(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053836
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】有機系廃棄物処理方法及び装置、並びに有機物の生産方法
(51)【国際特許分類】
B09B 3/45 20220101AFI20240409BHJP
C02F 11/08 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B09B3/45 ZAB
C02F11/08
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160284
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】503275129
【氏名又は名称】りんかい日産建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592144331
【氏名又は名称】株式会社ピーシーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(72)【発明者】
【氏名】川又 養市
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敏勝
【テーマコード(参考)】
4D004
4D059
【Fターム(参考)】
4D004AA04
4D004AA12
4D004AB03
4D004CA39
4D004CC03
4D004CC20
4D059AA09
4D059BC03
4D059DB33
4D059EB11
(57)【要約】
【課題】貝殻を含む有機系廃棄物を亜臨界水処理する場合において、締固めの十分な処理生成物を生成しつつ、処理生成物の減少を図り、更には土壌汚染成分の溶出を抑制する有機系廃棄物処理方法及び装置並びに有機物の生産方法を提供する。
【解決手段】貝殻を含む有機系廃棄物を圧力容器21に投入する。投入ステップの直前に、投入ステップと同時に又は投入ステップの直後に、籾殻を含む重金属処理剤を圧力容器21内に投入する。次に、圧力容器21に水蒸気を供給し、圧力容器内21において、貝殻を含む有機系廃棄物を攪拌しながら亜臨界状態の水を用いて加温及び加圧し、加温及び加圧により水蒸気の状態から亜臨界状態になった水を用いて貝殻を含む有機系廃棄物を分解する亜臨界水処理を行う。亜臨界水処理を行った貝殻を含む有機系廃棄物を、圧力容器21から取り出し、冷却部3で冷却する。籾殻の有機系廃棄物に占める添加率は、5wt%以上20wt%以下である。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貝殻を含む有機系廃棄物を圧力容器に投入する投入ステップと、
前記圧力容器に水蒸気を供給し、前記圧力容器内において、貝殻を含む有機系廃棄物を攪拌しながら加温及び加圧し、加温及び加圧により水蒸気の状態から亜臨界状態になった水を用いて貝殻を含む有機系廃棄物を分解する亜臨界水処理を行う亜臨界水処理ステップと、
前記亜臨界水処理を行った貝殻を含む有機系廃棄物を、前記圧力容器から取り出して冷却する冷却ステップと、
前記投入ステップの直前に、前記投入ステップと同時に又は前記投入ステップの直後に、籾殻を含む重金属処理剤を、貝殻を含む有機系廃棄物に添加する重金属処理剤添加ステップと、
を備え、
前記籾殻の有機系廃棄物に占める添加率が5wt%以上20wt%以下である、有機系廃棄物処理方法。
【請求項2】
前記籾殻の有機系廃棄物に占める添加率が5wt%以上10wt%以下である、請求項1に記載の有機系廃棄物処理方法。
【請求項3】
前記籾殻の有機系廃棄物に占める添加率が10wt%以上15wt%以下である、請求項1に記載の有機系廃棄物処理方法。
【請求項4】
前記籾殻の有機系廃棄物に占める添加率が15wt%以上20wt%以下である、請求項1に記載の有機系廃棄物処理方法。
【請求項5】
水蒸気が供給され、投入された貝殻を含む有機系廃棄物を攪拌しながら加温及び加圧し、加温及び加圧により水蒸気の状態から亜臨界状態になった水を用いて貝殻を含む有機系廃棄物を分解する亜臨界水処理を行うための圧力容器を有する亜臨界水処理装置と、
前記圧力容器から取り出された、前記亜臨界水処理を行った貝殻を含む有機系廃棄物を冷却するための冷却部と、
を備え、
貝殻を含む有機系廃棄物の前記圧力容器への投入の直前に、貝殻を含む有機系廃棄物の前記圧力容器への投入と同時に又は貝殻を含む有機系廃棄物の前記圧力容器への投入の直後に、籾殻を含む重金属処理剤が貝殻を含む有機系廃棄物に添加され、
前記籾殻の有機系廃棄物に占める添加率が5wt%以上20wt%以下である、有機系廃棄物処理装置。
【請求項6】
前記籾殻の有機系廃棄物に占める添加率が5wt%以上10wt%以下である、請求項5に記載の有機系廃棄物処理装置。
【請求項7】
前記籾殻の有機系廃棄物に占める添加率が10wt%以上15wt%以下である、請求項5に記載の有機系廃棄物処理装置。
【請求項8】
前記籾殻の有機系廃棄物に占める添加率が15wt%以上20wt%以下である、請求項5に記載の有機系廃棄物処理装置。
【請求項9】
前記亜臨界水処理装置は、取り外し可能なアンカーボルトによって設置面に固定される、請求項5に記載の有機系廃棄物処理装置。
【請求項10】
有機物の生産方法であって、
貝殻を含む有機系廃棄物を圧力容器に投入する投入ステップと、
前記圧力容器に水蒸気を供給し、前記圧力容器内において、貝殻を含む有機系廃棄物を攪拌しながら加温及び加圧し、加温及び加圧により水蒸気の状態から亜臨界状態になった水を用いて貝殻を含む有機系廃棄物を分解する亜臨界水処理を行う亜臨界水処理ステップと、
前記亜臨界水処理を行って分解された有機物を、前記圧力容器から取り出して冷却する冷却ステップと、
前記投入ステップの直前に、前記投入ステップと同時に又は前記投入ステップの直後に、籾殻を含む重金属処理剤を、貝殻を含む有機系廃棄物に添加する重金属処理剤添加ステップと、
を備え、
前記籾殻の有機系廃棄物に占める添加率が5wt%以上20wt%以下である、
有機物の生産方法。
【請求項11】
前記籾殻の有機系廃棄物に占める添加率が5wt%以上10wt%以下である、
請求項10に記載の有機物の生産方法。
【請求項12】
前記籾殻の有機系廃棄物に占める添加率が10wt%以上15wt%以下である、
請求項10に記載の有機物の生産方法。
【請求項13】
前記籾殻の有機系廃棄物に占める添加率が15wt%以上20wt%以下である、
請求項10に記載の有機物の生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機系廃棄物処理方法及び装置、並びに有機物の生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表層が圧縮除去されたペットボトルの圧搾物の分散等によって生じる廃プラスチックのような有機系廃棄物を処理するために亜臨界水処理を行う亜臨界水処理装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
このような亜臨界水処理装置では、有機系廃棄物が亜臨界水処理装置の圧力容器に投入される。そして、圧力容器に水蒸気が供給され、圧力容器内において、有機系廃棄物を攪拌しながら加温及び加圧し、加温及び加圧により水蒸気の状態から亜臨界状態になった水を用いて有機系廃棄物を分解する亜臨界水処理が行われる。亜臨界状態になった水は、例えば、160~220℃及び1.6~3.0MPaの水である。
【0004】
亜臨界水処理を行った有機系廃棄物は、盛土等として利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
有機系廃棄物として、貝殻、汚泥を含む貝殻、土壌を含む貝殻等のような貝殻を含む有機系廃棄物が生じることがある。例えば、火力発電所などに使用する各種機器の冷却用の海水は、海水取水用のトンネルを通じて発電所に供給されるところ、この海水取水用トンネルの内壁には多くの貝殻が付着し、付着した貝殻の除去物は、有機系廃棄物として処理される。
【0007】
貝殻を含む有機系廃棄物を亜臨界水処理した場合、処理生成物は盛土等に利用できる。もっとも、盛土として利用するにはトラフィカビリティの確保、言い換えると処理生成物の締固めが十分であることが必要となる。また、処理生成物の全てが有効利用できるわけではなく、処理生成物をそのまま廃棄処理場に廃棄する場合もあるところ、廃棄処理場の廃棄処理能力には限界があり、処理生成物の質量や容積を減少することが望まれる。更には、盛土として利用する場合には、土壌汚染対策から、土壌汚染成分の溶出を抑える必要がある。
【0008】
本発明の目的は、貝殻を含む有機系廃棄物を亜臨界水処理する場合において、締固めの十分な処理生成物を生成しつつ、処理生成物の減少を図り、更には土壌汚染成分の溶出を抑制する有機系廃棄物処理方法及び装置並びに有機物の生産方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による有機系廃棄物処理方法は、貝殻を含む有機系廃棄物を圧力容器に投入する投入ステップと、圧力容器に水蒸気を供給し、圧力容器内において、貝殻を含む有機系廃棄物を攪拌しながら加温及び加圧し、加温及び加圧により水蒸気の状態から亜臨界状態になった水を用いて貝殻を含む有機系廃棄物を分解する亜臨界水処理を行う亜臨界水処理ステップと、亜臨界水処理を行った貝殻を含む有機系廃棄物を、圧力容器から取り出して冷却する冷却ステップと、前記投入ステップの直前に、前記投入ステップと同時に又は前記投入ステップの直後に、籾殻を含む重金属処理剤を、貝殻を含む有機系廃棄物に添加する重金属処理剤添加ステップと、を有し、前記籾殻の有機系廃棄物に占める添加率が5wt%以上20wt%以下である。
【0010】
本発明による有機系廃棄物処理方法において、好適には、前記籾殻の有機系廃棄物に占める添加率が5wt%以上10wt%以下である。
【0011】
本発明による有機系廃棄物処理方法において、好適には、前記籾殻の有機系廃棄物に占める添加率が10wt%以上15wt%以下である。
【0012】
本発明による有機系廃棄物処理方法は、好適には、前記籾殻の有機系廃棄物に占める添加率が15wt%以上20wt%以下である。
【0013】
本発明による有機系廃棄物処理装置は、水蒸気が供給され、投入された貝殻を含む有機系廃棄物を攪拌しながら加温及び加圧し、加温及び加圧により水蒸気の状態から亜臨界状態になった水を用いて貝殻を含む有機系廃棄物を分解する亜臨界水処理を行うための圧力容器を有する亜臨界水処理装置と、圧力容器から取り出された、亜臨界水処理を行った貝殻を含む有機系廃棄物を冷却するための冷却部と、を備え、貝殻を含む有機系廃棄物の前記圧力容器への投入の直前に、貝殻を含む有機系廃棄物の前記圧力容器への投入と同時に又は貝殻を含む有機系廃棄物の前記圧力容器への投入の直後に、籾殻を含む重金属処理剤が貝殻を含む有機系廃棄物に添加され、前記籾殻の有機系廃棄物に占める添加率が5wt%以上20wt%以下である。
【0014】
本発明による有機系廃棄物処理装置において、好適には、前記籾殻の有機系廃棄物に占める添加率が5wt%以上10wt%以下である。
【0015】
本発明による有機系廃棄物処理装置において、好適には、前記籾殻の有機系廃棄物に占める添加率が10wt%以上15wt%以下である。
【0016】
本発明による有機系廃棄物処理装置において、好適には、前記籾殻の有機系廃棄物に占める添加率が15wt%以上20wt%以下である。
【0017】
本発明による有機系廃棄物処理装置において、好適には、前記亜臨界水処理装置は、取り外し可能なアンカーボルトによって設置面に固定される。
【0018】
本発明による有機物の生産方法は、貝殻を含む有機系廃棄物を圧力容器に投入する投入ステップと、前記圧力容器に水蒸気を供給し、前記圧力容器内において、貝殻を含む有機系廃棄物を攪拌しながら加温及び加圧し、加温及び加圧により水蒸気の状態から亜臨界状態になった水を用いて貝殻を含む有機系廃棄物を分解する亜臨界水処理を行う亜臨界水処理ステップと、前記亜臨界水処理を行って分解された有機物を、前記圧力容器から取り出して冷却する冷却ステップと、前記投入ステップの直前に、前記投入ステップと同時に又は前記投入ステップの直後に、籾殻を含む重金属処理剤を、貝殻を含む有機系廃棄物に添加する重金属処理剤添加ステップと、を備え、前記籾殻の有機系廃棄物に占める添加率が5wt%以上20wt%以下である。
【0019】
本発明による有機物の生産方法において、好適には、前記籾殻の有機系廃棄物に占める添加率が5wt%以上10wt%以下である。
【0020】
本発明による有機物の生産方法において、好適には、前記籾殻の有機系廃棄物に占める添加率が10wt%以上15wt%以下である。
【0021】
本発明による有機物の生産方法において、好適には、前記籾殻の有機系廃棄物に占める添加率が15wt%以上20wt%以下である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、貝殻を含む有機系廃棄物を亜臨界水処理する場合において、締固めの十分な処理生成物を生成しつつ、処理生成物の減少を図ることができ、更には土壌汚染成分の溶出を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施の形態による有機系廃棄物処理装置の概略図である。
【
図2】本発明の一実施の形態による有機系廃棄物処理装置の一部の詳細を示す正面図である。
【
図3】本発明の一実施の形態による有機系廃棄物処理装置の一部の詳細を示す側面図である。
【
図4】本発明の一実施の形態による有機系廃棄物処理装置の一部の詳細を示す平面図である。
【
図5】本発明の一実施の形態による有機系廃棄物処理装置の制御系統のブロック図である。
【
図6】本発明の一実施の形態による有機系廃棄物処理装置により実施される有機系廃棄物処理方法及び有機物の生産方法のステップの例を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の一実施の形態による有機系廃棄物処理装置における、籾殻の添加率を変化させたときの減容化効果及び締固め効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施形態に係る有機系廃棄物処理装置の概要及び構成)
本発明による有機系廃棄物処理方法及び装置を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施の形態による有機系廃棄物処理装置の概略図である。
図2~4はそれぞれ、本発明の一実施の形態による有機系廃棄物処理装置の一部の詳細を示す正面図、側面図及び平面図である。
図5は、本発明の一実施の形態による有機系廃棄物処理装置の制御系統のブロック図である。
【0025】
図1~4に示す有機系廃棄物処理装置1の処理対象物は、貝殻を含む有機系廃棄物である。貝殻を含む有機系廃棄物は、貝殻、汚泥を含む貝殻、土壌を含む貝殻等である。
【0026】
図1に示すように、有機系廃棄物処理装置1は、処理対象物が重金属処理剤と共に投入され、投入された処理対象物に対して亜臨界水処理を行い、亜臨界水処理を行った処理対象物を取り出して冷却する。重金属処理剤は、籾殻を含む。
【0027】
そして、有機系廃棄物処理装置1は、亜臨界水処理を行った処理対象物の冷却中に、処理対象物の経時的変化に起因する悪臭を抑制するための菌類を、亜臨界水処理を行った処理対象物に添加する。処理対象物の経時的変化に起因する悪臭を抑制するための菌類は、例えば、土壌細菌群である。土壌細菌群の一例は、放線菌類である。
【0028】
有機系廃棄物処理装置1は、
図1~4に示す亜臨界水処理装置2と、
図1~4に示す冷却部3と、
図1~4に示すテントハウス4と、を備える。亜臨界水処理装置2は、地面に形成された基礎コンクリート(図示せず)に設けられ、
図2及び
図3に示すアンカーボルト5によって基礎コンクリートに固定される。アンカーボルト5は、設置面である基礎コンクリートから取り外し可能である。アンカーボルト5の種類は、取り外し可能であれば特に限定されず、例えば、ねじ固定式が挙げられる。
【0029】
亜臨界水処理装置2は、
図1~3に示す圧力容器21と、
図1~3に示す水蒸気排出装置22と、
図1及び
図2に示す水蒸気供給装置23と、
図2及び
図5に示す水蒸気開閉弁24と、
図2及び
図5に示す開閉弁駆動装置25と、
図1及び
図2に示す攪拌装置26と、を備える。また、亜臨界水処理装置2は、
図5に示す制御装置27と、
図5に示す水蒸気排出弁駆動装置28と、を更に備える。
【0030】
圧力容器21は、
図1~3に示す投入口21Aと、
図1及び
図2に示す取出口21Bと、
図1、
図2及び
図4に示す水蒸気注入口21C(2ヶ所)と、
図1~3に示す投入口ドア21Dと、
図2及び
図4に示すハンドル21Eと、を備える。投入口21Aは、処理対象物を投入するために圧力容器21の上部に筒状に突出して形成されている。
【0031】
取出口21Bは、亜臨界水処理を行った処理対象物を冷却部3に排出するために設けられている。水蒸気注入口21Cは、水蒸気供給装置23から圧力容器21に水蒸気を注入するために設けられている。
【0032】
投入口ドア21Dは、水平方向に蓋を回転させることにより開閉を行うクラッチ開閉機構で構成され、投入口21Aの開閉を行うために投入口21Aの上端に設けられている。ハンドル21Eは、取出口21Bの開閉を行うために取出口21Bの一端に設けられており、亜臨界水処理を行った処理対象物を冷却部3に排出する際に取出口21Bを開口する。
【0033】
水蒸気排出装置22は、圧力容器21の上端から上方に立設された筒状に形成され、
図2~4に示す水蒸気排出口22A,22Bと、
図5にしめす水蒸気排出弁22Cと、を有する。水蒸気排出口22A,22Bは、水蒸気を外部に排出するために筒状体の側面及び上端に設けられる。
【0034】
水蒸気供給装置23は、
図2に示すボイラー23Aと、
図2及び
図4に示す圧力調整弁23Bと、を有する。ボイラー23Aは、例えば、120~250℃及び1.6~3.0MPaの水蒸気を生成する。
【0035】
ボイラー23Aによって生成された水蒸気は、圧力調整弁23B及び水蒸気開閉弁24を介して水蒸気注入口21Cから圧力容器21内に供給される。水蒸気開閉弁24は、制御装置27により制御される開閉弁駆動装置25によって開閉が行われる。
【0036】
攪拌装置26は、
図1及び
図2に示す回転シャフト26Aと、
図2に示す複数の攪拌翼26Bと、を有する。回転シャフト26Aは、圧力容器21内の略中心を水平に貫通して配置される。攪拌翼26Bは、回転シャフト26Aの長手方向の複数箇所に半径方向に延在して取り付けられる。
【0037】
回転シャフト26Aの一端には、
図2、
図3及び
図5に示す減速機6が結合され、回転シャフト26Aは、減速機6に結合された
図1~3に示すモータ7によって駆動され、圧力容器21内の処理対象物を攪拌する。回転シャフト26Aは、通常運転時は、一定間隔で時計回り又は反時計回りに回転が切り替えられる。
【0038】
回転シャフト26Aの回転が時計回りであるときには、攪拌翼26Bは、処理対象物を取出口21B側からモータ7への方向に送る。それに対し、回転シャフト26Aの回転が反時計回りであるときには、攪拌翼26Bは、処理対象物をモータ7側から取出口21Bへの方向に送る。
【0039】
したがって、亜臨界水処理を行った処理対象物を冷却部3に排出する際には、回転シャフト26Aの回転が反時計回りとなり、攪拌翼26Bは、処理対象物をモータ7側から取出口21Bへの方向に送る。
【0040】
制御装置27は、CPUからなり、
図1、
図4及び
図5に示す温度センサ30からの検出温度信号及び
図1、
図4及び
図5に示す圧力センサ31からの検出圧力信号が入力される。温度センサ30は、圧力容器21の長手方向中央位置に配置されて攪拌翼26Bの上方位置の温度を検出する。圧力センサ31は、投入口ドア21Dに取り付けられて圧力容器21の内側の圧力を検出する。
【0041】
制御装置27は、臨界水処理の際に、検出温度信号及び検出圧力信号に基づいて開閉弁駆動装置25を制御することによって水蒸気開閉弁24を駆動する。水蒸気開閉弁24を駆動することによって、圧力容器21内への水蒸気の供給量を調整し、圧力容器21内の水(水蒸気)を亜臨界状態の水(例えば、160~220℃及び1.6~2.3MPaの水)にする。
【0042】
また、制御装置27は、臨界水処理の終了後、亜臨界水処理を行った処理対象物を乾燥させるために、水蒸気排出弁駆動装置28を制御することによって水蒸気排出弁22Cを駆動し、圧力容器21内の水蒸気を排出させる。
【0043】
また、制御装置27は、
図5に示す回転速度センサ32からの検出回転速度信号及び
図5に示す回転トルクセンサ33からの検出回転トルク信号が入力される。回転速度センサ32は、回転シャフト26Aに取り付けられて回転シャフト26Aの回転速度を検出する。回転トルクセンサ33は、回転シャフト26Aに取り付けられて回転シャフト26Aの回転トルクを検出する。
【0044】
そして、制御装置27は、検出回転速度信号及び検出回転トルク信号に基づいて減速機6を制御することによって、回転シャフト26Aの回転速度を制御する。
【0045】
冷却部3は、空冷又は水冷によって冷却される金属によって構成される。また、冷却部3は、亜臨界水処理を行った処理対象物を、取出口21Bから排出されて供給された後に冷却する。さらに、冷却部3は、亜臨界水処理を行った処理対象物の冷却中に、処理対象物の経時的変化に起因する悪臭を抑制するための菌類を、亜臨界水処理を行った処理対象物に添加する。
【0046】
テントハウス4は、
図3及び
図4に示すレール8に沿って移動可能であり、亜臨界水処理装置2の使用時には、
図1、
図2及び
図4に示す設備9をカバーし、亜臨界水処理装置2の不使用時には、
図4の矢印Aに沿って移動して亜臨界水処理装置2をカバーする。
【0047】
設備9は、水蒸気供給装置23が水蒸気を供給するために設けられた水タンク、亜臨界水処理装置2に電力を供給するための発電機等であり、亜臨界水処理装置2に近接して配置される。テントハウス4を設けることによって、有機系廃棄物処理装置1が海に近接した場所(例えば、発電所付近)に設けられたとしても亜臨界水処理装置2を海風から守ることができる。
【0048】
(実施形態に係る有機系廃棄物処理方法及び有機物の生産方法のステップ)
図6は、本発明の一実施の形態による有機系廃棄物処理装置により実施される有機系廃棄物処理方法及び有機物の生産方法のステップの例を示すフローチャートである。
【0049】
先ず、ステップS1において、投入口21Aを開いて、有機系廃棄物である処理対象物及び籾殻を含む重金属処理剤を圧力容器21内に投入する。ステップS1は、投入ステップの一例である。また、重金属処理剤の圧力容器21内への投入は、重金属処理剤添加ステップの一例であり、処理対象物の圧力容器21内への投入の直前に、処理対象物の圧力容器21内への投入と同時に又は処理対象物の圧力容器21内への投入の直後に行われる。
【0050】
ここで、籾殻の有機系廃棄物に占める添加率は、5wt%以上20wt%以下である。籾殻添加率がこの範囲内にある場合、後述する減容化効果及び締固め効果の双方を備えた有機物が生成される。籾殻添加率が5wt%以上であれば、土壌汚染成分であるフッ素の溶出量削減効果も認められる。
【0051】
籾殻添加率が5wt%未満の場合、後述するように、水分蒸発促進現象が十分に発揮されず、減容化効果が十分に発揮されない。また、生成される有機物は含水量の多い土となるため、締固め効果も不十分となる。他方で、籾殻添加率が20wt%を超えると、貝殻の空隙に入り込めない籾殻の粒子がそのまま質量分となり、減容化効果が十分に発揮されない。加えて、処理生成物は含水量の少ない土となるため、締固め効果が不十分となる。詳しくは後述する。
【0052】
好適には、籾殻の有機系廃棄物に占める添加率が5wt%以上10wt%以下であることが好ましい。この範囲においては、締固め効果を一定程度保ちつつ、減容化効果を高めることができる有機物が生成される。
【0053】
より好適には、籾殻の有機系廃棄物に占める添加率が7wt%以上8wt%以下であることが好ましい。この範囲においては、より減容化効果の高い有機物が生成される。
【0054】
好適には、籾殻の有機系廃棄物に占める添加率が10wt%以上15wt%以下であることが好ましい。この範囲においては、減容化効果と締固め効果を共に効果的に発揮することができる有機物が生成される。
【0055】
好適には、籾殻の有機系廃棄物に占める添加率が15wt%以上20wt%以下であることが好ましい。この範囲においては、減容化効果を一定程度保ちつつ、締固め効果を高めることができる有機物が生成される。
【0056】
より好適には、籾殻の有機系廃棄物に占める添加率が15wt%以上18wt%以下であることが好ましい。この範囲においては、より締固め効果の高い有機物が生成される。
【0057】
次に、ステップS2において、ボイラー23Aで生成された水蒸気を、水蒸気注入口21Cから圧力容器21に供給する。次に、ステップS3において、圧力容器21内において、モータ7によって回転シャフト26Aを回転させることによって処理対象物を攪拌しながら加温及び加圧する。
【0058】
水蒸気は、加温及び加圧により亜臨界状態の水になり、亜臨界状態になった水によって、貝殻を含む有機系廃棄物が分解される。ステップS2及びステップS3は、亜臨界水処理ステップの一例である。
【0059】
処理対象物を攪拌しながら加温及び加圧する時間すなわち圧力容器21に供給された水蒸気を亜臨界水にするまでの時間は、例えば、1時間40分であり、亜臨界状態になった水を用いて処理対象物を分解する時間は、例えば、45分である。
【0060】
次に、ステップS4において、圧力容器21への水蒸気の供給を停止し、水蒸気排出弁駆動装置28により水蒸気排出弁22Cを開き、水蒸気排出口22A,22Bから水蒸気を排出して圧力容器21内の温度及び圧力を低減させる。そして、圧力容器21内の亜臨界水処理を行った処理対象物を乾燥させる。圧力容器21内の亜臨界水処理を行った処理対象物を乾燥させる時間は、例えば、50分である。
【0061】
次に、ステップS5において、圧力容器21内の亜臨界水処理を行った処理対象物を取出口21Bから取り出し、冷却部3に供給する。次に、ステップS6において、亜臨界水処理を行った処理対象物を冷却部3で冷却し、亜臨界水処理を行った処理対象物の経時的変化に起因する悪臭を抑制するための菌類を添加する。
【0062】
ステップS4乃至ステップS6は、冷却ステップの一例であり、亜臨界水処理を行った処理対象物の経時的変化に起因する悪臭を抑制するための菌類の添加は、菌類添加ステップの一例であり、冷却の開始時、冷却の終了時又は冷却の開始後から冷却の終了前の任意の時間に行われる。亜臨界水処理を行った処理対象物を冷却する時間は、例えば、45分である。亜臨界水処理を行った後に冷却された処理対象物、言い換えると処理生成物は、盛土等に利用可能な有機物となる。
【実施例0063】
一実施例として、貝殻を含む有機系廃棄物を亜臨界水処理する場合において、籾殻の添加率を変化させ、各籾殻の添加率に対する、処理生成物の減容率、コーン指数、及び土壌汚染成分の溶出量の測定を行った。有機系廃棄物、籾殻、籾殻添加率、減容率、コーン指数及び土壌汚染成分の溶出量の各単位は表1に示される。
【0064】
【0065】
ここで、減容率は、籾殻を添加した処理前の有機系廃棄物(wet-kg)に対する、生成された有機物(wet-kg)の割合を示す。また、コーン指数は、地面の耐久性、言い換えると締固めを表す指標の一つであり、トラフィカビリティの指標として用いられる。
【0066】
更に、コーン指数測定にあたり、生成された有機物における土粒子の密度(メガグラムパー立方メートル(Mg/m3))、土の含水比(%)、土の最大乾燥密度(メガグラムパー立方メートル(Mg/m3))及び土の最適含水比(%)を測定した。加えて、生成された有機物における土粒子の地盤材料を測定した。土壌汚染成分の溶出量測定を含めたこれらの測定は、表2に示す試験方法に則った。
【0067】
【0068】
なお、トラフィカビリティとは、地面がブルドーザーやクレーン車等の建設機械の走行に耐えられるかどうかを表す度合いをいう。トラフィカビリティは、建設機械の走行のしやすさを示すともいえる。
【0069】
本実施例での作業手順は次のとおりである。まず、貝殻を含んだ有機系廃棄物と籾殻とを亜臨界水処理装置2にそれぞれ投入する。次にボイラー23Aから水蒸気を亜臨界水処理装置2に導入し、1時間ほど加熱及び加圧しながら亜臨界水処理装置2による処理を行う。この間、有機系廃棄物は200℃/2メガパスカル(MPa)の状態下に置かれる。処理終了後、蒸気を排出し、所定の水分量になるまで加温及び真空廃棄を行い、2時間ほど乾燥する。その後、冷却して亜臨界水処理装置2の排出口(不図示)から生成された有機物を排出する。その後、生成された有機物に対して各種測定を行った。なお、亜臨界水処理の処理時間を整理したものを表3に示す。
【0070】
【0071】
図7は、本発明の一実施の形態による有機系廃棄物処理装置における、籾殻添加率を変化させたときの減容化効果の測定結果及び締固め効果の測定結果を示す図である。
図7において、横軸は籾殻添加率(wt%)を示す。また、縦軸は、籾殻の添加率を変化させていったときの、減容率(%)及びコーン指数(kN/m2)の各々の最小値/最大値を100パーセントとした場合における、各最小値/最大値における減容率及びコーン指数の値をパーセントで示した値であり、ここではそれらを減容化効果及び締固め効果とする。
【0072】
なお、減容化効果について補足的に説明すると、減容率は、値が低いほど、生成された有機物の質量が少なくなっていることを意味する。つまり、減容率が低いほど、減容化効果は高くなる。そのため、減容化効果については、減容率の最小値を基準としたパーセント表示となる。
【0073】
図7より、まず、減容化効果は、籾殻を添加しない場合から籾殻の添加率を増加させていった場合、籾殻添加率の増加に合わせて増加し、籾殻添加率が7~8wt%程度でピークを迎えた。その後、籾殻添加率の増加に伴い、減容化効果は減少する傾向を示した。なお、籾殻添加率が7~8wt%程度における減容率は63.4%となった。言い換えると、元の有機系廃棄物と比較して、籾殻添加率を7~8wt%程度とした場合には、3割5分以上の質量を削減できたこととなる。
【0074】
籾殻添加率が7~8wt%になるまで減容化効果が増加した理由について検討するに、亜臨界水処理では、処理の過程で有機系廃棄物内の各分子が分解されて低分子となる。籾殻及び貝殻も処理の過程で低分子化されるところ、貝は一般的に含水比が高いため、蒸気排出(ステップS4)過程において空隙が生じやすい。具体的には、蒸気排出過程においては圧力容器21内の水蒸気が排出されることになるところ、貝殻に含有していた水分が蒸発して排出されることで、空隙が生じる。この空隙に、低分子化された籾殻の粒子が入り込むことで、貝殻の水分蒸発が促進される現象が発生していると考えられる。その結果、籾殻の添加率増加に伴い減容化効果も増加傾向を示すこととなる。
【0075】
他方、籾殻添加率をさらに増加させていっても、一定の段階で貝殻の空隙に籾殻粒子が入り込めない状態となる。そのため、籾殻の質量分だけ処理生成物の質量も増加することになって、減容化効果も低下していくこととなる。
【0076】
次にコーン指数、言い換えると締固め効果は、籾殻を添加しない場合から籾殻の添加率を増加させていった場合、籾殻添加率の増加に合わせて増加し、籾殻添加率が15~18wt%程度でピークを迎えた。その後、籾殻添加率の増加に伴い、締固め効果も減少する傾向を示した。なお、籾殻添加率が15~18wt%程度におけるコーン指数は2730kN/m2となった。
【0077】
更に、貝殻を含む有機系廃棄物に対して籾殻を添付した場合と添付しなかった場合とで、処理生成物の土質を比較すると、籾殻を添加しなかった場合は、含水率が高い泥土状の有機物が排出された。他方で籾殻を添加した場合、処理生成物は貝殻混じりの土壌のような固体性状であった。
【0078】
籾殻添加率を5%、10%及び20%としたときの、処理生成物の土質結果を表4に示す。
【0079】
【0080】
表4によれば、籾殻添加率を増加させると、土粒子密度、含水比及び最大乾燥密度は減少傾向にある一方、最適含水比は増加傾向となった。
【0081】
土粒子密度は、土粒子の質量(メガグラム(Mg))を体積(立方メートル(m3))で除したものであるところ、籾殻添加率を増加させるほど土粒子の質量は相対的に減少するため、籾殻添加率の増加に伴い土粒子密度は減少する。また、含水比についても、前述のとおり籾殻添加による水分蒸発促進現象に加え、籾殻添加率増加に伴い(水分を含んだ)土粒子の質量が相対的に減少することから、籾殻の添加率の増加に伴い含水比も減少する。
【0082】
最大乾燥密度と最適含水比とは、土の性質にもよるが、一般的には最大乾燥密度が小さくなるほど最適含水比が大きくなる関係となる。表4によれば、籾殻添加率を増加させると土粒子密度が減少し、最大乾燥密度も小さくなる。最大乾燥密度が小さい場合には最適含水比は大きくなるところ、籾殻添加率を20wt%まで増加させるにつれて含水比と最適含水比の差が小さくなっている。このことは、生成された有機物における土の締固めが良好に行えることを示す。
【0083】
籾殻の添加率が5wt%、15wt%及び20wt%のときの、土の含水比と最適含水比との関係を具体的に確認する。
【0084】
籾殻の添加率が5wt%のときは、地盤材料としては細粒分質礫質砂に分類されるものとなった。また、土の含水比は37.3%であり、処理生成物は最適含水比27.9%よりも比較的多くの水分を含んでいる。ここで、籾殻を添加しなかった場合には含水率が高い泥土状の有機物が排出されたところ、籾殻添加率が5wt%における含水比の結果を踏まえれば、含水率の高い泥土状の有機物が排出されるという傾向は、籾殻の添加率が5wt%未満の場合にも当てはまる。そのため、籾殻の添加率が5wt%未満となると、含水率の高い泥土状の土となり、締固め効果が十分に発揮されない。
【0085】
籾殻添加率が10wt%のときでは、地盤材料は、5wt%と同様に細粒分質礫質砂に分類されるものとなった。また、土の含水比は36.8%であるのに対し、最適含水比は31.7%となっている。依然として、土の含水比は最適含水比よりも比較的大きい、言い換えると、処理生成物の含水量は締固めするのに最適な値よりも相対的に多い。もっとも、含水比と最適含水比との差は、籾殻の添加率が5wt%と比較して小さくなっており、籾殻の添加率が10wt%の場合の方が、締固めを行いやすい土が生成されたことになる。
【0086】
籾殻添加率が20wt%のときは、地盤材料としては砂礫質シルトに分類されるものとなった。また、土の含水比は35.5%、最適含水比は35.8%となり、土の含水比が最適含水比に近い値となっている。そのため、籾殻添加率が20wt%の場合、締固めを行うのに良好な土が生成されたといえる。
【0087】
ここで、籾殻添加率が20wt%のときには、土の含水比は最適含水比より小さい。籾殻添加率を更に増加させると、土粒子密度が減少し、土の最大乾燥密度も小さくなる一方で、土の含水比は減少ないしは横ばいとなる。最大乾燥密度が小さくなることは最適含水比が大きくなることを意味するところ、籾殻添加率を増加していっても土の含水比は減少ないしは横ばいとなることから、籾殻添加率を更に増加しても土の含水比は最適含水比よりも小さい値となる。そのため、籾殻添加率が20wt%を超える場合、処理生成物は最適含水比に対して含水量の少ない土となり、締固め効果が十分発揮されなくなる。
【0088】
籾殻の添加率と土壌汚染成分の一つであるフッ素の溶出量(mg/L)との関係を表5に示す。
【0089】
【0090】
表5によれば、籾殻添加量の増加に伴いフッ素の溶出量は低下傾向となった。具体的には、処理前の有機系廃棄物はフッ素を025mg/L含有していたところ、籾殻を添加した場合、フッ素の含有率は0.08mg/Lとなった。籾殻添加率を増加させても、フッ素の含有率は減少傾向となっている。
【0091】
この理由を検討するに、亜臨界水処理においては、ケイ素(Si)とカルシウム(Ca)が存在すると強い化学結合によりトバモライト結晶が生成され、土壌汚染成分である重金属類をトバモライト結晶により閉じ込めるところ、貝殻の主成分は炭酸カルシウム(CaCO3)である一方、籾殻はケイ素であることから、貝殻の含む有機系廃棄物に籾殻を添加したことで、トバモライト結晶の生成が促進されたものと考えられる。
【0092】
籾殻の添加率と減容化効果及び締固め効果との関係を整理すると、貝殻を含む有機系廃棄物に対する籾殻添加率が5wt%以上20wt%以下の場合、生成された有機物は減容化効果及び締固め効果の双方を備えたものとなる。加えて、籾殻添加率が5wt%以上であれば、土壌汚染成分であるフッ素の溶出量削減効果も認められる。
【0093】
他方で籾殻添加率が5wt%未満の場合、籾殻の粒子が貝殻の空隙に入り込むことで貝殻の水分蒸発が促進される現象が十分に発揮されず、減容化効果が十分に発揮されない。また、処理生成物は含水量の多い土となるため、締固め効果も不十分となる。
【0094】
更に、籾殻添加率が20wt%を超えると、空隙に入り込めない籾殻の粒子がそのまま質量分となり、減容化効果が十分に発揮されない。加えて、処理生成物は含水量の少ない土となるため、締固め効果が不十分となる。
【0095】
好適には、籾殻の有機系廃棄物に占める添加率が5wt%以上10wt%以下であることが好ましい。この範囲においては、締固め効果を一定程度保ちつつ、減容化効果を高めることができるため、排出される有機物の減少に貢献できる。このことは、廃棄物処理場での処理量の削減につながり、更には廃棄物処理場の延命化にも貢献する。
【0096】
好適には、籾殻の有機系廃棄物に占める添加率が10wt%以上15wt%以下であることが好ましい。この範囲においては、減容化効果と締固め効果を共に効果的に発揮することができ、生成された有機物は廃棄物処理場での処理量削減及び盛土への有効活用の双方に貢献できる。
【0097】
好適には、籾殻の有機系廃棄物に占める添加率が15wt%以上20wt%以下であることが好ましい。この範囲においては、減容化効果を一定程度保ちつつ、締固め効果を高めることができるため、生成された有機物を盛土等に活用しやすくなる。
【0098】
(作用効果)
本実施の形態によれば、亜臨界水処理を行った貝殻を含む有機系廃棄物を冷却部3で冷却する間に亜臨界水処理を行った貝殻を含む有機系廃棄物の経時的変化に起因する悪臭を抑制するための菌類を添加する。これによって、亜臨界水処理を行った貝殻を含む有機系廃棄物の経時的変化に起因する悪臭を抑制することができる。特に、悪臭の原因としては硫化水素(H2S)ガスが一般に知られているところ、本実施形態によれば、硫化水素ガスの濃度を減少させる、あるいは限りなくゼロに近づけることが可能となる。
【0099】
また、本実施の形態によれば、重金属処理剤の圧力容器21内への投入を行うことによって、亜臨界水処理を行った後に冷却された貝殻を含む有機系廃棄物は、土壌改良剤として利用することもできる。言い換えると、締固め効果の高い有機物が生産される。
【0100】
また、本実施の形態によれば、亜臨界水処理装置2は、設置面である基礎コンクリートから取り外し可能なアンカーボルト5によって固定されているので、アンカーボルト5の固定を取り外し、亜臨界水処理装置2を移動させることができる。これにより、一つの亜臨界水処理装置2を複数の場所で有効利用することができる。加えて、本実施の形態によれば、テントハウス4がレール8に沿って移動可能であることから、亜臨界水処理装置2の移動時にはテントハウス4を簡易に移動させることができ、亜臨界水処理装置2の移動がより行いやすい。
【0101】
更に、本実施の形態によれば、籾殻の有機系廃棄物に占める添加率が5wt%以上20wt%以下であれば、生成された有機物は、減容化効果及び締固め効果、更にはフッ素溶出抑制効果を備えるものとなり、廃棄物処理場での処理負担を軽減しつつ、処理生成物を盛土等に活用することができる。好適には、籾殻添加率が5wt%以上10%以下であれば、より減容化効果を高めることができる。好適には、籾殻添加率が10wt%以上15%以下であれば、減容化効果と締固め効果の双方に効果のある有機物が生成される。好適には、籾殻添加率が15wt%以上20%以下であれば、より締固め効果を高めることができ、盛土等に活用しやすい。
【0102】
しかも、本実施の形態によれば、一般的には余分なものとして廃棄対象となっている籾殻を重金属処理剤として利用しているので、廃棄物処理場での処理量削減に更に貢献することができる。
【0103】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。例えば、有機系廃棄物処理方法及び有機物の生産方法において、菌類添加ステップを省略してもよい。また、有機系廃棄物処理装置1は、テントハウス4を備えなくてもよい。また、圧力容器21内への水蒸気の供給量の調整を、圧力容器21の温度及び圧力以外のファクタを用いて行ってもよい。また、有機系廃棄物処理装置1は、水蒸気供給装置23を備えなくてもよく、この場合、水蒸気供給装置23を設備9の一部として設ける。