(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053816
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】液体の定容方法、定容システム、及び定容プログラム
(51)【国際特許分類】
G01F 23/292 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
G01F23/292 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160257
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】306017014
【氏名又は名称】地方独立行政法人 岩手県工業技術センター
(71)【出願人】
【識別番号】503366841
【氏名又は名称】株式会社アイカムス・ラボ
(71)【出願人】
【識別番号】520006148
【氏名又は名称】株式会社アイ・モーションテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100142734
【弁理士】
【氏名又は名称】安 裕 希
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 辰雄
(72)【発明者】
【氏名】箱崎 義英
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 英直
(72)【発明者】
【氏名】岡田 靖
【テーマコード(参考)】
2F014
【Fターム(参考)】
2F014AB02
2F014FA04
2F014GA01
(57)【要約】
【課題】容器を写した画像に基づいて、定容判定を確実に実行することができる液体の定容方法等を提供する。
【解決手段】液体の定容方法は、標線が記された容器に注入される液体を定容する方法であって、容器の標線を含む領域をカメラで撮影することにより、画像を生成する画像生成ステップと、上記画像において、標線の領域を認識する標線認識ステップと、上記画像において、容器に注入された液体の液面を認識し、該液面を表す曲線を取得する液面認識ステップと、標線の領域と曲線とが交差している状態に基づいて、液体が定容されたか否かを判定する定容判定ステップと、を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標線が記された容器に注入される液体を定容する方法であって、
前記容器の前記標線を含む領域をカメラで撮影することにより、画像を生成する画像生成ステップと、
前記画像において、前記標線の領域を認識する標線認識ステップと、
前記画像において、前記容器に注入された液体の液面を認識し、該液面を表す曲線を取得する液面認識ステップと、
前記標線の領域と前記曲線とが交差している状態に基づいて、前記液体が定容されたか否かを判定する定容判定ステップと、
を含む液体の定容方法。
【請求項2】
前記曲線は、下に凸の2次曲線であり、
前記標線の領域の上端線と前記曲線との交点を検出し、前記交点が2点検出された場合に、該2点の交点間距離を算出する交点検出ステップをさらに含み、
前記定容判定ステップは、前記交点間距離が閾値を下回った際に、液体が定容されたと判定する、
請求項1に記載の液体の定容方法。
【請求項3】
前記交点検出ステップの前に、前記標線の領域と前記曲線とが交差する前の状態で、前記容器に注入された液体の液面を近似する2次曲線の近似式を取得し、該近似式に基づいて、該2次曲線の最小点が前記標線の領域内の所定位置と一致した場合に前記標線の領域の上端線と該2次曲線とが交差することになる2つの交点の交点間距離を、前記閾値として算出する閾値算出ステップをさらに含む、請求項2に記載の液体の定容方法。
【請求項4】
前記画像において液面の底部が前記標線の領域に隠れたか否かを判定するステップをさらに含み、
前記定容判定ステップは、前記画像において液面の底部が前記標線の領域に隠れたと判定された後で判定を開始する、請求項2又は3に記載の液体の定容方法。
【請求項5】
前記曲線は、下に凸の2次曲線であり、
前記標線の領域の上端線及び下端線と前記曲線との交点を検出する交点検出ステップをさらに含み、
前記定容判定ステップは、前記標線の領域の上端線と前記曲線との交点が2点検出され、且つ、前記標線の領域の下端線と前記曲線との交点が検出されない場合に、前記液体が定容されたと判定する、
請求項1に記載の液体の定容方法。
【請求項6】
標線が記された容器に注入される液体を定容する定容システムであって、
前記容器の前記標線を含む領域を撮影し、画像信号を出力するカメラと
前記カメラから出力された画像信号に基づいて画像を生成する画像生成部と、
前記画像において、前記標線の領域を認識する標線認識部と、
前記画像において、前記容器に注入された液体の液面を認識し、該液面を表す曲線を取得する液面認識部と、
前記標線の領域と前記曲線とが交差している状態に基づいて、前記液体が定容されたか否かを判定する定容判定部と、
を備える定容システム。
【請求項7】
標線が記された容器に注入される液体を定容する定容システムにおいてコンピュータに実行させる定容プログラムであって、
前記容器の前記標線を含む領域をカメラに撮影させることにより、画像を生成する画像生成ステップと、
前記画像において、前記標線の領域を認識する標線認識ステップと、
前記画像において、前記容器に注入された液体の液面を認識し、該液面を表す曲線を取得する液面認識ステップと、
前記標線の領域と前記曲線とが交差している状態に基づいて、前記液体が定容されたか否かを判定する定容判定ステップと、
を実行させる定容プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の定容方法、定容システム、及び定容プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
メスフラスコ等の容器を用いて液体を定容する場合、標線及び液面を目視観察しながら容器に液体を注入し、液面が標線に一致した時点で定容完了とする。容器内において液面は、液体と容器の表面状態との組み合わせにより、凹状又は凸状に屈曲した面(メニスカス)となる。そのため、液面が凹状の場合には下端を標線に合わせ、液面が凸状の場合には上端を標線に合わせることで定容を行う。
【0003】
近年では、目視観察の代わりに、容器をカメラで撮影することにより得られた画像に基づき、自動で定容判定を行う技術も提案されている。例えば、特許文献1には、撮影装置が撮影する画像のうちの標線を含む範囲である第1フレームにおいて容器に注入される液体の液面を認識し、液面および標線の高さの差を検出し、液面および標線の高さの差が予め設定された閾値より小さいと判定された後、上記撮影装置が撮影する画像のうちの標線を含み第1フレームより狭い範囲である第2フレームにおいて容器に注入される液体の液面を認識し、液面の高さが標線に達するかを判定する液量検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1においては、画像に写った標線と液面の高さとの差に基づいて定容判定を行っている。この液面の高さとして、引用文献1においては、液面の形状が凸状であれば液面の最高点、液面の形状が凹状であれば液面の最低点、そのいずれでもない場合には液面の中間点を検出している。
【0006】
しかしながら、実際の画像において、標線は、1次元的な線ではなく、幅のある帯状の面として表示される。そのため、画像において液面が標線の領域と重なった場合、液面の一部が標線の領域に隠れ、画像内において液面の高さを認識することができない状況が発生する。それにより、液体が定容されたか否かを判定できなくなってしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、容器を写した画像に基づいて、定容判定を確実に実行することができる液体の定容方法、定容システム、及び定容プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様である液体の定容方法は、標線が記された容器に注入される液体を定容する方法であって、前記容器の前記標線を含む領域をカメラで撮影することにより、画像を生成する画像生成ステップと、前記画像において、前記標線の領域を認識する標線認識ステップと、前記画像において、前記容器に注入された液体の液面を認識し、該液面を表す曲線を取得する液面認識ステップと、前記標線の領域と前記曲線とが交差している状態に基づいて、前記液体が定容されたか否かを判定する定容判定ステップと、を含むものである。
【0009】
上記液体の定容方法において、前記曲線は、下に凸の2次曲線であり、前記標線の領域の上端線と前記曲線との交点を検出し、前記交点が2点検出された場合に、該2点の交点間距離を算出する交点検出ステップをさらに含み、前記定容判定ステップは、前記交点間距離が閾値を下回った際に、液体が定容されたと判定しても良い。
【0010】
上記液体の定容方法は、前記交点検出ステップの前に、前記標線の領域と前記曲線とが交差する前の状態で、前記容器に注入された液体の液面を近似する2次曲線の近似式を取得し、該近似式に基づいて、該2次曲線の最小点が前記標線の領域内の所定位置と一致した場合に前記標線の領域の上端線と該2次曲線とが交差することになる2つの交点の交点間距離を、前記閾値として算出する閾値算出ステップをさらに含んでも良い。
【0011】
上記液体の定容方法は、前記画像において液面の底部が前記標線の領域に隠れたか否かを判定するステップをさらに含み、前記定容判定ステップは、前記画像において液面の底部が前記標線の領域に隠れたと判定された後で判定を開始しても良い。
【0012】
上記液体の定容方法において、前記曲線は、下に凸の2次曲線であり、前記標線の領域の上端線及び下端線と前記曲線との交点を検出する交点検出ステップをさらに含み、前記定容判定ステップは、前記標線の領域の上端線と前記曲線との交点が2点検出され、且つ、前記標線の領域の下端線と前記曲線との交点が検出されない場合に、前記液体が定容されたと判定しても良い。
【0013】
本発明の別の態様である定容システムは、標線が記された容器に注入される液体を定容する定容システムであって、前記容器の前記標線を含む領域を撮影し、画像信号を出力するカメラと前記カメラから出力された画像信号に基づいて画像を生成する画像生成部と、前記画像において、前記標線の領域を認識する標線認識部と、前記画像において、前記容器に注入された液体の液面を認識し、該液面を表す曲線を取得する液面認識部と、前記標線の領域と前記曲線とが交差している状態に基づいて、前記液体が定容されたか否かを判定する定容判定部と、を備えるものである。
【0014】
本発明のさらに別の態様である液体の定容プログラムは、標線が記された容器に注入される液体を定容する定容システムにおいてコンピュータに実行させる定容プログラムであって、前記容器の前記標線を含む領域をカメラに撮影させることにより、画像を生成する画像生成ステップと、前記画像において、前記標線の領域を認識する標線認識ステップと、前記画像において、前記容器に注入された液体の液面を認識し、該液面を表す曲線を取得する液面認識ステップと、前記標線の領域と前記曲線とが交差している状態に基づいて、前記液体が定容されたか否かを判定する定容判定ステップと、を実行させるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、画像において認識された標線の領域と液面を表す曲線とが交差している状態に基づいて液体が定容されたか否かを判定するので、画像において液面の一部が標線の領域に隠れている場合であっても、画像に基づいて定容判定を確実に実行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る定容システムの概略構成を示す図である。
【
図2】
図1に示す定容システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る定容システムの動作を示すフローチャートである。
【
図4】表示部に表示される画像を例示する模式図である。
【
図5】標線とカメラとの位置合わせ処理を示すフローチャートである。
【
図6】標線とカメラとの位置合わせ処理を説明するための模式図である。
【
図7】閾値の取得処理を示すフローチャートである。
【
図8】閾値の取得処理を説明するための模式図である。
【
図9】閾値の取得処理を説明するための模式図である。
【
図10】関心領域(ROI)が設定された画像を示す模式図である。
【
図11】液面の底部に対する第1の判定処理を説明するための模式図である。
【
図12】液面の底部に対する第1の判定処理を説明するための模式図である。
【
図13】液面の底部に対する第2の判定処理を説明するための模式図である。
【
図14】液面の底部に対する第2の判定処理を説明するための模式図である。
【
図15】定容の判定処理を説明するための模式図である。
【
図16】本発明の第2の実施形態に係る定容システムの動作を示すフローチャートである。
【
図17】本発明の第2の実施形態における定容の判定処理を説明するための模式図である。
【
図18】本発明の第2の実施形態における定容の判定処理を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係る液体の定容方法、定容システム、及び定容プログラムについて、図面を参照しながら説明する。なお、これらの実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、各図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
【0018】
以下の説明において参照する図面は、本発明の内容を理解し得る程度に形状、大きさ、及び位置関係を概略的に示しているに過ぎない。即ち、本発明は各図で例示された形状、大きさ、及び位置関係のみに限定されるものではない。また、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0019】
(第1の実施形態)
<定容システムの構成>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る定容システムの概略構成を示す図である。
図2は、同定容システムの概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態に係る定容システム1は、標線2aが記された容器であるメスフラスコ2に注入される液体3を定容するシステムである。定容システム1は、メスフラスコ2の標線2aを含む領域を撮影し、画像信号を出力するカメラ20と、カメラ20から出力された画像信号を取り込み、該画像信号から生成される画像に基づいて定容判定を行う情報処理装置10とを備える。
【0020】
カメラ20は、CCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を有し、所定のフレームレートでの動画撮影が可能な撮影装置である。撮像素子は、カメラ20に入射し、光学系により結像させられた光(被写体像)を受光面において受光し、光電変換を行うことにより電気信号を生成する。カメラ20は、この電気信号に対し、増幅、A/D変換等の所定の信号処理を施すことにより画像信号を生成して出力する。
【0021】
カメラ20は、ホルダー30を介してスタンド4に取り付けられている。ホルダー30には、該ホルダー30をスタンド4に沿って上下方向(鉛直方向)に移動させるホルダー駆動部31が設けられている。ホルダー駆動部31は、情報処理装置10の制御の下で動作し、メスフラスコ2に対するカメラ20の高さを調整する。
【0022】
もっとも、メスフラスコ2に対するカメラ20の高さは、カメラ20を上下方向に移動させる代わりに、メスフラスコ2を上下方向に移動させることにより調整しても良い。この場合、メスフラスコ2が載置される載置台5に、情報処理装置10の制御の下で動作する駆動機構を設けても良い。或いは、メスフラスコ2及びカメラ20双方の高さを変化させることにより、両者の相対位置を調整しても良い。
【0023】
さらに、カメラ20及びメスフラスコ2のいずれか一方又は両方に、水平方向に移動させるための駆動機構を設け、この駆動機構を情報処理装置10の制御の下で動作させることにより、カメラ20とメスフラスコ2との間の距離、及び、カメラ20の視野の左右方向における両者の相対位置を調整しても良い。
【0024】
メスフラスコ2の上方には、メスフラスコ2に液体3を注入する自動分注装置40が配置されている。自動分注装置40は、電気的な制御の下で所定量の液体をノズル41の先端から滴下する装置である。本実施形態において、自動分注装置40は、情報処理装置10の制御の下で、液体3をメスフラスコ2に注入する。なお、メスフラスコ2に液体を注入する手段は自動分注装置40に限定されるものではない。例えば、手動式ピペット又は電動式ピペットをユーザが操作することにより、メスフラスコ2に液体3を注入することとしても良い。
【0025】
また、定容システム1は、カメラ20の視野を含む領域を照明する照明装置50を備えても良い。照明装置50としては、例えば、白色LED光源を用いることができる。
【0026】
図2に示すように、情報処理装置10は、外部インタフェース(I/F)11と、表示部12と、入力部13と、記憶部14と、演算部15とを備える。
外部インタフェース11は、情報処理装置10に接続されたカメラ20、ホルダー駆動部31、自動分注装置40等の外部機器との間において、制御信号の出力や画像信号の入力など各種信号の入出力を行うインタフェースである。
【0027】
表示部12は、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示デバイスである。
入力部13は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、入力ボタン等の入力デバイスであり、ユーザによりなされた操作に応じた信号を演算部15に入力する。
【0028】
記憶部14は、例えば、ROM、RAM等の半導体メモリやディスクドライブなどのコンピュータ読取可能な記憶媒体を用いて構成される。記憶部14は、オペレーティングシステムプログラムやドライバプログラムの他、演算部15に所定の動作を実行させるためのプログラムや、該プログラムの実行中に使用される各種データ及びパラメータ等を記憶する。具体的には、記憶部14は、メスフラスコ2の標線2aを含む領域を写した画像に基づいて液体3が定容されたか否かを判定する定容プログラムを記憶するプログラム記憶部141と、定容判定において用いられる閾値を記憶する閾値記憶部142とを含む。
【0029】
演算部15は、CPU(Central Processing Unit)又はGPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェアを用いて構成され、プログラム記憶部141に記憶されているプログラムを読み込んで実行することにより、情報処理装置10の各部へのデータ転送や指示を行い、情報処理装置10の動作を統括的に制御する。また、演算部15は、カメラ20から出力された画像信号に基づいて画像を生成し、該画像に基づいて、メスフラスコ2に注入された液体3が定容されたか否かを判定する処理を実行する。演算部15が定容プログラムを実行することにより実現される機能部には、撮影制御部151と、ホルダー制御部152と、分注制御部153と、表示制御部154と、画像処理部155と、液底判定部156と、定容判定部157とが含まれる。
【0030】
撮影制御部151は、カメラ20に対する撮影の開始及び終了を制御すると共に、所定の撮影フレームレートで撮影を実行するようにカメラ20の動作を制御する。
ホルダー制御部152は、ホルダー駆動部31の動作を制御してホルダー30をスタント4に沿って移動させることにより、カメラ20とメスフラスコ2との相対的な位置関係を調整する。
【0031】
分注制御部153は、メスフラスコ2に液体3を注入する自動分注装置40の動作を制御する。
表示制御部154は、カメラ20により撮影された画像や、該画像に基づいて行われる定容判定などの所定の画面を表示部12に表示させる。
【0032】
画像処理部155は、カメラ20から出力された画像信号に対して画像処理を実行することにより画像を生成すると共に、該画像に対して画像認識処理などの所定の処理を実行する。詳細には、画像処理部155は、画像生成部155aと、標線認識部155bと、液面認識部155cと、閾値取得部155dと、交点検出部155eとを含む。
【0033】
画像生成部155aは、カメラ20から順次入力される画像信号に対してデモザイキング、ホワイトバランス処理、ガンマ補正等の所定の画像処理を施すことにより、カメラ20の視界に入るメスフラスコ2が写った画像を生成する。
【0034】
標線認識部155bは、画像生成部155aにより生成された画像において、メスフラスコ2の標線2aの領域を認識し、該領域の輪郭を抽出する。
液面認識部155cは、画像生成部155aにより生成された画像において、メスフラスコ2に注入された液体3の液面3aを認識すると共に、該液面3aの輪郭を抽出し、液面3aを示す曲線を取得する。
【0035】
閾値取得部155dは、画像において認識された液面3aを示す曲線の近似式を取得し、該近似式と、画像における標線の領域の上端線と下端線との間隔とに基づいて、定容判定に用いられる閾値を算出する。
交点検出部155eは、画像において認識された標線2aの領域と液面3aを示す曲線との交点を検出する。
【0036】
液底判定部156は、画像において、液面3aの底部が標線2aの領域に隠れているか否かを判定する。
【0037】
定容判定部157は、画像に写った標線2aの領域と液面3aを示す曲線とが交差している状態に基づいて、液体3が定容されたか否かを判定する。本実施形態において、定容判定部157は、画像に写った標線2aの領域の上端線と液面3aを示す曲線との交点間の距離に基づいて定容判定を行う。
【0038】
<液体の定容方法>
図3は、本発明の第1の実施形態に係る定容システム1の動作を示すフローチャートである。以下においては、液面3aが凹状のメニスカスとなる液体3をメスフラスコ2に注入するものとして説明する。
【0039】
まず、定容システム1は、カメラ20に撮影を開始させる(ステップS10)。それにより、カメラ20から順次出力される画像信号に基づいて、情報処理装置10において画像が生成される。
【0040】
図4は、カメラ20から順次出力される画像信号に基づいて生成され、表示部12に表示される画像を例示する模式図である。
図1に示すメスフラスコ2及びカメラ20は、
図4に示すように、メスフラスコの像m10(標線近傍の首部の像)が画像M1の概ね中央に写るように、事前に位置合わせされている。以下においては、画像M1の水平方向をx軸(右向き正)、垂直方向をy軸(下向き正)とする。
【0041】
ここで、画像M1には、画像M1の垂直方向の中心座標(y=C0)を中心とする帯状の領域(設定範囲m11)が設定されている。この設定範囲m11の上端の座標をy=Cmin、下端の座標をy=Cmaxとする。つまり、Cmax-C0=C0-Cminである。設定範囲m11の幅Δy0(mm又はピクセル数)は、メスフラスコ2とカメラ20との距離に応じて、画像M1における標線の領域m12の幅Δym(同上)よりも、若干(例えば数mm又は数ピクセル程度)大きくなるように、事前に設定されている。
【0042】
続いて、定容システム1は、メスフラスコ2の標線2aとカメラ20との位置合わせを行う(ステップS11)。
図5は、標線2aとカメラ20との位置合わせ処理を示すフローチャートである。
図6は、標線2aとカメラ20との位置合わせ処理を説明するための模式図である。
【0043】
まず、標線認識部155bは、
図6の(a)に示すように、色抽出の閾値に基づいて、画像M1における標線の領域m12を抽出する(ステップS111)。詳細には、標線認識部155bは、標線の色を表す画素値の範囲を事前に調整した閾値を、閾値記憶部142から取得し、この範囲内の画素値を有する画素の領域を画像M1から抽出する。なお、この画素抽出処理は、RGB色空間において行っても良いし、RGB色空間を他の色空間(例えば、HSI色空間、HSV色空間など)に変換した当該他の色空間において行っても良い。また、閾値は、メスフラスコ2の色(例えば無色透明又は褐色透明)及び標線2aの色に基づいて設定することができる。
【0044】
続いて、標線認識部155bは、抽出された標線の領域m12の輪郭を抽出する(ステップS112)。これにより、抽出された標線の領域m12の上端のy座標Ymin、下端のy座標Ymax、及び、水平方向の長さw(mm又はピクセル数)が特定される。
【0045】
続いて、標線認識部155bは、標線の領域m12の水平方向の長さwが、閾値LEN以上であるか否かを判定する(ステップS113)。閾値LENの長さ(mm又はピクセル数)は、メスフラスコ2の首部の径及びメスフラスコ2とカメラ20との距離に応じて、画像において検出され得る標線の長さの例えば50%というように、適宜設定することができる。このような判定を行うことにより、標線の誤検出を抑制することができる。
【0046】
抽出された標線の領域m12の水平方向の長さwが閾値LEN未満である場合(ステップS113:No)、色抽出の閾値を再調整し(ステップS114)、再調整された閾値を用いて再び標線の領域m12を抽出する(ステップS111)。これらのステップS111~S114は、水平方向の長さwが閾値LEN以上となる標線の領域が抽出されるまで繰り返される。色抽出の閾値の再調整は、情報処理装置10が自動で行っても良いし、ユーザが情報処理装置10を操作することにより手動で行っても良い。
【0047】
抽出された標線の領域m12の水平方向の長さwが閾値LEN以上である場合(ステップS113:Yes)、続いて、ホルダー制御部152がホルダー駆動部31を制御することにより、画像M1から抽出された標線の領域m12が設定範囲m11に入るように、カメラ20の高さを調整する(ステップS115)。
【0048】
標線認識部155bは、標線の領域m12が設定範囲m11内に収まったか否かを判定する(ステップS116)。即ち、標線の領域m12の下端のy座標Ymaxが設定範囲m11の下端のy座標Cmax以下、且つ、標線の領域m12の上端のy座標Yminが設定範囲m11の上端のy座標Cmin以上となったか否かを判定する。標線の領域m12が設定範囲m11内に収まっていない場合(ステップS116:No)、処理はステップS115に戻る。
【0049】
図6の(b)に示すように、標線の領域m12が設定範囲m11内に収まった場合(ステップS116:Yes)、ホルダー制御部152はホルダー駆動部31の動作を停止させ、カメラ20の位置を確定させる(ステップS117)。これにより標線2aがカメラ20の光軸上に位置し、画像M1の中心に標線の領域m12が写った状態となる。
【0050】
続いて、表示制御部154は、標線を表す矩形状の枠線m15を画像M1に表示する(ステップS118)。枠線m15は、ステップS112において抽出された輪郭を矩形状に近似したものであっても良い。また、枠線m15の水平方向の長さは、標線の領域m12と一致させても良いし、後述する関心領域(ROI)に収まるように短縮させても良い。このように枠線m15を表示することで、ユーザは、標線の認識が確定したことを確認することができる。その後、処理はメインルーチンに戻る。なお、標線2aに対するカメラ20の位置が確定して関心領域(ROI)が設定された後は、枠線m15は非表示とされる。
【0051】
標線2aとカメラ20との位置合わせが完了すると(
図3のステップS11)、定容システム1は、定容判定に用いられる閾値を取得する(ステップS12)。
図7は、閾値の取得処理を示すフローチャートである。
図8及び
図9は、閾値の取得処理を説明するための模式図である。
【0052】
まず、メスフラスコ2に液体3を、液面3aがカメラ20の視界に入るまで注入する(ステップS121)。この際、液体3の量は、液面3aの全体が画像M1に写っている状態(即ち、液面3aの一部が標線2aと重なっていない状態)となるように留めておく。なお、液体3は、ステップS10の段階で予め注入しておいても良い。
【0053】
続いて、液面認識部155cは、画像M1における液面の領域m13を認識する(ステップS122)。詳細には、液面認識部155cは、液面の色を表す画素値の範囲を示す閾値を閾値記憶部142から取得し、この範囲内の画素値を有する画素の領域を画像M1から抽出する。なお、この色抽出処理は、RGB色空間において行っても良いし、RGB色空間を他の色空間(例えば、HSI色空間、HSV色空間など)に変換した当該他の色空間において行っても良い。また、閾値は、メスフラスコ2の色及び液体3の色に基づいて設定することができる。
【0054】
続いて、液面認識部155cは、液面の領域m13の輪郭を抽出し、液面Pを近似する2次曲線の式を取得する(ステップS123)。本実施形態において、この曲線は下に凸の曲線となる。詳細には、液面認識部155cは、まず、液面の領域m13の輪郭線m16,m17のうち下部の輪郭線m16上の複数の点p1,p2,…の座標を取得する。点p1,p2,…としては、輪郭線m16上から間欠的に抽出しても良いし、輪郭線m16上の全ての点を取得しても良い。そして、これらの点p1,p2,…の座標を用いて2次の回帰分析を行うことにより、近似式y1(x)=ax
2+bx+cを求める。もちろん、近似式は2次式に限定されず、多項式など液面に適合する最適な近似式を用いてもよい。なお、
図8において、液面として認識された領域m13の輪郭のうち、上部の輪郭線m17(概ね水平な輪郭部分)は、メスフラスコ2の内壁と液体3との境界線を表している。
【0055】
続いて、閾値取得部155dは、定容判定の基準位置を設定する(ステップS124)。ここで、定容判定の基準位置とは、液面の底部(曲面の最下点)が達した場合に液体が定容されたと判断される位置のことである。詳細には、閾値取得部155dは、
図9に示すように、標線を表す枠線m15内の上端線と下端線との間の任意の位置(例えば、中心位置)に基準位置を設定する。
【0056】
続いて、閾値取得部155dは、近似式y1(x)が示す2次曲線の最小点が定容判定の基準位置と一致した場合に、標線の領域の上端線と2次曲線とが交差することになる2つの交点を求める(ステップS125)。詳細には、閾値取得部155dは、
図9に示すように、定容判定の基準位置を基準(y=0)とした場合の枠線m15の上端線の相対座標y=Hを取得し、最小点に対する相対高さがHの位置における2次曲線上の2つの点(x1,H),(x2,H)の座標を算出する。
【0057】
続いて、閾値取得部155dは、2つの点(x1,H),(x2,H)の交点間距離|x2-x1|を算出し、この距離を閾値Thとする(ステップS126)。その後、処理はメインルーチンに戻る。
【0058】
閾値が取得されると(
図3のステップS12)、定容システム1は、画像M1内の標線を含む領域に関心領域(ROI)を設定する(ステップS13)。
図10は、関心領域Rが設定された画像M1を示す模式図である。
図10に示すように、関心領域Rは、標線を表す枠線m15を含み、且つ、枠線m15の上下方向に十分な領域を確保できる範囲に設定される。
【0059】
続いて、定容システム1は、自動分注装置40によりメスフラスコ2内に液体3を注入する(ステップS14)。液体3は、予め設定された量(例えば1滴)だけ注入される。なお、定容システム1に自動分注装置40が設けられていない場合には、液体3の注入を指示するメッセージ等を表示部12に表示し、ピペット等によりユーザに手動で液体3を注入させるようにしても良い。
【0060】
続いて、定容システム1は、関心領域R内に写った液面の領域m13を認識する(ステップS15)。詳細には、液面認識部155cが、液面の色を表す画素値の範囲を示す閾値に基づいて、この範囲内の画素値を有する画素の領域m13を関心領域Rから抽出する。
【0061】
続いて、定容システム1は、関心領域Rにおいて液面Pの底部が標線に隠れたか否かを判定する(ステップS16)。詳細には、液底判定部156が、関心領域Rにおいて認識された液面の領域m13の輪郭線のうち下部の輪郭線が、標線に該当するYmin≦y≦Ymaxの領域と重なっているか否かを判定する。この判定には、以下に説明する第1又は第2の判定処理を適用することができる。
【0062】
図11及び
図12は、液面Pの底部に対する第1の判定処理を説明するための模式図である。このうち、各図の(a)はカメラ20により撮影された画像を示し、各図の(b)は当該画像の関心領域Rから液面の領域m13が抽出された状態を示している。
【0063】
液底判定部156は、まず、液面の領域m13の輪郭線のうち下部の輪郭線上の複数の点の座標を取得する。例えば、
図11の(a)の場合には、
図11の(b)に示すように、一番下の輪郭線m21上の点p11,p12,…の座標が取得される。そして、これらの点p11,p12,…の座標を用いて2次の回帰分析を行うことにより、近似式y2(x)=a'x
2+b'x+c'を求める。もちろん、近似式は2次式に限定されず、多項式など液面に適合する最適な近似式を用いてもよい。
【0064】
図10に示すように、液面の領域m13全体が関心領域Rに現れている場合や、
図11の(a)に示すように、液面の領域m13の一部が標線の領域(Y
min≦y≦Y
max)の下方に写っている場合、領域m13の下部の輪郭は全体として湾曲した状態となる。そのため、近似式y2(x)の2次係数a'及び1次係数b'は、それぞれ、ステップS123において取得した近似式y1(x)の2次係数a及び1次係数bと概ね一致することになる。
【0065】
一方、
図12の(a)のように液面Pの底部が標線に隠れている場合、
図12の(b)に示すように、液面の領域m13の下部の輪郭線m22は一部が直線状となる。そのため、輪郭線上の点p11',p12',…,p15',…の座標に基づいて取得された近似式y2(x)の2次係数a'及び1次係数b'は、それぞれ、近似式y1(x)の2次係数a及び1次係数bとは大きく異なることになる。
【0066】
従って、液底判定部156は、今回取得された近似式y2(x)の2次係数及び1次係数と、ステップS123において取得された近似式y1(x)の2次係数及び1次係数とを対比することにより、液面Pの底部が標線に隠れたか否かを判定することができる。具体的には、近似式y1(x)と近似式y2(x)との間で、1次係数同士の差分及び2次係数同士の差分がそれぞれ、所定の閾値よりも大きい場合に、液面Pの底部が標線に隠れたと判定することができる。
【0067】
図13及び
図14は、液面Pの底部に対する第2の判定処理を説明するための模式図であり、
図11の(a)及び
図12の(a)に示す画像それぞれの関心領域Rから液面の領域m13が抽出された状態を示している。
【0068】
第2の判定処理において、液底判定部156は、関心領域R内における液面の領域m13の輪郭線の数をカウントし、輪郭線の数の変化に基づいて、液面Pの底部が標線に隠れているか否かを判定する。例えば、
図10の場合、領域m13の上部と下部の2本の輪郭線m31,m32が検出される。また、液面がやや上昇した
図11の(a)の場合には、
図13に示すように、3本の輪郭線m33,m34,m35が検出される。さらに液面が上昇した
図12の(a)の場合には、
図14に示すように、2本の輪郭線m36,m37が検出される。そこで、液底判定部156は、輪郭線の数が一旦増加し、その後減少に転じた際に、液面Pの底部が標線に隠れたものと判定する。或いは、
図11の(a)のように、液面の領域m13の一部が標線の領域m12に重なった状態から判定を開始することとし、輪郭線の数が2本になった際に、液面Pの底部が標線に隠れたものと判定しても良い。
【0069】
液面Pの底部がまだ標線に隠れていない場合(ステップS16:No)、処理はステップS14に戻る。一方、液面Pの底部が標線に隠れた場合(ステップS16:Yes)、処理はステップS17に移行する。
【0070】
続いて、定容システム1は、関心領域Rから抽出された液面の領域m13の輪郭に基づいて、液面Pを近似する2次曲線の式を取得する(ステップS17)。
図15は、定容の判定処理を説明するための模式図である。このうち
図15の(b)は、
図15の(a)に示す画像の関心領域Rから液面の領域m13が抽出された状態を示している。
【0071】
まず、定容判定部157は、液面の領域m13の輪郭線のうち下側の輪郭線m41上の複数点p21,p22,…の座標を取得する。点p21,p22,…としては、輪郭線m41上から間欠的に抽出しても良いし、輪郭線m41上の全ての点を取得しても良い。また、下側の輪郭線m41のうち直線部分(即ち、標線の領域m12との境界線)を除く部分から座標を取得することが好ましい。そのために、下側の輪郭線m41のうち、標線の上端のラインy=Yminから所定距離(ピクセル数)以上離れた部分から座標を取得することとしても良い。或いは、下側の輪郭線m41の全てのy座標とラインy=Yminとを比較し、この差が所定距離(ピクセル)以上ある座標を取得することとしても良い。そして、定容判定部157は、これらの点p21,p22,…の座標を用いて回帰分析を行うことにより、2次の近似式y3(x)=αx2+βx+γを求める。
【0072】
或いは、定容判定部157は、ステップS123において取得された近似式y1(x)の2次係数a及び1次係数bを利用して近似式y3(x)を求めても良い。この場合、定容判定部157は、複数の点p21,p22,…の座標を、式y(x)=ax2+bx+c(p)に代入することにより、0次の係数c(p)を求め、これらの係数(a,b,c(p))を、上記近似式y3(x)の係数(α,β,γ)として用いる。
【0073】
続いて、定容判定部157は、液面Pを近似する2次曲線と標線の上端線との交点を検出する(ステップS18)。詳細には、上記近似式y3(x)=αx2+βx+γにおいて、y座標がYminとなる2つのx座標X1,X2を算出する。
【0074】
或いは、定容判定部157は、液面Pの輪郭線m41上の微小区間(2点間)の傾きを算出し、傾きが0となる位置のx座標X1,X2を求めることより、交点を検出しても良い。この場合、近似式y3は算出しなくても良い。
【0075】
続いて、定容判定部157は、2つの交点の交点間距離D=|X2-X1|を算出し、この交点間距離Dが閾値Thよりも小さいか否かを判定する(ステップS19)。
【0076】
交点間距離Dが閾値Th以上である場合(ステップS19:No)、処理はステップS14に戻る。一方、交点間距離Dが閾値Thよりも小さい場合(ステップS19:Yes)、定容判定部157は、液体の定容が完了したと判断する(ステップS20)。この際、表示制御部154は、定容が完了した旨を表示部12に表示させても良い。これにより、定容システム1の動作は終了する。
【0077】
なお、ステップS18において交点が1つしか検出されない場合(即ち、2次曲線と標線の上端線とが接している場合)には、定容判定部157はエラーと判断し、液体3の注入を中止することしても良い。この場合、表示制御部154は、エラー及び定容のやり直しを指示するメッセージ等を表示部12に表示させても良い。
【0078】
以上説明したように、本実施形態によれば、液面を表す曲線と標線の上端線との交点の交点間距離に基づいて、液体が定容されたか否かを判定するので、液面の底部が標線に隠れている状態であっても、定容判定を確実に実行することができる。
【0079】
(変形例)
上記第1の実施形態においては、画像に写った液面を近似する2次曲線に基づいて、定容判定に用いられる閾値Thを算出した(ステップS12参照)。しかしながら、液面の形状は、液体3の種類(粘性)、メスフラスコ2の首部の内径や表面状態等の条件により決定されるため、閾値Thを予め算出しておくことも可能である。この場合、各種条件に応じて決定された液面を近似する曲線を用いて、複数の閾値を予め算出し、閾値記憶部142に記憶させておき、
図3のステップS12においては、入力部13から入力された各種条件に適合する閾値を閾値記憶部142から読み出すこととしても良い。
【0080】
(第2の実施形態)
図16は、本発明の第2の実施形態に係る定容システムの動作を示すフローチャートである。
図17及び
図18は、本発明の第2の実施形態における定容の判定処理を説明するための模式図である。本実施形態においては、液面を表す曲線と標線の上端線及び下端線との交点の数に基づいて判定を行う。なお、本実施形態に係る定容システムの概略構成は、
図1及び
図2に示すものと概ね同様であるが、
図2に示す閾値取得部155d及び液底判定部156は省略しても良い。
【0081】
図16に示すステップS30,S31,S32,S33,S34の動作は、
図3に示すS10,S11,S13,S14,S15における動作と同様である。
【0082】
定容システム1は、関心領域R内に写った液面の領域m13が認識されると(ステップS34)、続いて、液面を近似する2次曲線の式を取得する(ステップS35)。詳細には、液面認識部155cが、液面の領域m13の輪郭線のうち下側の輪郭線を抽出し、該輪郭線上の複数点の座標を用いて2次の回帰分析を行うことにより近似式を求める。或いは、液面の領域m13がカメラの視野に入った段階で(例えば、
図17の(a)に示す状態)、液面を近似する2次曲線の式を取得しておき、この2次曲線の式の1次及び2次の係数を利用して、画像における現在の液面を近似する2次曲線の式を求めても良い(
図3のステップS17参照)。
【0083】
続いて、交点検出部155eは、液面を近似する2次曲線と標線の上端線及び下端線との交点を取得する(ステップS36)。即ち、
図17及び
図18に示すように、2次曲線m50を表す近似式において、標線の上端のラインy=Y
min及び下端のラインy=y
maxにおけるx座標を算出する。関心領域Rにおいて、交点を一切取得できなかった場合(ステップS37:No、
図17の(a)参照)、処理はステップS33に戻る。一方、交点が取得できた場合(ステップS37:Yes)、処理はステップS38に移行する。
【0084】
続いて、定容判定部157は、2次曲線m50と標線の下端線との交点が存在するか否かを判定する(ステップS38)。ここで、交点が存在するとは、交点が1点の場合(即ち、曲線と直線が接している場合)も含む。
【0085】
図17の(b)において、2次曲線m50は、ラインy=Y
maxと、点p31,p32の2点において交わっている。このように、2次曲線m50と標線の下端線との交点が存在する場合(ステップS38:Yes)、処理はステップS33に戻る。一方、
図18の(a)において、2次曲線m50は、ラインy=Y
maxとは交わっていない。このように、2次曲線m50と標線の下端線との交点が存在しない場合(ステップS38:No)、処理はステップS39に移行する。
【0086】
続いて、定容判定部157は、2次曲線m50と標線の上端線との交点が2つであるか否か判定する(ステップS39)。例えば、
図18の(a)において、2次曲線m50は、ラインy=Y
minと点p41,p42の2点において交わっている。このように、2次曲線m50と標線の上端線との交点が2つである場合(ステップS39:Yes)、定容判定部157は、液体の定容が完了したと判断する(ステップS40)。一方、
図18の(b)において、2次曲線m50は、ラインy=Y
minと、点p43の1点において交わっている。このように、2次曲線m50と標線の上端線との交点が2つでない場合(ステップS39:No)、定容判定部157はエラーと判断する(ステップS41)。
【0087】
以上説明した本発明は、上記第1及び第2の実施形態並びに変形例に限定されるものではなく、上記第1及び第2の実施形態並びに変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明を形成することができる。また、上記第1及び第2の実施形態並びに変形例に示した全構成要素からいくつかの構成要素を除外して形成しても良いし、上記第1及び第2の実施形態並びに変形例に示した構成要素を適宜組み合わせて形成しても良い。
【符号の説明】
【0088】
1…定容システム、2…メスフラスコ、3…液体、3a…液面、4…スタンド、5…載置台、10…情報処理装置、11…外部インタフェース、12…表示部、13…入力部、14…記憶部、15…演算部、20…カメラ、30…ホルダー、31…ホルダー駆動部、40…自動分注装置、41…ノズル、50…照明装置、141…プログラム記憶部、142…閾値記憶部、151…撮影制御部、152…ホルダー制御部、153…分注制御部、154…表示制御部、155…画像処理部、155a…画像生成部、155b…標線認識部、155c…液面認識部、155d…閾値取得部、155e…交点検出部、156…液底判定部、157…定容判定部