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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053832
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】電気化学反応セルスタック
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0258 20160101AFI20240409BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20240409BHJP
【FI】
H01M8/0258
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160280
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】519322392
【氏名又は名称】森村SOFCテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森川 哲也
(72)【発明者】
【氏名】田中 修平
(72)【発明者】
【氏名】堀田 信行
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA08
5H126BB06
5H126EE11
(57)【要約】
【課題】ガス流路内におけるガスの流れが阻害されることを抑制しつつ、流路画定部材の変形に起因して電気化学反応セルスタックの性能が低下することを抑制する。
【解決手段】電気化学反応セルスタックは、電気化学反応単セルをそれぞれ有する複数の電気化学反応単位を備える。各電気化学反応単位には、マニホールドと特定電極とを連通する連通流路が形成されている。マニホールドと連通流路とから構成されるガス流路を画定する流路画定部材は、ガスの流れ方向に延びる板状の第1の画定部分と、ガスの流れ方向において第1の画定部分に隣接し、かつ、ガスの流れ方向に延びる板状の第2の画定部分とを有しており、第2の画定部分は、第1の画定部分よりも変形しやすい。ガス流路のうち、少なくとも、流路画定部材の第2の画定部分が画定する第2のガス流路に、ガスが流れる空間を形成する空間形成部を有するガス流通部材が配置されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質層と、前記電解質層を挟んで互いに対向する空気極および燃料極と、を含む電気化学反応単セルをそれぞれ有する複数の電気化学反応単位を備える電気化学反応セルスタックにおいて、
各前記電気化学反応単位における前記空気極と前記燃料極との少なくとも一方である特定電極との間でガスのやり取りを行うマニホールドが形成されており、
各前記電気化学反応単位には、前記マニホールドと前記特定電極とを連通する連通流路が形成されており、
前記マニホールドと前記連通流路とから構成されるガス流路を画定する流路画定部材は、前記ガスの流れ方向に延びる板状の第1の画定部分と、前記ガスの流れ方向において前記第1の画定部分に隣接し、かつ、前記ガスの流れ方向に延びる板状の第2の画定部分とを有しており、
前記第2の画定部分は、前記第1の画定部分よりも変形しやすく、
前記ガス流路のうち、少なくとも、前記流路画定部材の前記第2の画定部分が画定する第2のガス流路に、ガスが流れる空間を形成する空間形成部を有するガス流通部材が配置されている、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項2】
請求項1に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記ガス流通部材は、前記ガス流路の前記第2のガス流路に配置され、前記空間形成部が形成されたガス流通部分と、前記ガス流路のうち、前記流路画定部材の前記第1の画定部分が画定する第1のガス流路に配置され、前記ガス流通部分を支持する支持部分とを有している、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項3】
請求項2に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記支持部分は、前記ガスの流れ方向に交差する方向に延伸している形状であり、
前記ガス流通部分は、前記支持部分から前記第2のガス流路まで延びている複数の足部を有している、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項4】
請求項3に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記ガスの流れ方向視で、前記複数の足部の間の溝の少なくとも一部は、前記支持部分から外れた位置に配置されている、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項5】
請求項4に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記複数の足部の少なくとも一部の足部は、前記第1のガス流路内において、前記ガスの流れ方向と前記支持部分の延伸方向との両方に交差する方向に延びる部分を有している、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項6】
請求項3から請求項5までのいずれか一項に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記支持部分の延伸方向において、前記足部の幅は、互いに隣り合う前記足部同士の間の間隔よりも狭い、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項7】
請求項3に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記足部の剛性は、前記流路画定部材の前記第2の画定部分の剛性よりも高い、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項8】
請求項2に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記流路画定部材は、一対の前記第2の画定部分と、前記一対の第2の画定部分の間に位置する前記第1の画定部分と有し、かつ、ガスの流れ方向視で、前記第1の画定部分は、前記一対の前記第2の画定部分に対して前記流路画定部材の前記ガス流路とは反対側に外れた位置に位置しており、
前記ガス流通部材は、前記一対の第2のガス流路のそれぞれに配置される一対の前記ガス流通部分を有している、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項9】
請求項1に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記ガス流通部材は、前記流路画定部材に接触し、前記ガス流通部材の前記ガスの流れ方向の移動を規制する規制部を有している、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、電気化学反応セルスタックに関する。
【背景技術】
【0002】
水素と酸素との電気化学反応を利用して発電を行う燃料電池の種類の1つとして、固体酸化物形の燃料電池(以下、「SOFC」という。)が知られている。SOFCは、一般に、複数の構成単位(以下、「発電単位」という。)が所定の方向(以下、「第1の方向」という。)に並べて配置された燃料電池スタックの形態で利用される。各発電単位は、燃料電池単セル(以下、単に「単セル」という。)と、単セル用セパレータとを有する。単セルは、固体酸化物を含む電解質層と、電解質層を挟んで上記所定の方向に互いに対向する空気極および燃料極とを備える。また、単セル用セパレータには貫通孔が形成されており、単セル用セパレータにおける貫通孔を取り囲む部分が単セルの周縁部と接合されている。このような構成の単セル用セパレータにより、単セルの空気極に面する空気室と燃料極に面する燃料室とが区画される。
【0003】
このような燃料電池スタックの中には、ガスの流れの阻害を抑制しつつ、単セル用セパレータの変形に起因して燃料電池スタックの性能が低下することを抑制するために、ガス流通部材を備えるものがある。単セル用セパレータは、第1の方向の一方側に突出するように湾曲した形状を有しており、この単セル用セパレータの湾曲した形状の平坦部分にガス流通部材が配置されている。ガス流通部材には、ガスが流れる孔と溝との少なくとも一方が形成されている。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-174593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の燃料電池スタックの構成では、ガス流通部材が、単セル用セパレータにおける湾曲した形状の平坦部分に配置されている。しかし、単セル用セパレータは、例えば湾曲した形状の両側に位置する屈曲部分など、平坦部分よりも変形しやすい部分を有している。そのため、燃料室と空気室との間のガスの圧力差に起因して、燃料室と空気室とを区画する単セル用セパレータに応力が生じると、平坦部分よりも変形しやすい部分が優先的に変形する。その結果、各マニホールドと燃料室や空気室との間のガスの流れが阻害されて燃料電池スタックの性能が低下するおそれがある。すなわち、従来の燃料電池スタックの構成では、ガスの流れの阻害を抑制しつつ、単セル用セパレータの変形に起因して燃料電池スタックの性能が低下するという効果を得るために更なる改善の余地があった。
【0006】
なお、このような課題は、単セル用セパレータに限らず、マニホールドと、マニホールドと単セルとを連通する連通路とから構成されるガス流路を画定するガス流路画定部材を備える燃料電池スタックにも共通の課題である。また、このような課題は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形の電解セル(以下、「SOEC」という。)の構成単位である電解セル単位を複数備える電解セルスタックにも共通の課題である。なお、本明細書では、燃料電池単セルと電解単セルとをまとめて電気化学反応単セルと呼び、燃料電池発電単位と電解セル単位とをまとめて電気化学反応単位と呼び、燃料電池スタックと電解セルスタックとをまとめて電気化学反応セルスタックと呼ぶ。また、このような課題は、SOFCやSOECに限らず、他のタイプの電気化学反応セルスタックにも共通の課題である。
【0007】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
(1)本明細書に開示される電気化学反応セルスタックは、電解質層と、前記電解質層を挟んで互いに対向する空気極および燃料極と、を含む電気化学反応単セルをそれぞれ有する複数の電気化学反応単位を備える電気化学反応セルスタックにおいて、各前記電気化学反応単位における前記空気極と前記燃料極との少なくとも一方である特定電極との間でガスのやり取りを行うマニホールドが形成されており、各前記電気化学反応単位には、前記マニホールドと前記特定電極とを連通する連通流路が形成されており、前記マニホールドと前記連通流路とから構成されるガス流路を画定する流路画定部材は、前記ガスの流れ方向に延びる板状の第1の画定部分と、前記ガスの流れ方向において前記第1の画定部分に隣接し、かつ、前記ガスの流れ方向に延びる板状の第2の画定部分とを有しており、前記第2の画定部分は、前記第1の画定部分よりも変形しやすく、前記ガス流路のうち、少なくとも、前記流路画定部材の前記第2の画定部分が画定する第2のガス流路に、ガスが流れる空間を形成する空間形成部を有するガス流通部材が配置されている。
【0010】
ガス流路を画定する流路画定部材の第2の画定部分は、相対的に変形しやすく、ガス流路の流路断面が減少する方向の変形が発生した場合にガス流路におけるガスの流れが阻害されて電気化学反応セルスタックの性能に悪影響を及ぼしやすい部分である。本電気化学反応セルスタックでは、ガス流路のうち、少なくとも、第2の画定部分が画定する第2のガス流路に、ガス流通部材が配置されている。そのため、ガス流通部材の存在により、流路画定部材における上述した変形しやすい第2の画定部分が、流路断面が減少する方向に変形することを抑制することができるため、該変形に起因してガス流路におけるガスの流れが阻害されることを抑制することができ、ひいては電気化学反応セルスタックの性能が低下することを抑制することができる。また、ガス流通部材は、ガスが流れる空間を形成する空間形成部を有しているため、ガス流路内にガス流通部材を配置しても、ガス流路内におけるガスの流れが阻害されることを抑制することができる。以上のことから、本電気化学反応セルスタックによれば、ガス流路内におけるガスの流れが阻害されることを抑制しつつ、流路画定部材の変形に起因して電気化学反応セルスタックの性能が低下することを抑制することができる。
【0011】
(2)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記ガス流通部材は、前記ガス流路の前記第2のガス流路に配置され、前記空間形成部が形成されたガス流通部分と、前記ガス流路のうち、前記流路画定部材の前記第1の画定部分が画定する第1のガス流路に配置され、前記ガス流通部分を支持する支持部分とを有している構成としてもよい。本電気化学反応セルスタックでは、相対的に変形しやすい第2のガス流路に配置されるガス流通部分が、相対的に変形しにくい第1のガス流路に配置される支持部分に支持されている。そのため、ガス流通部分が単体で第2のガス流路に配置された構成に比べて、第2のガス流路の変形に伴ってガス流通部分が第2のガス流路から外れた位置に移動することを抑制することができ、流路画定部材の変形に起因して電気化学反応セルスタックの性能が低下することを効果的に抑制することができる。
【0012】
(3)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記支持部分は、前記ガスの流れ方向に交差する方向に延伸している形状であり、前記ガス流通部分は、前記支持部分から前記第2のガス流路まで延びている複数の足部を有している構成としてもよい。本電気化学反応セルスタックでは、支持部分は、ガスの流れ方向に交差する方向に延伸している形状であるため、第1のガス流路に安定した状態で配置されることにより、第2のガス流路に対するガス流通部分の位置ずれをより効果的に抑制することができる。また、ガス流通部分は、支持部分から第2のガス流路まで延びている複数の足部であるため、例えば、ガス流通部分が支持部分に沿って延びる板状である構成に比べて、ガス流路内におけるガスの流れが阻害されることを抑制することができる。
【0013】
(4)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記ガスの流れ方向視で、前記複数の足部の間の溝の少なくとも一部は、前記支持部分から外れた位置に配置されている構成としてもよい。本電気化学反応セルスタックによれば、支持部分の存在に起因してガス流路内におけるガスの流れが阻害されることを抑制することができる。
【0014】
(5)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記複数の足部の少なくとも一部の足部は、前記第1のガス流路内において、前記ガスの流れ方向と前記支持部分の延伸方向との両方に交差する方向に延びる部分を有している構成としてもよい。本電気化学反応セルスタックによれば、第1のガス流路内におけるガスの流れが阻害されることを抑制することができる。
【0015】
(6)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記支持部分の延伸方向において、前記足部の幅は、互いに隣り合う前記足部同士の間の間隔よりも狭い構成としてもよい。本電気化学反応セルスタックによれば、例えば、足部の幅が足部同士の間の間隔よりも広い構成に比べて、ガス流路内におけるガスの流れが阻害されることを抑制することができる。
【0016】
(7)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記足部の剛性は、前記流路画定部材の前記第2の画定部分の剛性よりも高い構成としてもよい。本電気化学反応セルスタックによれば、足部の存在により、ガス流路の断面積が減少する方向に第2の画定部分が変形することを、より確実に抑制することができるため、該変形に起因してガス流路におけるガスの流れが阻害されることを抑制することができる。
【0017】
(8)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記流路画定部材は、一対の前記第2の画定部分と、前記一対の第2の画定部分の間に位置する前記第1の画定部分と有し、かつ、ガスの流れ方向視で、前記第1の画定部分は、前記一対の前記第2の画定部分に対して前記流路画定部材の前記ガス流路とは反対側に外れた位置に位置しており、前記ガス流通部材は、前記一対の第2のガス流路のそれぞれに配置される一対の前記ガス流通部分を有している構成としてもよい。本電気化学反応セルスタックによれば、ガス流通部材が、一対のガス流通部分によって第1のガス流路を跨がるように配置されることによって第1のガス流路に空間が確保されやすくなるため、第2のガス流路だけでなく、第1のガス流路内におけるガスの流れが阻害されることを抑制することができる。
【0018】
(9)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記ガス流通部材は、前記流路画定部材に接触し、前記ガス流通部材の前記ガスの流れ方向の移動を規制する規制部を有している構成としてもよい。本電気化学反応セルスタックによれば、ガス流通部材がガスの流れ方向に移動することを効果的に抑制することができる。
【0019】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、電気化学反応単セル(燃料電池単セルまたは電解単セル)、電気化学反応単セルと、貫通孔が形成され、貫通孔を取り囲む部分が電気化学反応単セルの周縁部と接合され、空気極に面する空気室と燃料極に面する燃料室とを区画するセパレータと、を有する単セル-セパレータ複合体、電気化学反応単セルを有する電気化学反応単位(燃料電池発電単位または電解セル単位)、複数の電気化学反応単位を備える電気化学反応セルスタック(燃料電池スタックまたは電解セルスタック)、それらの製造方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図
図2図1のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図
図3図1のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図
図4図1のIV-IVの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図
図5図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図
図6図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図
図7図4に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図
図8図5から図7のVIII-VIIIの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図
図9図5から図7のIX-IXの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図
図10】変形例としての燃料電池スタック100aの外観構成を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0021】
A.実施形態:
A-1.構成:
(燃料電池スタック100の構成)
図1は、本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図であり、図2は、図1(および後述する図8および図9)のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、図3は、図1(および後述する図8および図9)のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、図4は、図1(および後述する図8および図9)のIV-IVの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向と呼び、Z軸負方向を下方向と呼ぶものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。図5以降についても同様である。
【0022】
燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では7つの)燃料電池発電単位(以下、単に「発電単位」という。)102と、下端用セパレータ189と、一対のエンドプレート104,106とを備える。7つの発電単位102は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向)に並べて配置されている。一対のエンドプレート104,106のうちの一方(以下、「上側エンドプレート104」という。)は、7つの発電単位102と下端用セパレータ189とから構成される集合体(以下、「発電ブロック103」という。)の上側に配置されており、一対のエンドプレート104,106のうちの他の(以下、「下側エンドプレート106」という。)は、発電ブロック103の下側に配置されている。一対のエンドプレート104,106は、7つの発電単位102と下端用セパレータ189とから構成される集合体(以下、「発電ブロック103」という。)を上下から挟むように配置されている。
【0023】
図1および図4に示すように、燃料電池スタック100を構成する各層(上側エンドプレート104、各発電単位102、下端用セパレータ189)のZ軸方向回りの外周の4つの角部付近には、各層を上下方向に貫通する孔が形成されており、下側エンドプレート106のZ軸方向回りの外周の4つの角部付近における上側の表面には、孔(ネジ孔)が形成されている。これらの各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、上下方向に延びるボルト孔109を構成している。以下の説明では、ボルト孔109を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、ボルト孔109と呼ぶ場合がある。
【0024】
各ボルト孔109にはボルト22が挿入されている。各ボルト22の下端部は下側エンドプレート106に形成されたネジ孔に螺号しており、各ボルト22の上端部にはナット24が嵌められている。ナット24の下側の表面は、絶縁シート26を介してエンドプレート104の上側の表面に当接している。このような構成のボルト22およびナット24により、燃料電池スタック100の各層が一体に締結されている。なお、絶縁シート26は、例えばマイカシートや、セラミック繊維シート、セラミック圧粉シート、ガラスシート、ガラスセラミック複合剤等により構成される。
【0025】
また、図1から図3に示すように、燃料電池スタック100を構成する各層(各発電単位102、下端用セパレータ189、下側エンドプレート106)のZ軸方向回りの周縁部には、各層を上下方向に貫通する4つの孔が形成されており、各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、最上部の発電単位102から下側エンドプレート106にわたって上下方向に延びる連通孔108を構成している。以下の説明では、連通孔108を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、連通孔108と呼ぶ場合がある。
【0026】
図1および図2に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周を構成する1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸正方向側の辺)の付近に位置する1つの連通孔108は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが導入され、その酸化剤ガスOGを各発電単位102の後述する空気室166に供給するガス流路である酸化剤ガス供給マニホールド161として機能し、該辺の反対側の辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸負方向側の辺)の付近に位置する1つの連通孔108は、各発電単位102の空気室166から排出されたガスである酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へ排出するガス流路である酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する。なお、酸化剤ガスOGとしては、例えば空気が使用される。
【0027】
また、図1および図3に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周を構成する辺の内、上述した酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する連通孔108に最も近い辺の付近に位置する他の1つの連通孔108は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが導入され、その燃料ガスFGを各発電単位102の後述する燃料室176に供給するガス流路である燃料ガス供給マニホールド171として機能し、上述した酸化剤ガス供給マニホールド161として機能する連通孔108に最も近い辺の付近に位置する他の1つの連通孔108は、各発電単位102の燃料室176から排出されたガスである燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へ排出するガス流路である燃料ガス排出マニホールド172として機能する。なお、燃料ガスFGとしては、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。燃料ガス供給マニホールド171および燃料ガス排出マニホールド172は、特許請求の範囲におけるマニホールドの一例である。
【0028】
図2および図3に示すように、燃料電池スタック100には、4つのガス通路部材27が設けられている。各ガス通路部材27は、中空筒状の本体部28と、本体部28の側面から分岐した中空筒状の分岐部29とを有している。分岐部29の孔は本体部28の孔と連通している。各ガス通路部材27の分岐部29には、ガス配管(図示せず)が接続される。図2に示すように、酸化剤ガス供給マニホールド161の位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス供給マニホールド161に連通しており、酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス排出マニホールド162に連通している。また、図3に示すように、燃料ガス供給マニホールド171の位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス供給マニホールド171に連通しており、燃料ガス排出マニホールド172の位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス排出マニホールド172に連通している。なお、各ガス通路部材27と下側エンドプレート106の表面との間には、絶縁シート26が介在している。
【0029】
(エンドプレート104,106の構成)
一対のエンドプレート104,106は、Z軸方向視での外形が略矩形の平板状の部材であり、例えばステンレス等の導電材料により形成されている。一対のエンドプレート104,106の中央付近には、それぞれ、Z軸方向に貫通する孔32,34が形成されている。Z軸方向視で、一対のエンドプレート104,106のそれぞれに形成された孔32,34の内周線は、後述する各単セル110を内包している。そのため、各ボルト22およびナット24による締結によって生じるZ軸方向の圧縮力は、主として各発電単位102の周縁部(後述する各単セル110より外周側の部分)に作用する。また、本実施形態では、上側エンドプレート104は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側エンドプレート106は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。
【0030】
(下端用セパレータ189の構成)
下端用セパレータ189は、Z軸方向視での外形が略矩形の平板状の部材であり、例えば金属により形成されている。下端用セパレータ189の周縁部は、発電ブロック103と下側エンドプレート106との間に挟み込まれた状態で、下側エンドプレート106と例えば溶接により接合されており、下側エンドプレート106と電気的に接続されている。
【0031】
(発電単位102の構成)
図5は、図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、図6は、図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、図7は、図4に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。また、図8は、図5から図7のVIII-VIIIの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図であり、図9は、図5から図7のIX-IXの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図である。
【0032】
図5から図7に示すように、発電単位102は、燃料電池単セル(以下、「単セル」という。)110と、単セル用セパレータ120と、空気極側フレーム130と、燃料極側フレーム140と、燃料極側集電部材144と、発電単位102の最上層および最下層を構成する一対のインターコネクタ190および一対のIC用セパレータ180とを備えている。単セル用セパレータ120、空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、IC用セパレータ180におけるZ軸方向回りの周縁部には、各マニホールド161,162,171,172として機能する各連通孔108を構成する孔と、各ボルト孔109を構成する孔とが形成されている。
【0033】
単セル110は、電解質層112と、電解質層112のZ軸方向の一方側(上側)に配置された空気極114と、電解質層112のZ軸方向の他方側(下側)に配置された燃料極116と、電解質層112と空気極114との間に配置された反応防止層118とを備える。なお、本実施形態の単セル110は、燃料極116で単セル110を構成する他の層(電解質層112、空気極114、反応防止層118)を支持する燃料極支持形の単セルである。
【0034】
電解質層112は、Z軸方向視で略矩形の平板形状部材であり、固体酸化物(例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア))を含むように構成されている。すなわち、本実施形態の単セル110は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。空気極114は、Z軸方向視で電解質層112より小さい略矩形の平板形状部材であり、例えばペロブスカイト型酸化物(例えば、LSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物))を含むように構成されている。燃料極116は、Z軸方向視で電解質層112と略同じ大きさの略矩形の平板形状部材であり、例えば、Ni(ニッケル)、Niとセラミック粒子からなるサーメット、Ni基合金等により形成されている。反応防止層118は、Z軸方向視で空気極114と略同じ大きさの略矩形の平板形状部材であり、例えばGDC(ガドリニウムドープセリア)を含むように構成されている。反応防止層118は、空気極114から拡散した元素(例えば、Sr)が電解質層112に含まれる元素(例えば、Zr)と反応して高抵抗な物質(例えば、SrZrO)が生成されることを抑制する機能を有する。
【0035】
単セル用セパレータ120は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の貫通孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、フェライト系ステンレス等の金属により形成されている。単セル用セパレータ120の板厚は、比較的薄く、例えば0.05mm以上、0.2mm以下程度である。単セル用セパレータ120における貫通孔121を取り囲む部分(以下、「貫通孔周囲部」という。)は、単セル110(電解質層112)の周縁部における上側の表面に対向している。単セル用セパレータ120は、その対向した部分に配置されたロウ材(例えばAgロウ)により形成された接合部124により、単セル110(電解質層112)と接合されている。単セル用セパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画され、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリーク(クロスリーク)が抑制される。
【0036】
単セル用セパレータ120は、単セル用セパレータ120の貫通孔周囲部(貫通孔121を取り囲む部分)を含む内側部126と、内側部126より外周側に位置する外側部127と、内側部126と外側部127とを連結する連結部128とを備える。本実施形態では、内側部126および外側部127は、Z軸方向に略直交する方向に延びる略平板状である。また、連結部128は、内側部126と外側部127との両方に対して下側に突出するように湾曲した形状となっている。連結部128における下側(燃料室176側)の部分は凸部となっており、連結部128における上側(空気室166側)の部分は凹部となっている。このため、連結部128は、Z軸方向における位置が内側部126および外側部127とは異なる部分を含んでいる。
【0037】
単セル用セパレータ120における貫通孔121付近には、ガラスを含むガラスシール部125が配置されている。ガラスシール部125は、接合部124に対して空気室166側に位置しており、単セル用セパレータ120の貫通孔周囲部の表面と、単セル110(本実施形態では電解質層112)の表面との両方に接触するように形成されている。ガラスシール部125により、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリーク(クロスリーク)が効果的に抑制される。
【0038】
インターコネクタ190は、略矩形の平板形状の平板部150と、平板部150から空気極114側に突出した複数の略柱状の空気極側集電部134とを有する導電性の部材であり、金属(例えば、フェライト系ステンレス)により形成されている。本実施形態では、インターコネクタ190の表面(空気室166に面する表面)に、例えばスピネル型酸化物により構成された導電性の被覆層194が形成されている。以下では、被覆層194に覆われたインターコネクタ190を、単にインターコネクタ190という。各発電単位102において、上側のインターコネクタ190(の平板部150)は、単セル110に対して空気室166を挟んで上側に配置されている。上側のインターコネクタ190(の各空気極側集電部134)は、例えばスピネル型酸化物により構成された導電性接合材196を介して、単セル110の空気極114に接合されており、これにより単セル110の空気極114に電気的に接続されている。また、各発電単位102において、下側のインターコネクタ190は、単セル110に対して燃料室176を挟んで下側に配置されており、後述する燃料極側集電部材144を介して、単セル110の燃料極116に電気的に接続されている。インターコネクタ190は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を抑制する。なお、本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ190は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ190は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ190と同一部材である。また、燃料電池スタック100は下端用セパレータ189を備えているため、燃料電池スタック100において最も下側に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ190を備えていない(図2から図4参照)。
【0039】
IC用セパレータ180は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の貫通孔181が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、フェライト系ステンレス等の金属により形成されている。IC用セパレータ180の板厚は、比較的薄く、例えば0.05mm以上、0.2mm以下程度である。IC用セパレータ180における貫通孔181を取り囲む部分(以下、「貫通孔周囲部」という。)は、インターコネクタ190の平板部150の周縁部における上側の表面に例えば溶接により接合されている。ある発電単位102に含まれる一対のIC用セパレータ180のうち、上側のIC用セパレータ180は、該発電単位102の空気室166と、該発電単位102に対して上側に隣り合う他の発電単位102の燃料室176とを区画する。また、ある発電単位102に含まれる一対のIC用セパレータ180のうち、下側のIC用セパレータ180は、該発電単位102の燃料室176と、該発電単位102に対して下側に隣り合う他の発電単位102の空気室166とを区画する。このように、IC用セパレータ180により、発電単位102の周縁部における発電単位102間のガスのリークが抑制される。なお、燃料電池スタック100において最も上側に位置する発電単位102の上側のインターコネクタ190に接合されたIC用セパレータ180は、上側エンドプレート104に電気的に接続されている。
【0040】
IC用セパレータ180は、IC用セパレータ180の貫通孔周囲部(貫通孔181を取り囲む部分)を含む内側部186と、内側部186より外周側に位置する外側部187と、内側部186と外側部187とを連結する連結部188とを備える。本実施形態では、内側部186および外側部187は、Z軸方向に略直交する方向に延びる略平板状である。また、連結部188は、内側部186と外側部187との両方に対して下側に突出するように湾曲した形状となっている。連結部188における下側(空気室166側)の部分は凸部となっており、連結部188における上側(燃料室176側)の部分は凹部となっている。このため、連結部188は、Z軸方向における位置が内側部186および外側部187とは異なる部分を含んでいる。
【0041】
図5から図8に示すように、空気極側フレーム130は、中央付近にZ軸方向に貫通する略矩形の孔131が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、マイカ等の絶縁体により形成されている。空気極側フレーム130の孔131は、空気極114に面する空気室166を構成する。空気極側フレーム130は、単セル用セパレータ120の周縁部における上側の表面と、上側のIC用セパレータ180の周縁部における下側の表面とに接触しており、両者の間のガスシール性(すなわち、空気室166のガスシール性)を確保するシール部材として機能する。また、空気極側フレーム130によって、発電単位102に含まれる一対のIC用セパレータ180間(すなわち、一対のインターコネクタ190間)間が電気的に絶縁される。また、空気極側フレーム130には、酸化剤ガス供給マニホールド161と空気室166とを連通する酸化剤ガス供給連通流路132と、空気室166と酸化剤ガス排出マニホールド162とを連通する酸化剤ガス排出連通流路133とが形成されている。
【0042】
図5から図7および図9に示すように、燃料極側フレーム140は、中央付近にZ軸方向に貫通する略矩形の孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。燃料極側フレーム140の孔141は、燃料極116に面する燃料室176を構成する。燃料極側フレーム140は、単セル用セパレータ120の周縁部における下側の表面と、下側のIC用セパレータ180の周縁部における上側の表面とに接触している。また、燃料極側フレーム140には、燃料ガス供給マニホールド171と燃料室176とを連通する燃料ガス供給連通流路142と、燃料室176と燃料ガス排出マニホールド172とを連通する燃料ガス排出連通流路143とが形成されている。単セル用セパレータ120とIC用セパレータに180とにより画定される部分を含む燃料室176と、燃料ガス供給連通流路142と、燃料ガス排出連通流路143と、を合わせた構成は、特許請求の範囲における連通流路の一例である。
【0043】
図5から図7に示すように、燃料極側集電部材144は、燃料室176内に配置されている。燃料極側集電部材144は、インターコネクタ対向部146と、電極対向部145と、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部147とを備えており、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成されている。電極対向部145は、燃料極116の下側の表面に接触しており、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ190(の平板部150)の上側の表面に接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も下側に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ190を備えていないため、該発電単位102における燃料極側集電部材144のインターコネクタ対向部146は、下端用セパレータ189に接触している。燃料極側集電部材144は、このような構成であるため、燃料極116とインターコネクタ190(または下端用セパレータ189)とを電気的に接続する。なお、燃料極側集電部材144の電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間には、例えばマイカにより形成されたスペーサー149が配置されている。そのため、燃料極側集電部材144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位102の変形に追随し、燃料極側集電部材144を介した燃料極116とインターコネクタ190(または下端用セパレータ189)との電気的接続が良好に維持される。
【0044】
A-2.燃料電池スタック100の動作:
図2および図5に示すように、酸化剤ガス供給マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して酸化剤ガス供給マニホールド161に供給され、酸化剤ガス供給マニホールド161から各発電単位102の酸化剤ガス供給連通流路132を介して、空気室166に供給される。また、図3および図6に示すように、燃料ガス供給マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して燃料ガス供給マニホールド171に供給され、燃料ガス供給マニホールド171から各発電単位102の燃料ガス供給連通流路142を介して、燃料室176に供給される。
【0045】
各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室176に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGおよび燃料ガスFGの電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は上側のインターコネクタ190に電気的に接続され、燃料極116は燃料極側集電部材144を介して下側のインターコネクタ190(または、下端用セパレータ189)に電気的に接続されている。すなわち、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、電気的に直列に接続されている。また、最も上側に位置する発電単位102の上側のインターコネクタ190およびIC用セパレータ180は、上側エンドプレート104に電気的に接続されており、最も下側に位置する発電単位102の燃料極側集電部材144に電気的に接続された下端用セパレータ189は、下側エンドプレート106に電気的に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能するエンドプレート104,106から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
【0046】
図2および図5に示すように、各発電単位102の空気室166から酸化剤ガス排出連通流路133を介して酸化剤ガス排出マニホールド162に排出された酸化剤オフガスOOGは、酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。また、図3および図6に示すように、各発電単位102の燃料室176から燃料ガス排出連通流路143を介して燃料ガス排出マニホールド172に排出された燃料オフガスFOGは、燃料ガス排出マニホールド172の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示しない)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。
【0047】
なお、本実施形態の燃料電池スタック100では、図8および図9に示すように、Z軸方向視で、酸化剤ガス供給マニホールド161に連通する酸化剤ガス供給連通流路132と、燃料ガス排出マニホールド172に連通する燃料ガス排出連通流路143とが、単セルの一の辺(図8および図9に示される第2の辺SI2)に(同じ方向に)対向するように配置されており、かつ、酸化剤ガス排出マニホールド162に連通する酸化剤ガス排出連通流路133と、燃料ガス供給マニホールド171に連通する燃料ガス供給連通流路142とが、単セルの上記第2の辺SI2に対して単セル110の中心点を挟んで対向する他の辺(図8および図9に示され第1の辺SI1)に(同じ方向に)対向するように配置されている。すなわち、本実施形態の発電単位102(燃料電池スタック100)は、空気室166における酸化剤ガスOGの主たる流れ方向(X軸正方向からX軸負方向へ向かう方向)と燃料室176における燃料ガスFGの主たる流れ方向(X軸負方向からX軸正方向へ向かう方向)とが略反対方向(互いに対向する方向)である、カウンターフロータイプのSOFCである。
【0048】
A-3.流路画定部材(120,180)の構成:
図6に示すように、単セル用セパレータ120(連結部128)は、平坦部分122と一対の屈曲部分123とを有している。平坦部分122は、燃料ガスFGの流れ方向(X軸方向)に延びる平坦状の部分である。一対の屈曲部分123は、燃料ガスFGの流れ方向において、平坦部分122の両側にそれぞれ位置している。各屈曲部分123は、平坦部分122に隣接し、かつ、1または複数の屈曲部位を有する部分である。図6では、屈曲部分123は、平坦部分122の端部から燃料室176側に屈曲する第1の屈曲部位と、第1の屈曲部位から延びた部分から平坦部分122とは反対側に屈曲する第2の屈曲部位と、の2つの屈曲部位を有している。屈曲部分123は、屈曲部位を有するため、平坦部分122に比べて変形しやすい。
【0049】
IC用セパレータ180の連結部188は、平坦部分182と一対の屈曲部分183とを有している。平坦部分182は、燃料ガスFGの流れ方向に延びる平坦状の部分である。一対の屈曲部分183は、燃料ガスFGの流れ方向において、平坦部分182の両側にそれぞれ位置している。各屈曲部分183は、平坦部分182に隣接し、かつ、1または複数の屈曲部位を有する部分である。図6では、屈曲部分183は、平坦部分182の端部から燃料室176側に屈曲する第1の屈曲部位と、第1の屈曲部位から延びた部分から平坦部分182とは反対側に屈曲する第2の屈曲部位と、の2つの屈曲部位を有している。屈曲部分183は、屈曲部位を有するため、平坦部分182に比べて変形しやすい。
【0050】
単セル用セパレータ120とIC用セパレータ180とは、特許請求の範囲における流路画定部材の一例である。平坦部分122と平坦部分182とは、特許請求の範囲における第1の画定部分の一例であり、燃料室176のうち、平坦部分122と平坦部分182とで画定される空間が特許請求の範囲における第1のガス流路の一例である。屈曲部分123と屈曲部分183とは、特許請求の範囲における第2の画定部分の一例であり、燃料室176のうち、屈曲部分123と屈曲部分183とで画定される空間が特許請求の範囲における第2のガス流路の一例である。
【0051】
A-4.ガス流通部材50の構成:
本実施形態の燃料電池スタック100は、さらにガス流通部材50を備える。以下、ガス流通部材50の構成について説明する。本実施形態では、ガス流通部材50は、単セル110に対して燃料ガス供給連通流路142側に配置されたガス流通部材50Aと、単セル110に対して燃料ガス排出連通流路143側に配置されたガス流通部材50Bとを含んでいる。ガス流通部材50Aの形状とガス流通部材50Bの形状とは、単セル110に対して対称である。図5には、ガス流通部材50(50A,50B)が概略的に示されており、図6には、ガス流通部材50(50A,50B)が概略的に示されているとともに、ガス流通部材50AにおけるX1部分の詳細構成が拡大して示されており、図9には、ガス流通部材50(50A,50B)が概略的に示されているとともに、ガス流通部材50BにおけるX2部分の詳細構成が拡大して示されている。
【0052】
図9に示すように、ガス流通部材50は、全体として所定の方向(本実施形態ではY軸方向)に延びる長尺状の部材であり、例えば、単セル用セパレータ120やIC用セパレータと同じフェライト系ステンレス等の金属により形成されている。ガス流通部材50は、本体部60と複数の足部70とを有している。
【0053】
本体部60は、燃料ガスFGの流れ方向(X軸方向)に交差する方向(Y軸方向)に延伸している形状を有している。本体部60は、燃料室176のうち、上下方向視で、単セル用セパレータ120の平坦部分122とIC用セパレータ180の平坦部分182とに重なる空間に配置されている。すなわち、本体部60は、燃料室176のうち、平坦部分122と平坦部分182とで画定される第1のガス流路に配置されている。なお、燃料ガスFGの流れ方向視で、本体部60の両端は、いずれも、単セル110の両端よりも外側に位置している。本体部60は、特許請求の範囲における支持部分の一例である。
【0054】
各足部70は、本体部60から本体部60に交差する方向(X軸方向 燃料ガスFGの流れ方向)に延びる線状の形状を有している。燃料ガスFGの流れ方向視で、複数の足部70は、単セル110の全長にわたって配置されている。本実施形態では、ガス流通部材50は、複数の内側足部70Aと、複数の外側足部70Bとを有している。足部70のうち、屈曲部分123と屈曲部分183とで画定される第2のガス流路に配置される部分は、特許請求の範囲におけるガス流通部分の一例である。
【0055】
内側足部70Aは、本体部60から単セル110側に延びている。複数の内側足部70Aは、燃料ガスFGの流れ方向に交差する方向(Y軸方向 本体部60の延伸方向)に沿って互いに間隔を開けて並んでいる。すなわち、ガス流通部材50は、互いに隣り合う2つの内側足部70Aによって形成される溝VAを有している。なお、本実施形態では、複数の内側足部70Aは、互いに均等定間隔を開けて並んでいる(図9参照)。ガス流通部材50では、燃料ガスFGの流れ方向視で、複数の内側足部70Aの間の溝VAの少なくとも一部は、本体部60から燃料ガスFGの流れ方向に交差する方向(単セル用セパレータ120とは反対側)に外れた位置に配置されている。
【0056】
また、各内側足部70Aは、平坦部分122と平坦部分182とで画定される第1のガス流路内において、燃料ガスFGの流れ方向(X軸方向)と本体部60の延伸方向(Y軸方向)との両方に交差する方向(Z軸方向)に延びる部分を有している。具体的には、各内側足部70Aは、第1の段差部72Aと第2の段差部74Aとを有している(図6参照)。第1の段差部72Aは、上下方向において、本体部60よりもIC用セパレータ180とは反対側(単セル用セパレータ120側)に位置する段差部分である。第2の段差部74Aは、上下方向において、第1の段差部72AよりもIC用セパレータ180とは反対側に位置し、かつ、燃料ガスFGの流れ方向において、第1の段差部72Aよりも単セル110側に位置する段差部分である。
【0057】
外側足部70Bは、本体部60から単セル110とは反対側(燃料極側フレーム140側)に延びている。複数の外側足部70Bは、燃料ガスFGの流れ方向に交差する方向(Y軸方向)に沿って互いに間隔を開けて並んでいる。すなわち、ガス流通部材50は、互いに隣り合う2つの外側足部70Bによって形成される溝VBを有している。なお、本実施形態では、複数の外側足部70Bは、互いに均等定間隔を開けて並んでいる(図9参照)。ガス流通部材50では、燃料ガスFGの流れ方向視で、複数の外側足部70Bの間の溝VBの少なくとも一部は、本体部60から燃料ガスFGの流れ方向に交差する方向(IC用セパレータ180とは反対側)に外れた位置に配置されている。
【0058】
また、各外側足部70Bは、平坦部分122と平坦部分182とで画定される第1のガス流路内において、燃料ガスFGの流れ方向(X軸方向)と本体部60の延伸方向(Y軸方向)との両方に交差する方向(Z軸方向)に延びる部分を有している。具体的には、各外側足部70Bは、第1の段差部72Bと第2の段差部74Bとを有している(図6参照)。第1の段差部72Bは、上下方向において、本体部60よりもIC用セパレータ180とは反対側(単セル用セパレータ120側)に位置する段差部分である。第2の段差部74Bは、上下方向において、第1の段差部72BよりもIC用セパレータ180とは反対側に位置し、かつ、燃料ガスFGの流れ方向において、第1の段差部72Bよりも単セル110とは反対側に位置する段差部分である。
【0059】
本実施形態では、複数の内側足部70Aと複数の外側足部70Bとは、互いに1つずつ、本体部60の延伸方向における位置が一致している。すなわち、本体部60の延伸方向において、各内側足部70Aの位置と各外側足部70Bの位置とは互いに一致している。換言すれば、燃料ガスFGの流れ方向視で各内側足部70Aと外側足部70Bとは互いに重なるように配置されている。また、本実施形態では、上下方向視で、外側足部70Bの長さLBは、内側足部70Aの長さLAよりも長い。本実施形態では、単セル用セパレータ120およびIC用セパレータ180のうち、単セル110とは反対側(燃料極側フレーム140側)に位置する屈曲部分123と屈曲部分183とで画定される空間が最もつぶれやすい最大つぶれ空間になっている。そのため、この最大つぶれ空間に、相対的に長い外側足部70Bを配置することにより、最大つぶれ空間におけるガスの流れが阻害されることが抑制されている。
【0060】
本体部60の延伸方向(Y軸方向)において、足部70(70A,70B)の幅D1は、互いに隣り合う足部70同士の間の間隔D2よりも狭い(図9参照)。また、足部70の剛性は、単セル用セパレータ120やIC用セパレータ180の剛性よりも高い。具体的には、足部70の厚みは、単セル用セパレータ120やIC用セパレータ180の厚みよりも厚い(図6参照)。
【0061】
ガス流通部材50は、IC用セパレータ180に接触し、燃料ガスFGの流れ方向におけるガス流通部材50の移動を規制する一対の規制部80を有している。具体的には、一対の規制部80は、それぞれ、本体部60の末端に位置する各外側足部70Bの先端から、燃料極側フレーム140に形成された係止孔148に係合する係合爪である(図9参照)。なお、燃料ガスFGの流れ方向視で、規制部80は、単セル110よりも外側に配置されている。
【0062】
ガス流通部材50の足部70の板厚t1は、0.05mm以上、0.2mm以下程度であり、例えば0.1mmである。ガス流通部材50の本体部70の板厚t1は、0.05mm以上、1mm以下程度であり、例えば0.1mmである。また、ガス流通部材50の高さh1(Z軸方向の大きさ)は、0.4mm以上、1.0mm以下程度であり、例えば0.7mmである。また、足部70(70A,70B)の幅D1は、1mm以上、7mm以下程度であり、例えば4mmである。また、ガス流通部材50における隣り合う2つの足部70同士の間の間隔D2は、例えば5mm以上、15mm以下程度であり、例えば10mmである。
【0063】
A-5.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の燃料電池スタック100は、ガス流通部材50を備える(図5図6および図9参照)。ガス流通部材50は、本体部60と複数の足部70とを有している。本体部60は、燃料室176のうち、平坦部分122と平坦部分182とで画定される第1のガス流路に配置されており、複数の足部70を支持している。
【0064】
複数の足部70(70A,70B)は、互いに間隔を開けて配置されることにより、溝VA,VBを形成している。また、各足部70は、屈曲部分123と屈曲部分183とで画定される第2のガス流路内において本体部60よりもIC用セパレータ180とは反対側(単セル用セパレータ120側)に位置する段差部分(72A,74A,72B,74B)を有している。このような構成により、燃料ガスFGは、ガス流通部材50における溝VA,VBを介して第2のガス流路を通り抜けることが可能になっている(図6のX1部分における矢印参照)。すなわち、ガス流通部材50では、複数の足部70によって、第2のガス流路に燃料ガスFGが流れる空間(溝VA,VB)が形成されている。足部70は、特許請求の範囲における空間形成部の一例である。
【0065】
ここで、燃料電池スタック100の発電運転中には、各発電単位102において、燃料室176内のガスの圧力と空気室166内のガスの圧力との間に差が生じる。具体的には、空気室166内のガスの圧力が、燃料室176内のガスの圧力より高くなる。そのため、燃料室176と空気室166との間のガスの圧力差に起因して、燃料室176と空気室166とを区画する単セル用セパレータ120およびIC用セパレータ180に応力が生じ、特に単セル用セパレータ120の屈曲部分123やIC用セパレータ180の屈曲部分183が優先的に変形し、燃料室176の高さが低くなるように変形するおそれがある。そうすると、屈曲部分123と屈曲部分183とで画定される第2のガス流路が狭くなり、その結果、燃料ガス供給マニホールド171および燃料ガス排出マニホールド172と燃料室176との間のガスの流れが阻害されて燃料電池スタック100の性能に悪影響を及ぼしやすおそれがある。
【0066】
しかしながら、上述したように、本実施形態の燃料電池スタック100では、ガス流通部材50が、燃料室176内における第2のガス流路に配置されている。そのため、ガス流通部材50の存在により、ガス流通部材50が配置されていない形態と比較して、Z軸方向視で、燃料ガス供給連通流路142および燃料ガス排出連通流路143と単セル110との間の位置において、単セル用セパレータ120やIC用セパレータ180の上記変形が発生することを抑制することができる。そのため、単セル用セパレータ120やIC用セパレータ180の変形に起因して燃料ガス供給マニホールド171および燃料ガス排出マニホールド172と燃料室176との間のガスの流れが阻害されることを抑制することができ、ひいては燃料電池スタック100の性能が低下することを抑制することができる。
【0067】
また、ガス流通部材50には、燃料ガスFGが流れる溝VA,VBが形成されている。そのため、ガス流通部材50を、燃料室176内における、Z軸方向視で、燃料ガス供給連通流路142および燃料ガス排出連通流路143と単セル110との間に配置しても、ガス流通部材50の存在によって燃料室176内におけるガスの流れが阻害されることを抑制することができる。
【0068】
以上のことから、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、燃料室176内における燃料ガスFGの流れが阻害されることを抑制しつつ、単セル用セパレータ120やIC用セパレータ180の変形に起因して燃料電池スタック100の性能が低下することを抑制することができる。
【0069】
なお、本実施形態では、燃料電池スタック100に含まれるすべての発電単位102がガス流通部材50を備えている。そのため、ある発電単位102の単セル用セパレータ120やIC用セパレータ180の変形に起因して発電単位102毎の燃料ガスFGの流路の圧損に差が生じることを抑制することができ、該圧損の差に起因して発電単位102毎の燃料ガスFGの供給量に差が生じることを抑止することができ、その結果、燃料電池スタック100全体の性能が低下することを抑制することができる。
【0070】
本実施形態では、相対的に変形しやすい第2のガス流路に配置される足部70が、相対的に変形しにくい第1のガス流路に配置される本体部60に支持されている(図6および図9参照)。そのため、足部70が単体で第2のガス流路に配置された構成に比べて、第2のガス流路の変形に伴って足部70が第2のガス流路から外れた位置に移動することを抑制することができ、単セル用セパレータ120やIC用セパレータ180の変形に起因して燃料電池スタック100の性能が低下することを効果的に抑制することができる。
【0071】
本実施形態では、本体部60は、燃料ガスFGの流れ方向に交差する方向に延伸している形状である(図9参照)。そのため、第1のガス流路に安定した状態で配置されることにより、第2のガス流路に対する足部70の位置ずれをより効果的に抑制することができる。また、複数の足部70によってガス流通部分が形成されている。そのため、例えば、本体部60に沿って連続的に繋がるように延びる板状部分によってガス流通部分が形成された構成に比べて、ガス流路(特に第2のガス流路)内における燃料ガスFGの流れが阻害されることを抑制することができる。
【0072】
本実施形態では、燃料ガスFGの流れ方向視で、複数の内側足部70Aの間の溝VAの少なくとも一部は、本体部60から外れた位置に配置されている(図6参照)。これにより、本体部60の存在に起因してガス流路(特に第1のガス流路)内における燃料ガスFGの流れが阻害されることを抑制することができる。
【0073】
本実施形態では、各足部70(70A,70B)は、第1のガス流路内において、燃料ガスFGの流れ方向(X軸方向)と本体部60の延伸方向(Y軸方向)との両方に交差する方向(Z軸方向)に延びる部分(第1の段差部72A,72Bの傾斜部分)を有している(図6参照)。これにより、第1のガス流路内における燃料ガスFGの流れが阻害されることを抑制することができる。
【0074】
本実施形態では、本体部60の延伸方向(Y軸方向)において、足部70(70A,70B)の幅D1は、互いに隣り合う足部70同士の間の間隔D2よりも狭い(図9参照)。これにより、例えば、足部70の幅D1が足部70同士の間の間隔D2よりも広い構成に比べて、ガス流路内における燃料ガスFGの流れが阻害されることを抑制することができる。
【0075】
本実施形態では、足部70の剛性は、単セル用セパレータ120やIC用セパレータ180の剛性よりも高い。これにより、例えば、足部70の剛性が単セル用セパレータ120やIC用セパレータ180の剛性と同等以下である構成に比べて、足部70の存在により、ガス流路の断面積が減少する方向に単セル用セパレータ120やIC用セパレータ180が変形することを、より確実に確保することができるため、該変形に起因してガス流路における燃料ガスFGの流れが阻害されることを抑制することができる。
【0076】
本実施形態では、ガス流通部材50は、一対の第2のガス流路のそれぞれに配置される一対の足部70(70A,70B)を有している(図6および図9参照)。これにより、ガス流通部材50が、一対の足部70によって第1のガス流路を跨がるように配置されることによって第1のガス流路に空間が確保されやすくなる。その結果、第2のガス流路だけでなく、第1のガス流路内における燃料ガスFGの流れが阻害されることを抑制することができる。
【0077】
ガス流通部材50は、単セル用セパレータ120に接触し、燃料ガスFGの流れ方向におけるガス流通部材50の移動を規制する一対の規制部80を有している(図9参照)。これにより、ガス流通部材50が燃料ガスFGの流れ方向に移動することを効果的に抑制することができる。また、本実施形態では、ガス流通部材50が燃料ガスFGの流れ方向に交差する方向に移動することも抑制することができる。
【0078】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0079】
上記実施形態における燃料電池スタック100の構成や燃料電池スタック100を構成する各部分の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、ガス流通部材50が、Z軸方向視で、単セル用セパレータ120およびIC用セパレータ180の各連結部128,188(平坦部分122,182および屈曲部分123,183)と重なる位置に配置されていた。しかし、ガス流通部材50は、Z軸方向視で、各連結部128,188のうち、屈曲部分123,183に重なり、かつ、平坦部分122,182に重ならない位置に配置されていてもよい。さらに、ガス流通部材50は、単セル用セパレータ120およびIC用セパレータ180における各連結部128,188以外の部分(例えば単セル用セパレータ120等において相対的に肉厚が薄く変形しやすい部分など)と重なる位置に配置されていてもよい。また、上記実施形態では、単セル用セパレータ120およびIC用セパレータ180が、連結部128,188を有しているが、単セル用セパレータ120およびIC用セパレータ180が、連結部128,188を有さなくてもよい。
【0080】
上記実施形態では、燃料室176内における、Z軸方向視で、燃料ガス供給連通流路142と単セル110との間に1つのガス流通部材50(50A)が配置されているが、該位置に複数のガス流通部材50が配置されていてもよい。同様に、上記実施形態では、燃料室176内における、Z軸方向視で、燃料ガス排出連通流路143と単セル110との間に1つのガス流通部材50(50B)が配置されているが、該位置に複数のガス流通部材50が配置されていてもよい。また、上記実施形態において、ガス流通部材を、例えば、空気室166内における、Z軸方向視で、酸化剤ガス供給連通流路132(あるいは酸化剤ガス排出連通流路133)と単セル110との間に配置してもよい。
【0081】
上記実施形態では、ガス流通部材50が、燃料室176内における、Z軸方向視で、燃料ガス供給連通流路142および燃料ガス排出連通流路143と単セル110との間に配置されているが、ガス流通部材50が、燃料室176内における、Z軸方向視で、燃料ガス供給連通流路142と燃料ガス排出連通流路143との一方と、単セル110との間に配置されているとしてもよい。
【0082】
上記実施形態では、燃料電池スタック100に含まれるすべての発電単位102がガス流通部材50を備えているが、必ずしも燃料電池スタック100に含まれるすべての発電単位102がガス流通部材50を備えている必要はなく、少なくとも1つの発電単位102がガス流通部材50を備えていればよい。
【0083】
上記実施形態では、ガス流通部材50が、燃料室176内における、Z軸方向視で、燃料ガス供給連通流路142および燃料ガス排出連通流路143とインターコネクタ190との間に配置されると共に、IC用セパレータ180と重なって配置されているが、必ずしもこのような構成である必要はない。また、燃料電池スタック100がIC用セパレータ180を備えている必要はなく、インターコネクタ190が燃料電池スタック100の周縁部(Z軸方向視で空気極側フレーム130や燃料極側フレーム140と重なる部分)まで延伸していてもよい。
【0084】
ガス流通部材50の構成は種々変形可能である。例えば、ガス流通部材50において、内側足部70Aと外側足部70Bとのいずれか一方を備えない構成でもよいし、内側足部70Aを1つだけ備える構成や、外側足部70Bを1つだけ備える構成でもよい。また、ガス流通部材50(本体部60)の延伸方向は、燃料ガスFGの流れ方向に交差する方向であれば、他の方向であってもよい。また、ガス流通部材50は、例えば、ガス流通部材50は、板材を断面が波形になるように折り曲げ加工して作製された部材であり、ガス流通部材50全体の延伸方向(Y軸方向)に直交する方向(XZ面内方向)に延伸する平板状の複数の第1の部分と、それぞれ、隣り合う2つの第1の部分の端部間を接続する平板状の複数の第2の部分とが、ガス流通部材50全体の延伸方向(Y軸方向)に交互に並んだ構成でもよい。また、ガス流通部材50は、溝VA,VBに限らず、ガスが流れる貫通孔などにより空間が形成された構成(例えばガスが流れる多数の孔が形成されたメッシュ状の部材)でもよい。
【0085】
上記実施形態において、ガス流通部材50の足部70は、第1の段差部72A,72Bと第2の段差部74A,74Bとの少なくとも1つを有しない構成でもよいし、3つ以上の段差部を有する構成でもよい。また、内側足部70Aと外側足部70Bとは、本体部60の延伸方向において、互いに異なる位置に配置されていてもよい。また、複数の内側足部70Aの長さLAは、いずれも同じであったが、少なくとも一部の内側足部70Aの長さLAは、互いに異なってもよい。外側足部70Bについても同様である。また、内側足部70Aの長さLAと外側足部70Bの長さLBとは互いに同じでもよい。足部70(70A,70B)の幅D1は、互いに隣り合う足部70同士の間の間隔D2と同じでもよいし、間隔D2よりも広くてもよい。足部70の剛性は、単セル用セパレータ120やIC用セパレータ180の剛性以下でもよい。ガス流通部材50は、規制部80を備えない構成でもよい。
【0086】
流路画定部材は、単セル用セパレータ120やIC用セパレータ180に限られない。流路画定部材は、ガス流路を画定するとともに、上記第1の画定部分および第2の画定部分を有する部材であればよく、例えば、ガス流路を構成するマニホールドやガス配管等でもよい。第2の画定部分は、屈曲部位を有する屈曲部分123,183に限らず、他の部分より肉厚が薄い部分、他の部分よりも軟質な材料で形成された部分や、他の部分よりも自由端に近い部分などもよい。なお、第2の画定部分が変形する要因としては、燃料室と空気室との圧力差に限らず、例えば流路画定部材とそれに隣接する部材との熱膨張差などが挙げられる。
【0087】
図10は、変形例としての燃料電池スタック100aの外観構成を示す説明図である。図10に示す変形例の燃料電池スタック100aは、複数の単セル110aを備える。単セル110aは、上下方向に伸びる柱状の支持体を有する。支持体は、断面が扁平状であり、一対の対向する平坦面を有する。支持体の内部には、上下方向に伸びるガス流路が形成されている。支持体の一方の平坦面上には、燃料極と、固体電解質層と、空気極とが順次積層されており、他方の平坦面のうち空気極が形成されていない部位には、インターコネクタが積層されている。隣接する単セル110a間に導電部材150aを配置することにより、単セル110a同士が電気的に直列に接続されている。単セル110aは、特許請求の範囲における電気化学反応単セルまたは電気化学反応単位の一例である。
【0088】
各単セル110aの下端は、ガラス等のシール材124aにより、マニホールド171aに固定されている。各単セル110aの支持体に形成されたガス流路は、マニホールド171aの内部空間に連通している。マニホールド171aの側面には、燃料ガスをマニホールド171a内に供給するための燃料ガス供給管27aが接続されている。燃料ガス供給管27aを介してマニホールド171aに供給された燃料ガスは、マニホールド171aから各単セル110aの支持体に形成されたガス流路を介して、燃料極に供給される。
【0089】
図11に示す変形例の燃料電池スタック100aにおいて、マニホールド171aおよび燃料ガス供給管27a等のガス流路は、各単セル110aの燃料極との間でガスのやり取りをマニホールドであり、各単セル110aの支持体に形成されたガス流路のうち支持体のマニホールド171a側の端部から燃料極に到達するまでの部分は、マニホールドと燃料極とを連通する連通流路である。マニホールド171aは、平坦部分122aと屈曲部分123aとを有している。屈曲部分123aは、平坦部分122aよりも変形しやすい。このマニホールド171a内にガス流通部材50aが配置されている。具体的には、ガス流通部材50aは、ガス流通部分70aと支持部分60aとを有している。ガス流通部分70aは、屈曲部分123aによって画定される空間内(屈曲部分123aの直下)に配置されている。ガス流通部分70aには、燃料ガス供給管27aからの燃料ガスが流れる貫通孔72aが形成されている。支持部分60aは、ガス流通部分70aに対して、燃料ガス供給管27aとは反対側に配置されており、ガス流通部分70aを支持している。このような構成により、マニホールド171a内における燃料ガスの流れが阻害されることを抑制しつつ、マニホールド171aの変形に起因して燃料電池スタック100aの性能が低下することを抑制することができる。マニホールド171aは、ガス画定部材の一例である。
【0090】
上記実施形態において、燃料電池スタック100は、例えば、空気極用のマニホールド161,162を備えずに、空気室166の酸化剤ガス供給連通流路132と酸化剤ガス排出連通流路133とが燃料電池スタック100の外部に直接開口している構成でもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、一対のエンドプレート104,106に孔32,34が形成されているが、一対のエンドプレート104,106の少なくとも一方について該孔32,34が形成されていなくてもよい。また、上記実施形態では、一対のエンドプレート104,106がターミナルプレートとして機能するが、一対のエンドプレート104,106とは別に、ターミナルプレートを設けてもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、インターコネクタ190は導電性の被覆層194を含んでいるが、インターコネクタ190が該被覆層194を含んでいなくてもよい。また、上記実施形態では、単セル110が反応防止層118を有しているが、単セル110が反応防止層118を有さないとしてもよい。また、上記実施形態において、燃料電池スタック100に含まれる単セル110の個数(発電単位102の個数)は、あくまで一例であり、単セル110の個数は燃料電池スタック100に要求される出力電圧等に応じて適宜決められる。また、上記実施形態における各部材を構成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により構成されていてもよい。
【0093】
また、上記実施形態の燃料電池スタック100は、カウンターフロータイプのSOFCであるが、本明細書に開示される技術は、コフロータイプのSOFCにも同様に適用可能である。なお、コフロータイプのSOFCでは、Z軸方向視で、燃料ガス供給連通流路142と酸化剤ガス供給連通流路132とは、単セル110の一の辺に対向するように配置され、かつ、燃料ガス排出連通流路143と酸化剤ガス排出連通流路133とは、単セル110の該一の辺に対して単セル110の中心点を挟んで対向する他の辺に対向するように配置されているような構成を有している。また、本明細書に開示される技術は、クロスフロータイプのSOFCにも同様に適用可能である。
【0094】
また、上記実施形態では、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応を利用して発電を行う燃料電池スタック100を対象としているが、本明細書に開示される技術は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形電解セル(SOEC)の構成単位である電解単セルを複数備える電解セルスタックにも同様に適用可能である。なお、電解セルスタックの基本的な構成は、例えば特開2016-81813号公報に記載されているように公知であるが、おおよそ以下の通りである。すなわち、電解セルスタックの構成は、上述した実施形態の燃料電池スタック100の構成において、「発電単位」を「電解セル単位」と読み替え、「単セル」を「電解単セル」と読み替え、「酸化剤ガス供給マニホールド」を「空気排出マニホールド」と読み替え、「酸化剤ガス排出マニホールド」を「空気供給マニホールド」と読み替え、「燃料ガス供給マニホールド」を「水素排出マニホールド」と読み替え、「燃料ガス排出マニホールド」を「水蒸気供給マニホールド」と読み替え、「酸化剤ガス供給連通流路」を「空気排出連通流路」と読み替え、「酸化剤ガス排出連通流路」を「空気供給連通流路」と読み替え、「燃料ガス供給連通流路」を「水素排出連通流路」と読み替え、「燃料ガス排出連通流路」を「水蒸気供給連通流路」と読み替えた構成である。
【0095】
電解セルスタックの運転の際には、空気極114がプラス(陽極)で燃料極(水素極)116がマイナス(陰極)となるように、電解セルスタックに電圧が印加される。また、ガス通路部材27を介して水蒸気供給マニホールドに原料ガスとしての水蒸気が供給される。なお、供給される水蒸気に、水素ガスが含まれていてもよい。水蒸気供給マニホールドに供給された水蒸気は、水蒸気供給マニホールドから各電解セル単位の水蒸気供給連通流路を介して燃料室176に供給され、各電解単セルにおける水の電気分解反応に供される。各電解単セルにおける水の電気分解反応により燃料室176で発生した水素ガスは、余った水蒸気と共に水素排出連通流路を介して水素排出マニホールドに排出され、水素排出マニホールドからガス通路部材27を経て電解セルスタックの外部に取り出される。
【0096】
また、電解セルスタックの運転の際には、電解セルスタックの温度の制御等のために、必要により空気が電解セルスタックの内部に供給される。この場合には、ガス通路部材27を介して空気供給マニホールドに供給された空気が、空気供給マニホールドから各電解セル単位の空気供給連通流路を介して、空気室166に供給される。空気室166に供給された空気は、空気極114で生成される酸素とともに空気排出連通流路を介して空気排出マニホールドに排出され、空気排出マニホールドからガス通路部材27を経て電解セルスタックの外部に排出される。
【0097】
このような構成の電解セルスタックにおいても、上記実施形態における燃料電池スタック100と同様の構成を採用することにより、上記実施形態における燃料電池スタック100の作用効果と同様の作用効果を奏する。
【0098】
また、上記実施形態では、固体酸化物形燃料電池(SOFC)を例に説明したが、本明細書に開示される技術は、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)といった他のタイプの燃料電池(または電解セル)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0099】
22:ボルト 24:ナット 26:絶縁シート 27:ガス通路部材 27a:燃料ガス供給管 28,60:本体部 29:分岐部 32,34:孔 50,50A,50B,50a:ガス流通部材 60a:支持部分 70:足部 70A:内側足部 70B:外側足部 70a:ガス流通部分 72A,72B:第1の段差部 72a,121,181:貫通孔 74A,74B:第2の段差部 80:規制部 100,100a:燃料電池スタック 102:発電単位 103:発電ブロック 104,106:エンドプレート 108:連通孔 109:ボルト孔 110,110a:単セル 112:電解質層 114:空気極 116:燃料極 118:反応防止層 120:単セル用セパレータ 122,182,122a:平坦部分 123,183,123a:屈曲部分 124:接合部 124a:シール材 125:ガラスシール部 126,186:内側部 127,187:外側部 128,188:連結部 130:空気極側フレーム 131,141:孔 132:酸化剤ガス供給連通流路 133:酸化剤ガス排出連通流路 134:空気極側集電部 140:燃料極側フレーム 142:燃料ガス供給連通流路 143:燃料ガス排出連通流路 144:燃料極側集電部材 145:電極対向部 146:インターコネクタ対向部 147:連接部 148:係止孔 149:スペーサー 150:平板部 150a:導電部材 161,162,171,172,171a:マニホールド 166:空気室 176:燃料室 180:IC用セパレータ 189:下端用セパレータ 190:インターコネクタ 194:被覆層 196:導電性接合材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10