(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000538
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】遺伝子特異的空間ローリングサークル増幅およびNGSシーケンシング
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6869 20180101AFI20231225BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20231225BHJP
C12Q 1/6844 20180101ALI20231225BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20231225BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6844 Z
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023099995
(22)【出願日】2023-06-19
(31)【優先権主張番号】22179807
(32)【優先日】2022-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】520094891
【氏名又は名称】ミルテニー バイオテック ベー.フェー. ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Miltenyi Biotec B.V. & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Friedrich-Ebert-Strasse 68, 51429 Bergisch Gladbach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ピナード
(72)【発明者】
【氏名】細野 正裕
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA13
4B063QQ53
4B063QR08
4B063QR20
4B063QR32
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS24
4B063QS25
4B063QS34
4B063QS39
(57)【要約】 (修正有)
【課題】標的配列の空間位置と配列情報との両方を、高い分解能で同時に取得する方法を提供する。
【解決手段】a.ロケータープローブを提供するステップ、b.RNAアンカー領域を有するロケータープローブをm-RNA鎖にハイブリダイズするステップ、c.逆転写c-DNA鎖を取得するステップ、d.伸張された逆転写c-DNA鎖を取得するステップ、e.環状ロケーターをRCAで増殖させ、第1のロロニーを作製するステップ、f.第1のロロニーの空間情報及び配列情報を取得するステップ、g.一本鎖オリゴマーを取得するステップ、h.環状の一本鎖オリゴマーを作製するステップ、i.環状一本鎖オリゴマーをRCAにより第2のロロニーとし、シーケンシングし、第1のロロニーの空間情報と第2のロロニーの配列情報をリンクさせるステップとを含む、組織サンプル上の少なくとも1本のm-RNA鎖の標的配列の空間位置と配列情報とを取得する方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織サンプル上の少なくとも1本のm-RNA鎖の標的配列の空間位置と配列情報とを取得する方法であって、
a.ロケータープローブを提供するステップであって、前記ロケータープローブは、a)環状ロケーターを結合することができるロケーターアンカー領域を介して前記環状ロケーターにハイブリダイズした線状ロケーターと、b)少なくとも1本のm-RNA鎖に結合することができるRNAアンカー領域と、c)プライマー配列とを含み、前記環状ロケーターは、UMI領域と、第1および第2のプライマー領域と、前記線状ロケーターの前記ロケーターアンカー領域に対して相補的な領域とを含む、提供するステップと、
b.前記RNAアンカー領域を有する前記ロケータープローブを前記m-RNA鎖にハイブリダイズするステップと、
c.前記m-RNA鎖を鋳型として使用して前記ロケータープローブの前記RNAアンカー領域を相補化し、それによって逆転写c-DNA鎖を取得するステップと、
d.前記環状ロケーターを鋳型として使用して前記第1のプライマー領域を起点として前記環状ロケーターを相補化し、得られたオリゴマーを前記線状ロケーターの前記ロケーターアンカー領域とライゲーションし、それによって前記UMI領域および前記m-RNA鎖の標的配列を含む伸張された逆転写c-DNA鎖を取得するステップと、
e.前記組織サンプル上の前記第2のプライマー領域を起点として前記環状ロケーターをRCAで増殖させ、少なくとも1つの第1のロロニー(Lは1つのみ)を作製するステップと、
f.前記少なくとも1つの第1のロロニーを空間的に分析してシーケンシングし、それによって前記少なくとも1つの第1のロロニーの空間情報および配列情報を取得するステップと、
g.前記伸張された逆転写c-DNA鎖を前記組織から除去し、前記伸張された逆転写c-DNA鎖を前記m-RNA鎖から脱ハイブリダイズし、一本鎖オリゴマーを取得するステップと、
h.前記一本鎖オリゴマーの3’末端および5’末端に第1および第2のアダプタープライマーを提供し、プライミングされた一本鎖オリゴマーを取得し、前記プライミングされた一本鎖オリゴマーをPCRにより増幅し、前記第1および第2のアダプタープライマーの互いのライゲーションにより前記プライミングされた一本鎖オリゴマーを環化し、それによって環状の一本鎖オリゴマーを作製するステップと、
i.前記環状一本鎖オリゴマーをRCAにより増殖させて第2のロロニーとし、前記第2のロロニーをシーケンシングし、前記第1のロロニーの前記空間情報と前記第2のロロニーの配列情報とを前記UMI配列を介してリンクさせるステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記環状ロケーターが、ステップa)において、クローズドサークルとして提供されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記環状ロケーターが、ステップa)において、オープンサークルとして提供され、ステップd)において、前記環状ロケーターを増殖させる前に前記オープンサークルの3’末端および5’末端が互いにライゲーションされて環状ロケーターを作製することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記オープンサークルの前記3’末端および前記5’末端がT4 DNAリガーゼで互いにライゲーションされ、前記環状ロケーターの前記第2のプライマー領域は、ブリッジスプリントとして機能することを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
ステップd)における前記環状ロケーターの相補化が、前記環状ロケーターの前記第1のプライマー領域をイニシエータープライマーとして使用して、Phusion DNAポリメラーゼによって実施されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
ステップd)におけるライゲーションステップが、DNAリガーゼによって実施されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記ロケータープローブが、前記線状ロケーターを前記環状ロケーターに最初にハイブリダイゼーションすることによって提供されることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記ロケータープローブが、前記線状ロケーターを前記少なくとも1本のm-RNA鎖に最初にハイブリダイズし、次いで前記環状ロケーターを前記線状ロケーターにハイブリダイズすることによって提供されることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記ロケータープローブが、前記線状ロケーターを前記少なくとも1本のm-RNA鎖に最初にハイブリダイズし、前記ロケータープローブの前記RNAアンカー領域を逆転写c-DNA鎖に相補化させ、次いで前記環状ロケーターを前記線状ロケーターにハイブリダイズすることによって提供されることを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記3’末端および前記5’末端に第1および第2のアダプタープライマーを加える前に、前記一本鎖オリゴマーを物理的にせん断してより小さな断片にすることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
組織上の細胞内レベルですべての発現遺伝子を検出し、同時にこれらの遺伝子の配列および/または空間情報を得ることは困難である。
【0002】
本発明は、Unique Molecular Identifier(固有分子識別子)(UMI)プローブを含むロケーターサークル(locator circle)(または後でライゲーションされるオープンサークル)を使用し、続いて変異または配列バリアントを含む対象領域の逆転写を使用して、メッセンジャーRNA上の特定領域を認識および増幅し、UMIの配列情報をコピーする方法を説明する。得られたUMI情報付きcDNAは、組織切片上に生成されたRolling Circle Amplified(ローリングサークル増幅)(RCA)産物のNGSにより検索、抽出、およびシーケンシングされる。
【0003】
国際公開第2020076976号は、FISSEQにより空間位置を含む核酸の配列情報を取得する方法を開示している。国際公開第2019199579号は、同様の目的のためのスネイル(Snail)プローブシステムを教示している。
【0004】
発明の概要
したがって、本発明の目的は、公知技術よりも高い分解能で標的配列の空間位置と配列情報との両方を同時に取得する方法を提供することであった。
【0005】
本明細書では、以下の方法について説明する:
(1)UMI付きハイブリッド環状/線状DNAプローブを使用して、組織上に発現するmRNAを空間的にローカライゼーションする。
(2)UMI付き環状/線状DNAプローブがアニーリングする領域より下流の隣接領域のヌクレオチド情報を逆転写酵素でコピーする。同時に、UMI配列を担持したハイブリッドプローブの環状部分をPhusion DNAポリメラーゼでコピーし、得られたコピーRNA鎖を逆転写されたcDNAにライゲーションする。
(3)次いで、UMI含有cDNA鎖を組織から抽出する。
(4)次いで、抽出されたUMI含有cDNA鎖を、既知のアダプター末端を有するPCRプライマーでPCR増幅させる。
(5)PCR産物を環化し、RCA増幅させる。
(6)RCA産物は、NGSによりシーケンシングすることができる。
【0006】
本発明の目的は、組織サンプル上の少なくとも1本のm-RNA鎖の標的配列の空間位置および配列情報を取得する方法であって、
a.ロケータープローブを提供するステップであって、ロケータープローブは、a)環状ロケーターを結合することができるロケーターアンカー領域を介して環状ロケーターにハイブリダイズした線状ロケーターと、b)少なくとも1本のm-RNA鎖に結合することができるRNAアンカー領域と、c)プライマー配列とを含み、環状ロケーターは、UMI領域と、第1および第2のプライマー領域と、線状ロケーターのロケーターアンカー領域に対して相補的な領域とを含む、提供するステップと、
b.RNAアンカー領域を有するロケータープローブをm-RNA鎖にハイブリダイズするステップと、
c.m-RNA鎖を鋳型として使用してロケータープローブのRNAアンカー領域を相補化し、それによって逆転写c-DNA鎖を取得するステップと、
d.環状ロケーターを鋳型として使用して第1のプライマー領域を起点として環状ロケーターを相補化し、得られたオリゴマーを線状ロケーターのロケーターアンカー領域とライゲーションし、それによってUMI領域およびm-RNA鎖の標的配列を含む伸張された逆転写c-DNA鎖を取得するステップと、
e.組織サンプル上の第2のプライマー領域を起点として環状ロケーターをRCAで増殖させ、少なくとも1つの第1のロロニー(rolony)(Lは1つのみ)を作製するステップと、
f.少なくとも1つの第1のロロニーを空間的に分析してシーケンシングし、それによって少なくとも1つの第1のロロニーの空間情報および配列情報を取得する(言い換えれば、少なくとも1つの第1のロロニーのシーケンシングによって空間座標および環状ロケーターUMIを取得する)ステップと、
g.伸張された逆転写c-DNA鎖を組織から除去し、伸張された逆転写c-DNA鎖をm-RNA鎖から脱ハイブリダイズし、一本鎖オリゴマーを取得するステップと、
h.一本鎖オリゴマーの3’末端および5’末端に第1および第2のアダプタープライマーを提供し、プライミングされた一本鎖オリゴマーを取得し、プライミングされた一本鎖オリゴマーをPCRにより増幅し、第1および第2のアダプタープライマーの互いのライゲーションによりプライミングされた一本鎖オリゴマーを環化し、それによって環状の一本鎖オリゴマーを作製するステップと、
i.環状一本鎖オリゴマーをRCAにより増殖させて第2のロロニーとし、第2のロロニーをシーケンシングし、第1のロロニーの空間情報と第2のロロニーの配列情報とをUMI配列を介してリンクさせるステップと
を含む、方法である。
【0007】
本発明は、ランダムで予め定義されていない固有分子識別子(UMI)と2つのプライミング領域とを持つ環状分子(
図1A)または開環状分子(
図1B)のいずれかを含むハイブリッドプローブを使用して、所定の組織における対象遺伝子の空間的ローカライゼーションを実施する方法を対象とする。サークル/オープンサークルは、線状DNAプライマーに予め結合させておくか(
図1Aおよび
図1B)、線状プライマーが直接組織上でmRNA上の所望の領域より上流の配列に結合した後に環状ロケーターを線状DNAプライマーにハイブリダイズすることができる(
図1C)。次いで、ハイブリッドプローブの環状部分は、直接組織上でオリゴヌクレオチドプライマーを使用してローリングサークル増幅(RCA)により増幅され、所定の組織上でmRNAが発現した正確な位置にRCA産物を生じさせることができる。次いで、RCA産物をシーケンシングすることにより、ランダムで予め定義されていないUMIをデコードすることができる。
【0008】
次に、組織上に空間的にローカライゼーションされた同じmRNA上の特定のヌクレオチド変化またはバリアントである特定の対象領域の所望の配列情報を、プライマーとしての同じハイブリッドプローブによるmRNAの逆転写によって同時にキャプチャすることができる。
【0009】
逆転写と同時に、UMI情報は、環状鎖をコピーするように特別にデザインされたDNAプライマーによって開始されるPhusion DNAポリメラーゼによって、同じ逆転写cDNA鎖上でキャプチャすることができる。Phusion DNAポリメラーゼがDNAサークルをコピーしたら、それを対象領域の配列情報をキャプチャした同じcDNA鎖にライゲーションすることができる。オープン環状ロケータープローブが使用される場合は、この時点でクローズドサークルを形成するようにライゲーションされる。
【0010】
次いで、UMIがライゲーションされたcDNAを、組織から物理的に回収し、抽出する。
【0011】
次いで、回収されたcDNAを、cDNAの5’末端および3’末端にアニールしてDNAアダプターを担持するPCRプライマーを使用して、PCR増幅させる。
【0012】
次いで、PCR増幅された産物を、2つの末端を一つにするスプリントブリッジ(splint bridge)オリゴヌクレオチドプライマーを使用して環化することができる。
【0013】
次いで、サークルを、ローリングサークル増幅(RCA)により増幅させる。次いで、RCA産物をシーケンシングする。
【0014】
NGSシーケンシングにより、空間識別子UMIおよびリンクされたmRNAの目的配列を、組織位置に割り当てることができる。
【0015】
NGSシーケンシングにより、ゲノムDNAまたはmRNA上の標的対象領域、変異またはヌクレオチドバリアントを解析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】ハイブリッド環状/線状ロケータープローブの3つの実施形態を示す図であり、閉じた環状部分(
図1A)は、ランダムUMI配列と、2つのプライミング領域1および2と、線状ロケータープローブの5’半分部分のプローブにアニーリングされるアンカー配列とを含み、
図1Bは、このプローブのオープンサークルバージョンを示し、ロケーターサークルは、T4 DNAリガーゼによってプロセス中に後で閉じることができ、
図1Cは、線状プローブが最初に標的にハイブリダイズし、続いて逆転写を行うバージョンを示し、線状プローブが標的に安定的に結合したら、環状ロケーターが線状プローブにハイブリダイズされ、3つのデザインとも、線状プローブの3’半分は、シーケンシングが必要な標的mRNA遺伝子の対象領域より上流の特定領域にアニーリングする配列を有し、対象領域は、バリアントの差異によるヌクレオチド変化が疑われる配列を含む。
【
図2a】ハイブリッドロケータープローブがどのように特定のmRNAの対象領域より上流の領域に結合し、対象領域を逆転写するかを示す図であり、ハイブリッド(クローズド)オープン環状ロケーター/線状ハイブリッドプローブを使用して、mRNAの対象領域をcDNAに逆転写している。その後、UMIを含むロケーターサークルがコピーされ、cDNAにライゲーションされ、ロケーターサークルが閉じられる。
【
図2b】ハイブリッドロケータープローブがどのように特定のmRNAの対象領域より上流の領域に結合し、対象領域を逆転写するかを示す図であり、クローズドロケーターサークルはRCAにより増幅され、UMI部分はin situでシーケンシングされる。次いで、コピーされたUMIを含むライゲーションされたcDNA鎖は、対象領域のシーケンシングのために抽出される。
【
図3】UMI領域と対象領域特異的配列とを含むロケーターサークルがどのように、シーケンシングの前にPCRによって増幅され得るかを示す図である。
【
図4】組織から抽出されたcDNA鎖がどのように、PCRプライマーにアダプター領域(P1およびP2)を加えることによって、PCR増幅され、後で環化され得るかを示す図である。
【
図5】P1/P2アダプター末端を有するPCR増幅産物がどのように、NGSシーケンシングによって分析するために、環化され、RCA増幅され得るかを示す図である。
【
図6】UMI領域と「対象領域」とを照合させて対にするペアエンドシーケンシングを実施するために必要なプライマーを説明する図である。
【0017】
詳細な説明
RCAによるmRNA分子の空間的ローカライゼーションと、それに続く同じRNA分子からの対象領域のex-situシーケンシングとには、組織上で直接行う、9ステップのプロセスからなるRCAが含まれる。(1)組織上のmRNAへの線状または線状/環状ロケータープローブのハイブリダイゼーション。(2)標的mRNA分子にハイブリダイズしたハイブリッドロケータープローブの線状部分による下流mRNAの対象領域の逆転写(2A)およびサークル特異的オリゴヌクレオチドプライマーを有するPhusion DNAポリメラーゼによるハイブリッドプローブの環状部分のDNA複製(2B)。(3)コピーされた環状UMIとcDNAとを接続するためのT4 DNAライゲーション。オープン環状ロケーターが使用される場合は、このステップでもライゲーションされる。(4)ロロニー(DNAコンカテマーナノボール)を生成するためのサークル特異的RCAプライマーを用いたRCAおよび生成されたロロニー上のランダムUMIのin situシーケンシング。(5)組織からのcDNA-UMI第1鎖の抽出。(6)第2鎖cDNA合成。(7)P1/P2アダプタープライマーを用いたcDNAのPCR増幅。(8)PCR増幅産物の環化およびUMIと対象領域とを含むサークルのRCA増幅。(9)NGSシーケンシングならびにUMIとの照合による対象領域の位置および配列の同定。
【0018】
本発明の第1の実施形態では、環状ロケーターは、ステップa)において、クローズドサークルとして提供される。別の実施形態では、環状ロケーターは、ステップa)において、オープンサークルとして提供され、ここで、ステップd)において、環状ロケーターを増殖させる前に、オープンサークルの3’末端と5’末端とが互いにライゲーションされて環状ロケーターが作製される。
【0019】
オープンサークルを有する実施形態では、オープンサークルの3’末端と5’末端とが、T4 DNAリガーゼを用いて互いにライゲーションされ得、ここで、環状ロケーターの第2のプライマー領域は、ブリッジスプリントとして機能する。
【0020】
ステップd)(環状ロケーターの相補化)は、環状ロケーターの第1のプライマー領域をイニシエータープライマーとして使用して、Phusion DNAポリメラーゼによって実施され得る。さらに、ステップd)のライゲーションステップは、DNAリガーゼによって実施され得る。
【0021】
ロケータープローブは、以下の別形で提供することができる:
- 線状ロケーターを環状ロケーターに最初にハイブリダイズする方法。
- 線状ロケーターを少なくとも1本のm-RNA鎖に最初にハイブリダイズし、次いで環状ロケーターを線状ロケーターにハイブリダイズする方法。
- 線状ロケーターを少なくとも1本のm-RNA鎖に最初にハイブリダイズし、ロケータープローブのRNAアンカー領域を、逆転写c-DNA鎖に相補させ、次いで環状ロケーターを線状ロケーターにハイブリダイズする方法。
【0022】
好ましくは、一本鎖オリゴマーは、3’末端および5’末端に第1および第2のアダプタープライマーを加える前に、物理的にせん断してより小さな断片にする。
【0023】
これらの実施形態は、図面に示される。
図1は、ロケータープローブのセットアップの3つの可能なデザインを示す。
図1Aでは、UMIを含む環状プローブと、対象領域特異的配列(SP)を介してサークルに予め結合された線状プローブとをハイブリダイズすることにより、ハイブリッドロケータープローブが生成される。
図1Bでは、オープン環状プローブが使用される。
図1Aおよび
図1Bともに予めアセンブリされたプローブは安定であり、使用前に精製される。
図1Cでは、線状プローブが最初に使用され、線状プローブがmRNA標的にハイブリダイズした後にロケーターサークルが加えられる。サークルのサイズは20~400bpの長さで、対象領域SP部分は約10~40bpであり、線状プローブと安定な二本鎖構造を形成することができる。線状プローブの3’末端は、約30bpの長さの配列からなり、組織上のmRNAの所望の標的の特定領域にハイブリダイズすることができる。
【0024】
図2は、ロケータープローブがどのように使用されるかのプロセスを示す。ステップ1では、スライド上の固定された組織において、ハイブリッドロケータープローブが加えられ、特定のmRNAの対象領域から上流の領域に結合する(点線)。本発明の一実施形態では、ステップ1において、線状プローブが最初に加えられ、特定のmRNAの対象領域から上流の領域に結合し(点線)、サークルが後で加えられる。
【0025】
次に、ステップ2Aでは、プライマーとして使用されるロケータープローブによって、対象領域の逆転写が開始される。しかしながら、一実施形態では、逆転写が完了した時点で、環状ロケーターが加えられて線状プローブのアンカー領域にハイブリダイズする。次に、ステップ2Bにおいて、ロケーターサークルのDNA合成は、プライマー1領域に結合するサークル特異的プライマーによって開始される。
【0026】
次に、ロケーターサークルは、非鎖置換酵素、例えばPhusion DNAポリメラーゼによってコピーされ、次いで、T4 DNAライゲーションによって逆転写されたcDNA鎖に接続される(ステップ3)。オープン環状ロケータープローブバージョンが使用される場合、このステップでもT4 DNAライゲーションによりサークルが閉じられる。
【0027】
次に、ロケーターサークルの等温ローリングサークル増幅(RCA)が、Phi29 DNAポリメラーゼと、プライマー領域2に結合したRCAオリゴヌクレオチドとを用いて組織上で実施される(ステップ4)。その結果、組織上のRCA産物の位置は、組織上のランダムに生成されたUMIをシーケンシングし、座標を取得することによって決定される。
【0028】
次に、ステップ5では、ロケーターサークルRCAが可視化された後、組織からcDNAが抽出される。
【0029】
図3は、組織切片スライドから第1鎖cDNAを抽出した後のワークフローを説明する。組織からcDNAが抽出され精製されると、第2鎖cDNA(ステップ6)と、それに続くPCR反応(ステップ7)とが、一対のプライマーP1およびP2を用いて実施される。プライマーP1は、環状ロケーター領域の上流に位置し、プライマーP2は、「対象領域」の下流に位置する。
【0030】
図4は、NGSによってシーケンシングされるRCA産物を生成するためのワークフローを説明する。ステップ8において、PCR産物ライブラリは、サークルおよびRCA産物の生成に使用され、UMIを識別するためにシーケンシングに使用され、対象領域のDNA配列に対応される。ステップ9において、センスおよびアンチセンスの両鎖のRCAは、センスおよびアンチセンスブリッジガイドを使用して独立して生成することができる。
【0031】
図5は、組織切片上のロロニーのUMIシーケンシングの一例を示す。
【0032】
図6は、UMI領域と「対象領域」とを照合させて対にするペアエンドシーケンシングを実施するのに必要なプライマーを説明する。ペアエンドシーケンシングの第1セグメントは、ペアエンドセグメント1シーケンシングプライマーSQ-Sプライマー1およびSQ-ASプライマー1を用いて対象領域について実施される。ペアエンドシーケンシングの第2セグメントは、ペアエンドセグメント2シーケンシングプライマーSQ-Sプライマー2およびSQ-ASプライマー2を用いてUMI領域について実施される。
【0033】
NGSシーケンシングは、変異/ヌクレオチドバリアントが標的の対象領域に存在するかどうかを決定することができ、UMIをシーケンシングすることによって、基質上の各ロロニーの位置は、後で組織の元の位置と対応させることができる。つまり、組織上の遺伝子の位置を決定し、その遺伝子に変異があるかどうかをシーケンシングで確認することができる。
【外国語明細書】