(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053857
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】エアゾール容器用の吐出部材及びそれを備えた吐出製品
(51)【国際特許分類】
B65D 83/20 20060101AFI20240409BHJP
B65D 83/54 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B65D83/20
B65D83/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160319
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】391021031
【氏名又は名称】株式会社ダイゾー
(74)【代理人】
【識別番号】100100044
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 重夫
(74)【代理人】
【識別番号】100205888
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 孝之助
(72)【発明者】
【氏名】高橋 知之
【テーマコード(参考)】
3E014
【Fターム(参考)】
3E014PA01
3E014PB01
3E014PC02
3E014PD01
3E014PE14
3E014PF09
(57)【要約】
【課題】吐出操作に要する力が小さいエアゾール容器用の吐出部材を提供する。
【解決手段】第1梃子部材20の回動で得られる梃子の力が第2梃子部材30の回動に用いられ、第2梃子部材30の回動で得られる梃子の力がエアゾール容器2のバルブ機構5の吐出操作に用いられる2重梃子を構成しており、第1梃子部材20が、支点となる第1回動部21と、押し下げ操作される操作部22と、第1梃子部材20の梃子の力を第2梃子部材30に伝達する作用部23とを備え、第2梃子部材30が、支点となる第2回動部31と、バルブ機構5に装着される装着部32と、バルブ機構5から放出された内容物を外部に吐出するノズル部33とを備え、操作部22を押し下げ操作した際に、作用部23がノズル部33の上部に形成されたスライド面33bを押し下げる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1梃子部材と、
第2梃子部材と、
第1梃子部材と第2梃子部材とをそれぞれ回動可能に取り付ける基体と、を備え、
第1梃子部材の回動で得られる梃子の力が第2梃子部材の回動に用いられ、第2梃子部材の回動で得られる梃子の力がエアゾール容器のバルブ機構の吐出操作に用いられる2重梃子を構成しており、
第1梃子部材が、支点となる第1回動部と、押し下げ操作される操作部と、第1梃子部材の梃子の力を第2梃子部材に伝達する作用部と、を備え、
第2梃子部材が、支点となる第2回動部と、バルブ機構に装着される装着部と、バルブ機構から放出された内容物を外部に吐出するための吐出孔を有するノズル部と、を備え、
操作部を押し下げ操作した際に、作用部がノズル部の上部に形成されたスライド面を押し下げる、エアゾール容器用の吐出部材。
【請求項2】
第2梃子部材の装着部から見て第1回動部が位置する側を前側としたとき、
スライド面が前側に位置し、
第2回動部が後側に位置し、
操作部の後端が、第2回動部と同じ又は第2回動部よりも後側に位置している、
請求項1記載のエアゾール容器用の吐出部材。
【請求項3】
スライド面が吐出孔に向かって斜め上方に傾斜している、請求項1または2記載のエアゾール容器用の吐出部材。
【請求項4】
請求項1又は2記載のエアゾール容器用の吐出部材と、
2つのエアゾール容器と、を備え、
2つのエアゾール容器が連結されており、
第2梃子部材が、それぞれのエアゾール容器のバルブ機構に装着される装着部を備えている、
吐出製品。
【請求項5】
請求項1又は2記載のエアゾール容器用の吐出部材と、
2つのバルブ機構を備えたエアゾール容器と、を備え、
第2梃子部材が、それぞれのバルブ機構に装着される装着部を備えている、
吐出製品。
【請求項6】
請求項1又は2記載のエアゾール容器用の吐出部材と、
バルブ機構を備えたエアゾール容器と、を備え、
バルブ機構が、ステムが押し下げられた際に、定量室内への内容物の供給を遮断するが、定量室内の内容物を外部に吐出する定量式バルブである、
吐出製品。
【請求項7】
請求項1又は2記載のエアゾール容器用の吐出部材と、
バルブ機構を備えたエアゾール容器と、を備え、
バルブ機構が、ステムと、ステムを上方に付勢する樹脂バネを備えている、
吐出製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール容器に取り付けられる吐出部材およびそれを備えた吐出製品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、キャップ部と、キャップ部に連接された噴射部と、噴射部を下方に押し下げる押下部とを備え、押下部の、前端部が支点部としてキャップ部に回動自在に接続され、後端部が押下力点部とされ、支点部と押下力点部との間に噴射部を下方に押し下げる作用点部が設けられ、噴射部の、後端部がキャップ部に回動可能に接続され、前端部に噴口が設けられ、後端部と噴孔との間にステム接続部が設けられたエアゾールボタンキャップにおいて、作用点部を噴射部の噴口とステム接続部との間に位置させることで、エアゾール容器のバルブステムを押下する際の押下力を小さくすることができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、2液式染毛剤等を内容物とする場合、通常、2つのエアゾール容器を束ねるか又は2つのバルブ機構を備えたエアゾール容器が用いられるが、このようなエアゾール容器から2液を吐出するためには2つのバルブ機構の吐出操作を行う、すなわち2つのステムを押し下げる必要があり、ステムが1つである場合に比べて強い押し下げ力が必要であって、消費者が使用した場合、押し下げ量が不足する場合がある。
【0005】
また、バルブ機構として定量式バルブを採用している場合、すなわち、ステムを押し下げている間は定量室内から外部に内容物を吐出するが、ステムの下端で定量室内への内容物の供給を遮断し、ステムの押し下げを解除している間は定量室内から外部への内容物の吐出を止めるが、定量室内へ内容物を供給するといった定量式バルブを採用している場合、定量噴射するためにステムを押し下げる距離が長くなり、ステムを常時上向きに付勢する付勢部材(スプリング)を圧縮する量が大きくなる。このような定量式バルブは通常のバルブ機構に比べて強い押し下げ力が必要であり、消費者が使用した場合、押し下げ量が不足する場合がある。
【0006】
また、ステムの押し下げに反発する付勢部材として樹脂バネが用いられている場合、一般的な金属製のコイルバネに比べて強い押し下げ力が必要となることがあり、消費者が使用した場合、押し下げ量が不足する場合がある。
【0007】
本発明は、吐出操作に要する力が小さいエアゾール容器用の吐出部材の提供を第1の目的としている。また、特殊なバルブ機構を備えたエアゾール容器への適用に好適な吐出部材の提供を第2の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のエアゾール容器用の吐出部材は、第1梃子部材20と、第2梃子部材30と、第1梃子部材20と第2梃子部材30とをそれぞれ回動可能に取り付ける基体40とを備え、第1梃子部材20の回動で得られる梃子の力が第2梃子部材30の回動に用いられ、第2梃子部材30の回動で得られる梃子の力がエアゾール容器2、2A、2B、2Cのバルブ機構5の吐出操作に用いられる2重梃子を構成しており、第1梃子部材20が、支点となる第1回動部21と、押し下げ操作される操作部22と、第1梃子部材20の梃子の力を第2梃子部材30に伝達する作用部23とを備え、第2梃子部材30が、支点となる第2回動部31と、バルブ機構5に装着される装着部32と、バルブ機構5から放出された内容物を外部に吐出するための吐出孔33aを有するノズル部33とを備え、操作部22を押し下げ操作した際に、作用部23がノズル部33の上部に形成されたスライド面33bを押し下げることを特徴としている。
【0009】
上記吐出部材においては、第2梃子部材30の装着部32から見て第1回動部21が位置する側を前側としたとき、スライド面33bが前側に位置し、第2回動部31が後側に位置し、操作部22の後端が、第2回動部31と同じ又は第2回動部31よりも後側に位置していることが好ましい。
【0010】
スライド面33bが吐出孔33aに向かって斜め上方に傾斜していることが好ましい。
【0011】
本発明の吐出製品は、上記記載のエアゾール容器用の吐出部材10と、2つのエアゾール容器2とを備え、2つのエアゾール容器2が連結されており、第2梃子部材30が、それぞれのエアゾール容器2のバルブ機構5に装着される装着部32を備えていることを特徴としている。
【0012】
また、本発明の他の吐出製品は、上記記載のエアゾール容器用の吐出部材10Aと、2つのバルブ機構5を備えたエアゾール容器2Aとを備え、第2梃子部材30が、それぞれのバルブ機構5に装着される装着部32を備えていることを特徴としている。
【0013】
また、本発明のさらに他の吐出製品は、上記記載のエアゾール容器用の吐出部材10Bと、バルブ機構5を備えたエアゾール容器2Bとを備え、バルブ機構5が、ステム5aが押し下げられた際に、定量室S内への内容物の供給を遮断するが、定量室S内の内容物を外部に吐出する定量式バルブであることを特徴としている。
【0014】
また、本発明の別の吐出製品は、上記記載のエアゾール容器用の吐出部材10Cと、バルブ機構5を備えたエアゾール容器2Cとを備え、バルブ機構5が、ステム5aと、ステム5aを上方に付勢する樹脂バネ(5c)を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明のエアゾール容器用の吐出部材は、第1梃子部材の作用部が第2梃子部材のノズル部の上部に形成されたスライド面を押し下げるため、第1梃子部材による梃子の力を第2梃子部材に伝達し易く、結果、第2梃子部材が装着されたバルブ機構にもその力を伝達し易くなる。すなわち、吐出操作に要する力を小さくすることができる。
【0016】
第2梃子部材の装着部から見て第1回動部が位置する側を前側としたとき、スライド面が前側に位置し、第2回動部が後側に位置し、操作部の後端が、第2回動部と同じ又は第2回動部よりも後側に位置している場合、第1梃子部材の作用部と操作部の距離を長くすることができ、小さい力で操作部を操作することができる。
【0017】
スライド面が吐出孔に向かって斜め上方に傾斜している場合、操作部を押し下げた際に作用部の先端が摺動しやすく、吐出操作がスムーズになる。
【0018】
本発明の各吐出製品では、上記いずれかの吐出部材を採用しているため、2つのバルブ機構や定量式バルブを用いていたり、バルブ機構に樹脂バネを用いていても吐出操作に要する力が小さく、消費者が使用した場合でも、所定の位置まで操作部を押し下げさせることができ、設計通りに内容物を吐出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る吐出製品の正面図である。
【
図5】
図4の切断線と直交する線で切断した一部縦断面図である。
【
図7】
図4の吐出製品の変形例を示す一部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示す吐出製品1は、2つのエアゾール容器2と、2つのエアゾール容器2のバルブ機構5(
図2参照)の吐出操作(開操作)をするための1つの吐出部材10とを備えている。以下、各構成部品について説明していくが、説明の簡単のため、
図1、
図2に示す方向(上下前後左右)に従って説明をする。
【0021】
エアゾール容器2は、
図2に示すように、内容物を収容する容器本体3と、容器本体3の開口を塞ぐバルブアッセンブリ4とを備えている。このエアゾール容器2には、内容物として、原液と、原液を吐出するための加圧剤(ガス)とが充填されている。
【0022】
容器本体3は、
図1及び
図2に示すように有底筒状であって、底部3aと、胴部3bと、肩部3cとを有している。肩部3cから上方に延びる円筒状の首部3dを備えており、首部3dの上端は開口している。この容器本体3は、例えば、ブリキやアルミニウム等の金属製であって、首部3dと肩部3cとの間には溝部3eが形成されている。なお、容器本体3の材質は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂製であってもよい。
【0023】
バルブアッセンブリ4は、バルブ機構5と、バルブ機構5を収容するハウジング6と、ハウジング6を容器本体3に固定するマウンティングカップ7とを備えている。
【0024】
バルブ機構5は、ステム孔を備えたステム5aと、ステム孔を塞ぐステムラバー(図示しない)と、常時ステム5aを上方に付勢し、ステムラバーによるステム孔の閉塞状態を維持する付勢部材(図示しない)とを備えている。このバルブ機構5は、ステム5aを押し下げる(ハウジング6側に押し込む)か又は傾倒させるといった吐出操作を行うことで、ステムラバーによるステム孔の閉塞状態が解かれ、エアゾール容器2に収容された内容物を吐出できるようになっている。いわゆるエアゾールバルブである。
【0025】
ハウジング6は有底筒状であって、内部空間にバルブ機構5を収容している。
【0026】
マウンティングカップ7は、エアゾール容器2内を気密状態に維持するアルミニウムやブリキ等の金属製の蓋であって、ステム5aを上方に突出させた状態で、平面視中心部にハウジング6やバルブ機構5を抱持している。外周部は容器本体3の溝部3eにクリンプされ、容器本体3に固定されている。なお、容器本体3とマウンティングカップ7とにネジを設け、螺合により固定するようにしてもよい。
【0027】
上記構成のエアゾール容器2は、ステム5aを上に向け且つ左右方向に2つ並べられた状態で、吐出部材10の後述する肩カバー50によって連結されている。
【0028】
吐出部材10は、第1梃子部材20と、第2梃子部材30と、第1梃子部材20と第2梃子部材30とをそれぞれ回動可能に取り付ける基体40と、基体40を容器本体3の上部(ステム5a側の端部)に取り付ける肩カバー50とを備えている。そして、第1梃子部材20の回動で得られる梃子の力が第2梃子部材30の回動に用いられ、第2梃子部材30の回動で得られる梃子の力がエアゾール容器2のバルブ機構5の吐出操作に用いられる2重梃子を構成している。吐出部材10の材質は、例えばポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリオキシメチレン等の合成樹脂である。ただ、金属製であってもよい。
【0029】
第1梃子部材20は、支点となる第1回動部21と、押し下げ操作される操作部22と、第1梃子部材20の梃子の力を第2梃子部材30に伝達する作用部23とを備えている。この第1梃子部材20は、第1回動部21が前側に、操作部22が後側に、作用部23が第1回動部21と操作部22の間に位置するようにして基体40に取り付けられている。また、第2梃子部材30の上方に位置している。
【0030】
第1回動部21は、第1回動部21を回転中心として、第1梃子部材20全体を左右軸回りに回動可能にしている。なお、
図2では軸と軸受とによる軸支によって回動可能とされているが、素材の可撓性を利用したヒンジとしてもよい。
【0031】
操作部22は、消費者が押し下げ操作する部位である。
図2に示すように、上面には操作する指を掛けるための窪み22aが設けられている。操作部22の後端22bは、平面視、第2梃子部材30の後述する第2回動部31よりも後側に位置している。ただ、第2回動部31と同じ位置であってもよい。
【0032】
作用部23は、下方(第2梃子部材30)に向かって突出する突起状であり、先端(下端)は断面が球状(半円状)になっている。また、左右方向に長いため、板状であるとも言える(
図1参照)。この作用部23は、第2梃子部材30の後述する装着部32よりも前側において、後述するノズル部33と当接する。具体的には、作用部23の下端がノズル部33の後述するスライド面33bに当接する。作用部23の下端は左右方向において水平であって、スライド面33bも左右方向において水平である。従って、作用部23は点ではなく線でスライド面33bと当接し、スライド面33bを左右均等に(ノズル部33を傾けることなく)押し下げることができる。
【0033】
上記第1梃子部材20は、操作部22が力点、第1回動部21が支点、作用部23が作用点となる第2種梃子を構成している。従って、第1梃子部材20を回動させれば増力した梃子の力が得られる。この梃子の力は、第2梃子部材30を回動させるための力として用いられる。
【0034】
第2梃子部材30は、支点となる第2回動部31と、バルブ機構5のステム5aに装着(接続)される装着部32と、バルブ機構5から放出された内容物を外部に吐出するノズル部33とを備えている。この第2梃子部材30は、第2回動部31が後側に、ノズル部33が前側に、装着部32が第2回動部31とノズル部33の間に位置するようにして基体40に取り付けられている。
【0035】
第2回動部31は、第2回動部31を回転中心として、第2梃子部材30全体を左右軸回りに回動可能にしている。なお、
図2では軸と軸受とによる軸支によって回動可能とされているが、素材の可撓性を利用したヒンジとしてもよい。
【0036】
装着部32は、2つのステム5aに跨っており、且つ下端が2つのステム5aに外嵌している。具体的には、下端にステム装着口32aが2つ設けられており、ステム装着口32aにステム5aが挿入されている。内部にはステム5aから供給される内容物を通すための流路が2本設けられている。この2本の流路はノズル部33へとつながっている。
【0037】
ノズル部33は、装着部32の2本の流路を引き継ぐようにして、内部に2本の流路を備えている。ノズル部33の先端には、それぞれの流路から内容物を吐出するための2つの吐出孔33aが設けられている。ノズル部33の上部(上面)には、第1梃子部材20の作用部23がスライドするスライド面33bが設けられている。このスライド面33bは平滑であって、吐出孔33aと装着部32(ステム装着口32a)との間に位置しており、且つ吐出孔33aに向かって斜め上方に傾斜している。
【0038】
上記第2梃子部材30は、スライド面33bが力点、第2回動部31が支点、装着部32が作用点となる第2種梃子を構成している。従って、第2梃子部材30を回動させれば梃子の力が得られる。この梃子の力はバルブ機構5の吐出操作(ステム5aの押し下げ又は傾倒)に用いられる。また、第2梃子部材30は、第1梃子部材20の作用点である作用部23から梃子の力を受けるため、吐出部材10は2重梃子を構成しているといえる。
【0039】
基体40は、上下方向に軸心を向けた、前後方向に扁平な筒状であって、内部に第1梃子部材20と第2梃子部材30が位置している。なお、基体40の前側に第1回動部21が位置し、後側に第2回動部31が位置している。上端側の前後にはそれぞれ切欠41が設けられており、前側の切欠41からは第2梃子部材30のノズル部33が突出し、後側の切欠41からは第1梃子部材20の操作部22の後端22bが突出している。また、上端は開口しており、上方から操作部22を押し下げ操作できるようになっている。また、上端のうち、切欠41が設けられていない部分は操作部22よりも上に位置しており、意図しない操作部22の押し下げを防止できるようになっている。下端側は肩カバー50に外嵌固定されている。
【0040】
肩カバー50は、平面視略8の字状であって、2つのエアゾール容器2の上部に外嵌しており、2つのエアゾール容器2を左右横並びに固定している。なお、基体40と肩カバー50がそれぞれ別部材とされているが、一体であってもよい。
【0041】
上記構成の吐出製品1は、操作部22を押し下げる(
図3のS2参照)と、第1梃子部材20全体が第1回動部21を回動中心として回動し、その回動によって得られた梃子の力が、作用部23を介して第2梃子部材30に伝達される。この際、作用部23がスライド面33bをスライドしながら押し下げるため、効率良く力を伝達することができる。特に、スライド面33bが吐出孔33aに向かって斜め上方に傾斜しているため、作用部23の先端がスライド面33bの上を摺動し易い。押し下げられた第2梃子部材30は、第2回動部31を回動中心として回動し、その回動によって得られた梃子の力を利用して2つのステム5aを同時に押し下げる、又は傾倒させる。これによりバルブ機構5が開状態となり、2つのエアゾール容器2に収容されていた内容物がそれぞれノズル部33を通じて外部へと吐出される。
【0042】
例えば、内容物が2液式染毛剤等といった2液反応型の内容物であって、一方のエアゾール容器2に第1液が収容され、他方のエアゾール容器2に第2液が収容されている場合、所望の性能を発揮させるには、別々のエアゾール容器2に収容されている第1液と第2液を所定の比率で吐出させることが重要である。しかし、操作部22が十分に押し下げられないと、各エアゾール容器2で同じ構成のバルブ機構5を用いていたとしても、製造誤差等によってステム孔5a1の開度に違いが生じ、所定の比率で吐出できないことがある。上述の通り、2つのステム5aを押し下げるには比較的大きな力が必要であり、消費者が使用した場合、操作部22の押し下げが不足することがあるが、本発明の吐出部材10であれば、2つのバルブ機構5を同時に吐出操作する場合であっても、小さな力で操作部22を押し下げられるため、消費者に所定の位置まで操作部22を押し下げさせることができる。そして、ステム孔を全開状態にできる結果、所定の比率で吐出でき、所望の性能を安定して発揮させることができる。
【0043】
また、ステム孔の開放のタイミングがずれてしまうと第1液と第2液を所定の比率で吐出させることができないが、本発明の吐出部材10では、ステム5aの並び方向と、作用部23の長手方向とが同じである、具体的には、ステム5a(ステム装着口32a)が左右方向に並んでおり、板状の作用部23が左右方向に長く形成されているため、2つのステム5aを同時に且つ均等に押し下げることができ、ステム孔を同時に開放させることができる。
【0044】
2本のエアゾール容器2を連結する場合、握りやすさを考慮して容器本体3の胴部3bの外径を25~30mm程度にすることが好ましい。ただ、外径が小さいと自ずと吐出部材10の前後方向の大きさも小さくなりやすく、この実施形態のようにエアゾール容器2の連結方向と交差する方向に内容物を吐出する場合、支点から力点までの距離が短くなるため梃子の効果が充分に得られないが、第1梃子部材20と第2梃子部材30を上下に配置し、第1梃子部材20からの力を受ける箇所(第2梃子部材30の力点)を装着部32(エアゾール容器2の中心軸)より前側に、かつ、ノズル部33の上部に平面(スライド面33b)を設けることで、操作量は長くなるが操作力は小さくなり、2つのステム5aが確実に解放されやすい。
【0045】
吐出を止める場合は、操作部22の押し下げ操作を止めればよい。押し下げを止めることでステム5aが元の位置(
図3のS1参照)に戻り、バルブ機構5は閉状態に戻る。
【0046】
次に、
図4に示す吐出製品1Aについて説明する。
図1の吐出製品1では、2つのエアゾール容器2を用いていたが、この吐出製品1Aでは、
図5に示すように、2つのバルブ機構5(ステム5a)を備えた1つのエアゾール容器2Aを用いている。このエアゾール容器2Aは、容器本体3内に内袋(図示しない)が2つ収容されており、内袋に原液を収容することで2種類の原液を別々に収容することができる。別々に収容された原液は、容器本体3と内袋との間の空間に充填された加圧剤の圧力を受けて、別々のバルブ機構5(ステム5a)からそれぞれ吐出される。このエアゾール容器2Aでは、2つのステム5a、5a間の距離を
図1のエアゾール容器2よりも短くすることができるため、操作部22を押し下げた力を作用部23を介して2つのステム5aに均等に伝達しやすく、2つの内容物(原液)を所定の比率で吐出しやすい。
【0047】
吐出部材10Aについては、基体40を肩カバー50から脱離させるための脱離機構42(
図5、6参照)を備えている点で
図1の吐出部材10とは相違している。この脱離機構42は、基体40の左右両側面に設けられている。仕組みとしては、シーソーのように一方を押し込めば他方が持ち上がるようになっており、脱離機構42の下端側を肩カバー50の爪部51に係合させた状態において、脱離機構42の上端側を内側に押し込むことで、下端側が外側に張り出し、爪部51との係合が外れるようになっている。
【0048】
図6に示すように、肩カバー50については、エアゾール容器2の胴部3bの外形との連続性を出すために、略円筒状とされている。なお、基体40についても略円筒状の外形とされている。第1梃子部材20についても平面視略円形とされている。なお、第1梃子部材20については、
図7に示すように、後側に指を掛けるための窪み22aを設けてもよいし、滑り止め22cを設けてもよい。
【0049】
他の構成については、
図1の吐出製品1と同様であるため、同符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0050】
次に、
図8に示す吐出製品1Bについて説明する。この吐出製品1Bでは、定量式バルブを備えたエアゾール容器2Bを用いている。
【0051】
定量式バルブは、ハウジング6の底部にステム5aの下端を通すための貫通孔6aを設けるとともに、この貫通孔6aの上流(容器本体3)側に、ステム5aの下端を挿通させるとハウジング6と容器本体3との間にシールを形成するシール材8を設けることで形成されている。この定量式バルブでは、
図8の別窓に示すように、ステム5aが押し下げられた際に、ステム5aの下端がシール材8に挿通されてシールが形成される、すなわち、ステム5aの下端で容器本体3内からハウジング6(定量室S)内への内容物の供給を遮断するが、押し下げに伴いステムラバー5bによるステム孔5a1の閉塞が解かれるため、定量室S内の内容物を外部に吐出することができる。また、ステム5aを押し下げていないときは、ステム5aの下端はシール材8には挿通されない、すなわち、ステム5aの下端による遮断が解除されているため、定量室S内と容器本体3内とが連通状態であり、定量室S内に内容物が供給される。そのため、常に所定量(定量室S内に溜まった量)の内容物が吐出されることになる。
【0052】
上記構成の定量式バルブでは、ステム5aがステムラバー5bとシール材8とに接触、摺動するため、通常のバルブ機構に比べて大きな押し下げ力を必要とする。また、定量式バルブはステム5aの下端を大きく上下動させる必要があるため、通常のバルブ機構に比べてステム5aのストロークが長い。そのため、消費者が使用した場合、押し下げ量が不足することがあるが、本発明の吐出部材10Bであれば、小さな力で操作部22を押し下げられるため、消費者に所定の位置まで操作部22を押し下げさせることができる。そのため、定量室S内の内容物を全て吐出させることができ、常に一定量の内容物を吐出させることができる。
【0053】
その他、
図1Aの吐出製品1Aと異なる点として、この吐出製品1Bの吐出部材10Bでは、原液Cが1つであるため、装着部32やノズル部33の流路は1つであり、吐出孔33aも1つである。また、肩カバー50が省略され、基体40が直接エアゾール容器2の上部に外嵌している。他の構成については、
図1Aの吐出製品1Aと同様であるため、同符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0054】
次に、
図9に示す吐出製品1Cについて説明する。この吐出製品1Cのエアゾール容器2Cでは、ステム5aを付勢する付勢部材5cとして樹脂バネを用いている。この樹脂バネは、ハウジング6の底部から上方に立ち上がった複数の棒状体である。棒状体はステム5aの下端の周りに略環状に配置されており、ステム5aが押し下げられると、ステム5aの下端に押されて棒状体が外側に拡がるようにして変形する。ステム5aの押し下げを止めると、棒状体が元の位置に戻ろうとしてステム5aを押し上げる。
【0055】
このような樹脂バネを用いたバルブ機構5の場合、一般的な金属製のコイルバネに比べて強い押し下げ力が必要となることがあり、消費者が使用した場合、押し下げ量が不足することがあるが、本発明の吐出部材10Cであれば、小さな力で操作部を押し下げられるため、消費者に所定の位置まで操作部22を押し下げさせることができる。
【0056】
また、この吐出製品1Cのエアゾール容器2Cは、容器本体3として、外ボトル13a内に内ボトル13bが収容された2層ボトルを用いている。内ボトル13bは可撓性を有しており、内部に原液Cが充填されている。外ボトル13aと内ボトル13bとの間には加圧剤Pが充填されており、バルブ機構5が開かれると内ボトル13bが縮むようにして変形し、原液Cがステム5aから外部に吐出される。
【0057】
ステム5aは、有底ステム(内周ステム15a)の外周にさらにステム(外周ステム15b)を設けた、所謂同軸ステム(二重ステム)である。内周ステム15aと外周ステム15bとはそれぞれステム孔5a1を有しており、これらステム孔はそれぞれ別体のステムラバー5bによって閉塞されている。
【0058】
外側ステム5aのステム孔5a1は外ボトル13aと内ボトル13bとの間の空間と連通している。具体的には、外ボトル13aの首部と内ボトル13bの首部との間からハウジング6の外周を通って外周ステム15bのステム孔5a1に至る外通路R1が形成されている。ただ、外側ステム5aの上端は第2梃子部材30の装着部32によって塞がれているため、ステム5aを押し下げても加圧剤Pは吐出されない。外通路R1は、専ら加圧剤Pを充填する際に用いられる。
【0059】
一方、内側ステム5aのステム孔5a1は内ボトル13b内と連通している。具体的には、ハウジング6の底部に設けられた孔からハウジング6内を通って内側ステム5aのステム孔5a1に至る内通路R2が形成されており、ステム5aを押し下げることで原液Cが吐出される。なお、内通路R2は、原液Cを充填する際にも用いられる。
【0060】
その他、
図1Aの吐出製品1Aと異なる点として、この吐出製品1Cでは、バルブ機構5とハウジング6とを容器本体3に固定する方法として、ネジキャップ17が用いられている。また、原液Cが1つであるため、装着部32やノズル部33の流路は1つであり、吐出孔33aも1つである。他の構成については、
図1Aの吐出製品1Aと同様であるため、同符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0061】
以上に、この発明の実施形態について説明したが、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば、
図1では吐出孔33aが外部まで分離しているが、途中で合流してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1、1A、1B、1C 吐出製品
2、2A、2B、2C エアゾール容器
3 容器本体
3a 底部
3b 胴部
3c 肩部
3d 首部
3e 溝部
13a 外ボトル
13b 内ボトル
4 バルブアッセンブリ
5 バルブ機構
5a ステム
5a1 ステム孔
15a 内周ステム
15b 外周ステム
5b ステムラバー
5c 付勢部材
6 ハウジング
6a 貫通孔
S 定量室
7 マウンティングカップ
17 ネジキャップ
8 シール材
R1 外通路
R2 内通路
10、10A、10B、10C 吐出部材
20 第1梃子部材
21 第1回動部
22 操作部
22a 窪み
22b 後端
22c 滑り止め
23 作用部
30 第2梃子部材
31 第2回動部
32 装着部
32a ステム装着口
33 ノズル部
33a 吐出孔
33b スライド面
40 基体
41 切欠
42 離脱機構
50 肩カバー
51 爪部
C 原液
P 加圧剤