(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053799
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】基板生産ラインの最適化方法及び最適化プログラム
(51)【国際特許分類】
H05K 13/00 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
H05K13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160227
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】滝西 哲也
【テーマコード(参考)】
5E353
【Fターム(参考)】
5E353AA02
5E353CC01
5E353CC03
5E353CC22
5E353DD02
5E353DD17
5E353DD19
5E353EE89
5E353GG01
5E353HH11
5E353HH51
5E353JJ21
5E353LL04
5E353QQ01
(57)【要約】
【課題】最適化処理の所要時間の短縮と生産効率の向上とを両立させる。
【解決手段】基板生産ラインの最適化方法は、基板を生産するための作業を順番に行う複数のマシンを含む基板生産ラインを用いた基板の生産を最適化する方法であって、基板の生産効率が向上するように生産プログラムを最適化する最適化処理を規定レベルで行う第1最適化ステップ(S1)と、当該最適化処理後の生産プログラムにより基板を生産したときに、他のマシンに比べて生産効率が悪いボトルネックマシンが存在するか否かを判定する判定ステップ(S2,S3)と、ボトルネックマシンが存在すると判定された場合に、最適化を追求するレベルである最適化レベルをボトルネックマシンに対してのみ引き上げ、生産プログラムの最適化処理を再実行する第2最適化ステップ(S7,S8)とを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を生産するための作業を順番に行う複数のマシンを含む基板生産ラインを用いた基板の生産を最適化する方法であって、
前記基板生産ラインを制御する生産プログラムを前記基板の生産効率が向上するように最適化する最適化処理を規定レベルで行う第1最適化ステップと、
前記第1最適化ステップによる最適化処理後の生産プログラムにより前記基板を生産したときに、他のマシンに比べて生産効率が悪いボトルネックマシンが存在するか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおいて前記ボトルネックマシンが存在すると判定された場合に、最適化を追求するレベルである最適化レベルを前記ボトルネックマシンに対してのみ引き上げ、前記生産プログラムの最適化処理を再実行する第2最適化ステップとを含む、基板生産ラインの最適化方法。
【請求項2】
請求項1に記載の基板生産ラインの最適化方法において、
前記判定ステップでは、前記基板1枚あたりの作業時間であるサイクルタイムを前記複数のマシンついてそれぞれ取得し、当該サイクルタイムが最も長いマシンを前記ボトルネックマシンとして特定する、基板生産ラインの最適化方法。
【請求項3】
請求項2に記載の基板生産ラインの最適化方法において、
前記判定ステップでは、前記複数のマシンの各サイクルタイムの平均値である平均サイクルタイムと、前記サイクルタイムが最も長いマシンのサイクルタイムである最長サイクルタイムとを比較して、前記平均サイクルタイムに対し前記最長サイクルタイムが所定の割合以上大きい場合に、前記サイクルタイムが最も長いマシンを前記ボトルネックマシンとして特定する、基板生産ラインの最適化方法。
【請求項4】
請求項2に記載の基板生産ラインの最適化方法において、
前記判定ステップにおいて前記ボトルネックマシンが存在すると判定された場合に、当該ボトルネックマシンの作業を他のマシンに割り振るラインバランス調整を行うバランス調整ステップをさらに含み、
前記第2最適化ステップは、前記バランス調整ステップを経てもなお前記ボトルネックマシンが存在する場合に実行される、基板生産ラインの最適化方法。
【請求項5】
請求項4に記載の基板生産ラインの最適化方法において、
前記バランス調整ステップの後、前記ボトルネックマシンのサイクルタイムを改善する改善余地があるか否かを予測する予測ステップをさらに含み、
前記第2最適化ステップは、前記予測ステップにより前記改善余地があると判定された場合にのみ実行される、基板生産ラインの最適化方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の基板生産ラインの最適化方法において、
第2最適化ステップを実行する前後の各サイクルタイムを含む情報をオペレータに提示する提示ステップをさらに含む、基板生産ラインの最適化方法。
【請求項7】
基板を生産するための作業を順番に行う複数のマシンを含む基板生産ラインを用いた基板の生産を最適化するプログラムであって、
前記基板生産ラインを制御する生産プログラムを前記基板の生産効率が向上するように最適化する最適化処理を規定レベルで行う第1最適化処理と、
前記第1最適化処理後の生産プログラムにより前記基板を生産したときに、他のマシンに比べて生産効率が悪いボトルネックマシンが存在するか否かを判定する判定処理と、
前記判定処理において前記ボトルネックマシンが存在すると判定された場合に、最適化を追求するレベルである最適化レベルを前記ボトルネックマシンに対してのみ引き上げ、前記生産プログラムの最適化処理を再実行する第2最適化処理と、を含む処理をコンピュータに実行させる、基板生産ラインの最適化プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を生産するための作業を順番に行う複数のマシンを含む生産ラインを用いて基板を生産する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のマシンを含む基板生産ラインを用いて基板を生産する場合、各マシンでの作業をできるだけ最適化し、基板の生産効率を向上させることが望まれる。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、基板に部品を実装する複数の部品実装機を含む実装ラインにおいて、各実装機での部品の実装順序や実装機間での担当部品の割振りを最適化する装置が開示されている。この最適化装置によれば、各実装機でのサイクルタイムが短縮かつ均等化され、それによって基板の生産効率が向上するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最適化処理による生産効率の向上と、当該最適化処理に要する所要時間とは、トレードオフの関係にある。言い換えると、生産ラインにおける全ての最適化対象を極限まで最適化するには膨大な時間を要する。そこで、生産効率への影響が大きい最適化対象を選択して当該最適化対象を重点的に最適化することが考えられるが、生産効率への影響が大きい最適化対象をオペレータの判断で選択することは容易ではない。このため、従来は、生産効率向上という結果を重視して最適化処理に多くの時間を割くか、結果をそれほど重視せずに最適化処理に割く時間を節約するか、のいずれかを選択する必要があった。
【0006】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、最適化処理の所要時間の短縮と生産効率の向上とを両立させることが可能な基板生産ラインの最適化方法及び最適化プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するためのものとして、本発明の一局面に係る基板生産ラインの最適化方法は、基板を生産するための作業を順番に行う複数のマシンを含む基板生産ラインを用いた基板の生産を最適化する方法であって、前記基板生産ラインを制御する生産プログラムを前記基板の生産効率が向上するように最適化する最適化処理を規定レベルで行う第1最適化ステップと、前記第1最適化ステップによる最適化処理後の生産プログラムにより前記基板を生産したときに、他のマシンに比べて生産効率が悪いボトルネックマシンが存在するか否かを判定する判定ステップと、前記判定ステップにおいて前記ボトルネックマシンが存在すると判定された場合に、最適化を追求するレベルである最適化レベルを前記ボトルネックマシンに対してのみ引き上げ、前記生産プログラムの最適化処理を再実行する第2最適化ステップと、を含むものである。
【0008】
本発明によれば、最適化レベルを規定レベルに留めた生産プログラムが生産効率の観点から評価されるとともに、当該評価により生産効率が相対的に悪いボトルネックマシンが存在することが判明した場合に、当該ボトルネックマシンの最適化レベルが引き上げられるので、最適化を追求する対象をボトルネックマシンに限定することができ、比較的短時間のうちに生産効率に優れた新たな生産プログラムへの更新を行うことができる。例えば、ボトルネックマシンの有無を調べることなく最適化を追求した場合には、基板生産ライン中の複数のマシンの全てを対象として最適化レベルを引き上げる必要があり、計算に要する時間が大幅に増大する可能性がある。これに対し、本発明では、基板生産ラインの生産効率を悪化させているボトルネックマシンに限定して最適化レベルが引き上げられるので、当該ボトルネックマシン内の最適化対象に絞って最適化を追求することができ、最適化の計算に要する時間を短縮することができる。当該計算により得られた生産プログラム、つまりボトルネックマシンの最適化が追及された新たな生産プログラムは、ボトルネックマシンの作業を効率化し、基板の生産効率の向上をもたらす可能性が高い。したがって、本発明によれば、最適化処理の所要時間を短縮しつつ基板の生産効率を向上させることができる。
【0009】
好ましくは、前記判定ステップでは、前記基板1枚あたりの作業時間であるサイクルタイムを前記複数のマシンついてそれぞれ取得し、当該サイクルタイムが最も長いマシンを前記ボトルネックマシンとして特定する。
【0010】
この態様では、各マシンのサイクルタイムに基づいてボトルネックマシンを適切に特定することができる。
【0011】
好ましくは、前記判定ステップでは、前記複数のマシンの各サイクルタイムの平均値である平均サイクルタイムと、前記サイクルタイムが最も長いマシンのサイクルタイムである最長サイクルタイムとを比較して、前記平均サイクルタイムに対し前記最長サイクルタイムが所定の割合以上大きい場合に、前記サイクルタイムが最も長いマシンを前記ボトルネックマシンとして特定する。
【0012】
この態様では、サイクルタイムが有意に長いマシンが存在する場合にのみ、これをボトルネックマシンとして特定してその最適化を追求することができる。
【0013】
好ましくは、前記最適化方法は、前記判定ステップにおいて前記ボトルネックマシンが存在すると判定された場合に、当該ボトルネックマシンの作業を他のマシンに割り振るラインバランス調整を行うバランス調整ステップをさらに含み、前記第2最適化ステップは、前記バランス調整ステップを経てもなお前記ボトルネックマシンが存在する場合に実行される。
【0014】
この態様では、複数のマシン間での作業分担の平滑化(ラインバランス調整)によりサイクルタイムが改善するようなケースにおいて、このような平滑化による改善を図った上でボトルネックマシンの最適化を追求することができる。言い換えると、ボトルネックマシンの最適化レベルの引き上げよりもラインバランス調整が優先して行われるので、ボトルネックマシンに対する最適化の追求を、ラインバランス調整を経てもなおボトルネックマシンが存在する場合にのみ行うことができ、基板の生産効率を合理的に向上させることができる。
【0015】
好ましくは、前記最適化方法は、前記バランス調整ステップの後、前記ボトルネックマシンのサイクルタイムを改善する改善余地があるか否かを予測する予測ステップをさらに含み、前記第2最適化ステップは、前記予測ステップにより前記改善余地があると判定された場合にのみ実行される。
【0016】
この態様では、改善の見込みがある場合にのみボトルネックマシンの最適化が追求されるので、計算時間が無駄に増大するのを防止することができる。
【0017】
好ましくは、前記最適化方法は、第2最適化ステップを実行する前後の各サイクルタイムを含む情報をオペレータに提示する提示ステップをさらに含む。
【0018】
この態様では、ボトルネックマシンの最適化レベルの引き上げにより生じたサイクルタイムの変化をオペレータに容易に理解させることができる。したがって、当該情報に基づいて、オペレータは、例えば生産プログラムを切り替えるタイミング等を適切に判断することができる。
【0019】
本発明の他の局面に係る基板生産ラインの最適化プログラムは、基板を生産するための作業を順番に行う複数のマシンを含む基板生産ラインを用いた基板の生産を最適化するプログラムであって、前記基板生産ラインを制御する生産プログラムを前記基板の生産効率が向上するように最適化する最適化処理を規定レベルで行う第1最適化処理と、前記第1最適化処理後の生産プログラムにより前記基板を生産したときに、他のマシンに比べて生産効率が悪いボトルネックマシンが存在するか否かを判定する判定処理と、前記判定処理において前記ボトルネックマシンが存在すると判定された場合に、最適化を追求するレベルである最適化レベルを前記ボトルネックマシンに対してのみ引き上げ、前記生産プログラムの最適化処理を再実行する第2最適化処理と、を含む処理をコンピュータに実行させる、ものである。
【0020】
この最適化プログラムの発明によれば、上述した最適化方法の発明と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、最適化処理の所要時間の短縮と生産効率の向上とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る最適化方法が適用される基板生産ラインの概略構成を示す平面図である。
【
図2】プログラム作成装置により行われる処理の内容を示すフローチャートである。
【
図3】
図2のステップS1の処理の詳細を示すサブルーチンである。
【
図4】生産プログラム作成の基礎になる初期条件の内容を示す図である。
【
図5】上限計算時間と最適化レベルとの関係、及び上限試行回数と最適化レベルとの関係を示すグラフである。
【
図6】複数の実装機のサイクルタイムとそれに基づくボトルネックマシンの判定結果とを例示する表である。
【
図7】ボトルネックマシンの最適化レベルが引き上げられる前にオペレータに提示されるプログラム情報の一例を示す表である。
【
図8】ボトルネックマシンの最適化レベルが引き上げられた後にオペレータに提示されるプログラム情報の一例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[基板生産ラインの構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る最適化方法が適用される基板生産ライン1の概略構成を示す平面図である。基板生産ライン1は、基板Pを生産するための設備であり、基板Pの搬送方向の上流側から順に、第1実装機11、第2実装機12、及び第3実装機13を備える。各実装機11~13は、いずれも基板Pの上面に電子部品(以下、単に部品という)を実装するマシンである。各実装機11~13による作業を経て生産された基板Pは、部品実装前の生基板(プリント配線板)と、当該生基板の上面に実装された複数の部品とを含む。言い換えると、各実装機11~13よる作業対象は、少なくとも一部の部品が未実装の基板である。ただし、本実施形態では、このような生産途中の基板と、実装が完了した基板とを、区別せずにいずれも基板Pと称する。なお、図示しないが、第1実装機11の上流側には、基板Pの上面にクリーム半田を印刷する印刷機等の他のマシンが配置されていてもよいし、第3実装機13の下流側には、リフロー炉や検査装置等の他のマシンが配置されていてもよい。
【0024】
第1~第3実装機11~13は、基板Pに対する部品実装作業を順番に行うように、後述するコンベア22による基板Pの搬送方向に連続して並んでいる。第1~第3実装機11~13の基本的な構成は共通しており、以下、第1実装機11の構成を代表して説明する。
【0025】
第1実装機11は、基台21と、コンベア22と、ヘッドユニット23と、移動機構24と、複数の部品供給装置25とを備える。なお、
図1のX方向は基板Pの搬送方向と平行な方向であり、Y方向はX方向と水平面内で直交する方向である。
【0026】
コンベア22は、基板Pを搬送するコンベアであって、基台21上にX方向に延びるように配設されている。コンベア22は、基板Pを+X側から第1実装機11の機内に搬入し、所定の作業位置(
図1に示す基板Pの位置)まで-X側へ搬送して一旦停止させる。この作業位置において、部品が基板Pに実装される。実装作業後、コンベア22は基板Pをさらに-X側へ搬送し、第1実装機11の機外へ搬出する。
【0027】
移動機構24は、ヘッドユニット23をX方向及びY方向に移動可能に支持する機構である。移動機構24は、X方向に延びる支持フレーム31と、支持フレーム31をY方向に移動させる一対のY軸移動機構32と、ヘッドユニット23を支持フレーム31に対しX方向に移動させるX軸移動機構33とを含む。Y軸移動機構32及びX軸移動機構33としては、例えばボールねじ機構を用いることができる。
【0028】
ヘッドユニット23は、支持フレーム31の移動に伴ってY方向に移動可能であり、かつ、支持フレーム31に沿ってX方向に移動可能である。ヘッドユニット23は、基板Pに搭載する部品を吸着して保持する複数本の昇降可能な吸着ヘッドを備える。吸着ヘッドは、部品供給装置25の部品取り出し位置において部品を吸着保持し、基板Pの上方に部品を移動させるとともに当該部品を基板Pの所定の搭載位置に実装する。
【0029】
複数の部品供給装置25は、いずれも基板Pに実装される部品を供給する装置である。本実施形態では、基台21上に合計4つの部品供給装置25が用意されており、コンベア22を挟んだ+Y側及び-Y側の各領域に部品供給装置25が2つずつ配置されている。部品供給装置25により供給される部品は、例えば集積回路(IC)、トランジスタ、抵抗、コンデンサ等の小型の電子部品である。
【0030】
各部品供給装置25は、X方向に並ぶように配列された複数のテープフィーダ26を含む。各テープフィーダ26は、部品が封入された部品収納テープをキャリアとして前記部品取り出し位置まで部品を供給する。なお、各部品供給装置25を構成するフィーダは、テープフィーダ26に限定されるものではなく、トレイ上にパッケージ部品を載置した状態で供給するトレイフィーダ等、他のフィーダを用いることも可能である。
【0031】
以上、第1実装機11の構成について説明したが、第2実装機12及び第3実装機13の構成もこれと同様である。
【0032】
[制御系統]
次に、基板生産ライン1の制御系統について説明する。基板生産ライン1は、生産制御装置41及びプログラム作成装置42と電気的に接続されている。生産制御装置41は、第1~第3実装機11~13を含む基板生産ライン1が行う基板Pの生産を制御する装置である。プログラム作成装置42は、生産制御装置41が使用する生産プログラムを作成及び更新する装置である。生産制御装置41及びプログラム作成装置42は、演算を行うプロセッサ(CPU)と、ROM及びRAM等のメモリーと、を含むマイクロコンピュータにより構成されている。
【0033】
プログラム作成装置42は、生産制御装置41とネットワークLNを介して接続されており、生産プログラムを作成及び更新して生産制御装置41に送信する。生産制御装置41は、第1~第3実装機11~13とネットワークLNを介して接続されており、プログラム作成装置42から取得した生産プログラムに基づいて各実装機11~13を制御する。
【0034】
プログラム作成装置42には、入力部43及び表示部44が電気的に接続されている。入力部43は、プログラム作成装置42に各種データを入力するインターフェースであり、例えばキーボードやマウス等から構成される。表示部44は、プログラム作成装置42に対する入出力データ等をオペレータに提示するためのディスプレイである。
【0035】
[最適化処理]
次に、プログラム作成装置42により生産プログラムを作成及び更新する処理について説明する。なお、ここでいう生産プログラムの作成及び更新処理には、基板生産ライン1による基板Pの生産効率が向上するように生産プログラムを最適化する最適化処理が含まれる。すなわち、プログラム作成装置42は、規定の最適化レベルで生産プログラムを作成し、その後、最適化レベルを適宜引き上げながら生産プログラムを更新する。以下、詳しく説明する。
【0036】
図2は、プログラム作成装置42により行われる処理の内容を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、入力部43を介したオペレータからの指示により開始される。当該処理が開始されると、プログラム作成装置42は、予め定められた各種条件に基づいて生産プログラムを作成する(ステップS1)。
【0037】
図3は、前記ステップS1の処理の詳細を示すサブルーチンである。本図に示すように、生産プログラムの作成が開始されると、プログラム作成装置42は、予め定められた基本データ及び最適化レベルを読み込む(ステップS11)。基本データ及び最適化レベルは、例えば入力部43を介したオペレータの操作により予め設定されている。
【0038】
図4に示すように、前記基本データには、基板データと、基板ハンドリング条件と、実装機データとが含まれる。基板データは、基板Pに実装される部品の種類や各部品の実装座標等の情報を含むデータである。基板ハンドリング条件は、基板Pの搬送速度等の情報を含むデータである。実装機データは、各実装機11~13における部品供給装置25(テープフィーダ26)の位置や基板Pの実装作業位置、ヘッドユニット23の移動速度等の情報を含むデータである。
【0039】
前記最適化レベルは、生産プログラムの最適化を追求するレベルのことであり、最適化レベルが高いほど生産効率の高い生産プログラムが作成されることになる。最適化の対象は、例えば、各実装機11~13の部品供給装置25内での部品の配置(換言すればテープフィーダ26の並び順)、各実装機11~13のヘッドユニット23による部品の実装順序、各実装機11~13間での作業の分担(どの実装機でどの部品を実装するかの割振り)、などがあり得る。
【0040】
前記ステップS1による生産プログラム作成時の最適化レベルは、レベル1、レベル2、レベル3‥‥のように、単純な数値により規定することも可能であるが、本実施形態では、上限計算時間と上限試行回数という2つのパラメータに基づいて最適化レベルが規定される。上限計算時間とは、1つの解を生成するのに消費することが許される上限時間であり、上限試行回数とは、解の生成及びその評価を繰り返すことが許される上限回数である。
図5に示すように、上限計算時間が長いほど最適化レベルは高くなり、上限試行回数が多いほど最適化レベルは高くなる。
【0041】
上限計算時間及び上限試行回数は、オペレータによる入力部43の操作によって予めプログラム作成装置42に入力されている。なお、上限計算時間及び上限試行回数は、直接数値を入力する操作によって設定することも可能であるが、例えば「大」「中」「小」といった複数の選択肢から1つを選択する操作により設定することも可能である。以下では、設定された上限計算時間をT、設定された上限試行回数をNとする。
【0042】
前記ステップS11において、プログラム作成装置42は、前記のようして予め設定された基本データ及び最適化レベル(上限計算時間T及び上限試行回数N)を読み込む。その後、プログラム作成装置42は、上限計算時間Tを使った計算によって1つの解を生成する(ステップS12)。すなわち、プログラム作成装置42は、上述した最適化対象(部品配置、実装順序、作業分担等)を変更するプロセスを上限計算時間Tの範囲で何度も繰り返し、各プロセスにより得られた解候補を生産効率の観点から評価、比較する。そして、計算時間が上限計算時間Tに達した時点で、生産効率が最も高い解候補を抽出し、抽出した解候補を前記ステップS12の結果物である解として出力する。
【0043】
詳しくは、プログラム作成装置42は、1枚の基板Pを生産するのに要する時間(基板1枚あたりの作業時間)であるサイクルタイムに基づいて、各解候補の生産効率の高低を評価する。各解候補は、部品配置、実装順序、作業分担などの最適化対象が異なるため、サイクルタイムも異なり得る。プログラム作成装置42は、各解候補のサイクルタイムをシミュレーション等により予測し、予測したサイクルタイムに基づいて各解候補を評価する。すなわち、プログラム作成装置42は、計算時間が上限計算時間Tに達した時点で、それまでに得られた解候補の中で最もサイクルタイムが短い解候補を抽出し、抽出した解候補を解として出力する。
【0044】
次いで、プログラム作成装置42は、前記ステップS12の解を生成した回数である試行回数が、前記ステップS11で読み込まれた上限試行回数Nに達したか否かを判定する(ステップS13)。
【0045】
前記ステップS13でNOと判定されて試行回数が上限試行回数N未満であることが確認された場合、プログラム作成装置42は、前記ステップS12に戻って解の生成を繰り返す。すなわち、プログラム作成装置42は、1回前の計算により生成された解を出発点として、さらに最適化対象を変更するプロセスを上限計算時間Tの範囲で繰り返し、その中で最もサイクルタイムが短い(生産効率が高い)解候補を新たな解として出力する。
【0046】
一方、前記ステップS13でYESと判定されて試行回数が上限試行回数Nに達したことが確認された場合、プログラム作成装置42は、前記ステップS12,S13を経て生成されたN個の解を生産効率の観点で評価し(ステップS14)、その中で最もサイクルタイムが短い解を抽出する。そして、抽出した当該解を生産プログラムとして出力する(ステップS15)。
【0047】
以上のような処理を経て生産プログラムの作成が完了すると、フローは
図2のステップS2に移行する。このステップS2において、プログラム作成装置42は、作成された生産プログラムに従って基板Pの実装(生産)を行った場合の第1~第3実装機11~13のサイクルタイムを比較し、その中で最もサイクルタイムが長い実装機をCT最長マシンとして抽出する。ここでいうサイクルタイムとは、各実装機11~13が1枚の基板Pに対し消費する作業時間である。例えば、第1実装機11のサイクルタイムは、第1実装機11内の所定の作業位置に基板Pが搬入されてから、当該作業位置に次の基板Pが搬入されるまでの時間、とすることができる。なお、当該ステップS2において、サイクルタイムが同一の実装機が複数存在する場合は、当該複数の実装機がCT最長マシンとして抽出されることもあり得る。つまり、CT最長マシンは1つとは限らず、複数の場合もあり得る。
【0048】
前記CT最長マシンの抽出のために相互に比較される各実装機11~13のサイクルタイムは、シミュレーションにより予測された値であってもよいし、実測された値であってもよい。例えば、基板Pの生産の急ぎ度合いによっては、前記ステップS1で作成された生産プログラムを用いて直ちに基板Pの生産が開始される場合、つまり生産プログラムの最適化を追求する後述するステップS7,S8の処理が行われる前に基板Pの生産が開始される場合がある。あるいは、高い精度のサイクルタイムを得ることを希望するオペレータが、サイクルタイムの測定のために基板Pのテスト生産を行う場合もある。このような場合、前記生産プログラム(ステップS1)による各実装機11~13のサイクルタイムは、実測により求めることができる。逆に、このようなサイクルタイムの実測値が存在しない場合は、シミュレーションにより求めたサイクルタイムの予測値に基づいて、前記ステップS2でのCT最長マシンの抽出が行われる。
【0049】
次いで、プログラム作成装置42は、前記ステップS2で抽出したCT最長マシンがボトルネックマシンに該当するか否かを判定する(ステップS3)。具体的に、プログラム作成装置42は、前記ステップS2で抽出したCT最長マシンのサイクルタイムである最長サイクルタイムを、第1~第3実装機11~13の各サイクルタイムの平均値である平均サイクルタイムと比較する。そして、平均サイクルタイムに対し最長サイクルタイムが所定の割合以上大きい場合に、前記CT最長マシンがボトルネックマシンに該当すると判定する。
【0050】
前記所定の割合は、例えば5%とすることができる。この場合、上述した平均サイクルタイムに対する最長サイクルタイムの増分が5%以上であれば、CT最長マシンがボトルネックマシンとして扱われ、前記増分が5%未満であれば、CT最長マシンはボトルネックマシンとして扱われないことになる。
図6に具体例を示す。本図の例では、第1実装機11のサイクルタイムが25秒、第2実装機12のサイクルタイムが30秒、第3実装機13のサイクルタイムが26秒となっている。この場合、第2実装機12がCT最長マシンであり、最長サイクルタイムは30秒、平均サイクルタイムは27秒である。また、平均サイクルタイムに対する最長サイクルタイムの増分は約11%であって、5%よりも大きい。したがって、CT最長マシンとしての第2実装機12は、ボトルネックマシンに該当する。
【0051】
前記ステップS3でNOと判定されてCT最長マシンがボトルネックマシンに該当しないことが確認された場合、プログラム作成装置42は、前記ステップS1で作成した生産プログラムが十分に生産効率の高いプログラムであると判断して、それを結果物としてオペレータに提示する(ステップS9)。
【0052】
例えば、プログラム作成装置42は、
図7に示すように、1種類の生産プログラムが作成されたことを表す1行の表形式の情報を、表示部44を介してオペレータに提示する。提示される情報には、例えば、当該生産プログラムにより基板Pを生産した場合のサイクルタイム(CT)、各実装機11~13の最適化レベル、及び処理時間の各情報が含まれる。
図7において、推定CTとは、サイクルタイムのシミュレーションによる推定値のことであり、実測CTとは、サイクルタイムの実測値のことである。なお、ここでいうサイクルタイムは、基板生産ライン1の全体のサイクルタイム、換言すればCT最長マシンのサイクルタイムのことである。この時点では最適化を追求する後述するステップS7,S8の処理が行われていないので、第1実装機11~13の各最適化レベルとしては、いずれも「1」が表示される。
【0053】
一方、前記ステップS3でYESと判定されてCT最長マシンがボトルネックマシンに該当することが確認された場合、プログラム作成装置42は、後述するステップS5によるラインバランス調整が未実施であるか否かを判定する(ステップS4)。
【0054】
前記ステップS4でYESと判定されてラインバランス調整が未実施であることが確認された場合、プログラム作成装置42は、ラインバランス調整を実施する(ステップS5)。ラインバランス調整は、ボトルネックマシンの作業の一部を他のマシンに割り振る処理のことである。例えば、
図6のように第2実装機12がボトルネックマシンであった場合、プログラム作成装置42は、この第2実装機12の作業の一部が他の実装機11,13に割り振られるように生産プログラムを更新する処理を、前記ラインバランス調整として実施する。作業の割り振り方は種々あり得るが、例えば、ボトルネックマシンで行われることになっていた一部の部品の実装作業を他のマシンに割り振る、といった方法が考えられる。
【0055】
前記ステップS5によるラインバランス調整が行われると、前記ステップS2に戻ってそれ以降の処理が繰り返される。すなわち、ラインバランス調整後の各実装機11~13のサイクルタイムに基づいてボトルネックマシンの有無が調べられる。
【0056】
一方、前記ステップS4でNOと判定されてラインバランス調整が実施済みであることが確認された場合、プログラム作成装置42は、後述するステップS7によるボトルネックマシンの最適化レベル引き上げによる改善余地があるか否かを判定する(ステップS6)。ここでの判定は、例えば、過去の傾向に基づく予測判定とすることができる。
【0057】
すなわち、現時点で既に少なくとも1回のボトルネックマシンの最適化レベル引き上げ(S7)が行われている場合、この過去の最適化レベル引き上げの前後におけるボトルネックマシンのサイクルタイムの変化傾向に基づいて、改善余地があるか否かを予測することができる。例えば、過去の最適化レベル引き上げがサイクルタイムの低下をもたらした場合は、まだ改善余地はあると予測することができ、過去の最適化レベル引き上げがほとんどサイクルタイムの低下をもたらさなかった場合は、もはや改善余地はないと予測することができる。なお、現時点で未だボトルネックマシンの最適化レベル引き上げ(S7)が一度も行われていない場合、つまり過去の傾向が不明な場合は、無条件で改善余地があると予測すればよい。
【0058】
なお、改善余地の予測は、前記のような過去の傾向に基づくものに限られない。例えば、プログラム作成装置42がこれまで作成した生産プログラムの中に、今回と類似した条件下で作成されたプログラムが存在する場合、この類似プログラムを作成した際の実績に基づいて改善余地の有無を予測してもよい。
【0059】
前記ステップS6でNOと判定されて改善余地の予測が否定的であることが確認された場合、プログラム作成装置42は、これまでに得られた結果をオペレータに提示する(ステップS9)。
【0060】
一方、前記ステップS6でYESと判定されて改善余地の予測が肯定的であることが確認された場合、プログラム作成装置42は、ボトルネックマシンの最適化レベルを引き上げて(ステップS7)、引き上げ後の最適化レベルに基づいて生産プログラムを更新する(ステップS8)。すなわち、プログラム作成装置42は、直近に作成された生産プログラムをベースに、ボトルネックマシンの最適化対象のみを変更した複数の解を生成し、その中でも最もサイクルタイムの短い解を新たな生産プログラムとして出力する。
【0061】
例えば、
図6のように第2実装機12がボトルネックマシンであった場合、プログラム作成装置42は、第2実装機12の部品供給装置25内での部品の配置(テープフィーダ26の並び順)や、第2実装機12での部品の実装順序などを最適化対象として、当該最適化対象を変更した複数の解を生成する。そして、生成した解の中で第2実装機12のサイクルタイムが最も短い解を抽出し、これを新たな生産プログラムとして出力する。このような生産プログラムの更新は、予め定められた上限の計算時間もしくは試行回数に収まるように行われる。
【0062】
前記ステップS7,S8による生産プログラムの更新が完了すると、前記ステップS2に戻ってそれ以降の処理が繰り返される。すなわち、プログラム更新後の各実装機11~13のサイクルタイムに基づいてボトルネックマシンの有無が調べられ(S2,S3)、ここでボトルネックマシンがなおも存在することが確認された場合には、ボトルネックマシンの最適化レベルをさらに引き上げるか否かを判定するためにサイクルタイムの改善余地が予測される(S6)。そして、ここで改善余地があると予測された場合には、ボトルネックマシンの最適化レベルがさらに引き上げられて、生産プログラムが更新される(S7)。逆に、改善余地がないと予測された場合には、これまで得られた結果が表示部44を介してオペレータに提示される(S9)。
【0063】
図8は、前記ステップS9による最適化レベルの引き上げが行われた場合にオペレータに提示される情報の一例を示す図である。本図では、ボトルネックマシンの最適化レベルが2度引き上げられた場合の結果物として、No.1~3の3種類の生産プログラムの情報が提示されている。No.1は、ボトルネックマシンの最適化レベルが引き上げられる前の生産プログラム、つまり、初回作成のプログラム(S1)に対しラインバランス調整(S5)を施すことで得られた生産プログラムの情報である。この時点で最適化レベルはまだ引き上げられていないので、当該No.1のプログラムにおける第1~第3実装機11~13の最適化レベルの表記は、いずれも「1」となっている。No.2は、ボトルネックマシンである第2実装機12の最適化レベルを1段階引き上げることで得られた生産プログラムの情報である。このNo.2のプログラムでは、第2実装機12の最適化レベルの引き上げにより、当該第2実装機12の最適化レベルの表記が「2」へと増加する一方、他の実装機の最適化レベルの表記は「1」に維持されている。No.3は、第2実装機12(ボトルネックマシン)の最適化レベルをさらに1段階引き上げることで得られた生産プログラムの情報である。このNo.3のプログラムでは、第2実装機12の最適化レベルのさらなる引き上げにより、当該第2実装機12の最適化レベルの表記が「3」へと増加する一方、他の実装機の最適化レベルの表記は「1」に維持されている。また、
図8に記載のサイクルタイムの値を参酌すると、生産プログラムがNo.1→No.2→No.3と更新されるにつれてサイクルタイムが短縮されていることが理解される。
【0064】
なお、以上説明した
図2のフローチャートにおいて、ステップS1の処理は、本発明における「第1最適化ステップ」または「第1最適化処理」に相当し、ステップS2,S3の処理は、本発明における「判定ステップ」または「判定処理」に相当し、ステップS5の処理は、本発明における「バランス調整ステップ」に相当し、ステップS6の処理は、本発明における「予測ステップ」に相当し、ステップS7,S8の処理は、本発明における「第2最適化ステップ」または「第2最適化処理」に相当し、ステップS9の処理は、本発明における「提示ステップ」に相当する。
【0065】
[作用効果等]
以上説明したとおり、本実施形態では、規定の最適化レベルで生産プログラム(S1)が一旦作成された後、サイクルタイムが相対的に長いボトルネックマシンが存在するか否かが判定され(S2,S3)、当該判定によりボトルネックマシンが存在することが確認された場合には、当該ボトルネックマシンに対してのみ最適化レベルが引き上げられて最適化処理が再実行される(S7,S8)。このような構成によれば、最適化処理の所要時間を短縮しつつ基板Pの生産効率を向上させることができる等の利点がある。
【0066】
すなわち、本実施形態では、最適化レベルを規定レベルに留めた生産プログラムがサイクルタイム(生産効率)の観点から評価されるとともに、当該評価によりサイクルタイムが相対的に長い(生産効率が悪い)ボトルネックマシンが存在することが判明した場合に、当該ボトルネックマシンの最適化レベルが引き上げられるので、最適化を追求する対象をボトルネックマシンに限定することができ、比較的短時間のうちに生産効率に優れた新たな生産プログラムへの更新を行うことができる。例えば、ボトルネックマシンの有無を調べることなく最適化を追求した場合には、第1~第3実装機11~13の全てを対象として最適化レベルを引き上げる必要があり、計算に要する時間が大幅に増大する可能性がある。これに対し、本実施形態では、基板生産ライン1の生産効率を悪化させているボトルネックマシンに限定して最適化レベルが引き上げられるので、当該ボトルネックマシン内の最適化対象(部品配置、実装順序等)に絞って最適化を追求することができ、最適化の計算に要する時間を短縮することができる。当該計算により得られた生産プログラム、つまりボトルネックマシンの最適化が追及された新たな生産プログラムは、ボトルネックマシンの作業を効率化し、基板生産ライン1のサイクルタイムの短縮をもたらす可能性が高い。したがって、本実施形態によれば、最適化処理の所要時間を短縮しつつ基板Pの生産効率を向上させることができる。
【0067】
また、本実施形態では、サイクルタイムが最も長い実装機(CT最長マシン)のサイクルタイムである最長サイクルタイムと、第1~第3実装機11~13のサイクルタイムの平均値である平均サイクルタイムとが比較されて、前者が後者に対し所定の割合(例えば5%)以上高い場合に、前記CT最長マシンがボトルネックマシンに該当すると判定される。このような構成によれば、サイクルタイムの有意な相違に基づいてボトルネックマシンを適切に特定することができる。
【0068】
また、本実施形態では、ボトルネックマシンの存在が確認された場合に、当該ボトルネックマシンの作業を他のマシンに割り振るラインバランス調整がまず行われ、当該ラインバランス調整を経てもなおボトルネックマシンが存在する場合に、ボトルネックマシンの最適化レベルが引き上げられる。このような構成によれば、各実装機11~13間での作業分担の平滑化(ラインバランス調整)によりサイクルタイムが改善するようなケースにおいて、このような平滑化による改善を図った上でボトルネックマシンの最適化を追求することができる。言い換えると、ボトルネックマシンの最適化レベルの引き上げよりもラインバランス調整が優先して行われるので、ボトルネックマシンに対する最適化の追求を、ラインバランス調整を経てもなおボトルネックマシンが存在する場合にのみ行うことができ、基板Pの生産効率を合理的に向上させることができる。
【0069】
また、本実施形態では、上述したラインバランス調整の後、ボトルネックマシンのサイクルタイムを改善する改善余地があるか否かが予測され、当該予測が肯定的であった場合に、ボトルネックマシンの最適化レベルが引き上げられる。このような構成によれば、改善の見込みがある場合にのみボトルネックマシンの最適化が追求されるので、計算時間が無駄に増大するのを防止することができる。
【0070】
また、本実施形態では、ボトルネックマシンの最適化レベルを引き上げて生産プログラムを更新する処理が行われると、当該更新処理の前後の各サイクルタイムを含む情報がオペレータに提示される。このような構成によれば、ボトルネックマシンの最適化レベルの引き上げにより生じたサイクルタイムの変化をオペレータに容易に理解させることができる。したがって、当該情報に基づいて、オペレータは、例えば生産プログラムを切り替えるタイミング等を適切に判断することができる。
【0071】
例えば、ボトルネックマシンの最適化レベルを引き上げる前の生産プログラムを用いて基板Pの生産が既に開始されている状態で、最適化レベルを引き上げてのプログラムの更新が並行して行われたような場合において、オペレータは、生産プログラムを切り替えるタイミングをサイクルタイムの変化(改善)の大小に基づいて適切に判断することができる。具体的に、最適化レベルの引き上げによるサイクルタイムの改善代が大きい場合には、基板Pの生産を一時停止してでも早めに生産プログラムを切り替えた方がよいと判断することができる。逆に、最適化レベルの引き上げによるサイクルタイムの改善代が小さい場合には、ロットの変わり目のような生産の切れ目が到来してから生産プログラムを切り替えた方がよいと判断することができる。
【0072】
なお、前記実施形態では、第1~第3実装機11~13からなる3台の実装機を含む基板生産ライン1に本発明の最適化方法を適用した例について説明したが、本発明の最適化方法を適用可能な基板生産ラインは、基板を生産するための作業を順番に行う複数のマシンを含むラインであればよく、複数の実装機を含むラインに限られない。例えば、少なくとも1台の実装機と他のマシンとを含むラインや、実装機以外の複数のマシンを含むラインにも、本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 :基板生産ライン
11~13 :第1~第3実装機(複数のマシン)
P :基板