(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005378
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】送風装置、その製造方法および前記送風装置を備えた燃焼装置
(51)【国際特許分類】
F04D 29/28 20060101AFI20240110BHJP
F04D 29/62 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
F04D29/28 K
F04D29/62 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105536
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】岩本 幹大
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 太平
(72)【発明者】
【氏名】中村 明信
(72)【発明者】
【氏名】田合 貴大
(72)【発明者】
【氏名】廣津 誠
(72)【発明者】
【氏名】大下 亘
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB12
3H130AB26
3H130AB46
3H130AC27
3H130BA95C
3H130CB05
3H130CB09
3H130CB11
3H130DD01Z
3H130EA02C
3H130EB01C
3H130EB02C
3H130ED01C
3H130ED02B
(57)【要約】
【課題】羽根車の製造に際して所定の孔部を設けるための加工用のパンチが破損し易くなるなどの不具合を適切に防止または抑制することが可能な送風装置を提供する。
【解決手段】送風装置Aの羽根車Iは、複数の羽根板5を所定の前後方向において挟む前側プレート7Aおよび後側プレート7Bを備え、これらのうちの少なくとも一方は、羽根車Iの軸心直交面OSに対して傾斜した傾斜壁部74、および複数の羽根板5に突設されている固定用の爪部51が挿入される複数の孔部70を有し、かつ傾斜壁部74に設けられた複数の孔部70のうち、少なくとも一部の孔部70は、横幅が相違する幅広部71と幅狭部72とが繋がった特定の孔部70aとされ、爪部51の少なくとも一部は、幅狭部72に挿入されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動回転される羽根車を備えており、
前記羽根車は、複数の羽根板と、これら複数の羽根板を前記羽根車の中心軸長方向としての前後方向において挟む前側プレートおよび後側プレートと、を備えており、
前記前側プレートおよび前記後側プレートの少なくとも一方は、前記羽根車の軸心直交面に対して傾斜した傾斜壁部、および前記複数の羽根板に突設されている固定用の爪部が挿入される複数の孔部を有し、かつこれら複数の孔部として、前記傾斜壁部に設けられた複数の孔部を有する、送風装置であって、
前記傾斜壁部に設けられた前記複数の孔部のうち、少なくとも一部の孔部は、横幅が相違する幅広部と幅狭部とが繋がった特定の孔部とされ、かつ前記爪部の少なくとも一部は、前記幅狭部に挿入されていることを特徴とする、送風装置。
【請求項2】
請求項1に記載の送風装置であって、
前記幅広部は、前記幅狭部よりも縦幅が短くされている、送風装置。
【請求項3】
請求項1に記載の送風装置であって、
前記前側プレートは、中央部に吸気用の開口部が形成され、かつ後部寄り領域よりも前部寄り領域の方が、外径が小さいベルマウス状であり、
前記前側プレートの前記前部寄り領域には、前記後部寄り領域よりも前記軸心直交面に対する傾斜角が大きい前記傾斜壁部が含まれており、
前記前部寄り領域の前記傾斜壁部に、前記特定の孔部が設けられている、送風装置。
【請求項4】
請求項3に記載の送風装置であって、
前記前部寄り領域の前記傾斜壁部に設けられている前記特定の孔部は、前部に前記幅広部が位置し、かつ後部に前記幅狭部が位置する構成である、送風装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の送風装置を製造するための製造方法であって、
前記前側プレートおよび前記後側プレートの少なくとも一方の原型部材として、前記傾斜壁部が未形成の平板状のプレート材を準備し、かつこの平板状のプレート材に、前記特定の孔部の前記幅広部を設ける第1の工程と、
この第1の工程の後において、前記プレート材にプレス加工を施し、前記幅広部を含む領域に前記傾斜壁部を形成する第2の工程と、
この第2の工程の後において、前記特定の孔部の前記幅狭部を設ける第3の工程と、
を有していることを特徴とする、送風装置の製造方法。
【請求項6】
バーナと、このバーナに燃焼用の気体を供給するための送風装置と、を備えている、燃焼装置であって、
前記送風装置として、請求項1ないし4のいずれかに記載の送風装置が用いられていることを特徴とする、燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心型送風装置などの送風装置、その製造方法および前記送風装置を備えた燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送風装置の具体例として、特許文献1,2に記載されたものがある。
これらの文献に記載された送風装置は、モータにより駆動回転される羽根車を備えており、この羽根車は、羽根車の周方向に並ぶ複数の羽根板が、前側プレートおよび後側プレート(前側シュラウド、後側シュラウドとも称される)によって挟まれている。ここで、羽根板、前側プレート、および後側プレートの三者を互いに固定連結させるための手段として、前側プレートおよび後側プレートには、複数の孔部が設けられている一方、羽根板には、それら複数の孔部に挿入されてカシメられる複数の爪部が突設されている。
このような構成によれば、羽根板、前側プレート、および後側プレートの固定連結を図るための手段として、それらとは異なる追加部材を別途用いる必要がなく、羽根車の構成の簡素化、軽量化、ならびに製造コストの低減化などを図る上で好ましい。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、未だ改善すべき余地があった。
【0004】
すなわち、羽根車の構成要素である前側プレートは、たとえば後部寄り領域よりも前部寄り領域の方が小径である中空円錐台状のベルマウス状とされるのが一般的である。このような前側プレートは、羽根車の軸心直交面(軸長方向に交差する直交面)に対して傾斜した傾斜壁部を有している。ところが、このような傾斜壁部に対し、羽根板の爪部を挿入するための複数の孔部を設ける場合に、その加工に用いるパンチに偏荷重が作用し易く、いわゆるパンチ折れと称される破損を生じ易くなっていた。このような事態は、孔部が設けられる部分の傾斜が大きいほど生じ易く、また孔部が設けられる箇所に板厚の不均一さが生じている場合にはより顕著となっていた。このようなことは適切に解消されることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-21405号公報
【特許文献2】特開平6-336997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、羽根車の製造に際して所定の孔部を設けるための加工用のパンチが破損し易くなるなどの不具合を適切に防止または抑制することが可能な送風装置、その製造方法および前記送風装置を備えた燃焼装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明の第1の側面により提供され送風装置は、駆動回転される羽根車を備えており、前記羽根車は、複数の羽根板と、これら複数の羽根板を前記羽根車の中心軸長方向としての前後方向において挟む前側プレートおよび後側プレートと、を備えており、前記前側プ
レートおよび前記後側プレートの少なくとも一方は、前記羽根車の軸心直交面に対して傾斜した傾斜壁部、および前記複数の羽根板に突設されている固定用の爪部が挿入される複数の孔部を有し、かつこれら複数の孔部として、前記傾斜壁部に設けられた複数の孔部を有する、送風装置であって、前記傾斜壁部に設けられた前記複数の孔部のうち、少なくとも一部の孔部は、横幅が相違する幅広部と幅狭部とが繋がった特定の孔部とされ、かつ前記爪部の少なくとも一部は、前記幅狭部に挿入されていることを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、前記特定の孔部は、幅広部と幅狭部とが繋がった構成であるため、前記特定の孔部を設ける手法としては、まず幅広部を設け、かつその後に幅狭部を設ける手法を用いることができる。幅狭部は、羽根板の固定用の爪部が挿入された場合に、特定の孔部と爪部との相互間の遊びを少なくし、前側プレートおよび後側プレートに対する羽根板の位置決め固定を適切に図るのに役立つ。一方、幅広部が先に設けられ、かつその後に幅広部に幅狭部が繋がるように幅狭部を設ければ、この幅狭部を設ける際に加工用のパンチに作用する荷重(負荷)を小さくすることが可能である。幅広部は、従来の孔部に相当するサイズに形成する必要はなく、その縦幅は短寸でよいため、この幅広部を設ける際には、その加工用のパンチに作用する荷重をやはり小さくすることが可能である。このようなことから、特定の孔部を設ける場合に、加工用のパンチが破損し易くなる不具合を適切に解消することが可能である。
【0010】
本発明において、好ましくは、前記幅広部は、前記幅狭部よりも縦幅が短くされている。
【0011】
このような構成によれば、幅広部がより加工し易くなる。また、幅狭部は長くされているため、この幅狭部と、この幅狭部に挿入される羽根板の固定用の爪部との位置決めをより的確に行なうことが可能となる。
【0012】
本発明において、好ましくは、前記前側プレートは、中央部に吸気用の開口部が形成され、かつ後部寄り領域よりも前部寄り領域の方が、外径が小さいベルマウス状であり、前記前側プレートの前記前部寄り領域には、前記後部寄り領域よりも前記軸心直交面に対する傾斜角が大きい前記傾斜壁部が含まれており、前記前部寄り領域の前記傾斜壁部に、前記特定の孔部が設けられている。
【0013】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、前記した前側プレートの前部寄り領域には、後部寄り領域よりも傾斜角が大きい傾斜壁部が含まれている。このような傾斜壁部に、孔部を設ける場合には、本来的には、加工用のパンチに偏荷重が作用し易くなる。これに対し、本発明の前記構成によれば、そのようなことを適切に解消することが可能である。
【0014】
本発明において、好ましくは、前記前部寄り領域の前記傾斜壁部に設けられている前記特定の孔部は、前部に前記幅広部が位置し、かつ後部に前記幅狭部が位置する構成である。
【0015】
このような構成によれば、前記特定の孔部の幅狭部を設ける場合に、加工用のパンチに偏荷重が作用することを一層適切に解消することが可能となる。
【0016】
本発明の第2の側面により提供される送風装置の製造方法は、本発明の第1の側面により提供される送風装置を製造するための製造方法であって、前記前側プレートおよび前記後側プレートの少なくとも一方の原型部材として、前記傾斜壁部が未形成の平板状のプレート材を準備し、かつこの平板状のプレート材に、前記特定の孔部の前記幅広部を設ける
第1の工程と、この第1の工程の後において、前記プレート材にプレス加工を施し、前記幅広部を含む領域に前記傾斜壁部を形成する第2の工程と、この第2の工程の後において、前記特定の孔部の前記幅狭部を設ける第3の工程と、を有していることを特徴としている。
【0017】
このような構成によれば、本発明の第1の側面により提供される送風装置を適切に製造できることに加え、次のような効果が得られる。
すなわち、特定の孔部の幅広部は、前側プレートおよび後側プレートの少なくとも一方が、原型部材としての未だ平板状のプレート材である状態において設けられるため、この幅広部の加工用のパンチに大きな荷重(負荷)が作用しないようにすることが可能である。また、特定の孔部の幅狭部は、前記平板状のプレート材にプレス加工が施されることにより、前側プレートおよび後側プレートの少なくとも一方が傾斜壁部を有する形態に形成された後に設けられるものの、前記した幅広部に繋げて設けられるため、この幅狭部の加工用のパンチには、やはり大きな荷重が作用しないようにすることが可能である。したがって、特定の孔部を設ける場合に、加工用のパンチが破損し易くなる虞を適切に解消することが可能である。
一方、特定の孔部の幅広部を設けた後に、平板状のプレート材にプレス加工を施して前側プレートまたは後側プレートを形成すると、幅広部の位置に多少の位置ずれを生じる虞があるが、幅広部は、その横幅が大きめであるが故にそのような位置ずれが生じたとしても、この幅広部に対して幅狭部を繋げて設けることが可能である。また、特定の孔部は、前記したプレス加工が終了した後に設けられる幅狭部の存在により、位置精度を高いものとすることが可能である。したがって、特定の孔部と爪部との位置決め精度を高くし、羽根板が前側プレートや後側プレートに対して不当な配置となることを適切に防止することが可能である。
【0018】
本発明の第3の側面により提供される燃焼装置は、バーナと、このバーナに燃焼用の気体を供給するための送風装置と、を備えている、燃焼装置であって、前記送風装置として、本発明の第1の側面により提供される送風装置が用いられていることを特徴としている。
【0019】
このような構成によれば、本発明の第1の側面により提供される送風装置について述べたのと同様な効果が得られる。
【0020】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る送風装置の一例を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示す送風装置の羽根車の斜視図である。
【
図4】(a)は、
図3のIVa-IVa断面図であり、(b)は、(a)のIVb部拡大断面図であり、(c)は、(b)のIVc-IVc断面図であり、(d)は、(b)の矢視IVd要部平面図であり、(e)は、(d)の構成において爪部が挿入されていない状態の孔部を示す要部平面図であり、(f)は、(a)に示された孔部70bの要部平面図(爪部51bを省略)である。
【
図5】
図1および
図2に示す送風装置を備えて構成された燃焼装置およびこの燃焼装置を利用して構成された給湯装置の一例を示す要部断面図である。
【
図6】(a)は、
図3に示す羽根車の前側プレートの原型部材に相当する平板状のプレート材の一例を示し、(b)は、(a)のVIb-VIb断面図である。
【
図7】(a)は、
図6に示したプレート材にプレス加工が施されて形成された前側プレートの一例を示し、(b)は、(a)のVIIb-VIIb断面図である。
【
図8】(a)は、
図7に示した前側プレートに複数の孔部が設けられた一例を示し、(b)は、(a)のVIIIb-VIIIb断面図である。
【
図9】(a)は、前側プレートに特定の孔部を設ける前の状態の一例を示す要部断面図であり、(b)は、(a)の要部平面図である。
【
図10】(a)は、前側プレートに特定の孔部を設けた状態の一例を示す要部断面図であり、(b)は、(a)の要部平面図である。
【
図11】本発明の実施形態との対比例を示す要部断面図である。
【
図12】(a)~(c)は、本発明の他の例を示す要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0023】
図1および
図2に示す送風装置Aは、遠心型であり、羽根車I、この羽根車Iを内部に収容するケーシング2、および羽根車Iの駆動回転用のモータMを備えている。
【0024】
ケーシング2は、吸気口24が形成された前側壁部21、この前側壁部21に間隔を隔てて対向する後側壁部22、および周壁部20を備えている。後側壁部22には、モータMがビス止めされたモータ取付け板23が、ビス90を用いて取付けられている。モータ取付け板23は、後側壁部22に設けられている羽根車Iの出し入れ用の開口部22aを塞いでいる。周壁部20は、羽根車Iの外周囲を囲み、かつその上部には送風口4aを形成している。羽根車Iの外周部分と周壁部20との相互間には、羽根車Iの後述する羽根間流路61から流出する空気を送風口4aに導く空気流路4が形成されている。
【0025】
図2~
図4によく表れているように、羽根車Iは、前側プレート7A(前側シュラウドとも称される)、後側プレート7B(後側シュラウドとも称される)、および複数の羽根板5を備えている。
【0026】
複数の羽根板5は、薄手の金属板を用いて構成されている。これら複数の羽根板5は、羽根車Iの周方向に間隔を隔てて並んだ放射状配列であって、この羽根車Iの半径方向に略直線状に延びている。本実施形態の送風装置Aは、ラジアルファンとして構成されている。複数の羽根板5の相互間には、羽根間流路61が形成され、また複数の羽根板5よりも羽根車Iの中心寄り領域は、複数の羽根間流路61に連通する中央空間部60となっている。
各羽根板5は、前側プレート7Aおよび後側プレート7Bの相互間に挟まれて固定されている。この固定を図るための手段として、各羽根板5の前側縁部5aおよび後側縁部5bには、複数の固定用の爪部51(51a~51e)が突設されているが、その詳細については後述する。
【0027】
前側プレート7Aは、前部の中央部に吸気用の開口部79が形成され、かつ後部寄り領域73bよりも前部寄り領域73aの方が、外径が小さいベルマウス状(中空略円錐台状)である。この前側プレート7Aの前部寄り領域73aには、傾斜角α(
図4を参照)が比較的大きい傾斜壁部74が含まれている。ここで、傾斜角αは、羽根車Iの軸心直交面OS(羽根車Iの中心線CLが延びる方向に対して直交する面であり、仮想線の直線OSで示す)に対する傾斜角である。
【0028】
前側プレート7Aの略全体は、側面断面視において、適当な曲率Raで外面部が窪むように湾曲している。このため、前側プレート7Aの傾斜角αは、各部において相違している。前側プレート7Aの後部寄り領域73bは、羽根車Iの軸心直交面OSに対する傾斜角αがゼロ、またはゼロに近い小さい角度であるのに対し、前部寄り領域73aの略全域
は、傾斜角αが大きい角度の領域となっている。
【0029】
前側プレート7Aには、羽根板5の固定用の爪部51が挿入される複数の孔部70(70a,70b)が設けられており、これらはいずれも周方向に所定の間隔で並んでいる。複数の孔部70aは、本発明でいう特定の孔部(以降は「特定の孔部70a」と適宜称する)であり、その詳細は後述する。
複数の孔部70bは、本発明でいう特定の孔部には相当しない。これら複数の孔部70bは、前側プレート7Aの後部寄り領域73bに設けられており、
図4(f)に示すように、長矩形状の孔部である。この孔部70bには、羽根板5の前側縁部5aに設けられた爪部51bが挿入され、かつ爪部51bの先端部がカシメられている。このカシメは、爪部51bの先端部をプレス加工によって圧縮する(潰す)ことによりなされ、このカシメにより爪部51bが孔部70bから抜けないようにし得るとともに、それら相互間に無用な遊び(ガタツキ)を生じないようにされている。
【0030】
特定の孔部70aは、前部寄り領域73aの傾斜壁部74に設けられており、
図4(e)に示すように、たとえば略円形の孔部としての幅広部71と、長矩形の孔部としての幅狭部72とが繋がった構成である。幅広部71および幅狭部72のそれぞれの前側プレート7Aの周方向の幅である横幅Wa,Wbは、Wa>Wbの関係にある。また、幅広部71は、幅狭部72の前側に位置しており、幅広部71および幅狭部72の縦幅La,Lbは、La<Lbの関係にある。
【0031】
図4(a)~(d)に示すように、特定の孔部70aには、羽根板5の前側縁部5aに設けられた固定用の爪部51a(51)が挿入されている。この挿入は、爪部51aの少なくとも一部が幅狭部72に挿入され、特定の孔部70aに対する爪部51aの遊び(ガタツキ)が小さくなるように設定されている。好ましくは、幅狭部72の全長域に爪部51aが挿入された状態に設定されている。爪部51aのうち、特定の孔部70aよりも前方(
図4(a)の上方)に突出した部分には、爪部51bについて述べたのと同様なカシメ加工が施され、幅狭部72よりも幅広状のカシメ部55(
図4(c),(d)を参照)が設けられている。
【0032】
後側プレート7Bは、中央部が外周部よりも前方に膨出した略円板状または内部空洞の略円錐台板状である。この後側プレート7Bには、複数の孔部70(70c~70e)がそれぞれ周方向に所定間隔で並ぶようにして設けられ、かつこれらには羽根板5の後側縁部5bに設けられた固定用の爪部51c~51eが挿入されている。孔部70c~70eは、
図4(f)に示した孔部70bと同様な孔部である。爪部51c~51eの先端部にはカシメ加工が施されているが、たとえば爪部51eについては、カシメ加工が省略された構成とすることも可能である。
【0033】
図2において、モータMの駆動軸30には、後側プレート7Bの中央部がナット部材31などを用いて取付けられており、このことにより羽根車IはモータMを利用して回転自在である。羽根車Iの回転時には、ケーシング2の外部空気が吸気口24から中央空間部60に流入してから複数の羽根間流路61を、羽根車Iの半径方向外方側に流れて空気流路4に流出し、その後は送風口4aからケーシング2の外部に流出する。
【0034】
前記した送風装置Aは、たとえば
図5に示すような燃焼装置C、およびこの燃焼装置Cを備えた給湯装置WHの構成要素として用いられる。
同図に示す燃焼装置Cは、ケース80内に収容されたバーナ8と、バーナ8に対して燃焼用空気を供給可能にケース80に取付けられた送風装置Aとを備えている。給湯装置WHは、バーナ8によって発生された燃焼ガスを利用して湯水加熱を行なう熱交換器9を備えている。
【0035】
次に、前記した送風装置Aの製造方法の一例について説明する。
【0036】
送風装置Aの製造に際しては、前側プレート7Aおよび後側プレート7Bを製造した上で、これらの相互間に、複数の羽根板5を挟む。この状態において、固定用の爪部51(51a~51e)を孔部70(70a~70e)に挿入し、カシメ加工を施す。
ここで、前側プレート7Aの製造は、次のような一連の工程を経て実行される。
【0037】
すなわち、まず前側プレート7Aの原型部材として、
図6に示すように、中央部に開口部79が形成された中空円板状のプレート材7A’を準備する。このプレート材7A’は、傾斜壁部74が未だ形成されていない平板状である(ただし、
図6は後述の第1の工程が実施された後の状態を示す)。
前記したプレート材7A’には、複数の幅広部71を設ける(第1の工程)。この工程においては、平板状のプレート材7A’に単に幅広部71としての孔部を設けるだけであるため、その加工に用いられるパンチに大きな荷重(偏荷重を含む)が作用しないようにし、パンチ折れが容易に生じないようにすることが可能である。
【0038】
前記第1の工程の後には、
図7に示すように、プレート材7A’をベルマウス状に形成するためのプレス加工を施す(第2の工程)。この工程により、幅広部71が設けられている領域およびその周辺領域は、傾斜壁部74となる。
その後は、
図8に示すように、複数の幅狭部72を設け、特定の孔部70aを完成させる(第3の工程)。また、他の孔部70bも設ける。
このような一連の工程により、
図2~
図4に示した羽根車Iの前側プレート7Aが適切に製造される。
【0039】
前記した第3の工程においては、
図9および
図10に示すように、パンチ95を利用し、幅広部71に対して幅狭部72を繋げるように設ける。このため、幅狭部72を設ける際に、パンチ95に大きな偏荷重が作用しないようにすることが可能である。
【0040】
図11は、本実施形態との対比例を示している。同図においては、本実施形態とは異なり、前側プレート7Aの傾斜壁部74に、たとえば縦長矩形状の孔部70xを一度の打ち抜き加工により形成した場合を示している。この場合、パンチ95Aの打ち抜き方向における孔部70xの前縁部(上縁部)の厚みtaと、後縁部(下縁部)の厚みtbとは、ta>tbの関係となる(傾斜壁部74の傾斜は各所一定ではなく、前記前縁部側の方が、前記後縁部側よりも傾斜がきつくなっている)。このため、孔部70xの打ち抜き加工時には、打ち抜き加工対象領域が傾斜していることに加え、前記した厚みの差に起因する偏荷重が、パンチ95Aに作用する。したがって、パンチ95Aは破損し易くなる。
【0041】
これに対し、
図9~
図10に示した本実施形態の工程によれば、前記した厚みの差に起因してパンチ95に作用する偏荷重を少なくすることが可能である。また、幅広部71は、特定の孔部70aにおける一種の下孔としての役割を果たすため、このことによってパンチ95に作用する総荷重を減少させることができる。したがって、本実施形態においては、
図11の対比例について述べた不具合を生じないようにすることが可能である。
【0042】
本実施形態の送風装置Aにおいては、前側プレート7Aを前記した一連の製造工程を経て製造することにより、パンチ95(および幅広部71を形成するためのパンチも)を破損し難くすることが可能である他、次に述べるような作用も得られる。
すなわち、本実施形態とは異なり、たとえば
図6に示す段階で、プレート材7A’に特定の孔部70aを構成する幅広部71および幅狭部72の双方を設けると、その後にプレート材7A’にプレス加工を施してベルマウス状に形成した場合に、特定の孔部70aの
全体の位置精度に狂いを生じる虞がある。これでは、羽根板5の位置精度にも狂いを生じることとなり、適切ではない。これに対し、本実施形態によれば、プレート材7A’にプレス加工を施してベルマウス状に形成した後に、特定の孔部70aの幅狭部72を設けるため、その位置精度を高くすることが可能である。プレート材7A’をベルマウス状に形成した場合に、それ以前に設けられている幅広部71の位置に多少の狂いを生じる虞があるものの、幅広部71は、その横幅に余裕代をもった部位であるため、とくに不具合は生じない。
本実施形態の送風装置Aにおいては、幅狭部72を利用し、爪部51aの位置決め固定、ひいては羽根板5の位置決め固定を適切に行なうことが可能である。
【0043】
図12は、本発明の他の実施形態を示している。
同図(a),(b)に示す特定の孔部70f,70gは、幅広部71が、それぞれ矩形状、三角形状とされている。これらの実施形態から理解されるように、本発明でいう幅広部は、種々の形状に形成することが可能である。
同図(c)に示す特定の孔部70hは、幅広部71が幅狭部72の縦幅方向の途中箇所に位置している。本実施形態から理解されるように、本発明でいう幅広部は、幅狭部の前側以外の箇所に位置した構成とすることが可能である。
図12(c)とは、反対に、幅狭部72の後側に幅広部71が位置する構成とすることも可能である。また、前後に離間した2つの幅広部の相互間に、幅狭部72が位置する構成とすることも可能である。
1つの特定の孔部に、複数の幅広部または複数の幅狭部が含まれた構成とされていてもかまわない。
幅広部および幅狭部の具体的な横幅、縦幅なども限定されない。
【0044】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る送風装置および燃焼装置の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。また、本発明に係る送風装置の製造方法の各工程の具体的な構成も、本発明の意図する範囲内において変更自在である。
【0045】
上述の実施形態においては、前側プレート7Aのうち、前部寄り領域73aに位置する孔部70が、幅広部71および幅狭部72を有する特定の孔部とされ、それ以外は特定の孔部とされていないが、本発明はこれに限定されない。前側プレートに傾斜角が大きい傾斜壁部が設けられ、かつこの傾斜壁部に孔部を設ける場合、必要に応じてこの孔部を特定の孔部とすればよい。また、後側プレート7Bに特定の孔部が設けられた構成とすることも可能である。したがって、前側プレート7Aおよび後側プレート7Bのうち、少なくとも一方に、本発明が意図する構成の特定の孔部が設けられていれば、この構成は、本発明の技術的範囲に包摂される。
【0046】
上述の実施形態の送風装置は、複数の羽根のそれぞれが半径方向に直線状に延びたラジアルファンとして構成されているが、これに代えて、たとえば複数の羽根のそれぞれが湾曲した構成のターボファンなどとして構成することもできる。
【0047】
本発明に係る送風装置は、燃焼装置の構成要素として用いることに代えて、それ以外の用途に用いることも可能である。また、本発明に係る燃焼装置は、給湯装置用に限らず、たとえば暖房用などの燃焼装置として構成することも可能であり、燃焼の目的・用途は限定されない。
【符号の説明】
【0048】
A 送風装置
C 燃焼装置
OS 軸心直交面(羽根車の)
I 羽根車
5 羽根板
51 爪部
7A 前側プレート
7A’ プレート材
7B 後側プレート
70 孔部
70a 特定の孔部
71 幅広部(特定の孔部の)
72 幅狭部(特定の孔部の)
73a 前部寄り領域
73b 後部寄り領域
74 傾斜壁部