法に関し、蓋形成工程において、(a)は蓋部材に鍛造を行う前の様子を示す説明図であり、(b)は鍛造を行って凹溝を形成した様子を示す説明図である。
図12】比較形態に係る電池の製造方法に関し、図7に対応した説明図であり、(a)はレーザ光の照射を開始した様子を示す説明図であり、(b)はレーザ光の照射で溶融金属部が形成された様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施形態1)
以下、本発明の第1の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。図1に本実施形態1に係る電池(蓄電デバイス)1の斜視図を、図2に電池1の全体の断面図を、図3に電池1のうち本体部材20の開口部21及び蓋部材30の周縁部31近傍の部分拡大断面図を示す。なお、以下では、電池1の電池高さ方向AH、電池幅方向BH及び電池厚み方向CHを、図1図3に示す方向と定めて説明する。この電池1は、ハイブリッドカーやプラグインハイブリッドカー、電気自動車等の車両などに搭載される角型(直方体状)で密閉型のリチウムイオン二次電池である。
【0025】
電池1は、ケース10と、ケース10内に収容された電極体40と、ケース10のケース上部11に樹脂部材70,80を介して支持された正負の端子部材50,60等から構成されている。電極体40は、ケース10内で、絶縁フィルムからなり、電池高さ方向AHの上側AH1に開口する袋状の絶縁ホルダ5に覆われている。またケース10内には、電解液3が収容されており、その一部は電極体40内に含浸され、残りはケース10のケース底部12上に溜まっている。
【0026】
このうちケース10は、金属(本実施形態1ではアルミニウム)からなる直方体箱状であり、電池高さ方向AHの上側AH1に位置する矩形状のケース上部11と、これに対向し、電池高さ方向AHの下側AH2に位置する矩形状のケース底部12と、これらの間を結ぶ4つの矩形状のケース側部(一対のケース長側部13,14及び一対のケース短側部15,16)とを有する。
【0027】
ケース10は、本体部材20と蓋部材30とから構成されている。本体部材20は、電池高さ方向AHの上側AH1に、一対の長辺開口部21bと一対の短辺開口部21cとを有する矩形環状の開口部21を有する有底角筒状であり、ケース10のうちケース底部12、ケース長側部13,14及びケース短側部15,16をなしている。一方、蓋部材30は、外側面30m及び内側面30nを有する矩形板状であり、ケース10のケース上部11をなしている。蓋部材30は、本体部材20の開口部21を閉塞する形態で本体部材20に全周にわたりレーザ溶接されており、蓋部材30と本体部材20との間に溶融固化部18が形成されている。具体的には、本体部材20の矩形環状の開口部21のうち一対の長辺開口部21bと、蓋部材30の矩形環状の周縁部31のうち一対の長辺周縁部31bとがそれぞれ溶接されて溶融固化部18が形成されている(図3(b)参照)。また本体部材20の開口部21のうち一対の短辺開口部21cと、蓋部材30の周縁部31のうち一対の短辺周縁部31cとがそれぞれ溶接されて溶融固化部18が形成されている(図3(a)参照)。
【0028】
蓋部材30には、ケース10の内圧が開弁圧を超えたときに破断して開弁する安全弁38が設けられている。また蓋部材30には、ケース10の内外を連通する注液孔30kが形成されており、アルミニウムからなる円板状の封止部材39で気密に封止されている。
また蓋部材30のうち、電池幅方向BHの一方側BH1の端部近傍及び他方側BH2の端部近傍には、それぞれ蓋厚み方向DHに貫通する矩形状の挿通孔33h,34hが設けられている。一方の挿通孔33h内には、アルミニウムからなる正極の端子部材50が挿通されており、樹脂部材70を介して蓋部材30と絶縁された状態で蓋部材30に固設されている。また他方の挿通孔34h内には、銅からなる負極の端子部材60が挿通されており、樹脂部材80を介して蓋部材30と絶縁された状態で蓋部材30に固設されている。
【0029】
これらの端子部材50,60は、それぞれ蓋部材30上に配置された矩形板状の外部端子部51,61と、主にケース10内に配置され、蓋部材30の挿通孔33h,34hを経由して外部端子部51,61に繋がる内部端子部52,62とを有する。正極の内部端子部52は、ケース10内で電極体40の正極タブ40aに接合し導通している。一方、負極の内部端子部62は、ケース10内で電極体40の負極タブ40bに接合し導通している。
【0030】
正極の樹脂部材70は、蓋部材30の挿通孔33hを囲み、一対の長辺周囲部33eと一対の短辺周囲部33fとを有する矩形環状の挿通孔周囲部33と、端子部材50との間を絶縁しつつ、蓋部材30の挿通孔周囲部33及び端子部材50にそれぞれ接合している。同様に、負極の樹脂部材80は、蓋部材30の挿通孔34hを囲み、一対の長辺周囲部34eと一対の短辺周囲部34fとを有する矩形環状の挿通孔周囲部34と、端子部材60との間を絶縁しつつ、蓋部材30の挿通孔周囲部34及び端子部材60にそれぞれ接合している。
【0031】
これらの樹脂部材70,80は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)からなり、蓋部材30上に配置された矩形板状の外部絶縁部71,81と、ケース10の内部及び蓋部材30の挿通孔33h,34h内に配置され、外部絶縁部71,81と繋がる内部絶縁部72,82とを有する。このうち外部絶縁部71,81は、端子部材50,60の外部端子部51,61と蓋部材30の挿通孔周囲部33,34との間を絶縁している。一方、内部絶縁部72,82は、端子部材50,60の内部端子部52,62と蓋部材30の挿通孔周囲部33,34との間を絶縁している。
【0032】
また蓋部材30の外側面30mのうち、周縁部31と挿通孔周囲部33,34との間で、かつ、後述するレーザ光LBの照射(図7(a)(b)参照)で形成される溶融金属部18Zから離間する位置には、蓋厚み方向DHに電池高さ方向AHの下側AH2に向けて凹む凹溝(外側凹溝)35が、周縁部31に沿って周縁部31の全周にわたり設けられている。
【0033】
即ち、本実施形態1の凹溝35は、蓋部材30のうち、周縁部31の一対の長辺周縁部31bと挿通孔周囲部33,34の一対の長辺周囲部33e,34eとの間にそれぞれ位置し、長辺周縁部31bに沿って延びる長辺凹溝36(図1及び図3(b)参照)と、蓋部材30のうち、周縁部31の一対の短辺周縁部31cと挿通孔周囲部33,34の一対の短辺周囲部33fとの間にそれぞれ位置し、短辺周縁部31cに沿って延びる短辺凹溝37(図1及び図3(a)参照)とを有する。
【0034】
また本実施形態1の凹溝35は、断面がU字状である。即ち、凹溝35は、蓋部材30の周縁部31側(図3(a)(b)中、左方)に位置して蓋厚み方向DHに延びる周縁部側内面35aと、蓋部材30の挿通孔周囲部33,34側図3(a)(b)中、左方)に位置して周縁部側内面35aに平行に蓋厚み方向DHに延びる孔周囲部側内面35bと、これら周縁部側内面35a及び孔周囲部側内面35bにそれぞれ直交し、蓋部材30の外側面30m及び内側面30nに平行な底面35cとを有する。
そして、このような凹溝35により、後述するように、レーザ光LBの照射部位Pから挿通孔周囲部33,34に向かう熱移動が抑制されており、かつ、樹脂部材70,80における焦げ部BP(図12(b)参照)の発生が防止されている。
【0035】
電極体40は、扁平な直方体状であり、各々電池高さ方向AH及び電池幅方向BHに拡がる矩形状をなす、複数の正極板41と複数の負極板42とを、樹脂製の多孔質膜からなるセパレータ43を介して交互に電池厚み方向CHに積層した積層型の電極体である。各正極板41は、上側AH1に延びる正極集電部41rを有し、各々の正極集電部41r同士が厚み方向に重なって前述の正極タブ40aを形成している。この正極タブ40aは、前述のように正極の端子部材50の内部端子部52に接続している。また各負極板42は、上側AH1に延びる負極集電部42rを有し、各々の負極集電部42r同士が厚み方向に重なって前述の負極タブ40bを形成している。この負極タブ40bは、前述のように負極の端子部材60の内部端子部62に接続している。
【0036】
本実施形態1の電池1では、凹溝35により、樹脂部材70,80における焦げ部BPの発生が防止されているので、樹脂部材70,80の本来の外観を保つことができる上、発生した焦げ部BPを経由して蓋部材30と端子部材50,60との間の絶縁抵抗が低下するのを抑制することができる。特に本実施形態1では、凹溝35の長辺凹溝36により、樹脂部材70,80のうち、焦げ部BPが発生し易い、蓋部材30の長辺周縁部31bに近接する周縁近接部位70e,80eでも、焦げ部BPの発生が防止されているので、この周縁近接部位70e,80eにおいても樹脂部材70,80の本来の外観を保つことができると共に、絶縁抵抗が低下するのを抑制することができる。
【0037】
次いで、上記電池1の製造方法について説明する(図4図7参照)。まず「蓋形成工程S1」(図4参照)において、蓋部材30を形成する。即ち、アルミニウム板を用意し、プレスにより、これを矩形状に打ち抜くと共に、注液孔30k、挿通孔33h,34h、凹溝35及び安全弁38をそれぞれ設けて、蓋部材30を得る。
【0038】
次に「蓋アセンブリ形成工程S2」(図4参照)において、蓋アセンブリ7を形成する(図5参照)。即ち、端子部材50,60を更に用意し、樹脂部材70,80をインサート成形して、蓋部材30に樹脂部材70,80を介して端子部材50,60を一体化させる。具体的には、正極の端子部材50はアルミニウム板を、負極の端子部材60は銅板を、それぞれプレス加工して得る。そして、蓋部材30の挿通孔33h,34hに端子部材50,60を挿通した状態で、樹脂部材70,80をインサート成形して、蓋部材30に樹脂部材70,80を介して端子部材50,60を一体化させる。
【0039】
次に、正極板41、負極板42及びセパレータ43を積層して形成した電極体40を用意し、電極体40の正極タブ40a及び負極タブ40bに、上述の蓋部材30に一体化させた端子部材50,60の内部端子部52,62をそれぞれ溶接して接続する。その後、この電極体40を袋状の絶縁ホルダ5で包む。かくして、蓋部材30、端子部材50,60、樹脂部材70,80、電極体40及び絶縁ホルダ5からなる蓋アセンブリ7が形成される。
【0040】
次に「閉塞工程S3」(図4参照)において、本体部材20を用意し、蓋アセンブリ7のうち、絶縁ホルダ5で覆われた電極体40を本体部材20内に挿入し、蓋部材30で本体部材20の開口部21を塞ぐ(図6参照)。具体的には、蓋部材30の周縁部31のうち一対の長辺周縁部31bを、それぞれ本体部材20の開口部21のうち一対の長辺開口部21bに対向させると共に、蓋部材30の周縁部31のうち一対の短辺周縁部31cを、それぞれ本体部材20の開口部21のうち一対の短辺開口部21cに対向させて、蓋部材30で本体部材20の開口部21を塞ぐ。
【0041】
次に「溶接工程S4」(図4参照)において、蓋部材30の蓋厚み方向DHの外側DH1(電池高さ方向AHの上側AH1)から、本体部材20の開口部21及び蓋部材30の周縁部31にレーザ光LBを照射し、開口部21及び周縁部31を溶融させ混合し溶融金属部18Zを形成した後に固化させて溶融固化部18を形成するレーザ溶接を全周にわたり行って、ケース10を形成する(図7(a)(b)参照)。
その際、蓋部材30のうち、周縁部31と挿通孔周囲部33,34との間には、熱絶縁用の凹溝35が設けられているため、レーザ光LBの照射部位Pから挿通孔周囲部33,34に向かう熱移動を凹溝35により抑制し、蓋部材30の周縁部31を溶け易くして溶接性を向上させることができる。
【0042】
ここで、図12(a)(b)に比較形態を示すように、周縁部31と凹溝935との距離が短い場合、レーザ光LBの照射で形成された溶融金属部918Zをなす溶融金属MLが、この凹溝935に流れ込む。すると、溶融金属部918Zの形状が凹溝935側(図12中、右方)ほど低位の斜面918Zmを有する形状となる。このため、この斜面918Zmに照射されたレーザ光LBの散乱光LCが、樹脂部材70,80に照射されて、樹脂部材70,80に焦げ部BPが発生し易い。特に蓋部材30に設けた樹脂部材70,80は、蓋部材30の周縁部31のうち長辺周縁部31bの一部に近接している。このため、樹脂部材70,80のうち、蓋部材30の周縁部31の長辺周縁部31bに対向して近接する周縁近接部位70e,80eには、高強度の散乱光LCが照射されるため、特に焦げ部BPが発生し易い。
【0043】
これに対し、本実施形態1(図7(a)(b)参照)では、凹溝35は、長辺凹溝36及び短辺凹溝37のいずれも、周縁部31から十分に離間した位置に形成されているため、レーザ光LBの照射で形成される溶融金属部18Zから離間し、溶融金属MLが凹溝35に流れ込まない。このため、溶融金属MLが凹溝35に流れ込んで溶融金属部18Zの形状が凹溝35側ほど低位(図7において下方)の斜面を有する形状となることが防止され、溶融金属部18Zに照射されたレーザ光LBの散乱光LCが、樹脂部材70,80に照射されて、樹脂部材70,80に(周縁近接部位70e,80eおいても)焦げ部BPが生じるのを防止することができる。
【0044】
次に「注液・封止工程S5」において、電解液3を注液孔30kを通じてケース10内に注液し、電解液3を電極体40内に含浸させる。その後、注液孔30kを外部から封止部材39で覆い、封止部材39を全周にわたり蓋部材30に溶接して、封止部材39と蓋部材30との間を気密に封止する。
次に「初充電・エージング工程S6」において、この電池1に充電装置(不図示)を接続して、電池1に初充電を行う。その後、初充電した電池1を所定時間にわたり静置して、電池1をエージングする。かくして、電池1が完成する。
【0045】
本実施形態1の電池1の製造方法では、周縁部31と挿通孔周囲部33,34との間に凹溝35を設けた蓋部材30を用いる。これにより、溶接工程S4において、レーザ光LBの照射部位Pから挿通孔周囲部33,34に向かう熱移動を凹溝35で抑制し、蓋部材30の周縁部31を溶け易くして溶接性を向上させることができる。一方、この凹溝35は、溶融金属部18Zから離間し、溶融金属MLが凹溝35に流れ込まない。このため、溶融金属MLが凹溝35に流れ込んで溶融金属部18Zが凹溝35側ほど低位の斜面を有する形状となることが防止され、溶融金属部18Zに照射されたレーザ光LBの散乱光LCが、樹脂部材70,80に照射されて、樹脂部材70,80に焦げ部BPが生じるのを防止できる。
更に本実施形態1では、凹溝35は、長辺周縁部31bと挿通孔周囲部33,34との間に位置して長辺周縁部31bに沿って延びる長辺凹溝36を含んでいる。このため、樹脂部材70,80のうち、特に焦げ部BPが生じ易い、長辺周縁部31bに近接する周縁近接部位70e,80eで、焦げ部BPが生じるのを抑制することができる。
【0046】
(実施形態2)
次いで、第2の実施形態について説明する。なお、実施形態1と同様な部分の説明は、省略または簡略化する。実施形態1の電池1では、蓋部材30の外側面30mに凹溝(外側凹溝)35を設けた。これに対し、本実施形態2の電池100では、図3及び図7に破線で示すように、凹溝(外側凹溝)35に代えて、蓋部材30の内側面30nに凹溝(内側凹溝)135を設けている。
【0047】
即ち、蓋部材30の内側面30nのうち、周縁部31と挿通孔周囲部33,34との間で、かつ、レーザ光LBの照射で形成される溶融金属部18Zから離間する位置に、蓋厚み方向DHに電池高さ方向AHの上側AH1に向けて凹む凹溝(内側凹溝)135を、周縁部31に沿って周縁部31の全周にわたり設けている。この凹溝135は、実施形態1の凹溝35と同様に、周縁部31の長辺周縁部31bに沿って延びる長辺凹溝136(図3(b)参照)と、周縁部31の短辺周縁部31cに沿って延びる短辺凹溝137(図3(a)参照)とを有する。
【0048】
また本実施形態2の凹溝135も、断面がU字状である。即ち、凹溝135は、蓋部材30の周縁部31側に位置して蓋厚み方向DHに延びる周縁部側内面135aと、蓋部材30の挿通孔周囲部33,34側に位置して周縁部側内面135aに平行に蓋厚み方向DHに延びる孔周囲部側内面135bと、これら周縁部側内面135a及び孔周囲部側内面135bにそれぞれ直交し、蓋部材30の外側面30m及び内側面30nに平行な底面135cとを有する。
【0049】
本実施形態2の電池100でも、溶接工程S4において、レーザ光LBの照射部位Pから挿通孔周囲部33,34に向かう熱移動を凹溝135で抑制し、蓋部材30の周縁部31を溶け易くして溶接性を向上させることができる。一方、この凹溝135は、溶融金属部18Zから離間し、溶融金属MLが凹溝135に流れ込まないので、実施形態1と同様に、レーザ光LBの散乱光LCにより樹脂部材70,80に焦げ部BPが生じるのを防止することができる。
特に本実施形態2では、凹溝135は、蓋部材30の内側面30nに設けた内側凹溝であるため、外側凹溝のように溶融金属MLが流れ込むおそれがない。このため、外側凹溝を設ける場合よりも、レーザ光LBの照射部位Pに近い位置(周縁部31に近い位置)に凹溝135を設けることができるので、レーザ光LBの照射部位Pからの熱移動をより効果的に抑制し、溶接性を向上させることができる。その他、実施形態1と同様な部分は、実施形態1と同様な作用効果を奏する。
【0050】
(実施形態3)
次いで、第3の実施形態について説明する。なお、実施形態1または2と同様な部分の説明は、省略または簡略化する。実施形態1の電池1では、蓋部材30の外側面30mに設けた凹溝(外側凹溝)35を、周縁部側内面35a及び孔周囲部側内面35bが蓋厚み方向DHに互いに平行で延びる、断面がU字状の形態とした(図3及び図7参照)。これに対し本実施形態3の電池200では、蓋部材30の外側面30mに設ける凹溝(外側凹溝)235を、実施形態1の凹溝35とは異なる形態としている(図8(a)(b)参照)。
【0051】
即ち、本実施形態3の凹溝235は、実施形態1の凹溝35と同様に、蓋部材30の外側面30mのうち、周縁部31と挿通孔周囲部33,34との間で、かつ、溶融金属部18Zから離間する位置に、周縁部31の全周にわたり設けられている。また凹溝235は、周縁部31の長辺周縁部31bに沿って延びる長辺凹溝236(図8(b)参照)と、周縁部31の短辺周縁部31cに沿って延びる短辺凹溝237(図8(a)参照)とを有する。
【0052】
但し、本実施形態3の凹溝235は、実施形態1の凹溝35と断面形状が異なる。具体的には、この凹溝235は、蓋部材30の周縁部31側(図8(a)(b)中、左方)に位置する周縁部側内面235aと、蓋部材30の挿通孔周囲部33,34側(図8(a)(b)中、右方)に位置する孔周囲部側内面235bと、これらを結ぶ底面235cとを有する。このうち孔周囲部側内面235bは、実施形態1の凹溝35の孔周囲部側内面35bと同様に、蓋厚み方向DHに延びる。また底面235cは、実施形態1の凹溝35の底面35cと同様に、蓋部材30の外側面30m及び内側面30nに平行に延びる。一方、周縁部側内面235aは、蓋厚み方向DHの外側面30m側(電池高さ方向AHの上側AH1)ほど周縁部31から遠ざかる(図8(a)(b)中、右方)平面となっている。
【0053】
なお、このような凹溝235は、以下の手法により形成する(図9図11参照)。即ち、蓋形成工程S1において、まず、凹溝235を有しない蓋部材30Zを形成する。具体的には、アルミニウム板を用意し、プレスにより、これを矩形状に打ち抜くと共に、注液孔30k、挿通孔33h,34h及び安全弁38をそれぞれ設けて、凹溝235を有しない蓋部材30Zを得る(図9(a)参照)。
【0054】
次に、この凹溝形成前の蓋部材30Zに、凹溝235を形成するための第1プレスを行う。具体的には、図9(a)に示すように、蓋部材30Zの外側面30mに第1金型KAを、蓋部材30Zの内側面30nに第2金型KBを配置して、第1金型KA及び第2金型KBで蓋部材30Zを蓋厚み方向DHに挟む。そして、図9(b)に示すように、第3金型KCを蓋厚み方向DHに蓋部材30Z及び第2金型KBに向けて図9(b)中、下方に移動させ、第3金型KCと第2金型KBで蓋部材30Zのうち周縁部31Zを含む周縁近傍部32Zをプレスして薄くする。
【0055】
その後、この蓋部材30Zの周縁近傍部32Zに第2プレスを行う。具体的には、図10(a)に示すように、蓋部材30Zの外側面30mに第4金型KDを、蓋部材30Zの内側面30nに第5金型KEを配置して、第4金型KD及び第5金型KEで蓋部材30Zを蓋厚み方向DHに挟む。そして、図10(b)に示すように、第6金型KFを蓋厚み方向DHに蓋部材30Z及び第5金型KEに向けて図10(b)中、下方に移動させ、第6金型KFと第4金型KDで蓋部材30Zの周縁近傍部32Zをプレスして、周縁近傍部32Zに凹部32Zvを設ける。この凹部32Zvは、断面が概ねV字状であり、蓋厚み方向DHの外側面30m側ほど周縁部31Zに近づく平面をなす周縁部側内面32Zvaと、蓋厚み方向DHに延びる孔周囲部側内面32Zvbとを有する。
【0056】
その後、この蓋部材30Zの周縁近傍部32Zに鍛造を行う。具体的には、図11(a)に示すように、蓋部材30Zの外側面30mに第7金型KGを、蓋部材30Zの内側面30nに第8金型KHを配置して、第7金型KG及び第8金型KHで蓋部材30Zを蓋厚み方向DHに挟む。そして、図11(b)に示すように、第9金型KIを蓋厚み方向DHに蓋部材30Z及び第7金型KGに向けて図11(b)中、上方に移動させ、蓋部材30Zの周縁近傍部32Zを叩いて、周縁近傍部32Zを塑性変形させる。これにより、周縁部側内面235aが蓋厚み方向DHの外側面30m側ほど周縁部31から遠ざかる形態の凹溝235を有する蓋部材30を形成する。その後は、実施形態1と同様に、蓋アセンブリ形成工程S2以降の各工程を行って、電池200を製造する。
【0057】
本実施形態3の電池200でも、溶接工程S4において、レーザ光LBの照射部位Pから挿通孔周囲部33,34に向かう熱移動を凹溝235で抑制し、蓋部材30の周縁部31を溶け易くして溶接性を向上させることができる。一方、この凹溝235は、溶融金属部18Zから離間し、溶融金属MLが凹溝235に流れ込まないので、実施形態1と同様に、レーザ光LBの散乱光LCにより樹脂部材70,80に焦げ部BPが生じるのを防止することができる。
【0058】
特に本実施形態3では、凹溝235の周縁部側内面235aを、蓋厚み方向DHの外側面30m側ほど蓋部材30の周縁部31から遠ざかる形態としているので、溶融金属部18Zから凹溝235の開口までの距離を長くして、溶融金属MLの凹溝235への流れ込みを防止しつつ、実施形態1の凹溝35よりも、凹溝235の内部空間をレーザ光LBの照射部位Pに近い位置(周縁部31に近い位置)に設けることができる。これにより、レーザ光LBの照射部位Pから挿通孔周囲部33,34に向かう熱移動をより効果的に抑制することができ、溶接性を向上させることができる。
【0059】
以上において、本発明を実施形態1~3に即して説明したが、本発明は実施形態1~3に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば実施形態1~3では、ケース10内に収容する電極体として、積層型の電極体40を例示したが、電極体は扁平状捲回型の電極体でもよい。また複数の電極体をケース内に収容してもよい。
【符号の説明】
【0060】
1,100,200 電池(蓄電デバイス)
7 蓋アセンブリ
10 ケース
18 溶融固化部
18Z 溶融金属部
20 本体部材
21 開口部
21b 長辺開口部
21c 短辺開口部
30 蓋部材
31 周縁部
31b 長辺周縁部
31c 短辺周縁部
33,34 挿通孔周囲部
33h,34h 挿通孔
33e,34e 長辺周囲部
33f,34f 短辺周囲部
35,235 凹溝(外側凹溝)
135 凹溝(内側凹溝)
35a,135a,235a 周縁部側内面
35b,135b,235b 孔周囲部側内面
35c,135c,235c 底面
36,136,236 長辺凹溝
37,137,237 短辺凹溝
40 電極体
50,60 端子部材
70,80 樹脂部材
70e,80e (樹脂部材のうち蓋部材の長辺周縁部に近接する)周縁近接部位
DH 蓋厚み方向
DH1 (蓋厚み方向の)外側
DH2 (蓋厚み方向の)内側
LB レーザ光
LC 散乱光
P 照射部位
ML 溶融金属
BP 焦げ部
S1 蓋形成工程
S2 蓋アセンブリ形成工程
S3 閉塞工程
S4 溶接工程
S5 注液・封止工程
S6 初充電・エージング工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12