(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053847
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】電力供給システムおよび電力供給プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20240101AFI20240409BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20240409BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20240409BHJP
H02J 3/46 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
G06Q50/06
H02J3/38 120
H02J13/00 301A
H02J13/00 311R
H02J3/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160306
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】金子 聖司
(72)【発明者】
【氏名】前原 利彦
(72)【発明者】
【氏名】正垣 裕誠
(72)【発明者】
【氏名】上河内 蓉子
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5G064AC09
5G064DA03
5G066HA15
5G066HB06
5L049CC06
5L050CC06
(57)【要約】
【課題】発電設備の発電電力を余すことなく有効に利用することが可能な電力供給システムおよび電力供給プログラムを提供する。
【解決手段】再生可能エネルギを利用して発電を行う発電設備ASと、発電設備ASが設置された工場AFに設けられ、発電設備ASの発電電力を工場AFに供給する構内送配電設備A1と、工場AFに設けられ、構内送配電設備A1から供給されて工場AFで消費された自家消費電力量を計量する電力量計A2と、発電設備ASの発電電力量と、電力量計A2で計量された自家消費電力量とに基づいて、発電電力の余剰電力量を算出し、構内送配電設備A1に接続された送配電設備2を利用して、余剰電力を再生可能エネルギ由来の電力として事業所COなどに供給する電力管理サーバ3とを備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能エネルギを利用して発電を行う発電設備と、
前記発電設備が設置された第1の需要場所に設けられ、前記発電設備の発電電力を前記第1の需要場所に供給する構内送配電設備と、
前記第1の需要場所に設けられ、前記構内送配電設備から供給されて当該第1の需要場所で消費された自家消費電力量を計量する第1の計量手段と、
前記発電設備の発電電力量と、前記第1の計量手段で計量された自家消費電力量とに基づいて、前記発電電力の余剰電力量を算出する余剰電力量算出手段と、
前記構内送配電設備に接続された送配電設備を利用し、前記余剰電力を再生可能エネルギ由来の電力として、前記第1の需要場所とは異なる第2の需要場所へ供給する余剰電力供給手段と、
を備えることを特徴とする電力供給システム。
【請求項2】
前記発電設備は、前記第1の需要場所に設置可能な発電設備の最大発電容量を上限として、前記第1の需要場所の電力需要を満たし、かつ、前記第2の需要場所に供給する余剰電力が生じるような発電容量を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項3】
前記余剰電力供給手段は、前記余剰電力を前記第2の需要場所へ供給する手法として、
前記余剰電力を再生可能エネルギ由来の電力として、前記第2の需要場所へ小売販売する電源特定型小売メニューパターンと、
電力供給制度の1つである自己託送制度を利用して、前記余剰電力を前記第2の需要場所へ供給する自己託送パターンと、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の電力供給システム。
【請求項4】
前記第1の計量手段で計量された自家消費電力量と、前記発電電力の発電コストおよび送配電コストに基づく第1の単価と、に基づいて前記第1の需要場所の電力料金を算出し、
前記第2の需要場所に設けられた第2の計量手段により計量された、当該第2の需要場所で消費された前記余剰電力の消費電力量と、前記発電電力の発電コスト、前記余剰電力の送配電コストおよび再生可能エネルギ由来の電力に対する環境価値に基づく第2の単価と、に基づいて前記第2の需要場所の電力料金を算出する電力料金算出手段を備える、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電力供給システム。
【請求項5】
前記発電設備を運用・管理する発電事業者と、前記第1の需要場所および前記第2の需要場所へ前記送配電設備を介して系統電力を供給する小売電気事業者と、を含む事業体により組成されたバランシンググループによって運用・管理される電力管理サーバを備え、
前記電力管理サーバは、前記余剰電力算出手段、前記余剰電力供給手段、および前記電力料金算出手段を備えるとともに、前記第1の需要場所および前記第2の需要場所に対する系統電力の需給を管理する、
ことを特徴とする請求項4に記載の電力供給システム。
【請求項6】
コンピュータを、
第1の需要場所に設置された発電設備により再生可能エネルギを利用して発電された発電電力量を受信する発電電力量受信手段、
前記発電設備から構内送配電設備を介して前記第1の需要場所に供給され、当該第1の需要場所で消費された自家消費電力量を計量する第1の計量手段から、前記自家消費電力量を受信する消費電力量受信手段、
前記発電設備の発電電力量と、前記第1の計量手段で計量された自家消費電力量とに基づいて、前記発電電力の余剰電力量を算出する余剰電力量算出手段、
前記構内送配電設備に接続された送配電設備を利用し、前記余剰電力を再生可能エネルギ由来の電力として、前記第1の需要場所とは異なる第2の需要場所へ供給する余剰電力供給手段、
として機能させることを特徴とする電力供給プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、再生可能エネルギ由来の電力を複数の需要場所へ供給する電力供給システムおよび電力供給プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、企業、自治体などの間で、再生可能エネルギ(太陽光など)由来の電力(以下「再エネ電力」ともいう) を積極的に利用するニーズが高まっている。その背景には、世界の主要国が気候変動の抑制を目指して、温室効果ガスの排出量を実質ゼロに削減するカーボンニュートラルの取り組みを加速させていること、これに呼応して企業などが自らの事業の使用電力の全てを再エネ電力で賄うことを目指す国際的なイニシアティブの「RE100」への加盟が進んでいることがあげられる。
【0003】
企業などの電力の需要家が再エネ電力を調達する手法として、コーポレートPPA(PPA;Power Purchase Agreement)の導入が進んでいる(例えば、特許文献1の段落[0013]参照)。コーポレートPPAとは、企業が新設の発電設備と契約を結んで再エネ電力の供給を受ける電力購入契約である。コーポレートPPAには、オンサイト型、オフサイト型(自己託送)、およびオフサイト型(小売メニュー)などがある。
【0004】
オンサイト型は、需要家が電気を消費する場所(以下、「需要場所」ともいう)の建物や敷地に太陽光発電などの発電設備を設置し、その発電電力を自家消費する。発電設備の設置、運用および管理などを第三者の発電事業者が行う場合、初期投資および運用・管理の負担がなく、月々のサービス料金で発電電力を自家消費することができる。また、オフサイト型(自己託送)は、需要場所以外の需要家が所有する土地などに固定価格買取制度(以下、「FIT制度」)を利用しない需要家専用の発電設備を設置し、その発電電力を一般送配電事業者の送配電設備を介して、自己託送の制度を利用して需要場所へ供給する。さらに、オフサイト型(小売メニュー)は、需要場所以外の第三者が所有する土地に、FIT制度を利用しない需要家専用の発電設備を設置し、その発電電力を送配電設備を介して小売メニューで需要場所へ供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、オンサイト型は、完全自家消費(送配電設備への逆潮流を回避するための出力抑制を含む)を前提に発電設備の発電容量を決定するか、自家消費電力を上回る余剰電力をFIT制度などを活用して売電するかのいずれかの選択となるため、経済性などを踏まえて設置する発電容量には限度がある。また、オフサイト型(自己託送)では、需要場所と、発電設備を設置する土地との間に、自己託送の要件である「密接な関係」を満たす必要がある。また、自己託送を行うためには、精緻な発電・需要予測や、これらの予測に基づく計画策定、計画策定の提出などを行う必要があるため、需要家の負担が大きい。さらに、オフサイト型(小売メニュー)では、第三者が所有する土地に需要家専用の発電設備を設置するため、様々な調整が必要となる。このように、従来のコーポレートPPAのスキームには一長一短があり、特に複数の需要場所を有する需要家にとっては、発電設備が設置可能な需要場所と、電力使用量の大きい需要場所は一致しないケースが多く、発電電力を余すことなく有効に利用することができなかった。
【0007】
そこでこの発明は、発電設備の発電電力を余すことなく有効に利用することが可能な電力供給システムおよび電力供給プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、再生可能エネルギを利用して発電を行う発電設備と、前記発電設備が設置された第1の需要場所に設けられ、前記発電設備の発電電力を前記第1の需要場所に供給する構内送配電設備と、前記第1の需要場所に設けられ、前記構内送配電設備から供給されて当該第1の需要場所で消費された自家消費電力量を計量する第1の計量手段と、前記発電設備の発電電力量と、前記第1の計量手段で計量された自家消費電力量とに基づいて、前記発電電力の余剰電力量を算出する余剰電力量算出手段と、前記構内送配電設備に接続された送配電設備を利用し、前記余剰電力を再生可能エネルギ由来の電力として、前記第1の需要場所とは異なる第2の需要場所へ供給する余剰電力供給手段と、を備えることを特徴とする電力供給システムである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の電力供給システムにおいて、前記発電設備は、前記第1の需要場所に設置可能な発電設備の最大発電容量を上限として、前記第1の需要場所の電力需要を満たし、かつ、前記第2の需要場所に供給する余剰電力が生じるような発電容量を有する、ことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の電力供給システムにおいて、前記余剰電力供給手段は、前記余剰電力を前記第2の需要場所へ供給する手法として、前記余剰電力を再生可能エネルギ由来の電力として、前記第2の需要場所へ小売販売する電源特定型小売メニューパターンと、電力供給制度の1つである自己託送制度を利用して、前記余剰電力を前記第2の需要場所へ供給する自己託送パターンと、を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電力供給システムにおいて、前記第1の計量手段で計量された自家消費電力量と、前記発電電力の発電コストおよび送配電コストに基づく第1の単価と、に基づいて前記第1の需要場所の電力料金を算出し、前記第2の需要場所に設けられた第2の計量手段により計量された、当該第2の需要場所で消費された前記余剰電力の消費電力量と、前記発電電力の発電コスト、前記余剰電力の送配電コストおよび再生可能エネルギ由来の電力に対する環境価値に基づく第2の単価と、に基づいて前記第2の需要場所の電力料金を算出する電力料金算出手段を備える、ことを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項4に記載の電力供給システムにおいて、前記発電設備を運用・管理する発電事業者と、前記第1の需要場所および前記第2の需要場所へ前記送配電設備を介して系統電力を供給する小売電気事業者と、を含む事業体により組成されたバランシンググループによって運用・管理される電力管理サーバを備え、前記電力管理サーバは、前記余剰電力算出手段、前記余剰電力供給手段、および前記電力料金算出手段を備えるとともに、前記第1の需要場所および前記第2の需要場所に対する系統電力の需給を管理する、ことを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は、コンピュータを、第1の需要場所に設置された発電設備により再生可能エネルギを利用して発電された発電電力量を受信する発電電力量受信手段、前記発電設備から構内送配電設備を介して前記第1の需要場所に供給され、当該第1の需要場所で消費された自家消費電力量を計量する第1の計量手段から、前記自家消費電力量を受信する消費電力量受信手段、前記発電設備の発電電力量と、前記第1の計量手段で計量された自家消費電力量とに基づいて、前記発電電力の余剰電力量を算出する余剰電力量算出手段、前記構内送配電設備に接続された送配電設備を利用し、前記余剰電力を再生可能エネルギ由来の電力として、前記第1の需要場所とは異なる第2の需要場所へ供給する余剰電力供給手段、として機能させることを特徴とする電力供給プログラムである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1および請求項6の発明によれば、第1の需要場所で発電して自家消費し、余った余剰電力を第1の需要場所とは異なる第2の需要場所へ供給するので、発電電力を余すことなく最大限活用することが可能なオンサイト+オフサイト複合型の事業スキームを提供することが可能である。また、他の需要場所に供給される余剰電力は、再生可能エネルギ由来の電力として供給されるので、環境価値が高く、カーボンニュートラルなどの取り組みに寄与するとともに、企業価値の向上を図ることが可能である。
【0015】
請求項2の発明によれば、発電設備の発電容量は、第1の需要場所に設置可能な発電設備の最大発電容量を上限として、第1の需要場所の電力需要を満たし、かつ、第2の需要場所に供給する余剰電力が生じるような発電容量としたので、従来のオンサイト型のように完全自家消費にこだわることなく、自家消費電力以上の大きな容量の発電設備を設置することができるので、再生可能エネルギをより有効に活用することが可能である。
【0016】
請求項3の発明によれば、余剰電力を再生可能エネルギ由来の電力として、第2の需要場所へ小売販売する電源特定型小売メニューパターンと、自己託送制度を利用して余剰電力を第2の需要場所へ供給する自己託送パターンとを選択的に利用することができるので、需要場所の数や、各需要場所への発電設備の設置の可否、設置可能な発電容量など、様々な要素を総合的に勘案して、より再生可能エネルギを有効利用可能な供給パターンを選択することが可能である。
【0017】
請求項4の発明によれば、発電設備の発電電力を自家消費する場合の電力料金と、発電設備の余剰電力を利用する場合の電力料金とを算出することができるので、複数の需要場所で発電電力をどのように利用する場合でも、それに対応した電力料金を算出することが可能である。
【0018】
請求項5の発明によれば、需要場所への系統電力の需給を管理するバランシンググループによって運用・管理される電力管理サーバにより、余剰電力の算出、余剰電力の供給、電力料金の算出などを行うようにしたので、発電電力および余剰電力と、系統電力とを総合的に勘案して、再生可能エネルギをより有効利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】この発明の実施の形態に係る電力供給システムで提供される電源特定型小売メニューの概念図である。
【
図2】
図1の電源特定型小売メニューにおける電力運用を説明するグラフである。
【
図3】この発明の実施の形態に係る電力供給システムで提供される自己託送サービスの概念図である。
【
図4】
図3の自己託送サービスにおける電力運用を説明するグラフである。
【
図5】この発明の実施の形態に係る電力供給システムの構成を示す概略図である。
【
図6】
図5の電力管理サーバの概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図7】
図6に示す需要場所データベースのデータ構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0021】
図1~
図7は、この発明の実施の形態に係る電力供給システム1を示す。電力供給システム1は、太陽光などの再生可能エネルギを利用して発電を行う発電設備から、複数の需要場所へ発電電力を供給するためのシステムである。特に、本実施の形態に係る電力供給システム1は、複数の需要場所を有する需要家、または、グループ企業等の関係のある需要家を含めた需要家群が、自ら所有する土地や建物を活用し、全需要場所の電力使用量を踏まえて発電容量を決定し、その発電電力を余すことなく最大限活用することが可能なオンサイト+オフサイト複合型の事業スキームを構築するものである。より具体的には、需要場所の少なくとも1つ(オンサイト)に発電設備を設置し、その発電設備で発電された電力をその需要場所で自家消費するとともに、自家消費して余った余剰電力を他の需要場所(オフサイト)へ供給する。
【0022】
図1および
図3は、電力供給システム1によって、発電設備の発電電力を複数の需要場所へ供給するための供給メニュー(パターン)を示す概念図である。
図1は、余剰電力を再生可能エネルギ由来の電力として小売販売する電源特定型小売メニューの一例を示している。この例では、同じグループ企業に所属する需要家Aおよび需要家Bと、バランシンググループBG1との間で、発電設備の発電電力および余剰電力と、系統電力とを需給するための各種契約が結ばれている。
【0023】
需要家Aは工場AFおよび事業所COを所有し、需要家Bは工場BFを所有している。工場AFおよび工場BFは、発電設備が設置可能な屋根または敷地を有しているが、事業所COには発電設備は設置できない。
【0024】
バランシンググループBG1は、例えば、電力の需要場所などへ発電設備を設置して運用・管理を行う発電事業者と、系統電力の小売販売を行う小売電気事業者により組成されている。バランシンググループBG1は、発電バランシンググループと、需要バランシンググループの機能を兼ね備えており、工場AF、工場BFおよび事業所COに対する電力の需給調整を行う。
【0025】
需要家Aは、バランシンググループBG1との間で、工場AFの敷地内にバランシンググループBG1が発電設備ASを設置して運用・管理を行い、発電設備ASの発電電力を工場AFで自家消費する取引契約を結んでいる。すなわち、発電設備ASはバランシンググループBG1が所有し、発電設備ASの発電電力を工場AFなどに供給する契約となっている。また、需要家Aは、バランシンググループBG1との間で、工場AFで使用する系統電力を購入する小売契約を結んでいる。工場AFは、発電電力を自家消費し、余った余剰電力を他の需要場所へ供給することから、本発明の第1の需要場所に相当する。
【0026】
需要家Aは、バランシンググループBG1との間で、事業所COにおいて、再生可能エネルギ由来の電力として余剰電力を購入する電源特定型小売契約を結んでいる。また、需要家Aは、バランシンググループBG1との間で、事業所COで使用する系統電力を購入する小売契約を結んでいる。事業所COは、他の需要場所から余剰電力の供給を受けることから、本発明の第2の需要場所に相当する。
【0027】
需要家Bは、バランシンググループBG1との間で、工場BFの敷地内にバランシンググループBG1が発電設備BSを設置して運用・管理を行い、発電設備BSの発電電力を工場BFで自家消費する取引契約を結んでいる。すなわち、発電設備BSはバランシンググループBG1が所有し、発電設備BSの発電電力を工場BFなどに供給する契約となっている。また、需要家Bは、バランシンググループBG1との間で、工場BFで使用する系統電力を購入する小売契約を結んでいる。さらに、需要家Bは、バランシンググループBG1との間で、再生可能エネルギ由来の電力として余剰電力を購入する電源特定型小売契約を結んでいる。工場BFは、発電電力を自家消費して余った余剰電力を他の需要場所へ供給するとともに、他の需要場所から余剰電力の供給を受けることから、本発明の第1の需要場所および第2の需要場所の両方に相当する。
【0028】
このような電源特定型小売メニューにおいては、工場AFでは、発電設備ASの発電電力を自家消費するとともに、発電設備ASの発電電力では足りない電力については、バランシンググループBG1から供給された系統電力を利用する。バランシンググループBG1は、工場AFで自家消費されずに余った余剰電力を自グループの発電電力として取り込み、再生可能エネルギ由来の電力として事業所COおよび工場BFへ小売販売する。
【0029】
また、工場BFでは、発電設備BSの発電電力を自家消費するとともに、発電設備BSの発電電力では足りない電力については、バランシンググループBG1から供給された系統電力を利用する。バランシンググループBG1は、工場BFで自家消費されずに余った余剰電力を自グループの発電電力として取り込み、再生可能エネルギ由来の電力として事業所COへ小売販売する。
【0030】
事業所COは、バランシンググループBG1から再生可能エネルギ由来の電力として余剰電力を購入し、余剰電力では足りない電力については、バランシンググループBG1から系統電力を購入する。
【0031】
なお、余剰電力は、一般送配電事業者の送配電設備を利用して他の需要場所へ供給されるが、余剰電力が送配電設備へ供給・逆潮流されると、系統電力と区別ができなくなる。そのため、本実施の形態における余剰電力の供給とは、工場BFおよび事業所COに供給された電力量のうち、発電設備ASおよび発電設備BSから出力された余剰電力に相当する電力量が、余剰電力として供給されたものとみなすものである。
【0032】
発電設備の余剰電力を複数の他の需要場所へ供給する場合、予め設定した割合で複数の他の需要場所へ供給することが好ましい。例えば、発電設備ASの余剰電力の供給割合を工場BFに対し70%とし、事業所COに対し30%となるように予め設定しておくことで、余剰電力がどの需要場所にどれだけ供給されたかを容易に把握することができるようになる。
【0033】
また、余剰電力が供給される複数の需要場所の間で、余剰電力が供給される優先順位を予め設定しておいてもよい。これによれば、再生可能エネルギ由来の電力の消費割合を高めたい需要場所へ優先的に余剰電力を供給することができる。
【0034】
発電設備ASおよび発電設備BSの発電容量は、工場AF、事業所COおよび工場BFの電力需要と、工場AFおよび工場BFに設置可能な発電設備の最大発電容量とに基づいて決定されている。より具体的には、発電設備ASは、工場AFに設置可能な発電設備の最大発電容量を上限として、工場AFの電力需要を満たし、かつ、事業所COおよび工場BFに供給する余剰電力が生じるような発電容量を有する。また、発電設備BSは、工場BFに設置可能な発電設備の最大発電容量を上限として、工場BFの電力需要を満たし、かつ、事業所COに供給する余剰電力が生じるような発電容量を有する。
【0035】
図2は、工場AF、工場BFおよび事業所COの電力需要と、上記のようなロジックで決定された発電設備ASおよび発電設備BSの発電電力と、工場AF、工場BFおよび事業所COにおいて最適運用された発電電力、余剰電力および系統電力を示している。
【0036】
工場AFの電力需要は、工場AFの稼働時間内は一定の電力を使用している。これに対し、発電設備ASの発電電力は、徐々に増加して減少するような傾向を示し、発電量が多い時間帯では、工場AFの電力需要を満たし、かつ、余剰電力が生じるような発電電力が得られる発電容量となっている。このような工場AFの電力運用では、発電設備ASの発電電力と系統電力とを組み合わせて利用し、発電設備ASの発電電力が増加する時間帯では、発電電力のみを利用している。
【0037】
また、工場BFの電力需要は、工場BFの稼働時間内で上下しており、徐々に増加して減少するような傾向を示している。これに対し、発電設備BSの発電電力は、発電設備ASと同様に徐々に増加した後、一気に増加し、その高い発電量を数時間維持した後には急激に減少するような傾向を示し、発電量が多い時間帯では、工場BFの電力需要を満たし、かつ、余剰電力が生じるような発電電力が得られる発電容量となっている。このような工場BFの電力運用では、発電設備BSの発電電力と系統電力と、発電設備ASの余剰電力とを組み合わせて利用し、発電設備BSおよび発電設備ASの発電電力が多くなる時間帯では、発電電力および余剰電力のみを利用している。
【0038】
事業所COの電力需要は、事業所COの稼働時間内で上下しており、徐々に増加して減少するような傾向を示している。このような事業所COの電力運用では、系統電力と、発電設備ASおよび発電設備BSの余剰電力とを組み合わせて利用し、発電設備BSおよび発電設備ASの発電電力が増えて余剰電力が多くなる時間帯では、余剰電力のみを利用している。
【0039】
太陽光発電では、一カ所の発電容量が大きいほど発電コストが低下するなどのスケールメリットが得られる。しかしながら、従来のオンサイト型PPAでは、完全自家消費(送配電設備への逆潮流を回避するための出力抑制を含む)を前提に発電設備の発電容量を決定する必要があったため、需要場所で発電可能な発電容量を有効に利用することはできなかった。これに対し、本実施の形態に係る電力供給システム1の電源特定型小売メニューでは、複数の需要場所を有する需要家、または、グループ企業等の関係のある需要家を含めた需要家群が、自ら所有する土地や建物を活用し、全需要場所の電力使用量を踏まえて発電容量を決定し、その発電電力を余すことなく最大限活用することが可能である。
【0040】
次に、
図3に基づいて、電力供給制度の1つである自己託送制度を利用して、余剰電力を他の需要場所へ供給する自己託送サービスについて説明する。この例では、需要家Aの工場AFおよび事業所COと、バランシンググループBG2との間で、発電設備の発電電力および余剰電力と、系統電力とを需給するための各種契約が結ばれている。需要家Aは工場AFおよび事業所COを所有している。工場AFは、発電設備が設置可能な屋根または敷地を有しているが、事業所COには発電設備は設置できない。
【0041】
バランシンググループBG2は、
図1に示すバランシンググループBG1と同様に、例えば、電力の需要場所などへ発電設備を設置して運用・管理を行う発電事業者と、系統電力の小売販売を行う小売電気事業者により組成されている。バランシンググループBG2は、バランシンググループBG1と同様に、工場AFおよび事業所COに対する電力の需給調整を行う機能の他、自己託送専用の機能を備えている。すなわち、自己託送制度では、精緻な発電予測と需要予測とを行って需給計画を毎日策定し、策定した需給計画を一般送配電事業者に提出しなければならない。また、需給計画と需給実績とに差が生じた場合には、インバランス料金を清算しなくてはならない。自己託送制度では、このような煩雑な業務を需要家自らが行う必要があり、大きな負担となっていた。これに対し、本実施形態のバランシンググループBG2では、自己託送において必要な上記の業務を一括代行する。
【0042】
需要家Aは、工場AFの敷地内に自社所有の発電設備ASを設置して運用・管理を行い、発電電力を自家消費し、余剰電力を他の需要場所へ供給することから、本発明の第1の需要場所に相当する。また、需要家Aは、バランシンググループBG2との間で、工場AFで使用する系統電力を購入する小売契約を結んでいる。
【0043】
需要家Aは、バランシンググループBG2との間で、発電設備ASの余剰電力を一般送配電事業者の送配電設備を利用して事業所COへ自己託送する契約を結んでいる。また、需要家Aは、バランシンググループBG2との間で、事業所COで使用する系統電力を購入する小売契約を結んでいる。さらに、需要家Aは、バランシンググループBG2との間で、自己託送に係る業務を一括代行するサポートサービスを受けるサービス契約を結んでいる。事業所COは、他の需要場所から余剰電力の供給を受けることから、本発明の第2の需要場所に相当する。
【0044】
このような自己託送サービスにおいては、工場AFでは、発電設備ASの発電電力を自家消費するとともに、発電設備ASの発電電力では足りない電力については、バランシンググループBG2から供給された系統電力を利用する。バランシンググループBG2は、工場AFで自家消費されずに余った余剰電力を再生可能エネルギ由来の電力として、自己託送制度を利用して事業所COへ供給する。
【0045】
また、バランシンググループBG2は、自己託送に係る業務を一括代行する。具体的には、発電設備ASの発電予測と、工場AFおよび事業所COの需要予測とを行って需給計画を毎日策定し、策定した需給計画を一般送配電事業者に提出する。また、需給計画と需給実績とに差が生じた場合には、インバランス料金の清算を代行する。
【0046】
発電設備ASの発電容量は、工場AFおよび事業所COの電力需要と、工場AFに設置可能な発電設備の最大発電容量とに基づいて決定されている。より具体的には、発電設備ASは、工場AFに設置可能な発電設備の最大発電容量を上限として、工場AFの電力需要を満たし、かつ、事業所COに供給する余剰電力が生じるような発電容量を有する。
【0047】
図4は、工場AFおよび事業所COの電力需要と、上記のようなロジックで決定された発電設備ASの発電電力と、工場AFおよび事業所COにおいて最適運用された発電電力、余剰電力および系統電力を示している。
【0048】
工場AFの電力需要は、工場AFの稼働時間内は一定の電力を使用している。これに対し、発電設備ASの発電電力は、徐々に増加して減少するような傾向を示し、発電量が多い時間帯では、工場AFの電力需要を満たし、かつ、余剰電力が生じるような発電電力が得られる発電容量となっている。このような工場AFの電力運用では、発電設備ASの発電電力と系統電力とを組み合わせて利用し、発電設備ASの発電電力が増加する時間帯では、発電電力のみを利用している。
【0049】
また、事業所COの電力需要は、事業所COの稼働時間内で上下しており、徐々に増加して減少するような傾向を示している。このような事業所COの電力運用では、系統電力と、発電設備ASの余剰電力とを組み合わせて利用し、発電設備ASの発電電力が増えて余剰電力が多くなる時間帯では、余剰電力のみを利用している。
【0050】
このように、自己託送サービスにおいても、複数の需要場所を有する需要家、または、グループ企業等の関係のある需要家を含めた需要家群が、自ら所有する土地や建物を活用し、全需要場所の電力使用量を踏まえて発電容量を決定し、その発電電力を余すことなく最大限活用することが可能である。
【0051】
図5は、上記の電源特定型小売メニューを提供する電力供給システム1の構成を示す概略図である。電力供給システム1は、送配電設備2と、工場AFの発電設備AS、構内送配電設備A1および電力量計A2と、事業所COの構内送配電設備C1および電力量計C2と、工場BFの発電設備BS、構内送配電設備B1および電力量計B2と、バラシンググループBG1の電力管理サーバ3と、を備えている。
【0052】
送配電設備2は、電力を各需要場所に供給するための設備であり、送電線、配電線、変電設備などが含まれ、一般送配電事業者により所有・管理されている。
【0053】
工場AFの発電設備ASは、上記のとおり、再生可能エネルギを利用して発電を行う設備である。再生可能エネルギとしては、太陽光の他、風力、水力などが用いられる。発電設備ASは、通信機能を備え、通信網NWを介して発電電力量を逐次電力管理サーバ3に送信する。発電設備ASは、バランシンググループBG1を構成する発電事業者により設置され、運用・管理されている。
【0054】
工場AFの構内送配電設備A1は、送配電設備2から供給された系統電力と、発電設備ASから供給された発電電力とを工場AF内の負荷設備A3に供給し、発電設備ASの余剰電力を送配電設備2を介して他の需要場所へ供給するための設備である。構内送配電設備A1には、工場AFの構内に設置された送電線、配電線、変電設備などが含まれる。
【0055】
工場AFの電力量計A2は、発電設備ASの発電電力量のうち、負荷設備A3で自家消費された自家消費電力量を計量する装置であり、例えば、スマートメータが用いられる。電力量計A2は、通信機能を備え、通信網NWを介して計量結果を逐次電力管理サーバ3に送信する。
【0056】
工場BFの発電設備BSは、発電設備ASと同様に再生可能エネルギを利用して発電を行う設備である。発電設備BSは、通信機能を備え、通信網NWを介して発電電力量を逐次電力管理サーバ3に送信する。発電設備BSは、バランシンググループBG1を構成する発電事業者により設置され、運用・管理されている。
【0057】
工場BFの構内送配電設備B1は、送配電設備2から供給された系統電力と、発電設備BSから供給された発電電力とを工場BF内の負荷設備B3に供給し、発電設備BSの余剰電力を送配電設備2を介して他の需要場所へ供給するための設備である。構内送配電設備B1には、工場BFの構内に設置された送電線、配電線、変電設備などが含まれる。
【0058】
工場BFの電力量計B2は、発電設備BSの発電電力量のうち、負荷設備B3で自家消費された自家消費電力量を計量する装置であり、例えば、スマートメータが用いられる。電力量計B2は、通信機能を備え、通信網NWを介して計量結果を逐次電力管理サーバ3に送信する。
【0059】
事業所COの構内送配電設備C1は、送配電設備2から供給された系統電力と、発電設備ASおよび発電設備BSから供給された余剰電力とを事業所CO内の負荷設備C3に供給するための設備である。構内送配電設備C1は、事業所COの構内に設置された送電線、配電線、変電設備などが含まれる。
【0060】
事業所COの電力量計C2は、負荷設備C3で消費された消費電力量を計量する装置であり、例えば、スマートメータが用いられる。電力量計C2は、通信機能を備え、通信網NWを介して計量結果を逐次電力管理サーバ3に送信する。
【0061】
電力管理サーバ3は、工場AF、工場BFおよび事業所COに対する系統電力の需給を管理するとともに、発電設備ASおよび発電設備BSの発電電力のうち、自家消費されなかった余剰電力を他の需要場所へ供給・管理するためのサーバである。電力管理サーバ3は、例えば、バランシンググループBG1を構成する事業者のうち、代表契約事業者によって設置、運用・管理が行われている。電力管理サーバ3は、通信機能を備え、通信網NWを介して工場AF、工場BFおよび事業所COと接続されている。なお、電力管理サーバ3による系統電力の需給管理については、
図1および
図3を用いて説明したため、ここでは詳しい説明は省略する。
【0062】
図6は、電力管理サーバ3の概略構成を示す機能ブロック図である。電力管理サーバ3は、主として、入力部31、表示部32、記憶部33、メモリ34、通信部35、メインタスク36、およびこれらを制御などする中央処理部37を備える。
【0063】
電力管理サーバ3は、例えば、パーソナルコンピュータなどに、装置全体の制御プログラム(オペレーションシステム)や、余剰電力を他の需要場所へ供給するための各種処理を行うアプリケーション(電力供給プログラム331)がインストールされて構成される。
【0064】
入力部31は、利用者の命令などを受けて電力管理サーバ3へ情報を入力する機能を備えるインターフェースであり、例えばキーボードやマウスによって構成される。
【0065】
表示部32は、入力部31を介して入力される情報を表示したり、電力管理サーバ3としての処理結果を表示したり、などする機能を備え、例えば液晶ディスプレイによって構成される。
【0066】
記憶部33は、各種の情報、プログラム、およびデータなどを記憶する機能を備える記憶領域/記憶装置であり、例えばハードディスクによって構成される。記憶部33には、電力管理サーバ3全体の制御プログラムや電力供給プログラム331が格納されるとともに、需要場所データベース332が格納されている。
【0067】
需要場所データベース332の一部もしくは全部がサーバなどの外部記憶装置に格納されるようにしてもよい。この場合には、電力管理サーバ3が、通信部35を介して外部記憶装置にアクセスして各種データや情報を取得するようにしてもよく、あるいは、種々の信号回線を介して外部記憶装置との間でデータや制御指令等の信号の送受信/入出力を行うための接続インターフェース(図示せず)を介して外部記憶装置にアクセスして各種データや情報を取得するようにしてもよい。
【0068】
メモリ34は、中央処理部37が電力供給に関わる処理を実行する際に生成される情報・データを一時的に記憶などするための作業領域となる機能を備える記憶領域/記憶装置であり、例えばRAM(Rrandom Aaccess Mmemory の略)により構成される。
【0069】
通信部35は、例えばLAN(Local Area Nnetwork の略)やWAN(Wide Area Nnetwork の略)を含む各種の無線/有線通信回線網を介して伝送される信号・情報の送受信/入出力を行う機能を備える通信インターフェースである。
【0070】
メインタスク36は、記憶部33に格納されている電力供給プログラム331が実行されることによって実現される、余剰電力の供給に関わる各種処理を実行するためのタスク群である。
【0071】
中央処理部37は、電力管理サーバ3を構成する各部を統制して制御などする機能を備え、例えば、中央演算処理装置(CPU:Ccentral Pprocessing Unit の略)を含んで構成される。中央処理部37は、記憶部33に格納されている制御プログラムや電力供給プログラム331に従って各機能を実現する。
【0072】
需要場所データベース332は、バランシンググループBG1と余剰電力の供給のための契約を結んでいる需要家の需要場所に関する情報を記憶したデータベースである。
図7に示すように、需要場所データベース332は、契約番号332aごとに、需要家名332b、需要場所名332c、住所332d、発電電力量332e、消費電力量332f、供給割合332g、発電事業者332h、小売電気事業者332i、自家消費単価332j、および余剰電力単価332kなどが記憶されている。
【0073】
需要家名332bには、契約をした需要家の名称や氏名、例えば、「需要家A」などが記憶されている。需要場所名332cには、需要場所に名称がある場合には、その名称が記憶される。本実施形態では、例えば、「工場AF」や「事業所CO」などが記憶されている。住所332dには、需要場所の所在地が記憶されている。
【0074】
発電電力量332eには、発電設備から受信した発電電力量が記憶されている。なお、需要場所が発電設備を備えていない場合には、発電電力量332eは利用されない。
【0075】
消費電力量332fには、電力量計から受信した消費電力量が記憶されている。したがって、工場AFの消費電力量332fには、発電設備ASの発電電力量のうち、負荷設備A3で消費された自家消費電力量が記憶されている。また、工場BFの消費電力量332fには、発電設備BSの発電電力量のうち、負荷設備B3で消費された自家消費電力量が記憶されている。これに対し、事業所COの消費電力量332fには、負荷設備C3の消費電力量が記憶されており、この消費電力量には、発電設備ASおよび発電設備BSから供給された余剰電力量と、系統電力の電力量とが含まれている。
【0076】
供給割合332gには、所定の発電設備からの余剰電力の供給割合が記憶されている。例えば、発電設備ASから工場BFに対する余剰電力の供給割合が70%となっている場合には、工場BFの供給割合332gには、「発電設備AS:70%」と記憶されている。また、発電設備ASから事業所COに対する余剰電力の供給割合が30%で、発電設備BSから事業所COに対する余剰電力の供給割合が100%である場合には、事業所COの供給割合332gには、「発電設備AS:30%、発電設備BS:100%」と記憶されている。なお、需要場所に余剰電力が供給されない場合(例えば、工場AF)には、供給割合332gは利用されない。
【0077】
発電事業者332h、小売電気事業者332iには、事業者名が記憶されている。上述したように、バランシンググループは、発電事業者、小売電気事業者によって組成されるため、需要家によって契約している事業者が異なっている場合がある。そのため、需要場所データベース332には、需要家が契約をしている各事業者名が記憶される。
【0078】
自家消費単価332jには、需要場所における発電電力の自家消費電力量に応じた電力料金の算出に用いられる自家消費単価(第1の単価)が記憶されている。自家消費単価は、例えば、発電コストと、発電電力を構内で送配電する送配電コストなどに基づいて設定されている。発電コストは、例えば、発電設備の設置費用、運用・管理費用、発電事業者の利益などに基づいて設定される。送配電コストは、構内送配電設備が発電事業者によって設置、運用・管理されている場合に、これらの費用に発電事業者の利益を加算して設定される。なお、自家消費が行われない需要場所(例えば、事業所CO)では、自家消費単価332jは利用されない。
【0079】
余剰電力単価332kには、需要場所で余剰電力を消費する際の余剰電力単価(第2の単価)が記憶されている。余剰電力単価は、発電電力の発電コストと、余剰電力の送配電コストと、再生可能エネルギ由来の電力に対する環境価値などに基づいて設定されている。発電コストは、上記と同様に、例えば、発電設備の設置費用、運用・管理費用、発電事業者の利益などに基づいて設定される。送配電コストは、送配電設備2の利用量である託送料の他、小売電気事業者に対する手数料などに基づいて設定される。再生可能エネルギ由来の電力に対する環境価値については、再生可能エネルギ由来の電力であることを証明する非FIT非化石証書の発行代金などである。なお、余剰電力が供給されない需要場所(例えば、工場AF)では、余剰電力単価332kは利用されない。
【0080】
電力管理サーバ3は、余剰電力を他の需要場所へ供給するための各種処理を実行する。この処理は、記憶部33に格納されている電力供給プログラム331が中央処理部37で実行されることにより構成される、メインタスク36によって行われる。メインタスク36は、余剰電力算出タスク361、余剰電力供給タスク362、および電力料金算出タスク363を含む。
【0081】
余剰電力算出タスク361は、本発明の余剰電力算出手段に相当する。余剰電力算出タスク361は、通信部35や、接続インターフェースなどを介して各需要場所の発電電力量、自家消費電力量を受け付ける。余剰電力算出タスク361は、受け付けた発電電力量から自家消費電力量を減算することにより、発電電力の余剰電力量を算出する。
【0082】
例えば、工場AFの余剰電力量を算出する場合には、発電設備ASの発電電力量から、電力量計A2から受信した自家消費電力量を減算する。また、工場BFの余剰電力量を算出する場合には、発電設備BSの発電電力量から、電力量計B2から受信した自家消費電力量を減算する。
【0083】
余剰電力供給タスク362は、構内送配電設備に接続された送配電設備を利用し、余剰電力を再生可能エネルギ由来の電力として、他の需要場所へ供給する。具体的には、余剰電力供給タスク362は、発電設備ASの余剰電力を構内送配電設備A1および送配電設備2を利用して工場BFおよび事業所COへ供給する。また、余剰電力供給タスク362は、発電設備BSの余剰電力を構内送配電設備B1および送配電設備2を利用して事業所COへ供給する。
【0084】
なお、余剰電力は、構内送配電設備A1およびB1から送配電設備2へ供給・逆潮流されると、系統電力と区別ができなくなる。そのため、余剰電力供給タスク362による余剰電力の供給は、工場BFおよび事業所COに供給された電力量のうち、発電設備ASおよび発電設備BSから出力された余剰電力に相当する電力量が、余剰電力として供給されたものとみなすように処理するものである。
【0085】
電力料金算出タスク363は、消費電力量と、電力の単価とに基づいて電力料金を算出し、各需要家(需要場所)へ料金請求を行う。例えば、工場AFの電力料金は、発電設備ASの発電電力量のうち、負荷設備A3で消費された自家消費電力量に、需要場所データベース332に記憶されている自家消費単価323jを乗算して算出する。
【0086】
また、工場BFの電力料金は、発電設備BSの発電電力量のうち、負荷設備B3で消費された自家消費電力量に、需要場所データベース332に記憶されている自家消費単価332kを乗算して自家消費電力料金を算出する。また、発電設備ASから供給された余剰電力量に、需要場所データベース332に記憶されている余剰電力単価332kを乗算した余剰電力料金を算出する。工場BFの電力料金は、自家消費電力料金と余剰電力料金とを加算したものとなる。なお、発電設備ASから供給された余剰電力量は、発電設備ASから出力された余剰電力量に、需要場所データベース332に記憶されている供給割合332gを乗算して求めることができる。
【0087】
さらに、事業所COの電力料金は、発電設備ASから供給された余剰電力量と、発電設備BSから供給された余剰電力量とに、需要場所データベース332に記憶されている余剰電力単価332kを乗算して算出する。なお、発電設備ASから供給された余剰電力量は、発電設備ASから出力された余剰電力量に、需要場所データベース332に記憶されている供給割合332gを乗算して求めることができる。同様に、発電設備BSから供給された余剰電力量は、発電設備BSから出力された余剰電力量に、需要場所データベース332に記憶されている供給割合332gを乗算して求めることができる。
【0088】
次に、上記実施の形態のうち、電源特定型小売メニューの作用について説明する。本実施形態に係る電力供給システム1では、工場AFにおいて、発電設備ASの発電電力を自家消費するとともに、発電設備ASの発電電力では足りない電力については、バランシンググループBG1から供給された系統電力を利用する。
【0089】
バランシンググループBG1は、工場AFで自家消費されずに余った余剰電力を自グループの発電電力として取り込み、再生可能エネルギ由来の電力として事業所COおよび工場BFへ小売販売する。
【0090】
また、工場BFでは、発電設備BSの発電電力を自家消費するとともに、発電設備BSの発電電力では足りない電力については、バランシンググループBG1から供給された系統電力を利用する。
【0091】
バランシンググループBG1は、工場BFで自家消費されずに余った余剰電力を自グループの発電電力として取り込み、再生可能エネルギ由来の電力として事業所COへ小売販売する。
【0092】
事業所COは、バランシンググループBG1から再生可能エネルギ由来の電力として余剰電力を購入し、余剰電力では足りない電力については、バランシンググループBG1から系統電力を購入する。
【0093】
また、電力供給システム1の電力管理サーバ3は、発電設備ASおよび発電設備BSの余剰電力を他の需要場所へ供給するに際し、余剰電力算出タスク361により、余剰電力量を算出する。
【0094】
さらに、電力管理サーバ3の余剰電力供給タスク362は、構内送配電設備A1、B1およびC3に接続された送配電設備2を利用し、余剰電力を再生可能エネルギ由来の電力として、他の需要場所へ供給する。
【0095】
また、電力管理サーバ3の電力料金算出タスク363は、消費電力量と、電力の単価とに基づいて電力料金を算出し、各需要家(需要場所)へ料金請求を行う。
【0096】
以上のように、本実施の形態の電力供給システム1によれば、工場AFおよび工場BFで発電して自家消費し、余った余剰電力を事業所COなどへ供給するので、発電電力を余すことなく最大限活用することが可能なオンサイト+オフサイト複合型の事業スキームを提供することが可能である。また、事業所COなどに供給される余剰電力は、再生可能エネルギ由来の電力として供給されるので、環境価値が高く、カーボンニュートラルなどの取り組みに寄与するとともに、企業価値の向上を図ることが可能である。
【0097】
また、本実施の形態の電力供給システム1によれば、発電設備ASなどの発電容量は、工場AFに設置可能な発電設備の最大発電容量を上限として、工場AFの電力需要を満たし、かつ、工場BFおよび事業所COなどに供給する余剰電力が生じるような発電容量としたので、従来のオンサイト型のように完全自家消費にこだわることなく、自家消費電力以上の大きな容量の発電設備ASを設置することができるので、再生可能エネルギをより有効に活用することが可能である。
【0098】
さらに、本実施の形態の電力供給システム1によれば、余剰電力を再生可能エネルギ由来の電力として、小売販売する電源特定型小売メニューと、自己託送制度を利用して余剰電力を供給する自己託送サービスとを選択的に利用することができるので、需要場所の数や、各需要場所への発電設備の設置の可否、設置可能な発電容量など、様々な要素を総合的に勘案して、より再生可能エネルギを有効利用可能な供給パターンを選択することが可能である。
【0099】
また、本実施の形態の電力供給システム1によれば、発電設備ASの発電電力を自家消費する場合の電力料金と、発電設備ASの余剰電力を利用する場合の電力料金とを算出することができるので、複数の需要場所で発電電力をどのように利用する場合でも、それに対応した電力料金を算出することが可能である。
【0100】
さらに、また、本実施の形態の電力供給システム1によれば、需要場所への系統電力の需給を管理するバランシンググループBG1によって運用・管理される電力管理サーバ3により、余剰電力の算出、余剰電力の供給、電力料金の算出などを行うようにしたので、発電電力および余剰電力と、系統電力とを総合的に勘案して、再生可能エネルギをより有効利用することが可能である。
【0101】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、自己託送サービスのバランシンググループBG2による自己託送に係る業務の一括代行サービスを、電力管理サーバ3により自動で行えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0102】
1 電力供給システム
2 送配電設備
3 電力管理サーバ
35 通信部(発電電力量受信手段、消費電力量受信手段)
331 電力供給プログラム
332 需要場所データベース
332k 自家消費単価(第1の単価)
332m 余剰電力単価(第2の単価)
361 余剰電力算出タスク(余剰電力算出手段)
362 余剰電力供給タスク(余剰電力供給手段)
363 電力料金算出タスク(電力料金算出手段)
AF、BF 工場
AS、BS 発電設備
A1、B1、C1 構内送配電設備
A2、B2、C2 電力量計(第1の計量手段、第2の計量手段)
A3、B3、C3 負荷設備
BG1、BG2 バランシンググループ