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  • 特開-歯車寸法測定装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053874
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】歯車寸法測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/00 20060101AFI20240409BHJP
   G01B 5/02 20060101ALI20240409BHJP
   B23Q 17/20 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
G01B5/00 L
G01B5/02
B23Q17/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160345
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】秋月 啓作
【テーマコード(参考)】
2F062
3C029
【Fターム(参考)】
2F062AA01
2F062AA21
2F062AA31
2F062BC71
2F062CC26
2F062CC27
2F062EE01
2F062EE62
2F062EE63
2F062FF03
2F062GG51
2F062HH01
2F062HH13
2F062MM06
3C029BB02
(57)【要約】
【課題】装置の小型化を図り、被測定物への汎用性を高め、さらに測定時間を短縮することが可能な歯車寸法測定装置を提供する。
【解決手段】本発明の歯車寸法測定装置の構成は、歯車の寸法を測定する歯車寸法測定装置100であって、工具ホルダが取り付けられた固定ベース120と、固定ベースに対して揺動可能な揺動ベースと、揺動ベースに対して歯車の寸法を測定する測定方向にスライド移動可能に取り付けられた測定子140と、測定子140の測定方向の先端に設けられた測定ボール146と、揺動ベースに取り付けられ測定子の測定方向の後端を検知するリミットセンサ180と、測定子140の測定方向へのスライド移動をガイドする直動ガイド150と、揺動ベースを固定ベースに対して歯車の円周方向に揺動可能に軸支するフローティング部130と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯車の寸法を測定する歯車寸法測定装置であって、
工具ホルダが取り付けられた固定ベースと、
前記固定ベースに対して揺動可能な揺動ベースと、
前記揺動ベースに対して前記歯車の寸法を測定する測定方向にスライド移動可能に取り付けられた測定子と、
前記測定子の前記測定方向の先端に設けられた測定ボールと、
前記揺動ベースに取り付けられ前記測定子の前記測定方向の後端を検知するリミットセンサと、
前記測定子の前記測定方向へのスライド移動をガイドする直動ガイドと、
前記揺動ベースを前記固定ベースに対して前記歯車の円周方向に揺動可能に軸支するフローティング部と、
を備えることを特徴とする歯車寸法測定装置。
【請求項2】
前記リミットセンサはタッチプローブであることを特徴とする請求項1に記載の歯車寸法測定装置。
【請求項3】
前記フローティング部の可動範囲を規制する規制ガイドを備えることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の歯車寸法測定装置。
【請求項4】
前記揺動ベースを前記フローティング部の可動範囲の中央に付勢するセンタリング部を備えることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の歯車寸法測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車の寸法を測定する歯車寸法測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内周面に歯が形成された内歯車や、外周面に歯が形成された外歯車では、相対する歯溝間の寸法(内歯車の場合はBBD(Between Ball Diameter)、外歯車の場合はOBD(Over Ball Diameter))を計測することで、歯車が設計どおりに製作されているか否かを検査している。例えば特許文献1には、「一対の測定子と、前記一対の測定子を相対的に近接及び離間制御可能に保持した支持体と、前記支持体をフローティング機構部により保持したベース体とを備え、前記一対の測定子間の距離を計測するセンサ部を有し、前記ベース体は前記被測定物の端部に当接して前記一対の測定子の挿通方向の位置決めを行う位置出し部材を有する測定装置」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6428149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の測定装置では、一対の測定子は、支持体に連結固定された駆動部にスライド可能に取り付けられたスライド部材の取付部材にそれぞれ取り付けられている。このスライド部材は、エアーシリンダによって相互に近接する方向および離間する方向に移動する。このため特許文献1の測定装置では、エアーシリンダにエアを供給するエア供給源が必要となる。するとエア供給用の管によって配置可能な内歯車の径が限定され、且つ装置が大型化してしまう。
【0005】
また特許文献1の測定装置では、一対の測定子を被測定物の歯に当接させて歯車の寸法を測定する。このことから必然的に大型化を招いてしまい、内径の小さな内歯車に対して特許文献1の測定装置を適用することができない。このように汎用性の点において、特許文献1の測定装置は更なる改良の余地がある。
【0006】
また、複合加工機を用いた歯車の測定においては、タッチプローブを用いて歯面の座標を得ることが行われている。しかしながらタッチプローブは歯面の一方に接触しただけでも検知してしまうため、両歯面に接触したことは補償されないという問題がある。またBBDやOBDを測定する場合のボール径は理想的には歯数や転位係数に応じて細かく異なる。タッチプローブも先端のボールの径は数種類のサイズが提供されているが、BBDやOBDに使用できるほど細分化されているわけではなく、また高価な部品であるため特注も現実的ではない。そのため従来はタッチプローブによって両歯面をそれぞれ測定して中間値を取ることが行われており、測定に時間がかかっていた。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、装置の小型化を図り、被測定物への汎用性を高め、さらに測定時間を短縮することが可能な歯車寸法測定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の歯車寸法測定装置の代表的な構成は、歯車の寸法を測定する歯車寸法測定装置であって、工具ホルダが取り付けられた固定ベースと、固定ベースに対して揺動可能な揺動ベースと、揺動ベースに対して歯車の寸法を測定する測定方向にスライド移動可能に取り付けられた測定子と、測定子の測定方向の先端に設けられた測定ボールと、揺動ベースに取り付けられ測定子の測定方向の後端を検知するリミットセンサと、測定子の測定方向へのスライド移動をガイドする直動ガイドと、揺動ベースを固定ベースに対して歯車の円周方向に揺動可能に軸支するフローティング部と、を備える。
【0009】
上記リミットセンサはタッチプローブであるとよい。
【0010】
上記フローティング部の可動範囲を規制する規制ガイドを備えるとよい。
【0011】
上記揺動ベースをフローティング部の可動範囲の中央に付勢するセンタリング部を備えるとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、装置の小型化を図り、被測定物への汎用性を高め、さらに測定時間を短縮することが可能な歯車寸法測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態にかかる歯車寸法測定装置の全体斜視図である。
図2図1の歯車寸法測定装置の側面図である。
図3図1の歯車寸法測定装置および内歯車を上方から観察した状態を例示する図である。
図4図1の歯車寸法測定装置および外歯車を上方から観察した状態を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
図1は、本実施形態にかかる歯車寸法測定装置100の全体斜視図である。図1に示す本実施形態の歯車寸法測定装置100は、被測定物である歯車の寸法(図1では内歯車10のBBD)を測定する装置である。本実施形態の歯車寸法測定装置100は、揺動ベース110および固定ベース120を備える。
【0016】
揺動ベース110は固定ベース120に対して揺動可能である。具体的には、揺動ベース110と固定ベース120との間にフローティング部130が設けられている。かかるフローティング部130によって、揺動ベース110は内歯車10(歯車)の円周方向に揺動可能に軸支されている。また固定ベース120に工具ホルダ102が取り付けられている。不図示の複合加工機の工具軸が工具ホルダ102をチャックすることにより、工具軸に歯車寸法測定装置100が取り付けられる。
【0017】
揺動ベース110の図1中における上方には測定子140が配置されている。測定子140は、スライドブロック142、およびそれと同軸上に配置されるシャフト144を含んで構成される。測定子140のスライドブロック142には、測定方向、すなわち歯車(内歯車10)の歯12に対して離接する方向の先端に測定ボール146が設けられている。
【0018】
揺動ベース110に、測定子140のシャフト144を保持するブラケット160が固定されていて、測定子140のスライドブロック142とブラケット160との間にリターンスプリング170が配置されている。測定子140のシャフト144は、リターンスプリング170およびブラケット160に対し測定方向に挿通されている。
【0019】
揺動ベース110において測定方向における測定子140とは反対側に、測定子140の測定方向の後端を検知するリミットセンサ180が取り付けられている。リミットセンサ180としては、タッチプローブを好適に用いることができる。ただし、これに限定するものではなく、マイクロスイッチ(機械式スイッチ)や、レーザーセンサ、磁気センサ等の既知のセンサを用いることも可能である(無線通信式のセンサであることが望ましい)。
【0020】
図2は、図1の歯車寸法測定装置100の側面図である。図1および図2に示すように、揺動ベース110と測定子140のスライドブロック142との間には、直動ガイド150が配置されている。直動ガイド150は、レール152、およびレール上を摺動するスライダ154によって構成されている。
【0021】
直動ガイド150のうち、レール152は揺動ベース110に固定されていて、スライダ154は測定子140のスライドブロック142に固定されている。かかる構成により測定子140は、直動ガイド150を介して揺動ベース110に間接的に取り付けられる。そして直動ガイド150においてレール152がスライダ154上を摺動することにより、測定子140の測定方向へのスライド移動がガイドされる。
【0022】
上記構成によれば、測定子140は、測定中以外はリターンスプリング170によって付勢されて図2(a)に示すように「ブラケット160から最も離間した位置」に配置された状態となる。そして測定中に測定ボール146が歯車の歯面14に当接すると、歯面14から測定ボール146にかかった力によって測定子140が、直動ガイド150にガイドされ、リミットセンサ180に向かってスライド移動する。その後、図2(b)に示すように、スライド移動した測定子140のシャフト144の端部144aがリミットセンサ180に接することで、測定子140の測定方向後端が検知される。複合加工機では、この検出点の位置を座標(複合加工機の制御上の座標)として取得する。
【0023】
図3は、図1の歯車寸法測定装置100および内歯車10を上方から観察した状態を例示する図である。本実施形態の歯車寸法測定装置100を用いて内歯車10の寸法を測定する際には、図3(b)に示すように内歯車10の内側に歯車寸法測定装置100を配置する。
【0024】
このとき本実施形態の歯車寸法測定装置100では、図3(a)に示すように、フローティング部130の可動範囲を規制する規制ガイド190が設けられている。規制ガイド190は、固定ベース120に固定されたタブ192、およびタブ192に取り付けられた調節ボルト194を含んで構成される。
【0025】
上記構成によれば、フローティング部130に取り付けられた揺動ベース110ひいては測定子140の「歯車の円周方向」における可動範囲(揺動範囲)を規制することができる。これにより、図3(b)に示すように内歯車10の歯面14の片側に測定ボール146が接触した場合であっても、測定子140に取り付けられた測定ボール146が歯面14に追従するように揺動する。そして両側の歯面14に接触することで、測定ボール146を歯溝の中央に配置することができる。
【0026】
そして本実施形態のように規制ガイド190に調節ボルト194を用いることにより、タブ192に対する調節ボルト194の進入度合を調節することで、揺動ベース110の可動範囲を任意に変更することができる。これにより、歯溝の幅が広い場合には、タブ192に対する調節ボルト194の進入度合を小さくして可動範囲を広くしたり、歯溝の幅が狭い場合には、タブ192に対する調節ボルト194の進入度合を大きくして可動範囲を狭くしたりするというように可動範囲を適宜規制することが可能となる。
【0027】
また本実施形態の歯車寸法測定装置100では、図1に示すように、揺動ベース110をフローティング部130の可動範囲の中央に付勢するセンタリング部112が設けられている。本実施形態のセンタリング部112は、板バネからなり、揺動ベース110の両側面にそれぞれ配置されている。そしてセンタリング部112は、一端がタブ192に固定されていて、他端が揺動ベース110に当接している。
【0028】
上記構成によれば、図3(b)に示すように揺動ベース110は、一対のセンタリング部112によって付勢されることにより可動範囲の中央に位置することとなる。これにより、揺動ベース110が可動範囲の中央から傾いた状態になってしまって測定ボール146が歯先に衝突することを好適に防ぐことができる。したがって、上述したように規制ガイド190によって揺動ベース110を可動範囲において揺動させつつ、揺動ベース110ひいては測定ボール146を測定に適した位置に配置することが可能となる。
【0029】
なお本実施形態では、規制ガイド190がタブ192および調節ボルト194によって構成され、センタリング部112が板バネによって構成される場合を例示したが、これに限定するものではない。規制ガイド190およびセンタリング部112は、上述した機能が得られるものであれば既知の他の構成や部材を用いてもよい。例えば規制ガイドは、タブ192だけによって可動範囲を規制してもよい。センタリング部112はコイルバネや発泡樹脂などの他の弾性体を用いたり、センタリング部112を省略したりしてもよい。
【0030】
図4は、図1の歯車寸法測定装置100および外歯車20を上方から観察した状態を例示する図である。本実施形態の歯車寸法測定装置100を用いて外歯車20の寸法を測定する際には、図4に示すように20の外側に歯車寸法測定装置100を配置する。そして外歯車20と歯車寸法測定装置100とを測定方向において相対移動させ、外歯車20の歯面24に測定ボール146を接触させ、測定ボール146を歯溝の中央に配置する。このように本実施形態の歯車寸法測定装置100によれば、内歯車10および外歯車20の両方の寸法を測定することが可能である。
【0031】
上記説明したように本実施形態の歯車寸法測定装置100によれば、エアを供給するためのエア供給源を必要とすることなく測定子を測定方向にスライド移動させることができる。また本実施形態の歯車寸法測定装置100では、一対の測定子ではなく、1つの測定子で歯車の寸法を測定することができる。したがって、従来の測定装置に用いられていたエア供給源や複数の測定子が不要となるため、装置の小型化を図ることができ、より小さな被測定物の測定等、被測定物への汎用性を高め、さらに測定時間を短縮することが可能となる。
【0032】
また、本実施形態の歯車寸法測定装置100によれば、測定ボール146を安価に製造することができるため、細かくサイズの異なる測定ボール146を準備することができる。すなわち、リミットセンサ180として無線通信式のタッチプローブを使用することにより接触時の座標を得ることができ、フローティング部130によって測定ボール146を確実に両側の歯面に接触させることができ、測定対象の歯車に合わせた寸法の測定ボール146を安価に準備することができる。これらのことから迅速、正確かつ低コストでBBDやOBDを測定することが可能である。
【0033】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は斯かる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、歯車の寸法を測定する歯車寸法測定装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0035】
10…内歯車、12…歯、14…歯面、20…外歯車、22…歯、24…歯面、100…歯車寸法測定装置、102…工具ホルダ、110…揺動ベース、112…センタリング部、120…固定ベース、130…フローティング部、140…測定子、142…スライドブロック、144…シャフト、144a…端部、146…測定ボール、150…直動ガイド、152…レール、154…スライダ、160…ブラケット、170…リターンスプリング、180…リミットセンサ、190…規制ガイド、192…タブ、194…調節ボルト
図1
図2
図3
図4