(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053809
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】車両の燃料収容部材の支持構造
(51)【国際特許分類】
B60K 15/067 20060101AFI20240409BHJP
B60K 15/063 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B60K15/067
B60K15/063
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160246
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊崎 和文
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 貴思
(72)【発明者】
【氏名】内藤 崇文
【テーマコード(参考)】
3D038
【Fターム(参考)】
3D038CA12
3D038CA18
3D038CB01
3D038CD01
3D038CD09
3D038CD11
(57)【要約】
【課題】バンド部材に加えられる荷重をより確実に吸収しつつ、燃料収容部材に対してバンド部材の意図しない箇所が極力当てられないようにすることにある。
【解決手段】バンド部材(5)は、燃料収容部材4を車両下側から支持する本体部位10と、本体部位10から車両上側に曲げられている曲げ部位11と、曲げ部位11から外向きに張出して車両ボディに固定される固定部位12とを有し、曲げ部位11と固定部位12との外縁部分には、その外形をなすように曲面部(30,31)が設けられていると共に、曲げ部位11と固定部位12の間には、荷重の加えられた曲げ部位11から固定部位12にかけての部分の変形を促す脆弱部(50,51)が設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンド部材を用いた車両の燃料収容部材の支持構造において、
前記バンド部材は、前記燃料収容部材を車両下側から支持する本体部位と、前記本体部位から車両上側に曲げられている曲げ部位と、前記曲げ部位から外向きに張出して車両ボディに固定される固定部位とを有し、
前記曲げ部位と前記固定部位との外縁部分には、その外形をなすように曲面部が設けられていると共に、前記曲げ部位と前記固定部位の間には、荷重の加えられた前記曲げ部位から前記固定部位にかけての部分の変形を促す脆弱部が設けられている車両の燃料収容部材の支持構造。
【請求項2】
前記バンド部材には、前記曲げ部位から前記固定部位に向かう方向に延びる剛性部が設けられている請求項1に記載の車両の燃料収容部材の支持構造。
【請求項3】
前記曲げ部位には、前記燃料収容部材に向けて盛り上がる凸条部が設けられている請求項1又は2に記載の車両の燃料収容部材の支持構造。
【請求項4】
前記曲げ部位から前記固定部位に向かう方向と直交する方向を前記曲げ部位の幅方向とした場合に、
前記曲げ部位の外縁部分は、その幅方向の寸法を小さくするように車両下側に向かうにつれて次第に幅方向内向きに傾斜している請求項1又は2に記載の車両の燃料収容部材の支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンド部材を用いた車両の燃料収容部材の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用のバンド部材が特許文献1及び2に開示されている。特許文献1の車両では、その床下側に配設された燃料タンクがバンド部材によって支持されている。このバンド部材は、その本体部分が燃料タンクの車両下側を支持するように車両前後方向に延びている。またバンド部材の前後の端部は、平板状に形成されて車両上側に曲げられていると共に、その前後の端部の先端側には、平板状の締結部が外向きに張出すように設けられている。そして締結部が車両ボディに締結されることで、この締結部の設けられたバンド部材が、燃料タンクを支持した状態で車両ボディに固定されている。
【0003】
また特許文献2のタンクバンドは、その本体部分が燃料タンクを車両下側から支持した状態で車両前後方向に延びており、その平板状の後端部が車両上側に曲げられている。またタンクバンドの後端部の先端には、車両後側に張出す平板状の締結部が設けられており、この締結部が、車両後部で車幅方向に延びるリアサスペンションメンバ(車両ボディ)に締結固定されている。そしてタンクバンドには、その車両上側に曲げられた後端部に、ソリッドな樹脂製のスペーサが燃料タンクを臨むように取付けられている。上記した構成では、車両後突時において、先ず、リアサスペンションメンバとタンクバンドの後端部とが車両前側に押し出される。これにより、タンクバンドの後端部に固定されたスペーサが燃料タンクに当てられるようになる。そしてスペーサに押された燃料タンクが、リアサスペンションメンバとの距離を保つように車両前側に移動することで、この燃料タンクの脆弱な箇所にリアサスペンションメンバが当たり難くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-265620号公報
【特許文献2】特開2022-93766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで上記した構成では、車両衝突時の衝撃荷重がバンド部材に加えられることで、そのバンド部材の平板状の端部が燃料収容部材側に移動する。このときバンド部材がねじれるなどして、その平板状の端部の意図しない箇所、特に角張った外縁部分が燃料収容部材に強く当てられないように(エッジ当りしないように)配慮すべきである。そこで車両衝突時の衝撃荷重を吸収するなどして、バンド部材の意図しない箇所が燃料収容部材に強く当てられないようにすることが考えられる。例えば特許文献2の様に、車両上側に曲げられたバンド部材の端部に緩衝部材としてのスペーサを取付け、このスペーサの変形によって衝撃荷重を吸収することが考えられる。しかし、スペーサにて燃料タンクを車両前側に移動させる必要上、このスペーサを大きく変形させられないため、バンド部材に加えられた荷重を十分に吸収し難かった。また上記したエッジ当り回避の観点からスペーサの形状に配慮する必要もある。本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、バンド部材に加えられる荷重をより確実に吸収しつつ、燃料収容部材に対してバンド部材の意図しない箇所が極力当てられないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段として、第1発明の車両の燃料収容部材の支持構造は、バンド部材を用いた車両の燃料収容部材の支持構造である。そしてバンド部材は、燃料収容部材を車両下側から支持する本体部位と、本体部位から車両上側に曲げられている曲げ部位と、曲げ部位から外向きに張出して車両ボディに固定される固定部位とを有している。この種の構成では、バンド部材に加えられる荷重をより確実に吸収しつつ、燃料収容部材に対してバンド部材の意図しない箇所が極力当てられないようにすることが望ましい。そこで本発明の曲げ部位と固定部位との外縁部分には、その外形をなすように曲面部が設けられていると共に、曲げ部位と固定部位の間には、荷重の加えられた曲げ部位から固定部位にかけての部分の変形を促す脆弱部が設けられている。本発明のバンド部材は、その曲げ部位から固定部位にかけての部分が脆弱部の働きで変形することで、加えられた荷重をより確実に吸収できるようになっている。そして燃料収容部材にバンド部材が当てられた際にも、曲げ部位と固定部位の外縁部分に曲面部を設けたことで、燃料収容部材とバンド部材の角張った外縁部分(意図しない箇所)との当接を極力回避できるようになる。
【0007】
第2発明の車両の燃料収容部材の支持構造は、第1発明の車両の燃料収容部材の支持構造において、バンド部材には、曲げ部位から固定部位に向かう方向に延びる剛性部が設けられている。本発明では、曲げ部位と固定部位とを剛性部で補強して、バンド部材のねじれ変形を抑制することにより、燃料収容部材とバンド部材の意図しない箇所との当接をより確実に回避できるようになる。
【0008】
第3発明の車両の燃料収容部材の支持構造は、第1発明又は第2発明の車両の燃料収容部材の支持構造において、曲げ部位には、燃料収容部材に向けて盛り上がる凸条部が設けられている。本発明では、バンド部材が荷重を受けた際に、その曲げ部位に設けた凸条部が燃料収容部材に真っ先に当てられるようになる。そしてバンド部材は、凸条部で燃料収容部材を押しつつ、曲げ部位から固定部位にかけての部分を変形させられるようになる。
【0009】
第4発明の車両の燃料収容部材の支持構造は、第1発明又は第2発明の車両の燃料収容部材の支持構造において、曲げ部位から固定部位に向かう方向と直交する方向を曲げ部位の幅方向とした場合に、曲げ部位の外縁部分は、その幅方向の寸法を小さくするように車両下側に向かうにつれて次第に幅方向内向きに傾斜している。本発明では、曲げ部位の外縁部分を内向きに傾斜させたことで、燃料収容部材とバンド部材の意図しない箇所との当接を更に確実に回避できるようになる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る第1発明によれば、バンド部材に加えられる荷重をより確実に吸収しつつ、燃料収容部材に対してバンド部材の意図しない箇所が極力当てられないようにすることができる。また第2発明によれば、燃料収容部材とバンド部材の意図しない箇所との当接をより確実に回避できるようになる。また第3発明によれば、バンド部材に加えられる荷重を更に確実に吸収しつつ、燃料収容部材とバンド部材の意図しない箇所との当接をより確実に回避できるようになる。そして第4発明によれば、燃料収容部材とバンド部材の意図しない箇所との当接を更に確実に回避できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】燃料収容部材を示す車両の透視斜視図である。
【
図5】実施例1における衝突初期の車両内部を示す概略図である。
【
図6】実施例1における衝突中期の車両内部を示す概略図である。
【
図7】実施例1における衝突後期の車両内部を示す概略図である。
【
図11】実施例2における衝突初期の車両内部を示す概略図である。
【
図12】実施例2における衝突中期の車両内部を示す概略図である。
【
図13】実施例2における衝突後期の車両内部を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を、
図1~
図13を参照して説明する。各図には、車両の前後方向と左右方向(車幅方向)と上下方向(車両の高さ方向)を示す矢線を適宜図示する。また
図1では、便宜上、車両の右側部分に位置する部材を図示し、左側部分に位置する部材の図示を省略する。そして
図5~
図7及び
図11~
図13では、車両の燃料収容部材の支持構造の主な構成を図示し、その他の構成(サイドメンバや弾性体等)を適宜省略している。
【0013】
車両の燃料収容部材の支持構造について説明する前に、先ず、車両2に装備される燃料収容部材4について説明する。
図1に示す車両2の床下側には、車両ボディを構成するように、左右一対のサイドメンバ3が車両前後方向に延びるように配設されている。この左右のサイドメンバ3は、車幅方向に延びるクロスメンバ(図示省略)によって互いに連結されている。また燃料収容部材4は、車両前後方向に延びるように形成されており、右側のサイドメンバ3に沿うように略水平に配置されている。そして燃料収容部材4は、後述する前後のバンド部材5,6に支持された状態で車両2の床下側に装備されている。
【0014】
[実施例1の車両の燃料収容部材の支持構造]
そして車両の燃料収容部材の支持構造は、
図1に示す燃料収容部材4を前後のバンド部材5,6を用いて支持するための構造である。即ち、燃料収容部材4は、前側のバンド部材5と後側のバンド部材6にて車両下側から支持されている。この前後のバンド部材5,6は、それぞれ車幅方向に延びるように形成されており、燃料収容部材4をバランスよく支持するために車両前後方向に適宜の間隔をあけて設けられている。そして前後のバンド部材5,6は、その車幅方向の両端側が車両ボディに固定されており、例えば右側の端部側は、上記した右側のサイドメンバ3の底面に固定されている(
図2参照)。
【0015】
上記した車両2では、例えば
図2に示すポール状の衝突物100が車両2の右側面に衝突することで、その衝撃荷重Fが右側のサイドメンバ3に加えられる(
図2では、便宜上、衝撃荷重の加えられる方向を示す矢線に荷重を示す符号Fを付す)。そして車両の燃料収容部材の支持構造では、右側のサイドメンバ3に衝撃荷重Fが加えられることで、この右側のサイドメンバ3に固定された前側のバンド部材5等が燃料収容部材4側に移動するようになる。この種の支持構造では、上記したように、バンド部材5等の意図しない箇所(例えばバンド部材の符号11A,11B等で示す角張った部分)が燃料収容部材4に強く当てられないように配慮すべきである。そこで本実施例では、後述する構成によって、バンド部材5等に加えられる荷重をより確実に吸収しつつ、燃料収容部材4に対してバンド部材5等の意図しない箇所が極力当てられないようにすることとした。ここで
図1に示す前後のバンド部材5,6は略同一構成を有しているため、以下に、前側のバンド部材5の右側部分を一例にその構成を詳述する。
【0016】
[バンド部材]
図2及び
図3に示す前側のバンド部材5は、車幅方向に延びる平板状の本体部位10によって燃料収容部材4を車両下側から支持している。また前側のバンド部材5は、その右側部分が車両上側にクランク状に曲げられている。即ち、前側のバンド部材5は、その本体部位10に連続する平板状の右端部が車両上側に曲げられており、この車両上側に曲げられた右端部が曲げ部位11を構成している。この曲げ部位11は、燃料収容部材4と右側のサイドメンバ3間に配置されていると共に、燃料収容部材4から離れるに従って次第に車両上側に曲げられている。また前側のバンド部材5の右側の先端部は、曲げ部位11から略水平に外向きに(各図の右側)に張出しており、この張出した先端部が固定部位12を形成している。そして固定部位12が右側のサイドメンバ3の底面に締結等の手法で固定されることで、この固定部位12の設けられた前側のバンド部材5が、燃料収容部材4を支持した状態で右側のサイドメンバ3に固定されている。なお前側のバンド部材5の本体部位10から曲げ部位11の下部にかけての部分は、緩衝部材としての弾性体13で覆われている。そして前側のバンド部材5では、弾性体13から露出する曲げ部位11の上部と固定部位12とに、後述するプロテクタ部20が固定されて一体化されている。
【0017】
図3に示すプロテクタ部20は、車幅方向に延びるように形成されており、前側のバンド部材5の曲げ部位11の上部から固定部位12にかけての部分に溶接等の手法で固定されている。また
図3及び
図4を参照して、前側のバンド部材5の曲げ部位11から固定部位12に向かう方向と直交する前後方向の寸法を幅寸法W0とした場合、プロテクタ部20の幅寸法W1は前側のバンド部材5の幅寸法W0よりも大きくなっている。これにより、
図3に示す前側のバンド部材5の車両上側を覆うようにプロテクタ部20が一体化され、このプロテクタ部20にて、曲げ部位11の上部の外形と固定部位12の外形が構成されるようになる。
【0018】
[曲面部]
また
図3及び
図4を参照して、上記したプロテクタ部20は、その幅方向における前後の上縁部分にR付けがなされている。これにより、R付けされた前側の上外縁にて前側の曲面部30が形成され、R付けされた後側の上外縁にて後側の曲面部31が形成されるようになる。そして前後の曲面部30,31は、
図3に示すようにプロテクタ部20の一体化された曲げ部位11の上部から固定部位12にかけての部分に連続して形成されている。これにより、前側の曲面部30によって、曲げ部位11の角張った前側の外縁部分11Aと、固定部位12の角張った前側の外縁部分12Aとが覆われるようになる。また同様に、後側の曲面部31によって、曲げ部位11の角張った後側の外縁部分11Bと、固定部位12の角張った後側の外縁部分12Bとが覆われるようになる。
【0019】
[剛性部]
またプロテクタ部20は、
図4に示すように断面逆U字形に形成されることで、そのプロテクタ部20の前壁部22と後壁部23とが、上壁部21から車両下側に向けて曲げられている。そして
図3及び
図4を参照して、前壁部22と後壁部23とは、その車両上下方向(高さ方向)の寸法S1が曲げ部位11と固定部位12の厚み寸法S0よりも大きくなるように設定されている。これにより、前壁部22と後壁部23とは、前側のバンド部材5の曲げ部位11から固定部位12に向けて延びる縦壁状に形成されるようになる。そして前壁部22によって前側の剛性部40が形成され、この前側の剛性部40によって前側の角張った外縁部分11A,12Aが上側と前側とから覆い隠される。また後壁部23によって後側の剛性部41が形成され、この後側の剛性部41によって後側の角張った外縁部分11B,12Bが上側と後側とから覆い隠される。そして前後の剛性部40,41が、
図3に示すように曲げ部位11から固定部位12に延びるように設けられることで、荷重が加えられた際の前側のバンド部材5のねじれ変形を抑制できるようになる。
【0020】
[脆弱部]
また
図3に示す前側のバンド部材5では、曲げ部位11と固定部位12の間に位置する前壁部22及び後壁部23が略三角形状に切欠かれている。そして前壁部22の切欠かれた部分にて前側の脆弱部50が構成され、後壁部23の切欠かれた部分にて後側の脆弱部51が構成されている。そして前後の脆弱部50,51は、その他のプロテクタ部20の一体化した前側のバンド部材部分に比して、荷重入力時に変形し易い箇所となっている。これにより、荷重の加えられた前側のバンド部材5は、その曲げ部位11から固定部位12にかけての部分が、後述するように前後の脆弱部50,51の働きで変形し易くなる。即ち、前側のバンド部材5は、前後の脆弱部50,51を基点として、その固定部位12に対する曲げ部位11の傾き度合いを変えられるように変形することが可能となる。
【0021】
[荷重が加えられた際のバンド部材の挙動]
車両の燃料収容部材の支持構造では、
図2に示す右側のサイドメンバ3に衝撃荷重Fが加えられることで、この右側のサイドメンバ3に固定された前側のバンド部材5が燃料収容部材4側に移動するようになる。このとき荷重の加えられた前側のバンド部材5の意図しない箇所が燃料収容部材4に強く当てられることは極力回避すべきである。そこで本実施例では、
図3に示す曲げ部位11と固定部位12との外縁部分には、その外形をなすように曲面部(30,31)が設けられていると共に、曲げ部位11と固定部位12の間には、荷重の加えられた曲げ部位11から固定部位12にかけての部分の変形を促す脆弱部(50,51)が設けられている。上記した構成では、曲面部(30,31)の働きで、燃料収容部材4と前側のバンド部材5の角張った外縁部分(11A,11B等)との当接を極力回避できるようになる。そして前側のバンド部材5は、脆弱部(50,51)の働きにより、加えられた荷重をより確実に吸収できるようになる。そこで以下に、前側のバンド部材5の各部の働きを詳細に説明する。
【0022】
先ず、
図5及び
図6を参照して、右側のサイドメンバ3に衝撃荷重Fが加えられることで、この右側のサイドメンバ3に固定された固定部位12が燃料収容部材4に押される。このとき前側のバンド部材5は、その曲げ部位11を車両内側に傾けながら次第に燃料収容部材4側に移動するようになる。そして前側のバンド部材5は、
図3を参照して、前後の剛性部40,41が曲げ部位11から固定部位12に向けて延びるように形成されている。このため荷重が加えられた前側のバンド部材5は、その前後の剛性部40,41によってねじれ変形が極力抑制されることで、曲げ部位11と固定部位12の外縁部分11A,11B(12A,12B)が燃料収容部材4側に向き難くされている。更に前側のバンド部材5には、そのプロテクタ部20の一体化された曲げ部位11と固定部位12の外縁部分に、前側の曲面部30と後側の曲面部31とが設けられている。このため前側のバンド部材5がねじれた際にも、前後の曲面部30,31のいずれか一方が燃料収容部材4に当てられるようになる。
【0023】
また
図3及び
図5~
図7を参照して、荷重の加えられた前側のバンド部材5は、その曲げ部位11と固定部位12の間に設けられた前後の脆弱部50,51の働きで荷重を吸収できるように構成されている。即ち、
図5及び
図6を参照して、前側のバンド部材5は、その固定部位12が右側のサイドメンバ3と共に車両内側に移動することで、曲げ部位11が車両内側に向けて次第に傾くようになる。このとき前側のバンド部材5は、その脆弱部50等を基点として、曲げ部位11に対する固定部位12の傾き角度が次第に小さくなるように変形することができる(両部位間の角度θ2<θ1)。そして
図6及び
図7を参照して、燃料収容部材4に前側のバンド部材5が当てられた後、この前側のバンド部材5が燃料収容部材4を車両内側に押しつつ、曲げ部位11と固定部位12とが更に変形するようになる(両部位間の角度θ3<θ2)。こうして曲げ部位11から固定部位12にかけての部分が脆弱部50等の働きで変形することで、前側のバンド部材5は、加えられた荷重をより十分に吸収することが可能になる。
【0024】
以上説明した通り、本実施例のバンド部材5等は、その曲げ部位11から固定部位12にかけての部分が脆弱部(50,51)の働きで変形することで、加えられた荷重をより確実に吸収できるようになっている。そして燃料収容部材4にバンド部材5等が当てられた際にも、曲げ部位11と固定部位12の外縁部分に曲面部(30,31)を設けたことで、燃料収容部材4とバンド部材5等の角張った外縁部分(意図しない箇所)との当接を極力回避できるようになる。このため本実施例によれば、バンド部材5等に加えられる荷重をより確実に吸収しつつ、燃料収容部材4に対してバンド部材5等の意図しない箇所が極力当てられないようにすることができる。さらに本実施例では、曲げ部位11と固定部位12とを剛性部(40,41)で補強して、バンド部材5等のねじれ変形を抑制することにより、燃料収容部材4とバンド部材5等の意図しない箇所との当接をより確実に回避できるようになる。
【0025】
[実施例2の車両の燃料収容部材の支持構造]
次に実施例2の車両の燃料収容部材の支持構造について説明する。この実施例2の車両の燃料収容部材の支持構造は、実施例1の車両の燃料収容部材の支持構造と同一の基本構成を有しているため、実施例2の支持構造では、実施例1と同一の構成については、対応する符号を付す等して詳細な説明を省略する。そして
図8に示す実施例2の車両の燃料収容部材の支持構造は、後述するようにバンド部材5Aの曲げ部位11の外形形状が実施例1と異なっている。
【0026】
先ず、
図8に示すバンド部材5Aの概要について説明する。このバンド部材5Aには、実施例1と同様に曲げ部位11の上部と固定部位12とにプロテクタ部20Aが固定されて一体化されている。このプロテクタ部20Aには、その前後の外縁に前後の曲面部30,31が形成されていると共に、前壁部22と後壁部23とから前後の剛性部40,41が形成されている。またバンド部材5Aにも、その曲げ部位11と固定部位12の間に前後の脆弱部50,51が形成されている。そして
図9に示すように、曲げ部位11では、そのプロテクタ部20Aが固定部位12から車両内側(
図9の左側)に張出したのち略直角に車両下側に延びている(固定部位とプロテクタ部間の角度θ=90°)。
【0027】
[凸条部]
そして
図8及び
図9を参照して、曲げ部位11には、そのプロテクタ部20Aに凸条部60が車両前後方向に延びるように形成されている。この凸条部60は、
図9に示すように、プロテクタ部20Aを局部的に盛り上がらせる方向に変形させることで形成されており、燃料収容部材4側に向けて山なりに盛り上がっている。そして凸条部60の頂面部分と燃料収容部材4の側面間の離間距離Lは、その他のプロテクタ部分に比して短くなるように設定されている。こうしてプロテクタ部20Aの略直角に曲げられた部分に凸条部60を設けたことで、この凸条部60が、燃料収容部材4の側面に対向して近接配置されるようになる。
【0028】
また
図10に示す曲げ部位11では、そのプロテクタ部20Aの前後の外縁部分210,220が互いに近づく方向に傾斜するように形成されている。これにより、プロテクタ部20Aの一体化された曲げ部位11は、その幅寸法W1が車両下側に向かうにつれて次第に小さくなっている。即ち、プロテクタ部20Aは、その前側の外縁部分210が車両下側に向かうにつれて次第に車両後側(幅方向内向き)に傾斜している。また、プロテクタ部20Aの後側の外縁部分220も、車両下側に向かうにつれて次第に車両前側(幅方向内向き)に傾斜している。こうして曲げ部位11では、そのプロテクタ部20Aの前後の外縁部分210,220を内向きに傾斜させた絞り形状としている。そして曲げ部位11の絞り形状がその下端部24まで連続することで、この下端部24の幅寸法が相対的に小さくなってその他の部分に比して幅方向外側に張り出さないようになる。
【0029】
[荷重が加えられた際のバンド部材の挙動]
上記した構成では、
図11及び
図12を参照して、右側のサイドメンバ3に衝撃荷重Fが加えられることで、この右側のサイドメンバ3に固定された固定部位12が燃料収容部材4に押される。そしてバンド部材5Aの曲げ部位11では、そのプロテクタ部20Aの略直角に曲げられた部分に凸条部60が設けられることで、この凸条部60が、燃料収容部材4の側面に対向して近接配置されている。このため、曲げ部位11が燃料収容部材4側に移動することで、その凸条部60が燃料収容部材4に真っ先に当てられて、この凸条部60の頂面部分と燃料収容部材4の側面とが面的に当接するようになる。これにより、バンド部材5Aでは、プロテクタ部20Aの意図しない箇所が燃料収容部材4に当接し難くなり、とりわけプロテクタ部20Aの下端部24の当接が極力回避される。そして本実施例では、
図10に示すように、プロテクタ部20Aの前後の外縁部分210,220を内向きに傾斜させて、下端部24を幅方向外側に張り出さないようにしたため、この下端部24が燃料収容部材4に一層当接し難くなる。
【0030】
また
図8を参照して、本実施例のバンド部材5Aも、曲げ部位11と固定部位12の間に設けられた前後の脆弱部50,51の働きで荷重を吸収できるように構成されている。即ち、バンド部材5Aは、
図11及び
図12を参照して、その脆弱部50等を基点として、曲げ部位11に対する固定部位12の傾き角度が次第に小さくなるように変形することができる(両部位間の角度θB<θA)。そして
図12及び
図13を参照して、燃料収容部材4にバンド部材5Aの凸条部60が当てられた後、この凸条部60が燃料収容部材4を車両内側に押しつつ、曲げ部位11と固定部位12とが更に変形するようになる(両部位間の角度θC<θB)。特に
図9に示す曲げ部位11では、その車幅方向の変形ストロークDSを確保できるように、略直角に曲げられたプロテクタ部20Aを車両内側に離間させて配置している。これにより、燃料収容部材4に凸条部60が当てられた後においても、曲げ部位11と固定部位12の変形量をより確実に確保できるようになる。
【0031】
以上説明した通り本実施例では、バンド部材5Aに加えられる荷重をより確実に吸収しつつ、燃料収容部材4に対してバンド部材5Aの意図しない箇所が極力当てられないようにすることができる。更に本実施例では、バンド部材5Aが荷重を受けた際に、その曲げ部位11に設けた凸条部60が燃料収容部材4に真っ先に当てられるようになる。そしてバンド部材5Aは、その凸条部60で燃料収容部材4を押しつつ、曲げ部位11から固定部位12にかけての部分を変形させられるようになる。そして本実施例では、曲げ部位11の外縁部分210,220を内向きに傾斜させたことで、燃料収容部材4とバンド部材5Aの意図しない箇所(下端部24等)との当接を更に確実に回避できるようになる。
【0032】
本実施形態の車両の燃料収容部材の支持構造は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。本実施形態では、バンド部材の構成を例示したが、バンド部材の構成を限定する趣旨ではない。例えばバンド部材では、プロテクタ部を省略して、曲げ部位と固定部位とに曲面部と脆弱部とを直接設けることができる。また脆弱部は、剛性部に設けた孔部(
図3で剛性部を前後に貫通する貫通孔)や、薄肉化された部位で形成することもできる。また曲げ部位と固定部位とにビード状の剛性部を形成する場合、脆弱部を、そのビード高さが相対的に低い箇所で形成したり、ビード状の剛性部を分断した箇所で形成したり、ビード状の剛性部に孔部をあけた箇所で形成したりすることができる。また実施例1と2の構成は適宜組み合わせて用いることができる。例えば実施例1のバンド部材に、凸条部と、曲げ部位の外縁部分の傾斜形状と、プロテクタ部を離間させる構成の少なくとも一つを適用できる。なお凸条部は、燃料収容部材に真っ先に当てられるように構成されておればよく、必ずしもプロテクタ部を略直角に曲げておく必要はない。また凸条部の構成も適宜変更可能であり、例えば
図9に示す断面視で略台形状に形成することもでき、凸条部を上下方向に延設することもできる。そして曲げ部位は、前後の外縁部分の少なくとも一方を幅方向内向きに傾斜させておくことができる。
【0033】
また本実施形態では、燃料収容部材の構成を例示したが、燃料収容部材の構成を限定する趣旨ではない。この燃料収容部材は、液体又は気体又は固体の燃料を収容することができ、その設置位置や形状も適宜変更可能である。そしてバンド部材は、燃料収容部材の設置位置に応じて車両の適宜の方向に延設することができる。またバンド部材を固定すべき車両ボディはサイドメンバに限定されず、燃料収容部材の近傍にある各種の車両ボディにバンド部材を固定することができる。
【符号の説明】
【0034】
2 車両
3 サイドメンバ
4 燃料収容部材
5 前側のバンド部材
6 後側のバンド部材
10 本体部位
11 曲げ部位
11A,11B (曲げ部位の)外縁部分
12 固定部位
12A,12B (固定部位の)外縁部分
13 弾性体
20 プロテクタ部
21 上壁部
22 前壁部
23 後壁部
30 前側の曲面部
31 後側の曲面部
40 前側の剛性部
41 後側の剛性部
50 前側の脆弱部
51 後側の脆弱部
5A 実施例2のバンド部材
20A 実施例2のプロテクタ部
24 下端部
60 凸条部
210,220 (曲げ部位のプロテクタ部の)外縁部分
100 衝突物